JP2014086331A - 放電ランプ点灯装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】水平点灯される放電ランプと、放電ランプに電力を供給する点灯回路と、放電ランプの電圧測定手段と、アークの上方変形現象を抑制するための磁界印加装置と、点灯回路および磁界印加装置を制御する制御部とを備え、電圧測定手段は、電圧をサンプリング時間tで測定するものであり、制御部においては、時間Ta内に測定された複数の電圧測定値よりなる基準電圧測定値群の平均値VL1と、基準電圧測定値群のうち最初に測定された電圧測定値を測定してから時間Tbが経過した後に、時間Ta内に測定された複数の電圧測定値よりなる比較電圧測定値群の平均値VL2とを算出し、平均値VL1と平均値VL2との差(VL2−VL1)が基準値を超えると、磁界印加装置を駆動する。
【選択図】図1
Description
そして、キセノン放電ランプにおいては、封入物質としてハロゲンが含まれておらず、従って、いわゆるハロゲンサイクルによって、蒸発した電極物質が電極先端に堆積することによって電極先端部が維持されるという機能はない。そのため、放電ランプの点灯時間が経過するに従って電極間距離が長くなり、これに伴ってランプ電圧が上昇する結果、アークの保持力が低下する。
また、放電ランプは、実用上、映写機の内部において水平姿勢で点灯されることから、放電ランプの点灯中に生ずる熱によって、発光管内において発光ガスであるキセノンガスが対流する。このため、対流するキセノンガスによって、アークに対して上方向の応力が作用する結果、アークが上方に湾曲したりアークの起点が上方に変位したりする上方変形現象が発生する。このようなアークの上方変形現象が生じると、アークによる放電路が長くなり、これにより、アークを維持するために必要なランプ電圧が上昇する。そして、アークの上方変形現象が過度に生じると、ランプ電圧が過大に上昇する結果、放電ランプが消灯する。このアークの上方変形現象は、放電ランプの電極間距離が長くなることによってアークの保持力が低下するほど顕著に生じる。
この放電ランプ点灯装置によれば、放電ランプのアークに対して、当該アークの伸びる方向に垂直でかつ水平な方向に磁界を印加することによって下方向にローレンツ力を作用させ、このローレンツ力により、アークの上方変形現象が抑制される。
これらのうち、上記(1)の手段においては、点灯装置全体が複雑なものとなり、また、装置のコストも高く、放電ランプの点灯中に常時監視することも困難である、という問題があるため、上記(2)の手段が実用的である。
デジタル映写機に用いられる放電ランプにおいては、点灯中における電流密度が極めて高いため、電極物質が溶融することによって電極先端に複数の微小突起が形成されやすく、このため、アークの起点が微小突起間を移動することにより、フリッカーが発生する。このようなフリッカーが放電ランプに発生すると、極めて短い時間に大きな電圧変化が生じる。そして、フリッカーによる電圧変化の大きさが、アークの上方変形現象による電圧変化の大きさに近似する場合には、フリッカーによる電圧変化をアークの上方変形現象による電圧変化であると誤検知してしまい、その結果、磁界印加手段によってアークに磁界が印加されることにより、アークが更に不安定となって放電ランプが消灯する。
この放電ランプに電力を供給する点灯回路と、
前記放電ランプに供給された電力の電圧を測定する電圧測定手段と、
前記放電ランプに形成されるアークの上方変形現象を抑制するための磁界印加装置と、 前記点灯回路および前記磁界印加装置を制御する制御部と
を備えてなる放電ランプ点灯装置であって、
前記電圧測定手段は、前記放電ランプの点灯中において、当該放電ランプに供給された電力の電圧を所定のサンプリング時間tで繰り返して測定するものであり、
前記制御部においては、所定の時間Ta内に測定された複数の電圧測定値よりなる基準電圧測定値群の平均値VL1を算出すると共に、前記基準電圧測定値群のうち最初に測定された電圧測定値を測定してから所定の時間Tbが経過した後に、所定の時間Ta内に測定された複数の電圧測定値よりなる比較電圧測定値群の平均値VL2を算出し、前記基準電圧測定値群の平均値VL1と、前記比較電圧測定値群の平均値VL2との差(VL2−VL1)が所定の値を超えているときに、前記磁界印加装置を駆動することを特徴とする。
図1は、本発明の放電ランプ点灯装置の一例における構成の概略を示す説明図である。この放電ランプ点灯装置は、例えば映画館においてデジタル映写機用の光源として用いられるものであって、水平点灯される放電ランプ10と、この放電ランプ10に電力を供給する点灯回路20と、放電ランプ10に供給された電力の電圧を測定する電圧測定手段30と、放電ランプ10に供給された電力の電流を測定する電流測定手段35と、放電ランプ10に生ずるアークの上方変形現象を抑制するための磁界印加装置40と、点灯回路20および磁界印加装置40を制御する制御部50とを備えてなる。
この放電ランプ10は、ショートアーク型キセノン放電ランプであって、その発光管11は、例えば石英ガラスにより構成されている。また、発光管11は、内部に放電空間を形成する外形が略楕円球状の発光部12と、この発光部12の両端の各々に一体に連設された、管軸に沿って外方に伸びる円筒状の封止部13と、封止部13の各々の外端に一体に連接された、封止部13の外径より大きい外径の電極支持部14とを有する。
陽極15および陰極16間の距離(電極間距離)は、例えば2〜10mmである。
また、発光管11における各電極支持部14には、陽極15および陰極16の各々における軸部15b,16bの基端部分が固着され、これにより、電極支持部14によって陽極15および陰極16の各々が支持されている。
また、放電ランプ10の定格電流は、例えば25〜175A、定格電圧は、例えば20〜45V、定格電力は、例えば1〜8kWである。
インバータ回路23としては、複数のスイッチング半導体素子よりなるブリッジ回路を備え、パルス幅制御信号が送信されて、デューティ比に応じて所望の電力を放電ランプ10に供給する、既知の構成のものを採用することができる。
また、点灯回路20には、図示しないが、放電ランプ10を点灯始動するための始動回路等が設けられている。
図3は、通常の点灯状態における、放電ランプ10に供給された電力の電圧測定値の変化を示すグラフであり、図4は、アークの上方変形現象が生じる前後における、放電ランプ10に供給された電力の電圧測定値の変化を示すグラフである。図3および図4に示すグラフにおいて、縦軸は、放電ランプ10に供給された電力の電圧測定値を示し、横軸は放電ランプ10の点灯時間を示す。
図3に示すように、通常の点灯状態においては、放電ランプ10に供給された電力の電圧は、極めて短い時間間隔では小さく変化するが、長い時間間隔では、安定した状態である。一方、図4に示すように、アークの上方変形現象が生じると、放電ランプ10に供給された電力の電圧は大きく上昇する。
そして、図3に示すように、平均値VL1と平均値VL2との差(VL2−VL1)が所定の基準値Vs以下であるときには、電圧平均値比較動作(Step1〜Step3)を繰り返して行う。
一方、図4に示すように、平均値VL1と平均値VL2との差(VL2−VL1)が所定の基準値Vsを超えているときには、磁界印加装置40を駆動し(Step4)、所定の時間経過後に磁界印加装置40の駆動を停止する(Step5)。その後、電圧平均値比較動作(Step1〜Step3)を繰り返し行う。
また、所定の時間Tbは、上記の範囲であれば、所定の時間Taより長くても短くてもよい。所定の時間Tbが所定の時間Taより短い場合には、比較電圧測定値群Vg2における最初の電圧測定値V2の測定時が、基準電圧測定値群Vg1における最初の電圧測定値V1の測定時より早くなり、基準電圧測定値群Vg1における一部の電圧測定値V1と、比較電圧測定値群Vg2における一部の電圧測定値V2とが重複して選択されることになる。
図6に示すように、放電ランプ10にフリッカーが生じると、放電ランプ10に供給された電力の電圧は、通常の点灯状態に比較して(図3参照)、極めて短い時間間隔で大きく増減する。このフリッカーに起因する電圧の変化の大きさは、アークの上方変形現象に起因する電圧の変化の大きさ(図4参照)と近似する。しかしながら、フリッカーに起因する電圧の変化は、極めて短い時間間隔で生ずるため、所定の時間Ta内に測定された基準電圧測定値群Vg1の平均値VL1と、所定の時間Ta内に測定された比較電圧測定値群Vg2の平均値VL2とを比較すると、平均値VL1と平均値VL2と差は極めて小さい。従って、放電ランプ10にフリッカーが生じることによって、放電ランプ10に供給された電力の電圧が大きく変化した場合であっても、アークの上方変形現象に起因する電圧の変化として誤検知されることを回避することができる。
例えば磁界印加装置40としては、電磁石41を備えてなるものの代わりに、永久磁石を備えてなるものを用いることができる。
また、上記の実施の形態においては、電圧測定手段30によって測定された電圧測定値の中から、所定の時間Tbなどを考慮して、電圧測定値V1および電圧測定値V2を選択し、基準電圧測定値群Vg1の平均値VL1および比較電圧測定値群Vg2の平均値VL2を算出しているが、全ての電圧測定値について、当該電圧測定値およびこれに連続する複数の電圧測定値の移動平均値を算出し、これらの移動平均値の中から、所定の時間Tbなどを考慮して、2つの移動平均値を基準電圧測定値群Vg1の平均値VL1および比較電圧測定値群Vg2の平均値VL2として選択してもよい。
放電ランプの仕様:
・発光管は石英ガラス製で、発光部の最大外径が42mm、発光部の内容積が40mm3 である。
・陽極および陰極の各々はタングステン製で、電極間距離が3.7mmである。
・発光管内には、静圧で1.9MPaのキセノンガスが封入されている。
・放電ランプの定格電流は75A、定格電圧は27V、定格電力は2kWである。
上記の放電ランプ点灯装置を用い、制御部によって下記の条件で磁界印加装置を制御しながら、点灯回路から電力を放電ランプに1500時間供給し、その間の放電ランプの消灯の有無を調べた。結果を表1に示す。
制御条件:
・電圧測定のためのサンプリング時間t=0.001秒間(サンプリング周波数=1000Hz)
・電圧測定値V1を取得するための所定の時間Ta=2秒間
・基礎電圧測定値群における電圧測定値V1のサンプリング数=5
・先行の基準電圧測定値群における最初の電圧測定値V1の測定時から後続の基準電圧測定値群における最初の電圧測定値V1の測定時までの時間=0.5秒間
・電圧測定値V2を取得するための所定の時間Ta=2秒間
・比較電圧測定値群における電圧測定値V2のサンプリング数=5
・電圧測定値V2を取得するための所定の時間Tb=2秒間
・平均値VL1と平均値VL2との差(VL2−VL1)の基準値Vs=1V
・磁界印加装置の駆動時間(磁界の印加時間)=5秒間
磁界印加装置を制御せずに停止したままの状態としたこと以外は実験例1と同様にして、点灯回路から電力を放電ランプに1500時間供給し、その間の放電ランプの消灯の有無を調べた。結果を表1に示す。
磁界印加装置の制御条件を以下のように変更したこと以外は実験例1と同様にして、点灯回路から電力を放電ランプに1500時間供給し、その間の放電ランプの消灯の有無を調べた。結果を表1に示す。
制御条件:
電圧測定手段によって、サンプリング時間tが0.001秒間(サンプリング周波数=1000Hz)の条件で放電ランプに供給された電力の電圧を繰り返して測定し、測定された電圧測定値の中から一の電圧測定値(以下、「電圧測定値Va」という。)を選択すると共に、この電圧測定値Vaを測定してから0.001秒間経過後に測定された電圧測定値(以下、「電圧測定値Vb」という。)を選択し、電圧測定値Vaと電圧測定値Vbとを比較する(以下、この動作を「電圧比較動作」という。)。電圧測定値Vaと電圧測定値Vbとの差(Vb−Va)が1V以下のときには、電圧比較動作を繰り返して行う。電圧測定値Vaと電圧測定値Vbとの差(Vb−Va)が1Vを超えるときには、磁界印加装置を5秒間駆動させ、その後、電圧比較動作を繰り返して行う。
電圧測定のサンプリング時間tを0.01秒間(サンプリング周波数=100Hz)に変更したこと以外は比較実験例2と同様にして、点灯回路から電力を放電ランプに1500時間供給し、その間の放電ランプの消灯の有無を調べた。結果を表1に示す。
これに対して、比較実験例1においては、アークの上方変形現象が発生しても磁界印加装置を駆動しなかったため、放電ランプの消灯が発生した。
また、比較実験例2においては、単独の電圧測定値Vaおよび電圧測定値Vbを比較しているため、フリッカーに起因する電圧変化が発生したときにも磁界印加装置が駆動され、これにより、アークが不安定となる結果、放電ランプの消灯が発生した。
また、比較実験例3においては、電圧測定のサンプリング時間tを比較実験例2よりも長くしたが、単独の電圧測定値Vaおよび電圧測定値Vbを比較しているため、フリッカーに起因する電圧変化が発生したときにも磁界印加装置が駆動され、これにより、アークが不安定となる結果、放電ランプの消灯が発生した。
11 発光管
12 発光部
13 封止部
14 電極支持部
15 陽極
15a 頭部
15b 軸部
16 陰極
16a 頭部
16b 軸部
17 ガラス部材
20 点灯回路
21 整流回路
22 定電圧回路
23 インバータ回路
25 交流電源
30 電圧測定手段
35 電流測定手段
40 磁界印加装置
41 電磁石
42 電流供給回路
50 制御部
51 タイマー回路
Claims (2)
- 水平点灯される放電ランプと、
この放電ランプに電力を供給する点灯回路と、
前記放電ランプに供給された電力の電圧を測定する電圧測定手段と、
前記放電ランプに生ずるアークの上方変形現象を抑制するための磁界印加装置と、
前記点灯回路および前記磁界印加装置を制御する制御部と
を備えてなる放電ランプ点灯装置であって、
前記電圧測定手段は、前記放電ランプの点灯中において、当該放電ランプに供給された電力の電圧を所定のサンプリング時間tで繰り返して測定するものであり、
前記制御部においては、所定の時間Ta内に測定された複数の電圧測定値よりなる基準電圧測定値群の平均値VL1を算出すると共に、前記基準電圧測定値群のうち最初に測定された電圧測定値を測定してから所定の時間Tbが経過した後に、所定の時間Ta内に測定された複数の電圧測定値よりなる比較電圧測定値群の平均値VL2を算出し、前記基準電圧測定値群の平均値VL1と、前記比較電圧測定値群の平均値VL2との差(VL2−VL1)が所定の値を超えているときに、前記磁界印加装置を駆動することを特徴とする放電ランプ点灯装置。 - 前記基準電圧測定値群のうち最初に測定された電圧測定値を測定してから前記比較電圧測定値群における最初の電圧測定値を測定するまでの所定の時間Tbは、1〜10秒間であることを特徴とする請求項1に記載の放電ランプ点灯装置。
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