JP2014088515A - 難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂成形品および難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物 - Google Patents

難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂成形品および難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】高度な難燃性と靭性を両立できる難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂成形品を提供すること。
【解決手段】(A)熱可塑性ポリエステル樹脂100重量部に対して、(B)空気中において室温から600℃まで昇温速度40℃/分で加熱したときの重量減量が70%以下である樹脂50〜150重量部および(C)窒素系難燃剤1〜100重量部を配合してなる難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を成形してなる難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂成形品であって、前記(A)成分の樹脂および前記(B)成分の樹脂が相分離構造を形成し、成形品表層断面における(A)成分の樹脂相に対する(B)成分の樹脂相の面積比率と、成形品中心層断面における(A)成分の樹脂相に対する(B)成分の樹脂相の面積比率の比({成形品表層断面における(B)成分の樹脂相の面積/(A)成分の樹脂相の面積}/{成形品中心層断面における(B)成分の樹脂相の面積/(A)成分の樹脂相の面積})が、1.2以上である難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂成形品。
【選択図】図1

Description

本発明は、難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂成形品および難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物に関する。
熱可塑性ポリエステル樹脂は、その優れた射出成形性や機械物性などの諸特性を生かし、機械機構部品、電気・電子部品、自動車部品などの幅広い分野に利用されている。また、熱可塑性ポリエステル樹脂は、本質的に可燃性であるため、機械機構部品、電気・電子部品、自動車部品などの工業用材料として使用するためには、強度や靭性などの機械的強度に加えて、火炎に対する安全性、すなわち難燃性が要求され、UL−94規格V−0を示すなどの高度な難燃性が必要とされる場合が多い。
熱可塑性ポリエステル樹脂に難燃性を付与する従来の方法としては、難燃剤としてハロゲン系有機化合物、さらに難燃助剤としてアンチモン化合物を熱可塑性ポリエステル樹脂に配合したハロゲン系難燃材料とする方法が一般的であるが、環境意識の高まりから、ハロゲン系難燃材料の環境に及ぼす影響を懸念する動きがある。そこで、ハロゲンを含まない非ハロゲン系難燃剤を用いることが強く望まれるようになり、熱可塑性樹脂にリン系難燃剤を配合することが提案されている。
しかし、環境調和やリン資源枯渇懸念の観点から、リン系難燃剤もまた低減が求められている。そのため、さらなる難燃化促進技術として、エポキシ樹脂、窒素系化合物や難燃性熱可塑性樹脂などを配合することが提案されている。
例えば、熱可塑性樹脂にリン系難燃剤および特定の構造を有するエポキシ樹脂を含有する難燃性樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ゴム状重合体、ポリフェニレンスルフィド樹脂および/またはフェノール樹脂、リン酸エステル化合物および/またはポリアミド樹脂を配合してなる難燃性ポリエステル樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献2参照)。また、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂および/またはポリフェニレンスルフィド樹脂、リン酸エステル化合物、シアヌール酸メラミンなどを含有する難燃性ポリエステル樹脂組成物(例えば、特許文献3参照)や、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、変性ポリスチレンまたはスチレン系エラストマーと、難燃剤を含む高強度樹脂組成物(例えば、特許文献4参照)が提案されている。しかしながら、これら技術によってもなお難燃効果が不十分であり、高度難燃化のために難燃剤や難燃性熱可塑性樹脂を多量添加すると、成形品の靭性が低下するという課題があった。
特開2005−105189号公報 特開2011−52096号公報 特開平10−77396号公報 特開2012−514069号公報
上記のとおり、従来公知の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物において、難燃性と靭性の両立が課題となっている。本発明は、上記課題に鑑み、高度な難燃性と靭性を両立できる難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂成形品を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記した課題を解決するために検討を重ねた結果、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂、(B)空気中において室温から600℃まで昇温速度40℃/分で加熱したときの重量減量が70%以下である樹脂および(C)窒素系難燃剤を配合してなる難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を成形してなる難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂成形品に特定の相分離構造を形成させることにより、上記した課題を解決できることを見いだし本発明に到達した。すなわち、かかる課題を解決するための本発明は、次の構成を特徴とするものである。
(1)(A)熱可塑性ポリエステル樹脂100重量部に対して、(B)空気中において室温から600℃まで昇温速度40℃/分で加熱したときの重量減量が70%以下である樹脂50〜150重量部および(C)窒素系難燃剤1〜100重量部を配合してなる難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を成形してなる難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂成形品であって、前記(A)成分の樹脂および前記(B)成分の樹脂が相分離構造を形成し、成形品表層断面における(A)成分の樹脂相に対する(B)成分の樹脂相の面積比率と、成形品中心層断面における(A)成分の樹脂相に対する(B)成分の樹脂相の面積比率の比({成形品表層断面における(B)成分の樹脂相の面積/(A)成分の樹脂相の面積}/{成形品中心層断面における(B)成分の樹脂相の面積/(A)成分の樹脂相の面積})が、1.2以上である難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂成形品。
(2)前記(A)熱可塑性ポリエステル樹脂がポリエチレンテレフタレートを含む(1)記載の難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂成形品。
(3)前記(B)空気中において室温から600℃まで昇温速度40℃/分で加熱したときの重量減量が70%以下である樹脂がポリフェニレンスルフィド樹脂を含む(1)〜(2)のいずれか記載の難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂成形品。
(4)前記(C)窒素系難燃剤がトリアジン系化合物とシアヌール酸またはイソシアヌール酸との塩を含む(1)〜(3)のいずれか記載の難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂成形品
(5)前記難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物が、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂100重量部に対して(D)エポキシ化合物0.1〜10重量部をさらに配合してなる(1)〜(4)のいずれか記載の難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂成形品。
(6)前記(D)エポキシ化合物がノボラック型エポキシ樹脂を含む(5)記載の難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂成形品。
(7)前記難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物が、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂100重量部に対して(E)繊維状強化材5〜200重量部をさらに配合してなる(1)〜(6)のいずれか記載の難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂成形品。
(8)前記難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物中のリン含有量が0.05重量%以下である(1)〜(7)のいずれか記載の難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂成形品。
(9)(A)ポリエステル樹脂100重量部に対して、(B)空気中において室温から600℃まで昇温速度40℃/分で加熱したときの重量減量が70%以下である樹脂50〜150重量部、(C)窒素系難燃剤1〜100重量部およびノボラック型エポキシ樹脂0.1〜10重量部を配合してなる難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物。
本発明の難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂成形品は、高度な難燃性と靭性を両立することができる。本発明の難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂成形品は、機械機構部品、電気・電子部品、自動車部品などの成形品として有用である。
実施例1により得られた成形品断面のTEM像写真である。 実施例1により得られた成形品表層断面のTEM像写真における階調ごとの強度を示した図である。
本発明の難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂成形品は、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂100重量部に対して、(B)空気中において室温から600℃まで昇温速度40℃/分で加熱したときの重量減量が70%以下である樹脂50〜150重量部および(C)窒素系難燃剤1〜100重量部を配合してなる難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を成形してなり、前記(A)成分の樹脂および前記(B)成分の樹脂が相分離構造を形成し、成形品表層断面における(A)成分の樹脂相に対する(B)成分の樹脂相の面積比率と、成形品中心層断面における(A)成分の樹脂相に対する(B)成分の樹脂相の面積比率の比({成形品表層断面における(B)成分の樹脂相の面積/(A)成分の樹脂相の面積}/{成形品中心層断面における(B)成分の樹脂相の面積/(A)成分の樹脂相の面積})が、1.2以上である。まず、本発明の難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂成形品を構成する難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物(以下、樹脂組成物と記載する場合がある)について説明する。
本発明における(A)熱可塑性ポリエステル樹脂は、(イ)ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールまたはそのエステル形成性誘導体、(ロ)ヒドロキシカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体および(ハ)ラクトンからなる群より選択される一種以上の残基を主構造単位とする重合体または共重合体である。ここで、主構造単位とは、全構造単位中50モル%以上を占める構造単位を指す。本発明においては、難燃性、強度などの機械特性、耐熱性または耐久性に優れる点で、(イ)〜(ハ)から選択される一種以上の残基を80モル%以上有することが好ましい。本発明に用いられる樹脂組成物に(A)熱可塑性ポリエステル樹脂を配合することにより、機械強度や加工性に優れた成形品を得ることができる。
上記ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−テトラブチルホスホニウムイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、マロン酸、グルタル酸、ダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸およびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
本発明において、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体の総量に対するテレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体の割合は、30モル%以上が好ましく、難燃性、強度などの機械特性、耐熱性、結晶化特性または耐久性により優れる点で、40モル%以上がさらに好ましい。
上記ジオールまたはそのエステル形成性誘導体としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、ダイマージオールなどの炭素数2〜20の脂肪族グリコール、ポリエチレングリコール、ポリ−1,3−プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどの分子量200〜100000の長鎖グリコール、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールFなどの芳香族ジオキシ化合物およびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールまたはそのエステル形成性誘導体を構造単位とする重合体または共重合体としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリへキシレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリプロピレンイソフタレート、ポリブチレンイソフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンイソフタレート、ポリへキシレンイソフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリプロピレンイソフタレート/テレフタレート、ポリブチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/ナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート/ナフタレート、ポリブチレンテレフタレート/ナフタレート、ポリブチレンテレフタレート/デカンジカルボキシレート、ポリエチレンテレフタレート/シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/5−ナトリウムスルホイソフタレート、ポリプロピレンテレフタレート/5−ナトリウムスルホイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート/5−ナトリウムスルホイソフタレート、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレングリコール、ポリプロピレンテレフタレート/ポリエチレングリコール、ポリブチレンテレフタレート/ポリエチレングリコール、ポリエチレンテレフタレート/ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレンテレフタレート/ポリテトラメチレングリコール、ポリブチレンテレフタレート/ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート/ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレンテレフタレート/イソフタレート/ポリテトラメチレングリコール、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート/ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレンテレフタレート/サクシネート、ポリプロピレンテレフタレート/サクシネート、ポリブチレンテレフタレート/サクシネート、ポリエチレンテレフタレート/アジペート、ポリプロピレンテレフタレート/アジペート、ポリブチレンテレフタレート/アジペート、ポリエチレンテレフタレート/セバケート、ポリプロピレンテレフタレート/セバケート、ポリブチレンテレフタレート/セバケート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート/アジペート、ポリプロピレンテレフタレート/イソフタレート/アジペート、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート/サクシネート、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート/アジペート、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート/セバケートなどの芳香族ポリエステル樹脂、ポリエチレンオキサレート、ポリプロピレンオキサレート、ポリブチレンオキサレート、ポリエチレンサクシネート、ポリプロピレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンアジペート、ポリプロピレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリネオペンチルグリコールアジペート、ポリエチレンセバケート、ポリプロピレンセバケート、ポリブチレンセバケート、ポリエチレンサクシネート/アジペート、ポリプロピレンサクシネート/アジペート、ポリブチレンサクシネート/アジペートなどの脂肪族ポリエステル樹脂などが挙げられる。ここで、「/」は共重合体を表す。
また、上記ヒドロキシカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体としては、例えば、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸およびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。また、これらを構造単位とする重合体または共重合体としては、例えば、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリグリコール酸/乳酸、ポリヒドロキシ酪酸/β−ヒドロキシ酪酸/β−ヒドロキシ吉草酸などの脂肪族ポリエステル樹脂などが挙げられる。
また、上記ラクトンとしては、例えば、カプロラクトン、バレロラクトン、プロピオラクトン、ウンデカラクトン、1,5−オキセパン−2−オンなどが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。また、これらを構造単位とする重合体または共重合体としては、例えば、ポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリプロピオラクトン、ポリカプロラクトン/バレロラクトンなどが挙げられる。
これらの中で、(イ)ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールまたはそのエステル形成性誘導体を主構造単位とする重合体または共重合体が好ましく、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と脂肪族ジオールまたはそのエステル形成性誘導体を主構造単位とする重合体または共重合体がより好ましく、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、シクロヘキサンジメタノールまたはそのエステル形成性誘導体を主構造単位とする重合体または共重合体がさらに好ましい。中でも、難燃性、強度などの機械特性、耐熱性または耐久性により優れる点で、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリプロピレンイソフタレート/テレフタレート、ポリブチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/ナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート/ナフタレート、ポリブチレンテレフタレート/ナフタレートなどの芳香族ポリエステル樹脂が好ましく、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートおよびポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートがさらに好ましく、特に、難燃性、靭性、強度および耐熱性により優れる点で、ポリエチレンテレフタレートを含むことが特に好ましく、ポリエチレンテレフタレートであることが最も好ましい。また、これら(A)熱可塑性ポリエステル樹脂を2種以上任意の配合量で用いることもできる。
本発明において、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂として、溶融時に異方性を形成し得る液晶性ポリエステルを用いてもよい。液晶性ポリエステルの構造単位としては、芳香族オキシカルボニル単位、芳香族ジオキシ単位、芳香族および/または脂肪族ジカルボニル単位、アルキレンジオキシ単位、芳香族イミノオキシ単位などが挙げられる。
また、本発明における(A)熱可塑性ポリエステル樹脂は、化石資源由来でもよく、バイオマス資源由来でもよく、また、リサイクルしたものでもよいが、環境調和の点で、バイオマス資源由来および/またはリサイクルしたものであることが好ましい。
本発明で用いる(A)熱可塑性ポリエステル樹脂のカルボキシル末端基量は、流動性、耐加水分解性および耐熱性の点で、50eq/t以下が好ましく、10eq/t以下がより好ましい。下限は0eq/tである。ここで、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂のカルボキシル末端基量は、o−クレゾール/クロロホルム溶媒に溶解させた後、エタノール性水酸化カリウムで滴定し測定した値である。
本発明で用いる(A)熱可塑性ポリエステル樹脂のヒドロキシ末端基量は、成形性および流動性の点で、50eq/t以上が好ましく、120eq/t以上がより好ましい。なお、上限は180eq/tである。
本発明における(A)熱可塑性ポリエステル樹脂の粘度は、成形性の点で、o−クロロフェノール溶液を25℃で測定したときの固有粘度が0.50〜1.50dl/gの範囲であることが好ましい。
本発明で用いる(A)熱可塑性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、強度などの機械特性、耐熱性および耐久性の点で、8000を超え500000以下の範囲が好ましく、8000を超え250000以下の範囲がより好ましい。本発明において、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂のMwは、溶媒としてヘキサフルオロイソプロパノールを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリメチルメタクリレート(PMMA)換算の値である。
本発明における(A)熱可塑性ポリエステル樹脂は、公知の重縮合法や開環重合法などにより製造することができる。バッチ重合および連続重合のいずれでもよく、また、エステル交換反応および直接重合による反応のいずれも適用することができる。カルボキシル末端基量を少なくすることができ、かつ、流動性および耐加水分解性に優れる点で、連続重合が好ましく、生産性の点で、直接重合が好ましい。
本発明における(A)熱可塑性ポリエステル樹脂が、(イ)ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールまたはそのエステル形成性誘導体の残基を主構造単位とする重合体または共重合体である場合には、(イ)ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールまたはそのエステル形成性誘導体とを、エステル化反応またはエステル交換反応し、次いで重縮合反応することにより製造することができる。なお、エステル化反応またはエステル交換反応および重縮合反応を効果的に進めるために、これらの反応時に重合反応触媒を添加することが好ましい。重合反応触媒の具体例としては、チタン化合物、アルミニウム化合物、スズ化合物、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。触媒として高活性なチタン化合物やアルミニウム化合物を用いると、触媒の添加量を減らすことができ、結果として熱可塑性ポリエステル樹脂の熱安定性、色調が向上することから好ましい。
チタン化合物としては、例えば、チタン錯体、テトラ−i−プロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネートテトラマーなどのチタンアルコキシド、チタンアルコキシドの加水分解により得られるチタン酸化物、チタンアセチルアセトナートなどが挙げられる。中でも、多価カルボン酸および/またはヒドロキシカルボン酸および/または多価アルコールをキレート剤とするチタン錯体が、熱可塑性ポリエステル樹脂の熱安定性、色調の観点から好ましい。チタン化合物のキレート剤としては、例えば、乳酸、クエン酸、マンニトール、トリペンタエリスリトール等が挙げられる。
アルミニウム化合物としては、例えば、カルボン酸アルミニウム、アルミニウムアルコキシド、アルミニウムキレート化合物、塩基性アルミニウム化合物などが挙げられる。カルボン酸アルミニウムとしては、例えば、酢酸アルミニウムや炭酸アルミニウムなどが挙げられる。アルミニウムアルコキシドとしては、例えば、アルミニウムエトキシドやアルミニウムイソプロポキシドなどが挙げられる。アルミニウムキレート化合物としては、例えば、アルミニウムアセチルアセトナートなどが挙げられる。塩基性アルミニウム化合物としては、例えば、水酸化アルミニウムや塩基性酢酸アルミニウムなどが挙げられる。
スズ化合物としては、例えば、モノブチルスズオキシドなどが挙げられる。
アンチモン化合物としては、例えば、アンチモンアルコキシドや三酸化アンチモンなどが挙げられる。
重合反応触媒の添加量は、機械特性、成形性および色調の点で、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂100重量部に対して、0.005〜0.5重量部の範囲が好ましく、0.01〜0.2重量部の範囲がより好ましい。
本発明において、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂の形状は特に制限されず、粉砕品、粒状、フレーク状、粉末状、針状、液状などいずれも使用できる。
本発明における樹脂組成物は、(B)空気中において室温から600℃まで昇温速度40℃/分で加熱したときの重量減量が70%以下である樹脂を配合してなる。かかる樹脂を配合することにより、燃焼時に残渣が断熱層または不燃層になり、高い難燃性を有する成形品を得ることができる。
前記重量減量は、熱重量測定装置(Perkin Elmer社製、TGA−7)を用いて測定することができ、{(加熱前の重量−加熱後の重量)/加熱前の重量}×100により算出することができる。空気中において室温から600℃まで昇温速度40℃/分で加熱したときの重量減量は、燃焼反応場における樹脂の熱分解挙動の指標であり、かかる重量減量が小さいほど、残渣が多く、燃焼時に断熱層または不燃層を形成しやすいことを表す。なお、本発明において、600℃まで加熱することは、樹脂の熱分解が終了する温度条件まで加熱することを意味し、その条件での残渣が多いほど難燃性に優れる。
空気中において室温から600℃まで昇温速度40℃/分で加熱したときの重量減量が70%以下である樹脂であれば、熱可塑性樹脂であっても熱硬化性樹脂であっても特に制限はないが、難燃性、靭性、強度および耐熱性により優れる点で、前記条件における重量減量が65%以下のものが好ましく、成形品表面に断熱層を効率よく形成する点で60%以下のものがより好ましい。重量減量の下限は0%である。
前記重量減量が70%以下である樹脂としては、例えば、ポリエーテルイミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリアリレート樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂およびポリカーボネート樹脂などが挙げられる。これらを2種以上配合してもよい。
これらの中でも、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂との相溶性、生産性、成形加工温度の点で、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂が好ましく、難燃性、耐熱性および耐久性により優れる点で、ポリフェニレンスルフィド樹脂が特に好ましい。
本発明において、ポリフェニレンスルフィド樹脂は、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体または共重合体である。
全繰り返し単位中、上記一般式(1)で表される繰り返し単位を好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上を含む重合体または共重合体が耐熱性の点から好ましい。また、ポリフェニレンスルフィド樹脂は、その繰り返し単位の30モル%未満を、下記構造式を有する繰り返し単位で構成することが可能である。
ポリフェニレンスルフィド樹脂の溶融粘度は、溶融混練が可能であれば、特に制限はないが、通常5〜2000Pa・s(320℃、剪断速度10sec−1)のものが使用される。
ポリフェニレンスルフィド樹脂は公知の方法によって製造することができる。また、市販品として、例えば、“トレリナ”(登録商標)(東レ(株)製)、PPS(DIC(株)製)等が挙げられる。
本発明において、ポリフェニレンエーテル樹脂(以下PPEと略す)は、下記一般式(2)で表される繰り返し単位を有する重合体または共重合体である。
上記式中R〜Rは水素原子、アルキル基、アルコキシ基または芳香族残基を表し、それぞれ同じでも異なっていてもよい。アルキル基およびアルコキシ基の炭素数は1〜4が好ましく、アリール基の炭素数は6〜12が好ましい。さらに、RおよびRが炭素数1〜4のアルキル基であり、RおよびRが水素原子または炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましい。例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジプロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−プロピル−1,4−フェニレン)エーテルなどが挙げられる。また、上記繰り返し単位の一部を、例えば、2,3,6−トリメチルフェノールなどのアルキル三置換フェノールの残基に置換した共重合体を挙げることができる。また、ポリフェニレンエーテル樹脂は、さらにスチレン系化合物がグラフトした共重合体であってもよい。スチレン系化合物グラフト化ポリフェニレンエーテルとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどのスチレン系化合物を上記PPEにグラフトして得られる共重合体などが挙げられる。
ポリフェニレンエーテル樹脂は公知の方法によって製造することができる。また、市販品として、例えば、“ユピエース”(登録商標)(三菱エンジニアリングプラスチック(株)製)等が挙げられる。
本発明において、フェノール樹脂は、フェノール性水酸基を複数有する重合体または共重合体である。例えば、ノボラック型、レゾール型および熱反応型の樹脂、あるいはこれらを変性した樹脂などが挙げられる。これらは硬化剤未添加の未硬化樹脂、半硬化樹脂、あるいは硬化樹脂であってもよい。これらを2種以上配合してもよい。中でも、硬化剤未添加で、非熱反応性であるフェノールノボラック樹脂が、難燃性、機械特性、経済性の点で好ましい。
フェノール樹脂の製造方法は特に限定するものではなく、また、市販されているものなどを用いてもよい。フェノール樹脂の製造方法としては、例えば、ノボラック型フェノール樹脂の場合、フェノール類とアルデヒド類を、モル比が1:0.7〜1:0.9となるような比率で反応槽に仕込み、さらにシュウ酸、塩酸、硫酸、トルエンスルホン酸等の触媒を加えた後、加熱し、所定の時間還流反応を行う。生成した水を除去するため真空脱水あるいは静置脱水し、さらに残っている水と未反応のフェノール類を除去する方法により得ることができる。また、レゾール型フェノール樹脂の場合、フェノール類とアルデヒド類を、モル比が1:1〜1:2となるような比率で反応槽に仕込み、水酸化ナトリウム、アンモニア水、その他の塩基性物質などの触媒を加えた後、ノボラック型フェノール樹脂と同様の反応および処理をして得ることができる。
ここで、フェノール類としては、例えば、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、チモール、p−tert−ブチルフェノール、tert−ブチルカテコール、カテコール、イソオイゲノール、o−メトキシフェノール、4,4’−ジヒドロキシフェニル−2,2−プロパン、サルチル酸イソアミル、サルチル酸ベンジル、サルチル酸メチル、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール等が挙げられる。これらを2種以上用いることができる。一方、アルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、ポリオキシメチレン、トリオキサン等が挙げられる。これらを2種以上用いることができる。
フェノール樹脂の数平均分子量は特に限定されないが、好ましくは200〜2,000の範囲であり、特に400〜1,500の範囲が、機械物性、成形加工性、経済性に優れ好ましい。なお、フェノール樹脂の数平均分子量は、テトラヒドラフラン溶液、ポリスチレン樹脂標準サンプルを使用することにより、GPC法により測定できる。
また、本発明で使用されるフェノール樹脂は、オリゴマー量を低減するために、清浄されていてもよい。フェノール樹脂中に含有される遊離ホルムアルデヒド量は、特に制限はないが、遊離ホルムアルデヒド量は少なければ少ないほど、樹脂組成物の滞留安定性が向上し、成形時のガス発生量は低減する。また、遊離ホルムルデヒド量を低減させると、成形品の表面外観が向上する、湿熱処理時のブリードアウトが低減されるなどの効果がある。
本発明に用いられるポリカーボネート樹脂は、芳香族二価フェノール系化合物とホスゲンまたは炭酸ジエステルとを反応させることにより得られる重合体または共重合体である。ここで、二価フェノール系化合物としては、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジエチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジエチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1−フェニル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等が挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。炭酸ジエステルとしては、例えば、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジプロピル、炭酸ジフェニルなどが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、10000〜1000000の範囲が好ましい。また、ポリカーボネート樹脂の重量平均分子量は、10000〜1100000の範囲が好ましい。重量平均分子量が10000以上であれば、機械特性がより向上する。60000以上がより好ましい。一方、重量平均分子量が1100000以下であれば、成形時の流動性が向上する。ここでいう重量平均分子量とは、溶媒にテトラヒドロフランを用い、ゲル透過クロマトグラフィーにより、ポリスチレン換算で測定して得られるものである。
ポリカーボネート樹脂は公知の方法によって製造することができる。また、市販品として、例えば、“タフロン”(登録商標)(出光興産(株)製)等が挙げられる。
本発明における樹脂組成物において、(B)空気中において室温から600℃まで昇温速度40℃/分で加熱したときの重量減量が70%以下である樹脂の配合量は、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂100重量部に対し、50〜150重量部である。(B)成分の配合量が50重量部未満であると難燃性が不十分となる。70重量部以上が好ましく、80重量部以上がより好ましい。一方、150重量部を超えると靭性が低下する。140重量部以下が好ましく、120重量部以下がより好ましく、100重量部以下がさらに好ましい。
本発明において、前記(B)成分の樹脂の形状は特に制限されず、粉砕品、粒状、フレーク状、粉末状、針状、液状などいずれも使用できる。
本発明における樹脂組成物は、(C)窒素系難燃剤を配合してなる。(C)窒素系難燃剤を配合することにより、燃焼時に窒素ガスを発生したり、吸熱作用により、難燃性を向上させることができる。
(C)窒素系難燃剤としては、例えば、脂肪族アミン化合物、芳香族アミン化合物、含窒素複素環化合物、シアン化合物、脂肪族アミド化合物、芳香族アミド化合物、尿素およびチオ尿素等が挙げられる。これらを2種以上配合してもよい。これらの中でも、難燃性により優れる点で、含窒素複素環化合物が好ましく用いられる。
脂肪族アミン化合物としては、例えば、エチルアミン、ブチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、ブチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,2−ジアミノシクロオクタンなどを挙げることができる。
芳香族アミン化合物としては、例えば、アニリン、フェニレンジアミンなどを挙げることができる。
含窒素複素環化合物としては、例えば、尿酸、アデニン、グアニン、2,6−ジアミノプリン、2,4,6−トリアミノピリジン、トリアジン系化合物などを挙げることができる。
シアン化合物としては、例えば、ジシアンジアミドなどを挙げることができる。
脂肪族アミド化合物や芳香族アミド化合物としては、例えば、N,N−ジメチルアセトアミドやN,N−ジフェニルアセトアミドなどを挙げることができる。
前記含窒素複素環化合物において例示したトリアジン系化合物は、トリアジン骨格を有する化合物である。例えば、トリアジン、メラミン、ベンゾグアナミン、メチルグアナミン、シアヌール酸、メラミンシアヌレート、メラミンイソシアヌレート、トリメチルトリアジン、トリフェニルトリアジン、アメリン、アメリド、チオシアヌール酸、ジアミノメルカプトトリアジン、ジアミノメチルトリアジン、ジアミノフェニルトリアジン、ジアミノイソプロポキシトリアジンおよびポリリン酸メラミンなどを挙げることができ、メラミンシアヌレート、メラミンイソシアヌレート、ポリリン酸メラミンが好ましく用いられる。
メラミンシアヌレートまたはメラミンイソシアヌレートとしては、シアヌール酸またはイソシアヌール酸とトリアジン系化合物との塩が好ましく、通常は1対1(モル比)、場合により1対2(モル比)の組成を有する塩を挙げることができる。これらは公知の方法で製造され、例えば、メラミンとシアヌール酸またはイソシアヌール酸の混合物を水スラリーとし、よく混合して両者の塩を微粒子状に形成させた後、このスラリーを濾過、乾燥することにより、一般には粉末状で得られる。また、上記の塩は完全に純粋である必要はなく、多少未反応のメラミンないしシアヌール酸、イソシアヌール酸が残存していてもよい。また、分散性が悪い場合には、トリス(β−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートなどの分散剤やポリビニルアルコールおよびシリカなどの金属酸化物などの公知の表面処理剤などを併用してもよい。また、メラミンシアヌレートまたはメラミンイソシアヌレートの樹脂組成物に配合される前後の平均粒径はいずれも、成形品の難燃性、機械強度、表面性の点から0.1〜100μmが好ましく、0.2〜50μmがより好ましい。ここで、平均粒径は、レーザーミクロンサイザー法により測定される累積分布50%粒子径である。メラミンシアヌレートまたはメラミンイソシアヌレートの市販品としては、日産化学(株)製MC−4000、MC−4500およびMC−6000やBASF(株)製MC25およびMC50、三菱化学(株)製MCA−COなどが好ましく用いられる。
本発明における樹脂組成物において、(C)窒素系難燃剤の配合量は、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂100重量部に対し、1〜100重量部である。(C)成分の配合量が1重量部未満であると難燃性が不十分となる。10重量部以上が好ましく、30重量部以上がより好ましい。一方、100重量部を超えると靭性が低下する。90重量部以下が好ましく、80重量部以下がより好ましく、60重量部以下がさらに好ましく、40重量部以下が最も好ましい。
本発明における樹脂組成物には、さらに(D)エポキシ化合物を配合することが好ましい。(D)エポキシ化合物を配合することにより、成形品における(B)成分の表層への偏在化を促進し、後述する成形品表層断面における(A)成分の樹脂相に対する(B)成分の樹脂相の面積比率と、成形品中心層断面における(A)成分の樹脂相に対する(B)成分の樹脂相の面積比率の比をより大きくすることができる。その結果、成形品の難燃性と靭性をより高いレベルで両立することができる。
ここで(D)エポキシ化合物は、エポキシ基を分子中に2個以上含むものであり、液体または固体状のものを使用することができる。例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテンなどのα−オレフィンとアクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジルなどのα,β−不飽和酸グリシジルエステルとの共重合体、不飽和二重結合を有する高分子の二重結合部をエポキシ化したエポキシ基含有高分子化合物、ビスフェノールA、レゾルシノール、ハイドロキノン、ピロカテコール、ビスフェノールF、サリゲニン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、ビスフェノールS、トリヒドロキシ−ジフェニルジメチルメタン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、1,5−ジヒドロキシナフタレン、カシューフェノール、2,2,5,5−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン等のビスフェノール−グリシジルエーテル系エポキシ化合物、フタル酸グリシジルエステル等のグリシジルエステル系エポキシ化合物、N−グリシジルアニリン等のグリシジルアミン系エポキシ化合物、ノボラック型フェノール樹脂にエピクロルヒドリンを反応させたノボラック型エポキシ樹脂等が例示される。これらを2種以上配合してもよい。中でも、α−オレフィンとα,β−不飽和カルボン酸グリシジルエステルの共重合体、ノボラック型フェノール樹脂にエピクロルヒドリンを反応させたノボラック型エポキシ樹脂が好ましく、ノボラック型フェノール樹脂にエピクロルヒドリンを反応させたノボラック型エポキシ樹脂は(B)成分をさらに成形品表層に偏在化させることができるため特に好ましい。
(D)エポキシ化合物の配合量は、難燃性の点から、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂100重量部に対し、好ましくは0.1〜10重量部である。(D)エポキシ化合物の配合量が0.1重量部以上であれば、(B)成分を成形品表層により偏在化させることができ、難燃性を向上させることができる。1重量部以上がより好ましく、2重量部以上がさらに好ましい。一方、(D)エポキシ化合物の配合量が10重量部以下であれば、難燃性をより向上させることができる。9重量部以下がより好ましく、8重量部以下がさらに好ましい。
本発明における樹脂組成物には、さらに(E)繊維状強化材を配合することができ、主に、機械強度、靭性および耐熱性を向上させることができる。繊維状強化材としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、玄武岩繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、ホウ素繊維、窒化ホウ素繊維、アラミド繊維などの各種有機繊維などが挙げられる。これらを2種以上配合してもよい。これらの中でも、成形品の強度および剛性を向上させる観点から、ガラス繊維が好ましい。ガラス繊維としては、チョップドストランドタイプやロービングタイプのガラス繊維が挙げられる。
(E)繊維状強化材は、アミノシラン化合物やエポキシシラン化合物などのシランカップリング剤および/またはウレタン、酢酸ビニル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ノボラック系エポキシ化合物などの一種以上のエポキシ化合物などを含有した集束剤で処理されたものであることが好ましい。シランカップリング剤および/または集束剤は、エマルジョン液に混合されて使用されていてもよい。また、(E)繊維状強化材の繊維径は1〜30μmが好ましく、より好ましくは5〜15μmである。
また、円形ガラス繊維、任意の縦横比の楕円形ガラス繊維、扁平ガラス繊維およびまゆ型形状ガラス繊維など任意の形状の断面を持つガラス繊維を用いることもできる。扁平ガラス繊維やまゆ型形状ガラス繊維を用いることにより、射出成形時の流動性向上と、ソリの少ない成形品が得られる特徴がある。
(E)繊維状強化材の配合量は、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂100重量部に対し、5〜200重量部が好ましい。(E)繊維状強化材の配合量が5重量部以上であれば、機械強度と耐熱性がより向上する。8重量部以上が好ましく10重量部以上がさらに好ましい。一方、(E)繊維状強化材の配合量が200重量部以下であれば、射出成形時の流動性が向上し、金型の摩耗を抑制することができる。140重量部以下が好ましく、130重量部以下がより好ましい。
さらに、本発明における樹脂組成物に、本発明の目的を損なわない範囲で、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤および帯電防止剤などの公知の添加剤などを1種以上配合してもよい。
本発明における樹脂組成物には、エステル化反応触媒または交換反応触媒を失活させることを目的に、エステル交換防止剤を配合することができる。エステル交換防止剤としては、ホスフェート系化合物が好ましく用いられる。ホスフェート系化合物は、アルコール類と燐酸との部分エステル化合物の総称で、低分子量のものは無色液体、高分子量のものは白色ロウ状、フレーク状固体であり、具体例としては、モノメチルアシッドホスフェート、モノエチルアシッドホスフェート、モノイソプロピルアシッドホスフェート、モノブチルアシッドホスフェート、モノラウリルアシッドホスフェート、モノステアリルアシッドホスフェート、モノドデシルアシッドホスフェート、モノベヘニルアシッドホスフェート、ジメチルアシッドホスフェート、ジエチルアシッドホスフェート、ジイソプロピルアシッドホスフェート、ジブチルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、ジステアリルアシッドホスフェート、ジドデシルアシッドホスフェート、ジベヘニルアシッドホスフェート、トリメチルアシッドホスフェート、トリエチルアシッドホスフェートなどが挙げられる。これらを2種以上配合してもよい。好ましく用いられるホスフェート系化合物としては、モノおよびジステアリルアシッドホスフェートの混合物などの長鎖アルキルアシッドホスフェート化合物が挙げられ、(株)ADEKAから“アデカスタブ”(登録商標)AX−71の名称で市販され、融点を持つフレーク状固体である。
前記エステル交換防止剤の配合量は、難燃性と熱変形温度の点から(A)熱可塑性ポリエステル樹脂100重量部に対し、0.01〜10重量部が好ましい。エステル交換防止剤の配合量が0.01重量部以上であれば、耐熱性を向上させることができる。0.02重量部以上がより好ましく、0.03重量部以上がさらに好ましい。一方、エステル交換防止剤の配合量が10重量部以下であれば、難燃性をより向上させることができる。7重量部以下がより好ましく、5重量部以下がさらに好ましい。
本発明における樹脂組成物には、射出成形など成形加工時の流動性を向上させることを目的に、好ましくは、3つ以上の官能基を有し、アルキレンオキシド単位を一つ以上含む多価アルコール化合物を配合することができる。ここで、多価アルコール化合物とは、水酸基を2つ以上有する化合物を指す。3つ以上の官能基を有し、アルキレンオキシド単位を一つ以上含む多価アルコール化合物は、低分子化合物であってもよいし、重合体であってもよく、3官能性化合物、4官能性化合物および5官能性化合物などの3つ以上の官能基を有する化合物であって、アルキレンオキシド単位を一つ以上含む多価アルコール化合物であれば、いずれでも好ましく用いられる。また、3つ以上の官能基の官能基は、水酸基、アルデヒド基、カルボン酸基、スルホ基、アミノ基、グリシジル基、イソシアネート基、カルボジイミド基、オキサゾリン基、オキサジン基、エステル基、アミド基、シラノール基およびシリルエーテル基からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、これらの中から同一あるいは異なる3つ以上の官能基を有していることがより好ましく、とくに流動性、機械物性、耐久性、耐熱性および生産性の点で、同一の官能基であることがさらに好ましい。
また、アルキレンオキシド単位の好ましい例として、炭素原子数1〜4の脂肪族アルキレンオキシド単位が挙げられる。具体例としては、メチレンオキシド単位、エチレンオキシド単位、トリメチレンオキシド単位、プロピレンオキシド単位、テトラメチレンオキシド単位、1,2−ブチレンオキシド単位、2,3−ブチレンオキシド単位、イソブチレンオキシド単位などを挙げることができる。本発明においては、特に、流動性、リサイクル性、耐久性、耐熱性および機械物性に優れるという点で、エチレンオキシド単位またはプロピレンオキシド単位が好ましく、耐加水分解性および靭性に優れるという点で、プロピレンオキシド単位が特に好ましい。アルキレンオキシド単位数については、流動性および機械物性に優れるという点で、1官能基当たりのアルキレンオキシド単位が0.1〜20であることが好ましく、0.5〜10であることがより好ましく、1〜5であることがさらに好ましい。
また、3つ以上の官能基を有し、アルキレンオキシド単位を一つ以上含む多価アルコール化合物は、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂と反応し、(A)成分の主鎖および側鎖に導入されていてもよく、(A)成分と反応せずに、配合時の構造を保っていてもよい。
本発明において、3つ以上の官能基を有するアルキレンオキシド単位を一つ以上含む多価アルコール化合物の配合量は、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂100重量部に対して、0.01〜6重量部が好ましい。多価アルコール化合物の配合量が0.01重量部以上であれば、流動性を向上させることができる。0.05重量部以上がより好ましく、0.1重量部以上がさらに好ましい。一方、多価アルコール化合物の配合量が6重量部以下であれば、機械特性をより向上させることができる。4重量部以下がより好ましく、3重量部以下がさらに好ましい。
本発明における樹脂組成物には、シリコーン系難燃剤および無機系難燃剤などの(C)窒素系難燃剤以外の公知の難燃剤を、本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。
シリコーン系難燃剤としては、例えば、シリコーン樹脂、シリコーンオイルなどを挙げることができる。シリコーン樹脂としては、例えば、SiO、RSiO3/2、RSiO、RSiO1/2の構造単位を組み合わせてできる三次元網状構造を有する樹脂などを挙げることができる。ここで、Rは、アルキル基、芳香族基またはこれらの水素元素の少なくとも一部をビニル基により置換した基を示す。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられる。芳香族基としては、例えば、フェニル基、ベンジル基等が挙げられる。また、シリコーンオイルとしては、例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリジメチルシロキサンの側鎖あるいは末端の少なくとも1つのメチル基が、水素原子、アルキル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、アミノ基、エポキシ基、ポリエーテル基、カルボキシル基、メルカプト基、クロロアルキル基、アルキル高級アルコールエステル基、アルコール基、アラルキル基、ビニル基およびトリフロロメチル基からなる群より選ばれる少なくとも1つの基により変性された変性ポリシロキサンなどを挙げることができる。これらを2種以上用いてもよい。
シリコーン系難燃剤の配合量は、燃焼熱で成形品表面にシリコーン系難燃剤が移動し、成形品表面から燃焼を防止する効果を有する点で、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂100重量部に対して、0.05〜8重量部が好ましく、0.1〜6重量部がより好ましく、0.15〜4重量部がさらに好ましい。
無機系難燃剤としては、例えば、水酸化マグネシウム水和物、水酸化アルミニウム水和物、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ソーダ、ヒドロキシスズ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、メタスズ酸、酸化スズ、酸化スズ塩、硫酸亜鉛、酸化亜鉛、硼酸亜鉛、硼酸亜鉛水和物、水酸化亜鉛酸化第一鉄、酸化第二鉄、硫化イオウ、酸化第一錫、酸化第二スズ、ホウ酸アンモニウム、オクタモリブデン酸アンモニウム、タングステン酸の金属塩、タングステンとメタロイドとの複合酸化物酸、スルファミン酸アンモニウム、ジルコニウム系化合物、黒鉛、膨潤性黒鉛などを挙げることができる。これらは脂肪酸やシランカップリング剤などで表面処理されていてもよい。これらの中でも、硼酸亜鉛水和物、膨潤性黒鉛が難燃性の点で好ましく、酸化マグネシウムと酸化アルミニウムの混合物、スズ酸亜鉛、メタスズ酸、酸化スズ、硫酸亜鉛、酸化亜鉛、硼酸亜鉛、亜鉛酸化第一鉄、酸化第二鉄および硫化イオウが、難燃性と滞留安定性に優れる無機系難燃剤として好ましく用いられる。
無機系難燃剤の配合量は、燃焼熱を吸熱する効果、燃焼時に膨張してそれ以上の燃焼が進まないようにする効果がある点で、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂100重量部に対して、0.05〜8重量部が好ましく、0.1〜6重量部がより好ましく、0.15〜4重量部がさらに好ましい。
本発明における樹脂組成物には、燃焼時の溶融落下を抑制し、さらに難燃性を向上させることを目的に、好ましくは、フッ素系樹脂を配合することができる。
フッ素系樹脂とは、物質分子中にフッ素を含有する樹脂であり、具体的には、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、(テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン)共重合体、(テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル)共重合体、(テトラフルオロエチレン/エチレン)共重合体、(ヘキサフルオロプロピレン/プロピレン)共重合体、ポリビニリデンフルオライド、(ビニリデンフルオライド/エチレン)共重合体などが挙げられる。中でも、ポリテトラフルオロエチレン、(テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル)共重合体、(テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン)共重合体、(テトラフルオロエチレン/エチレン)共重合体、ポリビニリデンフルオライドが好ましく、特にポリテトラフルオロエチレン、(テトラフルオロエチレン/エチレン)共重合体が好ましい。
また、フッ素系樹脂の配合量は、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂100重量部に対して、0.05〜6重量部が好ましい。0.05重量部以上であれば、燃焼時の溶融落下を防止する効果が向上する。0.1重量部以上がより好ましく、0.15重量部以上がさらに好ましい。一方、6重量部以下であれば、機械特性がより向上する。4重量部以下がより好ましく、3重量部以下がさらに好ましい。
本発明における樹脂組成物には、前記(A)成分および(B)成分以外の熱可塑性樹脂を配合することができ、衝撃強度などを改善することができる。衝撃強度を改善する樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、エチレン共重合体、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ビニル系樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、脂肪族ポリケトン樹脂、熱可塑性澱粉樹脂、ポリウレタン樹脂、メチルメタクリレートスチレン樹脂(MS樹脂)、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリエーテルイミド樹脂、酢酸セルロース樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、天然ゴム、チオコールゴム、多硫化ゴム、ポリエーテルゴム、エピクロロヒドリンゴムおよびエチレンを無水マレイン酸などの酸無水物で変性した変性オレフィン系樹脂などが挙げられる。さらに、各種の架橋度を有するものや、各種のミクロ構造、例えばシス構造、トランス構造等を有するものなどが挙げられる。エチレンを無水マレイン酸などの酸無水物で変性した変性オレフィン系樹脂としては、例えば、エチレン/ブテン−1/無水マレイン酸、エチレン/プロピレン/無水マレイン酸、エチレン/無水マレイン酸などが挙げられる。市販品の例としては、三井石油化学工業(株)製MH−5010やMH−5020(エチレン/ブテン−1/無水マレイン酸)などが挙げられ、ビニル系樹脂を併用配合してもしなくともよい。特に、エチレン/ブテン−1/無水マレイン酸が衝撃強度を大きく改善するため、好ましく用いられる。
衝撃強度を改善する樹脂の配合量は、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂100重量部に対して、好ましくは0.1〜20重量部である。0.1重量部以上であれば、衝撃強度が向上する。0.5重量部以上がより好ましく、1重量部以上がさらに好ましい。一方、20重量部以下であれば、機械特性が向上する。16重量部以下がより好ましく、12重量部以下がさらに好ましい。
本発明における樹脂組成物には、射出成形時の離型性を改善する目的で、離型剤を配合することができる。離型剤としては、例えば、エチレンビスステアリルアマイドなどの脂肪酸アミド、エチレンジアミンとステアリン酸およびセバシン酸からなる重縮合物あるいはフェニレンジアミンとステアリン酸およびセバシン酸の重縮合物からなる脂肪酸アミド、ポリアルキレンワックス、酸無水物変性ポリアルキレンワックスおよび上記の滑剤とフッ素系樹脂やフッ素系化合物の混合物などの公知のプラスチックス用離型剤が挙げられる。
離型剤の配合量は、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂100重量部に対して、0.01〜2重量部が好ましい。0.01重量部以上であれば、十分な離型性効果が得られる。0.02重量部以上がより好ましく、0.03重量部以上がさらに好ましい。一方、2重量部以下であれば、機械特性がより向上する。1.6重量部以下がより好ましく、1.2重量部以下がさらに好ましい。
本発明における樹脂組成物には、機械強度と熱変形温度を向上させることを目的に、(E)繊維状強化材以外の充填材を配合することができる。充填材の具体例としては、針状、粒状および粉末状のいずれでもよく、例えば、ガラスビーズ、ガラスフレーク、チタン酸カリウィスカー、ワラステナイト、シリカ、カオリン、タルク、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムと酸化アルミニウムの混合物、微粉ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、酸化ケイ素、スメクタイト系粘土鉱物(モンモリロナイト、ヘクトライト)、バーミキュライト、マイカ、フッ素テニオライト、燐酸ジルコニウム、燐酸チタニウム、ドロマイトなどが挙げられる。
充填材の配合量は、射出成形時の流動性と射出成形機や金型の耐久性の点から、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂100重量部に対して、1〜200重量部が好ましく、2〜190重量部がより好ましく、3〜190重量部がさらに好ましい。
また、上記の充填材には、カップリング剤処理、エポキシ化合物、あるいはイオン化処理などの表面処理が行われていてもよい。
本発明における樹脂組成物には、加水分解性改良を目的に、オキサゾリン化合物、カルボジイミド変性イソシアネート化合物およびカルボジイミド化合物などの末端封鎖剤を一種以上配合することができる。
末端封鎖剤の配合量は、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂100重量部に対して、0.01〜6重量部が好ましい。0.01重量部以上であれば、十分な加水分解性向上効果が得られる。一方、6重量部以下であれば、機械強度がより向上する。5重量部がより好ましく、4重量部がさらに好ましい。
本発明における樹脂組成物には、さらに本発明の組成物が長期間高温にさらされても極めて良好な耐熱エージング性を与えることができる点で、安定剤を配合してもよい。安定剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、およびチオエーテル系酸化防止剤を配合でき、それらを併用してもよい。
安定剤の配合量は、耐熱エージング性向上の点から、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂100重量部に対して、0.01〜3重量部が好ましく、0.02〜2重量部がより好ましく、0.03〜1.6重量部がさらに好ましい。
本発明における樹脂組成物は、さらに、カーボンブラック、酸化チタン、および種々の色の顔料や染料を1種以上配合することにより、種々の色に調色でき、耐候(光)性および導電性を改良することも可能である。
顔料や染料の配合量は、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂100重量部に対して、0.01〜6重量部が好ましい。0.01重量部であれば、調色、耐候(光)性、および導電性効果が得られる。0.02重量部以上がより好ましく、0.03重量部以上がさらに好ましい。一方、6重量部以下であれば、機械特性がより向上する。4重量部以下がより好ましく、2重量部以下がさらに好ましい。
カーボンブラックとしては、例えば、チャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、アントラセンブラック、油煙、松煙、および、黒鉛などが挙げられ、平均粒径500nm以下、ジブチルフタレート吸油量50〜400cm/100gのカーボンブラックが好ましく用いられる。酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、ポリオール、シランカップリング剤などで処理されていてもよい。
また、酸化チタンとしては、ルチル形あるいはアナターゼ形などの結晶形を持つ、平均粒径5μm以下の酸化チタンが好ましく用いられる。これらは、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、ポリオール、シランカップリング剤などで処理されていてもよい。また、上記のカーボンブラック、酸化チタン、および種々の色の顔料や染料は、本発明の難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物との分散性向上や製造時のハンドリング性の向上のため、種々の熱可塑性樹脂と溶融ブレンドあるいは単にブレンドした混合材料として用いてもよい。
本発明では、環境調和やリン資源枯渇防止の観点から、樹脂組成中に安定剤以外のリン化合物を配合することは避けることが好ましく、樹脂組成中のリン含有量は0.05重量%以下が好ましく、0.04重量%以下がさらに好ましい。樹脂組成中のリン含有量はどのような方法で求めてもよいが、本発明においては、樹脂組成物を成形してなる成形品を蛍光X線元素分析装置(理学電機工業社製、System3270)により元素分析することにより求めることができる。
本発明における樹脂組成物は、例えば、前記(A)〜(C)および必要に応じてその他成分を溶融混練することにより得ることができる。
溶融混練の方法としては、例えば、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂、(B)空気中において室温から600℃まで昇温速度40℃/分で加熱したときの重量減量が70%以下である樹脂、(C)窒素系難燃剤および必要に応じて配合する各種添加剤などを予備混合して押出機などに供給して十分溶融混練する方法、あるいは、重量フィダーなどの定量フィダーを用いて各成分を所定量押出機などに供給して十分溶融混練する方法などがある。
上記の予備混合の例として、ドライブレンドする方法、タンブラー、リボンミキサーおよびヘンシェルミキサー等の機械的な混合装置を用いて混合する方法などが挙げられる。また、繊維状強化材や繊維状強化材以外の無機充填材は、二軸押出機などの多軸押出機の元込め部とベント部の途中にサイドフィーダーを設置して添加してもよい。また、液体の添加剤の場合は、二軸押出機などの多軸押出機の元込め部とベント部の途中に液添ノズルを設置してプランジャーポンプを用いて添加する方法や元込め部などから定量ポンプで供給する方法などを用いてもよい。
本発明における樹脂組成物は、ペレット化して成形加工すること好ましい。ペレット化の方法として、例えば“ユニメルト”あるいは“ダルメージ”タイプのスクリューを備えた単軸押出機、二軸押出機、三軸押出機、コニカル押出機およびニーダータイプの混練機などを用いて、ストランド状に吐出され、ストランドカッターでカッティングする方法などが挙げられる。
次に、本発明の熱可塑性ポリエステル樹脂成形品(以下、成形品と記載する場合がある)について説明する。前述の樹脂組成物を成形してなる本発明の成形品は、前記(A)成分の樹脂および前記(B)成分の樹脂が相分離構造を形成し、成形品表層断面における(A)成分の樹脂相に対する(B)成分の樹脂相の面積比率と、成形品中心層断面における(A)成分の樹脂相に対する(B)成分の樹脂相の面積比率の比({成形品表層断面における(B)成分の樹脂相の面積/(A)成分の樹脂相の面積}/{成形品中心層断面における(B)成分の樹脂相の面積/(A)成分の樹脂相の面積})が、1.2以上であることを特徴とする。かかる面積比率の比は、成形品中心部に比べて成形品表層部に(B)成分の樹脂相が多くなるよう偏在化することを意味する。これにより、燃焼時に(B)成分の樹脂相が、燃焼反応場である表層部において断熱層または不燃層の役割を果たし、(B)成分の配合量に対して、成形品の難燃性が著しく向上するものと考えられる。
上記の(表層面積比/中心層面積比)が1.2未満の場合、成形品表層部に偏在する(B)成分の樹脂相の量が少なく、一定の(B)成分配合量に対して、難燃性の向上効果が相対的に低下し、難燃性を向上させるためには、(B)成分の配合量を増加することが有効であるが、靭性が低下するため、難燃性と靭性を両立することができなくなる。一方、成形品表層部に偏在化する(B)成分の樹脂相の量をより増加させ、難燃性と靭性をより高いレベルで両立できる点で、上記面積比率の比は1.3以上が好ましく、1.4以上がより好ましく、1.5以上がさらに好ましく、1.6以上が特に好ましい。
ここで、成形品表層とは、成形品の外表面近傍の部分であり、具体的には、成形品表面から100μmの深さまでの領域の層を含む部分をいう。一方、成形品中心層とは、成形品の内部を構成する層をいい、上記成形品表層よりも内部の任意の位置にある層を含む部分である。具体的には、成形品の厚みをdとしたときに、成形品の外表面から深さ0.5×d近傍に位置する層であり、より具体的には0.5×d±100μmであって、成形品表層よりも内部の層をいう。
本発明の成形品において、前記(A)成分の樹脂および前記(B)成分の樹脂の相分離構造の有無、および成形品表層断面における(A)成分の樹脂相に対する(B)成分の樹脂相の面積比率と、成形品中心層断面における(A)成分の樹脂相に対する(B)成分の樹脂相の面積比率の比は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察し、コンピューター画像解析法により算出することができる。
具体的には、成形品を凍結させ、樹脂の流れ方向(MD方向)に沿って切片を切り出し、その切断面部分の表層(成形品表面から深さ100μmまでの領域)と中心層(成形品中心から深さ方向±0.1mmの領域)をそれぞれ日立(株)製H−7100透過型電子顕微鏡(TEM)により倍率20,000倍で観察し、TEM像写真を得る。上記の表層と中心層のTEM像から、4μm四方の微小部を任意に20箇所抽出し、その各微小部について、(A)成分の樹脂相と(B)成分の樹脂相に相当する面積の比率をコンピューター画像解析法により算出する。コンピューター画像解析法としては、画像解析ソフト(例えばアメリカ国立衛生研究所で開発されたオープンソースImageJ)によりTEM像の白黒写真を2値化し、その2値画像の面積を計算することで樹脂相の面積比率を算出する方法が挙げられる。このとき2値化するときの閾値は画像の濃淡ヒストグラム(256階調)のピークとピークの間の谷、すなわち極小部とする。そして、表層と中心層の樹脂相の面積比の比率を計算することで、({成形品表層断面における(B)成分の樹脂相の面積/(A)成分の樹脂相の面積}/{成形品中心層断面における(B)成分の樹脂相の面積/(A)成分の樹脂相の面積})を算出することができる。
一例として、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルフィドおよびメラミンシアヌレートを含む樹脂組成物を成形して得られる成形品断面のTEM像写真を図1に示す。図1の上図は成形品表層断面、下図は成形品中心層断面を示す。図1において、灰色部位1がポリエチレンテレフタレートの樹脂相であり、黒色部位2がポリフェニレンスルフィドの樹脂相であり、白色部位3がメラミンシアヌレートに帰属される。図1の上図の画像の濃淡ヒストグラムを図2に示す。図2には3つのピークが見られるが、階調80のピーク4はポリフェニレンスルフィドの樹脂相、階調105のピーク5はポリエチレンテレフタレートの樹脂相、階調215のピーク6はメラミンシアヌレートに帰属され、ポリエチレンテレフタレートの樹脂相とポリフェニレンスルフィドの樹脂相の2値化の閾値はピーク5とピーク4の間の極小部の階調になる。
本発明において、({成形品表層断面における(B)成分の樹脂相の面積/(A)成分の樹脂相の面積}/{成形品中心層断面における(B)成分の樹脂相の面積/(A)成分の樹脂相の面積})を1.2以上とするための手段としては、例えば、前記(A)成分、(B)成分、(C)成分および(D)エポキシ化合物を配合してなる樹脂組成物を成形する方法が挙げられる。
本発明においては、環境調和やリン資源枯渇防止の観点から、成形品中に安定剤以外のリン化合物が含まれることは避けることが好ましく、成形品中のリン含有量は0.05重量%以下が好ましく、0.04重量%以下がさらに好ましい。成形品中のリン含有量はどのような方法で求めてもよいが、本発明においては、成形品を蛍光X線元素分析装置(理学電機工業社製、System3270)により元素分析することにより求めることができる。
本発明において、成形方法としては、溶融成形や溶液成形などのいかなる成形方法も採用することができるが、難燃性、生産性により優れる点で、溶融成形が好ましい。
溶融成形方法としては、より具体的には、射出成形、押出成形、ブロー成形などを挙げることができ、特に難燃性により優れる点で、射出成形が好ましい。さらに、射出成形の方法としては、通常の方法以外にも、ガスアシスト成形、2色成形、サンドイッチ成形、インモールド成形、インサート成形およびインジェクションプレス成形などの公知の方法をいずれも適用できる。
本発明の成形品の形状は、特に制限されず、フィルム、シート、繊維、射出成形品、押出成形品など各種形状の成形品とすることができるが、難燃性および生産性に優れる点で、射出成形品であることが好ましい。
本発明の難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂成形品は、ハロゲンおよびリン系難燃剤を大幅に低減し、優れた難燃性と靭性を有する特徴を活かし、環境に配慮した機械機構部品、電気電子部品、自動車部品または筐体などに好ましく用いることができる。
機械機構部品、電気・電子部品、自動車部品の具体例としては、ブレーカー、電磁開閉器、フォーカスケース、フライバックトランス、複写機やプリンターの定着機用成形品、一般家庭電化製品、OA機器などのハウジング、バリコンケース部品、各種端子板、変成器、プリント配線板、ハウジング、端子ブロック、コイルボビン、コネクター、リレー、ディスクドライブシャーシー、トランス、スイッチ部品、コンセント部品、モーター部品、ソケット、プラグ、コンデンサー、自動車点火装置部品、自動車用コネクター、各種自動車用電装部品、抵抗器、金属端子や導線が組み込まれる電気・電子部品などが挙げられる。また、筐体の具体例としては、コンピューター関連機器、音響機器、照明機器、電信・電話機器、エアコン、VTRやテレビなどの家電機器、複写機、ファクシミリ、光学機器などの筐体が挙げられる。
以下、実施例により本発明の効果を更に詳細に説明する。実施例および比較例に用いる原料を以下に示す。
(A)熱可塑性ポリエステル樹脂
<A−1>ポリエチレンテレフタレート樹脂、東レ(株)製“T900E”を用いた。
(B)空気中において室温から600℃まで昇温速度40℃/分で加熱したときの重量減量が70%以下である樹脂
<B−1>ポリフェニレンスルフィド樹脂、東レ(株)製“M2888”、空気中において室温から600℃まで昇温速度40℃/分で加熱したときの重量減量34重量%であるPPSを用いた。
(C)窒素系難燃剤
<C−1>メラミンシアヌレート、日産化学(株)製“MC−4000”、平均粒径10μm白色粉末を用いた。
(D)エポキシ樹脂
<D−1>ノボラック型エポキシ樹脂、日本化薬(株)製“EOCN−104S”を用いた。
<D−2>グルシジルメタクリレート重合体、日油化学(株)製「マープルーフ」(登録商標)“G−01100”を用いた。
<D−3>エポキシ基含有アクリル系共重合体、東亞合成(株)製「ARUFON」(登録商標)“UG−4040”を用いた。
(E)ガラス繊維
<E−1>繊維径約10μmのチョップドストランド状のガラス繊維、日東紡績(株)製“3J948”を用いた。
(F)その他添加剤
<F−1>燃焼時溶融落下(ドリップ)防止剤として、ポリテトラフルオロエチレン、三井・デュポンフロロケミカル(株)製「テフロン」(登録商標)6−Jを用いた。
<F−2>離型剤として、ステアリン酸、セバシン酸、エチレンジアミンの重縮合物、共栄社化学(株)製「ライトアマイド」(登録商標)“WH−255”を用いた。
<F−3>安定剤として、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、アデカ(株)製「MARK」(登録商標)“PEP36”を用いた。
<F−4>ポリスチレン樹脂、新日鉄化学(株)製、G−10、空気中において室温から600℃まで昇温速度40℃/分で加熱したときの重量減量95%であるポリスチレン樹脂を用いた。
<F−5>ポリカルボジイミド、日清紡ケミカル(株)製、「カルボジライト」(登録商標)“HMV−8CA”を用いた。
<F−6>オキサゾリン変性ポリスチレン、日本触媒(株)製「エポクロス」(登録商標)“RPS−1005”を用いた。
[各特性の評価方法]
本実施例、比較例においては以下に記載する測定方法によって、その特性を評価した。
1.相分離構造の観察
東芝機械製IS55EPN射出成形機を用いて、成形温度290℃、金型温度80℃の各温度条件で射出時間と保圧時間は合わせて10秒、冷却時間10秒の成形サイクル条件で試験片厚み1/32インチ(試験片寸法:長さ13mm、幅1.3mm、厚さ0.79mm)の成形品を得た。得られた成形品を凍結させ、樹脂の流れ方向(MD方向)に沿って切片を切り出し、その切断面部分の表層(成形品表面から深さ100μmまでの領域)と中心層(成形品中心から表面深さ方向±0.1mmの領域)をそれぞれ日立(株)製H−7100透過型電子顕微鏡(TEM)により倍率20,000倍で観察し、TEM像写真を得た。例えば、図1は実施例1より得られた成形品断面のTEM像写真である。図1において灰色部位が(A)成分の樹脂相であり、黒色部位が(B)成分の樹脂相であり、白色部位が(C)窒素系難燃剤に帰属される。
2.表層面積比/中心層面積比の算出
上記1項により得られた表層と中心層のTEM像から、4μm四方の微小部を任意に20箇所抽出し、その各微小部について、(A)成分の樹脂相と(B)成分の樹脂相に相当する面積の比率を算出した。具体的には、画像解析ソフト(アメリカ国立衛生研究所で開発されたオープンソースImageJ)によりTEM像の白黒写真を2値化し、その2値画像の面積を計算することで樹脂相の面積比を算出した。このとき、2値化の閾値はTEM画像の濃淡ヒストグラムのピークの谷、すなわち極小部とした。例えば、図2は実施例1により得られた成形品の表層断面のTEM像写真における階調ごとの強度を示した図である。図2には3つのピークが見られるが、階調80のピーク4は(B)成分の樹脂相、階調105のピーク5は(A)成分の樹脂相、階調215のピーク6は(C)成分に帰属される。そして、表層と中心層の樹脂相の面積比の比率を計算することで、{成形品表層断面における(B)成分の樹脂相の面積/(A)成分の樹脂相の面積}/{成形品中心層断面における(B)成分の樹脂相の面積/(A)成分の樹脂相の面積}を算出した。
3.引張物性
東芝機械製IS55EPN射出成形機を用いて、上記1項の相分離構造の観察と同一射出成形条件で試験片厚み1/8インチ(約3.2mm)厚みのASTM1号ダンベルの引張物性評価用試験片を得た。得られた機械強度評価用試験片を用い、ASTMD638(2005年)に従い、引張破断強度および引張破断伸びを測定した。3本の試験片について測定を行い、その平均値を求めた。なお、引張破断伸びが0.7%未満の材料は、靭性に劣ると判断し、引張破断強度および引張破断伸びの数字が大きい材料を靭性に優れると判断した。
4.難燃性
東芝機械製IS55EPN射出成形機を用いて、上記1項の相分離構造の観察と同一射出成形条件で試験片厚み1/32インチ(試験片寸法:長さ13mm、幅1.3mm、厚さ0.79mm)の燃焼試験片を得た。得られた燃焼試験片を用い、UL94垂直試験に定められている評価基準に従い、難燃性を評価した。難燃性はV−0>V−1>V−2の順に低下しランク付けされる。また、燃焼性に劣り上記のV−2に達せず、上記の難燃性ランクに該当しなかった材料は規格外とした。
5.耐熱性
東芝機械製IS55EPN射出成形機を用いて、上記1項の相分離構造の観察と同一射出成形条件で1/8インチ(約3.18mm)厚みのダンベルの熱変形温度評価用試験片を得た。得られた熱変形温度評価用試験片を用い、ASTMD648(2005年)に従い、測定荷重1.82MPaの条件で熱変形温度を測定し、値は3本の測定値の平均値とした。
6.リン含有量
東芝機械製IS55EPN射出成形機を用いて、上記1項の相分離構造の観察と同一射出成形条件で試験片厚み1/32インチ(試験片寸法:長さ13mm、幅1.3mm、厚さ0.79mm)の分析用試験片を得た。得られた分析用試験片を蛍光X線元素分析装置(理学電機工業社製、System3270)により元素分析することによりリン含有量を求めた。
[実施例1〜16]、[比較例1〜8]
スクリュー径30mm、L/D35の同方向回転ベント付き2軸押出機(日本製鋼所製、TEX−30α)を用いて、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂、(B)空気中において室温から600℃まで昇温速度40℃/分で加熱したときの重量減量が70%以下である樹脂、(C)窒素系難燃剤および必要に応じてその他配合材料などを表1〜表3に示した配合組成で混合し、2軸押出機の元込め部から添加した。なお、(E)ガラス繊維は、元込め部とベント部の途中にサイドフィーダーを設置して添加した。さらに、混練温度290℃、スクリュー回転150rpmの押出条件で溶融混合を行い、ストランド状に吐出し、冷却バスを通し、ストランドカッターによりペレット化した。
得られたペレットを150℃の熱風乾燥機で3時間乾燥した後、前述の各特性評価用試験片を作製し、評価した。表1〜表3にその結果を示した。なお、表中では{成形品表層断面における(B)成分の樹脂相の面積/(A)成分の樹脂相の面積}/{成形品中心層断面における(B)成分の樹脂相の面積/(A)成分の樹脂相の面積}を(表層面積比/中心層面積比)として略記している。
表1の実施例1と表3の比較例1の比較より、(B)空気中において室温から600℃まで昇温速度40℃/分で加熱したときの重量減量が70%以下である樹脂を配合してなる樹脂組成物を用いて得られる成形品は、難燃性がV−0および引張破断伸びが1.1%以上と難燃性と靭性のバランスに優れた。
表1の実施例1〜4と表3の比較例2〜3の比較より、(B)空気中において室温から600℃まで昇温速度40℃/分で加熱したときの重量減量が70%以下である樹脂50〜150重量部の範囲内である樹脂組成物を用いて得られる成形品は、難燃性がV−2以上および引張破断伸びが1.1%以上と難燃性と靭性のバランスに優れた。
表1の実施例5〜8と表3の比較例4〜5の比較より、(C)窒素系難燃剤1〜100重量部の範囲内である樹脂組成物を用いて得られる成形品は、難燃性がV−2以上および引張破断伸びが0.8%以上と難燃性と靭性のバランスに優れた。
表1の実施例2および表2の実施例9〜13と表3の比較例6〜8の比較より、{成形品表層断面における(B)成分の樹脂相の面積/(A)成分の樹脂相の面積}/{成形品中心層断面における(B)成分の樹脂相の面積/(A)成分の樹脂相の面積}が1.2以上である樹脂組成物を用いて得られる成形品は、難燃性がV−2以上および引張破断伸びが1.2%以上と難燃性と靭性のバランスに優れた。
表2の実施例9〜13と表3の比較例6〜8の比較より、(D)エポキシ化合物0.1〜10重量部の範囲内である樹脂組成物を用いて得られる成形品は、{成形品表層断面における(B)成分の樹脂相の面積/(A)成分の樹脂相の面積}/{成形品中心層断面における(B)成分の樹脂相の面積/(A)成分の樹脂相の面積}が増加し、さらに難燃性がV−2以上および引張破断伸びが1.2%以上と難燃性と靭性のバランスに優れた。
表2の実施例14〜15と表1の実施例2の比較より、(E)繊維状強化材5〜200重量部をさらに配合した樹脂組成物を用いて得られる成形品は、強度と靭性および耐熱性が向上し、難燃性がV−1以上および引張破断伸びが1.8%以上と難燃性と靭性のバランスにも優れた。
表2の実施例16と実施例15の比較より、安定剤をさらに配合した樹脂組成物を用いて得られる成形品は、耐熱性がさらに向上し、難燃性がV−1以上および引張破断伸びが1.9%以上と難燃性と靭性のバランスに優れた。
前記より、表1〜2の実施例に記載された難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂成形品は、高度な難燃性(V−2以上)を維持したまま、靭性(引張破断伸び0.8%以上)のバランスに優れており、特に、環境に配慮した機械機構部品、電気電子部品、自動車部品または筐体などの材料に適している難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂成形品が得られた。
1 ポリエチレンテレフタレートの樹脂層
2 ポリフェニレンスルフィドの樹脂層
3 メラミンシアヌレート
4 ポリフェニレンスルフィドの樹脂層
5 ポリエチレンテレフタレートの樹脂層
6 メラミンシアヌレート

Claims (9)

  1. (A)熱可塑性ポリエステル樹脂100重量部に対して、(B)空気中において室温から600℃まで昇温速度40℃/分で加熱したときの重量減量が70%以下である樹脂50〜150重量部および(C)窒素系難燃剤1〜100重量部を配合してなる難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を成形してなる難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂成形品であって、前記(A)成分の樹脂および前記(B)成分の樹脂が相分離構造を形成し、成形品表層断面における(A)成分の樹脂相に対する(B)成分の樹脂相の面積比率と、成形品中心層断面における(A)成分の樹脂相に対する(B)成分の樹脂相の面積比率の比({成形品表層断面における(B)成分の樹脂相の面積/(A)成分の樹脂相の面積}/{成形品中心層断面における(B)成分の樹脂相の面積/(A)成分の樹脂相の面積})が、1.2以上である難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂成形品。
  2. 前記(A)熱可塑性ポリエステル樹脂がポリエチレンテレフタレートを含む請求項1記載の難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂成形品。
  3. 前記(B)空気中において室温から600℃まで昇温速度40℃/分で加熱したときの重量減量が70%以下である樹脂がポリフェニレンスルフィド樹脂を含む請求項1〜2のいずれか記載の難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂成形品。
  4. 前記(C)窒素系難燃剤がトリアジン系化合物とシアヌール酸またはイソシアヌール酸との塩を含む請求項1〜3のいずれか記載の難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂成形品。
  5. 前記難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物が、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂100重量部に対して(D)エポキシ化合物0.1〜10重量部をさらに配合してなる請求項1〜4のいずれか記載の難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂成形品。
  6. 前記(D)エポキシ化合物がノボラック型エポキシ樹脂を含む請求項5記載の難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂成形品。
  7. 前記難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物が、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂100重量部に対して(E)繊維状強化材5〜200重量部をさらに配合してなる請求項1〜6のいずれか記載の難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂成形品。
  8. 前記難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物中のリン含有量が0.05重量%以下である請求項1〜7のいずれか記載の難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂成形品。
  9. (A)熱可塑性ポリエステル樹脂100重量部に対して、(B)空気中において室温から600℃まで昇温速度40℃/分で加熱したときの重量減量が70%以下である樹脂50〜150重量部、(C)窒素系難燃剤1〜100重量部およびノボラックエポキシ樹脂0.1〜10重量部を配合してなる難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物。
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