ところで、従来の冷凍装置では、膨張機構に供給された高温・高圧の潤滑油は、フロントヘッド及びリアヘッドのそれぞれの軸受部に供給された後、膨張機のケーシング内に漏れ出ていた。上記膨張機のケーシングでは、その内圧が膨張機構に吸入される冷媒圧力よりも低い圧力雰囲気に構成されているため、ケーシングの内部空間は潤滑油よりも低温雰囲気に構成されている。このため、膨張機のケーシング内に漏れ出た潤滑油は冷やされることになる。一方、この潤滑油は圧縮機へ吸入されて再び高温・高圧の潤滑油となる。つまり、膨張機のケーシングにおいて、潤滑油が一旦冷却されてしまうため、潤滑油の熱損失が発生するという問題があった。このような問題に対しては、図7(A)及び(B)に示すように、いわゆる粘性ポンプ作用を利用して潤滑油を斜め溝(e,f)に沿って膨張機構側へ戻す対策が考えられる。具体的には、フロントヘッド(a)の軸受部(c)及びリアヘッド(b)の軸受部(d)には、それぞれ斜め溝(e,f)が形成されている。そして、回転軸(g)を回転させると、該回転軸(g)と軸受部(c,d)との間に形成される油膜に遠心力が加わる一方、潤滑油は粘性を有しているため、いわゆる粘性ポンプ作用によって潤滑油は斜め溝(e,f)に沿って軸受(c,d)の一端側方向(図7に矢印で示す方向)へ移動する。これにより、膨張機構からケーシング内に潤滑油が漏れ出るのを防止し、この結果、潤滑油の熱損失の発生を防止していた。
しかしながら、特許文献1に示すような冷凍装置では、膨張機構に供給される冷凍機油は高圧状態であるため、潤滑油の圧力と膨張機のケーシングの内圧との差圧が大きくなる。このため、上述した潤滑油が膨張機構側へ戻る力を上記差圧が超えてしまうため、潤滑油が膨張機のケーシング内に流れ出てしまう。この結果、潤滑油の熱損失が発生するという問題があった。
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、内部が低圧空間に形成された膨張機の膨張機構へ供給した潤滑油の熱損失の発生を防止することを目的とする。
第1の発明は、高圧冷媒を膨張させることで動力を発生させる膨張機構部(31)と、上記膨張機構部(31)を収容すると共に、内部空間が上記膨張機構部(31)に吸入される冷媒よりも低い圧力雰囲気に構成されたケーシング(34)と、上記ケーシング(34)の内部圧力よりも高圧の冷凍機油を上記膨張機構部(31)に供給する油供給部(37)を備えた膨張機であって、上記膨張機構部(31)は、該膨張機構部(31)を回転駆動させる回転軸(40)と、該回転軸(40)を支持する軸受部(100,110)とを備え、上記軸受部(100,110)の内側面には、上記回転軸(40)の軸心方向に延び且つ軸心方向に対して傾斜し、一端が上記油供給部(37)に連通する一方、他端が上記ケーシング(34)の内部空間に連通して上記回転軸(40)の回転によって油供給部(37)から供給された冷凍機油を該油供給部(37)側に戻す油溝(102,112)が形成され、上記油溝(102,112)は、上記軸受部(100,110)の一端から該軸受部(100,110)の途中まで延びて該軸受部(100,110)の一端において上記油供給部(37)に連通する第1の油溝(102a,112a)と、上記軸受部(100,110)の途中から該軸受部(100,110)の他端まで延びて該軸受部(100,110)の他端において上記ケーシング(34)の内部空間に連通する上記第1の油溝(102a,112a)とは非連通の第2の油溝(102b,112b)とに分割されて構成され、上記第1の油溝(102a,112a)は、上記油供給部(37)に連通する一端が、他端よりも上記回転軸(40)の回転方向における前側に位置するように上記回転軸(40)の軸心方向に対して傾斜し、上記第2の油溝(102b,112b)は、一端が、上記ケーシング(34)の内部空間に連通する他端よりも上記回転軸(40)の回転方向における前側に位置するように上記回転軸(40)の軸心方向に対して傾斜している。
上記第1の発明では、まず、油供給部(37)が膨張機構部(31)にケーシング(34)の内圧よりも高圧の冷凍機油を供給する。膨張機構部(31)では、冷凍機油を潤滑油として利用する。次に、冷凍機油は膨張機構部(31)の軸受部(100,110)の内側面に供給される。冷凍機油は、回転軸(40)と、軸受部(100,110)との間で油膜を形成する。回転軸(40)が回転すると、油膜である冷凍機油の一部は、回転の遠心力と潤滑油の粘性とにより回転軸(40)の回転方向に引っ張られて軸受部(100,110)の第1の油溝(102a,112a)に流入し、第1の油溝(102a,112a)に沿って油供給部(37)側へ移動する。
一方、冷凍機油の圧力とケーシング(34)の内圧との差圧が大きくなると、第1の油溝(102a,112a)内の冷凍機油は、第1の油溝(102a,112a)に沿って油供給部(37)とは反対側(軸受部(100,110)の他端側)へ移動する。その後、冷凍機油は第1の油溝(102a,112a)の軸受部(100,110)の途中で途切れている位置まで移動し、それ以上軸受部(100,110)の他端側へは移動しない。
第2の油溝(102b,112b)では、回転軸(40)と、軸受部(100,110)との間に形成された油膜を形成する冷凍機油の一部が、回転軸(40)の回転に伴って回転方向に引っ張られて軸受部(100,110)の第2の油溝(102b,112b)に流入する。その後、冷凍機油は、第2の油溝(102b,112b)に沿って油供給部(37)側へ移動する。
第2の発明は、上記第1の発明において、上記油溝(102,112)は、上記軸受部(100,110)の途中で、上記第1の油溝(102a,112a)と上記第2の油溝(102b,112b)とが上記回転軸(40)の回転方向において隣合うように形成されている。
上記第2の発明では、膨張機構(31)の軸受部(100,110)の内側面へ供給された冷凍機油の一部は、回転軸(40)の回転に伴って回転方向に引っ張られて軸受部(100,110)の第2の油溝(102b,112b)に流入する。その後、冷凍機油は、第2の油溝(102b,112b)に沿って油供給部(37)側(軸受部(100,110)の一端側)へ移動して、第2の油溝(102b,112b)における軸受部(100,110)の一端側の端部から漏れ出す。そして、上記端部から漏れた冷凍機油は、その粘性と回転軸(40)の回転の遠心力とによって軸受部(100,110)の内側面を上記回転方向に沿って引っ張られ、第1の油溝(102a,112a)に流入する。流入した冷凍機油は、第1の油溝(102a,112a)に沿って油供給部(37)側(軸受部(100,110)の一端側)へ移動する。
第3の発明は、高圧冷媒を膨張させることで動力を発生させる膨張機構部(31)と、上記膨張機構部(31)を収容すると共に、内部空間が上記膨張機構部(31)に吸入される冷媒よりも低い圧力雰囲気に構成されたケーシング(34)と、上記ケーシング(34)の内部圧力よりも高圧の冷凍機油を上記膨張機構部(31)に供給する油供給部(37)を備えた膨張機であって、上記膨張機構部(31)は、該膨張機構部(31)を回転駆動させる回転軸(40)と、該回転軸(40)を支持する軸受部(100,110)とを備え、上記回転軸(40)の外面のうち軸受部(100,110)の内側面に対応する部分には、上記回転軸(40)の軸心方向に延び且つ軸心方向に対して傾斜し、一端が上記油供給部(37)に連通する一方、他端が上記ケーシング(34)の内部空間に連通して上記回転軸(40)の回転によって油供給部(37)から供給された冷凍機油を該油供給部(37)側に戻す油溝(115,116)が形成され、上記油溝(115,116)は、上記回転軸(40)の上記軸受部(100,110)の一端に対応する位置から該軸受部(100,110)の途中に対応する位置まで延びて該軸受部(100,110)の一端に対応する位置において上記油供給部(37)に連通する第1の油溝(115a,116a)と、上記回転軸(40)の上記軸受部(100,110)の途中に対応する位置から該軸受部(100,110)の他端に対応する位置まで延びて該軸受部(100,110)の他端に対応する位置において上記ケーシング(34)の内部空間に連通する上記第1の油溝(115a,116a)とは非連通の第2の油溝(115b,116b)とに分割されて構成され、上記第1の油溝(115a,116a)は、上記油供給部(37)に連通する一端が、他端よりも上記回転軸(40)の回転方向における後側に位置するように上記回転軸(40)の軸心方向に対して傾斜し、上記第2の油溝(115b,116b)は、一端が、上記ケーシング(34)の内部空間に連通する他端よりも上記回転軸(40)の回転方向における後側に位置するように上記回転軸(40)の軸心方向に対して傾斜している。
上記第3の発明では、まず、油供給部(37)が膨張機構部(31)にケーシング(34)の内圧よりも高圧の冷凍機油を供給する。膨張機構部(31)では、冷凍機油を潤滑油として利用する。次に、冷凍機油は膨張機構部(31)の軸受部(100,110)の内側面に供給される。冷凍機油は、回転軸(40)と、軸受部(100,110)との間で油膜を形成する。回転軸(40)が回転すると、回転軸(40)上の油膜である冷凍機油の一部は、回転の遠心力と潤滑油の粘性とにより回転軸(40)の逆回転方向に引っ張られて回転軸(40)の第1の油溝(115a,116a)に流入し、第1の油溝(115a,116a)に沿って油供給部(37)側へ移動する。
一方、冷凍機油の圧力とケーシング(34)の内圧との差圧が大きくなると、第1の油溝(115a,116a)内の冷凍機油は、第1の油溝(115a,116a)に沿って油供給部(37)とは反対側(軸受部(100,110)の他端側方向)へ移動する。その後、冷凍機油は第1の油溝(115a,116a)の端部まで移動し、それ以上軸受部(100,110)の他端側方向へは移動しない。
第2の油溝(115b,116b)では、回転軸(40)上に形成された油膜を形成する冷凍機油の一部が、回転軸(40)の逆回転方向に引っ張られて回転軸(40)の第2の油溝(115b,116b)に流入する。その後、冷凍機油は、第2の油溝(115b,116b)に沿って油供給部(37)側へ移動する。
第4の発明は、上記第3の発明において、上記油溝(115,116)は、上記回転軸(40)の上記軸受部(100,110)の途中に対応する位置で、上記第1の油溝(115a,116a)と上記第2の油溝(115b,116b)とが上記回転軸(40)の回転方向において隣合うように形成されている。
上記第4の発明では、膨張機構(31)の軸受部(100,110)の内側面と対応する回転軸(40)へ供給された冷凍機油の一部は、回転軸(40)の逆回転方向に引っ張られて第2の油溝(115b,116b)に流入する。その後、冷凍機油は、第2の油溝(115b,116b)に沿って油供給部(37)側(軸受部(100,110)の一端側方向)へ移動して、第2の油溝(115b,116b)における軸受部(100,110)の一端側方向の端部から漏れ出す。そして、上記端部から漏れた冷凍機油は、その粘性と回転軸(40)の回転の遠心力とによって回転軸(40)の外面を上記逆回転方向に沿って引っ張られ、第1の油溝(115a,116a)に流入する。流入した冷凍機油は、第1の油溝(115a,116a)に沿って油供給部(37)側(軸受部(100,110)の一端側方向)へ移動する。
上記第1及び第3の発明によれば、油溝(102,112,115,116)を第1の油溝(102a,112a,115a,116a)と第2の油溝(102b,112b,115b,116b)とに分割したため、第1の油溝(102a,112a,115a,116a)に沿って流れる冷凍機油が第2の油溝(102b,112b,115b,116b)に流入するのを防止することができる。これにより、油溝(102,112,115,116)に沿って流れる高圧の冷凍機油が、差圧によって低圧のケーシング(34)側へ漏れ出るのを確実に防止することができる。この結果、膨張機構部(31)へ供給した冷凍機油の熱損失の発生を防止することができる。
上記第2及び第4の発明によれば、第1の油溝(102a,112a,115a,116a)と第2の油溝(102b,112b,115b,116b)を回転軸(40)の回転方向において互いにラップさせるようにしたため、第2の油溝(102b,112b,115b,116b)の軸受部(100,110)の一端側の端部から漏れる冷凍機油を、第1の油溝(102a,112a,115a,116a)に流入させることができる。これにより、第2の油溝(102b,112b,115b,116b)内の冷凍機油を、第1の油溝(102a,112a,115a,116a)を介して油供給部(37)側に戻すことができる。この結果、膨張機構部(31)へ供給した冷凍機油の熱損失の発生を防止することができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
本発明の実施形態について説明する。本実施形態は、本発明に係る膨張機を備えた空調機である。
〈空調機の構成〉
図1に示すように、本実施形態の空調機(10)は、冷媒回路(11)を備えている。この空調機(10)は、冷媒回路(11)で冷媒を循環させて冷凍サイクルを行う冷凍装置である。冷媒回路(11)には、圧縮機(20)と、膨張機(30)と、室外熱交換器(14)と、室内熱交換器(15)と、第1四路切換弁(12)と、第2四路切換弁(13)とが接続されている。冷媒回路(11)には、冷媒として二酸化炭素(CO2)が充填されている。また、冷媒回路(11)には、給油用配管(17)が設けられている。
上記冷媒回路(11)の構成について説明する。圧縮機(20)は、その吐出管(26)が第1四路切換弁(12)の第1のポートに接続され、その吸入管(25)が第1四路切換弁(12)の第2のポートに接続されている。膨張機(30)は、その流出管(36)が第2四路切換弁(13)の第1のポートに接続され、その流入管(35)が第2四路切換弁(13)の第2のポートに接続されている。室外熱交換器(14)は、その一端が第1四路切換弁(12)の第3のポートに接続され、その他端が第2四路切換弁(13)の第4のポートに接続されている。室内熱交換器(15)は、その一端が第2四路切換弁(13)の第3のポートに接続され、その他端が第1四路切換弁(12)の第4のポートに接続されている。この冷媒回路(11)では、圧縮機(20)の吸入管(25)と第1四路切換弁(12)の第2ポートとを繋ぐ配管が吸入側配管(16)を構成している。
上記室外熱交換器(14)は、冷媒を室外空気と熱交換させるための空気熱交換器である。室内熱交換器は、冷媒を室内空気と熱交換させるための空気熱交換器である。第1四路切換弁(12)と第2四路切換弁(13)は、それぞれ、第1のポートと第3のポートが連通し且つ第2のポートと第4のポートが連通する第1状態(図1に実線で示す状態)と、第1のポートと第4のポートが連通し且つ第2のポートと第3のポートが連通する第2状態(図1に破線で示す状態)とに切り換わるように構成されている。
上記圧縮機(20)は、いわゆる高圧ドームタイプの全密閉型圧縮機である。この圧縮機(20)は、縦長の円筒状に形成された圧縮機ケーシング(24)を備えている。圧縮機ケーシング(24)の内部には、圧縮機構(21)で電動機(23)と駆動軸(22)とが収容されている。圧縮機構(21)は、いわゆるロータリ式の容積型流体機械を構成している。圧縮機ケーシング(24)内では、圧縮機構(21)の情報に電動機(23)が配置されている。駆動軸(22)は、上下方向へ延びる姿勢で配置され、圧縮機構(21)と電動機(23)を連結している。
上記圧縮機ケーシング(24)には、吸入管(25)と吐出管(26)が設けられている。吸入管(25)は、圧縮機ケーシング(24)の胴部の下端付近を貫通しており、その終端が圧縮機構(21)へ直に接続されている。吐出管(26)は、圧縮機ケーシング(24)の頂部を貫通しており、その始端が圧縮機ケーシング(24)内における電動機(23)の上側の空間に開口している。圧縮機構(21)は、吸入管(25)から吸い込んだ冷媒を圧縮して圧縮機ケーシング(24)内へ吐出する。
上記圧縮機ケーシング(24)の底部には、冷凍機油である潤滑油が貯留されている。本実施形態では、例えばポリアルキレングリコール(PAG)が潤滑油として用いられる。駆動軸(22)の内部には、図示しないが、その軸方向へ延びる給油通路が形成されている。この給油通路は、駆動軸(22)の下端に開口している。駆動軸(22)の下端は、油溜まり(27)に浸かった状態となっている。圧縮機ケーシング(24)内の潤滑油は、駆動軸(22)の給油通路を通じて圧縮機構(21)へ供給される。
上記膨張機(30)は、縦長の円筒形に形成された膨張機ケーシング(34)を備えている。膨張機ケーシング(34)の内部には、膨張機構(31)と発電機(33)とが収容されている。膨張機構(31)は、いわゆるロータリ式の容積型流体機械を構成している。この膨張機構(31)は本発明に係る膨張機構部を構成している。膨張機構(31)の詳細は後述する。膨張機ケーシング(34)内では、膨張機構(31)の下方に発電機(33)が配置されている。膨張機構(31)の出力軸(40)は、上下方向へ延びる姿勢となっており、その下部に発電機(33)が連結されている。この出力軸(40)は本発明に係る回転軸を構成している。また、膨張機ケーシング(34)の底部には、膨張機構(31)から漏れ出た潤滑油が貯留されている。
上記膨張機ケーシング(34)には、流入管(35)と流出管(36)と、油流出管(38)が設けられている。流入管(35)と流出管(36)は、何れも膨張機ケーシング(34)の胴部の上端付近を貫通している。流入管(35)は、その終端が膨張機構(31)へ直に接続されている。流出管(36)を通って流入した冷媒を膨張させ、膨張後の冷媒を流出管(36)へ送り出す。つまり、膨張機(30)を通過する冷媒は、膨張機ケーシング(34)の内部空間へは流れ込まずに膨張機構(31)だけを通過する。また、膨張機ケーシング(34)には、給油管(37)が設けられている。この給油管(37)は、膨張機ケーシング(34)の胴部の上端付近を貫通し、その終端が膨張機構(31)のへ直に接続され、本発明に係る油供給部を構成している。また、膨張機ケーシング(34)には、油流出管(38)が設けられている。油流出管(38)は、その一端が膨張機ケーシング(34)の底部付近を貫通して油溜まり(39)に浸かった状態となっており、他端が絞り弁(38a)を介して圧縮機(20)の吸
入管(25)に接続されている。この絞り弁(38a)の開度を調節することで、膨張機ケーシング(34)の内部圧力を、膨張機(30)の冷媒の吐出圧力から膨張機(30)の冷媒の吸入圧力までの範囲で制御することができる。
上記給油用配管(17)は、その始端が圧縮機(20)に接続され、その終端が膨張機(30)の給油管(37)に接続されている。具体的に、給油用配管(17)の始端部は、圧縮機ケーシング(24)の内部空間に開口している、この給油用配管(17)の始端部は、圧縮機ケーシング(24)の底に溜まった潤滑油に浸かった状態となっており、駆動軸(22)の下端を概ね同じ長さに開口している。一方、給油用配管(17)の終端部は、給油管(37)を介して膨張機ケーシング(34)内の膨張機構(31)に直に接続されている。圧縮機ケーシング(24)の底に溜まった潤滑油は、給油用配管(17)を通って膨張機構(31)へ供給される。
〈膨張機構の構成〉
膨張機(30)の構成について説明する。ここでは、膨張機構(31)の構成について図2を参照して説明する。
図2に示すように、膨張機構(31)の出力軸(40)では、その上端部に2つの偏心部(42,43)が形成されている。2つの偏心部(42,43)は、出力軸(40)の主軸部(41)よりも大径に形成されており、下側のものが第1偏心部(42)を、上側のものが第2偏心部(43)をそれぞれ構成している。第1偏心部(42)と第2偏心部(43)とは、何れも同じ方向に偏心している。第2偏心部(43)の外径は、第1偏心部(42)の外径よりも大きくなっている。主軸部(41)の軸心に対する偏心量は、第2偏心部(43)の方が第1偏心部(42)よりも大きくなっている。
上記出力軸(40)では、第1偏心部(42)よりも下側の部分と、第2偏心部(43)よりも上側の部分とのそれぞれに、凹溝(45,46)が1つずつ形成されている。第1凹溝(45)は、主軸部(41)のうち第1偏心部(42)よりも下側の部分の上端部に、その全周に亘って形成されている。第2凹溝(46)は、主軸部(41)のうち第2偏心部(43)よりも上側の部分の下端部に、その全周に亘って形成されている。このように、出力軸(40)では、第1偏心部(42)の下端に隣接する部分が全周に亘って括れた第1凹溝(45)となり、第2偏心部(43)の上端に隣接する部分が全周に亘って括れた第2凹溝(46)となっている。
上記出力軸(40)には、第2油通路である軸内油通路(90)が形成されている。軸内油通路(90)は、潤滑油を流すための通路であって、主通路部(94)と、第1給油通路部(91)と、第2給油通路部(92)と、第1連通路(96a)と、第2連通路(97a)とを備えている。
上記主通路部(94)は、出力軸(40)のうち膨張機構(31)の本体部(32)内に位置する部分に形成されており、主軸部(41)の軸心に沿って延びている。
上記第1給油通路部(91)は、出力軸(40)の第1偏心部(42)に形成され、第1偏心部(42)の径方向に延びている。第1給油通路部(91)は、その基端が主通路部(94)に連通し、その先端が第1偏心部(42)の外周面に開口している。第2給油通路部(92)は、出力軸(40)の第2偏心部(43)に形成され、第2偏心部(43)の径方向へ延びている。第2給油通路部(92)は、その基端が主通路部(94)に連通し、その先端が第2偏心部(43)の外周面に開口している。
上記第1連通路(96a)は、主軸部(41)の下側に形成され、該主軸部(41)の径方向へ延びている。第1連通路(96a)は、その基端が第1凹溝(45)へ連通し、その先端が主通路部(94)の内部に連通している。第2連通路(97a)は、主軸部(41)の上側に形成され、該主軸部(41)の径方向へ延びている。第2連通路(97a)は、その基端が第2凹溝(46)へ連通し、その先端が主通路部(94)の内部に連通している。
上記膨張機構(31)は、いわゆる揺動ピストン型のロータリ式流体機械で構成されている。この膨張機構(31)には、対になったシリンダ(71,81)及びピストン(75,85)が二組設けられている。また、膨張機構(31)には、フロントヘッド(61)と、中間プレート(63)と、リアヘッド(62)とが設けられている。
上記膨張機構(31)では、下から上に向かって順に、フロントヘッド(61)、第1シリンダ(71)、中間プレート(63)、第2シリンダ(81)、リアヘッド(62)が積層された状態となっている。この状態において、第1シリンダ(71)は、その下側端面がフロントヘッド(61)により閉塞され、その上側端面が中間プレート(63)により閉塞されている。一方、第2シリンダ(81)は、その下側端面が中間プレート(63)により閉塞され、その上側端面がリアヘッド(62)により閉塞されている。つまり、この膨張機構(31)では、フロントヘッド(61)、中間プレート(63)、及びリアヘッド(62)が閉塞部材を構成している。また、この膨張機構(31)では、第2シリンダ(81)の内径が、第1シリンダ(71)の内径よりも大きくなっている。
図3及び図4に示すように、上記出力軸(40)は、積層された状態のフロントヘッド(61)、第1シリンダ(71)、中間プレート(63)、第2シリンダ(81)を貫通している。また、出力軸(40)は、その第1偏心部(42)が第1シリンダ(71)内に位置し、その第2偏心部(43)が第2シリンダ(81)内に位置している。
上記第1シリンダ(71)内には第1ピストン(75)が、第2シリンダ(81)内には第2ピストン(85)がそれぞれ設けられている。第1及び第2ピストン(85)は、何れも円環状あるいは円筒状に形成されている。第1ピストン(75)の外径と第2ピストン(85)の外径とは、互いに等しくなっている。第1ピストン(75)の内径は、第1偏心部(42)の外径と、第2ピストン(85)の内径は第2偏心部(43)の外径と概ね等しくなっている。そして、第1ピストン(75)には、第1偏心部(42)が、第2ピストン(85)には第2偏心部(43)がそれぞれ貫通している。
上記第1ピストン(75)は、その外周面が第1シリンダ(71)の内周面に、一方の端面がフロントヘッド(61)に、他方の端面が中間プレート(63)にそれぞれ摺接している。第1シリンダ(71)内には、その内周面と第1ピストン(75)の外周面との間に第1流体室(72)が形成される。一方、上記第2ピストン(85)は、その外周面が第2シリンダ(81)の内周面に、一方の端面がリアヘッド(62)に、他方の端面が中間プレート(63)にそれぞれ摺接している。第2シリンダ(81)内には、その内周面と第2ピストン(85)の外周面との間に第2流体室(82)が形成される。
第1及び第2ピストン(75,85)のそれぞれには、ブレード(76,86)が1つずつ一体に設けられている。ブレード(76,86)は、ピストン(75,85)の半径方向へ延びる板状に形成されており、ピストン(75,85)の外周面から外側へ突出している。第1ピストン(75)のブレード(76)は、第1シリンダ(71)のブッシュ孔(78)に、第2ピストン(85)のブレード(86)は第2シリンダ(81)のブッシュ孔(88)にそれぞれ挿入されている。各シリンダ(71,81)のブッシュ孔(78,88)は、シリンダ(71,81)を厚み方向へ貫通すると共に、シリンダ(71,81)の内周面に開口している。
上記各シリンダ(71,81)には、一対のブッシュ(77,87)が一組ずつ設けられている。各ブッシュ(77,87)は、内側面が平面となって外側面が円弧面となるように形成された小片である。各シリンダ(71,81)において、一対のブッシュ(77,87)は、ブッシュ孔(78,88)に挿入されてブレード(76,86)を挟み込んだ状態となる。各ブッシュ(77,87)は、その内側面がブレード(76,86)と摺接し、その外側面がシリンダ(71,81)と摺動する。そして、ピストン(75,85)と一体のブレード(76,86)は、ブッシュ(77,87)を介してシリンダ(71,81)に支持され、シリンダ(71,81)に対して回転自在で且つ進退自在となっている。
上記第1シリンダ(71)内の第1流体室(72)は、第1ピストン(75)と一体の第1ブレード(76)によって仕切られており、図3、図4における第1ブレード(76)の左側が高圧側の第1高圧室(73)となり、その右側が低圧側の第1低圧室(74)となっている。第2シリンダ(81)内の第2流体室(82)は、第2ピストン(85)と一体の第2ブレード(86)によって仕切られており、図3、図4における第2ブレードの左側が高圧側の第2高圧室(83)となり、その右側が低圧側の第2低圧室(84)となっている。
上記第1シリンダ(71)と第2シリンダ(81)とは、それぞれの周方向におけるブッシュ(77,87)の位置が一致する姿勢で配置されている。言い換えると、第2シリンダ(81)の第1シリンダ(71)に対する配置角度が0°となっている。上述のように、第1偏心部(42)と第2偏心部(43)とは、主軸部(41)の軸心に対して同じ方向へ偏心している。従って、第1ブレード(76)が第1シリンダ(71)の外側へ最も退いた状態になるのと同時に、第2ブレード(86)が第2シリンダ(81)の外側へ最も退いた状態になる。
上記第1シリンダ(71)には、流入ポート(67)が形成されている。流入ポート(67)は、第1シリンダ(71)の内周面のうち、図3、図4におけるブッシュ(77)のやや左側の箇所に開口している。流入ポート(67)は、第1高圧室(73)と連通可能になっている。図示しないが、流入ポート(67)には、流入管(35)が接続されている。
上記第2シリンダ(81)には、流出ポート(68)が形成されている。流出ポート(68)は、第2シリンダ(81)の内周面のうち、図3、図4におけるブッシュ(87)のやや右側の箇所に開口している。図示はしないが、流出ポート(68)には、流出管(36)が接続されている。
上記中間プレート(63)には、連通路(64)が形成されている。この連通路(64)は、中間プレート(63)を厚み方向へ貫通している。中間プレート(63)における第1シリンダ(71)側の面では、第1ブレード(76)の右側の箇所に連通路(64)の一端が開口している。中間プレート(63)における第2シリンダ(81)側の面では、第2ブレード(86)の左側の箇所に連通路(64)の他端が開口している。そして、連通路(64)は、中間プレート(63)の厚み方向に対して斜めに延びており、第1低圧室(74)と第2高圧室(83)とを互いに連通させている。
本実施形態の膨張機構(31)では、第1シリンダ(71)と、そこに設けられたブッシュ(77)と、第1ピストン(75)と、第1ブレード(76)とが第1ロータリ機構部(70)を構成している。また、この膨張機構(31)では、第2シリンダ(81)と、そこに設けられたブッシュ(87)と、第2ピストン(85)と、第2ブレード(86)とが第2ロータリ機構部(80)を構成している。この膨張機構(31)では、第1ロータリ機構部(70)の第1低圧室(74)と、第2ロータリ機構部(80)の第2高圧室とは、連通路(64)を介して互いに連通する。そして、第1低圧室(74)と連通路(64)と第2高圧室(83)とによって1つの閉空間が形成され、この閉空間が膨張室(66)を構成している。
図2に示すように、フロントヘッド(61)は、肉厚の平板状に形成されると共に、その中央部が下方へ突出した形状となっている。また、フロントヘッド(61)の中央部には貫通孔が形成されており、その貫通孔に第1軸受メタル(101)が挿入されている、第1軸受メタル(101)が取り付けられたフロントヘッド(61)には、出力軸(40)の主軸部(41)を回転自在に支持する滑り軸受である主軸受部(100)が形成されている。
上記第1軸受メタル(101)は、焼結金属等から成る円筒状(あるいは円管状)の部材である。この第1軸受メタル(101)には、出力軸(40)の主軸部(41)が挿通されている。第1軸受メタル(101)の内周面は、主軸部(41)のうち第1凹溝(45)の下端に隣接する部分の外周面と摺接する。尚、図2及び図5における第1軸受メタル(101)は、該第1軸受メタル(101)の内周面を示している。出力軸(40)が回転すると、回転に伴って主軸部(41)と第1軸受メタル(101)との間に、供給された潤滑油の油膜が形成される。第1軸受メタル(101)の内周面には、図2及び図5(B)に示すように、第1軸受メタル(101)に供給された潤滑油を供給側へ戻すための下側導油溝(102)が形成されている。この下側導油溝(102)は、本発明に係る油溝を構成するものであって、第1下側導油溝(102a)及び第2下側導油溝(102b)が形成されている。
上記第1下側導油溝(102a)は、第1軸受メタル(101)の一端側である上端から途中に亘って螺旋状に延びる凹溝であって、本発明に係る第1の油溝を構成するものである。この第1下側導油溝(102a)は、第1軸受メタル(101)の上端から出力軸(40)の回転方向の遅れ側(回転方向の上流側)へ向かって斜め下方へ延びている。具体的に、第1下側導油溝(102a)は、その上端が第1軸受メタル(101)の上端と同じ高さに形成されている一方、その下端が第1軸受メタル(101)の途中まで形成されている。これにより、第1下側導油溝(102a)内の潤滑油は、油の粘性と主軸部(41)の回転の遠心力とによる、いわゆる粘性ポンプ作用によって第1下側導油溝(102a)に沿って第1軸受メタル(101)の上端側へ移動する。
上記第2下側導油溝(102b)は、第1軸受メタル(101)の途中から他端側である下端に亘って螺旋状に延びる凹溝であって、本発明に係る第2の油溝を構成するものである。この第2下側導油溝(102b)は、第1軸受メタル(101)の内周面の途中から出力軸(40)の回転軸の遅れ側(回転方向の上流側)へ向かって斜め下方に延びている。具体的に、第2下側導油溝(102b)は、第1下側導油溝(102a)よりも回転方向の遅れ側(回転方向の上流側)に形成されると共に、その上端が、第1下側導油溝(102a)の下端よりも上側に形成されている。つまり、第1軸受メタル(101)の途中で、上記第1下側導油溝(102a)の下端部分と、第2下側導油溝(102b)の上端部分とが主軸部(41)の回転方向において互いにラップしている。これにより、第2下側導油溝(102b)内の潤滑油は、油の粘性と主軸部(41)の回転の遠心力とによる、いわゆる粘性ポンプ作用によって第2下側導油溝(102b)に沿って第1軸受メタル(101)の上端側へ移動する。また、第2下側導油溝(102b)の上端から漏れ出た潤滑油は、油の粘性と主軸部(41)の回転の遠心力とによって該回転方向に移動して、回転方向の進み側(回転方向の下流側)に形成された第1下側導油溝(102a)内にその下側から流入する。
上記リアヘッド(62)は、肉厚の平板状に形成されている。また、リアヘッド(62)の中央部には貫通孔が形成されており、この貫通孔に第2軸受メタル(111)が挿入されている。第2軸受メタル(111)が取り付けられたリアヘッド(62)には、出力軸(40)の主軸部(41)を回転自在に支持する滑り軸受である副軸受部(110)が形成されている。つまり、上記主軸受部(100)及び副軸受部(110)は、本発明に係る軸受部を構成するものである。
上記第2軸受メタル(111)は、焼結金属等から成る円筒状(あるいは円管状)の部材である。この第2軸受メタル(111)には、出力軸(40)の主軸部(41)が挿通されている。第2軸受メタル(111)の内周面は、主軸部(41)のうち第2凹溝(46)の上端に隣接する部分の外周面と摺接する。尚、図2及び図5における第2軸受メタル(111)は、該第2軸受メタル(111)の内周面を示している。出力軸(40)が回転すると、回転に伴って主軸部(41)と第2軸受メタル(111)との間に、供給された潤滑油の油膜が形成される。第2軸受メタル(111)の内周面には、図2及び図5(A)に示すように、第2軸受メタル(111)に供給された潤滑油を供給側へ戻すための上側導油溝(112)が形成されている。この上側導油溝(112)は、本発明に係る油溝を構成するものであって、第1上側導油溝(112a)及び第2上側導油溝(112b)が形成されている。
上記第1上側導油溝(112a)は、第2軸受メタル(111)の一端側である下端から途中に亘って螺旋状に延びる凹溝であって、本発明に係る第1の油溝を構成するものである。この第1上側導油溝(112a)は、第2軸受メタル(111)の下端から出力軸(40)の回転方向の遅れ側(回転方向の上流側)へ向かって斜め上方へ延びている。具体的に、第1上側導油溝(112a)は、その下端が第2軸受メタル(111)の下端とほぼ同じ高さに形成されている一方、その上端が第2軸受メタル(111)の途中まで形成されている。これにより、第1上側導油溝(112a)内の潤滑油は、油の粘性と主軸部(41)の回転の遠心力とによる、いわゆる粘性ポンプ作用によって第1上側導油溝(112a)に沿って第2軸受メタル(111)の他端側である下端側へ移動する。
上記第2上側導油溝(112b)は、第2軸受メタル(111)の途中から他端側である上端に亘って螺旋状に延びる凹溝であって、本発明に係る第2の油溝を構成するものである。この第2上側導油溝(112b)は、第2軸受メタル(111)の内周面の途中から出力軸(40)の回転方向の遅れ側(回転方向の上流側)へ向かって斜め上方に延びている。具体的に、第2上側導油溝(112b)は、第1上側導油溝(112a)よりも回転方向の遅れ側(回転方向の上流側)に形成されると共に、その下端が第1上側導油溝(112a)の上端よりも下側に形成されている。つまり、第2軸受メタル(111)の途中で、上記第1上側導油溝(112a)の上端部分と、第2上側導油溝(112b)の下端部分とが主軸部(41)の回転方向において互いにラップしている。これにより、第2上側導油溝(112b)内の潤滑油は、油の粘性と主軸部(41)の回転の遠心力とによって第2上側導油溝(112b)に沿って第2軸受メタル(111)の下端側へ移動する。また、第2上側導油溝(112b)の下端から漏れ出た潤滑油は、油の粘性と出力軸(40)の回転の遠心力とによって該回転方向に移動して、回転方向の進み側(回転方向の下流側)に形成された第1上側導油溝(112a)内にその上側から流入する。
上記膨張機構(31)の本体部(32)には、第1油通路である本体側油通路(95)が形成されている。本体側油通路(95)は、第1通路部(96)と、第2通路部(97)と、配管接続部(98)と、接続通路部(99)とを備えている。そして、膨張機構(31)の本体部(32)では、第1シリンダ(71)に形成されたブッシュ孔(78)と、第2シリンダ(81)に形成されたブッシュ孔(88)とが、第1通路部(96)、第2通路部(97)、配管接続部(98)及び接続通路部(99)と共に本体側油通路(95)を構成している。
上記第1通路部(96)は、フロントヘッド(61)に形成されている。第1通路部(96)は、その始端がフロントヘッド(61)の上面に開口し、第1シリンダ(71)のブッシュ孔(78)と連通している。第1通路部(96)の終端は、貫通孔の内周面のうち第1凹溝(45)に面する部分に開口している。この第1通路部(96)は、ブッシュ孔(78)と第1凹溝(45)とを連通させている。
上記第2通路部(97)は及び配管接続部(98)は、リアヘッド(62)に形成されている。配管接続部(98)は、リアヘッド(62)の外周面に開口する穴である。また、配管接続部(98)は、第2シリンダ(81)に形成されたブッシュ孔(88)に連通している。この配管接続部(98)には、給油管(37)が挿入されている。一方、第2通路部(97)は、その始端が配管接続部(98)に連通している。第2通路部(97)の終端は、貫通孔の内周面のうち第2凹溝(46)に面する部分に開口している。この第2通路部(97)は、配管接続部(98)と第2凹溝(46)とを連通させている。
上記接続通路部(99)は、中間プレート(63)に形成されている。接続通路部(99)は、中間プレート(63)をその厚さ方向に貫通し、第1シリンダ(71)のブッシュ孔(78)と、第2シリンダ(81)に形成されたブッシュ孔(78)とを連通させている。
−運転動作−
上記空調機の動作について説明する。
〈冷房運転〉
冷房運転時には、第1四路切換弁(12)及び第2四路切換弁(13)が第1状態(図1に実線で示す状態)に設定され、冷媒回路(11)で冷媒が循環して蒸気圧縮式冷凍サイクルが行われる。この冷媒回路(11)で行われる冷凍サイクルは、その高圧が冷媒である二酸化炭素の臨界圧力よりも高い値に設定されている。
圧縮機(20)では、電動機(23)によって圧縮機構(21)が回転駆動される。圧縮機構(21)は、吸入管(25)から吸い込んだ冷媒を圧縮して圧縮機ケーシング(24)内へ吐出する。圧縮機ケーシング(24)内の高圧冷媒は、吐出管(26)を通って圧縮機(20)から吐出される。圧縮機(20)から吐出された冷媒は、室外熱交換器(14)へ送られて室外空気へ放熱する。室外熱交換器(14)で放熱した高圧冷媒は、膨張機(30)へ流入する。
膨張機(30)では、流入管(35)を通って膨張機構(31)へ流入した高圧冷媒が膨張し、それによって発電機(33)が回転駆動される。発電機(33)で発生した電力は、圧縮機(20)の電動機(23)へ供給される。膨張機構(31)で膨張した冷媒は、流出管(36)を通って膨張機(30)から送り出される。膨張機(30)から送出された冷媒は、室内熱交換器(15)へ送られる。室内熱交換器(15)では、流入した冷媒が室内空気から吸熱して蒸発し、室内空気は冷却される。室内熱交換器(15)から出た低圧冷媒は、圧縮機(20)の吸入管(25)へ流入する。
〈暖房運転〉
暖房運転時には、第1四路切換弁(12)及び第2四路切換弁(13)が第2状態(図1に破線で示す状態)に設定され、冷媒回路(11)で冷媒が循環して蒸気圧縮式冷凍サイクルが井行われる。冷房運転時と同様に、この冷媒回路(11)で行われる冷凍サイクルは、その高圧が冷媒である二酸化炭素の臨界圧力よりも高い値に設定されている。
圧縮機(20)では、電動機(23)によって圧縮機構(21)が回転駆動される。圧縮機構(21)は、吸入管(25)から吸い込んだ冷媒を圧縮して圧縮機ケーシング(24)内へ吐出する。圧縮機ケーシング(24)内の高圧冷媒は、吐出管(26)を通って圧縮機(20)から吐出される。圧縮機(20)から吐出された冷媒は、室内熱交換器(15)へ送られる。室内熱交換器(15)では、流入した冷媒が室内空気へ放熱し、室内空気が加熱される。室内熱交換器(15)で放熱した高圧冷媒は、膨張機(30)へ流入する。
膨張機(30)では、流入管(35)を通って膨張機構(31)へ流入した高圧冷媒が膨張し、それによって発電機(33)が回転駆動される。発電機(33)で発生した電力は、圧縮機(20)の電動機(23)へ供給される。膨張機構(31)で膨張した冷媒は、流出管(36)を通って膨張機(30)から送り出される。膨張機(30)から送出された冷媒は、室外熱交換器(14)へ送られる。室外熱交換器(14)では、流入した冷媒が室外熱交換器(14)から吸熱して蒸発する。室外熱交換器(14)から出た低圧冷媒は、圧縮機(20)の吸入管(25)へ流入する。
〈圧縮機と膨張機の潤滑動作〉
圧縮機(20)と膨張機(30)を潤滑油により潤滑する動作について説明する。
圧縮機(20)では、圧縮機ケーシング(24)の内圧が、圧縮機構(21)から吐出された冷媒の圧力とほぼ同じになっている。このため、圧縮機ケーシング(24)の底に溜まった潤滑油の圧力も圧縮機構(21)から吐出された冷媒の圧力とほぼ同じになっている。一方、圧縮機構(21)は、吸入管(25)から低圧冷媒を吸入する。従って、圧縮機構(21)には、圧縮機ケーシング(24)の内圧よりも低圧となる部分が存在する。このため、圧縮機ケーシング(24)の底に溜まった潤滑油は、駆動軸(22)内の軸内油通路(90)を通って圧縮機構(21)へ流入し、圧縮機構(21)の潤滑に利用される。圧縮機構(21)へ供給された潤滑油は、圧縮された冷媒と共に圧縮機ケーシング(24)内へ吐出され、再び圧縮機ケーシング(24)の底部へ戻ってくる。
冷媒回路(11)を循環する冷媒の圧力は、圧縮機(20)から膨張機(30)へ至るまでの間に幾分低下する。このため、膨張機構(31)を通過する冷媒の圧力は、必然的に圧縮機ケーシング(24)の内圧よりも低くなる。また、膨張機構(31)に形成された流体室(72,82)では冷媒が膨張するため、膨張機構(31)内には膨張機構(31)へ流入する冷媒よりも更に低圧の部分が必ず存在する。このため圧縮機ケーシング(24)の底に溜まった潤滑油は、給油用配管(17)を通って膨張機構(31)へ流入する。
膨張機構(31)に流入した潤滑油は、膨張機構(31)の潤滑に利用される。その後、この潤滑油は、その大半が膨張後の冷媒と共に膨張機(30)から流出する。冷媒と共に膨張機(30)から流出した潤滑油は、冷媒と共に冷媒回路(11)内を流れて圧縮機(20)へ吸入される。尚、膨張機構(31)における潤滑油の流通経路については、後述する。一方、膨張機構(31)の潤滑に利用された潤滑油の一部は、膨張機ケーシング(34)の底部に溜まる。底部に溜まった潤滑油は、油流出管(38)を通って圧縮機(20)の吸入管(25)に流入する。圧縮機(20)の圧縮機構(21)へ冷媒と共に吸入された潤滑油は、圧縮後の冷媒と共に圧縮機構(21)から圧縮機ケーシング(24)の内部空間へ吐出され、その後に圧縮機ケーシング(24)の底部へと流れ落ちていく。
〈膨張機構の動作〉
膨張機構(31)の動作について、図4を参照しながら説明する。
第1ロータリ機構部(70)の第1高圧室(73)へ超臨界状態の高圧冷媒が流入する過程について説明する。回転角が0°の状態から出力軸(40)が僅かに回転すると、第1ピストン(75)と第1シリンダ(71)の接触位置が流入ポート(67)の開口部を通過し、流入ポート(67)から第1高圧室(73)へ高圧冷媒が流入し始める。その後、出力軸(40)の回転角が90°、180°、270°と次第に大きくなるのに伴って、第1高圧室(73)へ高圧冷媒が流入してゆく。この第1高圧室(73)への高圧冷媒の流入は、出力軸(40)の回転角が360°に達するまで続く。
膨張機構(31)において冷媒が膨張する過程について説明する。回転角が0°の状態から出力軸(40)が僅かに回転すると、第1低圧室(74)と第2高圧室(83)が連通路(64)を介して互いに連通し、第1低圧室(74)から第2高圧室(83)へと冷媒が流入し始める。その後、出力軸(40)の回転角が90°、180°、270°と次第に大きくなるにつれ、第1低圧室(74)の容積が次第に減少すると同時に第2高圧室(83)の容積が次第に増加してゆく。この膨張室(66)の容積が増加するに過程で膨張室(66)内の冷媒が膨張し、この冷媒の膨張によって出力軸(40)が回転駆動される。このように、第1低圧室(74)内の冷媒は、連通路(64)を通って第2高圧室(83)へ膨張しながら流入してゆく。
第2ロータリ機構部(80)の第2低圧室(84)から冷媒が流出してゆく過程について説明する。第2低圧室(84)は、出力軸(40)の回転角が0°の時点から流出ポート(68)に連通し始める。つまり、第2低圧室(84)から流出ポート(68)へと冷媒が流出し始める。その後、出力軸(40)の回転角が360°に達するまでの間に亘って、第2低圧室(84)から膨張後の低圧冷媒が流出してゆく。
次に、膨張機構(31)における潤滑油の流通経路について、図1及び図2を参照しながら説明する。
膨張機構(31)には、圧縮機ケーシング(24)内に貯留された高圧の潤滑油が、給油用配管(17)を通じて供給される。給油用配管(17)を流れる潤滑油は、給油管(37)を通って配管接続部(98)へ導入される。配管接続部(98)へ流入した潤滑油は、その一部が第2シリンダ(81)のブッシュ孔(88)へ流入し、残りが第2通路部(97)を通過して第2凹溝(46)へ送られる。第2凹溝(46)へ流入した潤滑油の一部は、第2連通路(97a)を通過して主通路部(94)へ流入する。その後、この潤滑油は主通路部(94)から第2給油通路部(92)及び第1給油通路部(91)へ流入する。
具体的に、第2凹溝(46)へ流入した潤滑油は、該潤滑油の圧力と膨張機ケーシング(34)の内圧との差圧に引っ張られて第2軸受メタル(111)と主軸部(41)の隙間へ流入して油膜を形成し、第2軸受メタル(111)と主軸部(41)の摺動面の潤滑に利用される。出力軸(40)が回転すると、油膜である潤滑油の一部は、回転の遠心力と潤滑油の粘性により出力軸(40)の回転方向に引っ張られながら第2軸受メタル(111)の上側導油溝(112)に流入する。まず、第1上側導油溝(112a)では、潤滑油は、第1上側導油溝(112a)に沿って溝の下端から上端に向かって流れる。一方、第1上側導油溝(112a)内の潤滑油は、油の粘性と主軸部(41)の回転に伴う遠心力とが加わることによる、いわゆる粘性ポンプ作用によって、その一部が回転方向の進み側(即ち、第1上側導油溝(112a)の下端側)に向かって流れる。次に、第2上側導油溝(112b)では、潤滑油は、一部が第2上側導油溝(112b)に沿って溝の下端から上端に向かって流れる。一方、第2上側導油溝(112b)内の潤滑油は、油の粘性と主軸部(41)の回転に伴う遠心力が加わることによる、いわゆる粘性ポンプ作用によって、その一部が、回転方向の進み側(即ち、第2上側導油溝(112b)の下端側)に向かって流れる。ここで、第2上側導油溝(112b)の下端から漏れた潤滑油は、油の粘性と主軸部(41)の回転の遠心力とにより第2軸受メタル(111)の内周面を主軸部(41)の回転方向に沿って移動して第1上側導油溝(112a)内に、その上端から流入する。流入した潤滑油は、上述した粘性ポンプ作用によって第1上側導油溝(112a)を上端から下端へ向かって移動する。
第2シリンダ(81)のブッシュ孔(88)へ流入した潤滑油の一部は、第2シリンダ(81)とブッシュ(87)の摺動部分や、第2ブレード(86)とブッシュ(87)の摺動部分へ供給され、潤滑に利用された後に第2シリンダ(81)内の第2流体室(82)へ流入する。一方、このブッシュ孔(88)へ流入した潤滑油の残りは、接続通路部(99)を通って第1シリンダ(71)のブッシュ孔(78)へ流入する。
第1シリンダ(71)のブッシュ孔(78)へ流入した潤滑油の一部は、第1シリンダ(71)とブッシュ(77)の摺動部分や、第1ブレード(76)とブッシュ(77)の摺動部分へ供給され、潤滑に利用された後に第1シリンダ(71)内の第1流体室(72)へ流入する。一方、このブッシュ孔(78)へ流入した潤滑油の残りは、第1通路部(96)を通過して第1凹溝(45)へ送られる。第1凹溝(45)へ流入した潤滑油の一部は、第1連通路(96a)を通過して主通路部(94)へ流入する。その後、この潤滑油は主通路部(94)から第1給油通路部(91)及び第2給油通路部(92)へ流入する。
具体的に、第1凹溝(45)へ流入した潤滑油の一部は、該潤滑油の圧力と膨張機ケーシング(34)との差圧に引っ張られて第1軸受メタル(101)と主軸部(41)の隙間へ流入して油膜を形成し、第1軸受メタル(101)と主軸部(41)の摺動面の潤滑に利用される。出力軸(40)が回転すると、油膜である潤滑油の一部は、回転の遠心力と潤滑油の粘性とにより出力軸(40)の回転方向に引っ張られながら第1軸受メタル(101)の下側導油溝(102)に流入する。まず、第1下側導油溝(102a)では、潤滑油は、第1下側導油溝(102a)に沿って溝の上端から下端に流れる。一方、第1下側導油溝(102a)内の潤滑油は、油の粘性と主軸部(41)の回転に伴う遠心力とが加わることによる、いわゆる粘性ポンプ作用によって、その一部が回転方向の進み側(即ち、第1下側導油溝(102a)の上端側)に向かって流れる。次に、第2下側導油溝(102b)では、該第2下側導油溝(102b)内の潤滑油は、油の粘性と主軸部(41)の回転に伴う遠心力とが加わることによる、いわゆる粘性ポンプ作用によって、その一部が、回転方向の進み側(即ち、第2下側導油溝(102b)の上端側)に向かって流れる。ここで、第2下側導油溝(102b)の上端から漏れた潤滑油は、油の粘性と主軸部(41)の回転の遠心力とにより第1軸受メタル(101)の内周面を主軸部(41)の回転方向に沿って移動して第1下側導油溝(102a)内に、その下端から流入する。流入した潤滑油は、上述した粘性ポンプ作用によって第1下側導油溝(102a)を下端から上端へ向かって移動する。
第1給油通路部(91)へ流入した潤滑油は、第1偏心部(42)と第1ピストン(75)の摺動部分へ供給される。第2給油通路部(92)へ流入した潤滑油は、第2偏心部(43)と第2ピストン(85)の摺動部分へ供給される。第1偏心部(42)と第1ピストン(75)の潤滑に利用された潤滑油は、フロントヘッド(61)及び中間プレート(63)と第1ピストン(75)の端面との隙間へ流入し、潤滑に利用された後に第1シリンダ(71)内の第1流体室(72)へ流入する。一方、第2偏心部(43)と第2ピストン(85)の潤滑に利用された潤滑油は、リアヘッド(62)及び中間プレート(63)と第2ピストン(85)の端面との隙間へ流入し、潤滑に利用された後に第2シリンダ(81)内の第2流体室(82)へ流入する。
膨張機構(31)では、給油用配管(17)を通じて圧縮機(20)から供給された潤滑油の一部は、膨張機構(31)の摺動部分の潤滑に利用された後に、第1シリンダ(71)内の第1流体室(72)又は第2シリンダ(81)内の第2流体室(82)へ流入する。第1流体室(72)へ流入した潤滑油は、第1流体室(72)内の冷媒と共に連通路(64)を通って第2流体室(82)へ流入する。そして、第2流体室(82)へ流入した潤滑油は、第2流体室(82)内の冷媒と共に流出ポート(68)を通って膨張機構(31)から排出されていく。尚、第1シリンダ(71)内の第1流体室(72)又は第2シリンダ(81)内の第2流体室(82)へ流入されなかった潤滑油は、そのほぼ全量が、第1軸受メタル(101)と主軸部(41)との隙間及び第2下側導油溝(102b)、又は第2軸受メタル(111)と主軸部(41)との隙間及び第2上側導油溝(112b)から膨張機ケーシング(34)の内部へ流出する。そして、膨張機ケーシング(34)内へ流出した潤滑油は、油流出管(38)を通って吸入管(25)に流入する。
−実施形態の効果−
上記本実施形態によれば、下側導油溝(102)を第1下側導油溝(102a)と第2下側導油溝(102b)とに分割したため、第1下側導油溝(102a,112a)に沿って流れる潤滑油が第2下側導油溝(102b)に流入するのを防止することができる。これにより、下側導油溝(102)に沿って流れる高圧の潤滑油が、該潤滑油と膨張機ケーシング(34)の内圧との差圧によって膨張機構(31)から膨張機ケーシング(34)内へ漏れ出るのを確実に防止することができる。さらに、上側導油溝(112)を第1上側導油溝(112a)と第2上側導油溝(112b)とに分割したため、第1上側導油溝(112a)に沿って流れる潤滑油が第2上側導油溝(112b)に流入するのを防止することができる。これにより、上側導油溝(112)に沿って流れる高圧の潤滑油が、該潤滑油と膨張機ケーシング(34)の内圧との差圧によって膨張機構(31)から膨張機ケーシング(34)内へ漏れ出るのを確実に防止することができる。
また、第1下側導油溝(102a)と第2下側導油溝(102b)を主軸部(41)の回転方向においてラップさせるようにしたため、第2下側導油溝(102b)の主軸受部(100)の上端側の端部から漏れる潤滑油を、第1下側導油溝(102a)に流入させることができる。これにより、第2下側導油溝(102b)内の潤滑油を、第1下側導油溝(102a)を介して主軸受部(100)の上端側に戻すことができる。
続いて、第1上側導油溝(112a)と第2上側導油溝(112b)を主軸部(41)の回転方向においてラップさせるようにしたため、第2上側導油溝(112b)の副軸受部(110)の下端側の端部から漏れる潤滑油を、第1上側導油溝(112a)に流入させることができる。これにより、第2上側導油溝(112b)内の潤滑油を、第1上側導油溝(112a)を介して副軸受部(110)の下端側に戻すことができる。これらの結果、膨張機構(31)へ供給した潤滑油の熱損失の発生を防止することができる。
〈実施形態の変形例〉
次に、上記実施形態の変形例について図面に基づいて説明する。
本変形例では、図6に示すように、上記実施形態が導油溝(102,112)を各軸受メタル(101,111)に形成したのに代えて、導油溝(115,116)を主軸部(41)に形成するようにしたものである。
具体的には、図6に示すように、出力軸(40)の主軸部(41)の外面のうち、第1軸受メタル(101)の内側面に対応する位置には、第1軸受メタル(101)に供給された潤滑油を供給側へ戻すための下側導油溝(115)が形成されている。この下側導油溝(115)は、本発明に係る油溝を構成するものであって、第1下側導油溝(115a)及び第2下側導油溝(115b)が形成されている。
上記第1下側導油溝(115a)は、第1軸受メタル(101)の一端側である上端から途中に亘る部分に対応する主軸部(41)の外面部分に螺旋状に延びる凹溝であって、本発明に係る第1の油溝を構成するものである。この第1下側導油溝(115a)は、第1軸受メタル(101)の上端位置に対応する主軸部(41)の位置から出力軸(40)の回転方向の進み側(回転方向の下流側)へ向かって斜め下方へ延びている。具体的に、第1下側導油溝(115a)は、その上端が第1軸受メタル(101)の上端位置に対応する主軸部(41)の位置に形成されている一方、その下端が第1軸受メタル(101)の途中の位置に対応する主軸部(41)の位置まで形成されている。これにより、第1下側導油溝(115a)内の潤滑油は、油の粘性と主軸部(41)の回転の遠心力とによる、いわゆる粘性ポンプ作用によって第1下側導油溝(115a)に沿って第1軸受メタル(101)の上端側へ移動する。
上記第2下側導油溝(115b)は、第1軸受メタル(101)の途中から他端側である下端に亘る部分に対応する主軸部(41)の外面部分に螺旋状に延びる凹溝であって、本発明に係る第2の油溝を構成するものである。この第2下側導油溝(115b)は、第1軸受メタル(101)の内周面の途中の位置に対応する主軸部(41)の位置から出力軸(40)の回転方向の進み側(回転方向の下流側)へ向かって斜め下方に延びている。具体的に、第2下側導油溝(115b)は、第1下側導油溝(115a)よりも出力軸(40)の回転方向の進み側(回転方向の下流側)に形成されると共に、その上端が、第1下側導油溝(115a)の下端よりも上側に形成されている。つまり、第1軸受メタル(101)の途中の位置に対応する主軸部(41)では、上記第1下側導油溝(115a)の下端部分と、第2下側導油溝(115b)の上端部分とが主軸部(41)の回転方向において互いにラップしている。これにより、第2下側導油溝(115b)内の潤滑油は、油の粘性と主軸部(41)の回転の遠心力とによる、いわゆる粘性ポンプ作用によって第2下側導油溝(115b)に沿って第1軸受メタル(101)の上端側へ移動する。また、第2下側導油溝(115b)の上端から漏れ出た潤滑油は、油の粘性と出力軸(40)の回転の遠心力とによって該回転方向の遅れ側(回転方向の上流側)に移動して、回転方向の遅れ側(回転方向の上流側)に形成された第1下側導油溝(115a)内にその下側から流入する。
また、主軸部(41)の外面のうち、第2軸受メタル(111)の内側面に対応する位置には、第2軸受メタル(111)に供給された潤滑油を供給側へ戻すための上側導油溝(116)が形成されている。この上側導油溝(116)は、本発明に係る油溝を構成するものであって、第1上側導油溝(116a)及び第2上側導油溝(116b)が形成されている。
上記第1上側導油溝(116a)は、第2軸受メタル(111)の一端側である下端から途中に亘る部分に対応する主軸部(41)の外面部分に螺旋状に延びる凹溝であって、本発明に係る第1の油溝を構成するものである。この第1上側導油溝(116a)は、第2軸受メタル(111)の下端位置に対応する主軸部(41)の位置から出力軸(40)の回転方向の進み側(回転方向の下流側)へ向かって斜め上方へ延びている。具体的に、第1上側導油溝(116a)は、その下端が第2軸受メタル(111)の下端位置に対応する主軸部(41)の位置に形成されている一方、その上端が第2軸受メタル(111)の途中の位置に対応する主軸部(41)の位置まで形成されている。これにより、第1上側導油溝(116a)内の潤滑油は、油の粘性と主軸部(41)の回転の遠心力とによる、いわゆる粘性ポンプ作用によって第1上側導油溝(116a)に沿って第2軸受メタル(111)の一端側である下端側へ移動する。
上記第2上側導油溝(116b)は、第2軸受メタル(111)の途中から他端側である上端に亘る部分に対応する主軸部(41)の外面部分に螺旋状に延びる凹溝であって、本発明に係る第2の油溝を構成するものである。この第2上側導油溝(116b)は、第2軸受メタル(111)の内周面の途中の位置に対応する主軸部(41)の位置から出力軸(40)の回転方向の進み側(回転方向の下流側)へ向かって斜め上方に延びている。具体的に、第2上側導油溝(116b)は、第1上側導油溝(116a)よりも回転方向の進み側(回転方向の下流側)に形成されると共に、その下端が、第1上側導油溝(116a)の上端よりも下側に形成されている。つまり、第2軸受メタル(111)の途中の位置に対応する主軸部(41)では、上記第1上側導油溝(116a)の上端部分と、第2上側導油溝(116b)の下端部分とが主軸部(41)の回転方向において互いにラップしている。これにより、第2上側導油溝(116b)内の潤滑油は、油の粘性と主軸部(41)の回転の遠心力とによって第2上側導油溝(116b)に沿って第2軸受メタル(111)の下端側方向へ移動する。また、第2上側導油溝(116b)の下端から漏れ出た潤滑油は、油の粘性と出力軸(40)の回転の遠心力とによって該回転方向の遅れ側(回転方向の上流側)に移動して、回転方向の遅れ側(回転方向の上流側)に形成された第1上側導油溝(116a)内にその上端側から流入する。その他の構成・作用及び効果は上記実施形態と同様である。
〈その他の実施形態〉
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
実施形態に係る膨張機(30)では、導油溝(102,112,115,116)をそれぞれ2つに分割するようにしたが、本発明は、各導油溝を、例えば2つ以上の複数に分割させるようにしてもよい。また、本実施形態に係る膨張機(30)では、主軸部(41)とフロントヘッド(61)及びリアヘッド(62)との間に第1及び第2軸受メタル(101,111)をそれぞれ設けるようにしたが、本発明は軸受メタル(101,111)を設けない構成に対しても適用することができる。また、軸受メタル(101,111)を設けない場合、上記実施形態は、油溝(102,112)を、例えばフロントヘッド(61)及びリアヘッド(62)の内面に形成することができる。
尚、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。