JP2014101096A - 車両のスタビリティファクタ演算装置 - Google Patents

車両のスタビリティファクタ演算装置 Download PDF

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Abstract

【課題】車両のスタビリティファクタの演算精度を向上させることができる車両のスタビリティファクタ演算装置を提供する。
【解決手段】制御装置30は、車両の横方向加速度Gyが変化する状況下で取得可能なスタビリティファクタ演算値のばらつきを評価し、ばらつきが小さいと評価された複数のスタビリティファクタ演算値の少なくとも一つの値に応じて車両のスタビリティファクタを決定する。
【選択図】図1

Description

本発明は、車両のスタビリティファクタ演算装置に関する。
旋回する車両に対する挙動制御としては、車両のスタビリティファクタなどを用いて演算される規範ヨーレートからヨーレートセンサによって検出されるセンサ値(以下、「ヨーレートセンサ値」ともいう。)を差し引いた偏差が「0(零)」に近づくように車両挙動を制御するものが知られている。
スタビリティファクタは、定常円旋回を行う車両の速度による変化の大きさを示す指標となる値であって、車両重量や車両における重量分布の変化に伴って変化し得る。そのため、上記のような挙動制御の開始タイミングや制御中における制御量の適正化を図るためには、スタビリティファクタを車両の走行中に逐次更新することが好ましい。
特許文献1には、車両の走行中にスタビリティファクタを推定演算する方法が開示されている。この方法では、旋回する車両の現時点の走行状態が安定旋回状態であるか否かが判定される。そして、現時点の走行状態が安定旋回状態であると判定されたときには、車両が横滑りしている可能性が低いと推定でき、その時点の車体速度、ステアリングの操舵角及びヨーレートセンサ値に基づいてスタビリティファクタが演算される。
特開2005−104346号公報
ここで、車両が横滑りしていないときには、車両の横方向加速度の変化に対して上記の偏差が比例して変化するため、スタビリティファクタを精度良く演算することが可能となる。その一方で、車両が横滑りしているときには、スタビリティファクタの推定演算を行ったとしても、その演算精度が低くなる。そのため、スタビリティファクタの演算精度を高くするためには、車両が横滑りしているか否かを正確に判定する必要がある。ところが、その時点のスタビリティファクタが適切な値であるか否かが不明である状態では、車両が横滑りしているか否かを正確に判定することは困難である。
ちなみに、特許文献1に記載の方法では、ヨーレートセンサ値、前後方向加速度、横方向加速度、ステアリングの操舵角及び操舵角速度が予め設定された範囲内に入っている場合に、車両が横滑りしている可能性が低いと推定され、スタビリティファクタが演算される。しかしながら、この方法では、車両が横滑りしている可能性が低いと推定しても、実際には車両が横滑りしていることもあり得る。この場合、車両の横滑り中に検出された各種パラメータに基づきスタビリティファクタが演算されることもあり、演算精度の低下が懸念される。
本発明の目的は、車両のスタビリティファクタの演算精度を向上させることができる車両のスタビリティファクタ演算装置を提供することにある。
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決する車両のスタビリティファクタ演算装置は、車両の横方向加速度(Gy)が変化する状況下(S102、S202:YES)で取得可能なスタビリティファクタ演算値(Kh_cal、ΔDYr)のばらつきを評価する評価部(30、S109、S209)と、ばらつきが小さいと評価された複数のスタビリティファクタ演算値(Kh_cal、ΔDYr)の少なくとも一つの値に応じて車両のスタビリティファクタ(Kh)を決定する決定部(30、S111、S211)と、を備えるようにした。
車両が横滑りしている場合においては、車両の横方向加速度(Gy)が変化する状況下でスタビリティファクタ演算値(Kh_cal、ΔDYr)を演算したとすると、演算された複数のスタビリティファクタ演算値(Kh_cal、ΔDYr)が大きくばらつく。その一方で、車両が横滑りしていない場合においては、車両の横方向加速度(Gy)が変化する状況下でスタビリティファクタ演算値(Kh_cal、ΔDYr)を演算したとすると、演算された複数のスタビリティファクタ演算値(Kh_cal、ΔDYr)のばらつきが小さくなる。そこで、上記構成では、ばらつきが小さいと評価された複数のスタビリティファクタ演算値(Kh_cal)の少なくとも一つの値に応じて、車両のスタビリティファクタ(Kh)が決定される。これにより、車両の横滑り中に取得された各種パラメータを用いて車両のスタビリティファクタ(Kh)が決定される可能性が低くなる。したがって、車両のスタビリティファクタ(Kh)の演算精度を向上させることができるようになる。
また、上記のスタビリティファクタ演算装置は、車両の横方向加速度(Gy)の変化が検知される(S102:YES)毎にスタビリティファクタ演算値(Kh_cal)を演算するスタビリティ演算部(30、S103)と、演算されたスタビリティファクタ演算値(Kh_cal)と度数(F)との関係を示す度数分布を作成する作成部(30、S104)と、をさらに備えてもよい。そして、この場合、評価部(30、S109)は、スタビリティ演算部(30、S103)による演算回数(Cnt)が規定回数(CntTh)を超えたときに(S106:YES)、作成部(30、S104)によって作成された度数分布における最大度数(Fmax)を規定回数(CntTh)で除算した除算値(P_hist)によって各スタビリティファクタ演算値(Kh_cal)のばらつきを評価することが好ましい。
車両の横滑り中に複数のスタビリティファクタ演算値(Kh_cal)が演算されたときには、各スタビリティファクタ演算値(Kh_cal)のばらつきが大きいため、上記の除算値(P_hist)が小さい値となる。一方、車両が横滑りしていないときに複数のスタビリティファクタ演算値(Kh_cal)が演算されたときには、各スタビリティファクタ演算値(Kh_cal)のばらつきが小さいため、上記の除算値(P_hist)が大きい値となる。そこで、上記構成では、スタビリティファクタ演算値(Kh_cal)の演算回数(Cnt)が規定回数(CntTh)を超えたときに、上記の除算値(P_hist)の大きさによって各スタビリティファクタ演算値(Kh_cal)のばらつきを評価するようにした。これにより、各スタビリティファクタ演算値(Kh_cal)のばらつきが適切に評価され、ばらつきの大きい複数のスタビリティファクタ演算値(Kh_cal)に応じて車両のスタビリティファクタ(Kh)が設定される可能性が低くなる。すなわち、車両の横滑り中に演算されたスタビリティファクタ演算値(Kh_cal)に応じて車両のスタビリティファクタ(Kh)が決定される可能性が低くなり、車両のスタビリティファクタ(Kh)の演算精度を向上させることができるようになる。
なお、演算された複数のスタビリティファクタ演算値(Kh_cal)に基づいて度数分布を作成したときには、度数が最大となる値が、その時点の車両の実際のスタビリティファクタに最も近いと推定できる。そこで、決定部(30、S111)は、評価部(30、S109)によって各スタビリティファクタ演算値(Kh_cal)のばらつきが小さいと評価されたとき(S109:YES)には、作成部(30、S104)によって作成された度数分布から最大度数(Fmax)に対応するスタビリティファクタ演算値(Kh_cal1)を抽出し(S110)、このスタビリティファクタ演算値(Kh_cal1)に応じて車両のスタビリティファクタ(Kh)を決定することが好ましい。これにより、スタビリティファクタ(Kh)の演算精度を向上させることができるようになる。
車両の横滑り中に取得された各種パラメータに基づいて演算されたスタビリティファクタ演算値(Kh_cal)が多い場合などのように各スタビリティファクタ演算値(Kh_cal)のばらつきが大きいときには、これら各スタビリティファクタ演算値(Kh_cal)に応じた車両のスタビリティファクタ(Kh)の更新が行われない。これにより、車両のスタビリティファクタ(Kh)の演算精度の低下を抑制することができるようになる。
また、車両が横滑りしていないときには、車両の横方向加速度(Gy)の変化量と上記の偏差(DYr)の変化量との間には、一次の比例関係が存在する。その一方で、車両が横滑りしているときには、車両の横方向加速度(Gy)の変化量と上記の偏差(DYr)の変化量との間には、一次の比例関係が存在しなくなる。そのため、横方向加速度(Gy)の変化に対する偏差の変化勾配のばらつきが小さいときには、車両が横滑りしていないと推定することができる。
そこで、上記のスタビリティファクタ演算装置は、車両の横方向加速度(Gy)の変化が検知される(S202:YES)毎に、その時点のスタビリティファクタ(Kh)を用いて演算された規範ヨーレート(Yr_Trg)からヨーレートセンサ(SE4)によって検出されるヨーレートセンサ値(Yr_R)を差し引いた偏差(DYr)を演算する偏差演算部(30、S204)をさらに備えてもよい。そして、この場合、評価部(30、S209)は、偏差演算部(30、S204)による演算回数(Cnt)が規定回数(CntTh)を超えたときに(S207:YES)、横方向加速度(Gy)の変化に対する偏差の変化量(ΔDYr)の変化態様によってスタビリティファクタ演算値(Kh_cal)のばらつきを評価することが好ましい。これにより、ばらつきが小さいと評価された複数のスタビリティファクタ演算値(ΔDYr)の少なくとも一つの値に応じて、車両のスタビリティファクタ(Kh)が決定されることとなる。その結果、車両のスタビリティファクタ(Kh)の演算精度を向上させることができるようになる。
例えば、評価部(30、S209)は、偏差演算部(30、S204)による演算回数(Cnt)が規定回数(CntTh)を超えたときに(S207:YES)、偏差演算部(30、S204)によって演算された各偏差(DYr)を、偏差の変化量(ΔDYr)の小さい第1の横方向加速度領域(A1)と、偏差の変化量(ΔDYr)の大きい第2の横方向加速度領域(A2)とに分類してもよい。そして、この場合、決定部(30、S111)は、第1の横方向加速度領域(A1)に分類された偏差(DYr)に応じて車両のスタビリティファクタ(Kh)を決定することが好ましい。これにより、車両のスタビリティファクタ(Kh)の決定に際し、車両の横滑り中に取得された各種パラメータが用いられる可能性が低くなる。そのため、車両のスタビリティファクタ(Kh)の演算精度を向上させることができるようになる。
第1の実施形態における車両の制動システムの概略構成を示す構成図。 第1の実施形態において、車両のスタビリティファクタを決定するために制御装置が実行する処理ルーチンを説明するフローチャート。 第1の実施形態において、スタビリティファクタ演算値と度数との関係を示す度数分布表。 第1の実施形態において、スタビリティファクタ演算値と度数との関係を示す度数分布表。 第2の実施形態において、車両の横方向加速度と偏差との関係を示すグラフ。 第2の実施形態において、車両のスタビリティファクタを決定するために制御装置が実行する処理ルーチンを説明するフローチャート。 (a)は、演算された偏差が横方向加速度毎にプロットされた様子を示すグラフ、(b)は、図7(a)の一部を拡大した拡大図。 偏差変化量と車両の横方向加速度との関係の一例を示すグラフ。
(第1の実施形態)
以下、車両の制動システムの第1の実施形態を図1〜図5に従って説明する。
図1に示すように、車両の制動システムには、複数(例えば、4つ)の車輪10に制動力を付与する制動装置20と、スタビリティファクタ演算装置の一例としての制御装置30とが設けられている。この制動装置20は、ブースタ、マスタシリンダ及びリザーバを有する液圧発生装置21と、ブレーキアクチュエータ22とを備えている。そして、運転手がブレーキペダル23を操作すると、液圧発生装置21のマスタシリンダ内の液圧が上昇し、この液圧に応じた液量のブレーキ液がブレーキアクチュエータ22の図示しない液圧回路を介して車輪10毎に設けられた制動機構24のホイールシリンダ内に流入する。これにより、制動機構24がホイールシリンダ内の液圧に応じた制動力を車輪10に付与するようになる。
本実施形態のブレーキアクチュエータ22は、運転者がブレーキペダル23を操作しない場合であっても各車輪10に対する制動力を個別に調整できるように構成されている。例えば、ブレーキアクチュエータ22は、マスタシリンダ内の液圧と、ホイールシリンダ内の液圧との間に差圧を発生させる差圧調整弁と、ホイールシリンダ内にブレーキ液を供給するための電動ポンプとを備えている。また、ブレーキアクチュエータ22には、各ホイールシリンダ内の液圧を個別に調整するための各種弁が設けられている。
制御装置30には、ブレーキペダル23が操作されているか否かを検出するブレーキスイッチSW1と、車輪10の車輪速度VWを検出する車輪速度センサSE1と、ステアリングホイール25の操舵角θを検出する操舵角センサSE2とが電気的に接続されている。また、制御装置30には、車両の横方向加速度Gyを検出する横方向加速度センサSE3と、車両のヨーレート(Yaw Rate)を検出するヨーレートセンサSE4とが電気的に接続されている。そして、制御装置30は、ブレーキスイッチSW1のオン・オフ及び各種センサSE1〜SE4によって検出される各種パラメータなどに基づいて、ブレーキアクチュエータ22を作動させて車両の挙動安定化を図っている。
こうした制御装置30は、CPU、ROM及びRAMなどで構築されるマイクロコンピュータを備えている。ROMには、CPUが実行する各種プログラム及びマップなどが予め記憶され、RAMには、適宜更新される情報(例えば、車体速度)が記憶されるようになっている。
ところで、上記の制動システムを有する車両では、旋回中にオーバーステアやアンダーステアといった横滑りが発生したときに、横滑りを解消させるべくブレーキアクチュエータ22が制御される。具体的には、制御装置30では、運転者によるステアリングホイール25の操作などによって決定される規範ヨーレートYr_TrgからヨーレートセンサSE4によって検出されるヨーレートセンサ値Yr_Rを差し引いた偏差DYrが演算される。そして、この偏差DYrの大きさによって車両に横滑りが発生しているか否かが判定され、横滑りが発生していると判定されたときには、偏差DYrが「0(零)」に近づくようにブレーキアクチュエータ22が制御される。
ここで、上記の規範ヨーレートYr_Trgの演算方法としては、以下の関係式(式1)を用いる方法が挙げられる。すなわち、規範ヨーレートYr_Trgは、車両の車体速度VS、ステアリングホイール25の操舵角θ、車両のステアリング装置のギヤ比N、車体のホイールベース長WB及び車両のスタビリティファクタKhによって演算することができる。そして、関係式(式1)を用いた規範ヨーレートYr_Trgの演算精度を高くするためには、車両のスタビリティファクタKhをその時点の車両状態に応じた値にすることが好ましい。
そこで次に、図2に示すフローチャートと図3及び図4に示す度数分布表とを参照し、車両走行中に車両のスタビリティファクタKhを更新するために制御装置30が実行する処理ルーチンについて説明する。
図2に示す処理ルーチンは、予め設定された所定サイクル毎に実行される処理ルーチンである。この処理ルーチンにおいて、制御装置30は、横方向加速度センサSE3から出力される信号に基づき検出される今回の横方向加速度Gyを取得するとともに、後述するステップS113で設定された前回の横方向加速度Gy_hを取得する(ステップS101)。続いて、制御装置30は、今回の横方向加速度Gyと前回の横方向加速度Gy_hとの差(=|Gy−Gy_h|)が予め設定された基準判定値GyThよりも大きいか否かを判定する(ステップS102)。この基準判定値GyThは、横方向加速度の絶対値が大きくなっているか否かを判断するための判定基準として設定された値である。すなわち、ステップS102では、車両の横方向加速度が変化する状況下であるか否かが判定される。
そして、上記の差(=|Gy−Gy_h|)が基準判定値GyTh以下である場合(ステップS102:NO)、車両の横方向加速度がほとんど変化していないと判定され、制御装置30は、本処理ルーチンを一旦終了する。一方、上記の差が基準判定値GyThよりも大きい場合(ステップS102:YES)、車両の横方向加速度が変化していると判定され、制御装置30は、以下に示す関係式(式2)を用いてスタビリティファクタ演算値Kh_calを演算する(ステップS103)。この点で、本実施形態では、制御装置30が、車両の横方向加速度の変化が検知される毎にスタビリティファクタ演算値Kh_calを演算する「スタビリティ演算部」としても機能する。なお、関係式(式2)の「Kh_base」は、車両に予め設定されたスタビリティファクタの初期値である。また、関係式(式2)の「Yr_Trg」には、関係式(式1)を用いて演算された規範ヨーレートが代入される。
そして、制御装置30は、縦軸を度数Fとするとともに、横軸をスタビリティファクタ演算値Kh_calとする度数分布表(度数分布)を作成する(ステップS104)。したがって、本実施形態では、制御装置30が、演算されたスタビリティファクタ演算値Kh_calと度数Fとの関係を示す度数分布を作成する「作成部」としても機能する。
なお、図3及び図4には、度数Fとスタビリティファクタ演算値Kh_calとの関係を示す度数分布の一例が図示されている。図3に示す度数分布表では、複数のスタビリティファクタ演算値Kh_calのばらつきが比較的小さく、図4に示す度数分布表では、複数のスタビリティファクタ演算値Kh_calのばらつきが比較的大きい。
図2に戻り、ステップS104の実行後、制御装置30は、演算回数としての演算回数カウントCntを「1」だけインクリメントする(ステップS105)。そして、制御装置30は、更新した演算回数カウントCntが予め設定された規定回数CntTh(例えば、150)を超えているか否かを判定する(ステップS106)。この規定回数CntThは、度数分布表を作成するにあたってスタビリティファクタ演算値Kh_calのサンプル数が多いか少ないかの判断基準として予め設定されている。
そして、演算回数カウントCntが規定回数CntTh以下である場合(ステップS106:NO)、スタビリティファクタ演算値Kh_calの演算回数が未だ少ないと判定され、制御装置30は、その処理を後述するステップS113に移行する。一方、演算回数カウントCntが規定回数CntThを超えている場合(ステップS106:YES)、制御装置30は、スタビリティファクタ演算値Kh_cal毎の度数Fのうち最大となる最大度数Fmax(図3及び図4参照)を取得する(ステップS107)。
続いて、制御装置30は、取得した最大度数Fmaxを、ステップS105で更新した演算回数カウントCntで除算して除算値の一例としてのばらつき指数P_hist(=Fmax/Cnt)を求める(ステップS108)。このばらつき指数P_histは、度数分布表の作成のために演算された各スタビリティファクタ演算値Kh_calのばらつき度合を示す指数である。そのため、ばらつき指数P_histは、各スタビリティファクタ演算値Kh_calのばらつきが小さい場合(図3参照)には大きい値となり、各スタビリティファクタ演算値Kh_calのばらつきが大きい場合(図4参照)には小さい値となる。
そして、制御装置30は、演算したばらつき指数P_histが予め設定された規定除算値の一例としてのばらつき判定値HThよりも大きいか否かを判定する(ステップS109)。このばらつき判定値HThは、度数分布表の作成のために演算された各スタビリティファクタ演算値Kh_calのばらつきが大きいか否かの評価基準として予め設定された値である。したがって、本実施形態では、制御装置30が、車両の横方向加速度が変化する状況下で取得された複数のスタビリティファクタ演算値Kh_calのばらつきを評価する「評価部」としても機能する。
ばらつき指数P_histがばらつき判定値HTh以下である場合(ステップS109:NO)、各スタビリティファクタ演算値Kh_calのばらつきが大きいと判断され、制御装置30は、スタビリティファクタKhの更新を行うことなく、その処理を後述するステップS112に移行する。一方、ばらつき指数P_histがばらつき判定値HThよりも大きい場合(ステップS109:YES)、各スタビリティファクタ演算値Kh_calのばらつきが小さいと判断される。そして、制御装置30は、最大度数Fmaxに対応するスタビリティファクタ演算値Kh_cal1を度数分布表から抽出する(ステップS110)。
続いて、制御装置30は、ステップS110で抽出したスタビリティファクタ演算値Kh_cal1をこの時点のスタビリティファクタKhとする(ステップS111)。したがって、本実施形態では、制御装置30が、評価対象とされた複数のスタビリティファクタ演算値Kh_calのばらつきが小さいときに、これら各スタビリティファクタ演算値Kh_calの少なくとも一つの値に応じて車両のスタビリティファクタKhを決定する「決定部」としても機能する。そして、制御装置30は、その処理を次のステップS112に移行する。
ステップS112において、制御装置30は、演算回数カウントCntを「0(零)」にするとともに、度数分布表をクリアするリセット処理を行う。その後、制御装置30は、その処理を次のステップS113に移行する。
ステップS113において、制御装置30は、前回の横方向加速度Gy_hに、ステップS101で取得した今回の横方向加速度Gyをセットする。その後、制御装置30は、本処理ルーチンを一旦終了する。
次に、図5を参照して、本実施形態の作用について説明する。
車両の旋回時などのように横方向加速度Gyが変化する状況下では、所定サイクル毎にスタビリティファクタ演算値Kh_calが演算される。そして、スタビリティファクタ演算値Kh_calの演算回数である演算回数カウントCntが規定回数CntThよりも大きくなると、評価対象となる複数のスタビリティファクタ演算値Kh_calのばらつき度合が評価される。
そして、最大度数Fmaxを演算回数カウントCntで除算したばらつき指数P_histがばらつき判定値HThよりも大きい場合には、ばらつきが小さいと判断される。このようにばらつきが小さいと判断される場合としては、横滑りが発生している状況下でスタビリティファクタ演算値Kh_calが演算される機会がなかった又は少なかった場合などが挙げられる。すると、この場合、最大度数Fmaxに対応するスタビリティファクタ演算値Kh_cal1が車両のスタビリティファクタKhとされる。
ここで、図5には、車両の横方向加速度Gyと、規範ヨーレートYr_Trgからヨーレートセンサ値Yr_Rを差し引いた偏差DYrとの関係が図示されている。図5における第1の横方向加速度領域A1にて示されるように、車両に横滑りが発生していない場合、横方向加速度Gyと偏差DYrとの間には、一次の比例関係が存在している。そして、横方向加速度Gyの変化に対する偏差DYrの変化勾配が、その時点の車両のスタビリティファクタKhにほぼ一致する。
その一方で、図5における第2の横方向加速度領域A2にて示されるように、車両に横滑りが発生している場合、横方向加速度Gyの変化に対して、偏差DYrが急激に変化することとなる。そのため、横方向加速度Gyの変化に対する偏差DYrの変化勾配は、そのときの横方向加速度Gyの大きさによって変わってしまう。すなわち、その時点の車両のスタビリティファクタKhを求めることは困難である。
こうした図5に示すグラフからも明らかなように、横滑りが発生している状況下でスタビリティファクタ演算値Kh_calが演算される機会がなかった又は少なかった場合、演算された複数のスタビリティファクタ演算値Kh_calは、第1の横方向加速度領域A1における線の傾きにほぼ一致する。すなわち、度数分布表を作成した場合、度数分布は、例えば図3に示すように急峻な先細り形状となる。この場合、ばらつき度合が小さいとされる。
その一方で、ばらつき指数P_histがばらつき判定値HTh以下である場合には、ばらつきが大きいと判断される。このようにばらつきが大きいと判断される場合としては、横滑りが発生しているときに演算されたスタビリティファクタ演算値Kh_calの数が多い場合などが挙げられる。この場合、車両のスタビリティファクタKhは変更されない。
すなわち、車両の横滑り中では、図5における第2の横方向加速度領域A2でスタビリティファクタ演算値Kh_calが演算されることとなる。このように横滑り中にスタビリティファクタ演算値Kh_calの演算機会が多い中で度数分布表を作成すると、度数分布は、例えば図4に示すようになだらかな丘形状となる。この場合、ばらつき度合が大きいとされる。
次に、本実施形態と複数のスタビリティファクタ演算値Kh_calのばらつき度合を評価しない比較例との比較について説明する。
比較例では、図2に示す処理ルーチンからステップS108,S109の各処理が省略されることとなる。この場合、演算した複数のスタビリティファクタ演算値Kh_calのばらつきの大小を評価することなく、最大度数Fmaxに対応するスタビリティファクタ演算値Kh_cal1が車両のスタビリティファクタKhに決定されることとなる。
こうした比較例では、演算された複数のスタビリティファクタ演算値Kh_calに基づいて度数分布表を作成すると、最大度数Fmaxに対応する値が、その時点の車両の実際のスタビリティファクタに最も近いと推定される。そのため、最大度数Fmaxに対応するスタビリティファクタ演算値Kh_cal1が車両のスタビリティファクタKhと決定される。この場合、度数分布表の作成に用いられた複数のスタビリティファクタ演算値Kh_calのばらつきを評価しないため、スタビリティファクタKhとして採用された最大度数Fmaxに対応するスタビリティファクタ演算値Kh_cal1が、上記の第2の横方向加速度領域A2で取得された各種パラメータに基づいた値である疑いが払拭されない。そのため、比較例では、本実施形態の場合におけるスタビリティファクタ演算値Kh_calの演算精度よりも低い可能性がある。
この点、本実施形態では、度数分布表の作成に用いられた複数のスタビリティファクタ演算値Kh_calのばらつきを評価し、ばらつきが低い場合にのみスタビリティファクタKhの更新を許可している。そのため、比較例の場合と比較して、スタビリティファクタ演算値Kh_calの信頼性が高くなる。
以上説明したように、本実施形態では、以下に示す効果を得ることができる。
(1)車両が横滑りしている場合においては、車両の横方向加速度Gyが変化する状況下でスタビリティファクタ演算値Kh_calを演算すると、これら各スタビリティファクタ演算値Kh_calのばらつきが大きくなる。その一方で、車両が横滑りしていない場合においては、車両の横方向加速度Gyが変化する状況下でスタビリティファクタ演算値Kh_calを演算すると、これら各スタビリティファクタ演算値Kh_calのばらつきが小さくなる。
そこで、本実施形態では、ばらつきが小さいと評価された複数のスタビリティファクタ演算値Kh_calのうち一つの値に応じて、車両のスタビリティファクタKhが決定される。これにより、車両の横滑り中に取得された各種パラメータを用いて演算されたスタビリティファクタ演算値Kh_calに応じて車両のスタビリティファクタKhが決定される可能性が低くなる。したがって、車両のスタビリティファクタKhの演算精度を向上させることができるようになる。
(2)本実施形態では、スタビリティファクタ演算値Kh_calが演算される毎に更新される演算回数カウントCntが規定回数CntThよりも大きくなると、最大度数Fmaxを演算回数カウントCntで除算したばらつき指数P_histによって、複数のスタビリティファクタ演算値Kh_calのばらつきが評価される。そして、ばらつきが小さいと評価されたときに限り、複数のスタビリティファクタ演算値Kh_calのうち一つの値に応じて、車両のスタビリティファクタKhが決定される。その一方で、ばらつきが大きいと評価された場合、各スタビリティファクタ演算値Kh_calの中には車両の横滑り中に演算された値が多く含まれている可能性が高いため、スタビリティファクタKhが更新されない。そのため、車両のスタビリティファクタKhの演算精度を向上させることができるようになる。
(3)最大度数Fmaxに対応するスタビリティファクタ演算値Kh_cal1は、演算回数カウントCntが「0(零)」から規定回数CntThを超えるまでの所定期間で最も多く演算された値である。こうしたスタビリティファクタ演算値Kh_cal1は、評価対象となった複数のスタビリティファクタ演算値Kh_calの中で最も信頼性の高い値、即ち現時点の車両の実際のスタビリティファクタに近い値ということができる。そこで、本実施形態では、演算回数カウントCntが規定回数CntThを超えるとともに、各スタビリティファクタ演算値Kh_calのばらつきが小さいと評価されたときには、最大度数Fmaxに対応するスタビリティファクタ演算値Kh_cal1がスタビリティファクタKhとされる。したがって、車両のスタビリティファクタKhを、その時点の車両状態に見合った適切な値に決定することができるようになる。
(4)このようにスタビリティファクタKhが高精度に演算されるようになると、スタビリティファクタKhをパラメータの一つとして用いる挙動制御の開始タイミングや制御中における制御量の適正化を図ることができる。その結果、車両の挙動の更なる安定化に貢献することができるようになる。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態を図5〜図8に従って説明する。なお、第2の実施形態は、制御装置30が実行する処理ルーチンの内容が第1の実施形態と異なっている。したがって、以下の説明においては、第1の実施形態と相違する部分について主に説明するものとし、第1の実施形態と同一部材構成には同一符号を付して重複説明を省略するものとする。
図5には、車両の横方向加速度Gyと、規範ヨーレートYr_Trgからヨーレートセンサ値Yr_Rを差し引いた偏差DYrとの関係が図示されている。図5における第1の横方向加速度領域A1にて示されるように、車両に横滑りが発生していない場合、横方向加速度Gyと偏差DYrとの間には、一次の比例関係が存在している。そして、横方向加速度Gyの変化に対する偏差DYrの変化勾配が、その時点の車両のスタビリティファクタKhにほぼ一致する。
その一方で、図5における第2の横方向加速度領域A2にて示されるように、車両に横滑りが発生している場合、横方向加速度Gyの変化に対して、偏差DYrが急激に変化することとなる。そのため、横方向加速度Gyの変化に対する偏差DYrの変化勾配は、そのときの横方向加速度Gyの大きさによって変わってしまう。すなわち、その時点の車両のスタビリティファクタKhを求めることは困難である。
そこで、本実施形態では、横方向加速度Gyが変化する状況下で所定サイクル毎に偏差DYrが演算される。このように演算された複数の偏差DYrが、取得可能なスタビリティファクタ演算値Kh_calのばらつきが小さい第1の横方向加速度領域A1とばらつきの大きい第2の横方向加速度領域A2とに分類される。そして、第1の横方向加速度領域A1に分類された複数の偏差DYrに基づいてその時点の車両のスタビリティファクタKhが決定される。
そこで次に、図6に示すフローチャートと図7及び図8に示すグラフとを参照し、本実施形態の制御装置30が実行する処理ルーチンについて説明する。
図6に示す処理ルーチンは、予め設定された所定サイクル毎に実行される処理ルーチンである。この処理ルーチンにおいて、制御装置30は、今回の横方向加速度Gy及び前回の横方向加速度Gy_hを取得する(ステップS201)。そして、制御装置30は、今回の横方向加速度Gyと前回の横方向加速度Gy_hとの差(=|Gy−Gy_h|)が基準判定値GyTh以下である場合(ステップS202:NO)には本処理ルーチンを一旦終了し、差が基準判定値GyThよりも大きい場合(ステップS202:YES)にはその処理を次のステップS203に移行する。
ステップS203において、制御装置30は、ヨーレートセンサSE4から出力される信号に基づき検出されたヨーレートセンサ値Yr_Rと、上記の関係式(式1)を用いて演算された規範ヨーレートYr_Trgを取得する(ステップS203)。続いて、制御装置30は、規範ヨーレートYr_Trgからヨーレートセンサ値Yr_Rを差し引いた偏差DYrを求める(ステップS204)。したがって、本実施形態では、制御装置30が、車両の横方向加速度の変化が検知される毎に偏差DYrを演算する「偏差演算部」としても機能する。
そして、制御装置30は、ステップS204で求めた偏差DYrと、ステップS201で取得した今回の横方向加速度Gyとに基づき、図7(a)に示すグラフを作成する(ステップS205)。続いて、制御装置30は、演算回数カウントCntを「1」だけインクリメントし(ステップS206)、この演算回数カウントCntが規定回数CntThよりも大きいか否かを判定する(ステップS207)。演算回数カウントCntが規定回数CntTh以下である場合(ステップS207:NO)、制御装置30は、その処理を後述するステップS213に移行する。一方、演算回数カウントCntが規定回数CntThよりも大きい場合(ステップS207:YES)、図7(a)に示す点P(Gy,DYr)毎に、偏差DYrの変化勾配に相当する偏差変化量ΔDYrを演算する(ステップS208)。なお、このように演算された偏差変化量ΔDYrは、スタビリティファクタ演算値といってもよい。
例えば、図7(a),(b)に示すように、第1の点P1での偏差変化量ΔDYrは、以下に示す関係式(式3)を用いて演算される。ここで、第2の点P2は、第1の点P1の横方向加速度Gy1よりも小さい横方向加速度Gy2を有する点である。また、偏差DYr1は第1の点P1での偏差であり、偏差DYr2は第2の点P2での偏差である。
図6に戻り、ステップS208の実行後、制御装置30は、点P毎の偏差変化量ΔDYrに基づき、第1の横方向加速度領域A1及び第2の横方向加速度領域A2を設定する(ステップS209)。すなわち、演算された各偏差DYrが、第1の横方向加速度領域A1と第2の横方向加速度領域A2とに分類される。したがって、本実施形態では、制御装置30が、演算回数カウントCntが規定回数CntThを超えたときに、偏差変化量ΔDYrの変化態様によって、取得可能なスタビリティファクタ演算値Kh_calのばらつきを評価する「評価部」としても機能する。
例えば、図8に示すように、偏差変化量ΔDYrが変化判定値ΔDYrTh以下となる区間が第1の横方向加速度領域A1とされ、偏差変化量ΔDYrが変化判定値ΔDYrThよりも大きくなる区間が第2の横方向加速度領域A2とされる。なお、変化判定値ΔDYrThは、上記スタビリティファクタの初期値Kh_baseよりも少し大きい値に予め決定されている。
図6に戻り、ステップS209の実行後、制御装置30は、設定した第1の横方向加速度領域A1に分類される各点P(Gy,DYr)に基づき、一次の近似式の傾きSlpを求める(ステップS210)。本実施形態では、傾き「Slp」は、第1の横方向加速度領域A1に分類された各点Pにおける偏差変化量ΔDYrの平均値とする。そして、制御装置30は、求めた傾きSlpを車両のスタビリティファクタKhとする(ステップS211)。すなわち、本実施形態では、第1の横方向加速度領域A1に分類される、ばらつきの小さい複数の偏差変化量ΔDYr(スタビリティファクタ演算値)に基づいて、車両のスタビリティファクタKhが決定される。したがって、本実施形態では、制御装置30が、第1の横方向加速度領域A1に分類された複数の偏差DYrに基づき、車両のスタビリティファクタKhを決定する「決定部」としても機能する。
そして、制御装置30は、演算回数カウントCntを「0(零)」にリセットするとともに、図7(a)に示すグラフをクリアするリセット処理を行い(ステップS212)、その処理を次のステップS213に移行する。
ステップS213において、制御装置30は、前回の横方向加速度Gy_hに、ステップS201で取得した今回の横方向加速度Gyをセットする。その後、制御装置30は、本処理ルーチンを一旦終了する。
以上説明したように、本実施形態では、以下に示す効果を得ることができる。
(5)車両が横滑りしている場合においては、車両の横方向加速度Gyが変化する状況下でスタビリティファクタ演算値を演算したとしても、演算された複数のスタビリティファクタ演算値が大きくばらつく。その一方で、車両が横滑りしていない場合においては、車両の横方向加速度Gyが変化する状況下でスタビリティファクタ演算値を演算したとすると、演算された複数のスタビリティファクタ演算値のばらつきが小さくなる。
そこで、本実施形態では、第1の横方向加速度領域A1に分類される複数の偏差DYrに基づいて、車両のスタビリティファクタKhが決定される。これにより、車両の横滑り中に取得された各種パラメータを用いて演算された偏差DYrに基づいて車両のスタビリティファクタKhが決定される可能性が低くなる。したがって、車両のスタビリティファクタKhの演算精度を向上させることができるようになる。
(6)車両が横滑りしていない場合、横方向加速度Gyの変化に対する偏差DYrの変化量、即ち偏差変化量ΔDYrは、横方向加速度Gyの大きさによらずほぼ一定となる。一方、車両が横滑りしている場合、偏差変化量ΔDYrは、横方向加速度Gyの絶対値が大きいほど大きくなる。そこで、本実施形態では、偏差変化量ΔDYrが変化判定値ΔDYrTh以下となる横方向加速度の区間が第1の横方向加速度領域A1とされ、偏差変化量ΔDYrが変化判定値ΔDYrThを超える横方向加速度の区間が第2の横方向加速度領域A2とされる。そして、第1の横方向加速度領域A1に分類された各点Pでの偏差変化量ΔDYr(即ち、スタビリティファクタ演算値)に応じて車両のスタビリティファクタKhが決定される。その結果、スタビリティファクタKhの更新に際し、車両の横滑り中に取得された値が用いられる可能性が低くなる。したがって、車両のスタビリティファクタKhの演算精度を向上させることができるようになる。
(7)本実施形態は、上記第1の実施形態とは異なり、演算回数カウントCntが規定回数CntThよりも大きくなった時点までに演算された複数の偏差DYrのうち、第1の横方向加速度領域A1に分類される各偏差DYrに応じてスタビリティファクタKhを決定している。そのため、規定回数CntThが同一値という前提の元においては、第1の実施形態の場合と比較して、車両のスタビリティファクタKhを高頻度に更新することができるようになる。
(8)そして、このようにスタビリティファクタKhが高精度に演算されるようになると、スタビリティファクタKhをパラメータの一つとして用いる挙動制御の開始タイミングや制御中における制御量の適正化を図ることができる。その結果、車両の挙動の更なる安定化に貢献することができるようになる。
なお、上記各実施形態は以下のような別の実施形態に変更してもよい。
・第1の実施形態において、最大度数Fmaxに対応するスタビリティファクタ演算値Kh_cal1に応じて車両のスタビリティファクタKhを決定するのであれば、スタビリティファクタKhをスタビリティファクタ演算値Kh_cal1としなくてもよい。例えば、スタビリティファクタ演算値Kh_cal1と、最大度数Fmaxに継いで2番目に大きい度数に対応するスタビリティファクタ演算値Kh_calとに基づいてスタビリティファクタKhを決定するようにしてもよい。
・第1の実施形態において、最新のスタビリティファクタKh(n)を、それまでのスタビリティファクタKh(n−1)と最大度数Fmaxに対応するスタビリティファクタ演算値Kh_cal1との間となる値(例えば、この2つの値の平均値)としてもよい。
・第1の実施形態において、複数のスタビリティファクタ演算値Kh_calのばらつきが小さいと評価されたときには、全てのスタビリティファクタ演算値Kh_calの平均値を、車両のスタビリティファクタKhとしてもよい。この場合、度数Fの大きいスタビリティファクタ演算値Kh_calに対する重み付けを、度数Fの小さいスタビリティファクタ演算値Kh_calに対する重み付けを大きくする重み付け平均処理によって、車両のスタビリティファクタKhを求めるようにしてもよい。
・第1の実施形態において、最大度数Fmaxが所定値に達した時点の演算回数カウントCntが所定回数未満であるときには、それまでに演算された各スタビリティファクタ演算値Kh_calのばらつきが小さいと評価し、車両のスタビリティファクタKhを更新するようにしてもよい。一方、最大度数Fmaxが所定値に達した時点の演算回数カウントCntが所定回数以上であるとき、又は演算回数カウントCntが所定回数になっても最大度数Fmaxが所定値未満であるには、それまでに演算された各スタビリティファクタ演算値Kh_calのばらつきが大きいと評価し、車両のスタビリティファクタKhを更新しないようにしてもよい。
・第1の実施形態において、スタビリティファクタ演算値Kh_calを、以下に示す関係式(式4)を用いて演算してもよい。
・第2の実施形態において、一次の近似式の傾きSlpの取得方法としては、複数の偏差変化量ΔDYrの平均値ではなく、最小二乗法などの公知の近似方法を用いる方法を採用してもよい。
また、第1の横方向加速度領域A1に分類される各点Pでの偏差変化量ΔDYrの度数分布表を作成し、度数が最大となる値を車両のスタビリティファクタKhとするようにしてもよい。
・第2の実施形態において、第1の横方向加速度領域A1に分類された点Pの数が、第2の横方向加速度領域A2に分類された点Pの数よりも少ないときには、車両が横滑りしていない状況での偏差DYrの演算回数が少ないと判断できる。そのため、こうしたときには、車両のスタビリティファクタKhの更新を行うことなく、ステップS212のリセット処理を行うようにしてもよい。これにより、車両のスタビリティファクタKhの演算精度の低下をさらに抑制することができるようになる。
・各実施形態において、横方向加速度Gyは、横方向加速度センサSE3から出力される信号に基づくセンサ値ではなく、ヨーレートセンサSE4によって検出されるヨーレートセンサ値Yr_Rなどを用いた演算値であってもよい。この場合、ヨーレートセンサ値Yr_Rに車体速度VSを掛け合わせた値が横方向加速度Gyとなる。
次に、上記各実施形態及び別の実施形態から把握できる技術的思想を以下に追記する。
(イ)車両の横方向加速度(Gy)の変化が検知される(S102:YES)毎にスタビリティファクタ演算値(Kh_cal)を演算するスタビリティ演算部(30、S103)と、
演算されたスタビリティファクタ演算値(Kh_cal)と度数(F)との関係を示す度数分布を作成する作成部(30、S104)と、
前記スタビリティ演算部(30、S103)による演算回数(Cnt)が規定回数(CntTh)を超えたときに(S106:YES)、前記作成部(30、S104)によって作成された度数分布から最大度数(Fmax)に対応するスタビリティファクタ演算値(Kh_cal1)を抽出し、同スタビリティファクタ演算値(Kh_cal1)に応じて車両のスタビリティファクタ(Kh)を決定する決定部(30、S111)と、を備える車両のスタビリティファクタ演算装置。
演算された複数のスタビリティファクタ演算値(Kh_cal)に基づいて度数分布を作成したときには、度数が最大となる値が、その時点の車両の実際のスタビリティファクタに最も近いと推定できる。そこで、上記構成では、最大度数(Fmax)に対応するスタビリティファクタ演算値(Kh_cal1)に応じて車両のスタビリティファクタ(Kh)が決定される。これにより、スタビリティファクタ(Kh)の演算精度を向上させることができるようになる。
(ロ)前記評価部(30、S109)は、除算値(P_hist)が規定除算値(HTh)よりも大きいとき(S109:YES)には、前記各スタビリティファクタ演算値(Kh_cal)のばらつきが小さいと評価することが好ましい。
(ハ)前記決定部(30、S111)は、
前記評価部(30、S109)によって複数のスタビリティファクタ演算値(Kh_cal)のばらつきが大きいと評価されたとき(S109:NO)には車両のスタビリティファクタ(Kh)の更新を禁止し、
ばらつきが小さいと評価されたとき(S109:YES)には前記各スタビリティファクタ演算値(Kh_cal)の少なくとも一つの値に応じて車両のスタビリティファクタ(Kh)を決定することが好ましい。
車両の横滑り中に取得された各種パラメータに基づいて演算されたスタビリティファクタ演算値(Kh_cal)が多い場合などのように各スタビリティファクタ演算値(Kh_cal)のばらつきが大きいときには、これら各スタビリティファクタ演算値(Kh_cal)に応じた車両のスタビリティファクタ(Kh)の更新が行われない。これにより、車両のスタビリティファクタ(Kh)の演算精度の低下を抑制することができるようになる。
(ニ)車両の横方向加速度(Gy)の変化が検知される(S202:YES)毎に、その時点のスタビリティファクタ(Kh)を用いて演算された規範ヨーレート(Yr_Trg)からヨーレートセンサ(SE4)によって検出されるヨーレートセンサ値(Yr_R)を差し引いた偏差(DYr)を演算する偏差演算部(30、S204)と、
前記偏差演算部(30、S204)による演算回数(Cnt)が規定回数(CntTh)を超えたときに(S207:YES)、同偏差演算部(30、S204)によって演算された各偏差(DYr)を、横方向加速度(Gy)の変化に対する偏差の変化量(ΔDYr)の小さい第1の横方向加速度領域(A1)と、偏差の変化量(ΔDYr)の大きい第2の横方向加速度領域(A2)とに分類する分類部(30、S209)と、
前記第1の横方向加速度領域(A1)に分類された偏差(DYr)に応じて車両のスタビリティファクタ(Kh)を決定する決定部(30、S211)と、を備える車両のスタビリティファクタ演算装置。
30…スタビリティファクタ演算装置としての制御装置(評価部、決定部、スタビリティ演算部、作成部、偏差演算部)、A1…第1の横方向加速度領域、A2…第2の横方向加速度領域、Cnt…演算回数としての演算回数カウント、CntTh…規定回数、DYr…偏差、F…度数、Fmax…最大度数、Gy…横方向加速度、HTh…ばらつき判定値、Kh…スタビリティファクタ、Kh_cal,Kh_cal1…スタビリティファクタ演算値、P_hist…除算値としてのばらつき指数、SE4…ヨーレートセンサ、Yr_R…ヨーレートセンサ値、Yr_Trg…規範ヨーレート、ΔDYr…偏差変化量。

Claims (5)

  1. 車両の横方向加速度(Gy)が変化する状況下(S102、S202:YES)で取得可能なスタビリティファクタ演算値(Kh_cal、ΔDYr)のばらつきを評価する評価部(30、S109、S209)と、
    ばらつきが小さいと評価された複数のスタビリティファクタ演算値(Kh_cal、ΔDYr)の少なくとも一つの値に応じて車両のスタビリティファクタ(Kh)を決定する決定部(30、S111、S211)と、を備える
    車両のスタビリティファクタ演算装置。
  2. 車両の横方向加速度(Gy)の変化が検知される(S102:YES)毎にスタビリティファクタ演算値(Kh_cal)を演算するスタビリティ演算部(30、S103)と、
    演算されたスタビリティファクタ演算値(Kh_cal)と度数(F)との関係を示す度数分布を作成する作成部(30、S104)と、をさらに備え、
    前記評価部(30、S109)は、前記スタビリティ演算部(30、S103)による演算回数(Cnt)が規定回数(CntTh)を超えたときに(S106:YES)、前記作成部(30、S104)によって作成された度数分布における最大度数(Fmax)を前記規定回数(CntTh)で除算した除算値(P_hist)によって前記各スタビリティファクタ演算値(Kh_cal)のばらつきを評価する
    請求項1に記載の車両のスタビリティファクタ演算装置。
  3. 前記決定部(30、S111)は、前記評価部(30、S109)によって前記各スタビリティファクタ演算値(Kh_cal)のばらつきが小さいと評価されたとき(S109:YES)には、前記作成部(30、S104)によって作成された度数分布から最大度数(Fmax)に対応するスタビリティファクタ演算値(Kh_cal1)を抽出し(S110)、同スタビリティファクタ演算値(Kh_cal1)に応じて車両のスタビリティファクタ(Kh)を決定する
    請求項2に記載の車両のスタビリティファクタ演算装置。
  4. 車両の横方向加速度(Gy)の変化が検知される(S202:YES)毎に、その時点のスタビリティファクタ(Kh)を用いて演算された規範ヨーレート(Yr_Trg)からヨーレートセンサ(SE4)によって検出されるヨーレートセンサ値(Yr_R)を差し引いた偏差(DYr)を演算する偏差演算部(30、S204)をさらに備え、
    前記評価部(30、209)は、前記偏差演算部(30、S204)による演算回数(Cnt)が規定回数(CntTh)を超えたときに(S207:YES)、横方向加速度(Gy)の変化に対する偏差の変化量(ΔDYr)の変化態様によってスタビリティファクタ演算値(Kh_cal)のばらつきを評価する
    請求項1に記載の車両のスタビリティファクタ演算装置。
  5. 前記評価部(30、S209)は、前記偏差演算部(30、S204)による演算回数(Cnt)が規定回数(CntTh)を超えたときに(S207:YES)、同偏差演算部(30、S204)によって演算された各偏差(DYr)を、偏差の変化量(ΔDYr)の小さい第1の横方向加速度領域(A1)と、偏差の変化量(ΔDYr)の大きい第2の横方向加速度領域(A2)とに分類し、
    前記決定部(30、S211)は、前記第1の横方向加速度領域(A1)に分類された偏差(DYr)に応じて車両のスタビリティファクタ(Kh)を決定する
    請求項4に記載の車両のスタビリティファクタ演算装置。
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