以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物は、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂25〜90重量%、(B)ホスフィン酸塩、ジホスフィン酸塩およびこれらのポリマーから選ばれる一種以上のリン化合物5〜23重量%、(C)脂肪族アミン化合物、芳香族アミン化合物、含窒素複素環化合物、シアン化合物、脂肪族アミドや芳香族アミド、尿素およびチオ尿素から選ばれる一種以上の窒素化合物3〜19重量%、および、(D)リン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物、およびフォスファフェナントレン化合物から選ばれる一種以上のリン系化合物0.01〜3重量%を含有する。
本発明において、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂とは、(イ)ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールまたはそのエステル形成性誘導体、(ロ)ヒドロキシカルボン酸あるいはそのエステル形成性誘導体、(ハ)ラクトンから選択された一種以上を主構造単位とする重合体または共重合体である。
上記ジカルボン酸あるいはそのエステル形成性誘導体としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−テトラブチルホスホニウムイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、マロン酸、グルタル酸、ダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸およびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
また、上記ジオールあるいはそのエステル形成性誘導体としては、炭素数2〜20の脂肪族グリコールすなわち、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、ダイマージオールなど、あるいは分子量200〜100000の長鎖グリコール、すなわちポリエチレングリコール、ポリ−1,3−プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなど、芳香族ジオキシ化合物すなわち、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールFおよびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールまたはそのエステル形成性誘導体を構造単位とする重合体または共重合体としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリへキシレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリプロピレンイソフタレート、ポリブチレンイソフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンイソフタレート、ポリへキシレンイソフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリプロピレンイソフタレート/テレフタレート、ポリブチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/ナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート/ナフタレート、ポリブチレンテレフタレート/ナフタレート、ポリブチレンテレフタレート/デカンジカルボキシレート、ポリエチレンテレフタレート/シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/5−ナトリウムスルホイソフタレート、ポリプロピレンテレフタレート/5−ナトリウムスルホイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート/5−ナトリウムスルホイソフタレート、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレングリコール、ポリプロピレンテレフタレート/ポリエチレングリコール、ポリブチレンテレフタレート/ポリエチレングリコール、ポリエチレンテレフタレート/ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレンテレフタレート/ポリテトラメチレングリコール、ポリブチレンテレフタレート/ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート/ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレンテレフタレート/イソフタレート/ポリテトラメチレングリコール、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート/ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレンテレフタレート/サクシネート、ポリプロピレンテレフタレート/サクシネート、ポリブチレンテレフタレート/サクシネート、ポリエチレンテレフタレート/アジペート、ポリプロピレンテレフタレート/アジペート、ポリブチレンテレフタレート/アジペート、ポリエチレンテレフタレート/セバケート、ポリプロピレンテレフタレート/セバケート、ポリブチレンテレフタレート/セバケート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート/アジペート、ポリプロピレンテレフタレート/イソフタレート/アジペート、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート/サクシネート、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート/アジペート、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート/セバケートなどの芳香族ポリエステル樹脂、ポリエチレンオキサレート、ポリプロピレンオキサレート、ポリブチレンオキサレート、ポリエチレンサクシネート、ポリプロピレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンアジペート、ポリプロピレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリネオペンチルグリコールアジペート、ポリエチレンセバケート、ポリプロピレンセバケート、ポリブチレンセバケート、ポリエチレンサクシネート/アジペート、ポリプロピレンサクシネート/アジペート、ポリブチレンサクシネート/アジペートなどの脂肪族ポリエステル樹脂が挙げられる。
また、上記ヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸およびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられ、これらを構造単位とする重合体または共重合体としては、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリグリコール酸/乳酸、ポリヒドロキシ酪酸/β−ヒドロキシ酪酸/β−ヒドロキシ吉草酸などの脂肪族ポリエステル樹脂が挙げられる。
また、上記ラクトンとしてはカプロラクトン、バレロラクトン、プロピオラクトン、ウンデカラクトン、1,5−オキセパン−2−オンなどが挙げられ、これらを構造単位とする重合体または共重合体としては、ポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリプロピオラクトン、ポリカプロラクトン/バレロラクトンなどが挙げられる。
これらの中で、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールまたはそのエステル形成性誘導体を主構造単位とする重合体または共重合体が好ましく、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と脂肪族ジオールまたはそのエステル形成性誘導体を主構造単位とする重合体または共重合体がより好ましく、テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体とエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオールから選ばれる脂肪族ジオールまたはそのエステル形成性誘導体を主構造単位とする重合体または共重合体がさらに好ましく、中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリプロピレンイソフタレート/テレフタレート、ポリブチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/ナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート/ナフタレート、ポリブチレンテレフタレート/ナフタレートなどの芳香族ポリエステル樹脂が特に好ましく、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートおよびポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートから選ばれる一種の芳香族ポリエステル樹脂が最も好ましく、二種以上の芳香族ポリエステル樹脂を任意の混合量で用いることもできる。
本発明において、上記ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールまたはそのエステル形成性誘導体を主構造単位とする重合体または共重合体中の全ジカルボン酸に対するテレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体の割合が30モル%以上であることが好ましく、40モル%以上であることがさらに好ましい。
本発明において、熱可塑性ポリエステル樹脂として、溶融時に異方性を形成し得る液晶性ポリエステルを用いても良い。液晶性ポリエステルの構造単位としては、芳香族オキシカルボニル単位、芳香族ジオキシ単位、芳香族および/または脂肪族ジカルボニル単位、アルキレンジオキシ単位、芳香族イミノオキシ単位などが挙げられる。
本発明で用いる(A)熱可塑性ポリエステル樹脂の含有量は、25〜90重量%であり、30〜85重量%が好ましく、35〜80重量%がより好ましい。(A)熱可塑性ポリエステル樹脂の含有量が、25〜90重量%であると、十分な成形性が得られ、良好な引張物性とウェルド物性が得られる。
本発明で用いる(A)熱可塑性ポリエステル樹脂のカルボキシル末端基量は、流動性、耐加水分解性および耐熱性の点で、50eq/t以下であることが好ましく、30eq/t以下であることがより好ましく、20eq/t以下であることがさらに好ましく、10eq/t以下であることが特に好ましい。下限は0eq/tである。
なお、本発明において、(A)熱可塑性樹脂のカルボキシル末端基量は、o−クレゾール/クロロホルム溶媒に溶解させた後、エタノール性水酸化カリウムで滴定し測定した値である。
本発明で用いる(A)熱可塑性ポリエステル樹脂のヒドロキシル末端基量は、成形性および流動性の点で、50eq/t以上であることが好ましく、80eq/t以上であることがより好ましく、100eq/t以上であることがさらに好ましく、120eq/t以上であることが特に好ましい。なお、上限は180eq/tである。
本発明で用いる(A)熱可塑性ポリエステル樹脂の粘度は、成形性の点で、o−クロロフェノール溶液を25℃で測定したときの固有粘度が0.36〜1.60dl/gの範囲であることが好ましく、0.50〜1.50dl/gの範囲であることがより好ましい。
本発明で用いる(A)熱可塑性ポリエステル樹脂の分子量は、耐熱性の点で、重量平均分子量(Mw)8000を超え500000以下の範囲であることが好ましく、8000を超え300000以下の範囲であることがより好ましく、8000を超え250000以下の範囲であることがさらに好ましい。本発明において、ポリエステル樹脂のMwは、溶媒としてヘキサフルオロイソプロパノールを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリメチルメタクリレート(PMMA)換算の値である。
本発明で用いる(A)熱可塑性ポリエステル樹脂の製造方法は、公知の重縮合法や開環重合法などにより製造することができ、バッチ重合および連続重合のいずれでもよく、また、エステル交換反応および直接重合による反応のいずれでも適用することができるが、カルボキシル末端基量を少なくすることができ、かつ、流動性向上効果が大きくなるという点で、連続重合が好ましく、コストの点で、直接重合が好ましい。
本発明で用いる(A)熱可塑性ポリエステル樹脂が、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールまたはそのエステル形成性誘導体とを主成分とする縮合反応により得られる重合体ないしは共重合体である場合には、ジカルボン酸またはそのエステル形成誘導体とジオールまたはそのエステル形成性誘導体とを、エステル化反応またはエステル交換反応し、次いで重縮合反応することにより製造することができる。なお、エステル化反応またはエステル交換反応および重縮合反応を効果的に進めるために、これらの反応時に重合反応触媒を添加することが好ましく、重合反応触媒の具体例としては、チタン酸のメチルエステル、テトラ−n−プロピルエステル、テトラ−n−ブチルエステル、テトライソプロピルエステル、テトライソブチルエステル、テトラ−tert−ブチルエステル、シクロヘキシルエステル、フェニルエステル、ベンジルエステル、トリルエステル、あるいはこれらの混合エステルなどの有機チタン化合物、ジブチルスズオキシド、メチルフェニルスズオキシド、テトラエチルスズ、ヘキサエチルジスズオキシド、シクロヘキサヘキシルジスズオキシド、ジドデシルスズオキシド、トリエチルスズハイドロオキシド、トリフェニルスズハイドロオキシド、トリイソブチルスズアセテート、ジブチルスズジアセテート、ジフェニルスズジラウレート、モノブチルスズトリクロライド、ジブチルスズジクロライド、トリブチルスズクロライド、ジブチルスズサルファイドおよびブチルヒドロキシスズオキシド、メチルスタンノン酸、エチルスタンノン酸、ブチルスタンノン酸などのアルキルスタンノン酸などのスズ化合物、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシドなどのジルコニア化合物、三酸化アンチモン、酢酸アンチモンなどのアンチモン化合物などが挙げられるが、これらの内でも有機チタン化合物およびスズ化合物が好ましく、さらに、チタン酸のテトラ−n−プロピルエステル、テトラ−n−ブチルエステルおよびテトライソプロピルエステルが好ましく、チタン酸のテトラ−n−ブチルエステルが特に好ましい。これらの重合反応触媒は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用することもできる。重合反応触媒の添加量は、機械特性、成形性および色調の点で、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂100重量部に対して、0.005〜0.5重量部の範囲が好ましく、0.01〜0.2重量部の範囲がより好ましい。
本発明の難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物は、(B)ホスフィン酸塩、ジホスフィン酸塩およびこれらのポリマーから選ばれる一種以上のリン化合物を5〜23重量%含有する。
本発明における(B)リン化合物は、好ましくは、下記(1)式のホスフィン酸塩、下記(2)式のジホスフィン酸塩およびこれらのポリマーから選ばれる一種以上のリン化合物である。
(式中のR1とR2は、同じかまたは異なり、C1〜C6のアルキル基もしくはアリール基であり、直鎖であっても分岐であってもよい。また、R3は、直鎖状または枝分かれしたC1〜C10のアルキレン基、もしくは、C6〜C10のアリーレン基、アルキルアリーレン基またはアリールアルキレン基である。また、Mは、カルシウム、アルミニウムまたは亜鉛である。また、mは1〜4、nは1〜4、xは1〜4である。)
(B)リン化合物の市販品としては、クラリアントジャパン社の「Exolit」(登録商標)OP1230やOP1240などが挙げられる。また、同社からは、(B)成分と窒素含有化合物および/またはホウ素含有化合物などを含む混合物も市販されており、市販品の例としてはOP1312が挙げられ、いずれも好ましく用いることができる。
本発明において、(B)ホスフィン酸塩、ジホスフィン酸塩およびこれらのポリマーから選ばれる一種以上のリン化合物の含有量は、5〜23重量%であり、6〜21重量%が好ましく、7〜19重量%がより好ましい。リン化合物の含有量が、5〜23重量%であると、十分な難燃性効果が得られ、良好な引張物性とウェルド物性が得られる。
本発明における(C)脂肪族アミン化合物、芳香族アミン化合物、含窒素複素環化合物、シアン化合物、脂肪族アミドや芳香族アミド、尿素およびチオ尿素から選ばれる一種以上の窒素化合物は、好ましくは、難燃剤であり、含窒素複素環化合物が好ましく用いられる。なお、本発明では、脂肪族アミン化合物、芳香族アミン化合物、含窒素複素環化合物、シアン化合物、脂肪族アミドや芳香族アミド、尿素およびチオ尿素から選ばれる一種以上の窒素化合物には、ポリリン酸アンモニウム、ホスファゼン化合物およびリン酸エステルアミドは含まれない。
前記の脂肪族アミンとしては、エチルアミン、ブチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、ブチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,2−ジアミノシクロオクタンなどを挙げることができる。
前記の芳香族アミンとしては、アニリン、フェニレンジアミンなどを挙げることができる。
前記の含窒素複素環化合物としては、尿酸、アデニン、グアニン、2,6−ジアミノプリン、2,4,6−トリアミノピリジンおよびトリアジン化合物などを挙げることができる。
前記のシアン化合物としては、ジシアンジアミドなどを挙げることができる。
また、前記の脂肪族アミドや芳香族アミドとしては、N,N−ジメチルアセトアミドやN,N−ジフェニルアセトアミドなどを挙げることができる。
前記の含窒素複素環化合物において例示したトリアジン化合物は、トリアジン骨格を有する含窒素複素環化合物であり、トリアジン、メラミン、ベンゾグアナミン、メチルグアナミン、シアヌル酸、メラミンシアヌレート、メラミンイソシアヌレート、トリメチルトリアジン、トリフェニルトリアジン、アメリン、アメリド、チオシアヌル酸、ジアミノメルカプトトリアジン、ジアミノメチルトリアジン、ジアミノフェニルトリアジン、ジアミノイソプロポキシトリアジンおよびポリリン酸メラミンなどを挙げることができ、メラミンシアヌレートとメラミンイソシアヌレート、ポリリン酸メラミンが好ましく用いられる。
前記のメラミンシアヌレートまたはメラミンイソシアヌレートとしては、シアヌール酸またはイソシアヌール酸とトリアジン化合物との付加物が好ましく、通常は1対1(モル比)、場合により1対2(モル比)の組成を有する付加物を挙げることができる。また、公知の方法で製造されるが、例えば、メラミンとシアヌール酸またはイソシアヌール酸の混合物を水スラリーとし、良く混合して両者の塩を微粒子状に形成させた後、このスラリーを濾過、乾燥後に一般には粉末状で得られる。また、上記の塩は完全に純粋である必要は無く、多少未反応のメラミンないしシアヌール酸、イソシアヌール酸が残存していても良い。また、分散性が悪い場合には、トリス(β−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートなどの分散剤やポリビニルアルコールおよびシリカなどの金属酸化物などの公知の表面処理剤などを併用してもよい。また、樹脂に配合される前後の平均粒径は、成形品の難燃性、機械的強度、表面性の点から0.1〜100μmが好ましく、好ましくは0.2〜50μmであり、さらに好ましくは0.3〜10μmであり、平均粒径はレーザーミクロンサイザー法による累積分布50%粒子径で測定される平均粒径であり、市販品としては日産化学(株)製MC−4000やMC−6000などが好ましく用いられる。
前記のポリ燐酸メラミンとしては、リン酸メラミン、ピロリン酸メラミンおよびメラミン、メラム、メレムから構成されるポリ燐酸メラミンなどが挙げられ、1種で用いても2種以上で用いても良く、(株)三和ケミカル製“MPP−A、日産化学(株)製PMP−100やPMP−200などが好ましく用いられる。
本発明において、(C)脂肪族アミン化合物、芳香族アミン化合物、含窒素複素環化合物、シアン化合物、脂肪族アミドや芳香族アミド、尿素およびチオ尿素から選ばれる一種以上の窒素化合物の含有量は、3〜19重量%であり、5〜18重量%が好ましく、5〜16重量%がより好ましい。(C)脂肪族アミン化合物、芳香族アミン化合物、含窒素複素環化合物、シアン化合物、脂肪族アミドや芳香族アミド、尿素およびチオ尿素から選ばれる一種以上の窒素化合物の含有量が、3〜19重量%であると、十分な難燃性効果が得られ、良好な引張物性とウェルド物性が得られる。
本発明の難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物は、(D)リン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物、およびフォスファフェナントレン化合物から選ばれる一種以上のリン系化合物を0.01〜3重量%含有する。
本発明における(D)リン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物、および、フォスファフェナントレン化合物から選ばれる一種以上のリン系化合物は、通常、少量の配合で難燃性を大きく向上させる難燃助剤として用いられる。
前記のリン酸エステル化合物としては、トリフェニルホスフェート、トリス(ジメチルフェニル)ホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジルジキシレニルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、縮合燐酸エステル、酸性リン酸エステルおよびリン酸エステルアミドなどが挙げられる。
前記の縮合燐酸エステルとしては、レゾルシノールジフェニルホスフェート、ハイドロキノンジフェニルホスフェート、ビスフェノールAジフェニルホスフェート、ビフェニルジフェニルホスフェートなどが挙げられ、その市販品としては、大八化学工業(株)社製PX−202、CR−741、PX−200、PX−201、(株)アデカ社製FP−500、FP−600、FP−700およびPFRなどから選ばれる1種または2種以上が使用することができる。
前記の酸性リン酸エステルとしては、モノメチルアシッドホスフェート、モノエチルアシッドホスフェート、モノイソプロピルアシッドホスフェート、モノブチルアシッドホスフェート、モノラウリルアシッドホスフェート、モノステアリルアシッドホスフェート、モノドデシルアシッドホスフェート、モノベヘニルアシッドホスフェート、ジメチルアシッドホスフェート、ジエチルアシッドホスフェート、ジイソプロピルアシッドホスフェート、ジブチルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、ジステアリルアシッドホスフェート、ジドデシルアシッドホスフェート、ジベヘニルアシッドホスフェート、トリメチルアシッドホスフェート、トリエチルアシッドホスフェート、および前記のモノとジの混合物、モノ、ジおよびトリとの混合物や前記化合物の一種以上の混合物であっても良い。好ましく用いられるホスフェート系化合物としては、モノおよびジステアリルアシッドホスフェートの混合物などの長鎖アルキルアシッドホスフェート化合物が挙げられ、その市販品としては、(株)アデカ社製から“アデカスタブ”AX−71などが使用することができる。
前記のリン酸エステルアミドとしては、窒素を含有する芳香族リン酸エステルアミドが用いられ、高い融点を持つ常温で粉末状の物質であり、配合時のハンドリング性に優れ、市販品としては、四国化成(株)社製SP−703などが好ましく用いられる。
前記のホスファゼン化合物としては、ホスホニトリル線状ポリマー及び/または環状ポリマーであり、特に直鎖状のフェノキシホスファゼンを主成分とするものが好ましく用いられ、前記のホスホニトリル線状ポリマー及び/または環状ポリマーは、著者梶原『ホスファゼン化合物の合成と応用』などに記載されている公知の方法で合成することができ、例えば、リン源として五塩化リンあるいは三塩化リン、窒素源として塩化アンモニウムあるいはアンモニアガスを公知の方法で反応させ(環状物を精製してもよい)、得られた物質をアルコール、フェノールおよびアミン類で置換することで合成することができ、(株)伏見製薬所製「ラビトル」(登録商標)FP−110などが好ましく用いられる。
前記のフォスファフェナントレン化合物としては、分子内に少なくとも1個のフォスファフェナントレン骨格を有するリン系難燃剤であり、三光(株)社製HCA、HCA−HQ、BCA、SANKO−220およびM−Esterなどが好ましく用いられる。
(D)リン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物、および、フォスファフェナントレン化合物から選ばれる一種以上のリン系化合物の中では、とくに、トリフェニルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリクレジルホスフェートのリン酸エステル化合物およびモノおよびジステアリルアシッドホスフェートの混合物などの長鎖アルキルアシッドホスフェート化合物の酸性リン酸エステルが、引張物性とウェルド物性に優れ、好ましく用いられる。
本発明において、(D)リン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物、およびフォスファフェナントレン化合物から選ばれる一種以上のリン系化合物の含有量は、0.01〜3重量%であり、0.02〜2.5重量%が好ましく、0.03〜2重量%がより好ましい。(D)リン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物、およびフォスファフェナントレン化合物から選ばれる一種以上のリン系化合物の含有量が、0.01〜3重量%であると、十分な難燃助剤効果が得られ、良好な引張物性とウェルド物性が得られる。
本発明の難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物は、好ましくは、(E)250℃における加熱減量が9%以下であるハイドロタルサイト0.01〜0.5重量%を含有する。
本発明における(E)250℃における加熱減量が9%以下であるハイドロタルサイトとは、好ましくは、合成ハイドロタルサイトである。
合成ハイドロタルサイトは、国際公開番号WO99/05219号公報や国際公開番号WO2006/118325号公報などに記載されている方法で製造される。
ハイドロタルサイトは、250℃における加熱減量が9%以下であることが(A)熱可塑性ポリエステル樹脂の熱分解を防止する観点から好ましい。250℃における加熱減量が9%を超すハイドロタルサイトを用いた場合は、溶融混練時や成形加工時の滞留安定性に劣る場合があり、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂の分子量低下が大きく、良好な引張物性とウェルド物性が得られない場合がある。
また、(E)250℃における加熱減量が9%以下であるハイドロタルサイトは、好ましくは、Mg(マグネシウム)および/またはZn(亜鉛)と、AL(アルミニウム)の化合物であり、より好ましくは、次式の化合物である。
M1−XALX(OH)2An− x/n・mH2O
(式中のMは、Mgおよび/またはZnを示し、ALはアルミニウム、xは0より大きく0.5以下の数字、An−はn価のアニオンであり、具体的にはSO4 2−またはCO3 2−などであり、混合物でも良い。また、mはハイドロタルサイト中の水分子の数であり0〜3である。)
ハイドロタルサイトの250℃における加熱減量の測定方法は、次のとおりである。シャーレに約1gのハイドロタルサイトを精標し、250℃に温調されたタバイ(株)製パーフェクトオーブン・型式HPS−222に1時間投入し、デシケータで冷却後に精標を行い、前記のパーフェクトオーブンに投入前後に精標した重量差から加熱減量を求めた。
(E)250℃における加熱減量が9%以下であるハイドロタルサイトの含有量は、0.01〜0.5重量%が好ましく、0.02〜0.3重量%がより好ましく、0.03〜0.1重量%がさらにより好ましい。(E)250℃における加熱減量が9%以下であるハイドロタルサイトの含有量が、0.01〜0.5重量%であると、十分な滞留安定性の効果が得られ、良好な引張物性とウェルド物性が得られる。
また、(E)250℃における加熱減量が9%以下であるハイドロタルサイトの樹脂組成物に配合される前後の平均粒径は、成形品の滞留安定性、引張強度およびウェルド強度の点から0.01〜50μmが好ましく、より好ましくは0.02〜30μmであり、さらにより好ましくは、0.03〜10μmである。平均粒径は、レーザーミクロンサイザー法による累積分布50%粒子径で測定される平均粒径である。(E)250℃における加熱減量が9%以下であるハイドロタルサイトの市販品としては、協和化学工業(株)社製DHT−4A−2などを使用することができる。
ポリブチレンテレフタレート樹脂などの熱可塑性ポリエステル樹脂は、高い融点を持つ結晶性プラスチックスであるため、加工温度が高く、射出成形時のシリンダー内で滞留している時に粘度低下を招く場合がある。本発明では、好ましくは、(E)250℃における加熱減量が9%以下であるハイドロタルサイトを併用配合することにより、難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の成形加工時の滞留安定性が改善する。
本発明の難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物では、好ましくは、E)250℃における加熱減量が9%以下であるハイドロタルサイトを併用配合することにより、270℃の温度で測定される溶融粘度指数において、滞留5分と滞留30分の測定値が2倍以内の範囲となる。前記の測定値が2倍以内となると、良好な引張物性とウェルド物性を持つ難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物となる。
本発明では、滞留安定性の測定方法は、東洋精機製作所製メルトインデキサーTYPE C−5059D2を用い、270℃の温度で測定される溶融粘度指数(単位は、1分当たりに流動した試料のg数を測定し、10倍にした値であるg/10分を単位とした)の滞留時間の経時変化で判定した。
本発明では、射出成形など成形加工時の流動性を向上させることを目的に、3つ以上の官能基を有するアルキレンオキシド単位を一つ以上含む多価アルコール化合物を配合することができる。前記、3つ以上の官能基を有するアルキレンオキシド単位を一つ以上含む多価アルコール化合物は、低分子化合物であってもよいし、重合体であってもよく、3官能性化合物、4官能性化合物および5官能性化合物などの3つ以上の官能基を有するアルキレンオキシド単位を一つ以上含む多価アルコール化合物であれば、いずれでも好ましく用いられる。また、3つ以上の官能基の官能基とは、水酸基、アルデヒド基、カルボン酸基、スルホ基、アミノ基、グリシジル基、イソシアネート基、カルボジイミド基、オキサゾリン基、オキサジン基、エステル基、アミド基、シラノール基、シリルエーテル基から選択された少なくとも1種類以上であることが好ましく、これらの中から同一あるいは異なる3つ以上の官能基を有していることがより好ましく、とくに流動性、機械物性、耐久性、耐熱性および生産性の点で、同一の官能基であることがさらに好ましい。
また、3つ以上の官能基を有するアルキレンオキシド単位を一つ以上含む多価アルコール化合物のアルキレンオキシド単位の好ましい例として、炭素原子数1〜4である脂肪族アルキレンオキシド単位が有効であり、具体例としてはメチレンオキシド単位、エチレンオキシド単位、トリメチレンオキシド単位、プロピレンオキシド単位、テトラメチレンオキシド単位、1,2−ブチレンオキシド単位、2,3−ブチレンオキシド単位若しくはイソブチレンオキシド単位などを挙げることができ、本発明においては、特に、流動性、リサイクル性、耐久性、耐熱性および機械物性に優れるという点で、アルキレンオキシド単位としてエチレンオキシド単位又はプロピレンオキシド単位が含まれる化合物を使用するのが好ましく、耐加水分解性および靭性(引張破断伸度)に優れるという点で、プロピレンオキシド単位が含まれる化合物を使用することが特に好ましく、アルキレンオキシド単位数については、流動性および機械物性に優れるという点で、1官能基当たりのアルキレンオキシド単位が0.1〜20であることが好ましく、0.5〜10であることがより好ましく、1〜5であることがさらに好ましい。
また、3つ以上の官能基を有するアルキレンオキシド単位を一つ以上含む多価アルコール化合物は、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂と反応し、(A)成分の主鎖および側鎖に導入されていても良く、(A)成分と反応せずに、配合時の構造を保っていても良い。
また、3つ以上の官能基を有するアルキレンオキシド単位を一つ以上含む多価アルコール化合物の粘度は、25℃において15000m・Pa以下であることが好ましく、流動性、機械物性の点から5000m・Pa以下であることがさらに好ましく、2000m・Pa以下であることが特に好ましい。下限は特にないが、成形時のブリード性の点から100m・Pa以上であることが好ましい。
また、3つ以上の官能基を有するアルキレンオキシド単位を一つ以上含む多価アルコール化合物の分子量または重量平均分子量(Mw)は、溶媒としてヘキサフルオロイソプロパノールを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定され、ポリメチルメタクリレート(PMMA)換算値で数値化された値が、流動性の点で、50〜10000の範囲であることが好ましく、150〜8000の範囲であることがより好ましく、200〜6000の範囲であることがさらに好ましい。
また、3つ以上の官能基を有するアルキレンオキシド単位を一つ以上含む多価アルコール化合物の含水分は1%以下であることが好ましい。より好ましくは含水分0.5%以下であり、さらに好ましくは0.1%以下であり、含水分の下限は特にない。
また、3つ以上の官能基を有するアルキレンオキシド単位を一つ以上含む多価アルコール化合物の配合量は、0.01〜2重量%であり、0.05〜1.5重量%が好ましく、0.1〜1重量%がより好ましい。0.01重量%以上で流動性の改善効果が十分得られ、2重量%以下で良好な引張物性とウェルド物性が得られる。
本発明においては、ビニル系樹脂を配合することができる。前記のビニル系樹脂とは、耐トラッキング性、耐アーク性および耐電圧特性などの電気特性の向上や衝撃強度などの靭性を向上させることを目的に配合して用いられる。
本発明におけるビニル系樹脂としては、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、およびマレイミド系単量体からなる群より選択される一種以上の単量体を重合してなる樹脂、あるいは、ポリブタジエン系ゴムなどのゴム系成分にこれら単量体をグラフト重合したもの、あるいは、共重合したものなどが挙げられ、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、およびマレイミド系単量体からなる群より選択される一種以上の単量体成分が50重量%以上含有するグラフト重合したもの、あるいは、共重合したビニル系樹脂である(以下これらを「(共)重合体」と総称することがある)。
上記芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、および、ジビニルベンゼンなどが挙げられ、シアン化ビニル化合物としてはアクリロニトリル、およびメタクリロニトリルなどが挙げられ、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、およびアクリル酸ステアリルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられ、マレイミド系単量体としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、およびその誘導体などのN−置換マレイミドなどが挙げられる。また、上記のビニル系樹脂と共重合が可能な下記の成分とのビニル系樹脂も本発明に用いることができる。かかる共重合が可能な成分の具体例としては、ジエン化合物、マレイン酸ジアルキルエステル、アリルアルキルエーテル、不飽和アミノ化合物、およびビニルアルキルエーテルなどが挙げられる。
(E)ビニル系樹脂の好ましい(共)重合体の例としては、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル/アクリロニトリル、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル/スチレン樹脂(AS樹脂)、スチレン/ブタジエン樹脂、スチレン/N−フェニルマレイミド樹脂、スチレン/アクリロニトリル/N−フェニルマレイミド樹脂などのビニル系(共)重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン樹脂(ABS樹脂)、アクリロニトリル/ブタジエン/メタクリル酸メチル/スチレン樹脂(MABS樹脂)、ハイインパクト−ポリスチレン樹脂等のゴム質重合体で変性されたスチレン系樹脂、およびブロック共重合体としてスチレン/ブタジエン/スチレン樹脂、スチレン/イソプレン/スチレン樹脂、スチレン/エチレン/ブタジエン/スチレン樹脂などが挙げられ、とくに、ポリスチレン樹脂およびアクリロニトリル/スチレン樹脂が好ましく、さらには、アクリロニトリルとスチレンを共重合せしめてなる共重合体であるアクリロニトリル/スチレン共重合体がより好ましい(/は共重合を示す)。
また、アクリロニトリル/スチレン樹脂としては、アクリロニトリルを15重量%以上35重量%未満含有するアクリロニトリル/スチレン樹脂が特に好ましい。
また、ビニル系樹脂に不飽和モノカルボン酸類、不飽和ジカルボン酸類、不飽和酸無水物あるいはエポキシ基含有ビニル系単量体をグラフト重合もしくは共重合されたビニル系樹脂であっても良い。なかでも不飽和酸無水物あるいはエポキシ基含有ビニル系単量体をグラフト重合もしくは共重合されたビニル系樹脂であることが好ましい。
前記の不飽和酸無水物類は、一分子中にラジカル重合可能なビニル基と酸無水物の両者を共有する化合物であり、具体例としては無水マレイン酸等が好ましく挙げられる。
また、エポキシ基含有ビニル系単量体は、一分子中にラジカル重合可能なビニル基とエポキシ基の両者を共有する化合物であり、具体例としてはアクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジルなどの不飽和有機酸のグリシジルエステル類、アリルグリシジルエーテルなどのグリシジルエーテル類および2−メチルグリシジルメタクリレートなどの上記の誘導体類が挙げられ、なかでもアクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルが好ましく使用できる。またこれらは単独ないし2種以上を組み合わせて使用することができる。
不飽和モノカルボン酸類、不飽和ジカルボン酸類、不飽和酸無水物あるいはエポキシ基含有ビニル系単量体をグラフト重合もしくは共重合する際の使用量は、ビニル系樹脂に対して0.05重量%以上であることが好ましい。多量に共重合すると流動性低下やゲル化の傾向があり、好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下である。
また、ビニル系樹脂に過酸化物類、過ギ酸、過酢酸、および過安息香酸などのエポキシ化剤でエポキシ変性したビニル系樹脂であっても良い。この場合、エポキシ変性を有効に行わせるためにビニル系樹脂にはジエン系のモノマーがランダム共重合もしくはブロック共重合されていることが好ましい。ジエン系のモノマーの例としては、ブタジエン、イソプレン等が好ましく用いられる。これらのエポキシ変性ビニル系樹脂の好適な製造法の例は、特開平6−256417、特開平6−220124等に示されている。
また、多層構造体からなるビニル系樹脂も好ましく用いられる。前記の多層構造体は、最内層(コア層)とそれを覆う1種以上の外層(シェル層)から形成され、ビニル系樹脂が外層(シェル層)の1種として構成され、また、隣接し合った層が異種の重合体から構成される、いわゆるコアシェル型と呼ばれる構造を有する重合体であることが好ましい。
多層構造体を構成する層の数は、2層以上であればよい。
また、多層構造体としては、内部に少なくとも1層以上のゴム層を有する多層構造体であることが好ましい。
多層構造体において、ゴム層の種類は、ゴム弾性を有する重合体成分から構成されるものであればよい。例えば、アクリル成分、シリコーン成分、スチレン成分、ニトリル成分、共役ジエン成分、ウレタン成分またはエチレンプロピレン成分などを重合させたものから構成されるゴムが挙げられる。好ましいゴムとしては、例えば、アクリル酸エチル単位やアクリル酸ブチル単位などのアクリル成分、ジメチルシロキサン単位やフェニルメチルシロキサン単位などのシリコーン成分、スチレン単位やα−メチルスチレン単位などのスチレン成分、アクリロニトリル単位やメタクリロニトリル単位などのニトリル成分およびブタンジエン単位やイソプレン単位などの共役ジエン成分を重合させたものから構成されるゴムである。また、これらの成分を2種以上組み合わせて共重合させたものから構成されるゴムも好ましく用いられる。
また、外層(シェル層)に用いられるビニル系樹脂は、不飽和モノカルボン酸類、不飽和ジカルボン酸類、不飽和酸無水物あるいはエポキシ基含有ビニル系単量体をグラフト重合もしくは共重合されたビニル系樹脂、あるいはビニル系樹脂に過酸化物類、過ギ酸、過酢酸、および過安息香酸などのエポキシ化剤でエポキシ変性したビニル系樹脂であっても良い。
また、多層構造体の好ましい例としては、コア層がジメチルシロキサン/アクリル酸ブチル重合体で最外層がメタクリル酸メチル重合体またはアクリロニトリル/スチレン共重合体であるもの、コア層がブタンジエン/スチレン重合体で最外層がメタクリル酸メチル重合体またはアクリロニトリル/スチレン共重合体であるもの、およびコア層がアクリル酸ブチル重合体で最外層がメタクリル酸メチル重合体またはアクリロニトリル/スチレン共重合体であるものなどが挙げられる。さらに、ゴム層または最外層のいずれか一つもしくは両方の層がメタクリル酸グリシジル単位を含有する重合体であることがより好ましい。
また、多層構造体において、コアとシェルの重量比は、多層構造重合体全体に対して、コア層が10重量%以上、90重量%以下であることが好ましく、さらに、30重量%以上、80重量%以下であることがより好ましい。
また、多層構造体としては、前記した条件を満たす市販品を用いてもよく、また公知の方法により作製して用いることもでき、多層構造体の市販品としては、例えば、三菱レイヨン社製”メタブレン”、鐘淵化学工業社製”カネエース”、呉羽化学工業社製”パラロイド”、ロームアンドハース社製”アクリロイド”、武田薬品工業社製”スタフィロイド”およびクラレ社製”パラペットSA”などが挙げられ、これらは、単独ないし2種以上を用いることができる。
また、ビニル系樹脂をグラフト共重合体の分岐鎖として含むビニル系樹脂を用いても良く、主鎖となる樹脂の例としてはポリオレフィン、アクリル系樹脂、およびポリカーボネート樹脂などを挙げることができ、分岐鎖および主鎖のいずれかがメタクリル酸グリシジルや酸無水物などで変性されていても良く、具体例としては、ポリ(エチレン/グリシジルメタクリレート)−g−ポリメタクリル酸メチル(E/GMA−g−PMMA)、ポリ(エチレン/グリシジルメタクリレート)−g−ポリスチレン(E/GMA−g−PS)、ポリ(エチレン/グリシジルメタクリレート)−g−アクリロニトリル/スチレン(E/GMA−g−AS)、ポリ(エチレン−g−アクリロニトリル/スチレン(E−g−AS)、ポリカーボネート−g−アクリロニトリル/スチレン(PC−g−AS)などが挙げられる(“−g−”は、グラフトを表し、“−/−”は共重合を表す。)。
また、前記の市販品としては、例えば、日本油脂社製“モディパー”などが挙げられ、単独ないし、他のビニル系樹脂と混合して用いても良い。
また、ビニル系樹脂の配合量は、0.1〜10重量%が好ましく、0.5〜8重量%がより好ましく、1〜6重量%がとくに好ましい。0.1重量%以上とすることで電気特性や靭性が改善され、10重量%以下で良好な難燃性が得られる。
本発明においては、シリコーン系難燃剤、フェノール樹脂および無機系難燃剤などの公知の難燃剤を本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。
前記のシリコーン系難燃剤としては、シリコーン樹脂、シリコーンオイルを挙げることができる。前記シリコーン樹脂は、SiO2、RSiO3/2、R2SiO、R3SiO1/2の構造単位を組み合わせてできる三次元網状構造を有する樹脂などを挙げることができる。ここで、Rはメチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、または、フェニル基、ベンジル基等の芳香族基、または上記置換基にビニル基を含有した置換基を示す。前記シリコーンオイルは、ポリジメチルシロキサン、およびポリジメチルシロキサンの側鎖あるいは末端の少なくとも1つのメチル基が、水素元素、アルキル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、アミノ基、エポキシ基、ポリエーテル基、カルボキシル基、メルカプト基、クロロアルキル基、アルキル高級アルコールエステル基、アルコール基、アラルキル基、ビニル基、またはトリフロロメチル基の選ばれる少なくとも1つの基により変性された変性ポリシロキサン、またはこれらの混合物を挙げることができる。
前記のフェノール樹脂としては、フェノール性水酸基を複数有する樹脂であり、例えばノボラック型、レゾール型および熱反応型の樹脂、あるいはこれらを変性した樹脂が挙げられる。これらは硬化剤未添加の未硬化樹脂、半硬化樹脂、あるいは硬化樹脂であってもよい。中でも、硬化剤未添加で、非熱反応性であるノボラック型フェノール樹脂またはメラミン変性ノボラック型フェノール樹脂が難燃性と引張強度およびウェルド強度に優れる点で好ましい。
また、フェノール樹脂は、粉砕品、粒状、フレーク状、粉末状、針状、液状などいずれも使用でき、必要に応じ、1種または2種以上使用することができる。また、フェノール系樹脂は特に限定するものではなく市販されているものなどが用いられる。例えば、ノボラック型フェノール樹脂の場合、フェノール類とアルデヒド類のモル比を1:0.7〜1:0.9となるような比率で反応槽に仕込み、更にシュウ酸、塩酸、硫酸、トルエンスルホン酸等の触媒を加えた後、加熱し、所定の時間還流反応を行う。生成した水を除去するため真空脱水あるいは静置脱水し、更に残っている水と未反応のフェノール類を除去する方法により得ることができる。これらの樹脂あるいは複数の原料成分を用いることにより得られる共縮合フェノール樹脂は単独あるいは二種以上用いることができる。
また、レゾール型フェノール樹脂の場合、フェノール類とアルデヒド類のモル比を1:1〜1:2となるような比率で反応槽に仕込み、水酸化ナトリウム、アンモニア水、その他の塩基性物質などの触媒を加えた後、ノボラック型フェノール樹脂と同様の反応および処理をして得ることができる。
ここで、フェノール類としてはフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、チモール、p−tert−ブチルフェノール、tert−ブチルカテコール、カテコール、イソオイゲノール、o−メトキシフェノール、4,4’−ジヒドロキシフェニル−2,2−プロパン、サルチル酸イソアミル、サルチル酸ベンジル、サルチル酸メチル、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール等が挙げられる。これらのフェノール類は一種または二種以上用いることができる。一方、アルデヒド類としてはホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、ポリオキシメチレン、トリオキサン等が挙げられる。これらのアルデヒド類は必要に応じて一種または二種以上用いることができる。
フェノール樹脂の分子量は、好ましくは数平均分子量で200〜2,000であり、特に400〜1,500の範囲のものが機械的物性、流動性、経済性に優れ好ましい。なおフェノール系樹脂の分子量は、テトラヒドラフラン溶液、ポリスチレン標準サンプルを使用することによりゲルパーミエションクロマトグラフィ法で測定できる。
前記のシリコーン系難燃剤とフェノール樹脂は、燃焼熱で成形品表面にシリコーン系難燃剤とフェノール樹脂が移動し、成形品表面から燃焼を防止する効果を有し、その配合量は、0.05〜2重量%、好ましくは0.1〜1.5重量%、より好ましくは0.15〜1重量%であり、0.1重量%以上で良好な難燃性、2重量%以下で良好な引張物性およびウェルド物性が得られる。
前記の無機系難燃剤としては、水酸化マグネシウム水和物、水酸化アルミニウム水和物、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ソーダ、ヒドロキシスズ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、メタスズ酸、酸化スズ、酸化スズ塩、硫酸亜鉛、酸化亜鉛、硼酸カルシウム水和物、硼酸亜鉛、硼酸亜鉛水和物、水酸化亜鉛酸化第一鉄、酸化第二鉄、硫化イオウ、酸化第一錫、酸化第二スズ、ホウ酸アンモニウム、オクタモリブデン酸アンモニウム、タングステン酸の金属塩、タングステンとメタロイドとの複合酸化物酸、スルファミン酸アンモニウム、ジルコニウム系化合物、黒鉛、膨潤性黒鉛などを挙げることができ、脂肪酸やシランカップリング剤などで表面処理されていても良く、前記の中でも、硼酸亜鉛水和物、膨潤性黒鉛が難燃性の点で好ましく、酸化マグネシウムと酸化アルミニウムの混合物、スズ酸亜鉛、メタスズ酸、酸化スズ、硫酸亜鉛、酸化亜鉛、硼酸亜鉛、亜鉛酸化第一鉄、酸化第二鉄および硫化イオウが滞留安定性に優れる無機系難燃剤として好ましく用いられる。
また、本発明においては、燃焼時の難燃性樹脂組成物が溶融落下することを抑制し、さらに難燃性を向上させることを目的にフッ素系樹脂を配合することができる。
前記のフッ素系樹脂とは、物質分子中にフッ素を含有する樹脂であり、具体的には、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、(テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン)共重合体、(テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル)共重合体、(テトラフルオロエチレン/エチレン)共重合体、(ヘキサフルオロプロピレン/プロピレン)共重合体、ポリビニリデンフルオライド、(ビニリデンフルオライド/エチレン)共重合体などが挙げられるが、中でもポリテトラフルオロエチレン、(テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル)共重合体、(テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン)共重合体、(テトラフルオロエチレン/エチレン)共重合体、ポリビニリデンフルオライドが好ましく、特にポリテトラフルオロエチレン、(テトラフルオロエチレン/エチレン)共重合体が好ましい。
また、フッ素系樹脂の配合量は、0.05〜2重量%、好ましくは0.1〜1.5重量%、より好ましくは0.15〜1重量%であり、0.05重量%以上で燃焼時の溶融落下を防止する効果が得られ、2重量%以下で良好な引張物性とウェルド物性が得られる。
本発明においては、必要に応じて、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂以外の樹脂を併用配合することができる。
(A)熱可塑性ポリエステル樹脂以外の樹脂とは、本発明における難燃性、成形加工性、耐熱性、ブリードアウト特性および衝撃強度などのいずれかを改善する樹脂であり、熱可塑性樹脂あるいは熱硬化性樹脂のいずれも用いることができ、低密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂、液晶ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、芳香族および脂肪族ポリケトン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、熱可塑性澱粉樹脂、ポリウレタン樹脂、芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリエーテルイミド樹脂、酢酸セルロース樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂などを挙げることができる。
また、衝撃強度を改善する樹脂としては、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、天然ゴム、チオコールゴム、多硫化ゴム、ポリエーテルゴム、エピクロロヒドリンゴムおよびエチレンに無水マレイン酸などの酸無水物、グリシジルメタクリレートおよびエポキシ化剤でエポキシ変性された変性オレフィン系樹脂なども挙げられ、更に、各種の架橋度を有するものや、各種のミクロ構造、例えばシス構造、トランス構造等を有するものなどが挙げられる。前記のエチレンに無水マレイン酸などの酸無水物、グリシジルメタクリレートおよびエポキシ化剤でエポキシ変性された変性オレフィン系樹脂としては、エチレン/グリシジルメタクリレート、エチレン/ブテン−1/無水マレイン酸、エチレン/プロピレン/無水マレイン酸、エチレン/無水マレイン酸およびエチレンに過酸化物などでエポキシ化させたエポキシ化オレフィン系樹脂などが具体例として挙げられ、市販品の例としては、住友化学(株)製“ボンドファースト”Eなどが挙げられる。
また、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂以外の樹脂の中では、芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、および変性オレフィン系樹脂が難燃性、耐熱性および衝撃強度のいずれかの特性において、改善効果が高く好ましく用いられる。
本発明においては、射出成形時の離型性を改善する目的でステアリン酸カルウシム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛などのアルカリ土類の金属石鹸、脂肪酸エステル、脂肪酸エステルの塩(一部を塩にした物も含む)、エチレンビスステアリルアマイドなどの脂肪酸アミド、エチレンジアミンとステアリン酸およびセバシン酸からなる重縮合物あるいはフェニレンジアミンとステアリン酸およびセバシン酸の重縮合物からなる脂肪酸アミド、ポリアルキレンワックス、酸無水物変性ポリアルキレンワックスおよび上記の滑剤とフッ素系樹脂やフッ素系化合物の混合物などの公知のプラスチックス用離型剤を配合することができ、とくにステアリン酸亜鉛などのアルカリ土類の金属石鹸は、射出成形時の離型性改善効果以外に滞留安定性にも寄与することから好ましく用いられる。
また、離型剤を配合する場合の添加量は、好ましくは、0.01〜2重量%であり、0.02〜1.5重量%がより好ましく、0.03〜1重量%が、さらにより好ましい。0.01重量%以上で十分な離型性効果が得られ、2重量%以下では良好な引張物性とウェルド物性が得られる。
本発明においては、繊維強化材を配合することができ、機械強度と熱変形温度を向上させることを目的に配合する。
前記の繊維強化材の具体例としては、ガラス繊維、アラミド繊維、および炭素繊維などが挙げられる。上記のガラス繊維としては、チョップドストランドタイプやロービングタイプのガラス繊維でありアミノシラン化合物やエポキシシラン化合物などのシランカップリング剤および/またはウレタン、酢酸ビニル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ノボラック系エポキシ化合物などの一種以上のエポキシ化合物などを含有した集束剤で処理されたガラス繊維が好ましく用いられ、シランカップリング剤および/または集束剤はエマルジョン液に混合されて使用されていても良い。また、繊維径は、好ましくは、1〜30μm、より好ましくは、5〜15μmである。また、前記の繊維断面は円形状であるが任意の縦と横比の楕円形ガラス繊維、扁平ガラス繊維およびまゆ型形状ガラス繊維など任意な断面を持つ繊維強化材を用いることもでき、射出成形時の流動性向上と、ソリの少ない成形品が得られる特徴がある。
また、繊維強化材の配合量は、射出成形時の流動性と射出成形機や金型の耐久性の点から、1〜50重量%が好ましく、2〜45重量%がより好ましく、3〜40重量%がとくに好ましい。
また、本発明においては、さらに繊維強化材以外の無機充填材を配合することができ、本発明の成形品の結晶化特性、耐アーク性、異方性、機械強度、難燃性あるいは熱変形温度などの一部を改良するものであり、とくに、異方性に効果があるためソリの少ない成形品が得られる。かかる繊維強化材以外の無機充填材としては、針状、粒状、粉末状および層状の無機充填剤が挙げられ、具体例としては、ガラスビーズ、ミルドファイバー、ガラスフレーク、チタン酸カリウィスカー、硫酸カルシウムウィスカー、ワラステナイト、シリカ、カオリン、タルク、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムと酸化アルミニウムの混合物、微粉ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、酸化ケイ素、スメクタイト系粘土鉱物(モンモリロナイト、ヘクトライト)、バーミキュライト、マイカ、フッ素テニオライト、燐酸ジルコニウム、燐酸チタニウム、およびドロマイトなどが挙げられ、一種以上で用いられる。とくに、ミルドファイバー、ガラスフレーク、カオリン、タルクおよびマイカを用いた場合は、異方性に効果があるためソリの少ない成形品が得られる。また、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムと酸化アルミニウムの混合物、微粉ケイ酸、ケイ酸アルミニウムおよび酸化ケイ素を0.01〜1重量%の範囲で配合した場合は、滞留安定性に効果が得られた。
また、上記の繊維強化材以外の無機充填材には、カップリング剤処理、エポキシ化合物、あるいはイオン化処理などの表面処理が行われていても良い。また、粒状、粉末状および層状の無機充填剤の平均粒径は衝撃強度の点から0.1〜20μmであることが好ましく、特に0.2〜10μmであることが好ましい。また、繊維強化材以外の無機充填材の配合量は、成形時の流動性と成形機や金型の耐久性の点から繊維強化材の配合量と合わせて50重量%を越えない量が成形時の流動性の観点から好ましい。
本発明においては、加水分解性を向上させることを目的に、好ましくは、エポキシ化合物を配合することができ、グリシジルエステル化合物、グリシジルエーテル化合物、およびグリシジルエステルエーテル化合物が挙げられ、これらは一種以上で用いることができる。
また、エポキシ化合物の配合量は加水分解性向上の観点から、0.01〜3重量%が好ましく、0.02〜2重量%がより好ましく、0.03〜1重量%がとくに好ましい。
本発明においては、さらに耐加水分解性改良を目的に、オキサゾリン化合物、カルボジイミド変性イソシアネート化合物およびカルボジイミド化合物などを配合でき、単独で用いても良いが、前記のエポキシ化合物を超えない範囲の配合量で、エポキシ化合物と併用して用いることが好ましい。
本発明においては、さらに本発明の組成物が長期間高温にさらされても極めて良好な耐熱エージング性を与える安定剤としてヒンダードフェノール系酸化防止剤やチオエーテル系酸化防止剤を配合でき、その配合量は、耐熱エージング性向上の観点から、0.01〜2重量%が好ましく、0.02〜1.5重量%がより好ましく、0.03〜1重量%がとくに好ましい。
本発明においては、さらに、カーボンブラック、酸化チタン、および種々の色の顔料や染料を1種以上配合することにより種々の色に樹脂を調色、耐候(光)性、および導電性を改良することも可能であり、顔料や染料の配合量は、0.01〜3重量%が好ましく、0.02〜2重量%がより好ましく、0.03〜1重量%がとくに好ましい。0.01重量得以上で調色、耐候(光)性、および導電性に効果があり、3重量%以下で良好な引張強度とウェルド強度が得られる。
また、前記のカーボンブラックとしては、チャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、アントラセンブラック、油煙、松煙、および、黒鉛などが挙げられ、平均粒径500nm以下、ジブチルフタレート吸油量50〜400cm3/100gのカーボンブラックが好ましく用いられ、処理剤として酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、ポリオール、シランカップリング剤などで処理されていても良い。
また、上記の酸化チタンとしては、ルチル形あるいはアナターゼ形などの結晶形を持ち、平均粒子径5μm以下の酸化チタンが好ましく用いられ、処理剤として酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、ポリオール、シランカップリング剤などで処理されていても良い。また、上記のカーボンブラック、酸化チタン、および種々の色の顔料や染料は、本発明の難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物との分散性向上や製造時のハンドリング性の向上のため、種々の熱可塑性樹脂と溶融ブレンドあるいは単にブレンドした混合材料として用いても良い。とくに、前記の熱可塑性樹脂としては、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂を用いた種々の色の顔料や染料のマスターペレットが好ましく用いられる。
さらに、本発明の難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物および成形品に対して本発明の目的を損なわない範囲で、紫外線吸収剤、銅害防止剤、可塑剤、および帯電防止剤などの公知の添加剤などが1種以上配合された材料も用いることができる。
本発明の難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物からなる成形品は、高度な難燃性、引張物性およびウェルド物性に優れる特徴を活かした機械機構部品、電気電子部品または自動車部品の成形品として用いることができる。
また、機械機構部品、電気・電子部品、自動車部品の具体的な成形品としては、ブレーカー、電磁開閉器、フォーカスケース、フライバックトランス、複写機やプリンターの定着機用成形品、一般家庭電化製品、OA機器などのハウジング、バリコンケース部品、各種端子板、変成器、プリント配線板、ハウジング、端子ブロック、コイルボビン、コネクター、リレー、ディスクドライブシャーシー、トランス、スイッチ部品、コンセント部品、モーター部品、ソケット、プラグ、コンデンサー、各種ケース類、抵抗器、金属端子や導線が組み込まれる電気・電子部品、コンピューター関連部品、音響部品などの音声部品、照明部品、電信・電話機器関連部品、エアコン部品、VTRやテレビなどの家電部品、複写機用部品、ファクシミリ用部品、光学機器用部品、自動車点火装置部品、自動車用コネクター、および各種自動車用電装部品などの成形品が挙げられる。
本発明の難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物は、公知の方法で製造することができる。(A)熱可塑性ポリエステル樹脂25〜90重量%、(B)ホスフィン酸塩、ジホスフィン酸塩およびこれらのポリマーから選ばれる一種以上のリン化合物5〜23重量%、(C)脂肪族アミン化合物、芳香族アミン化合物、含窒素複素環化合物、シアン化合物、脂肪族アミドや芳香族アミド、尿素およびチオ尿素から選ばれる一種以上の窒素化合物3〜19重量%、および、(D)リン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物、およびフォスファフェナントレン化合物から選ばれる一種以上のリン系化合物、必要に応じて(E)250℃における加熱減量が9%以下であるハイドロタルサイト、さらには、必要に応じ、3つ以上の官能基を有するアルキレンオキシド単位を一つ以上含む多価アルコール化合物、ビニル系樹脂、それ以外の樹脂、フッ素系樹脂、繊維強化材、繊維強化材以外の無機充填材、公知のプラスチックス用離型剤、エポキシ化合物、ヒンダードフェノール系酸化防止剤および/またはホスファイト系酸化防止剤、および種々の色の顔料や染料、さらには、その他の必要な帯電防止剤や可塑剤などの公知の添加剤を、例えば、予備混合して押出機などに供給して十分溶融混練する方法、あるいは、重量フィダーなどの定量フィダーを用いて各成分を所定量押出機などに供給して十分溶融混練する方法などにより本発明の難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物が製造される。
上記の予備混合の例として、ドライブレンドするだけでも可能であるが、タンブラー、リボンミキサーおよびヘンシェルミキサー等の機械的な混合装置を用いて混合することが挙げられる。また、繊維強化材や繊維強化材以外の無機充填材は、二軸押出機などの多軸押出機の元込め部とベント部の途中にサイドフィダーを設置して添加する方法であっても良い。また、液体の添加剤の場合は、二軸押出機などの多軸押出機の元込め部とベント部の途中に液添ノズルを設置してプランジャーポンプを用いて添加する方法や元込め部などから定量ポンプで供給する方法などであっても良い。
また、難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を製造するに際し、例えば、“ユニメルト”あるいは“ダルメージ”タイプのスクリューを備えた単軸押出機、二軸押出機、三軸押出機、コニカル押出機およびニーダータイプの混練機などを用いてストランド状に吐出され、ストランドカッターでカッティングされたペレット状の形状で得られる。
かくして得られるペレット状の難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物は、公知の方法で射出成形することによって得られる。前記射出成形方法としては、通常の射出成形方法以外にガスアシスト法、2色成形法、サンドイッチ成形、インモールド成形、インサート成形およびインジェクションプレス成形などが知られているが、いずれの成形方法も適用できる。
以下、実施例により本発明の効果を更に詳細に説明する。ここで%および部とはすべて重量%および重量部をあらわし、下記の参考例の樹脂名中の「/」は、共重合を意味する。また、各特性の測定方法は以下の通りである。
[参考例]
(A)熱可塑性ポリエステル樹脂
<A−1>ポリエチレンテレフタレート樹脂、三井ぺット樹脂(株)社製三井PET“J005”固有粘度が0.63のPETを用いた(以下、PETと略す)。
<A−2>ポリブチレンテレフタレート樹脂、東レ(株)社製“トレコン”1401−X31固有粘度が0.80のPBTを用いた(以下、PBTと略す)。
(B)ホスフィン酸塩、ジホスフィン酸塩およびこれらのポリマーの一種以上からなる難燃剤
<B−1>ホスフィン酸金属塩、クラリアントジャパン製「Exolit」(登録商標)OP1240を用いた(以下、OP−1240と略す)。
(C)窒素化合物系難燃剤
<C−1>含窒素複素環化合物のトリアジン系化合物とシアヌール酸またはイソシアヌール酸との塩、日産化学(株)社製“MC−4000”を用いた(以下、MC塩と略す)。
<C−2>含窒素複素環化合物のポリリン酸メラミン、DSM社製“メルプア”200を用いた(以下、ポリリン酸メラミンと略す)。
(D)リン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物、およびフォスファフェナントレン化合物から選ばれる一種以上のリン系化合物(以下、特定のリン系化合物と略す)
<D−1>リン酸エステル化合物、大八化学工業(株)社製トリフェニルホスフェートを用いた(以下、リン酸エステル化合物、トリフェニルホスフェートと略す)。
<D−2>リン酸エステル化合物、大八化学工業(株)社製縮合リン酸エステル化合物“PX−200”を用いた(以下、リン酸エステル化合物、PX−200と略す)。
<D−3>ホスファゼン化合物、(株)伏見製薬所製「ラビトル」(登録商標)FP−110を用いた(以下、ホスファゼン化合物と略す)。
<D−4>フォスファフェナントレン化合物、三光(株)社製M−Esterを用いた(以下、フォスファフェナントレン化合物と略す)。
<D−5>長鎖アルキルアシッドホスフェート化合物、旭電化(株)社製“アデカスタブ”AX−71を用いた(以下、長鎖アルキルアシッドホスフェート化合物と略す)。
(E)250℃における加熱減量が9%以下であるハイドロタルサイト
<E−1>協和化学工業(株)社製ハイドロタルサイト、DHT−4A−2を用い、250℃における加熱減量は4.8%であった(以下、本発明のハイドロサルサイトと略す)。
(F)
<F−1>3つ以上の官能基を有するアルキレンオキシド単位を一つ以上含む多価アルコール化合物、ポリオキシエチレンペンタエリスリトール、日本乳化剤(株)社製PNT−60U(分子量400、1官能基当たりのアルキレンオキシド(エチレンオキシド)単位数1.5を用いた(以下、多価アルコールと略す)。
<F−2>ビニル系樹脂、スチレン/アクリロニトリル/グリシジルメタクリレート=70/29.5/0.5重量%のエポキシ変性AS樹脂(以下、エポキシ化ASと略す)。
<F−3>(A)熱可塑性ポリエステル樹脂と前記ビニル系樹脂以外の樹脂、芳香族ポリカーボネート樹脂、出光石油化学(株)社製“A−1900”を用いた(以下、PCと略す)。<F−4>(A)熱可塑性ポリエステル樹脂と前記ビニル系樹脂以外の樹脂、グリシジルメタクリレートでエポキシ変性された変性オレフィン系樹脂、エチレン(約88wt%)/グリシジルメタクリレート(約12wt%)共重合体、住友化学(株)社製“BF−E”を用いた(以下、BF−Eと略す)。
<F−5>燃焼時溶融落下(ドリップ)防止剤として作用するフッ素系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、三井・デュポンフロロケミカル(株)社製「テフロン」(登録商標)6−Jを用いた(以下、フッ素系樹脂と略す)。
<F−6>繊維強化材、繊維径約10μmのチョップドストランド状のガラス繊維、日東紡績(株)社製“CS3J948”を用いた(以下、GFと略す)。
<F−7>繊維強化材以外の無機充填剤、炭酸カルシウム、同和カルファイン(株)社製“KSS1000”を用いた(以下、炭酸カルシウムと略す)。
<F−8>公知のプラスチックス用離型剤、アルカリ土類の金属石鹸のステアリン酸亜鉛(試薬)を用いた(以下、ステアリン酸亜鉛と略す)。
<F−9>エポキシ化合物、バーサティク酸グリシジルエステル、ジャパンエポキシレジン社製“カージュラーE10”30重量%とビスフェノールAジグリシジルエーテル、ジャパンエポキシレジン社製“エピコート828”70重量%の混合物(以下、エポキシ化合物と略す)。
<F−10>繊維強化材以外の無機充填剤、酸化マグネと酸化アルミニウムの混合物、協和化学工業(株)社製、KW−2100を用いた(以下、酸化Mgと酸化ALの混合物と略す)。
(G)(B)、(D)以外のリン系化合物
<G−1>ホスファイト系酸化防止剤、(株)ADEKA社製“MARK”TPPのトリフェニルホスファイトを用いた(以下、トリフェニルホスファイトと略す)。
(H)(E)以外のハイドロタルサイト
<H−1>協和化学工業(株)社製ハイドロタルサイト、DHT−4Aを用い、250℃における加熱減量は8.1%であった。
(I)多価アルコール
<I−1>3つ以上の官能基を有するアルキレンオキシド単位を含まない多価アルコール化合物、ペンタエリスリトール(分子量136、1官能基当たりのアルキレンオキシド単位数0、東京化成(株)試薬を用いた(以下、多価アルコールと略す)。
[各特性の測定方法]
本実施例、比較例においては以下に記載する測定方法によって、その特性を評価した。
1.引張物性
東芝機械製IS55EPN射出成形機を用いて、成形温度250℃(PETを含有する組成物は270℃)、金型温度80℃の温度条件、射出時間と保圧時間は合わせて10秒、冷却時間10秒の成形サイクル条件で試験片厚み1/8インチ(約3.2mm)厚みのASTM1号ダンベルの引張物性評価用試験片を得た。前記の機械強度評価用試験片を用い、2008年ASTMD638に従い、引張強度と伸びを測定し、値は3本の測定値の平均値とした。
2.ウェルド物性
東芝機械製IS55EPN射出成形機を用いて、成形温度250℃(PETを含有する組成物は270℃)、金型温度80℃の温度条件、射出時間と保圧時間は合わせて10秒、冷却時間10秒の成形サイクル条件で試験片厚み1/8インチ(約3.2mm)厚みのASTM1号ダンベルの引張物性評価用試験片を得た。前記の機械強度評価用試験片を用い、2008年ASTMD638に従い、引張強度と伸びを測定し、値は3本の測定値の平均値とした。
3.難燃性
東芝機械製IS55EPN射出成形機を用いて、成形温度250℃(PETを含有する組成物は270℃)、金型温度80℃の条件で1/16”(約1.59mm)厚みと1/32インチ(約0.79mm)厚みの燃焼試験片を得た。
前記の燃焼試験片を用い、UL94垂直試験に定められている評価基準に従い、難燃性を評価した。難燃性はV−0>V−1>V−2の順に低下しランク付けされる。また、燃焼性に劣り上記のV−2に達せず、上記の難燃性ランクに該当しなかった材料は規格外とした。
また、燃焼試験時において、第1接炎後と第2接炎後の燃焼試験片が熱で溶融して試験片の一部が落下するか落下しないかを観察し、落下しない材料をノンドリップと評価した。
4.滞留安定性
270℃に温調された東洋精機製作所製メルトインデキサーTYPE C−5059D2を用い、組成物のペレットを測定試料、荷重を2160gとし、滞留時間5分と滞留30分の溶融粘度指数(単位は、1分当たりに流動した試料のg数を測定し、10倍にした値であるg/10分を単位とした)を求めた。滞留5分と滞留30分の測定値が2倍以内の範囲である試料を粘度変化が少ないと判断し、滞留安定性に優れると判定した。
5.衝撃強度
東芝機械製IS55EPN射出成形機を用いて、成形温度250℃(PETを含有する組成物は270℃)、金型温度80℃の条件で1/8インチ(約3.2mm)厚みのアイゾット衝撃試験片の射出成形を行い、2006年ASTMD256に従い、ノッチ無しのアイゾット衝撃強度を測定し、値は7本の測定値の平均値とした。
[実施例7、10〜11]、[参考例1〜6、8〜9、12〜25]、[比較例1〜9]
スクリュ径30mm、L/D35の同方向回転ベント付き2軸押出機(日本製鋼所製、TEX−30α)を用いて、表1〜表3に記載のように、混合し、元込め部から添加した。なお、繊維強化材の<F−6>のガラス繊維は、元込め部とベント部の途中にサイドフィーダーを設置して添加した。
さらに、混練温度270℃、スクリュ回転150rpmの押出条件で溶融混合を行い、ストランド状に吐出し、冷却バスを通し、ストランドカッターによりペレット化した。
得られたペレットを110℃の熱風乾燥機で6時間乾燥後、東芝機械製IS55EPN射出成形機を用い、各種成形品を得た。
さらに、前記の測定方法で種々の値を測定し、同じく表1〜表3にその結果を示した。
表1の参考例1〜6、実施例7と表2の比較例1〜4の比較から、本発明の難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物は、少量の(D)特定のリン系化合物を配合することにより高度な難燃性が発現し、かつ、引張物性とウェルド物性に機械特性に優れる成形品であると言える。
また、表1の参考例8〜9、12〜14、実施例10〜11と表2の比較例8〜9の比較から、(F)必要に応じて配合するフッ素系樹脂とGFを配合した難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物においても前記と同様に、少量の(D)特定のリン系化合物を配合することにより高度な難燃性が発現し、かつ、引張物性とウェルド物性に機械特性に優れる成形品が得られた。
また、表2の比較例5〜7から、(B)ホスフィン酸塩と(C)窒素化合物系難燃剤を特定量併用しない場合は、高度な難燃性が得られなかった。
また、表3の参考例15〜16から、(E)250℃における加熱減量が9%以下であるハイドロタルサイトあるいは酸化Mgと酸化ALの混合物を配合した組成物は、優れた引張物性とウェルド物性を維持しながら、滞留安定性に優れると言える。
また、表3の参考例21〜22の炭酸カルシウムとステアリン酸亜鉛を配合した組成物についても優れた引張物性とウェルド物性を維持しながら、滞留安定性に優れることが判る。
なお、本発明の(A)成分、(B)成分、(C)成分、および(D)成分に(E)250℃における加熱減量が9%以下であるハイドロタルサイト、酸化Mgと酸化ALの混合物、炭酸カルシウムおよびステアリン酸亜鉛を配合した組成物は、270℃の温度で測定される溶融粘度指数において、滞留5分と滞留30分の測定値が2倍以内の範囲であり、優れた引張物性とウェルド物性を示した。
また、表3の参考例17の多価アルコールを配合した組成物は、優れた引張物性とウェルド物性を維持しながら、滞留安定性(滞留時間5分)の値が大きいことから、樹脂が流れ易い、つまり流動性に優れると言える。
また、表3の参考例18〜19のエポキシ化AS、PCおよびBF−Eを配合した組成物は、優れた引張物性とウェルド物性を維持しながら、衝撃強度に優れると言える。
また、表3の参考例23のエポキシ化合物を配合した組成物は、引張物性とウェルド物性がやや向上する傾向にあると言える。
また、表3の参考例24の本発明外のハイドロタルサイトを配合した組成物は、引張物性とウェルド物性、難燃性および滞留安定性の性能がいずれも低下した。
また、表3の参考例25の本発明外の多価アルコールを配合した組成物は、引張物性とウェルド物性、難燃性および滞留安定性の性能がいずれも低下した。