JP2007213922A - 高圧放電ランプ点灯装置およびこれを用いた投射型ディスプレイ装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 高圧放電ランプを長寿命化することができる高圧放電ランプ点灯装置を得る。
【解決手段】 内部にハロゲン物質が封入され、タングステンからなる一対の電極を有する発光管を備えた高圧放電ランプに対し、矩形の交流電流を供給して高圧放電ランプを点灯する高圧放電ランプ点灯装置において、交流電流の電流値を検出する手段を有し、前記交流電流の電流値が小さいときには交流電流の周波数を低くし、前記交流電流の電流値が大きいときには交流電流の周波数を高くする。
【選択図】 図6
【解決手段】 内部にハロゲン物質が封入され、タングステンからなる一対の電極を有する発光管を備えた高圧放電ランプに対し、矩形の交流電流を供給して高圧放電ランプを点灯する高圧放電ランプ点灯装置において、交流電流の電流値を検出する手段を有し、前記交流電流の電流値が小さいときには交流電流の周波数を低くし、前記交流電流の電流値が大きいときには交流電流の周波数を高くする。
【選択図】 図6
Description
この発明は、高圧放電ランプの点灯装置に関わり、特にプロジェクションテレビやプロジェクタなどの投射型ディスプレイ装置の光源として用いられる高圧放電ランプの点灯装置およびこれを用いた投射型ディスプレイ装置に関するものである。
近年、高圧放電ランプは液晶やDMD(ディジタル・マイクロミラー・デバイス)を用いたプロジェクションテレビやプロジェクタなどの投射型ディスプレイ装置の光源として盛んに用いられている。特に、100〜200気圧もの極めて高い水銀蒸気圧で動作させる高圧水銀ランプは電極間距離を小さくすることができるため、点光源に近い特性が得られ、現在では投射型ディスプレイ装置の光源として主流となっている。しかし、このような高圧放電ランプの寿命は、ブラウン管や液晶ディスプレイのバックライトとして用いられる冷陰極蛍光ランプよりも短く、プロジェクションテレビが普及するには光源の長寿命化が課題の一つとなっている。高圧放電ランプの寿命には主に、ランプの破損、ランプバルブの黒化あるいは白濁による光束低下、及び電極の消耗による電極間距離の増大がある。電極間距離の増大は投射型ディスプレイの画面輝度低下やランプ電圧の異常上昇による不点を招き、寿命要因としては最も多い(例えば、非特許文献1参照)。
高圧放電ランプの点灯中の電極の変化を点灯周波数により制御する試みが報告されている。例えば、従来の高圧放電ランプ点灯装置では、高圧放電ランプを定格電力よりも低い電力で点灯させた調光電力点灯において、電極先端部に突起が異常成長しランプ電圧が低下するが、ランプ電圧が所定値を下回った場合に、所定の時間だけ、定格電力点灯時の周波数よりも“高い”周波数の交流電流を供給する期間を設けることにより、突起を構成するタングステンを適度に蒸発させ、ランプ電圧の低下を抑制し、ランプ電圧を上昇させることができると報告されている(例えば、特許文献1参照)。
また、他の例では、同一出願人により、従来の高圧放電ランプ点灯装置では、高圧放電ランプを定格電力よりも低い電力で点灯させた調光電力点灯において、電極先端部に突起が異常成長しランプ電圧が低下するが、ランプ電圧が所定値を下回った場合に、一時的に定格周波数よりも“低い”周波数の交流電流を投入する期間を設けることにより、突起が異常成長した状態から、一時的に電極先端部の温度を上昇させ、突起部を形成するタングステンを一部蒸発させ、ランプ電圧の低下を抑制することができると報告されている(例えば、特許文献2参照)。
さらにまた、他の例として、従来の高圧放電ランプ点灯装置では、交流電流または交流電圧による動作中、電極先端部の突起の大きさが、電流または電圧の動作周波数に比例し、電極先端部の突起の直径は、動作電流または動作電圧の基本周波数がより高くなるにつれ、より小さくなることが報告されている。具体的な例として、例えばランプが交換された場合、最初45Hzといったできる限り低い周波数で1時間動作させ、これをランプ電圧の低下が観測されなくなるまで維持し、その後点灯周波数を1.2〜1.8倍に上昇し、ランプ電圧の低下が観測されなくなるまで維持する。これを繰り返し電極先端部の突起の成長が観測されなくなるまで、点灯周波数を上昇させる。このようにして決定された周波数を維持し、ランプ電圧が初期レベルに上昇するまで使用することが記載されており、好適には初期レベルへの上昇前に、再びできる限り低い周波数で動作させ、電極先端部の突起を再び再生させることができると報告されている(例えば、特許文献3参照)。
Guenther Derra等,"UHP lamp systems for projection applications",J.Phys,D: Appl.Phys.38(2005),2995〜3010頁(図9)。
このような高圧放電ランプ点灯装置にあっては、特許文献1〜3より、ランプの点灯周波数が電極先端部の突起の大きさに関わっており、点灯周波数を制御することで突起の大きさを制御可能なことが記されているが、いずれもランプ電圧が低下する場合について開示されているに過ぎない。新しい高圧放電ランプの点灯初期には電極先端の突起成長によりランプ電圧が低下する現象が見られるが、高圧放電ランプの寿命といった長い時間で見れば、非特許文献1に開示されているように、電極間距離は増大し、これによって投射型ディスプレイの画面輝度は低下する。このためランプ電圧も上昇するのが一般的である。 すなわち特許文献1〜3に記された高圧放電ランプ点灯装置では、数1000時間以上といった高圧放電ランプが寿命に至るまで全ての点灯期間を考慮したものではなく、高圧放電ランプを長寿命化できるかどうかについては不明であり、特許文献1には、寿命試験を行った結果、2000時間点灯後で寿命特性に影響を与えなかったことが記されている。
この発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、高圧放電ランプを長寿命化することができる高圧放電ランプ点灯装置を得ることを目的としている。
この発明に係る高圧放電ランプ点灯装置は、内部にハロゲン物質が封入され、タングステンからなる一対の電極を有する発光管を備えた高圧放電ランプに対し、矩形の交流電流を供給して高圧放電ランプを点灯する高圧放電ランプ点灯装置において、交流電流の電流値を検出する手段を有し、予め定められた交流電流の電流値と周波数の関係に対応させて、前記交流電流の電流値が小さいときには交流電流の周波数を低くし、前記交流電流の電流値が大きいときには交流電流の周波数を高くするものである。
この発明によれば、高圧放電ランプに供給される交流電流値に応じて、交流電流の周波数を制御することにより、高圧放電ランプの電極温度を電極先端部の突起形成に適切な温度に維持することができるため、高圧放電ランプの寿命をより長くすることができる、といった従来にない顕著な効果を奏するものである。
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1による高圧放電ランプの構造を示す図である。本実施の形態では超高圧水銀ランプについて主として述べるが、内部に微量のハロゲンガスが封入され、アーク放電によって電極が高温となり、点灯中に蒸発した電極材料がハロゲンサイクルにより管壁に付着することなく、電極に再付着するように設計された、例えばメタルハライドランプなどの他の放電ランプであっても同様に適用することができる。高圧放電ランプ1は、石英ガラスによって形成された石英バルブ2の内部に気密空間3を有し、気密空間3の内部に、水銀、アルゴンなどの希ガス、臭素などの微量のハロゲンガス、及びハロゲンサイクルを活性化させるための微量の酸素が封入されており、タングステンからなる電極4a、4bが0.5〜2mmの間隔で設けられている。電極4a、4bは石英バルブ2の封止部においてモリブデン箔5a、5bと接続され、モリブデン箔5a、5bはモリブデンリード線6a、6bに接続され、石英バルブ2の外部から給電されるようになっている。
図1は本発明の実施の形態1による高圧放電ランプの構造を示す図である。本実施の形態では超高圧水銀ランプについて主として述べるが、内部に微量のハロゲンガスが封入され、アーク放電によって電極が高温となり、点灯中に蒸発した電極材料がハロゲンサイクルにより管壁に付着することなく、電極に再付着するように設計された、例えばメタルハライドランプなどの他の放電ランプであっても同様に適用することができる。高圧放電ランプ1は、石英ガラスによって形成された石英バルブ2の内部に気密空間3を有し、気密空間3の内部に、水銀、アルゴンなどの希ガス、臭素などの微量のハロゲンガス、及びハロゲンサイクルを活性化させるための微量の酸素が封入されており、タングステンからなる電極4a、4bが0.5〜2mmの間隔で設けられている。電極4a、4bは石英バルブ2の封止部においてモリブデン箔5a、5bと接続され、モリブデン箔5a、5bはモリブデンリード線6a、6bに接続され、石英バルブ2の外部から給電されるようになっている。
図2は本発明の実施の形態1による高圧放電ランプユニットを示す図である。高圧放電ランプユニットは、図1で示した高圧放電ランプ1を、内面を鏡面加工したガラスなどの材料からなるリフレクタ7の内部に組み込んだものであり、高圧放電ランプ1の一端にネジ加工を施した金属片8bを設け、金属片8bをセメント9によってリフレクタ7に固定している。一方、高圧放電ランプ1の他端のモリブデンリード線6aにはリード線によって、リフレクタ7の側面に設けた口金8aに接続されている。金属片8aと口金8bに給電することによって、高圧放電ランプ1は放電発光し、窓10から光が放射される。なお、一般には図2で示した高圧放電ランプユニットが高圧放電ランプとして販売されているため、これを高圧放電ランプと呼び、図1で示した高圧放電ランプを発光管またはバーナーと呼ぶ場合がある。本発明はリフレクタなどの高圧放電ランプユニットを構成する部材については任意であってよく、特に何ら効果を及ぼさないものであるから、以下の説明では単に高圧放電ランプと呼び、高圧放電ランプユニットの各部材を省略して示す。例えば、高圧放電ランプ1の電極4a、4bに電圧を印加するというのは、正確には高圧放電ランプユニットの金属片8a及び口金8bを通じて、高圧放電ランプ1の電極4a、4bに電圧を印加するということであるが、単に高圧放電ランプ1の電極4a、4bに電圧を印加すると言う。
図3は本発明の実施の形態1による高圧放電ランプ点灯装置を示す構成図である。高圧放電ランプ点灯装置は主としてDC−DCコンバータ11、DC−ACインバータ12、イグナイタ13及びコントロールユニット14から構成される。DC−DCコンバータ11はスイッチ11a,ダイオード11b,コイル11c及びコンデンサ11dから構成されているチョッパ式降圧コンバータであり、DC−DCコンバータ11はDC電圧Vin(DC電圧Vinは、商用AC電圧が全波整流されたのちに、昇圧されたDC電圧)が印加されると、そのDC電圧VinをDC電圧Vbに変換する。
DC−ACインバータ12はスイッチSw1〜Sw4から構成されているフルブリッジインバータであり、インバータ12はDC−DCコンバータ11により変換されたDC電圧Vbをランプ電流の大きさIbにより定められた所定の周波数の交流矩形波電圧に変換し、その交流矩形波電圧を高圧放電ランプ1の電極4a、4bに印加する。ランプ電流は例えば、DC−ACインバータ12からDC−DCコンバータ11に流れる電流Ibを測定することによって検出することができ、検出方法は電流センサを用いても良いし、シャント抵抗を設け、シャント抵抗の端子電圧から換算しても良い。あるいはDC−DCコンバータ11に供給される入力電力を測定し、DC−DCコンバータ11の出力電圧Vbを測定して、DC−DCコンバータなどの回路効率を考慮して、計算によりランプ電流の大きさIbを求めてもよい。
イグナイタ13は高圧放電ランプ1の始動を行うために、DC−ACインバータ12と高圧放電ランプ1の間に接続され、高圧放電ランプ1の始動時に短パルス高ピークの電圧を高圧放電ランプ1の電極4a、4bに印加する。イグナイタ13が発生する電圧はティピカルには15kVである。高圧放電ランプ1の電極4a、4bに短パルス高ピークの電圧が印加されると、電極間で絶縁破壊が起こり、放電発光が始まる。その後は、イグナイタ13は役目を終え、消灯後再び始動が要求されるまで特に何も行わない。なお、この発明はここで述べた高圧放電ランプの始動時については何ら限定するものではない。
コントロールユニット14はランプ電圧及びランプ電流をモニタし、DC−DCコンバータのスイッチ11a、DC−ACインバータのスイッチSw1〜Sw4を制御し、高圧放電ランプ1に所定の電力を、ランプ電流Ibによって定められた所定の周波数で供給する。高圧放電ランプ1に供給する電力の大きさは、DC−DCコンバータのスイッチ11aのON/OFF時間比率(Duty比)を制御することによって、ほとんど任意且つ瞬時に制御することができる。具体的にはDC−DCコンバータのスイッチ11aのON/OFF時間比率を大きくすることにより、放電ランプ1に供給される電力の大きさは大きくなり、ON/OFF時間比率を小さくすると供給される電力の大きさは小さくなる。
図4はDC−DCコンバータのスイッチ11a及びDC−ACコンバータのスイッチSw1〜Sw4のON/OFF制御とランプ電流の関係を示したものである。なお、ここで示す各スイッチのON/OFF制御及びランプ電流波形は、DC−DCコンバータのスイッチ11aを制御することでランプ電流の大きさを、ほとんど任意且つ瞬時に制御可能なことを示すためであり、これに限るものではなく、以下に述べる全てのランプ電流波形が容易に実現されることを示すためのものである。
本発明は、ランプ電流を測定し、図3のような回路を用いて高圧放電ランプに供給する電力の周波数を制御するものである。具体的には、先に述べたように直接的あるいは間接的にランプ電流Ibを、瞬時値ではなく実効値または平均値で測定し、ランプ電流Ibの大きさに応じて予め定めた所定の周波数の矩形波電流が高圧放電ランプに流れるようにDC−DCコンバータのスイッチ11a及びDC−ACインバータのスイッチSw1〜Sw4を制御する。ランプ電流Ibと周波数の関係は、ランプ電流Ibが大きいほど周波数が高く、ランプ電流Ibが小さいほど周波数が低くなるように制御する。ランプ電流Ibと周波数の関係は1次関数や2次関数あるいは他の任意の関数のように、一方が変化すると他方が連動して連続して変化するものであってもよいし、ランプ電流Ibがある定められた範囲内であれば、ある一定の周波数というようにステップ状に変化するものであってもよい。
ランプ電流Ibと周波数の関係が1次関数や2次関数あるいは他の任意の関数のように、一方が変化すると他方が連動して連続して変化する場合は、高圧放電ランプに供給される交流電流値に最も適した周波数で高圧放電ランプを点灯することができ、高圧放電ランプの電極温度を電極先端の突起形成に最適な温度に制御することができるため、高圧放電ランプの寿命を最も長くすることができる。
赤、緑、青の3原色に対応して3枚の液晶パネルを用いる方式の投射型ディスプレイ装置に用いる場合は、周波数がランプ電流Ibに連動して変化するものが、ランプ電流に対して最適な周波数で点灯することができるため望ましいが、ステップ状に変化するものでもよい。一方、1枚の液晶パネルやDMDを用いてカラーホイールを回転させることで3原色を時間分割して利用する方式の投射型ディスプレイ装置に用いる場合は、カラーホイールの回転と同期を取る必要があるため、周波数がランプ電流Ibに対してステップ状に変化するものが望ましい。
その場合、カラーホイールの回転と同期を取りながら、高圧放電ランプの電極温度を電極先端部の突起形成に適切な温度に維持することができるため、高圧放電ランプの寿命をより長くすることができる。
しかし、同期を取らなくてもランプ電流の極性が変化するときのランプ光量の変化を映像信号処理などで補正するような仕組みを併用すれば、連続的に変化するものでもよい。
その場合、カラーホイールの回転と同期を取りながら、高圧放電ランプの電極温度を電極先端部の突起形成に適切な温度に維持することができるため、高圧放電ランプの寿命をより長くすることができる。
しかし、同期を取らなくてもランプ電流の極性が変化するときのランプ光量の変化を映像信号処理などで補正するような仕組みを併用すれば、連続的に変化するものでもよい。
以下、周波数がランプ電流Ibに対してステップ状に変化する場合について述べる。ランプ電流の大きさに対して、高圧放電ランプの電極形状を最適な形状に保つのに適した点灯周波数が存在することについては後述するが、それによれば周波数がランプ電流Ibに対して連続的に変化する場合においても同様に実施可能であり効果を奏することが容易に理解できる。
図5は周波数がランプ電流Ibに対してステップ状に変化する場合の、ランプ電流Ibと周波数の関係を示したものである。なお、ここでは3段階に変化する場合について示すがこれに限るものではなく、2段階,4段階あるいは無限に多い段階数(すなわち連続的変化)など任意の段階数であってよい。周波数が変化するランプ電流Ibの閾値Ib1,Ib2は、高圧放電ランプの設計によって異なる。すなわち高圧放電ランプの定格電力によって電極のサイズや形状などの設計値が異なるため、電極形状を最適な形状に保つための周波数に設定する閾値も異なってくる。しかし、これらの閾値は容易に決定することができる。
すなわち、ある一つの設計に基づいて製造された高圧放電ランプに対して、ある周波数、例えば周波数f1,f2,f3で点灯する。そして高圧放電ランプの電極形状を観察しながら、ランプ電流Ibを変化させる。高圧放電ランプの電極形状を観察する手段としては、リフレクタに穴を開けその穴を通して顕微鏡で観察するなどの方法で容易に実現できる。そしてランプ形状が最適となったときのランプ電流Ibを求め、例えばIb1,Ib2とすればよい。当然のことながら、同じ設計に基づく高圧放電ランプであっても製造上のばらつきなどの要因により、個々のランプに対してランプ電流Ibの最適な閾値はばらつく。従って、複数の高圧放電ランプで測定を行い、統計的な検知から決定してもよいし、それぞれ異なる閾値において寿命試験を行い、閾値の補正を加えてもよい。なお、ランプ電流Ibと周波数の関係が1次関数や2次関数あるいは他の任意の関数のように、一方が変化すると他方が連動して連続して変化する場合についても、同様にいくつかの周波数においてランプ電流Ibの最適な閾値を求め、これらの関係式を表す実験式を求めることで、その関数を決定することができる。
我々が実験に用いた定格電力150Wの高圧放電ランプにおいては、周波数をf1=75Hz,f2=150Hz,f3=450Hzとした場合、Ib1=1.0A,Ib2=1.6Aが最適であった。
周波数は以下の制約条件に基づいて決定される。カラーホイールを回転させて同期を取る必要がある場合には、カラーホイールの回転周波数の整数倍あるいは整数分の1に限定された周波数となる。また高圧放電ランプはランプ電流の極性が変化する度に放電が停止するため、極性が変わるときに光量が減少するが、周波数が低くなると、これがちらつきとして人の目に認知されるようになる。極性変化による光量の減少は1周期に2回起こるので、これが人の目に認知されない周波数が下限値であり、35Hz以上(光量変化は70Hz)、好ましくは45Hz(光量変化は90Hz)以上である。一方、逆に周波数が高くなり、kHzオーダーになると音響共鳴現象により光量にちらつきを生じる場合がある。このような高周波は避けるべきであり、それ以下とする必要がある。
また後に詳しく説明するが、高圧放電ランプの電極形状は、ランプ電流Ibが一定の場合、周波数によって変化するのであるが、これは電極が陽極時に加熱され、陰極時に冷却されることに基づいて起こる。そして加熱や冷却による温度変化の時定数が数10〜数100ミリ秒と比較的大きいため、周波数がkHzオーダーになると陽極時と陰極時の温度がほとんど同じとなり、周波数に依存して電極形状が変化しなくなる。我々の実験では電極形状の変化が見られたのは約1000Hz以下の周波数であった。
つまり、周波数は35Hz以上、1000Hz以下で制御することにより、高圧放電ランプの電極温度を電極先端部の突起形成に適切な温度に維持することができるため、高圧放電ランプの寿命をより長くすることができる。
図6は本実施の形態1のランプ電流Ibに対する高圧放電ランプを点灯する周波数の制御方法について示すフローチャートである。また図7は高圧放電ランプが新品の状態から寿命に至るまでの点灯時間とランプ電流Ibの関係を示す図である。なお、図7の点灯時間とランプ電流Ibの関係は電力一定の条件で示している。
一般的には、投射型ディスプレイ装置ではランプ電力一定で使用されている。機種によってはランプ電力を定格電力と定格電力以下の電力の2種類あるいは数種類で点灯可能になっているが、高圧放電ランプ点灯装置がランプ電圧やランプ電流をモニタしながら所定の電力となるように制御して点灯している。ランプ電力一定の場合、ランプ電流は点灯初期から50時間前後の間増加し、その後は寿命に至るまで低下する。これは点灯中に高圧放電ランプの電極間隔が変化するためである。点灯初期は電極先端に突起が形成され、この突起が成長し、電極間隔が短くなるためランプ電圧が低下する。電力一定であるから、ランプ電流は増加する。一方、50時間前後で電極先端の突起の成長は止まり、その後は電極消耗により電極間隔が長くなるためランプ電圧は上昇する。電力一定であるから、ランプ電流は減少する。なお、50時間前後と述べた電極先端の突起の成長が停止する時間は高圧放電ランプの設計や点灯条件によっても異なるが、我々が実験に用いた定格電力150Wの高圧放電ランプでは50時間前後であった。
図6の動作を、図7と関連付けて説明する。点灯初期の場合、点灯回路はランプ電流Ibを測定する。図7よりランプ電流IbはIb2以上であるから、高圧放電ランプは周波数f3で点灯される。その後、点灯中の電極消耗によりランプ電流が減少し、ランプ電流IbがIb1以上で、且つIb2未満となると、高圧放電ランプは周波数f2で点灯される。その後さらにランプ電流が減少し、ランプ電流IbがIb1未満になると、周波数f1で点灯される。
以下にランプ電流によって高圧放電ランプを点灯する周波数を制御する理由について説明する。我々は放電中の高圧放電ランプの電極を詳細に観察し、電極形状を大きく3種類に分類できることを見出した。またその電極形状は電極先端の最大到達温度によって変化することが分かった。電極先端の最大到達温度とは、電極が陽極となるときに達する最大の温度である。
高圧放電ランプの電極は、交流で点灯されることにより、陽極のときに温度が上昇し、陰極のときに温度が低下する。この理由は陽極時には電子が衝突し陽極に流入するため電子の持つエネルギーが熱に変換されるが、陰極時にはイオンが衝突し、イオンの持つエネルギーは陰極から電子を放出させるために働き熱に変換されるエネルギーは小さいためと考えられる。また、電極の温度上昇は時定数を有しているため、例えば完全な矩形波の交流電流波形で点灯されるときは、陽極期間の終わりの方、すなわち陰極に変わる直前に最大温度に到達する。ただし、電流波形の波高値が連続的あるいは段階的に変化する場合は極性が変わる直前ではなく、電流波形の波高値付近で最大温度に達する。さらに電極先端という意味は厳密な幾何学的先端を言っているのではなく、放電にさらされている部分で最も高温な場所を言い、それは概ね電極先端である。
図8は電極先端の最大到達温度と高圧放電ランプの電極形状の関係を示した図である。高圧放電ランプの電極形状は電極先端の最大到達温度によって、図のようにA型、B型、C型に分類される。このように高圧放電ランプの電極形状は点灯中に様々な形状に変化するのであり、ここに示した形状は厳密には一例に過ぎない。しかし、以下に述べる各電極形状の特徴をもとに分類すれば、点灯中の高圧放電ランプの電極形状はA型、B型、C型のいずれかの形状に分類されると言える。
A型の電極形状は、電極先端の最大到達温度が高い場合に見られる。電極先端の最大到達温度が高くなるのは、(1)ランプ電流が大きい場合、(2)ランプ電流が比較的大きく低周波で点灯される場合、(3)投射光学系などからの戻り光が電極先端に集中し電極温度が高くなり過ぎる場合などがある。(3)は不具合の一種であり、これが生じないように投射光学系を設計すべきである。さらに(1)と(2)が生じないように高圧放電ランプ点灯装置はランプ電流の上限値や点灯周波数を設計すべきである。A型の電極形状は、電極先端が広い部分に渡って融解(タングステンが液状化)している。電極先端の突起は融けて無くなり、そのために電極間隔が長くなり、投射型ディスプレイ装置の画面輝度効率が低下する。また電極先端の融解部分が大きいため、電極の消耗が激しい。一方、放電は電極先端で広がっており、アークスポット(陰極輝点)は拡散してぼやけたようになっているが、放電は安定しており、不具合の一つであるちらつきは発生しない。
B型の電極形状は、電極先端の最大到達温度が適度な場合に見られる。高圧放電ランプの点灯初期では通常B型の電極形状をしている。B型の電極形状では電極先端に突起が形成される。このため電極間隔が短くなり、投射型ディスプレイ装置の画面輝度効率が上昇するので最適な電極形状である。突起先端は融解しており、電極先端の最大到達温度が高いほど融解部分の大きさは大きくなり、電極消耗が激しくなる。電極の消耗は、電極先端の融解部分から内部のタングステンが吸い出されながら消耗しているように見える。そのため、電極先端の突起部分の位置の変化は小さいが、電極先端より後方の融解していない部分が徐々に痩せていくのが見られる。この電極の痩せ方は突起先端の融解部分が大きいほど激しく、従って突起先端の融解部分が小さいB型形状が最も適した電極形状である。放電は電極先端の突起に集中しており、アークスポットがはっきりと見られ、放電が安定しているため、ちらつきは発生しない。
C型の電極形状は、電極先端の最大到達温度が低くなり過ぎた場合に見られる。電極先端の最大到達温度が低くなりすぎるのは、(1)ランプ電流が小さい場合、(2)ランプ電流が比較的小さくて高周波で点灯される場合などがある。概ね寿命近くの高圧放電ランプは電極間隔が長くなっているため、ランプ電流が低下し、C型になっている場合が多い。C型の電極形状は電極先端に突起が無く、また電極先端に目立った融解部分は見られない。詳しく観察すると、アークスポットはA型のように広がっておらず集中しており、アークスポットの部分が僅かに融解しているのが見られる場合がある。C型の電極形状では電極先端に突起が無いため、電極間隔が短くなり、投射型ディスプレイ装置の画面輝度効率が低下する。また電極先端に突起が無いことから放電は不安定になり、アークスポットが電極上を移動し、不具合の一つであるちらつきが発生する。アークスポットの移動に伴い、電極先端が削られるように後退していき電極間隔が長くなる現象も見られる一方、アークスポットの移動に伴い電極が延びて電極間隔が短くなる現象も見られる。電極が延びる現象はハロゲンサイクルの働きによるものであると考えられる。
以上のように、点灯中の高圧放電ランプの電極形状にはA型、B型、C型の3種類があるが、B型は電極間隔が最も短く、投射型ディスプレイ装置の画面輝度効率を高くすることができ最適である。さらにB型の電極形状においても突起先端の融解部分が小さい形状が最適である。電極形状は図8に示すように電極先端の最大到達温度を制御することによって制御可能である。電極先端の最大到達温度を制御するには、ランプ電流の大きさを制御するという手段も可能であるが、高圧放電ランプの電力が変化するため投射型ディスプレイ装置の画面輝度が変化し、実用上問題がある。そこで我々は高圧放電ランプを点灯する周波数によって電極先端の最大到達温度を制御し、電極形状が制御可能なことを見出した。
図9は定格電力150Wの高圧放電ランプを450Hzと75Hzで点灯した場合の電極形状の図及びランプ電流波形と一方の電極について電極先端温度の変化を模式的に示したものである。なお、電極先端温度は測定したものではなく推定である。また周波数の切り替えは、450Hzから75Hz、あるいは75Hzから450Hzというように瞬時に変えて電極形状を観察した。図から分かるように450Hzと75Hzの電極形状を比較すると、450Hzの方が電極先端の突起の融解部分は小さく、75Hzの方が融解部分は大きくなっている。75Hzから450Hzに戻すと、突起の融解部分の後方が凝固し始め、突起部分が小さくなるのが観察される。この現象を説明するのが図中に示したランプ電流波形と電極先端の温度変化である。先述したように電極は陽極時に温度上昇し、陰極時に温度低下する。そして温度変化の時定数は、正確には測定できていないが、数10ミリ秒から数100ミリ秒と考えられる。従って、高周波より低周波の方が陽極時に到達する最大温度が高くなり、陰極時に到達する最小温度が低くなるものと考えられる。
なお、電極先端の平均温度は、周波数を変化させただけで、ランプ電力、ランプ電圧、ランプ電流に変化が無いため同じであると考えられる。図9に示すように低周波の75Hzの方が、高周波の450Hzより陽極時の最大到達温度が高くなるため融解部分の大きさが大きくなったものと考えられる。またここで周波数をさらに小さくし、5Hzにすると電極形状はA型に変化し、電極先端の突起は無くなった。
図9に示した450Hzで点灯した場合と75Hzで点灯した場合の電極形状は、いずれもB型の電極形状であり、電極先端の融解部分は450Hzの方が小さい。このようにランプ電流が十分大きい場合は、点灯周波数は450Hzなどの高い周波数が良く、これにより低い周波数で点灯するよりも電極先端の最大到達温度を低くできるため電極の消耗を抑制することができる。一方、我々はランプ電流が低い場合についても同様に実験を行った。すなわち寿命末期まで使用された高圧放電ランプにおいて周波数を変化させた。この高圧放電ランプは電極の消耗により電極間隔が長くなっており、150Wで点灯しても図9の例よりもランプ電流が小さい。この高圧放電ランプを450Hzで点灯したところ、アークスポットが電極上を移動しちらつきが発生した。電極形状は図8のC型として示したように先端が平坦になっている訳ではなく、凸凹した形状になっているが、先端に融解部分は見られず、やはりこれもC型の電極形状である。点灯周波数を450Hzから75Hzに低下させた。その結果、アークスポットの移動が停止し、ちらつきが無くなった。電極先端を観察すると、電極先端が小さく融解しておりB型の電極形状になっていることが確認できた。この現象も図9に示したランプ電流波形と電極温度の変化から容易に説明することができる。すなわち450Hzで点灯した場合は、電極先端の最大到達温度が低くなりすぎ、電極形状がC型となっていたが、75Hzにすることにより電極先端の最大到達温度が高くなり電極形状がB型になった。
先述したように我々が実験に使用した定格電力150Wの高圧放電ランプでは、Ib1=1.0A、Ib2=1.6Aとしたが、これは複数の高圧放電ランプについて以上のように電極形状を観察することで決定した。すなわち、周波数450Hzで点灯しながらランプ電流Ibを低下させていく。すると電極形状がB型からC型に変化するランプ電流Ib2’が存在する。このランプ電流Ib2’は個々の高圧放電ランプによって若干異なるが、その中で最も大きいIb2’より約0.1A大きい値をIb2とした。約0.1A大きい値とした理由はマージンを確保するためである。同様に周波数150Hzで点灯しながらランプ電流Ibを低下させていき、電極形状がB型からC型に変化するランプ電流Ib1’を測定し、測定した中で最も大きいランプ電流Ib1’より約0.1A大きい値をIb1とした。
本発明の高圧放電ランプ点灯装置による点灯方法の効果を確認するために寿命試験を行った。図10は従来の点灯方法と本発明の点灯方法の寿命試験結果を示す図である。いずれの寿命試験も同一仕様の定格電力150Wの高圧放電ランプを各10個ずつ用いて行った。図中の各測定点は、各高圧放電ランプの点灯開始時(0時間)での画面輝度を100%とし、従来の点灯方法と本発明の点灯方法のそれぞれ10個の高圧放電ランプの画面輝度の平均値をプロットしたものである。従来の点灯方法とは、定格電力150Wの高圧放電ランプを周波数150Hz一定、電力150W一定で点灯したものである。一方、本発明の点灯方法とは、先述したように、ランプ電流Ibが1.6A以上のときは450Hz、1.0A以上1.6A未満のときは150Hz、1.0A未満のときは75Hzで点灯したもので、電力は150W一定とした。高圧放電ランプの寿命は、投射型ディスプレイ装置の画面輝度が初期の50%まで低下した時間として定義されている。この定義によれば、従来の点灯方法では約4200時間で寿命となったが、本発明の点灯方法では約5800時間で寿命となり、約1.4倍の長寿命化を実現することができた。
以上のように本発明の実施の形態で述べた高圧放電ランプ点灯装置によれば、ランプ電流が大きい点灯初期には高周波で点灯することにより電極先端の突起の融解部分を小さくし電極の消耗を抑制し、ランプ電流が小さい寿命末期には低周波で点灯することにより電極先端の最大到達温度を上昇させて電極先端の突起を維持することができるため、高圧放電ランプの寿命を長寿命化することができる。
実施の形態2.
上記実施の形態1ではランプ電力一定で点灯し、ランプ電流Ibが点灯初期から寿命に至るまでの長期に渡り変化する場合について述べたが、本実施の形態ではランプ電力を能動的に変化させ、これに伴いランプ電流Ibが変化する場合について説明する。
上記実施の形態1ではランプ電力一定で点灯し、ランプ電流Ibが点灯初期から寿命に至るまでの長期に渡り変化する場合について述べたが、本実施の形態ではランプ電力を能動的に変化させ、これに伴いランプ電流Ibが変化する場合について説明する。
電力を能動的に変化させる用途には、ユーザーの指示により高圧放電ランプの電力を減少させて高圧放電ランプの光束を小さくして使用する、いわゆる「調光モード」で使用するものと、画像の輝度信号に応じて高圧放電ランプの電力を制御して高圧放電ランプの光束を制御する「電力ダイナミック制御」で使用するものがある。電力ダイナミック制御では、画像の輝度信号に応じて高圧放電ランプの光束を制御するため、暗い画面における黒の輝度をより低くすることができ、高コントラストが得られるといった利点がある。本実施の形態では電力ダイナミック制御について述べるが、調光モードであっても電力を制御する周期が非常に長いだけであって、本実施の形態の高圧放電ランプ点灯装置の動作は電力ダイナミック制御による場合と全く同じであり、同じものをそのまま使用することができる。
図11は電力ダイナミック制御の概念を説明する図である。図では時間に対する輝度信号の変化及び高圧放電ランプの変化を示している。輝度信号とは投射型ディスプレイ装置に画像を表示するための画像の輝度信号のことで、例えば、明るい画面では輝度信号は大きくなり、暗い画面では輝度信号は小さくなると言った、映像信号の信号処理により作成される。なお、本発明はこのような映像信号から信号処理により輝度信号を作成することには関係なく、輝度信号を元に作成された高圧放電ランプの電力制御信号に基づき要求された電力で、高圧放電ランプを安定且つ電極の消耗を抑制し長寿命に点灯可能な高圧放電ランプ点灯装置を提供するものである。図において輝度信号を破線、高圧放電ランプの電力を実線で示した。図に示すように輝度信号は画面の明るさに応じて0〜100%の間で変化する。一方、高圧放電ランプは点灯を維持できる範囲までしか電力を下げることができず、この例では40〜100%まで変化させるとした。
電力ダイナミック制御ではこのように、輝度信号に応じて高圧放電ランプの電力を制御するが、電力を変化させるとランプ電流も変化し、そのため電極先端の最大到達温度も変化する。本実施の形態は、このように高圧放電ランプの電力を変化させた場合においても、ランプ電流Ibを測定し、それに応じて周波数を制御するものである。高圧放電ランプの点灯装置は実施の形態1と同じく図3に示したものを使用することができる。
高圧放電ランプ点灯装置のコントロールユニット14は図示していない映像信号処理回路より輝度信号に応じた電力制御信号を受け取り、要求された電力となるようにDC−DCコンバータのスイッチ11aを制御し、要求された電力を高圧放電ランプ1に供給する。コントロールユニット14はランプ電流Ibを測定し、高圧放電ランプを点灯する周波数をランプ電流Ibの大きさに応じて予め定められた周波数に変更する。
本実施の形態においても実施の形態1と同様、ランプ電流Ibに応じて周波数を3段階に切り替える場合について説明する。ランプ電流Ibと周波数の関係は図5で示した通りであり、またランプ電流Ibを測定し、それによって点灯周波数を決定するフローチャートも図6に示した通りである。実施の形態1で述べた実験に用いた定格電力150Wの高圧放電ランプでは、本実施の形態の電力ダイナミック制御においても、ランプ電流Ibと周波数の関係は同じが最適であった。この理由は単純である。すなわち実施の形態1で、それぞれのランプ電流の閾値Ib1、Ib2を求めるとき、ある特定の周波数で点灯している状態でランプ電流Ibを徐々に減少させて電極形状が変化する閾値のランプ電流Ibを測定したが、ランプ電流Ibを減少させる(あるいは増加させる)ということはランプ電力も変化していることを意味するので、電力制御を輝度信号によりではなく、手動で行っていたに過ぎない。また、電極の最大到達温度は陽極時の最大到達温度であるが、この熱源は陽極に電子が流入することによって発生するジュール熱によるものである。従って、陽極時の最大到達温度はほぼランプ電流によって決まり、ランプ電力にはほとんど影響されない。すなわち、本発明で述べた、ランプ電流に応じて高圧放電ランプを点灯する周波数を制御する方法は、どのような電力で高圧放電ランプが点灯されていても適用できるといった点で利点がある。
上述したように電極先端の最大到達温度はランプ電流によって決まるものであり、ランプ電圧によっては何ら決まるものではない。従って、電力が変化した場合、測定したランプ電圧からランプ電流を計算し、それに応じて周波数を制御することは可能であるが、これはランプ電流に応じて周波数を制御しているに過ぎない。ランプ電圧は電力一定の条件で点灯されているときに、その変化から電極間距離を把握するには簡便で便利な方法であるが、電極温度がどうなっているかを把握するには不十分であり、ランプ電流を測定する必要がある。
図12は電力ダイナミック制御におけるランプ電流Ibと高圧放電ランプを点灯させる周波数の関係を示したものである。高圧放電ランプの電力が輝度信号に応じて変化するためランプ電流Ibも変化する。図6に示したフローチャートに基づき、ランプ電流IbがIb2以上の場合、周波数f3で点灯される。ランプ電流IbがIb1以上、Ib2未満の場合、周波数f2で点灯される。ランプ電流IbがIb1未満の場合、周波数f1で点灯される。
このような電力ダイナミック制御に適用した場合の効果について確認した。定格電力150Wの高圧放電ランプを周波数150Hz、80W(ランプ電流0.9A)で点灯したところ、電極温度が低下し電極形状がC型になったためにアークスポットが移動し、ちらつきの不具合が発生した。そこで周波数を75Hzにすると、ほぼ瞬時にアークスポットは停止し、ちらつきは無くなった。これは電極先端の最大到達温度が上昇し電極形状がB型になったためである。このときランプ電力、ランプ電流に変化は無く、ともに80W、0.9Aであった。
一方、周波数を再び75Hzから150Hzにしたところ、すぐにはアークスポットの移動によるちらつきは発生せず、約5分後にちらつきが発生した。これは電極先端の最大到達温度が急劇に低下しても、電極形状は瞬時にB型からC型に変化するわけではないためと考えられる。一方、周波数を150Hzから75Hzに低下させた場合、ちらつきが瞬時に無くなった理由については、電極先端の最大到達温度が上昇すると瞬時に電極先端が融解しアークスポットが安定し易い状態になったものと考えられ、周波数が変化した瞬間はB型とC型の中間的な電極形状となっていたのではないかと考えられる。
一方、ランプ電流が大きくなる場合については、図9に示したように周波数を高くすることで、電極先端突起の融解を小さくでき、電極の消耗を抑制することができる。これは例えば、電力150W、周波数150Hzで点灯している場合の電極先端突起の融解部分の大きさと同じ大きさの融解まで許されるとすれば、450Hzで点灯することにより150Wよりも大きな電力を投入することも可能であると解釈することができる。
例えば、150Hz一定で点灯する場合、電力の下限値は80Wではちらつきが発生するためこれより大きな電力までしか許されず、上限値は150Wである。一方、本実施の形態で示したようにランプ電流Ibに応じて、高圧放電ランプを点灯する周波数を制御すれば、電力の下限値は75Hzで点灯することにより80Wでもちらつきを発生せず、上限値は450Hzで点灯することにより、150Wより大きい電力で、電極先端の融解部分の大きさが150Hz、150Wで点灯した場合と同等の大きさすることができる。
すなわち周波数一定で電力ダイナミック制御を行うよりも、より広い範囲の電力制御が可能となり、これは投射型ディスプレイ装置のコントラストやピーク輝度を高め画質を向上させる上で有利になるといった効果も有する。
さて、ここでランプ電流Ibについて説明する。上記実施の形態1で述べたように、高圧放電ランプを点灯する周波数を制御するための、ランプ電流Ibは瞬時値ではなく、実効値または平均値である。実施の形態1のように電力一定で点灯する場合は、ランプ電流Ibの実効値または平均値が短い時間にそれほど大きく変動するものではないから、例えば電流計で測ったように、時定数がランプ電流波形の周期に対して十分大きいような測定手段により測定したとしても、ランプ電流Ibの実効値や平均値の変動よりも測定手段の時定数が十分小さく、一般的に考え得る実効値や平均値として考えてもよいが、電力ダイナミック制御においては電力が、電流計の時定数よりも小さい時間で変動する場合がある。このような場合のランプ電流Ibの実効値または平均値について説明する。
図13は図3で示した高圧放電ランプ点灯装置においてランプ電流Ibを測定する手段として、シャント抵抗を用い、シャント抵抗の端子電圧を抵抗RとコンデンサCからなるローパスフィルタ15を通し、ローパスフィルタ15の出力電圧(コンデンサCの端子電圧)により測定する場合を示したものである。なお、ランプ電流Ibを測定する手段としては、シャント抵抗を用いるもの限らず他の方式であってもよい。またローパスフィルタも抵抗RとコンデンサCからなる単純なものでなくてもよく、例えばオペアンプを用いたものであっても良いし、コントロールユニット14がある期間のランプ電流を測定しそれを平均化するといったソフトウェア的に処理するものであってもよい。図13に示したローパスフィルタにおいては、シャント抵抗は小さく、ローパスフィルタの抵抗Rは大きい方がよいことは言うまでもなく、またローパスフィルタの遮断周波数、すなわちランプ電流Ibの変化に対する出力電圧変化の時定数は、抵抗RとコンデンサCの大きさを選択することにより任意に調整できることも言うまでもない。
図14はランプ電流波形、シャント抵抗の端子電圧波形、及びローパスフィルタ15の出力電圧波形を示したものである。なお、ここではランプ電流波形は説明を簡単にするために周波数一定で示した。ローパスフィルタの出力電圧波形はローパスフィルタ15の遮断周波数が高い(時定数が小さい)場合(R×C:小)と、ローパスフィルタ15の遮断周波数が低い(時定数が大きい)場合(R×C:大)とについて示した。ローパスフィルタの時定数が高い場合であっても、低い場合であっても、周波数一定で電力ダイナミック制御を行うよりも電極形状をより適した形状に保つことができる効果を有するので、用途に合わせてローパスフィルタの遮断周波数を設計するのがよい。高圧放電ランプの電力を制御する信号に追随可能な時定数でランプ電流Ibを検出できることが、電極形状を最適に保つことができるため望ましいが、映像の視認性や他の部品との適合性など他の要素を考慮して設計を行えばよい。
なお、本実施の形態については電力ダイナミック制御に適用した場合についてその効果を述べたが、当然のことながら電力ダイナミック制御で使用した場合においても、使用時間が異なると、電極の消耗により電極間隔が異なってくる。すなわち点灯数10時間の電力50%の状態と、点灯数1000時間の電力50%の状態とでは、ランプ電流Ibの大きさも異なる。しかし、電極先端の最大到達温度はほとんどランプ電流のみによって決まるので、実施の形態1に示したように、ランプ電流Ibの大きさに応じて高圧放電ランプを点灯する周波数を制御することで電極形状を最適な形状に保ち、高圧放電ランプの寿命を長寿命化することができる。
実施の形態3.
上記実施の形態1、2ではランプ電流波形の形状については特に詳しく言及せず、図4や図14に示すように、極性が変わる直前にランプ電流波形の波高値がパルス状に大きくなる場合について示したが、本実施の形態ではランプ電流波形について説明する。
上記実施の形態1、2ではランプ電流波形の形状については特に詳しく言及せず、図4や図14に示すように、極性が変わる直前にランプ電流波形の波高値がパルス状に大きくなる場合について示したが、本実施の形態ではランプ電流波形について説明する。
上記実施の形態1、2ではランプ電流Ibは瞬時値ではなく、実効値または平均値を測定し、ランプ電流Ibに応じて高圧放電ランプを点灯させる周波数を制御することについて述べた。しかし、平均値が同じであってもランプ電流波形によって電極先端の最大到達温度は異なる。例えば、図15は異なる3種類のランプ電流波形を示したものである。これら3種類のランプ電流波形は、平均値は同じであるが、ランプ電流の極性が変わる直前に波高値がパルス状に大きくなっており、電極先端の最大到達温度は異なる。なお、このようなパルス状にランプ電流が大きくなっているものを重畳電流パルスと呼ぶ。この3種類の中では重畳電流パルスが最も大きい(c)が、電極先端の最大到達温度が最も高い。そこで、これら3種類の電流波形について実施の形態1で示したように周波数を450Hz、150Hz、75Hzとし、電極形状がB型からC型に変化するランプ電流Ib1、Ib2を測定したところ、それぞれ異なる値であり、(c)が最も小さい値であった。しかし、このようにランプ電流波形を定め、実施の形態1に示したような方法で、周波数を制御するランプ電流値を求めることができる。
図16は他のランプ電流波形を示したものである。内部に水銀を封入し、200気圧程度の超高圧の水銀による発光から白色光を得るタイプの高圧放電ランプでは、水銀の発光を利用しているため赤色のスペクトル成分が少なく、緑色のスペクトル成分が多い。このためカラーホイールによって三原色を時間分割して利用するタイプの投射型ディスプレイ装置では、色成分毎に高圧放電ランプの電力を制御して画面上でのホワイトバランスを良くするといった措置が為される場合がある。図16は例えば、そのような色成分毎に高圧放電ランプの電力を調整する場合のランプ電流波形を示したもので、図中のR、G、Bは、それぞれ赤、緑、青に対応していることを意味する。このようなランプ電流波形においては図に、「1周期」として示した期間が周期であり、周波数もこの定義に基づく。
図17は図16のようにランプ電流波形の瞬時値の大きさが色成分毎に異なる場合の周波数制御について示したものである。このようにすることでカラーホイールとの同期を取りながら、ランプ電流Ibに応じて周波数を制御することができる。なお、ランプ電流IbはカラーホイールのR、G、Bの期間を「1単位」とし、この単位においてランプ電流の実効値または平均値を測定し、この単位を基準として周波数を制御するのがよい。図17に示した電流波形においても、実施の形態1に示したのと同様の方法で、各周波数で電極形状がB型からC型に変化するランプ電流Ibの閾値を求め、ランプ電流Ibの大きさに応じて図6に基づく方法で周波数を制御することにより、周波数一定で点灯する場合に比べ約1.4倍の長寿命化を実現することができた。
1 高圧放電ランプ、2 石英バルブ、3 気密空間、4a、4b 電極、5a、5b モリブデン箔、6a、6b モリブデンリード線、7 リフレクタ、8 金属片、9 セメント、10 窓、11 DC−DCコンバータ、11a スイッチ、12 DC−ACインバータ、13 イグナイタ、14 コントロールユニット、15ローパスフィルタ、Sw1〜Sw4 スイッチ。
Claims (5)
- 内部にハロゲン物質が封入され、タングステンからなる一対の電極を有する発光管を備えた高圧放電ランプに、矩形の波形を有する交流電流を供給して高圧放電ランプを点灯する高圧放電ランプ点灯装置において、前記交流電流の電流値を検出する手段を有し、前記交流電流の電流値が小さいときには交流電流の周波数を低くし、前記交流電流の電流値が大きいときには交流電流の周波数を高くすることを特徴とする高圧放電ランプ点灯装置。
- 前記交流電流の電流値と周波数の関係は、交流電流の電流値の変化に応じて周波数が連続的に変化するように対応させたことを特徴とする請求項1記載の高圧放電ランプ点灯装置。
- 前記交流電流の電流値と周波数の関係は、交流電流の電流値の変化に応じて周波数がステップ状に変化するように対応させたことを特徴とする請求項1記載の高圧放電ランプ点灯装置。
- 前記周波数は35Hz以上、1000Hz以下で制御されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の高圧放電ランプ点灯装置。
- 請求項1〜4のいずれか1項記載の高圧放電ランプ点灯装置を用いた投射型ディスプレイ装置。
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