JP6379457B2 - 自動二輪車両における路面摩擦係数推定装置およびそれを用いたアンチロックブレーキ制御装置 - Google Patents

自動二輪車両における路面摩擦係数推定装置およびそれを用いたアンチロックブレーキ制御装置 Download PDF

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Description

本発明は、自動二輪車両において、一輪にのみ車輪速度センサを備えるようにした場合における路面摩擦係数推定装置およびそれを用いたアンチロックブレーキ制御装置に関するものである。
従来、自動二輪車両においては、前輪および後輪のそれぞれに対して車輪速度センサを備え、各車輪速度センサの検出信号から得られる車輪速度に基づいて、アンチロックブレーキ(以下、ABSという)制御を行うようにしている(例えば特許文献1参照)。具体的には、前後両輪の車輪速度にて推定車体速度を作成すると共に、この推定車体速度と各車輪速度との偏差で表されるスリップ率に基づいて各車輪のスリップを判定し、その判定結果に基づいてABS制御を実行している。
特開2002−96723号公報
しかしながら、装置構成の簡略化を目指して自動二輪車両におけるABS制御装置を例えば前輪一輪のみに備えるようにする場合、車輪速度センサにて検出される車輪速度も一輪分のみとなるため、各車輪のスリップを判定できず、精度良くABS制御を実行できない。各車輪のスリップを判定するには、精度良く路面摩擦係数(以下、路面μという)を推定できれば良い。具体的には、路面μに基づいて精度良く推定車体速度を演算し、これに基づいて各車輪のスリップを判定することができる。そして、このスリップの判定結果に基づいて精度良くABS制御を行えるようにすることが望まれる。
本発明は上記点に鑑みて、自動二輪車両において、一輪にのみ車輪速度センサを備える場合において精度良く路面μを推定できる路面μ推定装置を提供することを第1の目的とする。また、精度良く推定した路面μに基づいて、精度良くABS制御を行うことができるABS制御装置を提供することを第2の目的とする。
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、前輪のみに備えられた車輪速度を検出する車輪速度検出手段と、車両の減速要求に応じて前輪に制動力を付与する前輪制動力付与手段とを有する自動二輪車両における路面μ推定装置であって、減速要求に基づく制動開始時に、第1路面μに対応する所定制動力を所定期間保持付与し、当該所定期間中に前輪の車輪加速度が増加する場合には、自動二輪車両の走行路面の路面μが第1路面μ以上であると推定し、当該所定期間中に前輪の車輪加速度が減少する場合には、自動二輪車両の走行路面の路面摩擦係数が第1路面摩擦係数未満であると推定する摩擦係数推定手段を備えていることを特徴としている。
これによれば、制動開始時に、所定制動力を所定期間付与したときに生じた車輪加速度の復帰状態に基づいて路面μ推定を行っている。このように、車輪加速度の復帰に基づいて走行路面の路面μ推定を行うことが可能となる。
請求項2に記載の発明では、摩擦係数推定手段は、所定制動力を付与している所定期間中に前輪の車輪加速度が増加したときには、前輪制動力付与手段によって付与する制動力を、第1路面μに対応する所定制動力よりも増加させ、増加させた所定制動力を再び所定期間保持付与し、当該所定期間中における前輪の車輪加速度が増加するか否かに基づいて、自動二輪車両の走行路面の路面μが増加させた所定制動力に対応する第2路面μよりも大きいか否かを推定することを特徴としている。
このように、所定期間中に車輪加速度が復帰したときには、所定制動力を増加させて再び所定時間保持付与する。このようにすれば、車輪加速度が復帰しなかったときに、走行路面の路面μが前回発生させた所定制動力に対応する路面μ以上、かつ、今回発生させた所定制動力に対応する路面μ未満であると推定でき、路面μ推定が可能となる。
請求項3に記載の発明では、摩擦係数推定手段は、所定期間中に前輪の車輪加速度が前記増加させた所定制動力を発生させることにより想定される車輪加速度よりさらに所定の減圧閾値以上減少したときには、自動二輪車両の走行路面の路面μが第1路面μよりも大きく、かつ第2路面μ未満であると推定することを特徴としている。
このように、例えば所定制動力を発生させたときに生じた車輪加速度が、所定制動力を発生させることにより想定される車輪加速度よりさらに所定の減圧閾値以上に低下した場合に、実際の路面μに対応する値以上の制動力が発生させられた状態であると判定できる。これにより、走行路面の路面μが前回発生させた所定制動力に対応する路面μ以上、かつ、今回発生させた所定制動力に対応する路面μ未満であると推定でき、路面μ推定が可能となる。
請求項4に記載の発明では、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の路面μ推定装置を有し、車輪速度検出手段にて検出された車輪速度と路面μ推定装置にて推定された走行路面の路面μに基づいて推定車体速度を演算する車体速度演算手段と、推定車体速度と前輪の車輪速度との偏差で表されるスリップ率に基づいて、前輪のスリップを判定し、前輪にスリップが発生したと判定されると、前輪制動力付与手段として前輪に備えられるホイールシリンダに付与される圧力を減少する減圧制御を行ったのち、圧力を増加する増圧制御を行うことで、前輪のスリップを制御するABS制御手段と、を備えていることを特徴としている。
このように、路面μ推定装置による路面μの推定結果に基づいて、ABS制御を実行する際の推定車体速度の演算を行うことができる。これにより、自動二輪車両において、一輪にのみ車輪速度センサを備える場合であっても、精度良く路面μを推定できる路面μ推定装置とすることが可能となる。そして、このように推定された路面μに基づいて、精度良くABS制御を行うことが可能となる。
請求項5に記載の発明では、ABS制御時に、走行路面の路面μが変化するμジャンプを検出する摩擦係数変化判定手段を有し、該摩擦係数変化判定手段にてμジャンプが検出されたら、摩擦係数推定手段による走行路面の摩擦係数の推定をやり直す再推定手段を備えていることを特徴としている。
制動中に、路面μが変わるμジャンプが発生することも考えられるため、路面μ推定を行った後のABS制御中にμジャンプした要件を満たしているか否かを判定し、その要件を満たした場合には再び路面μ推定が行われるようにしている。これにより、制動中にμジャンプが発生したときに、過去に推定された誤った路面μに基づいて推定車体速度が演算されることを防止できる。そして、μジャンプ後に推定された正しい路面μに基づいて、精度良く推定車体速度が演算されるようにでき、精度良くABS制御を行うことが可能となる。
本発明の第1実施形態にかかる路面μ推定およびABS制御が実行される自動二輪車両用のブレーキシステム1の全体構成を示した図である。 車輪運動に関するモデル図である。 自動二輪車両の各種パラメータを示したモデル図である。 路面μ推定処理の詳細を示したフローチャートである。 路面μとスリップ率sの関係を示したμ−s特性図である。 ABS制御中における推定車体速度と前輪FWの車輪速度の変化を示したタイムチャートである。 路面μとスリップ率sの関係を示したμ−s特性図である。 路面μ推定を行った場合のタイムチャートである。
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について説明する。本実施形態では、ドライバのアクセル操作に基づいて後輪に対して駆動力が発生させられる後輪駆動の自動二輪車両に対する路面μ推定装置およびそれを用いたABS制御装置について説明する。
図1は、路面μ推定およびABS制御が実行される自動二輪車両用のブレーキシステム1の全体構成を示したものである。
自動二輪車両は、車両進行方向に位置する前輪FWと後退方向に位置する後輪RWとを有した車両であり、図1に示すブレーキシステム1は、前輪FWおよび後輪RWに対してブレーキを掛けるものである。このブレーキシステム1によってABS制御を実行するが、ABS制御の制御対象輪は両輪のうち前輪FWのみとしており、後輪RWについては制御対象輪とはしていない。
具体的には、図1に示すように、ブレーキシステム1は、前輪FWに対してブレーキ力(制動力)を発生させる系統と後輪RWに対してブレーキ力を発生させる系統の2つの配管系統を有した構成とされている。
図1に示されるように、ブレーキシステム1には、ハンドル右側に位置するブレーキレバー11と右足置き前方に位置するブレーキペダル12が備えられている。これらブレーキレバー11およびブレーキペダル12は、それぞれ前輪FWと後輪RWに対してブレーキ力を発生させるためのブレーキ操作部材に相当するものであり、ドライバにより独立して操作されるものである。これらブレーキレバー11およびブレーキペダル12は、前輪マスタシリンダ(以下、M/Cという)13aと後輪M/C13bなどを介して、第1、第2配管系統14、15を備えたブレーキ回路に接続されている。
具体的には、ブレーキレバー11は、前輪M/C13aなどを介して前輪FWに対してブレーキ力を発生させる第1配管系統14に接続されている。ブレーキペダル12は、後輪M/C13bなどを介して後輪RWに対してブレーキ力を発生させる第2配管系統15に接続されている。ブレーキレバー11やブレーキペダル12が操作されると、前輪M/C13aや後輪M/C13b内に発生させられたブレーキ液圧に基づいて、第1、第2配管系統14、15を通じて前輪FW側の前輪ホイールシリンダ(以下、W/Cという)16や後輪RW側の後輪W/C17に対してW/C圧を発生させ、これによりブレーキ力を発生させる。
前輪M/C13aと前輪W/C16との間には、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ2が備えられている。ブレーキ液圧制御用アクチュエータ2に備えられた各種制御弁等を制御することにより、第1配管系統14において、前輪W/C16に加えられるW/C圧を制御する。
ブレーキ液圧制御用アクチュエータ2には、前輪M/C13aと前輪W/C16とを接続する前輪側の主管路となる管路Aが備えられている。この管路Aを通じて、M/C圧が伝えられることによって前輪W/C16にW/C圧が発生させられる。
また、管路Aには、前輪W/C16へのブレーキ液圧の増圧を制御する増圧制御弁19が備えられている。増圧制御弁19は、連通・遮断状態を制御できる2位置弁として電磁弁により構成されている。この増圧制御弁19が連通状態に制御されると、M/C圧が前輪W/C16に加えられ、遮断状態になるとM/C圧が前輪W/C16に加えられないようにされる。
なお、ドライバが行うブレーキレバー11の操作による通常のブレーキ時には、増圧制御弁19は常時連通状態に制御される。このため、前輪M/C13aに発生させられたM/C圧がそのまま前輪W/C16のW/C圧として伝えられることになる。また、増圧制御弁19には安全弁19aが並列に設けられている。
管路Aにおける増圧制御弁19および前輪W/C16の間には減圧管路としての管路Bが接続され、この管路Bに対して調圧リザーバ20が備えられている。また、管路Bには、連通・遮断状態を制御できる2位置弁として、電磁弁からなる減圧制御弁21が配設されている。この減圧制御弁21は、通常ブレーキ時には、常時遮断状態とされている。
さらに、調圧リザーバ20と管路Aにおける前輪M/C13aと増圧制御弁19との間を結ぶように、還流管路となる管路Cが配設されている。この管路Cを通じて、ブレーキ解除時には、ABS制御時に調圧リザーバ20に貯留されていたブレーキ液をM/C13側に返流させられる。
調圧リザーバ20は、管路Cに接続されて前輪M/C13a側にブレーキ液を返流するリザーバ孔20aと、管路Bに接続され前輪W/C16から排出されるブレーキ液を受け入れるリザーバ孔20bとを備え、これらがリザーバ室20cと連通している。リザーバ孔20aより内側には、ボール弁からなる弁体20dが配設されている。この弁体20dは、弁座20eに離着することで管路Cとリザーバ室20cとの間の連通遮断を制御したり、弁座20eとの間の距離が調整されることでリザーバ室20cの内圧とM/C圧との差圧の調圧を行う。弁体20dの下方には、弁体20dを上下に移動させるための所定ストロークを有するロッド20fが弁体20dと別体で設けられている。また、リザーバ室20c内には、ロッド20fと連動するピストン20gと、このピストン20gを弁体20d側に押圧してリザーバ室20c内のブレーキ液を押し出そうとする力を発生するスプリング20hが備えられている。
このように構成された調圧リザーバ20は、所定量のブレーキ液が貯留されると、弁体20dが弁座20eに着座してリザーバ室20c内にブレーキ液が流入しないようになっている。このため、多くのブレーキ液がリザーバ室20c内に流動することがない。また、ブレーキ時には、M/C圧に基づいて弁体20dが弁座20eに接することで、リザーバ室20c内がブレーキ液で充填されないようにできる。
一方、第2配管系統15は、後輪M/C13bと後輪W/C17とを接続する後輪側の主管路となる管路Dが備えられている。この管路Dを通じて、M/C圧が伝えられることによって後輪W/C17にW/C圧が発生させられる。第2配管系統15は、第1配管系統14とは異なり、管路Dが備えられているだけで、各種制御弁などは備えられていない構成とされている。
以上のようにして第1、第2配管系統14、15を備えた自動二輪車両のブレーキシステム1におけるブレーキ回路が構成されている。そして、このようなブレーキ回路に備えられたブレーキ液圧制御用アクチュエータ2の各種制御弁19は、ブレーキ制御用の電子制御装置(以下、ブレーキECUという)4によって駆動される。
ブレーキECU4は、ブレーキシステム1の制御系を司るものであり、CPU、ROM、RAM、I/Oなどを備えた周知のマイクロコンピュータによって構成され、ROMなどに記憶されたプログラムに従って各種演算などの処理を実行する。このブレーキECU4が、本発明の路面μ推定装置やそれを用いたABS制御装置に相当している。ブレーキECU4は、前輪FWに備えられた車輪速度センサ5からの検出信号や各ブレーキレバー11やブレーキペダル12に取り付けられたブレーキスイッチ6の検出信号を入力する。そして、ブレーキスイッチ6の検出信号に基づいて制動中であることが検出された場合に、車輪速度センサ5の検出信号に基づいて、前輪FWの車輪速度を求めると共にその車輪速度を利用して路面μ推定を行ったり、車輪速度および推定した路面μに基づいて車輪スリップを判定し、ABS制御を実行する。以上のような構成により、本実施形態にかかるブレーキシステム1が構成されている。
このように構成されるブレーキシステム1では、例えば、ABS制御等が実行されない通常のブレーキ時には、ブレーキECU4から各種制御弁19、21への電流供給が行われない。このため、ブレーキレバー11やブレーキペダル12での操作量に応じたW/C圧が各W/C16、17に発生させられることになる。これにより、ブレーキレバー11やブレーキペダル12に応じたブレーキ力が前輪FWや後輪RWに発生させられる。
また、ABS制御時には、必要に応じて、ブレーキECU4から各種制御弁19、21への電流供給が行われる。例えば、減圧制御弁21が連通状態になると、管路Bを通じて管路Aと調圧リザーバ20が連通状態になり、W/C16に発生させられたW/C圧が減少させられ、車輪スリップが抑制されることで車輪ロックを回避することが可能となる。また、増圧制御弁19と減圧制御弁21が共に遮断状態になると、W/C16に発生させられたW/C圧が保持される。そして、増圧制御弁19が連通状態になり、減圧制御弁21が遮断状態になると、W/C16に発生させられるW/C圧が増加させる。このようにして、減圧制御や保持制御および増圧制御が行われることでABS制御が実行される。
続いて、このように構成されるブレーキシステム1により実行させる路面μ推定処理やそれに基づくABS制御処理について説明する。
上記したように、本実施形態にかかるブレーキシステム1は、自動二輪車両において前輪一輪にのみ車輪速度センサ5を備えた構成とされているが、このような構成とされる場合、前輪FWの車輪速度しか求められない。このため、従来のように、例えば前後二輪のうちの早い方の車輪速度を推定車体速度とするなどの手法によって推定車体速度を演算することができない。したがって、各車輪FW、RWのスリップを判定できず、精度良くABS制御を実行できない。
そこで、本実施形態では、路面μ推定処理によって路面μを推定する。そして、ABS制御では、推定した路面μに基づいて前輪FWのスリップを判定してABS制御を実行する。
以下、路面μ推定処理の詳細について説明するが、それに先立ち、本実施形態において実行する路面μ推定の基本的な考え方について、図2、図3を参照して説明する。
自動二輪車両の走行路面における路面μについては不明である。このため、ドライバもしくは車両制御による減速要求が出されたときに路面μ推定を行う。例えば、ドライバによるブレーキ操作時やアクティブクルーズコントロール等による減速要求が出されたときに路面μ推定が行われる。ここでは、その一例として、ドライバがブレーキ操作を行ってブレーキシステム1にてブレーキ力が発生させられる状況になったときに、路面μ推定を行う場合について説明する。
図2に示す車輪運動に関するモデルに表されるように、W/C圧に対応して車輪に発生させられるブレーキ力をB、荷重をW、車輪の半径をr、回転慣性をI、角加速度をω’とすると、次の運動方程式が成り立つ。
(数1) Iω’=μWr−Br
数式1中の右辺に示される第1項が第2項よりも大きければ車輪はグリップ状態で、第1項が第2項よりも小さければ車輪はスリップ状態である。したがって、所定のブレーキ力Bを発生させた場合に、路面μに応じて数式1中の第1項と第2項の大小関係が入れ替わる。また、第1項と第2項の大小関係の入れ替わりに伴って、数式1中の左辺に示されるIω’の正負の符号も入れ替わる。つまり、角加速度ω’の正負の符号に基づいて、第1項と第2項の大小関係の入れ替わりが判る。そして、角加速度ω’やその正負は車輪加速度(減速度)の変化から把握できることから、車輪速度を微分することで車輪加速度を演算し、さらにその車輪加速度から角加速度ω’やその正負を求めることができる。
このため、ブレーキ力Bを徐々に上げていき、車輪がスリップするのか車輪加速度が増加していって車輪速度が増加して復帰するのかを確認することで、路面μを推定する。例えば、路面μが比較的低い第1所定値μ1であると仮に設定してブレーキ力Bを上昇させる。ここで、路面μとして仮に設定される第1所定値μ1としては、走行路面における路面μとして想定される低い値、例えば圧雪路等の路面μ(=0.4)を適用している。実際の走行路面における路面μは、走行路面のうち路面μが低い場合に想定される第1所定値μ1以上となる可能性が高いことから、最初はその第1所定値μ1を路面μとして設定する。また、自動二輪車両の性能保証路面として設定されている路面における路面μを第1所定値μ1として用いるようにしても良い。
そして、所定制動力としてブレーキ力Bを所定時間保持し、車輪加速度が増加するか減少するかを確認する。このとき、実際の走行路面における路面μが第1所定値μ1より小さい場合(μ<μ1)には、Iω’=μWr−Br<0となり、角加速度ω’<0となる。このため、車輪加速度が減少する。逆に、実際の走行路面における路面μが第1所定値μ1以上である場合(μ≧μ1)には、Iω’=μWr−Br≧0となり、角加速度ω’≧0となる。このため、車輪加速度が増加する。
なお、自動二輪車両の各車輪FW、RWそれぞれに掛かる荷重をWf、Wrとした場合、基本的には各荷重Wf、Wrは自動二輪車両の重量を2で割った値として求められることから、前輪の荷重Wfを数式1に代入するようにしている。ただし、自動二輪車両の減速度αによって各車輪FW、RWに掛かる荷重Wf、Wrが変動する。具体的には、図3に示す車両モデルに示されるように、自動二輪車両の重心高さをh、ホイールベースをL、全体の荷重をW、重力加速度をgとすると、荷重変動ΔWは数式2で表される。したがって、路面μが第1所定値μ1よりも大きいときには、減速度αに伴って荷重変動ΔWが生じ、前輪FWの荷重Wfがより大きくなることから、より角加速度ω’が大きくなって、ω’>0となる。
(数2) ΔW=(W×α×h)/(g×L)
このようにして、車輪加速度が減少する場合には路面μが第1所定値μ1未満であると推定することができる。また、車輪加速度が増加する場合には、路面μが第1所定値μ1以上であることから、路面μが第1所定値μ1よりも大きな第2所定値μ2の場合に対応する値にブレーキ力Bを上昇させる。そして、所定制動力としてブレーキ力Bを所定時間保持し、上記と同様に、車輪加速度が増加するか減少するかを確認する。車輪加速度が減少すれば、路面μが第1所定値μ1より大きく第2所定値μ2未満であると推定することができ、増加すれば路面μが第2所定値μ2以上であると推定することができる。このような動作を繰り返すことで、路面μを推定することが可能となる。
このような路面μの推定方法に基づいて、路面μ推定処理を実行する。図4は、路面μ推定処理の詳細を示したフローチャートである。ブレーキECU4は、ブレーキ操作が行われて制動中となったときに、この図に示される各種処理を所定の制御周期(例えば6ms)毎に実行している。
まず、ステップ100では、ブレーキONの状態、つまり制動開始されたか否かを判定し、ブレーキONの状態の場合にのみステップ105以降に進む。ブレーキONの状態か否かについては、ブレーキスイッチ6の検出信号に基づいて判定している。
次に、ステップ105では、路面μ推定の開始初期時に保持する閾値となる加速度(以下、保持Gという)を決定する。ここでいう保持Gとは、路面μ推定に用いる閾値を規定する加速度であり、走行路面の路面μが所定の路面μである場合にブレーキ力Bを発生させることにより生じると想定される車輪加速度である。この保持Gは、実際の路面μが想定している路面μと異なっていた場合には適宜設定変更される。また、保持Gは、ブレーキ操作によって発生する車輪加速度の閾値となる値であることから、基本的には車輪減速度を表しており、負の値に設定される。上述したように、ブレーキ力Bを徐々に上げ、それを保持したときの車輪加速度の増減に基づいて路面μ推定を行うが、所定の路面μにおいてブレーキ力Bを発生させたときに発生させられる車輪減速度がほぼ決まっていることから、ブレーキ力Bを発生させたことにより生じた車輪加速度と保持Gとを比較することで、実際の路面μが想定している路面μであるか否かを判定する。初期時の保持Gは、想定される路面μとして最も低い第1所定値μ1において、ブレーキ力Bを発生させたことにより生じると想定される車輪加速度に設定される。
具体的には、ステップ110に進んで前輪FWのW/C圧を増加させる。このとき、増圧制御弁19を制御することでW/C圧を時間の経過に対して線形的に増圧させる。すなわち、ブレーキ操作に基づいて発生させられたM/C圧をそのまま前輪FWのW/Cに伝えるのではなく、増圧制御弁19を制御してW/C圧を所望の値に増加させるようにしている。そして、ステップ115に進み、車輪加速度が保持G以下であるか、つまり保持Gに対応する車輪減速度が発生したか否かを判定する。そして、上記したように初期の保持Gは、路面μが第1所定値μ1であるとしたときに想定される車輪加速度に設定されていることから、実際の路面μにかかわらず、保持Gまでは車輪加速度が減少していく。そして、ステップ115で肯定判定されるまではステップ110に進んでW/C圧を増圧する処理が繰り返され、肯定判定されるとステップ120に進む。
ステップ120では、W/C圧を保持する。そして、ステップ125に進み、車輪加速度が保持Gよりも大きいか否か、つまり車輪加速度が増加していって車輪速度が復帰した状態であるか否かを判定する。ここで肯定判定される場合には、実際の路面μが初期時の保持Gに対応する第1所定値μ1よりも大きいと考えられる。このため、ステップ130に進み、保持Gを初期時の値よりも大きな値に増やす。具体的には、路面μが第1所定値μ1よりも大きな第2所定値μ2であるとしたときに想定される車輪加速度を新しい保持Gとして設定する。この場合、ステップ110に戻って、ステップ110以降の処理を繰り返す。
一方、ステップ125で否定判定された場合には、実際の路面μがそのときに設定されている保持Gに対応する路面μ以下であると考えられる。例えば、保持Gが初期時の値であれば、実際の路面μが第1所定値μ1以下であると考えられ、保持Gが増加させられている場合には、その増加後の保持Gに相当する路面μ、例えば第2所定値μ2以下であると考えられる。この場合には、ステップ135に進む。
そして、ステップ135において、車輪加速度が減圧閾値未満に至っているか否かを判定する。ここでいう減圧閾値は、そのときに発生させられている保持Gに対してオフセットをつけて設定される値であり、例えば保持Gに対して−0.5Gのオフセットを加算した値とされる。初期時に設定された保持Gが例えば−0.4Gである場合、減圧閾値は−0.9Gとされる。すなわち、ステップ135では、ブレーキ力Bを発生させたときに生じた車輪加速度が、保持Gよりさらに所定の減圧閾値以上減少した場合に、実際の路面μに対応する値以上のブレーキ力Bが発生させられた状態であると判定している。
ここで肯定判定されればステップ140に進んで路面μ推定のために発生させていたW/C圧の増圧分を減圧する。そして、ステップ145に進んで、走行路面の路面μを前回設定された保持Gに対応する路面μ値以上、かつ、今回設定された保持Gに対応する路面μ値未満に設定する。例えば、前回設定された保持Gに対応する路面μが第1所定値μ1であり、今回設定された保持Gに対応する路面μが第2所定値μ2であれば、走行路面の路面μが第1所定値μ1以上、かつ、第2所定値μ2未満となる。
ここまでの処理により、路面μ推定を行うことが可能となり、その推定結果に基づいて、ABS制御等を実行する際の推定車体速度の演算を行うことができる。具体的には、推定した路面μに基づいてブレーキ力Bが発生させられたときに想定される減速度、つまり推定車体速度の減少勾配が決まることから、その減少勾配に基づいて推定車体速度を演算することができる。この減少勾配(減速度)は、路面μが高いほど大きくなり、推定車体速度が大きな減少勾配で低下していくことになる。
具体的には、今回の制御周期における推定車体速度をVS0(n)として、推定車体速度を次式に基づいて演算している。
(数3) VS0(n)=MID{VS0(n−1)+αDW×ΔT,VW,VS0(n−1)+αUP×ΔT}
つまり、推定車体速度VS0(n)を、「VS0(n−1)+αDW×ΔT」と「VW」および「VS0(n−1)+αUP×ΔT」の中間値に設定している。VS0(n−1)は、前回の制御周期における推定車体速度を示している。ΔTは、制御周期の1周期に相当する時間を示している。αDWは、制御周期の1周期中における推定車体速度の減少勾配として想定される最大値を示しており、αDW=保持Gとしている。αUPは、制御周期の1周期中における推定車体速度の増加として想定される最大値を示しており、路面μ推定値に応じた規定値が設定される。
そして、このように演算される推定車体速度と前輪FWの車輪速度との偏差で表されるスリップ率に基づいて前輪FWのスリップを判定し、その判定結果に基づいてABS制御を実行する。すなわち、ABS制御として、W/C圧を減少させる減圧制御、W/C圧を保持する保持制御、W/C圧を増加させる増圧制御を実行することで、前輪FWのスリップを適切な範囲となるように制御し、効率良く制動できるようにする。具体的には、前輪FWにスリップが発生したら減圧制御として減圧制御弁21を連通状態にしてW/C圧を減少させる減圧制御の実行タイミングを決定する。次に、減圧制御後に保持制御として増圧制御弁19および減圧制御弁21を遮断状態とすることでW/C圧を保持し、車輪速度が復帰して推定車体速度に近づくようにする。続いて、保持制御によって車輪加速度が上昇して車輪速度が推定車体速度まで復帰し、再び推定車体速度の減少に伴って車輪加速度が正から負に切り換わると、そのタイミングで増圧制御を開始し、増圧制御弁19を連通状態にすると共に減圧制御弁21を遮断状態として、再びW/C圧を増圧してブレーキ力Bを高める。このような動作を繰り返すことでABS制御を実行している。そして、上記手法により求めた路面μを用いて演算した精度良い推定車体速度に基づいてABS制御が実行されることから、精度良くABS制御を実行することが可能となる。
ただし、一旦路面μを推定したとしても、制動中に走行路面の路面μが急変してしまうμジャンプが発生することがある。その場合、路面μの推定値を変更しないと、誤った路面μに基づいて推定車体速度が演算されることになって好ましくない。したがって、ステップ150以降の処理を実行するようにしている。
ステップ150では、ステップ145で推定された路面μが比較的高い高μであるか否かを判定する。例えば、路面μの値が所定値(ここでは0.6)以上である場合に、路面μが高μであると判定している。ここで肯定判定された場合には、ステップ155に進み、第1の手法によって、走行路面の路面μが高μから比較的低い低μにμジャンプした要件を満たしているか否かを判定する。具体的には、角加速度ω’が第1閾値Th1未満であるか否かを判定することで、路面μが高μから比較的低い低μにμジャンプした要件を満たしているか否かを判定している。これについて、図5に示す路面μとスリップ率sの関係を示したμ−s特性図を参照して説明する。
走行路面の路面μが高μで均一の場合において、図5に示したように、ブレーキ力B(=μW)を徐々に増加させて、μAW→μBW→μPW→μQWまで増加させたとき、路面反力μWはμAW→μBW→μPW→μcWと変化する。基本的には、ブレーキ力Bと路面反力μWは同様の変化となるが、ブレーキ力BをμPWからμQWに増加させたとき、路面μのピークμPを超えてしまっているため、路面反力μWはμPWからμcWに変化する。
したがって、そのときの路面反力μcWとブレーキ力μQWに基づいて数式4が導出され、この式に表されるように角加速度ω’が負の値となる。そこで、車輪がスリップするため、ABS制御における減圧制御に入ってW/C圧が減少させられる。このとき、路面μがμAのところまでブレーキ力Bを減らすと、角加速度ω’が数式5に示されるように復帰する。
(数4) ω’=(μCW−μQWr)/I<0
(数5) ω’=(μCW−μAWr)/I>0
一方、ブレーキ力BをμPWからμQWに増加させたときに、走行路面の路面μが高μから低μにμジャンプすると、図5に示したように路面μがμCからμDに低下する。このため、数式6に示すように、角加速度ω’が負の値となる。そこで、車輪がスリップするため、ABS制御における減圧制御に入ってW/C圧が減少させられる。このとき、路面μがμAのところまでブレーキ力Bを減らすと、角加速度ω’が数式7に示されるように復帰する。
(数6) ω’=(μDW−μQWr)/I<0
(数7) ω’=(μDW−μAWr)/I>0
このように、走行路面の路面μが高μで均一の場合と高μから低μにμジャンプした場合とで、数式5、7に示したように復帰後の角加速度ω’に差が生じることになり、ブレーキ力Bを同じμQWrからμAWrに減圧したときの加速度ω’の復帰量について、後者よりも前者の方が大きくなる。このため、W/C圧の減圧量と角加速度ω’とに基づいて、走行路面の路面μの変化を判別することが可能となる。
したがって、W/C圧の減圧量に基づいて、走行路面の路面μが高μで均一の場合であるか低μにμジャンプしたかを判別するための第1閾値Th1を設定し、角加速度ω’が第1閾値Th1以上であればμジャンプが発生しておらず、第1閾値Th1未満であればμジャンプが発生したと判別できる。なお、W/C圧の減圧量は減圧時間に応じた値となることから、減圧制御時におけるW/C圧の減圧時間に基づいて、例えば係数K×減圧時間などから第1閾値Th1を設定することができる。
よって、ステップ155において肯定判定された場合にはμジャンプが発生した可能性があるため、路面μの推定のやり直しである再推定を行うべくステップ105に戻る。そして、ステップ155で否定判定された場合には、第1の手法においては、路面μが高μから低μにμジャンプした要件を満たしていないことから、ステップ160に進む。
続く、ステップ160では、ステップ155とは異なる第2の手法によって、走行路面の路面μが高μから低μにμジャンプした要件を満たしているか否かを判定する。具体的には、推定車体速度VS0の微分値DVS0が負から正に変わったときの推定車体速度VS0、つまり推定車体速度VS0の極小値VS0MINを、推定車体速度VS0の微分値DVS0が正から負に変わったときの推定車体速度VS0、つまり推定車体速度VS0の極大値VS0MAXから引いた差VS0MAX−VS0MINを求める。そして、この差VS0MAX−VS0MINが第2閾値Th2以上であるか否かを判定することで、路面μが高μから低μにμジャンプした要件を満たしているか否かを判定している。これについて、図6に示すABS制御中における推定車体速度と前輪FWの車輪速度の変化を示したタイムチャートを参照して説明する。
路面μが高μから低μにμジャンプした場合、上記手法で推定した路面μに基づいて演算される推定車体速度と実際の車体速度との差が大きくなっていく。つまり、図6に示すように、μジャンプが発生した時点から、高μと推定して演算された推定車体速度VS0(図中実線)が低μにおける実際の車体速度(図中破線)から離れていく。本実施形態のABS制御においては、車輪加速度が正から負に切り替わったときを増圧制御の開始タイミングとしており、車輪加速度が正から負に切り替わるタイミングは車輪速度が実際の車体速度に戻ったときである。そして、推定車体速度の演算は、車輪速度に基づいて行われていることから、車輪速度が高μと推定して演算された推定車体速度よりも上昇したら、その上昇した車輪速度に基づいて新たな推定車体速度VS0が演算されることになり、車輪速度に追従して推定車体速度VS0が上昇していくことになる。
したがって、走行路面が高μから低μにμジャンプした場合には、推定車体速度VS0の極大値VS0MAXと極小値VS0MINとの差VS0MAX−VS0MINが第2閾値Th2以上となり、μジャンプしていなければ第2閾値Th2未満となる。これに基づいて、走行路面が高μから低μにμジャンプしたか否かを判別できる。
よって、ステップ160において肯定判定された場合にはμジャンプが発生した可能性があるため、路面μの推定のやり直しを行うべくステップ105に戻る。そして、ステップ160で否定判定された場合には、第2の手法によっても、路面μが高μから低μにμジャンプした要件を満たしていないことから処理を終了する。
一方、ステップ150で否定判定された場合、すなわち走行路面が低μであると判定された場合には、ステップ165に進む。そして、ステップ165において、走行路面の路面μが低μから高μにμジャンプした要件を満たしているか否かを判定する。具体的には、角加速度ω’の復帰量が第3閾値Th3以上であるか否かを判定することで、路面μが低μから高μにμジャンプした要件を満たしているか否かを判定している。これについて、図7に示す路面μとスリップ率sの関係を示したμ−s特性図を参照して説明する。
路面μの推定によって路面μがμBであると推定していた場合、ブレーキ力Bが路面μとして推定したμBと対応する値(=μBW)超えたところで減圧制御に入る。このとき、ブレーキ力Bが低μのピークμBに対応するブレーキ力B(=μBW)よりも大きなμDWになったときに減圧制御に入り、それによってμBWよりも小さなμAWまで低下したとする。その場合において、走行路面の路面μが低μで均一の場合には、低μのピークμBに対応するブレーキ力B(=μBW)を超えているため、路面反力μWはμDWからμCWに変化している。一方、走行路面の路面μが低μから高μにμジャンプした場合には、路面反力μWはμDWとなる。このため、走行路面の路面μが低μで均一の場合には、角加速度ω’が数式8のように表されることになり、低μから高μにμジャンプした場合には、角加速度ω’が数式9のように表されることになる。
(数8) ω’=(μCWr−μAWr)/I
(数9) ω’=(μDWr−μAWr)/I
このように、走行路面の路面μが低μで均一の場合と低μから高μにμジャンプした場合とで、数式8、9に示したように復帰後の角加速度ω’に差が生じることになり、ブレーキ力Bを同じμDWrからμAWrに減圧したときの加速度ω’の復帰量について、後者の方が前者よりも大きくなる。このため、W/C圧の減圧量と角加速度ω’の復帰量とに基づいて、走行路面の路面μの変化を判別することが可能となる。
したがって、W/C圧の減圧量に基づいて、走行路面の路面μが低μで均一の場合であるか高μにμジャンプしたかを判別するための第3閾値Th3を設定し、角加速度ω’が第3閾値Th3未満であればμジャンプが発生しておらず、第3閾値Th3以上であればμジャンプが発生したと判別できる。なお、W/C圧の減圧量は減圧時間に応じた値となることから、減圧制御時におけるW/C圧の減圧時間に基づいて、例えば係数K×減圧時間などから第3閾値Th3を設定することができる。
よって、ステップ165において肯定判定された場合にはμジャンプが発生した可能性があるため、路面μの推定のやり直しを行うべくステップ105に戻る。そして、ステップ165で否定判定された場合には、路面μが低μから高μにμジャンプした要件を満たしていないことから処理を終了する。
図8は、上記のように路面μ推定を行った場合のタイムチャートである。図中に示すように、ブレーキONして制動中になると、車輪速度VWの低下に伴って推定車体速度VS0も低下していく。このときの推定車体速度VS0は上記した数式3に基づいて演算される。そして、初期の保持Gが決定されてそれに応じてW/C圧が増加させられると、車輪スリップが発生して車輪加速度VWが落ち込んでいく。このとき、初期時に設定された保持Gが例えば−0.4Gである場合、時点T1において車輪加速度VWが−0.4G以下になっても、走行路面の路面μが保持Gに対応する路面μ以上であれば車輪加速度VWが復帰する。
この場合には、保持Gが増やされ、例えば−0.5Gとされる。これに伴って、再び設定された保持Gに応じてW/C圧が増加させられ、車輪加速度VWが落ち込んでいく。そして、走行路面の路面μがそのときに設定された保持Gに対応する路面μ未満であれば車輪加速度DVWがさらに落ち込み、時点T2において減圧閾値未満にまで落ち込んだ場合には、路面μを前回設定された保持Gに対応する路面μ値以上、かつ、今回設定された保持Gに対応する路面μ値未満(0.4≦μ<0.5)に設定する。これにより、μ推定期間が終了となり、これ以降は推定車体速度VS0の演算に用いられるαDWの設定の際に上記のように推定された路面μ、具体的には推定設定された路面μのときの保持Gが用いられ、路面μに対応した推定車体速度VS0が演算させるようになる。
以上説明したように、制動開始時に、保持Gに対応するブレーキ力Bを発生させたときに生じた車輪加速度の復帰状態、つまり車輪加速度が増加して復帰するか否かに基づいて、路面μ推定を行うことができる。具体的には、保持Gに対応するブレーキ力Bを発生させたときに生じた車輪加速度が保持Gに対する減圧閾値のオフセット分以上に低下した場合に、実際の路面μに対応する値以上のブレーキ力Bが発生させられた状態であると判定している。これにより、走行路面の路面μが前回設定された保持Gに対応する路面μ以上、かつ、今回設定された保持Gに対応する路面μ未満であると推定でき、路面μ推定が可能となる。
したがって、その路面μの推定結果に基づいて、ABS制御等を実行する際の推定車体速度の演算を行うことができる。これにより、自動二輪車両において、一輪にのみ車輪速度センサ5を備える場合であっても、精度良く路面μを推定できる路面μ推定装置とすることが可能となる。そして、このように推定された路面μに基づいて、精度良くABS制御を行うことが可能となる。
さらに、制動中に、路面μが変わるμジャンプが発生することも考えられるため、路面μ推定を行った後のABS制御中にμジャンプした要件を満たしているか否かを判定し、その要件を満たした場合には再び路面μ推定が行われるようにしている。これにより、制動中にμジャンプが発生したときに、過去に推定された誤った路面μに基づいて推定車体速度が演算されることを防止できる。そして、μジャンプ後に推定された正しい路面μに基づいて、精度良く推定車体速度が演算されるようにでき、精度良くABS制御を行うことが可能となる。
(他の実施形態)
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。
例えば、上記実施形態では、制動中に路面μが変わるμジャンプが発生することを考慮して、路面μ推定後にも再び路面μ推定が行われるようにしたが、これについては必ずしも行う必要はない。また、路面μが高μと判定された場合に、高μから低μにμジャンプが発生した要件を第1、第2の手法の2つを用いて判定したが、いずれか一方のみで構わない。さらに、μジャンプの発生した要件の判定に用いた各種手法は一例を示したに過ぎず、他の手法を用いても良い。
また、上記実施形態では、ドライバのブレーキ操作に基づく減速要求によってブレーキ力を発生させたときに路面μ推定を行うと共にABS制御を実行する場合について説明した。しかしながら、これも単なる一例を示したに過ぎず、他の減速要求、例えばプリクラッシュ制御やアダプティブクルーズ制御などによる減速要求の際に、本発明にかかる路面μ推定やそれに基づくABS制御を実行しても良い。
なお、ブレーキECU4において各種処理を実行する部分、例えば各図中に示したステップ等が本発明における各種手段に対応するものである。すなわち、車輪速度センサ5の検出信号に基づいて車輪速度を検出する部分が車輪速度検出手段、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ2を制御して制動力を付与する部分が前輪制動力付与手段に相当する。また、図4中のステップ105〜145の処理を実行する部分が摩擦係数推定手段に相当する。また、推定した路面μに基づいて推定車体速度を演算する部分が車体速度演算手段、ABS制御を実行する部分がABS制御手段、ステップ150〜165の処理を実行する部分が摩擦係数変化判定手段、摩擦係数変化判定手段での判定結果に基づいてステップ105〜145の処理のやり直しを行う部分が再推定手段に相当する。
1…ブレーキシステム、2…ブレーキ液圧制御用アクチュエータ、4…ブレーキECU、5…車輪速度センサ、6…ブレーキスイッチ、11…ブレーキレバー、12…ブレーキペダル、16、17…W/C、19…増圧制御弁、20…調圧リザーバ、21…減圧制御弁

Claims (5)

  1. 車両進行方向に位置する前輪と車両後退方向に位置する後輪とを有する自動二輪車両に適用され、前記前輪のみに備えられた車輪速度を検出する車輪速度検出手段と、前記車両の減速要求に応じて前記前輪に制動力を付与する前輪制動力付与手段とを有する自動二輪車両における路面摩擦係数推定装置であって、
    前記減速要求に基づく制動開始時に、第1路面摩擦係数に対応する所定制動力を所定期間保持付与し、当該所定期間中に前記前輪の車輪加速度が増加する場合には、前記自動二輪車両の走行路面の路面摩擦係数が前記第1路面摩擦係数以上であると推定し、当該所定期間中に前記前輪の車輪加速度が減少する場合には、前記自動二輪車両の走行路面の路面摩擦係数が前記第1路面摩擦係数未満であると推定する摩擦係数推定手段を備えていることを特徴とする路面摩擦係数推定装置。
  2. 前記摩擦係数推定手段は、前記所定期間中に前記前輪の車輪加速度が増加したときには、前記前輪制動力付与手段によって付与する制動力を、前記第1路面摩擦係数に対応する所定制動力よりも増加させ、増加させた所定制動力を再び前記所定期間保持付与し、当該所定期間中における前記前輪の車輪加速度が増加するか否かに基づいて、前記自動二輪車両の走行路面の路面摩擦係数が前記増加させた所定制動力に対応する第2路面摩擦係数よりも大きいか否かを推定することを特徴とする請求項1に記載の路面摩擦係数推定装置。
  3. 前記摩擦係数推定手段は、前記所定期間中に前記前輪の車輪加速度が前記増加させた所定制動力を発生させることにより想定される車輪加速度よりさらに所定の減圧閾値以上減少したときには、前記自動二輪車両の走行路面の路面摩擦係数が前記第1路面摩擦係数よりも大きく、かつ前記第2路面摩擦係数未満であると推定することを特徴とする請求項に記載の路面摩擦係数推定装置。
  4. 請求項1ないし3のいずれか1つに記載の路面摩擦係数推定装置を有し、
    前記車輪速度検出手段にて検出された車輪速度と前記路面摩擦係数推定装置にて推定された前記走行路面の路面摩擦係数に基づいて推定車体速度を演算する車体速度演算手段と、
    前記推定車体速度と前記前輪の車輪速度との偏差で表されるスリップ率に基づいて、前記前輪のスリップを判定し、前記前輪にスリップが発生したと判定されると、前記前輪制動力付与手段として前記前輪に備えられるホイールシリンダに付与される圧力を減少する減圧制御を行ったのち、前記圧力を増加する増圧制御を行うことで、前記前輪のスリップを制御するアンチロックブレーキ制御手段と、を備えていることを特徴とするアンチロックブレーキ制御装置。
  5. 前記アンチロックブレーキ制御時に、前記走行路面の路面摩擦係数が変化するμジャンプを検出する摩擦係数変化判定手段を有し、該摩擦係数変化判定手段にて前記μジャンプが検出されたら、前記摩擦係数推定手段による前記走行路面の摩擦係数の推定をやり直す再推定手段を備えていることを特徴とする請求項4に記載のアンチロックブレーキ制御装置。
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