以下、本発明の一例としての実施の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための図面において、同一の構成要素には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る画像形成システム1の概略構成図である。
画像形成システム1は、画像形成装置10とコンピュータ20とを有している。画像形成装置10は、画像処理装置100と画像出力装置200とを備え、コンピュータ20からの印刷データを受け付けた場合に、この印刷データを基に画像処理および画像形成処理を実施する。
画像処理装置100は、データ受付部110、記憶部120,150、PDL(Page Description Language:以下、PDLという)解釈部130、描画部140、画像データ解析部160および画像処理部(特定手段の一例、判断手段の一例)170を有している。
データ受付部110は、コンピュータ20から受け付けた(取得した)印刷データを記憶部120に保存する。この印刷データは、例えばページ記述言語(PDL)で記述されている。
なお、コンピュータ20からの印刷データは、例えば、RGB色空間、L*a*b*色空間、CMY色空間、およびCMYK色空間の何れかの色空間で表現される画像データである。
RGB色空間は、赤、緑、青の各色で構成される色空間を意味する。
L*a*b*色空間は、画像出力装置などデバイスに依存しない色空間(均等色空間)であって、例えばCIE(国際照明印委員会)L*a*b*表色系の色空間を意味する。
CMY色空間は、シアン、マゼンタおよびイエローの各色で構成される色空間を意味する。
CMYK色空間は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)および黒(K)の各色で構成される色空間を意味する。
上記したPDL解釈部130は、記憶部120に記憶されたPDLデータを解釈し、この解釈した結果を描画部140へ出力する。
描画部140は、受け付けたPDLデータの解釈結果を基に描画にかかわる処理単位(例えばページ)ごとに描画処理を実施し、この描画処理の結果を記憶部150に保存する。また、描画部140は、処理単位の描画処理を終了した旨を画像データ解析部160および画像処理部170へ通知する。なお、描画部140による描画処理の結果の描画データは、ビットマップ形式(ラスタ形式)の画像データである。
画像処理装置100の画像処理部170は、色変換部(測定手段および特定手段の一例)171、階調補正部172および網点生成部173を有しており、受け付けた画像データ(描画データ)に対する色変換処理、階調補正処理および網点生成処理を実施する。
また、画像処理部170は、画像処理が終了した画像データを、画像出力装置200に向けて出力する。
画像出力装置200は、画像出力装置制御部(制御手段の一例)210および画像形成部220を有している。
画像出力装置制御部210は、画像処理部170からの画像データを画像形成部220へ出力するとともに、画像形成処理を開始すべき旨の命令(画像形成処理開始命令)を画像形成部220へ出力する。
また、画像出力装置制御部210は、画像形成処理を実施する画像形成手段の機能を果たす画像形成部220の少なくとも周囲の環境に関する情報(環境情報と定義する)、画像形成部220による画像形成処理の結果が印刷される用紙(記録媒体の一例)の紙質に関する情報(用紙情報と定義する)、および画像出力装置200の経時特性に関する情報(詳しくは画像形成部220の経時特性に関する情報:経時特性情報と定義する)のうち少なくとも1つの情報を、画像処理装置100の画像データ解析部160に向けて出力する。
画像形成部220は、画像形成手段の機能を有しており、上記画像形成処理開始命令に従って、受け付けた画像データに基づいて画像形成処理を実行し、この画像形成処理の結果としての印刷出力結果(画像が印刷された用紙)を出力する。
次に、図2は、図1の画像形成システム1の機能レベルの概略構成を示している。
画像形成システム1は、画像形成装置10と、コンピュータ(画像データ出力装置の一例)20とが通信回線30を介して接続されることで構成されている。
コンピュータ20は、処理装置(クライアント装置)として機能するものであり、CPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)20C、ハードディスクなどの記憶装置20M1、RAM(Random Access Memory:随時書き込み読み出しメモリ)などのメモリ20M2および通信インタフェース(以下、通信I/Fという)20IFを備えている。
記憶装置20M1は、文書の生成や印刷要求を発行するアプリケーションソフトウェア、プリンタドライバ、印刷データ(PDLデータ)など各種のデータを記憶する。
メモリ20M2は、記憶装置20M1から読み出されたプログラムやデータを記憶する。
通信I/F20IFは、通信回線30を介して、画像形成装置10との間でデータの送受信を行うインタフェースである。
CPU20Cは、コンピュータ20全体を制御するものであり、例えば、記憶装置20M1からメモリ20M2へプリンタドライバを読み込んで実行する。これにより、印刷データ(PDLデータ)が画像形成装置10に向けて送信される。
一方、画像形成装置10の画像処理装置100は、CPU100C、ハードディスクなどの記憶装置100M1、RAM100M2,ROM100M3および通信I/F100IFを備えている。
記憶装置100M1は、ソフトウェアである画像処理プログラム(画像処理プログラムの一例)PDなど、印刷処理を実施するのに必要な各種のプログラムやデータを記憶している。
画像処理プログラムPDは、図1に示したPDL解釈部130、描画部140、画像データ解析部160および画像処理部170(色変換部171、階調補正部172および網点生成部173)のそれぞれの機能を実現させるためのプログラム(ソフトウェア)を含んでいる。
ROM100M3は、色パラメータ、階調パラメータ、および網点パラメータの各デフォルト値、色範囲情報など、画像処理に必要なデータを記憶している。
RAM100M2は、記憶装置100M1から読み出された画像処理プログラムPDや通信I/F100IFを介して受信された印刷データなどを記憶する。
また、RAM100M2には、少なくとも以下の(a)〜(d)の各記憶領域が割り当てられる。
(a)図1の記憶部120として機能する記憶領域(印刷データを記憶する領域)である。
(b)図1の記憶部150として機能する記憶領域(描画データを記憶する領域)である。
(c)図1の色変換部171の色パラメータ記憶部、階調補正部172の階調パラメータ記憶部および網点生成部173の網点パラメータ記憶部として機能する記憶領域(デフォルト値としての各パラメータを記憶する領域)である。すなわち、ROM100M3から読み込まれたデフォルト値としてのパラメータを記憶する記憶領域である。
(d)図1の画像処理部170が画像処理を実施する際に必要となる記憶領域(色変換処理、階調補正処理、スクリーン処理の各処理過程や処理結果などを記憶する記憶領域など)である。
CPU100Cは、画像形成装置10全体を制御するものであり、例えば、記憶装置100M1からRAM100M2へ画像処理プログラムPDを読み込んで実行することにより、高画質の画像データを生成して、画像出力装置200に向けて出力する。
通信I/F100IFは、通信回線30を介して、コンピュータ20との間でデータの送受信を行うインタフェースであり、例えば、コンピュータ20から送信された印刷データを受信する。
通信回線30としては、ローカルエリアネットワーク(Local Area Network:以下、LANと略す)や電話回線などの有線通信回線、無線LANなどの無線通信回線、さらには、これらの通信回線を組み合わせたもの、などが挙げられる。
ここでは、画像処理装置100の各機能を実現し、上記画像処理の処理手順を示すプログラムを含む画像処理プログラムを、記録媒体としてのハードディスク等の記憶装置に記録する場合について説明したが、当該画像処理プログラムを次のようにして提供しても良い。
すなわち、上記画像処理プログラムをROMに格納しておき、CPUが、このプログラムをこのROMから主記憶装置へローディングして実行するようにしても良い。
また、上記画像処理プログラムを、DVD−ROM、CD−ROM、MO(光磁気ディスク)、フレキシブルディスク、などのコンピュータで読み取り自在な記録媒体に格納して配布するようにしても良い。この場合、その記録媒体に記録されたプログラムを画像処理装置100がインストールした後、このプログラムをCPUが実行するようにする。このプログラムのインストール先としては、RAM等のメモリやハードディスクなどの記憶装置がある。そして、画像処理装置100は、必要に応じてこの記憶装置に記憶したプログラムを主記憶装置にローディングして実行する。
さらには、通信回線(例えばインターネット)を介して画像処理装置100をサーバ装置あるいはホストコンピュータ等のコンピュータと接続するようにし、当該画像処理装置100が、サーバ装置あるいはコンピュータから上記画像処理プログラムをダウンロードした後、このプログラムを実行するようにしても良い。この場合、このプログラムのダウンロード先としては、RAM等のメモリやハードディスクなどの記憶装置(記録媒体)がある。そして、当該画像処理装置100が、必要に応じてこの記憶装置に記憶された上記プログラムを主記憶装置にローディングして実行するようにする。
次に、図3は、画像出力装置200の画像形成部220の主に機構系の概略構成を示している。
画像形成部220は、タンデム方式の中間転写方式により画像を形成するようになっており、電子写真方式(電子写真プロセス)により各色成分のトナー像(画像)が形成される複数の画像形成ユニット40Y,40M,40C,40Kと、各画像形成ユニット40Y,40M,40C,40Kにより形成された各色成分のトナー像を、図中矢印Z方向に循環駆動(回転)される中間転写ベルト(中間転写体の一例)50に順次転写(1次転写)させる1次転写部(第1の転写手段の一例)41Y,41M,41C,41Kと、を備えている。
また、画像形成部220は、中間転写ベルト50上に転写されたトナー像(重畳トナー画像)を用紙Pに一括転写(2次転写)させる2次転写部(第2の転写手段の一例)60と、2次転写された画像を用紙Pに定着させる定着装置(定着手段の一例)70と、中間転写ベルト50上に転写された階調補正用の未定着の複数のパッチパターンを光学的に検出するトナー量センサ(Auto Developability Control:以下、ADCと略す)80と、用紙Pに定着された画像や上記階調補正用の複数のパッチパターンを光学的に検出するインラインセンサ(In Line Sensor:以下、ILSと略す:検出手段の一例)90と、を備えている。
画像形成ユニット40Yは、図中矢印A方向に回転する感光体ドラム(感光体の一例)42Yを有する。この感光体ドラム42Yの周囲には、回転方向に沿って、感光体ドラム42Yを帯電する帯電装置43Y、感光体ドラム42Y上に静電潜像を書込むレーザ露光装置44Y(図中、露光ビームを符号Bmで示す)、該当する色成分のトナーが収容されて感光体ドラム42Y上の静電潜像をトナーにより可視像化する現像装置45Y、感光体ドラム42Y上に形成された色成分のトナー像を中間転写ベルト50に転写する1次転写ロール46Y、感光体ドラム42Y上の残留トナーが除去されるドラムクリーナ47Y、などの電子写真用デバイスが順に配設されている。また、画像形成ユニット40Yには、現像装置45Yに現像剤を供給するためのトナーカートリッジ(図示せず)が備えられている。
画像形成ユニット40M,40C,40Kのそれぞれも上記感光体ドラム42Yと同様の感光体ドラム42M,42C,42Kを有しており、これらの感光体ドラム42M,42C,42Kの周囲には、上記感光体ドラム42Yに対応する電子写真用デバイス(帯電装置、レーザ露光装置、現像装置、1次転写ロール、ドラムクリーナ)と同様の電子写真用デバイスが順次配設されている。また、画像形成ユニット40M,40C,40Kには、それぞれの現像装置45M,45C,45Kに現像剤を供給するためのトナーカートリッジ(図示せず)が備えられている。
上記した各画像形成ユニット40Y,40M,40C,40Kは、中間転写ベルト50の回転方向(図中矢印Z方向)の上流側から、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の順に配置されている。そして、感光体ドラム42Y,42M,42C,42Kの各々は、中間転写ベルト50に対して接離自在に構成されている。
1次転写ロール46Yは、中間転写ベルト50を挟んで感光体ドラム42Yと対峙する位置に配置されている。1次転写ロール46Yには、1次転写電圧(1次転写電位)を与える1次転写電圧源48Yが接続されている。1次転写ロール46Yおよび1次転写電圧源48Yは、1次転写部41Yを構成する構成要素である。
上記同様に、感光体ドラム42M,42C,42Kのそれぞれに対応する1次転写ロール46M,46C,46Kも、中間転写ベルト50を挟んで該当する感光体ドラム42M,42C,42Kと対峙する位置に配置されている。1次転写ロール46M,46C,46Kには、それぞれ1次転写電圧(1次転写電位)を与える1次転写電圧源48M,48C,48Kが接続されている。各感光体ドラム42M,42C,42Kに対応する1次転写ロールおよび1次転写電圧源は、それぞれ1次転写部41M,41C,41Kを構成する構成要素である。
1次転写ロール46Y,46M,46C,46Kには、1次転写電圧源48Y,48M,48C,48Kからの1次転写電圧(1次転写電位)が印加され、1次転写電流が供給される。そして、1次転写ロール46Y,46M,46C,46Kは、1次転写電流が供給されることによって1次転写バイアスを発生し、感光体ドラム42Y,42M,42C,42Kの各感光体ドラム42Y,42M,42C,42K上のトナー像を中間転写ベルト50に転写させる。
上記した中間転写ベルト50は、各画像形成ユニット40Y,40M,40C,40Kにより形成された各色成分のトナー像が順次転写(1次転写)され保持される部材である。この中間転写ベルト50は、複数の支持ロールおよびバックアップロール60aに掛け渡された状態で無端状に形成されており、反時計回りの方向(矢印Zに示す方向)に回転しながら各画像形成ユニット40Y,40M,40C,40Kのトナー像の1次転写を受けるようになっている。
上記した2次転写部60は、中間転写ベルト50上に転写されたトナー像を用紙P等に一括転写(2次転写)してフルカラー画像を形成するための機構部であり、中間転写ベルト50を挟んで互いに対向した状態で配置されたバックアップロール60aと2次転写ロール60bとを備えている。一括転写においては、バックアップロール60aにトナーの帯電極性と同極性の2次転写電圧を印加するか、または、2次転写ロール60bにトナーの帯電極性と逆極性の2次転写電圧を印加する。これにより、バックアップロール60aと2次転写ロール60bとの間に転写電界が形成され、中間転写ベルト50上に保持された未定着のトナー像が用紙P等の上に転写される。
定着装置70は、トナー像が転写された用紙P等に対して熱および圧力を与えてトナー像を用紙P等に定着させる機能を備えており、例えば、加熱ロール70aと、加熱ロール70aに用紙Pを押し付ける加圧ロール70bとを備えている。
なお、電子写真プロセスの帯電プロセス、露光プロセスおよび現像プロセスは画像形成ユニット40Y,40M,40C,40Kで実現され(実際には帯電プロセスは帯電装置43Y,43M,43C,43Kで、露光プロセスはレーザ露光装置44Y,44M,44C,44Kで、現像プロセスは現像装置45Y,45M,45C,45Kで、それぞれ実現される。)、転写プロセスは1次転写部41Y,41M,41C,41Kおよび2次転写部60で実現され、定着プロセスは定着装置70で実現される。
上記したADCセンサ80は、中間転写ベルト50に転写された階調補正用の複数のパッチパターンを光学的に読み取るセンサである。この段階の階調補正用の複数のパッチパターンは未定着である。
ADCセンサ80は、最後段の1次転写の位置(1次転写ロール46K)から中間転写ベルト50の回転方向に沿って2次転写の位置(2次転写ロール60b)に到るまでの間において中間転写ベルト50に転写された階調補正用の複数のパッチパターンを光学的に安定して読み取れる位置に配置されている。
このADCセンサ80で検出された光信号は電気信号に変換されて図1に示した画像処理部170に伝送され階調補正部172での階調補正用のデータとして使用されるようになっている。
ここで、図4および図5は、正反反射方式(図4参照)と拡散反射方式(図5参照)とを併用したADCセンサ80の一例の概略構成を示している。なお、図4および図5の矢印は光の進む方向を示している。
ADCセンサ80は、正反射用の発光素子80LAと、拡散反射用の発光素子80LBと、正反射および拡散反射の共用の受光素子80LCと、反射基準板80RSと、シャッタ80Sとを備えている。
発光素子80LA,LBは、例えば近赤外LED(Light Emitting Diode)により構成され、受光素子80LCは、例えばフォトダイオードにより構成されている。
このADCセンサ80は、図4に示すように、ほとんど拡散反射しない黒色のトナーに対しては正反射方式を使用し、図5に示すように、カラートナーに対しては高濃度まで読み取れる拡散反射方式を使用するようになっている。
なお、ここでは、中間転写ベルト50上に転写された階調補正用の複数のパッチパターンをADCセンサ80により検出する場合について説明したが、これに代えて感光体ドラム42Y,42M,42C,42Kに現像された上記階調補正用の複数のパッチパターンをADCセンサ80により検出するようにしても良い。
一方、図3に示すILS90は、中間転写ベルト50から用紙P等に転写され定着装置70により定着された画像および上記階調補正用の複数のパッチパターンを光学的に読み取るセンサである。
ILS90は、定着装置70の後段(用紙Pの搬送下流)において、用紙Pに定着された画像および上記階調補正用の複数のパッチパターンを光学的に安定して読み取れるように用紙Pの排出部の近傍に配置されている。用紙Pの排出部の近傍は、用紙Pのカールが除去され用紙Pの姿勢が安定するので、用紙Pに定着された画像の濃度や位置を高い精度で読み取れる。
このILS90で検出された光信号は電気信号に変換されて図1に示した画像処理部170に伝送され、色変換部171および階調補正部172でのデータとして使用されるようになっている。
ここで、図6は、ILS90の一例の概略構成を示している。ILS90は、搬送中の用紙Pに定着された画像を読み込み、その画像情報を抽出するためのセンサであり、照射部90Aと、CCD(Charge Coupled Device)センサ90Bと、結像部90Cと、センサ校正部90Dとを備えている。
照射部90Aは、画像が記録された用紙Pに向けて光を照射する手段であり、一対のランプ90A1,90A2を備えている。一対のランプ90A1,90A2は、例えばリニア型のキセノンランプにより構成されており、用紙Pの画像形成面に対向する位置に配置されている。また、この一対のランプ90A1,90A2は、その照射範囲の長さが、搬送される最大の用紙Pの幅よりも大きくなるように設定されているとともに、用紙Pの走行時に安定した読み取り精度を得るために充分な照明深度が確保されている。
CCDセンサ90Bは、照射部90Aから照射されて用紙Pで反射された光を受光するとともに、受光した光の強度に基づいて画像または用紙P自体を検出する手段である。CCDセンサ90Bに結像された光は、画像の濃度に応じた電気信号に変換されて図1に示した画像処理部170に伝送され階調補正部172での階調補正用のデータとして使用される。
結像部90Cは、照射部90Aから照射されて用紙Pで反射された光をCCDセンサ90Bに結像する手段である。結像部90Cは、例えば機械的な操作の無い縮小投影光学系により構成されており、複数の反射鏡90C1,90C2,90C3とレンズ90C4とを備えている。
センサ校正部90Dは、ILS90の使用時やキャリブレーション時の各種基準等を設定する手段であり、例えば周方向に8面以上の面が形成された多角形筒状の基準ロール90D1を備えている。これにより、各種検査ターゲットを画像読み取り位置に搭載し、ILS90の読み取り精度の自動校正を行うことで計測装置としての性能を確保している。
次に、上記画像形成装置10における画像の色調の制御について説明する。
まず、図7は、複数枚の用紙に対して連続して画像を形成した場合の用紙の枚数と2次転写効率との関係をグラフに示した図である。なお、2次転写効率とは、中間転写ベルト50上に転写された画像のトナーが2次転写により用紙等に転写される割合のことを言う。
上記のような電子写真方式の画像形成装置10においては、2次転写効率は、連続して画像を形成している最中のトナーの電荷量の変化や用紙の特性(含水率)等により変化し、多くの場合、処理枚数の増加とともに低下することが分かる。また、2次色CL2および3次色CL3のような多次色の方が1次色CL1よりも2次転写効率の減衰量が大きく、多次色の色調の変動の方が1次色の色調の変動よりも目立ち易いことが分かる。
次に、図8は、1次色CL1、2次色CL2および3次色CL3について2次転写電圧と2次転写効率との関係をグラフに示した図である。
2次転写電圧は、1次色CL1、2次色CL2および3次色CL3のトナーを中間転写ベルト50上から用紙P上に一括転写する場合のパラメータであり、1次色CL1、2次色CL2および3次色CL3毎に最適な設定値V1,V2,V3が異なっている。
しかし、一般には、1次色CL1、2次色CL2および3次色CL3のバランスをとるために、2次色の設定値V2に近い値が中心値Vcとして設定されている。なお、2次転写電圧の設定値V1,V2,V3は、一般的に用紙の特性(坪量、表面性、抵抗率等)の情報が予め取得されていれば、それに応じて更新される。
次に、図9は、第1の実施の形態の画像形成装置10の画像形成時における色調の制御のフローチャート図である。なお、ここでは、複数枚の用紙Pに対して連続して画像を形成する場合について説明する。また、符号nは用紙Pの枚数を示している。
まず、画像形成の開始(図9のステップ500)により、画像形成部220(図3参照)の各感光体ドラム42Y,42M,42C,42Kにトナー像(画像)を形成し、その各々のトナー像を中間転写ベルト50に転写(1次転写)する。続いて、中間転写ベルト50に転写されたトナー像を用紙Pに一括転写(2次転写)した後、用紙Pに転写されたトナー像を定着装置70にて定着する。
次いで、用紙Pに定着されたトナー像をILS90により光学的に読み取る(図9のステップ501)。ILS90は、検出された用紙Pの全面のトナー像の検出データを画像処理装置100の色変換部171に伝送する。色変換部171は、ILS90から伝送された検出データに基づいて用紙Pの全面のトナー像の平均L*,a*,b*を測定する(図9のステップ502)。
ここで、用紙Pが1枚目か否かが判断され(図9のステップ503)、1枚目の場合は、その用紙Pの全面のトナー像の平均L*,a*,b*を基準値として記憶装置100M1等に記憶する(図9のステップ504)。1枚目の用紙Pの全面のトナー像の平均L*,a*,b*を基準値とすることにより、色調のずれを判断するための基準値がより適した値に設定される。これにより、トナー像の色調の安定性および再現性がより向上する。ただし、基準値として過去のデータ(経験値)や計算値を採用し、それを記憶装置100M1等に予め設定(記憶)しておいても良い。
一方、ステップ503で用紙Pが2枚目以降であると判断された場合、色変換部171では、2枚目以降の用紙Pの全面のトナー像の平均L*,a*,b*と、上記1枚目の用紙Pの全面のトナー像の平均L*,a*,b*(基準値)とを比較し、それらの差分から、色調のずれ量ΔL*,Δa*,Δb*を算出するとともに、基準値に対してずれている方向を特定する(図9のステップ505)。
次いで、ステップ505により得られたL*a*b*のずれ方向に応じて、そのずれが補正されるように2次転写部60の2次転写電圧を制御する。これにより、用紙Pに形成されるトナー像の色調の安定性および再現性が向上する。ここでは、例えばL*a*b*表色系で、上記ΔL*,Δa*,Δb*の符号と絶対値とから1次色、2次色および3次色のどれがずれているかを判断し、1次色、2次色および3次色のずれる方向に合わせて、それらのずれが補正されるように2次転写部60の2次転写電圧を制御する(図9のステップ506)。これにより、トナー像の色調補正の精度が向上する。
また、特許文献1では、画像のある部分にセンサを移動して測定するか、1頁内の全領域を測定するための複数個のセンサを設けている。このため、画像の場所の特定や複数個のセンサからのデータを平均化するための処理に時間がかかり、高速処理対応時に応答遅れが生じる場合がある。そこで、高速処理のために大容量のメモリを設置したり、データ転送速度を速めたりすることも考えられるが、大幅なコストの上昇になる。これに対して、本実施の形態ではILS90で用紙Pの画像を検出するだけで済むので、画像処理時間が短縮され、高速処理対応時の応答遅れが回避される。また、大容量のメモリを設置したりデータ転送速度を速めたりする必要もなくなるので、画像形成システム1および画像形成装置10のコスト上昇を抑えられる。
また、特許文献1では、印刷機が前提であり、各色のインクを重ねないため、各色のトナーを重ねて画像を形成する場合に適用すると、画像の転写時の色の変動量が吸収されず、色調(濃度)の変動につながる。これに対して、本実施の形態では、各色のトナーを重ねて画像を形成し、さらにその重なったトナー像を用紙Pに一括転写する場合でも、上記のように色ずれの方向に応じてそのずれが補正されるように2次転写電圧を制御することで、トナー像の色調(濃度)の変動が抑えられる。
図9のステップ506の後、画像形成処理が終了か否かが判断され(図9のステップ507)、画像形成が終了と判断されるまで上記処理が繰り返される。
次に、2次転写電圧の制御の一例について図10を参照して説明する。図10は、L*a*b*表色系での色空間の座標を示している。
L*a*b*表色系は、人間が色の違いを見分けられる限界を元に全色を均等に分けて3次元空間で表したもので、人間の視覚を近似するように設計されている。
L*軸は明度を表し、0が最も暗く、数値が大きくなるほど明るい色となる。a*,b*=0の時は、黒から白にかけてのグレーを表す。
a*軸、b*軸の組み合わせは、全ての色相を表している。L*が同じ面で見ると中心が無彩色(a*,b*=0)で外側に行くほど鮮やかな色となる。
a*軸の+側はマゼンタ色(M色)の彩度、−側は緑色(G色)の彩度を表している。また、b*軸の+側は黄色(Y色)の彩度、−側は青色(B色)の彩度を表している。
ここで、例えば基準(1枚目)の用紙Pのトナー像の平均L*,a*,b*を基準値S=(60,10,5)とし、n枚目の用紙Pのトナー像の平均L*,a*,b*を測定値N=(62,8,10)とする。
この場合、n枚目の用紙Pのトナー像は、ΔL*=2で3次色が基準値Sに比べて薄くなっている。また、Δa*=−2で2次色が基準値Sに比べて濃く、1次色が基準値Sに比べて薄くなっている。さらに、Δb*=5で2次色が基準値Sに比べて薄くなり、1次色が基準値Sに比べて濃くなっている。
トータルでは、ΔL*=2、Δb*=5で2次色、3次色が薄くなり、Δa*=−2で2次色、3次色が濃くなっていることから、2次転写部60の2次転写電圧を上げる方向に制御する。これにより、2次転写効率が向上する。したがって、基準に対する色調のずれが低減するので、用紙Pに転写されるトナー像の色調の安定性および再現性が向上する。
次に、上記した2次転写部60の2次転写電圧の設定について説明する。
2次転写電圧=現状の2次転写電圧+Δ2次転写電圧
Δ2次転写電圧=β*(ΔL*α(L)+Δa*α(a)+Δb*α(b))となる。
α(L),α(a),α(b)は、ΔL*,Δa*,Δb*からΔ2次転写電圧を換算する係数である。また、β(0<β)は補正率であり、後述する1次色のルックアップテーブル(Look Up Table:以下、LUTと略す)補正とのバランスをとるためのもので、実験的に求められるものである。
次に、ΔL*,Δa*,Δb*からΔ2次転写電圧を換算する係数であるαの求め方を説明する。
ΔL*,Δa*,Δb*とΔ2次転写電圧との関係は、用紙Pに転写されるトナー量で感度が変わってくるため、トナー像の濃度、すなわち、各L*,a*,b*の平均値により換算しておく必要がある。その具体例について図11を参照して説明する。
図11は、L*,a*,b*の2次転写電圧の感度検出や階調補正に用いるパッチパターンPPの一例の平面図である。なお、図11には、説明を分かり易くするために、各パッチパターンPPに、色を示す文字(3C(グレー),R,G,B,Y,M,C,K)と、画像(網点)の面積率(Coverage in:以下、Cinという)を示す数字(20%、50%、80%)とが示されているが、これら自体が転写または定着されるわけではない。
ここでは、予め3段階の画像データ(Cin=20%、50%、80%)での3C,RGB,YMCKの階調補正用のパッチパターンをILS90で検出し、L*,a*,b*を測定する。この測定に際しては、2次転写部60の2次転写電圧を、例えば設定中心値±30%の3〜10段階程度で変えている。その測定結果を図12に示す。
図12(a)〜(c)は、2次転写電圧に対するL*感度、a*感度およびb*感度を示している。なお、(a)〜(c)においてVcは2次転写電圧の設定中心値である。
各Cin(20%、50%、80%)で、1次色CL1としてはYMCの平均値およびKを各L*,a*,b*感度を求めて、その傾きを換算係数(α(L20(1次)/L50(1次)/L80(1次)),α(a20(1次)/a50(1次)/a80(1次)),α(b20(1次)/b50(1次)/b80(1次))とする。
2次色CL2としては、RGBの平均値を、3次色としては、3Cの測定値からL*,a*,b*の傾き(換算係数)を求める。なお、YMCとKとで分けたのは、Kを単色モードとして使用するためである。
ここで、各Cin(20%、50%、80%)の傾き(換算係数)の使い分けとしては、実際に形成された画像のL*<10でCin=80%のデータ、10≦L*<40でCin=50%のデータ、L*≦50でCin=20%のデータとする。実際のトナー濃度とL*との関係は一意的に決まるものではないが、上記3つに分けることで2次転写電圧の補正に対応する。
また、色調の明度の方向を示すL*方向のずれが3次色かK単色かの判断は、画像情報の画像形成様式の一例であるカラーモード(フルカラーモードか単色Kモードか)により判断しても良いし、画像情報の色情報の一例であるYMCKのどの色で形成するかの情報で判断しても良い。このように3次色かK単色かの判断を画像情報から判断することにより、実際の画像の検出結果から判断する場合に比べて画像の判断のための処理が容易になり、画像形成処理の速度が向上する。
以上により実際のトナー濃度にあった2次転写電圧の補正を行える。
(第2の実施の形態)
上記したように1次色の色調の変動に比べて多次色の色調の変動の方が目立ち易いので、トナー像の色調補正では、多次色の変動分の補正を優先させている。しかし、2次転写電圧の制御により多次色の色調の変動分を補正すると、1次色の色調が変動してしまう場合がある。そこで、第2の実施の形態においては、1次色の色調の変動分の補正として画像データの階調補正を行うことで対応する。
階調補正は、画像形成部220の中間転写ベルト50(または各感光体ドラム42Y,42M,42C,42K)上に形成された階調補正用のパッチパターンPP(図11参照)をADCセンサ80またはILS90により検出し、その検出結果に基づいてLUTを補正するものである。
ここで、図13および図14は一般的な階調補正用の変換LUTのデータの作成例を説明するための図である。
図13において、横軸はCin(%)、縦軸は出力画像濃度を示している。また、階調特性TLは目標の階調特性線を示し、階調特性MLは中間転写ベルト50(または感光体ドラム42Y,42M,42C,42K)に形成された階調補正用のパッチパターンPPをADCセンサ80(またはILS90、あるいはADCセンサ80とILS90の両方)により検出することで作成された画像形成装置10の実測の階調特性線を示している。
この場合、同じ出力画像濃度D1を得るのにも目標の階調特性TLと実際に検出された階調特性MLとでCinの値が異なる。そこで、図14に示すように、目標の階調特性TLと実際に検出された階調特性MLとの差が解消されるようにデータを変換するための変換LUTのデータLLを作成する。
図14において、横軸はCin(%)、縦軸は補正後のCin(%)を示している。図13および図14に示すように、基本的な変換LUTのデータLLは、目標の階調特性TLを中心線として、実際に検出された階調特性MLの対称ポイントを求めることで作成される。
変換LUTの作成は、上記画像処理装置100のCPU100C(図2参照)で実行され、その結果は、メモリ100M2や記憶装置100M1等に記憶される。
また、第2の実施の形態においては、2次転写電圧による1次色の色調の変動分を上記変換LUTに反映させる。そして、画像の形成(印刷)においては、画像データを変換LUTで補正することにより、目標の階調特性を得るようになっている。
次に、図15は、第2の実施の形態の画像形成装置10の画像形成時における色調の制御のフローチャート図である。なお、ここでも、複数枚の用紙Pに対して連続して画像を形成する場合について説明する。
前記第1の実施の形態の図9で説明したのと同様にステップ500〜505を経た後、例えばL*a*b*表色系で、上記ΔL*,Δa*,Δb*の符号と絶対値とから1次色、2次色および3次色のどれがどれくらいずれているかを判断する(図15のステップ506A)。
続いて、ステップ506Aで判断された色ずれ量と、予め定められた閾値(例えばΔE=2)とを比較し、そのずれ量が閾値以上か否かを判断する(図15のステップ600)。
ステップ600で、色ずれ量が閾値より低い場合は、2次転写電圧および変換LUTを変更せず(図15のステップ601)、ステップ507に進む。このように、誤差の範囲に含まれる色調のずれに対してまで2次転写電圧による補正を行う必要がなくなるので、閾値を設けない場合に比べて、画像形成処理の速度が向上する。
一方、ステップ600で、色ずれ量が閾値以上の場合は、2次色、3次色が薄い方向にずれているか否かを判断する(図15のステップ602)。
ステップ602で、2次色、3次色が薄い方向にずれている場合は、2次転写部60の2次転写電圧を高い方向に変更するとともに、1次色が濃くなる方向に変換LUTを変更し(図15のステップ603)、ステップ507に進む。
一方、ステップ602で、2次色、3次色が薄い方向にずれていない(すなわち、濃い方向にずれている)場合は、2次転写部60の2次転写電圧を低い方向に変更するとともに、1次色が薄くなる方向に変換LUTを変更し(図15のステップ604)、ステップ507に進む。
このようにして、2次色、3次色の色調の変動を2次転写電圧の制御により補正したことにより1次色の色調が変動してしまう不具合が抑制または防止される。
次に、図16はLUT(変換前)と2次転写電圧との対応関係をグラフに示した図である。
第1象限は2次転写電圧と反射濃度Dout(ILS90で測定したL*,a*,b*から換算される)との関係を示し、第2象限はLUTと反射濃度Doutとの関係を示している。また、第1象限の特性線DLは実測の特性線を示し、第2象限の階調特性TLは目標の階調特性線を示している。
画像形成装置10のセットアップ(初期設定段階)に際して上記図11のパッチパターンを測定する際に、図16の第1象限の特性線DLをILS90の検出結果から求め、もともと階調補正のために用意されている図16の第2象限の階調特性TLからLUTを補正して上記変換LUTを作成する。
例えば2次色や3次色が基準値よりも薄くなっている分をΔ2次転写電圧(ΔV)による補正で濃くしている場合、YMCの各色のLUTをYMCの共通の補正分(Δ2次転写電圧から換算されるΔLUT)として1次色を濃くする方向に補正する。
ΔLUT(YMC共通)=ε*ΔLUT(2次転写電圧の補正分対応)
εは、補正率であり、例えば上記の2次転写電圧の補正とのバランスをとる場合に使用している。以上、β,εは、0<β,ε<1であり、1次色の変動は2次、3次色よりも目立ち難いので、2次、3次色の補正を1次色よりも優先させる。
以上本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本明細書で開示された実施の形態はすべての点で例示であって、開示された技術に限定されるものではないと考えるべきである。すなわち、本発明の技術的な範囲は、前記の実施の形態における説明に基づいて制限的に解釈されるものでなく、あくまでも特許請求の範囲の記載に従って解釈されるべきであり、特許請求の範囲の記載技術と均等な技術および特許請求の範囲の要旨を逸脱しない限りにおけるすべての変更が含まれる。
例えば色(色調、色度)を数値で表す表色系としてL*a*b*表色系を採用したが、これに限定されるものではなく、例えば、ハンターLab表色系やXYZ(Yxy)表色系を用いても良い。
また、前記実施の形態においては、記録媒体として用紙に適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、フィルム、はがき等、画像が形成される様々なものに適用しても良い。