JP2014108090A - ベーカリー製品およびその製造法 - Google Patents

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Abstract

【課題】歯切れ、口どけが共によく、且つソフト感、しっとり感に優れたベーカリー製品およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】小麦粉を主原料とする原料穀粉に、糊化開始温度が78℃以下の低温糊化特性を有する甘藷でん粉、または、その加工でん粉を配合した材料を用いて製造されたベーカリー製品およびその製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、歯切れ、口どけが共によく、且つソフト感、しっとり感に優れたベーカリー製品およびその製造方法に関する。
近年、食品に対して、歯切れ、口どけの良い食感が求められてきており、この要望はベーカリー製品においても例外ではない。しかしながら、歯切れ、口どけの良い食感を求めていくと、ベーカリー製品はボソつき、粉っぽい食感となり、好ましくない。
従来よりベーカリー製品の歯切れ、口どけを向上させる方法として、様々な方法が提案されている。
特許文献1には、加糖練り餡を小麦粉に対して20〜70%配合して均一に混捏する方法が開示されているが、着色、甘味の問題があり、すべてのベーカリー製品に使用できるわけではない。
特許文献2には、加熱溶解度が8%以下であって60メッシュの篩を通過しない区分が5%以下の粒子状を有し、冷水膨潤度(Sc)と加熱膨潤度(Sh)の比が1.2≧Sc/Sh≧0.8の関係にあり且つ冷水膨潤度が4〜15であることが特徴とする加工でん粉を添加する方法が開示され、特許文献3には、湿熱した小麦粉をα化度12.5%〜30%以下で使用する方法が開示されているが、いずれの場合も歯切れは向上するが、膨潤が十分でないために製品に粉っぽさを感じる。
特許文献4には、α化したワキシポテトスターチを0.2〜10質量部含有する材料を用いた方法が開示されているが、しっとりはするものの、ワキシ種特有のくちゃつき(粘着)が発現して、口どけは逆に軽減してしまう。
特許文献5には、小麦粉に酸化澱粉および/または酸化アセチル化澱粉、或いは酸化澱粉および/または酸化アセチル化澱粉とα化澱粉質を配合した原料粉を用いる方法が示されている。
特許文献6には、圧延してベーカリーを製造する際に馬鈴薯、タピオカおよび糯種穀物に由来する澱粉または穀物を5〜20重量%配合することを特徴とするベーカリーの製造法が示されている。
特開2011−72221 特開平5−15296 特開2008−92941 特開2007−325526 特開2009−273421 特開2002−345394
従って、本発明が解決しようとする課題は、歯切れ、口どけが共によく、且つソフト感、しっとり感に優れたベーカリー製品およびその製造方法を提供することにある。
本発明者らは前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、意外にも、低温糊化特性を有する甘藷でん粉を使用することにより、歯切れ、口どけが共によく、且つソフト感、しっとり感に優れたベーカリー製品を製造できることを見出した。
本発明はこれらの知見に基いて達成された。すなわち本発明は下記を提供する。
1、小麦粉を主原料とする原料穀粉に、糊化開始温度が78℃以下の低温糊化特性を有する甘藷でん粉、または、その加工でん粉を配合した材料を用いて製造されたベーカリー製品。
2、加工でん粉の加工処理がリン酸架橋、アセチル化およびα化からなる群から選択される少なくとも一種である前記1項記載のベーカリー製品。
3、ベーカリー製品が食パン類、菓子パン、ロール類、ドーナツ類、および中華まんからなる群から選択される少なくとも一種である前記1または2項に記載のベーカリー製品。
4、低温糊化特性を有する甘藷でん粉またはその加工でん粉の配合割合が、小麦粉を含む原料穀粉の全質量に対して1質量%〜50質量%である、前記1〜3項のいずれか1項に記載のベーカリー製品。
5、糊化開始温度が78℃以下の低温糊化特性を有する甘藷でん粉またはその加工でん粉を、原料穀粉に配合することを特徴とする前記1〜4項のいずれか1項に記載のベーカリー製品の製造方法。
本発明によれば歯切れ、口どけが共によく、且つソフト感、しっとり感に優れたベーカリー製品およびその製造方法を提供することが出来る。また、本発明のベーカリー製品の原料には、澱粉質を配合しているので、調和した食感を付与することができ、食味に優れたベーカリー製品を提供することが出来る。
甘藷の精、クイックスイートおよびこなみずきのRVAによる粘度曲線を示す。 タピオカ澱粉および馬鈴薯澱粉のRVAによる粘度曲線を示す。
本発明では、78℃以下の低温糊化特性を有する甘藷でん粉、または、その加工でん粉を使用する。好ましくは、糊化開始温度が45℃〜75℃、さらに好ましくは、55℃〜70℃である甘藷でん粉、またはその加工でん粉である。加工でん粉の糊化開始温度も78℃以下であることが好ましい。糊化開始温度の測定方法については、ブラベンダーアミログラフ、ラピッドビスコグラフ(以下RVAとする。)やDSCなどの熱分析計を用いる方法があるが、本明細書で述べる糊化開始温度の測定には、RVAを用いる。すなわち、本明細書における糊化開始温度とは、RVAにおいて、澱粉濃度6質量%の水懸濁液(懸濁液30g中に澱粉を絶乾物として1.8gを含有)を50℃に撹拌しながら1分間に12℃の昇温速度で加熱したとき、澱粉の糊化開始によって粘度が発現する温度を機械的に読み取って得られる温度を意味する。
本発明に用いる低温糊化特性を有する甘藷でん粉は、特定の甘藷系統の塊根から調製することが出来る。このような甘藷系統として、例えば、「関東116号」(後に農林水産省育成新品種として2002年5月に「かんしょ農林57号」として登録、「クイックスイート」と命名された。)や「九州159号」(2010年に品種名「こなみずき」として品種登録申請された。)が挙げられる。また、このような甘藷は、特定の甘藷系統同志の交雑による後代植物の中から、塊根でん粉の糊化開始温度が低い植物個体を選抜することによって作出することが出来る。すなわち、「関東116号」は「ベニアズマ」を母本、「九州30号」を父本とする交配後代から作出することができ(作物研究所研究報告 3,35−52(2003.2);特許第3366939号)、また「九州159号」は、「99L04−3」を母本、「九系236」を父本とする交配後代から作出することができる(でん粉情報 2008年3月号 でん粉用かんしょの品種育成について;でん粉情報 2011年4月号 新しい低温糊化でん粉品種「こなみずき」の特性)。
本発明で用いる78℃以下の低温糊化特性を有する甘藷でん粉は、更に物理的および/または化学的に加工して使用してもよい。その際の加工方法はヒドロキシプロピル化、アセチル化、リン酸架橋、酸化、酸浸漬およびα化から選択され、これらを単独または2種以上を組み合わせて使用することができる。好ましい加工としてはリン酸架橋、アセチル化およびα化が例示される。これらの加工でん粉は常法に従って製造することができ、加工の種類、加工度は目的に応じて適宜選択することができる。
例えば、エーテル化にはエーテル化剤として酸化プロピレンを用い、澱粉と反応させることによりヒドロキシプロピル澱粉を得ることができる。また、例えばエステル化にはエステル化剤として無水酢酸または酢酸ビニールモノマーを用い、澱粉と反応させることにより酢酸澱粉を得ることができる。リン酸架橋には、架橋剤としてトリメタリン酸塩やオキシ塩化リンを用い、これを澱粉に作用させることによって作製できる。同様に、架橋剤として無水アジピン酸を用いることでアジピン酸架橋澱粉を得ることができる。酸化には、酸化剤として次亜塩素酸ナトリウムを用い、これをアルカリ性澱粉懸濁液に作用させることで酸化澱粉とすることができる。
本発明における「ベーカリー製品」とは、小麦粉を主原料とした原料穀粉を使用し、これに必要に応じてイースト(またはベーキングパウダー)、食塩、水などの他、必要に応じて副材料を加えて、発酵工程を経て、あるいは経ないで得られたベーカリー生地を焼成、フライ、蒸し等の加熱処理を行って調製した製品の総称である。上記原料粉には、小麦以外の穀物、例えば全粒粉、ライ麦、米、トウモロコシ、大麦、ひえ、あわ、きび、発芽玄米、黒米、赤米、大豆、小豆、アマランサス、キヌアなどを混入してもよい。
該ベーカリー製品を具体的に例示すると、プルマン、イギリス食パン等の食パン類、バケット、パリジャンなどのフランスパン、菓子パン、バンズ、テーブルロールなどの各種ロール類の他、イーストドーナツ、ケーキドーナツなどのドーナツ類、デニッシュ、中華まん、蒸しパン、蒸しケーキ、スポンジケーキ、バターケーキ、ホットケーキなどのケーキ類、シュー生地、クッキーなどの焼き菓子類などが挙げられる。
なお、副材料とは、一般にパンの製造に使用されている副材料、或いはパンの種類、望まれる品質などによって使用されている副材料で、具体的には砂糖、グルコース、異性化糖、オリゴ糖、澱粉分解物、還元澱粉分解物等の糖質、脱脂粉乳、全脂粉乳などの乳製品、ショートニング、マーガリン、バター、乳化油脂等の油脂類、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム等の乳化剤、シナモン、バジリコ等の香辛料、ブランデー、ラム酒等の洋酒類、レーズン、ドライチェリー等のドライフルーツ、アーモンド、ピーナッツ等のナッツ類、αアミラーゼ、βアミラーゼ、グルコオキシターゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、キシラナーゼ、ヘミセルラーゼ、グルコースオキシターゼ等の酵素、香料(例えばバニラエッセンス)、人工甘味料、(例えばアスパルテーム)、ペクチン、グアガム分解物、アガロース、グルコマンナン、ポリデキストロース、アルギン酸ナトリウム、セルロース、ヘミセルロース、リグニン、キチン、キトサン、難消化性デキストリン等の食物繊維、活性グルテン、ココアパウダー等が例示出来る。
また本発明のベーカリー食品の材料処方は、近年ベーカリー食品の製造工程の合理化や流通上の目的で利用される冷蔵生地や冷凍生地にも適用できる。
本発明のベーカリー製品に配合する低温糊化特性を有する甘藷でん粉またはその加工でん粉の配合割合は、小麦粉を含む原料穀粉の全質量に対して1質量%〜50質量%、好ましくは5質量%〜30質量%である。1質量%以下では本発明の効果が発揮されず、50質量%を超えるとベーカリー製品のボリュームが出なくなるという点で好ましくない。
以下に参考例(加工でん粉の製造例)、実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。但し、部とあるのは重量部を示す。低温糊化特性を有する甘藷でん粉としては、品種「こなみずき」(品種登録出願番号「第24650号」)より採取されるでん粉(以下「こなみずき」)を用いた。また、市販の標準的な甘藷でん粉(商品名「甘藷の精」)を用い、これらの低温糊化特性を有する甘藷でん粉とその物性を比較した。甘藷の精、こなみずきのRVAによる糊化開始温度、および参考としてタピオカでん粉、および馬鈴薯でん粉のRVAによる糊化開始温度を表1に示す。
Figure 2014108090
また、甘藷の精、クイックスイート、こなみずきのRVAによる糊化曲線および糊化開始温度を図1に示す(澱粉濃度は6%)。また、参考としてタピオカ澱粉、および馬鈴薯澱粉のRVAによる糊化曲線および糊化開始温度を図2に示す。なお、糊化開始温度は以下のとおり測定した。
澱粉濃度6質量%の水懸濁液(懸濁液30g中に澱粉を絶乾物として1.8gを含有)を50℃に撹拌しながら1分間に12℃の昇温速度で加熱し、澱粉の糊化によって懸濁液の粘度が発現する温度をRVAによって機械的に読み取って糊化開始温度とした。
[参考例1]
水130部に硫酸ナトリウム20部を溶解し、こなみずき100部を加えてスラリーとし撹拌下3%の苛性ソーダ水溶液を加えてpH11.4〜pH11.5に保持しながら、トリメタリン酸ソーダ0.05部を加え、41℃で5時間反応した後硫酸で中和、水洗して試料1のリン酸架橋でん粉を得た。糊化開始温度は66.15℃であった。
[参考例2]
水130部にこなみずき100部を加えてスラリーとし撹拌下3%の苛性ソーダ水溶液を加えてpH8.0〜pH8.5に保持しながら、無水酢酸1.2部を加えてアセチル化し、硫酸で中和、水洗して試料2のアセチル化でん粉を得た。糊化開始温度は60.50℃であった。
[参考例3]
水120部にこなみずき100部を加えてスラリーとし、ドラムドライヤーにてα化後、粉砕して試料3のα化でん粉を得た。
[参考例4]
水120部に甘藷の精100部を加えてスラリーとし、ドラムドライヤーにてα化後、粉砕して試料4のα化でん粉を得た。
[実施例1]
表2および表3の配合で、中種法によりNo.1〜No.9の山形食パンを製造した。
Figure 2014108090
Figure 2014108090
常法に従い山形食パンを焼成し、風味、しっとりさ、ソフトさ、歯切れ良さ、口どけ、内相について評価を行った。評価に際しては、製品をビニール袋に入れて密封して20℃に保持し、1日(24時間)後に官能検査を行った。官能検査は10人のパネラーにより5点満点で評価を行い、平均を取った。評価基準は表4に示し、評価結果は表5および表6に示す。
これらの結果から、低温糊化特性を有する甘藷でん粉、または、前記低温糊化特性を有する甘藷でん粉を加工処理した加工でん粉を使用することで、歯切れ、口どけが共によく、且つソフト感、しっとり感に優れたベーカリー製品が得られることが明らかになった。
Figure 2014108090
Figure 2014108090
Figure 2014108090
実施例2
表7の配合でNo.10〜No.14のイーストドーナツを製造した。
Figure 2014108090
常法に従いイーストドーナツを焼成し、しっとりさ、ソフトさ、歯切れ良さ、口どけについて評価を行った。評価に際しては、製品をビニール袋に入れて密封して20℃に保持し、1日(24時間)後に官能検査を行った。官能検査は10人のパネラーにより5点満点で評価を行い、平均を取った。評価基準に関しては表4に示し、評価結果は表8に示す。
これらの結果から、低温糊化特性を有する甘藷でん粉を使用することで、歯切れ、口どけが共によく、且つソフト感、しっとり感に優れたドーナツ製品が得られることが明らかになった。
Figure 2014108090
実施例3
表9の配合でNo.15〜No.19の中華まんを製造した。
Figure 2014108090
常法に従い中華まんを焼成し、ソフトさ、歯切れ良さ、口どけ、外観(表面形状・艶)について評価を行った。評価基準に関しては表10、評価結果は表11に示す。
これらの結果から低温糊化特性を有する甘藷でん粉を使用することで、歯切れ、口どけが共によく、且つソフト感に優れ、外観も良好な中華まんが得られることが明らかになった。
Figure 2014108090
Figure 2014108090

Claims (5)

  1. 小麦粉を主原料とする原料穀粉に、糊化開始温度が78℃以下の低温糊化特性を有する甘藷でん粉、または、その加工でん粉を配合した材料を用いて製造されたベーカリー製品。
  2. 加工でん粉の加工処理がリン酸架橋、アセチル化およびα化からなる群から選択される少なくとも一種である請求項1記載のベーカリー製品。
  3. ベーカリー製品が食パン類、菓子パン、ロール類、ドーナツ類、および中華まんからなる群から選択される少なくとも一種である請求項1または2に記載のベーカリー製品。
  4. 低温糊化特性を有する甘藷でん粉またはその加工でん粉の配合割合が、小麦粉を含む原料穀粉の全質量に対して1質量%〜50質量%である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のベーカリー製品。
  5. 糊化開始温度が78℃以下の低温糊化特性を有する甘藷でん粉、または、その加工でん粉を、原料穀粉に配合することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のベーカリー製品の製造方法。
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