JP2014125678A - 極低温靱性に優れた厚鋼板 - Google Patents

極低温靱性に優れた厚鋼板 Download PDF

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Abstract

【課題】Ni含有量が5.0〜7.5%程度のNi鋼において−196℃以下での極低温靱性(特にC方向の極低温靱性)に優れており、−196℃での脆性破面率≦10%を実現できる、830MPa超の高強度厚鋼板を提供する。
【解決手段】本発明の厚鋼板は、所定の鋼中成分を含み、鋼中成分で構成されるDi値が5.0超であり、−196℃において存在する残留オーステナイト相(残留γ)が体積分率にて2.0〜5.0%であり、残留オーステナイト中に含まれるMn濃度が1.05%以上であり、且つ、鋼中のMnおよびNiが所定の式を満足するものである。
【選択図】なし

Description

本発明は、極低温靱性に優れた厚鋼板に関する。詳細には、本発明は、Ni含有量が5.0〜7.5%程度に低減されても、−196℃以下の極低温下における靱性[特に、板幅方向(C方向)の靱性]が良好な厚鋼板に関するものである。以下では、上記の極低温下に曝される液化天然ガス(LNG)向けの厚鋼板(代表的には、貯蔵タンク、輸送船など)を中心に説明するが、本発明の厚鋼板はこれに限定する趣旨ではなく、−196℃以下の極低温下に曝される用途に用いられる厚鋼板全般に適用される。
液化天然ガス(LNG)の貯蔵タンクに用いられるLNGタンク用厚鋼板は、高い強度に加え、−196℃の極低温に耐えられる高い靱性が求められる。一般に、鋼材はNi添加により、特に低温での硬度−靱性バランスが向上することが知られている。そこで、これまで、上記用途に用いられる厚鋼板としては、9%程度のNi(9%Ni鋼)を含む厚鋼板が使用されてきた。しかし、近年、Niのコストが上昇しているため、9%未満の、少ないNi含有量であっても、極低温靱性に優れた厚鋼板の開発が進められている。
例えば非特許文献1には、6%Ni鋼の低温靱性に及ぼすα−γ2相共存域熱処理の影響について記載されている。詳細には、焼戻処理の前に、α−γ2相共存域(Ac1〜Ac3間)での熱処理(L処理)を加えることにより、多量の微細かつ極低温での衝撃荷重に対しても安定な残留オーステナイトが生成し、通常の焼入れ焼戻処理を受けた9%Ni鋼と同等以上の−196℃での極低温靱性を確保できることなどが記載されている。しかしながら、圧延方向(L方向)の極低温靱性は優れているものの、一般に板幅方向(C方向)の極低温靱性は、L方向に比べて劣る傾向にある。また、脆性破面率の記載はない。
上記非特許文献1と同様の技術が、特許文献1および特許文献2に記載されている。これらのうち、特許文献1には、Niを4.0〜10%含有し、オーステナイト粒度などが所定範囲に制御された鋼を熱間圧延してからAc1〜Ac3間に加熱し、次いで冷却する処理(上記非特許文献1に記載のL処理に相当)を1回または2回以上繰り返した後、Ac1変態点以下の温度で焼戻す方法が記載されている。また、特許文献2には、Niを4.0〜10%含有し、熱間圧延前のAlNの大きさを1μm以下にした鋼に対し、上記特許文献1と同様の熱処理(L処理→焼戻処理)を行なう方法が記載されている。これらの文献に記載の−196℃での衝撃値(vE−196)は、おそらく、L方向のものと推察され、C方向の上記靱性値は不明である。また、これらの方法では強度について考慮されておらず、脆性破面率の記載はない。
また、非特許文献2には、上記のL処理(二相域焼入れ処理)とTMCPを組合わせたLNGタンク用6%Ni鋼の開発について記載されている。この文献によれば、圧延方向(L方向)の靱性が高い値を示すことは記載されているものの、板幅方向(C方向)の靱性値は記載されていない。
一方、特許文献3には、5.0%超8.0%未満のNi鋼において、常温での降伏強度が590MPa以上である鋼鈑を前提にし、使用環境下でも9%Ni鋼並みの耐破壊安全性に優れたNi低減型の低温用厚鋼板およびその製造方法について記載されている。特許文献3では、使用温度である低温環境下での降伏点を確実に高めることができれば、破壊安全性を向上させること(すなわち、低温環境下で高い靱性を得ることができる)との知見に基づき、加熱工程では、鋼塊を低温且つ短時間で加熱すると共に、圧延工程では、加熱した鋼塊に対する粗圧延につき、粗圧延終了時の鋼塊厚さが成品厚さ(仕上げ圧延後の厚鋼板厚さ)の3〜8倍になるまで圧下している。また、実施例では、スラブ厚300mmから仕上げ厚50mm以下まで(殆どは仕上げ厚50mm未満まで)圧延しており、このように比較的高い圧下率を確保することにより、残留γ分率と微細な母相組織を兼備し、9%Ni鋼並みの低温靱性を実現している。しかしながら、特許文献3の厚鋼板の常温でのTSは、最大でも741MPaである。
また、特許文献3では、C方向の吸収エネルギーについて記載されているが、脆性破面率の記載はない。また、特許文献3における常温でのTSは最大でも741MPa程度である。
特開昭49−135813号公報 特開昭51−13308号公報 特開2011−241419号公報
矢野ら,「6%Ni鋼の低温靱性に及ぼすα−γ2相共存域熱処理の影響」,鉄と鋼,第59年(1973)第6号,p752〜763 古谷ら,「LNGタンク用6%Ni鋼の開発」,CAMP−ISIJ,Vol.23(2010),p1322
上述したように、これまで、Ni含有量が5.0〜7.5%程度のNi鋼において−196℃での極低温靱性に優れた技術は提案されているものの、C方向での極低温靱性は、十分に検討されていない。また、高強度化できれば設計上の余裕を大きくすることができるなどの点で有用であるが、高強度且つ極低温靱性に優れた技術は提供されていない。
また、上述した文献には、脆性破面率について検討されたものはない。脆性破面率は、シャルピー衝撃試験において荷重が加わった際に生じる脆性破壊の割合を示したものである。脆性破壊が発生した部位では、破壊に至るまでに鋼材に吸収されるエネルギーが著しく小さくなり、容易に破壊が進行するようになるため、極低温靱性向上技術においては、汎用のシャルピー衝撃値(vE−196)の向上のみならず、脆性破面率を10%以下とすることも極めて重要な要件となっている。しかしながら、上記のように母材強度が高い高強度厚鋼板において、脆性破面率の上記要件を満足する技術は、未だ提案されていない。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、Ni含有量が5.0〜7.5%程度のNi鋼において−196℃での極低温靱性(特にC方向の極低温靱性)に優れており、脆性破面率≦10%を実現できる高強度厚鋼板、およびその製造方法を提供することにある。
上記課題を解決し得た本発明に係る極低温靱性に優れた厚鋼板は、質量%で、C:0.02〜0.10%、Si:0.40%以下(0%を含まない)、Mn:0.6〜2.0%、P:0.007%以下(0%を含まない)、S:0.007%以下(0%を含まない)、Al:0.005〜0.050%、Ni:5.0〜7.5%、Mo:0.30〜1.0%、Cr:1.20%以下(0%を含まない)、N:0.010%以下(0%を含まない)を含有し、残部が鉄および不可避不純物である厚鋼板であって、鋼中成分で構成される下記(1)式に基づいて決定されるDi値が5.0超であり、
Di=([C]/10)0.5×(1+0.7×[Si])×(1+3.33×[Mn])×(1+0.35×[Cu])×(1+0.36×[Ni])×(1+2.16×[Cr])×(1+3×[Mo])×(1+1.75×[V])×1.115・・・(1)
式中、[ ]は、鋼中の各成分の含有量(質量%)を意味する、
−196℃において存在する残留オーステナイト相(残留γ)が体積分率にて2.0〜5.0%であり、
−196℃において存在する残留オーステナイト相(残留γ)中のMn濃度が1.05%以上であり、且つ
鋼中のMnおよびNiの含有量(質量%)が、下記(2)式を満たすところに要旨を有するものである。
[Mn]≧0.31×(7.20−[Ni])+0.50・・・(2)
式中、[ ]は鋼中の各成分の含有量(質量%)を意味する。
本発明の好ましい実施形態において、上記鋼板は、更に、Cu:1.0%以下(0%を含まない)を含有する。
本発明の好ましい実施形態において、上記鋼板は、更に、Ti:0.025%以下(0%を含まない)、Nb:0.100%以下(0%を含まない)、およびV:0.50%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される少なくとも一種を含有する。
本発明の好ましい実施形態において、上記鋼板は、更に、B:0.0050%以下(0%を含まない)を含有する。
本発明の好ましい実施形態において、上記鋼板は、更に、Ca:0.0030%以下(0%を含まない)、およびREM:0.0050%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される少なくとも一種を含有する。
本発明の好ましい実施形態において、上記鋼鈑は、更にZr:0.005%以下(0%を含まない)を含有する。
また、上記課題を解決し得た本発明に係る厚鋼板の製造方法は、上記のいずれかに記載の鋼中成分を満足すると共に、α−γ2相共存域(Ac1〜Ac3間)での熱処理(L処理)における温度(L処理温度)と、鋼中のAc1およびAc3とで構成される下記(3)式に基づいて算出されるLパラメータが0.6以上、1.1以下であり、且つ、前記Lパラメータと、鋼中成分とで構成される下記(4)式に基づいて算出されるλパラメータが0以下であることを満足するように、L処理温度および鋼中成分を調整するところに特徴がある。
Lパラメータ=(L処理温度−Ac1)/(Ac3−Ac1)+0.25 ・・・(3)
λパラメータ=9.05×(0.90×[Lパラメータ]+0.14)×[Mn]+1.46×(0.37×[Lパラメータ]+0.67)×[Cr]−41.5×(0.26×[Lパラメータ]+0.79)×[Mo] ・・・(4)
式中、[ ]は、鋼中の各成分の含有量(質量%)を意味する。
本発明によれば、Ni含有量が5.0〜7.5%程度のNi鋼において、母材強度が高くても(詳細には、引張り強度TS>830MPa、降伏強度YS>690MPa)、−196℃以下での極低温靱性(特にC方向の極低温靱性)に優れており、−196℃での脆性破面率≦10%(好ましくは、−233℃での脆性破面率≦50%)を満足する高強度厚鋼板を提供することができた。
本発明者らは、Ni含有量が7.5%以下であって、C方向のシャルピー衝撃吸収試験を実施したとき、−196℃での脆性破面率10%以下、引張り強度TS>830MPa、降伏強度YS>690MPaを満足する厚鋼板を提供するため、検討を行なった。
特に本発明では、以下の点に留意して、検討を行なった。
まず、製造方法に関し、本発明では、特許文献1および3のように、圧延およびT処理後の冷却などの管理を厳格化しなくても、9%Ni鋼と同等以上の極低温靱性を達成することを前提とした。具体的には、特許文献3ほどの圧下率を確保できない場合を考えて成分設計を行い、圧延については、830℃以上の圧下率をおおよそ50%以下程度、700℃以上の圧下率をおおよそ85%以下程度に抑えると共に、熱間圧延後の焼戻処理(T処理)後の水冷はしない(すなわち、T処理後、空冷を行なう)ことを前提とした。なお、圧下率(%)は、100×(圧延前の厚さ−圧延後の厚さ)/(圧延前の厚さ)で算出した。
また、極低温靱性は、L方向よりも靱性確保が難しい傾向にあるC方向の評価を採用し、且つ、靱性保証の観点から、吸収エネルギーでなく脆性破面率での評価を行なうことにした。また、引張り強度(TS)について、極低温用圧力容器の設計においては、安全性を考慮すると、規格範囲内であればTSは高いほうが良いとの観点から、本発明ではTS>830MPaを前提にした。
具体的には、上記の製造条件を前提にして、C方向のシャルピー衝撃吸収試験において、−196℃での脆性破面率≦10%、引張り強度TS>830MPa、降伏強度YS>690MPaを満足する厚鋼板を提供するため、検討を重ねてきた。
その結果、極低温での高い強度−靱性バランスを実現するためには、(ア)−196℃において存在する残留オーステナイト(以下、単に残留γと略記する場合がある。)を所定量確保すると共に、(イ)残留γの安定性を高めて安定な残留γを確保することが不可欠であるとの知見に到達した。上記(イ)に記載の「安定な残留γ」とは、シャルピー衝撃吸収試験中に、残留γ(面心立方格子fcc)がマルテンサイト(体心立方格子bcc)に変態せずに残存するものであって、極低温域でも塑性変形し易い残留γを意味する。或いは、上記「安定な残留γ」には、シャルピー衝撃吸収試験中に、たとえ、残留γの一部がマルテンサイトに変態してオーステナイトとマルテンサイトの混合組織(MAと呼ばれるものであり、以下、「MA」と記載する。)が生成しても、MAのサイズを小さく制御できるために脆性破壊の起点とならないものを意味する。
すなわち、本発明のようにNi量を7.5%以下に低減した鋼では、一般に焼入れ性が低下するため、圧延後の組織が粗大になり、その結果、熱処理後の強度が低下し、極低温靱性向上に有用な残留γが確保できなくなる。更に、衝撃変形中に、極低温靱性に有害なMAが形成された場合、MAを、脆性破壊の起点とならないレベルにまで微細化することが困難になる(すなわち、安定な残留γが得られない)。このような問題を解決するため、本発明では、以下に説明するように、Di値、残留γ中のMn濃度、および下記(2)式で表される鋼中のMn−Niのバランスを適切に制御することにした。
詳細には、上記(ア)について、本発明では、残留γの体積分率を2.0〜5.0%の範囲内に制御した。これにより、衝撃試験前に所定量の残留γ分率を確保することができる。残留γを上記範囲に制御するためには、下記(1)式で表わされるDi値を5.0超に制御すると共に、鋼中成分の制御に加えて、α−γ2相共存域(Ac1〜Ac3間)での熱処理(L処理)における温度(L処理温度)をLパラメータ[下記(3)式を参照]の範囲となるように制御、更には上記LパラメータとMnなどの量から決定されるλパラメータ[下記(4)式を参照]の制御が有効であることを見出した(後記する実施例を参照)。
また、上記(イ)については、特に、下記(1)式で表わされるDi値を5.0超に制御すると共に、−196℃において存在する残留γ中のMn濃度を1.05%以上に制御した。このうち、Di値は、鋼中成分を適切に制御することによって制御される。また、残留γ中のMn濃度は、残留γの体積分率の制御と同様、鋼中成分、Lパラメータ、およびλパラメータを制御することが有効であることを見出した(後記する実施例を参照)。更に残留γ中のMn濃度に加えて下記(2)式で表わされる鋼中のNi−Mnバランスを制御することも有効であることを見出し、本発明を完成した(後記する実施例を参照)。
すなわち、本発明の厚鋼板は、C:0.02〜0.10%、Si:0.40%以下(0%を含まない)、Mn:0.6〜2.0%、P:0.007%以下(0%を含まない)、S:0.007%以下(0%を含まない)、Al:0.005〜0.050%、Ni:5.0〜7.5%、Mo:0.30〜1.0%、Cr:1.20%以下(0%を含まない)、N:0.010%以下(0%を含まない)を含有し、残部が鉄および不可避不純物である厚鋼板であって、鋼中成分で構成される下記(1)式に基づいて決定されるDi値が5.0超であり、−196℃において存在する残留オーステナイト相(残留γ)が体積分率にて2.0〜5.0%であり、残留オーステナイト相(残留γ)中のMn濃度が1.05%以上であり、且つ、残留オーステナイト中に含まれる成分で構成される下記(2)式を満たすところに特徴がある。
Di値=([C]/10)0.5×(1+0.7×[Si])×(1+3.33×[Mn])×(1+0.35×[Cu])×(1+0.36×[Ni])×(1+2.16×[Cr])×(1+3×[Mo])×(1+1.75×[V])×1.115・・・(1)
式中、[ ]は、鋼中の各成分の含有量(質量%)を意味する、
[Mn]≧0.31×(7.20−[Ni])+0.50・・・(2)
式中、[ ]は、残留オーステナイト中に含まれる各成分の含有量(質量%)を意味する。
1.鋼中成分
まず、鋼中成分について説明する。
C:0.02〜0.10%
Cは、強度および残留オーステナイトの確保に必須の元素である。このような作用を有効に発揮させるため、C量の下限を0.02%以上とする。C量の好ましい下限は0.03%以上であり、より好ましくは0.04%以上である。但し、過剰に添加すると、強度の過大な上昇により極低温靱性が低下するため、その上限を0.10%とする。C量の好ましい上限は0.08%以下であり、より好ましくは0.06%以下である。
Si:0.40%以下(0%を含まない)
Siは、脱酸材として有用な元素である。但し、過剰に添加すると、硬質の島状マルテンサイト相の生成が促進され、極低温靱性が低下するため、その上限を0.40%以下とする。Si量の好ましい上限は0.35%以下であり、より好ましくは0.20%以下である。
Mn:0.6〜2.0%
Mnは、強度の確保と、安定な残留γの確保に有用な元素である。特にMnは、オーステナイト(γ)安定化元素として知られており、極低温での衝撃時に形成される有害なMAの微細化に有効である。このような作用を有効に発揮させるため、Mn量の下限を0.6%とする。Mn量の好ましい下限は0.7%以上である。但し、過剰に添加すると、焼戻脆化をもたらし、所望の極低温靱性を確保できなくなるため、その上限を2.0%以下とする。Mn量の好ましい上限は1.5%以下であり、より好ましくは1.3%以下である。
P:0.007%以下(0%を含まない)
Pは、粒界破壊の原因となる不純物元素であり、所望とする極低温靱性確保のため、その上限を0.007%以下とする。P量の好ましい上限は0.005%以下である。P量は少なければ少ない程良いが、工業的にP量を0%とすることは困難である。
S:0.007%以下(0%を含まない)
Sも、上記Pと同様、粒界破壊の原因となる不純物元素であり、所望とする極低温靱性確保のため、その上限を0.007%以下とする。後記する実施例に示すように、S量が多くなると、脆性破面率は増加し、所望とする極低温靱性(−196℃での脆性破面率≦10%)を実現できない。S量の好ましい上限は0.005%以下である。S量は少なければ少ない程良いが、工業的にS量を0%とすることは困難である。
Al:0.005〜0.050%
Alは脱硫を促進し、窒素を固定する元素である。Alの含有量が不足すると、鋼中の固溶硫黄、固溶窒素などの濃度が上昇し、極低温靱性が低下するため、その下限を0.005%以上とする。Al量の好ましい下限は0.010%以上であり、より好ましくは0.015%以上である。但し、過剰に添加すると、酸化物や窒化物などが粗大化し、やはり極低温靱性が低下するため、その上限を0.050%以下とする。Al量の好ましい上限は0.045%以下であり、より好ましくは0.04%以下である。
Ni:5.0〜7.5%
Niは、極低温靱性の向上に有用な残留オーステナイト(残留γ)を確保するのに必須の元素である。このような作用を有効に発揮させるため、Ni量の下限を5.0%以上とする。Ni量の好ましい下限は5.2%以上であり、より好ましくは5.4%以上である。但し、過剰に添加すると、原料のコスト高を招くため、その上限を7.5%以下とする。Ni量の好ましい上限は7.0%以下であり、より好ましくは6.5%以下、更に好ましくは6.2%以下、更により好ましくは6.0%以下である。
N:0.010%以下(0%を含まない)
Nは、歪時効により極低温靱性を低下させるため、その上限を0.010%以下とする。N量の好ましい上限は0.006%以下であり、より好ましくは0.004%以下である。
Cr:1.20%以下(0%を含まない)
Crは、強度向上元素である。上記作用を有効に発揮させるためには、Cr量を0.05%以上とすることが好ましい。但し、過剰に添加すると、強度の過度な向上を招き、所望とする極低温靱性を確保できなくなるため、Cr量の上限を1.20%以下(好ましくは1.1%以下、更に好ましくは0.9%以下、更により好ましくは0.5%以下)とする。
Mo:0.30〜1.0%
Moは、強度向上および焼き戻し脆性抑制のために有効な元素である。このような作用を有効に発揮させるために、Mo量を0.30%以上とする。但し、過剰に添加すると、強度の過度な向上を招き、所望とする極低温靱性を確保できなくなるため、その上限を1.0%以下とする。Mo量の好ましい上限を0.85%以下(更に好ましくは0.7%以下)とする。
本発明の厚鋼板は上記成分を基本成分として含み、残部:鉄および不可避的不純物である。
本発明では、更なる特性の付与を目的として、以下の選択成分を含有することができる。
Cu:1.0%以下(0%を含まない)
Cuは、Mnと同様、γ安定化元素であり、残留γ量の確保に寄与する元素である。このような作用を有効に発揮させるためには、Cuを0.05%以上含有することが好ましい。但し、過剰に添加すると、強度の過度な向上をもたらし、所望とする極低温靱性効果が得られないため、その上限を1.0%以下とすることが好ましい。Cu量の更に好ましい上限は0.8%以下であり、更により好ましくは0.7%以下である。
Ti:0.025%以下(0%を含まない)、Nb:0.100%以下(0%を含まない)、およびV:0.50%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される少なくとも一種
Ti、Nb、およびVは、いずれも炭窒化物として析出し、強度を上昇させる元素である。これらの元素は単独で添加しても良いし、二種以上を併用しても良い。上記作用を有効に発揮させるためには、Ti量を0.005%以上、Nb量を0.005%以上、V量を0.005%以上とすることが好ましい。但し、過剰に添加すると、強度の過度な向上を招き、所望とする極低温靱性を確保できなくなるため、Ti量の好ましい上限を0.025%以下(より好ましくは0.018%以下であり、更に好ましくは0.015%以下)、Nb量の好ましい上限を0.100%以下(より好ましくは0.05%以下であり、更に好ましくは0.02%以下)、V量の好ましい上限を0.50%以下(より好ましくは0.3%以下であり、更に好ましくは0.2%以下)とする。
B:0.0050%以下(0%を含まない)
Bは、焼入れ性向上により強度向上に寄与する元素である。上記作用を有効に発揮させるためには、B量を0.0005%以上とすることが好ましい。但し、過剰に添加すると、強度の過度な向上をもたらし、所望とする極低温靱性を確保できなくなるため、B量の好ましい上限を0.0050%以下(より好ましくは0.0030%以下、更に好ましくは0.0020%以下)とする。
Ca:0.0030%以下(0%を含まない)、およびREM(希土類元素):0.0050%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される少なくとも一種
Ca、およびREMは、固溶硫黄を固定し、さらに硫化物を無害化する元素である。これらの元素は単独で添加しても良いし、二種以上を併用しても良い。これらの含有量が不足すると、鋼中の固溶硫黄濃度が上昇し、靱性が低下するため、Ca量を0.0005%以上、REM量(以下に記載のREMを、単独で含有するときは単独の含有量であり、二種以上を含有するときは、それらの合計量である。以下、REM量について同じ。)を0.0005%以上とすることが好ましい。但し、過剰に添加すると、硫化物、酸化物や窒化物などが粗大化し、やはり靱性が低下するため、Ca量の好ましい上限を0.0030%以下(より好ましくは0.0025%以下)、REM量の好ましい上限を0.0050%以下(より好ましくは0.0040%以下)とする。
本明細書において、REM(希土類元素)とは、ランタノイド元素(周期表において、原子番号57のLaから原子番号71のLuまでの15元素)に、Sc(スカンジウム)とY(イットリウム)とを加えた元素群であり、これらを単独で、または二種以上を併用することができる。好ましい希土類元素はCe、Laである。REMの添加形態は特に限定されず、CeおよびLaを主として含むミッシュメタル(例えばCe:約70%程度、La:約20〜30%程度)の形態で添加しても良いし、或いは、Ce、Laなどの単体で添加して良い。
Zr:0.005%以下(0%を含まない)
Zrは、窒素を固定する元素である。Zrの含有量が不足すると、鋼中の固溶N濃度が上昇し、靱性が低下するため、Zr量を0.0005%以上とすることが好ましい。但し、過剰に添加すると、酸化物や窒化物などが粗大化し、やはり靱性が低下するため、Zr量の好ましい上限を0.005%以下(より好ましくは0.0040%以下)とする。
以上、本発明の鋼中成分について説明した。
2.残留オーステナイト相(残留γ)の体積分率
更に本発明の厚鋼板は、−196℃において存在する残留γ相が体積分率にて2.0〜5.0%を満足するものである。
詳細には、所望とする極低温靱性を確保するため、−196℃で存在する全組織に占める残留γ相の体積分率を2.0%以上とする。極低温靱性向上の観点からは、残留γ相の体積分率は高い方が良いが、残留γは、マトリクス相に比べて比較的軟質であり、残留γ量が過剰になると、所定のYSおよびTSを確保できなくなる場合があるため、その上限を5.0%とする。残留γ相の体積分率について、好ましい下限は3.5%以上であり、好ましい上限は4.8%以下である。
なお、本発明の厚鋼板では、−196℃で存在する組織のうち、残留γ相の体積分率の制御が重要であって、残留γ以外の他の組織については、何ら限定するものではなく、厚鋼板に通常存在するものであれば良い。残留γ以外の組織としては、例えば、ベイナイト、マルテンサイト、セメンタイト等の炭化物などが挙げられる。
3.Di値について
更に本発明では、鋼中成分で構成される下記(1)式に基づいて決定されるDi値が5.0超を満足するものである。
Di値=([C]/10)0.5×(1+0.7×[Si])×(1+3.33×[Mn])×(1+0.35×[Cu])×(1+0.36×[Ni])×(1+2.16×[Cr])×(1+3×[Mo])×(1+1.75×[V])×1.115 ・・・ (1)
式中、[ ]は、鋼中の各成分の含有量(質量%)を意味する。
焼入れ性Di値に関する上記(1)式は、Grossmannの式(Trans. Metall.Soc. AIME, 150(1942)、227頁)として記載されているものである。Di値を構成する上記合金元素の添加量が多いほど、焼きが入りやすく(Di値が大きくなり)、組織が微細化しやすくなる。また、Di値が大きい程、強度が高くなり、所望の強度を確保しやすくなる。本発明者らの検討結果によれば、Di値と、圧延後の組織サイズとは相関があり、圧延後組織を微細にし、所望とする高い強度を確保するには、Di値を5.0超にすれば良いことが判明した。詳細にはDi値は、未結晶域の圧下率が小さくても微細な圧延組織が得られ、その後の熱処理で極低温靱性向上に有用な残留γの体積分率を十分確保し、安定した残留γを確保するための指針として有用なパラメータである。また、特許文献3に記載の製造条件[低温(未再結晶域)での圧下率低減、冷却開始までの時間制限など]を緩和して、工程負荷を低減しても良好な特性を確保するのに有効なパラメータである。
このような作用を有効に発揮させるため、Di値を5.0超とする。Di値が5.0以下では、圧延後に微細な組織が十分得られず、その後の熱処理工程で十分な強度と残留γ分率の確保を両立できない。
一方、Di値の上限は、上記作用との関係からは特に限定されないが、鋼中成分の各元素量の上限などを考慮すると、好ましい上限は、おおむね、10以下である。
4.残留γ中のMn濃度について
更に本発明の厚鋼板は、−196℃において存在する残留γ中のMn濃度が1.05%以上を満足するものである。これにより、残留γの安定性が高められ、極低温下における優れた強度−靱性バランスが達成される。
−196℃において存在する残留γ中の好ましいMn濃度は1.40%以上であり、より好ましくは1.75%以上である。なお、残留γ中の好ましいMn濃度の上限については、上記作用との関係からは特に限定されないが、鋼中Mn量の範囲などを考慮すると、おおむね、2.50%以下であることが好ましい。
5.[Mn]≧0.31×(7.20−[Ni])+0.50・・・(2)
更に、本発明の厚鋼板は上記(2)式を満足するものである。これにより、残留γの安定性が一層高められるようになる。以下では、上記(2)式の要件を、「鋼中のNi−Mnバランス」または単に「Ni−Mnバランス」と呼ぶ場合がある。
上記(2)式に到達した経緯の概略は以下のとおりである。本発明者らは、Ni量を7.5%以下に低減しながら、極低温での高い強度−靱性バランスを確保するためには、鋼中成分のうち、γ安定化元素であるMnの活用が重要であること;更には、Mnと、鋼中成分のうち含有量が比較的多いNiとのバランスが重要であるとの観点に立ち、残留γの安定性を高めるための鋼中設計指針を検討した。具体的には、Ni低減に伴う焼入れ性の影響、L処理時の合金成分の濃縮、衝撃時に形成されるMAサイズの微細化などの観点から、前述したDi値やMs点(マルテンサイト生成開始温度)を含めて鋭意検討した。その結果、衝撃時に形成されるMAサイズは、圧延まま組織サイズと相関があり、鋼中のNiおよびMn量と相関することを見出した。上記知見に基づき、更に検討を行なった結果、所望とする極低温での強度−靱性バランスを確保することができる鋼中のNi−Mnバランスとして、上記(2)式を特定した。
このような本発明の厚鋼板によれば、−196℃での脆性破面率を10%以下に制御することができる。更に、後記する実施例2で実証したように、(i)残留γの体積分率、(ii)残留γ中のMn濃度、および(iii)λパラメータ(λパラメータの詳細は後述する)の少なくともいずれか一つを、より適切な範囲に制御することにより、上述した−196℃より更に低温の−233℃においても、脆性破面率を50%以下の良好な水準に保つことができる。具体的には、(i)残留γ分率をおおむね、3.5〜4.8%、(ii)残留γ中のMn濃度を、おおむね、1.40〜2.5%、(iii)λパラメータを、おおむね、−10以下の範囲内に制御することにより、−233℃での靱性も向上させることができる。更に、上記(i)〜(iii)の少なくとも2つ以上および/または(i)残留γ中のMn濃度を1.75〜2.50%と制御すると、−233℃での靱性を一層高めることができる。
以上、本発明の厚鋼板について説明した。
次に、本発明の厚鋼板を製造する方法について説明する。本発明の製造方法は、上記のいずれかに記載の鋼中成分を満足すると共に、α−γ2相共存域(Ac1〜Ac3間)での熱処理(L処理)における温度(L処理温度)と、鋼中のAc1およびAc3とで構成される下記(3)式に基づいて算出されるLパラメータが0.6以上、1.1以下であり、且つ、前記Lパラメータと、鋼中成分とで構成される下記(4)式に基づいて算出されるλパラメータが0以下であることを満足するように、L処理温度および鋼中成分を調整する工程と、L処理の後、室温まで水冷し、焼戻処理(T処理)するに当たり、Ac1以下の温度で10〜60分間行なう工程と、を行なうところに特徴がある。
Lパラメータ=(L処理温度−Ac1)/(Ac3−Ac1)+0.25 ・・・(3)
λパラメータ=9.05×(0.90×[Lパラメータ]+0.14)×[Mn]+1.46×(0.37×[Lパラメータ]+0.67)×[Cr]−41.5×(0.26×[Lパラメータ]+0.79)×[Mo] ・・・(4)
式中、[ ]は、鋼中の各成分の含有量(質量%)を意味する。
以下、各工程について詳述する。
本発明の製造方法は、圧延工程およびその後の焼戻処理(T処理)を適切に制御して上記要件を満足する厚鋼板を製造するものであり、製鋼工程は特に限定されず、通常、用いられる方法を採用することができる。
以下、本発明を特徴付ける圧延工程以降の工程について、順次、詳しく説明する。
まず、加熱温度は約900〜1100℃、FRT(仕上げ圧延温度)は約700〜900℃、SCT(冷却開始温度)は約650〜800℃に制御することが好ましい。ここで、SCTは、仕上圧延の後、60秒以内に上記範囲に制御することが好ましく、これにより、圧延→冷却後に、靱性向上に有用な微細組織が得られる。
次いで、800〜500℃までの温度範囲を約10℃/s以上の平均冷却速度で冷却する。本発明において、特に上記温度範囲の平均冷却速度を制御するのは、冷却後に微細な組織を得るためである。なお、その上限は特に限定されない。
本発明では、少なくとも上記温度範囲を約10℃/s以上の平均冷却速度で冷却することが好ましいが、上記平均冷却速度での停止温度は200℃以下とすることが好ましい。これにより、未変態γを低減することができ、微細均一な組織が得られる。
熱間圧延の後、Ac1〜Ac3点の二相域[フェライト(α)−γ]温度(L処理温度)に加熱・保持した後、水冷する(L処理)。本発明では、残留γの体積分率および残留γ中のMn濃度を本発明の範囲に制御するために、上記(3)式で表わされるLパラメータ、および上記(4)式で表わされるλパラメータが所定範囲となるようにL処理温度および鋼中の成分を適切に制御している。
まず、熱間圧延後の上記L処理温度は、(Ac1+Ac3)/2〜Ac3の範囲内に制御することが好ましい。これにより、生成したγ相にNiなどの合金元素が濃縮し、その一部が室温で準安定に存在する準安定残留γ相となる。上記L処理温度が[(Ac1+Ac3)/2]点未満、またはAc3点超では、結果的に、−196℃における残留γ分率、または残留γの安定性が十分に確保できない(後記する表2BのNo.4、5、19を参照)。好ましいL処理温度は、おおむね、690〜730℃である。
本明細書において、Ac1点、およびAc3点は、下記式に基づいて算出されるものである(「講座・現代の金属学 材料編4 鉄鋼材料」、社団法人日本金属学会より)。
c1
=723−10.7×[Mn]−16.9×[Ni]+29.1×[Si]+16.9×[Cr]+290×[As]+6.38×[W]
c3
=910−203×[C]1/2−15.2×[Ni]+44.7×[Si]+104×[V]+31.5×[Mo]−30×[Mn]+11×[Cr]+20×[Cu]
上記式中、[ ]は、鋼材中の合金元素の濃度(質量%)を意味する。なお、本発明には、AsおよびWは鋼中成分として含まれないため、上記式において、[As]および[W]はいずれも、0%として計算する。
上記二相域温度での加熱時間(保持時間)は、おおむね、10〜50分とすることが好ましい。10分未満では、γ相への合金元素濃縮が十分進まず、一方、50分超では、α相が焼き鈍まされ、強度が低下する。好ましい加熱時間の上限は30分である。
更に本発明では、成分ごとに、上記(4)式で表わされるLパラメータを0.6以上、1.1以下にする。Lパラメータは、最終的に残留γの体積分率と残留γの安定性(特に、Di値および残留中のMn濃度で表されるもの)を兼備するために設定されたパラメータであり、上記観点から、特に上限(1.1以下)を規定した。なお、L処理によって残留γの安定性を高める(すなわち、残留γ中へMnを濃縮させる)ということは、裏返せば、母相(鋼中)のMn濃度を希薄にするという意味である。この状態では、強度確保に悪影響を及ぼすため、あるいは残留γの体積分率と残留γの安定性が兼備できなくなるため本発明では、Lパラメータの下限(0.6以上)を設定した。好ましいLパラメータは、0.7以上、1.0以下である。
更に本発明では、上記(4)式のように、鋼中のMnとCrとMoの各含有量および上記Lパラメータで決定されるλパラメータを0以下となるように制御する。このλパラメータは、L処理中に旧γ粒界へPが偏析するなどし、MnやCrが濃縮し過ぎた場合に濃縮部に起こる焼戻脆性の悪影響を抑制するために設定されたものである。旧粒界に偏析するP量は直接測定することができないことから、λパラメータは、いわば、旧γ粒界に偏析するP量の代替パラメータと位置づけることができる。旧γ粒界へPの偏析が小さいものは、λパラメータが小さい。好ましくは−10.0以下である。なお、その下限は特に限定されないが、コストの観点からMo添加量を出来るだけ抑えることが好ましく、また、各含有量とLパラメータの好ましい範囲などを総合的に勘案すれば、おおむね、−30以上であることが好ましい。
次いで、室温まで水冷した後、焼戻処理(T処理)する。
焼戻処理は、Ac1以下の温度で10〜60分間行なう。このような低温焼戻により、準安定残留γにCが濃縮され、準安定残留γ相の安定度が増すため、−196℃においても安定に存在する残留γ相が得られる。また、上記低温焼戻により、低いMs点を確保することができる。
焼戻温度がAc1を超えると、二相共存域保持中に生成した準安定残留γ相がα相とセメンタイト相に分解し、−196℃における残留γ相が十分に確保できなくなる。一方、焼戻時間が10分未満の場合、準安定残留γ相中へのC濃縮が十分進行せず、所望とする−196℃での残留γ量を確保することができない。また、焼戻時間が60分を超えると、α相の転位密度が過度に減少して、所定の強度(TS)が確保できなくなる(後記する表2BのNo.7を参照)。好ましい焼戻時間は、15分以上、45分以下であり、より好ましくは20分以上、35分以下である。
更に、焼き戻し温度はAc1以下の温度、好ましい焼き戻し温度は510℃〜520℃である。
上記のように焼戻処理をした後、室温まで冷却する。焼戻後の冷却方法は、水冷でなく、空冷で行なう。空冷中に炭素が残留γ中へ濃縮するため、水冷より空冷の方が、残留γの安定性が高くなるためである。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって制限されず、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
実施例1
真空溶解炉(150kgVIF)を用い、表1に示す成分組成(残部:鉄および不可避的不純物、単位は質量%)の供試鋼を溶製し、鋳造した後、熱間鍛造により、150mm×150mm×600mmのインゴットを作製した。本実施例では、REMとしてCeを約50%、Laを約25%含むミッシュメタルを用いた。
次に、上記のインゴットを1100℃に加熱した後、830℃以上の温度で板厚75mmまで圧延し、仕上げ圧延温度(FRT)700℃、FRTの後60秒以内のSCT:650℃とし、水冷することにより、板厚25mmまで圧延した(圧下率85%)。なお、800〜500℃までの平均冷却速度は19℃/sとし、200℃以下の停止温度まで冷延した。
このようにして得られた鋼板を、表2に示すL処理温度でL処理を行ない、30分間加熱保持した後、水冷した。更に、T処理(焼戻)を、表2に示す温度(T処理温度)および時間(T時間)行なった後、室温まで空冷した。
このようにして得られた厚鋼板について、以下のようにして、−196℃において存在する残留γ相の量(体積分率)、Di値、残留γ相中のMn量、引張り特性(引張り強度TS、降伏強度YS)、極低温靱性(−196℃または−233℃でのC方向における脆性破面率)を評価した。
(1)−196℃において存在する残留γ相の量(体積分率)の測定
各鋼板のt/4位置より、10mm×10mm×55mmの試験片を採取し、液体窒素温度(−196℃)にて5分間保持した後、リガク社製の二次元微小部X線回折装置(RINT−RAPIDI値I)にてX線回折測定を行なった。次いで、フェライト相の(110),(200),(211),(220)の各格子面のピーク、および残留γ相の(111),(200),(220),(311)の各格子面のピークについて、各ピークの積分強度比に基づき、残留γ相の(111)、(200)、(220)、(311)の体積分率をそれぞれ算出し、これらの平均値を求め、これを「残留γの体積分率」とした。
(2)−196℃において存在する残留γ相中のMn量の測定
以下の手順により、残留γ相中の平均Mn量をTEM−EDXにて測定し、算出した。算出の際、残留γ相中の成分は、Fe―Mn―Niであると仮定した。実際の成分は、Fe、Mn、Ni以外に例えばC、Siなども含まれ得るが、これらの元素は少量であり、本実施例の測定方法(TEM−EDX)の測定限界未満であるため、実質的に無視できるからである。
まず、各鋼板のt/4位置より、10mm×10mm×55mmの試験片を採取し、液体窒素温度(−196℃)にて5分間保持した後、試験片を10mm×10mm×2mmのサイズに切断し、厚さtを、2mmから0.1mmまで機械研磨した後、3mmφのサイズに打抜き、電解研磨による薄膜試料を作製した。このようにして得られた薄膜試料について、日立製作所製の透過電子顕微鏡H−800を用いて、透過像と逆格子によりγ相を同定した後、堀場製作所製のEDX分析装置EMAX7000にて上記γ相中のMn濃度を測定した。EDXによる測定は、加速電圧200kV、観察倍率75000倍の条件下で行ない、各試料について5点ずつ測定を行い、その平均値を、残留γ中のMn量とした。
(3)引張り特性(引張り強度TS、降伏強度YS)の測定
各鋼板のt/4位置から、C方向に平行にJIS Z2241の4号試験片を採取し、ZIS Z2241に記載の方法で引張り試験を行い、引張り強度TS、および降伏強度YSを測定した。本実施例では、TS>830MPa、YS>690MPaのものを、母材強度に優れると評価した。
(4)極低温靱性(C方向における脆性破面率)の測定
各鋼板のt/4位置(t:板厚)且つW/4位置(W:板幅)、およびt/4位置且つおよびW/2位置から、C方向に平行にシャルピー衝撃試験片(JIS Z 2242のVノッチ試験片)を3本採取し、JIS Z2242に記載の方法で、−196℃での脆性破面率(%)を測定し、それぞれの平均値を算出した。そして、このようにして算出された二つの平均値のうち、特性に劣る(すなわち、脆性破面率が大きい)方の平均値を採用し、この値が10%以下のものを、本実施例では、極低温靱性に優れると評価した。
これらの結果を表2に併記する。参考のため、表2Aおよび表2Bに、Ac1点およびAc3点を併記している。
Figure 2014125678
Figure 2014125678
Figure 2014125678
Figure 2014125678
表2より、以下のように考察することができる。
まず、表2AのNo.1〜21は、それぞれ、鋼中成分が本発明の要件を満足する表1AのNo.1〜21を用いて、本発明の製造条件で作成した例であり、母材強度が高くても、−196℃での極低温靱性(詳細には、C方向における脆性破面率の平均値≦10%)に優れた厚鋼板を提供することができた。
これに対し、表2BのNo.1〜21は、本発明の鋼中成分および製造条件のいずれかを満足しない比較例であり、所望とする特性が得られなかった。
まず、表2BのNo.1は、鋼中成分は本発明の要件を満足する表1BのNo.1を用いたが、Di値が本発明の要件を満たさない例であり、所望とする残留γの体積分率が得られなかった。その結果、脆性破面率が増加し、−196℃において所望とする極低温靱性を実現できなかった。
表2BのNo.2は、C量が多く、Mo量が少ない表1BのNo.2を用いた例であり、極低温靱性が低下した。
表2BのNo.3は、P量が多い表1BのNo.3を用いた例であり、極低温靱性が低下した。
表2BのNo.4は、鋼中成分は本発明の要件を満足する表1BのNo.4を用いたが、二相域温度(L処理温度)を下回る温度で加熱し、且つ、Lパラメータが低い例である。そのため、残留γ量が不足した。その結果、極低温靱性が低下した。
表2BのNo.5は、Si量およびMo量が多い表1BのNo.5を用い、且つ、二相域温度(L処理温度)を超える温度で加熱し、且つ、Lパラメータおよびλパラメータが高い例である。そのため、残留γ量が不足した。その結果、極低温靱性が低下した。
表2BのNo.6は、Mn量が多くMo量が少ない表1BのNo.6を用いたが、焼戻温度(T処理温度)が高く、λパラメータが高く、所望とする残留γの体積分率が得られなかった。その結果、極低温靱性が低下した。
表2BのNo.7は、鋼中成分は本発明の要件を満足する表1BのNo.7を用いたが、焼戻時間(T時間)が長い例であり、上記(2)式のNi−Mnのバランスが好ましい範囲を下回った。その結果、低温靱性が低下した。更に強度(TS)も低下した。
表2BのNo.8は、Mn量が少ない表1BのNo.8を用いた例であり、上記(2)式のNi−Mnバランスが好ましい範囲を下回り、残留γ中のMn濃度が低くなり、残留γ量も不足した。その結果、極低温靱性が低下した。
表2BのNo.9は、S量が多い表1BのNo.9を用いた例である。そのため、脆性破面率が増加し、所望とする極低温靱性を実現できなかった。
表2BのNo.10は、C量が少なく、Al量が多く、Ni量が少なく、上記(2)式のNi−Mnバランスが好ましい範囲を下回る表1BのNo.10を用いた例である。残留γ量の確保に有用なC量およびNi量が少ないため、残留γの体積率は小さくなった。その結果、極低温靱性が低下し、YSは良好であった。ただし、強度向上に有効なC量およびNi量が少ないため、TSは低下した。
表2BのNo.11は、Al量およびMo量が少なく、N量が多く、λパラメータが高い表1BのNo.11を用いたため、極低温靱性が低下した。
表2BのNo.12は、選択成分であるCu量およびCa量が多い表1BのNo.12を用いたため、極低温靱性が低下した。
表2BのNo.13は、選択成分であるMo量が少なく、Cr量およびZr量が多く、λパラメータが高い表1BのNo.13を用いたため、極低温靱性が低下した。
表2BのNo.14は、選択成分であるNb量およびREM量が多い表1BのNo.14を用いたため、極低温靱性が低下した。
表2BのNo.15は、選択成分であるMo量が多い表1BのNo.15を用いたため、極低温靱性が低下した。
表2BのNo.16は、選択成分であるTi量が多い表1BのNo.16を用いたため、極低温靱性が低下した。
表2BのNo.17は、選択成分であるV量が多い表1BのNo.17を用いたため、極低温靱性が低下した。
表2BのNo.18は、選択成分であるB量が多い表1BのNo.18を用いたため、極低温靱性が低下した。
表2BのNo.19は、鋼中成分は本発明の要件を満足する表1BのNo.19を用いたが、Lパラメータが高く、L処理温度も高い例である。そのため、残留γ量中のMn濃度が低く、残留γ量も不足し、極低温靱性が低下した。
表2BのNo.20は、鋼中成分は本発明の要件を満足する表1BのNo.20を用いたが、焼戻温度(T処理温度)が高く、上記(2)式で規定するNi−Mnバランスが好ましい範囲を下回る例であり、所望とする残留γの体積分率が得られず、残留γ中のMn濃度も低下した。その結果、脆性破面率も増加し、−196℃において所望とする極低温靱性を実現できなかった。更にYSおよびTSも低下した。
表2BのNo.21は、Mo量が少なく、Lパラメータおよびλパラメータも高い表1BのNo.21を用いた例である。その結果、脆性破面率も増加し、−196℃において所望とする極低温靱性を実現できなかった。
実施例2
本実施例では、上記実施例1に用いた表2Aの本発明例について、−233℃での脆性破面率を評価した。
具体的には、表3に記載のNo.(表3のNo.は、前述した表1Aおよび表2AのNo.に対応する)について、t/4位置且つW/4位置から試験片を3本採取し、下記に記載の方法で−233℃でのシャルピー衝撃試験を実施し、脆性破面率の平均値を評価した。本実施例では、上記脆性破面率≦50%のものを、−233℃での脆性破面率に優れると評価した。
「高圧ガス」、第24巻181頁、「オーステナイト系ステンレス鋳鋼の極低温衝撃試験」
これらの結果を表3に記載する。表3には参考の為に(i)残留γの体積分率(3.5〜4.8%)、(ii)残留γ中のMn濃度(1.4〜2.5%)、および(iii)λパラメータ(−10以下)の値を表2Aから抜粋して併設した。それぞれの詳細は以下の通りである。
Figure 2014125678
表3のNo.1〜3、5〜14、17〜20は、いずれも、上記(i)〜(iii)の少なくとも一つを満足する表2AのNo.1〜3、5〜14、17〜20を用いた例であり、−233℃における脆性破面率は50%以下と良好であった。一方、表3のNo.4、15、16、21は上記(i)〜(iii)の要件を一つも満足しない表2AのNo.4、15、16、21を用いた例であり、−233℃において所望とする靱性を得ることはできなかった。
まず、表3のNo.1〜3は、上記(ii)の要件を満足する表2AのNo.1〜3を用いたため、−233℃における脆性破面率は50%と良好であった。
これに対し、表3のNo.4は、上記(i)〜(iii)の要件を一つも兼ね備えていない表2AのNo.4を用いたため、−233℃において所望とする靱性を得ることはできなかった。
次に、表3のNo.5は、上記(i)〜(iii)の要件を全て兼ね備え、且つ(ii)残留γ中のMn濃度をより好ましい1.75〜2.50%の範囲に制御した表2AのNo.5を用いたため、−233℃における靱性を15%と一層高めることができた。
また、表3のNo.6は、上記(i)および(iii)の要件を満足する表2AのNo.6を用いたため、−233℃における靱性を40%と一層高めることができた。
表3のNo.7は、上記(iii)の要件を満足する表2AのNo.7を用いたため、−233℃における脆性破面率は50%と良好であった。
表3のNo.8は、上記(i)および(ii)の要件を兼ね備え、且つ(ii)残留γ中のMn濃度をより好ましい1.75〜2.50%の範囲に制御した表2AのNo.8を用いたため、−233℃における靱性を25%と一層高めることができた。
表3のNo.9は、上記(i)および(iii)の要件を満足する表2AのNo.9を用いたため、−233℃における靱性を40%と一層高めることができた。
表3のNo.10は、上記(ii)および(iii)の要件を満足する表2AのNo.10を用いたため、−233℃における靱性を40%と一層高めることができた。
表3のNo.11は、上記(ii)の要件を満足する表2AのNo.11を用いたため、−233℃における脆性破面率は50%と良好であった。
表3のNo.12は、上記(ii)および(iii)の要件を満足する表2AのNo.12を用いたため、−233℃における靱性を40%と一層高めることができた。
表3のNo.13は、上記(i)〜(iii)の要件を全て兼ね備え、且つ(ii)残留γ中のMn濃度をより好ましい1.75〜2.50%の範囲に制御した表2AのNo.13を用いたため、−233℃における靱性を15%と一層高めることができた。
表3のNo.14は、上記(ii)の要件を満足する表2AのNo.14を用いたため、−233℃における脆性破面率は50%と良好であった。
これに対し、表3のNo.15および16は、上記(i)〜(iii)の要件を一つも兼ね備えていない表2AのNo.15および16を用いたため、−233℃において所望とする靱性を得ることはできなかった。
一方、表3のNo.17は、上記(iii)の要件を満足する表2AのNo.17を用いたため、−233℃における脆性破面率は50%と良好であった。
表3のNo.18は、上記(i)の要件を満足する表2AのNo.18を用いたため、−233℃における脆性破面率は50%と良好であった。
表3のNo.19は、上記(ii)の要件を満足する表2AのNo.19を用いたため、−233℃における脆性破面率は50%と良好であった。
表3のNo.20は、上記(i)の要件を満足する表2AのNo.20を用いたため、−233℃における脆性破面率は50%と良好であった。
これに対し、表3のNo.21は、上記(i)〜(iii)の要件を一つも兼ね備えていない表2AのNo.21を用いたため、−233℃において所望とする靱性を得ることはできなかった。

Claims (7)

  1. 質量%で、
    C :0.02〜0.10%、
    Si:0.40%以下(0%を含まない)、
    Mn:0.6〜2.0%、
    P :0.007%以下(0%を含まない)、
    S :0.007%以下(0%を含まない)、
    Al:0.005〜0.050%、
    Ni:5.0〜7.5%、
    Mo:0.30〜1.0%、
    Cr:1.20%以下(0%を含まない)、
    N :0.010%以下(0%を含まない)
    を含有し、残部が鉄および不可避不純物である厚鋼板であって、
    鋼中成分で構成される下記(1)式に基づいて決定されるDi値が5.0超であり、
    Di=([C]/10)0.5×(1+0.7×[Si])×(1+3.33×[Mn])×(1+0.35×[Cu])×(1+0.36×[Ni])×(1+2.16×[Cr])×(1+3×[Mo])×(1+1.75×[V])×1.115・・・(1)
    式中、[ ]は、鋼中の各成分の含有量(質量%)を意味する、
    −196℃において存在する残留オーステナイト相(残留γ)が体積分率にて2.0〜5.0%であり、
    −196℃において存在する残留オーステナイト相(残留γ)中のMn濃度が1.05%以上であり、且つ
    鋼中のMnおよびNiの含有量(質量%)が、下記(2)式を満たすことを特徴とする極低温靱性に優れた厚鋼板。
    [Mn]≧0.31×(7.20−[Ni])+0.50・・・(2)
    式中、[ ]は鋼中の各成分の含有量(質量%)を意味する。
  2. 更に、
    Cu:1.0%以下(0%を含まない)、
    を含有する請求項1に記載の厚鋼板。
  3. 更に、
    Ti:0.025%以下(0%を含まない)、
    Nb:0.100%以下(0%を含まない)、および
    V :0.50%以下(0%を含まない)
    よりなる群から選択される少なくとも一種を含有する請求項1または2に記載の厚鋼板。
  4. 更に、
    B:0.0050%以下(0%を含まない)、
    を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の厚鋼板。
  5. 更に、
    Ca:0.0030%以下(0%を含まない)、および
    REM:0.0050%以下(0%を含まない)
    よりなる群から選択される少なくとも一種を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の厚鋼板。
  6. 更に、
    Zr:0.005%以下(0%を含まない)
    を含有する請求項1〜5のいずれかに記載の厚鋼板。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の厚鋼板の製造方法であって、
    請求項1〜6のいずれかに記載の鋼中成分を満足すると共に、
    α−γ2相共存域(Ac1〜Ac3間)での熱処理(L処理)における温度(L処理温度)と、鋼中のAc1およびAc3とで構成される下記(3)式に基づいて算出されるLパラメータが0.6以上、1.1以下であり、且つ、
    前記Lパラメータと、鋼中成分とで構成される下記(4)式に基づいて算出されるλパラメータが0以下であることを満足するように、L処理温度および鋼中成分を調整することを特徴とする厚鋼板の製造方法。
    Lパラメータ=(L処理温度−Ac1)/(Ac3−Ac1)+0.25・・・(3)
    λパラメータ=9.05×(0.90×[Lパラメータ]+0.14)×[Mn]+1.46×(0.37×[Lパラメータ]+0.67)×[Cr]−41.5×(0.26×[Lパラメータ]+0.79)×[Mo]・・・(4)
    式中、[ ]は鋼中の各成分の含有量(質量%)を意味する。
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