JP2014091551A - ビール注出コックの弁構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】より径が小さいクリーミーな泡を安定して注出することができるビール注出コックの弁構造を開示する。
【解決手段】ビール注出用の第一弁体を一次側に備えた弁棒の二次側に泡注出用の第二弁体及び該第二弁体を一次側に付勢するバネを収容したソケットを備え、前記第一弁体から前記弁棒にかけてビールを導入する内部流路を設けると共に、前記弁棒の内部流路の終端には前記ソケット内で開口し、前記バネで付勢された第二弁体によって閉塞する噴射孔を設け、前記第二弁体に連結されるレバーを一方向に傾倒したときのみ、前記第二弁体を前記バネの付勢に抗して単独で二次側にスライドさせ、前記噴射孔を開放して泡を注出可能としたビール注出コックの弁構造であって、前記噴射孔は、前記内部流路から前記弁棒の半径方向に形成した。
【選択図】図8

Description

この発明は、ビールと泡を別々に注出可能なビール注出コックの弁構造の改良に関するものである。
ビールサーバに取付けられるビール注出コックにおいて、特許文献1〜3に開示されているように、ビールと泡を別々に注出可能なビール注出コックは公知である。何れのコックも、レバーを直立状態から手前に倒すとビールが注出され、奥にレバーを倒すと泡が注出されるようになっている。
このような注出を可能とする弁構造は、共通して、弁棒の一次側(上流側)に円錐状の弁体を取付けて、これをビール注出用の弁とする一方、泡注出用として、前記円錐状弁体の頂部から弁棒内部にかけてビールを導入する内部流路を設けると共に、弁棒の二次側(下流側)に前記内部流路の終端開口を開閉可能な別の弁を設け、これら二つの弁を同軸に一体化したものである。
泡注出用の弁は、常時、前記内部流路の終端開口を閉塞する方向(一次側)に付勢されており、レバーを奥に倒すことによって、単独で反対方向(二次側)にスライドし、前記内部流路の終端開口を開放する。当該開放により、弁棒の内部流路に導入されたビールが終端開口から噴射され、泡となって注出される。
なお、ビールは、円錐状弁体及び弁棒の外側を流路として注出されるもので、レバーを手前に倒して上記の弁構造全体を一次側にスライドさせることにより円錐状弁体を開弁位置に移行し、当該円錐状弁体の外側を通って前記弁棒の外側空間に流入し、当該空間下のノズルから液状のまま注出される。
特開2001−192098号公報 特開2002−2886号公報 特開2006−206157号公報
ここで、上記先行技術文献における泡の生成過程を見ると、特許文献1では、その図7から分かるように、弁棒34の二次側端面に内部流路(液体通路32)と一直線上の細孔36を形成しており、内部流路のビールはここで肌理の細かい泡となると説明されている。
特許文献2もやはり、その図11から分かるように、弁棒(栓棒5)の二次側端面に内部流路(泡用流路6)と一直線上に小径の開口60を形成しており、ここから微細な泡が吐出されると説明されている。
このように、特許文献1の細孔36も、特許文献2の開口60も、内部流路と一直線上、即ち弁棒の軸方向に形成されており、よって、泡は弁棒の一端面から軸方向に真っ直ぐ噴出されることになる。しかし、この方向は、泡注出用の弁を閉弁方向に付勢しているバネ(特許文献1における第二弾性部材40、特許文献2におけるバネ70)の伸縮方向と一致している。このため、泡の噴出時に、その圧力によってバネが圧縮する可能性がある。バネが圧縮すると、泡注出用の弁の開度、即ち弁棒の終端開口先の空間(特許文献1の図7における第2弁体42と第2弁座38の間、特許文献2の図11における開口60と泡用弁61の間)が大きくなって、大きな泡の生成を許容するため、安定して小さな泡を生成するのが困難となる。
また、特許文献3では、その図5に示されるように、弁棒(弁部材12)の内部流路の終端開口(泡用通路30の出口)に棒状突起41が隙間42を有して挿入されており、前記内部流路のビールを前記隙間42から勢いよく放出し、その向かいの弁面部39に衝突させることで、泡を発生させると説明されている。しかし、この場合も、泡は弁棒の一端面から軸方向に真っ直ぐ放出され、弁面部39に対する衝突の力によってバネ46が圧縮され、均質な泡の生成が困難となることは特許文献1や2の場合と同じである。
さらに、上記3つの先行技術文献とも、内部流路の終端開口(特許文献1における細孔36、特許文献2における開口60、特許文献3における隙間42)の直下に、泡を最終的に容器に注ぐ注出ノズル(特許文献1における泡注出ノズル16、特許文献2における泡注出管45、泡注出口17a)を設けている。よって、これら先行技術文献のものでは、前記終端開口で生成された泡が、ほぼそのままの状態で注出ノズルから容器に注がれることになるが、その前により小さい泡を生成するという技術的手段は採用されていない。
なお、特許文献2の図13には、泡用流路6の終端側をL字状に屈折したものが図示されているが、当該図面上、2つ目の角部(垂直な流路と最終の水平な流路の交差部)はビールの吐出管43側に開口するように理解でき、そうすると、ビール注出用のノズル(吐出管43)からも泡が注出されることになる。仮に、そうでないとしても、どのようにして当該屈折流路を構成するのか、当業者が実施できる程度の明確かつ十分な説明は存在しない。
本発明は上述した課題に鑑みなされたもので、その目的とするところは、より径が小さいクリーミーな泡を安定して注出することができるビール注出コックの弁構造を開示することである。
上述した目的を達成するために本発明では、コック本体に設けた弁座に一次側から着座し、外面側をビールの注出流路としたビール注出用の第一弁体と、該第一弁体を一次側に設けた弁棒と、該弁棒の二次側にその軸部を内部に突出させて設けたソケットと、該ソケット内にスライド自在に収容され、コックレバーと連動する泡注出用の第二弁体と、該第二弁体を前記弁棒の前記突出軸部に向かって付勢するバネを備え、前記第一弁体から前記弁棒の前記突出軸部にかけて泡生成用のビールを導入する内部流路を設けると共に、該内部流路の終端には前記弁棒の半径方向に噴射孔を設ける一方、前記第二弁体の一次側には、前記噴射孔を開閉自在に前記突出軸部が密に挿通するシールリングを設けるという手段を用いる。
上記手段において、弁棒の内部流路を経て噴射孔からビールの泡が噴射されることは、上記3つの先行技術文献と同じであるが、本発明の場合、その方向は弁棒の半径方向外向きであるため、該噴射力が直接第二弁体に作用することがない。したがって、第二弁体の開弁位置を安定させることができる。
噴射孔は、一つあれば上記目的を達成することができるが、泡の生成量を増やすためには、複数を同一面上に放射状に形成してなることが好ましい。この場合、噴射孔の数は、2〜4つであることが適当である。5つ以上であると、各噴射孔の噴射圧が低下し、泡の生成そのものに影響を及ぼすからである。また、複数の噴射孔を同一面上に設けることで、全ての噴射孔を同時に開閉することができるから、複数の噴射孔を前後して設けるよりも、第二弁体のスライド長を短くすることができる。第二弁体のスライド長が短くなることで、泡の注出時、第二弁体とソケットの一次側端面間の隙間も小さくなり、該隙間の大きさに見合った径の小さい泡を生成することができる。
一方、第二弁体は、噴射孔を開閉する構造を有することが必要であるが、その具体的手段として、第二弁体の一次側端面に弁棒の噴射孔を設けた突出軸部が密に挿通するシールリングを設けることで、噴射孔を簡便かつ確実に閉塞できると共に、第二弁体内に不用意な泡の流路が形成されることも防止することができる。さらに、シールリングは、第二弁体の一次側端面に露出して、前記一次側端面と対向するソケットの内部端面に密着することが好ましく、この場合、シールリングの内外で泡の漏出を防止することができる。
また、本発明では、噴射孔からの泡は、少なくとも二次側にスライドした第二弁体の一次側端面とこれに対向するソケットの内部端面間の隙間を流路として注出される。よって、該隙間を超える大きさの泡は通過することができず、結果、当該隙間の直下に泡注出用ノズルを設ければ、前記隙間に見合った大きさの泡を注出することができる。
ここで、前記隙間は、第二弁体のスライド長で決定される。より小さな泡を注出するには、前記スライド長を小さくする必要が生じるが、噴射孔を確実に開放するためには、スライド長の短小化には限界がある。そこで、本発明では、よりきめ細かい泡を注出するために、前記隙間に加えて、前記第二弁体をソケット内でスライドさせるために設けた隙間をも流路として泡を注出するという手段を選択的に用いる。つまり、第二弁体はソケットの内径よりも小さい外径に形成することでソケット内をスライドさせることができるが、この径の差(つまり、隙間)は、製造精度の範囲内で限りなく小さくすることができる。このスライド用の隙間は、最終的な泡の流路となるため、大径のものは排除されるなど、注出される泡の径はここで小さいものに調整される。また、このスライド用の隙間は、均一であるため、均一な径の泡を注出することができる。
本発明によれば、弁棒の内部流路から半径方向外向きに噴射孔を設けたので、噴射圧が泡注出用の第二弁体に直接作用せず、第二弁体の開弁状態が安定するため、均質な泡を生成・注出することができる。また、噴射孔を複数放射状に設けることで、泡の生成量を増加することができ、短時間で泡の注ぎ足しを完了することができる。
また、第二弁体にシールリングを設け、噴射孔を設けた弁棒の突出軸部を密に挿通することで前記噴射孔を開閉するようにしたので、前記軸部がガイドとなって第二弁体を正確にスライドさせることができ、噴射孔の開閉動作を安定して行えるようになった。また、シールリングに第二弁体の一次側端面から露出し、泡の停止操作時に、該端面をソケットの内部端面に密着させるようにしたので、内孔による噴射孔の閉塞と該フランジ部との内外二重シール構造により、泡の漏出を確実に防止することができた。
さらに、泡の注出時、噴射孔からの泡を、第二弁体の外面とソケットの内面間の隙間を流路として注出するようにしたので、その流通中に径が大きい泡は消滅するなどして、よりきめ細かい泡を注出することができる。
本発明の一実施形態に係る弁構造の分解平面図 同弁構造の側面視分解断面図 同弁構造の側面視組立断面図 図2のA−A線端面図 同弁構造によるビール注出コックの完全停止状態を示した断面図 同じくビール注出状態を示した断面図 同じく泡注出状態を示した断面図 図7の主要部の拡大断面図 先願コックの主要部の拡大断面図
以下、本発明の好ましい実施の形態を添付した図面に従って説明する。図1は本発明の一実施形態に係る弁構造を分解した平面図であり、同図中、1はビール注出用の弁体(以下、第一弁体とする)、2は弁棒、3はソケット、4はソケット3の内部にスライド自在に収容する泡注出用の弁体(以下、第二弁体とする)、5は第二弁体4を弁棒2側に付勢する付勢バネ、6は付勢バネ5のバネ受けとしてのキャップである。この弁構造は、第一弁体1をビール注出コックにおける最も上流側(一次側)に位置させる部材として、上述した順に配列される。
各部材の詳しい構成及び組付け方法を、分解断面図である図2及び組立て断面図である図3を併用して説明する。なお、螺合(ネジ)部は部材同士を結合する機能以外、ビールや泡の流路としての機能等は有しないため、組立て断面では図示を割愛する。まず、ビールの注出を制御する第一弁体1は、円錐状本体11とパッキン12の組合せからなる。円錐状本体11は、外見上、頂部から底部に向けて膨大する流線形を呈し、頂部には工具(マイナスドライバー)をかける凹溝11aを設けると共に、底部にはパッキン12に差し込む凸部11bを軸方向に突設している。
その内部構造は、図2に示すように、凹溝11aから凸部11bにかけて、円錐状本体11の中心軸に、泡を生成する際にビールサーバからビールを導入する導入孔11cを設けている。この実施形態において導入孔11cは、凹溝11a側の小径流路11dと、これより径が大きい凸部11b側の大径流路11eとからなる。11fは大径流路11eの途中に設けた雌ネジ孔であり、弁棒2の一端を螺合するものである。
一方、パッキン12は、中心に凸部11bの差込孔12aを設けたドーナッツ状で、凸部11bの高さと一致する厚みを有している。
弁棒2は、一次側に第一弁体1を、二次側にソケット3を、それぞれ一体に取付けるもので、両端にそれぞれの取付軸21・22を備えている。一次側(図面上、右側)の取付軸21には、円錐状本体11の雌ネジ孔11fに螺入する雄ネジ21aが設けられ、当該螺入によって円錐状本体11の大径流路11eに完全に挿入される長さを有している。この取付軸21の付け根(基部)にはフランジ21bを設け、取付軸21を円錐状本体11に螺入したとき、図3に示すように、パッキン12を円錐状本体11の底部とで挟み込むようにしている。また、二次側(図面上、左側)の取付軸22の外周一部にも雄ネジ22aを設けており、その基部にはOリング22bを装着している。
この弁棒2の内部構造は、図2に示すように、中心軸上に、一次側の取付軸21から二次側の取付軸22の雄ネジ22aを超える位置まで、内部流路23を設けている、この内部流路23の始端は一次側の取付軸21の端面で開口して、図3に示すように、第一弁体第一弁体1の小径流路11dと連通する一方、内部流路23の終端は二次側の取付軸22の中途で閉塞されている。
この終端部分について、上記3つの先行技術文献では泡生成用の小さな孔を内部流路と一直線上に形成していたが、この実施形態では、内部流路23の終端部から半径方向に、内部流路23よりも十分に径が小さいオリフィス状の噴射孔24を設けている。つまり、本発明は内部流路23から側方に向けて噴射孔24を設け点に特徴がある。なお、噴射孔24の数は、この実施形態の場合、図4に示したように、120度の間隔で3つを取付軸部22の同一面上に放射状に設けているが、これに限定されない。ただし、噴射孔24の数が少ないと泡の生成量が少なくなり、適量の泡を注出するのに時間がかかってしまう。逆に噴射孔24の数が大きすぎると、噴射圧が分散して泡不足となる。したがって、噴射孔24の数は、2〜4つとするのが適当である。
次に、ソケット3は、第二弁体4と付勢バネ5を内部に収容する中空の円筒部3aを備え、この円筒部3aの上周面中央には、図1に示すように、コックレバーの下端コンロッドが挿通可能な径の上孔3bを設けている。また、図2に示すように、同様の開口を、円筒部3aの下周面中央にも設けている。この下孔3cと上孔3bは、製造上、円筒部3aを上下に貫通して同径に設けているが、下孔3cは本弁構造において泡の出口となる点で、上孔3bとは開口の目的が異なる。
そして、このソケット3の内部構造は、図2に示すように、円筒部3aの一次側内部に第二弁体4の弁座3dを有し、二次側にはキャップ6を螺合する雌ネジ3eを設けている。弁座3dは、円筒部3aの一次側に存在する閉蓋部3fの中心に雌ネジ孔3gを設け、この雌ネジ孔3gの二次側開口周囲に形成される。なお、当該構成の弁座3dは本発明における「ソケットの内部端面」の一例であり、より好ましい構成として例示したものである。
この雌ネジ孔3gは、弁棒2をソケット3に取付けるにあたり、その二次側取付軸22の雄ネジ22aが螺合する部分であるが、本実施形態の場合、雌ネジ孔3gの刻設長、即ち閉蓋部3fの厚みを弁棒2の二次側雄ネジ22aの刻設長と一致させている。このため、弁棒2の二次側雄ネジ22aをソケット3の雌ネジ孔3gに螺合すると、図3に示すように、弁棒2の二次側取付軸22の先端一部が閉蓋部3fを通過して円筒部3a内に突出すると共に、当該突出軸部に設けた3つの噴射孔24も円筒部3aの内部に位置することになる。これによって、ソケット3の内部に、弁棒2に設けた内部流路23を連通させ、泡の生成に必要なビールの流路を導いているのである。
なお、この実施形態では、シール性を向上させるという観点から、雌ネジ孔3gの一次側開囲に円形の凹陥部3hを設けており、弁棒2の二次側取付軸22に装着したOリング22bが嵌入する部分としている。さらに、円筒部3aの二次側開口の内周面にはキャップ6が螺合する雌ネジ部3iを設けている。
続いて、泡の注出を制御する第二弁体4について詳述すると、当該第二弁体4は、ソケット3内を摺動するスライダ41と、該スライダ41の一次側端面に取付けられるシールリング42の組合せからなる。
スライダ41は、ソケット3の円筒部3aの内径よりも、僅かに小径の中実な円柱部41aを主部として、図2に示したように、一次側端面にはシールリング42の取付孔41bを凹設すると共に、二次側端面には付勢バネ5の支持凸部41cを突設してなる。
また、中実円柱部41aには前記取付孔41bと二次側端面間に位置して、上下に貫通する貫通孔41dを設けている。この貫通孔41dは取付孔41bと連通せず、よって取付孔41bの二次側は閉塞されている。貫通孔41dの上側の開口は、スライダ41をソケット3に収容したとき、ソケット3の上孔3bと連通するもので、図3に示したように、コックレバー(図示せず)の先端のコンロッドCをソケット3の上孔3bを通じて当該貫通孔41d内に嵌挿することで、コックレバーの揺動をスライダ41のスライド運動に変換するものである。
なお、貫通孔41dの下側開口も、ソケット3の下孔3cと連通することになるが、当該下側開口が泡の注出口として機能することは、ソケット3の下孔3cの場合と同じである。こうした別機能を有する上下の開口を貫通して設けたのは、一度の工程で形成することができるという製造上の理由によるものであり、必ずしも本発明は当該構成に限定されない。
一方、シールリング42は、図2に示すように、弾性を有する中空円錐状の筒42aを主部として、その一次側端縁には小径部42bを設けて、係合段部42cを形成している。小径部42bは、弾性筒42aをスライダ41の取付孔41aに嵌め込んだとき、図3に示すように、スライダ41の一次側端面から露出し、ソケット3の弁座3dに密着可能としたものである。この状態において、係合段部42cは、シールリング42の抜け止めとして機能し、結果、嵌め殺しの状態でシールリング42をスライダ41に取付けるものである。
このようにしてスライダ41に取付けられるシールリング42における弾性筒42aの内径は、弁棒2の二次側取付軸22の先端が密に挿通するように設定されている。ここで、スライダ41の取付孔41aには、外気と連通する空気孔41eを設けており、弁棒2の二次側取付軸22の突出軸部をシールリング42に挿通する際、取付孔41aの内圧が高まって当該挿通を阻害しないようにしている。
最後に、付勢バネ5は、ソケット3に収容可能なコイルスプリングからなり、ソケット3の二次側開口(雌ネジ部3h)に螺合するキャップ6によって、第二弁体4をソケット3の閉蓋部3f内面に当接するように弾性的に付勢し、図3に示すように、常時、シールリング42の小径部42bをソケット3内の弁座3dに着座させるものである。なお、キャップ6は、ソケット3の二次側開口に装着したときに付勢バネ5を所定量圧縮する構成であればよい。
図5〜7は、上記構成の弁構造をビール注出コックに組み付けた状態で、完全停止、ビール注出、泡注出のそれぞれの状態を示したものである。本発明の弁構造を除く、コック本体HおよびコックレバーLは従来公知の構造であり、簡単に説明すれば、コック本体Hはビールサーバへの接続口Jを有し、その内部に第一弁体1の弁座Bを介して弁構造を収容する収容部Sを水平に設け、該収容部Sから下方にビールの注出ノズルN1および泡の注出ノズルN2を設けたものである。泡注出ノズルN2は、図面上、紙面左を前、紙面右を後ろとすると、前側に位置している。このコック本体Hに対してコックレバーLは、泡注出ノズルN2のほぼ直上に、ボールジョイントBを支点として前後に傾倒(揺動)自在に装着される。その際、レバー下端に設けたコンロッドCを本発明の弁構造におけるスライダ4の貫通孔41d内に嵌挿することで全体の組付けが完了する。
このように組み付けられた本発明の弁構造は、コックレバーLが直立のニュートラル位置にあるときは、図5に示すように、第一弁体1がコック本体Hの弁座Bに一次側から着座し、接続口Jとビール注出ノズルN1間を遮断することでビールの注出を停止する。これと同時に、第二弁体4は付勢バネ5によってソケット3内の弁座3dに着座しており、弁棒2の二次側取付軸22に設けた噴射孔24全てが第二弁体4のシールリング42によって閉塞されることで、泡の注出も遮断されている。さらに、この実施形態では、シールリング42の小径部42bもがソケット3の弁座3dに弾性的に着座しており、噴射孔24からの泡の漏出を確実に防止している。つまり、この実施形態では、シールリング42の内孔と小径部42bとで二重シール構造としている。
この状態から、コックレバーLを手前に倒すと、図6に示すように、力点となるコンロッドCが一次側に変位することによって、第二弁体4を一次側に押圧し、結果、本発明の弁構造全体が収容部Sを一次側にスライドすることで、第一弁体1の円錐状本体11がコック本体Hの弁座Bから離れるため、ビールは接続口Jから円錐状本体11の外周を経由し、ビール注出ノズルN1から注出される。このとき、第二弁体4は図5の着座状態を維持しているため、泡は注出されず、ビールのみを注出する。
一方、図5のニュートラル位置からコックレバーLを奥に倒すと、図7に示すように、今度はコンロッドCが二次側に変位することによって、第二弁体4を二次側にスライドさせる力が働く。このとき第一弁体1は、コック本体Hの弁座Bに着座していることによって、二次側の変位が規制されており、これに結合している弁棒2、並びにソケット3も二次側への変位が規制されるため、図6のビール停止位置を維持する。つまり、コックレバーLを奥に倒しても、第一弁体1・弁棒2・ソケット3はこれに連動しない。よって、第二弁体4だけが付勢バネ5を圧縮しながら単独で二次側にスライドすることになる。
このように第二弁体4が二次側にスライドすることによって、弁棒2の噴射孔24が第二弁体4のシールリング42から露出する。噴射孔24が露出することによって、第一弁体1の導入孔11cから導入されるビールが、弁棒2の内部流路23を通って噴射孔24から噴射される。ビールが導入孔11cから内部流路23に導入されたとき、既に泡となっていることもあるが、何れにしても、噴射孔24からの噴射によって内部流路23のビールは完全に泡になる。そして、この泡は、第二弁体4とソケット3間の空隙を通って泡注出ノズルN2から排出される。
図8は、図7における第二弁体4周辺の要部を拡大した図であり、これにしたがって、本発明の弁構造が上記3つの先行技術文献のものよりも、よりきめ細かな泡の安定注出に関して有利であることを説明する。先ず、本発明の弁構造においても、弁棒2に設けた細孔(噴射孔24)からビール(または泡)を噴射し、小径の泡を生成するが、本発明の場合は、この噴射孔24を弁棒2の側方に開口しているため、噴射圧が直接第二弁体4に作用しない。したがって、噴射孔24からの泡の噴射中、付勢バネ5が不用意に圧縮されることがなく、第二弁体4の開弁位置が安定する。
次に、本発明の弁構造では、噴射孔24以降、ソケット3の下孔3c(泡注出ノズルN2の入口)に至るまでの泡の流路が極めて狭く、結果、きめ細かい泡だけが注出されるのである。即ち、本発明の弁構造では、第二弁体4の一次側端面とソケット3の閉蓋部3fの内面間の垂直な間隙Xと、第二弁体4の外周面とソケット3の内周面間の水平な間隙Yを流路として、泡が流通する。間隙Xは、上述のように、噴射孔24からの泡の噴射中、第二弁体4が安定することから、一定に保たれる。
そして、最終的な流路となる間隙Yは、第二弁体4がソケット3内を摺動する最低限のクリアランスであればよいため、製造精度が許す限り小さくすることができる。この間隙Yは、ビールの粘度、温度、噴射圧にもよるため、寸法が限定されないが、間隙Xで生成された泡を泡のまま流通させるクリアランスを有する。したがって、本発明では、噴射直後の泡がほぼそのまま排出される先行技術文献のものよりも、きめ細かな泡を注出することができるのである。
ところで、本出願人は、本願の出願前に、図9に示すビール注出コックを出願している(特願2012−67173、以下、先願コックという)。この先願コックも、本発明と同様の弁棒50、ソケット60、第二弁体70を備え、特に、弁棒50に内部流路51から側方に開口する噴射孔52を設ける点、及び、上記間隙X・Yに対応する間隙X1・Y1を泡の流路とする点で共通する。このため、この先願コックも、上記3つの先行技術文献のものより、きめ細かい泡を注出することができるようになっている。
しかしながら、先願コックでは、弁棒50と、第二弁体70におけるシールリング71間の隙間をも泡の流路Zとしており、この部分が密である本発明と構成が異なる。そして、流路Zは、シールリング71の内外連通を許容することから、第二弁体70におけるシールリング71の取付孔72の内部に泡が充満して、第二弁体70を若干ではあるが二次側に変動させるおそれがあった。また、流路Zというクリアランスによって、第二弁体70が完全に水平にスライドせず、いわゆるガタが生じるおそれもあった。
本発明は、こうした先願コックの不都合な点も解決し、常に安定して均質な泡の注出に成功したものである。
1 ビール注出用弁体(第一弁体)
11 円錐状本体
11c ビールの導入孔
12 パッキン
2 弁棒
21 一次側取付軸
22 二次側取付軸
23 内部流路
24 噴射孔
3 ソケット
3d 弁座
3f 閉蓋部
4 泡注出用弁体(第二弁体)
41 スライダ
41d 貫通孔
42 シールリング
42b 小径部
5 付勢バネ
6 キャップ
H コック本体
L コックレバー
B ボールジョイント
C コンロッド
J 接続口
S 収容部
N1 ビール注出ノズル
N2 泡注出ノズル
X・Y 泡の流路

Claims (4)

  1. コック本体に設けた弁座に一次側から着座し、外面側をビールの注出流路としたビール注出用の第一弁体と、該第一弁体を一次側に設けた弁棒と、該弁棒の二次側にその軸部を内部に突出させて設けたソケットと、該ソケット内にスライド自在に収容され、コックレバーと連動する泡注出用の第二弁体と、該第二弁体を前記弁棒の前記突出軸部に向かって付勢するバネを備え、
    前記第一弁体から前記弁棒の前記突出軸部にかけて泡生成用のビールを導入する内部流路を設けると共に、該内部流路の終端には前記弁棒の半径方向に噴射孔を設ける一方、
    前記第二弁体の一次側には、前記噴射孔を開閉自在に前記突出軸部が密に挿通するシールリングを設けたことを特徴とするビール注出コックの弁構造。
  2. 噴射孔は、前記突出軸部の同一面上に複数を放射状に形成してなる請求項1記載のビール注出コックの弁構造。
  3. シールリングは、第二弁体の一次側端面に露出して、前記一次側端面と対向するソケットの内部端面に密着する請求項1または2記載のビール注出コックの弁構造。
  4. 二次側にスライドさせた第二弁体の一次側端面とこれに対向するソケットの内部端面間の隙間、及び前記隙間と連通し、前記第二弁体をソケット内でスライドさせるための隙間を流路として泡を注出する請求項1、2または3記載のビール注出コックの弁構造。
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