JP2015074808A - 鋼材およびその製造方法 - Google Patents

鋼材およびその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2015074808A
JP2015074808A JP2013212077A JP2013212077A JP2015074808A JP 2015074808 A JP2015074808 A JP 2015074808A JP 2013212077 A JP2013212077 A JP 2013212077A JP 2013212077 A JP2013212077 A JP 2013212077A JP 2015074808 A JP2015074808 A JP 2015074808A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
temperature
content
steel material
steel
cooling
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2013212077A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6369003B2 (ja
Inventor
崇之 加賀谷
Takayuki Kagaya
崇之 加賀谷
川畑 友弥
Tomoya Kawabata
友弥 川畑
宣文 笠井
Nobufumi Kasai
宣文 笠井
孝浩 加茂
Takahiro Kamo
孝浩 加茂
弘宜 若松
Hironori Wakamatsu
弘宜 若松
花尾 方史
Masafumi Hanao
方史 花尾
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel and Sumitomo Metal Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Steel and Sumitomo Metal Corp filed Critical Nippon Steel and Sumitomo Metal Corp
Priority to JP2013212077A priority Critical patent/JP6369003B2/ja
Publication of JP2015074808A publication Critical patent/JP2015074808A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6369003B2 publication Critical patent/JP6369003B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Heat Treatment Of Steel (AREA)

Abstract

【課題】降伏強度が620MPa以上で、引張強度が720MPa以上の高強度で極低温環境下でも9%Ni鋼並みの低温靭性を有するNi低減型の極低温用鋼材の提供。
【解決手段】化学組成が、質量%で、C:0.01〜0.1%、Si:0.005〜0.6%、Mn:0.3〜2.0%、Ni:5〜8%、Cr:0.6〜1.0%、Mo:0.01〜0.5%、sol.Al:0.002〜0.08%、N:0.0005〜0.005%、Cu:0〜2.0%、V:0〜0.08%、Nb:0〜0.08%、Ti:0〜0.03%、B:0〜0.0030%、Ca:0〜0.0050%、Mg:0〜0.0050%及びREM:0〜0.0020%、残部:Fe及び不純物であり、(1)式を満たす鋼材。sol.Al×N≦25×10−5・・・(1)[元素記号はその元素の含有量(質量%)]
【選択図】なし

Description

本発明は、鋼材およびその製造方法に関する。
LNGなどの低温物質の貯槽タンクには、安全性を確保するため、優れた破壊靱性を有する鋼材が用いられる。例えば、9%Ni鋼などである。
従来、9%Ni鋼においては、P、Sなどの不純物の低減、Cの低減、さらには3段熱処理法、即ち、「焼入れ(Q)、二相域焼入れ(L)および焼戻し(T)」という熱処理の採用など、種々の改善が行われてきた。一方で、含Ni鋼の強度および靱性向上に有効な合金元素としてMoの添加が検討されてきた。
近年、合金元素価格の高騰などで鋼材の価格が急騰しており、9%Ni鋼と同等以上の性能(例えば、靱性)を有する、Ni含有量を低減した鋼材の開発が必要となってきている。このような低Ni型鋼材に関する従来技術としては下記のものがある。
特許文献1には、4.0〜7.5%のNiを含有し、Ms点が370℃以下となる低温用鋼が開示されている。特許文献2および3には、1.5〜9.5%のNiと0.02〜0.08%のMoを含有する鋼が開示されている。特許文献4には5.0〜10.0のNiと0.0015〜0.0040%を含有する低温用鋼が開示されている。
特開平6−136483号公報 特開平9−302445号公報 特開2002−129280号公報 特開2013−14811号公報
特許文献1に記載されるのは、Nを含有しない鋼材であり、また、700〜900℃での圧下率を20〜90%にすることが記載されているが、1パス当たりの圧下率は明示されていない。
特許文献2および3に記載されるのは、Nを含有しない鋼材であり、400℃以下で水冷を停止するDQ−LTの製造法が開示されているが、加熱温度や圧延の条件は不明である。
特許文献4には、Cr:1.5%以下、Mo:0.5%以下と広範な化学組成が記載されているが、具体例では、Crは最大0.51%、Moは最大0.17%の含有にとどまっている。
あらゆる構造物において、脆性破壊による崩壊は瞬時に構造物全体が崩壊し甚大な被害が想定されることから、絶対に避けるべき破壊形態である。したがって、貯蔵タンク等の建造物は脆性破壊の発生を避けるべく設計がなされているものの、設計を上回る外力の発生や施工に起因する欠陥など、設計者の想定外の異常事態に起因して脆性破壊が発生してしまう場合を考慮する必要がある。脆性破壊が発生すると極めて高速のき裂伝ぱにより脆性破壊が構造物全体に広がって構造物全体が破壊してしまう。したがって、万が一脆性き裂が発生しても発生した脆性き裂伝ぱを停止させることができる特性が求められる。この特性を一般的に「アレスト特性」と呼ぶ。簡易的にアレスト特性を知るには、三面スリットシャルピー吸収エネルギーを測定するのがよい。
優れた特性を有する低温用鋼を合理的に製造する方法を開発することは極めて重要である。しかし、特性を追求するあまり、特異な製造条件により製品不良が生じた場合、Ni量低減によるコストダウンを相殺してしまう。そのため歩留まり率および特性が良好となる最良な成分、製造方法を開発することが求められている。特許文献1〜4には、製造時の歩留まりに関する記述はない。
本発明は、9%Ni鋼よりも少ないNi含有量で、9%Ni鋼と同等の性能を有する鋼材およびその製造方法を提供することを目的とする。より具体的には、降伏強度が620MPa以上、引張強度が720MPa以上の高強度と、極低温環境下でも9%Ni鋼並みの低温靭性とを有し、疵の発生を抑制したNi低減型の極低温用鋼材(特に、厚鋼板)およびその製造方法を提供することを目的とする。
なお、「降伏強度が620MPa以上、引張強度が720MPa以上」にまで高強度化できれば、LNGタンク鋼板の薄肉化に貢献でき、LNGタンク製造コスト低下のメリットがある。また、母材強度を溶接金属強度に比べて十分に高くすることで、万一設計応力以上の応力がタンクに付与され、き裂が発生した場合でも、き裂が母材ではなく溶接金属に侵入し無害化できる効果がある。
極低温用とは、−60℃以下の低温領域、とりわけ−165℃以下の低温環境での用途を意味する。また、厚鋼板とは、3mm以上の厚みを有する鋼板、とりわけ5〜50mmの厚みを有する鋼板を意味する。
本発明者は、上記の目的を達成するために研究を重ねた結果、以下の(a)〜(c)の知見を得た。
(a)CrおよびMoを含有させれば、焼入性が増加し、強度を上昇できる一方、靭性を損なわせない。
(b)鋼板表面の傷は、歩留まり低下をもたらし、Ni量低減によるコスト合理化を相殺してしまう。AlおよびN量を調整し、加熱中におけるAlNの析出を抑制すれば、鋼板表面傷の発生を抑え、歩留まり低減が可能となる。
(c)鋼板中の残留オーステナイトが、体積分率で、4.0%以上含まれていれば、極低温環境下で高い靭性を得ることができる。残留オーステナイトの体積分率はX線回折法により評価できる。
本発明は、上記の知見を基礎としてなされたものであり、下記の極低温用厚鋼板および極低温用厚鋼板の製造方法をその要旨とする。
(A)化学組成が、質量%で、C:0.01〜0.1%、Si:0.005〜0.6%、Mn:0.3〜2.0%、Ni:5%を超えて8%未満、Cr:0.6〜1.0%、Mo:0.01〜0.5%、sol.Al:0.002〜0.08%、N:0.0005〜0.005%、Cu:0〜2.0%、V:0〜0.08%、Nb:0〜0.08%、Ti:0〜0.03%、B:0〜0.0030%、Ca:0〜0.0050%、Mg:0〜0.0050%およびREM:0〜0.0020%、残部:Feおよび不純物であり、下記の(1)式を満たす鋼材。
sol.Al×N≦25×10−5・・・(1)
ただし、(1)式中の元素記号はその元素の含有量(質量%)を示す。
(B)前記化学組成が、質量%で、Cu:0.05〜2.0%、V:0.005〜0.08%、Nb:0.005〜0.08%、Ti:0.005〜0.03%、B:0.0002〜0.0030%、Ca:0.0002〜0.0050%、Mg:0.0002〜0.0050%およびREM:0.0002〜0.0020%から選択される1種以上を含有する上記(A)の鋼材。
(C)金属組織が、体積%で、4.0%以上の残留オーステナイトを含む上記(A)または(B)の鋼材。
(D)上記(A)または(B)の化学組成を有する鋼片を850℃以上1140℃未満の温度に加熱し、700℃以上830℃以下の温度で、1パス当たり5%以上、累積圧下率25%以上の圧延を行い(但し、圧延仕上温度は、700℃以上800℃以下)、直ちに200℃以下の温度まで加速冷却を行い、その後、650℃以下の温度で焼戻しをする鋼材の製造方法であって、前記加速冷却における冷却開始温度から600℃までの平均冷却速度が10℃/s以上であり、冷却開始温度から200℃までの平均冷却速度が5℃/s以上である、鋼材の製造方法。
(E)前記加速冷却後、600℃以上800℃以下に加熱し、200℃以下までの平均
冷却速度が5℃/s以上となるように冷却する二相域熱処理を行った後に、前記焼戻しをする上記(D)の鋼材の製造方法。
本発明によれば、5%を超えて8%未満という低いNi含有量であっても、9%のNiを含む鋼と同等以上の機械的性質を有する鋼材が得られる。この鋼材は安価でありながら低温靱性に優れているので、LNGのような低温物質の貯蔵タンク等の構造材料として好適である。
本発明において鋼材の化学組成および金属組織ならびに製造条件を上述のように規定した理由について、以下に詳述する。なお、鋼材の成分含有量についての「%」は「質量%」である。
C:0.01〜0.1%
Cは、強度を確保するのに有効な元素であり、0.01%以上含有させる。Cには、Mf点を低下させ、オーステナイト量を増加させて靱性を改善する効果があるものの、マルテンサイト素地そのものを硬化させる。よって、その含有量が過剰な場合、かえって靱性を劣化させる。よって、C含有量は0.01〜0.1%とする。好ましい下限は0.03%であり、好ましい上限は0.07%である。
Si:0.005〜0.6%
Siは、脱酸元素として有効であり、また、セメンタイトの析出を抑制し、焼戻しでのオーステナイトを安定化する元素であるので、0.005%以上含有させる。しかし、Siの含有量が過剰な場合には靱性を劣化させる。従って、含有量を0.005〜0.6%とする。好ましい下限は、0.03%であり、より好ましいのは0.1%である。また、好ましい上限は0.5%であり、より好ましいのは0.3%である。
Mn:0.3〜2.0%
Mnは、Mf点を低下させてオーステナイトを安定化するのに有効であり、その含有量が多いほど多量のオーステナイトが得られるので、0.3%以上含有させる。しかし、Mn含有量が過剰になると、マルテンサイト素地の靱性を劣化させる。従って、その含有量を0.3〜2.0%とする。好ましい下限は、0.5%であり、より好ましいのは0.7%である。また、好ましい上限は1.5%であり、より好ましいのは1.0%である。
Ni:5%を超えて8%未満
Niは、鋼の強度を上昇させるとともに、オースナイトの安定化するので、5%を超えて含有させる。Ni含有量は、多いほど強度が上昇するとともに、Mf点が低下して残留オーステナイト量が増加するが、Niを多量に含有させることはコスト上昇を招く。よって、Ni含有量は、5%を超えて8%未満とする。好ましい上限は7.5%であり、より好ましい下限は5.5%である。
sol.Al(酸可溶Al):0.002〜0.08%
Alは、Siと同様に脱酸元素として、また、セメンタイトの析出を抑制して焼戻しでのオーステナイトを安定化する。さらにAlは、Nと結合してAlNとなり加熱時のオーステナイト粒の微細化に寄与する効果も有する。従って、sol.Alとして0.005%以上の含有が必要である。しかし、Al含有量が多すぎると靱性劣化を引き起こす。従って、含有量をsol.Alとして0.005〜0.05%とする。より望ましい含有量の範囲は、0.02%〜0.04%である。
N:0.0005〜0.005%
Nは、オーステナイトの安定化に寄与する元素であり、また、Alと結合してAlNとなり加熱時のオーステナイト粒の微細化に効果を発揮する。これらの効果を得るには0.0005%以上の含有が必要である。しかし、過剰なNは、マルテンサイト素地を劣化させる。よって、その含有量は0.0005〜0.005%とする。好ましい下限は、0.002%であり、好ましい上限は0.004%である。
なお、sol.AlおよびNをそれぞれ上記に定める範囲としても、そのバランスが適正ではない場合には鋼板表面に疵を発生させ、歩留まりを低下させる。このため、「(sol.Al×N)を25×10−5以下に管理する必要がある。表面疵の有無は、圧延後の鋼板を目視検査等することにより判別できる。
Mo:0.01〜0.5%
Moは、低温域ではオーステナイト安定化元素として、オーステナイト量の増加に有効である。この効果を得るには0.01%以上の含有が望ましい。しかし、Moの含有量が0.5%を超えるとマルテンサイト素地の劣化を通して靱性が低下する。よって、その含有量は0.01〜0.5%とする。望ましい下限は0.02%である。望ましい上限は0.45%であり、より望ましい上限は0.40%である。
Cr:0.1〜1.0%
Crは、強度上昇に有効な元素であり、0.1%以上含有させる。しかしながら、その含有量が1.0%を超えると靱性が劣化する。よって、Cr含有量は0.1〜1.0%とする。
Cu:0〜2.0%
Cuは、固溶状態でオーステナイトを安定化させる元素であるので、含有させてもよい。しかし、過剰なCuは、焼戻し処理によって固溶Cuがε−Cuとして析出するので、高強度化には有効であるが靱性を劣化させる。よって、Cuを含有させる場合には、その含有量を2.0%以下とする。Cu含有量の好ましい下限は0.05%である。
V:0〜0.08%
Vは、鋼の高強度化に有効な元素であり、焼戻し処理によって析出物となり鋼を強化すので、含有させてもよい。しかし、過剰なVは、過剰な析出物により靱性を劣化させる。よって、Vを含有させる場合には、その含有量を0.08%以下とする。V含有量の好ましい下限は0.005%である。
Nb:0〜0.08%
Nbは、圧延での未再結晶温度域を拡大し、圧延後の組織微細化と高靱化に有効であるので、含有させてもよい。しかし、その含有量が過剰な場合、靱性が劣化する。よって、Nbを含有させる場合には、その含有量を0.08%以下とする。Nb含有量の好ましい下限は0.005%である。
Ti:0〜0.03%
Tiは、スラブのひび割れ防止に有効な元素であるので、含有させてもよい。しかし、Ti含有量が過剰な場合、靱性が劣化する。よって、Tiを含有させる場合には、その含有量を0.03%以下とする。Ti含有量の好ましい下限は0.005%である。
B:0〜0.0030%
Bは強度上昇に有効な元素であるので、含有させてもよい。しかし、Bの含有量が過剰な場合、靱性が劣化する。よって、Bを含有させる場合には、その含有量を0.0030%以下とする。B含有量の好ましい下限は0.0002%である。
Ca:0〜0.0050%
Caは靱性改善に有効な元素であるので、含有させてもよい。しかし、Caの含有量が過剰な場合、靱性が劣化する。よって、Caを含有させる場合には、その含有量を0.0050%以下とする。Ca含有量の好ましい下限は0.0002%である。
Mg:0〜0.0050%
Mgは靱性改善に有効な元素であるので、含有させてもよい。しかし、Mgの含有量が過剰な場合、靱性が劣化する。よって、Mgを含有させる場合には、その含有量を0.0050%以下とする。Mg含有量の好ましい下限は0.0002%である。
REM:0〜0.0020%
REM(希土類元素)は、溶接熱影響部の組織を微細化し、またSを固定する効果があるので、含有させてもよい。ただし、REMを含有させると介在物を形成し、その介在物が過剰な場合には清浄度を低下させるが、この介在物は比較的靱性劣化への影響が小さいため、REMの含有量は0.002%まで許容できる。好ましい上限は0.001%である。上記の効果は0.0002%以上含有させた場合に顕著となる。特に、REMは0.0003%以上含有させるのがより好ましい。なお、REMは、Sc、Yおよびランタノイドの合計17元素の総称であり、REMの含有量は上記元素の合計量を意味する。
本発明の鋼材は、上記の成分のほか、残部がFeと不純物とからなるものである。不純物とは、鋼材を工業的に製造する際に、鉱石、スクラップ等の原料その他の要因により混入する成分を意味する。
残留オーステナイト量:
厚鋼板中の残留γは、脆性き裂発生を抑制し、き裂伝ぱを停止するのに有効であり、低温環境下での靭性を向上させる効果がある。この効果は、鋼中の残留γ含有量が4.0体積%以上である場合に顕著となる。一方、残留γ含有量が25.0体積%を超えると、降伏応力が低下するおそれがある。好ましい下限は5.5体積%であり、好ましい上限は20.0体積%である。
次に上記の鋼材の製造方法について述べる。
(1)鋼片の加熱
鋼材の靱性向上のためには、初期オーステナイト粒、即ち、圧延前の鋼片でのオーステナイト粒の微細化が重要であり、このオーステナイト粒の微細化は、残留オーステナイト量の増加にも寄与する。従って、圧延前の鋼片の加熱温度を850℃以上1140℃未満とする。850℃より低温での加熱では強度が不足し、また、1140℃以上の温度での加熱では靱性が劣化する。好ましい下限は900℃であり、好ましい上限は1000℃である。
(2)圧延
組織微細化とオーステナイト量を増加させるためには、オーステナイトの未再結晶域で十分な圧延を行わなければならない。このためには、700℃以上830℃以下の温度域で、1パス当たり5%以上、累積圧下率25%以上の圧延を行うのが有効である。このような圧延であれば、未再結晶オーステナイト温度域でオーステナイト中に格子欠陥(転位)を導入し、未変態オーステナイトのマルテンサイトへの変態を抑制できるからである。このとき、700〜800℃の温度で圧延を仕上げる必要がある。圧延仕上温度が700℃よりも低いと鋼材の異方性が顕著になる。また、圧延仕上温度が800℃を超えると靭性が劣化する。
(3)冷却
圧延終了後は、直ちに200℃以下の温度域まで加速冷却を行う必要がある。このとき、冷却開始温度から600℃までの平均冷却速度を10℃/s以上とする必要がある。これは、仕上圧延で導入された格子欠陥(転位)をなるべく多く残すためである。一方、マルテンサイト組織が得られるようにするため、冷却開始温度から200℃までの平均冷却速度を5℃/s以上とする必要がある。200℃よりも高温で加速冷却を停止した場合は、十分にマルテンサイトが得られず強度が劣化する。圧延仕上げから水冷開始までの時間は短い方がよく、圧延終了から水冷開始までを30秒以内とするのが望ましい。
(4)焼戻し
加速冷却後は、650℃以下の温度で焼戻す必要がある。これにより冷却処理、すなわち、焼入れによって生成したマルテンサイトを焼戻すことができ、強度を調整するとともに、靱性を改善することができる。650℃を超える温度で焼戻しを行うと強度が低下する。
(5)二相域加熱
残留オーステナイト量をさらに増加させるためには、焼戻しの前にフェライトとオーステナイトの二相域に加熱するのが望ましい。よって、前記加速冷却および焼戻しの間に、600℃以上800℃以下に加熱し、200℃以下までの平均冷却速度が5℃/s以上となるように冷却する二相域熱処理を行うことが好ましい。二相域熱処理の加熱温度は、その下限を680℃とするのが好ましく、その上限を750℃とするのが好ましい。
表1および2に示す化学組成を有する供試材を溶製し、板厚は20mmの鋼板を試作した。製造条件を表3に示す。鋼板から試験片を採取し、下記の各種測定を行った。その結果を表3に併記する。
<残留γ量>
厚鋼板の1/4t(t:板厚)の位置から試験片を採取し、X線回折法により測定した。なお、いずれの厚鋼板においても、主たる金属組織がマルテンサイト組織で構成されていたため、面心立方構造を有する残留γと体心立方構造を有するマルテンサイトの格子構造の違いを利用して、X線ピークの積分強度比から残留γ量を測定した。
<引張試験>
厚鋼板の1/4t(t:板厚)の位置、圧延方向からJISZ2241に規定される4号引張試験片を採取し、常温での引張試験を行った。なお、JISG3127(低温圧力容器用ニッケル鋼鋼板)において、SL7N590はYS≧590MPa、690≦TS≦830MPaと規定されているが、本発明では、常温における降伏強度(YS)は620MPa以上、引張強度(TS)は720MPa以上を目標とする。
<三面スリットシャルピー衝撃試験>
厚鋼板の1/4t(t:板厚)の位置、巾方向から三面スリットシャルピー衝撃試験片を採取し、−196℃での破面の吸収エネルギーsE−196(J)(3本の平均値)を調べた。三面スリットシャルピー吸収エネルギーsE−196は20J以上を目標とする。
Figure 2015074808
Figure 2015074808
Figure 2015074808
表3に示すように、本発明で規定される条件を全て満足する試験No.1〜43は、常温における降伏強度が620MPa以上、引張強度TSが720MPa以上であるともに、三面ノッチシャルピー吸収エネルギーsE−196が20J以上と高い値を示し、耐破壊安全性に優れていた。
これに対して、試験No.44〜51は、化学組成が本発明で規定される範囲を外れるため、常温での降伏強度、三面スリットシャルピー吸収エネルギーが劣化するか、または表面疵の発生が見られた。 試験No.52は、化学組成は本発明で規定される範囲内であるが、Al×Nが範囲を外れるため、表面疵が発生した。
本発明によれば、5%を超えて8%未満という低いNi含有量であっても、9%のNiを含む鋼と同等以上の機械的性質を有する鋼材が得られる。この鋼材は安価でありながら低温靱性に優れているので、LNGのような低温物質の貯蔵タンク等の構造材料として好適である。

Claims (5)

  1. 化学組成が、質量%で、
    C:0.01〜0.1%、
    Si:0.005〜0.6%、
    Mn:0.3〜2.0%、
    Ni:5%を超えて8%未満、
    Cr:0.6〜1.0%、
    Mo:0.01〜0.5%、
    sol.Al:0.002〜0.08%、
    N:0.0005〜0.005%、
    Cu:0〜2.0%、
    V:0〜0.08%、
    Nb:0〜0.08%、
    Ti:0〜0.03%、
    B:0〜0.0030%、
    Ca:0〜0.0050%、
    Mg:0〜0.0050%および
    REM:0〜0.0020%、
    残部:Feおよび不純物であり、
    下記の(1)式を満たす鋼材。
    sol.Al×N≦25×10−5・・・(1)
    ただし、(1)式中の元素記号はその元素の含有量(質量%)を示す。
  2. 前記化学組成が、質量%で、
    Cu:0.05〜2.0%、
    V:0.005〜0.08%、
    Nb:0.005〜0.08%、
    Ti:0.005〜0.03%、
    B:0.0002〜0.0030%、
    Ca:0.0002〜0.0050%、
    Mg:0.0002〜0.0050%および
    REM:0.0002〜0.0020%から選択される1種以上を含有する請求項1に記載の鋼材。
  3. 金属組織が、体積%で、4.0%以上の残留オーステナイトを含む請求項1または2に記載の鋼材。
  4. 請求項1または2に記載の化学組成を有する鋼片を850℃以上1140℃未満の温度に加熱し、700℃以上830℃以下の温度で、1パス当たり5%以上、累積圧下率25%以上の圧延を行い(但し、圧延仕上温度は、700℃以上800℃以下)、直ちに200℃以下の温度まで加速冷却を行い、その後、650℃以下の温度で焼戻しをする鋼材の製造方法であって、
    前記加速冷却における冷却開始温度から600℃までの平均冷却速度が10℃/s以上であり、冷却開始温度から200℃までの平均冷却速度が5℃/s以上である、鋼材の製造方法。
  5. 前記加速冷却後、600℃以上800℃以下に加熱し、200℃以下までの平均冷却速度が5℃/s以上となるように冷却する二相域熱処理を行った後に、前記焼戻しをする請求項4に記載の鋼材の製造方法。
JP2013212077A 2013-10-09 2013-10-09 鋼材およびその製造方法 Active JP6369003B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013212077A JP6369003B2 (ja) 2013-10-09 2013-10-09 鋼材およびその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013212077A JP6369003B2 (ja) 2013-10-09 2013-10-09 鋼材およびその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2015074808A true JP2015074808A (ja) 2015-04-20
JP6369003B2 JP6369003B2 (ja) 2018-08-08

Family

ID=52999916

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2013212077A Active JP6369003B2 (ja) 2013-10-09 2013-10-09 鋼材およびその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6369003B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP3730657A4 (en) * 2017-12-24 2020-10-28 Posco LOW-TEMPERATURE STEEL MATERIAL WITH EXCELLENT STRENGTH IN THE WELDING SECTION THEREOF AND MANUFACTURING PROCESS FOR IT

Citations (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS5113308A (ja) * 1974-07-24 1976-02-02 Nippon Steel Corp Teionyokyojinkooyobisono netsushorihoho
JP2011219848A (ja) * 2010-04-14 2011-11-04 Sumitomo Metal Ind Ltd 極低温用厚鋼板およびその製造方法
WO2012005330A1 (ja) * 2010-07-09 2012-01-12 新日本製鐵株式会社 Ni添加鋼板およびその製造方法
JP2013014811A (ja) * 2011-07-06 2013-01-24 Nippon Steel & Sumitomo Metal Corp 極低温用鋼材およびその製造方法
CN103305750A (zh) * 2012-03-09 2013-09-18 株式会社神户制钢所 极低温韧性优异的厚钢板
JP2013234381A (ja) * 2012-04-13 2013-11-21 Kobe Steel Ltd 極低温靱性に優れた厚鋼板
JP2014040648A (ja) * 2012-08-23 2014-03-06 Kobe Steel Ltd 極低温靱性に優れた厚鋼板
JP2014125678A (ja) * 2012-12-27 2014-07-07 Kobe Steel Ltd 極低温靱性に優れた厚鋼板

Patent Citations (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS5113308A (ja) * 1974-07-24 1976-02-02 Nippon Steel Corp Teionyokyojinkooyobisono netsushorihoho
JP2011219848A (ja) * 2010-04-14 2011-11-04 Sumitomo Metal Ind Ltd 極低温用厚鋼板およびその製造方法
WO2012005330A1 (ja) * 2010-07-09 2012-01-12 新日本製鐵株式会社 Ni添加鋼板およびその製造方法
JP2013014811A (ja) * 2011-07-06 2013-01-24 Nippon Steel & Sumitomo Metal Corp 極低温用鋼材およびその製造方法
CN103305750A (zh) * 2012-03-09 2013-09-18 株式会社神户制钢所 极低温韧性优异的厚钢板
JP2013234381A (ja) * 2012-04-13 2013-11-21 Kobe Steel Ltd 極低温靱性に優れた厚鋼板
JP2014040648A (ja) * 2012-08-23 2014-03-06 Kobe Steel Ltd 極低温靱性に優れた厚鋼板
JP2014125678A (ja) * 2012-12-27 2014-07-07 Kobe Steel Ltd 極低温靱性に優れた厚鋼板

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP3730657A4 (en) * 2017-12-24 2020-10-28 Posco LOW-TEMPERATURE STEEL MATERIAL WITH EXCELLENT STRENGTH IN THE WELDING SECTION THEREOF AND MANUFACTURING PROCESS FOR IT
US11591679B2 (en) 2017-12-24 2023-02-28 Posco Co., Ltd Low-temperature steel material having excellent toughness in welding portion thereof and manufacturing method therefor

Also Published As

Publication number Publication date
JP6369003B2 (ja) 2018-08-08

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US10329635B2 (en) High-strength cold-rolled steel sheet having excellent bendability
EP2876179B1 (en) Ni-CONTAINING STEEL PLATE
JP5381440B2 (ja) アレスト性に優れた厚肉低温用鋼板およびその製造方法
WO2017183058A1 (ja) 耐摩耗鋼板および耐摩耗鋼板の製造方法
EP2397570A1 (en) Steel plate for line pipes with excellent strength and ductility and process for production of same
JP4291860B2 (ja) 高強度鋼板およびその製造方法
EP3392361A1 (en) Thick steel plate having excellent cryogenic toughness
JP5521712B2 (ja) 強度および低温靭性と脆性亀裂伝播停止特性に優れた低温用Ni含有鋼およびその製造方法
JP6492862B2 (ja) 低温用厚鋼板及びその製造方法
JP5543814B2 (ja) 熱処理用鋼板及び鋼部材の製造方法
JP2019214752A (ja) 低降伏比厚鋼板
JP2011214098A (ja) 強度および低温靭性に優れた9%Ni鋼の製造方法
KR20200057041A (ko) 저온용 니켈 함유 강
JP5742750B2 (ja) 厚鋼板及びその製造方法
JP2019081930A (ja) 靭性に優れた低温用ニッケル含有鋼板およびその製造方法
KR20200058489A (ko) 저온용 니켈 함유 강
KR102106766B1 (ko) 강 부재 및 강판, 및 이들의 제조 방법
JP6620661B2 (ja) 液体水素用Ni鋼
JP5565050B2 (ja) 強度および低温靭性と脆性亀裂伝播停止特性に優れた9Ni鋼
JP2018104792A (ja) 液体水素用Ni鋼
JP6369003B2 (ja) 鋼材およびその製造方法
JP2019081929A (ja) ニッケル含有鋼板およびその製造方法
JP6620659B2 (ja) 液体水素用Ni鋼
JP2019081931A (ja) 靭性に優れた低温用ニッケル含有鋼板およびその製造方法
JP2018080367A (ja) 低温用ニッケル含有厚鋼板及びその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20160603

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20170322

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20170509

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20170629

RD02 Notification of acceptance of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7422

Effective date: 20170629

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20171121

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20180117

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20180612

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20180625

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 6369003

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350