JP2014109674A - 積層型電子写真感光体、画像形成装置、及び積層型電子写真感光体の製造方法 - Google Patents

積層型電子写真感光体、画像形成装置、及び積層型電子写真感光体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】耐磨耗性と、感度特性とに優れる積層型電子写真感光体と、当該積層型電子写真感光体を像担持体として備える画像形成装置と、当該積層型電子写真感光体の製造方法とを提供すること。
【解決手段】導電性基体上に、電荷発生材料を含有する電荷発生層と、電荷輸送材料、及びバインダー樹脂を含有する電荷輸送層とが、順次積層された積層型感光層を形成し、式(1)で表されるトリアリールアミン誘導体を正孔輸送材料として含有する電荷輸送材料を用い、電荷輸送層中の電荷輸送材料の含有量を、バインダー樹脂100質量部に対して、55質量部以下とする。
Figure 2014109674

【選択図】なし

Description

本発明は、積層型電子写真感光体、画像形成装置、及び積層型電子写真感光体の製造方法に関する。
電子写真方式の画像形成装置に備えられる電子写真感光体としては、セレン、アモルファスシリコン等の無機材料からなる感光層を備える無機感光体と、主に、バインダー樹脂、電荷発生材料、電荷輸送材料等の有機材料からなる感光層を備える有機感光体とがある。そして、これらの感光体のなかでは、無機感光体と比較して製造が容易であり、感光層の材料を幅広い材料から選択でき、設計の自由度が高いことから有機感光体が幅広く使用されている。
このような有機感光体は、その層構成上、単層型有機感光体と、積層型有機感光体とに大別される。特に、積層型有機感光体は、各層毎に機能分離してあることから、設計容易性や機能制御の点で優れ、近年汎用化されている。
このような積層型の電子写真感光体では、導電性基体上に、電荷発生層と、電荷輸送層とがこの順で積層されることが多い。電荷発生層には電荷発生材料が加えられ、電荷輸送層には電荷輸送材料が加えられる。
電荷輸送層に加えられる電荷輸送材料として、電子輸送材料と正孔輸送材料とが使用されている。正孔輸送材料については、電荷輸送能に優れることから、種々のトリアリールアミン誘導体の使用が提案されている。そして、正孔輸送材料として好適なトリアリールアミン誘導体の具体例としては、下記の化合物(HTM−A、及びHTM−B)が挙げられる(例えば、特許文献1参照)。
Figure 2014109674
特開2005−289877号公報
しかし、特許文献1に記載のトリアリールアミン誘導体(HTM−A、及びHTM−B)を用いて感光層を形成する場合、得られる感光体について、優れた感度特性と、耐摩耗性とを両立させることが困難である。また、特許文献1に記載のトリアリールアミン誘導体は、バインダー樹脂との組合せによっては、感光層中で非常に結晶化しやすい。感光層中でトリアリールアミン誘導体の結晶化が生じると、電子写真感光体の電気特性(感度特性)が著しく損なわれてしまう。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、耐摩耗性と、感度特性とに優れる積層型電子写真感光体と、当該積層型電子写真感光体を像担持体として備える画像形成装置と、当該積層型電子写真感光体の製造方法とを提供することを目的とする。
本発明者らは、導電性基体上に、電荷発生材料を含有する電荷発生層と、電荷輸送材料、及びバインダー樹脂を含有する電荷輸送層とが、順次積層された積層型電子写真感光体について、特定の構造のトリアリールアミン誘導体を正孔輸送材料として含む電荷輸送材料を用い、且つ、電荷輸送材料の使用量を、バインダー樹脂の量に対して特定の範囲内の量とすることで上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には本発明は以下のものを提供する。
本発明の第一の態様は、
導電性基体上に、電荷発生材料を含有する電荷発生層と、電荷輸送材料及びバインダー樹脂を含有する電荷輸送層とが、順次積層された積層型感光層が形成されており、
前記電荷輸送材料が、正孔輸送材料として下記式(1)で表されるトリアリールアミン誘導体を含有し、
前記電荷輸送層中の前記電荷輸送材料の含有量が、前記バインダー樹脂100質量部に対して、55質量部以下である、電子写真感光体に関する。
Figure 2014109674
〔式(1)中、Arはアリール基、又は共役二重結合を有する複素環基であり、Arはアリール基であり、Ar、及びArは、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、及びフェノキシ基からなる群より選択される1以上の基により置換されていてもよい。〕
本発明の第二の態様は、
像担持体と、
前記像担持体の表面を帯電するための帯電部と、
帯電された前記像担持体の表面を露光して前記像担持体の表面に静電潜像を形成するための露光部と、
前記静電潜像をトナー像として現像するための現像部と、
前記トナー像を前記像担持体から被転写体へ転写するための転写部と、を備え、前記像担持体が、第一の態様に係る電子写真感光体であることを特徴とする画像形成装置に関する。
本発明によれば、耐摩耗性と、感度特性とに優れる積層型電子写真感光体と、当該積層型電子写真感光体を像担持体として備える画像形成装置と、当該積層型電子写真感光体の製造方法とを提供することができる。
積層型感光体の構成を示す図である。 本発明の画像形成装置の一例を示す概略構成図である。 トリアリールアミン誘導体(HTM−1)のH−NMR(300MHz)のチャートを示す図である。 トリアリールアミン誘導体(HTM−3)のH−NMR(300MHz)のチャートを示す図である。 トリアリールアミン誘導体(HTM−4)のH−NMR(300MHz)のチャートを示す図である。 トリアリールアミン誘導体(HTM−8)のH−NMR(300MHz)のチャートを示す図である。 トリアリールアミン誘導体(HTM−10)のH−NMR(300MHz)のチャートを示す図である。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の要旨を限定するものではない。
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態は、導電性基体上に、電荷発生材料を含有する電荷発生層と、電荷輸送材料及びバインダー樹脂を含有する電荷輸送層とが、順次積層された積層型感光層が形成されている積層型感光体である。電荷輸送材料は電子輸送材料として、下記式(1)で表されるトリアリールアミン誘導体を含有する。また、電荷輸送層中の電荷輸送材料の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して、55質量部以下である。
Figure 2014109674
〔式(1)中、Arはアリール基、又は共役二重結合を有する複素環基であり、Arはアリール基であり、Ar、及びArは、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、及びフェノキシ基からなる群より選択される1以上の基により置換されていてもよい。〕
本出願の明細書及び特許請求の範囲において、積層型感光体の電荷輸送層に含まれる樹脂を「バインダー樹脂」と呼ぶ。また、積層型感光体の電荷発生層が樹脂を含む場合に、電荷発生層に含まれる樹脂を「ベース樹脂」と呼ぶ。以下、本発明の第1実施形態に係る電子写真感光体である、積層型感光体について説明する。
≪積層型感光体≫
図1(a)に示す積層型電子写真感光体のように、電子写真感光体において積層型感光体10は、導電性基体11上に蒸着又は塗布等の手段によって、電荷発生材料を含有する電荷発生層12を形成し、次いで電荷発生層12上に、電荷輸送材料とバインダー樹脂とを含む塗布液を塗布した後に乾燥させて電荷輸送層13を形成することにより作成できる。
積層型の電子写真感光体は、電荷輸送材料の種類を適宜選択することにより、正負何れの帯電方式にも適用可能である。
また、図1(b)に示す積層型電子写真感光体のように、感光層を形成する前に、導電性基体11上に、下引き層14を予め形成しておくことも好ましい。下引き層14を設けることにより、導電性基体11側の電荷の感光層への注入を防ぐとともに、感光層の導電性基体11上への結着を強固にし、導電性基体11の表面上の欠陥を被覆して平滑化することができるためである。
以下、積層型感光体に関して、導電性基体、感光層、及び感光層の作成方法について順に説明する。
〔導電性基体〕
導電性基体は、電子写真感光体の導電性基体として用いることができるものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、導電性を有する材料で少なくとも表面部が構成されるもの等が挙げられる。すなわち、具体的には、例えば、導電性を有する材料からなるものであってもよいし、プラスチック材料等の表面を、導電性を有する材料で被覆したものであってもよい。また、導電性を有する材料としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、錫、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼、真鍮等が挙げられる。また、導電性を有する材料としては、導電性を有する材料を1種で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて、例えば、合金等として用いてもよい。また、導電性基体としては、上記の中でも、アルミニウム又はアルミニウム合金からなることが好ましい。そうすることによって、より好適な画像を形成することができる感光体を提供することができる。このことは、感光層から導電性基体への電荷の移動が良好であることによると考えられる。
導電性基体の形状は、使用する画像形成装置の構造に合わせて適宜選択することができ、例えば、シート状、ドラム状等の基体が好適に使用できる。また、導電性気体の厚みは上記形状に応じて適宜選択することができる。
〔感光層〕
積層型感光体は、導電性基体上に形成された、少なくとも電荷発生材料を含む電荷発生層、及び少なくとも電荷輸送材料とバインダー樹脂とを含む電荷輸送層から構成されている。電荷発生層はベース樹脂を含んでいてもよい。以下、バインダー樹脂、電荷輸送材料、電荷発生材料、ベース樹脂について順に説明する。
(バインダー樹脂)
電荷輸送層において用いるバインダー樹脂は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、従来から積層型感光体の電荷輸送層において使用されているバインダー樹脂から適宜選択して用いることができる。好適なバインダー樹脂の具体例としては、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、アクリル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスルホン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシアクリレート樹脂、及びウレタン−アクリレート樹脂等が挙げられる。バインダー樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのバインダー樹脂の中でも、感光層の磨耗量を抑制しやすい点で、ポリカーボネート樹脂が好ましい。ポリカーボネート樹脂の具体例としては、ビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂、ビスフェノールZC型ポリカーボネート樹脂、ビスフェノールC型ポリカーボネート樹脂、及びビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂が挙げられる。また、ポリカーボネート樹脂の中では、下記式(2)で表されるポリカーボネート樹脂がより好ましい。
Figure 2014109674
〔式(2)中、p+q=1であり、0.35≦p<0.7であり、Arは下式(2−1)〜(2−4):
Figure 2014109674
から選択される1の2価の基であり、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、又はアリール基であり、R及びRは互いに結合してシクロアルキリデン基を形成してもよい。〕
式(2)のポリカーボネートが有する置換基R〜Rがアルキル基である場合、炭素原子数1以上12以下のアルキル基が好ましく、炭素原子数1以上8以下のアルキル基がより好ましく、炭素原子数1以上6以下のアルキル基が特に好ましい。
〜Rで表される置換基がアルキル基である場合の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、ter−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、tert−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、iso−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、tert−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、及びドデシル基等が挙げられる。
また、式(2)において、RとRとは互いに結合してシクロアルキリデン基を形成してもよい。RとRとがシクロアルキリデン基を形成する場合、シクロアルキリデン基を構成する環は4員環以上8員環以下であるのが好ましく、5員環以上6員環以下であるのがより好ましい。
式(2)において置換基R〜Rがアリール基である場合、フェニル基、又は2個以上6個以下のベンゼン環が縮合されるか単結合により連結されて形成される基が好ましい。アリール基に含まれるベンゼン環の数は、1以上6以下が好ましく、1以上3以下がより好ましく、1又は2が特に好ましい。
〜Rで表される置換基がアリール基である場合の具体例としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基等が挙げられる。
式(2)におけるArは、下式(2−1)〜(2−4):
Figure 2014109674
から選択される2価の基である。
式(2)で表されるポリカーボネート樹脂の製造方法は特に限定されない。式(2)で表されるポリカーボネート樹脂は、例えば、式(2)に記載の繰り返し単位に対応するビスフェノール化合物を用いて、公知のポリカーボネート樹脂の製造方法に従い製造できる。
式(2)で表されるポリカーボネート樹脂のうち、好適な樹脂の具体例としては下式で表されるResin2−1〜Resin2−5が挙げられる。Resin2−1〜Resin2−5を表す式中、p及びqは式(2)と同義である。
Figure 2014109674
式(2)で表されるポリカーボネート樹脂は、本発明の目的を阻害しない限り、ランダム共重合体及びブロック共重合体の何れでもよい。式(2)で表されるポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、5,000以上200,000以下であるのが好ましく、20,000以上60,000以下であるのがより好ましい。バインダー樹脂の粘度平均分子量をかかる範囲とすることにより、バインダー樹脂が適度な硬さとなり、バインダー樹脂中に良好に電荷輸送材料が分散することによって、電気的特性及び耐磨耗性に優れる感光体が得られる。
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量[M]は、オストワルド粘度計によって、極限粘度[η]を求め、Schnellの式によって、[η]=1.23×10−40.83より算出できる。なお、[η]は、20℃で、塩化メチレンを溶媒として、濃度が6.0g/dmとなるようにポリカーボネート樹脂を溶解させて得られるポリカーボネート樹脂溶液を用いて測定できる。
電荷輸送層における、バインダー樹脂の総量に対する、式(2)で表されるポリカーボネート樹脂の含有量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されないが、70質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、100質量%であるのが特に好ましい。
(電荷輸送材料)
電荷輸送材料としては、一般的に、正孔輸送材料と電子輸送材料とが挙げられる。本発明の第1実施形態に係る電子写真感光体では、電荷輸送層は、正孔輸送材料として、下記式(1)で表されるトリアリールアミン誘導体を含有する。
Figure 2014109674
〔式(1)中、Arはアリール基、又は共役二重結合を有する複素環基であり、Arはアリール基であり、Ar、及びArは、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、及びフェノキシ基からなる群より選択される1以上の基により置換されていてもよい。〕
式(1)においてAr、及びArがアリール基である場合、アリール基は、フェニル基、又は2個以上3個以下のベンゼン環が縮合されるか単結合により連結されて形成される基が好ましい。アリール基に含まれるベンゼン環の数は、1以上3以下であり、1又は2が好ましい。Ar、及びArがアリール基である場合の具体例としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、アントリル基、フェナントリル基等が挙げられる。
式(1)において、Arが「共役二重結合を有する複素環基」である場合、かかる複素環基は、1以上のN、S、Oを含む5員又は6員の単環であるか、かかる単環同士、又はかかる単環とベンゼン環とが縮合した複素環基であって、Arが結合する窒素原子と結合している環が共役二重結合を有する。Arが縮合環である複素環基である場合、縮合環を構成する単環のうち、Arが結合する窒素原子と結合している単環が共役二重結合を有していればよい。複素環基が縮合環である場合は、環数3までのものとする。
Arが共役二重結合を有する複素環基である場合に複素環基を構成する好適な複素環の例としては、チオフェン、フラン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、イソチアゾール、イソオキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアゾール、テトラゾール、インドール、1H−インダゾール、プリン、4H−キノリジン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、ベンゾフラン、1,3−ベンゾジオキソール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンズイミダゾール、ベンズイミダゾロン、及びフタルイミドが挙げられる。
Ar、及びArは、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、及びフェノキシ基からなる群より選択される1以上の基により置換されていてもよい。炭素原子数1以上6以下のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、tert−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、iso−ヘキシル基等が挙げられる。また、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、iso−プロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、n−ペンチルオキシ基、iso−ペンチルオキシ基、tert−ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、iso−ヘキシルオキシ基等が挙げられる。
また、Ar、及びArが、Ar、及びAr上の隣接位に置換基を有する場合、複数の置換基は互いに結合して縮合環を形成してもよい。隣接する置換基が縮合環を形成する場合、縮合環は5員環、又は6員環であるのが好ましい。
式(1)において、Arは同一であってもよく、異なっていてもよい。トリアリールアミン誘導体の製造工程を簡略化でき、低コストでトリアリールアミンを製造可能であることから、式(1)で表される化合物は、Arとして同一の基を有するのが好ましい。
式(1)において、Arは1又は複数の置換基を有するのが好ましい。Arが1又は複数の置換基を有する場合、1又は複数の置換基に含まれる酸素原子数と、炭素原子数との合計は2以上であるのが好ましい。式(1)で表される化合物として、Arがこのような基である化合物を用いる場合、電荷輸送中での電荷輸送材料の結晶化を抑制しやすい。
式(1)で表されるトリアリールアミン誘導体のうち、好適な化合物の具体例としては、以下のHTM−1〜HTM−11が挙げられる。
Figure 2014109674
〔トリアリールアミン誘導体の製造方法〕
式(1)で表されるトリアリールアミン誘導体の製造方法は、特に限定されない。式(1)で表されるトリアリールアミン誘導体の好適な製造方法としては、例えば、以下に説明する工程(a)〜工程(c)を含む方法が挙げられる。
(工程(a))
工程(a)は、式(3)で表される化合物と亜リン酸トリエチルとを反応させて、式(4)で表される化合物を製造する工程であって、下記反応式で表される。なお、式(3)で表される化合物において、Arは式(1)で表される化合物と同様であり、Xはハロゲン原子である。Xとしては、亜リン酸トリエチルとの反応性の点で、塩素、又は臭素が好ましい。
Figure 2014109674
工程(a)の反応における、式(3)で表される化合物に対する亜リン酸トリエチルの使用量は、工程(a)の反応が良好に進行する限り特に限定されない。典型的には、亜リン酸トリエチルの使用量は、式(3)で表される化合物に対して等モル以上2.5倍モル以下が好ましい。亜リン酸トリエチルの使用量が過少であると、式(4)で表される化合物に、未反応の式(3)で表される化合物が混入しやすく、精製の負荷が増大する。亜リン酸トリエチルの使用量が過多であると、式(4)で表される化合物の製造コストが増大する。
工程(a)における反応温度は、工程(a)の反応が良好に進行する限り特に限定されないが、160℃以上200℃以下が好ましい。また、工程(a)の反応は、典型的には2時間以上6時間以下で行われる。
(工程(b))
工程(b)は、工程(a)で得られた式(4)で表される化合物と、式(5)で表される3−(4−ハロフェニル)アクリルアルデヒドとを反応させて、式(6)で表される化合物を製造する工程であって、下記反応式で表される。なお、式(5)において、Xはハロゲン原子であり、Xとしては、後述する工程(c)における反応性の点で、塩素、又は臭素が好ましい。
Figure 2014109674
工程(b)の反応における、式(4)で表される化合物に対する式(5)で表される化合物の使用量は、工程(b)の反応が良好に進行する限り特に限定されない。典型的には、式(5)で表される化合物の使用量は、式(4)で表される化合物に対して、等モル以上2.5倍モル以下が好ましい。
工程(b)における反応温度は、工程(b)の反応が良好に進行する限り特に限定されないが、−20℃以上30℃以下が好ましい。また、工程(b)の反応は、典型的には5時間以上30時間以下で行われる。
工程(b)の反応は塩基の存在下に行われる。工程(b)において使用される好適な塩基としては、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等のアルカリ金属アルコキシド;水素化ナトリウム、水素化カリウム等のアルカリ金属水素化物;n−ブチルリチウム等のアルキルリチウムが挙げられる。これらの塩基は、2種以上を組み合わせて使用できる。
工程(b)における塩基の使用量は、式(5)で表される化合物に対して1倍モル以上1.5倍モル以下が好ましい。塩基の使用量が過少であれば、工程(b)の反応の反応性が著しく低下する場合がある。塩基の使用量が過多であれば、工程(b)の反応の制御が困難となる場合がある。
工程(b)において使用する溶媒は、工程(b)の反応に不活性であれば特に限定されない。好適な溶媒の具体例としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類;塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素;ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
(工程(c))
工程(c)は、式(7)で表されるアミン1モルと、式(6)で表される化合物2モルとを反応させて、式(1)で表されるトリアリールアミン誘導体を製造する工程であって、下記反応式で表される。なお、式(7)において、Arは式(1)で表される化合物と同様である。
Figure 2014109674
工程(c)の反応における、式(6)で表される化合物に対する式(7)で表される化合物の使用量は、工程(c)の反応が良好に進行する限り特に限定されない。典型的には、式(6)で表される化合物の使用量は、式(7)で表される化合物に対して、2倍モル以上5倍モル以下が好ましい。
工程(c)における反応温度は、工程(c)の反応が良好に進行する限り特に限定されないが、80℃以上140℃以下が好ましい。また、工程(c)の反応は、典型的には2時間以上10時間以下で行われる。
工程(c)の反応は、パラジウム触媒と塩基との存在下に行うのが好ましい。かかる場合、反応液中で発生するハロゲン化水素がすみやかに中和されるために触媒活性が向上し、パラジウム触媒により工程(c)の反応の活性化エネルギーを良好に低下させることができる。このため、パラジウム触媒と塩基とを使用することにより、式(1)で表されるトリアリールアミン誘導体を特に良好な収率で得ることができる。
触媒として好適に使用できるパラジウム化合物の具体例としては、ヘキサクロルパラジウム(IV)酸ナトリウム四水和物及びヘキサクロルパラジウム(IV)酸カリウム四水和物等の四価パラジウム化合物;塩化パラジウム(II)、臭化パラジウム(II)、酢酸パラジウム(II)、パラジウムアセチルアセテート(II)、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)、ジクロルビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロテトラミンパラジウム(II)及びジクロロ(シクロオクタ−1,5−ジエン)パラジウム(II)等の二価のパラジウム化合物;トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0)及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)等のパラジウム化合物が挙げられる。パラジウム触媒は、2種以上を組み合わせて使用できる。
パラジウム触媒の使用量は、工程(c)の反応が良好に進行する限り特に限定されないが、式(7)のアミン1モルに対して0.00025モル以上20モル以下が好ましく、0.0005モル以上10モル以下がより好ましい。
工程(c)の反応において使用される塩基は、反応が良好に進行する限り特に限定されず、無機塩基、及び有機塩基の何れも使用できる。工程(c)の反応において好適に使用される塩基の具体例としては、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、リチウム−tert−ブトキシド、ナトリウム−tert−ブトキシド、及びカリウム−tert−ブトキシド等のアルカリ金属アルコシドが挙げられる。アルカリ金属アルコキシドの中では、ナトリウム−tert−ブトキシドが特に好ましい。また、リン酸三カリウム及びフッ化セシウム等の無機塩基も好適に使用できる。
工程(c)の反応における塩基の使用量は、パラジウム触媒の使用量にもよるが、例えば、式(7)のアミン1モルに対して、パラジウム化合物0.005モルを加えた場合であれば、0.995モル以上5モル以下が好ましく、1モル以上5モル以下がより好ましい。
工程(c)において使用する溶媒は、工程(c)の反応に不活性であれば特に限定されない。好適な溶媒の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素が挙げられる。
なお、Arが2種類の異なる基であって、非対称型である式(1)で表されるトリアリールアミン誘導体は、工程(c)における、式(7)のアミンと、式(6)で表される化合物との反応を2段階に分けて行うことにより製造できる。具体的には、1段階目で、式(7)のアミンと、式(6)で表される化合物との反応によりジアリールアミン誘導体を製造し、次いで、2段階目で、1段階目で得られたジアリールアミン誘導体と、1段階目とは異なる式(6)で表される化合物とを反応させることにより、非対称型のトリアリールアミン誘導体を製造できる。
電荷輸送層は、本発明の目的を阻害しない範囲で、式(1)で表されるトリアリールアミン誘導体の他に、従来から電子写真感光体において電荷輸送材料として使用される種々の正孔輸送材料及び電子輸送材料を含んでいてもよい。
式(1)で表されるトリアリールアミン誘導体とともに使用できる正孔輸送材料としては、例えば、ベンジジン誘導体、2,5−ジ(4−メチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物、9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセン等のスチリル系化合物、ポリビニルカルバゾール等のカルバゾール系化合物、有機ポリシラン化合物、1−フェニル−3−(p−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリン等のピラゾリン系化合物、ヒドラゾン系化合物、式(1)で表される化合物の他のトリフェニルアミン系化合物、インドール系化合物、オキサゾール系化合物、イソオキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物、トリアゾール系化合物等の含窒素環式化合物、縮合多環式化合物等が挙げられる。これらの正孔輸送材料は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
正孔輸送材料が、式(1)で表されるトリアリールアミン誘導体とともに、式(1)で表されるトリアリールアミン誘導体の他の化合物を含む場合、正孔輸送材料の総質量に対する式(1)で表されるトリアリールアミン誘導体の質量の比率は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、100質量%が特に好ましい。
式(1)で表されるトリアリールアミン誘導体とともに使用できる電子輸送材料は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、従来から電子写真感光体の感光層において使用されている電子輸送材料から適宜選択することができる。式(1)で表されるトリアリールアミン誘導体とともに使用できる好適な電子輸送材料の具体例としては、ナフトキノン誘導体、ジフェノキノン誘導体、アントラキノン誘導体、アゾキノン誘導体、ニトロアントアラキノン誘導体、ジニトロアントラキノン誘導体等のキノン誘導体、マロノニトリル誘導体、チオピラン誘導体、トリニトロチオキサントン誘導体、3,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン誘導体、ジニトロアントラセン誘導体、ジニトロアクリジン誘導体、テトラシアノエチレン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、ジニトロベンゼン、ジニトロアントラセン、ジニトロアクリジン、無水コハク酸、無水マレイン酸、及びジブロモ無水マレイン酸等が挙げられる。これらの中では、キノン誘導体がより好ましい。
(電荷発生材料)
電荷発生材料は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、従来から電子写真感光体の感光層において使用されている電荷発生材料から適宜選択して用いることができる。具体的には、例えば、下記式(I)で表されるX型無金属フタロシアニン(x−HPc)、下記式(II)で表されるα型やY型等のオキソチタニルフタロシアニン(Y−TiOPc)、ペリレン顔料、ビスアゾ顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、無金属ナフタロシアニン顔料、金属ナフタロシアニン顔料、スクアライン顔料、トリスアゾ顔料、インジゴ顔料、アズレニウム顔料、シアニン顔料、セレン、セレン−テルル、セレン−ヒ素、硫化カドミウム、アモルファスシリコン等の無機光導電材料の粉末、ピリリウム塩、アンサンスロン系顔料、トリフェニルメタン系顔料、スレン系顔料、トルイジン系顔料、ピラゾリン系顔料、キナクリドン系顔料等が挙げられる。これらの電荷発生材料の中では、X型無金属フタロシアニン、及びα型やY型等のオキソチタニルフタロシアニンのが好ましい。
Figure 2014109674
Figure 2014109674
これらのなかでも、(A)CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ±0.2°=27.2°に主ピークを有し、(B)示差走査熱量分析において、吸着水の気化にともなうピーク以外に50〜270℃の範囲内に1つのピークを有するオキソチタニルフタロシアニンや、
(A)の特徴に加えて、且つ、(C) 示差走査熱量分析において、吸着水の気化にともなうピーク以外は、50〜400℃ の範囲内にピークを有しないオキソチタニルフタロシアニンや、
(A)の特徴に加えて、且つ、(D) 示差走査熱量分析において、吸着水の気化にともなうピーク以外は、50〜270℃ の範囲内にピークを有さず、270〜400℃ の範囲内に1つのピークを有するオキソチタニルフタロシアニンが感度の点で好ましい。
また、電荷発生材料は、所望の領域に吸収波長を有するように、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。さらに、前述の各電荷発生材料のうち、特に半導体レーザー等の光源を使用したレーザービームプリンターやファクシミリ等のデジタル光学系の画像形成装置には、700nm以上の波長領域に感度を有する電子写真感光体が必要となるため、例えば、無金属フタロシアニンやオキソチタニルフタロシアニン等のフタロシアニン系顔料が好適に用いられる。なお、上記フタロシアニン系顔料の結晶型については特に限定されず、種々のものが使用される。また、ハロゲンランプ等の白色の光源を使用した静電式複写機等のアナログ光学系の画像形成装置には、可視領域に感度を有する電子写真感光体が必要となるため、例えば、ペリレン顔料やビスアゾ顔料等が好適に用いられる。
(ベース樹脂)
電荷発生層を導電性基体上に、電荷発生材料を含む溶液を塗布して形成する場合、電荷発生材料とともにベース樹脂が使用される。本発明において電荷発生層に用いるベース樹脂は、電荷輸送層において使用されるバインダー樹脂と同様の樹脂を用いることができる。しかしながら、積層型感光体は一般的に電荷発生層、電荷輸送層の順に塗工されるため、電荷輸送層の塗工において、電荷発生層がその塗工溶剤に溶解しないようなベース樹脂が選択される。
〔感光層の作成方法〕
積層型感光体における感光層は、導電性基体上、又は、導電性基体上に形成された下引き層の上に、電荷発生層及び電荷輸送層を順次積層して形成される。
積層型感光体における電荷発生層の膜厚は0.1μm以上5μm以下が好ましく、0.1μm以上3μm以下がより好ましい。また、電荷輸送層の膜厚は2μm以上100μm以下が好ましく、5μm以上50μm以下がより好ましい。
電荷発生層における電荷発生材料の含有量は本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。電荷発生層と塗布液の塗布により形成する場合、電荷発生材料の量は、ベース樹脂100質量部に対して10質量部以上500質量部以下が好ましく、30質量部以上300質量部以下であるのがより好ましい。
電荷輸送層における電荷輸送材料の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して55質量部以下であり、5質量部以上55質量部以下が好ましく、10質量部以上55質量部以下がより好ましい。なお、電荷輸送材料の量は電荷輸送層における、正孔輸送材料と電子輸送材料の量の合計量である。電荷輸送材料の量をかかる範囲とすることにより、耐摩耗性に優れた積層型感光体を得やすい。
電荷輸送層には、式(1)で表されるトリアリールアミン誘導体を正孔輸送材料として含む電荷輸送材料が含まれる。電荷輸送層における式(1)で表されるトリアリールアミン誘導体の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して、10質量部以上55質量部以下が好ましく、20質量部以上55質量部以下がより好ましい。式(1)で表されるトリアリールアミン誘導体の含有量をかかる範囲の値とすることで、電荷輸送材料の結晶化が起こりにくく電気特性に優れた耐久性の高い優れる積層型感光体を形成しやすい。
電荷発生層の形成方法としては、電荷発生材料の真空蒸着、又は少なくとも電荷発生材料、ベース樹脂、及び溶剤を含む塗布液の塗布が挙げられる。電荷発生層の形成方法としては、高価な蒸着装置が不要であり、製膜操作が容易であることから、少なくとも電荷発生材料、ベース樹脂、及び溶剤を含む塗布液の塗布が好ましい。また、電荷輸送層の形成方法としては、少なくとも、電荷輸送材料、バインダー樹脂、及び溶剤を含む塗布液の塗布が挙げられる。
感光層形成用の塗布液の調製に用いる溶媒としては、感光層形成用塗布液に従来用いられている種々の有機溶剤が使用可能である。具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類;n−ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族系炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル類;N,N−ジメチルホルムアルデヒド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性有機溶媒が挙げられる。感光層形成用塗布液に用いられる溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの感光層形成用塗布液に用いられる溶剤の中で、トルエン、ジオキソラン、及びo−キシレンからなる群より選択される1以上の溶剤を含む溶剤を用いるのが好ましい。トルエン、ジオキソラン、及びo−キシレンは、ポリカーボネートのようなバインダー樹脂に対する良溶媒であるテトラヒドロフランとともに使用されるのが好ましい。感光層形成用塗布液として、トルエン、ジオキソラン、及びo−キシレンからなる群より選択される1以上の溶剤を含む溶剤を用いる場合、感光層を形成する際の、感光層表面の白化を抑制しやすく、感度特性に優れる感光体を得やすい。これは、トルエン、ジオキサン、及びo−キシレンからなる群より選択される溶剤が、塗布液からの溶剤の蒸発を遅延させ、導電性基体表面の塗布膜からの溶剤の急速な蒸発を防ぐためと推測される。
電荷発生層用又は電荷輸送層用の塗布液には、電子写真特性に悪影響を与えない範囲で、従来公知の種々の添加剤を配合することができる。塗布液に配合する好適な添加剤としては、例えば、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、一重項クエンチャー、紫外線吸収剤等の劣化防止剤、軟化剤、可塑剤、表面改質剤、増量剤、増粘剤、分散安定剤、ワックス、アクセプター、ドナー等が挙げられる。また、電荷輸送材料や電荷発生材料の分散性、感光層表面の平滑性をよくするために界面活性剤、レベリング剤等を使用してもよい。
電荷発生層用又は電荷輸送層用の塗布液の塗布方法は特に限定されないが、例えば、スピンコーター、アプリケーター、スプレーコーター、バーコーター、ディップコーター、ドクターブレード等を用いる方法が挙げられる。
上記の方法により、塗布液を塗布して形成された皮膜は、高温乾燥機や減圧乾燥機等を用いて乾燥することにより溶媒を除去され電荷発生層及び電荷輸送層とされる。乾燥温度としては40℃以上150℃以下が好ましい。かかる温度範囲で、皮膜を乾燥することにより、溶媒の除去が速やかに進行し、均一な厚さの電荷発生層及び電荷輸送層を効率よく形成できるためである。乾燥温度が高すぎる場合、感光層に含まれる成分が熱分解する場合があり好ましくない。
なお、下引き層は、樹脂と、酸化亜鉛や酸化チタン等の無機微粒子と、溶媒とから塗布液を調製し、これを導電性基体上に塗布した後に乾燥して形成することができる。
以上、説明した、第1実施形態にかかる電子写真感光体は、耐摩耗性と、感度特性とに優れるため、種々の画像形成装置において好適に使用される。
[第2実施形態]
第2実施形態は、像担持体と、像担持体の表面を帯電するための帯電部と、帯電された像担持体の表面を露光して像担持体の表面に静電潜像を形成するための露光部と、静電潜像をトナー像として現像するための現像部と、トナー像を像担持体から被転写体へ転写するための転写部とを備え、像担持体として第1実施形態にかかる積層型電子写真感光体を用いる画像形成装置に関する。
第2実施形態にかかる画像形成装置において、帯電部、露光部、現像部、及び転写部等の像担持体の他の構成要素は、従来の画像形成装置において使用されるものから適宜選択することができる。
第2実施形態にかかる画像形成装置としては、モノクロ画像形成装置や、後述するような複数色のトナーを用いるタンデム方式のカラー画像形成装置が好ましい。より具体的には、例えば、後述するような、複数色のトナーを用いるタンデム方式のカラー画像形成装置が挙げられる。ここでは、タンデム方式のカラー画像形成装置について説明する。
なお、第1実施形態に係る積層型電子写真感光体を備えるタンデム型のカラー画像形成装置は、各表面上にそれぞれ異なった各色のトナーによるトナー像を形成させるために、所定方向に並設された、複数の像担持体と、各像担持体に対向して配置され、表面にトナーを担持して搬送し、搬送されたトナーを、各像担持体の表面にそれぞれ供給する、現像ローラーを備えた複数の現像部とを備え、各像担持体として、それぞれ第1実施形態にかかる積層型電子写真感光体を用いる。
図3は、積層型電子写真感光体を備える画像形成装置の構成を示す概略図である。ここでは、画像形成装置としては、カラープリンター1を例に挙げて説明する。
このカラープリンター1は、図3に示すように、箱型の機器本体1aを有している。この機器本体1a内には、用紙Pを給紙する給紙部2と、この給紙部2から給紙された用紙Pを搬送しながら当該用紙Pに画像データ等に基づくトナー像を転写する画像形成部3と、この画像形成部3で用紙P上に転写された未定着トナー像を用紙Pに定着する定着処理を施す定着部4とが設けられている。さらに、機器本体1aの上面には、定着部4で定着処理の施された用紙Pが排紙される排紙部5が設けられている。
給紙部2は、給紙カセット121、ピックアップローラー122、給紙ローラー123,124,125、及びレジストローラー126を備えている。給紙カセット121は、機器本体1aから挿脱可能に設けられ、各サイズの用紙Pを貯留する。ピックアップローラー122は、給紙カセット121の図3に示す左上方位置に設けられ、給紙カセット121に貯留されている用紙Pを1枚ずつ取り出す。給紙ローラー123,124,125は、ピックアップローラー122によって取り出された用紙Pを用紙搬送路に送り出す。レジストローラー126は、給紙ローラー123,124,125によって用紙搬送路に送り出された用紙Pを一時待機させた後、所定のタイミングで画像形成部3に供給する。
また、給紙部2は、機器本体1aの図3に示す左側面に取り付けられる不図示の手差しトレイとピックアップローラー127とをさらに備えている。このピックアップローラー127は、手差しトレイに載置された用紙Pを取り出す。ピックアップローラー127によって取り出された用紙Pは、給紙ローラー123,125によって用紙搬送路に送り出され、レジストローラー126によって、所定のタイミングで画像形成部3に供給される。
画像形成部3は、画像形成ユニット7と、この画像形成ユニット7によってその表面(接触面)にコンピューター等から電送された画像データに基づくトナー像が1次転写される中間転写ベルト31と、この中間転写ベルト31上のトナー像を給紙カセット121から送り込まれた用紙Pに2次転写させるための2次転写ローラー32とを備えている。
画像形成ユニット7は、上流側(図3では右側)から下流側に向けて順次配設されたブラック用ユニット7Kと、イエロー用ユニット7Yと、シアン用ユニット7Cと、マゼンタ用ユニット7Mとを備えている。各ユニット7K,7Y,7C及び7Mは、それぞれの中央位置に像担持体としての積層型電子写真感光体37(以下、感光体37)が矢符(時計回り)方向に回転可能に配置されている。そして、各感光体37の周囲には、帯電部39、露光部38、現像部71、及び不図示のクリーニング部と、必要に応じて不図示の除電部とが、回転方向上流側から順に各々配置されている。なお、感光体37としては、第2の実施形態にかかる電子写真感光体として積層型電子写真感光体を用いる。
帯電部39は、矢符方向に回転されている感光体37の周面を均一に帯電させる。帯電部39は、電子写真感光体37の周面を均一に帯電させることができれば特に制限されず、非接触方式であっても接触方式であってもよい。帯電部39の具体例としては、コロナ帯電装置、帯電ローラー、帯電ブラシ等が挙げられる。帯電部39としては、帯電ローラー、帯電ブラシ等の接触方式の帯電装置がより好ましく、帯電ローラーが特に好ましい。接触方式の帯電部39を使用することにより、帯電部39から発生するオゾンや窒素酸化物等の活性ガスの排出を抑え、活性ガスによる電子写真感光体の感光層の劣化を防止するとともに、オフィス環境等に配慮した設計をすることができる。
帯電部39が接触方式の帯電ローラーを備える場合、帯電ローラーが感光体37と接触したまま、感光体37の周面(表面)を帯電させる。このような帯電ローラーとしては、例えば、感光体37と接触したまま、感光体37の回転に従属して回転するもの等が挙げられる。また、帯電ローラーとしては、例えば、少なくとも表面部が樹脂で構成されたローラー等が挙げられる。より具体的には、例えば、回転可能に軸支された芯金と、芯金上に形成された樹脂層と、芯金に電圧を印加する電圧印加部とを備えたもの等が挙げられる。このような帯電ローラーを備えた帯電部は、電圧印加部によって、芯金に電圧を印加することによって、樹脂層を介して接触する感光体37の表面を帯電させることができる。
電圧印加部により帯電ローラーに印加される電圧は特に制限されないが、交流電圧や直流電圧に交流電圧を重畳した重畳電圧を印加する場合より、直流電圧のみであることが好ましい。帯電ローラーに直流電圧のみを印加する場合のほうが、感光層の磨耗量が少なくなる傾向があり、好適な画像を形成することができる。積層型電子写真感光体に印加する直流電圧は、100V以上2000V以下が好ましく、1200V以上1800V以下がより好ましく、1400V以上1600V以下が特に好ましい。
また、帯電ローラーの樹脂層を構成する樹脂は、感光体37の周面を良好に帯電させることができれば特に限定されない。樹脂層に用いる樹脂の具体例としては、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン変性樹脂等が挙げられる。また、樹脂層には、無機充填材を含有させていてもよい。
露光部38は、いわゆるレーザー走査ユニットであり、帯電部39によって均一に帯電された感光体37の周面に、上位装置であるパーソナルコンピューター(PC)から入力された画像データに基づくレーザー光を照射し、感光体37上に画像データに基づく静電潜像を形成する。現像部71は、静電潜像が形成された感光体37の周面にトナーを供給することで、画像データに基づくトナー像を形成させる。そして、このトナー像が中間転写ベルト31に1次転写される。クリーニング部は、中間転写ベルト31へのトナー像の1次転写が終了した後、感光体37の周面に残留しているトナーを清掃する。除電部は、1次転写が終了した後、感光体37の周面を除電する。クリーニング部及び除電部によって清浄化処理された感光体37の周面は、新たな帯電処理のために帯電部へ向かい、新たな帯電処理が行われる。
中間転写ベルト31は、無端状のベルト状回転体であって、表面(接触面)側が各感光体37の周面にそれぞれ当接するように駆動ローラー33、従動ローラー34、バックアップローラー35、及び1次転写ローラー36等の複数のローラーに架け渡されている。また、中間転写ベルト31は、各感光体37と対向配置された1次転写ローラー36によって感光体37に押圧された状態で、複数のローラーによって回転するように構成されている。駆動ローラー33は、ステッピングモーター等の駆動源によって回転駆動し、中間転写ベルト31を回転させるための駆動力を与える。従動ローラー34、バックアップローラー35、及び1次転写ローラー36は、回転自在に設けられ、駆動ローラー33による中間転写ベルト31の回転に伴って従動回転する。これらのローラー34,35,36は、駆動ローラー33の主動回転に応じて中間転写ベルト31を介して従動回転するとともに、中間転写ベルト31を支持する。
1次転写ローラー36は、1次転写バイアス(トナーの帯電極性とは逆極性)を中間転写ベルト31に印加する。そうすることによって、各感光体37上に形成されたトナー像は、各感光体37と1次転写ローラー36との間で、駆動ローラー33の駆動により矢符(反時計回り)方向に周回する中間転写ベルト31に重ね塗り状態で順次転写(1次転写)される。この後、所望により、除電光により各感光体37の表面を除電するための除電部(図示せず)による除電が行われた後に、各感光体37はさらに回転され、次のプロセスに移行する。
2次転写ローラー32は、トナー像と逆極性の2次転写バイアスを用紙Pに印加する。そうすることによって、中間転写ベルト31上に1次転写されたトナー像は、2次転写ローラー32とバックアップローラー35との間で用紙Pに転写され、これによって、用紙Pにカラーの転写画像(未定着トナー像)が転写される。
定着部4は、画像形成部3で用紙Pに転写された転写画像に定着処理を施すものであり、通電発熱体により加熱される加熱ローラー41と、この加熱ローラー41に対向配置され、周面が加熱ローラー41の周面に押圧当接される加圧ローラー42とを備えている。
そして、画像形成部3で2次転写ローラー32により用紙Pに転写された転写画像は、当該用紙Pが加熱ローラー41と加圧ローラー42との間を通過する際の加熱による定着処理で用紙Pに定着される。そして、定着処理の施された用紙Pは、排紙部5へ排紙されるようになっている。また、本実施形態のカラープリンター1では、定着部4と排紙部5との間の適所に搬送ローラー6が配設されている。
排紙部5は、カラープリンター1の機器本体1aの頂部が凹没されることによって形成され、この凹没した凹部の底部に排紙された用紙Pを受ける排紙トレイ51が形成されている。
カラープリンター1は、以上のような画像形成動作によって、用紙P上に画像形成を行う。そして、上記のようなタンデム方式の画像形成装置は、像担持体として、耐摩耗性と感度特性に優れる第1実施形態にかかる電子写真感光体が備えているので、長期間にわたって高品質な画像を形成できる。
実施例、及び比較例において、正孔輸送材料(HTM)として、以下のHTM−1〜HTM−13を使用した。また、電子輸送材料(ETM)として、以下のETM−1を使用した。また、バインダー樹脂として、下式で表される繰り返し単位から構成されるResin−1〜Resin−6を用いた。
<正孔輸送材料>
Figure 2014109674
<電子輸送材料>
Figure 2014109674
<バインダー樹脂>
Figure 2014109674
〔合成例1〕
(HTM−1の製造)
<工程(a)>
容量200mlのナス型フラスコに、化合物(1−a)20.0g(0.13モル)、及び亜リン酸トリエチル25.0g(0.15モル)を入れ、180℃で5時間反応を行った。冷却後、余剰の亜リン酸トリエチルを減圧下に加熱して留去し、白色の液体として化合物(1−b)29.8gを収率90%で得た。
Figure 2014109674
<工程(b)>
アルゴンガスにより置換された容量500mlの2口フラスコを0℃に冷却した後、同温度を保ちながら、化合物(1−b)20.0g(0.08モル)、乾燥テトラヒドロフラン100ml、及び濃度28質量%のナトリウムメトキシドのメタノール溶液16.7g(0.09モル)を2口フラスコに仕込んだ。同温度で、フラスコ内を30分撹拌した後、化合物(1−c)13.1g(0.08モル)と乾燥テトラヒドロフラン100mlを加え、室温にて撹拌して12時間反応を行った。反応終了後、反応液をイオン交換水300mlに注ぎ、室温で、トルエン100mlにて化合物(1−d)を抽出した。抽出後の有機層(トルエン層)を、イオン交換水100mlにより5回洗浄した。水洗後の有機層を無水硫酸ナトリウムにより乾燥させ、硫酸ナトリウムをろ過した後、有機層を乾固させた。残渣を、トルエン20ml及びメタノール100mlからなる混合溶媒により再結晶して、化合物(1−d)の白色結晶16.8gを収率80%で得た。
Figure 2014109674
<工程(c)>
アルゴンガスにより置換された容量300mlの2口フラスコに、化合物(1−d)12.5g(0.0469モル)、2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)ビフェニル0.082g(0.002モル)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)0.108g(0.0001モル)、ナトリウムtert−ブトキシド4.87g(0.0507モル、化合物(1−e)3.20g(0.0234モル)、及び蒸留されたo−キシレン100mlを加え、120℃にて撹拌して5時間反応を行った。反応液を室温まで冷却した後、反応液を活性白土により処理した。処理後の反応液から溶媒を留去した後、カラムクロマトグラフィー(展開溶媒、クロロホルム/ヘキサン)により残渣を精製し、HTM−1の黄橙色結晶12.0gを収率86%で得た。得られたトリアリールアミン誘導体のH−NMR(300MHz)のチャートを図3に示す(溶媒:CDCl、基準物質:TMS)。
Figure 2014109674
〔合成例2〕
(HTM−2の製造)
化合物(1−e)を4−メトキシアニリンに変えることの他は、合成例1と同様にしてHTM−2を11.3g得た。工程(c)における収率は83%であった。
〔合成例3〕
(HTM−3の製造)
化合物(1−e)をp−n−ブチルアニリンに変えることの他は、合成例1と同様にしてHTM−3を12.2g得た。工程(c)における収率は86%であった。得られたトリアリールアミン誘導体のH−NMR(300MHz)のチャートを図4に示す(溶媒:CDCl、基準物質:TMS)。
〔合成例4〕
(HTM−4の製造)
化合物(1−e)を5−アミノテトラリンに変えることの他は、合成例1と同様にしてHTM−4を11.8g得た。工程(c)における収率は83%であった。得られたトリアリールアミン誘導体のH−NMR(300MHz)のチャートを図5に示す(溶媒:CDCl、基準物質:TMS)。
〔合成例5〕
(HTM−5の製造)
化合物(1−e)をp−イソプロピルアニリンに変えることの他は、合成例1と同様にしてHTM−5を12.1g得た。工程(c)における収率は87%であった。
〔合成例6〕
(HTM−6の製造)
化合物(1−e)を2−アミノビフェニルに変えることの他は、合成例1と同様にしてHTM−6を12.1g得た。工程(c)における収率は82%であった。
〔合成例7〕
(HTM−7の製造)
化合物(1−e)を3,4−メチレンジオキシアニリンに変えることの他は、合成例1と同様にしてHTM−7を11.1g得た。工程(c)における収率は80%であった。
〔合成例8〕
(HTM−8の製造)
化合物(1−e)を2−エチル−6−メチルアニリンに変えることの他は、合成例1と同様にしてHTM−8を11.5g得た。工程(c)における収率は83%であった。得られたトリアリールアミン誘導体のH−NMR(300MHz)のチャートを図6に示す(溶媒:CDCl、基準物質:TMS)。
〔合成例9〕
(HTM−9の製造)
化合物(1−a)を1−(4−メチルフェニル)−3−クロロ−1−プロペンに変えることの他は、合成例8と同様にしてHTM−9を11.5g得た。工程(c)における収率は79%であった。
〔合成例10〕
(HTM−10の製造)
化合物(1−e)をo−トルイジンに変えることの他は、合成例1と同様にしてHTM−10を11.7g得た。工程(c)における収率は88%であった。得られたトリアリールアミン誘導体のH−NMR(300MHz)のチャートを図7に示す(溶媒:CDCl、基準物質:TMS)。
〔合成例11〕
(HTM−11の製造)
化合物(1−e)をp−トルイジンに変えることの他は、合成例1と同様にしてHTM−11を11.3g得た。工程(c)における収率は85%であった。
[実施例1〜25、及び比較例1〜4]
実施例1〜25、及び比較例1〜4として、以下の方法により、導電性基体状に下引き層と感光層とをこの順に形成して感光体を作成した。
〔下引き層の形成〕
アルミナとシリカとで表面処理した後、湿式分散によりメチルハイドロジェンポリシロキサンにより表面処理された酸化チタン(テイカ株式会社製、SMT−A(試作品)、数平均一次粒子径10nm)2質量部と、6,12,66,610四元共重合ポリアミド樹脂(東レ株式会社製、アミランCM8000)1質量部とを、メタノール10質量部、ブタノール1質量部、及びトルエン1質量部からなる溶媒を用いて、ビーズミルにより5時間分散処理して下引き層用塗布液を調製した。
得られた下引き層用塗布液を開口5μmのフィルタにてろ過した後、直径30mm、全長246mmのアルミニウム製ドラムからなる導電性基体上にディップコート法により下引き層用塗布液を塗布した。塗布液の塗布後、130℃で30分間処理し、導電性基体上に膜厚2μmの下引き層を形成した。
〔感光層の形成〕
(電荷発生層の形成)
Y型チタニルフタロシアニン(Y−TiOPc、電荷発生材料)1.5質量部と、ポリビニルアセタール(ベース樹脂、積水化学工業株式会社製、エスレックBX−5)1質量部と、プロピレングリコールモノメチルエーテル40質量部及びテトラヒドロフラン40質量部からなる分散媒とを混合し、ビーズミルにより2時間分散処理して電荷発生層用塗布液を調製した。得られた電荷発生層用塗布液を開口3μmのフィルタでろ過した後、下引き層上にディップコート法により電荷発生層用塗布液を塗布した。塗布液の塗布後、50℃で5分間処理し、膜厚0.3μmの電荷発生層を形成した。
(電荷輸送層の形成)
表1及び2に記載の種類及び使用量の正孔輸送材料と、添加剤(イルガノックス1010、チバ・ジャパン株式会社製)0.5質量部と、電子輸送材料(ETM−1)1質量部と、表1及び2に記載の種類のバインダー樹脂100質量部とを、表1及び2に記載の種類及び使用量の溶媒に溶解させて電荷輸送層用塗布液を調製した。得られた電荷輸送層用塗布液を電荷発生層と同様の方法によって電荷発生層上に塗布した後、120℃で40分間処理し、膜厚20μmの電荷輸送層を形成した。
≪感光体の電気特性と、感光層の外観変化との評価≫
実施例及び比較例の積層型電子写真感光体について、下記の方法に従い感光体の電気特性、感光体表面の外観の変化、及び感光層の磨耗減量を評価した。
<電気特性測定方法>
ドラム感度試験機(GENTEC社製)を用いて、積層型電子写真感光体の表面電位を+600V(V0)に帯電させた状態でハロゲンランプの白色光からバンドパスフィルターを用いて取り出した波長780nmの単色光(半値幅20nm、光強度1.5μJ/m2)を感光体表面に1.5秒間照射した。露光開始から0.05秒経過した時点での、白紙画像プリント時の感光体の表面電位をV、ベタ100%画像プリント時の感光体の表面電位をVとして、感光体の感度を測定した。実施例1〜25、及び比較例1〜4の感光体の電気特性を、表1、及び表2に記す。
<外観変化評価方法>
感光体表面の状態と異物の有無とを目視にて観察した。目視にて観察された異物が結晶性であるか否かを光学顕微鏡にて判定した。観察された異物のうち、結晶が1個以上認められた場合には、この異物が結晶性異物であると判定し、結晶性異物の径を直径ゲージにて測定した。外観変化を、下記の基準で判定した。なお、白化及び軽度結晶化は、望ましくない外観変化ではあるが、感光体の感度特性と、耐摩耗性とに重大な悪影響が及ばない限り許容される。
○:結晶性異物と白化とが確認されない場合。
白化:感光体表面に白い曇りが観察される場合。
軽度結晶化:結晶性異物の径が、0.5mm以上2mm未満。
重度結晶化:結晶性異物の径が、2mm以上。
〔磨耗減量測定用電荷輸送層の形成〕
実施例1〜9、実施例11、実施例14、実施例16〜25、及び比較例1〜4について、以下の方法により、磨耗減量測定用電荷輸送層を作成した。なお、実施例10及び12については、感光層の形成に使用した正孔輸送材料(HTM)、電子輸送材料(ETM)、及びバインダー樹脂が、何れも実施例11と同様であるため磨耗減量測定は行わなかった。また、実施例13及び15については、感光層の形成に使用した正孔輸送材料(HTM)、電子輸送材料(ETM)、及びバインダー樹脂が、何れも実施例14と同様であるため磨耗減量測定は行わなかった。
実施例1〜9、実施例11、実施例14、実施例16〜25、及び比較例1〜4で用いた電荷輸送層用塗布液を、直径78mmのアルミニウム製パイプに巻きつけたPPシート(厚さ0.3mm)上に、ディップコート法により塗布した。塗布液の塗布後、120℃で40分間処理し、PPシート上に膜厚30μmの電荷輸送層を形成した。その後、PPシートから電荷輸送層を剥離し、磨耗減量測定用電荷輸送層を得た。
≪電荷輸送層の磨耗減量測定方法≫
磨耗減量測定用電荷輸送層を、試料取り付けカード(S−36、テーバー社製)に取り付け、磨耗減量測定用シートを作成した。テーバー摩耗試験機(ロータリーアブレージョンテスター、株式会社東洋精機製)、及び摩耗輪(C−10、テーバー社製)を用いて、荷重500g、回転速度60rpm、1000回転のテーバー摩耗試験を行い、磨耗試験前後の磨耗減量測定用シートの変化量を磨耗量として測定した。磨耗減量の測定結果を表1及び2に記す。
Figure 2014109674
Figure 2014109674
実施例1〜25によれば、式(1)で表されるトリアリールアミン誘導体であるHTM−1〜HTM−11を正孔輸送材料として含む電荷輸送材料を用い、電荷輸送中の電荷輸送材料の含有量がバインダー樹脂100質量部に対して55質量部以下である電子写真感光体は、Vの値が低く電気特性に優れ、磨耗減量も少ないことが分かる。
実施例1〜19、及び21〜25によれば、バインダー樹脂が、式(2)で表されるポリカーボネート樹脂である、Resin−1〜Resin−5を含む電子写真感光体は、耐磨耗性に特に優れることが分かる。
実施例1〜11、13、14、及び16〜25によれば、電荷輸送層が、トルエン、ジオキソラン、及びo−キシレンからなる群より選択される1以上の溶剤を含む溶剤を用いて調製された電荷輸送層用塗布液を用いて形成されている場合、感光層表面の白化を抑制できることが分かる。
比較例1及び2によれば、電荷輸送層が、式(1)に含まれないトリアリールアミン誘導体を正孔輸送材料として含む電荷輸送材料を用いて形成されている場合、電荷輸送材料の結晶化が生じ、感光体の感度特性が著しく損なわれることが分かる。
比較例3及び4によれば、バインダー樹脂100質量部に対する電荷輸送材料の使用量が55質量部を超える場合、感光体の耐摩耗性が著しく損なわれることが分かる。
10 積層型感光体
10’ 下引き層を有する積層型感光体
11 導電性基体
12 電荷発生層
13 電荷輸送層
14 下引き層

Claims (7)

  1. 導電性基体上に、電荷発生材料を含有する電荷発生層と、電荷輸送材料及びバインダー樹脂を含有する電荷輸送層とが、順次積層された積層型感光層が形成されており、
    前記電荷輸送材料が、正孔輸送材料として下記式(1)で表されるトリアリールアミン誘導体を含有し、
    前記電荷輸送層中の、前記電荷輸送材料の含有量が、前記バインダー樹脂100質量部に対して、55質量部以下である、積層型電子写真感光体。
    Figure 2014109674
    〔式(1)中、Arはアリール基、又は共役二重結合を有する複素環基であり、Arはアリール基であり、Ar、及びArは、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、及びフェノキシ基からなる群より選択される1以上の基により置換されていてもよい。〕
  2. 前記Arが置換基を有する、請求項1に記載の積層型電子写真感光体。
  3. 前記Arが有する1又は複数の置換基に含まれる酸素原子数と、炭素原子数との合計が2以上である、請求項2に記載の積層型電子写真感光体。
  4. 前記バインダー樹脂が、下記式(2)で表されるポリカーボネート樹脂を含む、請求項1〜3の何れか1項に記載の積層型電子写真感光体。
    Figure 2014109674
    〔式(2)中、p+q=1であり、0.35≦p<0.7であり、Arは下式(2−1)〜(2−4):
    Figure 2014109674
    から選択される2価の基であり、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、又はアリール基であり、R及びRは互いに結合してシクロアルキリデン基を形成してもよい。〕
  5. 前記電荷輸送層が、前記電荷発生層上に、トルエン、ジオキソラン、及びo−キシレンからなる群より選択される1以上の溶剤を含む溶剤に、少なくとも前記電荷輸送材料及び前記バインダー樹脂を溶解させた電荷輸送層用塗布液を塗布して形成される、請求項1〜4の何れか1項に記載の積層型電子写真感光体。
  6. 像担持体と、
    前記像担持体の表面を帯電するための帯電部と、
    帯電された前記像担持体の表面を露光して前記像担持体の表面に静電潜像を形成するための露光部と、
    前記静電潜像をトナー像として現像するための現像部と、
    前記トナー像を前記像担持体から被転写体へ転写するための転写部と、を備え、前記像担持体が請求項1〜5の何れか1項に記載の積層型電子写真感光体である画像形成装置。
  7. 前記導電性基体上に、前記電荷発生材料を含有する前記電荷発生層を形成する工程と、
    前記電荷発生層上に、少なくとも前記電荷輸送材料及び前記バインダー樹脂を含む電荷輸送層用塗布液を塗布して前記電荷輸送層を形成する工程と、
    を含み、
    前記電荷輸送層用塗布液が、トルエン、ジオキソラン、及びo−キシレンからなる群より選択される1以上の溶剤を含む溶剤を含むものである、請求項1〜4の何れか1項に記載の積層型電子写真感光体の製造方法。
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