以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る通電加熱装置の概略平面図である。また、図2は、図1におけるY2A方向、Y2B方向及びY2C方向から見た前記通電加熱装置の側面図であり、図2(a)、図2(b)及び図2(c)はそれぞれ、Y2A方向、Y2B方向及びY2C方向から見た図である。なお、図2(b)及び図2(c)では、後述する位置決め部材の一部を二点鎖線で示し、これを透過状態で示している。
通電加熱装置1は、平板状に形成された板状ワーク(ブランク)に互いに離間する電極を取り付けて通電することにより板状ワークに生じるジュール熱によって板状ワークを加熱するものであり、本実施形態では、同一形状に形成された2つの板状ワークの一方を他方に対して反転すると共に所定量オフセットさせて重ね合わせた2つの板状ワークを加熱するものである。
図1及び図2に示すように、通電加熱装置1は、所定の電気抵抗率及び所定の厚さを有する導電性の2つの板状ワークW1,W2を電気的に加熱するための通電手段10を備えている。通電手段10は、互いに離間して平行に配置される一対の電極11と、電極11に直流又は交流の電力を供給する電源12と、電源12と電極11とを接続するケーブル13とを備え、重ね合わせられた2つの板状ワークW1,W2に一対の電極11を接触させて通電することにより2つの板状ワークW1,W2を加熱するように構成されている。
一対の電極11は、例えば銅などの材料を用いて略直方体状に形成されたバー電極であり、重ね合わせられた2つの板状ワークW1,W2の通電方向に略直交する方向に延びている。一方の電極11aが正電極として使用され、他方の電極11bが負電極として使用される。
図2(c)に示すように、電極11bは、電極11aと同様に略直方体状に形成された本体部11cと、該本体部11cから突出する突出部11dとを備え、本体部11cと突出部11dが一体的に形成されている。電極11bは、電極11aと同様に、重ね合わせられた2つの板状ワークW1,W2の通電方向に直交する方向全体に接触するように形成されている。なお、電極11bは、電極11aと同様に、本体部11cのみによって形成することも可能である。
通電加熱装置1は、図2に示すように、一対の電極11の上方にそれぞれ配置されるクランプ部材15を備えている。クランプ部材15は、電極11の延びる方向に略平行に延びる略直方体状のクランプ基部16と、板状ワークW1、W2に接触する先端部を備えたピン部17と、クランプ基部16とピン部17とに結合されるスプリング18とを備え、クランプ基部16が、図示しないクランプ基部移動手段に連結されて矢印Z1に示すように上下方向に移動可能に構成されている。
クランプ部材15は、板状ワークW1,W2を挟んで電極11の反対側に配置され、前記クランプ基部移動手段によってクランプ基部16が下方へ移動されることにより下方へ移動される。板状ワークW1,W2に電極11を取り付ける際には、クランプ部材15が下方へ移動され、電極11とクランプ部材15とによって板状ワークW1,W2を挟持して取り付けることができる。これにより、比較的簡便な方法によって板状ワークW1,W2に電極11を確実に取り付けることができる。
通電加熱装置1は、板状ワークW1,W2を所定位置に保持するための位置決め部材21,22,23を備えている。位置決め部材21,22は、略直方体状に形成されており、一対の電極11の外側に配置され、図2(a)に示すように、電極11よりも上方へ延びるように設けられている。
位置決め部材21は、板状ワークW1の周縁部の一部、具体的には板状ワークW1の平行な対辺W1aの一方と係合し、電極11の延びる方向と略直交する方向において板状ワークW1を所定位置に保持できるようになっている。位置決め部材22は、板状ワークW2の周縁部の一部、具体的には板状ワークW2の平行な対辺W2aの一方と係合し、電極11の延びる方向と略直交する方向において板状ワークW2を所定位置に保持できるようになっている。位置決め部材21,22はそれぞれ、板状ワークW1,W2の位置に応じて所定位置に配置されている。
一方、位置決め部材23は、略直方体状に形成され、一対の電極11の内側に配置されている。位置決め部材23は、図1に示すように、一対の電極11の対向する端部の間において電極11の延びる方向と略直交する方向に延び、図2(a)において破線で示すように、電極11よりも上方へ延びている。
位置決め部材23は、板状ワークW1,W2の周縁部の一部、具体的には板状ワークW1,W2の平行な対辺W1a,W2aと略直角する方向に延びる部分を有する辺W1b,W2bと係合し、電極11の延びる方向において板状ワークW1,W2を所定位置に保持できるようになっている。
通電加熱装置1にさらに、図1に示すように、板状ワークW1,W2の長手方向中央部近傍に、例えば板状ワークW1の辺W1bと板状ワークW2の辺W2bが交わる部分近傍に、略円柱状に形成されたピン形状の位置決め部材24を配置するようにしてもよい。かかる場合には、板状ワークW1,W2をさらに精度良く所定位置に保持することができる。
通電加熱装置1には、該通電加熱装置1に関連する構成を総合的に制御する制御ユニット(不図示)が備えられ、該制御ユニットは、通電手段10及び前記クランプ基部移動手段等の作動を制御できるようになっている。なお、前記制御ユニットは、好ましくは、マイクロコンピュータを主要部として構成されている。
このようにして構成された通電加熱装置1では、クランプ部材15がそれぞれ上方へ移動された状態で、所定形状に形成された2つの板状ワークW1,W2を用意し、位置決め部材21、22、23によって所定位置に位置決めされた状態で電極11上に2つの板状ワークW1,W2を重ね合わせ、重ね合わせられた2つの板状ワークW1,W2に対してクランプ部材15を下方へ移動させることにより電極11とクランプ部材15とによって板状ワークW1,W2を密着させた状態で挟持して板状ワークW1,W2に一対の電極11を取り付け、その後に、両電極11間を通電して2つの板状ワークW1,W2を加熱することが行われる。
ここで、本実施形態に係る通電加熱装置1において加熱される板状ワークW1,W2について説明する。
通電加熱装置1では、高張力鋼板などの所定の電気抵抗率及び所定の厚さを有する導電性の板状ワークW1,W2が通電加熱によって加熱されるが、加熱される2つの板状ワークW1,W2は、同一形状に形成されたものが用いられる。2つの板状ワークW1,W2は、板状ワークの一方を板状ワークの他方に対して反転すると共に所定量オフセットして重ね合わせられる。本実施形態では、第1の板状ワークW1を第2の板状ワークW2に対して反転すると共に所定量オフセットして重ね合わせられる。
図1及び図2に示す板状ワークW1,W2は、車体構成部材であるピラーを成形するためのものであり、平行な対辺W1a,W2aに平行な反転軸に対して板状ワークW1を反転すると共に前記反転軸に直交する方向である通電方向に所定量オフセットさせて重ね合わせられる。
前述した前記制御ユニットにはまた、2つの板状ワークW1,W2の形状データを記憶する記憶部(不図示)と、2つの板状ワークW1,W2について板状ワークの一方W1を板状ワークの他方W2に対して反転すると共に所定量オフセットさせて重ね合わせた場合について2つの板状ワークW1,W2の断面積の総和を算出する演算部(不図示)とが備えられている。
図3は、オフセット量が0mmである2つの板状ワークの断面積の総和を説明するための説明図であり、図3(a)は、2つの板状ワークの一方を他方に対して反転すると共にオフセット量が0mmであるように重ね合わせられた2つの板状ワークの平面図を示し、図3(b)は、2つの板状ワークの断面積の総和を示すグラフである。
図3(b)では、図3(a)の位置P0を基準としたXYZ直交座標系を用い、単位厚さ(1mm)を有する2つの板状ワークW1,W2の通電方向に直交する断面の断面積の総和を実線L1で示すと共に、板状ワークW1の通電方向に延びる辺W1b、W1cの位置を破線LW1b、LW1cで示し、板状ワークW2の通電方向に延びる辺W2b、W2cの位置を一点鎖線LW2b、LW2cで示している。
図3(a)に示すように、板状ワークW1を板状ワークW2に対して反転すると共に2つの板状ワークW1,W2の通電方向におけるオフセット量が0mmである場合、図3(b)に示すように、板状ワークW1の辺W1b、W1cの位置は破線LW1b、LW1cで示され、板状ワークW1の通電方向に直交する断面の断面積は(LW1b−LW1c)・1で表される。一方、板状ワークW2の辺W2b、W2cの位置は一点鎖線LW2b、LW2cで示され、板状ワークW2の通電方向に直交する断面の断面積は(LW2b−LW2c)・1で表される。
従って、2つの板状ワークW1,W2の通電方向に直交する断面の断面積の総和は(LW1b−LW1c)・1と(LW2b−LW2c)・1の和で表される。図3(b)の実線L1で示すように、2つの板状ワークW1,W2の通電方向に直交する断面の断面積の総和は通電方向(X方向)に対称であり、2つの板状ワークW1,W2の通電方向に直交する方向の中央部に断面積の総和が略一定となる断面積一定範囲S1が形成される。図3に示す断面積一定範囲S1は、通電方向における長さが約77mmであった。
図4は、オフセット量が20mmである2つの板状ワークの断面積の総和を説明するための説明図であり、図4(a)は、2つの板状ワークの一方を他方に対して反転すると共にオフセット量が20mmであるように重ね合わせられた2つの板状ワークの平面図を示し、図4(b)は、2つの板状ワークの断面積の総和を示すグラフである。図4は、オフセット量が20mmであること以外は図3と同様である。
図4(b)の実線L1で示すように、2つの板状ワークW1,W2のオフセット量が20mmである場合においても、2つの板状ワークW1,W2の通電方向に直交する断面の断面積の総和は通電方向(X方向)に対称であり、2つの板状ワークW1,W2の通電方向に直交する方向の中央部に断面積の総和が略一定となる断面積一定範囲S1が形成される。図4に示す断面積一定範囲S1は、通電方向における長さが約130mmであった。
図5は、オフセット量が60mmである2つの板状ワークの断面積の総和を説明するための説明図である。図5(a)は、2つの板状ワークの一方を他方に対して反転すると共にオフセット量が60mmであるように重ね合わせられた2つの板状ワークの平面図を示し、図5(b)は、2つの板状ワークの断面積の総和を示すグラフである。図5は、オフセット量が60mmであること以外は図3と同様である。
図5(b)の実線L1で示すように、2つの板状ワークW1,W2のオフセット量が60mmである場合においても、2つの板状ワークW1,W2の通電方向に直交する断面の断面積の総和は通電方向(X方向)に対称であり、2つの板状ワークW1,W2の通電方向に直交する方向の中央部に断面積の総和が略一定となる断面積一定範囲S1が形成される。図5に示す断面積一定範囲S1は、通電方向における長さが約107mmであった。
前記制御ユニットでは、図3〜図5に示すように、前記記憶部に記憶された板状ワークの形状データから、前記演算部において、図3(b),図4(b),図5(b)に示すように、2つの板状ワークW1,W2について一方W1を他方W2に対して反転すると共に所定量オフセットさせて重ね合わせた場合について2つの板状ワークW1,W2の通電方向に直交する断面の断面積の総和を算出できるようになっている。
前記制御ユニットはまた、前記演算部において、算出された2つの板状ワークW1,W2の通電方向に直交する断面の断面積の総和から、2つの板状ワークW1,W2の通電方向に直交する方向の中央部に形成された断面積の総和が略一定となる断面積一定範囲S1の通電方向における長さを算出できるようになっている。
図6は、2つの板状ワークのオフセット量と2つの板状ワークの断面積の総和が略一定となる範囲の長さとの関係を示すグラフである。図3〜図5では、オフセット量が0mm、20mm、60mmである場合について示しているが、本実施形態では、オフセット量が5mm、10mm、22mm、25mm、28mm、30mm、40mmについても同様にして、図6に示すように、2つの板状ワークW1,W2の通電方向に直交する方向の中央部に形成された断面積の総和L1が略一定となる断面積一定範囲S1の通電方向における長さが算出された。
本実施形態に係る通電加熱装置1では、このようにして算出された2つの板状ワークW1,W2のオフセット量と断面積一定範囲S1の長さとの関係が、ディスプレイなどの表示装置(不図示)に表示され、操作者によってオフセット量を設定することができ、オフセット量に応じて位置決め部材21の位置が決定されるようになっている。
2つの板状ワークW1,W2のオフセット量は、板状ワークの所定範囲において、2つの板状ワークの通電方向に直交する断面における断面積の総和が通電方向において略一定となるように設定されるが、2つの板状ワークW1,W2の通電方向に直交する断面における断面積の総和が通電方向において略一定となる2つの板状ワークW1,W2の所定範囲が最大範囲となるようにすることが好ましい。また、2つの板状ワークW1,W2のオフセット量は、板状ワークの所定部位が、2つの板状ワークの通電方向に直交する断面における断面積の総和が通電方向において略一定となる2つの板状ワークの所定範囲に含まれるようにすることも可能である。かかる場合には、板状ワークの所定部位が、2つの板状ワークの通電方向に直交する断面における断面積の総和が通電方向において略一定となる2つの板状ワークの所定範囲に含まれる2つの板状ワークのオフセット量のうち、好ましくは最も小さいオフセット量が設定される。
このように、本実施形態では、板状ワークW1,W2に互いに離間する一対の電極11を取り付けて通電することにより板状ワークW1,W2を加熱する通電加熱において、同一形状に形成された2つの板状ワークW1,W2を用意し、板状ワークW2に対して板状ワークW1を反転して重ね合わせ、一対の電極11を取り付けて、両電極11間を通電する。
その場合、2つの板状ワークW1,W2は、板状ワークW2に対して板状ワークW1を所定量オフセットさせて、2つの板状ワークW1,W2の所定範囲において、2つの板状ワークW1,W2の通電方向に直交する断面における断面積の総和が通電方向において略一定となるように用意され重ね合わせられる。
これにより、通電方向において重ね合わせられた2つの板状ワークW1,W2の所定範囲において2つの板状ワークW1,W2の抵抗値を略一定にして2つの板状ワークW1,W2から発生するジュール熱を通電方向において略等しくすることができるので、非矩形状に形成された複雑な形状を有する板状ワークW1,W2を通電加熱によって加熱する場合においても、比較的簡単に板状ワークW1,W2の所定範囲の加熱温度のバラツキを抑制することができる。
本実施形態ではまた、板状ワークW1を板状ワークW2に対して反転すると共に所定量オフセットして重ね合わせた2つの板状ワークW1,W2に電極11を取り付けて通電することにより加熱し、板状ワークW1の加熱温度を実際に測定した。具体的には、2つの板状ワークW1,W2のオフセット量が0mm、20mm、60mmの場合について加熱温度を測定した。
図7は、実施例1として用いた板状ワークの温度測定条件を説明するための説明図である。実施例1として、オフセット量が0mmである2つの板状ワークW1,W2の加熱温度を測定した。図7では、実施例1として用いた2つの板状ワークと電極のみを示し、図7(a)は、前記板状ワークと電極の配置を示す平面図、図7(b)は、前記板状ワークと電極の側面図を示している。
2つの板状ワークW1,W2として、同一の電気抵抗率を有すると共に同一の厚さ1.6mmを有する冷間圧延高張力鋼板SPFC440を用い、図7(a)に示すように、長さが274.3mmである同一形状に形成されたものを用いた。2つの板状ワークW1,W2は、一方の辺W1a,W2aから他方の辺W1a,W2aに向かうにつれて細くなるように形成されたものを用いた。
2つの板状ワークW1、W2は、通電加熱装置1において、図7(a)に示すように、
板状ワークW1を板状ワークW2に対して反転すると共に、平行な対辺W1a、W2aに直交する方向に2つの板状ワークW1,W2のオフセット量が0mmとなるようにオフセットして重ね合わせた。
2つの板状ワークW1,W2を重ね合わせた後に、電極11とクランプ部材15とによって2つの板状ワークW1,W2を挟持して2つの板状ワークW1,W2に電極11を取り付けて両電極11間を通電し、2つの板状ワークW1,W2を通電加熱によって加熱した。通電は、直流電源を用い、電流値を5.8Aに設定して10秒間行った。
そして、通電加熱によって2つの板状ワークW1,W2を10秒間加熱した直後に、熱電対を用いて板状ワークW1の各測定位置において温度測定を行った。具体的には、図7(a)及び図7(b)に示すように、板状ワークW1の上面においてP1〜P6で示す各位置で測定した。P1〜P6はそれぞれ、板状ワークW1の通電方向に直交する方向の中央に設定した。
実施例1において加熱された板状ワークW1の温度測定結果を以下の表1に示す。なお、表1では、板状ワークW1の各測定位置における測定温度と、2つの板状ワークW1,W2の断面積の総和が略一定となる断面積一定範囲内に設定された板状ワークW1の中央部の測定位置P4における測定温度と各測定温度における温度差とを示している。
表1に示すように、実施例1では、測定位置P2〜P6では、板状ワークW1の温度差が100℃以内であり、2つの板状ワークW1,W2の所定範囲において、板状ワークW1,W2の加熱温度のバラツキを抑制することができることが分かる。なお、板状ワークW2については、板状ワークW1と板状ワークW2とが反転して重ね合わせられたものであるので、板状ワークW1と同様に加熱されるものと考えられる。
図8は、実施例2として用いた板状ワークの温度測定条件を説明するための説明図である。実施例2として、オフセット量が20mmである2つの板状ワークW1,W2の加熱温度を測定した。図8では、実施例2として用いた2つの板状ワークと電極のみを示し、図8(a)は、前記板状ワークと電極の配置を示す平面図、図8(b)は、前記板状ワークと電極の側面図を示している。
実施例2において加熱された板状ワークW1の温度測定結果を以下の表2に示す。なお、表2では、板状ワークW1の各測定位置における測定温度と、2つの板状ワークW1,W2の断面積の総和が略一定となる断面積一定範囲内に設定された板状ワークW1の中央部の測定位置P4における測定温度と各測定温度における温度差とを示している。
表2に示すように、実施例2では、測定位置P1〜P5では、板状ワークW1の温度差が100℃以内であり、2つの板状ワークW1,W2の所定範囲において、板状ワークW1,W2の加熱温度のバラツキを抑制することができることが分かる。
図9は、実施例3として用いた板状ワークの温度測定条件を説明するための説明図である。実施例3として、オフセット量が60mmである2つの板状ワークW1,W2の加熱温度を測定した。図9では、実施例3として用いた2つの板状ワークと電極のみを示し、図9(a)は、前記板状ワークと電極の配置を示す平面図、図9(b)は、前記板状ワークと電極の側面図を示している。図9(a)及び図9(b)に示すように、実施例3では、電極11間に板状ワークW1,W2を支持する支持部材7を配設し、板状ワークW1を下方から支持するようにして行った。
実施例3において加熱された板状ワークW1の温度測定結果を以下の表3に示す。なお、表3では、板状ワークW1の各測定位置における測定温度と、2つの板状ワークW1,W2の断面積の総和が略一定となる断面積一定範囲内に設定された板状ワークW1の中央部の測定位置P4における測定温度と各測定温度における温度差とを示している。
表3に示すように、実施例3では、測定位置P1〜P4では、板状ワークW1の温度差が100℃以内であり、2つの板状ワークW1,W2の所定範囲において、板状ワークW1,W2の加熱温度のバラツキを抑制することができることが分かる。
なお、実施例3では、測定位置P5,P6の測定温度が非常に高くなっているが、これは、測定位置P5,P6近傍において2つの板状ワークに隙間が生じたことによるものと考えられることから、測定位置P5,P6近傍において、2つの板状ワークW1,W2をクランプ手段によってクランプすることで、測定位置P5,P6の温度を低減することが可能であると考えられる。
このように、同一形状に形成された2つの板状ワークW1,W2は、板状ワークの一方W2に対して板状ワークの他方W1を反転すると共に所定量(オフセット量ゼロを含む)オフセットさせて、2つの板状ワークW1,W2の所定範囲において、2つの板状ワークW1,W2の通電方向に直交する断面における断面積の総和が通電方向において略一定となるように用意され重ね合わせられることにより、非矩形状に形成された複雑な形状を有する板状ワークW1,W2を通電加熱によって加熱する場合においても、比較的簡単に板状ワークW1,W2の所定範囲の加熱温度のバラツキを抑制することができる。
本実施形態ではまた、比較例1として、通電加熱装置1において、電極11上に1つの板状ワークW1のみを配置して通電することにより板状ワークW1を加熱し、板状ワークW1の加熱温度を実際に測定した。板状ワークW2に重ね合わせていないことを除き、実施例1と同様にして通電加熱を行った。
図10は、比較例1として用いた板状ワークの温度測定条件を説明するための説明図である。図10では、比較例1として用いた板状ワークと電極のみを示し、図10(a)は、前記板状ワークと電極の配置を示す平面図、図10(b)は、前記板状ワークと電極の側面図を示している。
比較例1として用いた板状ワークW1は、実施例1に用いた板状ワークW1と同様のものを用い、電極11上に実施例1と同じ位置に配置した。比較例1についても、電極11とクランプ部材15とによって板状ワークW1を挟持して板状ワークW1に電極11を取り付けて両電極11間を通電し、板状ワークW1を通電加熱によって加熱した。比較例1では、板状ワークW1への投入エネルギーが実施例1と等しくなるように通電加熱し、板状ワークW1の加熱温度を測定した。
比較例1において加熱された板状ワークの温度測定結果を以下の表4に示す。なお、表4では、板状ワークW1の各測定位置における測定温度と、板状ワークW1の中央部の測定位置P4における測定温度と各測定温度における温度差とを示している。
表1から表4の結果から、板状ワークW1のみを加熱する場合に比して、同一形状を有する2つの板状ワークW1,W2を、板状ワークの一方W1を板状ワークの他方W2に対して反転すると共に所定量オフセットさせて、2つの板状ワークW1,W2の所定範囲において、2つの板状ワークW1,W2の通電方向に直交する断面における断面積の総和が通電方向において略一定となるように用意して重ね合わせることで、通電加熱によって加熱される板状ワークW1,W2の加熱温度のバラツキを抑制することができることが分かる。
図11は、板状ワークに設定された均一温度要求部位を示す図である。図11(a)は、板状ワークW1を示し、図11(b)は、板状ワークW2を示し、図11(c)は、2つの板状ワークW1,W2を所定量オフセットさせて重ね合わせた状態を示している。図11(c)では、2つの板状ワークW1,W2の通電方向に直交する断面積の総和が略一定となる範囲を断面積一定範囲として二点鎖線で示している。
図11(a)及び図11(b)に示すように、本実施形態に係る板状ワークW1,W2は、通電加熱によって均一温度に加熱することが要求される(斜線ハッチングが施された)均一温度要求部位M1,M2を有するように形成されている。通電加熱装置1において、2つの板状ワークW1,W2は、図11(c)に示すように、板状ワークW2に対して板状ワークW1を所定量オフセットして、2つの板状ワークW1,W2の均一温度要求部位M1,M2が共に、2つの板状ワークW1,W2の通電方向に直交する断面における断面積の総和が通電方向において略一定となる断面積一定範囲に含まれるように用意され重ね合わせられる。
このように、2つの板状ワークW1,W2は、板状ワークの一方W2に対して板状ワークの他方W2を所定量オフセットさせて、板状ワークW1,W2の所定部位M1,M2が、2つの板状ワークW1,W2の通電方向に直交する断面における断面積の総和が通電方向において略一定となる2つの板状ワークW1,W2の所定範囲に含まれるように用意され重ね合わせられることにより、板状ワークW1,W2の所定部位M1,M2について、板状ワークW1,W2の加熱温度のバラツキを抑制することができ、板状ワークW1,W2の材料特性にバラツキが生じることを抑制することができる。
このようにして、通電加熱装置1を用いて板状ワークW1,W2を加熱した後には、加熱された板状ワークW1,W2を、搬送ロボットや搬送ベルトなどの搬送手段を用いて成形型を備えたプレス成形装置に搬送してプレス成形することで、板状ワークW1,W2を熱間プレス成形することができるが、通電加熱装置1をプレス成形装置に組み込んで、通電加熱によって加熱された板状ワークをプレス成形するようにしてもよい。
図12は、前記通電加熱装置を備えたプレス成形装置の一例を示す概略図である。図12に示す通電加熱装置1を備えたプレス成形装置31は、下方側へ突出する突出部41を備えたパンチ40と、突出部41に対応して凹状に形成された凹部51を備えたダイ50と有する成形型30を備え、突出部41と凹部51とを組み合わせることで板状ワークW2を所定形状に形成することができるように構成されている。
パンチ40は、スプリング42及びスプリングガイド43を介してパンチプレート44に取り付けられ、該パンチプレート44がパンチホルダー45に取り付けられている。パンチホルダー45は、図示しないパンチ移動機構に連結されており、前記パンチ移動機構によってパンチホルダー45が上下方向に移動されることにより、パンチ40が上下方向に移動可能に構成されている。一方、ダイ50は、ダイホルダー52に取り付けられて固定されている。
プレス成形装置31にはまた、前述した通電手段10を有する通電加熱装置1が備えられ、ダイ50には、ダイ50の凹部51を挟んで凹部51の両側に一対の電極11が取り付けられている。一対の電極11は、ダイ50の上面よりも突出するように設けられ、ケーブル13によって電源12に接続されている。また、一対の電極11の上方にはそれぞれクランプ部材15が取り付けられている。
プレス成形装置31では、パンチ40が上方へ移動された状態で、 同一形状に形成された2つの板状ワークの一方W2に対して板状ワークの他方W1を反転すると共に所定量オフセットさせて、2つの板状ワークW1,W2の所定範囲において、2つの板状ワークW1,W2の通電方向に直交する断面における断面積の総和が通電方向において略一定となるように重ね合わせられた2つの板状ワークW1,W2を電極11とクランプ部材15とによって挟持して2つの板状ワークW1,W2に一対の電極11を取り付けた後に、両電極11間を通電して板状ワークW1、W2を加熱することが行われる。
そして、板状ワークW1,W2が加熱された後には、クランプ部材15が上方へ移動され、図示しない搬送手段を用いて板状ワークW1がプレス成形装置31から取り除かれ、次いで、パンチ40が下方へ移動され、加熱された板状ワークW2が成形型30を用いてプレス成形され、板状ワークW2の熱間プレス成形が行われる。
前述したように、通電加熱装置1を組み込んだプレス成形装置31を用い、通電加熱装置1によって板状ワークW1,W2を加熱し、その後に、成形型30を用いて加熱された板状ワークW2をプレス成形して、熱間プレス成形を行うようにしてもよい。なお、熱間プレス成形は、板状ワークを焼入れ温度以上に加熱してプレス成形するものに限らず、板状ワークを焼入れ温度未満の温度に加熱してプレス成形するものも含むものとする。
このように、同一形状に形成された2つの板状ワークの一方に対して板状ワークの他方を反転すると共に所定量オフセットさせて、2つの板状ワークの所定範囲において、2つの板状ワークの通電方向に直交する断面における断面積の総和が通電方向において略一定となるように重ね合わせられた2つの板状ワークを通電加熱し、成形型30を用いて前記加熱された板状ワークW2をプレス成形することにより、板状ワークの所定範囲において、板状ワークの加熱温度のバラツキを抑制しつつ板状ワークを迅速に加熱することができ、板状ワークの材料特性にバラツキが生じることを抑制することができると共に板状ワークのプレス成形サイクルタイムを短縮することが可能である。
図13は、本発明の第2実施形態に係る通電加熱装置の概略図であり、図13では、位置決め部材を取り除いて示している。本発明の第3実施形態に係る通電加熱装置61は、本発明の第1実施形態に係る通電加熱装置1と、電極11の位置が異なること以外は同様であるので、通電加熱装置1と同様の構成については同一符号を付して説明を省略する。
図13に示すように、本発明の第2実施形態に係る通電加熱装置61においても、同一形状に形成された2つの板状ワークの一方W2に対して板状ワークの他方W1を反転すると共に所定量オフセットさせて、2つの板状ワークW1,W2の所定範囲において、2つの板状ワークW1,W2の通電方向に直交する断面における断面積の総和が通電方向において略一定となるように重ね合わせられた2つの板状ワークW1,W2に一対の電極11が取り付けられるが、一対の電極11は、2つの板状ワークW1,W2の通電方向に直交する断面における断面積の総和が通電方向において略一定となる所定範囲(断面積一定範囲)に隣接して取り付けられる。
通電加熱装置61においても、2つの板状ワークW1,W2の所定範囲において、2つの板状ワークW1,W2の通電方向に直交する断面における断面積の総和が通電方向において略一定となるように用意され重ね合わせられることにより、比較的簡単に板状ワークW1,W2の所定範囲の加熱温度のバラツキを抑制することができる。
図14は、板状ワークの断面積の総和と電極の位置との関係を説明するための説明図である。図14(a)は、図3(a)に示すように重ね合わせられた2つの板状ワークW1,W2について、2つの板状ワークW1、W2の通電方向における断面積の総和を実線L1で示している。
図14(a)に示すように、2つの板状ワークW1,W2の通電方向に直交する断面における断面積の総和が通電方向において略一定となる所定範囲(断面積一定範囲)S1が、2つの板状ワークW1,W2の通電方向の中央部に形成され、断面積一定範囲S1の断面積が、2つの板状ワークW1,W2の通電方向の両端部の断面積に比して小さい場合、電極11は、通電加熱装置1のように2つの板状ワークW1,W2の両端部に配置してもよく、通電加熱装置61のように前記断面積一定範囲に隣接して配置してもよい。
しかしながら、図14(b)に示すように、2つの板状ワークの通電方向に直交する断面における断面積の総和(実線L1’)が通電方向において略一定となる所定範囲(断面積一定範囲)S1’が、2つの板状ワークW1,W2の通電方向の中央部に形成されるが、断面積一定範囲S1’の断面積が、2つの板状ワークの通電方向の両端部の断面積に比して大きい場合、電極11は、通電加熱装置1のように2つの板状ワークの両端部に配置した場合は2つの板状ワークの両端部において加熱温度が高くなる畏れがあるので、通電加熱装置61のように断面積一定範囲S1’に隣接して配置することが好ましい。
また、図14(b)に示すように、2つの板状ワークの通電方向に直交する断面における断面積の総和(実線L1’)が通電方向において略一定となる所定範囲(断面積一定範囲)S1’が、2つの板状ワークW1,W2の通電方向の中央部に形成されるが、断面積一定範囲S1’の断面積が、2つの板状ワークの通電方向の両端部の断面積に比して大きい場合に、電極11を断面積一定範囲S1’に隣接して配置することに代えて、二点鎖線L1”で示すように、2つの板状ワークの通電方向に直交する断面における断面積の総和が通電方向において略一定となるように、板状ワークの断面積一定範囲を除く部分に、板状ワークの形状を変更する形状変更部を設けるようにすることも可能である。
このように、2つの板状ワークの通電方向に直交する断面における断面積の総和が通電方向において略一定となるように、板状ワークの所定範囲(断面積一定範囲)を除く部分に板状ワークの形状を変更する形状変更部が設けられた2つの板状ワークが用意され重ね合わせられることにより、板状ワークの所定範囲を除く部分についても板状ワークの加熱温度のバラツキを抑制することができる。板状ワークの所定範囲を除く部分に設けられた形状変更部は、例えば、通電加熱によって加熱した後にトリミング加工によって取り除くことができる。
図15は、本発明の第3実施形態に係る通電加熱装置の概略図であり、図15(a)は、前記通電加熱装置の概略平面図、図15(b)は、図15(a)におけるY15B方向から見た前記通電加熱装置の側面図である。
本発明の第3実施形態に係る通電加熱装置81は、通電加熱装置1において板状ワークW1,W2を電極11間でクランプするクランプ手段がさらに設けられたものであり、通電加熱装置1と同様の構成については同一符号を付して説明を省略する。
図15(a)及び図15(b)に示すように、本発明の第3実施形態に係る通電加熱装置81においても、互いに離間する一対の電極11を有し、板状ワークW1,W2に一対の電極11を取り付けて通電することにより板状ワークW1,W2を加熱する通電手段10を備え、板状ワークW1,W2を加熱するようになっている。
通電加熱装置81にはまた、電極11間の略中央部において、板状ワークW1,W2をクランプするクランプ手段85が設けられ、クランプ手段85は、板状ワークW1,W2を上方からクランプする上側クランプ部材91と、板状ワークW1,W2を下方からクランプする下側クランプ部材95とによって構成されている。
上側クランプ91は、クランプ部材15と同様に構成され、電極11の延びる方向に略平行に延びる略直方体状のクランプ基部92と、板状ワークW1,W2に接触する先端部を備えたピン部93と、クランプ基部92とピン部93とに結合されるスプリング94とを備え、クランプ基部92が、図示しない上側クランプ移動手段に連結されて矢印Z2に示すように上下方向に移動可能に構成されている。
一方、下側クランプ95は、上側クランプ91を上下反転したものであり、電極11の延びる方向に略平行に延びる略直方体状のクランプ基部96と、板状ワークW1,W2に接触する先端部を備えたピン部97と、クランプ基部96とピン部97とに結合されるスプリング98とを備え、クランプ基部96が、図示しない下側クランプ移動手段に連結されて矢印Z3に示すように上下方向に移動可能に構成されている。
クランプ手段85では、前記上側クランプ移動手段によってクランプ基部91が下方へ移動されることにより上側クランプ部材91が下方へ移動され、前記下側クランプ移動手段によってクランプ基部96が上方へ移動されることにより下側クランプ部材95が上方へ移動される。これにより、クランプ手段85は、電極11間の略中央部において電極11上に配置された板状ワークW1,W2を上側クランプ部材91と下側クランプ部材95とによってクランプすることができるようになっている。
通電加熱装置81においても、クランプ部材15及び上側クランプ部材91がそれぞれ上方へ移動されるとともに下側クランプ部材95が下方へ移動された状態で、2つの板状ワークW1,W2を用意し、電極11上に2つの板状ワークW1,W2を重ね合わせ、重ね合わせられた2つの板状ワークW1,W2に対してクランプ部材15を下方へ移動させることにより電極11とクランプ部材15とによって板状ワークW1,W2を挟持して板状ワークW1,W2に一対の電極11を取り付けることが行われる。
通電加熱装置81ではまた、板状ワークW1,W2を重ね合わせた後、両電極11間を通電する前に、重ね合わせられた2つの板状ワークW1,W2に対して上側クランプ部材91を下方へ移動させるとともに下側クランプ部材95を上方へ移動させることにより上側クランプ部材91と下側クランプ部材95とによって電極11間において板状ワークW1,W2をクランプし、その後に、両電極11間を通電して2つの板状ワークW1,W2を加熱することが行われる。
このように、通電加熱装置81を用いる場合においても、同一形状に形成された2つの板状ワークW1,W2は、板状ワークW2に対して板状ワークW1を反転すると共に所定量オフセットさせて、2つの板状ワークW1,W2の所定範囲において、2つの板状ワークW1,W2の通電方向に直交する断面における断面積の総和が通電方向において略一定となるように用意され重ね合わせられることにより、比較的簡単に板状ワークW1,W2の所定範囲の加熱温度のバラツキを抑制することができる。
また、通電加熱装置81では、クランプ手段85を用いて2つの板状ワークW1,W2の略中央部において2つの板状ワークW1,W2をクランプすることにより、電極11間において重ね合わせられた2つの板状ワークW1,W2の間に隙間が生じることを防止することができる。
図16は、本発明の第4実施形態に係る通電加熱装置の概略図であり、図16(a)は、前記通電加熱装置の概略平面図、図16(b)及び図16(c)はそれぞれ、図16(a)におけるY16B方向及びY16C方向から見た前記通電加熱装置の側面図である。
本発明の第4実施形態に係る通電加熱装置101は、通電加熱装置1において2つの板状ワークW1、W2の間に溶着防止部材がさらに設けられたものであり、通電加熱装置1と同様の構成については同一符号を付して説明を省略する。
図16(a)〜図16(c)に示すように、本発明の第4実施形態に係る通電加熱装置101では、2つの板状ワークW1、W2の間に、一対の溶着防止部材14が備えられる。一対の溶着防止部材14は、例えば銅などの材料を用いて板状に形成されるが、これに限定されるものでなく、板状ワークW1、W2よりも電気抵抗率の小さい材料から形成することができる。溶着防止部材14はまた、電極11と同様の略直方体状に形成することも可能である。一対の溶着防止部材14は、一方の溶着防止部材14aが正電極11aの上方に配置され、他方の溶着防止部材14bが負電極11bの上方に配置される。
図16(b)に示すように、2つの板状ワークW1、W2は、それらの両端部近傍がクランプ部材15によってクランプされる。2つの板状ワークW1、W2のクランプされた部分では、板状ワークW1,W2が通電加熱によって加熱される際に、溶着が発生する畏れがある。
通電加熱装置101では、2つの板状ワークW1,W2の間に、板状ワークW1,W2よりも電気抵抗率の小さい材料からなる溶着防止部材14を介在させることにより、2つの板状ワークW1、W2の接触抵抗よりも板状ワークW1,W2と溶着防止部材14の接触抵抗が小さく、発熱量が少ないので、板状ワークW1、W2の溶着を防止することができる。
図17は、本発明の第5実施形態に係る通電加熱装置を説明するための説明図であり、図17では、前記通電加熱装置に配置される2つの板状ワークのみを示している。
本発明の第5実施形態に係る通電加熱装置は、通電加熱装置1と配置される2つの板状ワークW1、W2が異なること以外は同様であるので、2つの板状ワークW1,W2についてのみ説明する。
本発明の第5実施形態に係る通電加熱装置においても、同一形状に形成された2つの板状ワークW1,W2は、板状ワークW2に対して板状ワークW1を反転すると共に所定量オフセットさせて、2つの板状ワークW1,W2の所定範囲において、2つの板状ワークW1,W2の通電方向に直交する断面における断面積の総和が通電方向において略一致となるように用意され重ね合わせられるが、この通電加熱装置では、同一形状に形成された2つの板状ワークは、2つの板状ワークの通電方向に直交する断面における断面積の総和が通電方向において略一定となる板状ワークの所定範囲が板状ワークの所定割合以上となるように用意され重ね合わせられる。
図17に示すように、同一形状に形成された2つの板状ワークW1,W2は、板状ワークW2に対して板状ワークW1を反転すると共に所定量オフセットさせて、2つの板状ワークW1,W2の通電方向に直交する方向における断面積の総和が略一定となる断面積一定範囲が板状ワークW1,W2の所定割合以上となるように配置される。
具体的には、前記断面積一定範囲に含まれる板状ワークW1の斜線ハッチングが施された範囲M11の表面積と板状ワークW2の斜線ハッチングが施された範囲M12の表面積の総和が、2つの板状ワークW1,W2の表面積の所定割合以上となるように2つの板状ワークW1,W2が所定量オフセットされて配置される。
2つの板状ワークW1,W2は同一形状を有すると共に反転して重ね合わせられるので、板状ワークW1,W2の斜線ハッチングが施された範囲M11,M12の表面積が板状ワークW1,W2の表面積の所定割合以上となるように2つの板状ワークW1,W2が所定量オフセットされて配置される。なお、前記所定割合としては、例えば70%など適宜設定することができる。
図17では、2つの板状ワークW1,W2の通電方向に直交する方向における断面積の総和が略一定となる断面積一定範囲が通電方向に連続して形成されているが、2つの板状ワークW1,W2の通電方向に直交する方向における断面積の総和が略一定となる断面積一定範囲が通電方向に断続的に形成された2つの板状ワークW1,W2を用いることも可能である。
このように、2つの板状ワークW1,W2は、板状ワークの一方W2に対して板状ワークの他方W1を反転すると共に所定量オフセットさせて、2つの板状ワークW1,W2の通電方向に直交する断面における断面積の総和が通電方向において略一定となる板状ワークW1,W2の所定範囲が板状ワークW1,W2の所定割合以上となるように用意され重ね合わせられることにより、板状ワークW1,W2全体について、板状ワークW1,W2の加熱温度のバラツキを抑制することができる。
なお、本実施形態に係る通電加熱において加熱される2つの板状ワークは、高張力鋼板などの金属製の板状ワークに限らず、所定の電気抵抗率及び所定の厚さを有する導電性の板状ワークであれば、樹脂製などのその他の板状ワークを使用することも可能である。
本発明は、例示された実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能である。