以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明を省略する場合がある。
なお、実施の形態において例示される各構成要素の寸法、材質、形状、それらの相対配置などは、本発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるものであり、本発明はそれらの例示に限定されるものではない。また、各図における各構成要素の寸法は、実際の寸法と異なる場合がある。
<実施の形態1>
図1は、本発明の実施の形態1に係るプリンタ1000の主要構成の側面図である。プリンタ1000は、例えば、熱昇華式記録を行うサーマルプリンタである。図1において、X,Y,Z方向の各々は、互いに直交する。以下の図に示されるX,Y,Z方向の各々も、互いに直交する。
以下においては、X方向と、当該X方向の反対の方向(−X方向)とを含む方向をX軸方向ともいう。また、以下においては、Z方向と、当該Z方向の反対の方向(−Z方向)とを含む方向をZ軸方向ともいう。
図1を参照して、プリンタ1000は、グリップローラー5と、ピンチローラー6と、サーマルヘッド4と、プラテンローラー10とを含む。なお、プリンタ1000は、記録用紙2と、インクリボン3とを取り付け可能に構成される。
記録用紙2は、ロール状の紙である。インクリボン3は、三原色(YMC)のインクが塗布されている。なお、インクリボン3には、インクがオーバーコートされていてもよい。
グリップローラー5およびピンチローラー6は、記録用紙2を搬送する。グリップローラー5、ピンチローラー6およびプラテンローラー10の各々は、円柱形状を有する。グリップローラー5、ピンチローラー6およびプラテンローラー10の各々は、Y軸方向に延在する。グリップローラー5とピンチローラー6とは、互いに対向して配置される。
サーマルヘッド4は、熱を発する。サーマルヘッド4は、プラテンローラー10に対向して設けられる。
次に、インクの転写の動作について簡単に説明する。
記録用紙2は、グリップローラー5とピンチローラー6とで挟まれ、プラテンローラー10とサーマルヘッド4との間へ搬送される。サーマルヘッド4は、プラテンローラー10を利用して、記録用紙2とインクリボン3とを挟む。サーマルヘッド4は、記録用紙2にインクの転写を行う。具体的には、サーマルヘッド4は、熱を発して、インクリボン3のインクを気化し、気化されたインクを、記録用紙2に転写(印画)する。
さらに具体的には、プリンタ1000は、1色目(例えば、Y)のインクを記録用紙2に印画した後、該記録用紙2を元の位置に戻す。そして、プリンタ1000は、次の色(例えば、M)のインクを記録用紙2に印画する。プリンタ1000は、各色のインクの印画毎に、記録用紙2の送り動作および戻し動作を繰り返し行う。プリンタ1000は、インクの転写を全て終えると、記録用紙2を所定の長さだけ送りだす。そして、プリンタ1000は、記録用紙2を所定の寸法に合せて切断し、切断された記録用紙2を、プリンタ1000の外部へ排出する。
(比較例)
ここで、記録用紙を容易に交換可能な構成を有する、比較例としてのプリンタについて説明する。
図9は、比較例に係るプリンタ2000の構成を示す側面図である。図9を参照して、プリンタ2000は、スライドベース7Nと、本体8Nとを含む。
本体8Nは、スライドベース7Nを収容可能な筐体として構成される。スライドベース7Nは、インクカセット9および記録用紙2を容易に交換できるように、X軸方向(左右方向)に移動可能に構成される。インクカセット9は、インクリボン3(図示せず)を保持する。
スライドベース7Nは、記録用紙2と、インクカセット9とを取り付け可能なように構成される。スライドベース7Nには、記録用紙2、インクカセット9、グリップローラー5、ピンチローラー6およびプラテンローラー10が組み込まれおり、スライドベース7が移動する場合、それらも移動する。
本体8Nには、サーマルヘッド4、ヒートシンク11Nおよび板金14が固定されている。具体的には、サーマルヘッド4と、該サーマルヘッド4を保持するヒートシンク11Nとが、板金14を介して、本体8Nに固定されている。
なお、サーマルヘッド4には、ヒーターライン25が設けられる。ヒーターライン25は、熱を発する線状の発熱体が配置されたラインである。すなわち、ヒーターライン25は、インクの転写を行うためのラインである。ヒーターライン25は、Y軸方向に沿って延在する。
また、本体8Nには、さらに、板部材12および板金14を介して、位置調整部材13が固定されている。位置調整部材13は、プラテンローラー10の位置を決めるための部材(位置決め部材)である。
プリンタ2000の使用時には、スライドベース7Nは、本体8N内に収容される。以下においては、スライドベース7Nが本体8Nに収容された状態を、収容状態ともいう。
図10は、比較例に係るスライドベース7Nが本体8Nに収容された状態を示す図である。なお、図10では、図を見やすくするために、本体8N側の構成要素は、点線で示している。
図11は、比較例に係るプリンタ2000の使用時における、プラテンローラー10、位置調整部材13およびサーマルヘッド4の位置関係を示す図である。図11(a)は、当該位置関係を示す斜視図である。図11(b)は、当該位置関係を示す側面図である。
図11(a)に示すように、プラテンローラー10は、さらに、回転軸10aを含む。プラテンローラー10は、回転軸10aを回転中心として回転する。
図11(a)および図11(b)に示すように、プリンタ2000の使用時には、プラテンローラー10の回転軸10aと位置調整部材13とが当接する。図11(b)に示すように、Z軸方向における、位置調整部材13の下端とヒーターライン25との距離Aにより、ヒーターライン25に対するプラテンローラー10の位置が決められる。以下においては、Z軸方向における、位置調整部材13の下端とヒーターライン25との距離を、設定距離ともいう。
なお、前述したように、サーマルプリンタでは、印画した際、熱によりインクリボンの背面のカスが、ヒーターライン付近に付着する。そのため、印画面にスジ状の印画欠点が発生する。そこで、プリンタ2000では、使用するインクリボンの特性に合わせて、印画欠点が最も目立たなくなるように、設定距離として、所定の距離Aが設定されている。
しかしながら、前述したように、一般に、インクリボンの背面の特性は、インクリボンの供給元により異なる。背面のカスの特性が異なれば、当該カスが付着する状態も異なるので印画欠点の現れ方も異なる。そのため、使用するインクリボンの特性(種類)に応じて、位置調整部材13とプラテンローラー10との距離を、印画欠点が最少となる距離に変更する必要がある。すなわち、印画欠点が最少となるように、位置調整部材13とプラテンローラー10との位置を決める必要がある。
しかしながら、比較例としてのプリンタ2000は、使用対象のインクリボンの特性(種類)に応じて、ヒーターラインとプラテンローラーとの相対位置を自在に変える(決める)ことはできないという問題がある。そのため、インクリボン3の供給元が違えば、個々にヒーターライン25とプラテンローラー10の相対位置が最適化されたプリンタ2000を準備する必要があり、コストの増加を招いていた。本実施の形態では、上記比較例で述べた上記問題を解決する。
(実施の形態1の詳細な構成)
次に、実施の形態1に係るプリンタ1000の構成をさらに詳細に説明する。本実施の形態では、プリンタ1000は、後述のインクカセット22A,22Bを選択的に使用して、図1で説明したように、記録用紙2にインクの転写を行う。図2〜図7は、実施の形態1において、プラテンローラー10の位置の調整を行うための機構の主要部の構成を示すものである。
図2は、本発明の実施の形態1に係るプリンタ1000の側面図である。図2を参照して、プリンタ1000は、スライドベース7と、本体8とを含む。スライドベース7および本体8は、インクリボン3および記録用紙2の交換が容易なように構成される。
本体8は、スライドベース7を収容可能な筐体として構成される。すなわち、スライドベース7は、本体8に収容可能である。なお、図2は、スライドベース7を、本体8から−X方向に少しだけ引きだした状態を示す。
スライドベース7は、記録用紙2と、インクカセット22A,22Bとを取り付け可能なように構成される。なお、スライドベース7に一度に取り付け可能なインクカセットの数は1つである。すなわち、スライドベース7は、インクカセット22A,22Bの一方を取り付け可能である。
インクカセット22A,22Bの各々は、樹脂で形成される。以下においては、インクカセット22A,22Bの各々を、総括的に、インクカセット22ともいう。各インクカセット22は、前述のインクリボン3を保持する。
スライドベース7は、インクカセット22(インクリボン3)および記録用紙2を容易に交換できるように、X軸方向(左右方向)に移動可能に構成される。スライドベース7には、グリップローラー5、ピンチローラー6およびプラテンローラー10が配置される(組み込まれる)。
以下においては、スライドベース7にインクカセット22および記録用紙2が取り付けられた状態を、取り付け状態ともいう。取り付け状態のスライドベース7には、さらに、インクカセット22および記録用紙2が配置される。取り付け状態のスライドベース7が移動すると、当該スライドベース7に配置された上記各構成要素も移動する。
本体8は、位置切替機構100と、板金14とを含む。位置切替機構100は、プラテンローラー10の位置を切替える(変化させる)構成を有する。位置切替機構100は、板金14を介して、本体8に固定される。
プリンタ1000の使用時には、スライドベース7は、本体8内に収容される。スライドベース7を本体8に収納させる構成は、図9および図10で示した構成と同様である。以下においては、スライドベース7が本体8に収容された、プリンタ1000の状態を、収容状態ともいう。
図3は、本発明の実施の形態1に係る位置切替機構100を詳細に示す図である。すなわち、図3は、ヒートシンク11、サーマルヘッド4およびそれらの周辺の詳細を示す図である。図3(a)は、位置切替機構100の斜視図である。図3(b)は、位置切替機構100の透視図である。
図2および図3を参照して、位置切替機構100は、前述のサーマルヘッド4と、ヒートシンク11とを含む。サーマルヘッド4、ヒートシンク11および板金14は、本体8に固定される。
具体的には、ヒートシンク11は、サーマルヘッド4を保持する。板金14は、ヒートシンク11を保持する。すなわち、ヒートシンク11は、板金14を介して、本体8に固定されている。
位置切替機構100は、さらに、位置調整部材15a,15bと、回転シャフト16と、板状ギア17と、ギア18と、レバー19と、スプリング20とを含む。
位置切替機構100は、詳細は後述するが、位置調整部材15aおよび位置調整部材15bの位置を移動可能に構成される。
位置調整部材15a,15bの各々は、詳細は後述するが、スライドベース7が本体8に収容された収容状態において、ヒーターライン25に対するプラテンローラー10の位置を決める部材である。
回転シャフト16の形状は、棒状である。回転シャフト16は、ヒートシンク11を貫通して、回転自在に該ヒートシンク11に設けられる。回転シャフト16の一方の端部には、位置調整部材15a,15bが設けられる。回転シャフト16の一方の端部は、回転シャフト16のうちのプラテンローラー10に近い部分である。位置調整部材15aと、位置調整部材15bとは、互いに上下反対で、かつ、対向するように設けられる。
具体的には、位置調整部材15aおよび位置調整部材15bは、回転シャフト16が回転することにより、位置調整部材15aの位置と位置調整部材15bの位置とが入れ替わるように、回転シャフト16に設けられる。すなわち、回転シャフト16を180度回転させることにより、位置調整部材15aおよび位置調整部材15bは、位置調整部材15aの位置と位置調整部材15bの位置とが入れ替わるように、回転シャフト16に設けられる。
回転シャフト16の他方の端部には、円状のギア18が固定されている。板状ギア17は、Z軸方向(上下方向)に移動可能なように、ヒートシンク11に設けられる。板状ギア17は、ギア17aを有する。また、板状ギア17は、ギア17aが、ギア18と噛み合うように設けられる。
レバー19の形状は、棒状である。レバー19は、板状ギア17に固定されている。すなわち、レバー19は、上下方向に移動可能なように構成される。板状ギア17は、スプリング20の弾性力により、下方向(−Z方向)へ引っ張られる(付勢されている)。具体的には、スプリング20の一方の端部は、レバー19に取り付けられている。スプリング20の他方の端部は、ヒートシンク11に設けられる突起部11aに取り付けられている。
このような構成により、レバー19を上方向(Z方向)へ移動させると、レバー19に固定された板状ギア17のギア17aとギア18との動作により、回転シャフト16は回転する。すなわち、回転シャフト16は、レバー19の移動に応じて回転する。つまり、レバー19の直線運動が、回転シャフト16の回転運動に変換される。
これにより、回転シャフト16の端部に設けられた位置調整部材15a,15bは、板状ギア17の移動量に応じて自在に回転する。すなわち、回転シャフト16が180度回転するように、レバー19を移動させると、位置調整部材15aの位置と位置調整部材15bの位置とを入れ替えることができる。
図4は、2種類の異なるインクリボンを使用する場合における位置切替機構100の状態を示す図である。なお、図4では、図の簡略化のため、スプリング20、突起部11a等は示していない。
本実施の形態では、一例として、特性の異なる2種類のインクリボン3が使用されるとする。以下においては、特性の異なる2種類のインクリボン3を、それぞれ、インクリボン3A,3Bとも表記する。インクリボン3Aは、供給元Aにより供給されるインクリボンである。インクリボン3Bは、供給元Bにより供給されるインクリボンである。
以下においては、インクリボン3Aを使用する場合における、位置調整部材15aの下端とヒーターライン25とのZ軸(上下)方向の距離を、設定距離A1ともいう。また、以下においては、インクリボン3Bを使用する場合における、位置調整部材15bの下端とヒーターライン25とのZ軸(上下)方向の距離を、設定距離B1ともいう。
本実施の形態において、ヒーターライン25は、記録用紙2にインクリボン3Aまたはインクリボン3Bのインクの転写を行うためのラインである。
ヒーターライン25に対するプラテンローラー10の最適な位置は、供給元のインクリボン特性により異なる。そのため、使用されるインクリボンに応じて、設定距離が変更される。設定距離A1,B1の各々は、前述の比較例で説明したように、インクのカスにより生じる印画欠点が最も目立たなくなるように設定された距離である。
図4(a)は、インクリボン3Aを使用する場合における位置切替機構100の状態を示す図である。図4(a)では、位置調整部材15aの下端が、プラテンローラー10の回転軸10aと当接している状態を示す。インクリボン3Aを使用する際には、位置調整部材15aの下端とヒーターライン25とのZ軸方向(上下方向)の距離は、設定距離A1に設定される。
図4(b)は、インクリボン3Bを使用する場合における位置切替機構100の状態を示す図である。図4(b)では、位置調整部材15bの下端が、プラテンローラー10の回転軸10aと当接している状態を示す。インクリボン3Bを使用する際には、位置調整部材15bの下端とヒーターライン25とのZ軸方向(上下方向)の距離は、設定距離B1に設定される。
本実施の形態では、インクリボン3Aを保持(収容)するインクカセットは、インクカセット22Aである。また、インクリボン3Bを保持(収容)するインクカセットは、インクカセット22Bである。すなわち、インクカセット22A,22Bは、それぞれ、インクリボン3A,3Bを保持する。
以下においては、インクカセット22Aがスライドベース7に取り付けられている場合の収容状態において、インクリボン3Aのインクの転写を行うための、ヒーターライン25に対するプラテンローラー10の位置を、位置LAともいう。位置LAは、インクリボン3Aのインクのカスにより生じる印画欠点が最も目立たなくなるように設定された、プラテンローラー10の位置である。
また、以下においては、インクカセット22Bがスライドベース7に取り付けられている場合の収容状態において、インクリボン3Bのインクの転写を行うための、ヒーターライン25に対するプラテンローラー10の位置を、位置LBともいう。位置LBは、インクリボン3Bのインクのカスにより生じる印画欠点が最も目立たなくなるように設定された、プラテンローラー10の位置である。
図5は、レバー19の位置の変化に伴う位置調整部材15a,15bの状態の変化を示す図である。また、図5は、レバー19の移動により、位置調整部材15aの位置と位置調整部材15bの位置とが入れ替わる一連の動作を説明するための図である。また、図5は、プラテンローラー10(回転軸10a)、ヒーターライン25、インクカセット22Bの位置関係を示した側面図である。
図6は、インクカセット22Bの構成を示す図である。図6(a)は、インクカセット22Bの構成を示す斜視図である。図6(b)は、図6(a)の領域R11の拡大図である。
図5および図6を参照して、インクカセット22Bには、緩衝部21が形成される。前述したように、インクカセット22Bは、樹脂で形成される。緩衝部21は、該緩衝部21に押力が加わった場合に撓み、押力がなくなると元の形状に戻るように構成される。すなわち、緩衝部21は、適度なばね性を有する。
また、図5に示されるように、本体8には、さらに、ストッパー29が設けられる。ストッパー29は、穴H2が設けられる。レバー19は、穴H2を貫通するように設けられる。穴H2のZ軸方向(上下方向)の長さは、回転シャフト16が180度回転するために必要な、レバー19を移動させる距離に設定される。
次に、図5を用いて、インクカセット22Bが取り付けられたスライドベース7を、本体8に収容させる場合の各部の動きについて説明する。詳細は後述するが、本実施の形態では、スライドベース7を本体8に収容させる動作によって、インクカセット22Bにより、位置調整部材15aの位置と位置調整部材15bの位置とを入れ替える。すなわち、スライドベース7を本体8に収容することにより、ヒーターラインに対するプラテンローラー10の位置が決められる。
なお、図5では、図を見やすくするために、一部の構成要素を簡略化または図示していない。例えば、インクカセット22Bは、形状を簡略化して示されている。また、例えば、インクカセット22Bは、輪郭線のみを表示している。また、例えば、図5(b)および図5(c)では、本体8を示していない。
図5(a)は、インクリボンを交換する為に、スライドベース7を、本体8から引き出した状態(以下、状態Aともいう)を示す図である。
図5(a)に示すように、スライドベース7には、長方形の穴H1が設けられる。プラテンローラー10の回転軸10aは、穴H1内に回転自在に設けられる。また、プラテンローラー10は、穴H1内において、回転軸10aがZ軸方向(上下方向)に移動可能なように構成される。また、プラテンローラー10の回転軸10aは、ばね28により、Z方向(上方向)へ押圧(付勢)されている。
状態Aから、スライドベース7を、本体8側へ移動させると、図5(b)のように、レバー19がインクカセット22Bの斜面22mに当接する。以下においては、図5(b)の状態を、状態Bという。
状態Bから、スライドベース7を、さらに、本体8側へ移動させると、レバー19は、該レバー19が当接している斜面22mによりZ方向(上方向)へ移動する。すなわち、インクカセット22Bは、プリンタ1000の状態を収容状態にするためのスライドベース7の移動に応じて、レバー19と当接することにより該レバー19を移動させる。
レバー19の移動とともに、レバー19に固定された板状ギア17もZ方向(上方向)へ移動する。また、板状ギア17の移動に伴い、ギア17aと噛み合っているギア18は回転する。また、ギア18の回転に伴い、該ギア18に固定された回転シャフト16も回転する。回転シャフト16の回転により、該回転シャフト16の端部に設けられた位置調整部材15a,15bも回転する。
状態Aから、回転シャフト16が180度回転すると、位置調整部材15aの位置と位置調整部材15bの位置とが入れ替わった図5(c)の状態(以下、状態Cともいう)となる。状態Aから、回転シャフト16が180度回転すると、レバー19はストッパー29に当接して停止する。図5(c)の斜視図は、前述の図6に示される。
状態Cから、スライドベース7を、さらに、本体8側へ移動させると、図5(d)のように、レバー19のZ軸方向の位置はそのままで、緩衝部21が撓む。以下においては、図5(d)の状態を、状態Dという。
プラテンローラー10の回転軸10aは、前述したように、ばね28によりZ方向(上方向)へ押圧(付勢)されている。そのため、回転軸10aは、位置調整部材15bに当接する。すなわち、位置調整部材15bは、インクカセット22Bがスライドベース7に取り付けられている場合の収容状態において、プラテンローラー10(回転軸10a)に当接することにより、前述の位置LBを決める。つまり、位置調整部材15bは、インクカセット22Bがスライドベース7に取り付けられている場合の収容状態において、インクリボン3Bのインクの転写を行うための、ヒーターライン25に対するプラテンローラー10の位置LBを決める。
以上により、位置切替機構100は、インクカセット22Bがスライドベース7に取り付けられている場合、プリンタ1000の状態を収容状態にするためのスライドベース7の移動に応じて、位置調整部材15bをプラテンローラー10(回転軸10a)に当接させる。この場合、インクカセット22Bがスライドベース7に取り付けられている場合の収容状態において、回転シャフト16は、位置調整部材15bがプラテンローラー10(回転軸10a)に当接するように回転する。これにより、位置切替機構100は、ヒーターライン25に対するプラテンローラー10の位置を決める。
すなわち、本実施の形態では、インクカセット22Bを利用して、レバー19を移動させる。インクカセット22Bは、スライドベース7に配置される。そのため、スライドベース7を、本体8に収容させる動作によって、レバー19を、上下方向に(Z軸方向)移動させる。これにより、ヒーターライン25に対するプラテンローラー10の位置を決める。
また、以上により、位置調整部材15bの下端とヒーターライン25とのZ軸方向(上下方向)の距離は、インクリボン3Bの使用ために設定された設定距離B1となる。すなわち、インクリボン3B用の位置調整部材15bとヒーターライン25の位置合わせがなされる。つまり、プラテンローラー10の位置合わせがなされる。
前述したように、インクカセット22Bは、樹脂で形成される。インクカセット22Bの一部を切り欠き、インクカセット22Bのうちレバー19と当接して力を受ける部分を薄く構成したものが、緩衝部21である。前述したように、緩衝部21は、適度なばね性を有する。この構成により、レバー19が、ストッパー29に当接して動くことが出来無くなった状態で、さらに力を加えたとしても、緩衝部21が撓んで力を吸収する。これにより、レバー19およびインクカセット22Bが破損するのを防止することができる。
また、インクリボンの交換時には、上記とは逆に、スライドベース7を、本体8から引き出す。この場合、上記で示した状態の逆の状態、すなわち、状態Dから状態Aへと移行する。なお、前述したように、レバー19は、図3のスプリング20により、下方向(−Z方向)へ引っ張られる(付勢されている)。そのため、状態Dから状態Aへと移行するに伴い、レバー19は、下方向(−Z方向)へ移動する。状態Dから状態Aへの移行するに伴い、位置調整部材15bの位置と、位置調整部材15aの位置とが入れ替わる。
次に、インクリボン3Aを保持するインクカセット22Aを使用する場合の構成について説明する。インクカセット22Aは、前述したように、供給元Aが供給するインクリボン3Aを保持(収容)する。
図7は、インクカセット22Aが取り付けられたスライドベース7を、本体8に収容した状態の斜視図である。前述したように、インクカセット22Aが取り付けられたスライドベース7が本体8に収容された状態を、収容状態ともいう。なお、図7では、図を見やすくするために、一部の構成要素(例えば、インクリボン3A、スライドベース7、本体8等)は図示していない。
以下においては、スライドベース7が本体8に収容されていないプリンタ1000の状態を、非収容状態ともいう。非収容状態は、スライドベース7が、本体8から引き出された状態である。
インクカセット22Aには、U字状の切り欠き23が設けられている。切り欠き23は、プリンタ1000の状態を、非収容状態から収容状態にするためのスライドベース7の移動の際に、インクカセット22Aをレバー19と当接させないように設けられる。これにより、スライドベース7を本体8に収容した状態でも、インクカセット22Aにより、レバー19が移動することはない。そのため、回転シャフト16も回転しない。したがって、回転シャフト16の端部に設けられた位置調整部材15a,15bの位置の切り替えは行われない。
これにより、インクカセット22Aが取り付けられたスライドベース7を、本体8に収容した場合、図4(a)のように、位置調整部材15aの下端が、プラテンローラー10の回転軸10aと当接する。すなわち、位置調整部材15aは、インクカセット22Aがスライドベース7に取り付けられている場合の収容状態において、プラテンローラー(回転軸10a)に当接することにより、前述の位置LAを決める。つまり、位置調整部材15aは、インクカセット22Aがスライドベース7に取り付けられている場合の収容状態において、インクリボン3Aのインクの転写を行うための、ヒーターライン25に対するプラテンローラー10の位置LAを決める。
以上により、位置切替機構100は、インクカセット22Aがスライドベース7に取り付けられている場合の収容状態において、位置調整部材15aをプラテンローラー10(回転軸10a)に当接させる。これにより、位置切替機構100は、ヒーターライン25に対するプラテンローラー10の位置を決める。
また、以上により、位置調整部材15aの下端とヒーターライン25とのZ軸方向(上下方向)の距離は、インクリボン3Aの使用ために設定された設定距離A1となる。すなわち、インクリボン3A用の位置調整部材15aとヒーターライン25との位置合わせがなされる。つまり、プラテンローラー10の位置合わせがなされる。
以上説明したように、本実施の形態によれば、インクカセット22A,22Bは、それぞれ、インクリボン3A,3Bを保持する。位置調整部材15aは、インクカセット22Aがスライドベース7に取り付けられている場合の収容状態において、インクリボン3Aのインクの転写を行うための、ヒーターライン25に対するプラテンローラー10の位置LAを決める。位置調整部材15bは、インクカセット22Bがスライドベース7に取り付けられている場合の収容状態において、インクリボン3Bのインクの転写を行うための、ヒーターライン25に対するプラテンローラー10の位置LBを決める。これにより、使用するインクリボンに応じた、ヒーターラインとプラテンローラーとの相対位置を決めることができる。
また、本実施の形態では、供給元A,Bに応じた専用のインクカセットを使用し、スライドベース7を本体8に収容させる動作により、ヒーターライン25に対するプラテンローラー10の位置を設定することができる。
具体的には、レバー19を移動させるためのインクカセット22Bと、レバー19を移動させないインクカセット22Aとを用意し、位置調整部材の切り替えの有無を選択出きるようにしている。すなわち、使用するインクリボンに応じて、インクカセットを使い分ける。
なお、供給元Aが供給するインクリボン3Aを使用する場合、ヒーターライン25に対するプラテンローラー10の位置は、位置調整部材15aおよび回転軸10aにより、設定距離A1に対応した位置となる。また、供給元Bが供給するインクリボン3Bを使用する場合、ヒーターライン25に対するプラテンローラー10の位置は、位置調整部材15bおよび回転軸10aにより、設定距離B1に対応した位置となる。
この結果、本実施の形態では、インクリボンの特性に応じて、ヒーターラインに対するプラテンローラーの位置が設定された複数のプリンタを準備する必要はない。また、各インクリボンに応じたインクカセットを使い分けるだけで、各インクリボンのインクに応じた最適な、ヒーターラインに対するプラテンローラーの位置を決めることができる。そのため、安価に且つ容易に、各インクリボンのインクに最適な印画を得ることが出来る。
<実施の形態2>
本実施の形態では、インクリボン3Bを保持(収容)するインクカセットを、インクカセット22Bの代わりに、インクカセット22BNとする。
図8は、本発明の実施の形態2に係るプリンタ1000Aの構成を示す図である。図8を参照して、プリンタ1000Aは、図5(a)のプリンタ1000と比較して、本体8の代わりに本体8Aを含む点が異なる。プリンタ1000Aのそれ以外の構成は、プリンタ1000と同様なので詳細な説明は繰り返さない。
なお、プリンタ1000Aには、インクカセット22A,22BNを取り付け可能である。プリンタ1000Aのスライドベース7にインクカセット22Aが取り付けられた状態において、スライドベース7を、本体8Aに収容させる際の各部の動作は、実施の形態1と同様である。
本体8Aは、図5(a)の本体8と比較して、ストッパー29を含まない点が異なる。本体8Aのそれ以外の構成は、本体8と同様なので詳細な説明は繰り返さない。以下においては、スライドベース7が本体8Aに収容された、プリンタ1000Aの状態を、収容状態ともいう。
図8(a)では、インクカセット22BNが取り付けられたスライドベース7を、本体8から引き出した状態(以下、状態A1ともいう)を示す図である。状態A1は、図5(a)の状態A1に相当する。
インクカセット22BNは、図5(a)のインクカセット22Bと比較して、緩衝部21の代わりに切り欠き27を含む点が異なる。すなわち、インクカセット22BNには、切り欠き27が設けられている。インクカセット22BNのそれ以外の構成は、インクカセット22Bと同様なので詳細な説明は繰り返さない。
なお、図8(a)および図8(b)では、図5と同様に、一部の構成要素を簡略化または図示していない。例えば、インクカセット22BNの形状は、簡略化して示される。
状態A1から、スライドベース7を、本体8A側へ移動させると、図5(b)と同様に、レバー19が斜面22mに当接する。そして、スライドベース7を、さらに、本体8A側へ移動させると、図5(c)と同様に、レバー19は、該レバー19が当接している斜面22mによりZ方向(上方向)へ移動する。
なお、レバー19の移動に伴い、図5(c)の説明と同様に、回転シャフト16も回転する。また、回転シャフト16の回転に伴い、回転シャフト16の端部に設けられた位置調整部材15a,15bも回転する。
切り欠き27は、レバー19の移動により、位置調整部材15aと位置調整部材15bとを、180°反転させる位置に設けられる。具体的には、切り欠き27は、状態A1から、回転シャフト16を180度回転させたときのレバー19を支持する位置に設けられる。すなわち、切り欠き27は、位置調整部材15bの位置が位置調整部材15aの位置と入れ替わった状態におけるレバー19を支持する。このとき、位置調整部材15bの下端とプラテンローラー10の回転軸10aは当接している。すなわち、位置調整部材15bの下端とヒーターライン25とのZ軸方向(上下方向)の距離は、インクリボン3Bの使用ために設定された設定距離B1となる。
以上により、インクカセット22BNは、プリンタ1000Aの状態を収容状態にするためのスライドベース7の移動に応じて、位置調整部材15bの位置を位置調整部材15aの位置と入れ替えるようにレバー19を移動させる。そして、切り欠き27は、位置調整部材15bの位置が位置調整部材15aの位置と入れ替わった状態におけるレバー19を支持する。これにより、インクカセット22BNがカムとして作用し、レバー19がフォロワーとして作用する。そのため、実施の形態1と同様の効果が得られる。
なお、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。
例えば、上記実施の形態では、2種類のインクリボンにそれぞれ対応する2種類のインクカセットを使用する例を記載した。しかしながら、これに限定されず、本発明は、3種類以上のインクリボンにそれぞれ対応する3種類以上のインクカセットを使用する場合にも適用可能である。