以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、図面においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数が誇張又は簡略化して図示されている場合がある。
<1. 実施形態>
図1は、実施形態に係る医療用X線撮影装置1の概略斜視図である。図2は、セファロスタット43が装着された医療用X線撮影装置1の部分正面図である。図3は、医療用X線撮影装置1の構成を示すブロック図である。
医療用X線撮影装置1は、撮影領域CAを設定するとともに、表示手段として機能する操作表示部61、62と、該操作表示部61によって設定された撮影領域CAに対してX線撮影を実行して、X線の投影像を表す投影データ(フレームデータ)を収集する本体部2と、本体部2において収集された投影データを処理して、各種画像を生成する画像処理装置8とに大別される。
本体部2の本体制御部60、画像処理装置8の制御部803と画像処理部801b(図3参照)は、X線撮影を含むX線撮影のプログラムIMP(図示省略)に従ってX線撮影を実行する。
本体部2はX線撮影の現場において、中空の縦長直方体状の防X線室70に収容することが望ましく、本体部2と、防X線室70の壁面に装着された操作表示部61と、防X線室70の外部に配置された画像処理装置8とは、接続ケーブル83によって相互に接続されている。
本体部2は、被写体M1に向けてX線の束で構成されるX線ビームBX(後述するX線コーンビームBX1やX線細隙ビーム等)を出射するX線発生部10と、X線発生部10で出射されたあと、被写体M1を透過したX線ビームを検出するX線検出部20とを備えている。また本体部2は、X線発生部10とX線検出部20とをそれぞれ支持する支持体である旋回アーム30と、鉛直方向に延びる支柱50と、旋回アーム30を吊り下げるとともに、支柱50に対して鉛直方向に昇降移動可能な昇降部40と、本体制御部60とをさらに備えている。X線発生部10、X線検出部20、および、X線発生部10のX線検出部20側に配置されているビーム形成機構13により撮像機構3が構成されている。
X線発生部10およびX線検出部20は、旋回アーム30の回転部30cの両端部にそれぞれ吊り下げ固定されており、互いに対向するように支持されている。旋回アーム30は、鉛直方向に延びる旋回軸31を介して、昇降部40に吊り下げられている。
旋回アーム30は、正面視略逆U字状であり、回転部30cの上端部に備えた旋回軸31を旋回中心Scとして旋回する。なお、本実施形態において、昇降部40は昇降部40の上部から正面視で手前に向けて伸長する上部フレーム41を備えている。
なお、本実施形態に係る旋回アーム30は、U字状に形成されているが、その他の形状とされてもよい。例えば、旋回アームの代わりに、被写体M1の上方に固定された円柱状部材の外周部に、ボール軸受け等を介して回転可能に嵌め込まれた環状部材を採用することも考えられる。この場合、該環状部材にX線発生部10とX線検出部20とが対向するように取り付けられる。そして、環状部材が円柱状部材の外周部を回転移動することにより、X線発生部10およびX線検出部20を、被写体M1の頭部M10を挟んだ状態で、該頭部M10周りに回転させることができる。
以下においては、旋回軸31の軸方向と平行な方向(ここでは、鉛直方向、すなわち縦方向)を「Z軸方向」とし、このZ軸に交差する方向を「X軸方向」とし、さらにX軸方向およびZ軸方向に交差する方向を「Y軸方向」とする。なお、X軸およびY軸方向は任意に定め得るが、ここでは、被写体M1である被検者が医療用X線撮影装置1において位置決めされて支柱50に正対したときの、被検者の左右の方向をX軸方向とし、被検者の前後の方向をY軸方向と定義する。X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向は、本実施形態では互いに直交するものとする。また、以下において、Z軸方向を鉛直方向、X軸方向とY軸方向の2次元方向で規定される平面上の方向を水平方向と呼ぶこともある。「Z軸方向」を「Z方向」、「X軸方向」を「X方向」、「Y軸方向」を「Y方向」と呼ぶことがありうる。
これに対して、旋回する旋回アーム30上の三次元座標については、X線発生部10とX線検出部20とが対向する方向を「y軸方向」とし、y軸方向に直交する水平方向を「x軸方向」とし、これらx軸およびy軸方向に直交する鉛直方向を「z軸方向」とする。以下において、「z軸方向」を「z方向」、「x軸方向」を「x方向」、「y軸方向」を「y方向」と呼ぶことがありうる。
本実施形態および以降の各実施形態では、z軸方向とZ軸方向は平行となっている。また、本実施形態に係る旋回アーム30は、鉛直方向に延びる旋回軸31を回転軸(旋回軸)として旋回する。したがって、xyz直交座標系は、XYZ直交座標系に対してZ軸(=z軸)周りに回転することとなる。
また、本実施形態においては、図1に示したように、被検者が支柱50に正対したときの右手方向を(+X)方向、背面方向を(+Y)方向、鉛直方向上向きを(+Z)方向としている。また、X線発生部10、X線検出部20を上から平面視したときにX線発生部10からX線検出部20へ向かう方向を(+y)方向、(−y)側から(+y)方向に向いたときの左手方向を(+x)方向、鉛直方向上向きを(+z)方向としている。
昇降部40は、上部フレーム41(第一支持体保持部)と下部フレーム42とで構成されており、鉛直方向に沿って立設された支柱50に係合している。支持体30の保持部として機能する上部フレーム41には、旋回軸31が取り付けられている。昇降部40が支柱50に沿って鉛直方向に移動することによって、支持体としての旋回アーム30が上下に移動する。
なお、旋回アーム30を旋回させる構造としては、上部フレーム41に対しては旋回不能に取り付けられた旋回軸31に対し、旋回アーム30を旋回可能に設け、旋回アーム30を旋回軸31に対して旋回駆動するようにしてもよい。また、上部フレーム41に対して旋回可能に設けた旋回軸31に旋回アーム30を旋回不能に固定し、旋回軸31を旋回駆動することで旋回アーム30を旋回するようにしてもよい。
前者の場合、例えば、不図示のベルトやプーリ等の動力伝達機構により、旋回用モータ(支持体旋回駆動部)の回転力が、旋回アーム30に作用させることができる。例えば、旋回用モータを旋回アーム30内部に固定し、旋回用モータの回転軸に固定したプーリと旋回軸31の双方に環状のベルトをかけ渡し、旋回用モータの回転力が旋回アーム30に作用するよう構成する。この場合、旋回軸31と旋回アーム30との間にはベアリング等の軸受部材を介在させればよい。
また、上部フレーム41に、旋回軸31を中心として、旋回アーム30を旋回させる旋回用モータを設け、不図示のベルトやプーリ、回転軸等からなり、旋回軸31中を通る伝達機構により、旋回用モータによる回転力が旋回アーム30に伝達されることで、旋回アーム30が旋回するようにしてもよい。
無論、後者のように、上部フレーム41に対して旋回可能に設けた旋回軸31に旋回アーム30を旋回不能に固定し、旋回軸31を旋回駆動することで旋回アーム30を旋回する構造を採用してもよく、この場合、旋回用モータを上部フレーム41内部に固定し、不図示のローラ等の伝達機構により、旋回用モータの回転力が旋回軸31の回転に作用するようにすることができる。この場合、旋回軸31と上部フレーム41との間にはベアリング等の軸受部材を介在させればよい。
また、本実施形態では、旋回軸31は、鉛直方向に沿って延びるように構成されている。しかしながら、旋回軸31を、鉛直方向に対して任意の角度で傾けて配置することも考えられる。
旋回軸31と旋回アーム30の間には、不図示のベアリングが介在している。このため、旋回アーム30は、旋回軸31に対してスムーズに回転することができる。なお、旋回軸31、ベアリング、ベルトやプーリ、回転軸等からなる伝達機構および旋回用モータは、旋回アーム30を旋回させる旋回部201(図3参照。旋回軸31が旋回部201の外に存在しているように示してあるが、これは旋回アーム30に旋回軸31が接続されることを示すためである。)の一例である。つまり、旋回部201は、旋回アーム30(支持体)を被写体(被検者)M1の頭部M10に対して、旋回軸31周りに相対的に旋回させる。これにより、旋回部201は、X線発生器10aおよびX線検出器21を被写体M1の頭部M10周りに相対的に旋回させる。なお、撮影領域に該当する部分、撮影領域を含む個体(上述の場合は被検者)、個体のうちの撮影領域を含む一部(上述の場合は頭部)はいずれも被写体と考えられる。
X線検出器21は、受光したX線の強度に応じて、電気信号を出力する、平面状に並べられた複数のX線センサで構成されている。X線センサとしては、MOSセンサ、CMOSセンサが好適であるが、フレーム画像が得られるのであれば、どのような電気的撮像センサであっても構わない。具体的には、CCDセンサやTFTを含んだその他の固体撮像素子を用いることも可能である。また、イメージインテンシファイア(I.I.)を用いてもよい。
本実施形態では、上部フレーム41に対して回転しない旋回軸31に対して旋回アーム30が旋回する。しかしながら、前述のとおり、旋回アーム30に固定された旋回軸31を上部フレーム41に対して回転させることで、旋回アーム30を旋回させることも考えられる。この場合、上部フレーム41側に、旋回軸31を回転可能に支持するベアリングが形成される。
また、本体部2は、旋回アーム30を被写体M1の頭部M10に対して旋回軸に垂直な方向(X方向、Y方向又はX方向とY方向の成分を持つ方向)に相対的に移動させる移動部202を備えている。移動部202は、上部フレーム41側又は旋回アーム30に固定される不図示のXYテーブルで構成することができる。このようなXYテーブルは、X軸方向に移動するテーブル部材、Y軸方向に移動するテーブル部材、および、これらのテーブル部材をX軸方向又はY軸方向に移動させるためのモータ類等で構成される。XYテーブルが上部フレーム41に固定される場合は、旋回軸31の上端部にXYテーブルが固定される。この場合、XYテーブルが駆動されることにより、旋回軸31とともに旋回アーム30が旋回軸31に垂直な方向へ移動する。また、XYテーブルが旋回アーム30側に固定される場合は、旋回軸31の下端部にXYテーブルが固定される。この場合、旋回アーム30のみが、旋回軸31に垂直な方向に移動することとなる。
なお、上述のXYテーブルを用いて、機械的な旋回軸である旋回軸31とは別の箇所にX線発生器10aとX線検出器21との旋回中心を定めることも可能である。
例えばCT撮影においては、Z方向からX線発生器10aとX線検出器21と撮影領域CAを見下ろした状態で、X線発生器10aとX線検出器21の中心を結ぶ線上に撮影領域CAの中心が設定される。そして、旋回軸31の軸中心がX線発生器10aとX線検出器21の中心を結ぶ線上の撮影領域CAとは別の箇所に設定される。このような幾何学的条件下において、旋回アーム30を旋回軸31周りに旋回させるとともに、旋回アーム30の旋回角度と同じ角度分、XYテーブルが、旋回軸31を撮影領域CAの中心周りに回動させる。これにより、線発生器10aとX線検出器21が撮影領域CAの中心を旋回中心にして旋回しつつ撮影領域CAにX線コーンビームを照射してCT撮影する構成も可能である。
このような撮影を実現する構成は、本願出願人の出願にかかる特許文献2(特開2007−29168号公報)又は特許文献3(国際公開第2009/063974号)に開示されており、本願においても適宜摘要可能である。
このように、本実施形態では、旋回部201および移動部202により構成される移動機構200により、旋回アーム30を被写体M1の頭部M10に対して相対的に移動させることができる。ただし、移動機構はこのような構成に限定されるものではない。例えば、移動機構が、被写体M1自体を、所定の回転軸周りに回転させたり、あるいは、その回転軸に垂直な方向に移動させたりするように、本体部2を構成してもよい。
下部フレーム42には、人体である被写体M1の頭部M10を左右の両側から固定するヘッドホルダや、顎を固定するチンレスト等で構成される、被写体保持部421が設けられている。
旋回アーム30は、被写体M1の身長に合わせて昇降部40が昇降することにより、適当な位置に配置される。そして、その状態で被写体M1が被写体保持部421に固定される。なお、被写体保持部421は、図1に示される例では、被写体M1の体軸MX1が旋回軸31の軸方向とほぼ同じ方向となるように被写体M1を保持する。なお、本願でいう「体軸」とは、人体をその正面から見て、該人体をおおむね左右対称と考えたときに設定される対称軸をいう。
昇降部40および移動機構200は、本体制御部60の支持体駆動制御部602(図3参照)により、その動作が制御される。
本体制御部60は、本体部2の各構成の動作を制御する制御部であり、例えば、X線規制制御部および駆動制御部として機能する。本体制御部60は、図1に示されるように、X線検出部20の内部に配置されている。
また、本体制御部60の外側、すなわちX線検出部20の+y側の面には、各種命令を入カするためのボタン類、又は、各種情報を表示するタッチパネルで構成された操作表示部62が取り付けられている。
本体部2を収容する防X線室70の壁の外側には、本体制御部60に接続され、各種命令を入力操作するためのボタン等や各種情報を表示するタッチパネルで構成された操作表示部61が取り付けられている。
なお、操作者(例えば、術者)は操作表示部62を介して本体部2を操作するようにしてもよいし、操作表示部61を介して本体部2を操作するようにしてもよい。操作表示部62と操作表示部61とで操作内容や表示内容が、異なっていてもよい。あるいは、操作表示部62と操作表示部61とで、操作内容や表示内容の一部あるいは全部が、共通するようにしてもよい。
また、防X線室70が省略される等の場合は、操作表示部61が省絡されてもよい。また、操作表示部62と操作表示部61のどちらか一方を省略することもできる。以下においては、操作表示部61による表示や操作について説明するが、操作表示部62による表示や操作に置き換えてもよい。
操作表示部61は、生体器官等の撮影領域の位置等を指定すること等にも用いられる。また、X線撮影には各種のモードがあるが、操作表示部61の操作によって、モードの選択ができるように構成してもよい。
画像処理装置8は、画像処理本体部80と、例えば液晶モニタ等のディスプレイ装置で構成される表示部81、および、キーボードやマウス等で構成される操作部82を備えている。操作者(術者等)は、操作部82を介して画像処理装置8に対して各種指令を入力することができる。なお、表示部81は、タッチパネルで構成されていてもよく、この場合は、表示部81が操作部82の機能の一部又は全部を備えていてもよい。
本体部側の操作表示部61、62で可能な操作は全て画像処理装置側の操作部82でも操作可能に構成してもよく、ほぼ全ての操作を操作部82で行うように構成してもよく、操作表示部61、62を省略して全ての操作を操作部82で行うように構成してもよい。
画像処理本体部80は、例えばコンビュータやワークステーション等で構成されている。画像処理本体部80は、通信ケーブルである接続ケーブル83を介して、本体部2との問で各種データを送受信する。ただし、本体部2と画像処理本体部80との間で、無線通信によるデータ通信が行われてもよい。
画像処理装置8は、例えば、本体部2で取得された投影データを加工して、ボクセルで表現される三次元データ(ボリュームデータ)を再構成する。例えば、この三次元データに特定の裁断面を設定し、その特定の裁断面における断層画像が再構成される。
なお、医療用X線撮影装置1は、X線撮影によりフレームデータのみを収集する装置として利用することも想定される。このような場面では、画像処理装置8を省略することも考えられる。
図2に示されるように、医療用X線撮影装置1にセファロスタット43を装着してもよい。セファロスタット43は、例えば、昇降部40の途中から水平方向に延びるアーム501に取り付けられる。セファロスタット43には、頭部M10を定位置に固定するための固定具431や、セファロ撮影用のX線検出器432が備えられる。なお、セファロスタット43は、例えば、特許文献4(特開2003−245277号公報)に開示されているセファロスタット、又は、これに類するものを採用することができる。
<照射方向変更部>
図4は、ビーム形成機構13(X線規制部)の概略斜視図である。図5は、照射範囲が規制されたX線コーンビームBX1を照射しているX線発生部10の概略斜視図である。図6および図7は、縦方向遮蔽板14および横方向遮蔽板15の位置調整についての説明図である。さらに図8および図9は、2枚のL型遮蔽板18,18の位置調整についての説明図である。
旋回アーム30において、X線検出部20に対向配置されたX線発生部10は、ハウジング11に収容されたX線管を含むX線発生器10aを備えている(図3参照)。なお、ハウジング11の前面には、X線管で発生したX線の通過を許容する出射口12が設けられている。そして、出射口12の前方(図4における手前側であり、X線発生部10に対してy軸方向の−y方向寄りの側)に、X線規制部として機能するビーム形成機構13が配置されている。
ビーム形成機構13は、X線の照射方向を、縦方向(z軸方向)に移動して遮蔽する縦方向遮蔽板14と、横方向(x軸方向)に移動して遮蔽する横方向遮蔽板15と、縦方向遮蔽板14および横方向遮蔽板15をそれぞれ移動させる遮蔽板移動機構16とで構成されている。遮蔽板移動機構16は、図3に示されるX線規制部駆動部101の一例である。ビーム形成機構13(具体的には、遮蔽板移動機構16)の駆動制御は、本体制御部60のX線規制部駆動制御部により行われる。縦方向遮蔽板14と横方向遮蔽板15は、X線発生器10aから発生したX線の遮蔽量を制限可能に規制するために用いられる、X線遮蔽部材の例である。
縦方向遮蔽板14は、出射口12の正面視上下(+z側および−z側)のそれぞれに配置された、横長板状の上側縦方向遮蔽板14aおよび下側縦方向遮蔽板14bで構成されている。また、横方向遮蔽板15は、出射口12の正面視左右(−x側および+x側)のそれぞれに配置された、縦長板状の左側横方向遮蔽板15aおよび右側横方向遮蔽板15bで構成されている。なお、図4に示される例では、横方向遮蔽板15が縦方向遮蔽板14のハウジング11側(−y側)に配置されている。しかしながら、縦方向遮蔽板14を横方向遮蔽板15のハウジング11側に配置されていてもよい。
遮蔽板移動機構16は、上側縦方向遮蔽板14a、下側縦方向遮蔽板14bをそれぞれ縦方向に移動させる一対の遮蔽板縦方向移動機構16aと、左側横方向遮蔽板15a、右側横方向遮蔽板15bをそれぞれ横方向に移動させる一対の遮蔽板横方向移動機構16bとで構成されている。
遮蔽板縦方向移動機構16aは、上側縦方向遮蔽板14a、下側縦方向遮蔽板14bのそれぞれに取り付けられているナット部材141と、ナット部材141が螺合するとともに縦方向に延びる縦方向ネジシャフト161aと、ネジシャフト161aを正・逆回転させる位置調整モータ162a(162)と、を備えている。位置調整モータ162aの駆動によりネジシャフト161aが正回転又は逆回転することで、ナット部材141が縦方向に沿って上下に移動する。これにより、上側縦方向遮蔽板14a、下側縦方向遮蔽板14bは、独立して、縦方向に移動する。本体制御部60(具体的には、X線規制部駆動制御部)の制御に基づき、遮蔽板縦方向移動機構16aは、X線発生器10aから出射されたX線ビームの縦方向に関する遮蔽量を、上側縦方向遮蔽板14a、下側縦方向遮蔽板14bにより調整する。
遮蔽板縦方向移動機構16aは、X線ビームの縦方向、すなわち旋回軸31の軸方向に関する広がり(照射範囲)を調整することで、照射方向(照射範囲の中心線が延びる方向)を制御する、第1昇降機構の一例である。
なお、上側縦方向遮蔽板14a、下側縦方向遮蔽板14bのそれぞれには、規制筒状体142が取り付けられている。規制筒状体142には、縦方向に沿って貫通する貫通孔が形成されている。また、規制筒状体142には、縦方向に延びる規制シャフト143が嵌挿されており、規制筒状体142の縦方向の移動が規制シャフト143によって規制されている。このため、上側縦方向遮蔽板14a、下側縦方向遮蔽板14bは、傾くことなく縦方向に移動する。
遮蔽板横方向移動機構16bは、左側横方向遮蔽板15a、右側横方向遮蔽板15bのそれぞれに取り付けられたナット部材161と、ナット部材161が螺合するととともに横方向に延びる横方向ネジシャフト161bと、ネジシャフト161bを正・逆回転させる位置調整モータ162b(162)と、を備えている。位置調整モータ162bの駆動によりネジシャフト161bが正・逆回転することで、ナット部材161が横方向に沿って左右に移動する。これにより、左側横方向遮蔽板15a、右側横方向遮蔽板15bは、独立して、横方向に移動する。本体制御部60の制御に基づき、遮蔽板横方向移動機構16bは、X線発生器10aから出射されたX線ビームの横方向に関する遮蔽量を、左側横方向遮蔽板15a、横方向遮蔽板15bにより調整する。遮蔽板横方向移動機構16bは、X線ビームの横方向に関する照射範囲を調整する。
なお、左側横方向遮蔽板15a、右側横方向遮蔽板15bのそれぞれには、規制筒状体152が取り付けられている。規制筒状体152には、横方向に沿って貫通する貫通孔が形成されている。また、規制筒状体152には、縦方向に延びる規制シャフト153が嵌挿されており、規制筒状体152の横方向の移動が規制シャフト153によって規制されている。このため、左側横方向遮蔽板15a、右側横方向遮蔽板15bは、傾くことなく横方向に移動する。
このように、本実施形態では、ビーム形成機構13が縦方向遮蔽板14、横方向遮蔽板15および遮蔽板移動機構16で構成され、該ビーム形成機構13がX線発生部10における出射口12の前方に配置される。これにより、X線発生部10にて発生したX線の照射範囲が遮蔽により規制され、X線検出部20に向けて角錐台状に広がるX線コーンビームBX1が形成されることとなる(図5参照)。
詳細には、上側縦方向遮蔽板14aおよび下側縦方向遮蔽板14bにおける対向縁部14c、14c間の間隔が、遮蔽板縦方向移動機構16aによって調整され、左側横方向遮蔽板15aおよび右側横方向遮蔽板15bにおける対向縁部15c、15c間の間隔が、遮蔽板横方向移動機構16bによって調整される。そして、対向縁部14c、14cおよび対向縁部15c、15cによって、所望形状のX線コーンビームBX1を形成するための正面視四角形状の開口17がX線発生器10aの手前に形成される。
例えば、図6に示されるように、対向縁部14c、14c間の間隔が広く調整され、対向縁部15c、15c間の間隔が広く調整されることで、開口17が正面視において比較的大きな正方形状の大照射野用開口17aとなる。大照射野用開口17aを通過したX線は、断面が正方形となり、X線検出部20に向けて正四角錐台状に広がるX線コーンビームBX1となる。
また、図7に示されるように、対向縁部14c、14c間の間隔が広く調整され、対向縁部15c、15c間の間隔が狭く調整されることで、開口17が正面視縦長である長方形状のパノラマ撮影用開口17cとなる。パノラマ撮影用開口17cを通過したX線は、X線検出部20に向けて縦長角錐台状に広がるX線細隙ビームとなる。
なお、図8、9に示されるように、ビーム形成機構が、開口17の中心に対して点対称配置された、正面視L型の2枚のL型遮蔽板18、18により、構成されていてもよい。この場合、開口17が、2枚のL型遮蔽板18、18の内角部を構成する縁部18a、18aによって、構成される。
例えば、開口17の形状は、遮蔽板縦方向移動機構16a、遮蔽板横方向移動機構16bの両方を設け、各L型遮蔽板18、18を縦方向および横方向に移動することで調整することができる。
例えば、遮蔽板横方向移動機構16bと同様の横方向移動機構によって横方向に変位する不図示の基台上に、遮蔽板縦方向移動機構16aと同様の縦方向移動機構を設け、この縦方向移動機構によって、1枚のL型遮蔽板18を縦方向に変位させる。このような横方向移動機構、基台、縦方向移動機構によって、各L製遮蔽板18を縦方向又は横方向に移動させることができる。例えば、図8に示すように、開口17を拡げることで、X線コーンビームBX1を成形することが可能であるし、図9に示すように、開口17を細長くすることで、X線細隙ビームを形成することが可能である。
医療用X線撮影装置1においては、昇降部40、X線形成機構13により、被写体M1の頭部M10に対するX線ビームBXの照射方向を、体軸MX1の軸方向に関して相対的に変更することができる。X線形成機構13は、照射方向変更部の一例である。
<撮影モード選択画面>
図10は、撮影モードを設定するための、撮影モード設定画面MSWを示す図である。図10に示される撮影モード設定画面MSWは、擬似口内法撮影モードボタンFIM、パノラマ撮影モードボタンPM、CT撮影モードボタンCM、および、セファロ撮影モードボタンSMを備えている。擬似口内法撮影モードボタンFIMは、擬似口内法撮影モードを選択するためのボタンである。パノラマ撮影モードボタンは、パノラマ撮影モードを選択するためのボタンである。CT撮影モードボタンCMは、CT撮影モードを選択するためのボタンである。セファロ撮影モードボタンは、セファロ撮影モードを選択するためのボタンである。
撮影モード選択画面MSWは、医療用X線撮影装置1を起動したあと、撮影を開始する前に、例えば、操作表示部61又は操作表示部62に表示される画面である。オペレータは、撮影モード選択画面MSWを介して、所望の撮影モードを選択する。すると、本体制御部60のモード設定部601(図3参照)が、本体制御部60の撮影モードを、選択された撮影モードに設定する。これにより、医療用X線撮影装置1において、設定された種類のX線撮影に応じた撮影条件(撮影領域の位置、形状等)の設定等が実行可能となる。
擬似口内法撮影モードは、擬似口内撮影を行うモードである。擬似口内法撮影は、歯列の一部の領域(例えば、数本の歯)を撮影対象とする、従来の口内法撮影(デンタル撮影)を、医療用X線撮影装置1で擬似的に行うものである。ここで、従来の口内法撮影で得られるX線画像は、従来X線フィルム等を口腔内に装着して、X線を一方向から照射して得られる単純投影画像である。これに対して、擬似口内法撮影では、断層画像によってこの単純投影画像と同等の画像又は同等の診断を可能とする画像を生成する。
より具体的に、擬似口内法撮影では、撮影領域(擬似口内法撮影領域)の全部を含むように照射範囲が規制されたX線コーンビームBX1が形成される。そして、撮影領域に対するX線コーンビームBX1の照射が、複数方向(所用範囲の各方向)から行われ、フレームデータを得られる。そして画像処理装置8(画像処理部801b)が、得られたフレームデータについて画像処理をして、目的とする断層面の断層画像を得る。画像処理としては、例えばシフト加算法を適用して、フレームデータが示すX線投影画像同士の重ね合わせを行うことで、断層画像を再構成する。このように再構成された断層画像は、厳密には、従来の口内法撮影で得られるX線画像とは性質が異なるものの、画像診断上は極めて近い画像となっている。
なお、本願において、「シフト加算」とは、X線の照射方向を変えて得られた投影画像を重ね合わせることで、任意の高さの断層画像を得る方法をいう。具体的には、X線の照射方向を変えることで、目的断層面の共通の位置を通過するX線が、各フレームデータ毎に異なる位置に写り込む。そこで、この異なる位置が一致するように、フレームデータ同士をシフトさせて重ねることにより、目的断層面を強調させることができる。
なお、断層画像を生成する手法は、このシフト加算に限定されるものではない。例えば、CT画像の再構成で用いるようなフィルター逆投影、又は、これに類似の逆投影で断層画像を再構成してもよい。
シフト加算とフィルター逆投影又はこれに類似の逆投影の双方を行って複数種の断層画像を再構成し、同時表示したり交代で表示したりしてもよい。
また、上述の例では、照射範囲が規制されたX線コーンビームBX1が撮影領域(擬似口内法撮影領域)の全部を含むように照射しつつ擬似口内法撮影を行うが、X線ビームBXの水平方向の幅をさらに狭めて、パノラマ撮影に用いるようなX線細隙ビームを形成して、撮影領域(擬似口内法撮影領域)を水平方向に走査するようにしてもよい。すなわち、いわば擬似口内法撮影領域という限られた領域に限定したパノラマ撮影類似のX線撮影により擬似口内法撮影を行うようにしてもよい。
パノラマ撮影モードは、パノラマ撮影(パノラマ線撮影)を行うモードである。パノラマ撮影では、X線細隙ビームに形成されたX線ビームを、歯列弓に沿って歯列に照射することで、フレームデータが取得される。画像処理装置8(画像処理部801b)は、フレームデータが示す投影画像の端部同士(ただし、重複部分が生じても構わない。)をつなぎ合わせていくことで、1枚のパノラマ画像(パノラマX線画像)を生成する。
パノラマ撮影では、歯列弓をなぞるようにX線細隙ビームを照射される。その際、好ましくは、X線細隙ビームの中心軸が、歯列弓の曲線に対して、常に直交するように、X線細隙ビームが照射される。このため、旋回部201により旋回アーム30を旋回させつつ移動部202で旋回軸31を旋回軸31の軸方向に直交する方向(XY平面に平行な方向)に適宜変位させ、X線細隙ビームの移動軌跡が包絡線を形成するように照射される。
CT撮影モードは、CT撮影を行うモードである。CT撮影では、撮影領域(CT撮影領域)の全部を含むように照射範囲が規制されたX線コーンビームBX1が形成される。そして、撮影領域に対するX線コーンビームBX1の照射が、多方向(例えば、180度以上の範囲の各方向)から行われることにより、フレームデータが得られる。そして、画像処理装置8(画像処理部801b)が、得られたフレームデータについて、フィルター逆投影法(FBP法)を適用することにより、特定の裁断面の断層画像を再構成する。
セファロ撮影モードは、セファロ撮影を行うモードである。セファロ撮影では、図2に示されるように、上述したセファロスタット43が医療用X線撮影装置1に装着され、セファロ撮影用に形成されたX線細隙ビームが、被験者の頭部M10に照射され、フレームデータが取得される。セファロ撮影用のX線検出器432はY方向に変位可能に構成されており、遮蔽板移動機構16を作動させてX線細隙ビームが頭部M10をY方向に走査するのと同期して変位し、セファロ撮影中にX線細隙ビームを常に受光しつつフレームデータを取得するようになっている。画像処理装置8(画像処理部801b)は、取得されたフレームデータが示す投影画像の端部同士(ただし、重複部分が生じても構わない。)をつなぎ合わせることで、頭部M10全体の投影画像(頭部X線規格写真)を生成する。
<撮影領域設定画面>
図11は、撮影領域CAを設定するための、撮影領域設定画面300を示す図である。図11に示される撮影領域設定画面300は、画像表示部310、上下顎選択部320、選択範囲設定部330および条件設定部340を備えている。条件設定部340は、Setボタン341、Resetボタン342、Startボタン343、Modeボタン344、Returnボタン345を備えている。
画像表示部310には、歯列弓画像211、各点を指定するための指定カーソル312、および、指定カーソル312によって指定された中心と、後述する選択範囲設定部330で指定された半径に応じた真円状の撮影領域ライン313が重畳表示される。歯列弓画像211は、標準的な大きさである歯列の平面図を模式化した模式図となっている。基本的には、撮影領域ライン313で囲まれる領域が、1回のCT撮影を通じて180°分以上のX線照射を受ける領域と一致する。
上下顎選択部320は、撮影領域CAを上顎に設定するためのUPPERボタン321と、上顎および下顎の両方に設定するためのFULLボタン322と、下顎に設定するためのLOWERボタン323とで構成されている。この上下顎選択部320を介した選択により、例えば、CT撮影についていえば、本体部2の撮影モードが、上顎および下顎の双方にわたる領域をCT撮影の対象領域とするCT撮影モード(第1CT撮影モード)、又は、上顎および下顎のいずれか一方の領域をCT撮影の対象領域とするCT撮影モード(第2CT撮影モード)のどちらかに、設定される。
条件設定部340は、Setボタン341と、Resetボタン342と、Startボタン343と、Modeボタン344と、Returnボタン345とで構成されている。Setボタン341は、画像表示部310、上下顎選択部320および選択範囲設定部330を介して設定された、撮影領域CAの指定内容を決定するために操作される。Resetボタン342は、画像表示部310、上下顎選択部320および選択範囲設定部330で設定された撮影領域CAの指定内容をリセットする際に操作される操作ボタンである。
Startボタン343は、Setボタン341で確定された指定内容に基づいてCT撮影領域CAの撮影を開始指示する操作ボタンである。Modeボタン344は、各種モードを選択するためのボタンである。Modeボタン344が選択操作されることにより、このボタンが選択操作されることにより、図10に示した撮影モード選択画面MSWが表示される。このため、Modeボタン344は、擬似口内法撮影モードと、CT撮影モードと、パノラマ撮影モードと、セファロ撮影モードとの間で、撮影モードを切り替えるためのボタンである。つまり、Modeボタン344は、医療用X線撮影装置1が実行する撮影モードを切り替える撮影モード切換部として機能する。Returnボタン345は、初期画面(例えば、図10に示される、撮影モード設定画面MSW)に戻るための操作ボタンである。
この撮影領域設定画面300によると、CT撮影の撮影領域を設定したり、あるいは、擬似口内法撮影の撮影領域を設定したりすることが可能である。撮影領域CAを設定するため、操作表示部61に表示された撮影領域設定画面300において、撮影対象物OBを取り囲むように撮影領域ライン313が設定される。詳細には、撮影対象物の位置に応じて、上顎、下顎、上下額のいずれかが、上下顎選択部320にて選択される。そして、画像表示部310に表示された歯列弓画像211において、指定カーソル312により撮影領域ライン313の中心が指定され、テキストボックス331に撮影領域ライン313の半径(又は直径)が入力される。このようにして、局所的撮影対象物が撮影領域ライン313に取り囲まれるよう、撮影領域ライン313の位置、および、大きさが設定される。
なお、このようにして設定された撮影領域ライン313をそのまま撮影領域CAとした場合、該撮影領域CAは、平面視が真円の円柱体である。この円柱体の高さは、上下顎選択部320を介して指定された領域(上顎、下顎又は上下顎)によって定まる。CT撮影の場合は、このような円筒体の撮影領域CAについて、X線コーンビームBX1が照射されることとなる。また擬似口内法撮影の場合は、設定された撮影領域CAに含まれる歯が、撮影対象となる。したがって、操作表示部61(又は操作表示部62)は、擬似口内法撮影の撮影領域を指定する、撮影領域指定部610(図3参照)として機能する。撮影領域指定部610によって、歯列弓に沿う歯列の一部を撮影領域として指定することが可能である。
なお、CT撮影において、体軸MX1の軸方向から見た撮影領域CAの広さを決定する際に、撮影領域CAの広さを、少なくとも、「局所(例えば、顎部の一部であって直径40mm程度)」および「広域(例えば、顎部全体を含む直径100mm程度)」の少なくとも2つの中から選択できるようにしてもよい。この場合において、局所が選択されることで、本体制御部60のモード設定部601により、本体部2の撮影モードが局所CT撮影モードに設定され、広域が選択されることで、本体部2の撮影モードが広域CT撮影モードに設定される。そして、X線ビーム形成機構13が、設定されたCT撮影領域の大きさに応じたX線コーンビームBX1を形成して、局所CT撮影又は広域CT撮影が行われればよい。
また、撮影モード選択画面MSWにおいて、CT撮影モードボタンCMが選択操作された場合に、局所CT撮影モードおよび広域CT撮影モードのうちどちらかを選択する選択画面が表示されるようにしてもよい。この画面上での選択操作に基づき、局所CT撮影モード又は広域CT撮影モードの設定が行われるようにしてもよい。
また、上述の説明では、操作表示部61(又は操作表示部62)がタッチパネルで構成され、撮影領域設定画面300に表示された指定カーソル312の操作により、撮影領域CAの設定操作を受け付けられている。しかしながら、操作表示部61が液晶画面で構成され、マウス等のポインティングデバイス、あるいは、操作表示部61近傍に設置された操作ボタン類を介して、撮影領域CAの設定操作が受け付けられるようにしてもよい。
なお、撮影領域ライン313で示される撮影領域CAは歯牙ごとに定まった領域が設定されていてもよいが、大きさや位置が可変調整できるようにしてもよい。この可変調整は例えばマウス操作によってポインタで撮影領域ライン313を動かすことでなされるようにできる。このようにして調整された領域に合わせて、ビーム形成機構13によるX線コーンビームBX1の幅の調整や移動機構200による旋回アーム30の位置調整が行われる。
また、上述の説明では、操作表示部61に撮影領域設定画面300が表示されて撮影領域CAの設定操作が受け付けられている。しかしながら、撮影領域設定画面300が、画像処理装置8の表示部81に表示されるようにして、画像処理装置8において、撮影領域CAの設定操作が受け付けられるようにしてもよい。
擬似口内法撮影モードの場合にも、UPPERボタン321によって撮影領域CAが上顎に設定され、あるいは、LOWERボタン323によって撮影領域CAが下顎に設定されるようにすることも可能である。
なお、擬似口内法撮影モードの場合において、撮影領域CAを設定する際、撮影領域ライン313を用いてもよい。もしくは、図示のように、歯列弓に沿った長円形状の撮影領域ライン314を表示して、この形状に対応した撮影領域CAを設定できるようにしてもよい。
擬似口内法撮影モードの場合は、CT撮影モードの場合と異なり、特定の歯牙が撮影対象となるので、X線照射を受ける領域を厳密に撮影領域として表示する必要はない。したがって、閉領域を示す撮影領域ライン313,314ではなく、単に断層を示す線状のライン315で撮影領域が設定されるようにしてもよい。もちろん、撮影領域ライン313,314とライン315が併せて表示されるようにしてもよい。
撮影領域ライン313,314又はライン315で指定される撮影領域CAは、歯牙ごとに定まった領域が設定されていてもよいが、大きさや位置を可変調整できるようにしてもよい。この可変調整は、例えばマウス操作に基づいたポインタの移動操作で、撮影領域ライン313,314又はライン315を動かすことでなされるようにできる。このようにして調整された領域に合わせて、ビーム形成機構13によるX線コーンビームBX1の幅の調整や移動機構200による旋回アーム30の位置調整が行われる。
パノラマ撮影についても、縦方向遮蔽板14および横方向遮蔽板15の位置調整によって全顎のパノラマ撮影、上顎のみのパノラマ撮影、下顎のみのパノラマ撮影といったように、撮影対象選択できるようにしてもよい。この場合において、UPPERボタン321によって撮影領域CAを上顎に設定し、LOWERボタン323によって下顎に設定し、FULLボタン322によって上下顎すなわち全顎に設定することが考えられる。
また、歯列弓の一部の領域のみをパノラマ撮影する部分パノラマ撮影が可能なように設定することもでき、その範囲指定において擬似口内法撮影の場合と同様に撮影領域設定画面300上で撮影領域ラインを設定するようにしてもよい。なお、この際の操作については、擬似口内法撮影モードにおける、撮影領域の指定と同様に行うことが可能である。
<撮影領域設定画面のその他の例>
図12は、その他の撮影領域設定画面300Aを示す図である。撮影領域設定画面300Aは、図11に示される撮影領域設定画面300と同様に、画像表示部310A、上下顎選択部320および条件設定部340を備えている。撮影領域設定画面300Aにおける上下顎選択部320および条件設定部340の機能は、それぞれ、撮影領域設定画面300における上下顎選択部320、条件設定部340の機能と同様である。図12に示される撮影領域設定画面300Aの特徴的な点は、歯列弓をY軸方向から見た図(パノラマ画像211A)が表示される点である。
画像表示部310Aには、歯列弓画像211の代わりに、被写体M1の歯列弓領域を予めX線を用いてパノラマ撮影した、パノラマ画像211Aが表示される。画像表示部310Aでは、このパノラマ画像211A上において、撮影領域CAが設定される。図12に示される例では、撮影領域ライン313Aがまず設定される。この撮影領域ライン313Aの指定は、図示を省略するが、上述した指定カーソル312等を用いて行われる。図12において、撮影領域ライン313のサイズは、実線および二点鎖線で示されるように、任意に変更できるようにしてもよい。
画像表示部310Aにおいて、パノラマ画像311Aに対して、撮影領域CAを指定するために入力された指定情報は、画像処理装置8に送信される。画像処理装置8は、受け付けた指定情報に対応する撮影領域ライン313Aに関する情報を操作表示部61に送信する。
撮影領域ライン313Aに関する情報を受信した操作表示部61は、撮影領域設定画面300Aの画像表示部310Aに、パノラマ画像211Aと、受信した情報に基づく撮影領域ライン313Aとを重畳表示させる。重畳表示後の処理フローは、撮影領域設定画面300における処理フローと同様である。
なお、被写体保持部421に固定された被写体M1のパノラマ断層位置の三次元位置情報は、被写体保持部421と設定されているパノラマ断層位置との位置関係から、画像処理部801bによる演算処理によって容易に特定できる。したがって、パノラマ画像211Dに対して指定された位置の三次元座標は、演算により取得される。
また、パノラマ画像211Aは、医療用X線撮影装置1により取得されたものに限定されず、他の撮影装置で取得されたパノラマ画像であってもよい。この場合でも、パノラマ撮影した際の、パノラマ断層の位置情報さえ既知であれば、パノラマ画像211A上で指定された位置の三次元座標を、演算により取得することができる。
図13は、その他の撮影領域設定画面300Bを示す図である。図12に示される撮影領域設定画面300Aでは、被写体M1をパノラマ撮影して得た実写画像をパノラマ画像211Aとして画像表示部310Aに表示しているが、必ずしも実写画像である必要はない。図13に示される撮影領域設定画面300Bでは、画像表示部310Bに、実写のパノラマ画像を模したイラスト画像211Bが表示されている。このイラスト画像211Bには、右上顎、左上顎、右下顎および左下顎毎に8本の歯のイラストが描かれている。このようなイラスト画像211B上で、矩形状の撮影領域ライン313Bを設定するように構成されている。
パノラマ画像211Aは、必ずしも被写体M1をパノラマ撮影して得た実写画像でなくてもよい。例えば、標準骨格の顎部のパノラマ断層の画像、もしくは、実写のパノラマ画像を模したイラスト等がパノラマ画像211Aとして用いられてもよい。
また、上述の説明では、操作表示部61に撮影領域設定画面300が表示されて撮影領域CAの設定操作が受け付けられている。しかしながら、撮影領域設定画面300が、画像処理装置8の表示部81に表示されるようにして、画像処理装置8において、撮影領域CAの設定操作が受け付けられるようにしてもよい。
収集されたフレームデータは、逐次画像処理装置8に転送され、記憶部802に記憶される。そして収集されたフレームデータは、画像処理部801bにおいて、各撮影モードに応じて演算処理される。例えば、CT撮影の場合、フレームデータが三次元データに再構成される。画像処理部801bにおける再構成の演算処理は、所定の前処理、フィルター処理、逆投影処理等で構成される。このようなX線画像の画像処理については、周知技術を含む各種技術を適用することが可能である。
<X線ビームの照射方向>
<<パノラマ撮影時の照射方向の制御>>
図14は、パノラマ撮影時における、X線ビームBXの照射方向を説明するための図である。図14では、被写体M1の真後ろから、X線ビームBX(具体的には、X線細隙ビーム)を照射している状態を示している。図14に示される様に、パノラマ撮影では、X線ビームBXの上下が、被写体M1の頭部M10にある上顎および下顎を含んでいればよいため、X線ビームBXの照射方向は特に限定されていない。例えば、上顎前歯FT1の中心部を透過するX線UP1と上顎前歯の歯軸AX1とが成す角θUは90度ではなく、また、下顎前歯FT2の中心部を透過するX線LW1と下顎前歯FT2の歯軸AX2とが成す角θLも90度ではない。ただし、パノラマ撮影時のX線ビームBXは、好ましくはその中心軸BXCが、体軸MX1の軸方向に直交する方向(ここでは、Y軸方向等の水平方向)に対して、上向きとなるように、照射方向が制御される。
このように、X線ビームBXを上向きとすることで、歯牙・顎関節部分ではない部位の写り込みの影響を軽減することができる。
医療用X線撮影装置1においては、昇降部40、X線形成機構13により、被写体M1の頭部M10に対するX線ビームBXの照射方向を、体軸MX1の軸方向に関して相対的に変更することができる。X線形成機構13は、照射方向変更部の一例である。
また、全顎を撮影対象とするのではなく、上顎又は下顎のどちらか一方のみを撮影対象とするパノラマ撮影が行われることも考えられる。また、上顎又は下顎のうち、どちらか一方の歯列弓に沿った歯列の一部を撮影領域(部分パノラマ撮影領域)とする、部分パノラマ撮影が行われてもよい。これらの撮影では、上顎のみ又は下顎のみにX線が照射されるように、X線細隙ビームが成形することで、被曝量を低減することが望ましい。
<<擬似口内法撮影時の照射方向の制御>>
図15は、上顎前歯FT1を撮影対象とした擬似口内法撮影時における、X線ビームBXの照射方向を説明するための図である。図15に示される擬似口内法撮影は、平行法による口内法撮影に対応する。なお、図15は、被写体M1(被検者)を左から側方視したときの図であり、+y方向が−Y方向と一致している。
図15に示されるように、擬似口内法撮影では、歯列の一部である上顎前歯FT1の歯軸AX1に対して、該上顎前歯FT1の中心部を通るX線UP1が直交する(つまり、角θUが90度となる)ように、X線ビームBXが照射される。ここで、上顎前歯FT1の歯軸AX1は、上方が被写体M1の後側(つまり、+Y側)に、下方が被写体M1の前側(つまり、−Y側)に傾斜している。このため、X線ビームBXの照射方向を、上向きに制御する必要がある。
ここで、歯軸AX1に対して、X線UP1は直交することが好ましい。しかしながら、なるべく傾いていない状態の歯の画像を得たい要望に応えられればよく、略直交しておれば足りる。本願において、「略直交」とは直交を含む概念であるものとする。
また、X線検出器の検出面は歯軸AX1に対して平行か略平行になるように制御される。本願においては、このように口内法撮影の平行法による撮影を擬する擬似口内法撮影を、擬似平行法とも称する。X線ビームBXの照射方向の設定は、標準的な骨格の歯牙の歯軸AX1の傾斜に基づいて予め定められるが、操作者が入力操作できるようにしてもよい。
X線発生器10aのX線管において、陰極で発生した熱電子は陽極に衝突してX線が発生する。X線は陽極の熱電子が衝突した箇所を起点として広がりつつ進む。このX線発生の起点となるところを実焦点と呼び、X線照射を受ける方向から見た実焦点を実効焦点と呼ぶことがある。図14にて上述の実焦点、実効焦点をそれぞれ実焦点FC、実効焦点FC1で示す。上記のX線UP1はこの実効焦点FC1から発生して上顎前歯FT1の中心部を通るものである。
このようなX線ビームBXの照射を実現するため、図15に示される例では、昇降部40を駆動することにより、旋回アーム30(支持体)を、パノラマ撮影時の高さ(破線で示す)よりも下側に下降させている。このように、旋回アーム30を下げることにより、被写体M1(被験者)の頭部に対してX線発生器10aの位置(より詳細には実効焦点FC1の位置)が下がり、X線ビームBXの照射方向を上向きにすることを可能にする。つまり、昇降部40は、旋回アーム30を旋回軸31の軸方向と平行に昇降変位することで、X線ビームBXが出射される高さ位置を変更する、第3昇降機構として機能する。旋回アーム30自体を被写体M1に対して昇降するようにすることで、被写体M1を昇降させずに済む。これにより、被写体M1(被験者)に負担がかかることを抑制できる。
また、図15に示される撮影では、X線ビーム形成機構13を駆動することで、X線ビームBXの照射方向(X線ビームBXの中心軸BXCの軸方向)が上向くように制御している。このように、X線ビーム形成機構13は、被写体M1の頭部M10に対するX線ビームBXの照射方向を、体軸MX1の軸方向に対して、相対的に変更する。上述したように、X線ビームBXの照射方向は、X線形成機構13の第1昇降機構である遮蔽板縦方向移動機構16a(図4参照)により変更される。また、X線ビームBXが検出面に支障なく入射するように、第1昇降機構による照射方向の変更に連動して、第2昇降機構として機能するX線検出器駆動部45が駆動され、X線検出器21を所要の高さにまで上昇させている。X線検出器駆動部45は、本体制御部60のX線検出器駆動制御部603(図3参照)により制御される。
X線検出器駆動部45は、図示を省略するが、例えば、X線検出器21をZ方向に沿って案内する部材と、X線検出器駆動部45の基部に固定したモータの軸に固定したローラとで構成され、当該ローラをX線検出器21の背面に当接させてX線検出器21を昇降駆動することが考えられる。もしくは、X線検出器駆動部45は、X線検出器21をZ方向に沿って案内する部材と、X線検出器21の背面に固定した雌ネジ部をX線検出器駆動部45の基部に回動可能に固定した雄ネジ部とで構成され、モータを駆動源としてX線検出器21をZ方向に昇降駆動すること等も考えられる。
一般的な形状の歯列弓においては、上顎前歯FT1の歯軸AX1は、上方が被写体M1の後側(つまり、+Y側)に、下方が被写体M1の前側(つまり、−Y側)に傾斜している。一方、前歯又は前歯近傍の歯以外の歯の歯軸は舌側から頬側に向かう方向又はその反対方向に関する限りはほぼ傾斜がないので、体軸MX1の軸方向に対するX線ビームBXの照射方向は、前歯の擬似口内法撮影をするときとは異なり、水平方向になるように設定される。すなわち、擬似口内法の撮影領域の位置に応じて、体軸MX1の軸方向に対するX線ビームBXの照射方向は異なることとなる。
なお、X線発生器10aの前に配置されたスリット開口(開口17、図6等参照)を昇降させることで、X線ビームBXの照射角度を変更する代わりに、X線発生部10全体を、所定の範囲内で首振り可能として、X線ビームBXの照射角度を変更するようにしてもよい。
<X線検出器21の傾動制御>
顎前歯FT1の擬似口内法撮影を行う際、X線検出器21で得られる上顎前歯FT1のX線画像(投影像)は、上側(歯根部側)がX線検出器21の検出面23から遠く、下側(歯冠部側)がX線検出器21の検出面23に近い関係にある。このため、検出面23を、Z軸方向に平行となるように配置した場合、上顎前歯FT1の投影像には、図26に示すように、拡大率の差から生じる歪が発生する。図26において、上顎前歯FT1を撮影対象とした撮影領域がX線照射方向から見て仮に長方形であった場合に、検出面23が受ける投影像IF1を正面視すると、投影像IF1のように上辺が下辺より長い台形に歪んだ像となる。この場合、画像処理による補正によって、この歪を除去する必要がある(いわゆる台形補正)。これに対して、本実施形態に係る医療用X線撮影装置1においては、X線検出器21の検出面23を傾動する傾動機構を備えている。この傾動機構により、この投影像の歪を大幅に軽減することが可能となっている。次に、この傾動機構の構成について説明する。
図14に示されるように、X線検出器駆動部45は、駆動部基部45A、X線検出器昇降部45B、軸支部45C及び回転軸45Dを備えている。駆動部基部45Aは、支持体30におけるX線検出部20の基部に固定されている。X線検出器昇降部45Bは、駆動部基部45Aに対しZ軸方向(z軸方向)に昇降駆動される。軸支部45Cは、X線検出器昇降部45Bに固定されている。回転軸45Dは、軸支部45Cに係合されており、X線検出器21の回転の軸となっている。
回転軸45Dの軸方向は、旋回軸31と直交する方向に平行な方向であり、好ましくはx軸方向である。図示の例では回転軸45DはX線検出器21のZ軸方向の中央部分をx軸方向に貫通している。回転軸45DはX線検出器21の片側(ここでは、+x側)の位置において、軸支部45Cに支えられている。なお、軸支部45Cを、X線検出器21の両側(+x側及び−x側)に設けて、回転軸45DをX線検出器21の両側の位置で支えるようにしてもよい。
図16は、X線検出器駆動部45の機械的構成を示す図である。図16は、X線検出器21を、軸支部45Cが設けられている側(すなわち、+x側)から見た図である。X線検出器21は、回転軸45Dを中心にして、図16に示されるモータ45J、回転駆動軸45K及びローラ45L,45Mで構成される回転アクチュエータ(検出器傾動機構)によって回転することにより傾動する。
回転軸45DはX線検出器21に固定され、軸支部45Cに回転可能に支えられている。軸支部45Cにはモータ45Jが固定されている。モータ45Jの回転駆動軸45Kの先端の周りにはローラ45Lが固定されている。
ローラ45Mは、回転軸45Dの端部に固定されている。ローラ45Lとローラ45Mが当接するように配置されており、モータ45Jの駆動力が回転軸45Dに伝達されるようになっている。なお、ローラ45Lの代わりに、ギアを用いることも可能である。
X線検出器昇降部45Bを昇降駆動する昇降アクチュエータは、図示を省略するが、例えば次のように構成される。つまり、駆動部基部45Aに、図4に示され、ネジシャフト161a、位置調整モータ162aと同様のネジシャフト及び位置調整モータが固定される。また、X線検出器昇降部45Bに、図4に示すナット141と同様のナットが固定される。そして、位置調整モータの駆動によりネジシャフトが正回転又は逆回転することで、ナット部材が縦方向に沿って上下に移動することにより、X線検出器昇降部45Bを昇降駆動することができる。
次に、X線検出器駆動部45による、X線検出器21の傾動制御(回転制御)について説明する。
X線検出器21は、X線検出器昇降部45Bによって、+Z方向に上昇させている。また、X線検出器21は、前述の回転アクチュエータにより、回転軸45Dを中心に回転して傾斜している。具体的には、X線検出器21の上側(+z側)部分がX線発生器10a側に倒れ込むように傾斜している。
より具体的には、X線検出器21の傾斜は、図15に示される様に、X線UP1がX線検出器21の検出面に直交入射するように制御される。ただし、X線UP1のX線検出器21の検出面への入射角度θVは、歯軸AX1に対するX線UP1の照射角度θUと同様、厳密に直交でなくとも略直交であればよい。また、X線検出器の検出面は歯軸AX1に対して平行か略平行になるように制御される。
設定された撮影領域に応じて、X線検出器駆動部45の駆動によるX線検出器21の傾斜がX線検出器駆動制御部603により制御される。
なお、下顎前歯FT2を撮影対象とする場合は、上顎前歯FT1を撮影対象とする場合と、上下が逆になる点で相違するのみであるため、ここでは、詳細な説明を省略する。
なお、上記説明においては、X線検出器21を傾動させるのに回転アクチュエータを用い、X線検出器昇降部45Bを昇降駆動するのに昇降アクチュエータを用いる例を説明したが、その一方または双方を手動で駆動可能な構成としてもよい。この場合、傾動や昇降に従って互いに対して相対的に変位する部材同士の間に、摩擦や付勢又は嵌合等の作用機構を設けること等によって、人力による操作が受け付けられる程度の変位又は係止作用が働くようにしてもよい。
X線検出器駆動部45の制御による、X線検出器21の傾動制御は、パノラマ撮影時においても行われてもよい。例えば、全顎(上顎及び下顎を含む。)を撮影対象とするパノラマ撮影を行う場合において、上顎前歯FT1の歯軸AX1又は下顎前歯FT2の歯軸AX2のどちらか一方の傾斜に合わせて、X線検出器21を傾動することで、上顎前歯FT1又は下顎前歯FT2について、歪が低減された投影像を得ることができる。
パノラマ撮影中に、X線検出器21の検出面23の傾斜角度を固定とすることも考えられるが、パノラマ撮影中に、X線ビームBXを照射する歯牙に応じて、X線検出器21の傾斜角度を適宜変更するようにしてもよい。例えば、臼歯にX線を照射するときは、検出面23が水平面(XY平面)に対して略垂直になるようにX線検出器21を傾動し、上顎前歯FT1(又は下顎前歯FT2)にX線を照射するときには、X線検出器21の検出面23を歯軸AX1(又は歯軸AX2)と平行になるように、X線検出器21を傾動することが考えられる。このように、検出面23が各歯牙の歯軸と平行となるようにX線検出器21を傾動制御することによって、各歯牙について、歪の少ない投影像を得ることができる。これにより、補正のための演算処理量をより低減できるとともに、画質に優れたパノラマX線画像を得ることができる。
もちろん、全顎ではなく、上顎のみ又は下顎のみを撮影対象とするパノラマ撮影においても、X線検出器21を傾動制御することが考えられる。この場合においても、パノラマ撮影中において、X線ビームBXを照射する歯牙に応じて、X線検出器21の傾斜角度を変更するようにしてもよい。この場合も、各歯牙について、歪の低減された投影像を得ることができる。
さらに、上顎の一部、又は、下顎の一部をパノラマ撮影する場合においても、検出面23が、その撮影対象に含まれる歯牙の歯軸に平行となるように、X線検出器21を傾動制御することも考えられる。
全顎パノラマの場合や、部分パノラマでも撮影領域が広い場合はX線検出器21の傾斜角度の変更制御とともに、X線ビームBXの照射方向の変更をパノラマ撮影中に連続的に行うようにし、部分パノラマで撮影領域が狭い場合はX線検出器21の傾斜角度とX線ビームBXの照射方向を一定に保つようにしてもよい。
また、撮影領域にかかわらず、旋回アーム31の高さをどの撮影領域に対しても同じとし、各歯牙の歯軸の方向とX線検出器21の傾斜角度を一致させる変更のみを行うようにしてもよい。この場合、例えば、図14に示される旋回アームの高さにしておいて、X線ビームの照射範囲をX線ビーム形成機構13によって制限し、対象歯牙の歯軸方向に従ってX線検出器21の傾斜角度の変更のみを行うようにする。
<装置構成の変形例>
図17及び図18は、変形例に係るX線検出器駆動部45Tを示す図である。図17は、X線検出器21に向かって左側(すなわち、+x側)からX線検出部20を見たときの側面図である。また、図18はX線検出器21を正面から見たときの正面図である。
図14、図16及び図15に示されるX線検出器駆動部45は、回転軸45Dを回転軸としてX線検出器21を回転させ、かつ、X線検出器昇降部45BによりX線検出器21を上下に昇降させる。これに対して、図42に示されるX線検出器駆動部45Tは、回転軸45DおよびX線検出器昇降部45Bの代わりに、X線検出器案内部45Fを備えている。
より詳細には、X線検出器駆動部45Tは、X線検出部基部20Aに固定されているX線検出器保持部45E、X線検出器保持部45Eに設けられたX線検出器案内部45Fと、X線検出器案内部45Fによって案内される複数の被案内部45Gと、を備えている。被案内部45Gは、ローラ又はコロ等を備えており、X線検出器21の左右の両端部に固定されている。
X線検出器案内部45FはX線検出器21の両側(+x側及び−x側)に1つずつ配置されている。なお、図17おいては、説明の便宜上、X線検出器21に向かって左側(つまり、−x側)にあるX線検出器案内部45Fの図示が省略されている。
一対のX線検出器案内部45Fのうち、X線検出器21に対向する側部には、X線検出器案内部45Fに沿うように延びる弧状の溝部45F1が形成されている。溝部45F1は、Z軸方向の中央部分から+Z方向に進むにしたがって、−y方向に向けて湾曲し、−Z方向に進むにしたがって、−y方向に向けて湾曲する形状を有している。被案内部45Gは、このように湾曲する溝部45F1の内部に嵌め込まれている。
また、一対のX線検出器案内部45Fのうち、どちらか一方の上部には、モータ45Pが設けられている。図17及び図18に示される例では、X線検出器21の+x側のX線検出器案内部45Fに、モータ45Pが設けられている。モータ45Pの回転駆動伝達軸45P1は、環状ベルト45Qの一方側の内周部分に当接されている。環状ベルト45Qは、X線検出器案内部45Fの内側に配設されている。また、環状ベルト45Qの他方側の部分は、X線検出器案内部45Fの下方側に配置された自由回転するコロの外周部に巻回されている。このため、回転駆動伝達軸45P1が回転することにより、X線検出器案内部45Fの内部において、環状ベルト45Qが回転する。
環状ベルト45Qが内設されたX線検出器案内部45Fに取り付けられた被案内部45Gは、環状ベルト45Qに固定されている。このため、環状ベルト45Qが回転することにより、X線検出器21が上下に昇降する。
X線検出器21が、X線検出器案内部45Fの上下方向の中央部にある場合、その検出面23が、旋回軸31に平行であり、水平面に対してほぼ垂直になっている。X線検出器21をX線検出器案内部45Fの中央部から上昇させると、被案内部45GがX線検出器案内部45Fに案内される。これにより、図17中、一点鎖線で示されるように、X線検出器21が、上昇するにつれて傾斜し、その検出面23も傾斜することとなる。
図示を省略するが、X線検出器21の傾斜は、X線UP1がX線検出器21の検出面に直交入射するように設定される。ただし、X線UP1のX線検出器21の検出面23への入射角度θVは、歯軸AX1に対するX線UP1の照射角度θUと同様、厳密に直交でなく、略直交であればよい。
また、X線検出器21を下降させる場合は、X線検出器21を上昇させる場合とX線検出器21の位置関係が上下逆になるだけであるため、詳細な説明を省略する。
なお、X線検出器駆動部45Tの場合、先に説明した回転軸45Dのような物理的な回転軸は存在しない。しかしながら、X線検出器駆動部45Tは、弧状の溝部45F1を円弧の一部とする曲率円の中心を通り、かつ、x軸方向に平行である仮想的な回転軸周りに、X線検出器21を回転させる、と捉えることができる。
上記の例は、X線検出器21を駆動するのにモータ45Pを用いる例であるが、図14〜16で説明したように、摩擦や付勢又は嵌合等の作用機構を設けることによって、X線検出器21を手動で駆動可能な構成としてもよい。
基本的に、歯牙を舌側(口腔内側)から頬側に、あるいはその逆方向に歯牙を観察するときの視線方向は、歯軸に直交していることが望ましい。仮に、X線ビームBXの中心軸が、撮影対象の歯牙に直交しない場合には、歯牙を斜め上から見下ろしたような、又は斜め下から見上げたようなX線画像が取得される。この場合、歯牙が実際より短く見える画像になる。したがって、X線ビームの中心軸を対象歯牙に直交入射させる(つまり、X線ビームBXの中心軸を歯軸に直交させる)ことで、歪の少ない、歯牙の形状に忠実な画像を取得することができる。
下顎を撮影対象として、擬似口内法撮影領域の位置に応じて、体軸MX1の軸方向に対するX線ビームBXの照射方向を異ならせる点は、上顎を撮影対象とした場合と同じである。つまり、撮影対象が顎全体であるか、部分であるか、上顎の歯であるか下顎の歯であるか、上顎のどの領域の歯であるか、下顎のどの領域の歯であるかといった撮影領域毎に、X線ビームBXのZ軸方向に関する照射角度、照射範囲、旋回アーム30の位置、旋回アーム30の旋回角度等が異なってくる。このため、撮影領域毎に、支持体駆動制御部602による昇降部40の昇降制御、移動機構200による旋回アーム30の位置制御、X線規制部駆動制御部605の制御に基づくX線規制部駆動部101によるビーム成形機構13の駆動制御、X線検出器駆動制御部603の制御に基づくX線検出器駆動部45によるX線検出器21の位置制御が適宜行われる。被写体保持部駆動部MH1による被写体保持部421の駆動が必要な場合は、被写体保持部駆動制御部604の制御に基づく被写体保持部駆動部MH1の制御も適宜行われる。
<<CT撮影時の照射方向の制御>>
図19は、上顎および下顎を撮影対象としたCT撮影時における、X線ビームBXの照射方向を説明するための図である。CT撮影では、撮影領域(有効視野、FOV:Field of View)に対し、180度以上の方向からX線ビームBXを照射する。このとき、X線ビームの中心軸BXCは、撮影領域の中心部を通るように、X線ビームの照射方向が制御される。
例えば図19に示されるCT撮影では、直径が例えば80〜100mm程度であって、上顎および下顎の双方を含む円柱状の撮影領域FOV1について、X線ビームBXの照射が行われている。CT撮影においては、X線発生器10aとX線検出器21は撮影領域の中心を旋回中心として旋回する。
図示の例では、撮影領域FOV1はZ軸方向から見ると円であり、この円の中心をZ軸方向に伸延する軸がX線発生器10aとX線検出器21の旋回中心となる。図19に示されるCT撮影は、第1CT撮影モードに対応する。この撮影領域FOV1は、体軸MX1に沿って延びる領域である。この撮影領域FOV1を撮影対象とする場合、図19に示されるように、X線ビームBXの中心軸BXCが、撮影領域FOV1の中心を通り、かつ、体軸MX1に対して直交するよう、X線ビームBXを照射する。体軸MX1は、Z軸方向に平行であるため、中心軸BXCは、XY平面(水平面)に平行とされている。なお、中心軸BXCは体軸MX1に対して必ずしも厳密に直交しなくとも、略直交すればよい。
CT撮影においては、一方から他方に向かって撮影領域FOV1をX線照射して得た画像データと、他方から一方に向かって撮影領域FOV1をX線照射して得た画像データの双方を得ることが好適である。このため、そのような照射角度により近い照射角度でX線照射することが望ましい。このことは、水平方向についても垂直方向についても同様であるので、上述のようにX線照射を行うことが好ましい。
図20は、上顎を撮影対象としたCT撮影時における、X線ビームBXの照射方向を説明するための図である。また、図21は、下顎を撮影対象としたCT撮影時における、X線ビームBXの照射方向を説明するための図である。上下顎のうち下顎を除いた上顎のみを含む領域を撮影領域FOV2、および、あるいは、上下顎のうち上顎を除いた下顎のみを含む領域を撮影領域FOV3は、ともに円柱状の領域である。撮影対象を撮影領域FOV2又は撮影領域FOV3とした場合であっても、撮影領域FOV1のCT撮影時と同じ要領で、X線ビームBXが照射される。すなわち、X線ビームBXの中心軸BXCが、該撮影領域FOV2,FOV3の中心を通り、かつ、体軸MX1に直交するように、X線ビームBXが撮影領域FOV2,FOV3に照射される。図20および図21に示されるCT撮影は、第2CT撮影モードに対応する。なお、中心軸BXCは体軸MX1に対して必ずしも厳密に直交しなくとも、略直交すればよい。
このようにX線ビームBXの照射方向を設定することで、CT撮影に適切な照射方向から照射されたX線ビームBXの検出によって得た良好な画像データを収集することができる。
このようなX線ビームBXの照射を実現するため、昇降部40が駆動されることにより、旋回アーム30の高さが、撮影領域FOV1をCT撮影するときの高さ(破線で示す位置)から変更制御される。また、ビーム形成機構13を制御することにより、X線ビームBXの照射範囲が、撮影領域FOV2又はFOV3に合わせて規制される。
なお、CT撮影の撮影領域は、上述したような円筒状の領域に限定されるものではない。旋回アーム30を旋回させる際に、水平方向にも移動させることで、撮影領域を様々な形状とすることができる。
なお、CT撮影時において、X線ビームBXの照射方向を水平ではなく、上向き(又は下向き)に傾斜させて、撮影領域に照射することも考えられる。例えば、撮影領域と同じ高さに、X線吸収度の高い物体が存在することが分かっているような場合に、該物体を避けて目的の撮影領域にX線ビームBXを照射する際に、照射方向を水平方向から傾けることが有効である。このようにX線ビームBXの照射方向を傾けた場合において、X線検出器21の検出面23を、X線ビームBXの照射方向に直交させるように、X線検出器21を傾動することで、歪の低減された投影像を得ることが可能である。
<擬似口内法撮影>
図22は、擬似口内法撮影の様子を+Z側から−Z方向に向かって見たときの概略平面図である。図22に示される例では、下顎における右側4本の歯牙を撮影対象としている。なお、このような撮影する歯牙の指定は、図11に示す撮影領域設定画面300等を介して行われたものである。
図22に示される様に、擬似口内法撮影は、従来のトモシンセシスと同様に、被写体M1の頭部M10を間に挟んだ状態でX線発生器10aおよびX線検出器21を旋回させることにより、撮影対象物(ここでは、4本の歯牙)に対して、多方向からX線ビームBXが照射される。そして、複数の方向から撮影して得た投影画像を、旋回方向に合わせて適量シフトさせて重ね合わせることにより、任意の裁断面の断層画像が再構成される。
また、断層画像を再構成する際の裁断面を、平面状である平面裁断面A1とすることも可能であり、あるいは、歯列弓90に合わせて湾曲する湾曲面状の湾曲裁断面A2とすることも可能である(図22参照)。裁断面の位置および形状は、再構成の演算方法、すなわち、重ね合わせを行うときの、シフト量を適宜に変更することによって、任意に決定することができる。したがって、画像診断の診断目的等に合わせて、裁断面の位置および形状を任意に設定すればよい。
<装置構成の変形例>
本体部2では、X線検出器21の検出面が比較的小さいため、X線検出器駆動部45によりX線検出器21を上下に昇降させて、X線ビームBXを検出している。しかしながら、X線検出器駆動部45のX線検出器昇降部45Bにより上下に昇降させる必要がないほど検出面が十分に広いX線検出器を採用することによって、X線検出器昇降部45Bを省略することも可能である。
図23は、変形例に係る本体部2Bを示す概略側面図である。本体部2では、図1に示される様に、被写体M1が起立した状態で、各種X線撮影が行われる。これに対して、本体部2Bは、被写体M1が着座するための座席423が、被写体固定手段として備えられている。詳細を省略するが、座席423は、図示しない昇降機構に接続されている。また、座席423には、チンレストを構成する被写体保持部421Bが取り付けられている。この被写体保持部421Bは、上下に昇降可能に構成されている。
本体部2Bにおいては、X線ビームの照射方向を変更する際、旋回アーム30自体を上下に昇降させるのではなく、座席423を昇降させることで、被写体M1を旋回軸31の軸方向に昇降させる。これにより、被写体M1に対して、旋回アーム30を相対的に昇降させることができる。なお、座席423には、被写体(被検者)の脚を載せる不図示のフットレストや頭部を固定するヘッドホルダ等をさらに設けることが好適である。
図15及び図23の説明においては、擬似口内法撮影において、撮影対象歯牙の中心部を通るX線UP1,LW1が対象歯牙の歯軸に直交又は略直交するように設定され、X線検出器21の検出面23が歯軸AX1に対して平行か略平行になるように設定される例を説明した。しかしながら、この角度を別の所望の角度に設定してもよい。
例えば、従来の口内法撮影で平行法と並んで採用されていた二等分法による撮影の角度設定ができるようにしてもよい。この二等分法を擬した角度の設定例を図24に示す。
図24は上顎前歯FT1を撮影対象とした擬似口内法撮影時における、X線ビームBXの照射方向及びX線検出器21の傾動を説明するための図である。図24に示される撮影方法は、照射方向の設定方法及びX線検出器21の傾斜角度の設定方法の点で、図15に示される撮影方法と相違している。
ここで、説明の便宜のため、X線検出器21の検出面23に沿うとともに、Z軸方向に伸延する線をSFとする。また、前述の歯軸AX1と線SFとの交点をIPとする。さらに、交点IPを点P3で示すとして、線SF上、点P3と異なる位置にある点をP1とし、歯軸AX1上、点P3と異なる位置にある点をP2とする。そして、点P1、点P3、点P2のなす角を二等分する線をMDとする。線MD上、点P3と異なる位置にある点をP4とすると、点P1、点P3、点P4のなす角θ1と点P2、点P3、点P4のなす角θ2とは等角の関係にある。
図24に示される擬似口内法撮影においては、前述のX線UP1が線MDと直交するように、上顎前歯FT1に対するX線ビームBXの照射方向が設定される。なお、線MDに対して、X線UP1は必ずしも厳密に直交しなくともよく、略直交していてもよい。本願においては、このように口内法撮影の二等分法による撮影を擬する撮影を擬似二等分法と称する。
X線ビームBXの照射方向を設定する際、角θ1、θ2は、標準的な骨格の歯牙の歯軸AX1の傾斜に基づいて予め定められていてもよいが、操作者が入力して適宜設定できるようにしてもよい。また、X線検出器21は、X線ビームが受光できる位置に適宜変位制御される。
下顎前歯FT2を撮影対象とするときは、上顎前歯FT1を撮影対象とするときと上下関係が逆になるだけであるので、説明を省略する。また、図23等のその他の装置構成にも上記の擬似二等分法による撮影が応用できることは容易に理解できるので、ここでは詳細な説明は省略する。
X線ビームBXの照射方向は、各撮影モードにおいて予め定めた角度になるようにX線形成機構13を制御してもよいが、操作者が指定する角度で交差するようにX線形成機構13を制御してもよい。
<医療用X線撮影装置の動作フロー>
図25は、医療用X線撮影装置1におけるX線撮影のフロー図である。なお、特に断らない限り、以下において説明する医療用X線撮影装置1の動作は、主に、本体制御部60の制御下のもとに行われるものとする。
X線撮影が開始されると、まず、撮影モードの設定が行われる(図25:ステップS11)。具体的には、図11に示される撮影モード選択画面MSWが表示され、この画面を介したオペレータによる操作入力に基づき、モード設定部601が本体部2の撮影モードを設定する。
次に、撮影領域の指定が行われる(図25:ステップS12)。具体的に、擬似口内法撮影の場合は、上顎又は下顎、および、歯の指定(撮影領域設定画面300等を介した撮影対象の歯の指定、又は、領域画面各歯に割り当てられた番号の指定等)が行われる。また、パノラマ撮影の場合は、上顎および下顎を含む全顎、又は、上顎および下顎のどちらか一方のどちらかの指定が行われる。また、CT撮影の場合は、撮影領域設定画面300等を介した撮影領域の大きさ、位置の指定が行われる。
撮影領域の指定が行われた後、旋回アーム30の位置調整が行われる(図25:ステップS13)。具体的には、旋回アーム30の高さや、旋回アーム30の水平方向の二次元位置、又は、旋回アーム30の旋回開始位置等が、各撮影モードおよび撮影領域に適するように調整される。また、X線形成機構13の調整(図25:ステップS14)、被写体保持部421の高さ調整(図25:ステップS15)が必要に応じて行われる。これにより、X線ビームBXの照射範囲や照射方向、X線ビームBXの高さが調整される。また、X線検出器21の高さ調整(図25:ステップS16)が必要に応じて行われる。さらに、傾動機構の制御でX線検出器21の傾斜角度の調整(図25:ステップS17)が必要に応じて行われる。
以上のように各部の調整が完了すると、本体部2は、X線撮影を実行する(図25:ステップS18)。具体的には、本体部2は、旋回部201を含んだ移動機構部200の制御で旋回アーム30を旋回させて、X線発生器10aおよびX線検出器21を、各撮影モード、撮影領域に合わせた軌跡上を移動させるとともに、X線発生器10aから所要形状のX線ビームBXを出射する。そして、本体部2は、X線検出器21でそのX線ビームBXを検出して、フレームデータとして画像処理装置8に出力する。このようにして、医療用X線撮影装置1は、各種のX線撮影を実行する。
なお、このステップS18のX線撮影中に、X線ビームBXの照射位置に応じて、各部の調整が行われてもよい。例えば、全顎、上顎又は下顎を対象としたパノラマ撮影の場合に、上顎前歯FT1又は下顎前歯FT2にX線を照射するときと、それ以外の歯(臼歯等)にX線を照射するときとで、X線ビームBXの照射方向、X線ビームBXの高さ、X線検出器21の高さ、又は、X線検出器21の傾斜角度等が適宜変更されるようにしてもよい。
また、本実施形態に係る医療用X線撮影装置1は、擬似口内法撮影とともに、パノラマ撮影、CT撮影およびセファロ撮影を実行可能に構成されている。しかしながら、本発明に係る医療用X線撮影装置は、擬似口内法撮影とともに、パノラマ撮影、CT撮影又はセファロ撮影の中のいずれか1つ以上を実行可能に構成されていてもよい。
この発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。