JP2014030004A - 有機薄膜太陽電池素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】有機薄膜太陽電池素子において生じる短絡を抑制することを課題とする。
【解決手段】太陽電池素子基板、下部電極、活性層、上部電極をこの順に有する有機薄膜太陽電池素子であって、前記下部電極は、その太陽電池素子基板側に底面を有し、かつ、その活性層側に頂面を有し、前記下部電極の太陽電池素子基板表面に平行な面の面積が、底面から頂面に近づくにつれ減少することを特徴とする、有機薄膜太陽電池素子により課題を解決する。
【選択図】図4

Description

本発明は、有機薄膜太陽電池に関し、特に、短絡が生じ難く、安定性の高い有機薄膜太陽電池に関する。
有機薄膜太陽電池は、有機半導体である活性層を発電に必要最低限の厚さとする。そのため活性層は、通常数百nm程度の厚みである。有機薄膜太陽電池は、このように活性層を薄くし、また基板としてフィルム等を用いることで可とう性を維持することができ、様々な状況で設置ができるという特徴を有する。
有機薄膜太陽電池における電極の形成方法として、様々な方法が知られている。例えば印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式などの中から選択される。
また、電極形成においては通常パターニングを行う。パターニングの手段としては、フォトリソグラフィーなどによる化学的エッチングによって行ってもよいし、レーザーなどによる物理的エッチングによって行ってもよく、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等を行ってもよい(例えば特許文献1参照)。
特開2011−198811号公報
電極を形成するにあたっては、パターニングのために上記手段が行われているが、本発明者らは、このような方法を有機薄膜太陽電池の下部電極形成に適用した場合、製造した有機薄膜太陽電池が短絡することがあるという新たな課題を見出した。
本発明は、短絡の発生を抑制した太陽電池を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねたところ、短絡が生じる原因が、下部電極の形状にあることを見出した。つまり、レジストやレーザー、マスクなどを用いて形成した下部電極は、その端部に直角部分が生じる。このような端部の直角は、正確なパターニングには不可欠である。
一方、端部が直角であることにより、下部電極の端部直上に積層される活性層は下部電極の中心直上に積層される活性層と比べて薄くなってしまう。これは、活性層がウエットプロセスにより製造される場合には、塗布液が下部電極の端部直上において電極上に留まらず、落下してしまうことによる。そのため、基本的に非常に薄い構成となっている活性層が、下部電極の端部直上において極端に薄くなり、その上から上部電極を形成して太陽電池素子を製造すると、上部電極の形成方法によっては上部電極と下部電極とが接触して、短絡することがあると本発明者らは考察する。特に、このような現象は、下部電極パターン上に、活性層等の有機薄膜太陽電池を構成する層をパターン化して積層するときに生じやすい。
本発明者らは、このような新たな知見に基づき更に研究を進め、下部電極を特定の形状で形成することにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。すなわ
ち本発明は、太陽電池素子基板、下部電極、活性層、上部電極をこの順に有する有機薄膜太陽電池素子であって、前記下部電極は、その太陽電池素子基板側に底面を有し、かつ、その活性層側に頂面を有し、前記下部電極の太陽電池素子基板表面に平行な面の面積が、底面から頂面に近づくにつれ減少することを特徴とする、有機薄膜太陽電池素子である。
前記有機薄膜太陽電池素子の下部電極の膜厚が、活性層の膜厚以下であることが好ましい。
前記太陽電池素子基板が曲面構造を有する基板であることが好ましく、三次元構造を有する基板であることがより好ましい。
前記下部電極は、ウエットプロセスにより形成されたものであることが好ましく、スプレー塗布により形成されたものであることが好ましい。
また、上記の有機薄膜太陽電池素子を含む有機薄膜太陽電池モジュールが好ましい。
本発明により、上部電極と下部電極の接触に起因する太陽電池の短絡の発生を抑制した、有機薄膜太陽電池素子を提供することができる。
有機薄膜太陽電池素子の一般的な層構成を表す模式図である。 従来の実施態様に係る有機薄膜太陽電池素子の下部電極の形状を表す垂直断面図である。 本発明の実施態様に係る有機薄膜太陽電池素子の下部電極の形状を表す垂直断面図である。 本発明の実施態様に係る有機薄膜太陽電池素子の下部電極の形状を表す垂直断面図である。 本発明の実施態様に係る有機薄膜太陽電池素子の下部電極の形状を表す垂直断面図である。 本発明の実施態様に係る有機薄膜太陽電池素子の下部電極の形状を表す垂直断面図である。 有機薄膜太陽電池素子を含む太陽電池モジュールの一態様を表す模式図である。 有機薄膜太陽電池素子を含む太陽電池モジュールの一態様を表す模式図である。 直列に接続された有機薄膜太陽電池素子の断面を表す模式図である。
以下、本発明について、具体的な態様を示しながら詳細に説明するが、本発明は例示する具体的態様に限定されないことはいうまでもない。
本発明の実施態様に係る有機薄膜太陽電池素子は、太陽電池素子基板、下部電極、活性層、上部電極をこの順に有する。
<1.有機薄膜太陽電池素子>
有機薄膜太陽電池素子は、通常、少なくとも一対の電極と、該電極間に存在する有機活性層と、該有機活性層と該電極の一方との間に存在する電子取り出し層とを有する。図1は、有機薄膜太陽電池素子の一般的な層構成を示す。図1に示される有機薄膜太陽電池素子107は、太陽電池素子基板106、カソードである下部電極101、電子取り出し層102、活性層103(p型半導体化合物とn型半導体材料とを含む層)、正孔取り出し層104、アノードである上部電極105が順次形成された層構造を有する。なお、図1において下部電極101は上部電極105よりも上部に存在するが、本明細書において上
部電極、下部電極とは、太陽電池素子基板106をボトムとした際に上部に存在する電極、下部に存在する電極を意味するものとし、太陽電池素子基板に積層される電極を下部電極と称する。また、電子取り出し層102、活性層103、正孔取り出し層104をまとめて有機層と称する場合がある。
<1−1.太陽電池素子基板>
有機薄膜太陽電池素子は、支持体となる太陽電池素子基板(以下、単に素子基板とも称する)を有する。すなわち、素子基板上に、電極と、活性層とが形成される。
素子基板の材料は、本発明の効果を著しく損なわない限り特に限定されない。素子基板の材料の好適な例としては、石英、ガラス、サファイア又はチタニア等の無機材料;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合体、フッ素樹脂フィルム、塩化ビニル又はポリエチレン等のポリオレフィン;セルロース、ポリ塩化ビニリデン、アラミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリノルボルネン又はエポキシ樹脂等の有機材料;紙又は合成紙等の紙材料;ステンレス、チタン又はアルミニウム等の金属に、絶縁性を付与するために表面をコート又はラミネートしたもの等の複合材料等が挙げられる。
ガラスとしてはソーダガラス、青板ガラス又は無アルカリガラス等が挙げられる。ガラスからの溶出イオンが少ない点で、これらの中でも無アルカリガラスが好ましい。
素子基板の形状に制限はなく、例えば、板状、フィルム状又はシート状等のものを用いることができる。また、素子基板の膜厚に制限はないが、通常5μm以上、好ましくは20μm以上であり、一方、通常20mm以下、好ましくは10mm以下である。基材の膜厚が上記下限以上であることは、有機薄膜太陽電池素子の強度が不足する可能性が低くなるために好ましい。素子基板の膜厚が上記上限以下であることは、コストが抑えられ、かつ重量が重くならないために好ましい。素子基板の材料がガラスである場合の膜厚は、通常0.01mm以上、好ましくは0.1mm以上であり、一方、通常1cm以下、好ましくは0.5cm以下である。素子基板の膜厚が上記下限以上であることは、機械的強度が増加し、割れにくくなるために、好ましい。また、素子基板の膜厚が上記上限以下であることは、重量が重くならないために好ましい。
本実施態様に係る素子基板は、曲面構造を有することが好ましい。また、素子基板に複数の曲面構造がアトランダムに存在する三次元構造を有することが更に好ましい。曲面構造においては、下部電極のパターン形成の際に、マスクを配置してパターニングするなどのドライプロセスによることが非常に困難である。しかしながら本実施態様では、下部電極の端部を直角にしないため、マスクをしなくても下部電極を形成することが可能であり、素子基板が曲面構造、特に三次元構造を有する際に好適である。
三次元構造の具体例としては、例えば車の流線形ボディーの形状、飛行機の流線形ボディーの形状、モニュメント表面の形状、屋根瓦の形状、ビルの入り口に見られる柱のエンタシス形状(中膨らみ)などがあげられる。
<1−2.上部電極、下部電極>
本発明の実施態様に係る有機薄膜太陽電池素子は、下部電極の形状に特徴を有する。本発明の実施態様において下部電極は、その太陽電池素子基板側に底面を有し、かつ、その活性層側に頂面を有し、下部電極の水平断面(素子基板表面に平行な面)の面積が、底面から頂面に近づくにつれ減少することを特徴とする。下部電極がこのような形状を有することで、有機薄膜太陽電池素子の短絡を防ぐことが可能となる。このことについて、具体的に説明する。
本発明において、下部電極の水平断面の面積が、底面から頂面に近づくにつれ減少することは、有機薄膜太陽電池素子を基板に垂直に切断し、その切断面の下部電極の形状を観察することで判断することができる(以下、有機薄膜太陽電池素子を基板に垂直に切断した切断面を、垂直断面ともいう)。観察の方法は、垂直断面における下部電極の形状が判別できれば限定されず、例えば走査型電子顕微鏡を用いて観察することができる。
観察の結果、下部電極の形状が、底面(基板側)よりも頂面(活性層側)の方が基板と平行な線の長さが短くなっているときは、下部電極の水平断面の面積が、底面から頂面に近づくにつれ減少している。
図2−1は、従来技術の有機薄膜太陽電池素子の下部電極の形状を表す垂直断面図である。図2−1において、下部電極101は矩形であり、その角は略直角となっている。このような矩形の下部電極上に有機層108(通常、電子取り出し層102、活性層103、正孔取り出し層104を含む)を形成すると、下部電極の端部直上に積層される活性層は薄くなる。これは、有機層の形成にウエットプロセスが用いられると、塗布液が下部電極上に留まらず落下してしまうためと考えられる。また、有機層の形成に真空蒸着が用いられた場合でも、下部電極の端部の側面の膜厚及び下部電極の端部直上に積層される活性層の膜厚は、下部電極の上層と比べて薄くなりがちである。
そのため、図2−1において鎖線楕円109で示される下部電極の端部直上に存在する有機層108は極端に薄くなってしまう。そのため、有機層108上に積層された上部電極105と下部電極101との距離が極めて小さくなり、このような有機薄膜太陽電池は容易に短絡が発生する。
本実施態様に係る有機薄膜太陽電池素子は、このような短絡を防止するために、下部電極の形状を特殊な形状、すなわち、下部電極の太陽電池素子基板表面に平行な面の面積が、底面から頂面に近づくにつれ減少する形状とすることを特徴とする。
より詳細には、図2−2に示すように、下部電極の垂直断面において、底面の一端113aから下部電極の頂面の一端113bを結んだ直線と、太陽電池素子基板106とがなす角θが5°以上が好ましく、10°以上がより好ましく、20°以上が更に好ましく、30°以上が特に好ましい。一方で80°以下が好ましく、70°以下がより好ましく、60°以下が更に好ましい。50°以下が更に好ましい。θを上記下限以上とすることで、電極として有効に機能する面積が増やしやすいためとなり好ましい。一方、θを上記上限以下とすることで、活性層やバッファ層がその端部で薄くなりづらいため、上部電極と下部電極との短絡を防止しやすくなるため好ましい。
なお、θの算出において、太陽電池素子基板が曲面の場合は、太陽電池素子基板106と底面の一端113aとの接点における太陽電池素子基板106の接線と、底面の一端113aから下部電極の頂面の一端113bを結んだ直線との角をθとする。
上記頂面の一端113bは、下部電極の垂直断面における底面の一端113aから下部電極の長さ方向へ下部電極の厚みを観測し、下部電極の厚みが増加しなくなった最初の箇所を113bとする。但し、下部電極の厚みが増加しなくなった最初の箇所が、下部電極の最大膜厚の50%以下の地点である場合には、更に下部電極の長さ方向へ下部電極の厚みを観測し、下部電極の厚みが増加しなくなった箇所を113bとする。
更に、図2−3に示すように、下部電極の垂直断面において、下部電極の底面の端113cにおいて電極層に沿って引いた接線と、基材との角度θ1が、通常80°以下であり
、70°以下が好ましく、60°以下がより好ましく、通常10°以上であり、20°以上が好ましく、30°以上がより好ましい。
θ1を上記上限以下であることにより電極として有効に機能する面積が増やしやすいた
めとなり好ましい。一方、θ1を上記上限以下とすることで、活性層やバッファ層がその
端部で薄くなりづらいため、上部電極と下部電極との短絡を防止しやすくなるため好ましい。
これらの角度は下部電極の製造方法において、製造条件を適宜設定することで調整できるが、例えばインクを用いる場合には、インクの溶質および/または分散質の濃度、溶媒
および/または分散媒の種類、溶媒および/または分散媒の組成比、等のインクの組成や、それによるインクの粘度や表面張力を調整したり、スプレー時の送液速度、スプレーノズルの移動速度等を変更することで適宜設定することができる。また、インクの基板に対する濡れ性を調整する方法などが上げられる。
図3は、本実施態様に係る下部電極の形状を表した垂直断面図である。図3(a)において、下部電極101は、その太陽電池素子基板側に底面112を有し、活性層103(図示せず)側に頂面111を有する。そして、a−a'破線で表される下部電極の太陽電
池素子基板表面に平行な面の面積が、底面112から頂面111に近づくにつれ減少する。このような形状とすることで、図3において下部電極101の側辺は、頂面から底面に向かって広がっていき、下部電極の頂面端部に直角状の角が生じないこととなる。このような下部電極の上に、有機層108を塗布しても、塗布液が極端に流れ落ちることはなく、有機層において極端に薄い箇所も発生しない。また、真空蒸着により有機層108を形成しても、有機層において極端に薄い箇所も発生しない。そのため、上部電極と下部電極が接触することを防ぐことが可能となり、太陽電池素子の短絡を防ぐことができる。
なお、本明細書において太陽電池素子基板表面に平行な面は、素子基板が平面の場合には、素子基板に対して水平な断面となり平面である。一方、素子基板が曲面の場合には、素子基板表面と等距離にある点の集合面が太陽電池素子基板表面に平行な面である。
図4は、本発明の実施態様に係る有機薄膜太陽電池素子の下部電極の形状を表す垂直断面図である。下部電極101の形状が矩形形状ではなく、下部電極の頂面端部に直角状の角が存在しないことから、有機層108の塗布の際に塗布液の落下が生じにくく、鎖線楕円109で示される下部電極の端部直上に存在する有機層が極端に薄くなることはない。また、真空蒸着により有機層108を形成しても、有機層において極端に薄い箇所も発生しない。
そのため、上部電極と下部電極間の距離が十分に保たれることから、太陽電池素子の短絡を防ぐことができる。
図3(b)は、本実施態様に係る下部電極の別の形状を表した垂直断面図である。図3(b)では、下部電極の形状は台形状で側辺がテーパ状に広がっており、下部電極の太陽電池素子基板表面に平行な面の面積が、底面112から頂面111に近づくにつれ減少する。
また、図3(c)は、本実施態様に係る下部電極の別の形状を表した垂直断面図である。図3(c)では、下部電極の太陽電池素子基板表面に平行な面の面積が、底面112から頂面111に近づくにつれ減少する。
図3(b)、(c)に表す下部電極上に有機層を塗布しても、塗布液が極端に流れ落ちることはなく、有機層が極端に薄い箇所も発生しない。また、真空蒸着により有機層を形成しても、有機層において極端に薄い箇所も発生しない。そのため、上部電極と下部電極が接触することを防ぐことが可能となり、太陽電池素子の短絡を防ぐことができる。
本実施態様では、図3の(a)乃至(c)に示すように、下部電極両側面が、頂面から底面に向かって広がっていることが好ましい。
本実施態様に係る一対の電極は、光吸収により生じた正孔及び電子を捕集する機能を有する。したがって、一対の電極には、正孔の捕集に適した電極(以下、アノードと記載する場合もある)と、電子の捕集に適した電極(以下、カソードと記載する場合もある)とを用いることが好ましい。一対の電極は、いずれか一方が透光性であればよく、両方が透光性であっても構わない。透光性があるとは、太陽光が40%以上透過することを指す。また、透明電極の太陽光線透過率は70%以上であることが、透明電極を透過させて活性層に光を到達させるために好ましい。光の透過率は、通常の分光光度計で測定できる。
アノードは、一般には仕事関数が高い導電性材料で構成され、活性層で発生した正孔を
スムーズに取り出す機能を有する電極である。
アノードの材料を挙げると、例えば、酸化ニッケル、酸化スズ、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)、インジウム−ジルコニウム酸化物(IZO)、酸化チタン、酸化インジウム又は酸化亜鉛等の導電性金属酸化物;金、白金、銀、クロム又はコバルト等の金属あるいはその合金が挙げられる。これらの物質は高い仕事関数を有するため、好ましく、さらに、ポリチオフェン誘導体にポリスチレンスルホン酸をドーピングしたPEDOT:PSSで代表されるような導電性高分子材料を積層することができるため、好ましい。このような導電性高分子を積層する場合には、この導電性高分子材料の仕事関数が高いことから、上記のような高い仕事関数の材料でなくとも、AlやMg等のカソードに適した金属も広く用いることが可能である。ポリチオフェン誘導体にポリスチレンスルホン酸をドーピングしたPEDOT:PSSや、ポリピロール又はポリアニリン等にヨウ素等をドーピングした導電性高分子材料を、アノードの材料として使用することもできる。アノードが透明電極である場合には、ITO、酸化亜鉛又は酸化スズ等の透光性がある導電性金属酸化物を用いることが好ましく、特にITOが好ましい。
アノードの膜厚は特に制限は無いが、通常10nm以上、好ましくは20nm以上、さらに好ましくは、50nm以上である。一方、通常10μm以下、好ましくは1μm以下、さらに好ましくは500nm以下である。アノードの膜厚が上記下限以上であることにより、シート抵抗が抑えられ、アノードの膜厚が上記上限以下であることにより、光透過率を低下させずに効率よく光を電気に変換することができる。アノードが透明電極である場合には、光透過率とシート抵抗とを両立できる膜厚を選ぶ必要がある。
アノードのシート抵抗は、特段の制限はないが、通常1Ω/□以上、一方、1000Ω/□以下、好ましくは500Ω/□以下、さらに好ましくは100Ω/□以下である。
アノードの形成方法としては、蒸着法若しくはスパッタ法等の真空成膜方法、又はナノ粒子や前駆体を含有するインクを塗布して成膜する湿式塗布法が挙げられる。
カソードは、一般には仕事関数が低い値を有する導電性材料で構成され、活性層で発生した電子をスムーズに取り出す機能を有する電極である。カソードは、電子取り出し層と隣接する。
カソードの材料を挙げると、例えば、白金、金、銀、銅、鉄、スズ、亜鉛、アルミニウム、インジウム、クロム、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム又はマグネシウム等の金属及びその合金;フッ化リチウムやフッ化セシウム等の無機塩;酸化ニッケル、酸化アルミニウム、酸化リチウム又は酸化セシウムのような金属酸化物等が挙げられる。これらの材料は低い仕事関数を有する材料であるため、好ましい。カソードについてもアノードと同様に、電子取り出し層としてチタニアのようなn型半導体で導電性を有するものを用いることにより、高い仕事関数を有する材料を用いることもできる。電極保護の観点から、カソードの材料として好ましくは、白金、金、銀、銅、鉄、スズ、アルミニウム、カルシウム若しくはインジウム等の金属、又は酸化インジウムスズ等のこれらの金属を用いた合金である。
カソードの膜厚は特に制限は無いが、通常10nm以上、好ましくは20nm以上、より好ましくは50nm以上である。一方、通常10μm以下、好ましくは1μm以下、より好ましくは500nm以下である。カソードの膜厚が上記下限以上であることにより、シート抵抗が抑えられ、カソードの膜厚が上記上限以下であることにより、光透過率を低下させずに効率よく光を電気に変換することができる。カソードが透明電極である場合には、光透過率とシート抵抗を両立する膜厚を選ぶ必要がある。
カソードのシート抵抗は、特に制限は無いが、通常1000Ω/□以下、好ましくは500Ω/□以下、さらに好ましくは100Ω/□以下である。下限に制限は無いが、通常は1Ω/□以上である。
カソードの形成方法としては、蒸着法若しくはスパッタ法等の真空成膜方法、又はナノ粒子や前駆体を含有するインクを塗布して成膜する湿式塗布法等がある。
さらに、アノード及びカソードは、2層以上の積層構造を有していてもよい。また、アノード及びカソードに対して表面処理を行うことにより、特性(電気特性やぬれ特性等)を改良してもよい。
本発明の実施態様に係る有機薄膜太陽電池素子においては、太陽電池素子基板と積層する下部電極はアノードであってもカソードであっても良い。下部電極を形成する方法は特段限定されず、上記説明した特定の下部電極の形状となるように形成すればよい。
従来、透明電極として一般的に用いられるITO電極の形成の際には、フォトレジストパターンを用いて、ウェットエッチングもしくはドライエッチングにより形成され、また、異方性エッチングにより、端部が矩形の形状となる形で使用されることが一般的である。このように端部を矩形形状とすることで太陽電池素子を構成する各層の厚みを均一にしやすくなり、素子の性能を安定させることができるからである。
一方本発明では、矩形ではないテーパ状の形状を有する下部電極とする。このような下部電極を形成する方法は、具体的には、マスクを用いたスプレー塗布、マスクを用いずバターンを描画するスプレー塗布、パターンを描画するインクジェット印刷、版を通してインクを押し出すスクリーン印刷などのウエットプロセスによる方法、電極膜をフォトレジストパターンを用いて等方性エッチングする方法、穴が基板に向かって逆テーパ形状となっているステンシルマスクを密着させて電極材料を蒸着する方法、 蒸着マスクを基板か
ら離して蒸着する方法、などがあげられる。このうち、ウエットプロセスにより下部電極を形成することにより容易に特定の形状を有する下部電極を形成することができ、特にスプレー塗布によることが好ましい。スプレー塗布の場合には、太陽電池素子基板が曲面であっても、複雑な三次元形状であっても、容易に下部電極の形成が可能である。
なお、このように矩形ではないテーパ形状の下部電極を形成する際に、下部電極の膜厚は、後述する活性層の膜厚以下であることが好ましく、活性層の膜厚の3分の2以下であることがより好ましく、活性層の膜厚の2分の1以下であることが更に好ましい。ここで、膜厚とは特段の限定がない限り最大膜厚を指す。最大膜厚は、有機薄膜太陽電池素子の垂直断面における測定対象の膜厚を測定することで求めることができる。測定の方法は、垂直断面における下部電極の形状が判別できれば限定されず、例えば走査型電子顕微鏡を用いて測定することができる。
下部電極の膜厚と活性層の膜厚との関係が上記を満たす場合には、下部電極を完全に被覆し、短絡しづらくなるため好ましい。
本明細書において「スプレー塗布」とは、塗布液を霧化して噴霧することにより、被塗布物上に膜状に塗布する手法をいう。スプレー塗布は、通常はスプレーノズルを用いて行なわれる。スプレーノズルの方式は制限されず、各々のスプレーノズルの利点を考慮して選択すればよい。スプレーノズルの代表的な例としては、二流体スプレーノズル、超音波スプレーノズル、回転式スプレーノズル等が挙げられる。
二流体スプレーノズル(二流体霧化方式スプレーノズル)は、加圧された気体を塗布液に衝突させ、塗布液を破砕することにより、塗布液の霧化を行なう方式のノズルである。即ち、二流体スプレーノズルにおいては、塗布液の霧化と被塗布物への霧化粒子の搬送とが、何れも加圧された気体流によって行なわれる。二流体スプレーノズルの例としては、ノードソン社製マイクロスプレーガン、アトマックス社製アトマックスノズル、旭サナック社製パールガン、IVEK社製Sonicair Nozzle等が挙げられる。
超音波スプレーノズル(超音波霧化方式スプレーノズル)は、塗布液に超音波を印加し
、塗布液を破砕することにより、塗布液の霧化を行なう方式のノズルである。即ち、超音波スプレーノズルでは、塗布液の霧化は超音波によって行なわれる。また、それによって得られた霧化粒子の被塗布物への搬送は、例えば、別途設けられたエアノズルから吐出する気体流等によって行なわれる。超音波スプレーノズルの例としては、Sono-Tek社製Vortex Nozzle、Sono-Tek社製Ultrasonic Microspray Nozzle、シソニック社製Ultrasonic Microspray Nozzle等が挙げられる。
回転式スプレーノズル(回転霧化方式スプレーノズル、ロータリーアトマイザー)は、例えば数万rpmで回転する回転カップ等に塗布液を導入し、塗布液に回転力を加えながら吐出することにより、遠心力で塗布液の霧化を行なう方式のノズルである。即ち、回転式スプレーノズルでは、遠心力によって塗布液の霧化が行なわれるとともに、通常はノズルに別途導入される気体流等によって、霧化粒子の被塗布物への搬送が行なわれる。回転式スプレーノズルの例としては、旭サナック社製NCベル、ノードソン社製RA−20
ロータリーアトマイザー等が挙げられる。
超音波スプレーノズル及び回転式スプレーノズルには、塗布液の霧化プロセスと、塗布液の霧化粒子を気体流により被塗布物に搬送するプロセスとを、独立して制御可能であることから、上述の気流速度条件を容易に達成できるという利点がある。即ち、加圧された気体との衝突・混合により塗布液の霧化を行なう二流体スプレーノズルでは、霧化に使用される気体が被塗布物の表面に衝突するので、塗布膜の流動が促進される傾向がある。これに対し、超音波スプレーノズルや回転式スプレーノズルは、気体による塗布液の霧化を行なわないため、塗布膜の流動を招く可能性が低い。
一方、二流体スプレーノズルは、超音波スプレーノズル及び回転式スプレーノズルよりも安価であり、塗布膜の霧化特性に優れ、高品質な有機薄膜を形成することができるという利点がある。
スプレー塗布の際には、被塗布物上における気流速度を、通常3m/sec以下とすることが好ましい。この気流速度が高過ぎると、気流によって誘発される塗布膜の流動により、有機薄膜のパターン端部の形状が不安定となり、有機薄膜のパターン端部付近に膜厚の大きな部分が発生する場合がある。気流速度が低い値であるほど、このようなパターン端部における膜厚変動が発生し難くなる。
但し、スプレー塗布時の被塗布物上における気流速度の好ましい上限値は、スプレーノズルの種類に応じて異なる。
具体的に、二流体スプレーノズルを用いてスプレー塗布を行なう場合、スプレー塗布時の被塗布物上における気流速度は、通常2.99m/sec以下、好ましくは2.98m/sec以下、より好ましくは2.95m/sec以下とすることが望ましい。また、超音波スプレーノズル又は回転式スプレーノズルを用いてスプレー塗布を行なう場合、スプレー塗布時の被塗布物上における気流速度は通常2.2m/sec以下、好ましくは2.1m/sec以下、より好ましくは2m/sec以下とすることが望ましい。
但し、この気流速度があまりに低いと、塗布環境における気流によって塗布液粒子が飛散する可能性がある上に、スプレー塗布そのものが困難となる場合もある。よって、気流速度の下限値は、通常0.1m/sec以上、好ましくは0.5m/sec以上、より好ましくは1m/sec以上とすることが望ましい。
なお、本明細書において、スプレー塗布時の「被塗布物上における気流速度」とは、被塗布物の表面からの距離が通常1cm以内の位置において測定される気流速度を指す。
スプレー塗布時の被塗布物上における気流速度を測定する手法は、制限されるものではないが、例えば、被塗布物上に風速計(例えば日本カノマックス製アネモマスター6162)のセンサープローブを設置して行なうことができる。この場合、間隔を置いて複数回
の気流速度の測定を行ない、その測定値を平均した値(平均気流速度)を採用することが好ましい。
スプレー塗布時における他の条件は制限されないが、通常は以下の通りである。
スプレー塗布時の温度は、通常15℃以上、好ましくは20℃以上、また、通常30℃以下、好ましくは25℃以下とすることが望ましい。温度が高過ぎると塗布膜の乾燥速度が高くなり、ムラが発生し易くなる場合がある。
スプレー塗布時の湿度は、通常20%RH以上、好ましくは30%RH以上、また、通常60%RH以下、好ましくは50%RH以下とすることが望ましい。湿度が低過ぎると静電気により安全性が低下する可能性があり、湿度が高過ぎると塗布膜の吸湿が生じる可能性がある。なお、「%RH」は相対湿度パーセントを表わす。
スプレー塗布は、通常、同一基板へ複数回行うことが多い。その回数は、通常、スプレーのインクの種類とノズル−基板間の距離などのスプレーの条件に依存する。本発明の下部電極の形状を形成させるためには、ノズルの稼動領域を工夫させて、スプレーのミストの基板への付着量を制御することが望ましい。具体的には、重ね塗りの回数を増やす毎に、電極パターンの端部より中心部へノズルの位置をずらしていく方法が好ましい制御方法である。
アノード及びカソードを積層した後に、有機薄膜太陽電池素子を通常50℃以上、好ましくは80℃以上、一方、通常300℃以下、好ましくは280℃以下、より好ましくは250℃以下の温度範囲において、加熱することが好ましい(この工程をアニーリング処理工程と称する場合がある)。アニーリング処理工程を50℃以上の温度で行うことにより、有機薄膜太陽電池素子の各層間の密着性、例えば電子取り出し層とカソード及び/又は電子取り出し層と活性層の密着性が向上する効果が得られるため、好ましい。各層間の密着性が向上することにより、光電変換素子の熱安定性や耐久性等が向上しうる。アニーリング処理工程の温度を上記上限以下にすることは、活性層内の有機化合物が熱分解する可能性が低くなるため、好ましい。アニーリング処理工程においては、上記の温度範囲内で段階的な加熱を行ってもよい。
加熱する時間としては、通常1分以上、好ましくは3分以上、一方、通常3時間以下、好ましくは1時間以下である。アニーリング処理工程は、太陽電池性能のパラメータである開放電圧、短絡電流及びフィルファクターが一定の値になったところで終了させることが好ましい。また、アニーリング処理工程は、常圧下、かつ不活性ガス雰囲気中で実施することが好ましい。
加熱する方法としては特に限定されないが、熱風による加熱、遠赤外線および/または近赤外線の照射による方法が好ましく挙げられ、ホットプレート等の熱源に光電変換素子を載せてもよいし、オーブン等の加熱雰囲気中に光電変換素子を入れてもよい。また、加熱はバッチ式で行っても連続方式で行ってもよいが、連続方式で行うのが好ましい。
<1−3.バッファ層>
本発明の実施態様に係る有機薄膜太陽電池素子は、通常、カソードと活性層との間に電子取り出し層を有する。また有機薄膜太陽電池素子は、活性層とアノードとの間に正孔取り出し層を有する。電子取り出し層および正孔取り出し層は必須ではない。
電子取り出し層と正孔取り出し層とは、一対の電極間に、活性層を挟むように配置されることが好ましい。すなわち、有機薄膜太陽電池素子が電子取り出し層と正孔取り出し層の両者を含む場合、上部電極、正孔取り出し層、活性層、電子取り出し層、及び下部電極をこの順に配置することができる。有機薄膜太陽電池素子が電子取り出し層を含み正孔取り出し層を含まない場合は、上部電極、活性層、電子取り出し層、及び下部電極をこの順
に配置することができる。電子取り出し層と正孔取り出し層とは積層順序が逆であってもよいし、また電子取り出し層と正孔取り出し層の少なくとも一方が異なる複数の膜により構成されていてもよい。
<1−3−1.電子取り出し層>
図1において電子取り出し層102の材料は、活性層103から電極101へ電子の取り出し効率を向上させる材料であれば特段の制限はないが、無機化合物又は有機化合物が挙げられる。
無機化合物の材料の例としては、Li、Na、K又はCs等のアルカリ金属の塩;酸化チタン(TiOx)や酸化亜鉛(ZnO)のようなn型半導体酸化物等が挙げられる。なかでも、アルカリ金属の塩としては、LiF、NaF、KF又はCsFのようなフッ化物塩が好ましく、n型半導体酸化物としては、酸化亜鉛(ZnO)が好ましい。このような材料の動作機構は不明であるが、Al等で構成されるカソード101と組み合わされた際にカソード101の仕事関数を小さくし、太陽電池素子内部に印加される電圧を上げる事が考えられる。
有機化合物の材料の例としては、例えば、トリアリールホスフィンオキシド化合物のようなリン原子と第16族元素との二重結合を有するホスフィン化合物;バソキュプロイン(BCP)又はバソフェナントレン(Bphen)のような、置換基を有してもよく、1位及び10位がヘテロ原子で置き換えられていてもよいフェナントレン化合物;トリアリールホウ素のようなホウ素化合物;(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(Alq3)のような有機金属酸化物;オキサジアゾール化合物又はベンゾイミダゾール化合物のような、置換基を有していてもよい1又は2の環構造を有する化合物;ナフタレンテトラカルボン酸無水物(NTCDA)又はペリレンテトラカルボン酸無水物(PTCDA)のような、ジカルボン酸無水物のような縮合ジカルボン酸構造を有する芳香族化合物等が挙げられる。
電子取り出し層102の材料のLUMOエネルギー準位は、特に限定は無いが、通常−4.0eV以上、好ましくは−3.9eV以上である。一方、通常−1.9eV以下、好ましくは−2.0eV以下である。電子取り出し層102の材料のLUMOエネルギー準位が−1.9eV以下であることは、電荷移動が促進されうる点で好ましい。電子取り出し層102の材料のLUMOエネルギー準位が−4.0eV以上であることは、n型半導体材料への逆電子移動が防がれうる点で好ましい。
電子取り出し層102の材料のHOMOエネルギー準位は、特に限定は無いが、通常−9.0eV以上、好ましくは−8.0eV以上である。一方、通常−5.0eV以下、好ましくは−5.5eV以下である。電子取り出し層102の材料のHOMOエネルギー準位が−5.0eV以下であることは、正孔が移動してくることを阻止しうる点で好ましい。
電子取り出し層102の材料のLUMOエネルギー準位及びHOMOエネルギー準位の算出方法としては、サイクリックボルタモグラム測定法が挙げられる。例えば、公知文献(国際公開第2011/016430号)に記載の方法を参考にして実施することができる。
電子取り出し層102の材料が有機化合物である場合、DSC法により測定した場合のこの化合物のガラス転移温度(以下、Tgと記載する場合もある)は、特段の制限はないが、観測されないか、又は55℃以上であることが好ましい。DSC法によりガラス転移温度が観測されないとは、ガラス転移温度がないことを意味する。具体的には400℃以
下のガラス転移温度の有無により判別する。DSC法によるガラス転移温度が観測されない材料は、熱的に高い安定性を有している点で好ましい。
また、DSC法により測定した場合のガラス転移温度が55℃以上である化合物の中でも、ガラス転移温度が、好ましくは65℃以上、より好ましくは80℃以上、さらに好ましくは110℃以上、特に好ましくは120℃以上である化合物が望ましい。一方、ガラス転移温度の上限は特に限定はないが、通常400℃以下、好ましくは350℃以下、より好ましくは300℃以下である。また、電子取り出し層104の材料は、DSC法によるガラス転移温度が30℃以上55度未満に観測されないものであることが好ましい。
本明細書におけるガラス転移温度とは、アモルファス状態の固体において、熱エネルギーにより局所的な分子運動が開始される温度とされており、比熱が変化する点として定義される。Tgよりさらに温度が上がると、固体構造が変化して結晶化が起こる(この時の温度を結晶化温度(Tc)とする)。さらに温度が上がると、融点(Tm)で融解し液体状態に変化することが一般的である。但し、高温で分子が分解したり、昇華したりして、これらの相転移が見られないこともある。
DSC法とは、JIS K−0129“熱分析通則”に定義された熱物性の測定法(示差走査熱量測定法)である。ガラス転移温度をより明確に決める為には、一度ガラス転移点以上の温度に加熱したサンプルを急冷した後に測定することが望ましい。例えば、公知文献(国際公開第2011/016430号)に記載の方法により、測定を実施することができる。
電子取り出し層に用いられる化合物のガラス転移温度が55℃以上である場合、この化合物は、印加される電場、流れる電流、曲げや温度変化による応力等の外部ストレスに対して構造が変化しにくいため、耐久性の面で好ましい。さらに、化合物の薄膜の結晶化が進みにくい傾向も有すことから、使用温度範囲においてこの化合物がアモルファス状態と結晶状態との間で変化しにくくなることにより、電子取り出し層としての安定性が良くなるため、耐久性の面で好ましい。この効果は、材料のガラス転移温度が高ければ高いほど、より顕著に表れる。
電子取り出し層102の膜厚は特に限定はないが、通常0.01nm以上、好ましくは0.1nm以上、より好ましくは0.5nm以上である。一方、通常40nm以下、好ましくは20nm以下である。電子取り出し層102の膜厚が上記下限以上であることでバッファ材料としての機能を果たすことになり、電子取り出し層102の膜厚が上記上限以下であることで、電子が取り出しやすくなり、光電変換効率が向上しうる。
アルカリ金属塩を電子取り出し層102の材料として用いる場合、真空蒸着、スパッタ等の真空成膜方法を用いて電子取り出し層102を成膜することが可能である。なかでも、抵抗加熱による真空蒸着によって、電子取り出し層102を形成するのが望ましい。真空蒸着を用いることにより、活性層103等の他の層へのダメージを小さくすることができる。
n型半導体の金属酸化物については、例えば、酸化亜鉛ZnOを電子取り出し層102の材料として用いる場合には、スパッタ法等の真空成膜方法を用いることもできるが、塗布法を用いて電子取り出し層102を成膜することが望ましい。例えば、Sol−Gel
Science、C.J.Brinker,G.W.Scherer著、Academic Press(1990)に記載のゾルゲル法に従って、酸化亜鉛で構成される電子取り出し層102を形成できる。この場合の膜厚は、通常0.1nm以上、好ましくは2nm以上、より好ましくは5nm以上であり、通常1μm以下、好ましくは100nm以下、より好ましくは50nm以下である。電子取り出し層102が薄すぎると、電子の取
り出し効率を向上させる効果が十分でなくなり、厚すぎると、電子取り出し層102が直列抵抗成分として作用することにより素子の特性を損なう傾向がある。電子取り出し層102の材料が有機化合物である場合、一般的に、昇華性を有する材料を用いる場合には真空蒸着法等の真空成膜方法等を用いることができる。また、溶媒に可溶な材料を用いる場合は、リバースロールコート法、グラビアコート法、キスコート法、スリットダイコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーバーコート法、パイプドクター法、含浸・コート法、カーテンコート法、フレキソ印刷、インクジェット等の湿式塗布法等を用いることができる。
<1−3−2.正孔取り出し層>
正孔取り出し層の材料に特に限定は無く、活性層からアノードへの正孔の取り出し効率を向上させることが可能な材料であれば特に限定されない。具体的には、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアセチレン、トリフェニレンジアミン又はポリアニリン等に、スルホン酸及び/又はヨウ素等がドーピングされた導電性ポリマー、スルホニル基を置換基に有するポリチオフェン誘導体、アリールアミン等の導電性有機化合物、酸化銅、酸化ニッケル、酸化マンガン、酸化モリブデン、酸化バナジウム又は酸化タングステン等の金属酸化物、ナフィオン、後述のp型半導体等が挙げられる。その中でも好ましくは、スルホン酸をドーピングした導電性ポリマーであり、より好ましくは、ポリチオフェン誘導体にポリスチレンスルホン酸をドーピングした(3,4−エチレンジオキシチオフェン)ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT:PSS)である。また、金、インジウム、銀又はパラジウム等の金属等の薄膜も使用することができる。金属等の薄膜は、単独で形成してもよいし、上記の有機材料と組み合わせて用いることもできる。
正孔取り出し層の膜厚は特に限定はないが、通常0.2nm以上である。一方、通常400nm以下、好ましくは200nm以下である。正孔取り出し層の膜厚が上記下限以上であることでバッファ材料としての機能を果たすことになり、正孔取り出し層の膜厚が上記上限以下であることで、正孔が取り出し易くなり、光電変換効率が向上しうる。
正孔取り出し層の形成方法に制限はない。例えば、昇華性を有する材料を用いる場合は真空蒸着法等により形成することができる。また、例えば、溶媒に可溶な材料を用いる場合は、リバースロールコート法、グラビアコート法、キスコート法、スリットダイコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーバーコート法、パイプドクター法、含浸・コート法、カーテンコート法、フレキソ印刷、インクジェット等の湿式塗布法等により形成することができる。正孔取り出し層に半導体材料を用いる場合は、後述の有機活性層の低分子有機半導体化合物と同様に、前駆体を用いて層を形成した後に前駆体を半導体化合物に変換してもよい。
なかでも、正孔取り出し層の材料としてPEDOT:PSSを用いる場合、分散液を塗布する方法によって正孔取り出し層を形成することが好ましい。PEDOT:PSSの分散液としては、ヘレウス社製のCLEVIOSTMシリーズや、アグファ社製のORGACONTMシリーズ等が挙げられる。
塗布法により正孔取り出し層を形成する場合は、塗布液にさらに界面活性剤を含有させてもよい。界面活性剤の使用により、微小な泡若しくは異物等の付着による凹み及び/又は乾燥工程での塗布むら等の発生が抑制される。界面活性剤としては、公知の界面活性剤(カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤)を用いることができる。なかでも、ケイ素系界面活性剤、アセチレンジオール系界面活性剤又はフッ素系界面活性剤が好ましい。なお、界面活性剤としては1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
<1−4.活性層>
活性層は光電変換が行われる層を指し、通常、p型半導体化合物とn型半導体化合物をと含む。p型半導体化合物とは、p型半導体材料として働く化合物であり、n型半導体化合物とは、n型半導体材料として働く化合物である。有機薄膜太陽電池素子が光を受けると、光が活性層に吸収され、p型半導体化合物とn型半導体化合物との界面で電気が発生し、発生した電気が電極から取り出される。
活性層103の材料としては無機化合物と有機化合物とのいずれを用いてもよいが、簡易な塗布プロセスにより形成しうる層であることが好ましい。より好ましくは、活性層103は有機化合物からなる有機活性層である。以下では、活性層103が有機活性層であるものとして説明する。
活性層の層構成としては、p型半導体化合物層とn型半導体化合物層とが積層された薄膜積層型、p型半導体化合物とn型半導体化合物とが混合した層を有するバルクヘテロ接合型、p型半導体化合物層と、p型半導体化合物とn型半導体化合物とが混合した層(i層)と、n型半導体化合物層とが積層されたもの、等が挙げられる。なかでも、p型半導体化合物とn型半導体化合物が混合した層を有するバルクヘテロ接合型が好ましい。
活性層の膜厚は特に限定されないが、通常10nm以上、好ましくは50nm以上であり、一方通常1000nm以下、好ましくは500nm以下、より好ましくは200nm以下である。活性層の膜厚が上記下限以上であることは、膜の均一性が保たれ、短絡を起こしにくくなるため、好ましい。また、活性層の厚さが上記上限以下であることは、内部抵抗が小さくなる点、及び電極間が離れすぎず電荷の拡散が良好となる点で、好ましい。
活性層の作成方法としては、特段に制限はないが、塗布法が好ましい。塗布法としては、任意の方法を用いることができるが、例えば、スピンコート法、リバースロールコート法、グラビアコート法、キスコート法、スリットダイコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーバーコート法、パイプドクター法、含浸・コート法、カーテンコート法、フレキソ印刷、インクジェット等が挙げられる。
例えば、p型半導体化合物層及びn型半導体化合物層は、p型半導体化合物又はn型半導体化合物を含む塗布液を塗布することにより作製しうる。また、p型半導体化合物とn型半導体化合物とが混合した層は、p型半導体化合物及びn型半導体化合物を含む塗布液を塗布することにより作製しうる。後述するように、半導体化合物前駆体を含む塗布液を塗布した後で、半導体化合物前駆体を半導体化合物へと変換してもよい。
<1−4−1.p型半導体化合物>
活性層が含むp型半導体化合物としては、特に限定はないが、低分子有機半導体化合物と高分子有機半導体化合物とが挙げられる。
<1−4−1−1.低分子有機半導体化合物>
低分子有機半導体化合物の分子量は、上限、下限ともに特に制限されないが、通常5000以下、好ましくは2000以下であり、一方、通常100以上、好ましくは200以上である。
また、低分子有機半導体化合物は結晶性を有することが好ましい。結晶性を有するp型半導体化合物は分子間相互作用が強く、活性層においてp型半導体化合物とn型半導体化合物との界面で生成した正孔(ホール)を効率よくアノードへ輸送しうる。本明細書において結晶性とは、分子間相互作用等によって配向の揃った3次元周期配列をとる、化合物の性質である。結晶性の測定方法としては、X線回折法(XRD)又は電界効果移動度測
定法等が挙げられる。特に電界効果移動度測定において、正孔移動度が1.0×10-5cm2/Vs以上であることが好ましく、1.0×10-4cm2/Vs以上であることがより好ましい。一方、正孔移動度が通常1.0×104cm2/Vs以下であることが好ましく、1.0×103cm2/Vs以下であることがより好ましく、1.0×102cm2/Vs以下であることさらに好ましい。
低分子有機半導体化合物としては、p型半導体材料として働きうるのであれば特段の制限はないが、具体的には、ナフタセン、ペンタセン又はピレン等の縮合芳香族炭化水素;α−セキシチオフェン等のチオフェン環を4個以上含むオリゴチオフェン類;チオフェン環、ベンゼン環、フルオレン環、ナフタレン環、アントラセン環、チアゾール環、チアジアゾール環及びベンゾチアゾール環のうち少なくとも一つ以上を含み、かつ合計4個以上連結したもの;フタロシアニン化合物及びその金属錯体、又はテトラベンゾポルフィリン等のポルフィリン化合物及びその金属錯体、等の大環状化合物等が挙げられる。好ましくは、フタロシアニン化合物及びその金属錯体又はポルフィリン化合物及びその金属錯体である。
ポルフィリン化合物及びその金属錯体(図中のZ1がCH)、及びフタロシアニン化合
物及びその金属錯体(図中のZ1がN)としては、例えば、以下のような構造の化合物が
挙げられる。
ここで、Mは金属あるいは2個の水素原子を表し、金属としては、Cu、Zn、Pb、Mg、Pd、Ag、Co又はNi等の2価の金属のほか、軸配位子を有する3価以上の金属、例えば、TiO、VO、SnCl2、AlCl、InCl又はSi等も挙げられる。
11〜R14はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1以上24以下のアルキル基である。炭素数1以上24以下のアルキル基とは、炭素数1以上24以下の飽和若しくは不飽和の鎖状炭化水素基又は炭素数3以上24以下の飽和若しくは不飽和の環式炭化水素である。その中でも好ましくは炭素数1以上12以下の飽和若しくは不飽和の鎖状炭化水素基又は炭素数3以上12以下の飽和若しくは不飽和の環式炭化水素である。
フタロシアニン化合物及びその金属錯体の中でも、好ましくは、29H,31H−フタロシアニン、銅フタロシアニン錯体、亜鉛フタロシアニン錯体、チタンフタロシアニンオキシド錯体、マグネシウムフタロシアニン錯体、鉛フタロシアニン錯体又は銅4,4',
4'',4'''−テトラアザ−29H,31H−フタロシアニン錯体であり、より好ましく
は、29H,31H−フタロシアニン又は銅フタロシアニン錯体である。上記のうち一種の化合物を用いてもよいし、複数種の化合物の混合物を用いてもよい。
ポルフィリン化合物及びその金属錯体の中でも、好ましくは、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィン、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィンコバルト(II)、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィン銅(II)、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィン亜鉛(II)、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィンニッケル(II)、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィンバナジウム(IV)オキシド、5,10,15,20−テトラ(4−ピリジル)−21H,23H−ポルフィン、29H,31H−テトラベンゾ[b,g,l,q]ポルフィン、29H,31H−テトラベンゾ[b,g,l,q]ポルフィンコバルト(II)、29H,31H−テトラベンゾ[b,g,l,q]ポルフィン銅(II)、29H,31H−テトラベンゾ[b,g,l,q]ポルフィン亜鉛(II)、29H,31H−テトラベンゾ[b,g,l,q]ポルフィンニッケル(II)又は29H,31H−テトラベンゾ[b,g,l,q]ポルフィンバナジウム(IV)オキシドであり、好ましくは、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィン又は29H,31H−テトラベンゾ[b,g,l,q]ポルフィンである。上記のうち一種の化合物を用いてもよいし、複数種の化合物の混合物を用いてもよい。
低分子有機半導体化合物の成膜方法としては、蒸着法及び塗布法が挙げられる。塗布成膜できるというプロセス上の利点からは後者が好ましい。塗布法を用いる場合、低分子有機半導体化合物前駆体を塗布後に低分子有機半導体化合物に変換する方法がある。塗布成膜がより容易である点で、半導体化合物前駆体を用いる方法がより好ましい。
低分子有機半導体化合物前駆体とは、例えば加熱や光照射等の外的刺激を与えることにより、その化学構造が変化し、低分子有機半導体化合物に変換される化合物である。低分子有機半導体化合物前駆体は成膜性に優れることが好ましい。特に、塗布法を適用できるようにするためには、前駆体自体が液状で塗布可能であるか又は前駆体が何らかの溶媒に対して溶解性が高く溶液として塗布可能であることが好ましい。このため、低分子有機半導体化合物前駆体の溶媒に対する溶解性は、通常0.1重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上である。一方、上限に特段の制限はないが、通常50重量%以下、好ましくは40重量%以下である。
溶媒の種類としては、半導体前駆体化合物を均一に溶解あるいは分散できるものであれば特に限定されないが、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン又はデカン等の脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレン、シクロヘキシルベンゼン、クロロベンゼン又はオルトジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;メタノール、エタノール又はプロパノール等の低級アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン又はシクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル又は乳酸メチル等のエステル類;クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、トリクロロエタン又はトリクロロエチレン等のハロゲン炭化水素類;エチルエーテル、テトラヒドロフラン又はジオキサン等のエーテル類;ジメチルホルムアミド又はジメチルアセトアミド等のアミド類等が挙げられる。なかでも好ましくは、トルエン、キシレン、シクロヘキシルベンゼン、クロロベンゼン又はオルトジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン又はシクロヘキサノン等のケトン類;クロロホルム、塩化メチ
レン、ジクロロエタン、トリクロロエタン又はトリクロロエチレン等のハロゲン炭化水素類;エチルエーテル、テトラヒドロフラン又はジオキサン等のエーテル類である。
これらの中でも非ハロゲン系溶媒が好ましい。ハロゲン系溶媒を用いることも可能であるが、環境負荷の面等から代替が求められている。非ハロゲン系溶媒としては、好ましくは、トルエン、キシレン又はシクロヘキシルベンゼン等の非ハロゲン芳香族炭化水素類;シクロペンタノン又はシクロヘキサノン等の非ハロゲン系ケトン類;テトラヒドロフラン又は1,4−ジオキサン等の非ハロゲン系脂肪族エーテル類である。特に好ましくは、トルエン、キシレン又はシクロヘキシルベンゼン等の非ハロゲン芳香族炭化水素類である。なお、1種の溶媒を単独で用いてもよく、2種以上の溶媒を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
さらに、低分子有機半導体化合物前駆体は、容易に半導体化合物に変換できることが好ましい。後述する低分子有機半導体化合物前駆体から半導体化合物への変換工程において、どのような外的刺激を半導体前駆体に与えるかは任意であるが、通常は、熱処理又は光処理等を行なう。好ましくは、熱処理である。この場合には、低分子有機半導体化合物前駆体が、骨格の一部として、逆ディールス・アルダー反応によって脱離可能な、所定の溶媒に対する親溶媒性の基を有することが好ましい。
また、低分子有機半導体化合物前駆体は、変換工程を経て、高い収率で半導体化合物に変換されることが好ましい。この際、低分子有機半導体化合物前駆体から変換して得られる半導体化合物の収率は光電変換素子の性能を損なわない限り任意であるが、低分子有機半導体化合物前駆体から得られる低分子有機半導体化合物の収率は、通常90モル%以上、好ましくは95モル%以上、より好ましくは99モル%以上である。
低分子有機半導体化合物前駆体は上記の特徴を有するものであれば特に制限はないが、具体的には特開2007−324587号公報に記載の化合物等が用いられうる。なかでも好ましい例としては、下式で表される化合物が挙げられる。
上式において、D1及びD2の少なくとも一方はπ共役した2価の芳香族環を形成する基を表し、Z2−Z3は熱又は光により脱離可能な基であって、Z2−Z3が脱離して得られるπ共役化合物が低分子有機半導体化合物となるものを表す。また、D1及びD2のうちπ共役した2価の芳香族環を形成する基でないものは、置換又は無置換のエテニレン基を表す。
上式で表される化合物は、下記化学反応式に示すように熱又は光によりZ2−Z3が脱離して、平面性の高いπ共役化合物を生成する。この生成されたπ共役化合物が低分子有機半導体化合物である。この低分子有機半導体化合物が、p型半導体特性を有する材料として用いられる。
低分子有機半導体化合物前駆体の例としては、以下のものが挙げられる。以下において、t−Buはt−ブチル基を表し、Mは、ポルフィリン及びフタロシアニンについて説明したものと同様である。
低分子有機半導体化合物前駆体の低分子有機半導体化合物への変換の具体例としては、例えば以下のものが挙げられる。
低分子有機半導体化合物前駆体は、位置異性体が存在する構造であってもよく、またその場合、複数の位置異性体の混合物であってもよい。複数の位置異性体の混合物は、単一の位置異性体成分からなる低分子有機半導体化合物前駆体と比較して溶媒に対する溶解度が向上するため、塗布成膜が行いやすく好ましい。複数の位置異性体の混合物の溶解度が高い理由は、詳細なメカニズムは明確ではないが、化合物そのものの結晶性が潜在的に保持されつつも、複数の異性体混合物が溶液内に混在することで、三次元規則的な分子間相互作用が困難になるためと想定される。複数の位置異性体混合物の、非ハロゲン性溶媒への溶解度は、通常0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上、より好ましくは5重量%以上である。上限に制限は無いが、通常50重量%以下、より好ましくは40重量%以下である。
<1−4−1−2.高分子有機半導体化合物>
高分子有機半導体化合物として、特に限定はなく、ポリチオフェン、ポリフルオレン、ポリフェニレンビニレン、ポリチエニレンビニレン、ポリアセチレン又はポリアニリン等の共役ポリマー半導体;アルキル基やその他の置換基が置換されたオリゴチオフェン等のポリマー半導体;等が挙げられる。また、二種以上のモノマー単位を共重合させた半導体ポリマーも挙げられる。共役ポリマーとしては、例えば、Handbook of Co
nducting Polymers,3rd Ed.(全2巻),2007、Materials Science and Engineering,2001,32,1−40、Pure Appl.Chem.2002,74,2031−3044、Handbook of THIOPHENE−BASED MATERIALS(全2巻),2009等の公知文献に記載されたポリマーやその誘導体、及び記載されているモノマーの組み合わせによって合成し得るポリマーを用いることができる。p型半導体化合物として用いられる高分子有機半導体化合物は、一種の化合物でも複数種の化合物の混合物でもよい。
高分子有機半導体化合物のモノマー骨格及びモノマーの置換基は、溶解性、結晶性、成膜性、HOMOエネルギー準位及びLUMOエネルギー準位等を制御するために選択することができる。また、高分子有機半導体化合物が有機溶媒に可溶であることは、光電変換素子を作製する際に塗布法により活性層を形成しうる点で好ましい。高分子有機半導体化合物の具体例としては以下のものが挙げられるが、これらに限定されることはない。
p型半導体化合物としてなかでも好ましくは、低分子有機半導体化合物としては、ナフタセン、ペンタセン、ピレン等の縮合芳香族炭化水素、フタロシアニン化合物及びその金属錯体、又はテトラベンゾポルフィリン(BP)等のポルフィリン化合物及びその金属錯体であり、高分子有機半導体化合物としては、ポリチオフェン等の共役ポリマー半導体である。活性層で用いられるp型半導体化合物は、一種の化合物でも複数種の化合物の混合物でもよい。
低分子有機半導体化合物及び/又は高分子有機半導体化合物は、成膜された状態において、何らかの自己組織化した構造を有していても、アモルファス状態であってもよい。
p型半導体化合物のHOMO(最高被占分子軌道)エネルギー準位は、特に限定は無く、後述のn型半導体化合物の種類によって選択することができる。特に、フラーレン化合物をn型半導体化合物として用いる場合、p型半導体化合物のHOMOエネルギー準位は、通常−5.7eV以上、より好ましくは−5.5eV以上、一方、通常−4.6eV以下、より好ましくは−4.8eV以下である。p型半導体化合物のHOMOエネルギー準位が−5.7eV以上であることによりp型半導体としての特性が向上し、p型半導体化合物のHOMOエネルギー準位が−4.6eV以下であることにより化合物の安定性が向上し、開放電圧(Voc)も向上する。
p型半導体化合物のLUMO(最低空分子軌道)エネルギー準位は、特に限定は無いが、後述のn型半導体化合物の種類によって選択することができる。特に、フラーレン化合物をn型半導体化合物として用いる場合、p型半導体化合物のLUMOエネルギー準位は
、通常−3.7eV以上、好ましくは−3.6eV以上である。一方、通常−2.5eV以下、好ましくは−2.7eV以下である。p型半導体のLUMOエネルギー準位が−2.5eV以下であることにより、バンドギャップが調整され長波長の光エネルギーを有効に吸収することができ、短絡電流密度が向上する。p型半導体化合物のLUMOエネルギー準位が−3.7eV以上であることにより、n型半導体化合物への電子移動が起こりやすくなり短絡電流密度が向上する。
<1−4−2.n型半導体化合物>
n型半導体化合物としては、特段の制限はないが、具体的にはフラーレン化合物、8−ヒドロキシキノリンアルミニウムに代表されるキノリノール誘導体金属錯体;ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド又はペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の縮合環テトラカルボン酸ジイミド類;ペリレンジイミド誘導体、ターピリジン金属錯体、トロポロン金属錯体、フラボノール金属錯体、ペリノン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、ベンズオキサゾール誘導体、チアゾール誘導体、ベンズチアゾール誘導体、ベンゾチアジアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、アルダジン誘導体、ビススチリル誘導体、ピラジン誘導体、フェナントロリン誘導体、キノキサリン誘導体、ベンゾキノリン誘導体、ビピリジン誘導体、ボラン誘導体、アントラセン、ピレン、ナフタセン又はペンタセン等の縮合多環芳香族炭化水素の全フッ化物;単層カーボンナノチューブ等が挙げられる。
そのなかでも、フラーレン化合物、ボラン誘導体、チアゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾチアジアゾール誘導体、N−アルキル置換されたナフタレンテトラカルボン酸ジイミド及びN−アルキル置換されたペリレンジイミド誘導体が好ましく、フラーレン化合物、N−アルキル置換されたペリレンジイミド誘導体及びN−アルキル置換されたナフタレンテトラカルボン酸ジイミドがより好ましい。上記のうち一種の化合物を用いてもよいし、複数種の化合物の混合物を用いてもよい。また、n型半導体化合物としては、n型高分子半導体化合物も挙げられる。
n型半導体化合物のLUMOエネルギー準位は、特に限定はされないが、例えばサイクリックボルタモグラム測定法により算出される真空準位に対する値が、通常−3.85eV以上、好ましくは−3.80eV以上である。p型半導体化合物から効率良くn型半導体化合物へと電子を移動させるためには、p型半導体化合物とn型半導体化合物とのLUMOエネルギー準位の相対関係が重要である。具体的には、p型半導体化合物のLUMOエネルギー準位が、n型半導体化合物のLUMOエネルギー準位より所定の値だけ上にあること、言い換えると、n型半導体化合物の電子親和力がp型半導体化合物の電子親和力より所定のエネルギーだけ大きいことが好ましい。開放電圧(Voc)はp型半導体化合物のHOMOエネルギー準位とn型半導体化合物のLUMOエネルギー準位の差に依存するため、n型半導体化合物のLUMOを高くすると、Vocが高くなる傾向がある。一方、LUMOの値は通常−1.0eV以下、好ましくは−2.0eV以下、より好ましくは−3.0eV以下、更に好ましくは−3.3eV以下である。n型半導体化合物のLUMOエネルギー準位を低くすることで、電子の移動が起こりやすくなり、短絡電流(Jsc)が高くなる傾向がある。
n型半導体化合物のLUMOエネルギー準位の算出方法は、理論的に計算値で求める方法と実際に測定する方法が挙げられる。理論的に計算値で求める方法としては、半経験的分子軌道法及び非経験的分子軌道法があげられる。実際に測定する方法としては、紫外可視吸収スペクトル測定法又はサイクリックボルタモグラム測定法が挙げられる。その中でも好ましくはサイクリックボルタモグラム測定法である。
n型半導体化合物のHOMOエネルギー準位は、特に限定は無いが、通常−5.0eV
以下、好ましくは−5.5eV以下である。一方、通常−7.0eV以上、好ましくは−6.6eV以上である。n型半導体化合物のHOMOエネルギー準位が−7.0eV以上であることは、n型半導体化合物の光吸収も発電に利用しうる点で好ましい。n型半導体化合物のHOMOエネルギー準位が−5.0eV以下であることは、正孔の逆移動を阻止できる点で好ましい。
n型半導体化合物の電子移動度は、特段の制限はないが、通常1.0×10-6cm2
Vs以上であり、1.0×10-5cm2/Vs以上が好ましく、5.0×10-5cm2/Vs以上がより好ましく、1.0×10-4cm2/Vs以上がさらに好ましい。一方、通常
1.0×103cm2/Vs以下であり、1.0×102cm2/Vs以下が好ましく、5.0×101cm2/Vs以下がより好ましい。n型半導体化合物の電子移動度が1.0×10-6cm2/Vs以上であることは、有機薄膜太陽電池素子の電子拡散速度向上、短絡電
流向上、変換効率向上等の効果が得られうる点で好ましい。電子移動度の測定方法としては電界効果トランジスタ(FET)法が挙げられ、公知文献(特開2010−045186号公報)に記載の方法により実施することができる。
n型半導体化合物の25℃でのトルエンに対する溶解度は、通常0.5重量%以上であり、0.6重量%以上が好ましく、0.7重量%以上がより好ましい。一方、通常90重量%以下が好ましく、80重量%以下がより好ましく、70重量%以下がさらに好ましい。n型半導体化合物の25℃でのトルエンに対する溶解度が0.5重量%以上であることは、溶液中でのn型半導体化合物の分散安定性が向上し、凝集、沈降、分離等を起こしにくくなるために、好ましい。
以下、好ましいn型半導体化合物の例について説明する。
<1−4−2−1.フラーレン化合物>
フラーレン化合物としては、一般式(n1)、(n2)、(n3)及び(n4)で表される部分構造を有するものが好ましい例として挙げられる。
上式中、FLNは、閉殻構造を有する炭素クラスターであるフラーレンを表す。フラー
レンの炭素数は、通常60以上130以下の偶数であれば何でもよい。フラーレンとしては、例えば、C60、C70、C76、C78、C82、C84、C90、C94、C96及びこれらよりも多くの炭素を有する高次の炭素クラスター等が挙げられる。その中でも、C60又はC70が好ましい。フラーレンとしては、一部のフラーレン環上の炭素−炭素結合が切れていてもよい。また、フラーレンを構成する炭素原子の一部が、他の原子に置き換えられていてもよい。さらにフラーレンは、金属原子、非金属原子あるいはこれらから構成される原子団をフラーレンケージ内に内包していてもよい。
a、b、c及びdは整数であり、a、b、c及びdの合計は通常1以上であり、一方、通常5以下であり、好ましくは3以下である。(n1)、(n2)、(n3)及び(n4)中の部分構造は、フラーレン骨格中の同一の五員環又は六員環に結合している。一般式(n1)では、フラーレン骨格中の同一の五員環又は六員環上の隣接する2つの炭素原子に対して、−R21と、−(CH2Lとがそれぞれ結合している。一般式(n2)では、フラーレン骨格中の同一の5員環又は6員環上の隣接する2つの炭素原子に対して、−C(R25)(R26)−N(R27)−C(R28)(R29)−が付加して5員環を形成している。一般式(n3)では、フラーレン骨格中の同一の5員環又は6員環上の隣接する2つの炭素原子に対して、−C(R30)(R31)−C−C−C(R32)(R33)−が付加して6員環を形成している。一般式(n4)では、フラーレン骨格中の同一の5員環又は6員環上の隣接する2つの炭素原子に対して−C(R34)(R35)−が付加して3員環を形成している。Lは1以上8以下の整数である。Lとして好ましくは1以上4以下の整数であり、さらに好ましくは1以上2以下の整数である。
一般式(n1)中のR21は、置換基を有していてもよい炭素数1以上14以下のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1以上14以下のアルコキシ基又は置換基を有していてもよい芳香族基である。
アルキル基としては、炭素数1以上10以下のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基又はイソブチル基がより好ましく、メチル基又はエチル基が更に好ましい。アルコキシ基としては、炭素数1以上10以下のアルコキシ基が好ましく、炭素数1以上6以下のアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基又はエトキシ基が特に好ましい。芳香族基としては、炭素数6以上20以下の芳香族炭化水素基又は炭素数2以上20以下の芳香族複素環基が好ましく、フェニル基、チエニル基、フリル基又はピリジル基がより好ましく、フェニル基又はチエニル基が更に好ましい。
上記のアルキル基、アルコキシ基及び芳香族基が有していてもよい置換基としては特に限定されないが、ハロゲン原子又はシリル基が好ましい。ハロゲン原子としてはフッ素原子が好ましい。シリル基としては、ジアリールアルキルシリル基、ジアルキルアリールシリル基、トリアリールシリル基又はトリアルキルシリル基が好ましく、ジアルキルアリールシリル基がより好ましく、ジメチルアリールシリル基がさらに好ましい。
一般式(n1)中のR22〜R24は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1以上14以下のアルキル基又は置換基を有していてもよい芳香族基である。
アルキル基としては、炭素数1以上10以下のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基又はn−ヘキシル基が好ましい。アルキル基が有していてもよい置換基としてはハロゲン原子が好ましい。ハロゲン原子としてはフッ素原子が好ましい。フッ素原子で置換されたアルキル基としては、パーフルオロオクチル基、パーフルオロヘキシル基又はパーフルオロ
ブチル基が好ましい。
芳香族基としては、炭素数6以上20以下の芳香族炭化水素基又は炭素数2以上20以下の芳香族複素環基が好ましく、フェニル基、チエニル基、フリル基又はピリジル基がより好ましく、フェニル基又はチエニル基が更に好ましい。芳香族基が有していてもよい置換基は特に限定されないが、フッ素原子、炭素数1以上14以下のアルキル基、炭素数1以上14以下のフッ化アルキル基、炭素数1以上14以下のアルコキシ基又は炭素数3以上10以下の芳香族基が好ましく、フッ素原子又は炭素数1以上14以下のアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基、n−ブトキシ基又は2−エチルヘキシルオキシ基が更に好ましい。芳香族基が置換基を有する場合、その数に限定は無いが、1以上3以下が好ましく、1がより好ましい。芳香族基が置換基を複数有する場合、その置換基の種類は異なっていてもよいが、好ましくは同一である。
一般式(n2)中のR25〜R29は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1以上14以下のアルキル基又は置換基を有していてもよい芳香族基である。
アルキル基として好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ヘキシル基又はオクチル基であり、より好ましくはメチル基である。アルキル基が有していてもよい置換基としては、特に限定されないが、ハロゲン原子が好ましい。ハロゲン原子としてはフッ素原子が好ましい。フッ素原子で置換されたアルキル基としては、パーフルオロオクチル基、パーフルオロヘキシル基又はパーフルオロブチル基が好ましい。
芳香族基としては、炭素数6以上20以下の芳香族炭化水素基又は炭素数2以上20以下の芳香族複素環基が好ましく、フェニル基又はピリジル基がより好ましく、フェニル基がさらに好ましい。芳香族基が有していてもよい置換基としては、特に限定されないが、好ましくはフッ素原子、炭素数1以上14以下のアルキル基、又は炭素数1以上14以下のアルコキシ基である。アルキル基にはフッ素原子が置換されていてもよい。さらに好ましくは炭素数1以上14以下のアルコキシ基であり、さらに好ましくはメトキシ基である。置換基を有する場合、その数に限定は無いが、好ましくは1以上3以下であり、より好ましくは1である。置換基の種類は異なっていてもよいが、好ましくは同一である。
一般式(n3)中のAr1は、置換基を有していてもよい炭素数6以上20以下の芳香
族炭化水素基又は炭素数2以上20以下の芳香族複素環基であり、好ましくはフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、チエニル基、フリル基、ピリジル基、ピリミジル基、キノリル基又はキノキサリル基であり、さらに好ましくはフェニル基、チエニル基又はフリル基である。
有していてもよい置換基として限定は無いが、フッ素原子、塩素原子、水酸基、シアノ基、シリル基、ボリル基、アルキル基で置換していてもよいアミノ基、炭素数1以上14以下のアルキル基、炭素数1以上14以下のアルコキシ基、炭素数2以上14以下のアルキルカルボニル基、炭素数1以上14以下のアルキルチオ基、炭素数2以上14以下のアルケニル基、炭素数2以上14以下のアルキニル基、炭素数2以上14以下のエステル基、炭素数3以上20以下のアリールカルボニル基、炭素数2以上20以下のアリールチオ基、炭素数2以上20以下のアリールオキシ基、炭素数6以上20以下の芳香族炭化水素基又は炭素数2以上20以下の複素環基が好ましく、フッ素原子、炭素数1以上14以下のアルキル基、炭素数1以下14以下のアルコキシ基、炭素数2以上14以下のエステル基、炭素数2以上14以下のアルキルカルボニル基又は炭素数3以上20以下のアリールカルボニル基がより好ましい。炭素数1以上14以下のアルキル基は1又は2以上のフッ
素で置換されていてもよい。
炭素数1以上14以下のアルキル基としては、メチル基、エチル基又はプロピル基が好ましい。炭素数1以上14以下のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基又はプロポキシ基が好ましい。炭素数1以上14以下のアルキルカルボニル基としては、アセチル基が好ましい。炭素数2以上14以下のエステル基としては、メチルエステル基又はn−ブチルエステル基が好ましい。炭素数3以上20以下のアリールカルボニル基としては、ベンゾイル基が好ましい。
置換基を有する場合、その数に限定は無いが、1以上4以下が好ましく、1以上3以下がより好ましい。置換基が複数の場合、その種類は異なっていてもよいが、好ましくは同一である。
一般式(n3)中のR30〜R33は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいアルコキシ基又は置換基を有していてもよいアルキルチオ基である。R30又はR31は、R32とR33とのいずれか一方と結合して環を形成していてもよい。環を形成する場合における構造としては、例えば、芳香族基が縮合したビシクロ構造である一般式(n5)に示す構造が挙げられる。
一般式(n5)においてfはcと同義であり、Z4は、酸素原子、硫黄原子、アミノ基
、アルキレン基又はアリーレン基である。アルキレン基としては炭素数1以上2以下が好ましい。アリーレン基としては炭素数5以上12以下が好ましく、例えばフェニレン基が挙げられる。アミノ基は、メチル基やエチル基等の炭素数1以上6以下のアルキル基で置換されていてもよい。アルキレン基は、メトキシ基等の炭素数1以上6以下のアルコキシ基、炭素数1以上5以下の脂肪族炭化水素基、炭素数6以上20以下の芳香族炭化水素基又は炭素数2以上20以下の芳香族複素環基で置換されていてもよい。アリーレン基は、メトキシ基等の炭素数1以上6以下のアルコキシ基、炭素数1以上5以下の脂肪族炭化水素基、炭素数6以上20以下の芳香族炭化水素基又は炭素数2以上20以下の芳香族複素環基で置換されていてもよい。
式(n5)に示す構造として特に好ましくは、下記式(n6)又は式(n7)で表される構造である。
一般式(n4)中のR34〜R35は、それぞれ独立して、水素原子、アルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよい炭素数1以上14以下のアルキル基又は置換基を有していてもよい芳香族基である。
アルコキシカルボニル基を構成するアルコキシ基としては、炭素数1以上12以下のアルコキシ基又は炭素数1以上12以下のフッ化アルコキシ基が好ましく、炭素数1以上12以下のアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、n−ヘキソキシ基、オクトキシ基、2−プロピルペントキシ基、2−エチルヘキソキシ基、シクロヘキシルメトキシ基又はベンジルオキシ基がさらに好ましく、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基又はn−ヘキソキシ基が特に好ましい。
アルキル基としては、炭素数1以上8以下の直鎖アルキル基が好ましく、n−プロピル基がより好ましい。アルキル基が有していてもよい置換基には特に限定は無いが、好ましくはアルコキシカルボニル基である。アルコキシカルボニル基を構成するアルコキシ基としては、炭素数1以上14以下のアルコキシ基又はフッ化アルコキシ基が好ましく、炭素数1以上14以下の炭化水素基がより好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、n−ヘキソキシ基、オクトキシ基、2−プロピルペントキシ基、2−エチルヘキソキシ基、シクロヘキシルメトキシ基又はベンジルオキシ基がさらに好ましく、メトキシ基又はn−ブトキシ基が特に好ましい。
芳香族基としては、炭素数6以上20以下の芳香族炭化水素基又は炭素数2以上20以下の芳香族複素環基が好ましく、フェニル基、ビフェニル基、チエニル基、フリル基又はピリジル基が好ましく、フェニル基又はチエニル基がさらに好ましい。芳香族基が有していてもよい置換基としては、炭素数1以上14以下のアルキル基、炭素数1以上14以下のフッ化アルキル基又は炭素数1以上14以下のアルコキシ基が好ましく、炭素数1以上14以下のアルコキシ基がさらに好ましく、メトキシ基又は2−エチルヘキシルオキシ基が特に好ましい。置換基を有する場合、その数に限定は無いが、好ましくは1以上3以下であり、より好ましくは1である。置換基の種類は異なっていても同一でもよく、好ましくは同一である。
一般式(n4)の構造として好ましくは、R34、R35が共にアルコキシカルボニル基であるか、R34、R35が共に芳香族基であるか、又はR34が芳香族基でありかつR35が3−(アルコキシカルボニル)プロピル基であるものが挙げられる。
フラーレン化合物としては、上記のうち一種の化合物を用いてもよいし、複数種の化合物の混合物を用いてもよい。
塗布法によりフラーレン化合物を成膜するためには、フラーレン化合物自体が液状で塗
布可能であるか、又はフラーレン化合物が何らかの溶媒に対して溶解性が高く溶液として塗布可能であることが好ましい。溶解性の好適な範囲をあげると、25℃でのトルエンに対する溶解度が、通常0.1重量%以上、好ましくは0.4重量%以上、より好ましくは0.7重量%以上である。フラーレン化合物の溶解度が上記下限以上であることは、フラーレン化合物の溶液中での分散安定性が増加し、凝集、沈降、分離等が起こりにくくなるために好ましい。
フラーレン化合物を溶解させる溶媒としては、非極性有機溶媒であれば特段に制限はないが、非ハロゲン系溶媒が好ましい。ジクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒を用いることも可能であるが、環境負荷の面等から代替が求められている。非ハロゲン系溶媒としては、例えば、非ハロゲン系芳香族炭化水素類が挙げられる。その中でも好ましくはトルエン、キシレン又はシクロヘキシルベンゼン等である。
フラーレン化合物の製造方法としては、特に制限はないが、例えば、部分構造(n1)を有するフラーレン化合物の合成は、国際公開第2008/059771号やJ.Am.Chem.Soc.,2008,130(46),15429−15436のような公知文献の記載に従って実施可能である。
部分構造(n2)を有するフラーレン化合物の合成は、J.Am.Chem.Soc.1993,115,9798−9799、Chem.Mater.2007,19,5363−5372及びChem.Mater.2007,19,5194−5199のような公知文献の記載に従って実施可能である。
部分構造(n3)を有するフラーレン化合物の合成は、Angew.Chem.Int.Ed.Engl.1993,32,78−80、Tetrahedron Lett.1997,38,285−288、国際公開第2008/018931号及び国際公開第2009/086210号のような公知文献の記載に従って実施可能である。
部分構造(n4)を有するフラーレン化合物の合成は、J.Chem.Soc.,Perkin Trans.1,1997 1595、Thin Solid Films 489(2005)251−256、Adv.Funct.Mater.2005,15,1979−1987及びJ.Org.Chem.1995,60,532−538のような公知文献の記載に従って実施可能である。
<1−4−2−2.N−アルキル置換されたペリレンジイミド誘導体>
N−アルキル置換されたペリレンジイミド誘導体としては、特段の制限はないが、具体的には国際公開第2008/063609号、国際公開第2009/115553号、国際公開第2009/098250号、国際公開第2009/000756号及び国際公開第2009/091670号に記載されている化合物が挙げられる。これらの化合物は電子移動度が高く、可視域の光を吸収しうるために、電荷輸送と発電との両方に寄与しうる点から好ましい。
<1−4−2−3.ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド>
ナフタレンテトラカルボン酸ジイミドとしては、特段の制限はないが、具体的には国際公開第2008/063609号、国際公開第2007/146250号及び国際公開第2009/000756号に記載されている化合物が挙げられる。これらの化合物は電子移動度が高く、溶解性が高く塗布性に優れている点から好ましい。
<1−4−2−4.n型高分子半導体化合物>
n型高分子半導体化合物としては、特段の制限はないが、ナフタレンテトラカルボン酸
ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の縮合環テトラカルボン酸ジイミド類、ペリレンジイミド誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンズオキサゾール誘導体、チアゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾチアジアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ピラジン誘導体、フェナントロリン誘導体、キノキサリン誘導体、ビピリジン誘導体及びボラン誘導体のうち少なくとも一つを構成ユニットとするn型高分子半導体化合物等が挙げられる。
その中でも、ボラン誘導体、チアゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾチアジアゾール誘導体、N−アルキル置換されたナフタレンテトラカルボン酸ジイミド及びN−アルキル置換されたペリレンジイミド誘導体のうち少なくとも一つを構成ユニットとするポリマーが好ましく、N−アルキル置換されたペリレンジイミド誘導体及びN−アルキル置換されたナフタレンテトラカルボン酸ジイミドのうち少なくとも一つを構成ユニットとするn型高分子半導体化合物がより好ましい。n型高分子半導体化合物として上記のうち一種の化合物を用いてもよいし、複数種の化合物の混合物を用いてもよい。
n型高分子半導体化合物として具体的には、国際公開第2009/098253号、国際公開第2009/098250号、国際公開第2010/012710号及び国際公開第2009/098250号に記載されている化合物が挙げられる。これらの化合物は可視域の光を吸収しうるために発電に寄与することができ、粘度が高く、塗布性に優れている点から好ましい。
<1−5.光電変換特性>
有機薄膜太陽電池素子の光電変換特性は次のようにして求めることができる。有機薄膜太陽電池素子にソーラシュミレーターでAM1.5G条件の光を照射強度100mW/cm2で照射して、電流−電圧特性を測定する。得られた電流−電圧曲線から、光電変換効
率(PCE)、短絡電流密度(Jsc)、開放電圧(Voc)、フィルファクター(FF)、直列抵抗、シャント抵抗といった光電変換特性を求めることができる。
有機薄膜太陽電池素子の光電変換効率は、特段の制限はないが、通常1%以上、好ましくは2%以上、より好ましくは5%以上である。一方、上限に特段の制限はなく、高ければ高いほどよい。
また、有機薄膜太陽電池素子の耐久性を測定する方法としては、有機薄膜太陽電池素子を大気暴露する前後での、光電変換効率の維持率を求める方法が挙げられる。
(維持率)=(大気暴露N時間後の光電変換効率)/(大気暴露直前の光電変換効率)
有機薄膜太陽電池素子を実用化するには、製造が簡便かつ安価であること以外に、高い光電変換効率及び高い耐久性を有することが重要である。この観点から、1週間大気暴露する前後での光電変換効率の維持率は、60%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、高ければ高いほどよい。
本実施態様に係る有機薄膜太陽電池素子は、素子基板上に少なくとも活性層及び一対の電極を備えた有機薄膜太陽電池セルが直列に接続されたモノリシック構造を有する態様が好ましい。複数の有機薄膜太陽電池セルが直列に接続されたモノリシック構造の例を図7に示す。
図7に示す有機薄膜太陽電池素子は、素子基板31上に下部電極32、p層33、i層34、n層35、及び上部電極36が積層されて形成される。なお、p層、i層及びn層をまとめて有機層ともいう。
それぞれの層は順次積層され、必要に応じてレーザースクライブやパターン印刷等により開溝41、42を形成し、上部電極36を成膜することで単位セル、及びその直列接続
を形成する。
このようなモノリシック構造の有機薄膜太陽電池素子においても、下部電極32の形状を特定の形状とすることで、上部電極と下部電極の接触に起因する太陽電池の短絡の発生を抑制することができる。
<2.有機薄膜太陽電池モジュール>
次に、本発明の実施態様に係る有機薄膜太陽電池素子を含む有機薄膜太陽電池モジュールについて説明する。本発明の有機薄膜太陽電池モジュールは、前記有機薄膜太陽電池素子を封止した構造を有するものである。封止は任意のフィルムにより行うことができるが、具体的な構成の一例を、図を参照して説明する。図5は、有機薄膜太陽電池モジュールの構成を模式的に示す図である。図5に示すように、本実施態様の有機薄膜太陽電池モジュール14は、耐候性保護フィルム1と、紫外線カットフィルム2と、ガスバリアフィルム3と、ゲッター材フィルム4と、封止材5と、有機薄膜太陽電池素子6と、封止材7と、ゲッター材フィルム8と、ガスバリアフィルム9と、バックシート10とをこの順に備える。そして、耐候性保護フィルム1が形成された側(図中下方)から光が照射されて、有機薄膜太陽電池素子6が発電するようになっている。なお、後述するバックシート10としてアルミ箔の両面にフッ素系樹脂フィルムを接着したシート等の防水性の高いシートを用いる場合は、用途によりゲッター材フィルム8及び/又はガスバリアフィルム9を用いなくてもよい。
<2−1.耐候性保護フィルム1>
耐候性保護フィルム1は天候変化から有機薄膜太陽電池素子6を保護するフィルムである。耐候性保護フィルム1で有機薄膜太陽電池素子6を覆うことにより、有機薄膜太陽電池素子6等を天候変化等から保護し、発電能力を高く維持するようにしている。耐候性保護フィルム1は、有機薄膜太陽電池モジュール14の最表層に位置するため、耐候性、耐熱性、透明性、撥水性、耐汚染性及び/又は機械強度等の、有機薄膜太陽電池モジュール14の表面被覆材として好適な性能を備え、しかもそれを屋外暴露において長期間維持する性質を有することが好ましい。
また、耐候性保護フィルム1は、有機薄膜太陽電池素子6の光吸収を妨げない観点から可視光を透過させることが好ましい。例えば、可視光(波長360〜830nm)の透過率が80%以上であることが好ましく、上限に制限はない。さらに、有機薄膜太陽電池モジュール14は光を受けて熱せられることが多いため、耐候性保護フィルム1も熱に対する耐性を有することが好ましい。この観点から、耐候性保護フィルム1の構成材料の融点は、通常100℃以上350℃以下である。
耐候性保護フィルム1を構成する材料は、天候変化から有機薄膜太陽電池素子6を保護することができるものであれば任意である。その材料の例を挙げると、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、AS(アクリロニトリル−スチレン)樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、フッ素系樹脂、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリアクリル系樹脂、各種ナイロン等のポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド−イミド樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース系樹脂、シリコン系樹脂又はポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
なお、耐候性保護フィルム1は1種の材料で形成されていてもよく、2種以上の材料で形成されていてもよい。また、耐候性保護フィルム1は単層フィルムにより形成されていてもよいが、2層以上のフィルムを備えた積層フィルムであってもよい。
耐候性保護フィルム1の厚みは特に規定されないが、通常10μm以上200μm以下である。
また耐候性保護フィルム1には、他のフィルムとの接着性の改良のために、コロナ処理及び/又はプラズマ処理等の表面処理を行ってもよい。
耐候性保護フィルム1は、有機薄膜太陽電池モジュール14においてできるだけ外側に設けることが好ましい。有機薄膜太陽電池モジュール14の構成部材のうちより多くのものを保護できるようにするためである。
<2−2.紫外線カットフィルム2>
紫外線カットフィルム2は紫外線の透過を防止するフィルムである。紫外線カットフィルム2を有機薄膜太陽電池モジュール14の受光部分に設け、紫外線カットフィルム2で有機薄膜太陽電池素子6の受光面6aを覆うことにより、有機薄膜太陽電池素子6及び必要に応じてガスバリアフィルム3、9等を紫外線から保護し、発電能力を高く維持することができるようになっている。
紫外線カットフィルム2に要求される紫外線の透過抑制能力の程度は、紫外線(例えば、波長300nm)の透過率が50%以下であることが好ましく、下限に制限はない。また、紫外線カットフィルム2は、有機薄膜太陽電池素子6の光吸収を妨げない観点から可視光を透過させることが好ましい。例えば、可視光(波長360〜830nm)の透過率が80%以上であることが好ましく、上限に制限はない。
さらに、有機薄膜太陽電池モジュール14は光を受けて熱せられることが多いため、紫外線カットフィルム2も熱に対する耐性を有することが好ましい。この観点から、紫外線カットフィルム2の構成材料の融点は、通常100℃以上350℃以下である。
また、紫外線カットフィルム2は、柔軟性が高く、隣接するフィルムとの接着性が良好であり、水蒸気や酸素をカットしうることが好ましい。
紫外線カットフィルム2を構成する材料は、紫外線の強度を弱めることができるものであれば任意である。その材料の例を挙げると、エポキシ系、アクリル系、ウレタン系又はエステル系の樹脂に紫外線吸収剤を配合して成膜したフィルム等が挙げられる。また、紫外線吸収剤を樹脂中に分散あるいは溶解させたものの層(以下、適宜「紫外線吸収層」という)を基材フィルム上に形成したフィルムを用いてもよい。
紫外線吸収剤としては、例えば、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系のもの等を用いることができる。なお、紫外線吸収剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。上述のように、紫外線吸収フィルムとしては紫外線吸収層を基材フィルム上に形成したフィルムを用いることもできる。このようなフィルムは、例えば、紫外線吸収剤を含む塗布液を基材フィルム上に塗布し、乾燥させることで作製できる。
基材フィルムの材質は特に限定されないが、耐熱性、柔軟性のバランスが良好なフィルムが得られる点で、例えばポリエステルが挙げられる。
紫外線カットフィルム2の具体的な商品の例を挙げると、カットエース(MKVプラスティック株式会社)等が挙げられる。なお、紫外線カットフィルム2は1種の材料で形成されていてもよく、2種以上の材料で形成されていてもよい。
また、紫外線カットフィルム2は単層フィルムにより形成されていてもよいが、2層以上のフィルムを備えた積層フィルムであってもよい。紫外線カットフィルム2の厚みは特に規定されないが、通常5μm以上200μm以下である。
紫外線カットフィルム2は、有機薄膜太陽電池素子6の受光面6aの少なくとも一部を
覆う位置に設ければよいが、好ましくは有機薄膜太陽電池素子6の受光面6aの全てを覆う位置に設ける。ただし、有機薄膜太陽電池素子6の受光面6aを覆う位置以外の位置にも紫外線カットフィルム2が設けられていてもよい。
<2−3.ガスバリアフィルム3>
ガスバリアフィルム3は水及び酸素の透過を防止するフィルムである。ガスバリアフィルム3で有機薄膜太陽電池素子6を被覆することにより、有機薄膜太陽電池素子6を水及び酸素から保護し、発電能力を高く維持することができる。
ガスバリアフィルム3に要求される防湿能力の程度は、有機薄膜太陽電池素子6の種類等に応じて様々であるが、単位面積(1m2)の1日あたりの水蒸気透過率が、通常1×
10-1g/m2/day以下であることが好ましく、下限に制限はない。
ガスバリアフィルム3に要求される酸素透過性の程度は、有機薄膜太陽電池素子6の種類等に応じて様々であるが、単位面積(1m2)の1日あたりの酸素透過率が、通常1×
10-1cc/m2/day/atm以下であることが好ましく、下限に制限はない。
また、ガスバリアフィルム3は、有機薄膜太陽電池素子6の光吸収を妨げない観点から可視光を透過させることが好ましい。例えば、可視光(波長360〜830nm)の透過率は、通常60%以上であり、上限に制限はない。
さらに、有機薄膜太陽電池モジュール14は光を受けて熱せられることが多いため、ガスバリアフィルム3も熱に対する耐性を有することが好ましい。この観点から、ガスバリアフィルム3の構成材料の融点は、通常100℃以上350℃以下である。
ガスバリアフィルム3の具体的な構成は、有機薄膜太陽電池素子6を水から保護できる限り任意である。ただし、ガスバリアフィルム3を透過しうる水蒸気や酸素の量を少なくできるフィルムほど製造コストが高くなるため、これらの点を総合的に勘案して適切なものを使用することが好ましい。
なかでも好適なガスバリアフィルム3としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)或いはポリエチレンナフタレート(PEN)等の基材フィルムにSiOxを真
空蒸着したフィルム等が挙げられる。
なお、ガスバリアフィルム3は1種の材料で形成されていてもよく、2種以上の材料で形成されていてもよい。また、ガスバリアフィルム3は単層フィルムにより形成されていてもよいが、2層以上のフィルムを備えた積層フィルムであってもよい。
ガスバリアフィルム3の厚みは特に規定されないが、通常5μm以上200μm以下である。
ガスバリアフィルム3は、有機薄膜太陽電池素子6を被覆して湿気及び酸素から保護できればその形成位置に制限は無いが、有機薄膜太陽電池素子6の正面(受光面側の面。図5では下側の面)及び背面(受光面とは反対側の面。図5では上側の面)を覆うことが好ましい。有機薄膜太陽電池モジュール14においてはその正面及び背面が他の面よりも大面積に形成されることが多いためである。本実施態様ではガスバリアフィルム3が有機薄膜太陽電池素子6の正面を覆い、後述するガスバリアフィルム9が有機薄膜太陽電池素子6の背面を覆うようになっている。なお、後述するバックシート10としてアルミ箔の両面にフッ素系樹脂フィルムを接着したシート等の防水性の高いシートを用いる場合は、用途によりゲッター材フィルム8及び/又はガスバリアフィルム9を用いなくてもよい。
<2−4.ゲッター材フィルム4>
ゲッター材フィルム4は水分及び/又は酸素を吸収するフィルムである。ゲッター材フィルム4で有機薄膜太陽電池素子6を覆うことにより、有機薄膜太陽電池素子6等を水分及び/又は酸素から保護し、発電能力を高く維持するようにしている。ここで、ゲッター材フィルム4は上記のようなガスバリアフィルム3とは異なり、水分の透過を妨げるものではなく、水分を吸収するものである。水分を吸収するフィルムを用いることにより、ガスバリアフィルム3等で有機薄膜太陽電池素子6を被覆した場合に、ガスバリアフィルム3及び9で形成される空間に僅かに浸入する水分をゲッター材フィルム4が捕捉して水分による有機薄膜太陽電池素子6への影響を排除できる。
ゲッター材フィルム4の水分吸収能力の程度は、通常0.1mg/cm2以上であり、
上限に制限は無いが、通常10mg/cm2以下である。また、ゲッター材フィルム4が
酸素を吸収することにより、ガスバリアフィルム3及び9等で有機薄膜太陽電池素子6を被覆した場合に、ガスバリアフィルム3及び9で形成される空間に僅かに浸入する酸素をゲッター材フィルム4が捕捉して酸素による有機薄膜太陽電池素子6への影響を排除できる。
さらに、ゲッター材フィルム4は、有機薄膜太陽電池素子6の光吸収を妨げない観点から可視光を透過させることが好ましい。例えば、可視光(波長360〜830nm)の透過率は、通常60%以上であり、上限に制限はない。
さらに、有機薄膜太陽電池モジュール14は光を受けて熱せされることが多いため、ゲッター材フィルム4も熱に対する耐性を有することが好ましい。この観点から、ゲッター材フィルム4の構成材料の融点は、通常100℃以上350℃以下である。
ゲッター材フィルム4を構成する材料は、水分及び/又は酸素を吸収することができるものであれば任意である。その材料の例を挙げると、水分を吸収する物質としてアルカリ金属、アルカリ土類金属又はアルカリ土類金属の酸化物;アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物;シリカゲル、ゼオライト系化合物、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム又は硫酸ニッケル等の硫酸塩;アルミニウム金属錯体又はアルミニウムオキサイドオクチレート等の有機金属化合物等が挙げられる。具体的には、アルカリ土類金属としては、Ca、Sr又はBa等が挙げられる。アルカリ土類金属の酸化物としては、CaO、SrO又はBaO等が挙げられる。その他にZr−Al−BaOやアルミニウム金属錯体等も挙げられる。具体的な商品名を挙げると、例えば、OleDry(双葉電子社製)等が挙げられる。
酸素を吸収する物質としては、活性炭、シリカゲル、活性アルミナ、モレキュラーシーブ、酸化マグネシウム又は酸化鉄等が挙げられる。またFe、Mn、Zn、及びこれら金属の硫酸塩・塩化物塩・硝酸塩等の無機塩も挙げられる。
なお、ゲッター材フィルム4は1種の材料で形成されていてもよく、2種以上の材料で形成されていてもよい。また、ゲッター材フィルム4は単層フィルムにより形成されていてもよいが、2層以上のフィルムを備えた積層フィルムであってもよい。
ゲッター材フィルム4の厚みは特に規定されないが、通常5μm以上200μm以下である。
ゲッター材フィルム4は、ガスバリアフィルム3及び9で形成される空間内であればその形成位置に制限は無いが、有機薄膜太陽電池素子6の正面(受光面側の面。図5では下側の面)及び背面(受光面とは反対側の面。図5では上側の面)を覆うことが好ましい。有機薄膜太陽電池モジュール14においてはその正面及び背面が他の面よりも大面積に形
成されることが多いため、これらの面を介して水分及び酸素が浸入する傾向があるからである。この観点から、ゲッター材フィルム4はガスバリアフィルム3と有機薄膜太陽電池素子6との間に設けることが好ましい。本実施態様ではゲッター材フィルム4が有機薄膜太陽電池素子6の正面を覆い、後述するゲッター材フィルム8が有機薄膜太陽電池素子6の背面を覆い、ゲッター材フィルム4、8がそれぞれ有機薄膜太陽電池素子6とガスバリアフィルム3、9との間に位置するようになっている。なお、後述するバックシート10としてアルミ箔の両面にフッ素系樹脂フィルムを接着したシート等の防水性の高いシートを用いる場合は、用途によりゲッター材フィルム8及び/又はガスバリアフィルム9を用いなくてもよい。
<2−5.封止材5>
封止材5は、有機薄膜太陽電池素子6を補強するフィルムである。有機薄膜太陽電池素子6は薄いため通常は強度が弱く、ひいては有機薄膜太陽電池モジュールの強度が弱くなる傾向があるが、封止材5により強度を高く維持することが可能である。
また、封止材5は、有機薄膜太陽電池モジュール14の強度保持の観点から強度が高いことが好ましい。具体的強度については、封止材5以外の耐候性保護フィルム1やバックシート10の強度とも関係することになり一概には規定しにくいが、有機薄膜太陽電池モジュール14全体が良好な曲げ加工性を有し、折り曲げ部分の剥離を生じないような強度を有するのが望ましい。
また、封止材5は、有機薄膜太陽電池素子6の光吸収を妨げない観点から可視光を透過させることが好ましい。例えば、可視光(波長360〜830nm)の透過率は、通常60%以上であり、上限に制限はない。
封止材5の厚みは特に規定されないが、通常2μm以上700μm以下である。
封止材5の基板に対するT型剥離接着強さは通常1N/インチ以上通常2000N/インチ以下である。T型剥離接着強さが1N/インチ以上であることは、モジュールの長期耐久性を確保できる点で好ましい。T型剥離接着強さが2000N/インチ以下であることは、太陽電池を廃棄する際に、基材やバリアフィルムと接着材を分別して廃棄できる点で好ましい。T型剥離接着強さはJIS K6854に準拠する方法により測定する。
封止材5の構成材料としては、上記特性を有する限り特段の制限はないが、有機・無機の太陽電池の封止、有機・無機のLED素子の封止、又は電子回路基板の封止等に一般的に用いられている封止用材料を用いる事ができる。
具体的には、熱硬化性樹脂組成物又は熱可塑性樹脂組成物及び活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が挙げられる。活性エネルギー線硬化性樹脂組成物とは例えば、紫外線、可視光、電子線等で硬化する樹脂のことである。より具体的には、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂組成物、炭化水素系樹脂組成物、エポキシ系樹脂組成物、ポリエステル系樹脂組成物、アクリル系樹脂組成物、ウレタン系樹脂組成物、又はシリコン系樹脂組成物等が挙げられ、それぞれの高分子の主鎖、分岐鎖、末端の化学修飾、分子量の調整、添加剤等によって、熱硬化性、熱可塑性及び活性エネルギー線硬化性等の特性が発現する。
また、有機薄膜太陽電池モジュール14は光を受けて熱せられることが多いため、封止材5も熱に対する耐性を有することが好ましい。この観点から、封止材5の構成材料の融点は、通常100℃以上350℃以下である。
封止材5中の封止材用構成材料の密度は、0.80g/cm3以上が好ましく、上限に
制限はない。なお、密度の測定と評価は、JIS K7112に準拠する方法によって実施することができる。
封止材5を設ける位置に制限は無いが、通常は有機薄膜太陽電池素子6を挟み込むように設ける。有機薄膜太陽電池素子6を確実に保護するためである。本実施態様では、有機薄膜太陽電池素子6の正面及び背面にそれぞれ封止材5及び封止材7を設けるようにしている。
<2−6.有機薄膜太陽電池素子6>
有機薄膜太陽電池素子6は、前述の有機薄膜太陽電池素子107と同様である。すなわち、有機薄膜太陽電池素子107を用いて有機薄膜太陽電池モジュール14を製造することができる。
有機薄膜太陽電池素子6は、有機薄膜太陽電池モジュール14一個につき一個だけを設けてもよいが、通常は2個以上の有機薄膜太陽電池素子6を設ける。具体的な有機薄膜太陽電池素子6の個数は任意に設定すればよい。有機薄膜太陽電池素子6を複数設ける場合、有機薄膜太陽電池素子6はアレイ状に並べて設けられていることが多い。
有機薄膜太陽電池素子6を複数設ける場合、通常は、有機薄膜太陽電池素子6同士は電気的に接続され、接続された一群の有機薄膜太陽電池素子6から生じた電気を端子(図示せず)から取り出すようになっていて、この際、電圧を高めるため通常は太陽電池素子は直列に接続される。
このように有機薄膜太陽電池素子6同士を接続する場合には、有機薄膜太陽電池素子6間の距離は小さいことが好ましく、ひいては、有機薄膜太陽電池素子6と有機薄膜太陽電池素子6との間の隙間は狭いことが好ましい。有機薄膜太陽電池素子6の受光面積を広くして受光量を増加させ、有機薄膜太陽電池モジュール14の発電量を増加させるためである。
<2−7.封止材7>
封止材7は、上述した封止材5と同様のフィルムであり、配設位置が異なる他は封止材7と同様のものを同様に用いることができる。また、太陽電池素子6よりも背面側の構成部材は必ずしも可視光を透過させる必要が無いため、可視光を透過させないものを用いることもできる。
<2−8.ゲッター材フィルム8>
ゲッター材フィルム8は、上述したゲッター材フィルム4と同様のフィルムであり、配設位置が異なる他はゲッター材フィルム4と同様のものを同様に必要に応じて用いることができる。また、有機薄膜太陽電池素子6よりも背面側の構成部材は必ずしも可視光を透過させる必要が無いため、可視光を透過させないものを用いることもできる。
<2−9.ガスバリアフィルム9>
ガスバリアフィルム9は、上述したガスバリアフィルム3と同様のフィルムであり、配設位置が異なる他はガスバリアフィルム9と同様のものを同様に必要に応じて用いることができる。また、有機薄膜太陽電池素子6よりも背面側の構成部材は必ずしも可視光を透過させる必要が無いため、可視光を透過させないものを用いることもできる。
<2−10.バックシート10>
バックシート10は、上述した耐候性保護フィルム1と同様のフィルムであり、配設位置が異なる他は耐候性保護フィルム1と同様のものを同様に用いることができる。また、
このバックシート10が水及び酸素を透過させ難いものであれば、バックシート10をガスバリア層として機能させることも可能である。また、有機薄膜太陽電池素子6よりも背面側の構成部材は必ずしも可視光を透過させる必要が無いため、可視光を透過させないものを用いることもできる。
<2−11.寸法等>
本実施態様に係る有機薄膜太陽電池素子を用いた有機薄膜太陽電池モジュール14は、通常、膜状の薄い部材である。このように膜状の部材として有機薄膜太陽電池モジュール14を形成することにより、有機薄膜太陽電池モジュール14を建材、自動車又はインテリア等に容易に設置できるようになっている。有機薄膜太陽電池モジュール14は、軽く、割れにくく、従って安全性の高い太陽電池が得られ、また曲面にも適用可能であるため更に多くの用途に使用しうる。薄くて軽いため輸送や保管等流通面でも好ましい。更に、膜状であるためロールトゥロール式の製造が可能であり大幅なコストカットが可能である。
有機薄膜太陽電池モジュール14の具体的な寸法に制限は無いが、その厚みは、通常300μm以上3000μm以下である。
<2−12.製造方法>
本実施態様に係る有機薄膜太陽電池素子を用いた有機薄膜太陽電池モジュール14の製造方法に制限は無いが、例えば、図5の形態の太陽電池製造方法としては、図5に示される積層体を作成した後に、ラミネート封止工程を行う方法が挙げられる。本実施態様に係る有機薄膜太陽電池素子は、耐熱性に優れるため、ラミネート封止工程による劣化が低減される点で好ましい。
図5に示される積層体作成は周知の技術を用いて行うことができる。ラミネート封止工程の方法は、本発明の効果を損なわなければ特に制限はないが、例えば、ウェットラミネート、ドライラミネート、ホットメルトラミネート、押出しラミネート、共押出成型ラミネート、押出コーティング、光硬化接着剤によるラミネート、サーマルラミネート等が挙げられる。なかでも有機ELデバイス封止で実績のある光硬化接着剤によるラミネート法、太陽電池で実績のあるホットメルトラミネート又はサーマルラミネートが好ましく、さらに、ホットメルトラミネート又はサーマルラミネートがシート状の封止材を使用できる点でより好ましい。
ラミネート封止工程の加熱温度は通常130℃以上、好ましくは140℃以上であり、通常180℃以下、好ましくは170℃以下である。ラミネート封止工程の加熱時間は通常10分以上、好ましくは20分以上であり、通常100分以下、好ましくは90分以下である。ラミネート封止工程の圧力は通常0.001MPa以上、好ましくは0.01MPa以上であり、通常0.2MPa以下、好ましくは0.1MPa以下である。圧力をこの範囲とすることで封止を確実に行い、かつ、端部からの封止材5,7のはみ出しや過加圧による膜厚低減を抑え、寸法安定性を確保しうる。なお、2個以上の有機薄膜太陽電池素子6を直列又は並列接続したものも上記と同様にして、製造することができる。
<2−13.用途>
本発明の実施態様に係る有機薄膜太陽電池素子を用いた有機薄膜太陽電池モジュール14の用途に制限はなく、任意の用途に用いることができる。有機薄膜太陽電池モジュールを適用する分野の例を挙げると、建材用太陽電池、自動車用太陽電池、インテリア用太陽電池、鉄道用太陽電池、船舶用太陽電池、飛行機用太陽電池、宇宙機用太陽電池、家電用太陽電池、携帯電話用太陽電池又は玩具用太陽電池等である。
有機薄膜太陽電池モジュールはそのまま用いても、基材上に有機薄膜太陽電池モジュー
ルを設置して有機薄膜太陽電池パネルとして用いてもよい。例えば、図6に模式的に示すように、基材12上に有機薄膜太陽電池モジュール14を備えた有機薄膜太陽電池パネル13を用意し、これを使用場所に設置して用いればよい。すなわち、有機薄膜太陽電池モジュール14を用いて有機薄膜太陽電池パネル13を製造することができる。具体例を挙げると、基材12として建材用板材を使用する場合、この板材の表面に有機薄膜太陽電池モジュール14を設けることにより、有機薄膜太陽電池パネル13として太陽電池パネルを作製することができる。
基材12は有機薄膜太陽電池モジュール14を支持する支持部材である。基材12を形成する材料としては、例えば、ガラス、サファイア及びチタニア等の無機材料;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合体、フッ素樹脂、塩化ビニル、ポリエチレン、セルロース、ポリ塩化ビニリデン、アラミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアリレート及びポリノルボルネン等の有機材料;紙及び合成紙等の紙材料;ステンレス、チタン及びアルミニウム等の金属;ステンレス、チタン及びアルミニウム等の金属に、絶縁性を付与するために表面をコート又はラミネートしたもの等の複合材料;等が挙げられる。
なお、基材の材料は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、これら有機材料あるいは紙材料に炭素繊維を含ませ、機械的強度を補強させてもよい。基材12の例を挙げると、アルポリック(登録商標;三菱樹脂製)等が挙げられる。
基材12の形状に制限はないが、通常は板材を使用する。また、基材12の材料、寸法等は、その使用環境に応じて任意に設定すればよい。この太陽電池パネルは、建物の外壁等に設置することができる。
以下、好ましい実施態様の例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下に例示する例のみに限定されない。
<好ましい実施態様の例>
[下部電極の作製]
アセトンと2−プロパノールにて超音波洗浄を行ったガラス基板へ、150nmの膜厚のAgの下部電極パターンを真空蒸着法にて形成する。尚、蒸着マスクとガラス基板の間を0.5mm程度開けた状態で、真空蒸着を行う。このようにして形成したAgの下部電極パターンのガラス基板表面に平行な面の形状を把握するために、Vertscan(菱化システム社製)にて、観察すると、ガラス基板表面に平行な面の面積が、底面から頂面に近づくにつれ減少していることが観察される。
[太陽電池の作製]
上記Ag電極がパターニングされたガラス基板上に、酸化亜鉛(ZnO)の微粒子分散液(ビックケミー社製、NANOBYK(登録商標)−3841)をプロピレングリコール1−モノメチルエーテル2−アセテートにより5倍希釈した液をスピンコート法により塗布する。塗布後のガラス基板を150℃のホットプレート上で大気中10分間、加熱処理を施す。このようにして得られたZnO層の膜厚は約70nmである。
レジオレギュラーポリ−3−ヘキシルチオフェン(P3HT、Rieke Metals社製)及びC60(Ind)2(フロンティアカーボン社製)を重量比1:1で、2.5
重量%の濃度でo−キシレン(和光純薬社製)に溶解させる。得られた溶液を、80℃で窒素雰囲気中、1時間スターラーで攪拌混合する。0.45μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターで濾過し、有機活性層塗布液を作製する。次に前述のZnO層を設けたガラス基板をグローブボックス中に持ち込み、グローブボックス中でガラス
基板上のZnO層上に有機活性層塗布液をスピンコート法により塗布し、窒素雰囲気下で自然乾燥させ、約200nm膜厚の有機活性層を得る。
その後、界面活性剤を1重量%含有させた、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)ポリ(スチレンスルホン酸)水性分散液(エイチ・シー・スタルク社製 商品名「CLEVIOSTM PVP AI4083」)を、0.45μmのポリフッ化ビニリデン(PVDF)フィルターで濾過してから、前記有機活性層上に大気下でスピンコートした後、窒素雰囲気下150℃で10分間加熱乾燥することで、約60nmの正孔取り出し層を有機活性層上に形成する。
更に、正孔取り出し層上に、スパッタ法により、140nmの膜厚のIWZO透明電極を正孔輸送上に設けることにより、その水平断面の面積が、底面から頂面に近づくにつれ減少している下部電極上に、バルクヘテロ接合型太陽電池を作製する。
作製した太陽電池に対して、ガラス基板とは反対側からソーラシミュレーター(AM1.5G)で100mW/cm2の強度の光を照射する。ソースメーター(ケイスレー社製
,2400型)にて、下部電極と上部電極との間における電流−電圧特性を測定し光電変換効率を測定することができる。
<比較例に相当する実施態様の例>
[下部電極の作製]
アセトンと2−プロパノールにて超音波洗浄を行ったガラス基板上に、テープでマスキングして、Ag電極を150nm蒸着することにより、下部電極パターンを形成する。この電極のガラス基板表面に平行な面の形状を把握するために、Vertscan(菱化システム社製)にて、観察すると、そのガラス基板表面に平行な面の面積が、底面から頂面に近づくにつれて減少せず、一定であることが観察される。
[太陽電池の作製]
下部電極が、蒸着によるAg電極がパターニングされることで下部電極のガラス基板表面に平行な面の面積が一定であるガラス基板を用いること以外は、実施例と同様の工程を経て、バルクヘテロ接合型太陽電池を作製する。
作製した太陽電池に対して、ガラス基板とは反対側からソーラシミュレーター(AM1.5G)で100mW/cm2の強度の光を照射する。ソースメーター(ケイスレー社製
,2400型)にて、下部電極と上部電極との間における電流−電圧特性を測定し光電変換効率を測定することができる。比較例に従って作製した素子は、実施例に従って作製した素子と比べて、セルの短絡率の高い素子となる。
101 下部電極
102 電子取り出し層
103 活性層
104 正孔取り出し層
105 上部電極
106 太陽電池素子基板
107 有機薄膜太陽電池素子
108 有機層
111 頂面
112 底面
a−a' 太陽電池素子基板表面に平行な面
1 耐候性保護フィルム
2 紫外線カットフィルム
3,9 ガスバリアフィルム
4,8 ゲッター材フィルム
5,7 封止材
6 有機薄膜太陽電池素子
10 バックシート
12 基材
13 有機薄膜太陽電池パネル
14 有機薄膜太陽電池モジュール
31 素子基板
32 下部電極
33 p層
34 i層
35 n層
36 上部電極
41、42 開溝

Claims (7)

  1. 太陽電池素子基板、下部電極、活性層、上部電極をこの順に有する有機薄膜太陽電池素子であって、
    前記下部電極は、その太陽電池素子基板側に底面を有し、かつ、その活性層側に頂面を有し、前記下部電極の太陽電池素子基板表面に平行な面の面積が、底面から頂面に近づくにつれ減少することを特徴とする、有機薄膜太陽電池素子。
  2. 下部電極の膜厚が、活性層の膜厚以下である、請求項1に記載の有機薄膜太陽電池素子。
  3. 前記太陽電池素子基板が曲面構造を有する基板である、請求項1または2に記載の有機薄膜太陽電池素子。
  4. 前記太陽電池素子基板が三次元構造を有する基板である、請求項3に記載の有機薄膜太陽電池素子。
  5. 前記下部電極は、ウエットプロセスにより形成されたものである、請求項1から4のいずれか1項に記載の有機薄膜太陽電池素子。
  6. 前記下部電極は、スプレー塗布により形成されたものである、請求項5に記載の有機薄膜太陽電池素子。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の有機薄膜太陽電池素子を含む有機薄膜太陽電池モジュール。
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