JP2014091896A - 下半身用衣類 - Google Patents

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Abstract

【課題】透明感と伝線しにくさとを併せ持つパンティストッキングを提供する。
【解決手段】このパンティストッキングは、第1の編糸として芯糸であるポリウレタン弾性糸61にナイロン糸71を巻き付けたカバリング糸51を用いて、かつ、第2の編糸としてポリウレタン弾性糸62とナイロン糸72とを交絡させたエア交絡糸52を用いて、これらが交互に編成されている。編地において、ポリウレタン弾性糸61とポリウレタン弾性糸62とが熱融着しているとともに、ナイロン糸72がフラットな状態で露出している。
【選択図】図4

Description

本発明は、パンティストッキングに代表される下半身用衣類(パンティストッキング型およびレッグ部のみのストッキング、ショートストッキング、靴下、フットカバー、タイツ、スパッツ等)に関し、特に、伝線しにくく、かつ、透明感のある下半身用衣類に関する。
近年の生活習慣上、人が靴を履くときに足に装着する衣類としての靴下を多くの人々が使用している。そのような衣類の中で、特に、女性の下半身を覆うストッキングは、外出時における女性の脚部の保護および保温さらには脚線美の向上の観点等から、広く世間に浸透している。
現在市販されているほとんどのストッキングは、ナイロン糸、または、ナイロン糸とポリウレタン糸とで編まれている。使用している糸により、「交編」および「ゾッキ」の2種類に大別される。
交編(交編編み)は、ナイロン糸と、サポート糸(ポリウレタン糸にナイロン糸を巻き付けたカバリング糸)を交互に使用して編成する。ある程度のサポート(弾性)力および透明感の両方を求めるときに好適である。太さの異なる2種類の糸を使用するため横縞模様が表れる。
ゾッキ(ゾッキ編み)は、一般的にはサポート糸(ポリウレタン糸にナイロン糸を巻き付けたカバリング糸)だけで編成されているものが多い。良好なフィット性を求めるときに好適である。また、いわゆる伝線(使用中に編み組織の一部に引掛傷ができ糸が切れると生成される編組織が解編されたはしご状の線)が発生しにくいという特徴を備えたゾッキ編みのストッキングが、最近では増えてきている。
上述した伝線を防止するストッキングが実用新案登録第3155863号公報(特許文献1)に開示されている。この特許文献1は、2種類の糸を使用して編成するために伝線の発生を防止できない交編タイプのストッキングとは異なるゾッキタイプのストッキングを開示する。このストッキングは、地糸として合着ポリウレタン糸を芯糸にしたカバリング糸を使用してゾッキ編みにより編成されてなることを特徴とする。また、このようなストッキングにおいて、所定個所の編目に芯糸と組み合わせる柄糸として合着ポリウレタン糸を芯糸にした他のカバリング糸を用いることにより柄を表現する。
実用新案登録第3155863号公報
特許文献1に開示されたストッキングによると、合着ポリウレタン糸を用いて編成したストッキングを熱セットすることにより合着ポリウレタン糸の接触部において離れ難くなり、簡単に伝線することが防止できる。なお、このようなことは、従来(特許文献1の出願日前)から広く知られている、融着ポリウレタン糸を用いて編成したストッキングを熱セットすることにより融着ポリウレタン糸の接触部において離れ難くなり簡単に伝線することが防止できることと何ら変わりがない。
しかしながら、熱合着糸を用いようが、熱融着糸を用いようが、このような熱合着糸または熱融着糸を柄糸に用いようが、ゾッキ編みされたストッキングは、上述したように良好なフィット性を備え、さらに伝線のしにくさも備えるが、交編編みされたストッキングのように透明感を得ることはできない。透明感と伝線のしにくさとの関係については、交編編みされたストッキングは、透明感があるが伝線しやすく、ゾッキ編みされたストッキングは、伝線しにくいが透明感がないという、透明感と伝線しにくさとがトレードオフの関係(一方を追求すれば他方を犠牲にせざるを得ないという二律背反の関係)になっている。このため、従来は、透明感と伝線しにくさとを併せ持つストッキングは、実現し得な
いのが当業者の常識であった。本出願人は、このような常識を覆すべく鋭意開発を進め、トレードオフの関係である透明感と伝線しにくさとを併せ持つ画期的なストッキング(下半身用衣類)を実現するに至った。
本発明は、従来技術の上述の問題点に鑑みて開発されたものであり、その目的とするところは、透明感と伝線しにくさとを併せ持つ下半身用衣類を提供することである。
上記目的を達成するため、本発明に係る下半身用衣類は以下の技術的手段を講じている。
すなわち、本発明に係る下半身用衣類は、第1の編糸および第2の編糸を含んで編成した下半身用衣類であって、前記第1の編糸は、ウレタン系弾性糸の芯糸に非弾性糸の捲糸を巻着させたカバリング糸であって、前記第2の編糸は、ウレタン系弾性糸と非弾性糸とを含む糸であって、撚り合わせられていないことを特徴とする。
好ましくは、前記第2の編糸は、ウレタン系弾性糸と非弾性糸とを含む交絡糸であるように構成することができる。
さらに好ましくは、前記第2の編糸は、ウレタン系弾性糸と非弾性糸とを含むエア交絡糸であるように構成することができる。
さらに好ましくは、前記第2の編糸は、ウレタン系弾性糸と非弾性糸とを引き揃えた糸であるように構成することができる。
さらに好ましくは、前記ウレタン系弾性糸はポリウレタン弾性糸で構成し、前記非弾性糸はナイロン糸で構成することができる。
さらに好ましくは、前記ウレタン系弾性糸は、熱融着性ポリウレタン糸で構成することができる。
さらに好ましくは、前記ウレタン系弾性糸は、熱合着性ポリウレタン糸で構成することができる。
さらに好ましくは、前記下半身用衣類は、ストッキング(ショートタイプを含む)、パンティストッキング、タイツおよび靴下のいずれかであるように構成することができる。
本発明に係る下半身用衣類によれば、従来は実現し得なかった画期的な、透明感と伝線しにくさとを併せ持つ下半身用衣類を提供することができる。
本発明の実施の形態に係るパンティストッキングの概略正面図である。 図1のパンティストッキングを編成するカバリング糸を説明するための図である。 図1のパンティストッキングの編み組織を示す図面代用写真である。 図3のパンティストッキングの編み組織の構成を模式的に示す図である。 従来例であるゾッキ編みされたパンティストッキングの編み組織を示す図面代用写真である。 図5のパンティストッキングの編み組織の構成を模式的に示す図である。 従来例である交編編みされたパンティストッキングの編み組織を示す図面代用写真である。 図7のパンティストッキングの編み組織の構成を模式的に示す図である。
以下、本発明の実施の形態として、下半身用衣類の一例であるパンティストッキング1を、図面に基づき詳しく説明する。なお、本発明は、このパンティストッキング1のレッグ部2に好適に適用される。
[下半身用衣類]
図1に、本実施の形態に係るパンティストッキング1の概略正面図を示す。このパンティストッキング1は、腹部および臀部を被覆するパンティ部3と、脚を被覆するレッグ部2とを備えるものである。このパンティストッキング1は、筒状に編成された1対の編地を用い、パンティ部3に相当する部分に切れ目を入れて裁断縁どうしをつき合わせて股部
4を縫着して一体化することにより製造される。また、足部の爪先部は周知の手段により、袋状に縫着することにより製造される。このような製造工程の最終工程において、熱セット(湿熱セット)が行われる。
この熱セットは、後述するように、第1の編糸であるカバリング糸の芯糸を構成するウレタン系弾性糸に熱融着糸または熱合着糸を用いて、かつ、第2の編糸である糸(詳しくは後述するエア交絡糸)を構成するウレタン系弾性糸に熱融着糸または熱合着糸を用いて、熱融着糸どうしの接触部において繊維どうしが融着して離れ難くなるようにセットしたり、熱合着糸どうしの接触部において繊維どうしが合着して離れ難くなるようにセットしたりすることにより、簡単に伝線することを防止することを目的とする。この熱セットは、熱融着糸または熱合着糸に対応した所望の条件(温度、時間等)で行われる。
なお、本発明において、対象をパンティストッキングとしているが、部分的にその機能を備えたスパッツ等を含むこと、および、厚地の編地を用いるタイツを含むこと、その他の下半身用衣類を含むことは、技術分野で上述した通りである。
[編地]
本実施の形態に係るパンティストッキング1を構成する編地は、図2に示すカバリング糸(SCY:Single Covered Yarn)5(51)を第1の編糸として用いて、かつ、撚り合わせられていない糸を第2の編糸として用いて、編み組織として図3および図4に示すように平編ループ8で編成された伸縮性平編地で構成される。後述するように、第1の編糸として、ウレタン系弾性糸(ポリウレタン弾性糸6(61))の芯糸に非弾性糸(ナイロン糸7(71))の捲糸を巻着させたカバリング糸51を用いて、第2の編糸として、ウレタン系弾性糸(ポリウレタン弾性糸62)と非弾性糸(ナイロン糸72)とを含む撚り合わせられていない糸(後述するエア交絡糸52)を用いたという特徴を有する編地であれば特に制限されるものではなく、平編地、ゴム編地、パール編地等の編地を好適に用いることができ、その変化組織として、タック編、浮編、パイル編、レース編とすることもできる。また、図4においてはナイロン糸71をモノフィラメントとしてナイロン糸72をマルチフィラメントとして表しているが、後述するように、ナイロン糸71もマルチフィラメントであっても構わないし、ナイロン糸72はモノフィラメントであっても構わない。なお、図4においてマルチフィラメントで表されたナイロン糸72を構成するナイロン単糸72A、72B、72Cの繊度は、現実よりも太く表されている。
なお、図3は軽く伸張させた状態の編み組織の拡大写真であって、図4は、軽く伸張させた状態の編み組織を模式的に表した理想的な図である。このため、図4(ならびに後述する図6および図8)は、あくまでも理想的(模式的、対称的)に記載されたものであって、平編ループ8におけるカバリング糸51を構成するウレタン系弾性糸であるポリウレタン弾性糸61および非弾性糸であるナイロン糸71の状態、ならびに、平編ループ8におけるエア交絡糸52を構成するウレタン系弾性糸であるポリウレタン弾性糸62および非弾性糸であるナイロン糸72の状態は、現実のもの(図3)と異なっている。なお、上述したように、ナイロン糸72は3f(フィラメント)のマルチフィラメントである。
このパンティストッキング1の特徴的な構成は、ウレタン系弾性糸の芯糸に非弾性糸の捲糸を巻着させたカバリング糸(第1の編糸)と、ウレタン系弾性糸と非弾性糸とを含む撚り合わせられていない糸(第2の編糸)とを交互に用いて編成することであって、第2の編糸は、ウレタン系弾性糸と非弾性糸とを含む交絡糸(特にエア交絡糸)であったり、ウレタン系弾性糸と非弾性糸とを(単に)引き揃えた糸であったりすることを特徴とする。本実施の形態における以下の説明においては、第2の編糸は、ウレタン系弾性糸と非弾性糸とを含むエア交絡糸52であるとする。
図3および図4に示すように、平編ループ8は、ウレタン系弾性糸であるポリウレタン弾性糸61を芯糸として、非弾性糸であるナイロン糸71を捲糸として巻き付けた、第1の編糸であるカバリング糸51(芯糸がポリウレタン弾性糸61で捲糸がナイロン糸71)および第2の編糸であるエア交絡糸52(ポリウレタン弾性糸62(図4ではモノフィラメント)とナイロン糸72(図4ではマルチフィラメント)とをエア交絡させた糸)の
2種類で編成するという、新たな概念の交編編みで編成されている。なお、上述したように、ゾッキ編みとは編糸の構成が1種類のサポート糸(同じポリウレタン糸に同じナイロン糸を同じように(同じドラフト率で単位長さあたり同じ巻き数で)巻き付けたカバリング糸)だけで編成するものであるため、このように編糸の構成が異なる第1の編糸(カバリング糸51)および第2の編糸(エア交絡糸52)を用いた平編ループ8は、ゾッキ編みに対して新たな概念の交編編みと記載している。
[編糸]
以下において、第1の編糸であるカバリング糸51および第2の編糸であるエア交絡糸52を構成するウレタン系弾性糸(ポリウレタン弾性糸61、ポリウレタン弾性糸62)および非弾性糸(ナイロン糸71、ナイロン糸72)について詳しく説明する。
カバリング糸51の芯糸およびエア交絡糸52を構成するウレタン系弾性糸としては、熱処理(特に湿熱処理)によりこの糸どうしが離れがたくなる繊維であれば限定されるものではなく、熱融着するウレタン系弾性糸であっても、特許文献1に開示された熱合着するウレタン系弾性糸であっても構わない。ここでは、ウレタン系弾性糸として、熱セット性、伸度および耐久性の面からより好ましい、熱融着性のポリウレタン弾性糸61、62とする。
さらに、このポリウレタン弾性糸61、62は、エーテル結合を持つエーテルタイプであってもエステル結合を持つエステルタイプであっても構わない。その繊度は、パワー(緊縛力)が強すぎることなく最適なパワーとなる範囲のものであれば特に限定されない。
なお、このポリウレタン弾性糸61、62のフィラメント数はモノフィラメントおよびマルチフィラメントのいずれでもよく、さらに、このポリウレタン弾性糸61、62の繊度およびフィラメント数は、(最適なパワーとなる範囲のものであれば)特に限定されるもでのはなく、通常パンティストッキングに用いられる繊度であれば構わない。
カバリング糸51の捲糸およびエア交絡糸52を構成する非弾性糸としては、熱融着性のポリウレタン弾性糸61の周囲に被覆される非弾性糸として好適に使用できる糸、および、熱融着性のポリウレタン弾性糸62に交絡される非弾性糸として好適に使用できる糸であればよいが、このような非弾性糸としては、ナイロン糸71、72が代表的に使用できる。
後述するように、ウレタン系弾性糸としてポリウレタン弾性糸62を用いて、かつ、非弾性糸としてナイロン糸72を用いて、本発明の特徴的な構成(撚り合わせられていない構成)で第2の編糸であるエア交絡糸52を構成することにより、パンティストッキング1に透明感(タイツの場合には透け感)を与えつつ伝線を防止することができる。パンティストッキング1に透明感を与えることができる非弾性糸であればナイロン糸72に限定されるものではない。
なお、このナイロン糸71、72のフィラメント数はモノフィラメントおよびマルチフィラメントのいずれでもよく、さらに、このナイロン糸71、72の繊度は、特に限定されるもでのはなく、パンティストッキングに通常用いられる繊度であれば構わない。たとえば、ナイロン糸71および/またはナイロン糸72としては、8dtexの5f(フィラメント)、13dtexの3〜5f、17dtexの3〜5f、22dtexの3〜7f等が好ましい。
なお、審美性、実用性、コストの点から通常パンティストッキングにおいては、ポリウレタン弾性糸61、62の繊度は11〜470dtex、好ましくは11〜156dtex、特に好ましくは、11〜78dtex、であって、ナイロン糸71、72の繊度は上述した範囲を含む5.5〜156dtex、特に8〜78dtexとすることが好ましい。
さらに、このようなポリウレタン弾性糸61およびナイロン糸71を用いたカバリング糸51、ならびに、ポリウレタン弾性糸62およびナイロン糸72を用いたエア交絡糸52について説明する。
上述したように、第1の編糸として用いられるカバリング糸51は、パンティストッキング用の通常のSCYであって、第2の編糸として用いられるエア交絡糸52は、ポリウ
レタン弾性糸62とナイロン糸72(72A、72B、72C)が、実質的に撚り合わせられていないことを特徴とする。
ここで、エアー交絡糸とは、巻取機で巻き取られるために走行する糸束(ポリウレタン弾性糸62とナイロン糸72(72A、72B、72C))に高圧空気を噴射することにより、糸束を構成する繊維の配列を乱すことにより絡み合わせられた糸(撚り合わせられていない糸)をいう。第1の編糸であるカバリング糸51とは異なり、撚り合わせられていないことを最大の特徴とする。なお、このエア交絡糸は、インターレース糸または混繊糸等と呼ばれる場合もある。
このように編糸として、SCYおよびエア交絡糸を用いると、後述するように、ポリウレタン弾性糸61とポリウレタン弾性糸62とが熱融着して伝線することを防止できるとともに、ナイロン糸72が撚りや捲縮なくフラットな状態で露出してパンティストッキング1に透明感を与えることができる。
[編地の詳細構造および作用効果]
以上のようなカバリング糸51およびエア交絡糸52により編成された平編地の構造および作用効果について、図3および図4を参照して説明する。上述したように、図4はナイロン糸72がマルチフィラメント(捲縮がなくフラットな生糸(なまいと))の例である。
なお、比較のために、従来例であるゾッキ編みされたパンティストッキングの編み組織を図5および図6に、従来例である交編編みされたパンティストッキングの編み組織を図7および図8に、それぞれ示す。図5および図7は図3に、図6および図8は図4に、それぞれ対応する。また、図4および図6においては、カバリング糸51の芯糸であるポリウレタン弾性糸61は、他のポリウレタン弾性糸との交点(接点)において(巻着糸であるナイロン糸が巻着されているが)ポリウレタン弾性糸どうしが接して(熱融着して)いる。
また、図4においては、ポリウレタン弾性糸61、62およびナイロン糸71はモノフィラメント、ナイロン糸72はナイロン単糸72A、72B、72Cを引き揃えたマルチフィラメントとして、図6においては、ポリウレタン弾性糸61およびナイロン糸71はモノフィラメントとして、図8においては、ポリウレタン弾性糸61およびナイロン糸71はモノフィラメントとして、ナイロン糸9はナイロン単糸91を引き揃えたマルチフィラメントとして表している。
しかしながら、ポリウレタン弾性糸61、62は、同じ構成(組成、繊度、フィラメント数等)であっても異なる構成であっても構わないし、ナイロン糸71、72も、同じ構成であっても異なる構成であっても構わない。さらに、ナイロン糸9も、ナイロン糸71、72と同じ構成であっても異なる構成であっても構わない。
図3および図4に示すように、本実施の形態に係るパンティストッキング1の編地において、カバリング糸51は、芯糸であるポリウレタン弾性糸61に捲糸であるナイロン糸71が巻着した状態をほぼ維持している(ただし、ポリウレタン弾性糸どうしの接点ではポリウレタン弾性糸にはナイロン糸が巻着されているがポリウレタン弾性糸どうしが熱融着している)。それに対して、エア交絡糸52は、カバリング糸ではなく撚り合わせられていないので、ナイロン糸72(ナイロン糸72がモノフィラメントであってもマルチフィラメントであっても)がほぼフラットな状態(カバリング糸51に比較して撚りがなく巻着していない状態)である。すなわち、エア交絡糸52は、ポリウレタン弾性糸62にナイロン糸72が巻着されているものではなく、また、ポリウレタン弾性糸62とナイロン糸72とが撚り合わせられているものでもない、エア交絡糸である。このようにナイロン糸72は、エア交絡糸(交絡糸または引き揃え糸であっても構わない)であるために(ナイロン糸9のようであるために)、仮撚糸のように捲縮があるものではなく、フラットヤーンの態様を備える。
通常、パンティストッキング1は、ポリウレタン弾性糸61、62ではなく、ナイロン糸71、72を所望の色に染色することにより発色させている。ポリウレタン弾性糸61、62は、通常は透明であるものが多い。ただし、近年では、原着ポリウレタン弾性糸(
いわゆる原着糸)、可染ポリウレタン弾性糸も開発され、着色されたポリウレタン弾性糸も存在する。ポリウレタン弾性糸が透明である場合であっても着色されている場合であっても、パンティストッキング1を発色させるとき、染色されたナイロン糸72が重なり合っていると影になり暗くなり、透明感をパンティストッキング1に付与できない。本実施の形態に係るパンティストッキング1においては、ナイロン糸72が重なり合っておらず影にならずフラットな状態であるので、暗くならず透明感をパンティストッキング1に付与することができる。
なお、図4の拡大図に示すように、カバリング糸51の芯糸であるポリウレタン弾性糸61と、エア交絡糸52を構成するポリウレタン弾性糸62とが接触した熱融着糸どうしの接触部が多数存在し、それらの多数の接触部においてポリウレタン弾性糸どうしが融着して離れ難くなるようにセットされている。このように、ポリウレタン弾性糸61とポリウレタン弾性糸62との多数の接触部において熱セットにより繊維どうしが融着している。
一方、図5および図6に示す従来のゾッキ編み(カバリング糸51とカバリング糸51とで編成された平編ループ18)においては、熱融着性を備えるポリウレタン弾性糸61どうしが熱セットにより熱融着してパンティストッキングの形態が安定して伝線することを防止できる。しかしながら、ポリウレタン弾性糸61には、通常のドラフト率で通常の撚り数でナイロン糸71が巻着されている。このようにナイロン糸71がポリウレタン弾性糸61に巻着されていることによるナイロン糸71の(見かけ上の)嵩高性により、編目の空間を埋めてしまう。すなわち、ナイロン糸71はフラットな状態ではなくパンティストッキングに透明感を与えることができない。このため、従来のゾッキ編みでは、交編編みのようにパンティストッキングに透明感を与えることができない。
さらに、図7および図8に示す従来の交編編み(カバリング糸51とナイロン単糸91を引き揃えたナイロン糸9とで編成された平編ループ28)、ナイロン糸9はカバリング糸ではなくナイロン糸9には撚りや捲縮がなくフラットな状態で露出してパンティストッキングに透明感を与えることができる。しかしながら、ナイロン糸9にはポリウレタン弾性糸61のような熱融着性を備えないので、ポリウレタン弾性糸61どうしが熱セットにより熱融着してパンティストッキングの形態が安定して伝線することを防止することができない。このため、従来の交編編みでは、ゾッキ編みのようにパンティストッキングに伝線が発生することを防止することができない。
このような従来例に対して、本実施の形態に係るパンティストッキング1においては、熱融着性を備えるポリウレタン弾性糸61とポリウレタン弾性糸62とが熱セットにより熱融着して形態が安定して伝線することを防止できるとともに(ゾッキ編みの長所を活かして交編編みの弱点を克服)、ナイロン糸72が、撚りや捲縮なくフラットな状態で露出してパンティストッキング1に透明感を与える(交編編みの長所を活かしてゾッキ編みの弱点を克服)ことができる。
なお、熱融着とは、熱融着性のポリウレタン弾性糸が外からの熱または熱と圧力とにより、熱融着性のポリウレタン弾性糸どうしの接触部(図4の拡大図に示す部分)において、互いの繊維が融着し密着している状態もしくは互いの繊維の少なくとも一部が融着し密着している状態、または、融着まで至らなくても繊維どうしが接着している状態をいう。さらに、熱合着とは、熱合着性のポリウレタン弾性糸が外からの熱または熱と圧力とにより、熱合着性のポリウレタン弾性糸どうしの接触部において、互いの繊維が互いに食い込んで離れ難くなっている状態をいう。本実施の形態に係るパンティストッキング1の伝線を防止する作用効果は、上述したように、熱融着によるものであっても熱合着によるものであっても構わない。
以上のようにして、本実施の形態に係るパンティストッキングによると、第1の編糸としてカバリング糸51(芯糸がウレタン系弾性糸であるポリウレタン弾性糸61であって捲糸が非弾性糸であるナイロン糸71)を用いて、かつ、第2の編糸としてエア交絡糸52(ウレタン系弾性糸であるポリウレタン弾性糸62および非弾性糸であるナイロン糸72)を用いて編成した。このため、このようなカバリング糸51とエア交絡糸52とを用
いた新たな概念の交編編みで編地を編成することにより、ウレタン系弾性糸どうしが熱セットで熱融着や熱合着して形態が安定してパンティストッキング1の伝線を防止することができるとともに、ナイロン糸72がフラットな状態で露出しているので、パンティストッキング1に透明感を与えることができる。その結果、透明感と伝線しにくさとを併せ持つ画期的なパンティストッキングを提供することができる。
このような効果に加えて、平編ループ8を編成する全ての編糸にはポリウレタン弾性糸6を含むために、十分なサポート性および十分なフィット性を実現することができる。さらに、このような平編ループ8は、通常の編機で編成することができ、特別な編機を用いる必要がない点で生産コスト的に好ましい。さらに、編糸(カバリング糸51およびエア交絡糸52)はいずれもポリウレタン弾性糸にナイロン糸が巻着されているまたは交絡されているので、ポリウレタン弾性糸そのもの(ベア糸)に比べて、編機における糸通し部での滑りが良く、編機の生産性が向上するので好ましい。
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
たとえば、パンティストッキングに柄を発現させるために、および/または、高機能なパンティストッキングを実現するために(吸汗性や保温性や消臭性を備える等)、第1の編糸および第2の編糸が本発明の特徴的な構成を備えることに加えて、編糸および編み組織が選択されていることも好適である。第1の編糸であるカバリング糸は、SCYではなくDCY(Double Covered Yarn)であっても構わないし、芯糸および捲糸の種類(組成、太さ等)も、上述した本発明の特徴的な構成を備えれば、限定されるものではない。
本発明は、下半身用衣類に好適であり、透明感と伝線しにくさとを併せ持つ点でストッキング、パンティストッキング、タイツ、靴下等の下半身用衣類に特に好適である。
1 パンティストッキング
2 レッグ部
3 パンティ部
4 股部
5、51 カバリング糸
52 エア交絡糸
6、61、62 ポリウレタン弾性糸
7、71 (カバリング糸を構成する)ナイロン糸
72 (エア交絡糸を構成する)ナイロン糸
72A、72B、72C (エア交絡糸を構成する)ナイロン単糸
8 平編ループ
9 (交編編み用の)ナイロン糸
91 ナイロン単糸

Claims (8)

  1. 第1の編糸および第2の編糸を含んで編成した下半身用衣類であって、
    前記第1の編糸は、ウレタン系弾性糸の芯糸に非弾性糸の捲糸を巻着させたカバリング糸であって、
    前記第2の編糸は、ウレタン系弾性糸と非弾性糸とを含む糸であって、撚り合わせられていないことを特徴とする下半身用衣類。
  2. 前記第2の編糸は、ウレタン系弾性糸と非弾性糸とを含む交絡糸であることを特徴とする請求項1に記載の下半身用衣類。
  3. 前記第2の編糸は、ウレタン系弾性糸と非弾性糸とを含むエア交絡糸であることを特徴とする請求項1に記載の下半身用衣類。
  4. 前記第2の編糸は、ウレタン系弾性糸と非弾性糸とを引き揃えた糸であることを特徴とする請求項1に記載の下半身用衣類。
  5. 前記ウレタン系弾性糸はポリウレタン弾性糸であって、
    前記非弾性糸はナイロン糸であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の下半身用衣類。
  6. 前記ウレタン系弾性糸は、熱融着性ポリウレタン糸であることを特徴とする請求項5に記載の下半身用衣類。
  7. 前記ウレタン系弾性糸は、熱合着性ポリウレタン糸であることを特徴とする請求項5に記載の下半身用衣類。
  8. 前記下半身用衣類は、ストッキング、パンティストッキング、タイツおよび靴下のいずれかであることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載の下半身用衣類。
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