本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下で説明する実施形態および変形例は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
《発明の実施形態1》
本発明の実施形態1について説明する。本実施形態は、ロータリ式膨張機(30)を備えた空調機(10)である。
〈空調機の全体構成〉
図1に示すように、本実施形態の空調機(10)は、冷媒回路(11)を備えている。この空調機(10)は、冷媒回路(11)で冷媒を循環させて冷凍サイクルを行う冷凍装置である。冷媒回路(11)には、圧縮機(20)と、膨張機(30)と、室外熱交換器(14)と、室内熱交換器(15)と、第1四方切換弁(12)と、第2四方切換弁(13)とが接続されている。冷媒回路(11)には、冷媒として二酸化炭素(CO2)が充填されている。また、冷媒回路(11)には、給油用配管(17)と油戻し用配管(18)とが設けられている。
冷媒回路(11)の構成について説明する。圧縮機(20)は、吐出管(26)が第1四方切換弁(12)の第1のポートに接続され、吸入管(25)が第1四方切換弁(12)の第2のポートに接続されている。膨張機(30)は、流出管(36)が第2四方切換弁(13)の第1のポートに接続され、流入管(35)が第2四方切換弁(13)の第2のポートに接続されている。室外熱交換器(14)は、ガス側端が第1四方切換弁(12)の第3のポートに接続され、液側端が第2四方切換弁(13)の第4のポートに接続されている。室内熱交換器(15)は、液側端が第2四方切換弁(13)の第3のポートに接続され、ガス側端が第1四方切換弁(12)の第4のポートに接続されている。
室外熱交換器(14)は、冷媒を室外空気と熱交換させるための空気熱交換器である。室内熱交換器(15)は、冷媒を室内空気と熱交換させるための空気熱交換器である。第1四方切換弁(12)と第2四方切換弁(13)は、それぞれ、第1のポートと第3のポートが連通し且つ第2のポートと第4のポートが連通する第1状態(図1に実線で示す状態)と、第1のポートと第4のポートが連通し且つ第2のポートと第3のポートが連通する第2状態(図1に破線で示す状態)とに切り換わるように構成されている。
圧縮機(20)は、いわゆる高圧ドームタイプの全密閉型圧縮機である。この圧縮機(20)は、起立した円筒形に形成された圧縮機ケーシング(24)を備えている。圧縮機ケーシング(24)の内部には、圧縮機構(21)と電動機(23)と駆動軸(22)とが収容されている。圧縮機構(21)は、いわゆるロータリ式流体機械を構成している。圧縮機ケーシング(24)内では、圧縮機構(21)の上方に電動機(23)が配置されている。駆動軸(22)は、上下方向へ延びる姿勢で配置され、圧縮機構(21)と電動機(23)を連結している。
圧縮機ケーシング(24)には、吸入管(25)と吐出管(26)が設けられている。吸入管(25)は、圧縮機ケーシング(24)の胴部の下端付近を貫通しており、その終端が圧縮機構(21)へ直に接続されている。吐出管(26)は、圧縮機ケーシング(24)の頂部を貫通しており、その始端が圧縮機ケーシング(24)内における電動機(23)の上側の空間に開口している。圧縮機構(21)は、吸入管(25)から吸い込んだ冷媒を圧縮して圧縮機ケーシング(24)内へ吐出する。
圧縮機ケーシング(24)の底部には、潤滑油としての冷凍機油が貯留されている。本実施形態では、ポリアルキレングリコール(PAG)が冷凍機油として用いられる。駆動軸(22)の内部には、図示しないが、その軸方向へ延びる油通路が形成されている。この給油通路(61c)は、駆動軸(22)の下端に開口している。駆動軸(22)の下端は、油溜まり(27)に浸かった状態となっている。圧縮機ケーシング(24)内の冷凍機油は、駆動軸(22)の給油通路(61c)を通じて圧縮機構(21)へ供給される。
膨張機(30)は、起立した円筒形に形成された膨張機ケーシング(34)を備えている。膨張機ケーシング(34)の内部には、膨張機構(31)と発電機(33)とが収容されている。膨張機構(31)は、それぞれがロータリ式流体機械を構成する二つのロータリ機構部(70,80)を備えている。膨張機構(31)の詳細は後述する。膨張機ケーシング(34)内では、膨張機構(31)の上方に発電機(33)が配置されている。膨張機構(31)の出力軸(40)は、上下方向へ延びる姿勢となっており、その上部に発電機(33)が連結されている。
膨張機ケーシング(34)には、流入管(35)と流出管(36)が設けられている。流入管(35)と流出管(36)は、何れも膨張機ケーシング(34)の胴部の下部を貫通している。流入管(35)は、その終端が膨張機構(31)へ直に接続されている。流出管(36)は、その始端が膨張機構(31)へ直に接続されている。膨張機構(31)は、流入管(35)を通って流入した冷媒が膨張し、膨張後の冷媒が流出管(36)へ流出してゆく。つまり、膨張機(30)を通過する冷媒は、膨張機ケーシング(34)の内部空間へは流れ込まずに膨張機構(31)だけを通過する。また、膨張機ケーシング(34)には、給油管(37)が設けられている。給油管(37)は、膨張機ケーシング(34)の胴部を貫通し、その終端が膨張機構(31)へ直に接続されている。
給油用配管(17)は、始端が圧縮機(20)に接続され、終端が膨張機(30)の給油管(37)に接続されている。給油用配管(17)の始端部は、圧縮機ケーシング(24)の底部を貫通し、圧縮機ケーシング(24)の内部空間に開口している。この給油用配管(17)の始端部は、圧縮機ケーシング(24)の底に溜まった冷凍機油に浸かった状態となっており、駆動軸(22)の下端と概ね同じ高さに開口している。一方、給油用配管(17)の終端部は、給油管(37)を介して膨張機ケーシング(34)内の膨張機構(31)に直に接続されている。圧縮機ケーシング(24)の底に溜まった冷凍機油は、給油用配管(17)を通って膨張機構(31)へ供給される。
油戻し用配管(18)は、始端が膨張機(30)に接続され、終端が圧縮機(20)の吸入管(25)と第1四方切換弁(12)を繋ぐ配管に接続されている。油戻し用配管(18)の始端部は、膨張機ケーシング(34)の底部を貫通し、膨張機ケーシング(34)の内部空間に開口している。
〈膨張機の構成〉
膨張機(30)の構成について説明する。ここでは、膨張機構(31)の構成について、図2〜図4を参照しながら詳細に説明する。
図2に示すように、膨張機構(31)の出力軸(40)は、その下端部に2つの偏心部(42,43)が形成されている。2つの偏心部(42,43)は、主軸部(41)よりも大径に形成されており、上側のものが第1偏心部(42)を、下側のものが第2偏心部(43)をそれぞれ構成している。第1偏心部(42)と第2偏心部(43)とは、何れも同じ方向へ偏心している。第2偏心部(43)の外径は、第1偏心部(42)の外径よりも大きい。主軸部(41)の軸心に対する偏心量は、第2偏心部(43)の方が第1偏心部(42)よりも大きい。
出力軸(40)には、軸内油通路(90)が形成されている。軸内油通路(90)は、冷凍機油を流すための通路であって、主通路(94)と、第1導出通路(91)と、第2導出通路(92)と、第3導出通路(93)と、導入通路(95)とを備えている。
主通路(94)は、出力軸(40)のうち膨張機構(31)内に位置する部分に形成されており、主軸部(41)の軸心に沿って延びている。第1導出通路(91)、第2導出通路(92)、第3導出通路(93)、及び導入通路(95)は、それぞれの一端が主軸部(41)に接続している。
第1導出通路(91)は、出力軸(40)の第1偏心部(42)に形成されている。この第1導出通路(91)は、第1偏心部(42)の径方向へ延び、第1偏心部(42)の外周面に開口している。第2導出通路(92)は、出力軸(40)の第2偏心部(43)に形成されている。この第2導出通路(92)は、第2偏心部(43)の径方向へ延び、第2偏心部(43)の外周面に開口している。第3導出通路(93)は、主通路(94)における第2偏心部(43)のすぐ下側に形成されている。この第3導出通路(93)は、主通路(94)の径方向へ延び、主軸部(41)の外周面に開口している。導入通路(95)は、主軸部(41)における第1偏心部(42)のすぐ上側に形成されている。この導入通路(95)は、主軸部(41)の径方向へ延び、主通路(94)の外周面に開口している。
詳しくは後述するが、膨張機構(31)は、いわゆる揺動ピストン型のロータリ式流体機械で構成されたロータリ機構部(70,80)を二つ備えている。この膨張機構(31)には、対になったシリンダ(71,81)及びピストン(75,85)が二組設けられている。また、膨張機構(31)には、フロントヘッド(61)と、中間プレート(63)と、リアヘッド(62)とが設けられている。
膨張機構(31)では、下から上へ向かって順に、リアヘッド(62)と、第2シリンダ(81)と、中間プレート(63)と、第1シリンダ(71)と、フロントヘッド(61)とが積み重なっている。第1シリンダ(71)は、その上側端面がフロントヘッド(61)により閉塞され、その下側端面が中間プレート(63)により閉塞されている。第2シリンダ(81)は、その上側端面が中間プレート(63)により閉塞され、その下側端面がリアヘッド(62)により閉塞されている。膨張機構(31)では、フロントヘッド(61)、中間プレート(63)、及びリアヘッド(62)が閉塞部材を構成している。また、第2シリンダ(81)の内径は第1シリンダ(71)の内径よりも大きく、第2シリンダ(81)の高さは第1シリンダ(71)の高さよりも高い。
出力軸(40)は、積層された状態のフロントヘッド(61)、第1シリンダ(71)、中間プレート(63)、第2シリンダ(81)を貫通している。また、出力軸(40)は、その第1偏心部(42)が第1シリンダ(71)内に位置し、その第2偏心部(43)が第2シリンダ(81)内に位置している。
図3及び図4にも示すように、第1シリンダ(71)内には第1ピストン(75)が、第2シリンダ(81)内には第2ピストン(85)がそれぞれ設けられている。第1ピストン(75)と第2ピストン(85)は、それぞれが短い円筒状に形成されている。第1ピストン(75)の高さは第1シリンダ(71)の高さと概ね等しく、第2ピストン(85)の高さは第2ピストン(85)の高さと概ね等しい。また、第1ピストン(75)の内径は第1偏心部(42)の外径と、第2ピストン(85)の内径は第2偏心部(43)の外径とそれぞれ概ね等しい。第1ピストン(75)には第1偏心部(42)が、第2ピストン(85)には第2偏心部(43)がそれぞれ貫通している。
第2ピストン(85)は、上端面(85a)に凹溝(50)が形成され、下端面(85b)に凹部(52)が形成されている。また、第2ピストン(85)の凹部(61b)には、シールリング(45)が嵌め込まれている。これらの点については、後ほど詳しく説明する。
第1ピストン(75)は、外周面が第1シリンダ(71)の内周面に、上端面(75a)がフロントヘッド(61)に、下端面(75b)が中間プレート(63)にそれぞれ摺接している。第1シリンダ(71)内では、第1シリンダ(71)の内周面と第1ピストン(75)の外周面との間に第1流体室(72)が形成される。一方、第2ピストン(85)は、外周面が第2シリンダ(81)の内周面に、上端面(85a)が中間プレート(63)に、下端面(85b)がリアヘッド(62)にそれぞれ摺接している。第2シリンダ(81)内には、第2シリンダ(81)の内周面と第2ピストン(85)の外周面との間に第2流体室(82)が形成される。
第1ピストン(75)及び第2ピストン(85)のそれぞれには、ブレード(76,86)が1つずつ一体に設けられている。ブレード(76,86)は、ピストン(75,85)の半径方向へ延びる板状に形成されており、ピストン(75,85)の外周面から外側へ突出している。第1ピストン(75)のブレード(76)は第1シリンダ(71)のブッシュ孔(78)に、第2ピストン(85)のブレード(86)は第2シリンダ(81)のブッシュ孔(88)にそれぞれ挿入されている。各シリンダ(71,81)のブッシュ孔(78,88)は、シリンダ(71,81)を厚み方向へ貫通すると共に、シリンダ(71,81)の内周面に開口している。
各シリンダ(71,81)には、一対のブッシュ(77,87)が一組ずつ設けられている。各ブッシュ(77,87)は、内側面が平面となって外側面が円弧面となるように形成された小片である。各シリンダ(71,81)において、一対のブッシュ(77,87)は、ブッシュ孔(78,88)に挿入されてブレード(76,86)を挟み込んだ状態となる。各ブッシュ(77,87)は、その内側面がブレード(76,86)と摺接し、その外側面がシリンダ(71,81)と摺動する。そして、ピストン(75,85)と一体のブレード(76,86)は、ブッシュ(77,87)を介してシリンダ(71,81)に支持され、シリンダ(71,81)に対して回動自在で且つ進退自在となっている。
第1シリンダ(71)内の第1流体室(72)は、第1ピストン(75)と一体の第1ブレード(76)によって仕切られており、図3,図4における第1ブレード(76)の左側が高圧側の第1高圧室(73)となり、その右側が低圧側の第1低圧室(74)となっている。第2シリンダ(81)内の第2流体室(82)は、第2ピストン(85)と一体の第2ブレード(86)によって仕切られており、図3,図4における第2ブレード(86)の左側が高圧側の第2高圧室(83)となり、その右側が低圧側の第2低圧室(84)となっている。
第1シリンダ(71)と第2シリンダ(81)とは、それぞれの周方向におけるブッシュ(77,87)の位置が一致する姿勢で配置されている。言い換えると、第2シリンダ(81)の第1シリンダ(71)に対する配置角度が0°となっている。上述のように、第1偏心部(42)と第2偏心部(43)とは、主軸部(41)の軸心に対して同じ方向へ偏心している。従って、第1ブレード(76)が第1シリンダ(71)の外側へ最も退いた状態になる時期と、第2ブレード(86)が第2シリンダ(81)の外側へ最も退いた状態になる時期とが、一致している。
第1シリンダ(71)には、流入ポート(67)が形成されている。流入ポート(67)は、第1シリンダ(71)の内周面のうち、図3,図4におけるブッシュ(77)のやや左側の箇所に開口している。流入ポート(67)は、第1高圧室(73)と連通可能となっている。図3,図4には図示しないが、流入ポート(67)には、流入管(35)が接続されている。
第2シリンダ(81)には、流出ポート(68)が形成されている。流出ポート(68)は、第2シリンダ(81)の内周面のうち、図3,図4におけるブッシュ(87)のやや右側の箇所に開口している。流出ポート(68)は、第2低圧室(84)と連通可能となっている。図3,図4には図示しないが、流出ポート(68)には、流出管(36)が接続されている。
中間プレート(63)には、連通路(64)が形成されている。この連通路(64)は、中間プレート(63)を厚み方向へ貫通している。中間プレート(63)における第1シリンダ(71)側の面では、図3,4における第1ブレード(76)の右側に連通路(64)の一端が開口している。中間プレート(63)における第2シリンダ(81)側の面では、図3,4における第2ブレード(86)の左側に連通路(64)の他端が開口している。そして、図2に示すように、連通路(64)は、中間プレート(63)の厚み方向に対して斜めに延びており、第1低圧室(74)と第2高圧室(83)とを互いに連通させている。
本実施形態の膨張機構(31)では、第1シリンダ(71)と、そこに設けられたブッシュ(77)と、第1ピストン(75)と、第1ブレード(76)とが、第1ロータリ機構部(70)を構成している。また、この膨張機構(31)では、第2シリンダ(81)と、そこに設けられたブッシュ(87)と、第2ピストン(85)と、第2ブレード(86)とが、第2ロータリ機構部(80)を構成している。中間プレート(63)は、第1シリンダ(71)の端部を閉塞する第1ロータリ機構部(70)の閉塞部材と、第2シリンダ(81)の端部を閉塞する第2ロータリ機構部(80)の閉塞部材とを兼ねている。
上述したように、第2シリンダ(81)は、第1シリンダ(71)よりも内径が大きく、第1シリンダ(71)よりも高さが高い。このため、第2ロータリ機構部(80)に形成された第2流体室(82)の容積は、第1ロータリ機構部(70)に形成された第1流体室(72)の容積よりも大きい。従って、第2ロータリ機構部(80)の押しのけ容積は、第1ロータリ機構部(70)の押しのけ容積よりも大きい。
また、膨張機構(31)では、第1ロータリ機構部(70)の第1低圧室(74)と、第2ロータリ機構部(80)の第2高圧室(83)とは、連通路(64)を介して互いに連通する。そして、第1低圧室(74)と連通路(64)と第2高圧室(83)とによって1つの閉空間が形成され、この閉空間が膨張室(66)となる。
図2に示すように、フロントヘッド(61)は、肉厚の平板状に形成された部分と、その部分の中央部から上方へ突出した筒状の部分とによって構成されている。フロントヘッド(61)の中央部には貫通孔(61a)が形成されており、この貫通孔(61a)に出力軸(40)の主軸部(41)が挿入されている。フロントヘッド(61)は、出力軸(40)の主軸部(41)を回転自在に支持する滑り軸受を構成している。
フロントヘッド(61)は、第1シリンダ(71)の上端部を覆う前面(即ち、図2における下面)に、凹部(61b)が形成されている。この凹部(61b)は、フロントヘッド(61)の前面における貫通孔(61a)の周縁部を全周に亘って掘り下げることによって形成された座ぐり状の窪みである。出力軸(40)の導入通路(95)は、この凹部(61b)に連通している。また、フロントヘッド(61)には、給油通路(61c)が形成されている。給油通路(61c)は、一端がフロントヘッド(61)の外周面に開口し、他端が凹部(61b)に連通している。給油通路(61c)の一端には、給油管(37)が接続されている。
リアヘッド(62)は、肉厚の平板状に形成された部分と、その部分の中央部から下方へ僅かに突出した筒状の部分とによって構成されている。リアヘッド(62)の中央部には貫通孔(61b)が形成されており、この貫通孔(61b)に出力軸(40)の主軸部(41)が挿入されている。リアヘッド(62)は、出力軸(40)の主軸部(41)を回転自在に支持する滑り軸受を構成している。
リアヘッド(62)は、第2シリンダ(81)の下端部を覆う前面(即ち、図2における上面)に、凹部(62b)が形成されている。この凹部(62b)は、リアヘッド(62)の前面における貫通孔(61b)の周縁部を全周に亘って掘り下げることによって形成された座ぐり状の窪みである。出力軸(40)の第3導出通路(93)は、この凹部(62b)に連通している。
図2に示すように、本実施形態の膨張機(30)では、二つのロータリ機構部(70,80)のうち下流側に位置する第2ロータリ機構部(80)だけに、シール部材であるシールリング(45)が設けられている。また、第2ロータリ機構部(80)では、一つのシールリング(45)が第2ピストン(85)に取り付けられている。この点について詳しく説明する。
図5〜図7に示すように、第2ピストン(85)には、凹溝(50)と凹部(52)とが形成されている。凹溝(50)は、第2ピストン(85)の上端面(85a)(即ち、中間プレート(63)と対向する端面)の全周に亘って形成された環状の溝であって、第2ピストン(85)の上端面(85a)に開口している。一方、凹部(52)は、第2ピストン(85)の下端面(85b)(即ち、リアヘッド(62)と対向する端面)の内周縁部を全周に亘って掘り下げることによって形成された座ぐり状の窪みである。凹部(52)の外径φDoは、凹溝(50)の外径φDo'よりも小さく、凹溝(50)の内径φDi'よりも大きい。なお、凹部(52)の外径φDoを凹溝(50)の内径φDi'よりも小さくするのが望ましい場合もあり得る。
図8に示すように、シールリング(45)は、断面が矩形の環状に形成された樹脂製の部材である。図9にも示すように、シールリング(45)は、周方向の一箇所で分断されている。シールリング(45)は、一方の端部に第1の合い口部(46a)が形成され、他方の端部に第2の合い口部(46b)が形成されている。これらの合い口部(46a,46b)は、シールリング(45)の直径が変化してもシール機能が確保されるように、互いに重なり合っている。
図10に示すように、シールリング(45)は、ウェーブワッシャ(48)と共に第2ピストン(85)の凹溝(50)に嵌め込まれている。ウェーブワッシャ(48)は、波打った金属板からなる環状の部材である。シールリング(45)は、その下面が凹溝(50)の底面(51)と密着しないように、ウェーブワッシャ(48)の上に配置されている。また、シールリング(45)の径方向の幅は、凹溝(50)の径方向の幅よりも狭い。なお、図2では、ウェーブワッシャ(48)の図示を省略している。
−運転動作−
上記空調機の動作について説明する。
〈冷房運転〉
冷房運転時には、第1四方切換弁(12)及び第2四方切換弁(13)が第1状態(図1に実線で示す状態)に設定され、冷媒回路(11)で冷媒が循環して蒸気圧縮冷凍サイクルが行われる。この冷媒回路(11)で行われる冷凍サイクルは、その高圧が冷媒である二酸化炭素の臨界圧力よりも高い値に設定されている。
圧縮機(20)では、電動機(23)によって圧縮機構(21)が回転駆動される。圧縮機構(21)は、吸入管(25)から吸い込んだ冷媒を圧縮して圧縮機ケーシング(24)内へ吐出する。圧縮機ケーシング(24)内の高圧冷媒は、吐出管(26)を通って圧縮機(20)から吐出される。圧縮機(20)から吐出された冷媒は、室外熱交換器(14)へ送られて室外空気へ放熱する。室外熱交換器(14)で放熱した高圧冷媒は、膨張機(30)へ流入する。
膨張機(30)では、流入管(35)を通って膨張機構(31)へ流入した高圧冷媒が膨張し、それによって発電機(33)が回転駆動される。発電機(33)で発生した電力は、圧縮機(20)の電動機(23)へ供給される。膨張機構(31)で膨張した冷媒は、流出管(36)を通って膨張機(30)から送り出される。膨張機(30)から送出された冷媒は、室内熱交換器(15)へ送られる。室内熱交換器(15)では、流入した冷媒が室内空気から吸熱して蒸発し、室内空気が冷却される。室内熱交換器(15)から出た低圧冷媒は、圧縮機(20)の吸入管(25)へ流入する。
〈暖房運転〉
暖房運転時には、第1四方切換弁(12)及び第2四方切換弁(13)が第2状態(図1に破線で示す状態)に設定され、冷媒回路(11)で冷媒が循環して蒸気圧縮冷凍サイクルが行われる。冷房運転時と同様に、この冷媒回路(11)で行われる冷凍サイクルは、その高圧が冷媒である二酸化炭素の臨界圧力よりも高い値に設定されている。
圧縮機(20)では、電動機(23)によって圧縮機構(21)が回転駆動される。圧縮機構(21)は、吸入管(25)から吸い込んだ冷媒を圧縮して圧縮機ケーシング(24)内へ吐出する。圧縮機ケーシング(24)内の高圧冷媒は、吐出管(26)を通って圧縮機(20)から吐出される。圧縮機(20)から吐出された冷媒は、室内熱交換器(15)へ送られる。室内熱交換器(15)では、流入した冷媒が室内空気へ放熱し、室内空気が加熱される。室内熱交換器(15)で放熱した高圧冷媒は、膨張機(30)へ流入する。
膨張機(30)では、流入管(35)を通って膨張機構(31)へ流入した高圧冷媒が膨張し、それによって発電機(33)が回転駆動される。発電機(33)で発生した電力は、圧縮機(20)の電動機(23)へ供給される。膨張機構(31)で膨張した冷媒は、流出管(36)を通って膨張機(30)から送り出される。膨張機(30)から送出された冷媒は、室外熱交換器(14)へ送られる。室外熱交換器(14)では、流入した冷媒が室外空気から吸熱して蒸発する。室外熱交換器(14)から出た低圧冷媒は、圧縮機(20)の吸入管(25)へ流入する。
〈膨張機構の動作〉
膨張機構(31)の運転動作について、図4を参照しながら説明する。
第1ロータリ機構部(70)の第1高圧室(73)へ超臨界状態の高圧冷媒が流入する過程について説明する。回転角が0°の状態から出力軸(40)が僅かに回転すると、第1ピストン(75)と第1シリンダ(71)の接触位置が流入ポート(67)の開口部を通過し、流入ポート(67)から第1高圧室(73)へ高圧冷媒が流入し始める。その後、出力軸(40)の回転角が90°,180°,270°と次第に大きくなるにつれて、第1高圧室(73)へ高圧冷媒が流入してゆく。この第1高圧室(73)への高圧冷媒の流入は、出力軸(40)の回転角が360°に達するまで続く。
膨張機構(31)において冷媒が膨張する過程について説明する。回転角が0°の状態から出力軸(40)が僅かに回転すると、第1低圧室(74)と第2高圧室(83)が連通路(64)を介して互いに連通し、第1低圧室(74)から第2高圧室(83)へと冷媒が流入し始める。その後、出力軸(40)の回転角が90°,180°,270°と次第に大きくなるにつれ、第1低圧室(74)の容積が次第に減少すると同時に第2高圧室(83)の容積が次第に増加し、結果として膨張室(66)の容積が次第に増加してゆく。この膨張室(66)の容積増加は、出力軸(40)の回転角が360°に達する直前まで続く。そして、膨張室(66)の容積が増加する過程で膨張室(66)内の冷媒が膨張し、この冷媒の膨張によって出力軸(40)が回転駆動される。このように、第1低圧室(74)内の冷媒は、連通路(64)を通って第2高圧室(83)へ膨張しながら流入してゆく。
第2ロータリ機構部(80)の第2低圧室(84)から冷媒が流出してゆく過程について説明する。第2低圧室(84)は、出力軸(40)の回転角が0°の時点から流出ポート(68)に連通し始める。つまり、第2低圧室(84)から流出ポート(68)へと冷媒が流出し始める。その後、出力軸(40)の回転角が90°,180°,270°と次第に大きくなってゆき、その回転角が360°に達するまでの間に亘って、第2低圧室(84)から膨張後の低圧冷媒が流出してゆく。
〈圧縮機構と膨張機構の潤滑〉
圧縮機(20)の圧縮機構(21)と、膨張機(30)の膨張機構(31)とには、圧縮機ケーシング(24)内に貯留された冷凍機油が供給される。圧縮機構(21)と膨張機構(31)とは、供給された冷凍機油によって潤滑される。
圧縮機(20)では、圧縮機ケーシング(24)の内圧が、圧縮機構(21)から吐出された冷媒の圧力とほぼ同じになっている。このため、圧縮機ケーシング(24)の底に溜まった冷凍機油の圧力も、圧縮機構(21)から吐出された冷媒の圧力とほぼ同じになっている。一方、圧縮機構(21)は、吸入管(25)から低圧冷媒を吸入する。従って、圧縮機構(21)には、圧縮機ケーシング(24)の内圧よりも低圧となる部分が存在する。このため、圧縮機ケーシング(24)の底に溜まった冷凍機油は、駆動軸(22)内の油通路を通って圧縮機構(21)へ流入し、圧縮機構(21)の潤滑に利用される。圧縮機構(21)へ供給された冷凍機油は、圧縮された冷媒と共に圧縮機ケーシング(24)内へ吐出され、再び圧縮機ケーシング(24)の底部へ戻ってくる。
冷媒回路(11)を循環する冷媒の圧力は、圧縮機(20)から膨張機(30)へ至るまでの間に幾分低下する。このため、膨張機構(31)を通過する冷媒の圧力は、必然的に圧縮機ケーシング(24)の内圧よりも低くなる。また、膨張機構(31)に形成された流体室(72,82)では冷媒が膨張するため、膨張機構(31)内には膨張機構(31)へ流入する冷媒よりも更に低圧の部分が必ず存在する。このため、圧縮機ケーシング(24)の底に溜まった冷凍機油は、給油用配管(17)を通って膨張機構(31)へ流入する。
図2に示すように、給油用配管(17)から膨張機構(31)へ供給された冷凍機油は、給油管(37)を通ってフロントヘッド(61)の給油通路(61c)へ流入する。給油通路(61c)から凹部(61b)へ流入した冷凍機油は、その一部が滑り軸受を構成するフロントヘッド(61)と主軸部(41)の隙間へ流入し、残りが軸内油通路(90)へ流入する。
軸内油通路(90)では、導入通路(95)を通って主通路(94)へ流入した冷凍機油が、第1導出通路(91)と、第2導出通路(92)と、第3導出通路(93)とに分かれて流入する。第1導出通路(91)へ流入した冷凍機油は、第1ロータリ機構部(70)の潤滑に利用される。第2導出通路(92)へ流入した冷凍機油は、第2ロータリ機構部(80)の潤滑に利用される。第3導出通路(93)へ流入した冷凍機油は、凹部(62b)へ流入し、その後に滑り軸受を構成するリアヘッド(62)と主軸部(41)の隙間へ流入する。
主軸部(41)とフロントヘッド(61)の隙間に流入した冷凍機油と、主軸部(41)とリアヘッド(62)の隙間に流入した冷凍機油とは、主軸部(41)の潤滑に利用され、その後に膨張機構(31)の外部へ流出して膨張機ケーシング(34)の底部に溜まる。膨張機ケーシング(34)の底部に溜まった冷凍機油は、油戻し用配管(18)を通って圧縮機(20)の吸入管(25)へ流入し、冷媒と共に圧縮機構(21)へ吸入される。
〈流体室へ流入する冷凍機油の量〉
上述したように、第1導出通路(91)へ流入した冷凍機油は、第1ロータリ機構部(70)の潤滑に利用される。具体的に、第1導出通路(91)の冷凍機油は、第1偏心部(42)と第1ピストン(75)の隙間へ流入する。また、冷凍機油は、第1ピストン(75)の上端面(75a)とフロントヘッド(61)の隙間と、第1ピストン(75)の下端面(75b)と中間プレート(63)の隙間にも流入する。
ここで、第1シリンダ(71)内の第1高圧室(73)の圧力は、第1導出通路(91)の冷凍機油の圧力と同程度である。このため、フロントヘッド(61)及び中間プレート(63)と第1ピストン(75)の隙間を通って第1高圧室(73)へ流入する冷凍機油の量は、ほんの僅かである。また、出力軸(40)が回転するにつれて、第1シリンダ(71)内の第1低圧室(74)の圧力が低下してゆくが、それと同時に第1低圧室(74)の容積が縮小してゆく(図4を参照)。このため、フロントヘッド(61)及び中間プレート(63)と第1ピストン(75)の隙間を通って第1低圧室(74)へ流入する冷凍機油の量は、それ程多くない。
上述したように、第2導出通路(92)へ流入した冷凍機油は、第2ロータリ機構部(80)の潤滑に利用される。具体的に、第2導出通路(92)の冷凍機油は、第2偏心部(43)と第2ピストン(85)の隙間へ流入する。また、冷凍機油は、第2ピストン(85)の上端面(85a)と中間プレート(63)の隙間と、凹溝(50)とに入り込む。また、冷凍機油は、凹部(52)と、第2ピストン(85)の下端面(85b)とリアヘッド(62)の隙間とに入り込む。
ここで、出力軸(40)が回転するにつれて、第2シリンダ(81)内の第2高圧室(83)の圧力が低下してゆき、それと同時に第2高圧室(83)の容積が拡大してゆく(図4を参照)。また、第2低圧室(84)の圧力は、膨脹後の低圧冷媒の圧力と等しい。このため、シールリング(45)は、内周面に作用する圧力が外周面に作用する圧力よりも高くなる。その結果、シールリング(45)は、その直径が拡大するように変形し、その外周面が凹溝(50)の外周側の壁面に密着する(図10を参照)。また、シールリング(45)の下面に冷凍機油の圧力が作用するため、シールリング(45)の上面が中間プレート(63)の下面に密着する(図10を参照)。従って、第2ピストン(85)と中間プレート(63)の隙間がシールリング(45)によってシールされ、この隙間を通って第2高圧室(83)及び第2低圧室(84)へ流れ込む冷凍機油の量が抑えられる。
上述したように、第2ロータリ機構部(80)へ供給された冷凍機油は、第2ピストン(85)の上端面(85a)と中間プレート(63)の隙間と、凹溝(50)とに入り込む。このため、第2ピストン(85)は、凹溝(50)の底面(51)と、上端面(85a)のうち凹溝(50)よりも内側の部分とに、冷凍機油の圧力が作用する。凹溝(50)の底面(51)と、上端面(85a)のうち凹溝(50)よりも内側の部分とに冷凍機油の圧力が作用すると、第2ピストン(85)がリアヘッド(62)側へ押される。
また、第2ロータリ機構部(80)へ供給された冷凍機油は、凹部(52)に入り込む。このため、第2ピストン(85)は、凹部(52)の底面(53)に冷凍機油の圧力が作用する。凹部(52)の底面(53)に冷凍機油の圧力が作用すると、第2ピストン(85)が中間プレート(63)側へ押される。つまり、第2ピストン(85)には、第2ピストン(85)をリアヘッド(62)側へ押す力を相殺する方向の力が作用する。
一方、凹部(52)の外径φDoは、凹溝(50)の外径φDo'よりも小さい(図7を参照)。つまり、凹溝(50)の底面(51)の面積A1と、上端面(85a)のうち凹溝(50)よりも内側の部分の面積A2の和A3(=A1+A2)は、凹部(52)の底面(53)の面積A4よりも大きくなる(A4<A3)。このため、第2ピストン(85)をリアヘッド(62)側へ押す力が、第2ピストン(85)を中間プレート(63)側へ押す力よりも大きくなり、第2ピストン(85)がリアヘッド(62)に押し付けられる。その結果、第2ピストン(85)の下端面(85b)とリアヘッド(62)の隙間が狭くなり、この隙間を通って第2高圧室(83)及び第2低圧室(84)へ流れ込む冷凍機油の量が抑えられる。
また、第2ピストン(85)をリアヘッド(62)側へ押す力が第2ピストン(85)を中間プレート(63)側へ押す力によって相殺される。このため、第2ピストン(85)の下端面(85b)に作用する面圧はそれ程高くならず、従って、第2ピストン(85)に作用する摩擦力が低く抑えられる。
ここで、中間プレート(63)は、上面に第1高圧室(73)の内圧が作用し、下面に第1低圧室(74)の内圧が作用する。上述したように、第1高圧室(73)には膨張前の高圧冷媒が存在し、第1低圧室(74)には膨脹後の低圧冷媒が存在する。このため、膨張機(30)の作動中は、中間プレート(63)が第2シリンダ(81)側へ膨らむように弾性変形する。
一方、上述したように、第2ピストン(85)は、リアヘッド(62)に軽く押し付けられている。このため、第2ピストン(85)と中間プレート(63)のクリアランスが確保され、膨張機(30)の作動中に中間プレート(63)が弾性変形しても、第2ピストン(85)が中間プレート(63)と接触することはない。また、第2ピストン(85)と中間プレート(63)の隙間は、シールリング(45)によってシールされている。このため、第2ピストン(85)と中間プレート(63)のクリアランスを充分に確保しつつ、第2ピストン(85)と中間プレート(63)の隙間を通って第2高圧室(83)及び第2低圧室(84)へ流れ込む冷凍機油の量が抑えられる。
−実施形態1の効果−
本実施形態の膨張機(30)では、第1ロータリ機構部(70)よりも押しのけ容積が大きい第2ロータリ機構部(80)(即ち、何の対策も講じなければ流体室(82)へ流入する冷凍機油の量が多くなるロータリ機構部(80))だけに、シールリング(45)が設けられる。このため、第2ロータリ機構部(80)では、中間プレート(63)又はリアヘッド(62)と第2ピストン(85)の隙間を通過する冷凍機油の量が減少する一方、第1ロータリ機構部(70)では、フロントヘッド(61)又は中間プレート(63)とシールリング(45)の摩擦に起因する損失が生じない。従って、本実施形態によれば、二つのロータリ機構部(70.80)が直列接続されたロータリ式膨張機(30)の運転効率の低下を抑えつつ、各ロータリ機構部(70.80)の流体室(72,82)へ流入する冷凍機油の量を削減できる。
上述したように、膨張機(30)の作動中には、中間プレート(63)が第2シリンダ(81)側へ膨らむように弾性変形する。そして、第2ピストン(85)と中間プレート(63)の接触を防ぐには両者のクリアランスを広くする必要があるため、何の対策も講じなければ、第2ピストン(85)と中間プレート(63)の隙間を通って第2流体室(82)へ流入する冷凍機油の量が過剰となるおそれがある。一方、第2ピストン(85)はリアヘッド(62)に軽く押し付けられているため、第2ピストン(85)とリアヘッド(62)のクリアランスは非常に狭く保たれる。このため、第2ピストン(85)はリアヘッド(62)の隙間を通過する冷凍機油の量は、シールリング(45)が無くても低く抑えられる。
これに対し、本実施形態の第2ロータリ機構部(80)では、膨張機(30)の作動中に弾性変形する中間プレート(63)側だけにシールリング(45)が設けられる。従って、本実施形態によれば、第2ピストン(85)と中間プレート(63)の隙間を通過する冷凍機油の量をシールリング(45)によって抑えつつ、シールリング(45)を第2ピストン(85)の片側だけに設けることによって、シールリング(45)の設置に起因する損失の増加を最小限に抑えることができる。
−実施形態1の変形例1−
本実施形態の第2ロータリ機構部(80)では、第2ピストン(85)の下端面(85b)に、シールリング(45)を嵌め込むための凹溝(50)が形成されていてもよい。本変形例の凹溝(50)は、第2ピストン(85)の下端面(85b)(即ち、リアヘッド(62)と対向する端面)の全周に亘って形成された環状の溝であって、第2ピストン(85)の下端面(85b)に開口している。この凹溝(50)に嵌め込まれたシールリング(45)は、リアヘッド(62)と摺接し、第2ピストン(85)の下端面(85b)とリアヘッド(62)の隙間をシールする。
また、本変形例の第2ピストン(85)には、上端面(85a)に凹部(52)が形成されていてもよい。本変形例の凹部(52)は、第2ピストン(85)の上端面(85a)(即ち、中間プレート(63)と対向する端面)の内周縁部を全周に亘って掘り下げることによって形成された座ぐり状の窪みである。
−実施形態1の変形例2−
本実施形態の第2ロータリ機構部(80)では、第2ピストン(85)ではなく中間プレート(63)にシールリング(45)が取り付けられていてもよい。
図11に示すように、本変形例の第2ロータリ機構部(80)では、中間プレート(63)の下面のうち第2ピストン(85)の上端面(85a)と摺接する部分に、凹溝(54)が形成される。この凹溝(54)は、中間プレート(63)の下面に開口する環状の溝である。なお、本実施形態においても、凹部(52)の外径は、凹溝(54)の外径よりも小さい。
シールリング(45)は、ウェーブワッシャ(48)と共に、中間プレート(63)の凹溝(54)に嵌め込まれている。このシールリング(45)は、外周面が凹溝(54)の外周側の壁面と密着し、下面が第2ピストン(85)の上端面(85a)と密着することによって、第2ピストン(85)と中間プレート(63)の隙間をシールする。なお、図11では、ウェーブワッシャ(48)の図示を省略している。
−実施形態1の変形例3−
本実施形態の第2ロータリ機構部(80)では、第2ピストン(85)ではなくリアヘッド(62)にシールリング(45)が取り付けられていてもよい。
本変形例の第2ロータリ機構部(80)では、リアヘッド(62)の下面のうち第2ピストン(85)の下端面(85b)と摺接する部分に、凹溝(54)が形成される。この凹溝(54)は、リアヘッド(62)の上面に開口する環状の溝である。なお、本変形例の第2ピストン(85)は、下端面(85b)に凹部(52)が形成されていない。つまり、第2ピストン(85)の下端面(85b)は、その全体が平坦面となっている。
また、本変形例の第2ピストン(85)には、上端面(85a)に凹部(52)が形成されていてもよい。本変形例の凹部(52)は、第2ピストン(85)の上端面(85a)(即ち、中間プレート(63)と対向する端面)の内周縁部を全周に亘って掘り下げることによって形成された座ぐり状の窪みである。
《発明の実施形態2》
本発明の実施形態2について説明する。本実施形態は、実施形態1の膨張機(30)において、膨張機構(31)の構成を変更したものである。ここでは、本実施形態の膨張機構(31)について、実施形態1の膨張機構(31)と異なる点を説明する。
図12に示すように、本実施形態の膨張機構(31)には、二つのシールリング(45)が設けられている。具体的に、本実施形態の第2ピストン(85)は、凹部(52)が省略されると共に、上端面(85a)と下端面(85b)のそれぞれに凹溝(50)が一つずつ形成されている。各凹溝(50)には、シールリング(45)とウェーブワッシャ(48)とが、一つずつ嵌め込まれている。なお、図12では、ウェーブワッシャ(48)の図示を省略している。
第2ピストン(85)の上端面(85a)の凹溝(50)に嵌め込まれたシールリング(45)は、外周面がこの凹溝(50)の外周側の壁面と密着し、上面が中間プレート(63)と密着することによって、第2ピストン(85)と中間プレート(63)の隙間をシールする。一方、第2ピストン(85)の下端面(85b)の凹溝(50)に嵌め込まれたシールリング(45)は、外周面がこの凹溝(50)の外周側の壁面と密着し、上面が中間プレート(63)と密着することによって、第2ピストン(85)とリアヘッド(62)の隙間をシールする。
−実施形態2の変形例1−
本実施形態の第2ロータリ機構部(80)では、第2ピストン(85)ではなく中間プレート(63)及びリアヘッド(62)にシールリング(45)が取り付けられていてもよい。ここでは、本変形例の第2ロータリ機構部(80)について、図12に示す第2ロータリ機構部(80)と異なる点を説明する。
図13に示すように、中間プレート(63)とリアヘッド(62)には、凹溝(54)が一つずつ形成されている。中間プレート(63)では、下面のうち第2ピストン(85)の上端面(85a)と摺接する部分に凹溝(54)が形成される。中間プレート(63)の凹溝(54)は、中間プレート(63)の下面に開口する環状の溝である。リアヘッド(62)では、上面のうち第2ピストン(85)の下端面(85b)と摺接する部分に凹溝(54)が形成される。リアヘッド(62)の凹溝(54)は、リアヘッド(62)の上面に開口する環状の溝である。中間プレート(63)及びリアヘッド(62)の凹溝(54)には、シールリング(45)とウェーブワッシャ(48)とが、一つずつ嵌め込まれている。なお、図13では、ウェーブワッシャ(48)の図示を省略している。
中間プレート(63)の凹溝(54)に嵌め込まれたシールリング(45)は、外周面がこの凹溝(54)の外周側の壁面と密着し、下面が第2ピストン(85)の上端面(85a)と密着することによって、第2ピストン(85)と中間プレート(63)の隙間をシールする。一方、リアヘッド(62)の凹溝(54)に嵌め込まれたシールリング(45)は、外周面がこの凹溝(54)の外周側の壁面と密着し、上面が第2ピストン(85)の下端面(85b)と密着することによって、第2ピストン(85)とリアヘッド(62)の隙間をシールする。
−実施形態2の変形例2−
本実施形態の第2ロータリ機構部(80)では、第2ピストン(85)とリアヘッド(62)のそれぞれにシールリング(45)が取り付けられていてもよい。ここでは、本変形例の第2ロータリ機構部(80)について、図12に示す第2ロータリ機構部(80)と異なる点を説明する。
図14に示すように、本変形例の第2ピストン(85)は、上端面(85a)だけに凹溝(50)が形成され、下端面(85b)に凹溝(50)は形成されない。図12に示す第2ロータリ機構部(80)と同様に、第2ピストン(85)の上端面(85a)の凹溝(50)にはシールリング(45)とウェーブワッシャ(48)が嵌め込まれ、このシールリング(45)によって第2ピストン(85)と中間プレート(63)の隙間がシールされる。なお、図14では、ウェーブワッシャ(48)の図示を省略している。
リアヘッド(62)では、上面のうち第2ピストン(85)の下端面(85b)と摺接する部分に凹溝(54)が形成される。リアヘッド(62)の凹溝(54)は、リアヘッド(62)の上面に開口する環状の溝である。リアヘッド(62)の凹溝(54)には、シールリング(45)とウェーブワッシャ(48)とが、一つずつ嵌め込まれている。リアヘッド(62)の凹溝(54)に嵌め込まれたシールリング(45)は、外周面が凹溝(54)の外周側の壁面と密着し、上面が第2ピストン(85)の下端面(85b)と密着することによって、第2ピストン(85)とリアヘッド(62)の隙間をシールする。なお、図14では、ウェーブワッシャ(48)の図示を省略している。
《その他の実施形態》
−第1変形例−
上記各実施形態とそれらの変形例では、シールリング(45)と金属リング(47)とがシール部材として第2ロータリ機構部(80)に設けられていてもよい。ここでは、本変形例を実施形態1の第2ロータリ機構部(80)に適用したものについて、図15を参照しながら説明する。
金属リング(47)は、無端の環状に形成された金属製の部材である。金属リング(47)は、断面が矩形である。また、金属リング(47)は、外径が凹溝(50)の外径よりも小さく、内径が凹溝(50)の内径よりも大きい。第2ピストン(85)の凹溝(50)には、ウェーブワッシャ(48)とシールリング(45)と金属リング(47)とが、下から上に向かって順に重なり合った状態で嵌め込まれている。
膨張機(30)の作動中には、シールリング(45)の直径が拡大し、シールリング(45)の外周面が凹溝(50)の外周側の壁面と密着する。また、膨張機(30)の作動中には、シールリング(45)が冷凍機油の圧力を受けて上方へ押し上げられる。このため、シールリング(45)の上面が金属リング(47)の下面と密着し、金属リング(47)の上面が中間プレート(63)の下面と密着する。その結果、第2ピストン(85)と中間プレート(63)の隙間がシールリング(45)及び金属リング(47)によってシールされる。
−第2変形例−
上記各実施形態とそれらの変形例において、各ロータリ機構部(70,80)は、ローリングピストン型のロータリ式流体機械で構成されていてもよい。ここでは、本変形例を実施形態1の膨張機構(31)に適用したものについて、図16を参照しながら説明する。
図16に示すように、本変形例の各ロータリ機構部(70,80)では、ブレード(76,86)がピストン(75,85)と別体に形成されている。つまり、本変形例の各ピストン(75,85)は、単純な円環状あるいは円筒状に形成されている。また、本変形例の各シリンダ(71,81)には、ブレード溝(79,89)が1つずつ形成されている。
各ロータリ機構部(70,80)において、ブレード(76,86)は、シリンダ(71,81)のブレード溝(79,89)に、進退自在な状態で設けられている。また、ブレード(76,86)は、図外のバネによって付勢され、その先端(図16における下端)がピストン(75,85)の外周面に押し付けられている。図16に順次示すように、シリンダ(71,81)内でピストン(75,85)が移動しても、このブレード(76,86)は、ブレード溝(79,89)に沿って同図の上下に移動し、その先端がピストン(75,85)と接した状態に保たれる。そして、ブレード(76,86)の先端をピストン(75,85)の周側面に押し付けることで、各流体室(72,82)がそれぞれ高圧側の高圧室(73,83)と低圧側の低圧室(74,84)に仕切られる。