JP2014130031A - 電気化学的分析方法、電気化学的分析装置及び試薬セット - Google Patents

電気化学的分析方法、電気化学的分析装置及び試薬セット Download PDF

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Abstract

【課題】生物由来の試料に含まれるカドミウムを高感度かつ高精度に検出・定量することができる電気化学的分析方法、装置及び試薬セットを提供する。
【解決手段】生物由来の試料に含まれるカドミウムを、対電極3及び作用電極5を用いて電気化学的に分析する方法であって、生物由来の試料に対し、酸化性を有しカドミウムと錯体を形成しない酸を添加して、前記生物由来の試料からカドミウムを抽出する抽出工程を備えている。
【選択図】図11

Description

この発明は、生物由来の試料に含まれるカドミウムを電気化学的に検出する方法、装置及び試薬セットに関するものである。
カドミウムは人体にとって有毒であり、カドミウムが体内に蓄積すると腎臓機能等が侵されることが知られている。このため、米をはじめとする食品中に含まれるカドミウム量には基準が設けられており、食品衛生法上では玄米において1ppm以下と規定され、基準値以上のカドミウムを含む場合は販売することができず、全て焼却処分される。また、食糧庁通達により、玄米中0.4ppm以上の検出がされた米については全て工業用にされる。
従来、カドミウムを分析する方法としては、公定分析法である原子吸光分析法や、ICP発光分析法、ICP質量分析法等が知られている。しかし、これらの分析を行う装置は大型で高価であり、その操作も複雑である。
一方、電気化学的にカドミウムを分析する試みも行われているが(特許文献1)、食品中に含まれるカドミウムを分析しようとすると、当該食品中に含まれる有機物が妨害因子となり精度の高い分析の実現が阻まれている。
特開2005−49275号公報
そこで本発明は、生物由来の試料に含まれるカドミウムを高感度かつ高精度に検出・定量することができる電気化学的分析方法、装置及び試薬セットを提供すべく図ったものである。
すなわち本発明に係る電気化学的分析方法は、生物由来の試料に含まれるカドミウムを、対極及び作用電極を用いて電気化学的に分析する方法であって、生物由来の試料に対し、酸化性を有しカドミウムと錯体を形成しない酸を添加して、前記生物由来の試料からカドミウムを抽出する抽出工程を備えていることを特徴とする。
このように酸化性を有しカドミウムと錯体を形成しない酸を用いて、生物由来の試料からカドミウムを抽出することにより、生物由来の試料に含まれる有機物を良好に分解することができるとともに、当該酸とカドミウムとは錯体を形成しないので、カドミウムの検出や、その濃度の測定を精度良く行うことができる。
前記酸化性を有しカドミウムと錯体を形成しない酸としては、過塩素酸が好適に用いられる。なお、ICP発光分析法やICP質量分析法では生物由来試料の前処理に塩酸が用いられるが、塩酸を用いてカドミウムの抽出を行うと、作用電極からカドミウムが溶出する際の電流ピークが小さくなり、精度の高い分析が困難になる。これは、塩酸や硫酸はカドミウムと錯体を形成するためである。
得られた抽出液は、pHを3〜7に調整することが好ましい。好ましくはpH3〜6である。pHが3未満であると、作用電極からカドミウムが溶出する際の電流ピークが小さくなり、精度の高い分析が困難になる。一方、pHが7を超えると、カドミウムが沈殿してしまう。
前記抽出液のpHを3〜7に調整する際には、有機酸及び/又はその塩からなる緩衝剤を用いることが好ましい。有機酸のカルボキシル基にはキレート作用があり、当該カルボキシル基がカドミウムを分析する際の阻害因子となる鉛、セレン、クロム、ホウ素等の金属を包み込むことによりカドミウムへの干渉が防止されると推測される。前記有機酸としては、カルボキシル基が1分子中に1又は2個備わっているものが好ましく、例えば、フタル酸や酢酸等が挙げられる。なお、フタル酸を用いた場合はpH4程度に調整し、酢酸を用いた場合はpH5程度に調整するのが適当である。
生物由来の試料の抽出液中では、カドミウムは銅と複合体を形成していることが多く、その場合、電気化学的分析においては、カドミウムと銅との複合体に由来する電流ピークが検出される。このため、生物由来試料中の銅の含有量により測定結果が影響を受けないようにするために、予め生物由来の試料に銅を添加してもよい。この際の銅の添加量としては、例えば、所定の基準値(例えば、目的の生物由来試料に見込まれる銅の最大含有量)に満たない分の銅を添加するようにしてもよいし、カドミウムの測定濃度レンジの3〜10倍程度の濃度(大過剰)となるように銅を添加してもよい。銅を添加するに際しては、銅の電解質等の銅化合物を用いればよい。
本発明に係る電気化学的分析方法は、pH調整後の前記抽出液と酸及び緩衝剤の組成並びにpHが同じである溶液に接触させた状態で、前記作用電極に正の電圧を印加する電極洗浄工程を備えていることが好ましい。当該電極洗浄工程を行うことにより、作用電極に付着している有機物や重金属を予め除去することができるので、精度の高い分析を行うことができる。
前記作用電極としては特に限定されないが、カーボン電極を用いることが好ましく、なかでも導電性ダイヤモンド電極が好適に用いられる。当該導電性ダイヤモンド電極としては、例えば、ホウ素、窒素、リン等がドープされているもの等が挙げられるが、なかでも高濃度でホウ素をドープしたボロンドープダイヤモンド電極が好ましい。ボロンドープダイヤモンド電極は、電位窓が広く(酸化電位及び還元電位が広い)、他の電極材料と比較してバックグラウンド電流が低く、酸化還元種に対して感度が高く、金や白金等に比べて電極表面に物理的吸着が生じにくいため酸素・水素発生以外のピークが出にくい、といった優れた性質を有している。また、ボロンドープダイヤモンド電極は、化学的耐久性、機械的耐久性、電気伝導度、耐腐食性等にも優れている。更に、ボロンドープダイヤモンド電極は、その硬度から、化学的・物理的な洗浄を行いやすく、電極表面を清浄な状態に維持しやすいという利点も有する。
また、前記対電極としては、例えば、白金、炭素、ステンレス、金、ダイヤモンド、SnO等からなる電極を用いることができ、更に、参照電極を用いる場合は、適宜公知のものを利用することができ、例えば、銀塩化銀電極、カロメル電極、標準水素電極、水素パラジウム電極等を用いることができる。
本発明で用いる作用電極が導電性ダイヤモンド電極である場合、前記電極洗浄工程の後で、更に、前記導電性ダイヤモンド電極に負の電圧を印加して電極表面を水素終端化する水素終端化工程を行うことが好ましい。このように導電性ダイヤモンド電極の表面を水素終端化することにより、電極表面の感度が高まり精度の高い分析を行うことができる。
本発明に係る電気化学的分析方法は、例えば以下のような構成を有する分析装置によって実施することができる。すなわち、生物由来の試料に含まれるカドミウムを電気化学的に分析するための装置であって、生物由来の試料に対し、酸化性を有しカドミウムと錯体を形成しない酸を添加して、前記生物由来の試料からカドミウムを抽出する抽出手段と、得られた抽出液のpHを3〜7に調整するpH調整手段と、対電極と作用電極とを内蔵し、前記抽出液を収容するためのセルと、前記作用電極と前記対電極との間に、前記作用電極にカドミウム又はその複合体が電着する電圧を印加し、次いで、前記作用電極に電着したカドミウム又はその複合体が溶出する電圧を印加する印加手段と、前記作用電極と前記対電極との間に生じた電流を検出する検出手段と、を備えていることを特徴とする。このような電気化学的分析装置もまた、本発明の一つである。
また、本発明に係る電気化学的分析方法を実施するに際しては、当該生物由来の試料からカドミウムを抽出し、かつ、得られた抽出液を供試用に調整するために、酸化性を有しカドミウムと錯体を形成しない酸と、有機酸及び/又はその塩からなる緩衝剤と、銅化合物と、を含む試薬セットを用いてもよい。このような試薬セットもまた、本発明の一つである。
本発明に係る試薬セットにおいては、酸化性を有しカドミウムと錯体を形成しない酸(A成分)と、有機酸及び/又はその塩からなる緩衝剤(B成分)と、銅化合物(C成分)とが、それぞれ別個の試薬として備わっていてもよいが、A成分とC成分とが1つの試薬に含まれていたり、B成分とC成分とが1つの試薬に含まれていたりしてもよい。また、当該試薬セットに含まれる試薬の剤型としては特に限定されず、固形(粉末状、錠剤等)であってもよく、液状であってもよい。
このように構成された本発明によれば、生物由来の試料に含まれる有機物を良好に分解するとともに、カドミウムが錯体を形成しないので、カドミウムの検出や、その濃度の測定を精度良く行うことができる。
本実施形態の電気化学測定装置の構成を示す模式図。 同実施形態の重金属イオン測定装置を模式的に示す斜視図。 同実施形態の測定セルの構成を模式的に示す断面図。 同実施形態の攪拌子の斜視図。 同実施形態の攪拌子の平面図。 同実施形態の攪拌子の正面図。 同実施形態の攪拌子の右側面図。 同実施形態の攪拌子の製造方法を模式的に示す図。 同実施形態の測定セル内部の具体的構成を示す第1の模式図。 同実施形態の測定セル内部の具体的構成を示す第2の模式図。 過塩素酸を用いて米からカドミウムを抽出した場合のボルタモグラム。 塩酸を用いて米からカドミウムを抽出した場合のボルタモグラム。 保持面の変形例を示す模式図。 保持面の変形例を示す模式図。
以下に本発明に係る電気化学測定装置について図面を参照して説明する。
本実施形態の電気化学測定装置100は、例えば米等の生物由来試料に含まれるカドミウムを、対電極、参照電極及び作用電極の三電極方式でストリッピングボルタンメトリー法を用いて分析するものである。
<装置構成>
具体的に電気化学測定装置100は、図1に示すように、液体試料を収容する測定セル2と、液体試料に接触して設けられる対電極3、参照電極4及び作用電極5と、作用電極5の電位を変動させる電位変動部6と、測定セル2に収容された液体試料の少なくとも一部を測定用溶液である酸性緩衝液に置換する液置換機構11と、作用電極5及び対電極3の間の電流を検出する電流検出部7と、電流検出部7により検出された電流値から重金属イオン濃度を算出する濃度算出部8とを備える。
なお、上記各構成要素は、図2に示すように、ケーシングC内に収容されており、当該ケーシングCの前面下部には、前記酸性緩衝液を収容する緩衝液タンクT1及び液体試料や使用後の緩衝液等の廃液を収容する廃液タンクT2が設けられている。また、ケーシングCの前面上部には、電源ON/OFFボタン、測定開始ボタン、校正ボタン、洗浄ボタン等の操作用ボタン群B及び測定結果(濃度等)を表示する表示部801が設けられている。更にケーシングCの上部には、前記測定セル2に液体試料を注入するための試料導入部21が設けられている。
まず、電位変動部6、電流検出部7、液置換機構11及び濃度算出部8について説明する。
電位変動部6及び電流検出部7は、ポテンシオスタットPSにより構成されている。このポテンシオスタットPSは、作用電極5の電位を参照電極4に対して一定にした状態で、作用電極5と対電極3との間に発生した電流を検出し、この検出信号を後述の濃度算出部としての機能を有する演算制御装置8に出力する。
そしてこのポテンシオスタットPSは、電位変動部6の機能に関して言うと、作用電極5の電位を、重金属が作用電極5に電着する電位、及び作用電極5に電着した重金属が溶出する電位の間で変動させるものである。具体的にポテンシオスタットPSは、液体試料に作用電極5が接触した状態で、作用電極5の電位を負電位方向に変動させて、作用電極5表面に測定対象の重金属を電着させる電位を供給し、次いで、表面に前記重金属が電着した作用電極5が酸性緩衝液であるフタル酸緩衝液に接触した状態で、作用電極5の電位を正電位方向に掃引して、作用電極5に電着した重金属を溶出させる電位を供給する。
またポテンシオスタットPSは、電流検出機能に関して言うと、前記電動変動機能により作用電極5の電位を正電位方向に掃引したときに、作用電極5と対電極3との間に発生する電流を検出するものである。
なお、ポテンシオスタットPSは、電位を一定に保つ機能のほか、電位を一定速度で走査したり、指定した電位に一定時間ごとにステップしたりする機能を持つ。これらの機能は、1台に搭載する必要はなく、例えば電位保持機能と電位走査機能とが別体に設けてあってもよい。
液置換機構11は、図1に示すように、測定セル2内の液体を廃液タンクT2に排出するための排出ライン12と、緩衝液タンクT1からフタル酸緩衝液を測定セル2に供給するための供給ライン13とを有する。
排出ライン12は、測定セル2に接続された排出管121及びこの排出管121に設けられて測定セル2に収容された液体を外部に排出するための排出ポンプ122を有する。排出管121は、作用電極5表面近傍で開口するように測定セル2の底壁部2cを貫通して設けられている(不図示)。また排出管121の下流側は廃液タンクT2に接続されている。また排出ポンプ122は後述する演算制御装置8により動作タイミング等が制御される。
供給ライン13は、測定セル2に接続された供給管131、及びこの供給管131に設けられて緩衝液タンクT1に収容されたフタル酸緩衝液を測定セル2に供給するための供給ポンプ132を有する。供給管131は、対電極3及び参照電極4と同様に、測定セル2の側壁部2bにおいて、作用電極5を向くように斜めに挿入して固定されている(不図示)。また供給管131の上流側は緩衝液タンクT1に接続されている。また供給ポンプ132は後述する演算制御装置8により動作タイミング等が制御される。
この液置換機構11は、測定セル2に収容された液体試料を、少なくとも対電極3及び作用電極5が液体試料に接触する液量を保ちながら液置換するように演算制御装置8によって制御される。具体的に液置換機構11の排出ポンプ122及び供給ポンプ132は、測定セル2に収容された液体試料を複数回に分けて測定用溶液であるフタル酸緩衝液に置換するように演算制御装置8によって制御される。例えば液置換機構11は、液体試料を例えば半分ずつフタル酸緩衝液に複数回(例えば4回程度)に分けて置換する。置換方法としては、測定セル2に収容された液体試料を排出ライン12により半分排出したのちに、供給ライン13により排出量に相当する量のフタル酸緩衝液を供給する。これを例えば複数回繰り返す。そのほか、液体試料の排出及びフタル酸緩衝液の供給を同時に行うようにしてもよい。
演算制御装置8は、ポテンシオスタットPSで検出された検出信号を取得し、重金属イオンの検出及び濃度測定を行うものである。具体的に演算制御装置8は、CPUや、メモリ、入出力チャンネル、ディスプレイ等の出力手段801、A/D変換器、D/A変換器等を備えた汎用乃至専用のものであり、前記CPU及びその周辺機器が、前記メモリの所定領域に格納された測定用プログラムに従って協働動作することにより、後述する測定シーケンスを実行する。なお、演算制御装置8は、物理的に一体である必要はなく、有線又は無線により複数の機器に分割されていてもよい。
次に、測定セル2、当該測定セル2に設けられた電極群3〜5及び当該測定セル2に設けられた攪拌機構9について説明する。
測定セル2は、図3に示すように、内部に液体試料の収容空間2Sを形成するものであり、その上壁部2aには、液体試料を導入するための試料導入部21が形成されている。
また、測定セル2の側壁部2bには、対電極3及び参照電極4が下側(底壁部2c側)を向くように斜めから挿入して固定されている。更に測定セル2の底壁部2cには、作用電極5が収容空間2Sに露出するように固定されている。
ここで、本実施形態の電極群3〜5に関して言うと、対電極3は例えば白金電極であり、参照電極4は例えば銀−塩化銀電極であり、作用電極5は、高濃度でホウ素をドープしたボロンドープダイヤモンド電極(導電性ダイヤモンド電極)である。
対電極3及び参照電極4は、前述した通り、測定セル2の側壁部2bにおいて測定セル2の底壁部2cに設けられた作用電極5を向くように斜めに挿入して固定されている。このように、対電極3及び参照電極4を測定セル2の側壁部2bにおいて作用電極5を向くように斜めに挿入して設けているので、これらの電極3、4が周辺構造と干渉することなく配置することができる。また、対電極3及び参照電極4は、後述する攪拌子91の挿入用貫通孔91H内に挿入されて、それら電極3、4の先端部が作用電極5の電極表面5aに近接されている。
また、作用電極5は、測定セル2の底壁部2cにおいて電極表面5aが収容空間2Sに露出するように設けられた平板状のものである。この作用電極5は、底壁部2cに形成された開口部を閉塞するように設けられており、これにより、電極表面5aが収容空間2Sに露出する構成となる。なお、底壁部2cと作用電極5又は当該作用電極5を保持する保持部材(不図示)との間には、例えばOリング等のシール部材が設けられ、測定セル2に収容された液体試料がそれらの隙間から外部に漏れ出ないようにしている。
前記測定セル2に設けられた攪拌機構9は、図1に示すように、測定セル2の収容空間2S内に収容された攪拌子91と、当該攪拌子91を磁力によって回転させるための磁気アクチュエータ92とを有する。なお、磁気アクチュエータ92は、測定セル2の底壁部2cの下側、具体的には作用電極5の下側に設けられている。
攪拌子91は、図4〜図7に示すように、例えばPTFE等のフッ素系樹脂製であり、円筒状をなす本体部911と、当該本体部911の軸方向における一方の開口端部911pに連続して形成され、軸方向に沿って延びる複数の羽根部912とを有している。なお、攪拌子91をフッ素系樹脂製とすることで、汚れにくい構成としている。また、図示はしないが、攪拌子91において、本体部911の他方の開口端部911qの径方向外側の角部及び羽根部912の先端部の角部等は、丸みを帯びた形状に面取り加工(R面取り加工)が施されている。これにより、攪拌子91が回転しやすいように構成している。
本体部911の軸方向における他方の開口端部911qは、測定セル2に収容された状態において、作用電極5の電極表面5aに対向する対向面911aを有する。この対向面911aは、本体部911の他方の開口端部911qの開口端面により形成され、円環状をなす面である。
このように本体部911が円筒状をなすことから、攪拌子91の回転中心部には、対電極3及び参照電極4を挿入するための挿入用貫通孔91Hが形成される(図5参照)。この挿入用貫通孔91Hは、断面円形状をなすものである。このように断面円形状をなすものであるので、攪拌子91が回転した状態で、対電極3及び参照電極4が挿入される挿入空間を可及的に大きくすることができる。
複数の羽根部912は、本体部911の一方の開口端部911pにおいて、周方向に等間隔に形成されている。本実施形態では、2つの羽根部912が形成されており、本体部911の一方の開口端部911pにおいて、径方向に対向して設けられている。また、複数の羽根部912は、互いに同一形状をなすものである。各羽根部912の周方向を向く端面912xが、収容空間2Sに収容された液体試料を攪拌する攪拌面として機能する(図4及び図5参照)。更に、羽根部912の外側面912mは、前記本体部911の外側周面911mと連続した同一面である。
また、攪拌子91の本体部911には、内部に複数の磁石913が内蔵されている。複数の磁石913は、攪拌子91全体の重量バランスを考えて、本体部911の周方向において羽根部912が形成されていない部分に、軸対称に設けられている(図5参照)。具体的には、本体部911の対向壁911s、911tそれぞれに、棒状をなす磁石913が複数本(図5では、各対向壁911s、911tに3本ずつ)設けられている。各対向壁911s、911tに内蔵される棒状磁石913は、本体部911の軸方向に沿って設けられている(図6及び図7参照)。そして、一方の対向壁911sに設けられる複数の棒状磁石913は、軸方向一方側(羽根部912側)がN極であり、軸方向他端側(対向面911a側)がS極となるように構成されている。また、他方の対向壁911tに設けられた複数の棒状磁石913は、軸方向一方側(羽根部912側)がN極であり、軸方向他端側(対向面911a側)がS極となるように構成されている。
このように構成された攪拌子91に対して、磁気アクチュエータ92の回転体には、前記一方の対向壁911sに対応する部分に、攪拌子91側をN極とする磁石が設けられ、前記他方の対向壁911tに対応する部分に、攪拌子91側をS極とする磁石が設けられている。このように構成された磁気アクチュエータ92により、攪拌子91を回転する場合には、回転体の磁石に攪拌子91の磁石913が引き付けられた状態(つまり、攪拌子91の対向面911aが後述する接触面2Pに押し付けられた状態)で回転することになる。このように、攪拌子91が回転体に引き付けられて、対向面911aが接触面2Pを摺動するように回転するので、攪拌子91の回転を安定させることができる。
また、攪拌子91の対向面911a、つまり、本体部911の軸方向における他方の開口端部911qには、気泡を上部に逃がすための1又は複数の凹部914が形成されている。この凹部914は、本体部911の他方の開口端部911qにおいて内側周面及び外側周面に開口するものである。本実施形態では、本体部911の他方の開口端部911qにおいて、周方向に等間隔に形成されており、攪拌子91の重量バランスを考慮して、羽根部912の下方に形成されている(図6参照)。
この攪拌子91の製造方法について簡単に説明する。図8に示すように、円筒状をなす加工前部品900の、軸方向一端側の互いに対向する側壁部901、902それぞれを、軸方向に直交する方向から見て軸対称に概略L字状に切り欠くように削る。これにより、本体部911及び羽根部912が形成される。また、前記加工前部品900の、軸方向他端側の開口端部に凹部を形成することによって、気泡抜き用凹部914が形成される。更に、本体部911に磁石913を埋設するための埋設孔をエンドミル等によって切削する。そして、この埋設孔に磁石913を嵌め入れる。このような加工が施された後、加工後部品に前述したR面取り加工を施すことによって攪拌子91が形成される。なお、磁石913を埋め込む前にR面取り加工を施しても良い。
そして、本実施形態の測定セル2は、図9及び図10に示すように、電極表面5aに対向する攪拌子91の対向面911aに接触して、その対向面911aを電極表面5aから離間させる攪拌子接触面2P(以下、接触面2P)と、この接触面2Pとは異なる位置に形成され、攪拌子91における対向面911aとは異なる面が沿って回転するものであり、攪拌子91の回転姿勢を保持するための保持面2Qとを備えている。
接触面2Pは、電極表面5aに攪拌子91の対向面911aが接触しないように支持するものである。この接触面2Pは、作用電極5の電極表面5aから電極表面5aの向く方向(上方向)に離間して形成された円環状をなす平面であり、攪拌子91が載置される。具体的に接触面2Pは、作用電極5の電極表面5aの上部において、測定セル2の内側周面2xから径方向内側に突出して形成された円環状をなす突出部22に形成されている。具体的には、突出部22における作用電極5とは反対側の平面(上面)により形成されている。
上述したように、このような接触面2Pにおいて、攪拌子91が磁気アクチュエータ92に引き付けられて、攪拌子91の対向面911aが接触面2Pに押し付けられた状態で回転する。これにより、対向面911aが接触面2Pを摺動するように回転するので、攪拌子91の回転を安定させることができ、攪拌子91により電極表面5aに生じる液体試料の対流を一定にすることができる。
保持面2Qは、攪拌子91の回転軸を電極表面5aに対して略一定として攪拌子91の回転姿勢を保持するものである。この保持面2Qは、測定セル2内部において、接触面2P(突出部22)よりも上側に形成された円筒状をなす面である。この保持面2Qの中心軸は、攪拌子の回転中心軸と略一致する。具体的に保持面2Qは、測定セル2の円筒状をなす内側周面2xにより形成されている。この保持面2Qは、攪拌子91の本体部911の外側周面911mの略全体に若干の間隙を介して対向して形成されている。なお、本体部911の外側周面911mと保持面2Qとの間隙は、攪拌子91の回転を確保できる程度において出来るだけ小さいことが望ましく、例えば0.5mm程度である。この保持面2Qにより、攪拌子91が回転開始時又は回転途中に上下反転することを防ぎ、攪拌子91の回転軸の振動を抑え、又は回転軸の振動の振幅を小さくすることができ、攪拌子91の回転姿勢を略一定に保持することができる。したがって、攪拌子91の回転を安定させることができ、攪拌子91により電極表面5aに生じる液体試料の対流を略一定にすることができる。
なお、本実施形態では、本体部911の外側周面911mと羽根部912の外側面912mとが同一面であり、保持面2Qは羽根部912の外側面912mにも対向するように構成されている(図10参照)。これにより、攪拌子91が回転するときに、羽根部912の外側面912mも保持面2Q(測定セル2の内側周面2x)に沿って回転するため、攪拌子91の回転姿勢を略一定に保持することができる。
<カドミウム分析方法>
次に電気化学的分析装置100を用いてストリッピング法によりカドミウムを分析する方法について説明する。
1.抽出液調製工程
以下、生物由来の試料として米を用いた場合を例に挙げて説明する。まず、米を粉砕して米粉を得る。次いで、得られた米粉を過塩素酸に溶解して、有機物を分解しつつカドミウムを抽出する。得られた抽出液に対して吸引濾過を施すことにより、残渣を除去する。更に、吸引濾過後の抽出液にフタル酸水素カリウムと水酸化ナトリウムとを添加しpHを4.0付近に調整して、カドミウム測定に供する抽出液とする。
なお、米の抽出液中では、カドミウムは銅と複合体を形成していることが多い。カドミウムが銅と複合体を形成している場合、溶出工程時にカドミウムと銅との複合体に起因する電流ピークに加え、カドミウム単体に起因する電流ピークも観察される場合があるが、分析を容易にするためにはカドミウムに起因する電流ピークは1種類のみが検出されるほうが好ましい。また、カドミウム単体とカドミウムと銅との複合体とでは電気化学的分析における検出感度が異なる。従って、検出感度を揃え、分析結果の検討を容易にするために、カドミウムを銅との複合体として検出するには、米の抽出液中の銅濃度が基準濃度(例えば、予想最高濃度である4ppm)に満たない場合は、不足分の銅を抽出液に添加し銅を補うようにしてもよく、また、予想されるカドミウム濃度の3〜10倍程度の濃度となるように大過剰の銅を添加(例えば、カドミウム濃度が50ppbである場合、200〜400ppbの濃度となるように銅を添加)して、カドミウムを銅との複合体として検出されるようにしてもよい。なお、前記抽出液に銅を添加するにあたってはCuCl等の銅化合物を用いることができる。当該銅化合物は単独で抽出液に添加してよいが、過塩素酸とともに添加したり、フタル酸水素カリウムとともに添加したりしてもよい。
2.電極トリートメント工程
電源ON/OFFボタンをユーザが操作することによって、制御演算装置9が電気化学的分析装置100の主電源をONにする。その後、ユーザが電極トリートメントボタンを押下することによって、演算制御装置8は、測定装置内、具体的には測定セル2の電極トリートメント処理制御を行う。この電極トリートメント工程は、まず、液置換機構11の供給ライン13を用いて、カドミウムの抽出に用いた液、例えば過塩素酸、フタル酸水素カリウム及び水酸化ナトリウムの濃度並びにpHが抽出液と同じであるフタル酸緩衝液を測定セル2内に供給するとともに磁気撹拌機構9により供給されたフタル酸緩衝液を撹拌しながら、導電性ダイヤモンド電極5に正の電圧を所定時間印加(例えば、+3.5Vの電圧を60秒間印加)して、導電性ダイヤモンド電極5に付着した有機物や重金属を除去する電極洗浄処理を行う。次いで、導電性ダイヤモンド電極5に負の電圧を所定時間印加(例えば、−3.5Vの電圧を5秒間印加)して、導電性ダイヤモンド電極5表面の水素終端化処理を行う。そして、液置換機構11の排出ライン12からそのフタル酸緩衝液を排出することによって電極トリートメント工程を終了する。
3.抽出液注入工程
前記電極トリートメント工程の終了後、ユーザがケーシングCの上部に設けられた試料導入部21の開閉蓋を開放位置に移動させて、試料導入部21から抽出液を注入する。その後、ユーザが測定開始ボタンを押下すると、演算制御装置8は測定開始信号を受け付けてカドミウム測定を開始する。なお、このとき、対電極3、導電性ダイヤモンド電極5及び参照電極4が抽出液に接触したか否かを検出する液センサ(図示しない。)により検出信号を取得して、演算制御装置8は電極群3〜5が抽出液に接触しているか否かを判断する。接触していると判断すれば以下の測定動作に移行し、接触していない場合には、エラー表示等の報知を行う。
4.電着工程
そして演算制御装置8は、ポテンシオスタットPSに電着開始信号を出力する。そうすると、ポテンシオスタットPSは、導電性ダイヤモンド電極5の電位を負電位の方向に変動させて、当該導電性ダイヤモンド電極5の電位をカドミウムの還元電位よりも低い電位(例えば−1.0V)として、カドミウムを導電性ダイヤモンド電極5の表面5aに電着させる。なお、カドミウムが銅と複合体を形成している場合は、カドミウムと銅との複合体を導電性ダイヤモンド電極5の表面5aに電着させればよい。この場合、電着電位を−0.8V程度としてもよい。この電着工程は、導電性ダイヤモンド電極5の電位を前記還元電位よりも低い電位とした状態を所定時間(例えば10分)保った後に終了する。
5.液置換工程
前記電着工程後、ポテンシオスタットPSは導電性ダイヤモンド電極5の電位を前記還元電位よりも低い電位の状態で一定に保つ。この状態で演算制御装置8は、液置換機構11を制御することによって測定セル2内の抽出液をフタル酸緩衝液に複数回に分けて置換する。本実施形態では、測定セル2に収容された抽出液を排出ライン12により半分排出したのちに、供給ライン13により排出量に相当する量のフタル酸緩衝液を供給する。この動作を複数回(例えば4回程度)行うことで抽出液をフタル酸緩衝液に置換する。このように、液置換工程において、導電性ダイヤモンド電極5の電位を前記還元電位よりも低い電位の状態で一定に保っていることにより、電極5に電着されたカドミウムが液置換工程で溶出することを防止している。なお、抽出液の排出量及びフタル酸緩衝液の供給量はそれぞれ、排出時間及び供給時間に基づいて規定しても良い。
6.溶出工程(電流検出工程)
前記液置換工程により測定セル2内をフタル酸緩衝液に置換した後、演算制御装置8は、ポテンシオスタットPSに溶出開始信号を出力する。そうすると、ポテンシオスタットPSは、導電性ダイヤモンド電極5の電位を正電位方向、具体的にはカドミウムの還元電位よりも高い電位(例えば+1.0V)まで掃引して、カドミウムと銅との複合体をフタル酸緩衝液中に溶出させる。
カドミウムと銅との複合体が溶出すると、これに伴い導電性ダイヤモンド電極5と対電極3との間に電流が発生する。カドミウムと銅との複合体に起因する電流は、本反応系では+0.35V付近で発生し、この電流(電気信号)はポテンシオスタットPSに伝達され各電極における信号の制御・検出が行われる。ここで、ポテンシオスタットPSで検出された信号は演算制御装置8に送信される。そして、液置換機構11の排出ライン12からフタル酸緩衝液を排出することによって溶出工程を終了する。
当該溶出工程により得られたボルタモグラフの一例を図11に示す。図11に示すボルタモグラフ中、−0.35V付近に見られる電流ピークがカドミウムと銅との複合体に由来するものであり、0.25V付近に見られる電流ピークは銅単体に由来するものである。また、図11に示すボルタモグラフでは、カドミウムの濃度が高くなるに連れて電流ピークも高くなっていることが分かる。
一方、抽出液調製時に使用する酸として塩酸を使用した場合に得られたボルタモグラフの一例を図12に示す。抽出液調製時に塩酸を使用した場合は、分解されなかった残留有機物が妨害因子となり、また、カドミウムが塩酸と錯体を形成するため、図12に示すように、カドミウムに由来する電流ピーク(−0.6V付近)が不明瞭で感度良く検出することができなかった。
7.関係線作成工程
本実施形態では、標準添加法を用いてカドミウム濃度を分析するため、上記の電着工程〜溶出工程に供した抽出液に、更に濃度既知のカドミウム標準試料を所定濃度(例えば50ppb)となるように添加した試料を用いて、上記と同様に電着工程〜溶出工程を行い、カドミウム濃度と電流値又は電荷量との関係線を作成する。
8.カドミウム濃度算出工程
演算制御装置8は、作成されたカドミウムの濃度と電流値又は電荷量との関係線と、得られた電流値又は電荷量とを対比して、抽出液のカドミウム濃度を算出する。この際、予めフタル酸緩衝液のみを用いて測定されたベース電流値又はベース電荷量を、実測値である電流値又は電荷量から差し引いた差分電流値又は差分電荷量を用いてカドミウム濃度を算出することによって、より高精度にカドミウム濃度を算出することが可能となる。このように算出されたカドミウム濃度は、ケーシングCの前面に設けられた表示部801に表示される。
9.後電解工程
電位の掃引が終わった後、しばらくの間、導電性ダイヤモンド電極5の電位を+1.0Vで保持することにより、電着したカドミウムや銅を完全に溶出させ、導電性ダイヤモンド電極5を測定前の状態に戻して再生することができる。このように導電性ダイヤモンド電極5を再生することにより、同じ電極を繰り返し使用することが可能となる。なお、導電性ダイヤモンド電極5の再生は、一定電位の保持のみだけでなく、広い電位で繰り返し掃引を行うことによっても可能である。
10.廃液工程
前記後電解工程の後、演算制御装置8は、液置換機構11の排出ライン12の排出ポンプ122を制御することにより、測定セル2内の測定後溶液を廃液タンクT2に排出する。この廃液工程終了後、測定セルの洗浄を行い電源をOFFにする。
<本実施形態の効果>
このように構成した本実施形態に係る電気化学測定装置100によれば、作用電極5の電極表面5aと攪拌子91の対向面911aとを離間させる接触面2Pを有しているので、攪拌子91を作用電極5に接触させないように構成することができ、作用電極5が攪拌子91によって傷つくことが無く、作用電極5の電極表面5aに形成される電気二重層が乱れることも無い。これにより、電気化学測定の安定性を向上させることができる。
また、攪拌子91の回転姿勢を保持するための保持面2Qを有しているので、攪拌子91が回転途中に姿勢を崩して作用電極5に接触する又は回転不能になる等の回転障害が生じる心配が無く、攪拌子91の回転スピードや回転位置を安定させることができ、攪拌子91の回転を安定させることができる。このように攪拌子91の回転を安定させることにより、作用電極5の電極表面5aにおける液体試料の対流を略一定にすることができ、電気化学測定の安定性を向上させることができる。
その上、本実施形態のカドミウム分析方法によれば、過塩素酸を用いて米等の生物由来試料からカドミウムを抽出することにより、カドミウムの錯体を形成せずに生物由来試料に含まれる有機物を分解することができるので、カドミウムの検出や、その濃度の測定を精度良く行うことができる。
また、本実施形態では、緩衝剤としてフタル酸水素ナトリウムを用いることにより、カドミウムを測定する際の阻害因子となる鉛、セレン、クロム、ホウ素等の金属がカルボキシル基で包み込まれ、この結果、カドミウムへの干渉が防止されると推測される。
更に、本実施形態では、電極洗浄処理と水素終端化処理とを含む電極トリートメント工程を行うことにより、作用電極に付着している有機物や重金属を予め除去した後、導電性ダイヤモンド電極の表面を整えることにより、分析精度を更に高めることができる。特に本実施形態ではフタル酸緩衝液中で電極洗浄処理を行っているので、コルビ反応によりCOラジカルが生成し、これが有機物の分解・除去に有効に働いていると思われる。
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
例えば、攪拌子において、円筒状をなす本体部の内部に、羽根部を形成したものであっても良い。この場合、挿入用貫通孔91Hの開口サイズが小さくなってしまう恐れがあるが、攪拌子91の軸方向寸法を小さくすることができる。
また、前記実施形態の保持面2Qは、測定セル2の内側周面2xにより形成されているが、図13に示すように、測定セル2の内側周面2x及び攪拌子91の外側周面911mの間に設けられ、その内側周面10xが保持面2Qとなるスペーサ部材10を設けても良い。このスペーサ部材10は、軸方向に直交する断面が等断面形状の円筒状をなすものである。なお、このスペーサ部材10の内側周面2xから径方向内側に突出する環状の突出部を形成することで、接触面2Pを有するものとしても良い。
更に、前記実施形態では、攪拌子91が挿入用貫通孔91Hを有するものであったが、挿入用貫通孔91Hを有さないものであっても良い。この場合、対電極3及び参照電極4を、攪拌子91の上部から作用電極5側に挿入することはできないが、例えば、接触面2P(突出部22)と作用電極5との距離を前記実施形態よりも大きくして、突出部22と作用電極5との間の側壁から収容空間2S内に対電極3及び参照電極4を挿入し、対電極3及び参照電極4を作用電極5の電極表面5aの近傍に位置させるように構成しても良い。
その上、前記実施形態の保持面2Qは、攪拌子91の回転中心軸Cを囲むように形成された円筒状をなす面であったが、図14に示すように、前記接触面2Pに対向するように形成され、前記接触面2Pとの間で、攪拌子91を回転可能に挟むように構成されたものであっても良い。この保持面2Qとしては、例えば攪拌子91の上面に接触する円環状をなす平面とすることが考えられる。この保持面2Qは、前記接触面2Pと同様に、測定セル2の内側周面2xから径方向内側に突出して形成された環状の突出部23の下面により形成される。なお、図14では、棒状の攪拌子91を用いた場合を示しているが、前記実施形態のように、挿入用貫通孔91Hを有するものであっても良い。
加えて、前記実施形態では、作用電極5、対電極3及び参照電極4が備わった三電極法による測定を行うものであるが、作用電極5及び対電極3のみを備えた二電極法によるものであってもよい。三電極法の方が、作用電極5と対電極3との間に印加する電圧の絶対値を制御することができるので、精度及び感度の高い測定を行うことが可能であるが、二電極法によれば、用いる電極が作用電極5及び対電極3の二電極ですむので、測定セル2の構造を単純化、小型化することができる。
前記実施形態のカドミウム分析方法において、カドミウム濃度算出のための関係線の作成方法としては、標準添加法に限られず、抽出液中の銅濃度が低い場合は、検量線法を用いてカドミウム濃度と電流値又は電荷量との関係線を予め作成してもよい。
更に加えて、前記実施形態の電気化学測定装置は、液体試料に含まれるCu、As、Cd、Zn等の重金属イオンのうちいずれか1つ又は複数の成分を測定するものに適用しても良い。
前記実施形態のカドミウム分析方法において、液置換工程を行うことでよりノイズの少ない信号を得ることができるが、液置換工程を行わなくてもカドミウムなどの重金属イオンを測定することができる。
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
100・・・電気化学測定装置
2・・・測定セル
2P・・・接触面
2Q・・・保持面
2x・・・内側周面
3・・・対電極
4・・・参照電極
5・・・作用電極
91・・・攪拌子
911a・・・対向面
91b・・・外側周面
91H・・・挿入用貫通孔
911・・・本体部
912・・・羽根部
この発明は、生物由来の試料に含まれるカドミウムを電気化学的に検出する方法、装置及び試薬セットに関するものである。
カドミウムは人体にとって有毒であり、カドミウムが体内に蓄積すると腎臓機能等が侵されることが知られている。このため、米をはじめとする食品中に含まれるカドミウム量には基準が設けられており、食品衛生法上では玄米において1ppm以下と規定され、基準値以上のカドミウムを含む場合は販売することができず、全て焼却処分される。また、食糧庁通達により、玄米中0.4ppm以上の検出がされた米については全て工業用にされる。
従来、カドミウムを分析する方法としては、公定分析法である原子吸光分析法や、ICP発光分析法、ICP質量分析法等が知られている。しかし、これらの分析を行う装置は大型で高価であり、その操作も複雑である。
一方、電気化学的にカドミウムを分析する試みも行われているが(特許文献1)、食品中に含まれるカドミウムを分析しようとすると、当該食品中に含まれる有機物が妨害因子となり精度の高い分析の実現が阻まれている。
特開2005−49275号公報
そこで本発明は、生物由来の試料に含まれるカドミウムを高感度かつ高精度に検出・定量することができる電気化学的分析方法、装置及び試薬セットを提供すべく図ったものである。
すなわち本発明に係る電気化学的分析方法は、生物由来の試料に含まれるカドミウムを、対電極及び作用電極を用いて電気化学的に分析する方法であって、生物由来の試料に対し、酸化性を有しカドミウムと錯体を形成しない酸を添加して、前記生物由来の試料からカドミウムを抽出する抽出工程を備えていることを特徴とする。
このように酸化性を有しカドミウムと錯体を形成しない酸を用いて、生物由来の試料からカドミウムを抽出することにより、生物由来の試料に含まれる有機物を良好に分解することができるとともに、当該酸とカドミウムとは錯体を形成しないので、カドミウムの検出や、その濃度の測定を精度良く行うことができる。
前記酸化性を有しカドミウムと錯体を形成しない酸としては、過塩素酸が好適に用いられる。なお、ICP発光分析法やICP質量分析法では生物由来試料の前処理に塩酸が用いられるが、塩酸を用いてカドミウムの抽出を行うと、作用電極からカドミウムが溶出する際の電流ピークが小さくなり、精度の高い分析が困難になる。これは、塩酸や硫酸はカドミウムと錯体を形成するためである。
得られた抽出液は、pHを3〜7に調整することが好ましい。好ましくはpH3〜6である。pHが3未満であると、作用電極からカドミウムが溶出する際の電流ピークが小さくなり、精度の高い分析が困難になる。一方、pHが7を超えると、カドミウムが沈殿してしまう。
前記抽出液のpHを3〜7に調整する際には、有機酸及び/又はその塩からなる緩衝剤を用いることが好ましい。有機酸のカルボキシル基にはキレート作用があり、当該カルボキシル基がカドミウムを分析する際の阻害因子となる鉛、セレン、クロム、ホウ素等の金属を包み込むことによりカドミウムへの干渉が防止されると推測される。前記有機酸としては、カルボキシル基が1分子中に1又は2個備わっているものが好ましく、例えば、フタル酸や酢酸等が挙げられる。なお、フタル酸を用いた場合はpH4程度に調整し、酢酸を用いた場合はpH5程度に調整するのが適当である。
生物由来の試料の抽出液中では、カドミウムは銅と複合体を形成していることが多く、その場合、電気化学的分析においては、カドミウムと銅との複合体に由来する電流ピークが検出される。このため、生物由来試料中の銅の含有量により測定結果が影響を受けないようにするために、予め生物由来の試料に銅を添加してもよい。この際の銅の添加量としては、例えば、所定の基準値(例えば、目的の生物由来試料に見込まれる銅の最大含有量)に満たない分の銅を添加するようにしてもよいし、カドミウムの測定濃度レンジの3〜10倍程度の濃度(大過剰)となるように銅を添加してもよい。銅を添加するに際しては、銅の電解質等の銅化合物を用いればよい。
本発明に係る電気化学的分析方法は、pH調整後の前記抽出液と酸及び緩衝剤の組成並びにpHが同じである溶液に接触させた状態で、前記作用電極に正の電圧を印加する電極洗浄工程を備えていることが好ましい。当該電極洗浄工程を行うことにより、作用電極に付着している有機物や重金属を予め除去することができるので、精度の高い分析を行うことができる。
前記作用電極としては特に限定されないが、カーボン電極を用いることが好ましく、なかでも導電性ダイヤモンド電極が好適に用いられる。当該導電性ダイヤモンド電極としては、例えば、ホウ素、窒素、リン等がドープされているもの等が挙げられるが、なかでも高濃度でホウ素をドープしたボロンドープダイヤモンド電極が好ましい。ボロンドープダイヤモンド電極は、電位窓が広く(酸化電位及び還元電位が広い)、他の電極材料と比較してバックグラウンド電流が低く、酸化還元種に対して感度が高く、金や白金等に比べて電極表面に物理的吸着が生じにくいため酸素・水素発生以外のピークが出にくい、といった優れた性質を有している。また、ボロンドープダイヤモンド電極は、化学的耐久性、機械的耐久性、電気伝導度、耐腐食性等にも優れている。更に、ボロンドープダイヤモンド電極は、その硬度から、化学的・物理的な洗浄を行いやすく、電極表面を清浄な状態に維持しやすいという利点も有する。
また、前記対電極としては、例えば、白金、炭素、ステンレス、金、ダイヤモンド、SnO等からなる電極を用いることができ、更に、参照電極を用いる場合は、適宜公知のものを利用することができ、例えば、銀塩化銀電極、カロメル電極、標準水素電極、水素パラジウム電極等を用いることができる。
本発明で用いる作用電極が導電性ダイヤモンド電極である場合、前記電極洗浄工程の後で、更に、前記導電性ダイヤモンド電極に負の電圧を印加して電極表面を水素終端化する水素終端化工程を行うことが好ましい。このように導電性ダイヤモンド電極の表面を水素終端化することにより、電極表面の感度が高まり精度の高い分析を行うことができる。
本発明に係る電気化学的分析方法は、例えば以下のような構成を有する分析装置によって実施することができる。すなわち、生物由来の試料に含まれるカドミウムを電気化学的に分析するための装置であって、生物由来の試料に対し、酸化性を有しカドミウムと錯体を形成しない酸を添加して、前記生物由来の試料からカドミウムを抽出する抽出手段と、得られた抽出液のpHを3〜7に調整するpH調整手段と、対電極と作用電極とを内蔵し、前記抽出液を収容するためのセルと、前記作用電極と前記対電極との間に、前記作用電極にカドミウム又はその複合体が電着する電圧を印加し、次いで、前記作用電極に電着したカドミウム又はその複合体が溶出する電圧を印加する印加手段と、前記作用電極と前記対電極との間に生じた電流を検出する検出手段と、を備えていることを特徴とする。このような電気化学的分析装置もまた、本発明の一つである。
また、本発明に係る電気化学的分析方法を実施するに際しては、当該生物由来の試料からカドミウムを抽出し、かつ、得られた抽出液を供試用に調整するために、酸化性を有しカドミウムと錯体を形成しない酸と、有機酸及び/又はその塩からなる緩衝剤と、銅化合物と、を含む試薬セットを用いてもよい。このような試薬セットもまた、本発明の一つである。
本発明に係る試薬セットにおいては、酸化性を有しカドミウムと錯体を形成しない酸(A成分)と、有機酸及び/又はその塩からなる緩衝剤(B成分)と、銅化合物(C成分)とが、それぞれ別個の試薬として備わっていてもよいが、A成分とC成分とが1つの試薬に含まれていたり、B成分とC成分とが1つの試薬に含まれていたりしてもよい。また、当該試薬セットに含まれる試薬の剤型としては特に限定されず、固形(粉末状、錠剤等)であってもよく、液状であってもよい。
このように構成された本発明によれば、生物由来の試料に含まれる有機物を良好に分解するとともに、カドミウムが錯体を形成しないので、カドミウムの検出や、その濃度の測定を精度良く行うことができる。
本実施形態の電気化学測定装置の構成を示す模式図。 同実施形態の重金属イオン測定装置を模式的に示す斜視図。 同実施形態の測定セルの構成を模式的に示す断面図。 同実施形態の攪拌子の斜視図。 同実施形態の攪拌子の平面図。 同実施形態の攪拌子の正面図。 同実施形態の攪拌子の右側面図。 同実施形態の攪拌子の製造方法を模式的に示す図。 同実施形態の測定セル内部の具体的構成を示す第1の模式図。 同実施形態の測定セル内部の具体的構成を示す第2の模式図。 過塩素酸を用いて米からカドミウムを抽出した場合のボルタモグラム。 塩酸を用いて米からカドミウムを抽出した場合のボルタモグラム。 保持面の変形例を示す模式図。 保持面の変形例を示す模式図。
以下に本発明に係る電気化学測定装置について図面を参照して説明する。
本実施形態の電気化学測定装置100は、例えば米等の生物由来試料に含まれるカドミウムを、対電極、参照電極及び作用電極の三電極方式でストリッピングボルタンメトリー法を用いて分析するものである。
<装置構成>
具体的に電気化学測定装置100は、図1に示すように、液体試料を収容する測定セル2と、液体試料に接触して設けられる対電極3、参照電極4及び作用電極5と、作用電極5の電位を変動させる電位変動部6と、測定セル2に収容された液体試料の少なくとも一部を測定用溶液である酸性緩衝液に置換する液置換機構11と、作用電極5及び対電極3の間の電流を検出する電流検出部7と、電流検出部7により検出された電流値から重金属イオン濃度を算出する濃度算出部8とを備える。
なお、上記各構成要素は、図2に示すように、ケーシングC内に収容されており、当該ケーシングCの前面下部には、前記酸性緩衝液を収容する緩衝液タンクT1及び液体試料や使用後の緩衝液等の廃液を収容する廃液タンクT2が設けられている。また、ケーシングCの前面上部には、電源ON/OFFボタン、測定開始ボタン、校正ボタン、洗浄ボタン等の操作用ボタン群B及び測定結果(濃度等)を表示する表示部801が設けられている。更にケーシングCの上部には、前記測定セル2に液体試料を注入するための試料導入部21が設けられている。
まず、電位変動部6、電流検出部7、液置換機構11及び濃度算出部8について説明する。
電位変動部6及び電流検出部7は、ポテンシオスタットPSにより構成されている。このポテンシオスタットPSは、作用電極5の電位を参照電極4に対して一定にした状態で、作用電極5と対電極3との間に発生した電流を検出し、この検出信号を後述の濃度算出部としての機能を有する演算制御装置8に出力する。
そしてこのポテンシオスタットPSは、電位変動部6の機能に関して言うと、作用電極5の電位を、重金属が作用電極5に電着する電位、及び作用電極5に電着した重金属が溶出する電位の間で変動させるものである。具体的にポテンシオスタットPSは、液体試料に作用電極5が接触した状態で、作用電極5の電位を負電位方向に変動させて、作用電極5表面に測定対象の重金属を電着させる電位を供給し、次いで、表面に前記重金属が電着した作用電極5が酸性緩衝液であるフタル酸緩衝液に接触した状態で、作用電極5の電位を正電位方向に掃引して、作用電極5に電着した重金属を溶出させる電位を供給する。
またポテンシオスタットPSは、電流検出機能に関して言うと、前記電動変動機能により作用電極5の電位を正電位方向に掃引したときに、作用電極5と対電極3との間に発生する電流を検出するものである。
なお、ポテンシオスタットPSは、電位を一定に保つ機能のほか、電位を一定速度で走査したり、指定した電位に一定時間ごとにステップしたりする機能を持つ。これらの機能は、1台に搭載する必要はなく、例えば電位保持機能と電位走査機能とが別体に設けてあってもよい。
液置換機構11は、図1に示すように、測定セル2内の液体を廃液タンクT2に排出するための排出ライン12と、緩衝液タンクT1からフタル酸緩衝液を測定セル2に供給するための供給ライン13とを有する。
排出ライン12は、測定セル2に接続された排出管121及びこの排出管121に設けられて測定セル2に収容された液体を外部に排出するための排出ポンプ122を有する。排出管121は、作用電極5表面近傍で開口するように測定セル2の底壁部2cを貫通して設けられている(不図示)。また排出管121の下流側は廃液タンクT2に接続されている。また排出ポンプ122は後述する演算制御装置8により動作タイミング等が制御される。
供給ライン13は、測定セル2に接続された供給管131、及びこの供給管131に設けられて緩衝液タンクT1に収容されたフタル酸緩衝液を測定セル2に供給するための供給ポンプ132を有する。供給管131は、対電極3及び参照電極4と同様に、測定セル2の側壁部2bにおいて、作用電極5を向くように斜めに挿入して固定されている(不図示)。また供給管131の上流側は緩衝液タンクT1に接続されている。また供給ポンプ132は後述する演算制御装置8により動作タイミング等が制御される。
この液置換機構11は、測定セル2に収容された液体試料を、少なくとも対電極3及び作用電極5が液体試料に接触する液量を保ちながら液置換するように演算制御装置8によって制御される。具体的に液置換機構11の排出ポンプ122及び供給ポンプ132は、測定セル2に収容された液体試料を複数回に分けて測定用溶液であるフタル酸緩衝液に置換するように演算制御装置8によって制御される。例えば液置換機構11は、液体試料を例えば半分ずつフタル酸緩衝液に複数回(例えば4回程度)に分けて置換する。置換方法としては、測定セル2に収容された液体試料を排出ライン12により半分排出したのちに、供給ライン13により排出量に相当する量のフタル酸緩衝液を供給する。これを例えば複数回繰り返す。そのほか、液体試料の排出及びフタル酸緩衝液の供給を同時に行うようにしてもよい。
演算制御装置8は、ポテンシオスタットPSで検出された検出信号を取得し、重金属イオンの検出及び濃度測定を行うものである。具体的に演算制御装置8は、CPUや、メモリ、入出力チャンネル、ディスプレイ等の出力手段801、A/D変換器、D/A変換器等を備えた汎用乃至専用のものであり、前記CPU及びその周辺機器が、前記メモリの所定領域に格納された測定用プログラムに従って協働動作することにより、後述する測定シーケンスを実行する。なお、演算制御装置8は、物理的に一体である必要はなく、有線又は無線により複数の機器に分割されていてもよい。
次に、測定セル2、当該測定セル2に設けられた電極群3〜5及び当該測定セル2に設けられた攪拌機構9について説明する。
測定セル2は、図3に示すように、内部に液体試料の収容空間2Sを形成するものであり、その上壁部2aには、液体試料を導入するための試料導入部21が形成されている。
また、測定セル2の側壁部2bには、対電極3及び参照電極4が下側(底壁部2c側)を向くように斜めから挿入して固定されている。更に測定セル2の底壁部2cには、作用電極5が収容空間2Sに露出するように固定されている。
ここで、本実施形態の電極群3〜5に関して言うと、対電極3は例えば白金電極であり、参照電極4は例えば銀−塩化銀電極であり、作用電極5は、高濃度でホウ素をドープしたボロンドープダイヤモンド電極(導電性ダイヤモンド電極)である。
対電極3及び参照電極4は、前述した通り、測定セル2の側壁部2bにおいて測定セル2の底壁部2cに設けられた作用電極5を向くように斜めに挿入して固定されている。このように、対電極3及び参照電極4を測定セル2の側壁部2bにおいて作用電極5を向くように斜めに挿入して設けているので、これらの電極3、4が周辺構造と干渉することなく配置することができる。また、対電極3及び参照電極4は、後述する攪拌子91の挿入用貫通孔91H内に挿入されて、それら電極3、4の先端部が作用電極5の電極表面5aに近接されている。
また、作用電極5は、測定セル2の底壁部2cにおいて電極表面5aが収容空間2Sに露出するように設けられた平板状のものである。この作用電極5は、底壁部2cに形成された開口部を閉塞するように設けられており、これにより、電極表面5aが収容空間2Sに露出する構成となる。なお、底壁部2cと作用電極5又は当該作用電極5を保持する保持部材(不図示)との間には、例えばOリング等のシール部材が設けられ、測定セル2に収容された液体試料がそれらの隙間から外部に漏れ出ないようにしている。
前記測定セル2に設けられた攪拌機構9は、図1に示すように、測定セル2の収容空間2S内に収容された攪拌子91と、当該攪拌子91を磁力によって回転させるための磁気アクチュエータ92とを有する。なお、磁気アクチュエータ92は、測定セル2の底壁部2cの下側、具体的には作用電極5の下側に設けられている。
攪拌子91は、図4〜図7に示すように、例えばPTFE等のフッ素系樹脂製であり、円筒状をなす本体部911と、当該本体部911の軸方向における一方の開口端部911pに連続して形成され、軸方向に沿って延びる複数の羽根部912とを有している。なお、攪拌子91をフッ素系樹脂製とすることで、汚れにくい構成としている。また、図示はしないが、攪拌子91において、本体部911の他方の開口端部911qの径方向外側の角部及び羽根部912の先端部の角部等は、丸みを帯びた形状に面取り加工(R面取り加工)が施されている。これにより、攪拌子91が回転しやすいように構成している。
本体部911の軸方向における他方の開口端部911qは、測定セル2に収容された状態において、作用電極5の電極表面5aに対向する対向面911aを有する。この対向面911aは、本体部911の他方の開口端部911qの開口端面により形成され、円環状をなす面である。
このように本体部911が円筒状をなすことから、攪拌子91の回転中心部には、対電極3及び参照電極4を挿入するための挿入用貫通孔91Hが形成される(図5参照)。この挿入用貫通孔91Hは、断面円形状をなすものである。このように断面円形状をなすものであるので、攪拌子91が回転した状態で、対電極3及び参照電極4が挿入される挿入空間を可及的に大きくすることができる。
複数の羽根部912は、本体部911の一方の開口端部911pにおいて、周方向に等間隔に形成されている。本実施形態では、2つの羽根部912が形成されており、本体部911の一方の開口端部911pにおいて、径方向に対向して設けられている。また、複数の羽根部912は、互いに同一形状をなすものである。各羽根部912の周方向を向く端面912xが、収容空間2Sに収容された液体試料を攪拌する攪拌面として機能する(図4及び図5参照)。更に、羽根部912の外側面912mは、前記本体部911の外側周面911mと連続した同一面である。
また、攪拌子91の本体部911には、内部に複数の磁石913が内蔵されている。複数の磁石913は、攪拌子91全体の重量バランスを考えて、本体部911の周方向において羽根部912が形成されていない部分に、軸対称に設けられている(図5参照)。具体的には、本体部911の対向壁911s、911tそれぞれに、棒状をなす磁石913が複数本(図5では、各対向壁911s、911tに3本ずつ)設けられている。各対向壁911s、911tに内蔵される棒状磁石913は、本体部911の軸方向に沿って設けられている(図6及び図7参照)。そして、一方の対向壁911sに設けられる複数の棒状磁石913は、軸方向一方側(羽根部912側)がN極であり、軸方向他端側(対向面911a側)がS極となるように構成されている。また、他方の対向壁911tに設けられた複数の棒状磁石913は、軸方向一方側(羽根部912側)が極であり、軸方向他端側(対向面911a側)が極となるように構成されている。
このように構成された攪拌子91に対して、磁気アクチュエータ92の回転体には、前記一方の対向壁911sに対応する部分に、攪拌子91側をN極とする磁石が設けられ、前記他方の対向壁911tに対応する部分に、攪拌子91側をS極とする磁石が設けられている。このように構成された磁気アクチュエータ92により、攪拌子91を回転する場合には、回転体の磁石に攪拌子91の磁石913が引き付けられた状態(つまり、攪拌子91の対向面911aが後述する接触面2Pに押し付けられた状態)で回転することになる。このように、攪拌子91が回転体に引き付けられて、対向面911aが接触面2Pを摺動するように回転するので、攪拌子91の回転を安定させることができる。
また、攪拌子91の対向面911a、つまり、本体部911の軸方向における他方の開口端部911qには、気泡を上部に逃がすための1又は複数の凹部914が形成されている。この凹部914は、本体部911の他方の開口端部911qにおいて内側周面及び外側周面に開口するものである。本実施形態では、本体部911の他方の開口端部911qにおいて、周方向に等間隔に形成されており、攪拌子91の重量バランスを考慮して、羽根部912の下方に形成されている(図6参照)。
この攪拌子91の製造方法について簡単に説明する。図8に示すように、円筒状をなす加工前部品900の、軸方向一端側の互いに対向する側壁部901、902それぞれを、軸方向に直交する方向から見て軸対称に概略L字状に切り欠くように削る。これにより、本体部911及び羽根部912が形成される。また、前記加工前部品900の、軸方向他端側の開口端部に凹部を形成することによって、気泡抜き用凹部914が形成される。更に、本体部911に磁石913を埋設するための埋設孔をエンドミル等によって切削する。そして、この埋設孔に磁石913を嵌め入れる。このような加工が施された後、加工後部品に前述したR面取り加工を施すことによって攪拌子91が形成される。なお、磁石913を埋め込む前にR面取り加工を施しても良い。
そして、本実施形態の測定セル2は、図9及び図10に示すように、電極表面5aに対向する攪拌子91の対向面911aに接触して、その対向面911aを電極表面5aから離間させる攪拌子接触面2P(以下、接触面2P)と、この接触面2Pとは異なる位置に形成され、攪拌子91における対向面911aとは異なる面が沿って回転するものであり、攪拌子91の回転姿勢を保持するための保持面2Qとを備えている。
接触面2Pは、電極表面5aに攪拌子91の対向面911aが接触しないように支持するものである。この接触面2Pは、作用電極5の電極表面5aから電極表面5aの向く方向(上方向)に離間して形成された円環状をなす平面であり、攪拌子91が載置される。具体的に接触面2Pは、作用電極5の電極表面5aの上部において、測定セル2の内側周面2xから径方向内側に突出して形成された円環状をなす突出部22に形成されている。具体的には、突出部22における作用電極5とは反対側の平面(上面)により形成されている。
上述したように、このような接触面2Pにおいて、攪拌子91が磁気アクチュエータ92に引き付けられて、攪拌子91の対向面911aが接触面2Pに押し付けられた状態で回転する。これにより、対向面911aが接触面2Pを摺動するように回転するので、攪拌子91の回転を安定させることができ、攪拌子91により電極表面5aに生じる液体試料の対流を一定にすることができる。
保持面2Qは、攪拌子91の回転軸を電極表面5aに対して略一定として攪拌子91の回転姿勢を保持するものである。この保持面2Qは、測定セル2内部において、接触面2P(突出部22)よりも上側に形成された円筒状をなす面である。この保持面2Qの中心軸は、攪拌子の回転中心軸と略一致する。具体的に保持面2Qは、測定セル2の円筒状をなす内側周面2xにより形成されている。この保持面2Qは、攪拌子91の本体部911の外側周面911mの略全体に若干の間隙を介して対向して形成されている。なお、本体部911の外側周面911mと保持面2Qとの間隙は、攪拌子91の回転を確保できる程度において出来るだけ小さいことが望ましく、例えば0.5mm程度である。この保持面2Qにより、攪拌子91が回転開始時又は回転途中に上下反転することを防ぎ、攪拌子91の回転軸の振動を抑え、又は回転軸の振動の振幅を小さくすることができ、攪拌子91の回転姿勢を略一定に保持することができる。したがって、攪拌子91の回転を安定させることができ、攪拌子91により電極表面5aに生じる液体試料の対流を略一定にすることができる。
なお、本実施形態では、本体部911の外側周面911mと羽根部912の外側面912mとが同一面であり、保持面2Qは羽根部912の外側面912mにも対向するように構成されている(図10参照)。これにより、攪拌子91が回転するときに、羽根部912の外側面912mも保持面2Q(測定セル2の内側周面2x)に沿って回転するため、攪拌子91の回転姿勢を略一定に保持することができる。
<カドミウム分析方法>
次に電気化学的分析装置100を用いてストリッピング法によりカドミウムを分析する方法について説明する。
1.抽出液調製工程
以下、生物由来の試料として米を用いた場合を例に挙げて説明する。まず、米を粉砕して米粉を得る。次いで、得られた米粉を過塩素酸に溶解して、有機物を分解しつつカドミウムを抽出する。得られた抽出液に対して吸引濾過を施すことにより、残渣を除去する。更に、吸引濾過後の抽出液にフタル酸水素カリウムと水酸化ナトリウムとを添加しpHを4.0付近に調整して、カドミウム測定に供する抽出液とする。
なお、米の抽出液中では、カドミウムは銅と複合体を形成していることが多い。カドミウムが銅と複合体を形成している場合、溶出工程時にカドミウムと銅との複合体に起因する電流ピークに加え、カドミウム単体に起因する電流ピークも観察される場合があるが、分析を容易にするためにはカドミウムに起因する電流ピークは1種類のみが検出されるほうが好ましい。また、カドミウム単体とカドミウムと銅との複合体とでは電気化学的分析における検出感度が異なる。従って、検出感度を揃え、分析結果の検討を容易にするために、カドミウムを銅との複合体として検出するには、米の抽出液中の銅濃度が基準濃度(例えば、予想最高濃度である4ppm)に満たない場合は、不足分の銅を抽出液に添加し銅を補うようにしてもよく、また、予想されるカドミウム濃度の3〜10倍程度の濃度となるように大過剰の銅を添加(例えば、カドミウム濃度が50ppbである場合、200〜400ppbの濃度となるように銅を添加)して、カドミウムを銅との複合体として検出されるようにしてもよい。なお、前記抽出液に銅を添加するにあたってはCuCl等の銅化合物を用いることができる。当該銅化合物は単独で抽出液に添加してよいが、過塩素酸とともに添加したり、フタル酸水素カリウムとともに添加したりしてもよい。
2.電極トリートメント工程
電源ON/OFFボタンをユーザが操作することによって、演算制御装置8が電気化学的分析装置100の主電源をONにする。その後、ユーザが電極トリートメントボタンを押下することによって、演算制御装置8は、測定装置内、具体的には測定セル2の電極トリートメント処理制御を行う。この電極トリートメント工程は、まず、液置換機構11の供給ライン13を用いて、カドミウムの抽出に用いた液、例えば過塩素酸、フタル酸水素カリウム及び水酸化ナトリウムの濃度並びにpHが抽出液と同じであるフタル酸緩衝液を測定セル2内に供給するとともに磁気撹拌機構9により供給されたフタル酸緩衝液を撹拌しながら、導電性ダイヤモンド電極5に正の電圧を所定時間印加(例えば、+3.5Vの電圧を60秒間印加)して、導電性ダイヤモンド電極5に付着した有機物や重金属を除去する電極洗浄処理を行う。次いで、導電性ダイヤモンド電極5に負の電圧を所定時間印加(例えば、−3.5Vの電圧を5秒間印加)して、導電性ダイヤモンド電極5表面の水素終端化処理を行う。そして、液置換機構11の排出ライン12からそのフタル酸緩衝液を排出することによって電極トリートメント工程を終了する。
3.抽出液注入工程
前記電極トリートメント工程の終了後、ユーザがケーシングCの上部に設けられた試料導入部21の開閉蓋を開放位置に移動させて、試料導入部21から抽出液を注入する。その後、ユーザが測定開始ボタンを押下すると、演算制御装置8は測定開始信号を受け付けてカドミウム測定を開始する。なお、このとき、対電極3、導電性ダイヤモンド電極5及び参照電極4が抽出液に接触したか否かを検出する液センサ(図示しない。)により検出信号を取得して、演算制御装置8は電極群3〜5が抽出液に接触しているか否かを判断する。接触していると判断すれば以下の測定動作に移行し、接触していない場合には、エラー表示等の報知を行う。
4.電着工程
そして演算制御装置8は、ポテンシオスタットPSに電着開始信号を出力する。そうすると、ポテンシオスタットPSは、導電性ダイヤモンド電極5の電位を負電位の方向に変動させて、当該導電性ダイヤモンド電極5の電位をカドミウムの還元電位よりも低い電位(例えば−1.0V)として、カドミウムを導電性ダイヤモンド電極5の表面5aに電着させる。なお、カドミウムが銅と複合体を形成している場合は、カドミウムと銅との複合体を導電性ダイヤモンド電極5の表面5aに電着させればよい。この場合、電着電位を−0.8V程度としてもよい。この電着工程は、導電性ダイヤモンド電極5の電位を前記還元電位よりも低い電位とした状態を所定時間(例えば10分)保った後に終了する。
5.液置換工程
前記電着工程後、ポテンシオスタットPSは導電性ダイヤモンド電極5の電位を前記還元電位よりも低い電位の状態で一定に保つ。この状態で演算制御装置8は、液置換機構11を制御することによって測定セル2内の抽出液をフタル酸緩衝液に複数回に分けて置換する。本実施形態では、測定セル2に収容された抽出液を排出ライン12により半分排出したのちに、供給ライン13により排出量に相当する量のフタル酸緩衝液を供給する。この動作を複数回(例えば4回程度)行うことで抽出液をフタル酸緩衝液に置換する。このように、液置換工程において、導電性ダイヤモンド電極5の電位を前記還元電位よりも低い電位の状態で一定に保っていることにより、電極5に電着されたカドミウムが液置換工程で溶出することを防止している。なお、抽出液の排出量及びフタル酸緩衝液の供給量はそれぞれ、排出時間及び供給時間に基づいて規定しても良い。
6.溶出工程(電流検出工程)
前記液置換工程により測定セル2内をフタル酸緩衝液に置換した後、演算制御装置8は、ポテンシオスタットPSに溶出開始信号を出力する。そうすると、ポテンシオスタットPSは、導電性ダイヤモンド電極5の電位を正電位方向、具体的にはカドミウムの還元電位よりも高い電位(例えば+1.0V)まで掃引して、カドミウムと銅との複合体をフタル酸緩衝液中に溶出させる。
カドミウムと銅との複合体が溶出すると、これに伴い導電性ダイヤモンド電極5と対電極3との間に電流が発生する。カドミウムと銅との複合体に起因する電流は、本反応系では+0.35V付近で発生し、この電流(電気信号)はポテンシオスタットPSに伝達され各電極における信号の制御・検出が行われる。ここで、ポテンシオスタットPSで検出された信号は演算制御装置8に送信される。そして、液置換機構11の排出ライン12からフタル酸緩衝液を排出することによって溶出工程を終了する。
当該溶出工程により得られたボルタモグラフの一例を図11に示す。図11に示すボルタモグラフ中、−0.35V付近に見られる電流ピークがカドミウムと銅との複合体に由来するものであり、0.25V付近に見られる電流ピークは銅単体に由来するものである。また、図11に示すボルタモグラフでは、カドミウムの濃度が高くなるに連れて電流ピークも高くなっていることが分かる。
一方、抽出液調製時に使用する酸として塩酸を使用した場合に得られたボルタモグラフの一例を図12に示す。抽出液調製時に塩酸を使用した場合は、分解されなかった残留有機物が妨害因子となり、また、カドミウムが塩酸と錯体を形成するため、図12に示すように、カドミウムに由来する電流ピーク(−0.6V付近)が不明瞭で感度良く検出することができなかった。
7.関係線作成工程
本実施形態では、標準添加法を用いてカドミウム濃度を分析するため、上記の電着工程〜溶出工程に供した抽出液に、更に濃度既知のカドミウム標準試料を所定濃度(例えば50ppb)となるように添加した試料を用いて、上記と同様に電着工程〜溶出工程を行い、カドミウム濃度と電流値又は電荷量との関係線を作成する。
8.カドミウム濃度算出工程
演算制御装置8は、作成されたカドミウムの濃度と電流値又は電荷量との関係線と、得られた電流値又は電荷量とを対比して、抽出液のカドミウム濃度を算出する。この際、予めフタル酸緩衝液のみを用いて測定されたベース電流値又はベース電荷量を、実測値である電流値又は電荷量から差し引いた差分電流値又は差分電荷量を用いてカドミウム濃度を算出することによって、より高精度にカドミウム濃度を算出することが可能となる。このように算出されたカドミウム濃度は、ケーシングCの前面に設けられた表示部801に表示される。
9.後電解工程
電位の掃引が終わった後、しばらくの間、導電性ダイヤモンド電極5の電位を+1.0Vで保持することにより、電着したカドミウムや銅を完全に溶出させ、導電性ダイヤモンド電極5を測定前の状態に戻して再生することができる。このように導電性ダイヤモンド電極5を再生することにより、同じ電極を繰り返し使用することが可能となる。なお、導電性ダイヤモンド電極5の再生は、一定電位の保持のみだけでなく、広い電位で繰り返し掃引を行うことによっても可能である。
10.廃液工程
前記後電解工程の後、演算制御装置8は、液置換機構11の排出ライン12の排出ポンプ122を制御することにより、測定セル2内の測定後溶液を廃液タンクT2に排出する。この廃液工程終了後、測定セルの洗浄を行い電源をOFFにする。
<本実施形態の効果>
このように構成した本実施形態に係る電気化学測定装置100によれば、作用電極5の電極表面5aと攪拌子91の対向面911aとを離間させる接触面2Pを有しているので、攪拌子91を作用電極5に接触させないように構成することができ、作用電極5が攪拌子91によって傷つくことが無く、作用電極5の電極表面5aに形成される電気二重層が乱れることも無い。これにより、電気化学測定の安定性を向上させることができる。
また、攪拌子91の回転姿勢を保持するための保持面2Qを有しているので、攪拌子91が回転途中に姿勢を崩して作用電極5に接触する又は回転不能になる等の回転障害が生じる心配が無く、攪拌子91の回転スピードや回転位置を安定させることができ、攪拌子91の回転を安定させることができる。このように攪拌子91の回転を安定させることにより、作用電極5の電極表面5aにおける液体試料の対流を略一定にすることができ、電気化学測定の安定性を向上させることができる。
その上、本実施形態のカドミウム分析方法によれば、過塩素酸を用いて米等の生物由来試料からカドミウムを抽出することにより、カドミウムの錯体を形成せずに生物由来試料に含まれる有機物を分解することができるので、カドミウムの検出や、その濃度の測定を精度良く行うことができる。
また、本実施形態では、緩衝剤としてフタル酸水素カリウムを用いることにより、カドミウムを測定する際の阻害因子となる鉛、セレン、クロム、ホウ素等の金属がカルボキシル基で包み込まれ、この結果、カドミウムへの干渉が防止されると推測される。
更に、本実施形態では、電極洗浄処理と水素終端化処理とを含む電極トリートメント工程を行うことにより、作用電極に付着している有機物や重金属を予め除去した後、導電性ダイヤモンド電極の表面を整えることにより、分析精度を更に高めることができる。特に本実施形態ではフタル酸緩衝液中で電極洗浄処理を行っているので、コルビ反応によりCOラジカルが生成し、これが有機物の分解・除去に有効に働いていると思われる。
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
例えば、攪拌子において、円筒状をなす本体部の内部に、羽根部を形成したものであっても良い。この場合、挿入用貫通孔91Hの開口サイズが小さくなってしまう恐れがあるが、攪拌子91の軸方向寸法を小さくすることができる。
また、前記実施形態の保持面2Qは、測定セル2の内側周面2xにより形成されているが、図13に示すように、測定セル2の内側周面2x及び攪拌子91の外側周面911mの間に設けられ、その内側周面10xが保持面2Qとなるスペーサ部材10を設けても良い。このスペーサ部材10は、軸方向に直交する断面が等断面形状の円筒状をなすものである。なお、このスペーサ部材10の内側周面10xから径方向内側に突出する環状の突出部を形成することで、接触面2Pを有するものとしても良い。
更に、前記実施形態では、攪拌子91が挿入用貫通孔91Hを有するものであったが、挿入用貫通孔91Hを有さないものであっても良い。この場合、対電極3及び参照電極4を、攪拌子91の上部から作用電極5側に挿入することはできないが、例えば、接触面2P(突出部22)と作用電極5との距離を前記実施形態よりも大きくして、突出部22と作用電極5との間の側壁から収容空間2S内に対電極3及び参照電極4を挿入し、対電極3及び参照電極4を作用電極5の電極表面5aの近傍に位置させるように構成しても良い。
その上、前記実施形態の保持面2Qは、攪拌子91の回転中心軸Cを囲むように形成された円筒状をなす面であったが、図14に示すように、前記接触面2Pに対向するように形成され、前記接触面2Pとの間で、攪拌子91を回転可能に挟むように構成されたものであっても良い。この保持面2Qとしては、例えば攪拌子91の上面に接触する円環状をなす平面とすることが考えられる。この保持面2Qは、前記接触面2Pと同様に、測定セル2の内側周面2xから径方向内側に突出して形成された環状の突出部23の下面により形成される。なお、図14では、棒状の攪拌子91を用いた場合を示しているが、前記実施形態のように、挿入用貫通孔91Hを有するものであっても良い。
加えて、前記実施形態では、作用電極5、対電極3及び参照電極4が備わった三電極法による測定を行うものであるが、作用電極5及び対電極3のみを備えた二電極法によるものであってもよい。三電極法の方が、作用電極5と対電極3との間に印加する電圧の絶対値を制御することができるので、精度及び感度の高い測定を行うことが可能であるが、二電極法によれば、用いる電極が作用電極5及び対電極3の二電極ですむので、測定セル2の構造を単純化、小型化することができる。
前記実施形態のカドミウム分析方法において、カドミウム濃度算出のための関係線の作成方法としては、標準添加法に限られず、抽出液中の銅濃度が低い場合は、検量線法を用いてカドミウム濃度と電流値又は電荷量との関係線を予め作成してもよい。
更に加えて、前記実施形態の電気化学測定装置は、液体試料に含まれるCu、As、Cd、Zn等の重金属イオンのうちいずれか1つ又は複数の成分を測定するものに適用しても良い。
前記実施形態のカドミウム分析方法において、液置換工程を行うことでよりノイズの少ない信号を得ることができるが、液置換工程を行わなくてもカドミウムなどの重金属イオンを測定することができる。
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
100・・・電気化学測定装置
2・・・測定セル
2P・・・接触面
2Q・・・保持面
2x・・・内側周面
3・・・対電極
4・・・参照電極
5・・・作用電極
91・・・攪拌子
911a・・・対向面
91b・・・外側周面
91H・・・挿入用貫通孔
911・・・本体部
912・・・羽根部

Claims (13)

  1. 生物由来の試料に含まれるカドミウムを、対極及び作用電極を用いて電気化学的に分析する方法であって、
    生物由来の試料に対し、酸化性を有しカドミウムと錯体を形成しない酸を添加して、前記生物由来の試料からカドミウムを抽出する抽出工程を備えていることを特徴とする電気化学的分析方法。
  2. 前記抽出工程で得られた抽出液のpHを3〜7に調整するpH調整工程を備えている請求項1記載の電気化学的分析方法。
  3. 前記酸が過塩素酸である請求項1又は2記載の電気化学的分析方法。
  4. 前記pH調整工程では前記抽出液に有機酸及び/又はその塩からなる緩衝剤を添加する請求項2又は3記載の電気化学的分析方法。
  5. 前記生物由来の試料に銅を添加する銅添加工程を備えている請求項1、2、3又は4記載の電気化学的分析方法。
  6. pH調整後の前記抽出液と酸及び緩衝剤の組成並びにpHが同じである溶液に接触させた状態で、前記作用電極に正の電圧を印加する電極洗浄工程を備えている請求項2、3、4又は5記載の電気化学的分析方法。
  7. 前記作用電極が導電性ダイヤモンド電極であり、
    前記電極洗浄工程の後で、前記導電性ダイヤモンド電極に負の電圧を印加して電極表面を水素終端化する水素終端化工程を備えている請求項6記載の電気化学的分析方法。
  8. 生物由来の試料に含まれるカドミウムを電気化学的に分析するための装置であって、
    生物由来の試料に対し、酸化性を有しカドミウムと錯体を形成しない酸を添加して、前記生物由来の試料からカドミウムを抽出する抽出手段と、
    得られた抽出液のpHを3〜7に調整するpH調整手段と、
    対電極と作用電極とを内蔵し、前記抽出液を収容するためのセルと、
    前記作用電極と前記対電極との間に、前記作用電極にカドミウム又はその複合体が電着する電圧を印加し、次いで、前記作用電極に電着したカドミウム又はその複合体が溶出する電圧を印加する印加手段と、
    前記作用電極と前記対電極との間に生じた電流を検出する検出手段と、を備えていることを特徴とする電気化学的分析装置。
  9. 前記生物由来の試料に銅を添加する銅添加手段を備えている請求項8記載の電気化学的分析装置。
  10. 前記作用電極が、導電性ダイヤモンド電極である請求項8又は9記載の電気化学的分析装置。
  11. 生物由来の試料に含まれるカドミウムを、対極及び作用電極を用いて電気化学的に分析する際に、当該生物由来の試料からカドミウムを抽出し、かつ、得られた抽出液を供試用に調整するための試薬セットであって、
    酸化性を有しカドミウムと錯体を形成しない酸と、有機酸及び/又はその塩からなる緩衝剤と、銅化合物と、を含むことを特徴とする試薬セット。
  12. 前記酸化性を有しカドミウムと錯体を形成しない酸が、過塩素酸である請求項11記載の試薬セット。
  13. 前記有機酸が、フタル酸又は酢酸である請求項11又は12記載の試薬セット。
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