JP2014144820A - 制振ラック倉庫 - Google Patents

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Abstract

【課題】簡便な方法でラックの振動を効果的に低減することにある。
【解決手段】ラックと、前記ラックに設けられ、粘弾性体36と該粘弾性体36に繋げられた重り25とを備える同調マスダンパー22と、を有することを特徴とする。この同調マスダンパー22は、重り25と、重りを支持するための重り支持部30(パレットの受け台部に相当)と、を有している。重りとして、荷物25が用いられている。つまり、荷物25が同調マスダンパー22の重りの役割を果たすようになっている。重り支持部30は、薄板状の粘弾性体36が二つの鉄板32(便宜上、上鉄板33及び下鉄板34と呼ぶ)に上下方向において挟まれた構成を備えている。重り支持部30の上鉄板33の上面には、高摩擦係数を有する滑り止めシート38が貼られている。
【選択図】図3

Description

本発明は、制振ラック倉庫に関する。
ラック倉庫においては、地震等の外力を受けてラックが大きく振動し、荷物が落下する場合があった。かかる場合には、復旧までに長い時間を要し、物流機能が停止するという事態が発生する。
一方で、建物の制振システムとして、同調マスダンパー(TMD(Tuned Mass Damper)とも呼ばれている)が広く知られている。
特開2003−165602号公報
同調マスダンパーをラック倉庫に設けて制振ラック倉庫を形成する場合には、以下の問題点が生じていた。
すなわち、ラックにおいては、荷物の出し入れが行われるため、ラックの固有周期がラックに収納される荷物の増減に応じて頻繁に変化することとなる。一方で、従来例においては、同調マスダンパーを用いて振動を効果的に低減するために、ラックの固有周期に、同調マスダンパーの固有周期を同調させる必要があった。すなわち、同調マスダンパーの固有周期を随時調整することにより、荷物の増減に応じて頻繁に変化するラックの固有周期に、同調マスダンパーの固有周期を同調させる必要があった。
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、その主な目的は、簡便な方法でラックの振動を効果的に低減することにある。
主たる本発明は、ラックと、
前記ラックに設けられ、粘弾性体と該粘弾性体に繋げられた重りとを備える同調マスダンパーと、
を有することを特徴とする制振ラック倉庫ある。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
本発明によれば、簡便な方法でラックの振動を効果的に低減することが可能となる。
本実施の形態に係る制振ラック倉庫10の概略正面図である。 本実施の形態に係る制振ラック倉庫10の概略側面図である。 本実施の形態に係る同調マスダンパー22の概略側面図である。 本実施の形態に係る同調マスダンパー22の概略正面図である。 本実施の形態に係る同調マスダンパー22の概略平面図である。 本実施の形態に係る同調マスダンパー22の第一拡大図である。 本実施の形態に係る同調マスダンパー22の第二拡大図である。 第二実施形態に係る同調マスダンパー22の概略側面図である。 第二実施形態に係る同調マスダンパー22の概略正面図である。 第二実施形態に係る同調マスダンパー22の概略平面図である。 第二実施形態に係る同調マスダンパー22の第一拡大図である。 第二実施形態に係る同調マスダンパー22の第二拡大図である。 本実施の形態に係る制振ラック倉庫10の有効性を説明するための説明図である。 スライダー部材60の構成を説明するための説明図である。 第二実施形態の変形例に係る同調マスダンパー22の概略側面図である。
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも次のことが明らかにされる。
ラックと、
前記ラックに設けられ、粘弾性体と該粘弾性体に繋げられた重りとを備える同調マスダンパーと、
を有することを特徴とする制振ラック倉庫。
かかる場合には、簡便な方法でラックの振動を効果的に低減することが可能となる。
また、前記重りは、前記ラックに収納される荷物であることとしてもよい。
かかる場合には、コスト削減が図れる。
また、前記粘弾性体は、パレットに設けられることとしてもよい。
かかる場合には、ラックの構造が簡易になる。
また、前記粘弾性体は、パレットの受け台部に設けられることとしてもよい。
かかる場合には、汎用のパレットを用いることが可能となる。
また、前記粘弾性体を挟む第一部材及び第二部材を備え、該第一部材と該第二部材との間隔を保持する間隔保持部材を有することとしてもよい。
かかる場合には、粘弾性体の潰れを抑制することが可能となる。
===本実施の形態に係る制振ラック倉庫10について===
図1は、本実施の形態に係る制振ラック倉庫10の概略正面図である。図2は、本実施の形態に係る制振ラック倉庫10の概略側面図である。なお、図2は、図1を白矢印の方向から見たときの図となっている。また、図1及び図2には、便宜上、ラック12の最上部以外に荷物が収納されていない状態の制振ラック倉庫10を表している。
制振ラック倉庫10は、ラック12と、同調マスダンパー22(TMD(Tuned Mass Damper)とも呼ばれている)と、を有している。
ラック12は、荷物(換言すれば、荷物が載置されたパレットである収納物)を収納するためのものである。このラック12は、例えば、形鋼や鋼管材などによる鉄骨構造によって構成されている。また、本実施の形態に係るラック12は、所謂ユニット式のラックであり、倉庫床面上で自立している。
ラック12は、図1及び図2に示すように、鉛直方向に延びたラック支柱14と水平方向に延びた腕木16とにより、複数個の収納部18(碁盤目状に区画された部屋)を形成している。なお、ラック支柱14及び腕木16の間には、適切な剛性を維持するためのブレース部材20が配設されている。
また、ラック12は、複数個のラックユニット21から構成されている。これらのラックユニット21は、図1における左右方向(後述する出し入れ方向)において並んでいる。そして、隣り合うラックユニット21は、頂部をつなぎ材13で連結されており、隣り合うラックユニット21の間には、スタッカークレーン(不図示)の移動路を確保するためのスペース5が設けられている。スタッカークレーンは、前記スペース5内を、鉛直方向及び奥行方向(図2参照)に沿って移動する。そして、複数の収納部18のうちの一に対向する位置で静止して、荷物(収納物)を出し入れ方向(図1参照。図2においては、紙面を貫く方向)に沿って当該収納部18から出したり、当該収納部18へ入れたりする。
また、図2に示すように、各々のラックユニット21においては、奥行方向において、複数(本実施の形態においては6つ)の収納部18が並んでいる(つまり、奥行方向に複数の列が存在する。一方で、出し入れ方向においては、一つのみの収納部18があるだけである)。したがって、ラックユニット21は、奥行方向において長く出し入れ方向において短い形状を有している。
同調マスダンパー22は、ラック12(ラックユニット21)の振動を低減するためのものである。
この同調マスダンパー22は、ラック12(ラックユニット21)の上部(具体的には、図1及び図2に示すように、ラック12(ラックユニット21)の最上部に位置する収納部18)に設けられている。
また、同調マスダンパー22は、複数備えられており、各々の同調マスダンパー22は、ラック12(ラックユニット21)の最上部に位置する各収納部18に設けられている。すなわち、本実施の形態においては、一つの収納部18に、一つの同調マスダンパー22が設けられており、図1に示すように、複数の同調マスダンパー22が出し入れ方向において並び、かつ、図2に示すように、複数の同調マスダンパー22が奥行方向において並ぶように構成されている。
なお、同調マスダンパー22の構成例については、後に詳述する。
<<<本実施の形態に係る同調マスダンパー22の構成例について>>>
図3は、本実施の形態に係る同調マスダンパー22の概略側面図である。図4は、本実施の形態に係る同調マスダンパー22の概略正面図である。図5は、本実施の形態に係る同調マスダンパー22の概略平面図である。図6は、本実施の形態に係る同調マスダンパー22の第一拡大図である。図7は、本実施の形態に係る同調マスダンパー22の第二拡大図である。
なお、図3は、図5のA矢視図である。また、図4は、図5のB矢視図である。また、図5は、図3、図4のC矢視図である。また、図6は、図4の点線囲み部分Dの拡大図である。また、図7は、図5の点線囲み部分Eの拡大図である。
前述したとおり、本実施の形態に係る同調マスダンパー22は、腕木16によって支持され、収納部18に設けられている。すなわち、同調マスダンパー22は、腕木16上に位置している。
この同調マスダンパー22は、重りと、重りを支持するための重り支持部30(パレットの受け台部に相当)と、を有している。
ここで、本実施の形態における同調マスダンパー22においては、重りとして、荷物25(具体的には、荷物25が載置されたパレット26である収納物24)が用いられている。つまり、荷物25(収納物24)が同調マスダンパー22の重りの役割を果たすようになっている。
収納物24(重り)は、収納物24のパレット26と重り支持部30とが接触した状態で、重り支持部30によって支持されている。
重り支持部30は、腕木16に据え付けられている。すなわち、図5に示すように、重り支持部30は、長手方向が出し入れ方向に沿った長尺状の部材であり、その両端部がそれぞれ腕木16に固定されている。なお、図5に示すように、本実施の形態においては、一つの収納部18あたり二つの重り支持部30が備えられている。
重り支持部30は、図3、図4、及び、図6に示すように、薄板状の粘弾性体36(図3乃至図7において、斜線が施された部分)が二つの鉄板32(便宜上、上鉄板33及び下鉄板34と呼ぶ)に上下方向において挟まれた構成を備えている。
粘弾性体36は、一般的な同調マスダンパーのバネ及びダンパーに相当するものである。すなわち、粘弾性体36は、バネ性と減衰性とを備えている。したがって、「粘弾性体」とは広義の粘弾性体であり、例えば、高減衰型積層ゴムもこれに含まれる。なお、本実施の形態においては、図4及び図5に示すように、一つの重り支持部30あたり三つの粘弾性体36が出し入れ方向において並ぶように設けられており、各々の粘弾性体36が、せん断変形することにより、振動を低減する。また、当該粘弾性体36の具体例としては、住友スリーエム製のVEMを挙げることができる。
また、図3、図4、及び、図6に示すように、重り支持部30の上鉄板33の上面には、高摩擦係数を有する滑り止めシート38が貼られている。したがって、収納物24のパレット26は、滑り止めシート38の上に載せられ、滑り止めシート38を介して重り支持部30の上鉄板33と接触している。そのため、地震等が発生した際に、収納物24を上鉄板33と一体的に振動させることが可能となり、粘弾性体36を適切にせん断変形させることが可能となる。
このように、収納物24が重り支持部30に対して滑らないようにするために滑り止めシート38を設けているが、過大な地震が生じた場合には、収納物24が重り支持部30から落下してしまう可能性がある。そして、このことを防止するために、重り支持部30には、図3、図4、及び、図5に示すように、ストッパー40が設けられている。このストッパー40は、収納物24が重り支持部30から落下することを防止するためのものである。本実施の形態においては、ストッパー40として、奥行方向手前側への落下を防止するためのストッパーと、奥行方向奥側への落下を防止するためのストッパーと、出し入れ方向左側への落下を防止するためのストッパーと、出し入れ方向右側への落下を防止するためのストッパーと、が備えられている。
===第二実施形態に係る同調マスダンパー22の構成例について===
次に、第二実施形態に係る同調マスダンパー22の構成例について説明する(なお、上述した構成を有する同調マスダンパー22を第一実施形態とする)。
第二実施形態に係る同調マスダンパー22と第一実施形態に係る同調マスダンパー22との主な相違点は、以下の通りである。すなわち、第一実施形態においては、粘弾性体36が重り支持部30(パレット26の受け台部)に設けられていたのに対し、第二実施形態においては、粘弾性体36がパレット26に(パレット26の内部に)設けられている点である。
具体的な構成について、図8乃至図12を用いて説明する。図8は、第二実施形態に係る同調マスダンパー22の概略側面図である。図9は、第二実施形態に係る同調マスダンパー22の概略正面図である。図10は、第二実施形態に係る同調マスダンパー22の概略平面図である。図11は、第二実施形態に係る同調マスダンパー22の第一拡大図である。図12は、第二実施形態に係る同調マスダンパー22の第二拡大図である。
なお、図8は、図10のA矢視図である。また、図9は、図10のB矢視図である。また、図10は、図8、図9のC矢視図である。また、図11は、図9の点線囲み部分Dの拡大図である。また、図12は、図10の点線囲み部分Eの拡大図である。
第二実施形態に係る同調マスダンパー22も、腕木16によって支持され、収納部18に設けられている。すなわち、同調マスダンパー22は、腕木16上に位置している。
また、この同調マスダンパー22も、第一実施形態と同様、重りと、重りを支持するための重り支持部と、を有している。
第二実施形態における同調マスダンパー22においては、重りとして、荷物25が用いられている。つまり、荷物25が同調マスダンパー22の重りの役割を果たすようになっている。
また、荷物25(重り)は、荷物25と重り支持部とが接触した状態で、重り支持部によって支持されている。ここで、第二実施形態においては、パレット26が重り支持部となっている。すなわち、パレット26が第一実施形態の重り支持部30と同様の役割を果たしている。
パレット26(重り支持部)は、図8、図9、及び、図11に示すように、薄板状の粘弾性体36(図8乃至図12において、斜線が施された部分)が平板52(便宜上、上板53及び下板54と呼ぶ)に上下方向において挟まれた構成を備えている。
上板53は、上から見たときに、略正方形の形状を備えており、荷物25よりも一回り大きい寸法を備えている。
下板54は、図10に示すように、長手方向が出し入れ方向に沿った長尺状の部材である。第二実施形態においては、二つの下板54が、それぞれ、上板53の奥行方向における両端部と(粘弾性体36を挟んで)対向する位置に設けられている。
なお、第二実施形態においても、図9及び図10に示すように、一つのパレット26(重り支持部)あたり三つの粘弾性体36が出し入れ方向において並ぶように設けられており、各々の粘弾性体36が、せん断変形することにより、振動を低減するようになっている。
また、図8、図9、及び、図11に示すように、パレット26(重り支持部)の上板53の上面には、高摩擦係数を有する滑り止めシート38が貼られている。したがって、荷物25は、滑り止めシート38の上に載せられ、滑り止めシート38を介してパレット26(重り支持部)の上板53と接触している。そのため、地震等が発生した際に、荷物25を上板53と一体的に振動させることが可能となり、粘弾性体36を適切にせん断変形させることが可能となる。
このように、荷物25がパレット26(重り支持部)に対して滑らないようにするために滑り止めシート38を設けているが、過大な地震が生じた場合には、荷物25がパレット26(重り支持部)から落下してしまう可能性がある。そして、このことを防止するために、パレット26(重り支持部)には、図8、図9、及び、図10に示すように、ストッパー40が設けられている。このストッパー40は、荷物25がパレット26(重り支持部)から落下することを防止するためのものである。本実施の形態においては、ストッパー40として、奥行方向手前側への落下を防止するためのストッパーと、奥行方向奥側への落下を防止するためのストッパーと、出し入れ方向左側への落下を防止するためのストッパーと、出し入れ方向右側への落下を防止するためのストッパーと、が備えられている。
===本実施の形態に係る制振ラック倉庫10の有効性について===
上述したとおり、本実施の形態に係る制振ラック倉庫10は、ラック12と、ラック12に設けられ、粘弾性体36と該粘弾性体36に繋げられた重りとを備える同調マスダンパー22と、を有している。そのため、簡便な方法でラックの振動を効果的に低減することが可能となる。
前述したとおり、ラック倉庫においては、地震等の外力を受けてラックが大きく振動し、荷物が落下する場合があった。かかる場合には、復旧までに長い時間を要し、物流機能が停止するという事態が発生する。
一方で、建物の制振システムとして、同調マスダンパー(TMD(Tuned Mass Damper)とも呼ばれている)が広く知られている。
しかしながら、同調マスダンパーをラック倉庫に設けて制振ラック倉庫を形成する場合には、以下の問題点が生じていた。
すなわち、ラックにおいては、荷物の出し入れが行われるため、ラックの固有周期がラックに収納される荷物の増減に応じて頻繁に変化することとなる。一方で、従来例においては、同調マスダンパーを用いて振動を効果的に低減するために、ラックの固有周期に、同調マスダンパーの固有周期を同調させる必要があった。すなわち、同調マスダンパーの固有周期を随時調整することにより、荷物の増減に応じて頻繁に変化するラックの固有周期に、同調マスダンパーの固有周期を同調させる必要があった。
これに対し、本実施の形態においては、重りに繋げる部材として粘弾性体36を用いることとした。そのため、ラック12の固有周期が変化して、ラック12の固有周期と同調マスダンパー22の固有周期とが同調しなくなっても(換言すれば、双方の固有周期の同調度合いが小さくなったとしても)、振動低減効果はあまり変化しない。そのため、本実施の形態においては、ラック12の固有周期に同調マスダンパー22の固有周期を同調させるために同調マスダンパー22の固有周期を随時調整する必要がなくなる。
当該事項について、図13を用いて、さらに詳しく説明する。図13は、本実施の形態に係る制振ラック倉庫10の有効性を説明するための説明図である。
図13の横軸(x軸)には、同調マスダンパーの固有周期とラックの固有周期の比(ラックの固有周期/同調マスダンパーの固有周期)が表されている。したがって、x座標が1となる位置においては、双方の固有周期が同調していることとなる(逆に、1から離れると、同調度合いが小さくなる)。
一方で、図13の縦軸(y軸)には、応答倍率が表されている。つまり、y座標の数値が小さいほど(0に近づくほど)、振動が効果的に低減されていることとなる。
図13には、実線、破線、一点鎖線で、三つのグラフが描かれている。実線のグラフが、本実施の形態に係る制振ラック倉庫についてのグラフ(本件例に係るグラフとも呼ぶ)であり、破線のグラフが、従来例に係る制振ラック倉庫についてのグラフ(従来例に係るグラフとも呼ぶ)である。なお、従来例においては、粘弾性体36ではなく、その代わりに通常の積層ゴムを用いている(他の構成は、同様である)。また、参考のため、同調マスダンパーが存在しないラック倉庫についてのグラフ(一点鎖線のグラフ)も、図13に示している。
先ず、従来例に係るグラフ(破線のグラフ)に着目する。当該グラフから明らかなように、従来例においては、同調マスダンパーの固有周期とラックの固有周期とが同調している場合には、大きな振動低減効果を発揮するが(図13中の記号A参照)、双方の固有周期が同調しなくなった場合には(双方の固有周期の同調度合いが小さくなった場合には)、振動低減効果が大きく変化する(具体的には、悪くなる。図13中の記号B参照)。これは、従来例における積層ゴムがバネ性のみで、減衰性を備えていないからである。
したがって、従来例においては、同調マスダンパーを用いて振動を効果的に低減するために、ラックの固有周期に、同調マスダンパーの固有周期を同調させる必要があった。すなわち、同調マスダンパーの固有周期を随時調整することにより、荷物の増減に応じて頻繁に変化するラックの固有周期に、同調マスダンパーの固有周期を同調させる必要があった。そのためには、同調マスダンパーの重りの重さを時々刻々と変化させる必要があるため、手間や時間が膨大にかかり、かかる方法は現実的な方法ではなかった。
一方、本件例に係るグラフ(実線のグラフ)に着目すると、当該グラフから明らかなように、本件例においては、同調マスダンパー22の固有周期とラック12の固有周期とが同調している場合と同調していない場合とで、大きな振動低減効果の差異は存在しない(グラフに従来例に係るグラフに見られたような明確なピークが存在せず、グラフはフラットになる)。すなわち、双方の固有周期が同調しなくなっても(換言すれば、双方の固有周期の同調度合いが小さくなったとしても)、振動低減効果はあまり変化しない。これは、本件例における粘弾性体36がバネ性のみならず減衰性も備えているからである。
そのため、本実施の形態においては、ラック12の固有周期に同調マスダンパー22の固有周期を同調させるために同調マスダンパー22の固有周期を随時調整する必要がなくなる。したがって、簡便な方法でラック12の振動を効果的に低減することが可能となる。
また、本実施の形態においては、粘弾性体36がパレット26に設けられる例(第二実施形態)と粘弾性体36が重り支持部30(パレット26の受け台部)に設けられる例(第一実施形態)とを示したが、第二実施形態は、第一実施形態と比べて、ラック12の構造が簡易になる点で優位性を有する。一方で、第一実施形態は、第二実施形態と比べて、汎用のパレット26を用いることができる点で優位性を有する。
===その他の実施の形態===
上記の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
上記実施の形態においては、一つの重り支持部30あたり三つの粘弾性体36が設けられることとしたが、これに限定されるものではなく、例えば、一つ又は(三つ以外の)複数の粘弾性体36が設けられることとしてもよい。
また、上記実施の形態に係る滑り止めシート38は、同等の滑り止め機能を有するものに置き換え可能である(例えば、シート状のものに限定されない)。 また、上記実施の形態においては、重り12がラック12に収納される荷物であることとしたが、これに限定されるものではなく、例えば、重りは、同調マスダンパー22専用の重りであることとしてもよい。
ただし、重りを、専用の重りではなく荷物とすることにより、専用の重りを省くことが可能となるためコスト削減が図れる点で、上記実施の形態の方が望ましい。
また、当該実施の形態の場合には、重りを、専用の重りではなく荷物とするため、当該重りの重さを変化させて同調マスダンパーの固有周期を随時調整することがより一層難しくなる。そのため、ラック12の固有周期に同調マスダンパー22の固有周期を同調させるために同調マスダンパー22の固有周期を随時調整する必要がない構成、すなわち、粘弾性体36を用いた構成、の作用効果がより有効に発揮される。この点でも、上記実施の形態の方が望ましい。
また、前記粘弾性体36を挟む第一部材と該第二部材(第一実施形態においては、上鉄板33と下鉄板34が、第二実施形態においては、上板53と下板54が、それぞれ相当)との間隔を保持する間隔保持部材の一例としてのスライダー部材60を備えることとしてもよい。
スライダー部材60は、鉛直方向において、上鉄板33(上板53)と下鉄板34(下板54)との間に位置し、水平方向(出し入れ方向)において、前述した三つの粘弾性体36のうちの一の粘弾性体36と当該粘弾性体36と隣り合う他の粘弾性体36との間に位置している。
図14は、スライダー部材60の構成を説明するための説明図である。スライダー部材60は、上側部材62と下側部材64とボール部材66とを備えている。上側部材62と下側部材64は、上鉄板33(上板53)と下鉄板34(下板54)に、それぞれ固定されている。そして、下側部材64には、レール64aが設けられており、上側部材62には、レール64aに嵌った状態でレール64a上を滑ることが可能な窪み部62aが設けられている。また、当該レール64aと窪み部62aとの間には、ボール部材66が備えられており、当該ボール部材66は、窪み部62aがレール64a上をスムーズに滑ることを実現する役割を果たす。
このように構成されたスライダー部材60が、上鉄板33(上板53)と下鉄板34(下板54)との間隔を保持することにより、上鉄板33(上板53)と下鉄板34(下板54)との間に挟まれた粘弾性体36の潰れを抑制することが可能となる。
また、上記実施の形態においては、ラックとして倉庫床面上で自立した所謂ユニット式のラックを例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、ラック12の下部のみならず上部も被固定部材に固定された所謂ビル式のラックであってもよい。そして、ビル式のラックにおいては、鉛直方向における中間部の振動が前記上部や下部よりも大きくなるため、上記実施の形態とは異なり同調マスダンパー22を中間部に置く方がより効果的である。
また、上記実施の形態においては、粘弾性体36と重りとが繋がった構成として、粘弾性体36の上に重りが載置されている形態を示したが、これに限定されるものではなく、例えば、図15のような例であってもよい。図15は、図8に対応した図であり、第二実施形態の変形例に係る同調マスダンパー22の概略側面図である。
当該変形例においても、第二実施形態と同様、パレット26に粘弾性体36が設けられている。しかしながら、第二実施形態とは異なり、粘弾性体36は、奥行方向において、荷物25よりも外側に位置している(荷物25は、粘弾性体36の上にない)。そして、このような変形例も、本発明の範疇である。なお、符号70で示した部材は、粘弾性体36ではなく、ガイド機能と荷重を受ける機能とを併有するガイド兼荷重受け部材70である。
5 スペース
10 制振ラック倉庫
12 ラック
13 つなぎ材
14 ラック支柱
16 腕木
18 収納部
20 ブレース部材
21 ラックユニット
22 同調マスダンパー
24 収納物
25 荷物
26 パレット
30 重り支持部
32 鉄板
33 上鉄板
34 下鉄板
36 粘弾性体
38 滑り止めシート
40 ストッパー
52 平板
53 上板
54 下板
60 スライダー部材
62 上側部材
62a 窪み部
64 下側部材
64a レール
66 ボール部材
70 ガイド兼荷重受け部材

Claims (5)

  1. ラックと、
    前記ラックに設けられ、粘弾性体と該粘弾性体に繋げられた重りとを備える同調マスダンパーと、
    を有することを特徴とする制振ラック倉庫。
  2. 請求項1に記載の制振ラック倉庫であって、
    前記重りは、前記ラックに収納される荷物であることを特徴とする制振ラック倉庫。
  3. 請求項2に記載の制振ラック倉庫であって、
    前記粘弾性体は、パレットに設けられることを特徴とする制振ラック倉庫。
  4. 請求項2に記載の制振ラック倉庫であって、
    前記粘弾性体は、パレットの受け台部に設けられることを特徴とする制振ラック倉庫。
  5. 請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の制振ラック倉庫であって、
    前記粘弾性体を挟む第一部材及び第二部材を備え、該第一部材と該第二部材との間隔を保持する間隔保持部材を有することを特徴とする制振ラック倉庫。
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