JP2014113105A - 4−ケトアラボン酸合成酵素及びその製造方法並びに該酵素を用いた4−ケト−d−アラボン酸及びその塩類の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】2,5−ジケトグルコン酸から4−ケト−D−アラボン酸の生成において、脱炭酸および酸化反応を1つの酵素が触媒するこれまで単離されたことのない新規な4−ケトアラボン酸合成酵素を提供する。
【解決手段】以下のような物理化学的特性を有する4−ケトアラボン酸合成酵素により解決する。a)至適pH:4.5から7.0、b)至適温度:0℃から60℃、c)分子サイズ:92,200±3,500ダルトン(サブユニットの分子サイズ46,100±1,500ダルトンからなる2つのサブユニット)、d)基質特異性:2,5−ジケトグルコン酸、e)補酵素:チアミンピロホスフェート、ピロロキノリンキノン
【選択図】なし
【解決手段】以下のような物理化学的特性を有する4−ケトアラボン酸合成酵素により解決する。a)至適pH:4.5から7.0、b)至適温度:0℃から60℃、c)分子サイズ:92,200±3,500ダルトン(サブユニットの分子サイズ46,100±1,500ダルトンからなる2つのサブユニット)、d)基質特異性:2,5−ジケトグルコン酸、e)補酵素:チアミンピロホスフェート、ピロロキノリンキノン
【選択図】なし
Description
本発明は、異なる2種類の触媒機能(脱炭酸および酸化反応)を有する多機能型酵素で、2,5−ジケトグルコン酸から4−ケト−D−アラボン酸へ変換するこれまでに単離されたことのない新規な4−ケトアラボン酸合成酵素及びその製造方法並びに該酵素を用いた4−ケト−D−アラボン酸及びその塩類(以下「4−ケト−D−アラボン酸類」という。)の製造方法に関する。
アラボン酸類の1つである4−ケト−D−アラボン酸は、D−酒石酸の製造原料にも利用することができる有用な物質である(特許文献1)。
一方、D−酒石酸は、光学活性を有する物質で、医薬品、農薬などを製造する際の光学分割剤や不斉化合物の原料として用いられると共に、D−酒石酸誘導体の原料としても工業的に利用されている重要な物質である。
これまで、酵素による2,5−ジケトグルコン酸から4−ケト−D−アラボン酸の製造に関する2つの文献(特許文献2および非特許文献1)がある。それら2つの文献はいずれもアダチ(Adachi)らによって報告され、自然界から分離されたグルコンアセトバクター リキファシエンス(Gluconacetobacter liquefaciens)由来の異なる2種類の膜結合型酵素(2,5−ジケトグルコン酸から4-ケト-D-アラビノースへの変換を触媒する2,5−ジケトグルコン酸脱炭酸酵素、及び4-ケト-D-アラビノースから4−ケト−D−アラボン酸への変換を触媒する4-ケト-D-アルドペントース 1−脱水素酵素)の作用により2,5−ジケトグルコン酸から4−ケト−D−アラボン酸が生成することを述べている。
アダチら(Adachi et al.)、「バイオサイ、バイオテクノル、バイオケム(Biosci.Biotechnol,Biochem)」、(社)日本農芸化学会、2011、75(9)、p.1801−1806
醗酵法あるいは休止菌体反応による従来の4−ケト−D−アラボン酸類の生産には長時間を要し、また、生成された4−ケト−D−アラボン酸類を含む醗酵液あるいは反応液から高純度の4−ケト−D−アラボン酸類を採取するには、多くの手間と時間を要する。工業生産においては、短時間で高純度の4−ケト−D−アラボン酸類が高効率で製造される必要がある。
従来の醗酵法および休止菌体反応による4−ケト−D−アラボン酸類の製造法の欠点を解決するには、短時間で、高純度の4−ケト−D−アラボン酸類を製造可能な酵素法が好ましい。ところで、該酵素法による4−ケト−D−アラボン酸類の製造には、原料として安価で多量の2,5−ジケトグルコン酸の供給が必要となる。2,5−ジケトグルコン酸生産菌としては、これまでタウタメラ菌、シュードモナス菌、酢酸菌などで報告がある。なかでもタウタメラ菌による2,5−ジケトグルコン酸の生産性は優れていて、すでに工業的規模で2,5−ジケトグルコン酸の製造法が確立している[ソノヤマら(Sonoyama et al.)、「アプライ、エンバイロン、マイクロバイオル(Appl.Environ.Microbiol.)」、アメリカン ソサイアティ フォ マイクロバイオロジー(American Society for Microbiology)、1982、43(5)、p.1064−1069]。
これまで、2,5−ジケトグルコン酸から4−ケト−D−アラボン酸類を酵素法により製造するには、上述のように、2,5−ジケトグルコン酸から4-ケト-D-アラビノースへの変換を触媒する2,5−ジケトグルコン酸脱炭酸酵素、及び4-ケト-D-アラビノースから4−ケト−D−アラボン酸類への変換を触媒する4-ケト-D-アルドペントース 1−脱水素酵素の2種類の酵素の存在が必要であった。
そこで本発明は、2,5−ジケトグルコン酸から4−ケト−D−アラボン酸類の生成において、脱炭酸および酸化反応を1つの酵素が触媒するこれまで単離されたことのない新規な4−ケトアラボン酸合成酵素とその製造方法、該酵素を用いた4−ケト−D−アラボン酸類の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、前述の酵素法による2,5−ジケトグルコン酸から4−ケト−D−アラボン酸類の製造を構築するために、2,5−ジケトグルコン酸から4−ケト−D−アラボン酸類の変換を触媒する酵素について鋭意研究を行った結果、ある特定の細菌の細胞を破砕して得られる無細胞抽出液、さらに無細胞抽出液を超高速遠心などにより分画された細胞膜画分懸濁液、可溶化処理により目的の酵素を細胞膜から遊離した可溶化溶液、さらには各種クロマトグラフィー処理により種々の純度で精製された4−ケトアラボン酸合成酵素は、短時間の反応で2,5−ジケトグルコン酸から4−ケト−D−アラボン酸類を生産し、得られた4−ケト−D−アラボン酸類を含む反応液をそのまま濃縮後、結晶化あるいはイオン交換などのクロマト処理により、効率よく、高純度の4−ケト−D−アラボン酸類の取得が可能であることを見出した。
本発明はかかる知見に基づきなされたものであり、以下のような物理化学的特性を有する4−ケトアラボン酸合成酵素を提供するものである。
a)至適pH:4.5から7.0
b)至適温度:0℃から60℃
c)分子サイズ:92,200±3,500ダルトン(サブユニットの分子サイズ46,100±1,500ダルトンからなる2つのサブユニット)
d)基質特異性:2,5−ジケトグルコン酸
e)補酵素:チアミンピロホスフェート、ピロロキノリンキノン
a)至適pH:4.5から7.0
b)至適温度:0℃から60℃
c)分子サイズ:92,200±3,500ダルトン(サブユニットの分子サイズ46,100±1,500ダルトンからなる2つのサブユニット)
d)基質特異性:2,5−ジケトグルコン酸
e)補酵素:チアミンピロホスフェート、ピロロキノリンキノン
また、本発明は上記a)〜e)のような物理化学的特性を有する4−ケトアラボン酸合成酵素の製造方法であって、好気条件下、液体ないしは固体培養培地中で上記の性質を有する能力をもつグルコノバクター属に属する微生物を培養し、該生物の細胞を破砕し、該微生物の破砕された細胞の無細胞抽出液より該酵素の単離精製を行う、4−ケトアラボン酸合成酵素の製造方法を提供するものである。
さらに本発明は、4−ケトアラボン酸合成酵素を2,5−ジケトグルコン酸と接触させる、4−ケト−D−アラボン酸類の製造方法であって、該4−ケトアラボン酸合成酵素が、(i)上記a)〜e)のような物理化学的特性を有する4−ケトアラボン酸合成酵素、または(ii)好気条件下、液体ないしは固体培養培地中で上記の性質を有する4−ケトアラボン酸合成酵素を生産する能力をもつグルコノバクター属に属する微生物、または(iii)該微生物の無細胞抽出液からなる群から選択される少なくとも1種類である、4−ケト−D−アラボン酸類の製造方法を提供するものである。
本発明によれば、生育可能な培地で培養したグルコノバクター(Gluconobacter)の細胞から様々な純度の4−ケトアラボン酸合成酵素を調製し、該酵素により、2,5−ジケトグルコン酸から短時間で高純度の4−ケト−D−アラボン酸類を効率良く生産させ、4−ケト−D−アラボン酸類を製造するに至り、本発明の4−ケトアラボン酸合成酵素を用いた酵素法による4−ケト−D−アラボン酸類の製造は、工業的な製造にも利用でき、その実用性は高い。
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。すなわち、本実施形態において、2,5−ジケトグルコン酸から4−ケト−D−アラボン酸類への変換を触媒する4−ケトアラボン酸合成酵素は後述の実施例に示した工程を経て精製され、該精製酵素標品の物理化学的諸特性を以下に示す:
4−ケトアラボン酸合成酵素の精製に先立ち、酵素活性は以下の2つの方法で測定された。
1)酵素活性の測定
1−1)生成物を定量することによる酵素活性測定法
精製された4−ケトアラボン酸合成酵素の基質特異性試験、速度定数の算定試験を除く酵素学的特性試験は、標準的な反応混合液として50mM MOPS緩衝液(pH=6.75)中に52mM 2,5−ジケトグルコン酸、1mM チアミンピロホスフェート(本文中以下、「TPP」と記載する)、1μM ピロロキノリンキノン(本文中以下、「PQQ」と記載する)、2mM MnCl2、1.1mM フェナジンメトサルフェート(本文中以下、「PMS」と記載する)および該精製酵素、あるいは“酵素なし”の混合液を25℃で、3時間、ゆっくり振とうし、4−ケト−D−アラボン酸量をショウデックス RSpak DE−613カラム(6.0mm内径×150mm長、ショウデックス社製)を用いて紫外線(UV)検出器(UV−8020、東ソー社製)を用いて210nmの波長で高速液体クロマトグラフィー(DP−8020、東ソー社製)(本文中以下、「HPLC」と記載する)分析を行い、4−ケト−D−アラボン酸を定量した。比較対照として“酵素なし”の反応液で検出された4−ケト−D−アラボン酸類の量を差し引いた値を該酵素による4−ケト−D−アラボン酸類の生成量とした。
1−1)生成物を定量することによる酵素活性測定法
精製された4−ケトアラボン酸合成酵素の基質特異性試験、速度定数の算定試験を除く酵素学的特性試験は、標準的な反応混合液として50mM MOPS緩衝液(pH=6.75)中に52mM 2,5−ジケトグルコン酸、1mM チアミンピロホスフェート(本文中以下、「TPP」と記載する)、1μM ピロロキノリンキノン(本文中以下、「PQQ」と記載する)、2mM MnCl2、1.1mM フェナジンメトサルフェート(本文中以下、「PMS」と記載する)および該精製酵素、あるいは“酵素なし”の混合液を25℃で、3時間、ゆっくり振とうし、4−ケト−D−アラボン酸量をショウデックス RSpak DE−613カラム(6.0mm内径×150mm長、ショウデックス社製)を用いて紫外線(UV)検出器(UV−8020、東ソー社製)を用いて210nmの波長で高速液体クロマトグラフィー(DP−8020、東ソー社製)(本文中以下、「HPLC」と記載する)分析を行い、4−ケト−D−アラボン酸を定量した。比較対照として“酵素なし”の反応液で検出された4−ケト−D−アラボン酸類の量を差し引いた値を該酵素による4−ケト−D−アラボン酸類の生成量とした。
上記の活性測定法を用いて、4−ケトアラボン酸合成酵素活性に対する酸素の要求性を調べた。同じ組成からなる150 μLの反応混合液をそれぞれ、2枚のマイクロプレート(96ウェル)の各ウェルに分注し、氷上で冷却した。1枚のプレートは密封可能なビニール袋に入れ、デシケータ中、真空ポンプで−0.1MPa以下まで減圧し、3分後、デシケータ内を窒素ガス(純度:99.999%)で置換し、即座に取り出し、ビニールテープで密封した。窒素置換したプレートおよび大気中で氷冷したプレートを同時に、25℃でゆっくり振とうし、反応を開始した。3時間後の反応液中の4ケトアラボン酸をHPLCで定量した。結果を表1に示す。大気中、窒素ガス置換した反応液中の4−ケト−D−アラボン酸類の生成量はほとんど変わらず、4−ケトアラボン酸合成酵素活性は酸素を必要としなかった。
1−2)分光学的な酵素活性測定法
後述の実施例に示すように、本酵素は大気中、及び窒素ガス(無酸素状態)中のいずれの反応条件においても4−ケト−D−アラボン酸類の生成量は変わらないことから、酸素を直接電子受容体として利用しない(表1)。本発明の酵素は人工的電子受容体として2,6−ジクロロフェノールインドフェノール(本文中以下、「DCIP」と記載する)を利用することができる。
後述の実施例に示すように、本酵素は大気中、及び窒素ガス(無酸素状態)中のいずれの反応条件においても4−ケト−D−アラボン酸類の生成量は変わらないことから、酸素を直接電子受容体として利用しない(表1)。本発明の酵素は人工的電子受容体として2,6−ジクロロフェノールインドフェノール(本文中以下、「DCIP」と記載する)を利用することができる。
基質特異性試験、およびミカエリス定数(Km)の算定試験についての該酵素活性は、分光光度計(UV2200、島津製作所社製)を用いて、DCIPの600nmの吸光度の減少を25℃で測定することによっておこなった。具体的には、反応混合液は135μLの50mM MOPS緩衝液(pH=6.75)中に、1mM TPP、1μM PQQ、0.178μM DCIP、該精製酵素(0.104μg)または“酵素なし”、7.2〜57.8mM 2,5−ジケトグルコン酸からなり、反応は基質を最後に加えて、反応を開始し、DCIPの600nmの吸光度の減少を測定した。比較対照として、上記記載の混合液中で基質を含まない反応液の吸光度の減少を測定し、その値を差し引いた。
2)蛋白質の定量
酵素溶液中の蛋白質含量はローリー(Lowry)法により定量した[ローリーら(Lowry et al.)、「ジャーナル、バイオル、ケム(J.Biol.Chem.)」、アメリカン ソサイアティ フォ バイオケミストリー アンド モレキュラー バイオロジー(American Society for Biochemistry and Molecular Biology)、1951、193(1)、p.265−275]。標準蛋白質として牛血清アルブミン(Bovine serum albumin、シグマ−アルドリッチ社製)を用いた。一方、各種クロマトグラフィーでの溶出液中の蛋白質含量は、分光光度計を用いてUV280nmの吸光度を標準蛋白質としての牛血清アルブミン(Bovine serum albumin)の吸光度と比較して定量した。
酵素溶液中の蛋白質含量はローリー(Lowry)法により定量した[ローリーら(Lowry et al.)、「ジャーナル、バイオル、ケム(J.Biol.Chem.)」、アメリカン ソサイアティ フォ バイオケミストリー アンド モレキュラー バイオロジー(American Society for Biochemistry and Molecular Biology)、1951、193(1)、p.265−275]。標準蛋白質として牛血清アルブミン(Bovine serum albumin、シグマ−アルドリッチ社製)を用いた。一方、各種クロマトグラフィーでの溶出液中の蛋白質含量は、分光光度計を用いてUV280nmの吸光度を標準蛋白質としての牛血清アルブミン(Bovine serum albumin)の吸光度と比較して定量した。
3)4−ケトアラボン酸合成酵素の精製
本発明による4−ケトアラボン酸合成酵素はグルコノバクター(Gluconobacter)属に属する該酵素を生産する株、あるいは該酵素生産能を有する突然変異株を増殖可能な培地を用いて好気培養条件下で培養し、得られた培養液を遠心分離、あるいはろ過などの方法で取得した細胞をビーズにより該酵素活性を失活しない温度で冷却しながら細胞を破砕し、超高速遠心により無細胞抽出液から細胞膜を分離・取得し、細胞膜と結合した該酵素を可溶化剤により可溶化し、可溶化液を種々のクロマトグラフィーを用いて活性を維持し、単一なピークを示すまでクロマトを行い、同時に溶出画分の変性系SDS−電気泳動分析で均一なペプチドバンドを示すまで、該酵素の精製を続けた。以下に、得られた精製標品の物理化学的特性を記す。
本発明による4−ケトアラボン酸合成酵素はグルコノバクター(Gluconobacter)属に属する該酵素を生産する株、あるいは該酵素生産能を有する突然変異株を増殖可能な培地を用いて好気培養条件下で培養し、得られた培養液を遠心分離、あるいはろ過などの方法で取得した細胞をビーズにより該酵素活性を失活しない温度で冷却しながら細胞を破砕し、超高速遠心により無細胞抽出液から細胞膜を分離・取得し、細胞膜と結合した該酵素を可溶化剤により可溶化し、可溶化液を種々のクロマトグラフィーを用いて活性を維持し、単一なピークを示すまでクロマトを行い、同時に溶出画分の変性系SDS−電気泳動分析で均一なペプチドバンドを示すまで、該酵素の精製を続けた。以下に、得られた精製標品の物理化学的特性を記す。
4)分子サイズ
4−ケトアラボン酸合成酵素の分子サイズはゲルろ過カラムクロマトグラフィーにより決定した。該クロマトグラフィーの溶出液には、0.2% Tween80、5mM ジチオスレイトール(本文中以下、DTTと記す)、200mM KClを含む20mM MOPS緩衝液(pH 7.0)を用いて、予め平衡化したセファクリルS-200HR 16/60(GEヘルスケア社製)に該酵素溶液をロードした。分子量スタンダードマーカーとして、ウシ由来チロブロブリン(669,000ダルトン)、ウシ由来ガンマ−グロブリン(158,000ダルトン)、ニワトリ由来オボアルブミン(44,000ダルトン)、ウマ由来ミオグロビン(17,000ダルトン)およびビタミンB12(1,370ダルトン)(バイオラッドラボラトリー社製)をもちい、それらのスタンダード蛋白質の較正曲線から本酵素のみかけ上の分子サイズを92,200±3,500ダルトンと決定した。
4−ケトアラボン酸合成酵素の分子サイズはゲルろ過カラムクロマトグラフィーにより決定した。該クロマトグラフィーの溶出液には、0.2% Tween80、5mM ジチオスレイトール(本文中以下、DTTと記す)、200mM KClを含む20mM MOPS緩衝液(pH 7.0)を用いて、予め平衡化したセファクリルS-200HR 16/60(GEヘルスケア社製)に該酵素溶液をロードした。分子量スタンダードマーカーとして、ウシ由来チロブロブリン(669,000ダルトン)、ウシ由来ガンマ−グロブリン(158,000ダルトン)、ニワトリ由来オボアルブミン(44,000ダルトン)、ウマ由来ミオグロビン(17,000ダルトン)およびビタミンB12(1,370ダルトン)(バイオラッドラボラトリー社製)をもちい、それらのスタンダード蛋白質の較正曲線から本酵素のみかけ上の分子サイズを92,200±3,500ダルトンと決定した。
つぎに本酵素の分子構造を解析するために、本酵素はDTT存在下、ソディウム ドデシル サルフェート(本文中以下、SDSと記す)で90℃、3分間加熱処理を施し、その分子構造を変性系SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(15%ゲル濃度)分析で解析した。分子量スタンダードマーカーとしてウサギ筋肉由来ホスホリラーゼ b(97,000ダルトン)、ウシ血清由来アルブミン(66,000ダルトン)、ニワトリ卵白由来オボアルブミン(45,000ダルトン)、ウシ赤血球由来カルボニック アンヒドラーゼ(30,000ダルトン)、ダイズ由来トリプシン インヒビター(20,100ダルトン)および牛乳由来アルファラクトアルブミン(14,400ダルトン)(GEヘルスケア社製)をもちい、そのスタンダード蛋白質の検量線から、Rf値=0.356の位置に単一バンドとして染色され本酵素のユニットサイズを46,100±1,500ダルトンと決定した。
ゲルろ過カラムクロマトグラフィーによる本酵素のみかけ上の分子サイズ(92,200±3,500ダルトン)および、変性系SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動による本酵素のサブユニットの分子サイズ(46,100±1,500ダルトン)から本酵素の分子構造を解析すれば、2つのサブユニットから成る2量体構造であることが示された。
5)基質特異性
4−ケトアラボン酸合成酵素の基質特異性は2,5−ジケトグルコン酸のかわりに様々なアルファ‐オキソ酸、アルドース、ペントース、トリオースなどを用いて1−2)の酵素活性法のDCIP由来の色の退色を肉眼的に判定して、基質特異性を決定した。測定結果は表2に示す。オキザロ酢酸については26、52mMの両濃度において、“酵素あり”および“酵素なし”の条件で、ともにDCIP由来の青色が退色し、本酵素の基質であるか不明であった。2,5−ジケトグルコン酸のみが基質となると結論づけた。
4−ケトアラボン酸合成酵素の基質特異性は2,5−ジケトグルコン酸のかわりに様々なアルファ‐オキソ酸、アルドース、ペントース、トリオースなどを用いて1−2)の酵素活性法のDCIP由来の色の退色を肉眼的に判定して、基質特異性を決定した。測定結果は表2に示す。オキザロ酢酸については26、52mMの両濃度において、“酵素あり”および“酵素なし”の条件で、ともにDCIP由来の青色が退色し、本酵素の基質であるか不明であった。2,5−ジケトグルコン酸のみが基質となると結論づけた。
6)至適pH
4−ケトアラボン酸合成酵素の酵素活性とpHの関連性を酢酸緩衝液(pH 4.5から6.5)、MOPS緩衝液(pH 6.5から7.9)およびトリス−塩酸緩衝液(pH7.9から9.0)を用いて測定した。結果を表3に示す。本酵素はpH 約4.5から7.0の範囲で高い活性を示し、pH 6.0でもっとも高い活性を示した。
4−ケトアラボン酸合成酵素の酵素活性とpHの関連性を酢酸緩衝液(pH 4.5から6.5)、MOPS緩衝液(pH 6.5から7.9)およびトリス−塩酸緩衝液(pH7.9から9.0)を用いて測定した。結果を表3に示す。本酵素はpH 約4.5から7.0の範囲で高い活性を示し、pH 6.0でもっとも高い活性を示した。
7)pH安定性
4−ケトアラボン酸合成酵素は様々なpHの緩衝液(pH 4.5、5.0、5.5、6.0および6.5の酢酸緩衝液、pH 6.5、6.75、7.0、7.25、7.5、7.75および7.9のMOPS緩衝液、pH 7.9、8.5および9.0のトリス−塩酸緩衝液)中、氷上で16時間放置し、pH安定性を調べた。測定結果を表4に示す。本酵素はpH 4.5から7.5の酸性から弱塩基性領域で安定で、pH 7.75以上のアルカリ領域では不安定であった。
4−ケトアラボン酸合成酵素は様々なpHの緩衝液(pH 4.5、5.0、5.5、6.0および6.5の酢酸緩衝液、pH 6.5、6.75、7.0、7.25、7.5、7.75および7.9のMOPS緩衝液、pH 7.9、8.5および9.0のトリス−塩酸緩衝液)中、氷上で16時間放置し、pH安定性を調べた。測定結果を表4に示す。本酵素はpH 4.5から7.5の酸性から弱塩基性領域で安定で、pH 7.75以上のアルカリ領域では不安定であった。
8)至適温度
4−ケトアラボン酸合成酵素の酵素活性を0℃から60℃の様々な温度で測定した。測定結果は表5に示す。本酵素は15℃から50℃の温度範囲で高い酵素活性を示し、0℃から60℃の温度範囲で山型の曲線を示した。
4−ケトアラボン酸合成酵素の酵素活性を0℃から60℃の様々な温度で測定した。測定結果は表5に示す。本酵素は15℃から50℃の温度範囲で高い酵素活性を示し、0℃から60℃の温度範囲で山型の曲線を示した。
9)熱安定性
4−ケトアラボン酸合成酵素の熱安定性を調べるために、0℃から60℃の様々な温度で10分間放置し、ただちに酵素活性を調べた。測定結果を表6に示す。本酵素は50℃以下では安定であるが、60℃では活性はほとんど失活する。
4−ケトアラボン酸合成酵素の熱安定性を調べるために、0℃から60℃の様々な温度で10分間放置し、ただちに酵素活性を調べた。測定結果を表6に示す。本酵素は50℃以下では安定であるが、60℃では活性はほとんど失活する。
10)金属イオンの影響
様々な金属イオンの酵素活性に対する影響を測定した。表7に結果を示した。試験した金属イオンの中でMn2+イオンのみが酵素活性をやや促進し、Ca2+、Mg2+およびNi2+イオンは酵素活性に、ほとんど影響しなかった。他の金属イオン(Cu2+、Fe2+、Fe3+、MoO4 2+、Zn2+)は酵素活性を強力に阻害した。
様々な金属イオンの酵素活性に対する影響を測定した。表7に結果を示した。試験した金属イオンの中でMn2+イオンのみが酵素活性をやや促進し、Ca2+、Mg2+およびNi2+イオンは酵素活性に、ほとんど影響しなかった。他の金属イオン(Cu2+、Fe2+、Fe3+、MoO4 2+、Zn2+)は酵素活性を強力に阻害した。
11)阻害剤の影響
金属キレート剤であるエチレンジアミン テトラアセチック アシッド(本文中以下、「EDTA」と記載する)に対する酵素活性の阻害を試験した。表8に結果を示す。6.4mMの濃度までは、ほとんど酵素活性に阻害を示さなかった。
金属キレート剤であるエチレンジアミン テトラアセチック アシッド(本文中以下、「EDTA」と記載する)に対する酵素活性の阻害を試験した。表8に結果を示す。6.4mMの濃度までは、ほとんど酵素活性に阻害を示さなかった。
12)Km(ミカエリス定数)値の測定
1−2)に記されている方法を用いて、酸化速度と基質濃度変化の関係をみかけ上のミカエリス定数(Km)として決定するために測定した。標準的反応混合液を用いて、基質濃度を変化させ、酵素活性を測定した。その結果、2,5−ジケトグルコン酸に対するKm値は39.4mMと算出された。
1−2)に記されている方法を用いて、酸化速度と基質濃度変化の関係をみかけ上のミカエリス定数(Km)として決定するために測定した。標準的反応混合液を用いて、基質濃度を変化させ、酵素活性を測定した。その結果、2,5−ジケトグルコン酸に対するKm値は39.4mMと算出された。
13)補酵素の要求性
13−1)TPPの要求性 1−1)に記載した方法を用いて、4−ケトアラボン酸合成酵素活性に対するTPPの要求性を調べた。TPPの濃度は“ゼロ”または“1mM”からなる反応混合液を0、0.5、1、2、3時間、反応させ、反応液中の4KAの生成量をHPLCで定量した。表9に結果を示す。1mM TPPは4−ケト−D−アラボン酸類の生成に著しい促進効果を示した。
13−1)TPPの要求性 1−1)に記載した方法を用いて、4−ケトアラボン酸合成酵素活性に対するTPPの要求性を調べた。TPPの濃度は“ゼロ”または“1mM”からなる反応混合液を0、0.5、1、2、3時間、反応させ、反応液中の4KAの生成量をHPLCで定量した。表9に結果を示す。1mM TPPは4−ケト−D−アラボン酸類の生成に著しい促進効果を示した。
13−2)PQQの要求性 1−1)に記載した方法を用いて、4−ケトアラボン酸合成酵素活性に対するPQQの要求性を調べた。補酵素として“TPPのみ“または“TPPおよび1μM(終濃度)PQQ”からなる反応混合液を3時間反応させ、反応液中の4KAの生成量をHPLCで定量した。表10に結果を示す。PQQの添加は4−ケト−D−アラボン酸類の生成に著しい促進効果を示した。
14)4−ケトアラボン酸合成酵素の精製法
該酵素の精製には、以下の汎用される精製法の組み合わせが有効である。
該酵素の精製には、以下の汎用される精製法の組み合わせが有効である。
汎用される精製法としては超高速遠心、硫酸アンモニウム、あるいはポリエチレングリコールなどによる無細胞抽出液の分画、可溶化剤処理、疎水クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、水素結合クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析および塩析などを挙げることができる。
本発明による4−ケトアラボン酸合成酵素は、該酵素を生産可能な微生物を増殖可能な培地で培養し、得られた細胞を破砕し、破砕細胞から得られる無細胞抽出液、好ましくは超高速遠心により沈殿した細胞膜画分から調製する。
本発明の4−ケトアラボン酸合成酵素を生産する微生物は、グルコノバクター(Gluconobacter)属に属する微生物、あるいは該酵素を生産する突然変異株を生産する組換え株を含む。また、本菌株と機能的同等な株、継代培養株、変異株又は誘導株からなる群から選択される少なくとも1種類も本発明に含まれる。
本実施形態における細菌は、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NBRC)など、各公的菌株保存機関で保管されているグルコノバクター(Gluconobacter)属に属する菌株を用いることができる。4−ケトアラボン酸合成酵素を保有する好適な菌株としては、グルコノバクター オキシダンス サブエスピー メラノゲヌス(Gluconobacter oxydans subsp. melanogenes) NBRC3292を挙げることができる。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。すなわち、本実施形態において、「4−ケトアラボン酸合成酵素を生産する微生物」とは、2,5−ジケトグルコン酸から4−ケト−D−アラボン酸類への変換を触媒する4−ケトアラボン酸合成酵素を有する細菌を該細菌の生育に適した培地で培養することによって、4−ケトアラボン酸合成酵素を生産する能力を有する細菌を意味し、グルコノバクター(Gluconobacter)に属する細菌を例示することができる。
本実施形態における該細菌の培養にあたって、本微生物は好気的条件下、増殖可能な栄養源を含んだ液体あるいは固体培地によって行なわれる。培養はpH約4.0から9.0の範囲で行なえるが、好ましくはpH約5.0から8.0の範囲が望ましい。培養時間は通常、15時間から7日間で好ましい結果が得られるが、15時間以前であっても適度な細胞増殖が認められれば、その限りではない。培養のための好ましい温度範囲は、約13℃から33℃が望ましい。
本実施形態における該細菌の培養にあたって、細胞生産培地には、資化可能な炭素源、利用可能な窒素源や無機物質、ビタミン類、微量成分および他の成育促進因子などを含む。たとえば資化可能な炭素源としてはマンニトール、フラクトース、グルコース、グルコン酸、ソルビトール、グリセリンおよびこれらに類する物質が使用できる。なお、これら糖類の添加濃度は、0.1〜20.0%(w/v)の範囲で細胞生産培地に添加することが該酵素を有する細胞の生産をより向上させる観点から好ましい。
また、細胞生産培地の窒素源としては、例えば、ペプトン、大豆粉、コーンスチープパウダー、コーンスチープリカー、肉エキス、酵母エキス、アミノ酸類等の有機窒素源や塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、尿素等の無機窒素源を単独又は複合的に用いることができる。なお、工業的生産の観点からは、安価であるコーンスチープパウダーやコーンスチープリカー等の窒素源を利用することが好ましい。なお、これら窒素源の添加濃度は、0.1%(w/v)〜5.0%(w/v)の範囲で細胞生産培地に添加することが該酵素を有する細胞の生産をより向上させる観点から好ましい。
細胞生産培地の無機金属塩としては、例えば、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、マンガン、コバルト、鉄等の硫酸塩、塩酸塩、炭酸塩又は燐酸塩を用いることが好ましい。また、必要に応じて少量の動物油、植物油、鉱油等を培養液に用いることが細胞の生産をより向上させる観点から好ましい。
本実施形態における好適な細胞生産培地としては、マンニトール2.5%(w/v)、酵母エキス0.5%(w/v)、ペプトン0.3%(w/v)から成る培地を例示すことができる。
なお、フラスコで培養する際、培地への適量の炭酸カルシウムの添加は、該細菌の増殖に伴う有機酸等の弱酸性有機酸の生成によって培養液のpHの顕著な低下を防ぐために好ましく、細胞の生産性の増加に良い結果をもたらす。
一方、炭酸カルシウム添加の代わりに酸溶液及び/又はアルカリ溶液を培養液中に加えながら該細菌の増殖に伴う有機酸等の弱酸性有機酸の生成によって培養液のpHの顕著な低下を防ぐために好ましく、細胞の生産性の増加に良い結果をもたらす。
なお、培養時の培養液のpHの範囲としては、pH3〜9の範囲内が好適であり、pH3〜8の範囲内がより好適であり、pH3〜6の範囲内がさらに好適である。
前記酸溶液は、塩酸や硫酸等の酸水溶液を用いることができ、前記アルカリ溶液は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムやアンモニア水等のアルカリ水溶液を用いることができる。
本実施形態における培養温度は、10℃〜40℃の範囲内の温度が好ましく、25℃〜35℃の範囲内がより好ましい。
本実施形態における培養時の酸素条件は、通気攪拌培養等の好気的条件が好ましい。
1.酵素反応液中から4−ケト−D−アラボン酸類の採取
本実施形態における酵素反応液中からの4−ケト−D−アラボン酸類を採取する方法は、陰イオン交換樹脂を用いるイオン交換法や電気透析法等の一般的な有機酸の精製方法を適応できる。
本実施形態における酵素反応液中からの4−ケト−D−アラボン酸類を採取する方法は、陰イオン交換樹脂を用いるイオン交換法や電気透析法等の一般的な有機酸の精製方法を適応できる。
例えば、本実施形態における酵素反応液を遠心分離やろ過によって得られる遠心上澄液又はろ液と、細胞などの残渣に分離し、この遠心上澄液又はろ液のpHを水酸化ナトリウムなどのアルカリ溶液でpH7.0以上に調整する。また、pH調整後の遠心上澄液又はろ液を活性型の強塩基性陰イオン交換樹脂(例えば、蟻酸型)カラムに通過させ、4−ケト−D−アラボン酸等の有機酸を吸着させる。その後、低濃度の緩衝液でカラムの洗浄を行った後、緩衝液の濃度を高めることによって有機酸を溶出させることができる。なお、溶出時において、一定量ずつ溶出液を分画することで目的の4−ケト−D−アラボン酸類を高純度で得ることができる。
上記、分画したそれぞれの画分をHPLCによって分析し、目的の4−ケト−D−アラボン酸類を含む画分を集めて、これを強酸性陽イオン交換樹脂(例えば、H型)カラムで処理することで、遊離型の4−ケト−D−アラボン酸を得る。
さらに、前記で得た遊離型の4−ケト−D−アラボン酸を含む画分から蟻酸を除去するために、40℃以下の温度条件で減圧濃縮を行い、真空減圧下で数時間、乾燥することが好ましい。また、この操作によって得られた4−ケト−D−アラボン酸を少量の純水に溶解し、低温で保持(例えば、5℃で1〜3日間)することで4−ケト−D−アラボン酸の結晶を析出させることができる。
一方、遊離型の4−ケト−D−アラボン酸溶液を適当な濃度の水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム又はアンモニアなどで中和し、低温で保持することで、各種4−ケト−D−アラボン酸類を析出させることができる。
これら析出した結晶は、ガラスフィルターによって集め、これを真空乾燥することで高純度の各種4−ケト−D−アラボン酸類を得ることができる。
2.4−ケトアラボン酸合成酵素の単離精製の概略
以下に、培養後の細胞から4−ケトアラボン酸合成酵素の単離精製法の実施態様を記す。
以下に、培養後の細胞から4−ケトアラボン酸合成酵素の単離精製法の実施態様を記す。
(1)培養を終了した醗酵槽内の培養液を遠心分離もしくはろ過により細胞を収集する。
(2)該細胞を緩衝液に懸濁したあと、ビーズ、ホモジナイザー、超音波、リゾチーム処理などの方法で破砕する。
(3)得られた無細胞抽出液を超高速遠心により細胞質画分と細胞膜画分に分離する。
(4)細胞膜に結合している4−ケトアラボン酸合成酵素を適切な可溶化剤で可溶化処理を行い、可溶化溶液を得る。
(5)可溶化溶液は各種クロマトグラフィー処理を組み合わせて、単離精製を行う。
以下に、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
実施例1 4−ケトアラボン酸合成酵素の調製
すべての操作は特に記載しない限り4℃で行った。
(1)グルコノバクター オキシダンス サブエスピー メラノゲヌス NBRC3292の培養
滅菌した600 mlのマンニトール 2.5%(w/v)、酵母エキス 0.5%(w/v)、ペプトン 0.3%(w/v)から成る細胞取得培地を仕込んだ1-L容醗酵槽に、細胞取得培地を入れた試験管で、予め、28℃で19時間、1分間あたり250回転で振とう培養した12 mLのグルコノバクター オキシダンス サブエスピー メラノゲヌス NBRC 3292の種培養液を殺菌培地入り醗酵槽に植菌し、28℃、1vvmの通気をしながら、1分間あたり700回転で攪拌培養を開始した。16時間後、得られた培養液は10℃で15分間、1分間あたり8,000 回転で遠心を行い、細胞を沈殿させた。得られた細胞は100 mLの0.85% NaCl溶液で1回洗浄し、6.23 gのウエット細胞を得た。3基の1-L容醗酵槽の培養から18.7 gのウエット細胞が得られた。収穫した細胞は、つぎの精製段階まで−30℃で1週間、冷凍保存をした。
すべての操作は特に記載しない限り4℃で行った。
(1)グルコノバクター オキシダンス サブエスピー メラノゲヌス NBRC3292の培養
滅菌した600 mlのマンニトール 2.5%(w/v)、酵母エキス 0.5%(w/v)、ペプトン 0.3%(w/v)から成る細胞取得培地を仕込んだ1-L容醗酵槽に、細胞取得培地を入れた試験管で、予め、28℃で19時間、1分間あたり250回転で振とう培養した12 mLのグルコノバクター オキシダンス サブエスピー メラノゲヌス NBRC 3292の種培養液を殺菌培地入り醗酵槽に植菌し、28℃、1vvmの通気をしながら、1分間あたり700回転で攪拌培養を開始した。16時間後、得られた培養液は10℃で15分間、1分間あたり8,000 回転で遠心を行い、細胞を沈殿させた。得られた細胞は100 mLの0.85% NaCl溶液で1回洗浄し、6.23 gのウエット細胞を得た。3基の1-L容醗酵槽の培養から18.7 gのウエット細胞が得られた。収穫した細胞は、つぎの精製段階まで−30℃で1週間、冷凍保存をした。
(2)細胞破砕および無細胞抽出液の調製
上記ステップ(1)で得られた約14gのグルコノバクター オキシダンス サブエスピー メラノゲヌス NBRC3292細胞を5mM MgCl2、1mM TPP、0.1mM フェニルメチルスルホニルフルオライド(本文中以下、「PMSF」と記載する)および5mM DTTを含む175mLの10mM トリス−塩酸緩衝液(pH=7.5)に懸濁し、その懸濁液をホモジナイザー(バイオスペック社製)チャンバーに入れ、同量のジルコニア/シリカビーズ(直径0.1 mm、バイオスペック社製)を加えて250 mLになるように充填した。そのチャンバーは氷中で10分間冷却したあと、1分間運転した。その後、チャンバーは、10分間氷中で冷却して再度、1分間運転を行いビーズで破砕した。
上記ステップ(1)で得られた約14gのグルコノバクター オキシダンス サブエスピー メラノゲヌス NBRC3292細胞を5mM MgCl2、1mM TPP、0.1mM フェニルメチルスルホニルフルオライド(本文中以下、「PMSF」と記載する)および5mM DTTを含む175mLの10mM トリス−塩酸緩衝液(pH=7.5)に懸濁し、その懸濁液をホモジナイザー(バイオスペック社製)チャンバーに入れ、同量のジルコニア/シリカビーズ(直径0.1 mm、バイオスペック社製)を加えて250 mLになるように充填した。そのチャンバーは氷中で10分間冷却したあと、1分間運転した。その後、チャンバーは、10分間氷中で冷却して再度、1分間運転を行いビーズで破砕した。
ビーズを含む細胞破砕液からビーズを除くために、低速遠心によりビーズと細胞破砕液に分け、ビーズは70 mLの破砕緩衝液で洗浄し、洗浄液は最初の細胞破砕液とあわせて最終的には215 mLの破砕緩衝液を得た。その細胞破砕液は5℃、5,000 rpmで10分間、遠心を行って未破砕の細胞および少量の培地成分などの残渣を除き、無細胞抽出液を得た。つぎの精製段階まで−30℃で冷凍保存をした。
(3)無細胞抽出液の超高速遠心による細胞内蛋白質の分画
上記ステップ(2)で得た無細胞抽出液は、4℃、100,000×gで70分間、遠心分離を行い、遠心上澄(細胞質画分)と沈殿物(細胞膜画分)に分離した。沈殿した細胞膜画分は0.1mM PMSF、5mM DTTを含む20mM MOPS緩衝液(pH 7.0)で遠心上澄と同量の208 mLの懸濁液を調製した。両画分は、2 Lの0.1mM PMSF、5mM DTTを含む20mM MOPS緩衝液(pH=7.0)で一晩、透析を行い、透析を行った両画分の酵素液はそれぞれ、0.1mM PMSF、5mM DTTを含む20mM MOPS緩衝液(pH=7.0)で4倍に希釈して、1−1)の酵素活性測定法により、酵素活性を調べた。その結果、酵素活性は細胞質画分には少量の酵素活性が検出されたが、大部分の酵素活性は細胞膜画分に検出された。
上記ステップ(2)で得た無細胞抽出液は、4℃、100,000×gで70分間、遠心分離を行い、遠心上澄(細胞質画分)と沈殿物(細胞膜画分)に分離した。沈殿した細胞膜画分は0.1mM PMSF、5mM DTTを含む20mM MOPS緩衝液(pH 7.0)で遠心上澄と同量の208 mLの懸濁液を調製した。両画分は、2 Lの0.1mM PMSF、5mM DTTを含む20mM MOPS緩衝液(pH=7.0)で一晩、透析を行い、透析を行った両画分の酵素液はそれぞれ、0.1mM PMSF、5mM DTTを含む20mM MOPS緩衝液(pH=7.0)で4倍に希釈して、1−1)の酵素活性測定法により、酵素活性を調べた。その結果、酵素活性は細胞質画分には少量の酵素活性が検出されたが、大部分の酵素活性は細胞膜画分に検出された。
(4)細胞膜画分の可溶化剤による4−ケトアラボン酸合成酵素の可溶化
上記ステップ(3)で酵素活性が検出された細胞膜懸濁液から4−ケトアラボン酸合成酵素の可溶化を行った。上記ステップ(3)で得た200 mLの細胞膜懸濁液に終濃度で2% Tween 80、200mM KClになるように20% Tween 80と2M KCl溶液を加えて、4℃のクロマトチャンバー内で4時間、ゆっくりシーソー振とうをおこなった。その後、4℃、10,000×gで10分間、遠心分離を行い、遠心上澄を2 Lの0.1mM PMSF、5mM DTTを含む20mM MOPS緩衝液(pH=7.0)で一晩、透析を行い、透析液は0.1mM PMSF、5mM DTTを含む20mM MOPS緩衝液(pH=7.0)で4倍に希釈して、1−1)の酵素活性測定法により、酵素活性を確認した。
上記ステップ(3)で酵素活性が検出された細胞膜懸濁液から4−ケトアラボン酸合成酵素の可溶化を行った。上記ステップ(3)で得た200 mLの細胞膜懸濁液に終濃度で2% Tween 80、200mM KClになるように20% Tween 80と2M KCl溶液を加えて、4℃のクロマトチャンバー内で4時間、ゆっくりシーソー振とうをおこなった。その後、4℃、10,000×gで10分間、遠心分離を行い、遠心上澄を2 Lの0.1mM PMSF、5mM DTTを含む20mM MOPS緩衝液(pH=7.0)で一晩、透析を行い、透析液は0.1mM PMSF、5mM DTTを含む20mM MOPS緩衝液(pH=7.0)で4倍に希釈して、1−1)の酵素活性測定法により、酵素活性を確認した。
(5)疎水クロマトグラフィー(イソプロピルリガンド)による4−ケトアラボン酸合成酵素の分離
上記(4)で得られた50 mLの可溶化溶液(約60 mgの蛋白質を含む)を1 Lの200mM KCl、5mM DTT、1.5M 硫酸アンモニウムを含む20mM MOPS緩衝液(pH=7.0)で一晩、透析を行い、あらかじめ、200mM KCl、5mM DTT、1.5M 硫酸アンモニウムを含む20mM MOPS緩衝液(pH=7.0)で平衡化したリソース イソ(ResourceTM ISO、ファルマシア社製)疎水性カラムにロードした。カラムからの溶出液はUV280nmでの吸光度を追跡した。ロード終了後、カラムから非吸着蛋白質が溶出し終わるまで、1分間当たり0.5 mLの流速で平衡化緩衝液を流した。その後、1分間当たり0.5 mLの流速で、40分間で硫酸アンモニウム濃度を1.5 Mから0.6 Mまで直線的に低下させ、溶出液は各2 mLづつ、0.2% Tween 80の濃度になるように、予め、各分画チューブには0.2 mLの2% Tween 80を添加して分画を行った。各溶出分画は200mM KCl、5mM DTTを含む20mM MOPS緩衝液(pH=7.0)で一晩、透析を行い、酵素活性を調べた。その結果、0.975M 硫酸アンモニウム濃度付近で4−ケトアラボン酸合成酵素活性は溶出した。活性が認められた溶出画分は20mM MOPS緩衝液(pH=7.0)で透析を行い、その透析サンプルはDTT存在下、変性系ソディウム ドデシル サルフェート(SDS)−ポリアクリルアミド電気泳動(ゲル濃度:15%)分析を行った。その結果、酵素活性が認められた溶出液には分子サイズが45,000ダルトン付近と97,000から66,000ダルトン付近に、コマジー ブリリアント ブルー(CBB)染色で、強く染色されるバンドが観察された。それら2本のバンドの濃さは分画チューブごとに比例的ではなく、また、各溶出画分の酵素活性の強さとSDS−ポリアクリルアミドゲルの染色バンドの強さから45,000ダルトン付近のバンドが該酵素由来のサブユニット由来のペプチドであると予想された。
上記(4)で得られた50 mLの可溶化溶液(約60 mgの蛋白質を含む)を1 Lの200mM KCl、5mM DTT、1.5M 硫酸アンモニウムを含む20mM MOPS緩衝液(pH=7.0)で一晩、透析を行い、あらかじめ、200mM KCl、5mM DTT、1.5M 硫酸アンモニウムを含む20mM MOPS緩衝液(pH=7.0)で平衡化したリソース イソ(ResourceTM ISO、ファルマシア社製)疎水性カラムにロードした。カラムからの溶出液はUV280nmでの吸光度を追跡した。ロード終了後、カラムから非吸着蛋白質が溶出し終わるまで、1分間当たり0.5 mLの流速で平衡化緩衝液を流した。その後、1分間当たり0.5 mLの流速で、40分間で硫酸アンモニウム濃度を1.5 Mから0.6 Mまで直線的に低下させ、溶出液は各2 mLづつ、0.2% Tween 80の濃度になるように、予め、各分画チューブには0.2 mLの2% Tween 80を添加して分画を行った。各溶出分画は200mM KCl、5mM DTTを含む20mM MOPS緩衝液(pH=7.0)で一晩、透析を行い、酵素活性を調べた。その結果、0.975M 硫酸アンモニウム濃度付近で4−ケトアラボン酸合成酵素活性は溶出した。活性が認められた溶出画分は20mM MOPS緩衝液(pH=7.0)で透析を行い、その透析サンプルはDTT存在下、変性系ソディウム ドデシル サルフェート(SDS)−ポリアクリルアミド電気泳動(ゲル濃度:15%)分析を行った。その結果、酵素活性が認められた溶出液には分子サイズが45,000ダルトン付近と97,000から66,000ダルトン付近に、コマジー ブリリアント ブルー(CBB)染色で、強く染色されるバンドが観察された。それら2本のバンドの濃さは分画チューブごとに比例的ではなく、また、各溶出画分の酵素活性の強さとSDS−ポリアクリルアミドゲルの染色バンドの強さから45,000ダルトン付近のバンドが該酵素由来のサブユニット由来のペプチドであると予想された。
(6)疎水クロマトグラフィー(フェニルリガンド)による4−ケトアラボン酸合成酵素の分離
上記(5)で得られたリソース イソ疎水性カラムクロマトグラフィーで得られた7 mLの酵素活性画分(5.5mgの蛋白質を含む)を1 Lの200mM KCl、5mM DTT、0.8M 硫酸アンモニウムを含む20mM MOPS緩衝液(pH=7.0)で一晩、透析を行い、あらかじめ、200mM KCl、5mM DTT、0.8M 硫酸アンモニウムを含む20mM MOPS緩衝液(pH=7.0)で平衡化したリソース フェニル (ResourceTM PHE、ファルマシア社製)疎水性カラムにロードした。カラムからの溶出液はUV280nmでの吸光度を追跡した。ロード終了後、カラムから非吸着蛋白質が溶出し終わるまで、1分間当たり0.2 mLの流速で平衡化緩衝液を流した。その後、120分間で1分間当たり0.2 mLの流速で硫酸アンモニウム濃度を0.8 Mからゼロまで直線的に低下させ、その後、60分間、硫酸アンモニウムゼロで流した。溶出液は各0.5 mLづつ、0.2% Tween 80の濃度になるように、予め、各分画チューブには0.05 mLの2% Tween 80を添加して分画を行った。各溶出分画は200mM KCl、5mM DTTを含む20mM MOPS緩衝液(pH=7.0)で一晩、透析を行い、酵素活性を調べた。その結果、硫酸アンモニウム濃度ゼロ付近で4−ケトアラボン酸合成酵素活性が溶出した。活性が認められた溶出画分は20mM MOPS緩衝液(pH=7.0)で透析を行い、その透析サンプルはDTT存在下、変性系SDS−ポリアクリルアミド電気泳動(ゲル濃度:15%)分析を行い、蛋白質の均一性を調べた。その結果、酵素活性が認められた溶出液には分子サイズが45,000ダルトン付近にCBB染色で1本のバンドが観察され、該酵素のサブユニットのサイズは46,100±1,500ダルトンと算出された。
上記(5)で得られたリソース イソ疎水性カラムクロマトグラフィーで得られた7 mLの酵素活性画分(5.5mgの蛋白質を含む)を1 Lの200mM KCl、5mM DTT、0.8M 硫酸アンモニウムを含む20mM MOPS緩衝液(pH=7.0)で一晩、透析を行い、あらかじめ、200mM KCl、5mM DTT、0.8M 硫酸アンモニウムを含む20mM MOPS緩衝液(pH=7.0)で平衡化したリソース フェニル (ResourceTM PHE、ファルマシア社製)疎水性カラムにロードした。カラムからの溶出液はUV280nmでの吸光度を追跡した。ロード終了後、カラムから非吸着蛋白質が溶出し終わるまで、1分間当たり0.2 mLの流速で平衡化緩衝液を流した。その後、120分間で1分間当たり0.2 mLの流速で硫酸アンモニウム濃度を0.8 Mからゼロまで直線的に低下させ、その後、60分間、硫酸アンモニウムゼロで流した。溶出液は各0.5 mLづつ、0.2% Tween 80の濃度になるように、予め、各分画チューブには0.05 mLの2% Tween 80を添加して分画を行った。各溶出分画は200mM KCl、5mM DTTを含む20mM MOPS緩衝液(pH=7.0)で一晩、透析を行い、酵素活性を調べた。その結果、硫酸アンモニウム濃度ゼロ付近で4−ケトアラボン酸合成酵素活性が溶出した。活性が認められた溶出画分は20mM MOPS緩衝液(pH=7.0)で透析を行い、その透析サンプルはDTT存在下、変性系SDS−ポリアクリルアミド電気泳動(ゲル濃度:15%)分析を行い、蛋白質の均一性を調べた。その結果、酵素活性が認められた溶出液には分子サイズが45,000ダルトン付近にCBB染色で1本のバンドが観察され、該酵素のサブユニットのサイズは46,100±1,500ダルトンと算出された。
実施例2 酵素反応で生成した4−ケト−D−アラボン酸類の精製
(1)酵素反応による4−ケト−D−アラボン酸類の生産
精製した4−ケトアラボン酸合成酵素を用いて、1−1)の酵素活性測定法を参考にして、2,5−ジケトグルコン酸から4−ケト−D−アラボン酸類の生産をおこなった。10 mLの50mM MOPS緩衝液(pH=6.75)中に52mM 2,5−ジケトグルコン酸、1mM TPP、1μM PQQ、2mM MnCl2、1.1mM フェナジンメトサルフェートおよび該精製酵素(66.7 μgの蛋白質を含む)を含む混合液を30−mL容三角フラスコに調製し、25℃で、3時間、ゆっくり振とうした。反応終了後、反応液は8,000 rpmで10分間遠心をして、少量の残渣を除いた。その遠心上澄中の4−ケト−D−アラボン酸生成量をHPLCにより定量したところ、約10 mLの上澄には約127 mgの4−ケト−D−アラボン酸類が含まれていた。
(1)酵素反応による4−ケト−D−アラボン酸類の生産
精製した4−ケトアラボン酸合成酵素を用いて、1−1)の酵素活性測定法を参考にして、2,5−ジケトグルコン酸から4−ケト−D−アラボン酸類の生産をおこなった。10 mLの50mM MOPS緩衝液(pH=6.75)中に52mM 2,5−ジケトグルコン酸、1mM TPP、1μM PQQ、2mM MnCl2、1.1mM フェナジンメトサルフェートおよび該精製酵素(66.7 μgの蛋白質を含む)を含む混合液を30−mL容三角フラスコに調製し、25℃で、3時間、ゆっくり振とうした。反応終了後、反応液は8,000 rpmで10分間遠心をして、少量の残渣を除いた。その遠心上澄中の4−ケト−D−アラボン酸生成量をHPLCにより定量したところ、約10 mLの上澄には約127 mgの4−ケト−D−アラボン酸類が含まれていた。
(2)4−ケト−D−アラボン酸の精製
前記10 mLの反応遠心上澄を2M 水酸化ナトリウムでpH 7.0に調整後、20 mlのアンバ−ライトCG400陰イオン交換樹脂(蟻酸型、ローム・アンド・ハース社製)のカラムを通した。さらに、そのカラムに60 mlの20mM 蟻酸ナトリウム緩衝液を通過させ、カラムを洗浄した後、各70 mlの20mM 蟻酸ナトリウム緩衝液と500mM 蟻酸ナトリウム緩衝液を用いた直線的な濃度勾配によって吸着物質を溶出させ、溶出する溶液は試験管で2.5 mlずつ分画した。
前記10 mLの反応遠心上澄を2M 水酸化ナトリウムでpH 7.0に調整後、20 mlのアンバ−ライトCG400陰イオン交換樹脂(蟻酸型、ローム・アンド・ハース社製)のカラムを通した。さらに、そのカラムに60 mlの20mM 蟻酸ナトリウム緩衝液を通過させ、カラムを洗浄した後、各70 mlの20mM 蟻酸ナトリウム緩衝液と500mM 蟻酸ナトリウム緩衝液を用いた直線的な濃度勾配によって吸着物質を溶出させ、溶出する溶液は試験管で2.5 mlずつ分画した。
分画した画分は、それぞれHPLCで分析を行い、7.7分の保持時間に示すピークをもつ分画番号37〜45の画分の溶出液を集めた。
また、前記回収した溶出液を20 mlのアンバーライトCG120陽イオン交換樹脂(H型、ローム・アンド・ハース社製)のカラムに通過させた後、さらに50 mlの脱イオン水でカラムの洗浄を行い、カラムを通過した非吸着画分及び洗液を回収した。
さらに、この回収した溶液を35℃で減圧濃縮し、蟻酸を除去した後、このペースト状濃縮物を少量の水に溶解し、5N 水酸化ナトリウム水溶液でpH7.0に調整した。また、再度、少量まで減圧濃縮後、この濃縮液にエタノールを白濁するまで加え、5℃で保持することで結晶を得た。
また、得られた結晶をグラスフィルターで集め、室温で2時間真空乾燥を行うことで、約131 mgの4−ケト−D−アラボン酸のナトリウム塩の結晶を回収できた。
(3)採取された反応生成物のLC/MSによる同定
得られた2mgの結晶を1 mLの水に溶解した溶液を用いてLCMS分析をおこなった。分析カラムとしてディスカバリー HS F5, 25cm×4.6mm(スペルコ社製)を用いて、フォトダイオードアレー検出器を装着したLCMS−2010A液体クロマトグラフ質量分析計(島津製作所社製)を用いて0.1% 蟻酸含有の2% アセトニトリル水溶液溶媒移動相を用いて分析を行った。190〜300nmで検出される液体クロマトグラムと検出されたピークの紫外線吸収スペクトル及び陰イオンマススペクトル、マスクロマトグラムを解析した。
得られた2mgの結晶を1 mLの水に溶解した溶液を用いてLCMS分析をおこなった。分析カラムとしてディスカバリー HS F5, 25cm×4.6mm(スペルコ社製)を用いて、フォトダイオードアレー検出器を装着したLCMS−2010A液体クロマトグラフ質量分析計(島津製作所社製)を用いて0.1% 蟻酸含有の2% アセトニトリル水溶液溶媒移動相を用いて分析を行った。190〜300nmで検出される液体クロマトグラムと検出されたピークの紫外線吸収スペクトル及び陰イオンマススペクトル、マスクロマトグラムを解析した。
1)得られた結晶のLC-MS分析
LCクロマトグラムでの結晶溶液の保持時間(分):10.3
紫外線吸収スペクトル:λmax(nm):192〜230(エンド吸収)
MSマススペクトル(測定モード:ネガティブ):m/z 163.0[M-H]-
分子量:164
LCクロマトグラムでの結晶溶液の保持時間(分):10.3
紫外線吸収スペクトル:λmax(nm):192〜230(エンド吸収)
MSマススペクトル(測定モード:ネガティブ):m/z 163.0[M-H]-
分子量:164
LC-MS分析により、LCの保持時間および紫外線吸収スペクトル、MSのマススペクトルから、上記、酵素反応による生成物は4−ケト−D−アラボン酸と同定した。
Claims (11)
- 以下のような物理化学的特性を有する4−ケトアラボン酸合成酵素。
a)至適pH:4.5から7.0
b)至適温度:0℃から60℃
c)分子サイズ:92,200±3,500ダルトン(サブユニットの分子サイズ46,100±1,500ダルトンからなる2つのサブユニット)
d)基質特異性:2,5−ジケトグルコン酸
e)補酵素:チアミンピロホスフェート、ピロロキノリンキノン - 前記4−ケトアラボン酸合成酵素が、グルコノバクター属に属する微生物由来である、請求項1に記載の4−ケトアラボン酸合成酵素。
- 前記微生物が、グルコノバクター オキシダンスである、請求項2に記載の4−ケトアラボン酸合成酵素。
- 前記微生物が、グルコノバクター オキシダンス NBRC 3292、その機能的同等物、継代培養、変異株又は誘導体からなる群から選択される少なくとも1種類である、請求項3に記載の4−ケトアラボン酸合成酵素。
- 以下のような物理化学的特性、
a)至適pH:4.5から7.0
b)至適温度:0℃から60℃
c)分子サイズ:92,200±3,500ダルトン(サブユニットの分子サイズ46,100±1,500ダルトンからなる2つのサブユニット)
d)基質特異性:2,5−ジケトグルコン酸
e)補酵素:チアミンピロホスフェート、ピロロキノリンキノン
を有する4−ケトアラボン酸合成酵素の製造方法であって、
好気条件下、液体ないしは固体培養培地中で上記の性質を有する能力をもつグルコノバクター属に属する微生物を培養し、該生物の細胞を破砕し、該微生物の破砕された細胞の無細胞抽出液より該酵素の単離精製を行う、4−ケトアラボン酸合成酵素の製造方法。 - 前記微生物が、グルコノバクター オキシダンスである、請求項5に記載の4−ケトアラボン酸合成酵素の製造方法。
- 前記微生物がグルコノバクター オキシダンス NBRC 3292、その機能的同等物、継代培養、変異株又は誘導体からなる群から選択される少なくとも1種類である、請求項6に記載の4−ケトアラボン酸合成酵素の製造方法。
- 4−ケトアラボン酸合成酵素を2,5−ジケトグルコン酸と接触させる、4−ケト−D−アラボン酸及びその塩類の製造方法であって、
該4−ケトアラボン酸合成酵素が、
(i)以下のような物理化学的特性を有する4−ケトアラボン酸合成酵素
a)至適pH:4.5から7.0
b)至適温度:0℃から60℃
c)分子サイズ:92,200±3,500ダルトン(サブユニットの分子サイズ46,100±1,500ダルトンからなる2つのサブユニット)
d)基質特異性:2,5−ジケトグルコン酸
e)補酵素:チアミンピロホスフェート、ピロロキノリンキノン
または
(ii)好気条件下、液体ないしは固体培養培地中で上記の性質を有する4−ケトアラボン酸合成酵素を生産する能力をもつグルコノバクター属に属する微生物、
または
(iii)該微生物の無細胞抽出液
からなる群から選択される少なくとも1種類である、4−ケト−D−アラボン酸及びその塩類の製造方法。 - 前記微生物が、グルコノバクター オキシダンスである、請求項8に記載の4−ケト−D−アラボン酸の製造方法。
- 前記微生物が、グルコノバクター オキシダンス NBRC 3292、その機能的同等物、継代培養、変異株又は誘導体からなる群から選択される少なくとも1種類である、請求項9に記載の4−ケト−D−アラボン酸の製造方法。
- さらに、4−ケトアラボン酸合成酵素を電子受容体の存在下に2,5−ジケトグルコン酸と接触させる、請求項8〜10のいずれか1項に記載の4−ケト−D−アラボン酸及びその塩類の製造方法。
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