JP2014143221A - 回路基板の製造方法、並びに、その製造方法で得られる回路基板 - Google Patents

回路基板の製造方法、並びに、その製造方法で得られる回路基板 Download PDF

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Abstract

【課題】絶縁基材表面に形成したレジストにレーザー光を照射して回路パターンを形成する工程を含む回路基板の製造方法において、凹凸構造体表面へ均一な厚みの樹脂皮膜を形成し、且つ、材料ロスを低減し、結果として非常に信頼性の高い優れた回路基板を得るための製造方法を提供すること。
【解決手段】絶縁基材表面に樹脂皮膜を形成するレジスト形成工程と、樹脂皮膜の外表面を基準として樹脂皮膜の厚み分以上の深さの凹部をレーザー加工により形成して回路パターンを形成する回路形成工程とを含む回路基板の製造方法であって、前記樹脂皮膜が静電噴霧によって形成されている前記回路基板の製造方法の提供。
【選択図】図1

Description

本発明は、回路基板の製造方法、並びに、その製造方法で得られる回路基板に関する。
近年、電気・電子分野における電気回路の高密度化に伴い、配線幅の細線化や配線間隔の狭化が進んでいる。しかし、配線間隔が狭くなるほど、隣接する配線間に短絡やマイグレーションが起こり易くなる。
この問題に対処し得る技術として、特許文献1には、次のような回路基板の製造方法が記載されている。まず、絶縁基材表面に樹脂皮膜(レジスト)を形成する。次に、樹脂皮膜の外表面を基準として樹脂皮膜の厚み分以上の深さの凹部を形成して回路パターンを形成する。次に、回路パターンの表面及び樹脂皮膜の表面にメッキ触媒又はその前駆体を被着させる。次に、絶縁基材から樹脂皮膜を除去する。次に、樹脂皮膜を除去した後のメッキ触媒又はその前駆体が残留する部分にのみ無電解メッキ膜を形成する。この製造方法によれば、高精度な電気回路を絶縁基材上に形成でき、短絡やマイグレーションの発生が抑制された回路基板が得られる。
一方、このような回路基板の製造方法においては、樹脂皮膜を均一の厚みで成膜すること(成膜性)、並びに、薄膜で形成すること(薄膜形成性)が非常に重要となる。
これまでに、平面体への配線形成においては、樹脂皮膜を形成するための方法として、スピンコート法(例えば、特許文献2)やドライフィルムを用いる方法(例えば、特許文献3)が知られている。
特開2010−135768号公報 特開2011−44722号公報 特開2005−266347号公報
しかしながら、スピンコート法ではある程度の薄膜形成が可能であるが、その一方で材料のロスが大きいことや、大判化が困難等の課題がある。さらに、立体への回路形成においては、スピンコートでは、液粘度の調整やスピンコート条件の調整などを行っても、凹凸構造体の表面に均一厚みの樹脂皮膜層を形成することが難しい。
また、構造体の凸頂点部に厚みを確保したい場合には、樹脂液の粘度を高くしたりスピンコート回転数を下げたりする等の方法が考えられるが、この場合は凸構造体の裾部分に液溜まりが発生するという問題がある。液溜まりが発生した場合、レーザー加工においてレジストが除去されずに残存してしまうため、その部分だけ回路が形成されなくなり(回路オープン)、電気回路として機能しなくなってしまう。
一方、液溜まりが発生しないようにするには、液粘度を低くしたりスピンコート回転数を上げたりする等の方法が考えられるが、この場合凸体構造体頂点部分の厚みが極端に薄くなり、場合によっては、樹脂皮膜が形成されずに、オーバーめっきが多発し(回路ショート)、電気回路として機能しなくなってしまう。
また、スプレーコーター(もしくは、カーテンコーター)を使用することも考えられるが、その場合、薄膜形成の制御が困難であったり、吹き付ける粒径が大きいことから厚みムラが大きく、平面体及び凹凸構造体への均一成膜は困難である。
ドライフィルムを用いる方法においても、薄膜ドライフィルム化するのにコストがかかることや、凹凸形状に追従して貼りあわせることが困難であり、こちらも凹凸構造体への樹脂皮膜形成には適さない。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、上述したような課題を解決する為に、上記に変わる樹脂皮膜形成方法を用いて、凹凸構造体表面へ均一な厚みの樹脂皮膜を形成し、且つ、材料ロスを低減し、結果として非常に信頼性の高い優れた回路基板を提供するためのものである。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、以下の手段により前記課題を解決できることを見出した。
本発明の一局面は、絶縁基材表面に樹脂皮膜を形成するレジスト形成工程と、樹脂皮膜の外表面を基準として樹脂皮膜の厚み分以上の深さの凹部をレーザ加工により形成して回路パターンを形成する回路形成工程とを含む回路基板の製造方法であって、前記樹脂皮膜が静電噴霧によって形成されている前記回路基板の製造方法である。
前記樹脂皮膜としては、比誘電率2以上の誘電性を有する溶媒を少なくとも1種含有するレジスト用樹脂組成物を用いることが好ましい。
さらに、前記樹脂皮膜として、粘度が400mPas以下であるレジスト用樹脂組成物を用いることが好ましい。
本発明の他の一局面は、前記製造方法により製造された回路基板である。
本発明によれば、回路基板の製造方法における樹脂皮膜形成において、材料を無駄に失うことなく、凹凸構造体表面にも均一な厚みの樹脂皮膜を薄膜形成することができ、信頼性の高い優れた回路基板を高い生産性で得ることができる。
図1は、本発明の実施形態に係る回路基板の製造方法の工程図である。 図2は、平面に対する静電噴霧の態様を示す概略図である。 図3は、立体面に対する静電噴霧の態様を示す概略図である。 実施例における樹脂皮膜の厚みの測定点を示した図である。
本実施形態に係る回路基板の製造方法は、絶縁基材表面に樹脂皮膜を形成するレジスト形成工程と、樹脂皮膜の外表面を基準として樹脂皮膜の厚み分以上の深さの凹部をレーザー加工により形成して回路パターンを形成する回路形成工程とを含む回路基板の製造方法であって、前記樹脂皮膜が静電噴霧によって形成されていることを特徴とする。
本実施形態に係る回路基板の製造方法は、上記構成を有するものであれば、その他の工程は特に限定はされないが、以下にその実施態様の一つを図1を用いて具体的に示す。
まず、図1に示すように、本実施形態に係る回路基板10の製造方法は、絶縁基材1の表面に樹脂皮膜(レジスト)2を形成するレジスト形成工程(A)と、樹脂皮膜2の外表面を基準として樹脂皮膜2の厚み分以上の深さの凹部3,4をレーザー加工により形成して回路パターンを形成する回路形成工程(B)と、回路パターンの表面及び樹脂皮膜2の表面にメッキ触媒5又はその前駆体を被着させる触媒被着工程(C)と、絶縁基材1から樹脂皮膜2を除去する皮膜除去工程(D)と、樹脂皮膜2を除去した後のメッキ触媒5又はその前駆体が残留する部分にのみ無電解メッキ膜6を形成するメッキ処理工程(E)とを備える。
そして、図1(A)に示すように、レジスト形成工程では、絶縁基材1の表面に樹脂皮膜2を形成する。
次に、図1(B)に示すように、回路形成工程では、樹脂皮膜2の外表面を基準として樹脂皮膜2の厚み分以上の深さの凹部3,4をレーザー加工により形成して回路パターンを形成する。回路パターンとしては、絶縁基材1の表面まで到達する凹部であってもよいが、最終的に得られる電気回路6が脱離し難い等の観点からは、図示したように、絶縁基材1を掘り込んだ凹部がより好ましい。
図中、符号3は、回路パターンを構成する回路溝、符号4は、同じく回路パターンを構成する貫通孔である。これらの回路溝3及び貫通孔4により、無電解メッキ膜6、すなわち電気回路が形成される部分が規定される。以下、回路パターンとして回路溝3を中心に説明するが、貫通孔4においても状況は同様である。
次いで、図1(C)に示すように、触媒被着工程では、回路溝3の表面及び回路溝3が形成されなかった樹脂皮膜2の表面にメッキ触媒5又はその前駆体を被着させる。
次に、図1(D)に示すように、皮膜除去工程では、絶縁基材1から樹脂皮膜2を除去する。この結果、絶縁基材1の表面のうち、回路溝3が形成された部分の表面にのみメッキ触媒5又はその前駆体が残留する。一方、樹脂皮膜2の表面に被着されたメッキ触媒5又はその前駆体は、樹脂皮膜2に担持された状態で、樹脂皮膜2と共に除去される。
そして、図1(E)に示すように、メッキ処理工程では、樹脂皮膜2が除去された絶縁基材1に無電解メッキを施す。この結果、メッキ触媒5又はその前駆体が残留する部分にのみ無電解メッキ膜6が形成される。すなわち、回路溝3が形成された部分に電気回路6となる無電解メッキ膜が形成される。電気回路6は、無電解メッキ膜のみからなるものであってもよいし、無電解メッキ膜にさらに無電解メッキ(フィルアップメッキ)を施して、メッキ膜をさらに厚膜化したものであってもよい。例えば、図示したように、回路溝3や貫通孔4の全体を埋めるように無電解メッキ膜からなる電気回路6を形成し、絶縁基材1と電気回路6との段差を解消するようにしてもよい。
前記各工程(A)〜(E)によって、図1(E)に示すような回路基板10が製造される。この回路基板10は、絶縁基材1上に高精度な電気回路6が形成されており、短絡やマイグレーションの発生が抑制されるものである。
以下、上記各工程を、とりわけ材料および樹脂皮膜の成膜法を主として、さらに具体的に説明する。
<絶縁基材>
絶縁基材1は、回路基板の製造に用い得るものであれば、特に限定されない。例えば、樹脂を含む樹脂基材等が挙げられる。
樹脂基材としては、回路基板、例えば、多層回路基板の製造に用い得る各種有機基板が特に限定なく採用可能である。有機基板の具体例としては、従来から多層回路基板の製造に使用される、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、シアネート樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、ビスマレイミド樹脂等からなる基板が挙げられる。
エポキシ樹脂としては、回路基板の製造に用い得る各種有機基板を構成するエポキシ樹脂であれば、特に限定されない。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、アラルキルエポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化物、トリグリシジルイソシアヌレート、脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。さらに、難燃性を付与するために、臭素化又はリン変性したエポキシ樹脂、窒素含有樹脂、シリコーン含有樹脂等も挙げられる。これらの樹脂は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
各樹脂で基材を構成する場合、一般的に、硬化させるために、硬化剤を含有させる。硬化剤としては、硬化剤として用い得るものであれば、特に限定されない。例えば、ジシアンジアミド、フェノール系硬化剤、酸無水物系硬化剤、アミノトリアジンノボラック系硬化剤、シアネート樹脂等が挙げられる。フェノール系硬化剤としては、例えば、ノボラック型、アラルキル型、テルペン型等が挙げられる。さらに、難燃性を付与するために、リン変性したフェノール樹脂又はリン変性したシアネート樹脂等も挙げられる。これらの硬化剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、特に限定されないが、回路形成工程(B)ではレーザー加工により回路パターンが形成されることから、例えば100〜400nmの波長領域でのレーザー光の吸収率が高い樹脂等を用いることが好ましい。例えば、ポリイミド樹脂等が挙げられる。
絶縁基材1には、フィラーを含有してもよい。フィラーとしては、無機微粒子であっても、有機微粒子であってもよく、特に限定されない。フィラーを含有することによって、レーザー加工部にフィラーが露出し、露出したフィラーの凹凸によって、メッキと樹脂との密着度が向上する。
無機微粒子を構成する材料としては、例えば、酸化アルミニウム(Al)、酸化マグネシウム(MgO)、窒化ホウ素(BN)、窒化アルミニウム(AlN)、シリカ(SiO)、チタン酸バリウム(BaTiO)、酸化チタン(TiO)等の高誘電率充填材;ハードフェライト等の磁性充填材;水酸化マグネシウム(Mg(OH))、水酸化アルミニウム(Al(OH))、三酸化アンチモン(Sb)、五酸化アンチモン(Sb)、グアニジン塩、ホウ酸亜鉛、モリブテン化合物、スズ酸亜鉛等の無機系難燃剤;タルク(Mg(Si10)(OH))、硫酸バリウム(BaSO)、炭酸カルシウム(CaCO)、雲母等が挙げられる。これらの無機微粒子は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの無機微粒子は、熱伝導性、比誘電率、難燃性、粒度分布、色調の自由度等が高いことから、所望の機能を選択的に発揮させる場合には、配合及び粒度設計を適宜行うことにより、容易に高充填化を行うことができる。また、特に限定はされないが、絶縁基材1の厚み以下の平均粒径のフィラーを用いるのが好ましく、例えば0.01〜10μm、より好ましくは0.05μm〜5μmの平均粒径のフィラーを用いるのがよい。
絶縁基材1中での無機微粒子の分散性を高めるために、無機微粒子をシランカップリング剤で表面処理してもよく、シランカップリング剤を絶縁基材1に配合してもよい。シランカップリング剤としては、特に限定されない。例えば、エポキシシラン系、メルカプトシラン系、アミノシラン系、ビニルシラン系、スチリルシラン系、メタクリロキシシラン系、アクリロキシシラン系、チタネート系等のシランカップリング剤等が挙げられる。これらのシランカップリング剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、絶縁基材1中での無機微粒子の分散性を高めるために、分散剤を絶縁基材1に配合してもよい。分散剤としては、特に限定されない。例えば、アルキルエーテル系、ソルビタンエステル系、アルキルポリエーテルアミン系、高分子系等の分散剤等が挙げられる。これらの分散剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<樹脂皮膜>
樹脂皮膜2は、メッキ触媒5又はその前駆体をレーザー加工した部分にのみ被着させ残留させるためのレジストである。樹脂皮膜2は、後述する静電噴霧によってレジスト形成できるものであり、かつ触媒被着工程(C)では除去されず、皮膜除去工程(D)では除去可能なものであれば、特に限定されない。
例えば、有機溶剤やアルカリ溶液により容易に溶解し得る可溶型樹脂や、後述する膨潤液(例えば皮膜除去工程で用いられるアルカリ性溶液等)で膨潤し得る樹脂からなる膨潤性樹脂皮膜等が挙げられる。
さらに、これらの樹脂皮膜に用いられる樹脂は、後述する静電噴霧によってレジスト形成するために、比誘電率2以上の誘電性を有する溶媒を少なくとも1種以上含んでいることが好ましい。比誘電率が2以上であれば、静電噴霧を問題なく行うことができるが、好ましくは比誘電率が4以上、より好ましくは8以上である溶媒を用いる。
また、本実施形態において樹脂皮膜に用いられる樹脂は、粘度が400mPas以下であることが望ましい。樹脂の粘度が400mPas以下であれば、静電噴霧を問題なく行うことができるが、好ましくは粘度が200以下、より好ましくは100以下である樹脂を用いる。このような樹脂の粘度は、樹脂に配合する溶媒の種類や量を調整することによって調節することが可能である。なお、本実施態様において、上記粘度は25℃の条件で測定したものである。
溶媒の比誘電率が上記より低すぎたり、樹脂の粘度が上記より高すぎたりすると、静電噴霧において噴霧が行われず、皮膜形成を行うことができなくなるおそれがある。
樹脂皮膜2の厚みとしては、10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましく、3μm以下であることがさらに好ましい。また、樹脂皮膜2の厚みとしては、0.1μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であることがより好ましく、1μm以上であることがさらに好ましい。樹脂皮膜2の厚みが厚すぎる場合には、回路形成工程(B)におけるレーザー加工によって形成される回路溝3や貫通孔4等の回路パターンの精度が低下したり、均一な膜厚の樹脂皮膜2を形成し難くなったりする傾向がある。樹脂皮膜の厚みが薄すぎる場合には、メッキ触媒5又はその前駆体を被着させる際に樹脂皮膜2が剥がれてしまって不要な部分にメッキが形成される可能性が生じる。
本実施形態では、樹脂皮膜2(レジスト)は、レーザー加工性、耐酸性、アルカリ剥離性の全てで優れる特性を有することが望まれる。本実施形態では、そのような観点から、(i)少なくとも1つ以上のカルボキシル基を有するモノマー単位を含有する単量体と、(ii)この単量体と共重合可能な分子末端に不飽和結合を有する単量体とからなる共重合体をレジスト2を構成するポリマーの成分とすることが好ましい。
本実施形態では、樹脂皮膜2のレーザー加工性は、例えば、樹脂皮膜2の絶縁基材1への密着性が高いことや、ポリマーの分子切断が起こり易いこと等によって、向上すると考えられる。
本実施形態では、樹脂皮膜2の耐酸性は、例えば、樹脂皮膜2の絶縁基材1への密着性が高いことや、ポリマーが酸性の官能基を持つこと等によって、向上すると考えられる。
本実施形態では、樹脂皮膜2のアルカリ剥離性は、例えば、ポリマーが酸性の官能基を持つことや、ポリマーがアルカリ溶解性を持つことや、ポリマーが嵩高い官能基を持つこと等によって、向上すると考えられる。
前記のような観点から、本実施形態では、ポリマーは、前記単量体(i)として、α,β−不飽和カルボニル基含有単量体を、10〜90質量%含み、前記単量体(ii)として、単量体(i)と共重合可能な分子末端に重合性不飽和基を有する単量体を、10〜90質量%含む、少なくとも2元系以上の共重合体であることが好ましい。このような構成のポリマーは、レーザー加工性、耐酸性、アルカリ剥離性の全てで優れる樹脂皮膜2を提供し得る。
前記ポリマーにおいて、α,β−不飽和カルボニル基含有単量体(i)は、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸及びこれらのエステル化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。得られるポリマーのレーザー加工性、耐酸性、アルカリ剥離性がより一層良好となる。
前記ポリマーにおいて、分子末端に重合性不飽和基を有する単量体(ii)は、スチレン及びジエン骨格を有する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。得られるポリマーのレーザー加工性、耐酸性、アルカリ剥離性がより一層良好となる。
前記ポリマーにおいて、ポリマーの重量平均分子量は5,000〜1,000,000であることが好ましい。ポリマーの重量平均分子量が1,000,000以下であるから、レジストの良好な剥離性が確保される。ポリマーの重量平均分子量が5,000以上であるから、レジストの良好な耐酸性が確保される。
前記のような構成のポリマーの具体例の1つとして、アクリル酸−スチレン−アクリル酸アルキルの3元系共重合ポリマーを挙げることができる。このポリマーはランダム共重合体である。3元の配合比として、例えば、アクリル酸27質量%、スチレン55質量%、アクリル酸アルキル18質量%を1例として挙げることができる。アクリル酸アルキルとしては、例えば、アクリル酸2−エチルヘキシルが挙げられる。
さらに、樹脂被膜2にはフィラーを含有させてもよい。フィラーとしては特に限定されないが、具体的には、例えば、シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、クレー、カオリン、酸化チタン、硫酸バリウム、アルミナ、酸化亜鉛、タルク、マイカ、ガラス、チタン酸カリウム、ワラストナイト、硫酸マグネシウム、ホウ酸アルミニウム、有機フィラー等が挙げられる。またレジストの厚みは、一般的に1〜10μmと薄いため、フィラーサイズも小さいものが好ましい。平均粒径が小さく、粗粒をカットしたものを用いることが良いが、分散時に砕いたり、ろ過で粗粒を除去することもできる。
その他の添加剤としては、例えば、光重合性樹脂(光重合開始剤)、重合禁止剤、着色剤(染料、顔料、発色系顔料)、熱重合開始剤、エポキシやウレタンなどの架橋剤等が挙げられる。
本発明のプリント板加工プロセスでは、例えば、レーザー加工が用いるが、レーザー加工の場合、樹脂被膜材料にレーザーによるアブレーション性を付与することが必要である。レーザー加工機は、例えば、炭酸ガスレーザやエキシマレーザ、UV−YAGレーザー等が選定される。これらのレーザー加工機は、種々の固有の波長を持っており、この波長に対して吸収率の高い材料にすることで、生産性を向上させることができる。そのなかでもUV−YAGレーザーは微細加工に適しており、レーザー光の基本波長は1064nm、3倍高調波は355nm、4倍高調波は266nmであるため、樹脂被膜材料としては、これらの波長に対して、吸収率が高いことが望ましい。一方、吸収率がある程度低い材料のほうが好ましい場合もある。具体的には、例えば、UV吸収率の低い樹脂被膜を用いると、UV光が樹脂被膜を透過するので、下地の絶縁層加工にエネルギを集中させることができる。すなわち、レーザー光の吸収率によって、利点が異なるので、状況に応じて、樹脂被膜のレーザー光の吸収率を調整した樹脂被膜を用いてもよい。
本実施形態では、樹脂被膜2は、上述したようなポリマー(及び、必要に応じてその他の添加剤)を溶媒に配合した液体材料によって形成され得る。このような溶媒としては、上述した通り、比誘電率2以上の誘電性を有する溶媒を少なくとも1種以上含んでいる溶媒を用いることが好ましい。また、樹脂皮膜に用いられる樹脂は、静電噴霧の行いやすいという観点から、粘度が400mPas以下であることが望ましいため、樹脂の粘度が400mPas以下となるように、樹脂に配合する溶媒の種類や量を適宜調整することが望ましい。
より具体的には、本実施形態において、用いられ得る溶媒としては、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、ジエチルエーテル、クロロホルム、酢酸エチル、テトロヒドロフラン、塩化メチレン、アセトン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルスルホキシド、1−ブタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、エタノール、メタノール、ギ酸、水等が挙げられる。
また、樹脂の粘度を400mPas以下とする実施態様としては、例えば、上記ポリマーを固形分10〜30%の有機溶媒(IPA等)の溶液として使用すること等が挙げられる。
本実施形態において、樹脂皮膜2は、絶縁基材1の表面に、上述したような樹脂皮膜2を形成し得る液状材料を静電噴霧により塗布した後、乾燥させることによって形成される。
本実施形態において、樹脂被膜を形成するのに用いる静電噴霧法とは、図2および図3などに示すように、静電気によって、非常に細かいノズルより噴霧粒径を微粒化して薄膜を形成する方法である。図2に示すように、ノズル11から出された前記液体材料は、静電気力により液面の表面張力を破り破裂し、分子が反発しあって、凝集せずに基板1に樹脂皮膜2となって形成される。図2は平面な基板1に対する静電噴霧を示しているが、図3のように立体面の基板1に対する静電噴霧であっても同様に、液体材料は凝集することなく基板上に均一に樹脂皮膜2となって形成される。
なお、このような静電噴霧は、例えば、市販の装置を用いて行うことが可能であり、具体例としては、アピックヤマダ株式会社製の静電噴霧装置(「ZZ114−1」)などが利用可能である。
<回路形成工程>
回路形成工程は、絶縁基材1に回路溝3等の回路パターンを形成する工程である。回路パターンとしては、上述したように、回路溝3だけではなく、前記樹脂皮膜2を前記絶縁基材1の表面にまで到達する凹部であってもよく、貫通孔4であってもよい。
前記回路パターンを形成する方法としては、特に限定されない。具体的には、例えば、前記樹脂皮膜2が形成された絶縁基材1に、前記樹脂皮膜2の外表面側から、レーザー加工、及びダイシング加工等の切削加工や型押加工等の機械加工等を施すことにより、所望の形状及び深さの回路溝3を形成させる方法等が挙げられる。高精度の微細な回路を形成する場合には、レーザー加工を用いることが好ましい。レーザー加工によれば、レーザーの出力等を変化させることにより、切削深さ等を自由に調整することができる。また、型押加工としては、例えば、ナノインプリントの分野において用いられるような微細樹脂型による型押加工が好ましく用い得る。
レーザー加工の場合、UV−YAGレーザーが微細加工に適しており、レーザー光の基本波長が1064nm、3倍高調波が355nm、4倍高調波が266nmのものが好ましく用い得る。
回路溝3の一部として、ビアホール等を形成するための貫通孔4を形成してもよい。
この工程により、回路溝3の形状及び深さや貫通孔4の径及び位置等の回路パターンの形状が規定される。回路形成工程は、樹脂皮膜2の厚み分以上掘り込めばよく、樹脂皮膜2の厚み分掘り込んでもよいし、樹脂皮膜2の厚み分を超えて掘り込んでもよい。
回路形成工程で形成される回路溝3等の回路パターンの幅は特に限定されない。なお、レーザー加工を用いた場合には、線幅20μm以下のような微細な回路も容易に形成できる。また、回路溝の深さは、フィルアップメッキにより、電気回路と絶縁基材とに段差をなくした場合には、本実施形態で形成する電気回路の深さとなる。
<触媒被着工程>
触媒被着工程は、前記回路溝3等の回路パターンの表面及び前記樹脂皮膜2の表面にメッキ触媒5又はその前駆体を被着させる工程である。このとき、貫通孔4が形成されている場合、貫通孔4内壁表面にもメッキ触媒又はその前駆体を被着される。
メッキ触媒5又はその前駆体は、メッキ処理工程において無電解メッキにより無電解メッキ膜を形成したい部分にのみ無電解メッキ膜を形成させるために付与される触媒である。メッキ触媒としては、無電解メッキ用の触媒として知られたものであれば特に限定なく用いられうる。また、予めメッキ触媒の前駆体を被着させ、樹脂皮膜の除去後にメッキ触媒を生成させてもよい。メッキ触媒の具体例としては、例えば、金属パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)等、または、これらを生成させるような前駆体等が挙げられる。
メッキ触媒5又はその前駆体を被着させる方法としては、例えば、pH1〜3の酸性条件下で処理される酸性Pd−Snコロイド溶液で処理した後、酸溶液で処理するような方法等が挙げられる。具体的には、例えば、次のような方法が挙げられる。
はじめに、回路溝3及び貫通孔4が形成された絶縁基材1の表面に付着している油分等を界面活性剤の溶液(クリーナー・コンディショナー)中で所定の時間湯洗する。次に、必要に応じて、過硫酸ナトリウム−硫酸系のソフトエッチング剤でソフトエッチング処理する。そして、pH1〜2の硫酸水溶液や塩酸水溶液等の酸性溶液中でさらに酸洗する。次に、濃度0.1%程度の塩化第一錫水溶液等を主成分とするプリディップ液に浸漬して絶縁基材1表面に塩化物イオンを吸着させるプリディップ処理を行う。その後、塩化第一錫と塩化パラジウムを含む、pH1〜3の酸性Pd−Snコロイド等の酸性メッキ触媒コロイド溶液にさらに浸漬することによりPd及びSnを凝集させて吸着させる。そして、吸着した塩化第一錫と塩化パラジウムとの間で、酸化還元反応(SnCl+PdCl→SnCl+Pd↓)を起こさせる。これにより、メッキ触媒である金属パラジウムが
析出する。
なお、酸性メッキ触媒コロイド溶液としては、公知の酸性Pd−Snコロイドキャタリスト溶液等が使用でき、酸性メッキ触媒コロイド溶液を用いた市販のメッキプロセスを用いてもよい。このようなプロセスは、例えば、ローム・アンド・ハース電子材料株式会社からシステム化されて販売されている。
このような触媒被着処理によって、前記回路溝3の表面、前記貫通孔4の内壁表面、及び前記樹脂皮膜2の表面にメッキ触媒5又はその前駆体を被着させることができる。
<皮膜除去工程>
皮膜除去工程は、前記触媒被着工程を施した絶縁基材1から前記樹脂皮膜2を除去する
工程である。
前記樹脂皮膜2を除去する方法としては、特に限定されない。具体的には、例えば、所定の溶液(膨潤液)で前記樹脂皮膜2を膨潤させた後に、前記絶縁基材1から前記樹脂皮膜2を剥離させる方法、所定の溶液(膨潤液)で前記樹脂皮膜2を膨潤させ、さらに一部を溶解させた後に、前記絶縁基材1から前記樹脂皮膜2を剥離させる方法、及び所定の溶液(膨潤液)で前記樹脂皮膜2を溶解させて除去する方法等が挙げられる。前記膨潤液としては、前記樹脂皮膜2を膨潤させることができるものであれば、特に限定されない。また、前記膨潤又は溶解は、前記樹脂皮膜2で被覆された前記絶縁基材1を前記膨潤液に所定時間浸漬させること等によって行う。そして、その浸漬中に超音波照射することにより除去効率を高めてもよい。なお、膨潤させて剥離するときには、軽い力で引き剥がしてもよい。
また、前記樹脂皮膜2として、前記膨潤性樹脂皮膜を用いた場合について、説明する。
前記膨潤性樹脂皮膜2を膨潤させる液体(膨潤液)としては、前記絶縁基材1、及び前記メッキ触媒又はその前駆体5を実質的に分解又は溶解させることなく、前記膨潤性樹脂皮膜2を膨潤又は溶解させることができる液体であれば特に限定なく用いられうる。また、前記膨潤性樹脂皮膜2を容易に剥離される程度に膨潤させうる液体が好ましい。このような膨潤液は、膨潤性樹脂皮膜2の種類や厚みにより適宜選択されうる。具体的には、例えば、膨潤性樹脂皮膜がジエン系エラストマー、アクリル系エラストマー、及びポリエステル系エラストマーのようなエラストマーや、(a)分子中に重合性不飽和基を少なくとも1個有するカルボン酸又は酸無水物の少なくとも1種類以上の単量体と(b)前記(a)単量体と重合しうる少なくとも1種類以上の単量体を重合させることで得られる重合体樹脂又は前記重合体樹脂を含む樹脂組成物、カルボキシル基含有アクリル系樹脂から形成されている場合には、例えば、1〜10%程度の濃度の水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ水溶液が好ましく用いられうる。
なお、触媒被着工程において上述したような酸性条件で処理するメッキプロセスを用いた場合には、膨潤性樹脂皮膜2が、酸性条件下においては膨潤度が50%未満、好ましくは40%以下であり、アルカリ性条件下では膨潤度が50%以上であるような、例えば、ジエン系エラストマー、アクリル系エラストマー、及びポリエステル系エラストマーのようなエラストマー、(a)分子中に重合性不飽和基を少なくとも1個有するカルボン酸又は酸無水物の少なくとも1種類以上の単量体と(b)前記(a)単量体と重合しうる少なくとも1種類以上の単量体を重合させることで得られる重合体樹脂又は前記重合体樹脂を含む樹脂組成物、カルボキシル基含有アクリル系樹脂から形成されていることが好ましい。このような膨潤性樹脂皮膜は、pH12〜14であるようなアルカリ水溶液、例えば、1〜10%程度の濃度の水酸化ナトリウム水溶液等により容易に膨潤し、剥離する。なお、剥離性を高めるために、浸漬中に超音波照射してもよい。また、必要に応じて軽い力で引き剥がすことにより剥離してもよい。
膨潤性樹脂皮膜2を膨潤させる方法としては、膨潤液に、膨潤性樹脂皮膜2で被覆された絶縁基材1を所定の時間浸漬する方法が挙げる。また、剥離性を高めるために、浸漬中に超音波照射することが特に好ましい。なお、膨潤のみにより剥離しない場合には、必要に応じて軽い力で引き剥がしてもよい。
<メッキ処理工程>
メッキ処理工程は、前記樹脂皮膜2を除去した後の前記絶縁基材1に無電解メッキ処理を施す工程である。
前記無電解メッキ処理の方法としては、部分的にメッキ触媒又はその前駆体5が被着された絶縁基材1を無電解メッキ液に浸漬して、メッキ触媒又はその前駆体5が被着された部分のみに無電解メッキ膜(メッキ層)を析出させるような方法等が用いられうる。
無電解メッキに用いられる金属としては、例えば、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、アルミニウム(Al)等が挙げられる。これらの中では、Cuを主成分とするメッキが導電性に優れている点から好ましい。また、Niを含む場合には、耐食性や、はんだとの密着性に優れる点から好ましい。
無電解メッキ膜6の膜厚は、特に限定されない。具体的には、例えば、0.1〜10μm、さらには1〜5μm程度であることが好ましい。特に、前記回路溝3の深さを深くすることにより、膜厚の厚いメッキであって、断面積が大きい金属配線を容易に形成することができる。この場合には、金属配線の強度を向上させることができる点から好ましい。
メッキ処理工程により、絶縁基材1表面のメッキ触媒又はその前駆体5が残留する部分のみに無電解メッキ膜が析出する。そのために、回路パターン部を形成したい部分のみに正確に導電層を形成することができる。一方、回路パターン部を形成していない部分に対する無電解メッキ膜の析出を抑制することができる。従って、狭いピッチ間隔で線幅が狭いような微細な回路を複数本形成するような場合でも、隣接する回路間に不要なメッキ膜が残らない。そのために、短絡の発生やマイグレーションの発生を抑制することができる。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。なお、本発明の範囲は、以下の実施例により何ら限定されて解釈されるものではない。
(試験例1:平面への樹脂被膜形成)
まず表面が出来る限りフラットなテストピース(絶縁基材:当社開発品)を作製し、各テストピースの片面に対してそれぞれ、静電噴霧法(アピックヤマダ株式会社製静電噴霧装置「ZZ114−1」)(実施例1)、スピンコート法(ミカサ株式会社製、1H−2D、回転速度300rpm−20秒+3000rpm−20秒)(比較例1)、スプレーコート法(山中セミコンダクター株式会社製デモ機)(比較例2)、ドライフィルム(比較例3)を用いて、平面への樹脂被膜形成性を確認した。
なお、樹脂被膜材料としては、アクリル酸−スチレン−アクリル酸2−エチルヘキシルの3元系共重合ポリマー(配合比:アクリル酸27質量%、スチレン55質量%、アクリル酸2−エチルヘキシル18質量%)を含有するレジスト用樹脂組成物を用いた。なお、レジスト用樹脂組成物の溶媒としてはイソプロピルアルコール(比誘電率18)を用いて、粘度が10mPasで、固形分10%の溶液とした。ドライフィルム(比較例3)については、上記樹脂被膜材料をPETフィルム上に塗布乾燥して形成したドライフィルムを用いた。
均一性膜性、薄膜形成性については、樹脂被膜形成後のテストピースを断面観察することによって評価を行った。
レーザー加工不良に関しては樹脂被膜形成後に、UV−YAGレーザー(ESI社製5330機)(レーザー光波長:355nm)を用いて溝加工を行った後、デジタルマイクロスコープ(Hirox社製KH−7700)を用いて加工不良の有無を確認した。
各評価基準については以下の通りである。
1.均一成膜性
成膜サンプルのクロスセクションより判断した。成膜表面が平坦であれば◎、平坦でなければ×とした。
2.薄膜形成性
成膜サンプルのクロスセクションより判断した。厚み3μm以下の薄膜が形成出来れば◎、3〜5μmであれば○、5μm以上であれば×とした。
3.レーザー加工不良
成膜サンプルをUV−YAGレーザーを用いて溝加工実施し、加工後、溝部への樹脂被膜の付着箇所が0箇所の場合◎、1〜2箇所の場合△、3箇所以上の場合×とした。
結果を表1に示す。
Figure 2014143221
表1より、静電噴霧及びスピンコートを用いた場合、均一成膜性・薄膜形成性・レーザー加工不良ともに良好であることがわかった。ドライフィルムの場合は、均一成膜性は高いが、5μm以下の薄膜を形成するのは難しくなることがわかった。
また、静電噴霧とスピンコートを比較すると、静電噴霧は成膜したい箇所のみに材料を噴霧するのに対し、スピンコートは、余計な材料を飛ばし、除去することで成膜するため、静電噴霧と比較して材料ロスが非常に多くなる。よって平面への樹脂被膜形成には静電噴霧を用いることがより好ましいと考えられる。
(試験例2:立体への樹脂被膜形成)
次に、立体への樹脂被膜形成について検討を行った。上辺が60μm、下辺が180μm、高さが100μm、長さが1mmの突起を有するテストピース(絶縁基材:当社開発品)を作製した。各テストピースの表面に対してそれぞれ、静電噴霧法(アピックヤマダ株式会社製ZZ114−1)(実施例2)、スピンコート法(ミカサ株式会社製、1H−2D、回転速度:300rpm−20秒+750rpm−20秒)(比較例4)スピンコート法(ミカサ株式会社製、1H−2D、回転速度:300rpm−20秒+3000rpm−20秒)(比較例5)、スプレーコート法(山中セミコンダクター株式会社製デモ機)(比較例6)、ドライフィルム(比較例7)を用いて、立体への樹脂被膜形成性を確認した。
なお、樹脂被膜材料については、上記試験例1と同様の材料を用いた。
均一成膜性、薄膜形成性については、樹脂被膜形成後のテストピースを断面観察にて、図4に示すA〜D地点の厚み計測を行った。
レーザー加工不良に関しては樹脂被膜形成後に、UV−YAGレーザー(ESI社製5330機)(レーザ光波長:355nm)を用いて溝加工を行った後、デジタルマイクロスコープ(Hirox社製KH−7700)を用いて加工不良の有無を確認した。
オーバーめっきに関しては、樹脂被膜を形成後、全面にめっき核形成をし、樹脂被膜を全面剥離した後にめっき処理を行い、めっき析出の有無を確認した。
各評価基準については以下の通りである。
1.均一成膜性
成膜サンプルのクロスセクションより判断した。測定箇所A〜Dの厚みバラツキが1μm以内であれば◎、1〜3μmであれば△、3μm以上であれば×とした。
2.薄膜形成性
成膜サンプルのクロスセクションより判断した。厚み3μm以下の薄膜が形成出来れば◎、 3〜5μmであれば○、5μm以上であれば×とした。
3.レーザー加工不良
成膜サンプルをUV−YAGレーザーを用いて溝加工実施し、加工後、溝部への樹脂被膜の付着箇所が0箇所の場合◎、1〜2箇所の場合△、3箇所以上の場合×とした。
4.オーバーめっき
めっき析出箇所が0箇所の場合◎、1〜2箇所の場合△、3箇所以上の場合×とした。
Figure 2014143221

表2より、静電噴霧を用いた場合、その他の方法で樹脂被膜を形成した場合と比べて、立体形状への均一成膜性、薄膜形成性、レーザー加工不良、オーバーめっき共に良好な結果であった。
したがって、立体形状への樹脂被膜形成には静電噴霧法を用いることが好ましいことが明らかとなった。
以上、説明したように、本発明の一局面である回路基板の製造方法は、絶縁基材表面に樹脂皮膜を形成するレジスト形成工程と、樹脂皮膜の外表面を基準として樹脂皮膜の厚み分以上の深さの凹部をレーザー加工により形成して回路パターンを形成する回路形成工程とを含む回路基板の製造方法であって、前記樹脂皮膜が静電噴霧によって形成されていることを特徴とする。
このような構成により、均一成膜性、薄膜形成性、レーザー加工性に優れ、かつ材料を損失することなく、信頼性の高い回路基板を得ることができる。特に、立体への樹脂被膜形成の際に、優れた効果を得ることができると考えられる。
さらに、前記樹脂皮膜として、比誘電率2以上の誘電性を有する溶媒を少なくとも1種含有するレジスト用樹脂組成物を用いることにより、より確実に前記静電噴霧を行うことができると考えられる。
また、前記樹脂皮膜として、粘度が400mPas以下であるレジスト用樹脂組成物を用いることにより、静電噴霧をより確実に行うことができ、ひいては前記効果においていっそう向上すると考えられる。
本発明の他の局面である回路基板は、前記製造方法によって得られるものである。
1 絶縁基材
2 樹脂皮膜(レジスト)
3 回路溝(凹部(回路パターン))
4 貫通孔(凹部(回路パターン))
5 メッキ触媒
6 電気回路(無電解メッキ膜)
10 回路基板
11 ノズル

Claims (4)

  1. 絶縁基材表面に樹脂皮膜を形成するレジスト形成工程と、樹脂皮膜の外表面を基準として樹脂皮膜の厚み分以上の深さの凹部をレーザー加工により形成して回路パターンを形成する回路形成工程とを含む回路基板の製造方法であって、前記樹脂皮膜が静電噴霧によって形成されている前記回路基板の製造方法。
  2. 前記樹脂皮膜として、比誘電率2以上の誘電性を有する溶媒を少なくとも1種含有するレジスト用樹脂組成物を用いる、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記樹脂皮膜として、粘度が400mPas以下であるレジスト用樹脂組成物を用いる、請求項1に記載の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法により製造された回路基板。
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