JP2014130927A - 有機太陽電池素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】あらゆる曲面に設置可能で、物理的な衝撃に強い太陽電池素子を提供する。
【解決手段】曲面形状を有する透明な太陽電池素子基板106に、少なくとも下部電極101、活性層、上部電極105が順次積層され、太陽電池素子基板106側が光入射面である有機太陽電池素子であって、前記太陽電池素子基板の曲げ弾性率が1.5GPa以上であり、厚みが250μm以上である有機太陽電池素子とする。
【選択図】図2

Description

本発明は、有機太陽電池素子、およびこれを用いた太陽電池モジュールに関するものである。
有機太陽電池は、その構造によってスーパーストレート型やサブストレート型があり、透光性基板側から光を入射させるスーパーストレート型太陽電池では、通常、透光性基板、透明電極、光電変換層および裏面電極の順に形成された構造をとる。
有機太陽電池の超薄膜の積層構造を作るためには積層構造を形成する各層の平面性が必要であり、また、アニールによりバルクヘテロジャンクションを形成するために加熱が必要であることから、平面性と耐熱性に優れるガラスを基板に用いていた。また、大量生産時にロールトゥロールを可能にするため、可撓性が必要な場合には、薄いフィルムを基材に用いていた(例えば特許文献1)。
特開2010−141165号公報
このように平面上の太陽電池は技術的に完成しつつあるが、さらなる太陽電池の普及のためには屋外のあらゆる曲面に設置可能な太陽電池が必要である。曲面に太陽電池を設置するような場合、フレキシブルな太陽電池を貼り付ければよいが、平面に製造した太陽電池を複雑な曲面に沿って設置する場合には、太陽電池セルの破損等、性能に悪影響を及ぼすことがあった。
また、太陽電池を屋外に設置するためには、石や雹などによる物理的な衝撃に強いものである必要がある。
本発明は、このような問題を解決するものであり、あらゆる曲面に設置可能で、物理的な衝撃に強い太陽電池素子を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、太陽電池素子基板に曲面の形状を付与したうえで、太陽電池素子基板に太陽電池素子を形成することで、曲面に設置する際の太陽電池素子の破損を抑止できることに想到した。そして、太陽電池素子基板側を光入射面とすることで、太陽電池素子基板が石や雹などによる物理的衝撃から太陽電池素子を保護できること、更には、該基板が石や雹などの物理的衝撃から太陽電池素子を保護するためには、太陽電池素子基板が特定以上の曲げ弾性率および厚みを有するのが好ましいことを見出し、本発明を完成させた。本発明の概要は以下のとおりである。
本発明は、曲面形状を有する透明な太陽電池素子基板に、少なくとも下部電極、活性層、上部電極が順次積層され、太陽電池素子基板側が光入射面である有機太陽電池素子であって、
前記太陽電池素子基板の曲げ弾性率が1.5GPa以上であり、厚みが250μm以上であることを特徴とする、有機太陽電池素子である。前記太陽電池素子基板が高分子樹脂であることが好ましい。
また、本発明は、曲面形状を有する透明な太陽電池素子基板に、少なくとも下部電極、活性層、上部電極を順次積層することを特徴とする、有機太陽電池素子の製造方法である。前記太陽電池素子基板の曲げ弾性率が1.5GPa以上であり、厚みが250μm以上であることが好ましい。
また、本発明は上記有機太陽電池素子をガスバリア層により封止した有機太陽電池モジュールである。
また、本発明は、曲面形状を有する透明な太陽電池素子基板に、少なくとも下部電極、活性層、上部電極が順次積層されてなる有機太陽電池素子を、設置対象に設置する方法であって、該有機太陽電池素子は太陽電池素子基板側が光入射面となるように設置され、該太陽電池素子基板が前記設置対象に対応する曲面形状を有することを特徴とする、設置方法である。
また、本発明は、曲面形状を有する透明な太陽電池素子基板に、少なくとも下部電極、活性層、上部電極が順次積層された有機太陽電池素子が、少なくともガスバリア層により封止されてなる太陽電池モジュールを、設置対象に設置する方法であって、該有機太陽電池素子は太陽電池素子基板側が光入射面となるように設置され、該太陽電池素子基板が前記設置対象に対応する曲面形状を有することを特徴とする、設置方法である。
本発明によれば、あらゆる曲面に設置可能で、物理的な衝撃に強い有機太陽電池素子を得ることができる。
有機太陽電池素子の一態様を示す概念図である。 本発明に係る有機太陽電池素子の実施態様を表す模式図である。 有機太陽電池素子を用いた太陽電池モジュールの層構成を表わす模式図である。
本発明について、以下に具体的に説明する。
本発明は、二次元または三次元の曲面を形成した基板を有する太陽電池であり、太陽電池素子基板側が光入射面である有機太陽電池素子である。また、太陽電池素子基板は透明である。また、太陽電池素子基板の曲げ弾性率が1.5GPa以上であり厚みが250μm以上である。
本発明の実施態様に係る有機太陽電池素子は、太陽電池素子基板上に、少なくとも下部電極、活性層、上部電極をこの順に有する。
<1.有機太陽電池素子>
有機太陽電池素子は、通常、少なくとも一対の電極と、該電極間に存在する有機活性層と、該有機活性層と該電極の一方との間に存在する電子取り出し層とを有する。図1は、有機太陽電池素子の一般的な層構成を示す。図1に示される有機太陽電池素子107は、太陽電池素子基板106、カソードである下部電極101、電子取り出し層102、活性層103(p型半導体化合物とn型半導体材料とを含む層)、正孔取り出し層104、アノードである上部電極105が順次形成された層構造を有する。なお、図1において下部電極101は上部電極105よりも上部に存在するが、本明細書において上部電極、下部電極とは、太陽電池素子基板106をボトムとした際に上部に存在する電極、下部に存在する電極を意味するものとし、太陽電池素子基板に積層される電極を下部電極と称する。また、電子取り出し層102、活性層103、正孔取り出し層104をまとめて有機層と
称する場合がある。更に、電子取り出し層102と正孔取り出し層104は、バッファ層とも称する。本発明に係る有機太陽電池素子においてバッファ層は必須の層ではない。
太陽電池素子の構成としては、太陽電池素子基板106(以下、基板ともいう)側が光入射面である構成(いわゆるスーパーストレート構造)でも、上部電極105側が光入射面である構成(いわゆるサブストレート構造)でもよいが、本発明では太陽電池素子基板106側が光入射面である構成が好ましい。これにより、太陽電池素子基板106が石や雹などの物理的衝撃から有機太陽電池素子を保護できるため、有機太陽電池素子の保護部材を減らせる点で好ましい。
また、基板側を光入射面とし、且つ、基板として曲げ弾性率が1.5GPa以上であり厚みが250μm以上である材料から成るものを用いる事で、光入射面からの物理的な衝撃に強い太陽電池素子とすることができる。
<1−1.太陽電池素子基板>
有機太陽電池素子は、支持体となる太陽電池素子基板(以下、単に素子基板とも称する)を有する。すなわち、素子基板上に、電極と、活性層とが形成される。
本発明に係る素子基板は、積層面に曲面形状を有する。また、素子基板に複数の曲面形状がアトランダムに存在する三次元構造を有することが好ましい。本発明では、曲面形状を有する素子基板に有機太陽電池を積層させることで、あらゆる曲面に設置可能な太陽電池素子を得ることができる。
基板の曲面形状としては、例えば、最大曲率半径が通常20mm以上、好ましくは30mm以上、より好ましくは50mm以上であって、通常50m以下、好ましくは40m以下、より好ましくは30m以下、更に好ましくは10m以下の曲面が挙げられる。
太陽電池素子を設置する設置対象となる、三次元構造の具体例としては、例えば、車の流線形ボディーの形状、飛行機の流線形ボディーの形状、モニュメント表面の形状、屋根瓦の形状、ビルの入り口に見られる柱のエンタシス形状(中膨らみ)などがあげられる。
本発明の素子基板の曲面形状は、素子基板の材料の形状に由来するものである。太陽電池の製造工程において、運搬時等に素子基板の形状が変化しないことが好ましい。このような曲面形状を有するためには、素子基板の曲げ弾性率が、1.5GPa以上であり、1.8GPa以上が好ましく、2GPa以上がより好ましい。一方上限は特に限定されないが、通常20GPa以下であり、15GPa以下が好ましく、10GPa以下がより好ましい。また、厚みが250μm以上であり、500μm以上が好ましく、1mm以上がより好ましく、2mm以上がさらに好ましく、3mm以上が特に好ましい。一方上限は通常20mm以下であり、15mm以下が好ましく、10mm以下がより好ましい。
このような曲げ弾性率および厚みを有する素子基板であれば、物理的な衝撃に強い有機太陽電池素子を得ることができる。曲げ弾性率は、JIS K 7171に基づいて測定することができる。
本発明に係る素子基板は透明であることが好ましい。ここで、透明とは360nm以上830nm以下の波長を有する可視光線の少なくとも65%以上、好ましくは70%以上、更に好ましくは80%以上)を透過することをいう。上記波長域の透過は必ずしも直線透過である必要はなく、拡散透過を含めた透過が上記範囲であれば良い。透過率は、JIS K7361−1に基づいて測定することができる。
素子基板の材料は、素子基板の曲面形状を保持できるものであれば特に限定されない。
透明な素子基板の材料の好適な例としては、石英、ガラス、サファイア又はチタニア等の無機材料や、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;、ポリエーテルスルホン;ポリイミド系樹脂;アラミド等のポリアミド系樹脂
;汎用ポリスチレン樹脂、耐衝撃性ポリスチレン樹脂、耐熱性ポリスチレン樹脂等のポリスチレン系樹脂;ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、アクリル系樹脂に架橋アクリル弾性体成分を添加した耐衝撃性アクリル樹脂;ポリビニルアルコール;エチレンビニルアルコール共重合体;フッ素樹脂;塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン又はポリノルボルネン等のポリオレフィン;トリアセチルセルロース等の改質セルロース樹脂;ポリ塩化ビニリデン;ポリフェニレンスルフィド;ポリウレタン;ビスフェノールA型等の芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリイソソルバイド等の脂肪族・脂環族ポリカーボネート樹脂等のポリカーボネート系樹脂;ポリアクリロニトリル樹脂;ポリアリレート;又はエポキシ樹脂等の樹脂から選ばれる単独成分からなる樹脂、又は、これら樹脂成分を主成分(樹脂の全量を100質量%とした場合に、50質量%以上を含む事を主成分とすると呼ぶ)として、これら樹脂成分と共重合可能な第二成分、更には第三成分を有する共重合樹脂を用いる事が出来る。本発明においては素子基板がこれらの高分子樹脂であることが好ましい。
加えて、これらの樹脂成分を主成分(樹脂の全量を100質量%とした場合に、50質量%以上を含む事を主成分とする)として、本発明の好ましい曲げ弾性率と透明性を有するポリマーブレンド体、ポリマーアロイ、更には、これらから選ばれる少なくとも2層から成る積層体を用いても良い。
高分子樹脂を基板として用いる場合は、本発明の好ましい曲げ弾性率を得る事を目的として、繊維強化充填材を配合したものであっても良い。繊維強化充填材としては、ガラス繊維が最も一般的であるが、その配合量が増えるに従い、透明性が低下する問題点がある為、セルローズナノファイバー等のナノ繊維を微細分散させる事により透明性を維持しつつ、曲げ弾性率の向上を図る等しても良い。
また、高分子樹脂を基板として用いる場合は、後述の好ましい水蒸気透過率、及び、酸素透過率を確保するために、基板の光入射側および/または有機太陽電池を形成する側の表面、もしくは基板の内部に基板内バリア層を形成することが好ましい。
基板内バリア層の材料は特に限定されないが、低湿性の樹脂;金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物などの無機化合物が挙げられる。低透湿性の樹脂としては、ポリクロロテトラフロロエチレン(PCTFE)等が挙げられる。低透湿性の樹脂を用いる場合には、例えば、基板の主要厚みをピスフェノールA型ポリカーボネート樹脂で形成し、光入射面側、および/または有機太陽電池素子を形成する側の表面に、低透湿性の樹脂の薄膜を形成した構造などを形成することができる。
無機化合物としては、SiOなどの金属酸化物;SiNなどの金属窒化物;SiCなどの金属炭化物が挙げられる。無機化合物を用いる場合には、例えば、基板の表面または内層として、金属酸化物・金属窒化物・金属炭化物などの無機薄膜をドライコートまたはウェットコートで付与したり、無機薄膜を形成する為の前駆体を塗工し、化学処理等によりバリア性の薄膜を形成しても良い。
基板内バリア層の厚みは特に限定されないが、通常10nm以上、好ましくは50nm以上、より好ましくは100nm以上であり、通常500μm以下、好ましくは300μm以下、より好ましくは200μm以下である。
更には平板状粘度鉱物等を樹脂中に分散させて、所謂迷路効果により水蒸気透過性を低減させる等しても良い。
また、本発明の素子基板が熱可塑性樹脂の場合は、太陽電池の製造工程における加熱温度以上のガラス転移温度を有すると製造工程において形状が変化しないため好ましい。また、結晶性樹脂であれば、結晶化処理によりガラス転移温度を上げることで素子基板の形状が変化しづらくなるため好ましい。
太陽電池の製造工程における加熱温度は、太陽電池の素子構成によって異なるが、一般的には80℃以上である。従って、本発明の素子基板は、ガラス転移温度(Tg)が、通常80℃以上であり、100℃以上が好ましい。ガラス転移温度の下限が当該範囲であれ
ば、太陽電池の製造工程の加熱によっても形状が変化しづらい点で好ましい。上限は特に限定されないが、通常200℃以下であり、180℃以下が好ましい。ガラス転移温度TgはDSC測定により測定できる。DSC測定については後述する。
また、本発明の素子基板が熱硬化性樹脂の場合は、架橋度を適宜調整する事によりプロセス温度がガラス転移温度を越えても基板の形状が変化しない状態として用いることが好ましい。
なお、本発明に係る太陽電池は素子基板106側が光入射面の場合には、基板が太陽電池の最表面となる場合もあるため、素子基板106が以下に記載の水蒸気透過率および酸素透過性を満たすものであることが好ましい。素子基板106の1μm厚における水蒸気透過率Pdは、外部からの水分の浸入を遮断するため、40℃90%RH環境下で10−1g/m/day以下である必要があるが、より好ましくは10−2g/m/day以下、さらに好ましくは10−3g/m/day以下、10−4g/m/day以下とバリア性能が高い程好ましい。水蒸気透過率は、JIS K7129に準じた感湿センサ、赤外線センサ、ガスクロマトグラフを備えた装置による測定、カップ法(JIS Z0208)により、40℃90%RH環境で測定する。
素子基板の酸素透過性の程度は、一般的には、25℃環境下で1μm厚での単位面積(1m)の1日あたりの酸素透過率が、1cc/m/day/atm以下であることが好ましく、1×10−1cc/m/day/atm以下であることがより好ましく、1×10−2cc/m/day/atm以下であることが更に好ましく、1×10−3cc/m/day/atm以下であることが中でも好ましく、1×10−4cc/m/day/atm以下であることがとりわけ好ましく、1×10−5cc/m/day/atm以下であることが特に好ましい。酸素が透過しなければしないほど、有機デバイスの酸化による劣化が抑えられる。なお、酸素透過率は、JIS K7126Aに準じた差圧法に基づく装置、あるいはJIS K7126Bに準じた等圧法に基づく赤外線センサ、ガスクロマトグラフを備えた装置で測定することができる。
ガラスとしてはソーダガラス、青板ガラス又は無アルカリガラス等が挙げられる。ガラスからの溶出イオンが少ない点で、これらの中でも無アルカリガラスが好ましい。
素子基板の形状に制限はなく、例えば、板状、フィルム状又はシート状等のものを用いることができる。また、素子基板が板状、フィルム状又はシート状の場合、その膜厚は、通常250μm以上、好ましくは500μm以上である。一方、上限は、通常10mm以下、好ましくは5mm以下である。基板の膜厚が250μm以上であることは、曲面形状を維持しやすくなり、有機太陽電池素子の強度が不足する可能性が低くなるために好ましい。素子基板の膜厚が10mm以下であることは、コストが抑えられ、かつ重量が重くならないために好ましい。
素子基板の材料がガラスである場合の膜厚は、通常0.5mm以上、好ましくは0.7mm以上であり、一方、通常2cm以下、好ましくは1cm以下である。素子基板の膜厚が0.7mm以上であることは、機械的強度が増加し、割れにくくなるために、好ましい。また、素子基板の膜厚が2cm以下であることは、重量が重くならないために好ましい。
<1−2.上部電極、下部電極(101,105)>
電極101,105は、光吸収により生じた正孔及び電子を捕集する機能を有する。したがって、一対の電極には、正孔の捕集に適した電極105(以下、アノードと記載する場合もある)と、電子の捕集に適した電極101(以下、カソードと記載する場合もある)とを用いることが好ましい。一対の電極は、少なくとも素子基板側が透光性であればよく、両方が透光性であっても構わない。本発明では、下部電極に透光性のある材料を用い
ることが好ましい。透光性があるとは、太陽光が40%以上透過することを指す。また、透明電極の太陽光線透過率は70%以上であることが、透明電極を透過させて活性層103に光を到達させるために好ましい。光の透過率は、通常の分光光度計で測定できる。
アノードは、一般には仕事関数が高い導電性材料で構成され、活性層で発生した正孔をスムーズに取り出す機能を有する電極である。
アノードの材料を挙げると、例えば、酸化ニッケル、酸化スズ、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)、インジウム−ジルコニウム酸化物(IZO)、酸化チタン、酸化インジウム又は酸化亜鉛、タングステン−亜鉛ドープ酸化インジウム(IWZO)等の導電性金属酸化物;金、白金、銀、クロム又はコバルト等の金属あるいはその合金が挙げられる。これらの物質は高い仕事関数を有するため、好ましく、さらに、ポリチオフェン誘導体にポリスチレンスルホン酸をドーピングしたPEDOT:PSSで代表されるような導電性高分子材料を積層することができるため、好ましい。このような導電性高分子を積層する場合には、この導電性高分子材料の仕事関数が高いことから、上記のような高い仕事関数の材料でなくとも、AlやMg等のカソードに適した金属も広く用いることが可能である。ポリチオフェン誘導体にポリスチレンスルホン酸をドーピングしたPEDOT:PSSや、ポリピロール又はポリアニリン等にヨウ素等をドーピングした導電性高分子材料を、アノードの材料として使用することもできる。アノードが透明電極である場合には、ITO、IZO、酸化亜鉛又は酸化スズ等の透光性がある導電性金属酸化物を用いることが好ましく、特にITO又はIZOが好ましい。
アノードの膜厚は特に制限は無いが、通常10nm以上、好ましくは20nm以上、さらに好ましくは、50nm以上である。一方、通常10μm以下、好ましくは1μm以下、さらに好ましくは500nm以下である。アノードの膜厚が10nm以上であることにより、シート抵抗が抑えられ、アノードの膜厚が10μm以下であることにより、光透過率を低下させずに効率よく光を電気に変換することができる。アノードが透明電極である場合には、光透過率とシート抵抗とを両立できる膜厚を選ぶ必要がある。
アノードのシート抵抗は、特段の制限はないが、通常1Ω/□以上、一方、1000Ω/□以下、好ましくは500Ω/□以下、さらに好ましくは100Ω/□以下である。
カソードは、一般には仕事関数が低い値を有する導電性材料で構成され、活性層で発生した電子をスムーズに取り出す機能を有する電極である。カソードは、電子取り出し層と隣接する。
カソードの材料を挙げると、例えば、白金、金、銀、銅、鉄、スズ、亜鉛、アルミニウム、インジウム、クロム、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム又はマグネシウム等の金属及びその合金;フッ化リチウムやフッ化セシウム等の無機塩;酸化ニッケル、酸化アルミニウム、酸化リチウム又は酸化セシウムのような金属酸化物等が挙げられる。これらの材料は低い仕事関数を有する材料であるため、好ましい。カソードについてもアノードと同様に、電子取り出し層としてチタニアのようなn型半導体で導電性を有するものを用いることにより、高い仕事関数を有する材料を用いることもできる。電極保護の観点から、カソードの材料として好ましくは、白金、金、銀、銅、鉄、スズ、アルミニウム、カルシウム若しくはインジウム等の金属、又は酸化インジウムスズ(ITO)、インジウム−ジルコニウム酸化物(IZO)、タングステン−亜鉛ドープ酸化インジウム(IWZO)等のこれらの金属を用いた合金である。
カソードの膜厚は特に制限は無いが、通常10nm以上、好ましくは20nm以上、より好ましくは50nm以上である。一方、通常10μm以下、好ましくは1μm以下、より好ましくは500nm以下である。カソードの膜厚が10nm以上であることにより、シート抵抗が抑えられ、カソードの膜厚が10μm以下であることにより、光透過率を低下させずに効率よく光を電気に変換することができる。カソードが透明電極である場合に
は、光透過率とシート抵抗を両立する膜厚を選ぶ必要がある。
カソードのシート抵抗は、特に制限は無いが、通常1000Ω/□以下、好ましくは500Ω/□以下、さらに好ましくは100Ω/□以下である。下限に制限は無いが、通常は1Ω/□以上である。
さらに、アノード及びカソードは、2層以上の積層構造を有していてもよい。また、アノード及びカソードに対して表面処理を行うことにより、特性(電気特性やぬれ特性等)を改良してもよい。
太陽電池素子基板と積層する下部電極はアノードであってもカソードであっても良い。また、上部電極および下部電極を形成する方法は特段限定されず、具体的には、スプレー塗布、スピンコート、ダイコートなどのウエットプロセスによる方法、電極膜をフォトレジストパターンを用いて等方性エッチングする方法、穴が基板に向かって逆テーパー形状となっているステンシルマスクを密着させて電極材料を蒸着する方法、 蒸着マスクを基
板から離して蒸着する方法、などがあげられる。このうち、ウエットプロセスが好ましく、特にスプレー塗布によることが好ましい。スプレー塗布は、基板の曲面形状や複雑な三次元形状に、電極を形成する際に有利である。
本明細書において「スプレー塗布」とは、塗布液を霧化して噴霧することにより、被塗布物上に膜状に塗布する手法をいう。スプレー塗布は、通常はスプレーノズルを用いて行なわれる。スプレーノズルの方式は制限されず、各々のスプレーノズルの利点を考慮して選択すればよい。スプレーノズルの代表的な例としては、二流体スプレーノズル、超音波スプレーノズル、回転式スプレーノズル等が挙げられる。
二流体スプレーノズル(二流体霧化方式スプレーノズル)は、加圧された気体を塗布液に衝突させ、塗布液を破砕することにより、塗布液の霧化を行なう方式のノズルである。即ち、二流体スプレーノズルにおいては、塗布液の霧化と被塗布物への霧化粒子の搬送とが、何れも加圧された気体流によって行なわれる。二流体スプレーノズルの例としては、ノードソン社製マイクロスプレーガン、アトマックス社製アトマックスノズル、旭サナック社製パールガン、IVEK社製Sonicair Nozzle等が挙げられる。
超音波スプレーノズル(超音波霧化方式スプレーノズル)は、塗布液に超音波を印加し、塗布液を破砕することにより、塗布液の霧化を行なう方式のノズルである。即ち、超音波スプレーノズルでは、塗布液の霧化は超音波によって行なわれる。また、それによって得られた霧化粒子の被塗布物への搬送は、例えば、別途設けられたエアノズルから吐出する気体流等によって行なわれる。超音波スプレーノズルの例としては、Sono-Tek社製Vortex Nozzle、Sono-Tek社製Ultrasonic Microspray Nozzle、シソニック社製Ultrasonic Microspray Nozzle等が挙げられる。
回転式スプレーノズル(回転霧化方式スプレーノズル、ロータリーアトマイザー)は、例えば数万rpmで回転する回転カップ等に塗布液を導入し、塗布液に回転力を加えながら吐出することにより、遠心力で塗布液の霧化を行なう方式のノズルである。即ち、回転式スプレーノズルでは、遠心力によって塗布液の霧化が行なわれるとともに、通常はノズルに別途導入される気体流等によって、霧化粒子の被塗布物への搬送が行なわれる。回転式スプレーノズルの例としては、旭サナック社製NCベル、ノードソン社製RA−20
ロータリーアトマイザー等が挙げられる。
超音波スプレーノズル及び回転式スプレーノズルには、塗布液の霧化プロセスと、塗布液の霧化粒子を気体流により被塗布物に搬送するプロセスとを、独立して制御可能であることから、上述の気流速度条件を容易に達成できるという利点がある。即ち、加圧された
気体との衝突・混合により塗布液の霧化を行なう二流体スプレーノズルでは、霧化に使用される気体が被塗布物の表面に衝突するので、塗布膜の流動が促進される傾向がある。これに対し、超音波スプレーノズルや回転式スプレーノズルは、気体による塗布液の霧化を行なわないため、塗布膜の流動を招く可能性が低い。
一方、二流体スプレーノズルは、超音波スプレーノズル及び回転式スプレーノズルよりも安価であり、塗布膜の霧化特性に優れ、高品質な有機薄膜を形成することができるという利点がある。
スプレー塗布の際には、被塗布物上における気流速度を、通常3m/sec以下とすることが好ましい。この気流速度が高過ぎると、気流によって誘発される塗布膜の流動により、有機薄膜のパターン端部の形状が不安定となり、有機薄膜のパターン端部付近に膜厚の大きな部分が発生する場合がある。気流速度が低い値であるほど、このようなパターン端部における膜厚変動が発生し難くなる。
但し、スプレー塗布時の被塗布物上における気流速度の好ましい上限値は、スプレーノズルの種類に応じて異なる。
具体的に、二流体スプレーノズルを用いてスプレー塗布を行なう場合、スプレー塗布時の被塗布物上における気流速度は、通常2.99m/sec以下、好ましくは2.98m/sec以下、より好ましくは2.95m/sec以下とすることが望ましい。また、超音波スプレーノズル又は回転式スプレーノズルを用いてスプレー塗布を行なう場合、スプレー塗布時の被塗布物上における気流速度は通常2.2m/sec以下、好ましくは2.1m/sec以下、より好ましくは2m/sec以下とすることが望ましい。
但し、この気流速度があまりに低いと、塗布環境における気流によって塗布液粒子が飛散する可能性がある上に、スプレー塗布そのものが困難となる場合もある。よって、気流速度の下限値は、通常0.1m/sec以上、好ましくは0.5m/sec以上、より好ましくは1m/sec以上とすることが望ましい。
なお、本明細書において、スプレー塗布時の「被塗布物上における気流速度」とは、被塗布物の表面からの距離が通常1cm以内の位置において測定される気流速度を指す。
スプレー塗布時の被塗布物上における気流速度を測定する手法は、制限されるものではないが、例えば、被塗布物上に風速計(例えば日本カノマックス製アネモマスター6162)のセンサープローブを設置して行なうことができる。この場合、間隔を置いて複数回の気流速度の測定を行ない、その測定値を平均した値(平均気流速度)を採用することが好ましい。
スプレー塗布時における他の条件は制限されないが、通常は以下の通りである。
スプレー塗布時の温度は、通常15℃以上、好ましくは20℃以上、また、通常30℃以下、好ましくは25℃以下とすることが望ましい。温度が高過ぎると塗布膜の乾燥速度が高くなり、ムラが発生し易くなる場合がある。
スプレー塗布時の湿度は、通常20%RH以上、好ましくは30%RH以上、また、通常60%RH以下、好ましくは50%RH以下とすることが望ましい。湿度が低過ぎると静電気により安全性が低下する可能性があり、湿度が高過ぎると塗布膜の吸湿が生じる可能性がある。なお、「%RH」は相対湿度パーセントを表わす。
スプレー塗布は、通常、同一基板へ複数回行うことが多い。その回数は、通常、スプレーのインクの種類とノズル−基板間の距離などのスプレーの条件に依存する。本発明の下部電極の形状を形成させるためには、ノズルの稼動領域を工夫させて、スプレーのミストの基板への付着量を制御することが望ましい。具体的には、重ね塗りの回数を増やす毎に、電極パターンの端部より中心部へノズルの位置をずらしていく方法が好ましい制御方法である。
アノード及びカソードを積層した後に、有機太陽電池素子を通常50℃以上、好ましくは80℃以上、一方、通常300℃以下、好ましくは280℃以下、より好ましくは250℃以下の温度範囲において、加熱することが好ましい(この工程をアニーリング処理工程と称する場合がある)。アニーリング処理工程を50℃以上の温度で行うことにより、有機太陽電池素子の各層間の密着性、例えば電子取り出し層とカソード及び/又は電子取り出し層と活性層の密着性が向上する効果が得られるため、好ましい。各層間の密着性が向上することにより、有機太陽電池素子の熱安定性や耐久性等が向上しうる。アニーリング処理工程の温度を300℃以下にすることは、活性層内の有機化合物が熱分解する可能性が低くなるため、好ましい。アニーリング処理工程においては、上記の温度範囲内で段階的な加熱を行ってもよい。
加熱する時間としては、通常1分以上、好ましくは3分以上、一方、通常3時間以下、好ましくは1時間以下である。アニーリング処理工程は、太陽電池性能のパラメータである開放電圧、短絡電流及びフィルファクターが一定の値になったところで終了させることが好ましい。また、アニーリング処理工程は、常圧下、かつ不活性ガス雰囲気中で実施することが好ましい。
加熱する方法としては、ホットプレート等の熱源に有機太陽電池素子を載せてもよいし、オーブン等の加熱雰囲気中に有機太陽電池素子を入れてもよい。また、加熱はバッチ式で行っても連続方式で行ってもよい。
<1−3.バッファ層>
本発明の実施態様に係る有機太陽電池素子は、通常、カソードと活性層との間に電子取り出し層を有する。また有機太陽電池素子は、活性層とアノードとの間に正孔取り出し層を有する。電子取り出し層および正孔取り出し層は必須ではない。
電子取り出し層と正孔取り出し層とは、一対の電極間に、活性層を挟むように配置されることが好ましい。すなわち、有機太陽電池素子が電子取り出し層と正孔取り出し層の両者を含む場合、上部電極、正孔取り出し層、活性層、電子取り出し層、及び下部電極をこの順に配置することができる。有機太陽電池素子が電子取り出し層を含み正孔取り出し層を含まない場合は、上部電極、活性層、電子取り出し層、及び下部電極をこの順に配置することができる。電子取り出し層と正孔取り出し層とは積層順序が逆であってもよいし、また電子取り出し層と正孔取り出し層の少なくとも一方が異なる複数の膜により構成されていてもよい。
<1−3−1.電子取り出し層>
図1において電子取り出し層102の材料は、活性層103から電極101へ電子の取り出し効率を向上させる材料であれば特段の制限はないが、無機化合物又は有機化合物が挙げられる。
無機化合物の材料の例としては、Li、Na、K又はCs等のアルカリ金属の塩;酸化チタン(TiOx)や酸化亜鉛(ZnO)のようなn型半導体酸化物等が挙げられる。なかでも、アルカリ金属の塩としては、LiF、NaF、KF又はCsFのようなフッ化物塩が好ましく、n型半導体酸化物としては、酸化亜鉛(ZnO)が好ましい。このような材料の動作機構は不明であるが、Al等で構成されるカソード101と組み合わされれた際にカソード101の仕事関数を小さくし、太陽電池素子内部に印加される電圧を上げる事が考えられる。
有機化合物の材料の例としては、例えば、トリアリールホスフィンオキシド化合物のようなリン原子と第16族元素との二重結合を有するホスフィン化合物;バソキュプロイン
(BCP)又はバソフェナントレン(Bphen)のような、置換基を有してもよく、1位及び10位がヘテロ原子で置き換えられていてもよいフェナントレン化合物;トリアリールホウ素のようなホウ素化合物;(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(Alq3)のような有機金属酸化物;オキサジアゾール化合物又はベンゾイミダゾール化合物のような、置換基を有していてもよい1又は2の環構造を有する化合物;ナフタレンテトラカルボン酸無水物(NTCDA)又はペリレンテトラカルボン酸無水物(PTCDA)のような、ジカルボン酸無水物のような縮合ジカルボン酸構造を有する芳香族化合物等が挙げられる。
電子取り出し層102の材料のLUMOエネルギー準位は、特に限定は無いが、通常−4.0eV以上、好ましくは−3.9eV以上である。一方、通常−1.9eV以下、好ましくは−2.0eV以下である。電子取り出し層102の材料のLUMOエネルギー準位が−1.9eV以下であることは、電荷移動が促進されうる点で好ましい。電子取り出し層102の材料のLUMOエネルギー準位が−4.0eV以上であることは、n型半導体材料への逆電子移動が防がれうる点で好ましい。
電子取り出し層102の材料のHOMOエネルギー準位は、特に限定は無いが、通常−9.0eV以上、好ましくは−8.0eV以上である。一方、通常−5.0eV以下、好ましくは−5.5eV以下である。電子取り出し層102の材料のHOMOエネルギー準位が−5.0eV以下であることは、正孔が移動してくることを阻止しうる点で好ましい。
電子取り出し層102の材料のLUMOエネルギー準位及びHOMOエネルギー準位の算出方法としては、サイクリックボルタモグラム測定法が挙げられる。例えば、公知文献(国際公開第2011/016430号)に記載の方法を参考にして実施することができる。
電子取り出し層102の材料が有機化合物である場合、DSC法により測定した場合のこの化合物のガラス転移温度(以下、Tgと記載する場合もある)は、特段の制限はないが、観測されないか、又は55℃以上であることが好ましい。DSC法によりガラス転移温度が観測されないとは、ガラス転移温度がないことを意味する。具体的には400℃以下のガラス転移温度の有無により判別する。DSC法によるガラス転移温度が観測されない材料は、熱的に高い安定性を有している点で好ましい。
また、DSC法により測定した場合のガラス転移温度が55℃以上である化合物の中でも、ガラス転移温度が、好ましくは65℃以上、より好ましくは80℃以上、さらに好ましくは110℃以上、特に好ましくは120℃以上である化合物が望ましい。一方、ガラス転移温度の上限は特に限定はないが、通常400℃以下、好ましくは350℃以下、より好ましくは300℃以下である。また、電子取り出し層104の材料は、DSC法によるガラス転移温度が30℃以上55度未満に観測されないものであることが好ましい。
本明細書におけるガラス転移温度とは、アモルファス状態の固体において、熱エネルギーにより局所的な分子運動が開始される温度とされており、比熱が変化する点として定義される。Tgよりさらに温度が上がると、固体構造が変化して結晶化が起こる(この時の温度を結晶化温度(Tc)とする)。さらに温度が上がると、融点(Tm)で融解し液体状態に変化することが一般的である。但し、高温で分子が分解したり、昇華したりして、これらの相転移が見られないこともある。
DSC法とは、JIS K−0129“熱分析通則”に定義された熱物性の測定法(示差走査熱量測定法)である。ガラス転移温度をより明確に決める為には、一度ガラス転移
点以上の温度に加熱したサンプルを急冷した後に測定することが望ましい。例えば、公知文献(国際公開第2011/016430号)に記載の方法により、測定を実施することができる。
電子取り出し層に用いられる化合物のガラス転移温度が55℃以上である場合、この化合物は、印加される電場、流れる電流、曲げや温度変化による応力等の外部ストレスに対して構造が変化しにくいため、耐久性の面で好ましい。さらに、化合物の薄膜の結晶化が進みにくい傾向も有すことから、使用温度範囲においてこの化合物がアモルファス状態と結晶状態との間で変化しにくくなることにより、電子取り出し層としての安定性が良くなるため、耐久性の面で好ましい。この効果は、材料のガラス転移温度が高ければ高いほど、より顕著に表れる。
電子取り出し層102の膜厚は特に限定はないが、通常0.01nm以上、好ましくは0.1nm以上、より好ましくは0.5nm以上である。一方、通常400nm以下、好ましくは200nm以下である。電子取り出し層102の膜厚が0.01nm以上であることでバッファ材料としての機能を果たすことになり、電子取り出し層102の膜厚が400nm以下であることで、電子が取り出しやすくなり、光電変換効率が向上しうる。
電子取り出し層102を形成する方法は特段限定されず、スプレー塗布、スピンコート、ダイコートなどのウエットプロセスによる方法、真空蒸着、スパッタ等の真空成膜方法等が挙げられるが、スプレー塗布が好ましい。
アルカリ金属塩を電子取り出し層102の材料として用いる場合、真空蒸着、スパッタ等の真空成膜方法を用いて電子取り出し層102を成膜することが可能である。なかでも、抵抗加熱による真空蒸着によって、電子取り出し層102を形成するのが望ましい。真空蒸着を用いることにより、活性層103等の他の層へのダメージを小さくすることができる。
n型半導体の金属酸化物については、例えば、酸化亜鉛ZnOを電子取り出し層102の材料として用いる場合には、スパッタ法等の真空成膜方法を用いることもできるが、塗布法を用いて電子取り出し層102を成膜することが望ましい。例えば、Sol−Gel
Science、C.J.Brinker,G.W.Scherer著、Academic Press(1990)に記載のゾルゲル法に従って、酸化亜鉛で構成される電子取り出し層102を形成できる。この場合の膜厚は、通常0.1nm以上、好ましくは2nm以上、より好ましくは5nm以上であり、通常1μm以下、好ましくは100nm以下、より好ましくは50nm以下である。電子取り出し層102が薄すぎると、電子の取り出し効率を向上させる効果が十分でなくなり、厚すぎると、電子取り出し層102が直列抵抗成分として作用することにより素子の特性を損なう傾向がある。電子取り出し層102の材料が有機化合物である場合、一般的に、昇華性を有する材料を用いる場合には真空蒸着法等の真空成膜方法等を用いることができる。また、溶媒に可溶な材料を用いる場合は、スプレー塗布、スピンコートやインクジェット等のウエットプロセスによる方法を用いることができる。
<1−3−2.正孔取り出し層>
正孔取り出し層の材料に特に限定は無く、活性層からアノードへの正孔の取り出し効率を向上させることが可能な材料であれば特に限定されない。具体的には、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアセチレン、トリフェニレンジアミン又はポリアニリン等に、スルホン酸及び/又はヨウ素等がドーピングされた導電性ポリマー、スルホニル基を置換基に有するポリチオフェン誘導体、アリールアミン等の導電性有機化合物、酸化銅、酸化ニッケル、酸化マンガン、酸化モリブデン、酸化バナジウム又は酸化タングステン等の金属酸化物、ナフィオン、後述のp型半導体等が挙げられる。その中でも好ましくは、スルホン
酸をドーピングした導電性ポリマーであり、より好ましくは、ポリチオフェン誘導体にポリスチレンスルホン酸をドーピングした(3,4−エチレンジオキシチオフェン)ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT:PSS)である。また、金、インジウム、銀又はパラジウム等の金属等の薄膜も使用することができる。金属等の薄膜は、単独で形成してもよいし、上記の有機材料と組み合わせて用いることもできる。
正孔取り出し層の膜厚は特に限定はないが、通常0.2nm以上である。一方、通常400nm以下、好ましくは200nm以下である。正孔取り出し層の膜厚が0.2nm以上であることでバッファ材料としての機能を果たすことになり、正孔取り出し層の膜厚が400nm以下であることで、正孔が取り出し易くなり、光電変換効率が向上しうる。
正孔取り出し層の形成方法に制限はない。例えば、昇華性を有する材料を用いる場合は真空蒸着法等により形成することができる。また、例えば、溶媒に可溶な材料を用いる場合は、スプレー塗布、スピンコート、ダイコートなどのウエットプロセスによる方法等により形成することができるが、スプレー塗布が好ましい。正孔取り出し層に半導体材料を用いる場合は、後述の有機活性層の低分子有機半導体化合物と同様に、前駆体を用いて層を形成した後に前駆体を半導体化合物に変換してもよい。
なかでも、正孔取り出し層の材料としてPEDOT:PSSを用いる場合、分散液をスプレー塗布する方法によって正孔取り出し層を形成することが好ましい。PEDOT:PSSの分散液としては、ヘレウス社製のCLEVIOSTMシリーズや、アグファ社製のORGACONTMシリーズ等が挙げられる。
塗布法により正孔取り出し層を形成する場合は、塗布液にさらに界面活性剤を含有させてもよい。界面活性剤の使用により、微小な泡若しくは異物等の付着による凹み及び/又は乾燥工程での塗布むら等の発生が抑制される。界面活性剤としては、公知の界面活性剤(カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤)を用いることができる。なかでも、ケイ素系界面活性剤、アセチレンジオール系界面活性剤又はフッ素系界面活性剤が好ましい。なお、界面活性剤としては1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
<1−4.活性層>
活性層は光電変換が行われる層を指し、通常、p型半導体化合物とn型半導体化合物をと含む。p型半導体化合物とは、p型半導体材料として働く化合物であり、n型半導体化合物とは、n型半導体材料として働く化合物である。有機太陽電池素子が光を受けると、光が活性層に吸収され、p型半導体化合物とn型半導体化合物との界面で電気が発生し、発生した電気が電極から取り出される。
活性層103の材料としては無機化合物と有機化合物とのいずれを用いてもよいが、簡易な塗布プロセスにより形成しうる層であることが好ましい。より好ましくは、活性層103は有機化合物からなる有機活性層である。以下では、活性層103が有機活性層であるものとして説明する。
活性層の層構成としては、p型半導体化合物層とn型半導体化合物層とが積層された薄膜積層型、p型半導体化合物とn型半導体化合物とが混合した層を有するバルクヘテロ接合型、p型半導体化合物層と、p型半導体化合物とn型半導体化合物とが混合した層(i層)と、n型半導体化合物層とが積層されたもの、等が挙げられる。なかでも、p型半導体化合物とn型半導体化合物が混合した層を有するバルクヘテロ接合型が好ましい。
活性層の膜厚は特に限定されないが、通常10nm以上、好ましくは50nm以上であ
り、一方通常1000nm以下、好ましくは500nm以下、より好ましくは200nm以下である。活性層の膜厚が10nm以上であることは、膜の均一性が保たれ、短絡を起こしにくくなるため、好ましい。また、活性層の厚みが1000nm以下であることは、内部抵抗が小さくなる点、及び電極間が離れすぎず電荷の拡散が良好となる点で、好ましい。
活性層の作成方法としては、特段に制限はないが、塗布法が好ましい。塗布法としては、任意の方法を用いることができるが、例えば、スピンコート法、リバースロールコート法、グラビアコート法、キスコート法、ロールブラッシュ法、スプレー塗布法、エアナイフコート法、ワイヤーバーバーコート法、パイプドクター法、含浸・コート法、カーテンコート法等が挙げられる。これらの中でも、スプレー塗布法が好ましい。
例えば、p型半導体化合物層及びn型半導体化合物層は、p型半導体化合物又はn型半導体化合物を含む塗布液を塗布することにより作製しうる。また、p型半導体化合物とn型半導体化合物とが混合した層は、p型半導体化合物及びn型半導体化合物を含む塗布液を塗布することにより作製しうる。後述するように、半導体化合物前駆体を含む塗布液を塗布した後で、半導体化合物前駆体を半導体化合物へと変換してもよい。
<1−4−1.p型半導体化合物>
活性層が含むp型半導体化合物としては、特に限定はないが、低分子有機半導体化合物と高分子有機半導体化合物とが挙げられる。
<1−4−1−1.低分子有機半導体化合物>
低分子有機半導体化合物の分子量は、上限、下限ともに特に制限されないが、通常5000以下、好ましくは2000以下であり、一方、通常100以上、好ましくは200以上である。
また、低分子有機半導体化合物は結晶性を有することが好ましい。結晶性を有するp型半導体化合物は分子間相互作用が強く、活性層においてp型半導体化合物とn型半導体化合物との界面で生成した正孔(ホール)を効率よくアノードへ輸送しうる。本明細書において結晶性とは、分子間相互作用等によって配向の揃った3次元周期配列をとる、化合物の性質である。結晶性の測定方法としては、X線回折法(XRD)又は電界効果移動度測定法等が挙げられる。特に電界効果移動度測定において、正孔移動度が1.0×10−5cm/Vs以上であることが好ましく、1.0×10−4cm/Vs以上であることがより好ましい。一方、正孔移動度が通常1.0×10cm/Vs以下であることが好ましく、1.0×10cm/Vs以下であることがより好ましく、1.0×10cm/Vs以下であることさらに好ましい。
低分子有機半導体化合物としては、p型半導体材料として働きうるのであれば特段の制限はないが、具体的には、ナフタセン、ペンタセン又はピレン等の縮合芳香族炭化水素;α−セキシチオフェン等のチオフェン環を4個以上含むオリゴチオフェン類;チオフェン環、ベンゼン環、フルオレン環、ナフタレン環、アントラセン環、チアゾール環、チアジアゾール環及びベンゾチアゾール環のうち少なくとも一つ以上を含み、かつ合計4個以上連結したもの;フタロシアニン化合物及びその金属錯体、又はテトラベンゾポルフィリン等のポルフィリン化合物及びその金属錯体、等の大環状化合物等が挙げられる。好ましくは、フタロシアニン化合物及びその金属錯体又はポルフィリン化合物及びその金属錯体である。
ポルフィリン化合物及びその金属錯体(図中のZがCH)、及びフタロシアニン化合物及びその金属錯体(図中のZがN)としては、例えば、以下のような構造の化合物が
挙げられる。
ここで、Mは金属あるいは2個の水素原子を表し、金属としては、Cu、Zn、Pb、Mg、Pd、Ag、Co又はNi等の2価の金属のほか、軸配位子を有する3価以上の金属、例えば、TiO、VO、SnCl、AlCl、InCl又はSi等も挙げられる。
11〜R14はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1以上24以下のアルキル基である。炭素数1以上24以下のアルキル基とは、炭素数1以上24以下の飽和若しくは不飽和の鎖状炭化水素基又は炭素数3以上24以下の飽和若しくは不飽和の環式炭化水素である。その中でも好ましくは炭素数1以上12以下の飽和若しくは不飽和の鎖状炭化水素基又は炭素数3以上12以下の飽和若しくは不飽和の環式炭化水素である。
フタロシアニン化合物及びその金属錯体の中でも、好ましくは、29H,31H−フタロシアニン、銅フタロシアニン錯体、亜鉛フタロシアニン錯体、チタンフタロシアニンオキシド錯体、マグネシウムフタロシアニン錯体、鉛フタロシアニン錯体又は銅4,4’,4’’,4’’’−テトラアザ−29H,31H−フタロシアニン錯体であり、より好ましくは、29H,31H−フタロシアニン又は銅フタロシアニン錯体である。上記のうち一種の化合物を用いてもよいし、複数種の化合物の混合物を用いてもよい。
ポルフィリン化合物及びその金属錯体の中でも、好ましくは、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィン、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィンコバルト(II)、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィン銅(II)、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィン亜鉛(II)、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィンニッケル(II)、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィンバナジウム(IV)オキシド、5,10,15,20−テトラ(4−ピリジル)−21H,23H−ポルフィン、29H,31H−テトラベンゾ[b,g,l,q]ポルフィン、29H,31H−テトラベンゾ[b,g,l,q]ポルフィンコバルト(II)、29H,31H−テトラベンゾ[b,g,l,q]ポルフィン銅(II)、29H,31H−テトラベンゾ[b,g,l,q]ポルフィン亜鉛(II)、29H,31H−テトラベンゾ[b,g,l,q]ポルフィンニッケル(II)又は29H,31H−テトラベンゾ[b,g,l,q]ポルフィンバナジウム(IV)オキシドであり、好ましくは、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィン又は29H,31H−テトラベンゾ[b,g,l,q]ポルフィンである。上記のうち一種の化合物を用いてもよいし、複数種の化合物の混合物を用いてもよい。
低分子有機半導体化合物の成膜方法としては、蒸着法及び塗布法が挙げられる。塗布成膜できるというプロセス上の利点からは後者が好ましく、スプレー塗布法が好ましい。塗布法を用いる場合、低分子有機半導体化合物前駆体を塗布後に低分子有機半導体化合物に変換する方法がある。塗布成膜がより容易である点で、半導体化合物前駆体を用いる方法がより好ましい。
低分子有機半導体化合物前駆体とは、例えば加熱や光照射等の外的刺激を与えることにより、その化学構造が変化し、低分子有機半導体化合物に変換される化合物である。低分子有機半導体化合物前駆体は成膜性に優れることが好ましい。特に、塗布法を適用できるようにするためには、前駆体自体が液状で塗布可能であるか又は前駆体が何らかの溶媒に対して溶解性が高く溶液として塗布可能であることが好ましい。このため、低分子有機半導体化合物前駆体の溶媒に対する溶解性は、通常0.1重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上である。一方、上限に特段の制限はないが、通常50重量%以下、好ましくは40重量%以下である。
溶媒の種類としては、半導体前駆体化合物を均一に溶解あるいは分散できるものであれば特に限定されないが、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン又はデカン等の脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレン、シクロヘキシルベンゼン、クロロベンゼン又はオルトジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;メタノール、エタノール又はプロパノール等の低級アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン又はシクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル又は乳酸メチル等のエステル類;クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、トリクロロエタン又はトリクロロエチレン等のハロゲン炭化水素類;エチルエーテル、テトラヒドロフラン又はジオキサン等のエーテル類;ジメチルホルムアミド又はジメチルアセトアミド等のアミド類等が挙げられる。なかでも好ましくは、トルエン、キシレン、シクロヘキシルベンゼン、クロ
ロベンゼン又はオルトジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン又はシクロヘキサノン等のケトン類;クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、トリクロロエタン又はトリクロロエチレン等のハロゲン炭化水素類;エチルエーテル、テトラヒドロフラン又はジオキサン等のエーテル類である。より好ましくは、トルエン、キシレン又はシクロヘキシルベンゼン等の非ハロゲン芳香族炭化水素類;シクロペンタノン又はシクロヘキサノン等の非ハロゲン系ケトン類;テトラヒドロフラン又は1,4−ジオキサン等の非ハロゲン系脂肪族エーテル類である。特に好ましくは、トルエン、キシレン又はシクロヘキシルベンゼン等の非ハロゲン芳香族炭化水素類である。なお、1種の溶媒を単独で用いてもよく、2種以上の溶媒を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
さらに、低分子有機半導体化合物前駆体は、容易に半導体化合物に変換できることが好ましい。後述する低分子有機半導体化合物前駆体から半導体化合物への変換工程において、どのような外的刺激を半導体前駆体に与えるかは任意であるが、通常は、熱処理又は光処理等を行なう。好ましくは、熱処理である。この場合には、低分子有機半導体化合物前駆体が、骨格の一部として、逆ディールス・アルダー反応によって脱離可能な、所定の溶媒に対する親溶媒性の基を有することが好ましい。
また、低分子有機半導体化合物前駆体は、変換工程を経て、高い収率で半導体化合物に変換されることが好ましい。この際、低分子有機半導体化合物前駆体から変換して得られる半導体化合物の収率は有機太陽電池素子の性能を損なわない限り任意であるが、低分子有機半導体化合物前駆体から得られる低分子有機半導体化合物の収率は、通常90モル%以上、好ましくは95モル%以上、より好ましくは99モル%以上である。
低分子有機半導体化合物前駆体は上記の特徴を有するものであれば特に制限はないが、具体的には特開2007−324587号公報に記載の化合物等が用いられうる。なかでも好ましい例としては、下式で表される化合物が挙げられる。
上式において、D及びDの少なくとも一方はπ共役した2価の芳香族環を形成する基を表し、Z−Zは熱又は光により脱離可能な基であって、Z−Zが脱離して得られるπ共役化合物が低分子有機半導体化合物となるものを表す。また、D及びDのうちπ共役した2価の芳香族環を形成する基でないものは、置換又は無置換のエテニレン基を表す。
上式で表される化合物は、下記化学反応式に示すように熱又は光によりZ−Zが脱離して、平面性の高いπ共役化合物を生成する。この生成されたπ共役化合物が低分子有機半導体化合物である。この低分子有機半導体化合物が、p型半導体特性を有する材料として用いられる。
低分子有機半導体化合物前駆体の例としては、以下のものが挙げられる。以下において、t−Buはt−ブチル基を表し、Mは、ポルフィリン及びフタロシアニンについて説明したものと同様である。
低分子有機半導体化合物前駆体の低分子有機半導体化合物への変換の具体例としては、例えば以下のものが挙げられる。
低分子有機半導体化合物前駆体は、位置異性体が存在する構造であってもよく、またその場合、複数の位置異性体の混合物であってもよい。複数の位置異性体の混合物は、単一の位置異性体成分からなる低分子有機半導体化合物前駆体と比較して溶媒に対する溶解度が向上するため、塗布成膜が行いやすく好ましい。複数の位置異性体の混合物の溶解度が高い理由は、詳細なメカニズムは明確ではないが、化合物そのものの結晶性が潜在的に保持されつつも、複数の異性体混合物が溶液内に混在することで、三次元規則的な分子間相互作用が困難になるためと想定される。複数の位置異性体混合物の、非ハロゲン性溶媒への溶解度は、通常0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上、より好ましくは5重量%以上である。上限に制限は無いが、通常50重量%以下、より好ましくは40重量%以下である。
<1−4−1−2.高分子有機半導体化合物>
高分子有機半導体化合物として、特に限定はなく、ポリチオフェン、ポリフルオレン、ポリフェニレンビニレン、ポリチエニレンビニレン、ポリアセチレン又はポリアニリン等の共役ポリマー半導体;アルキル基やその他の置換基が置換されたオリゴチオフェン等の
ポリマー半導体;等が挙げられる。また、二種以上のモノマー単位を共重合させた半導体ポリマーも挙げられる。共役ポリマーとしては、例えば、Handbook of Conducting Polymers,3rd Ed.(全2巻),2007、Materials Science and Engineering,2001,32,1−40、Pure Appl.Chem.2002,74,2031−3044、Handbook of THIOPHENE−BASED MATERIALS(全2巻),2009等の公知文献に記載されたポリマーやその誘導体、及び記載されているモノマーの組み合わせによって合成し得るポリマーを用いることができる。p型半導体化合物として用いられる高分子有機半導体化合物は、一種の化合物でも複数種の化合物の混合物でもよい。
高分子有機半導体化合物のモノマー骨格及びモノマーの置換基は、溶解性、結晶性、成膜性、HOMOエネルギー準位及びLUMOエネルギー準位等を制御するために選択することができる。また、高分子有機半導体化合物が有機溶媒に可溶であることは、有機太陽電池素子を作製する際に塗布法により活性層を形成しうる点で好ましい。高分子有機半導体化合物の具体例としては以下のものが挙げられるが、これらに限定されることはない。
p型半導体化合物としてなかでも好ましくは、低分子有機半導体化合物としては、ナフタセン、ペンタセン、ピレン等の縮合芳香族炭化水素、フタロシアニン化合物及びその金属錯体、又はテトラベンゾポルフィリン(BP)等のポルフィリン化合物及びその金属錯体であり、高分子有機半導体化合物としては、ポリチオフェン等の共役ポリマー半導体である。活性層で用いられるp型半導体化合物は、一種の化合物でも複数種の化合物の混合物でもよい。
低分子有機半導体化合物及び/又は高分子有機半導体化合物は、成膜された状態において、何らかの自己組織化した構造を有していても、アモルファス状態であってもよい。
p型半導体化合物のHOMO(最高被占分子軌道)エネルギー準位は、特に限定は無く、後述のn型半導体化合物の種類によって選択することができる。特に、フラーレン化合物をn型半導体化合物として用いる場合、p型半導体化合物のHOMOエネルギー準位は、通常−5.7eV以上、より好ましくは−5.5eV以上、一方、通常−4.6eV以下、より好ましくは−4.8eV以下である。p型半導体化合物のHOMOエネルギー準位が−5.7eV以上であることによりp型半導体としての特性が向上し、p型半導体化合物のHOMOエネルギー準位が−4.6eV以下であることにより化合物の安定性が向上し、開放電圧(Voc)も向上する。
p型半導体化合物のLUMO(最低空分子軌道)エネルギー準位は、特に限定は無いが、後述のn型半導体化合物の種類によって選択することができる。特に、フラーレン化合物をn型半導体化合物として用いる場合、p型半導体化合物のLUMOエネルギー準位は、通常−3.7eV以上、好ましくは−3.6eV以上である。一方、通常−2.5eV以下、好ましくは−2.7eV以下である。p型半導体のLUMOエネルギー準位が−2.5eV以下であることにより、バンドギャップが調整され長波長の光エネルギーを有効に吸収することができ、短絡電流密度が向上する。p型半導体化合物のLUMOエネルギ
ー準位が−3.7eV以上であることにより、n型半導体化合物への電子移動が起こりやすくなり短絡電流密度が向上する。
<1−4−2.n型半導体化合物>
n型半導体化合物としては、特段の制限はないが、具体的にはフラーレン化合物、8−ヒドロキシキノリンアルミニウムに代表されるキノリノール誘導体金属錯体;ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド又はペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の縮合環テトラカルボン酸ジイミド類;ペリレンジイミド誘導体、ターピリジン金属錯体、トロポロン金属錯体、フラボノール金属錯体、ペリノン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、ベンズオキサゾール誘導体、チアゾール誘導体、ベンズチアゾール誘導体、ベンゾチアジアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、アルダジン誘導体、ビススチリル誘導体、ピラジン誘導体、フェナントロリン誘導体、キノキサリン誘導体、ベンゾキノリン誘導体、ビピリジン誘導体、ボラン誘導体、アントラセン、ピレン、ナフタセン又はペンタセン等の縮合多環芳香族炭化水素の全フッ化物;単層カーボンナノチューブ等が挙げられる。
そのなかでも、フラーレン化合物、ボラン誘導体、チアゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾチアジアゾール誘導体、N−アルキル置換されたナフタレンテトラカルボン酸ジイミド及びN−アルキル置換されたペリレンジイミド誘導体が好ましく、フラーレン化合物、N−アルキル置換されたペリレンジイミド誘導体及びN−アルキル置換されたナフタレンテトラカルボン酸ジイミドがより好ましい。上記のうち一種の化合物を用いてもよいし、複数種の化合物の混合物を用いてもよい。また、n型半導体化合物としては、n型高分子半導体化合物も挙げられる。
n型半導体化合物のLUMOエネルギー準位は、特に限定はされないが、例えばサイクリックボルタモグラム測定法により算出される真空準位に対する値が、通常−3.85eV以上、好ましくは−3.80eV以上である。p型半導体化合物から効率良くn型半導体化合物へと電子を移動させるためには、p型半導体化合物とn型半導体化合物とのLUMOエネルギー準位の相対関係が重要である。具体的には、p型半導体化合物のLUMOエネルギー準位が、n型半導体化合物のLUMOエネルギー準位より所定の値だけ上にあること、言い換えると、n型半導体化合物の電子親和力がp型半導体化合物の電子親和力より所定のエネルギーだけ大きいことが好ましい。開放電圧(Voc)はp型半導体化合物のHOMOエネルギー準位とn型半導体化合物のLUMOエネルギー準位の差に依存するため、n型半導体化合物のLUMOを高くすると、Vocが高くなる傾向がある。一方、LUMOの値は通常−1.0eV以下、好ましくは−2.0eV以下、より好ましくは−3.0eV以下、更に好ましくは−3.3eV以下である。n型半導体化合物のLUMOエネルギー準位を低くすることで、電子の移動が起こりやすくなり、短絡電流(Jsc)が高くなる傾向がある。
n型半導体化合物のLUMOエネルギー準位の算出方法は、理論的に計算値で求める方法と実際に測定する方法が挙げられる。理論的に計算値で求める方法としては、半経験的分子軌道法及び非経験的分子軌道法があげられる。実際に測定する方法としては、紫外可視吸収スペクトル測定法又はサイクリックボルタモグラム測定法が挙げられる。その中でも好ましくはサイクリックボルタモグラム測定法である。
n型半導体化合物のHOMOエネルギー準位は、特に限定は無いが、通常−5.0eV以下、好ましくは−5.5eV以下である。一方、通常−7.0eV以上、好ましくは−6.6eV以上である。n型半導体化合物のHOMOエネルギー準位が−7.0eV以上であることは、n型半導体化合物の光吸収も発電に利用しうる点で好ましい。n型半導体化合物のHOMOエネルギー準位が−5.0eV以下であることは、正孔の逆移動を阻止
できる点で好ましい。
n型半導体化合物の電子移動度は、特段の制限はないが、通常1.0×10−6cm/Vs以上であり、1.0×10−5cm/Vs以上が好ましく、5.0×10−5cm/Vs以上がより好ましく、1.0×10−4cm/Vs以上がさらに好ましい。一方、通常1.0×10cm/Vs以下であり、1.0×10cm/Vs以下が好ましく、5.0×10cm/Vs以下がより好ましい。n型半導体化合物の電子移動度が1.0×10−6cm/Vs以上であることは、有機太陽電池素子の電子拡散速度向上、短絡電流向上、変換効率向上等の効果が得られうる点で好ましい。電子移動度の測定方法としては電界効果トランジスタ(FET)法が挙げられ、公知文献(特開2010−045186号公報)に記載の方法により実施することができる。
n型半導体化合物の25℃でのトルエンに対する溶解度は、通常0.5重量%以上であり、0.6重量%以上が好ましく、0.7重量%以上がより好ましい。一方、通常90重量%以下が好ましく、80重量%以下がより好ましく、70重量%以下がさらに好ましい。n型半導体化合物の25℃でのトルエンに対する溶解度が0.5重量%以上であることは、溶液中でのn型半導体化合物の分散安定性が向上し、凝集、沈降、分離等を起こしにくくなるために、好ましい。
以下、好ましいn型半導体化合物の例について説明する。
<1−4−2−1.フラーレン化合物>
フラーレン化合物としては、一般式(n1)、(n2)、(n3)及び(n4)で表される部分構造を有するものが好ましい例として挙げられる。
上式中、FLNは、閉殻構造を有する炭素クラスターであるフラーレンを表す。フラーレンの炭素数は、通常60以上130以下の偶数であれば何でもよい。フラーレンとしては、例えば、C60、C70、C76、C78、C82、C84、C90、C94、C96及びこれらよりも多くの炭素を有する高次の炭素クラスター等が挙げられる。その中で
も、C60又はC70が好ましい。フラーレンとしては、一部のフラーレン環上の炭素−炭素結合が切れていてもよい。また、フラーレンを構成する炭素原子の一部が、他の原子に置き換えられていてもよい。さらにフラーレンは、金属原子、非金属原子あるいはこれらから構成される原子団をフラーレンケージ内に内包していてもよい。
a、b、c及びdは整数であり、a、b、c及びdの合計は通常1以上であり、一方、通常5以下であり、好ましくは3以下である。(n1)、(n2)、(n3)及び(n4)中の部分構造は、フラーレン骨格中の同一の五員環又は六員環に結合している。一般式(n1)では、フラーレン骨格中の同一の五員環又は六員環上の隣接する2つの炭素原子に対して、−R21と、−(CHとがそれぞれ結合している。一般式(n2)では、フラーレン骨格中の同一の5員環又は6員環上の隣接する2つの炭素原子に対して、−C(R25)(R26)−N(R27)−C(R28)(R29)−が付加して5員環を形成している。一般式(n3)では、フラーレン骨格中の同一の5員環又は6員環上の隣接する2つの炭素原子に対して、−C(R30)(R31)−C−C−C(R32)(R33)−が付加して6員環を形成している。一般式(n4)では、フラーレン骨格中の同一の5員環又は6員環上の隣接する2つの炭素原子に対して−C(R34)(R35)−が付加して3員環を形成している。Lは1以上8以下の整数である。Lとして好ましくは1以上4以下の整数であり、さらに好ましくは1以上2以下の整数である。
一般式(n1)中のR21は、置換基を有していてもよい炭素数1以上14以下のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1以上14以下のアルコキシ基又は置換基を有していてもよい芳香族基である。
アルキル基としては、炭素数1以上10以下のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基又はイソブチル基がより好ましく、メチル基又はエチル基が更に好ましい。アルコキシ基としては、炭素数1以上10以下のアルコキシ基が好ましく、炭素数1以上6以下のアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基又はエトキシ基が特に好ましい。芳香族基としては、炭素数6以上20以下の芳香族炭化水素基又は炭素数2以上20以下の芳香族複素環基が好ましく、フェニル基、チエニル基、フリル基又はピリジル基がより好ましく、フェニル基又はチエニル基が更に好ましい。
上記のアルキル基、アルコキシ基及び芳香族基が有していてもよい置換基としては特に限定されないが、ハロゲン原子又はシリル基が好ましい。ハロゲン原子としてはフッ素原子が好ましい。シリル基としては、ジアリールアルキルシリル基、ジアルキルアリールシリル基、トリアリールシリル基又はトリアルキルシリル基が好ましく、ジアルキルアリールシリル基がより好ましく、ジメチルアリールシリル基がさらに好ましい。
一般式(n1)中のR22〜R24は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1以上14以下のアルキル基又は置換基を有していてもよい芳香族基である。
アルキル基としては、炭素数1以上10以下のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基又はn−ヘキシル基が好ましい。アルキル基が有していてもよい置換基としてはハロゲン原子が好ましい。ハロゲン原子としてはフッ素原子が好ましい。フッ素原子で置換されたアルキル基としては、パーフルオロオクチル基、パーフルオロヘキシル基又はパーフルオロブチル基が好ましい。
芳香族基としては、炭素数6以上20以下の芳香族炭化水素基又は炭素数2以上20以
下の芳香族複素環基が好ましく、フェニル基、チエニル基、フリル基又はピリジル基がより好ましく、フェニル基又はチエニル基が更に好ましい。芳香族基が有していてもよい置換基は特に限定されないが、フッ素原子、炭素数1以上14以下のアルキル基、炭素数1以上14以下のフッ化アルキル基、炭素数1以上14以下のアルコキシ基又は炭素数3以上10以下の芳香族基が好ましく、フッ素原子又は炭素数1以上14以下のアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基、n−ブトキシ基又は2−エチルヘキシルオキシ基が更に好ましい。芳香族基が置換基を有する場合、その数に限定は無いが、1以上3以下が好ましく、1がより好ましい。芳香族基が置換基を複数有する場合、その置換基の種類は異なっていてもよいが、好ましくは同一である。
一般式(n2)中のR25〜R29は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1以上14以下のアルキル基又は置換基を有していてもよい芳香族基である。
アルキル基として好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ヘキシル基又はオクチル基であり、より好ましくはメチル基である。アルキル基が有していてもよい置換基としては、特に限定されないが、ハロゲン原子が好ましい。ハロゲン原子としてはフッ素原子が好ましい。フッ素原子で置換されたアルキル基としては、パーフルオロオクチル基、パーフルオロヘキシル基又はパーフルオロブチル基が好ましい。
芳香族基としては、炭素数6以上20以下の芳香族炭化水素基又は炭素数2以上20以下の芳香族複素環基が好ましく、フェニル基又はピリジル基がより好ましく、フェニル基がさらに好ましい。芳香族基が有していてもよい置換基としては、特に限定されないが、好ましくはフッ素原子、炭素数1以上14以下のアルキル基、又は炭素数1以上14以下のアルコキシ基である。アルキル基にはフッ素原子が置換されていてもよい。さらに好ましくは炭素数1以上14以下のアルコキシ基であり、さらに好ましくはメトキシ基である。置換基を有する場合、その数に限定は無いが、好ましくは1以上3以下であり、より好ましくは1である。置換基の種類は異なっていてもよいが、好ましくは同一である。
一般式(n3)中のArは、置換基を有していてもよい炭素数6以上20以下の芳香族炭化水素基又は炭素数2以上20以下の芳香族複素環基であり、好ましくはフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、チエニル基、フリル基、ピリジル基、ピリミジル基、キノリル基又はキノキサリル基であり、さらに好ましくはフェニル基、チエニル基又はフリル基である。
有していてもよい置換基として限定は無いが、フッ素原子、塩素原子、水酸基、シアノ基、シリル基、ボリル基、アルキル基で置換していてもよいアミノ基、炭素数1以上14以下のアルキル基、炭素数1以上14以下のアルコキシ基、炭素数2以上14以下のアルキルカルボニル基、炭素数1以上14以下のアルキルチオ基、炭素数2以上14以下のアルケニル基、炭素数2以上14以下のアルキニル基、炭素数2以上14以下のエステル基、炭素数3以上20以下のアリールカルボニル基、炭素数2以上20以下のアリールチオ基、炭素数2以上20以下のアリールオキシ基、炭素数6以上20以下の芳香族炭化水素基又は炭素数2以上20以下の複素環基が好ましく、フッ素原子、炭素数1以上14以下のアルキル基、炭素数1以下14以下のアルコキシ基、炭素数2以上14以下のエステル基、炭素数2以上14以下のアルキルカルボニル基又は炭素数3以上20以下のアリールカルボニル基がより好ましい。炭素数1以上14以下のアルキル基は1又は2以上のフッ素で置換されていてもよい。
炭素数1以上14以下のアルキル基としては、メチル基、エチル基又はプロピル基が好
ましい。炭素数1以上14以下のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基又はプロポキシ基が好ましい。炭素数1以上14以下のアルキルカルボニル基としては、アセチル基が好ましい。炭素数2以上14以下のエステル基としては、メチルエステル基又はn−ブチルエステル基が好ましい。炭素数3以上20以下のアリールカルボニル基としては、ベンゾイル基が好ましい。
置換基を有する場合、その数に限定は無いが、1以上4以下が好ましく、1以上3以下がより好ましい。置換基が複数の場合、その種類は異なっていてもよいが、好ましくは同一である。
一般式(n3)中のR30〜R33は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいアルコキシ基又は置換基を有していてもよいアルキルチオ基である。R30又はR31は、R32とR33とのいずれか一方と結合して環を形成していてもよい。環を形成する場合における構造としては、例えば、芳香族基が縮合したビシクロ構造である一般式(n5)に示す構造が挙げられる。
一般式(n5)においてfはcと同義であり、Zは、酸素原子、硫黄原子、アミノ基、アルキレン基又はアリーレン基である。アルキレン基としては炭素数1以上2以下が好ましい。アリーレン基としては炭素数5以上12以下が好ましく、例えばフェニレン基が挙げられる。アミノ基は、メチル基やエチル基等の炭素数1以上6以下のアルキル基で置換されていてもよい。アルキレン基は、メトキシ基等の炭素数1以上6以下のアルコキシ基、炭素数1以上5以下の脂肪族炭化水素基、炭素数6以上20以下の芳香族炭化水素基又は炭素数2以上20以下の芳香族複素環基で置換されていてもよい。アリーレン基は、メトキシ基等の炭素数1以上6以下のアルコキシ基、炭素数1以上5以下の脂肪族炭化水素基、炭素数6以上20以下の芳香族炭化水素基又は炭素数2以上20以下の芳香族複素環基で置換されていてもよい。
式(n5)に示す構造として特に好ましくは、下記式(n6)又は式(n7)で表される構造である。
一般式(n4)中のR34〜R35は、それぞれ独立して、水素原子、アルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよい炭素数1以上14以下のアルキル基又は置換基を有していてもよい芳香族基である。
アルコキシカルボニル基を構成するアルコキシ基としては、炭素数1以上12以下のアルコキシ基又は炭素数1以上12以下のフッ化アルコキシ基が好ましく、炭素数1以上12以下のアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、n−ヘキソキシ基、オクトキシ基、2−プロピルペントキシ基、2−エチルヘキソキシ基、シクロヘキシルメトキシ基又はベンジルオキシ基がさらに好ましく、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基又はn−ヘキソキシ基が特に好ましい。
アルキル基としては、炭素数1以上8以下の直鎖アルキル基が好ましく、n−プロピル基がより好ましい。アルキル基が有していてもよい置換基には特に限定は無いが、好ましくはアルコキシカルボニル基である。アルコキシカルボニル基を構成するアルコキシ基としては、炭素数1以上14以下のアルコキシ基又はフッ化アルコキシ基が好ましく、炭素数1以上14以下の炭化水素基がより好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、n−ヘキソキシ基、オクトキシ基、2−プロピルペントキシ基、2−エチルヘキソキシ基、シクロヘキシルメトキシ基又はベンジルオキシ基がさらに好ましく、メトキシ基又はn−ブトキシ基が特に好ましい。
芳香族基としては、炭素数6以上20以下の芳香族炭化水素基又は炭素数2以上20以下の芳香族複素環基が好ましく、フェニル基、ビフェニル基、チエニル基、フリル基又はピリジル基が好ましく、フェニル基又はチエニル基がさらに好ましい。芳香族基が有していてもよい置換基としては、炭素数1以上14以下のアルキル基、炭素数1以上14以下のフッ化アルキル基又は炭素数1以上14以下のアルコキシ基が好ましく、炭素数1以上14以下のアルコキシ基がさらに好ましく、メトキシ基又は2−エチルヘキシルオキシ基が特に好ましい。置換基を有する場合、その数に限定は無いが、好ましくは1以上3以下であり、より好ましくは1である。置換基の種類は異なっていても同一でもよく、好ましくは同一である。
一般式(n4)の構造として好ましくは、R34、R35が共にアルコキシカルボニル基であるか、R34、R35が共に芳香族基であるか、又はR34が芳香族基でありかつR35が3−(アルコキシカルボニル)プロピル基であるものが挙げられる。
フラーレン化合物としては、上記のうち一種の化合物を用いてもよいし、複数種の化合物の混合物を用いてもよい。
塗布法によりフラーレン化合物を成膜するためには、フラーレン化合物自体が液状で塗布可能であるか、又はフラーレン化合物が何らかの溶媒に対して溶解性が高く溶液として塗布可能であることが好ましい。溶解性の好適な範囲をあげると、25℃でのトルエンに対する溶解度が、通常0.1重量%以上、好ましくは0.4重量%以上、より好ましくは0.7重量%以上である。フラーレン化合物の溶解度が0.1重量%以上であることは、フラーレン化合物の溶液中での分散安定性が増加し、凝集、沈降、分離等が起こりにくくなるために好ましい。
フラーレン化合物を溶解させる溶媒としては、非極性有機溶媒であれば特段に制限はないが、非ハロゲン系溶媒が好ましい。ジクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒を用いることも可能であるが、環境負荷の面等から代替が求められている。非ハロゲン系溶媒としては、例えば、非ハロゲン系芳香族炭化水素類が挙げられる。その中でも好ましくはトルエン、キシレン又はシクロヘキシルベンゼン等である。
フラーレン化合物の製造方法としては、特に制限はないが、例えば、部分構造(n1)を有するフラーレン化合物の合成は、国際公開第2008/059771号やJ.Am.Chem.Soc.,2008,130(46),15429−15436のような公知文献の記載に従って実施可能である。
部分構造(n2)を有するフラーレン化合物の合成は、J.Am.Chem.Soc.1993,115,9798−9799、Chem.Mater.2007,19,5363−5372及びChem.Mater.2007,19,5194−5199のような公知文献の記載に従って実施可能である。
部分構造(n3)を有するフラーレン化合物の合成は、Angew.Chem.Int.Ed.Engl.1993,32,78−80、Tetrahedron Lett.1997,38,285−288、国際公開第2008/018931号及び国際公開第2009/086210号のような公知文献の記載に従って実施可能である。
部分構造(n4)を有するフラーレン化合物の合成は、J.Chem.Soc.,Perkin Trans.1,1997 1595、Thin Solid Films 489(2005)251−256、Adv.Funct.Mater.2005,15,1979−1987及びJ.Org.Chem.1995,60,532−538のような公知文献の記載に従って実施可能である。
<1−4−2−2.N−アルキル置換されたペリレンジイミド誘導体>
N−アルキル置換されたペリレンジイミド誘導体としては、特段の制限はないが、具体的には国際公開第2008/063609号、国際公開第2009/115553号、国際公開第2009/098250号、国際公開第2009/000756号及び国際公開第2009/091670号に記載されている化合物が挙げられる。これらの化合物は電子移動度が高く、可視域の光を吸収しうるために、電荷輸送と発電との両方に寄与しうる点から好ましい。
<1−4−2−3.ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド>
ナフタレンテトラカルボン酸ジイミドとしては、特段の制限はないが、具体的には国際公開第2008/063609号、国際公開第2007/146250号及び国際公開第2009/000756号に記載されている化合物が挙げられる。これらの化合物は電子移動度が高く、溶解性が高く塗布性に優れている点から好ましい。
<1−4−2−4.n型高分子半導体化合物>
n型高分子半導体化合物としては、特段の制限はないが、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の縮合環テトラカルボン酸ジイミド類、ペリレンジイミド誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンズオキサゾール誘導体、チアゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾチアジアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ピラジン誘導体、フェナントロリン誘導体、キノキサリン誘導体、ビピリジン誘導体及びボラン誘導体のうち少なくとも一つを構成ユニットとするn型高分子半導体化合物等が挙げられる。
その中でも、ボラン誘導体、チアゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾチアジアゾール誘導体、N−アルキル置換されたナフタレンテトラカルボン酸ジイミド及びN−アルキル置換されたペリレンジイミド誘導体のうち少なくとも一つを構成ユニットとするポリマーが好ましく、N−アルキル置換されたペリレンジイミド誘導体及びN−アルキル置換されたナフタレンテトラカルボン酸ジイミドのうち少なくとも一つを構成ユニットとするn型高分子半導体化合物がより好ましい。n型高分子半導体化合物として上記のうち一種の化合物を用いてもよいし、複数種の化合物の混合物を用いてもよい。
n型高分子半導体化合物として具体的には、国際公開第2009/098253号、国際公開第2009/098250号、国際公開第2010/012710号及び国際公開第2009/098250号に記載されている化合物が挙げられる。これらの化合物は可視域の光を吸収しうるために発電に寄与することができ、粘度が高く、塗布性に優れている点から好ましい。
<1−5.光電変換特性>
有機太陽電池素子の光電変換特性は次のようにして求めることができる。有機太陽電池素子にソーラシュミレーターでAM1.5G条件の光を照射強度100mW/cmで照射して、電流−電圧特性を測定する。得られた電流−電圧曲線から、光電変換効率(PCE)、短絡電流密度(Jsc)、開放電圧(Voc)、フィルファクター(FF)、直列抵抗、シャント抵抗といった光電変換特性を求めることができる。
有機太陽電池素子の光電変換効率は、特段の制限はないが、通常1%以上、好ましくは1.5%以上、より好ましくは2%以上である。一方、上限に特段の制限はなく、高ければ高いほどよい。
また、有機太陽電池素子の耐久性を測定する方法としては、有機太陽電池素子を大気暴露する前後での、光電変換効率の維持率を求める方法が挙げられる。
(維持率)=(大気暴露N時間後の光電変換効率)/(大気暴露直前の光電変換効率)
有機太陽電池素子を実用化するには、製造が簡便かつ安価であること以外に、高い光電変換効率及び高い耐久性を有することが重要である。この観点から、1週間大気暴露する前後での光電変換効率の維持率は、60%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、高ければ高いほどよい。
<2.有機太陽電池素子の設置方法>
次に、本発明の実施態様に係る有機太陽電池素子の設置方法について、図を参照して説明する。図2に示すように、本発明の有機太陽電池素子は、素子基板106が光入射面(受光面)となるようにして、素子基板に対応する曲面形状を有する設置対象109に設置することができる。対応する曲面形状とは、例えば素子基板106の形状と設置対象109の設置部分の形状とが略同じ形状になっていることを意味する。設置方法は、有機太陽電池素子が設置対象109に固定されれば特に限定されない。例えば、図2に示すように、有機太陽電池素子の上部電極105を直接設置対象に接着してもよく、素子基板106
と設置対象とを固定部材を用いて固定してもよい。設置対象109の形状が曲面や3次元形状を有する場合でも、当該設置対象の形状に対応する形状の素子基板106を用いた太陽電池素子とすることで、あらゆる曲面や3次元形状の面に設置可能となる。設置(接着)の際に、太陽電池素子を保護するために、封止層、ゲッター材層、ガスバリア層および/又はバックシートを上部電極105と設置対象109の間に設けてもよい。
素子基板106の受光面にさらに封止層、ゲッター材層、ガスバリア層、耐候性保護層および/又は紫外線カット層を設けてもよいが、素子基板の水蒸気透過率および酸素透過性が高い場合は、これらは設けなくてもよい。封止材層、ゲッター材層、ガスバリア層、バックシート、耐候性保護層および紫外線カット層については、後述する。
<3.有機太陽電池モジュール>
有機太陽電池素子は、一般に酸素や水などに弱く、大気に暴露することで光電変換性能が低下するなどの劣化のおそれがある。従って、屋外に設置する等、有機太陽電池素子を製造してから設置するまでに時間がかかる場合には、少なくともガスバリア層を積層させることにより太陽電池素子を封止して有機太陽電池モジュールとすることが好ましい。

本発明に係る有機太陽電池素子を封止した有機太陽電池モジュールの一態様を図3に示す。図3に示す有機太陽電池モジュール11は、耐候性保護層1と、紫外線カット層2と、ガスバリア層3と、ゲッター材層4と、封止層5と、有機太陽電池素子6と、封止層7と、ゲッター材層8と、ガスバリア層9と、バックシート10とをこの順に備える構成となっている。そして、耐候性保護層1が形成された側(図中下方)から光が照射されて、有機太陽電池素子6が発電するようになっている。有機太陽電池モジュール11の形状は、有機太陽電池素子6の素子基板の形状に応じた任意の形状とすることができる。なお、本発明の有機太陽電池モジュールにおいて耐候性保護層1、紫外線カット層2、ガスバリア層3、ゲッター材層4、封止層5、封止層7、ゲッター材層8、ガスバリア層9およびバックシート10層は、全ての層を含む必要はなく、各層を必要に応じて任意に設ければよい。例えば、後述するバックシート10としてアルミ箔の両面にフッ素系樹脂フィルムを接着したシート等の防水性の高いシートを用いる場合は、用途によりゲッター材層8及び/又はガスバリア層9を用いなくてもよい。以上のような構成を有する太陽電池モジュールを製造した後に、該モジュールに含まれる太陽電池素子の素子基板側が光入射面となるようにして、素子基板に対応する曲面形状を有する設置対象に設置することも可能である。
本発明に係る有機太陽電池モジュールは、有機太陽電池モジュールのうち変形により破損の生じやすい有機太陽電池素子、具体的には下部電極乃至上部電極は、基板に直接積層することにより製造するが、変形による破損の生じづらい層、または機能の損失が生じづらい層、具体的には、封止層、ゲッター材層、耐候性保護層、および紫外線カット層等は、各層の材質でできたフィルムを、太陽電池素子の表面に設置してもよい。以下、各層および主な形成方法について説明する。
<3−1.耐候性保護層1>
耐候性保護層1は天候変化から有機太陽電池素子6を保護する層である。耐候性保護層1で有機太陽電池素子6を覆うことにより、有機太陽電池素子6等を天候変化等から保護し、発電能力を高く維持するようにしている。耐候性保護層1は、有機太陽電池モジュール11の最表層に位置するため、耐候性、耐熱性、透明性、撥水性、耐汚染性及び/又は機械強度等の、有機太陽電池の表面被覆材として好適な性能を備え、しかもそれを屋外暴露において長期間維持する性質を有することが好ましい。
また、耐候性保護層1は、有機太陽電池素子6の光吸収を妨げない観点から可視光を透過させることが好ましい。例えば、可視光(波長360〜830nm)の透過率が80%以上であることが好ましく、上限に制限はない。さらに、有機太陽電池モジュール11は
光を受けて熱せられることが多いため、耐候性保護層1も熱に対する耐性を有することが好ましい。この観点から、耐候性保護層1の構成材料の融点は、通常100℃以上350℃以下である。
耐候性保護層1を構成する材料は、天候変化から有機太陽電池素子6を保護することができるものであれば任意である。その材料の例を挙げると、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、AS(アクリロニトリル−スチレン)樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、フッ素系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂、各種ナイロン等のポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド−イミド樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース系樹脂、シリコーン系樹脂又はポリカーボネート樹脂等が挙げられる。樹脂の耐候性が良いと言う点からは、エチレン・テトラフロロエチレン共重合体樹脂や、ポリフッ化ビニリデン樹脂などのフッ素系樹脂を好ましく用いる事が出来る。
なお、耐候性保護層1は1種の材料で形成されていてもよく、2種以上の材料で形成されていてもよい。また、耐候性保護層1は単層でもよいが、2層以上であってもよい。
耐候性保護層1の厚みは特に規定されないが、通常10μm以上200μm以下である。
また耐候性保護層1には、他の層との接着性の改良のために、コロナ処理及び/又はプラズマ処理等の表面処理を行ってもよい。
耐候性保護層1は、有機太陽電池モジュール11においてできるだけ外側に設けることが好ましい。有機太陽電池モジュール11の構成部材のうちより多くのものを保護できるようにするためである。
耐候性保護層は、上記樹脂組成物の塗布液を、製造中の直接太陽電池に塗工し乾燥することで形成できる。また、耐候性保護層の成分・厚みに相当する耐候性保護フィルムを積層してもよい。
<3−2.紫外線カット層2>
紫外線カット層2は紫外線の透過を防止する層である。紫外線カット層2を有機太陽電池モジュール11の受光部分に設け、紫外線カット層2で有機太陽電池素子6の受光面6aを覆うことにより、有機太陽電池素子6及び必要に応じてガスバリア層3、9等を紫外線から保護し、発電能力を高く維持することができるようになっている。
紫外線カット層2に要求される紫外線の透過抑制能力の程度は、紫外線(例えば、波長300nm)の透過率が50%以下であることが好ましく、下限に制限はない。また、紫外線カット層2は、有機太陽電池素子6の光吸収を妨げない観点から可視光を透過させることが好ましい。例えば、可視光(波長360〜830nm)の透過率が80%以上であることが好ましく、上限に制限はない。
さらに、有機太陽電池モジュール11は光を受けて熱せられることが多いため、紫外線カット層2も熱に対する耐性を有することが好ましい。この観点から、紫外線カット層2の構成材料の融点は、通常95℃以上、好ましくは100℃以上、より好ましくは110℃以上であり、通常350℃以下、好ましくは200℃以下である。
また、紫外線カット層2は、柔軟性が高く、隣接する層との接着性が良好であり、水蒸気や酸素をカットしうることが好ましい。
紫外線カット層2を構成する材料は、紫外線の強度を弱めることができるものであれば任意である。その材料の例を挙げると、エポキシ系、アクリル系、ウレタン系又はエステル系の樹脂に紫外線吸収剤を配合した樹脂組成物等が挙げられる。また、紫外線吸収剤を
樹脂中に分散あるいは溶解させた樹脂組成物を用いてもよい。
紫外線吸収剤としては、例えば、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系、トリアジン系のもの等を用いることができる。なお、紫外線吸収剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
紫外線吸収層は、紫外線吸収剤を含む樹脂組成物の塗布液を、直接太陽電池に塗工し乾燥することで形成できる。また、紫外線吸収剤を含む樹脂組成物の塗布液を、離型フィルム上に塗工し、加熱乾燥後に剥離する事で得た紫外線カットフィルムを、製造中の太陽電池素子に積層することもできる。離型フィルムの材質は特に限定されないが、耐熱性、柔軟性のバランスが良好なフィルムが得られる点で、例えばポリエステルが挙げられる。
このような紫外線カットフィルムの具体的な商品の例を挙げると、カットエース(MKVプラスティック株式会社)等が挙げられる。なお、紫外線カット層2は1種の材料で形成されていてもよく、2種以上の材料で形成されていてもよい。
また、紫外線カット層2は単層により形成されていてもよいが、2層以上の積層であってもよい。紫外線カット層2の厚みは特に規定されないが、通常5μm以上200μm以下である。
紫外線カット層2は、有機太陽電池素子6の受光面6aの少なくとも一部を覆う位置に設ければよいが、好ましくは有機太陽電池素子6の受光面6aの全てを覆う位置に設ける。ただし、有機太陽電池素子6の受光面6aを覆う位置以外の位置にも紫外線カット層2が設けられていてもよい。
<3−3.ガスバリア層3>
ガスバリア層3は水及び酸素の透過を防止する層である。ガスバリア層3で有機太陽電池素子6を被覆することにより、有機太陽電池素子6を水及び酸素から保護し、発電能力を高く維持することができる。
ガスバリア層3に要求される防湿能力の程度は、有機太陽電池素子6の種類等に応じて様々であるが、単位面積(1m)の1日あたりの水蒸気透過率が、通常1×10−1g/m/day以下であることが好ましく、下限に制限はない。
ガスバリア層3に要求される酸素透過性の程度は、有機太陽電池素子6の種類等に応じて様々であるが、単位面積(1m)の1日あたりの酸素透過率が、通常1×10−1cc/m/day/atm以下であることが好ましく、下限に制限はない。
また、ガスバリア層3は、有機太陽電池素子6の光吸収を妨げない観点から可視光を透過させることが好ましい。例えば、可視光(波長360〜830nm)の透過率は、通常60%以上であり、上限に制限はない。
さらに、有機太陽電池モジュール11は光を受けて熱せられることが多いため、ガスバリア層3も熱に対する耐性を有することが好ましい。この観点から、ガスバリア層3の構成材料の融点は、通常100℃以上350℃以下である。
ガスバリア層3の具体的な構成は、有機太陽電池素子6を水から保護できる限り任意である。ただし、ガスバリア層3を透過しうる水蒸気や酸素の量を少なくできる層ほど製造コストが高くなるため、これらの点を総合的に勘案して適切なものを使用することが好ましい。
ガスバリア層3の形成方法は特に限定されないが、例えば、ガスバリアフィルムを積層することにより形成することが可能である。好適に用いられるガスバリアフィルムとしては、例えば、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)或いは二軸延伸ポリエチレンナフタレート(PEN)等の基材フィルムにSiO、SiN、SiC等を真空蒸着したフィルム等が挙げられる。
なお、ガスバリア層3は1種の材料で形成されていてもよく、2種以上の材料で形成されていてもよい。また、ガスバリア層3は単層でもよいが、2層以上の積層であってもよい。
ガスバリア層3の厚みは特に規定されないが、通常5μm以上200μm以下である。
ガスバリア層3は、有機太陽電池素子6を被覆して湿気及び酸素から保護できればその形成位置に制限は無いが、有機太陽電池素子6の正面(受光面側の面。図3では下側の面)及び背面(受光面とは反対側の面。図3では上側の面)を覆うことが好ましい。有機太陽電池モジュール11においてはその正面及び背面が他の面よりも大面積に形成されることが多いためである。本実施態様ではガスバリア層3が有機太陽電池素子6の正面を覆い、後述するガスバリア層9が有機太陽電池素子6の背面を覆うようになっている。なお、後述するバックシート10としてアルミ箔の両面にフッ素系樹脂フィルムを接着したシート等の防水性の高いシートを用いる場合は、用途によりゲッター材層8及び/又はガスバリア層9を用いなくてもよい。
ガスバリア層は、SiO、SiN、SiC等の無機層を含むため、他の層よりも変形による機能の損失が生じやすい。従って、ガスバリア層を形成する際に、特に場所により延伸の度合いが異なる3次元曲面に設置する場合には、ガスバリアフィルムを用いずに、直接形成するのが好ましい。
<3−4.ゲッター材層4>
ゲッター材層4は水分及び/又は酸素を吸収する層である。ゲッター材層4で有機太陽電池素子6を覆うことにより、有機太陽電池素子6等を水分及び/又は酸素から保護し、発電能力を高く維持するようにしている。ここで、ゲッター材層4は上記のようなガスバリア層3とは異なり、水分の透過を妨げるものではなく、水分を吸収するものである。水分を吸収する層を用いることにより、ガスバリア層3等で有機太陽電池素子6を被覆した場合に、ガスバリア層3及び9で形成される空間に僅かに浸入する水分をゲッター材層4が捕捉して水分による有機太陽電池素子6への影響を排除できる。
ゲッター材層4の水分吸収能力の程度は、通常0.1mg/cm以上であり、上限に制限は無いが、通常10mg/cm以下である。また、ゲッター材層4が酸素を吸収することにより、ガスバリア層3及び9等で有機太陽電池素子6を被覆した場合に、ガスバリア層3及び9で形成される空間に僅かに浸入する酸素をゲッター材層4が捕捉して酸素による有機太陽電池素子6への影響を排除できる。
さらに、ゲッター材層4は、有機太陽電池素子6の光吸収を妨げない観点から可視光を透過させることが好ましい。例えば、可視光(波長360〜830nm)の透過率は、通常60%以上であり、上限に制限はない。
さらに、有機太陽電池モジュール11は光を受けて熱せされることが多いため、ゲッター材層4も熱に対する耐性を有することが好ましい。この観点から、ゲッター材層4の構成材料の融点は、通常100℃以上350℃以下である。
ゲッター材層4を構成する材料は、水分及び/又は酸素を吸収することができるもので
あれば任意である。その材料の例を挙げると、水分を吸収する物質としてアルカリ金属、アルカリ土類金属又はアルカリ土類金属の酸化物;アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物;シリカゲル、ゼオライト系化合物、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム又は硫酸ニッケル等の硫酸塩;アルミニウム金属錯体又はアルミニウムオキサイドオクチレート等の有機金属化合物等が挙げられる。具体的には、アルカリ土類金属としては、Ca、Sr又はBa等が挙げられる。アルカリ土類金属の酸化物としては、CaO、SrO又はBaO等が挙げられる。その他にZr−Al−BaOやアルミニウム金属錯体等も挙げられる。具体的な商品名を挙げると、例えば、OleDry(双葉電子社製)等が挙げられる。
酸素を吸収する物質としては、活性炭、シリカゲル、活性アルミナ、モレキュラーシーブ、酸化マグネシウム又は酸化鉄等が挙げられる。またFe、Mn、Zn、及びこれら金属の硫酸塩・塩化物塩・硝酸塩等の無機塩も挙げられる。
なお、ゲッター材層4は1種の材料で形成されていてもよく、2種以上の材料で形成されていてもよい。また、ゲッター材層4は単層でもよいが、2層以上の積層であってもよい。
ゲッター材層4の厚みは特に規定されないが、通常5μm以上200μm以下である。
ゲッター材層4は、ガスバリア層3及び9で形成される空間内であればその形成位置に制限は無いが、有機太陽電池素子6の正面(受光面側の面。図3では下側の面)及び背面(受光面とは反対側の面。図3では上側の面)を覆うことが好ましい。有機太陽電池モジュール11においてはその正面及び背面が他の面よりも大面積に形成されることが多いため、これらの面を介して水分及び酸素が浸入する傾向があるからである。この観点から、ゲッター材層4はガスバリア層3と有機太陽電池素子6との間に設けることが好ましい。本実施態様ではゲッター材層4が有機太陽電池素子6の正面を覆い、後述するゲッター材層8が有機太陽電池素子6の背面を覆い、ゲッター材層4,8がそれぞれ有機太陽電池素子6とガスバリア層3,9との間に位置するようになっている。なお、後述するバックシート10としてアルミ箔の両面にフッ素系樹脂フィルムを接着したシート等の防水性の高いシートを用いる場合は、用途によりゲッター材層8及び/又はガスバリア層9を用いなくてもよい。
ゲッター材層は、上記水分及び/又は酸素を吸収することができる物質を含む塗布液を、製造中の直接太陽電池に塗工し乾燥することで形成できる。また、ゲッター材層の成分でできたゲッター材フィルムを積層してもよい。
<3−5.封止層5>
封止層5は、有機太陽電池素子6を補強する層である。有機太陽電池素子6は薄いため通常は強度が弱く、ひいては有機太陽電池の強度が弱くなる傾向があるが、封止層5により強度を高く維持することが可能である。
また、封止層5は、有機太陽電池モジュール11の強度保持の観点から強度が高いことが好ましい。具体的強度については、封止層5以外の耐候性保護層1やバックシート10の強度とも関係することになり一概には規定しにくいが、有機太陽電池モジュール11全体が良好な曲げ加工性を有し、折り曲げ部分の剥離を生じないような強度を有するのが望ましい。
また、封止層5は、有機太陽電池素子6の光吸収を妨げない観点から可視光を透過させることが好ましい。例えば、可視光(波長360〜830nm)の透過率は、通常60%以上であり、上限に制限はない。
封止層5の厚みは特に規定されないが、通常2μm以上700μm以下である。
封止層5の基板に対するT型剥離接着強さは通常1N/インチ以上通常2000N/インチ以下である。T型剥離接着強さが1N/インチ以上であることは、モジュールの長期耐久性を確保できる点で好ましい。T型剥離接着強さが2000N/インチ以下であることは、太陽電池を廃棄する際に、基材やバリア層と接着材を分別して廃棄できる点で好ましい。T型剥離接着強さはJIS K6854に準拠する方法により測定する。
封止層5の構成材料としては、上記特性を有する限り特段の制限はないが、有機・無機の太陽電池の封止、有機・無機のLED素子の封止、又は電子回路基板の封止等に一般的に用いられている封止用材料を用いる事ができる。
具体的には、熱硬化性樹脂組成物又は熱可塑性樹脂組成物及び活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が挙げられる。活性エネルギー線硬化性樹脂組成物とは例えば、紫外線、可視光、電子線等で硬化する樹脂のことである。より具体的には、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂組成物、炭化水素系樹脂組成物、エポキシ系樹脂組成物、ポリエステル系樹脂組成物、アクリル系樹脂組成物、ウレタン系樹脂組成物、又はシリコン系樹脂組成物等が挙げられ、それぞれの高分子の主鎖、分岐鎖、末端の化学修飾、分子量の調整、添加剤等によって、熱硬化性、熱可塑性及び活性エネルギー線硬化性等の特性が発現する。
また、有機太陽電池モジュール11は光を受けて熱せられることが多いため、封止材5も熱に対する耐性を有することが好ましい。この観点から、封止層5の構成材料の融点は、通常100℃以上350℃以下である。
封止材5中の封止材用構成材料の密度は、0.80g/cm以上が好ましく、上限に制限はない。なお、密度の測定と評価は、JIS K7112に準拠する方法によって実施することができる。
封止材5を設ける位置に制限は無いが、通常は有機太陽電池素子6を挟み込むように設ける。有機太陽電池素子6を確実に保護するためである。本実施態様では、有機太陽電池素子6の正面及び背面にそれぞれ封止材5及び封止材7を設けるようにしている。
封止層は、封止層を形成する物質を含む塗布液を、製造中の直接太陽電池に塗工し乾燥することで形成できる。また、封止層の成分でできた封止フィルムを製造中の太陽電池素子に積層することもできる。
<3−6.有機太陽電池素子6>
有機太陽電池素子6は、前述の有機太陽電池素子107と同様である。すなわち、有機太陽電池素子107を用いて有機太陽電池モジュール11を製造することができる。
有機太陽電池素子6は、有機太陽電池モジュール11一個につき通常一個だけ設けるが、2個以上の有機太陽電池素子6を設けてもよい。具体的な有機太陽電池素子6の個数は任意に設定すればよい。有機太陽電池素子6を複数設ける場合、有機太陽電池素子6はアレイ状に並べて設けられていることが多い。
有機太陽電池素子6を複数設ける場合、通常は、有機太陽電池素子6同士は電気的に接続され、接続された一群の有機太陽電池素子6から生じた電気を端子(図示せず)から取り出すようになっていて、この際、電圧を高めるため通常は太陽電池素子は直列に接続される。
このように有機太陽電池素子6同士を接続する場合には、有機太陽電池素子6間の距離
は小さいことが好ましく、ひいては、有機太陽電池素子6と有機太陽電池素子6との間の隙間は狭いことが好ましい。有機太陽電池素子6の受光面積を広くして受光量を増加させ、有機太陽電池モジュール11の発電量を増加させるためである。
<3−7.封止層7>
封止層7は、上述した封止層5と同様の層であり、配設位置が異なる他は封止材7と同様のものを同様に用いることができる。また、太陽電池素子6よりも背面側の構成部材は必ずしも可視光を透過させる必要が無いため、可視光を透過させないものを用いることもできる。
<3−8.ゲッター材層8>
ゲッター材層8は、上述したゲッター材層4と同様の層であり、配設位置が異なる他はゲッター材層4と同様のものを同様に必要に応じて用いることができる。また、有機太陽電池素子6よりも背面側の構成部材は必ずしも可視光を透過させる必要が無いため、可視光を透過させないものを用いることもできる。
<3−9.ガスバリア層9>
ガスバリア層9は、上述したガスバリア層3と同様の層であり、配設位置が異なる他はガスバリア層9と同様のものを同様に必要に応じて用いることができる。また、有機太陽電池素子6よりも背面側の構成部材は必ずしも可視光を透過させる必要が無いため、可視光を透過させないものを用いることもできる。
<3−10.バックシート10>
バックシート10は、上述した耐候性保護層1と同様であり、配設位置が異なる他は耐候性保護層1と同様のものを同様に用いることができる。また、このバックシート10が水及び酸素を透過させ難いものであれば、バックシート10をガスバリア層として機能させることも可能である。また、有機太陽電池素子6よりも背面側の構成部材は必ずしも可視光を透過させる必要が無いため、可視光を透過させないものを用いることもできる。
<3−11.寸法等>
本実施態様に係る有機太陽電池素子を用いた有機太陽電池モジュール11は、強度の高い素子基材を含んだ部材である。このように強度の高い部材で有機太陽電池モジュール11を形成することにより、有機太陽電池モジュール11を建材、自動車又はインテリア等に容易に設置できるようになっている。有機太陽電池モジュール11は、軽く、割れにくく、従って安全性の高い太陽電池が得られ、また曲面にも適用可能であるため更に多くの用途に使用しうる。軽いため輸送や保管等流通面でも好ましい。
有機太陽電池モジュール11の具体的な寸法に制限は無いが、その厚みは、通常500μm以上、好ましくは1mm以上、より好ましくは2mm以上であり、通常20mm以下、好ましくは15mm以下、より好ましくは12mm以下、更に好ましくは10mm以下、最も好ましくは5mm以下である。
<3−12.製造方法>
本実施態様に係る有機太陽電池素子を用いた有機太陽電池モジュール11の製造方法に制限は無いが、例えば、有機太陽電池素子6に、封止材5,7、ゲッター材層4,8、ガスバリア層3,9、耐候性保護層1、紫外線カット層2およびバックシート10のうち必要な層を順に接着又は圧着していく方法や、塗布により形成する方法が挙げられる。また、これらの層を積層して積層体を作成した後に、ラミネート封止工程を行う方法も挙げられる。本実施態様に係る有機太陽電池素子は、耐熱性に優れるため、ラミネート封止工程による劣化が低減される点で好ましい。
積層体作成は周知の技術を用いて行うことができる。ラミネート封止工程の方法は、本発明の効果を損なわなければ特に制限はないが、例えば、ウェットラミネート、ドライラミネート、ホットメルトラミネート、押出しラミネート、共押出成型ラミネート、押出コーティング、光硬化接着剤によるラミネート、サーマルラミネート等が挙げられる。なかでも有機ELデバイス封止で実績のある光硬化接着剤によるラミネート法、太陽電池で実績のあるホットメルトラミネート又はサーマルラミネートが好ましく、さらに、ホットメルトラミネート又はサーマルラミネートがシート状の封止材を使用できる点でより好ましい。
ラミネート封止工程の加熱温度は通常130℃以上、好ましくは140℃以上であり、通常180℃以下、好ましくは170℃以下である。ラミネート封止工程の加熱時間は通常10分以上、好ましくは20分以上であり、通常100分以下、好ましくは90分以下である。ラミネート封止工程の圧力は通常0.001MPa以上、好ましくは0.01MPa以上であり、通常0.2MPa以下、好ましくは0.1MPa以下である。圧力をこの範囲とすることで封止を確実に行い、かつ、端部からの封止材5,7のはみ出しや過加圧による膜厚低減を抑え、寸法安定性を確保しうる。なお、2個以上の有機太陽電池素子6を直列又は並列接続したものも上記と同様にして、製造することができる。
塗布により形成する方法は、本発明の効果を損なわなければ特に制限されず、公知の方法を使用できる。例えば、各層の構成成分を含む組成物の塗布液を、塗工し乾燥することですることで形成できる。塗工の方法は特段限定されず、具体的には、スプレー塗布、スピンコート、ダイコートなどのウエットプロセスによる方法が挙げられる。また、電極膜を、フォトレジストパターンを用いて等方性エッチングする方法、穴が基板に向かって逆テーパー形状となっているステンシルマスクを密着させて電極材料を蒸着する方法、 蒸
着マスクを基板から離して蒸着する方法、などから、好適な方法を適宜選択すればよい。樹脂組成物の塗工にはウエットプロセスが好ましく、特にスプレー塗布によることが好ましい。
<3−13.設置方法>
次に、本発明の実施態様に係る有機太陽電池モジュールの設置方法について説明する。本発明の有機太陽電池モジュールは、封止された有機太陽電池素子の素子基板106側を受光面として、素子基板に対応する曲面形状を有する設置対象109に設置することができる。設置方法は、有機太陽電池モジュールが設置対象109に固定されれば特に限定されない。例えば、有機太陽電池モジュールの上部電極105側の表面を直接設置対象に接着してもよく、有機太陽電池モジュール中の素子基板106が設置対象と固定されるように固定部材を用いて固定してもよい。設置対象109の形状が曲面や3次元形状を有する場合でも、当該設置対象の形状に対応する形状の素子基板106を用いた太陽電池モジュールとすることで、あらゆる曲面や3次元形状の面に設置可能となる。
<4.用途>
本発明の実施態様に係る有機太陽電池素子および有機太陽電池モジュールの用途に制限はなく、任意の用途に用いることができる。素子基板を任意の形状の曲面とすることで、あらゆる曲面に設置可能となる。有機太陽電池素子および有機太陽電池モジュールを適用する分野の例を挙げると、建材用太陽電池、自動車用太陽電池、インテリア用太陽電池、鉄道用太陽電池、船舶用太陽電池、飛行機用太陽電池、宇宙機用太陽電池、家電用太陽電池、携帯電話用太陽電池又は玩具用太陽電池等である。
有機太陽電池素子はそのまま用いても、封止して有機太陽電池モジュールとして用いてもよい。
本発明の有機太陽電池素子および有機太陽電池モジュールは、車の流線形ボディーの形状、飛行機の流線形ボディーの形状、モニュメント表面の形状、屋根瓦の形状、ビルの入
り口に見られる柱のエンタシス形状(中膨らみ)等の様々な形状の対象物に設置することができる。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下に例示する実施例のみに限定されない。
曲面形状のポリカーボネート基板(曲げ弾性率2GPa、凹側の面の曲率半径0.51cm、厚み10mm、ガラス転移温度140℃)の曲面の凹側の面に、スパッタ法により、140nmの膜厚のIZO透明電極を設ける。
次に、IZO透明電極上に、大気下で二流体スプレーを用いて、酸化亜鉛(ZnO)の微粒子分散液(ビックケミー社製、NANOBYK(登録商標)−3841)をプロピレングリコール 1−モノメチルエーテル 2−アセテートにより20倍希釈した液を塗布する。塗布後のガラス基板を125℃のホットプレート上で大気中20分間、加熱処理を施す。このようにしてIZO透明電極上に、電子取り出し層として、膜厚が約70nmのZnO層を設ける。
レジオレギュラーポリ−3−ヘキシルチオフェン(P3HT、Rieke Metals社製)及びC60(Ind)2(フロンティアカーボン社製)を重量比 1:0.95で、1.8重量%の濃度でo−キシレン(和光純薬社製)に溶解させ、得られた溶液を、80℃で窒素雰囲気中、1時間スターラーで攪拌混合する。0.45μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターで濾過し、有機活性層塗布液を作製する。
次に前述のZnO層を設けた基板上に、大気下で有機活性層塗布液をスプレー法により塗布し、窒素雰囲気下で自然乾燥させ、約200nm膜厚の有機活性層を得る。その後、界面活性剤を1重量%含有させた、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)ポリ(スチレンスルホン酸)水性分散液(エイチ・シー・スタルク社製 商品名「CLEVIOSTM PVP AI4083」)と、超純水と、2−プロパノールを体積比18:9:73で混合した液を作製する。その混合液を0.45μmのポリフッ化ビニリデン(PVDF)フィルターで濾過してから、前記有機活性層上に大気下でスプレー塗布した後、窒素雰囲気下125℃で20分間加熱乾燥することで、約60nmの正孔取り出し層を有機活性層上に形成させる。
更に、正孔取り出し層上に、スパッタ法により、120nmの膜厚のIZO透明電極を正孔輸送上に設けることにより、バルクヘテロ接合型太陽電池素子を作製する。
作製した太陽電池素子に対して、透光性曲面基板側からソーラシミュレーター(AM1.5G)で100mW/cm2の強度の光を照射する。ソースメーター(ケイスレー社製,2400型)にて、下部電極と上部電極との間における電流−電圧特性を測定し、太陽電池特性が得られたことが確認できる。
このようにして作成した太陽電池素子は、曲面を有する設置対象に設置した場合にポリカーボネートの基板が太陽電池素子を物理的衝撃から保護することができる。
101 下部電極
102 電子取り出し層
103 活性層
104 正孔取り出し層
105 上部電極
106 太陽電池素子基板
107 有機太陽電池素子
108 有機層
109 設置対象
1 耐候性保護層
2 紫外線カット層
3,9 ガスバリア層
4,8 ゲッター材層
5,7 封止材
6 有機太陽電池素子
10 バックシート
11 有機太陽電池モジュール

Claims (7)

  1. 曲面形状を有する透明な太陽電池素子基板に、少なくとも下部電極、活性層、上部電極が順次積層され、太陽電池素子基板側が光入射面である有機太陽電池素子であって、
    前記太陽電池素子基板の曲げ弾性率が1.5GPa以上であり、厚みが250μm以上であることを特徴とする、有機太陽電池素子。
  2. 前記太陽電池素子基板が高分子樹脂であることを特徴とする、請求項1に記載の有機太陽電池素子。
  3. 曲面形状を有する透明な太陽電池素子基板に、少なくとも下部電極、活性層、上部電極を順次積層することを特徴とする、有機太陽電池素子の製造方法。
  4. 前記太陽電池素子基板の曲げ弾性率が1.5GPa以上であり、厚みが250μm以上であることを特徴とする、請求項3に記載の製造方法。
  5. 請求項1または2に記載の有機太陽電池素子をガスバリア層により封止した有機太陽電池モジュール。
  6. 曲面形状を有する透明な太陽電池素子基板に、少なくとも下部電極、活性層、上部電極が順次積層されてなる有機太陽電池素子を、設置対象に設置する方法であって、
    該有機太陽電池素子は太陽電池素子基板側が光入射面となるように設置され、
    該太陽電池素子基板が前記設置対象に対応する曲面形状を有することを特徴とする、設置方法。
  7. 曲面形状を有する透明な太陽電池素子基板に、少なくとも下部電極、活性層、上部電極が順次積層された有機太陽電池素子が、少なくともガスバリア層により封止されてなる太陽電池モジュールを、設置対象に設置する方法であって、
    該有機太陽電池素子は太陽電池素子基板側が光入射面となるように設置され、
    該太陽電池素子基板が前記設置対象に対応する曲面形状を有することを特徴とする、設置方法。
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