JP2014125570A - 導電性向上剤 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】特定の基油を含む潤滑油組成物の導電性を向上させる導電性向上剤であって、重量平均分子量が10,000〜500,000で、分子中にヘテロ原子を含む極性基を含有するオレフィンコポリマー(OCP)及びポリ(メタ)アクリレートのうちの少なくとも一方のポリマーを含み、前記潤滑油組成物の室温(25℃)における導電率が10pS/m以上となることを特徴とする、導電性向上剤。
【選択図】なし
Description
重量平均分子量が10,000〜500,000で、分子中にヘテロ原子を含む極性基を含有するオレフィンコポリマー(OCP)及びポリ(メタ)アクリレートのうちの少なくとも一方のポリマーを含み、
前記潤滑油組成物の室温(25℃)における導電率が10pS/m以上となる
ことを特徴とする、導電性向上剤である。
(A)100℃の動粘度が2〜12mm2/s、硫黄分が0.7質量%以下、粘度指数が90以上、ASTM D3238による%CAが5以下且つ%CPが60以上の、API(米国石油協会)の基油カテゴリーでグループ1に分類される基油
(B)100℃の動粘度が2〜12mm2/s、硫黄分が0.03質量%未満、粘度指数が100〜160の、API(米国石油協会)の基油カテゴリーでグループ2又は3に分類される基油からなる群より選択される少なくとも1種以上の基油
(C)100℃の動粘度が2〜12mm2/sの、APIのグループ4基油に分類されるポリアルファオレフィン及び/又はポリブデン
(D)100℃の動粘度が2〜12mm2/sの、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン及び/又はアルキルジフェニルアルカン
本発明[2]は、前記ポリマーが、窒素原子、酸素原子又はリン原子のうち少なくとも一種又は複数種のヘテロ原子を含む基を極性基として有する、オレフィンコポリマー(OCP)及びポリ(メタ)アクリレートのうちの少なくとも一方である、前記発明[1]記載の導電性向上剤である。
本発明[3]は、前記ポリマーは、
前記ヘテロ原子が窒素原子であり、
前記極性基がアミノ基又はイミノ基であり、
ポリマー中の窒素含有量が0.1質量%以上の、オレフィンコポリマー(OCP)及びポリ(メタ)アクリレートのうちの少なくとも一方である、前記発明[1]又は[2]の導電性向上剤である。
本発明[4]は、前記ポリマーの有する前記アミノ基又はイミノ基の少なくとも一部が、コハク酸イミド誘導体、ポリエチルアミン誘導体、モルホリン誘導体及びN−ビニル−2−ピロリドン誘導体より選択される少なくとも一種以上の誘導体によって導入された、オレフィンコポリマー(OCP)及びポリ(メタ)アクリレートのうちの少なくとも一方である、前記発明[3]の導電性向上剤である。
本発明[5]は、
前記ポリマーが、下記式(1)若しくは(3)で示されるポリ(メタ)アクリレート又は下記式(2)で示されるオレフィンコポリマーである、前記発明[4]の導電性向上剤である。
本発明[6]は、
前記ポリマーは、
前記ヘテロ原子が酸素原子であり、
前記極性基が水酸基であり、
ポリマー中の前記水酸基の水酸基価が20mgKOH/g以上を示す、オレフィンコポリマー(OCP)及びポリ(メタ)アクリレートのうちの少なくとも一方である、前記発明[1]又は[2]の導電性向上剤である。
本発明[7]は、
前記ポリマーが下記式(4)の構造によって示されるポリ(メタ)アクリレートである、前記発明[6]の導電性向上剤である。
本発明[8]は、
前記ポリマーは、
前記ヘテロ原子がリン原子であり、
前記極性基がリン酸エステル基又はホスホノ基であり、
ポリマー中のリン濃度が0.05質量%以上の、オレフィンコポリマー(OCP)及びポリ(メタ)アクリレート(PMA)のうちの少なくとも一方である、前記発明[1]又は[2]の導電性向上剤である。
本発明[9]は、
前記ポリマーの有する前記リン酸エステル基の少なくとも一部が、アルキルリン酸エステルを基本構造とするリン酸基によって導入された、オレフィンコポリマー(OCP)及びポリ(メタ)アクリレートのうちの少なくとも一方である、前記発明[8]の導電性向上剤である。
本発明[10]は、
前記ポリマーが下記式(5)又は(6)の構造によって示されるポリ(メタ)クリレートである、前記発明[8]又は[9]の導電性向上剤である。
本発明[11]は、
前記発明[1]〜[10]のいずれかの導電性向上剤と、前記(A)、(B)、(C)及び(D)からなる群より選択される少なくとも一種の基油と、を少なくとも含有する潤滑油組成物である。
本形態に係る導電性向上剤は、好適には重量平均分子量が10,000〜500,000(より好適には粘度指数改善効果及びせん断安定性がより優れる10,000〜400,000、更に好適には10,000〜300,000、特に好適には60,000〜300,000)の鉱油及び炭化水素系合成油等に対して溶解性が高く、相溶性の良いポリ(メタ)アクリレート及び/又はオレフィンコポリマーからなるポリマー添加剤であり、更には構造中に極性基のヘテロ原子を有するものである。ポリマーに組み込まれた極性基のヘテロ原子は、主に酸素原子、窒素原子、リン原子で、それぞれ油中における水素結合性を助長する。即ち、元来油に含まれる微量の水分と、ポリマー中に含まれる酸素原子、窒素原子又はリン原子を含む極性基(例えば、水酸基、アミノ基やリン酸エステル基等)と、が水素結合することによって、油中に微量の電子が移動できるネットワークが形成され、流動帯電によって発生した静電気を油中に蓄積せずに外部へ逃がすことが可能となると推察される{通常、潤滑油及び潤滑油基油には、新油の状態でも微量の水分が100〜200ppm程度含まれている(JUNTSUNET 21、Web版 潤滑油そこが知りたいQ&A 潤滑剤の汚染・管理、Q潤滑油中の水分を取り除くには。2012年9月25日)}。従って、本形態に係るポリマーが有する、ヘテロ原子を含む極性基は、基本的には水素結合を形成しやすい極性基であることが好ましい。
である)
で示されたポリマーを例示できる。
本形態に係る導電性向上剤は、対象とする潤滑油組成物に添加する用途で使用する。ここで、本形態に係る導電性向上剤の潤滑油組成物に対する添加量は、潤滑油組成物の室温(25℃)における導電率が10pS/m以上(好適には10℃で10pS/m以上、より好適には0℃で10pS/m以上、上限値は特に限定するものではないが、例えば100,000pS/m以下)となる量である。尚、潤滑油組成物の導電率が、当該組成物の実用温度域である0〜80℃で10pS/m以上であれば、流動帯電を防止する効果は得られるものであるが、機械装置を始動する低温時(50℃以下)では、炭化水素を主体とする基油では導電率が低く、高性能なモーターや循環ポンプ等が起動して強い流速が発生すると、配管の折れ曲がった部分やフィルターの部分、高速モーターの軸受回転部で油の流速が異常に変化し、流動帯電が発生し易い。本形態では、より確実に流動帯電を防止するために、導電性向上剤の潤滑油組成物に対する添加量を、潤滑油組成物の室温(25℃)における導電率が10pS/m以上となる量としている。具体的には、下記(A)〜(D)からなる群より選択される少なくとも一種の基油を含む潤滑油組成物に関しては、0.5〜40質量%が好ましく、1〜30質量%がより好ましい。この範囲であれば、充分な基油との相溶性と溶解性が得られる範囲であり、また潤滑油を設計する上で充分な粘度とせん断安定性を考慮したバランスのとれた設計が可能となる。
本形態に係る導電性向上剤は、高度精製基油と呼ばれる鉱油、炭化水素系合成油等の基油に対して好適に使用することができ、これらの鉱油系基油と合成基油は、鉱油基油同士、合成基油同士、鉱油系基油と合成系基油を任意の比率で混合して使用することが可能である。API(American Petroleum Institute,米国石油協会)基油カテゴリーでグループ1、グループ2、グループ3、及びグループ4等に属する基油を、単独又は混合物とした基油に対してより好適に使用することができる。
本形態に係る潤滑油組成物は、流動帯電防止用のポリマー添加剤の他にも、上記した成分のほかに更に性能を向上させるため、必要に応じて種々の添加剤を適宜使用することができる。これらのものとしては、無灰系摩擦調整剤(例えばモノグリセリド)、流動点降下剤、酸化防止剤、極圧剤、油性向上剤、金属不活性化剤、耐摩耗剤、消泡剤、粘度指数向上剤、清浄分散剤、防錆剤等や、その他の公知の潤滑油添加剤を挙げることができる。
本形態に係る潤滑油組成物に対して、低温流動性を向上させるために、流動点降下剤を添加してもよい。流動点降下剤としては特に限定されず、例えば前記ポリメタクリレート系のポリマーも流動点降下剤としての機能を有する。流動点降下剤の添加量は、基油100質量部に対して、0.01〜5質量部の範囲で使用できる。
本形態において使用する酸化防止剤としては、潤滑油に使用されるものが実用的には好ましく、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤を挙げることができる。これらの酸化防止剤は、基油100質量部に対して、0.01〜5質量部の範囲で単独又は複数組み合わせて使用できる。
また、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルメルカプト−オクチルアセテート、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(吉富製薬社製:ヨシノックスSS)、n−ドデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2’−エチルヘキシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ベンゼンプロパン酸3,5−ビス(1,1−ジメチル−エチル)−4−ヒドロキシ−C7〜C9側鎖アルキルエステル(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製:IrganoxL135)等のアルキル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート類、2,6−ジ−t−ブチル−α−ジメチルアミノ−p−クレゾール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)(川口化学社製:アンテージW−400)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)(川口化学社製:アンテージW−500)等の2,2’−メチレンビス(4−アルキル−6−t−ブチルフェノール)類がある。
本形態に係る組成物と併用できる金属不活性化剤としては、ベンゾトリアゾール、4−メチル−ベンゾトリアゾール、4−エチル−ベンゾトリアゾール等の4−アルキル−ベンゾトリアゾール類、5−メチル−ベンゾトリアゾール、5−エチル−ベンゾトリアゾール等の5−アルキル−ベンゾトリアゾール、1−ジオクチルアミノメチル−2,3−ベンゾトリアゾール等の1−アルキル−ベンゾトリアゾール類、1−ジオクチルアミノメチル−2,3−トルトリアゾール等の1−アルキル−トルトリアゾール類等のベンゾトリアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール、2−(オクチルジチオ)−ベンゾイミダゾール、2−(デシルジチオ)−ベンゾイミダゾール、2−(ドデシルジチオ)−ベンゾイミダゾール等の2−(アルキルジチオ)−ベンゾイミダゾール類、2−(オクチルジチオ)−トルイミダゾール、2−(デシルジチオ)−トルイミダゾール、2−(ドデシルジチオ)−トルイミダゾール等の2−(アルキルジチオ)−トルイミダゾール類等のベンゾイミダゾール誘導体がある。
本形態に係る潤滑油組成物に対して、耐摩耗性を付与するために、リン化合物を添加することもできる。本形態に適したリン化合物としては、ジチオリン酸亜鉛、リン酸亜鉛が挙げられる。これらのリン化合物は、基油100質量部に対して、0.01〜2質量%、潤滑油全体を基準にリン含有量は好ましくは0.05〜0.10質量%、より好ましくは0.05〜0.08質量%の範囲で単独又は複数組み合わせて使用できる。本形態に係る潤滑油組成物を、例えば内燃機関油に適用した場合には、潤滑油全体を基準にリン含有量を0.10質量%以上配合すると、排気ガスコントロールシステムの触媒等に悪影響を与え、リン含有量が0.05質量%以下では、内燃機関油としての耐摩耗性が維持できない。
本形態に係る潤滑油組成物に対して、消泡性を付与するために、消泡剤を添加してもよい。本形態に適した消泡剤として、例えばジメチルポリシロキサン、ジエチルシリケート、フルオロシリコーン等のオルガノシリケート類、ポリアルキルアクリレート等の非シリコーン系消泡剤が挙げられる。その添加量は、基油100質量部に対して、0.0001〜0.1質量部の範囲で単独又は複数組み合わせて使用できる。
本形態の潤滑油組成物は、「導電性向上剤」の「使用方法」の項目でも説明したように、室温(25℃)における導電率が10pS/m以上となることが好ましい。10pS/m未満では流動帯電によって発生した静電気の蓄積をアースする能力が低く、静電気によるトラブルを防止する問題に対応できない。
絶縁油の中には、変圧器内を循環させることによって温度を下げる冷却用の絶縁油もあるが、この時、油の流動帯電による静電気防止にBTA(ベンゾトリアゾール)を添加して、静電気の発生を防止している。本形態に係る導電性向上剤は化学的にも安定で熱に対しても強く、鉱油や炭化水素系合成油に対しても溶解しやすい。更に窒素原子を含むポリマーを含有する導電性向上剤は、鉄及び非鉄金属に対しても反応し難く、金属表面の清浄性にも優れているところから、当該BTAの代用にも応用できるものと考えられる。
1.組成材料
(1)基油
実施例及び比較例にて使用した基油1〜9は表1の性状を示すものである。ここで、40℃動粘度、100℃動粘度は、JIS K 2283「原油及び石油製品−動粘度試験方法及び粘度指数算出方法」によって得られる値である。また、粘度指数は、JIS K 2283「原油及び石油製品-動粘度試験方法及び粘度指数算出方法」に準拠して得られる値である。流動点(P.P)についてはJIS K 2269、引火点についてはJIS K 2265−4(COC:クリーブランド開放法)、硫黄分についてはJIS K 2541(放射線励式起法)、導電率(室温20℃)についてはJIS K 2276、%CA、%CN及び%CPについてはASTM D3238、を各々用いて得た。
(2)ポリマー添加剤
実施例及び比較例にて使用したポリマー添加剤1〜8の組成を表2に示す。各ポリマー添加剤の分子量については、昭和電工株式会社製、高速液体クロマトグラフィーのShodex GPC−101を使用し、測定条件は、温度は40℃、検出器は示差屈折率検出器(RI)、キャリア流量はTHF−1.0ml/min(Ref 0.3ml/min)、試料注入量は100μl、カラムは{KF−G(Shodex)×1、KF−805L(Shodex×2)}、とし、ピークの分子量2,600〜690,000に相当する範囲を使用して、平均分子量(ポリスチレン換算における重量平均分子量、数平均分子量及びZ平均分子量)を解析(算出)した。ここで、ポリマー1及びポリマー2については、それぞれオレフィンコポリマー及びポリメタクリレート系のポリマーである。これらポリマーは、もともと分子中に含むカルボニル基を除外すれば、ヘテロ原子(窒素、リン、又は酸素原子)を含む極性基(例えば、アミノ基、水酸基又はリン酸基等)は有していない。ポリマー3、ポリマー4、ポリマー5、ポリマー6、ポリマー7及びポリマー8は、表2の備考欄に示したように、窒素、リン又は酸素原子等のヘテロ原子を含む極性基を導入されたオレフィンコポリマー及びポリメタクリレート系のポリマーである。
2.潤滑油組成物の調製
上記した組成材料(基油1〜9及びポリマー1〜8)を用いて、表3、4及び5に示す組成により、実施例1〜24、比較例1〜6の潤滑油組成物を調製した。
3.試験
各種ポリマーの潤滑油組成物に対する粘度指数向上効果と導電率向上効果を見るために、実施例1〜24及び比較例1〜6の潤滑油組成物について各種試験を行った。各油はそれぞれの基油へポリマーを添加し、油温70℃にて30分撹拌、一昼夜室温にて静置した後試験を行った。
(1)導電率
導電率の測定はJIS K 2276−2003、18.導電率試験方法に準拠し、Emcee Electronics社製1152型ポータブル導電率計を使用して測定を行った。測定手順は、パイレックス(登録商標)製の500mlの試料容器に加温された試料を400ml充填し、熱電対により油温を測定すると同時に導電率を測定した。尚、JIS K 2276、18.7に参考図4 導電率と油温の関係図 が表記されるが、この図からもわかるように導電率と油温との間に関係式(A):Y=AeBtが導き出される{Yは試料の導電率(pS/m)、tは摂氏温度(℃)(tとして絶対温度Kを使用しても良いが、その場合は摂氏の時に使用したA及びBの値とは異なる定数を使用する)、A及びBは使用した基油(溶媒)、ポリマーの性質やその濃度に対応した定数である}。この関係式は0℃から100℃の間で使用することが好ましいと推察される。
このように、横軸に油温、縦軸に導電率の対数を取ると、右上がりの直線である関係{式(A):Y=AeBt(又はlogY=Bt+logA)}が得られる。更に、それぞれの試料の油温における導電率の測定結果を図にプロットすることで、定数A及びBを導き出すことができる。各試料の測定値から図をプロットして定数A及びBを求め、更に定数A及びBの値と式(A)Y=AeBtを用いて、各基油の0〜100℃間における導電率を算出し、表1にそれぞれの値を示した(マイクロソフト社のエクセル2007による指数近似を利用して求めると、比較的簡単に導き出せる)。
(2)動粘度及び粘度指数
動粘度(@40℃、@100℃)の測定及び粘度指数の算出は、表1と同様にJIS K 2283に準拠した方法で値を得た。
(3)油中水分量
また、各油に含まれる水分の量をカールフィッシャー法(JIS K 2275)により測定し、100〜200ppmの範囲にあることを確認した。
4.結果及び考察
表1に、使用した基油の性状と各油温における導電率を示す。炭化水素を主体とした鉱油及び合成油の基油では、温度が上昇すると導電率が高くなる傾向にあることがわかった。しかしこれら炭化水素主体の基油のみでは、油温が50℃以下ではすべて導電率は10pS/m以下で、これらの基油を使用した油圧ポンプによる油の移送や回転する軸受等では、流動帯電による静電気の発生、電荷の蓄積が起きやすく、スパーク等による電荷の急速な放電等のトラブルが起きやすいことが考えられる。
表3及び4に、表1に示す基油−8(ポリαオレフィンからなる合成炭化水素基油)に対して、表2に示す各種のポリマーを添加して試料油を作成し、動粘度、粘度指数、導電率を測定した結果を示す。ヘテロ原子(窒素、リン、又は酸素原子)を含む極性基(アミノ基、水酸基、リン酸基)を持たないポリマー1及びポリマー2では、ポリマーを添加すると基油のみの場合よりも粘度指数が上昇し、低温における流動性が改善できることがわかる。例えば、表1の基油−5と表3の比較例3を比べれば、100℃における動粘度はほぼ同じであるが、40℃における動粘度は比較例3の方が約40%も低く、流動性が非常に良く、低温時における流動帯電が基油−5よりも相対的には発生し難い。しかし、比較例3の場合は、低温時の流動性は改善されても室温(25℃)における導電率が10pS/m以下と低いため、流動帯電は発生する可能性が高い。実施例18では、表1の基油−5と100℃の動粘度はほぼ同じで、40℃における動粘度は約50%も低く、且つ25℃における導電率が10pS/m以上を示し低温時における流動性及び導電率も高く、油圧作動油、油圧ポンプ、高速軸受油、絶縁油として用いても、流動帯電は発生し難く、使用に耐える。
表5に、表1に示す各種の炭化水素系基油に対してポリマー4を添加して試料油を作成し、動粘度、粘度指数、導電率を測定した結果を示す。表5における実施例23と表1の基油4又は基油7と比べてもわかるように、100℃における動粘度はほぼ同等でも、粘度指数が高いため40℃における動粘度は実施例23では低いため流動性は良く、なおかつ室温(25℃)における導電率が高いため、これらを組成物として適用した潤滑油は流動帯電が発生し難い。
以上より、本実施例に示された導電性向上剤を潤滑油組成物として利用することにより、潤滑油組成物の導電率を10pS/m以上に調整することが可能となることから、軸受油及び油圧作動油等の工業用潤滑油を始めとする各種潤滑油組成物における流動帯電を防止可能であり、更には、粘度特性を改善可能なことから各種の装置及び機械の設計として最適な潤滑油組成物を得ることが可能であることが示された。
Claims (11)
- 下記(A)、(B)、(C)及び(D)からなる群より選択される少なくとも一種の基油を含む潤滑油組成物の導電性を向上させる導電性向上剤であって、
重量平均分子量が10,000〜500,000で、分子中にヘテロ原子を含む極性基を含有するオレフィンコポリマー(OCP)及びポリ(メタ)アクリレートのうちの少なくとも一方のポリマーを含み、
前記潤滑油組成物の室温(25℃)における導電率が10pS/m以上となることを特徴とする、導電性向上剤。
(A)100℃の動粘度が2〜12mm2/s、硫黄分が0.7質量%以下、粘度指数が90以上、ASTM D3238による%CAが5以下且つ%CPが60以上の、API(米国石油協会)の基油カテゴリーでグループ1に分類される基油
(B)100℃の動粘度が2〜12mm2/s、硫黄分が0.03質量%未満、粘度指数が100〜160の、API(米国石油協会)の基油カテゴリーでグループ2又は3に分類される基油からなる群より選択される少なくとも1種以上の基油
(C)100℃の動粘度が2〜12mm2/sの、APIのグループ4基油に分類されるポリアルファオレフィン及び/又はポリブデン
(D)100℃の動粘度が2〜12mm2/sの、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン及び/又はアルキルジフェニルアルカン - 前記ポリマーが、窒素原子、酸素原子又はリン原子のうち少なくとも一種又は複数種のヘテロ原子を含む基を極性基として有する、オレフィンコポリマー(OCP)及びポリ(メタ)アクリレートのうちの少なくとも一方である、請求項1記載の導電性向上剤。
- 前記ポリマーは、
前記ヘテロ原子が窒素原子であり、
前記極性基がアミノ基又はイミノ基であり、
ポリマー中の窒素含有量が0.1質量%以上の、オレフィンコポリマー(OCP)及びポリ(メタ)アクリレートのうちの少なくとも一方である、請求項1又は2記載の導電性向上剤。 - 前記ポリマーの有する前記アミノ基又はイミノ基の少なくとも一部が、スクシンイミド誘導体、ポリエチルアミン誘導体、モルホリン誘導体及びN−ビニル−2−ピロリドン誘導体より選択される少なくとも一種以上の誘導体によって導入された、オレフィンコポリマー(OCP)及びポリ(メタ)アクリレートのうちの少なくとも一方である、請求項3記載の導電性向上剤。
- 前記ポリマーが、下記式(1)若しくは(3)で示されるポリ(メタ)アクリレート又は下記式(2)で示されるオレフィンコポリマーである、請求項4記載の導電性向上剤。
- 前記ポリマーは、
前記ヘテロ原子が酸素原子であり、
前記極性基が水酸基であり、
ポリマー中の前記水酸基の水酸基価が20mgKOH/g以上を示す、オレフィンコポリマー(OCP)及びポリ(メタ)アクリレートのうちの少なくとも一方である、請求項1又は2記載の導電性向上剤。 - 前記ポリマーは、
前記ヘテロ原子がリン原子であり、
前記極性基がリン酸エステル基又はホスホノ基であり、
ポリマー中のリン濃度が0.05質量%以上の、オレフィンコポリマー(OCP)及びポリ(メタ)アクリレート(PMA)のうちの少なくとも一方である、請求項1又は2記載の導電性向上剤。 - 前記ポリマーの有する前記リン酸エステル基の少なくとも一部が、アルキルリン酸エステルを基本構造とするリン酸基によって導入された、オレフィンコポリマー(OCP)及びポリ(メタ)アクリレートのうちの少なくとも一方である、請求項8記載の導電性向上剤。
- 請求項1〜10のいずれか一項に記載された導電性向上剤と、前記(A)、(B)、(C)及び(D)からなる群より選択される少なくとも一種の基油と、を少なくとも含有する潤滑油組成物。
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