JP2014130733A - 硫化物固体電解質材料の製造方法、及び当該方法により製造された硫化物固体電解質材料を含むリチウム固体電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】Li2S、A(Aは、P、Si、Ge、AlおよびBの少なくとも一種である)の硫化物、およびLiX(Xはハロゲンである)を含有する原料組成物を混合し、Liイオン伝導度が1.0×10−3S/cm2以上の中間体を合成する中間体合成工程と、前記中間体を結晶化温度以上の温度で加熱することにより、CuKα線を用いたX線回折測定において、2θ=20.2°、23.6°にピークを有するガラスセラミックスを合成する熱処理工程と、を有し、前記原料組成物に含まれる前記LiXの割合、および、前記熱処理工程における加熱温度および加熱時間を、前記ガラスセラミックスが得られるように調整することを特徴とする硫化物固体電解質材料の製造方法。
【選択図】図3
Description
本発明者等は、鋭意研究を重ねた結果、硫化物電解質材料の合成方法として、LiXをドープした硫化物ガラスに熱処理を加えてガラスセラミックスを合成する際、ある限られたLiXの添加範囲、加熱温度範囲および加熱時間で熱処理を行うことにより、Liイオン伝導度が極めて高いガラスセラミックスが得られることを見出した。また、Liイオン伝導度が高くなる理由が、従来知られていない新規結晶相によるものであることも見出している。
しかし、本発明者等が見出したガラスセラミックスは、上記熱処理時におけるLiイオン伝導度の向上に改善の余地があった。
まず、本発明の硫化物固体電解質材料の製造方法について説明する。本発明の硫化物固体電解質材料の製造方法は、Li2S、A(Aは、P、Si、Ge、AlおよびBの少なくとも一種である)の硫化物、およびLiX(Xはハロゲンである)を含有する原料組成物を混合し、Liイオン伝導度が1.0×10−3S/cm2以上の中間体を合成する中間体合成工程と、前記中間体を結晶化温度以上の温度で加熱することにより、CuKα線を用いたX線回折測定において、2θ=20.2°、23.6°にピークを有するガラスセラミックスを合成する熱処理工程と、を有し、前記原料組成物に含まれる前記LiXの割合、および、前記熱処理工程における加熱温度および加熱時間を、前記ガラスセラミックスが得られるように調整することを特徴とするものである。
まず、LiI、Li2SおよびP2S5を含有する原料組成物を用意する。この時、原料組成物に含まれるLiIの割合が、所望のガラスセラミックスの組成となるように調整する。次に、中間体合成工程として、上記原料組成物に対して、メカニカルミリングを行うことにより、Li、PおよびSを有するイオン伝導体(例えば、Li3PS4)と、LiIとを含有する中間体(硫化物ガラス)を合成する。次に、中間体合成工程により得られた中間体(硫化物ガラス)に対し、結晶化温度以上の温度で加熱し、加熱温度および加熱時間を調整することにより(熱処理)、CuKα線を用いたX線回折測定において、2θ=20.2°、23.6°にピークを有する結晶相を有する硫化物固体電解質材料を得ることができる(熱処理工程)。なお、本発明により得られる硫化物固体電解質材料はガラスセラミックスであり、以下の説明において、「硫化物固体電解質材料」を「ガラスセラミックス」と称する場合がある。また、本発明における硫化物固体電解質材料については、「A.硫化物固体電解質材料の製造方法 4.硫化物固体電解質材料」の項で詳細に説明するため、ここでの説明は省略する。
また、以下の説明において、「CuKα線を用いたX線回折測定における2θ=20.2°および23.6°のピーク」を、「2本の特定ピーク」と略する場合がある。
なお、以下の説明において、上記新規結晶相を高Liイオン伝導性結晶相と称する場合がある。
その結果、本発明者らは、Liイオン伝導度が1.0×10−3S/cm2以上の硫化物ガラスを用いたところ、従来よりもLiイオン伝導度の高いガラスセラミックスの硫化物固体電解質材料が得られることを見出した。これにより、高いLiイオン伝導度を有するガラスセラミックスを得やすくなり、硫化物ガラスからガラスセラミックスへのLiイオン伝導度の向上幅を広げることが可能となった。
以下、各工程について順に説明する。
まず、本発明における中間体合成工程について説明する。本発明における中間体合成工程は、Li2S、A(Aは、P、Si、Ge、AlおよびBの少なくとも一種である)の硫化物、およびLiX(Xはハロゲンである)を含有する原料組成物を非晶質化し、中間体(硫化物ガラス)を合成する工程である。また、本工程は、上記原料組成物に含まれる上記LiXの割合を、所望のガラスセラミックスが得られるように調整することを特徴とするものである。
本工程における原料組成物は、Li2S、A(Aは、P、Si、Ge、AlおよびBの少なくとも一種である)の硫化物、およびLiX(Xはハロゲンである)を含有するものである。
一方、原料組成物に含まれる上記Aの硫化物としては、例えば、P2S3、P2S5、SiS2、GeS2、Al2S3、B2S3等を挙げることができる。
また、原料組成物におけるLiXの割合は、所望のガラスセラミックスを合成できる割合に調整されるものであり、合成条件によって若干異なるものであるが、13mol%より多く30mol%よりも少ない範囲内で、ガラスセラミックスを合成できる割合であることが好ましい。
本工程において、原料組成物を混合し非晶質化する方法としては、例えば、メカニカルミリングおよび溶融急冷法を挙げることができ、中でもメカニカルミリングが好ましい。常温での処理が可能であり、製造工程の簡略化を図ることができるからである。また、溶融急冷法は、反応雰囲気や反応容器に制限があるものの、メカニカルミリングは、目的とする組成の中間体(硫化物ガラス)を簡便に合成できるという利点がある。メカニカルミリングは、乾式メカニカルミリングであっても良く、湿式メカニカルミリングであっても良いが、後者が好ましい。容器等の壁面に原料組成物が固着することを防止でき、より非晶質性の高い中間体(硫化物ガラス)を得ることができるからである。
中間体(硫化物ガラス)のLiイオン伝導度を1.0×10−3S/cm2以上とする方法の一例としては、原料組成物を混合する際の条件を変えることが挙げられる。例えば、原料組成物の混合にメカニカルミリングを採用する場合、特にボールミルを採用する場合には、ボールミルの台盤回転数や、ボールミルの処理時間を変えることにより、Liイオン伝導度を上記閾値以上とすることができる。より具体的には、中間体合成工程における原料組成物の混合において、台盤回転数を200rpm〜800rpmの範囲内、処理時間を1時間以上40時間未満の範囲内としたボールミルを行うことにより、中間体(硫化物ガラス)のLiイオン伝導度を1.0×10−3S/cm2以上とすることができる。
本工程において得られる中間体(硫化物ガラス)とは、上記原料組成物を混合し、非晶質化して合成した材料をいい、X線回折測定等において結晶としての周期性が観測されない厳密な「ガラス」のみならず、メカニカルミリング等により非晶質化して合成した材料全般を意味する。そのため、CuKα線を用いたX線回折測定等において、例えば原料(LiI等)に由来するピークが観察される場合であっても、非晶質化して合成した材料であれば、中間体(硫化物ガラス)に該当する。
また、本工程において得られる中間体(硫化物ガラス)のLiイオン伝導度は、1.0×10−3S/cm2以上である。当該Liイオン伝導度が1.0×10−3S/cm2未満の場合には、後述する比較例1に示すように、熱処理工程におけるLiイオン伝導度の向上幅が小さいため、従来よりも高いLiイオン伝導度を有するガラスセラミックスが得られないおそれがある。
本工程において得られる中間体(硫化物ガラス)のLiイオン伝導度は、1.1×10−3S/cm2以上であることが好ましく、1.2×10−3S/cm2以上であることがより好ましい。
次に、本発明における熱処理工程について説明する。本発明における熱処理工程は、上記中間体(硫化物ガラス)を結晶化温度以上の温度で加熱することにより、CuKα線を用いたX線回折測定において、2θ=20.2°、23.6°にピークを有するガラスセラミックスを合成する工程である。
また、本工程は、加熱温度および加熱時間を所望のガラスセラミックスが得られるように調整することを特徴とするものである。
上記加熱温度の範囲は、CuKα線を用いたX線回折測定において上記2本の特定ピークが出現する温度範囲であり、中間体(硫化物ガラス)の組成によって若干異なるものであるが、例えば、加熱温度が160℃〜200℃の範囲内であることが好ましく、中でも、加熱温度が170℃〜190℃の範囲内であることが好ましく、特に、180℃〜190℃の範囲内であることが好ましい。加熱温度が上記範囲内にない場合、上記2本の特定ピークを有する高Liイオン伝導性結晶相が形成されない可能性があるからである。
本発明は、上述した中間体合成工程および熱処理工程を少なくとも有するものであるが、必要に応じてその他の工程を有していても良い。その他の工程として、例えば、微粒化工程等が挙げられる。
本発明により得られる硫化物固体電解質材料は、Li、A(Aは、P、Si、Ge、AlおよびBの少なくとも一種である)、X(Xはハロゲンである)、Sを有し、ガラスセラミックスであり、CuKα線を用いたX線回折測定において、2θ=20.2°、23.6°にピークを有することを特徴とするものである。上記硫化物固体電解質材料は、上記2本の特定ピークを有しているため、高いLiイオン伝導度を有することができる。
次に、本発明のリチウム固体電池について説明する。本発明のリチウム固体電池は、正極活物質を含有する正極活物質層と、負極活物質を含有する負極活物質層と、上記正極活物質層および上記負極活物質層の間に形成された固体電解質材料層と、を有するリチウム固体電池であって、上記正極活物質層、上記負極活物質層および上記固体電解質材料層の少なくとも一つが、上述した製造方法により得られた硫化物固体電解質材料を含有することを特徴とするものである。
以下、本発明のリチウム固体電池について、構成ごとに説明する。
まず、本発明における正極活物質層について説明する。本発明における正極活物質層は、少なくとも正極活物質を含有する層であり、必要に応じて、固体電解質材料、導電化材および結着材の少なくとも一つをさらに含有していても良い。
次に、本発明における負極活物質層について説明する。本発明における負極活物質層は、少なくとも負極活物質を含有する層であり、必要に応じて、固体電解質材料、導電化材および結着材の少なくとも一つをさらに含有していても良い。
次に、本発明における固体電解質材料層について説明する。本発明における固体電解質材料層は、正極活物質層および負極活物質層の間に形成される層であり、固体電解質材料から構成される層である。固体電解質材料層に含まれる固体電解質材料は、Liイオン伝導性を有するものであれば特に限定されるものではない。
本発明のリチウム固体電池は、上述した正極活物質層、負極活物質層および固体電解質材料層を少なくとも有するものである。さらに通常は、正極活物質層の集電を行う正極集電体、および負極活物質層の集電を行う負極集電体を有する。正極集電体の材料としては、例えば、SUS、アルミニウム、ニッケル、鉄、チタンおよびカーボン等を挙げることができ、中でも、SUSが好ましい。一方、負極集電体の材料としては、例えば、SUS、銅、ニッケルおよびカーボン等を挙げることができ、中でも、SUSが好ましい。また、正極集電体および負極集電体の厚さや形状等については、リチウム固体電池の用途等に応じて適宜選択することが好ましい。また、本発明に用いられる電池ケースには、一般的なリチウム固体電池の電池ケースを用いることができる。電池ケースとしては、例えば、SUS製電池ケース等を挙げることができる。
本発明のリチウム固体電池は、一次電池であっても良く、二次電池であっても良いが、中でも、二次電池であることが好ましい。繰り返し充放電でき、例えば、車載用電池として有用だからである。本発明のリチウム固体電池の形状としては、例えば、コイン型、ラミネート型、円筒型および角型等を挙げることができる。
(中間体合成工程)
出発原料として、硫化リチウム(Li2S、日本化学工業社製)、五硫化二リン(P2S5、アルドリッチ社製)およびヨウ化リチウム(LiI、アルドリッチ社製)を用いた。次に、Ar雰囲気下(露点−70℃)、Li2SとP2S5を75Li2S・25P2S5のモル比となるように秤量した。次にLiIの割合が製造されるガラス中の20mol%を占める量となるように、LiIを秤量した。秤量したLi2S、P2S5、及びLiIの混合物2gを遊星型ボールミルの容器(45cc、ZrO2製)に投入し、脱水ヘプタン(水分量30ppm以下、4g)を投入し、さらにZrO2ボール(φ5mm、53g)を投入し、容器を完全に密閉した。
この容器を遊星型ボールミル機(フリッチュ製P7)に取り付け、台盤回転数500rpmで、20時間メカニカルミリングを行った。その後、100℃で乾燥することによりヘプタンを除去し、中間体(硫化物ガラス)を得た。得られたガラスのモル組成は、xLiI・(100−x)(0.75Li2S・0.25P2S5)においてx=20に該当した。
上記中間体合成工程により得られた中間体(硫化物ガラス)0.5gを石英管の中に入れた後、真空封入した。その石英管を焼成炉内に投入し、結晶化温度以上の温度である180℃で熱処理を行った。この際、焼成炉内の温度を予め180℃に保持しておき、そこに石英管を投入し、結晶化温度到達後、炉内で3時間熱処理を行って、硫化物ガラスセラミックスを得た。
中間体合成工程におけるメカニカルミリングの時間を40時間にしたこと以外は、実施例1と同様にしてガラスセラミックスを得た。
実施例1および比較例1で得られた評価用サンプル、ならびに実施例1および比較例1の中間体合成工程において得られた中間体(硫化物ガラス)サンプルに対して、交流インピーダンス法によるLiイオン伝導度(常温)の測定を行った。Liイオン伝導度の測定は以下のように行った。まず、各実施例および比較例で合成されたガラスセラミックスの粉末または中間体(硫化物ガラス)の粉末を4ton/cm2の圧力でコールドプレスすることで、φ=11.28mm、厚さ約500μmのペレットを作製した。次に、ペレットを、Arガスで充填した不活性雰囲気の容器内に設置して測定を行った。測定には、東陽テクニカ社製のソーラトロン(SI1260)を用いた。また、恒温槽で測定温度を25℃に調整した。その結果を図3に示す。
図3は、実施例1および比較例1で得られた評価用サンプル、ならびにこれらの中間体(硫化物ガラス)サンプルについて、メカニカルミリング時間とLiイオン伝導度との関係を示したグラフである。図3中、黒のプロットは中間体(硫化物ガラス)のデータを、白のプロットはガラスセラミックスのデータを、それぞれ示す。
図3より、メカニカルミリング時間を40時間とした比較例1の中間体(硫化物ガラス)のLiイオン伝導度は9.7×10−4(S/cm2)であり、比較例1のガラスセラミックスのLiイオン伝導度は3.2×10−3(S/cm2)である。したがって、比較例1においては、中間体(硫化物ガラス)からガラスセラミックスへのLiイオン伝導度の向上幅は2.2×10−3(S/cm2)である。
一方、メカニカルミリング時間を20時間とした実施例1の中間体(硫化物ガラス)のLiイオン伝導度は1.2×10−3(S/cm2)であり、実施例1のガラスセラミックスのLiイオン伝導度は4.5×10−3(S/cm2)である。したがって、実施例1においては、中間体(硫化物ガラス)からガラスセラミックスへのLiイオン伝導度の向上幅は3.3×10−3(S/cm2)である。
このように、実施例1および比較例1の中間体(硫化物ガラス)のLiイオン伝導度は、わずか2.3×10−4(S/cm2)しか差がない。一方、中間体(硫化物ガラス)からガラスセラミックスへのLiイオン伝導度の向上幅については、実施例1は比較例1よりも1.1×10−3(S/cm2)大きい。また、製造されたガラスセラミックスのLiイオン伝導度については、実施例1は比較例1の1.4倍である。
以上より、Liイオン伝導度が1.0×10−3S/cm2以上である中間体を用いて製造された実施例1のガラスセラミックスは、Liイオン伝導度が1.0×10−3S/cm2未満である中間体を用いて製造された比較例1のガラスセラミックスと比較して、極めて高いLiイオン伝導度を示した。そのメカニズムの詳細は明らかではないが、おそらく、1.0×10−3S/cm2以上の中間体(硫化物ガラス)においては、1.0×10−3S/cm2未満の中間体(硫化物ガラス)よりも高い均一性を有するため、Liイオン伝導度の高い結晶がより多く析出することで、熱処理によるLiイオン伝導度の向上の幅が広がるものと推定される。
2 負極活物質層
3 固体電解質材料層
4 正極集電体
5 負極集電体
10 リチウム固体電池
Claims (5)
- Li2S、A(Aは、P、Si、Ge、AlおよびBの少なくとも一種である)の硫化物、およびLiX(Xはハロゲンである)を含有する原料組成物を混合し、Liイオン伝導度が1.0×10−3S/cm2以上の中間体を合成する中間体合成工程と、
前記中間体を結晶化温度以上の温度で加熱することにより、CuKα線を用いたX線回折測定において、2θ=20.2°、23.6°にピークを有するガラスセラミックスを合成する熱処理工程と、
を有し、
前記原料組成物に含まれる前記LiXの割合、および、前記熱処理工程における加熱温度および加熱時間を、前記ガラスセラミックスが得られるように調整することを特徴とする硫化物固体電解質材料の製造方法。 - 前記中間体合成工程における原料組成物の混合が、台盤回転数を200rpm〜800rpmの範囲内、処理時間を1時間以上40時間未満の範囲内としたボールミルにより行われることを特徴とする請求項1に記載の硫化物固体電解質材料の製造方法。
- 前記硫化物固体電解質材料に含有されるLiXの割合が、13mol%より多く30mol%よりも少ないことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の硫化物固体電解質材料の製造方法。
- 前記熱処理工程における加熱温度が、160℃〜200℃の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項の請求項に記載の硫化物固体電解質材料の製造方法。
- 正極活物質を含有する正極活物質層と、負極活物質を含有する負極活物質層と、前記正極活物質層および前記負極活物質層の間に形成された固体電解質材料層と、を有するリチウム固体電池であって、
前記正極活物質層、前記負極活物質層および前記固体電解質材料層の少なくとも一つが、請求項1から請求項4までのいずれか一項の請求項に記載の製造方法により得られた硫化物固体電解質材料を含有することを特徴とするリチウム固体電池。
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