特許文献1から3の物品支持具では、吸着シートを固着面に密着させる際、薄膜状に形成された吸着シートが備える静電特性により両者の間に空気が残留し難く、簡便に保持体を壁面等に密着させることができる。空気が残留した場合でも、指等で空気を外側に向かって押し出すことで、吸着シートと固着面との密着状態を向上させることができる。また、吸着シートは軟質樹脂製であるので柔軟性があり、緩やかな曲面、あるいはうねりがある不整面等、平坦面でない場合でも密着させることができる。しかし、吸着シートのうち、ベースが固定してある部分は柔軟性がないので、壁面に密着させる際に、先の部分に空気が残留しやすく、吸着シートの全面を空気が残留しない状態で固着面に密着させることが困難となる。さらに、先のベース部分に空気が残留した場合には、ベースが固定してあるので残留した空気を指等で押し出すことができないため、吸着シートの密着面積が減少し、その分だけ吸着力が低下するのを避けられない。
また、特許文献4および5の保持体では、吸盤の中央部を吸着面から遠ざけて、吸盤と吸着面との間を大気圧以下に減圧して強固に吸着させることができるので、空気が残留した場合でも、吸着力が低下することはない。しかし、押え椀あるいは押圧体が硬質であるので、吸着面が平坦面でない場合には、吸盤の外周縁部分の全体を押圧することができず、吸盤を吸着面から遠ざかる向きに引上げ操作をすると、外周縁部分から空気を吸引してしまい、大気圧以下に減圧することが困難である。大気圧以下に減圧して吸着できた場合であっても、押圧されていない部分を介して吸盤の周縁部から空気を吸引し、長期にわたって吸着力を保持することができない。
本発明の目的は、吸着体を固着面に強固に密着固定することができ、さらに吸着シートと固着面との間に僅かに空気が残留した場合であっても、物品支持体を確実に支持できる物品支持具を提供することにある。
本発明の目的は、固着面が緩やかな曲面、あるいはうねりがある不整面など平坦面でない場合であっても、吸着体を固着面に強固に密着固定して、壁面等に物品支持体を確実に支持できる物品支持具を提供することにある。
本発明の目的は、吸着後に吸着シートと固着面との間に空気が侵入することによる剥落を防止できる物品支持具を提供することにある。
本発明の物品支持具は、取付対象の固着面Wに装着される吸着体1と、吸着体1で支持される物品支持体2と、弾性変形可能な押圧カップ3と、押圧カップ3を弾性変形操作する加圧操作体4とを備えている。吸着体1は、吸着シート8と、吸着シート8の外面に固定されて、物品支持体2、押圧カップ3、および加圧操作体4を支持する支軸体9とを備えている。加圧操作体4は支軸体9で、待機位置と作動位置とに変位可能に支持されている。加圧操作体4を作動位置に変位させた状態では、押圧カップ3が吸着シート8へ向かって扁平に弾性変形操作されている。扁平に弾性変形された状態の押圧カップ3は、加圧操作体4の押圧力を受けて周縁リップ部22が吸着シート8に強圧されている。同時に、支軸体9に作用する押圧カップ3の弾性復元力で、吸着シート8が固着面Wから離れる向きへ引寄せられて、吸着シート8と固着面Wの吸着面が減圧してあることを特徴とする。
吸着シート8を軟質樹脂で形成する。
支軸体9を段丘状に形成された支軸ベース12と、支軸ベース12の外面に突設される軸部13とで構成する。吸着シート8と相似状に形成した支軸ベース12を、吸着シート8の中央部に同心状に固定する。押圧カップ3が吸着シート8の側へ弾性変形した状態において、押圧カップ3の周縁リップ部22で、吸着シート8周縁寄りを同心状に強圧する。
加圧操作体4を、軸部13に形成した雄ねじ部14と、雄ねじ部14にねじ込まれる加圧ねじ体25とで構成する。加圧ねじ体25を雄ねじ部14にねじ込み操作して待機位置から作動位置へ変位させることにより、押圧カップ3を扁平に弾性変形操作する。
加圧操作体4を、軸部13にピン38を介して傾動可能に連結された加圧カム39で構成する。加圧カム39には、押圧カップ3を弾性変形操作するカム面42を形成する。加圧カム39を待機位置から作動位置へ傾動変位させることにより、カム面42で押圧カップ3を扁平に弾性変形操作する。
軸部13で支持した物品支持体2の連結部16は平坦な壁面で形成されている。連結部16に設けた連結孔18を軸部13に掛止して、連結部16が押圧カップ3と加圧操作体4とで挟持固定してある。
押圧カップ3を、円板状の基部20と、基部20に連続して後方に向かって湾曲する周回状のリップ部21とで凹面鏡状に形成する。リップ部21の厚み寸法を、基部20から周縁リップ部22に行くにしたがって小さくなるように設定する。
押圧カップ3を、円板状の基部20と、基部20に連続して後方に向かって末広がり状に延びる周回状のリップ部21とでハット状に形成する。加圧操作体4で押圧カップ3を扁平に弾性変形操作するにつれて、周縁リップ部22が吸着シート8を強圧した状態で拡径変形する。
吸着シート8の固着面Wと接触する側にシリコーンゴム層10を形成する。
取付対象の固着面Wに吸着補助シート5を粘着固定し、吸着補助シート5の外面の平滑面31に吸着体1を吸着固定する。
支軸体9に、保持体51を設け、扁平に弾性変形した状態の押圧カップ3の周縁リップ部22を、保持体51で固着面Wに向かって押圧する。
本発明に係る物品支持具においては、吸着シート8と、吸着体1の支軸体9とで、物品支持体2、押圧カップ3および加圧操作体4を支持した。加圧操作体4は待機位置と作動位置とに変位可能に支持し、加圧操作体4を作動位置に変位させた状態では、押圧カップ3を吸着シート8へ向かって扁平に弾性変形操作できるようにした。扁平に弾性変形された状態の押圧カップ3は、加圧操作体4の押圧力を受けた周縁リップ部22が吸着シート8を強圧する。そのため、吸着シート8を固着面Wに確りと密着させて強固に吸着固定でき、物品支持体2を確実に支持できる物品支持具とすることができる。
加えて、押圧カップ3は、その周縁リップ部22が吸着シート8を強圧するのと同時に、自己の弾性復元力を支軸体9に作用させ、吸着シート8を固着面Wから離れる向きへ引寄せて、吸着シート8と固着面Wの吸着面を減圧できるようにした。このように、本発明の物品支持具においては、扁平に弾性変形された押圧カップ3の弾性復元力を利用して、吸着シート8と固着面Wの吸着面を強制的に減圧するので、先の周縁リップ部22による強圧作用とが相俟って、吸着体1を固着面Wにさらに強固に吸着固定できる。また、吸着シート8を固着面Wに密着させる際に、吸着シート8のうち支軸体9が固定された部分と固着面Wとの間に僅かに空気が残留した場合であっても、吸着面にある空気の圧力を大気圧以下に減圧して吸着力を発生させることができる。したがって、残留した空気で吸着シート8の密着面積が減少したことに起因する吸着力の低下を、減圧した空気の吸着力で補完することができ、全体として吸着シート8の吸着力が低下するのを防止できる。
吸着シート8を軟質樹脂で形成すると、固着面Wが緩やかな曲面、あるいはうねりがある不整面の場合でも、吸着シート8が固着面Wに追随して密着し、固着体1を吸着固定できる。また、押圧カップ3も吸着シート8と同様に固着面Wに追従して弾性変形するので、加圧操作体4の押圧力を受けた押圧カップ3の周縁リップ部22を吸着シート8に強圧して、吸着体1を固着面Wに強固に吸着固定できる。
段丘状の支軸ベース12と軸部13とで支軸体9を構成し、吸着シート8と相似状に形成した支軸ベース12を、吸着シート8の中央部に同心状に固定した。さらに、押圧カップ3が弾性変形した状態において、吸着シート8の周縁寄りを周縁リップ部22で同心状に強圧するようにした。このように、吸着シート8の周縁寄りを周縁リップ部22で同心状に強圧すると、吸着シート8の周縁がめくれにくく、吸着シート8と固着面Wとの間に空気が侵入するのを防止して、物品支持具の剥落を防止できる。また、支軸ベース12を吸着シート8の中央部に同心状に固定するので、面積の大きな支軸ベース12を介して、支軸体9を吸着シート8に強固に一体化できる。
軸部13に設けた雄ねじ部14と、雌ねじ状の加圧ねじ体25とで加圧操作体4を構成すると、加圧操作体4の全体構造を簡素化できる。また、加圧ねじ体25を単にねじ込み操作するだけで押圧カップ3を扁平に弾性変形させて、物品支持具を壁面などに的確に吸着固定できる。さらに、加圧ねじ体25と押圧カップ3との間に物品支持体2の連結部16が挟持固定される場合に、連結部16の厚み寸法が大小に異なっていたとしても、物品支持体2を軸部13に確実に固定しながら、押圧カップ3を的確に弾性変形させることができる。連結部16の厚み寸法の違いに応じて加圧ねじ体25のねじ込み量を加減すればよいからである。したがって、物品支持体2の具体的な構造がフック、トレー、ハンガーなどに変更される場合であっても、連結部16の厚みに影響されることなく、各種構造の物品支持体2を軸部13に適切に装着できる。
軸部13に連結した加圧カム39のカム作用で押圧カップ3を弾性変形操作する加圧操作体4によれば、加圧カム39を作動位置へ向かって傾動変位するだけの簡単な操作で、押圧カップ3を扁平に弾性変形できる。また、ワンタッチ動作で吸着体1を固着面Wに強固に吸着固定できるので、物品支持具の壁面などに対する着脱を速やかに行える。
平坦な壁面として形成した連結部16を押圧カップ3と加圧操作体4とで挟持固定すると、連結部16が押圧カップ3の中央部分を面接触状に押圧して、周縁リップ部22を吸着シート8に対して均等に強圧することができる。また、連結孔18が軸部13に掛止する状態で、連結部16を押圧カップ3と加圧操作体4とで挟持固定するので、必要に応じて物品支持体2の固定姿勢を軸部13の回りに自由に変更できる。
円板状の基部20と、基部20に連続して後方に向かって湾曲する周回状のリップ部21とで凹面鏡状に押圧カップ3を形成し、リップ部21の厚み寸法を、基部20から周縁リップ部22に行くにしたがって小さくなるように設定した。これによれば、押圧カップ3が扁平に弾性変形した際に、周縁リップ部22は固着面Wに追随して柔軟に変形しながら吸着シート8周縁寄りを確実に強圧することができる。また、リップ部21の基部20側で確実に弾性復元力を発揮することができるので、吸着シート8を固着面Wから離れる向きへ引寄せて、吸着シート8と固着面Wの吸着面を確実に減圧できる。
円板状の基部20と、基部20に連続して後方に向かって末広がり状に延びる周回状のリップ部21とでハット状に押圧カップ3を形成し、加圧操作体4で押圧カップ3を扁平に弾性変形操作するにつれて、周縁リップ部22が吸着シート8に強圧した状態で拡径変形するように構成した。これによれば、吸着シート8と固着面Wとの間に残留した空気を、押圧カップ3の弾性変形操作で外側に向かって押し出すことができ、残留した空気を指等で押し出す手間を省きながら、吸着体1を固着面Wに強固に吸着固定することができる。
吸着シート8の固着面Wと接触する側にシリコーンゴム層10を形成すると、シリコーンゴムが持つ粘着力により、吸着体1を固着面Wにさらに強固に吸着固定することができる。
取付対象の固着面Wに吸着補助シート5を粘着固定し、吸着補助シート5の外面の平滑面31に吸着体1を吸着固定すると、取付対象の表面が梨地状や、木材の表面等、平滑な面でない場合であっても、吸着体1を吸着固定することができ、様々な表面性状の壁面あるいはガラス面に物品支持具を取付けることができる。
支軸体9に設けた保持体51で、扁平に弾性変形した状態の押圧カップ3の周縁リップ部22を固着面Wに向かって押圧すると、周縁リップ部22を吸着シート8にさらに強圧することができ、吸着シート8の周縁がめくれにくく、吸着シート8と固着面Wとの間に空気が侵入するのを防止して、物品支持具の剥落を防止できる。
(第1実施形態) 図1から図3に本発明に係る物品支持具の第1実施形態を示す。なお、各実施形態における前後、左右、上下とは、各図に示す矢印と、各矢印の近傍に表記した前後、左右、上下の表示に従う。図2に示すように、物品支持具は、取付対象の固着面Wに固定する吸着体1と、吸着体1に連結されて物品を保持するホルダー(物品支持体)2と、吸着体1に設けられる押圧カップ3と、押圧カップ3を吸着シート8へ向かって扁平に弾性変形操作する加圧操作体4とで構成してある。
取付対象の表面が平滑な面である場合には、その表面を固着面Wとして吸着シート8を密着固定することができるが、例えば梨地状や木材の表面等、平滑な面でない場合には、吸着シート8を完全に密着させることができず、本来の吸着力を発揮できない。そのため、取付対象の表面が平滑な面でない場合には、吸着補助シート5を介して物品支持具を固定する。
図1および図2に示すように、吸着補助シート5は、前面(外面)が平滑面31に形成された軟質樹脂製のシート材で形成してあり、四隅を丸めた四角形状に形成してある。吸着補助シート5は、その裏面に形成した粘着材層32で取付対象に粘着固定することができる。粘着固定した吸着補助シート5の平滑面31を吸着面として吸着体1を吸着固定することで、取付対象の表面が梨地状や、木材の表面等、平滑な面でない場合であっても、吸着体1を吸着固定することができ、様々な表面性状の壁面あるいはガラス面に物品支持具を取付けることができる。吸着補助シート5は、粘着材層32に剥離紙が設けられた状態で提供される。
図1および図2に示すように、吸着体1は、吸着シート8と、吸着シート8に固定された支軸体9とで構成してある。吸着シート8は平滑面31に密着させると、吸着シート8の表面(前面)に作用する大気圧で平滑面31に押し付けられるので、吸着体1は平滑面31に吸着固定できる。吸着シート8は、軟質樹脂製のシート材で円形状に形成してあり、平滑面31に密着させる側にはシリコーンゴム層10が形成してある。シリコーンゴム層10を形成することで、シリコーンゴムが持つ粘着力により、固着体1を平滑面31に強固に吸着固定することができる。図2において、符号11は、吸着シート8を平滑面31から剥離操作する際に爪等を掛けるための剥離片であり、剥離片11には、前記シリコーンゴム層10は形成されていない。吸着体1は、剥離紙でシリコーンゴム層10が保護された状態で提供される。
図1から図3に示すように、支軸体9は、段丘状に形成された支軸ベース12と、支軸ベース12の外面に突設される軸部13とで構成してある。支持ベース12は小径部と大径部とで形成してあり、正面視において吸着シート8と相似する円形状に形成してある。支持ベース12を小径部と大径部とで段丘状に形成することで、後述する押圧カップ3のリップ部21が支持ベース12に接触することなく、弾性変形できるようになっている。軸部13は支軸ベース12の小径部中央から前方に向かって突設してあり、その外周面には、後述する加圧操作体4を構成する雄ねじ部14が形成してある。支軸ベース12と軸部13とは、硬質樹脂材で一体に形成してある。支軸体9は、支持ベース12の大径部が吸着シート8の中央部に同心状に接着剤で固定してある。支軸ベース12を、吸着シート8の中央部に同心状に固定することで、面積の大きな支軸ベース12を介して、支軸体9と吸着シート8とを強固に一体化できる。
吸着シート8のシート中央部は、支持ベース12が固定されることで可撓性が失われ、その他のシート部分のみが可撓性を有している。また、吸着シート8が接着される支軸ベース12の大径部の固定面は、製造誤差等により平坦でない場合がある。ほとんどの場合、吸着シート8はその全面を平滑面31に密着させることができるが、上記の理由により、吸着具1を吸着固定する際に、シート中央部と平滑面31との間に空気が残留する場合がある。
図2に示すように、ホルダー2は、平坦な壁面で形成した連結部16と、連結部16に連続するフック17とで構成してあり、連結部16の上部には、先の軸部13を挿通する連結孔18が貫通状に形成してある。フック17はJ字状に形成してあり、連結部16とフック17とは硬質樹脂材で一体に形成してある。ホルダー2は、連結孔18に軸部13が挿通された状態で、押圧カップ3と加圧操作体4とで挟持固定される。これにより、連結部16が押圧カップ3の基部20を面接触状に押圧して、押圧カップ3の周縁リップ部22を、吸着シート8に均等に強圧することができる。
図2および図3に示すように、押圧カップ3は、円板状の基部20と、基部20に連続して後方に向かって湾曲する周回状のリップ部21とで凹面鏡状に構成してある。基部20には、先の軸部13を挿通する挿通孔23が貫通状に形成してあり、基部20とリップ部21とは、弾性を有する軟質樹脂材で一体に形成してある。押圧カップ3が弾性変形していない状態では、周縁リップ部22から基部20の裏面までの前後方向の寸法は、支軸ベース12の前後方向の寸法より大きく設定してあり、これにより、加圧操作体4で押圧カップ3を吸着シート8に向かって弾性変形操作した際に、押圧カップ3が扁平に弾性変形できるようになっている。
リップ部21の厚み寸法は、基部20から周縁リップ部22に行くにしたがって小さくなるように形成してあり、これにより、押圧カップ3が扁平に弾性変形した際に、周縁リップ部22は平滑面31に追随して柔軟に変形しながら吸着シート8周縁寄りを確実に強圧することができる。また、リップ部21の基部20側で確実に弾性復元力を発揮することができる。押圧カップ3が弾性変形した状態においては、吸着シート8の周縁寄りを周縁リップ部22で同心状に強圧するので、吸着シート8の周縁がめくれにくく、吸着シート8と平滑面31との間に空気が侵入するのを防止して、物品支持具の剥落を防止できる。
図1および図3に示すように、加圧操作体4は、支軸体9の軸部13に形成した雄ねじ部14と、雄ねじ部14にねじ込まれる加圧ねじ体25とで構成してある。加圧ねじ体25は、皿状の操作キャップ26と、操作キャップ26の内面中央に形成した円筒状のキャップ軸27とで構成してあり、キャップ軸27の内壁面には雌ねじ部28が形成してある。加圧ねじ体25は、硬質樹脂材で形成してあり、操作キャップ26の周壁外面には、6個のすべり止め突起29が等角度間隔をおいて形成してある。このように、加圧操作体4を、雄ねじ部14と加圧ねじ体25で構成することにより、加圧操作体4の全体構造を簡素化できる。また、加圧ねじ体25を単にねじ込み操作するだけで押圧カップ3を扁平に弾性変形させて、物品支持具を壁面などに的確に吸着固定できる。
加圧操作体4は、待機位置にある加圧ねじ体25を締め込み操作することで作動位置へ変位させることができ、逆に、作動位置から緩め操作することで待機位置へ変位させることができる。加圧操作体4を作動位置に変位させる過程においては、加圧ねじ体25とホルダー2と押圧カップ3の3者が当接した状態で吸着シート8へ向かって変位し、周縁リップ部22が吸着シート8と当接したのちは、基部20が吸着シート8側へ変位して、押圧カップ3は扁平に弾性変形操作される。加圧操作体4の作動位置は、加圧ねじ体25の締め込み限界の位置であり、基部20の裏面側と支軸ベース12の小径部とが当接する位置である。前記作動位置では、吸着体1、ホルダー2、押圧カップ3、および加圧ねじ体25は一体化されている。これにより、加圧操作体4による押圧力を、平滑面31に吸着固定した吸着体1を基礎として周縁リップ部22に作用させて、吸着シート8を強圧することができる。また、押圧カップ3の弾性復元力は、吸着シート8と当接した周縁リップ部22を足場にして、押圧カップ3と一体化された吸着体1に作用し、これにより、吸着シート8を平滑面31の吸着面から離れる向き(前側)へ引寄せることができる。
ここで、物品支持具の固定方法を、梨地状の固着面Wに粘着固定した吸着補助シート5を介して固定する場合について説明する。まず、剥離紙を取り去った吸着補助シート5の粘着材層32を物品支持具を固定する位置に押付け、取付対象に吸着補助シート5を粘着固定する。このとき、固着対象と粘着材層32との間に空気が残留しないように接着することで、吸着補助シート5を強固に固定することができる。固着対象に吸着補助シート5を粘着固定したのち、その平滑面31に吸着体1を仮固定する。吸着体1の仮固定は、剥離紙を取り去りシリコーンゴム層10を露出させた状態で、例えば吸着シート8の右端から左端に向かって順に吸着シート8を平滑面31に接触させ、吸着シート8と平滑面31との間に空気が残留しないように吸着シート8の全体を密着させて仮固定する。
吸着体1を平滑面31に仮固定したのち、押圧カップ3とホルダー2とを順に軸部13に組付け、加圧ねじ体25を雄ねじ部14に軽くねじ込むことで、加圧操作体4を待機位置に組付けることができる。この状態から、所望の向きでホルダー2を支持し、操作キャップ26を摘んで加圧ねじ体25をねじ込むと、加圧ねじ体25とホルダー2と押圧カップ3の3者が当接した状態で吸着シート8へ向かって変位し、まず周縁リップ部22が吸着シート8に当接する。さらに加圧ねじ体25をねじ込むと、リップ部21が弾性変形しながら、3者25・2・3は吸着シート8側へと変位し、基部20の後面側が支軸ベース12の小径部に当接した時点で締め込み限界となり、加圧操作体4は作動位置に変位される。これにて、吸着体1は平滑面31に吸着固定され、物品支持具の固定が完了する。
物品支持具の固定が完了した状態では、扁平に弾性変形された状態の押圧カップ3は、加圧操作体4の押圧力を受けた周縁リップ部22が吸着シート8を強圧するので、吸着シート8を平滑面31に確りと密着させて強固に吸着固定でき、物品支持体2を確実に支持できる物品支持具とすることができる。また、押圧カップ3は平滑面31に追従して弾性変形するので、平滑面31が緩やかな曲面、あるいはうねりがある不整面の場合でも、加圧操作体4の押圧力を受けた押圧カップ3の周縁リップ部22を吸着シート8に強圧して、吸着体1を平滑面31に強固に吸着固定できる。
加えて、押圧カップ3は、その周縁リップ部22が吸着シート8を強圧するのと同時に、自己の弾性復元力を支軸体9に作用させ、吸着シート8を平滑面31から離れる向きへ引寄せて、吸着シート8と平滑面31の吸着面を減圧するので、扁平に弾性変形された押圧カップ3の弾性復元力を利用して、吸着シート8と平滑面31の吸着面を強制的に減圧するので、先の周縁リップ部22による強圧作用とが相俟って、吸着体1を平滑面31にさらに強固に吸着固定できる。
吸着体1を平滑面31に仮固定する際に、吸着シート8と平滑面31との間に僅かに空気が残留した場合には、シート周囲部に残留した空気を指等でシート中央部から吸着シート8の周縁に向かって押出し密着させる。シート中央部は、支軸ベース12が固定されているので、指等で空気を押出すことは困難であり、空気が残留したままで仮固定を完了する。この状態では、吸着シート8と平滑面31との密着面積が空気の残留により減少し、これに起因して全面が密着した状態よりも吸着力が低下している。仮固定が完了したのち、上記と同様に、加圧操作体4を作動位置に変位して、物品支持具の固定を完了する。
吸着シート8と平滑面31との間に僅かに空気が残留した状態で、物品支持具の固定が完了したときには、押圧カップ3の弾性復元力で吸着シート8が平滑面31の吸着面から離れる向き(前側)へ引寄せられて、シート中央部に残留した空気が膨張し、吸着シート8は前側に僅かに変位している。これにより、残留した空気の圧力が大気圧以下に減圧されて吸着力を発生し、吸着シート8の密着面積が減少したことに起因する吸着力の低下を、減圧した空気の吸着力で補完することができ、全体として吸着シート8の吸着力が低下するのを防止できる。
ホルダー2、支軸体9、および加圧ねじ体25を形成する素材としては、硬質ポリ塩化ビニル、ABS樹脂等の硬質樹脂材を挙げることができる。吸着シート8および吸着補助シート5を形成する素材としては、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン等の軟質樹脂製のシート材を挙げることができる。押圧カップ3を形成する素材としては、軟質ポリ塩化ビニル、スチレン・ブタジエンブロックコポリマー等の軟質樹脂材を挙げることができる。また、押圧カップ3は、ウレタンゴム、ニトリルゴム等の合成ゴムを素材として形成することができる。
(第2実施形態) 図4から図6に、本発明に係る物品支持具の第2実施形態を示す。本実施形態では、支軸ベース12を平円板状に形成した点と、押圧カップ3の断面形状をハット形に形成した点と、押圧カップ3とホルダー2との間に、押圧リング34を設けた点が第1実施形態と異なっている。他は第1実施形態と同じであるので、同じ部材に同じ符号を付してその説明を省略する。
支軸体9は、軸部13と、平円板状に形成される支軸ベース12とで構成してあり、軸部13と支軸ベース12とは、硬質樹脂材で一体に形成してある。支軸体9は、支軸ベース12の裏面側が吸着シート8の略中央に接着剤で接着して一体に固定してある。軸部13は、支軸ベース12の前面の中央から前方に向かって突設してあり、その外周面に加圧ねじ体25をねじ込むための雄ねじ部14が形成してある。
押圧カップ3は、円板状の基部20と、基部20に連続して後方に向かって末広がり状に延びる周回状のリップ部21とでハット状に構成してあり、基部20には、先の軸部13を挿通する挿通孔23が貫通状に形成してある。基部20とリップ部21とは、弾性を有する軟質樹脂材で一体に形成してある。
本実施形態の押圧カップ3のリップ部21は、加圧操作体4による弾性変形操作の際に大きく変形するように構成してある。そのため、リップ部21の変形に伴って基部20が変形するのをさらに防止するために、ホルダー2と押圧カップ3との間に押圧リング34が設けてある。押圧リング34は、中央に開口が設けられ、その外形が基部20の外形よりも大きなリング状に形成してある。本実施形態に係る物品支持具の取付方法は、吸着体1を平滑面31に仮固定したのち、ホルダー2と押圧カップ3との間に押圧リング34を軸部13に組付ける点が第1実施形態と異なる。
上記のように本実施形態では、加圧操作体4で押圧カップ3を扁平に弾性変形操作するにしたがって、周縁リップ部22が吸着シート8に強圧した状態で拡径変形するようにしたので、吸着シート8と固着面Wとの間に残留した空気を、周縁リップ部22の拡径変形動作で外側に向かって押し出すことができ、これにより、残留した空気を指等で押し出す手間を省くことができる。
(第3実施形態) 図7において、本発明に係る物品支持具の第3実施形態を示す。本実施形態では、物品支持体2と加圧操作体4を構成する加圧ねじ体25とを一体に形成した点が第1実施形態と異なっている。他は第1実施形態と同じであるので、同じ部材に同じ符号を付してその説明を省略する。
加圧ねじ体25は、皿状の操作キャップ26と、操作キャップ26の内面中央に形成した円柱ブロック状のキャップ軸27とで構成してあり、キャップ軸27の軸心部分に雌ねじ部28が凹み形成してある。物品支持体2はJ字状のフック36で構成されており、操作キャップ26の周壁に連続して形成してある。物品支持体2と加圧ねじ体25とは、硬質樹脂材で一体に形成してある。押圧カップ3は、キャップ軸27の後端面と当接して扁平に弾性変形操作される。
本実施形態に係る物品支持具の取付方法は、平滑面31に仮固定した吸着体1の軸部13に押圧カップ3を組付けたのち、加圧操作体4を待機位置に組付ける点と、押圧カップ3は、キャップ軸27の後端面で押圧される点が第1実施形態と異なる。
上記のように本実施形態では、物品支持体2と加圧操作体4を構成する加圧ねじ体25とを一体に形成したので、物品支持具を構成する部品点数を減らして、全体の製造コストを減少させることができる。
(第4実施形態) 図8および図9に、本発明に係る物品支持具の第4実施形態を示す。本実施形態では、加圧操作体4を、軸部13にピン38を介して傾動可能に連結された加圧カム39で構成した点が第1実施形態と異なっている。他は第1実施形態と同じであるので、同じ部材に同じ符号を付してその説明を省略する。吸着補助シート5は、取付対象の表面が平滑な面である場合には、吸着シート8を密着させることができるので、取付対象の表面を固着面Wとして、吸着補助シート5を省略することができる。
加圧カム39は、軸部13を間に挟む一対のカム板40と、カム板40どうしを橋絡する操作ボス41を一体に備えている。カム板40の周面にはカム面42が形成してあり、カム面42は、第1カム面43と第2カム面44とで構成してある。ピン38は、一対のカム板40で両持ち状に支持して固定してある。軸部13には係止溝45が形成してあり、この溝45にピン38を係止することで、押圧カム39は、支軸体9に連結され、両カム面43・44がホルダー(物品支持体)2の連結部16で受止められる。加圧カム39は、図9に示すように第1カム面43が連結部16に当接する待機位置と、図8に示すように第2カム面44が連結部16に当接する作動位置との間でピン38回りに傾動変位できる。
押圧カム39を傾動変位して作動位置にした状態では、吸着体1、ホルダー2、押圧カップ3、および押圧カム39は一体化されている。これにより、押圧カム39による押圧力を、固着面Wに吸着固定した吸着体1を基礎として周縁リップ部22に作用させて、吸着シート8を強圧することができる。また、押圧カップ3の弾性復元力は、周縁リップ部22を基準に押圧カップ3と一体化された吸着体1に作用し、これにより、吸着シート8を固着面Wの吸着面から離れる向き(前側)へ引寄せることができる。
本実施形態に係る物品支持具の取付方法は、吸着体1を固着面Wに仮固定したのち、押圧カップ3とホルダー2とを順に軸部13に組付け、第1カム面43が連結部16と当接するように、係止溝45にピン38を係止して、加圧カム39を待機位置に組付ける。この状態から、所望の向きでホルダー2を支持し、操作具46を操作ボス41に差込み係合して、加圧カム39を第2カム面44が連結部16と当接するように、傾動変位させて作動位置に切換えることで、押圧カップ3を扁平に弾性変形操作できる。
上記のように本実施形態では、軸部13に連結した加圧カム39のカム作用で押圧カップ3を弾性変形操作するので、加圧カム39を作動位置へ向かって傾動変位するだけの簡単な操作で、押圧カップ3を扁平に弾性変形できる。また、ワンタッチ動作で吸着体1を固着面Wに強固に吸着固定できるので、物品支持具の壁面などに対する着脱を速やかに行える。
(第5実施形態) 図10において、本発明に係る保持具の第5実施形態を示す。本実施形態では、加圧カム39と、物品支持体2を一体に形成した点と、加圧カム39と押圧カップ3との間に、加圧リング47を設けた点が第4実施形態と異なっている。他は第4実施形態と同じであるので、同じ部材に同じ符号を付してその説明を省略する。
物品支持体2はJ字状のフック48で構成されており、一対のカム板40を橋絡する橋絡ブロック49と一体に形成してある。加圧カム39と押圧カップ3との間には、加圧リング47が設けてあり、第1と第2のカム面43・44は、加圧リング47で受止められ、押圧カップ3は加圧リング47で押圧される。待機位置と作動位置の切替えは、フック48を傾動変位して行なう。
上記のように本実施形態では、物品支持体2と加圧カム39とを一体に形成したので、物品支持具を構成する部品点数を減らして、全体の製造コストを減少させることができる。
(第6実施形態) 図11において、本発明に係る保持具の第6実施形態を示す。本実施形態では、加圧ねじ体25を円板状に形成した点と、周縁リップ部22を押圧する保持体51を設けた点と、ホルダー(物品支持体)2を保持体51と固定キャップ55とで挟持固定した点が第1実施形態と異なっている。他は第1実施形態と同じであるので、同じ部材に同じ符号を付してその説明を省略する。
加圧ねじ体25は、中央に雌ねじ部28を貫通状に形成した円板状に形成してある。保持体51は、円板状の連結壁52と、連結壁52の周囲に連続して周回状に形成される周囲壁53とで形成されており、連結壁52の中央に貫通状の雌ねじ部54が形成してある。固定キャップ55は、内面に雌ねじ部56を形成したキャップ状に形成してある。保持体51と固定キャップ55とは、硬質樹脂材で形成してある。
本実施形態に係る物品支持具の取付方法は、吸着体1を固着面Wに仮固定したのち、押圧カップ3と加圧ねじ体25とを順に軸部13に組付け、加圧操作体4を待機位置に組付けたのち、加圧操作体4を作動位置に変位させて押圧カップ3を弾性変形させる。次いで、保持体51を軸部13にねじ込み、加圧ねじ体25と連結壁52とが当接するまで保持体51をねじ込む。このとき、周囲壁53の後周端は、周縁リップ部22と当接し、周縁リップ部22を平坦面31に向かって押圧する。これにて、吸着体1は平滑面31に吸着固定される。こののち、ホルダー2と固定キャップ55とを順に軸部13に組付け、所望の向きでホルダー2を支持した状態で固定キャップ55をねじ込むことで、物品支持具の固定が完了する。
上記のように本実施形態では、保持体51で周縁リップ部22を平滑面31に向かって押圧するので、周縁リップ部22を吸着シート8にさらに強圧することができ、吸着シート8の周縁がめくれにくく、吸着シート8と平滑面31との間に空気が侵入するのを防止して、物品支持具の剥落を防止できる。
上記の各実施形態では、押圧カップ3は、基部20とリップ部21とを一体に形成したがその必要はなく、少なくともリップ部21が弾性変形可能に形成されていればよい。例えば硬質ポリ塩化ビニル製の基部20に、2色成形法で軟質ポリ塩化ビニル製のリップ部21を一体に形成してもよい。物品支持体2を構成するフック17・36・48はJ字状以外に、リング状、ハンガー形状、トレー状等に形成することができる。吸着シート8は、上記の軟質樹脂材のほか、硬質樹脂材、またはアルミニウムやステンレス鋼等の金属薄板で形成することができる。加圧操作体4は、押し込み操作することで、待機位置と作動位置とに切換え操作できるプッシュスイッチ型に構成することができる。シリコーンゴム層10は、シリコーンゴムに代えてシリコーン系以外の熱可塑性エラストマーを適用することができる。