缶入り飲料,瓶入り飲料,ペットボトル飲料などの商品を販売する自動販売機は断熱筐体としてなる本体キャビネットの商品収納庫内に前記商品をコールド,ホット状態に区分して保存し、外扉のディスプレイ室内に複数の商品見本を左右に並べて展示し、前記商品見本に対応して設けられた商品選択ボタンの操作に基いて選択された商品を販売するように構成されている。この種の自動販売機について図4を用いて説明する。
図4に示すように、この自動販売機は、前面が開口した本体キャビネット1と、本体キャビネット1の前面にヒンジにより開閉可能に支持された外扉6とを備え、前記本体キャビネット1は鋼板製の外箱の内側、すなわち、上壁,左右側壁,背壁および底壁1aにウレタンフォームからなる断熱ボードを配設して断熱筐体として構成されている。前記本体キャビネット1の断熱ボードで囲まれた商品収納庫内は断熱仕切板2により左右方向に複数の商品収納室3,4,5に区画されている。前記各商品収納室3,4,5には、この例ではサーペンタイン式と呼ばれる蛇行した商品通路を有する商品収納ラック8がそれぞれ収設されている。
前記商品収納ラック8は、図4におけるA−A断面の概略側面図である図5に示すように、上下方向に半ピッチずらして左右のラック側板81の間に向かい合わせに架設した前後一対の湾曲状レールセグメント列82の間の画成された蛇行状の商品通路83を前後方向に2列備えている。図の例では2連の商品収納ラック8を前後に組み付けて4列の商品通路83が形成されている。各商品通路83の下端には商品を1個ずつ搬出する商品払出機構84が配設され、2列目以降の商品通路83の上端はトップトレー85を介して本体キャビネット1の前面開口に形成された商品投入口SL(図4参照)に連通し、最前列の商品通路83の上端は商品投入口SLに直接連通している。前記トップトレー85は左右のラック側板81に前後方向に移動可能に架設されている。
前記商品収納ラック8の下部には前下がりに傾斜するとともに複数の通風孔を有するシュート9と、風胴10d内に庫内ファン10a,熱交換器(冷凍機のエバポレータ)10b,ヒータ(加熱器)10cを組み合せてなる冷却/加熱ユニット10が配備されている。また、各商品収納室3,4,5の背面には、冷却/加熱ユニット10の風胴10dに連なるとともに庫内上部に延在して庫内に連通する開口11aを有し、本体キャビネット1の背壁との間に庫内空気の循環通路を形成する背面ダクト11を備えている。前記本体キャビネット1における底面の機械室には圧縮機12a,凝縮器12b,庫外ファン12cなどからなる冷凍機のコンデンシングユニット12が配設されている。なお、冷却/加熱ユニット10が配備された庫内はコールド/ホット兼用室として用いられ、コールド専用室の場合にはヒータを除く庫内ファン10a,熱交換器10bが冷却ユニットとして設けられている。
前記本体キャビネット1の前面に開閉可能に支持された外扉6と本体キャビネット1における商品収納庫の前面との間には内扉7が配設され、この例では内扉7が上下に分割されている。下部側の内扉7には各商品収納室3,4,5の商品収納ラック8から払い出された商品を送出するシュータ9と対峙する位置に搬出扉7aを有する商品搬出口が設けられている。前記搬出扉7aは上端を軸支されて垂下するとともに自重により商品搬出口を閉塞して冷気若しくは暖気の流出を防止しており、シュート9を介して搬出される商品により押し開かれ、当該商品を外扉6の商品取出口6aに送出するように形成されている。
このように構成された自動販売機において、商品収納ラック8は径の異なる商品に共用できるように商品通路83の通路幅が大径の商品に合わせて構成されている。この場合、商品収納ラック8の下端に配設された商品払出機構84には、商品払出機構84に対向して通路幅を調整する通路幅調整板(不図示)が配設され、通路幅調整板を収納する商品の径に応じて調整して商品払出機構84から確実に1個ずつ搬出できるように構成されている。このため、商品収納ラック8に小径の商品を収納する際、大径の商品が誤投入されると当該大径の商品が商品払出機構84に到達した時点で搬出(通過)を阻止されるので商品詰まりを惹起してしまう。そこで、商品投入口SLから投入された商品を商品収納通路83に導くトップトレー85を前後方向に移動可能に左右のラック側板81に架設し、当該トップトレー85の後端と商品通路83を構成する前後一対の湾曲状レールセグメント列82のうちの後方側の湾曲状レールセグメント列82との間の寸法Lを規制するように構成されている。
前記トップトレー85を左右のラック側板81に架設する一つの例を図6に示す。図6はラック側板81とトップトレー85とを分解した斜視図であり、図の左側が自動販売機の前面側である。トップトレー85は平板状の板金製になり、前後端部分をカールさせて左右に突出するカール軸851が一体成形されている。左右一対のラック側板81には逆さまの凹状をなす設定溝810が前後に所定の間隔を隔てて設けられている。前記設定溝810の溝幅はトップトレー85の前後一対のカール軸851が摺動可能な大きさに形成されており、上下方向に延在する前後の第1設定溝811,第2設定溝812と、これらの第1設定溝811,第2設定溝812とを連通する水平方向に延在する連通溝813からなる。前記第1設定溝811,第2設定溝812の下端は前後一対のカール軸851が係止される第1係止部811A、後方側の第2係止部812Aとして形成されている。前記第1係止部811Aは大径商品に対するセット位置であり、第2係止部812Aは小径商品に対するセット位置である。前記トップトレー85はラック側板81に前後一対の湾曲状レールセグメント列82を組み付ける際に同時に組み付けられ、一方のラック側板81における前後一対の設定溝810に前記トップトレー85における左右一方側の前後一対のカール軸851を挿通させたうえで他方のラック側板81における前後一対の設定溝810を前記トップトレー85における左右他方側の前後一対のカール軸851に嵌め込むことによりトップトレー85がラック側板81に架設される。左右のラック側板81に架設されたトップトレー85は、商品収納ラック8に大径商品を収納(ローディング)する際、前後一対のカール軸851を設定溝810の内壁に沿って摺動させたうえで第1設定溝811に移動させて第1係止部811Aに係止させてセットし、商品収納ラック8に小径商品を収納(ローディング)する際、前後一対のカール軸851を設定溝810の内壁に沿って摺動させたうえで第2設定溝812に移動させて第2係止部812Aに係止させてセットする(例えば、特許文献1)。
なお、特許文献1に記載されたトップトレー85は単一の平板状の板金になるものであるが、トップトレーを固定部材と可動部材とに分割したものも知られている(例えば、特許文献2)。この特許文献2に開示されたものにおいては、固定部材にカール軸を突設して左右のラック側板に固着する一方、可動部材の左右両端から下方に延在する垂下部を形成するとともに当該垂下部に前記固定部材のカール軸に係止される第1係止部を有する第1設定溝と第2係止部を有する第2設定溝とを備えた設定溝を設け、可動部材の第1係止部若しくは第2係止部をカール軸に係止させてセットするように構成されている。
前述した特許文献1に開示されたトップトレー85においては、トップトレー85に一体成形した前後一対のカール軸851を左右のラック側板81に形成した前後一対の設定溝810に係合させてセットするように構成されているので、トップトレー85の前後の一方のみが持ち上げられてカール軸851が設定溝810の第1係止溝811(或いは第2係止溝812)から抜け出さそうとしても後方側のカール軸851が設定溝810の第2係止部812A(或いは第1係止部811A)に係止されていることからトップトレー85が不用意に移動してセット位置が切り替えられることがない点で優れている。その反面、セット位置を切り替える場合、トップトレー85の前後が同時に上方に移動するようにその全体を上方へ移動させねばならず、それもトップトレー85の切り替え操作が商品投入口SL(図4参照)側からトップトレー85の前端を摘んで行われることから、トップトレー85のセット位置への切り替え操作が煩雑であるという問題を有する。このため、ラック側板81に形成した前後一対の設定溝810のうち、後方側の設定溝を第1設定溝811および第2設定溝812を連通する連通溝813のみ(つまり、図6に示す後方側の設定溝810から第1設定溝811および第2設定溝812を削除したものに相当)とし、前端側の設定溝810に沿ってカール軸851を移動させれば後方側のカール軸851は連通溝を前後にスライド移動するようにしたものが主流となっている。
ところが、前方側の設定溝810のみによりトップトレー85をセット位置に位置決めする結果、トップトレー85のカール軸851を設定溝810の第1係止部811Aに係止した状態でセット(大径商品に対応してセット)されている場合にトップトレー85の前方側に不用意に持ち上げられるような外力が加えられるとカール軸851が第1設定溝811から抜け出してセット位置が切り替えられてしまうおそれがある。トップトレー85の前方側が不用意に持ち上げられる事態とは、例えば商品のローディングの際にオペレータの手や商品がトップトレー85に衝突した場合の反動により生じ、この事態は上段側の商品投入口SLに位置するトップトレー85ほど生じ易い。このような不用意なセット位置の切り替えを防止するため、設定溝810の第1設定溝811を鉛直方向に長くすること、或いは前方側に傾斜させことが考えられるが、この場合にはトップトレー85のセット位置への切り替え操作が煩雑となってしまうという課題を有する。
そこで、本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、その目的は前記課題を解決し、トップトレーのセット位置への切り替え操作を損なうことなくトップトレーに不用意な外力が加えられた場合にも商品径に応じたセット位置が切り替えられることを防止可能な自動販売機を提供することにある。
上記目的を達成するために請求項1にかかる発明は、左右のラック側板間に前後列に並べて画成した蛇行状の商品通路に連ねて敷設され、商品投入口から投入された商品を前記商品通路に案内するトップトレーを備え、前記トップトレーに形成された左右に突出するカール軸を左右のラック側板に形成した設定溝における前後に離隔した第1設定溝の第1係止部および第2設定溝の第2係止部のいずれかに係止、若しくは左右のラック側板に架設したカール軸にトップトレーに形成した設定溝における前後に離隔した第1設定溝の第1係止部および第2設定溝の第2係止部のいずれかを係止させることによりトップトレーを商品径に応じた位置にセットしてなる自動販売機において、前記設定溝における第1設定溝の前後に対向する溝内壁のうち、一方の溝内壁は他方の溝内壁側に傾斜して第1係止部に連なり、かつ、カール軸の外周壁と接して両者の相対的な移動を誘導する誘導部を備え、他方の溝内壁は第1係止部に係止されたカール軸の少なくとも一部と上下方向に重なり、かつ、両者の相対的な上下動を阻止するとともに前記一方の溝内壁の誘導部に沿って両者が相対的に移動するのを許容する係止内壁を有する袋小路部を備えることを特徴とする。
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の自動販売機において、係止内壁は少なくともカール軸のカール端縁であるエッジと上下方向に重なることを特徴とする。
本発明の請求項1に係る自動販売機によれば、左右のラック側板間に前後列に並べて画成した蛇行状の商品通路に連ねて敷設され、商品投入口から投入された商品を前記商品通路に案内するトップトレーを備え、前記トップトレーに形成された左右に突出するカール軸を左右のラック側板に形成した設定溝における前後に離隔した第1設定溝の第1係止部および第2設定溝の第2係止部のいずれかに係止、若しくは左右のラック側板に架設したカール軸にトップトレーに形成した設定溝における前後に離隔した第1設定溝の第1係止部および第2設定溝の第2係止部のいずれかを係止させることによりトップトレーを商品径に応じた位置にセットしてなる自動販売機において、前記設定溝における第1設定溝の前後に対向する溝内壁のうち、一方の溝内壁は他方の溝内壁側に傾斜して第1係止部に連なり、かつ、カール軸の外周壁と接して両者の相対的な移動を誘導する誘導部を備え、他方の溝内壁は第1係止部に係止されたカール軸の少なくとも一部と上下方向に重なり、かつ、両者の相対的な上下動を阻止するとともに前記一方の溝内壁の誘導部に沿って両者が相対的に移動するのを許容する係止内壁を有する袋小路部を備えることにより、次のような効果を奏する。
すなわち、前記トップトレーに形成された左右に突出するカール軸を左右のラック側板に形成した設定溝における前後に離隔した第1設定溝の第1係止部および第2設定溝の第2係止部のいずれかに係止させることによりトップトレーを商品径に応じた位置にセットしてなる自動販売機においては、前記トップトレーのカール軸を第1設定溝の第1係止部に係止してセット(大径商品用)した状態であって、前記トップトレーの前端に不用意に持ち上げられるような外力が加えられた場合にも、トップトレーのカール軸が第1設定溝の他方の溝内壁(後方溝内壁)の袋小路部を上動する過程において当該袋小路部に形成した係止内壁に当接して第1設定溝から抜け出るのを阻止することができるのでトップトレーがセット位置から切り替えられてしまうことを防止することが可能となる一方、トップトレーのカール軸を第1係止部に係止する際、若しくは第1係止部に係止されたカール軸を第1係止部から離脱させる際には第1設定溝の一方の溝内壁(前方溝内壁)に形成した誘導部に沿ってカール軸を移動させればよいのでトップトレーのセットおよびセット位置の切り替え操作を容易に行うことができる。
また、左右のラック側板に架設したカール軸にトップトレーに形成した設定溝における前後に離隔した第1設定溝の第1係止部および第2設定溝の第2係止部のいずれかを係止させることによりトップトレーを商品径に応じた位置にセットしてなる自動販売機においては、前記トップトレーに形成した第1設定溝の第1係止部をカール軸に係止させてセット(大径商品用)した状態であって、前記トップトレーの前端に不用意に持ち上げられるような外力が加えられた場合にも、トップトレーの第1設定溝の他方の溝内壁(前方溝内壁)の袋小路部がカール軸と摺動しつつ上動する過程において当該袋小路部に形成した係止内溝がカール軸に当接して第1設定溝がカール軸から外れるのを阻止することができるのでトップトレーがセット位置から切り替えられてしまうことを防止することが可能となる一方、トップトレーの第1設定溝の第1係止部をカール軸に係合させる際、若しくはカール軸に係止されたトップトレーの第1設定溝の第1係止部をカール軸から離脱させる際には第1設定溝の一方の溝内壁(後方溝内壁)に形成した誘導部に沿ってカール軸を移動させればよいのでトップトレーのセットおよびセット位置の切り替え操作を容易に行うことができる。
また、本発明の請求項2に係る自動販売機によれば、請求項1に記載の自動販売機において、係止内壁は少なくともカール軸のカール端縁であるエッジと上下方向に重なることにより、前記トップトレーを大径商品に対応してセットした状態で前記トップトレーの前端に不用意に持ち上げられるような外力が加えられてカール軸と係止内壁とが相対的に上下動する際、カール軸のカール端縁であるエッジが係止内壁に当接するので両者の相対移動を確実に阻止することができ、トップトレーがセット位置から切り替えられてしまうことを防止することが可能となる。
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。本発明の実施の形態に係る自動販売機が従来装置と相違する点は特に左右のラック側板に架設されるトップトレーであり、ここでは従来装置と相違する左右のラック側板に架設されるトップトレーについて説明することとする。なお、図4〜図6に示した従来装置と同一のものには同一の符号を付してその説明を省略し、また、自動販売機の全体構成は図4〜図6に示したものと同一であるので適宜図4〜図6を参照しつつ説明を行う。
図1は実施の形態1にかかる自動販売機、詳しくはトップトレー85に形成された左右に突出するカール軸851を左右のラック側板81に形成した設定溝81Aにおける前後に離隔した第1設定溝81A1の第1係止部81A10および第2設定溝81A2の第2係止部81A20のいずれかに係止させることによりトップトレー85を商品径に応じた位置にセットしてなる自動販売機を示すものである。前記トップトレー85は、図6に示したものと同様に平板状の板金製になり、前後端部分をカールさせて左右に突出するカール軸851が一体成形されている。ここで、カール軸851はトップトレー85の前後端部分の左右方向全域(展開状態で撞木鮫頭部形状の端部全域)に心棒を渡してカール加工を施し、縦断面が真円となるようにカールさせて形成される。このため、図1の(b)に示すように、トップトレー85の左右に突出するカール軸851の巻き始め端部8511と巻き終わり端部8512とを付き合わせることができず、巻き始め端部8511と巻き終わり端部8512との間にはトップトレー85の板厚に応じた隙間が生じ、巻き始め端部8511および巻き終わり端部8512のエッジが露出している。
図1に示すラック側板81は、左右に対向配置されたラック側板81のうち、自動販売機の正面から見て右側のラック側板である。前記ラック側板81には所定の間隔を隔てて前後一対の設定溝81A,81Bが設けられている。前方側の設定溝81Aは、逆さまの凹状をなす一方、後方側の設定溝81Bは前後方向に延在する直線状をなしている。前記設定溝81A,81Bの溝幅はトップトレー85の前後一対のカール軸851が摺動可能な大きさに形成されている。逆さまの凹状をなす前方側の設定溝81Aは、上下方向に延在する前後の第1設定溝81A1,第2設定溝81A2と、これらの第1設定溝81A1,第2設定溝81A2とを連通する前後方向に延在する連通溝81A3からなる。前記第2設定溝81A2の下端はトップトレー85における前方のカール軸851が係止される第2係止部81A20(小径商品に対するセット位置)として形成されている一方、第1設定溝81A1の下端側は次のような異形溝として形成されている。すなわち、前記第1設定溝81A1の前後に対向する溝内壁81A11,81A12のうち、前方溝内壁81A11は後方溝内壁81A12側に傾斜して第1係止部81A10(大径商品に対するセット位置)に連なり、かつ、カール軸851の外周壁と接してカール軸851の移動を誘導する誘導部81A110を備えている。前記第1設定溝81A1の後方溝内壁81A12は第1係止部81A10に連なるとともにカール軸851の外周面と接してカール軸851の上下動をガイドするガイド内壁81A121およびこのガイド内壁81A121に連なるとともに前記第1係止部81A10に係止されたカール軸851の少なくとも一部と上下方向に重なるとともにカール軸851の上動を阻止する係止内壁81A122を備えた袋小路部81A120としてなる。前記第1設定溝81A1の後方溝内壁81A12に形成された係止内壁81A122の先端角部、すなわち、前方溝内壁81A11側に突出した先端角部はカール軸851が第1係止部81A10に係止された状態で少なくともカール溝851の巻き終わり端部8512よりも前方側に位置するように定められ、また、前記トップトレー85のカール軸851を第1係止部81A10に係止する際、若しくは第1係止部81A10に係止されたカール軸851を第1係止部81A10から離脱させる際には第1設定溝81A1の一方の前方溝内壁81A11に形成した誘導部81A110に沿ってカール軸851が移動するのを許容する位置に定められている。なお、前記第1設定溝81A1における前方溝内壁81A11および後方溝内壁81A12が請求項1の一方の溝内壁および他方の溝内壁に相当する。
前記トップトレー85のラック側板81への組み付けは、従来装置と同様に、前後一対の湾曲状レールセグメント列82(図5参照)をラック側板81に組み付ける際に同時に組み付けられ、一方のラック側板81における前後一対の設定溝81A,81Bに前記トップトレー85における左右方向に突出する一方側の前後のカール軸851,851をそれぞれ挿通させたうえで他方のラック側板81における前後一対の設定溝81A,81Bを前記トップトレー85における他方側の前後一対のカール軸851に嵌め込むことによりトップトレー85がラック側板81に架設される。
前述したように左右のラック側板81に架設されたトップトレー85は、商品収納ラック8に商品を収納(ローディング)する際、収納商品の径に応じてセットされる。図1に示すセット位置は大径商品に対応してセットされた状態を示し、前記トップトレー85の前方のカール軸851が前方側の設定溝81Aにおける第1設定溝81A1の第1係止部81A10に係止され、トップトレー85の後方のカール軸851が後方側の設定溝81Bの前端近傍に位置している。この状態から小径の商品を収納(ローディング)する場合、トップトレー85の前端を摘んで前方のカール軸851を第1設定溝81A1の誘導部81A110に沿って斜め上方に引き上げたうえで第1設定溝81A1から連通溝81A3の内壁に沿って摺動させた後、第2設定溝81A2に移動させて第2係止部81A20に係止させてセットする。この場合、トップトレー85の後方のカール軸851は後方側の設定溝81Bの溝内を前後方向に摺動して当該設定溝81Bの後端に移動する。トップトレー85を小径商品のセット位置から大径商品のセット位置への移動は前述したセット操作と逆の手順で行うことができる。
さて、図1に示すように、トップトレー85を大径商品に対応してセットした状態において、トップトレー85の前方側に不用意に持ち上げられるような外力(例えば、ローディング時にオペレータの手若しくは商品が衝突した際の外力)が加えられるとその反力により前方のカール軸851が第1設定溝81A1における第1係止部81A10から抜け出して上方(袋小路部81A120)に移動する。前記第1係止部81A10から抜け出して袋小路部81A120に移動したカール軸851は、第1係止部81A10に連なるガイド内壁81A121に沿って上昇した後、袋小路としてなる係止内壁81A122に当接する。この場合、係止内壁81A122の先端角部、すなわち、前方溝内壁81A11側に突出した先端角部はカール軸851が第1係止部81A10に係止された状態で少なくともカール軸851の巻き終わり端部8512よりも前方側に位置するように定められているので、少なくともカール軸851の巻き終わり端部8512のエッジが係止内壁81A122に当接してカール軸851の上昇が阻止される。このように係止内壁81A122に上昇を阻止されたカール軸851は下降して第1設定溝81A1における第1係止部81A10に係止され、元のセット位置に復帰する。ここで、前記外力により上方に上昇したカール軸851の巻き終わり端部8512のエッジが係止内壁81A122に当接することにより確実にカール軸851の上昇を阻止できるのであるが、これに限らず、カール軸851の巻き始め端部8511側の外周面が係止内壁81A122に当接した場合にもカール軸851の上昇を抑制してセット位置が切り替えられてしまうのを防止することができるものである。したがって、前記第1設定溝81A1の前方溝内壁81A11に誘導部81A110を形成する一方、前記第1設定溝81A1の後方溝内壁81A12に係止内壁81A122を有する袋小路部81A120を備えることにより外力によりトップトレー85のセット位置が不用意に切り替えられるのを防止することができる。
次に、図2,図3は図1とは異なる態様の自動販売機、詳しくはトップトレー86が固定部材87と可動部材88とに分割され、左右のラック側板81に架設した固定部材87のカール軸870に可動部材88に形成した設定溝880における前後方向に離隔した第1設定溝884の第1係止部8840および第2設定溝885の第2係止部8850のいずれかを係止させることによりトップトレー86を商品径に応じた位置にセットしてなる自動販売機を示す。図2の(a)は固定部材87に可動部材88を組み付けたトップトレー86の側面図、(b)は設定溝880の拡大図、図3は固定部材87と可動部材88の分解斜視図である。なお、このように固定部材87と可動部材88とに分割された態様のトップトレー86は特許文献2(特開2012−113561号公報)に開示されている。
トップトレー86を構成する固定部材87は平板を適宜プレス加工、折り曲げ加工を施すことにより形成され、可動部材88を載置する商品案内基部871と通路構成部872とが一体成形されている。商品案内基部871の前端部分には左右に突出するカール軸870が形成されるとともに商品案内基部871の左右両側端部の前側近傍,後側近傍よりそれぞれ左右に突出する係合突起874,874が形成され、通路構成部872の下端部分には左右に突出するカール軸873が形成されている。前記カール軸870,873および係合突起874,874に対応してラック側板(不図示)には係合穴が穿孔され、当該係合穴に前記カール軸870,873および係合突起874,874を係合させることにより固定部材87がラック側板に架設される。なお、カール軸870は、商品案内基部871の前端部分の左右方向全域(展開状態で撞木鮫頭部形状の端部全域)に心棒を渡してカール加工を施し、縦断面が真円となるようにカールさせて形成されため、図2の(b)に示すように、商品案内基部871の左右に突出するカール軸870の巻き始め端部8701と巻き終わり端部8702とを付き合わせることができず、巻き始め端部8701と巻き終わり端部8702との間には商品案内基部871の板厚に応じた隙間が生じ、巻き始め端部8701および巻き終わり端部8702のエッジが露出している。
トップトレー86を構成する可動部材88は、前記固定部材87の商品案内基部871に載置される商品案内部881と当該商品案内部881の左右端部から垂下する垂下部882とを有している。前記垂下部882には、前記固定部材87の2つの係合突起874,874がそれぞれ遊嵌される前後方向に延在する2つの係合孔8821,8822と、カール軸870に係合する第1設定溝884,第2設定溝885からなる設定溝880がそれぞれ形成されている。前記第1設定溝884,第2設定溝885は「ハ」字状をなすとともに開放した下部開口を介して連通するとともにカール軸870が摺動可能な大きさに形成されている。下部開口から後方に向けて傾斜した第2設定溝885の上端がカール軸870に係止される第2係止部8850(小径商品に対するセット位置)として形成される一方、下部開口から前方に向けて傾斜した第1設定溝884の上端がカール軸870に係止される第1係止部8840(大径商品に対するセット位置)として形成されている。
前記可動部材88の固定部材87への組み付けは、可動部材88の係合孔8821,8822に固定部材87の前後の係合突起874,874を挿通させるとともに設定溝880の第1設定溝884,第2設定溝885のいずれか一方をカール軸870に係合(図2の(a)の場合には第1設定溝884をカール軸870に係合させて大径商品に対応してセットした状態を示す)させることにより両者が組み付けられる。かかるセット状態で固定部材87の前後の係合突起874,874が可動部材88の係合孔8821,8822の後方寄りの上縁に位置しており、可動部材88を前方斜め上方に引き上げて第1設定溝884をカール軸870から離脱させる際に固定部材87の前後の係合突起874,874が可動部材88の係合孔8821,8822の後縁近傍に位置し、可動部材88を後方側にスライドさせて第2設定溝885の下部開口をカール軸870に対峙させた際に固定部材87の前後の係合突起874,874が可動部材88の係合孔8821,8822の前縁近傍に位置するとともに第2設定溝885の第2係止部8850をカール軸870に係止させて可動部材88を小径商品に対応する位置にセットした際、固定部材87の前後の係合突起874,874が可動部材88の係合孔8821,8822の前方寄りの上縁に位置し、可動部材88を商品径に応じて切り替えることができるように構成されている。
さて、可動部材88に形成した設定溝880の第1設定溝884を第2設定溝885のような単純な湾曲溝とした場合、可動部材88の第1設定溝884をカール軸870に係合させてセットした状態(大径商品に対応するセット位置)で可動部材88の前端部に可動部材88を持ち上げるような外力が加えられた場合、その反力で可動部材88の第1設定溝884がカール軸870から引き外されてしまうおそれがある。これを防止するため、第1設定溝884を長く(深く)延在させればカール軸870から引き外されることはないが、セット位置の切り替え操作が煩雑となる。そこで、この発明では第1設定溝884を次のとおりの異形溝として切り替え操作を損なうことなく前記外力により第1設定溝884がカール軸870から引き外されてセット位置が切り替えられるのを防止している。
すなわち、図2の(b)に示すように、第1設定溝884の前後に対向する溝内壁8841,8842のうち、後方溝内壁8842は前方溝内壁8841側に傾斜して第1係止部8840(大径商品に対するセット位置)に連なり、かつ、カール軸870の外周壁と接してカール軸870の移動を誘導する誘導部8842Aを備えている。前記第1設定溝884の前方溝内壁8841は第1係止部8840に連なるとともにカール軸870の外周面と接してカール軸870の相対的な上下動をガイドするガイド内壁8843およびこのガイド内壁8843に連なるとともに前記第1係止部8840に係止されたカール軸870の少なくとも一部と上下方向に重なるとともにカール軸870の相対的な下動を阻止する係止内壁8844を備えた袋小路部8841Aとしてなる。前記第1設定溝884の前方溝内壁8841に形成された係止内壁8844の先端角部、すなわち、後方溝内壁8842側に突出した先端角部はカール軸870が第1係止部8840に係止された状態で少なくともカール溝870の巻き始め端部8701よりも後方側に位置するように定められ、また、前記可動部材88の第1設定溝884をカール軸870に係合させたうえで第1係止部8840をカール軸870に係止させる際、若しくはカール軸870に係止された第1係止部8840を当該カール軸870から離脱させる際には第1設定溝884の後方溝内壁8842に形成した誘導部8842Aに沿ってカール軸870が相対的に移動するのを許容する位置に定められている。なお、前記第1設定溝884における前方溝内壁8841および後方溝内壁8842が請求項1の他方の溝内壁および一方の溝内壁に相当し、可動部材88が請求項1のトップトレーに相当する。
次に、図2に示すように、可動部材88を大径商品に対応してセットした状態において、可動部材88の前方側に不用意に持ち上げられるような外力が加えられるとその反力により可動部材88が上動するので前方のカール軸870が第1設定溝884における第1係止部8840から相対的に抜け出して下方(袋小路部8841A)に移動する。前記第1係止部8840から抜け出して袋小路部8841Aに相対的に移動したカール軸870は、第1係止部8840に連なるガイド内壁8843に沿って下降した後、袋小路としてなる係止内壁8844に当接する。この場合、係止内壁8844の先端角部、すなわち、後方溝内壁8842側に突出した先端角部はカール軸870が第1係止部8840に係止された状態で少なくともカール軸870の巻き始め端部8701よりも後方側に位置するように定められているので、少なくともカール軸870の巻き始め端部8701のエッジが係止内壁8844に当接してカール軸870の相対的な下降が阻止される。このように係止内壁8844に相対的な下降を阻止されたカール軸870は上昇、つまり、可動部材88は下降して第1設定溝884における第1係止部8840がカール軸870に係止され、元のセット位置に復帰する。ここで、前記外力により上方に上昇した係止内壁8844がカール軸870の巻き始め端部8701のエッジに当接することにより確実に可動部材88の上昇を阻止できるのであるが、これに限らず、カール軸870の巻き終わり端部8702側の外周面が係止内壁8844に当接した場合にも可動部材88の上昇を抑制してセット位置が切り替えられてしまうのを防止することができるものである。したがって、前記第1設定溝884の後方溝内壁8842に誘導部8842Aを形成する一方、前記第1設定溝884の前方溝内壁8841に係止内壁8844を有する袋小路部8841Aを備えることにより外力により可動部材88のセット位置が不用意に切り替えられるのを防止することができる。
なお、図2,図3に示した自動販売機においては、トップトレー86が固定部材87と可動部材88からなるものについて説明したが、固定部材87は必ずしも必要なものではなく固定部材87を削除して単体のカール軸(固定部材87のカール軸870に相当)をラック側板に架設してもよいものである。したがって、可動部材88が請求項1のトップトレーに相当する。
前述したように、この実施の形態にかかる自動販売機においては、左右のラック側板81間に前後列に並べて画成した蛇行状の商品通路83に連ねて敷設され、商品投入口SLから投入された商品を前記商品通路83に案内するトップトレー85を備え、前記トップトレー85に形成された左右に突出するカール軸851を左右のラック側板81に形成した設定溝81Aにおける前後に離隔した第1設定溝81A1の第1係止部81A10および第2設定溝81A2の第2係止部81A20のいずれかに係止させることによりトップトレー85を商品径に応じた位置にセットしてなる自動販売機において、前記設定溝81Aにおける第1設定溝81A1の前後に対向する溝内壁(前方溝内壁81A11,後方溝内壁81A12)のうち、一方の溝内壁(前方溝内壁81A11)は他方の溝内壁(後方溝内壁81A12)側に傾斜して第1係止部81A10に連なり、かつ、カール軸851の外周壁と接して両者の相対的な移動を誘導する誘導部81A110を備え、他方の溝内壁(後方溝内壁81A12)は第1係止部81A10に係止されたカール軸851の少なくとも一部と上下方向に重なり、かつ、両者の相対的な上下動を阻止するとともに前記一方の溝内壁(前方溝内壁81A11)の誘導部81A110に沿って両者が相対的に移動するのを許容する係止内壁81A122を有する袋小路部81A120を備えることにより、前記トップトレー85のカール軸851を第1設定溝81A1の第1係止部81A10に係止してセット(大径商品用)した状態であって、前記トップトレー85の前端に不用意に持ち上げられるような外力が加えられた場合にも、トップトレー85のカール軸851が第1設定溝81A1の他方の溝内壁(後方溝内壁81A12)の袋小路部81A120を上動する過程において当該袋小路部81A120に形成した係止内壁81A122に当接して第1設定溝81A1から抜け出るのを阻止することができるのでトップトレー85がセット位置から切り替えられてしまうことを防止することが可能となる一方、トップトレー85のカール軸851を第1係止部81A10に係止する際、若しくは第1係止部81A10に係止されたカール軸85を第1係止部81A10から離脱させる際には第1設定溝81A1の一方の溝内壁(前方溝内壁1A11)に形成した誘導部81A110に沿ってカール軸85を移動させればよいのでトップトレー85のセットおよびセット位置の切り替え操作を容易に行うことができる。
また、左右のラック側板81に架設したカール軸870にトップトレー(可動部材88)に形成した設定溝880における前後に離隔した第1設定溝884の第1係止部8840および第2設定溝885の第2係止部8850のいずれかを係止させることによりトップトレー(可動部材88)を商品径に応じた位置にセットしてなる自動販売機においては、前記設定溝880における第1設定溝884の前後に対向する溝内壁(前方溝内壁8841,後方溝内壁8842)のうち、一方の溝内壁(後方溝内壁8842)は他方の溝内壁(前方溝内壁8841)側に傾斜して第1係止部8840に連なり、かつ、カール軸870の外周壁と接して両者の相対的な移動を誘導する誘導部8842Aを備え、他方の溝内壁(前方溝内壁8841)は第1係止部8840に係止されたカール軸870の少なくとも一部と上下方向に重なり、かつ、両者の相対的な上下動を阻止するとともに前記一方の溝内壁(後方溝内壁8842)の誘導部8842Aに沿って両者が相対的に移動するのを許容する係止内壁8844を有する袋小路部8841Aを備えることにより、前記トップトレー(可動部材88)に形成した第1設定溝884の第1係止部8840をカール軸870に係止させてセット(大径商品用)した状態であって、前記トップトレー(可動部材88)の前端に不用意に持ち上げられるような外力が加えられた場合にも、トップトレー(可動部材88)の第1設定溝884の他方の溝内壁(前方溝内壁8841)の袋小路部8841Aがカール軸870と摺動しつつ上動する過程において当該袋小路部8841Aに形成した係止内壁8844がカール軸870に当接して第1設定溝884がカール軸870から外れるのを阻止することができるのでトップトレー(可動部材88)がセット位置から切り替えられてしまうことを防止することが可能となる一方、トップトレー(可動部材88)の第1設定溝884の第1係止部8840をカール軸870に係合させる際、若しくはカール軸870に係止されたトップトレー(可動部材88)の第1設定溝884の第1係止部8840をカール軸870から離脱させる際には設定溝884の一方の溝内壁(後方溝内壁8842)に形成した誘導部8842Aに沿ってカール軸870を移動させればよいのでトップトレー(可動部材88)のセットおよびセット位置の切り替え操作を容易に行うことができる。