JP2014148734A - 透明電極付き基板の製造方法及び透明電極付き基板 - Google Patents

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Abstract

【課題】高導電率と高透過率を両立した透明電極を透明フィルム基材上に形成する。
【解決手段】基板11に透明電極20が形成された透明電極付き基板の製造方法において、透明電極20は、アルゴン及び酸素ガスからなるキャリアガス中に窒素を含有させた雰囲気で、酸化インジウムを主成分とし窒素を含まない焼結体ターゲットを用いてマグネトロンスパッタリング法により製膜し、窒素をキャリアガス中に1.0〜3.0体積%含有させ、マグネトロンスパッタリング時の窒素分圧を0.005〜0.030Paに制御する製造方法である。

【選択図】図1

Description

本発明は、透明フィルム基材上に透明電極層が形成された透明電極付き基板の製造方法、およびそれによって製造された透明電極付き基板に関するものである。
透明フィルムやガラス等の透明基材上にインジウム・スズ複合酸化物(ITO)等の導電性酸化物薄膜が形成された透明電極付き基板は、ディスプレイや発光素子、光電変換素子等の透明電極として広く用いられている。このような透明電極付き基板の製造方法としては、透明基材上に、スパッタリング法により導電性酸化物薄膜を形成する方法が広く用いられ、例えば、スパッタリング法はターゲット材料の制限が少ないことから広く薄膜の製膜方法として開発されている。また、特許文献1にはイオンビームアシストによるITO製膜について記載されているが、この方法により製造されたものは、スパッタリング法により製造されたものとは、出来たものが異なるし、さらに、スパッタリング法のように大面積製膜に用いられないという、製法上の制限もある。
特許文献2、3には窒素を含有したITOについて記載されている。特許文献2には、4×10-4Ωcm以上の抵抗率の窒素含有ITOについて記載されており、窒素を含有することで高抵抗且つ耐熱性の高いITOを製造可能であることが記載されている。特許文献3に記載されている窒素含有金属酸化物は、光学素子の接合を改善するための正孔輸送層としての役割を付与することが記載されている。このように、窒素含有透明金属酸化物は多くの用途に用いられているが、透明導電性酸化物として最も期待される特性である「高導電性且つ高透過率」については未だに達成されていない。本発明はこれらの課題を解決するために検討され、見出されたものである。
特開2001−143534号公報 特開2000−113732号公報 特表2009−519608号公報
本発明では、上記の課題に対して、酸化インジウム透明電極薄膜中に窒素を含有させることで導電率を向上させながら、同時に高透過率を達成することを目的とする。この2つの課題を同時に達成するため、導電性の向上の手段として「キャリア密度の抑制および移動度の向上による導電性の向上」の開発結果に関するものである。
本発明の製造方法は、基板に透明電極が形成された透明電極付き基板の製造方法において、上記透明電極は、アルゴン及び酸素ガスからなるキャリアガス中に窒素を含有させた雰囲気で、酸化インジウムを主成分とし窒素を含まない焼結体ターゲットを用いてマグネトロンスパッタリング法により製膜し、上記窒素はキャリアガス中に1.0〜3.0体積%含有され、上記マグネトロンスパッタリング時の窒素分圧は0.005〜0.030Paに制御される方法である。このような製法によって透明電極を形成することにより、高導電率と高透過率を両立した透明電極とすることが可能となる。
また、本発明の透明電極付き基板は、透明電極が、酸化錫を10重量%以下と窒素を0.8〜2.0原子%含有する酸化インジウム−錫−窒素の複合酸化物で形成されたものであり、このような透明電極とすることで、タッチパネル等に適用した場合に、高導電率と高透過率を両立することができる。
本発明によれば、高導電率と高透過率を両立した透明電極を製造することができる。このような透明電極を、フィルム基板のような低融点基板上でも形成可能である点が本発明の特徴である。このため、本発明の透明電極はフィルム基板上への形成を主な目的としながら、ガラスや半導体基板上への製膜についても支障なく達成することができるものである。これにより、本発明の透明電極は静電容量方式タッチパネルの応答速度向上や、太陽電池における発電効率向上、有機EL照明の面内輝度均一性向上、各種光デバイスの省電力化等に寄与し得る。
一実施形態にかかる透明電極付き基板の模式的断面図である。
[透明電極付き基板の構成]
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照しつつ説明する。図1は、透明基材10上に、透明電極層20を有する透明電極付き基板100を示している。特に図1では透明フィルム基材上の構成を示している。
透明フィルム基材10を構成する透明フィルム11は、少なくとも可視光領域で無色透明であるものが好ましい。透明フィルム11上には、酸化物を主成分とする透明誘電体層12が形成されていてもよい。透明誘電体層12を構成する酸化物としては、少なくとも可視光領域で無色透明であり、抵抗率が10Ω・cm以上であるものが好ましい。透明誘電体層12を形成することで、基板と透明電極との密着性を向上させることが可能となる。なお、本明細書において、ある物質を「主成分とする」とは、当該物質の含有量が51重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%であることを指す。本発明の機能を損なわない限りにおいて、各層には、主成分以外の成分が含まれていてもよい。
透明電極層20は酸化インジウムを、90.0重量%〜95.5重量%含有することが好ましい。透明電極層は、膜中にキャリア密度を持たせて導電性を付与するためのドープ不純物を含有する。このようなドープ不純物としては、酸化スズまたは酸化亜鉛が好ましい。ドープ不純物が酸化スズである場合の透明電極層は酸化インジウム・スズ(ITO)であり、ドープ不純物が酸化亜鉛である場合の透明電極層は酸化インジウム・亜鉛(IZO)である。
透明電極層中の前記ドープ不純物の含有量は、10.0重量%以下であることが好ましく、ドープ不純物が錫の場合、好ましい範囲は4〜10重量%であり、さらに好ましいのは7〜10重量%である。酸化インジウムおよびドープ不純物の含有量を前記範囲とすることで、透明電極層が低抵抗化されることに加えて、非晶質の透明電極層を150℃程度のアニール処理により結晶質に転化することができる。
透明電極層について低抵抗を維持しつつ、高透過率を実現する観点から、結晶質透明電極層20の膜厚は、15nm〜40nmが好ましく、20nm〜35nmがより好ましく、22nm〜32nmがさらに好ましい。
透明電極層20は、結晶化度が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。結晶化度が前記範囲であれば、透明電極層による光吸収を小さくできるとともに、環境変化等による抵抗値の変化が抑制される。なお、結晶化度は、顕微鏡観察時において観察視野内で結晶粒が占める面積の割合から求められる。
結晶質透明電極層20は、抵抗率が3×10-4Ω・cm以下であることが好ましい。また、結晶質透明電極層20の表面抵抗は、150Ω/□以下であることが好ましく、130Ω/□以下であることがより好ましい。透明電極層が低抵抗であれば、静電容量方式タッチパネルの応答速度向上や、有機EL照明の面内輝度の均一性向上、各種光学デバイスの省消費電力化等に寄与し得る。
透明電極層20のホール移動度は、50cm2/Vs以上であることが好ましく、より好ましいのは60cm2/Vs以上である。この範囲のホール移動度とすることで、低抵抗(=高導電率)と高透過率を同時に達成可能となる。高移動度とすることで、高透過率を達成可能である理由としては、高移動度とすることでキャリア密度の減少を誘発し、これにより、長波長側の自由電子吸収に起因する光の吸収ロスを抑制するためであると考えられる。ホール移動度は、ホール測定(van der Pauw法)を用いた。
本発明の透明電極は窒素を0.8〜2.0原子%含有することを特徴とし、特に、1.0〜1.8原子%、さらには1.2〜1.6原子%の時に、高品質の透明電極となる。窒素を含有した状態については、その組成についてはX線光電子分光スペクトル(XPS)やエネルギー分散型X線分光スペクトル(EDX)により容易に検出可能である。また、構造については、微細構造についてはX線吸収微細構造(XAFS)スペクトルや電子エネルギー損失分光スペクトル(EELS)によって同定できる。また、結晶構造については、X線回折測定(XRD)により同定可能である。これらの構造解析の結果からわかる結果として、本発明の透明電極は(222)面に定義される面に強く配向していることが特徴である。ここでいう「強く配向」とは、(222)面に定義される面以外のピーク強度が、(222)面のピーク強度に比べて1/100以下であることが特徴である。このような強い配向性はミクロなレベルでの結晶子の秩序の高さを示すものであり、これにより高いホール移動度を実現することができる。
[透明電極付き基板の製造方法]
以下、本発明の好ましい実施の形態について、透明電極付き基板の製造方法に沿って説明する。本発明の製造方法では、透明フィルム11上に透明誘電体層12を備える透明フィルム基材10が用いられる(基材準備工程)。透明フィルム基材10の透明誘電体層12上にスパッタリング法により非晶質透明電極層が形成され(製膜工程)、その後、透明電極層が結晶化される(結晶化工程)。一般に、酸化インジウムを主成分とする非晶質の透明電極層を結晶化するためには、150℃程度で行われる。
(基材準備工程)
基材10は硬質・軟質の材料を選択して用いることができる。例えば、柔軟性や軽量性が必要なデバイスに必要な透明電極にはフィルム材料などの軟質材料を用いることができ、また、耐熱性が必要なデバイスにはガラス基板などの硬質材料を用いることができる。硬質の材料としては、ガラスなどの透明基板の他に、シリコンウェハなどの半導体基板がある。一方透明フィルムの材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフテレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、セルロース系樹脂等が挙げられる。中でも、ポリエステル系樹脂が好ましく、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましく用いられる。
透明フィルム11上に形成される透明誘電体層12を構成する酸化物としては、Si,Nb,Ta,Ti,Zn,ZrおよびHfからなる群から選択される1以上の元素の酸化物が好適に用いられる。中でも、酸化シリコン(SiO2)や酸化チタン(TiO2)のように酸素との結合が強い誘電体が好ましく、酸化シリコンが特に好ましい。
透明誘電体層12は、その上に透明電極層20が形成される際に、透明フィルム11から水分や有機物質が揮発することを抑制するガスバリア層や、透明フィルムに対するプラズマダメージを低減する保護層として作用し得るとともに、膜成長の下地層としても作用し得る。特に、本発明においては、誘電体層が酸素ガスバリア層として機能することが、低温加熱あるいは室温での結晶化が可能な透明電極層の形成に寄与していると考えられる。透明誘電体層にこれらの機能を持たせる観点からは、透明誘電体層12の膜厚は、10nm〜100nmであることが好ましく、15nm〜75nmであることがより好ましく、20nm〜60nmであることがさらに好ましい。
透明誘電体層12は、1層のみからなるものでもよく、2層以上からなるものであってもよい。透明誘電体層12が2層以上からなる場合、各層の厚みや屈折率を調整することにより、透明電極付き基板の透過率や反射率を調整して、表示装置の視認性を高めることができる。また、静電容量方式タッチパネル用の透明電極付き基板においては、透明電極層20の面内の一部がエッチング等によりパターニングされて用いられる。この場合、透明誘電体層の厚みや屈折率を調整することにより、電極層がエッチングされずに残存している電極形成部と、電極層がエッチングにより除去された電極非形成部との透過率差、反射率差、色差を低減して、電極パターンの視認を抑止することができる。
透明フィルム基材10は、上記透明誘電体層12以外に、透明フィルム11の片面または両面にハードコート層等の機能性層(不図示)が形成されたものであってもよい。透明フィルム基材に適度な耐久性と柔軟性を持たせるためには、ハードコート層の厚みは3〜10μmが好ましく、3〜8μmがより好ましく、5〜8μmがさらに好ましい。ハードコート層の材料は特に制限されず、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂等を、塗布・硬化させたもの等を適宜に用いることができる。なお、ハードコート層等の機能性層が、透明フィルム11の透明電極層20形成面側に形成される場合、当該機能性層は、透明フィルム11と透明誘電体層12との間に形成されることが好ましい。
透明フィルム11上への透明誘電体層12の形成方法は、均一な薄膜が形成される方法であれば特に限定されない。製膜方法としては、スパッタリング法、蒸着法等のPVD法、各種CVD法等のドライコーティング法や、スピンコート法、ロールコート法、スプレー塗布やディッピング塗布等のウェットコーティング法が挙げられる。上記製膜方法の中でも、ナノメートルレベルの薄膜を形成しやすいという観点からドライコーティング法が好ましい。特に、光学特性を調整する等の観点から数ナノメートル単位で層厚みを制御する必要がある場合は、スパッタリング法が好ましい。透明フィルム11と透明誘電体層12との密着性を高める観点から、透明誘電体層の形成に先立って、透明フィルム11の表面に、コロナ放電処理やプラズマ処理等の表面処理が行われてもよい。
(製膜工程)
透明フィルム基材10の透明誘電体層12上に、マグネトロンスパッタリング法により透明電極層20が形成される。透明電極層20は、製膜直後は非晶質の膜である。透明電極層を低抵抗化するとともに、非晶質膜を低温加熱あるいは室温により結晶化させるためには、この透明電極層20は、透明フィルム基材10の透明誘電体層12上に直接形成されていることが好ましい。
スパッタ電源としては、DC,RF,MF電源等が使用できる。スパッタ製膜に用いられるターゲットとしては金属、金属酸化物等が用いられる。特に、酸化インジウムと酸化スズまたは酸化亜鉛を含有する酸化物ターゲットが好適に用いられる。酸化物とすることで、ターゲットの安定性を向上させることが可能となる。本発明に必要な窒素元素を導入することも可能であるが、キャリアガスとして導入することで効率よくドーピング可能であるので、ターゲット中に含有させてもさせなくても構わない。酸化物ターゲットは、酸化インジウムを90.0重量%〜95.5重量%含有するものが好ましく、90重量%〜95重量%含有するものがより好ましい。また、酸化物ターゲットは、酸化インジウム以外に、酸化スズまたは酸化亜鉛を4.5重量%〜10.0重量%含有するものが好ましい。このようなスパッタターゲットは、高温成形や低温成形などの公知の方法で作製可能である。
スパッタ製膜は、製膜室内に、アルゴンおよび酸素ガスを含むキャリアガスが導入されながら行われる。さらにドーピングガスとして窒素ガスが導入される。窒素の導入量は全ガスに対して1.0〜3.0体積%含有されていることが好ましく、さらには1.2〜2.2体積%であることが好ましい。この量の窒素を導入することで、高導電率と高透過率を両立することが可能となる。例えば、上記範囲より多い窒素導入は導電性を低下させることになる。製膜室内の圧力(全圧)は、0.1Pa〜1.0Paが好ましく、0.25Pa〜0.80Paがより好ましい。このうち、スパッタ時の窒素分圧は0.005〜0.030Paで制御されていることが好ましい。この分圧制御は、調圧機構及び/または流量制御機構等の制御装置により実施できる。圧力はガスの膜中への拡散に影響する重要な因子であり、上記圧力範囲とすることで窒素原子を透明電極膜中に導入することが可能となる。
製膜時の基板温度は、透明フィルム基材が耐熱性を有する範囲であればよく、60℃以下であることが好ましい。基板温度は、−20℃〜40℃であることがより好ましく、−10〜20℃であることがさらに好ましい。基板温度を60℃以下とすることで、透明フィルム基材からの水分や有機物質(例えばオリゴマー成分)の揮発等が起こり難くなり、酸化インジウムの結晶化が起こりやすくなるとともに、非晶質膜が結晶化された後の結晶質透明電極層の抵抗率の上昇を抑制することができる。また、基板温度を前記範囲とすることで、透明電極層の透過率の低下や、透明フィルム基材の脆化が抑制されるとともに、製膜工程においてフィルム基材が大幅な寸法変化を生じることがない。
透明電極層は、15nm〜40nmの膜厚で製膜されることが好ましい。製膜厚みは、20nm〜35nmがより好ましい。
本発明においては、枚様式のスパッタリング装置によるバッチ法の製膜や巻取式スパッタリング装置によるロール・トゥー・ロール法により製膜が行われることが好ましい。基材10上への透明誘電体層12の形成が行われる場合、透明誘電体層12と透明電極層20とが、連続して製膜されてもよい。
(結晶化工程)
非晶質の透明電極層が形成された基材は、結晶化工程に供される。結晶化工程において加熱温度は、透明電極層製膜後の基材のガラス転移Tg未満であることが好ましく、Tg−10℃未満が好ましい。また、加熱温度の下限としては、室温が好ましく、より好ましいのは50℃であり、80℃であることがより好ましい。
長尺シートのロール状巻回体が結晶化工程に供される場合、巻回体のままで結晶化が行われてもよく、ロール・トゥー・ロールでフィルムが搬送されながら結晶化が行われてもよく、フィルムが所定サイズに切り出されて結晶化が行われてもよい。
[推定原理]
本発明の透明電極は、窒素をドーピングすることで導電率と透過率の向上を達成するものである。これらを同時に達成可能なのは、導電率の向上をホール移動度の向上により成しえたことがその原因である。キャリア密度の向上による導電性向上と異なり、ホール移動度による導電性制御は透過率の低下を伴わないので、導電率と透過率の両立が可能となる。
窒素をドーピングすることによるホール移動度の向上に関しては、詳細な原理は解明されていないが、1つは結晶の配向性にあることが考えられる。上述の通り、配向性が強くなることにより、結晶中での電子の散乱が起こりにくくなり、結果としてホール移動度が向上すると考えられる。
[透明電極付き基板の用途]
本発明の透明電極付き基板は、ディスプレイや発光素子、光電変換素子等の透明電極として用いることができ、タッチパネル用の透明電極として好適に用いられる。中でも、透明電極層が低抵抗であることから、静電容量方式タッチパネルに好ましく用いられる。
タッチパネルの形成においては、透明電極付き基板上に、導電性インクやペーストが塗布されて、熱処理されることで、引き廻し回路用配線としての集電極が形成される。加熱処理の方法は特に限定されず、オーブンやIRヒータ等による加熱方法が挙げられる。加熱処理の温度・時間は、導電性ペーストが透明電極に付着する温度・時間を考慮して適宜に設定される。例えば、オーブンによる加熱であれば120〜150℃で30〜60分、IRヒータによる加熱であれば150℃で5分等の例が挙げられる。なお、引き廻し回路用配線の形成方法は、上記に限定されず、ドライコーティング法によって形成されてもよい。また、フォトリソグラフィによって引き廻し回路用配線が形成されることで、配線の細線化が可能である。
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
各透明誘電体層および透明電極層の膜厚は、透明電極付き基板の断面の透過型電子顕微鏡(TEM)観察により求めた値を使用した。透明電極層の表面抵抗は、低抵抗率計ロレスタGP(MCP‐T710、三菱化学社製)を用いて四探針圧接測定により測定した。透明電極層の抵抗率は、前記表面抵抗の値と膜厚との積により算出した。
透明電極のホール移動度の測定は、van der pauw法により行った。試料を1cm四方に切り出し、その4つの角に金属インジウムを電極として融着した。磁力3500ガウスで、基板の対角方向に1mAの電流を流した際の電位差を基にホール移動度を測定し、キャリア密度を算出した。
透明電極の結晶性についてはX線回折装置(RINT2000 リガク社製)を用いた。測定方法はout of planeの2θ/θ法を適用した。
[実施例1]
(透明フィルム基材の作製)
透明フィルムとして、ウレタン系樹脂からなるハードコート層が両面に形成された厚み188μmの2軸延伸PETフィルムが用いられた。このPETフィルムの一方の面上に、スパッタリング法により、シリコン酸化物(SiO2)からなる膜厚40nmの透明誘電体層を形成した。
(透明電極層の製膜)
酸化インジウムまたは酸化インジウム・スズをターゲットとして用い、酸素とアルゴンの混合ガスを装置内に導入しながら、さらに、窒素を表1に記載するような組成で導入し、酸素分圧5×10-3Pa、製膜室内圧力0.5Pa、基板温度0℃、パワー密度4W/cm2の条件で、スパッタリングを行なった。得られたITO層の膜厚は25nmであった。
(透明電極層の結晶化)
この透明電極付き基板を、大気圧の空気中150℃の温度で30分間アニール処理した後の抵抗率・キャリア密度は表1のようになった。
結晶性および配向性の評価は、XRD測定において2θ30°付近に観測される(222)配向のピークを基準とし、その他のピーク(例えば、2θ50°付近の(440)ピークなど)強度を(222)ピーク強度で割り算した商を配向性とした。
[実施例2〜6および比較例1〜4]
上記実施例1において、ITOの錫含有量および窒素導入量を表1に示すように変更して、製膜および結晶化を行なった。
上記各実施例および比較例の条件および測定結果の一覧を表1に示す。
窒素を含有することで、抵抗率を3×10-4Ωcm以下と低抵抗率を維持しながら、高いホール移動度を達成可能であることがわかった。従来の高移動度達成方法は、酸素を多く導入し、キャリア密度を低下させることが公知であったが、このような手法ではキャリア密度の低下に伴う抵抗率の向上が顕著となり、本実施例のような高移動度と低抵抗率の両立は困難であった。
比較例を見てわかるように、窒素の含有量には最適な範囲があり、特に窒素を過剰に含むと抵抗率の上昇につながることがわかった。これは、窒素が過剰に入ることで、キャリアとなる酸素欠損が補償されているためだと考えられる。
結晶配向性からわかるように、窒素を含有することで(222)の配向性が強くなり、つまり結晶が「そろった」状態となるため、キャリアとなる電子が結晶内だけでなく、結晶粒界間でも流れやすくなるものと推定される。
10 透明フィルム基材
11 透明フィルム
12 透明誘電体層
20 透明電極層
100 透明電極付き基板

Claims (5)

  1. 基板に透明電極が形成された透明電極付き基板の製造方法において、
    前記透明電極は、アルゴン及び酸素ガスからなるキャリアガス中に窒素を含有させた雰囲気で、酸化インジウムを主成分とし窒素を含まない焼結体ターゲットを用いてマグネトロンスパッタリング法により製膜し、
    前記窒素をキャリアガス中に1.0〜3.0体積%含有させ、前記マグネトロンスパッタリング時の窒素分圧を0.005〜0.030Paに制御することを特徴とする透明電極付き基板の製造方法。
  2. 前記酸化インジウムを主成分とする焼結体ターゲットは酸化錫を10重量%以下含有している請求項1に記載の透明電極付き基板の製造方法。
  3. 請求項1又は2に記載の透明電極付き基板の製造方法により製造した透明電極付き基板であって、
    前記透明電極は、酸化錫を10重量%以下と窒素を0.8〜2.0原子%含有する酸化インジウム−錫−窒素の複合酸化物である透明電極付き基板。
  4. 前記透明電極は、X線回折から得られる(222)面に定義される以外のピーク強度が、X線回折から得られる(222)面のピーク強度に比べて1/100以下である請求項3に記載の透明電極付き基板。
  5. 前記透明電極のホール移動度が50cm2/Vs以上であり、且つ抵抗率が3×10-4Ωcm以下である請求項3又は4に記載の透明電極付き基板。
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