JP2014082917A - 回転電機及び回転電機の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】導体素線束の周囲を可撓性の絶縁被覆材により被覆して構成される線状導体を用いてコイルを構成する場合に、占積率を高めることが容易な回転電機の実現。
【解決手段】コアに巻き付けられてコイルを構成する線状導体4は、導体素線41を複数本集合させた導体素線束42の周囲を、可撓性の絶縁被覆材46により被覆して構成され、絶縁被覆材46は、外周面46Sに形成された溶着層Z1を備え、互いに隣接する線状導体4の部分同士が面接触するように、当該線状導体4の部分が断面変形した状態で、これらの線状導体4の接触面同士が、溶着層の溶融により溶着している回転電機。
【選択図】図4
【解決手段】コアに巻き付けられてコイルを構成する線状導体4は、導体素線41を複数本集合させた導体素線束42の周囲を、可撓性の絶縁被覆材46により被覆して構成され、絶縁被覆材46は、外周面46Sに形成された溶着層Z1を備え、互いに隣接する線状導体4の部分同士が面接触するように、当該線状導体4の部分が断面変形した状態で、これらの線状導体4の接触面同士が、溶着層の溶融により溶着している回転電機。
【選択図】図4
Description
本発明は、コアと、当該コアに巻き付けられてコイルを構成する線状導体と、を備えた回転電機、及び当該回転電機を製造するための回転電機の製造方法に関する。
上記のような回転電機に関する従来技術として、例えば特開2011−91943号公報(特許文献1)に記載された技術がある。以下、この背景技術の欄の説明では、〔〕内に特許文献1における部材名や符号を引用して説明する。特許文献1には、導体素線〔導体41〕を複数本集合させた導体素線束〔導体束44〕の周囲を変形可能な絶縁被覆材〔絶縁体43〕により被覆して構成される線状導体〔巻線42〕を、コアに巻装する技術が記載されている。特許文献1の構成では、当該文献の図8に示されるように、ティース毎に分割された分割コア〔ステータコア11〕に対して線状導体を扁平させた状態で巻きつけた後、成形型〔スライド型47〕を移動させることで、当該文献の図9に示されるように線状導体が分割コアに巻装された状態が実現される。
ところで、特許文献1の構成では、絶縁被覆材を弾性変形させることによって線状導体の断面形状を変形させて、線状導体を図5に示す状態から図8に示される状態に扁平化していると理解される。コイルの占積率を高めるためには、線状導体とスロットの内壁面との間の隙間が小さくなるように線状導体をスロット内に配置する必要があるが、特許文献1の構成では、絶縁被覆材に発生する復元力(張力)によって、線状導体の断面形状が元の状態に戻ろうとするため、線状導体の断面形状がスロットの内壁面の形状に合致した状態を保つことが困難となるおそれがある。
そこで、導体素線束の周囲を可撓性の絶縁被覆材により被覆して構成される線状導体を用いてコイルを構成する場合に、占積率を高めることが容易な技術の実現が望まれる。
本発明に係る、回転電機の特徴構成は、コアと、当該コアに巻き付けられてコイルを構成する線状導体と、を備えた回転電機であって、前記線状導体は、導体素線を複数本集合させた導体素線束の周囲を、可撓性の絶縁被覆材により被覆して構成され、前記絶縁被覆材は、外周面に形成された溶着層を備え、互いに隣接する前記線状導体の部分同士が面接触するように、当該線状導体の部分が断面変形した状態で、これらの前記線状導体の接触面同士が、前記溶着層の溶融により溶着している点にある。
本願において、「導体素線束の周囲」とは、当該導体素線束の延在方向に直交する平面での断面の周囲(外周)のことである。また、「可撓性」とは、曲げたり撓ませたりすることができる性質のことである。
この特徴構成によれば、互いに隣接する線状導体の部分同士が面接触した状態で、線状導体の接触面同士が溶着しているため、線状導体が断面変形した状態を適切に維持することができる。したがって、コイルの占積率が高くなるように線状導体を断面変形させた状態で線状導体の接触面同士を溶着させることにより、そのような線状導体の配置状態を適切に維持できる。従って、導体素線束の周囲を可撓性の絶縁被覆材により被覆して構成される線状導体を用いてコイルを構成する場合に、占積率を高めることが容易となる。
また、前記絶縁被覆材は絶縁層を備え、前記溶着層は、前記絶縁層に対して外周面側に形成されていると共に、前記絶縁層よりも融点が低い材料で構成され、前記線状導体が前記コアに巻き付けられて、前記絶縁層の融点である第一温度よりも低く前記溶着層の融点である第二温度よりも高い温度で加熱されたことにより前記線状導体の接触面同士が溶着している構成であると好適である。
この構成によれば、絶縁層を溶融させることなく、溶着層を溶融させて隣接する線状導体の部分同士を溶着させることができる。これにより、線状導体の接触面同士が、溶着層の溶融により溶着した後も、絶縁層は溶融せずに維持されるので、導体素線束の間の絶縁状態を良好に維持できる。
また、前記線状導体が前記コアに巻き付けられて、隣接する前記線状導体の部分同士が互いに密着する方向に加圧された加圧状態で、前記導体素線を構成する材料の再結晶温度である第三温度以上であって前記第二温度よりも低い温度で加熱された後、前記加圧状態から解放された状態で、前記第一温度よりも低く前記第二温度よりも高い温度で加熱されたことにより前記線状導体の接触面同士が溶着している構成であると好適である。
この構成によれば、隣接する前記線状導体の部分同士が互いに密着する方向に加圧された加圧状態で、導体素線の再結晶温度である第三温度以上の温度で加熱される。これにより、線状導体をコアに巻き付けたことにより生じた導体素線の内部応力が除去され、加圧状態から解放した後も、隣接する線状導体の部分同士が互いに密着した状態が維持される。また、この際、溶着層の融点である第二温度より低い温度で加熱される為、溶着層は基本的に溶融せず、溶着層よりも融点が高い絶縁層の軟化も抑制される。よって、加圧状態下であっても、絶縁層が薄くなったり破れたりすることを抑制でき、導体素線束の間の絶縁状態を良好に維持することができる。そして、加圧状態から解放された状態で、第一温度よりも低く第二温度よりも高い温度で線状導体が加熱されるが、導体素線の内部応力が除去されているので、隣接する線状導体の部分同士が互いに密着した状態が維持されたままで溶着層の溶融が行われる。よって、隣接する線状導体の部分同士を適切に溶着させることができる。また、この際、仮に絶縁層が軟化しても、加圧状態から解放されている為、絶縁層が薄くなったり破れたりすることを抑制でき、導体素線束の間の絶縁状態を良好に維持することができる。以上のように、上記特徴構成によれば、線状導体を用いてコイルを構成する場合に、導体素線束の間の絶縁状態を良好に維持しつつ、隣接する線状導体の部分同士が互いに密着した状態で溶着させることができるので、コイル占積率を高めることが容易となる。
また、前記線状導体が前記コアに巻き付けられて、隣接する前記線状導体の部分同士が互いに密着する方向に加圧された加圧状態で、前記第一温度よりも低く前記第二温度よりも高い温度で加熱されたことにより前記線状導体の接触面同士が溶着している構成であると好適である。
この構成によれば、隣接する線状導体の部分同士が互いに密着する方向に加圧された状態で、溶着層を溶融させるので、隣接する線状導体の部分同士は、溶着層が溶着する前に比べて、より近接した状態で溶着される。従って、この線状導体を用いてコイルを構成する場合に、占積率を更に高めることが容易となる。また、この際、絶縁層の融点である第一温度よりも低い温度で加熱される為、絶縁層の溶融は抑制される。よって、隣接する線状導体の接触面同士を溶着させつつ、導体素線束の間の絶縁状態を維持することができる。
また、前記コアは、円筒状のコア基準面の周方向に分散配置された複数のスロットを備え、前記スロットのそれぞれは、前記コア基準面の軸方向に延びるように形成され、前記線状導体の前記スロット内に配置される部分がコイル辺部であり、前記コイル辺部は、前記スロットのそれぞれに複数配置されており、前記スロットのそれぞれの内部における複数の前記コイル辺部は、前記コア基準面の径方向に加圧されて前記加圧状態とされた構成であると好適である。
本願において、「円筒状のコア基準面」とは、スロットの配置や構成に関して基準となる仮想的な面であり、例えば、コアの軸心と同一軸心の円筒状のコア内周面やコア外周面である。
この構成によれば、スロット内部において、複数のコイル辺部が、コア基準面の径方向に加圧されるので、溶着層が溶融する際には、複数のコイル辺部の接触面同士が溶着する。このため、コイル辺部とスロットの内壁面との隙間を小さく保つように複数のコイル辺部同士を溶着させることができる。従って、コイルの占積率を高めることが容易となる。
また、前記線状導体における、前記コアに対して当該コアの軸方向の外側に配置される部分がコイル渡り部であり、複数の前記コイル渡り部の集合であるコイルエンド部は、前記コアの径方向及び前記コアの軸方向の少なくとも一方に加圧されて前記加圧状態とされた構成であると好適である。
この構成によれば、コイルエンド部は、コアの径方向及びコアの軸方向の少なくとも一方に加圧されるので、溶着層が溶融する際には、複数のコイル渡り部の接触面同士が溶着する。これにより、コアの軸方向の外側に配置されるコイルエンド部の外形を、線状導体を溶着する前に比べて小さくすることができる。従って、回転電機の小型化を図ることができる。
また、前記コイルは、複数相のコイルユニットを有して構成されていると共に、当該複数相のコイルユニットを互いにスター結線するように接続する中性点を備え、前記中性点は、溶着シートを介して前記コイルエンド部に接するように配置され、前記溶着シートは、少なくとも表層部分が前記溶着層と同じ材料で構成され、前記中性点は、前記溶着シートの少なくとも前記表層部分の溶融により前記コイルエンド部に溶着している構成であると好適である。
この構成によれば、中性点は、溶着シートの溶融によりコイルエンド部に溶着して固定される。従って、コイルエンド部を構成する線状導体の溶着層を有効利用して、簡素な構成により中性点をコイルエンド部に固定することができる。また、溶着シートの少なくとも表層部分が溶着層と同じ材料で構成されているので、コイルエンド部を構成する線状導体の接触面同士を溶着層の溶融により溶着させる際に、同時に溶着シートも溶融させて中性点をコイルエンド部に固定することが可能となる。従って、回転電機の製造工程の簡略化を図ることが容易となる。
また、前記線状導体の前記コイルを構成する部分から引き出された前記線状導体の部分であって電源に接続される動力線部を更に備え、前記動力線部は、前記コイルエンド部に沿って配置される部分である隣接配置部分を有し、前記隣接配置部分の外周面が、前記絶縁被覆材とは別のカバー材により覆われ、前記コイルエンド部における前記線状導体の接触面同士が前記溶着層の溶融により溶着している状態で、前記カバー材が、前記溶着層と非溶着状態となっている構成であると好適である。
この構成とは異なり、動力線部の溶着層がコイルエンド部を構成する線状導体の溶着層と溶着している場合には、回転電機をケース等に組み付ける際などに、動力線部がコイル(コイルエンド部)に対して相対移動しようとして動力線部に負荷がかかり、動力線部又はコイルエンド部を構成する線状導体の絶縁被覆材が破損する可能性がある。しかし、この構成によれば、前記コイルエンド部における前記線状導体の接触面同士が溶着層の溶融により溶着している状態で、カバー材が前記溶着層と非溶着状態となっているので、回転電機をケース等に組み付ける際などに、動力線部がコイル(コイルエンド部)に対して相対移動することが許容される。従って、そのような組み付け作業等の容易性を高めることができると共に、動力線部に負荷がかかって動力線部又はコイルエンド部を構成する線状導体の絶縁被覆材が破損することを抑制できる。
本発明に係る、コアと、当該コアに巻き付けられてコイルを構成する線状導体と、を備えた回転電機を製造するための製造方法の特徴構成は、導体素線を複数本集合させた導体素線束の周囲を、可撓性の絶縁被覆材により被覆して構成され、前記絶縁被覆材の外周面に形成された溶着層を備えた前記線状導体を用意する工程と、互いに隣接する前記線状導体の部分同士が面接触するように、当該線状導体の部分が断面変形した状態で、これらの前記線状導体の接触面同士を、前記溶着層を溶融させることにより溶着させる溶着工程と、を有する点にある。
この特徴構成によれば、製造された回転電機において、互いに隣接する線状導体の部分同士が面接触するように、当該線状導体の部分が断面変形した状態を適切に維持することができる。したがって、コイルの占積率が高くなるように線状導体を断面変形させた状態で線状導体の接触面同士を溶着させた場合には、そのような線状導体の配置状態を適切に維持できる。従って、導体素線束の周囲を可撓性の絶縁被覆材により被覆して構成される線状導体を用いてコイルを構成する場合に、占積率を高めることが容易となる。
また、前記絶縁被覆材は絶縁層を備え、前記溶着層は、前記絶縁層に対して外周面側に形成されていると共に、前記絶縁層よりも融点が低い材料で構成され、前記溶着工程では、前記線状導体が前記コアに巻き付けられて、前記絶縁層の融点である第一温度よりも低く前記溶着層の融点である第二温度よりも高い温度で前記線状導体を加熱すると好適である。
この構成によれば、溶着工程では、絶縁層を溶融させることなく、溶着層を溶融させて隣接する線状導体の部分同士を溶着させることができる。こうして製造された回転電機においては、線状導体の接触面同士が、溶着層の溶融により溶着した後も、絶縁層は溶融せずに維持されるので、導体素線束の間の絶縁状態を良好に維持できる。
また、前記溶着工程は、前記線状導体が前記コアに巻き付けられて、隣接する前記線状導体の部分同士が互いに密着する方向に加圧された加圧状態で、前記導体素線を構成する材料の再結晶温度である第三温度以上であって前記第二温度よりも低い温度で加熱する第一工程と、前記第一工程における前記加圧状態から解放された状態で、前記第一温度よりも低く前記第二温度よりも高い温度で加熱する第二工程と、を有すると好適である。
この構成によれば、溶着工程における第一工程では、隣接する前記線状導体の部分同士が互いに密着する方向に加圧された加圧状態で、導体素線の再結晶温度である第三温度以上の温度で加熱する。これにより、線状導体をコアに巻き付けたことにより生じる導体素線の内部応力を除去することができ、加圧状態から解放した後も、隣接する線状導体の部分同士が互いに密着した状態を維持することができる。また、この際、溶着層の融点である第二温度より低い温度で加熱する為、溶着層は基本的に溶融せず、溶着層よりも融点が高い絶縁層の軟化も抑制できる。よって、加圧状態下であっても、絶縁層が薄くなったり破れたりすることを抑制でき、導体素線束の間の絶縁状態を良好に維持することができる。そして、溶着工程における第二工程では、加圧状態から解放された状態で、第一温度よりも低く第二温度よりも高い温度で線状導体を加熱するが、第一工程において導体素線の内部応力は除去されているので、隣接する線状導体の部分同士が互いに密着した状態を維持したままで溶着層の溶融を行うことができる。よって、隣接する線状導体の部分同士を適切に溶着させることができる。また、この際、仮に絶縁層が軟化しても、加圧状態からは解放されているので、絶縁層が薄くなったり破れたりすることを抑制でき、導体素線束の間の絶縁状態を良好に維持することができる。以上のように、上記特徴構成によれば、線状導体を用いてコイルを構成する場合に、導体素線束の間の絶縁状態を良好に維持しつつ、隣接する線状導体の部分同士を互いに密着した状態で溶着することができるので、コイル占積率を高めることが容易となる。
また、前記溶着工程では、前記線状導体が前記コアに巻き付けられて、隣接する前記線状導体の部分同士が互いに密着する方向に加圧された加圧状態で、前記第一温度よりも低く前記第二温度よりも高い温度で加熱すると好適である。
この構成によれば、隣接する線状導体の部分同士が互いに密着する方向に加圧された状態で、溶着層を溶融させるので、隣接する線状導体の部分同士を、溶着層が溶着する前に比べて、より近接した状態で溶着させることができる。従って、この線状導体を用いてコイルを構成する場合に、占積率を更に高めることが容易となる。また、この際、絶縁層の融点である第一温度よりも低い温度で加熱する為、絶縁層の溶融を抑制することができる。よって、隣接する線状導体の接触面同士を溶着させつつ、導体素線束の間の絶縁状態を維持することができる。
また、前記線状導体の前記スロット内に配置される部分がコイル辺部であり、円筒状のコア基準面の周方向に分散配置された複数のスロットを備えると共に前記スロットのそれぞれが前記コア基準面の軸方向に延びるように形成された前記コアと、前記コイル辺部が前記スロットのそれぞれに複数配置されたコイルと、を用意する工程を更に備え、前記溶着工程では、前記スロットのそれぞれの内部における複数の前記コイル辺部を、前記コア基準面の径方向に加圧することで前記加圧状態とすると好適である。
この構成によれば、溶着工程では、スロット内部における複数のコイル辺部を、コア基準面の径方向に加圧することで加圧状態とする為、溶着層が溶融する際には、複数のコイル辺部の接触面同士が溶着する。このように製造された回転電機においては、コイル辺部とスロットの内壁面との隙間を小さく保った状態で複数のコイル辺部がスロット内に配置されることになる。従って、コイルの占積率を高めることが容易となる。
また、前記線状導体における、前記コアに対して当該コアの軸方向の外側に配置される部分がコイル渡り部であり、前記溶着工程では、複数の前記コイル渡り部の集合であるコイルエンド部を、前記コアの径方向及び前記コアの軸方向の少なくとも一方に加圧することで前記加圧状態とすると好適である。
この構成によれば、溶着工程では、コイルエンド部を、コアの径方向及びコアの軸方向の少なくとも一方に加圧することで加圧状態とする為、溶着層が溶融する際には、複数のコイル渡り部の接触面同士が溶着している。これにより、製造された回転電機においては、コアの軸方向の外側に配置されるコイルエンド部の外形を、線状導体を溶着する前に比べて小さくすることができる。従って、回転電機の小型化を図ることができる。
また、前記コイルは、複数相のコイルユニットを有して構成されていると共に、当該複数相のコイルユニットを互いにスター結線するように接続する中性点を備え、少なくとも表層部分が前記溶着層と同じ材料で構成された溶着シートを用意する工程と、前記中性点を、前記溶着シートを介して前記コイルエンド部に接するように配置する工程と、を更に有し、前記溶着工程では、前記溶着シートの少なくとも前記表層部分の溶融によって、前記コイルエンド部に前記中性点を溶着させると好適である。
この構成によれば、溶着工程において、中性点を、溶着シートの溶融によりコイルエンド部に溶着して固定することができる。従って、コイルエンド部を構成する線状導体の溶着層を有効利用して、簡素な構成により中性点をコイルエンド部に固定することができる。また、溶着シートの少なくとも表層部分が溶着層と同じ材料で構成されているので、コイルエンド部を構成する線状導体の接触面同士を溶着層の溶融により溶着させる際に、同時に溶着シートも溶融させて中性点をコイルエンド部に固定することが可能となる。従って、回転電機の製造工程を簡略化することが容易となる。
また、前記回転電機は、前記線状導体の前記コイルを構成する部分から引き出された前記線状導体の部分であって電源に接続される動力線部を更に備え、前記動力線部は、前記コイルエンド部に沿って配置される部分である隣接配置部分を有し、前記絶縁被覆材とは別に、前記隣接配置部分の外周面を覆うカバー材を用意する工程を更に有し、前記溶着工程では、前記カバー材を前記溶着層と非溶着状態に維持しつつ、前記コイルエンド部における前記線状導体の接触面同士を前記溶着層の溶融により溶着させると好適である。
この構成とは異なり、例えば、動力線部の溶着層とコイルエンド部を構成する線状導体の溶着層とを溶着状態に維持している場合には、回転電機をケース等に組み付ける際などに、動力線部がコイル(コイルエンド部)に対して相対移動しようとして動力線部に負荷がかかり、動力線部又はコイルエンド部を構成する線状導体の絶縁被覆材が破損する可能性がある。しかし、この構成によれば、溶着工程では、カバー材を溶着層と非溶着状態に維持した状態で、前記コイルエンド部における前記線状導体の接触面同士を溶着層の溶融により溶着するので、動力線部とコイルエンド部とが分離した状態となる。従って、回転電機をケース等に組み付ける際などに、動力線部がコイル(コイルエンド部)に対して相対移動することを許容し、そのような組み付け作業等の容易性を高めることができると共に、動力線部に負荷がかかって動力線部又はコイルエンド部を構成する線状導体の絶縁被覆材が破損することを抑制することができる。
本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。ここでは、本発明を、インナロータ型の回転電機100(図1参照)に適用した場合を例として説明する。本実施形態では、回転電機100は回転界磁型の回転電機であり、コイル3の巻き付け対象のコアは、ステータ1のコア(ステータコア2)である。すなわち、ステータコア2が本発明における「コア」に相当する。本明細書では、回転電機は、モータ(電動機)、ジェネレータ(発電機)、及び必要に応じてモータ及びジェネレータの双方の機能を果たすモータ・ジェネレータのいずれをも含む概念として用いている。
以下の説明では、特に区別して明記している場合を除き、「軸方向L」、「周方向C」、及び「径方向R」は、円筒状のコア基準面21(図1、図2参照)の軸心を基準として定義している。「径第一方向R1」及び「径第二方向R2」は、それぞれ、コア基準面21の径方向Rの内側へ向かう方向及び外側へ向かう方向を表す。本明細書では、各部材についての配置方向や配置位置等に関する用語は、誤差(製造上許容され得る程度の誤差)による差異がある状態を含む概念として用いている。
1.回転電機の全体構成
本実施形態に係る回転電機100の全体構成について説明する。図1に示すように、回転電機100は、ステータ1と、このステータ1の径第一方向R1側(すなわち径方向内側)に回転可能に設けられたロータ6とを備えている。ステータ1は、ステータコア2と、このステータコア2に巻き付けられるコイル3とを備えている。ステータコア2は、磁性材料を用いて形成されている。図1では、煩雑さを避けるために、ステータコア2から軸方向Lに突出するコイル3の部分であるコイルエンド部73については、一対のスロット22から突出する部分のみを示し、他の部分については図示を省略している。図1では、残りのスロット22の軸方向Lの端部には、スロット22内に配置されるコイル3の部分であるコイル辺部71の断面が表れている。また、図1では、ロータ6を簡略化して示すと共に、ロータ6の一部を透視的に描いている。
本実施形態に係る回転電機100の全体構成について説明する。図1に示すように、回転電機100は、ステータ1と、このステータ1の径第一方向R1側(すなわち径方向内側)に回転可能に設けられたロータ6とを備えている。ステータ1は、ステータコア2と、このステータコア2に巻き付けられるコイル3とを備えている。ステータコア2は、磁性材料を用いて形成されている。図1では、煩雑さを避けるために、ステータコア2から軸方向Lに突出するコイル3の部分であるコイルエンド部73については、一対のスロット22から突出する部分のみを示し、他の部分については図示を省略している。図1では、残りのスロット22の軸方向Lの端部には、スロット22内に配置されるコイル3の部分であるコイル辺部71の断面が表れている。また、図1では、ロータ6を簡略化して示すと共に、ロータ6の一部を透視的に描いている。
ステータコア2は、少なくとも周方向Cにおいて一体に形成されている。すなわち、ステータコア2は、周方向Cに分断された部分を周方向Cに接合する周方向接合部を有さない。周方向接合部は、例えば、直方体状のコアを曲げて円筒状のコアを構成する場合や、複数の分割コアを周方向に並べて円筒状のコアを構成する場合において、互いに隣接する周方向の端面同士を接合するために形成される。本実施形態では、ステータコア2は、周方向C及び径方向Rにおいて一体に形成され、軸方向Lにおいては一体に形成されていない。すなわち、ステータコア2は、軸方向Lに分断された部分を軸方向Lに接合する軸方向接合部を有している。本実施形態では、ステータコア2は、図1に示すように、円環板状の磁性体板7を軸方向Lに複数積層して形成されている。積層状態にある磁性体板7は、溶接又はカシメ等により、互いに接合されており、軸方向Lに隣接する磁性体板7同士の接合部が、上記の軸方向接合部を構成する。磁性体板7は、例えば、電磁鋼板(例えばケイ素鋼板等)を用いることができる。
ステータコア2には、スロット22が周方向Cに複数分散配置されている。周方向Cに隣接する2つのスロット22の間には、ティース23が形成されている。上述した「円筒状のコア基準面21」は、スロット22の配置や構成に関して基準となる仮想的な面であり、本実施形態では、複数(スロット22と同数)のティース23の径第一方向R1側の端面を含む円筒状の仮想面(コア内周面)をコア基準面21としている。ステータコア2の径第二方向R2側の面(コア外周面)等をコア基準面21としても良い。
複数のスロット22は、周方向Cに沿って一定間隔で分散配置されている。各スロット22は、軸方向Lに延びると共に径第一方向R1側に開口部22bを有するように形成されている。スロット22は、ステータコア2を軸方向Lに貫通するように形成されている。また、スロット22は、コア基準面21の軸心から放射状に径方向Rに延びるように形成されている。本実施形態では、図2に示すように、開口部22bの周方向Cの幅である開口幅W1が、スロット22の内部(開口部22bより径第二方向R2側の部分)の周方向Cの幅である内部幅W2よりも狭くなるように、スロット22が形成されている。すなわち、本実施形態では、スロット22は、セミオープンスロットである。
本実施形態では、図2に示すように、各ティース23は、周方向Cの互いに反対側を向く2つのティース側面23aが互いに平行な平行ティースであり、各スロット22は、周方向Cの幅が径第二方向R2側に向かうに従って次第に広くなるように形成されている。すなわち、各スロット22は、径方向Rの位置に応じて、周方向Cの幅であるスロット幅Wが異なるように形成されている。また、本実施形態では、各ティース23の先端部には、ティース側面23aの他の部分に対して周方向Cに突出する周方向突出部23bが形成されており、スロット22の開口部22bは、周方向突出部23bにより周方向Cの両側を挟まれた空間として形成されている。図2に示すように、本実施形態では、ステータコア2におけるスロット22の内面(ティース側面23aを含む部分)には、スロット絶縁部24が形成されている。スロット絶縁部24の内面によりスロット内壁面22aが形成されている。そのため、本実施形態では、スロット22のスロット幅W(開口幅W1及び内部幅W2)は、ティース23の周方向Cの幅や配設ピッチに加えて、スロット絶縁部24の厚みにも応じて定まる。スロット絶縁部24は、例えば、絶縁粉体塗装により形成され、或いは、スロット絶縁シートにより形成される。
回転電機100は、本実施形態では、三相交流(多相交流の一例)で駆動される三相交流電動機又は三相交流発電機である。コイル3は、複数相のコイルユニットを有して構成されていると共に、当該複数相のコイルユニットを互いにスター結線するように接続する中性点74を備える。本実施形態では、コイル3は、U相、V相、W相の三相のそれぞれに対応したコイルユニット(U相コイルユニット、V相コイルユニット、W相コイルユニット)を備えている。そして、コイル3は、U相コイルユニット、V相コイルユニット、W相コイルユニットのそれぞれの一端を互いにスター結線するように電気的に接続する中性点74を備える。また、U相コイルユニット、V相コイルユニット、W相コイルユニットのそれぞれの中性点74とは反対側の端部は動力線部44とされ、接続端子等を介して、例えばバッテリ等の電源(図示せず)に接続される。ステータコア2には、U相用、V相用、及びW相用のスロット22が、周方向Cに沿って繰り返し現れるように配置されている。詳細は省略するが、例えば、重ね巻及び波巻のいずれかの巻き方により線状導体4をステータコア2に巻き付けて、コイル3を構成することができる。また、その際、集中巻としてもよいし、分布巻としてもよい。
2.線状導体の構成
次に、本実施形態に係る線状導体4の構成について説明する。線状導体4はコイル3を構成する導体であり、線状導体4をステータコア2に巻き付けることにより、コイル3が構成されている。本実施形態では、説明を簡略化する為に、各相コイルユニットは1本の線状導体4から構成されているものとする。すなわち、本実施形態では、コイル3は、U相コイルユニット用の線状導体4と、V相コイルユニット用の線状導体4と、W相コイルユニット用の線状導体4との3本の線状導体4から構成されているものとする。そして、各線状導体4は、ステータコア2に巻き付けられた部分であってコイルを構成するコイル構成部43と、当該コイル構成部43から引き出された部分であって電源(図示せず)に接続される動力線部44(図15参照)とを備える。すなわち、本実施形態では、コイル3は、3本の線状導体4のコイル構成部43により構成されている。また、図3に示すように、線状導体4は、可撓性の裸導体素線41を複数本集合させた裸導体素線束42の周囲を、可撓性の絶縁被覆材46により被覆して構成されている。ここで、「裸導体素線」とは、表面が絶縁体により覆われていないむき出しの導体素線のことである。従って、樹脂等の電気的絶縁材料による被覆や被膜が表面に設けられた導体素線は、裸導体素線には含まれない。一方、表面に酸化皮膜が形成された導体素線は、裸導体素線に含まれる。本実施形態では、裸導体素線41が本発明における「導体素線」に相当し、裸導体素線束42が本発明における「導体素線束」に相当する。
次に、本実施形態に係る線状導体4の構成について説明する。線状導体4はコイル3を構成する導体であり、線状導体4をステータコア2に巻き付けることにより、コイル3が構成されている。本実施形態では、説明を簡略化する為に、各相コイルユニットは1本の線状導体4から構成されているものとする。すなわち、本実施形態では、コイル3は、U相コイルユニット用の線状導体4と、V相コイルユニット用の線状導体4と、W相コイルユニット用の線状導体4との3本の線状導体4から構成されているものとする。そして、各線状導体4は、ステータコア2に巻き付けられた部分であってコイルを構成するコイル構成部43と、当該コイル構成部43から引き出された部分であって電源(図示せず)に接続される動力線部44(図15参照)とを備える。すなわち、本実施形態では、コイル3は、3本の線状導体4のコイル構成部43により構成されている。また、図3に示すように、線状導体4は、可撓性の裸導体素線41を複数本集合させた裸導体素線束42の周囲を、可撓性の絶縁被覆材46により被覆して構成されている。ここで、「裸導体素線」とは、表面が絶縁体により覆われていないむき出しの導体素線のことである。従って、樹脂等の電気的絶縁材料による被覆や被膜が表面に設けられた導体素線は、裸導体素線には含まれない。一方、表面に酸化皮膜が形成された導体素線は、裸導体素線に含まれる。本実施形態では、裸導体素線41が本発明における「導体素線」に相当し、裸導体素線束42が本発明における「導体素線束」に相当する。
裸導体素線41は、線状の裸導体であり、例えば、銅やアルミニウム等により構成される。本実施形態では、裸導体素線41は、銅により構成されている。本実施形態では、裸導体素線41は、延在方向に直交する断面の形状が円形状であり、例えば直径(素線径)が0.2mm以下の素線を裸導体素線41として用いることができる。裸導体素線41の表面は絶縁体によって覆われておらず、導体表面がむき出しになっている。なお、ここでいう「絶縁体」には、導体の表面が酸化することにより形成される酸化皮膜は含まない。このような裸導体素線41が複数集合することにより、裸導体素線束42が構成されている。裸導体素線束42は、複数の裸導体素線41を撚って束ねることより構成され、或いは、複数の裸導体素線41を撚ることなく束ねることにより構成される。
絶縁被覆材46としては、可撓性を有すると共に電気的絶縁性を有する材料が用いられ、例えば、フッ素系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリフェニレンスルファイド等の各種合成樹脂が用いられる。ここで、「可撓性」とは、曲げたり撓ませたりすることができる性質のことである。また、本実施形態に係る絶縁被覆材46は、線状導体4を曲げたり撓ませたりしてステータコア2に巻き付けるために必要十分な伸縮性を有しておれば良く、伸縮性はあまり高くなくても良い。ここでは特に、絶縁被覆材46の径方向における伸縮性は特に要求されない。例えば、外力が作用していない状態での真円状態における周長を基準とする伸長後の周長が130%以下、その中でも120%以下、更には110%以下に抑えられるような材料を用いて、絶縁被覆材46を構成することができる。このような絶縁被覆材46は、本実施形態では、裸導体素線束42の周囲を包む筒状に形成された可撓性のシート状材料によって構成されている。
図4に示すように、絶縁被覆材46は、外周面46Sに形成された溶着層Z1を備えている。本実施形態では、更に、絶縁被覆材46は、溶着層Z1に対して径方向内側に絶縁層Z2を備えている。言い換えると、溶着層Z1は、絶縁層Z2に対して外周面側に形成されている。このように、本実施形態に係る絶縁被覆材46は、溶着層Z1と絶縁層Z2とを径方向に積層した二層構造とされている。溶着層Z1と絶縁層Z2とは、互いに特性の異なる合成樹脂により構成されており、溶着層Z1は、絶縁層Z2よりも融点が低い材料で構成されている。これにより、溶着層Z1は、加熱された際に絶縁層Z2が溶融しない温度で溶融することにより、互いに隣接する線状導体4の接触面同士を溶着させる機能を果たす。一方、絶縁層Z2は、溶着層Z1が溶融する温度でも溶融しないことにより、裸導体素線束42の周囲を包む被覆を維持し、互いに隣接する線状導体4の裸導体素線束42同士が接触しないように電気的絶縁を確保する機能を果たす。本実施形態では、溶着層Z1は、厚さ40μmのETFE(エチレンと4フッ化エチレンとの共重合体フッ素樹脂)被膜であり、絶縁層Z2は、厚さ60μmのFEP(テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体フッ素樹脂)被膜である。更に、本実施形態では、溶着層Z1を構成する樹脂材料及び絶縁層Z2を構成する樹脂材料の組成を調整することにより、溶着層Z1の融点を摂氏230度付近(例えば225〜235℃)とし、絶縁層Z2
の融点を摂氏260度付近(例えば255〜265℃)としている。
の融点を摂氏260度付近(例えば255〜265℃)としている。
本実施形態では、溶着層Z1と絶縁層Z2との融点の差は摂氏で約30度(20〜40度)となっている。ここで、溶着層Z1がETFEにて形成され、絶縁層Z2がFEPで形成される場合、溶着層Z1と絶縁層Z2との融点の差が大き過ぎると、溶着層Z1と絶縁層Z2とが良好に接着しない場合がある。そのため、溶着層Z1と絶縁層Z2のそれぞれを構成する材料の組成は、溶着層Z1の融点と絶縁層Z2の融点とが、予め定められた融点温度差となるように構成することが好ましい。ここで融点温度差としては、絶縁層Z2を溶融させずに溶着層Z1のみを溶融させるために、線状導体4を加熱する加熱装置において制御可能な温度の誤差範囲の大きさに、所定の余裕値を加算した温度とすると好適である。
本実施形態に係る線状導体4では、絶縁被覆材46の径方向内側に被覆内隙間Gが存在するので、この被覆内隙間Gの部分において裸導体素線41どうしが線状導体4の径方向及び周方向の少なくとも一方に相対移動可能となっている。特に、絶縁被覆材46が真円状態である場合には、被覆内隙間Gが相対的に大きく、絶縁被覆材46の中で裸導体素線41どうしの相対移動が容易である。これに加えて、絶縁被覆材46は可撓性を有しているため、当該絶縁被覆材46自体は容易に変形可能となっている。これにより、線状導体4(裸導体素線束42及び絶縁被覆材46)は、延在直交平面Pでの断面形状を比較的自由に変形可能な構成となっている(図6及び図7を参照)。すなわち、絶縁被覆材46の変形に追従して、その内部の被覆内隙間Gの部分において裸導体素線41どうしが相対移動することで、線状導体4の断面形状を容易に変形可能である。
3.コイルの配置構成
次に、本実施形態に係るコイル3の配置構成について説明する。コイル3を構成する3本の線状導体4のコイル構成部43は、図1及び図2に示すように、スロット22内に配置されるコイル辺部71と、ステータコア2の軸方向Lの外側において2つのコイル辺部71同士を接続するコイル渡り部72と、を備えている。コイル辺部71は、軸方向Lに平行な直線状に形成されている。コイル渡り部72は、ステータコア2の軸方向Lの外側に配置されてコイルエンド部73を構成し、図1に示す例では、互いに6スロットピッチ離れて配置された2つのコイル辺部71同士を接続するように配置されている。コイル渡り部72は、線状導体4の延在方向Aがステータコア2の軸方向Lに沿う方向からステータコア2の周方向Cに沿う方向へ変化する部分、線状導体4の延在方向Aがステータコア2の周方向Cに沿う部分、線状導体4の延在方向Aがステータコア2の周方向Cに沿う方向からステータコア2の軸方向Lに沿う方向へ変化する部分を備え、これらの部分が線状導体4の延在方向Aに沿って連続することで、2つのコイル辺部71同士を接続している。そして、複数のコイル渡り部72の集合によりコイルエンド部73が構成される。
次に、本実施形態に係るコイル3の配置構成について説明する。コイル3を構成する3本の線状導体4のコイル構成部43は、図1及び図2に示すように、スロット22内に配置されるコイル辺部71と、ステータコア2の軸方向Lの外側において2つのコイル辺部71同士を接続するコイル渡り部72と、を備えている。コイル辺部71は、軸方向Lに平行な直線状に形成されている。コイル渡り部72は、ステータコア2の軸方向Lの外側に配置されてコイルエンド部73を構成し、図1に示す例では、互いに6スロットピッチ離れて配置された2つのコイル辺部71同士を接続するように配置されている。コイル渡り部72は、線状導体4の延在方向Aがステータコア2の軸方向Lに沿う方向からステータコア2の周方向Cに沿う方向へ変化する部分、線状導体4の延在方向Aがステータコア2の周方向Cに沿う部分、線状導体4の延在方向Aがステータコア2の周方向Cに沿う方向からステータコア2の軸方向Lに沿う方向へ変化する部分を備え、これらの部分が線状導体4の延在方向Aに沿って連続することで、2つのコイル辺部71同士を接続している。そして、複数のコイル渡り部72の集合によりコイルエンド部73が構成される。
図2に示すように、コイル辺部71は、スロット22の内部において、複数配置されている。具体的には、コイル辺部71は、周方向Cの同じ位置において径方向Rに沿って一列に並ぶように、複数の層Bに分かれて配置されている。ここで、層Bは、スロット22内における各コイル辺部71の径方向Rの位置(配置領域)を表す。本実施形態では、コイル辺部71は、奇数個の層Bに分かれて配置されており、具体的には、5個の層Bに分かれて配置されている。以下では、スロット22内の最も径第二方向R2側の層Bを第一層B1とし、そこから径第一方向R1側に向かって順に、第二層B2、第三層B3、第四層B4、第五層B5とする。本実施形態では、コイル3を構成する線状導体4は、複数のコイル辺部71が連続する一本の線状導体4に含まれるように、ステータコア2に巻き付けられている。すなわち、本実施形態では、後述する加圧・加熱工程#02による加圧の対象となる加圧対象部位は、連続する一本の線状導体4に複数含まれる。ここで、線状導体4について「連続」とは、裸導体素線41或いは絶縁被覆材46が継ぎ目なく延在方向
Aに一体に形成されていることを意味する。
Aに一体に形成されていることを意味する。
図2に示すように、各コイル辺部71の直交断面の形状は、スロット22の内壁面に面接触する(本例では、スロット絶縁部24を介して面接触する)接触面を有すると共に、径方向Rに隣り合うコイル辺部71の外周面に面接触する接触面を有する矩形状となっている。これにより、コイル辺部71とスロット22の内壁面との間の隙間と、コイル辺部71同士の間の隙間との双方を小さく抑えることができ、結果、コイル3の占積率を高めることが可能となっている。
各スロット22は、径方向Rの位置に応じてスロット幅Wが異なるように形成されており、スロット22の形状は、層Bに応じて異なる。よって、同一のスロット22内に配置される複数のコイル辺部71は、直交断面の形状が互いに異なる。本実施形態では、図2に示すように、各スロット22は、スロット幅Wが径第二方向R2側に向かうに従って次第に広くなるように形成されている。また、スロット22内に配置された複数本のコイル辺部71の全部が、当該スロット22内で径方向Rに沿って一列に並ぶように配置されており、隣り合うコイル辺部71同士の接触面が周方向C及び軸方向Lに延びるように形成されている。
4.隣接する線状導体4同士が溶着した構成
本実施形態に係る回転電機100のコイル3を構成する線状導体4(コイル構成部43)は、互いに隣接する線状導体4の部分同士が、溶着層Z1の溶融により溶着している。すなわち、例えば図7に示すように、互いに隣接する線状導体4の部分同士が面接触するように、当該線状導体4の部分が断面変形した状態で、これらの線状導体4の接触面S同士が、例えば図2に示すように、溶着層Z1の溶融により溶着している。ここでは、図1に示すように、線状導体4がステータコア2に巻き付けられて、絶縁層Z2の融点(第一温度)よりも低く溶着層Z1の融点(第二温度)よりも高い温度で加熱されたことにより線状導体4の接触面S同士が溶着している。なお、本実施形態では、線状導体4がステータコア2に巻き付けられて、隣接する線状導体4の部分同士が互いに密着する方向に加圧された加圧状態で加熱されたことにより線状導体4の接触面S同士が溶着している。
本実施形態に係る回転電機100のコイル3を構成する線状導体4(コイル構成部43)は、互いに隣接する線状導体4の部分同士が、溶着層Z1の溶融により溶着している。すなわち、例えば図7に示すように、互いに隣接する線状導体4の部分同士が面接触するように、当該線状導体4の部分が断面変形した状態で、これらの線状導体4の接触面S同士が、例えば図2に示すように、溶着層Z1の溶融により溶着している。ここでは、図1に示すように、線状導体4がステータコア2に巻き付けられて、絶縁層Z2の融点(第一温度)よりも低く溶着層Z1の融点(第二温度)よりも高い温度で加熱されたことにより線状導体4の接触面S同士が溶着している。なお、本実施形態では、線状導体4がステータコア2に巻き付けられて、隣接する線状導体4の部分同士が互いに密着する方向に加圧された加圧状態で加熱されたことにより線状導体4の接触面S同士が溶着している。
ここで、コイル3を構成する線状導体4の各部分の内、コイル辺部71及びコイル渡り部72のいずれにおいても、線状導体4が互いに隣接する部分を有することは有り得る。ところで、コイル3の占積率を高めるためには、特に、コイル辺部71をスロット22内に高密度に配置することが望ましい。そこで、本実施形態では、少なくとも、互いに隣接するコイル辺部71同士が面接触するように、当該コイル辺部71が断面変形した状態で、これらのコイル辺部71の接触面71a(接触面Sの一例)同士が、溶着層Z1の溶融により溶着している。この際、スロット22のそれぞれの内部における複数のコイル辺部71は、径方向Rに加圧された状態で加熱されたことによりコイル辺部71の接触面71a同士が溶着している。また、本実施形態では、各コイル辺部71は、更に、スロット22内において接触するスロット内壁面22aに対しても面接触するように断面変形した状態で、溶着層Z1の溶融によりスロット内壁面22aにも溶着している。このようなスロット内壁面22aに対する面接触及び溶着も、スロット22のそれぞれの内部における複数のコイル辺部71が、径方向Rに加圧された状態で加熱されたことにより実現される。本実施形態では、各スロット22は、径第一方向R1側(すなわち径方向内側)に開口しているので、スロット22内における複数のコイル辺部71は、当該径第一方向R1側から径方向Rに加圧される。このような複数のコイル辺部71に対する加圧及び加熱は、後述する回転電機100の製造方法における加圧・加熱工程#02Bにより実行される。従って、この工程の詳細については後述する。
以上のように、本実施形態の構成によれば、互いに隣接するコイル辺部71同士が面接触すると共にスロット内壁面22aに対しても面接触するように、当該コイル辺部71が断面変形した状態で、これらのコイル辺部71の接触面71a同士及びコイル辺部71と
スロット内壁面22aとの接触面が、溶着層Z1の溶融により溶着している。すなわち、コイル辺部71がスロット22内に高密度に配置された状態となるように、各コイル辺部71が断面変形した状態で、コイル辺部71の接触面71a同士及びコイル辺部71とスロット内壁面22aとの接触面が溶着され、そのようなコイル辺部71の配置状態が維持される。従って、コイル3の占積率を高めることが容易となっている。
スロット内壁面22aとの接触面が、溶着層Z1の溶融により溶着している。すなわち、コイル辺部71がスロット22内に高密度に配置された状態となるように、各コイル辺部71が断面変形した状態で、コイル辺部71の接触面71a同士及びコイル辺部71とスロット内壁面22aとの接触面が溶着され、そのようなコイル辺部71の配置状態が維持される。従って、コイル3の占積率を高めることが容易となっている。
5.回転電機の製造方法
次に、本実施形態に係る回転電機100を製造するための製造方法について説明する。この製造方法は、図5に示すように、線状導体4を用意する工程である線状導体準備工程#01と、例えば、図7及び図8に示すように、互いに隣接する線状導体4の部分同士が面接触するように、当該線状導体4の部分が断面変形した状態で、これらの線状導体4の接触面S同士を、溶着層Z1を溶融させることにより溶着させる溶着工程#02と、を有する。ここで、線状導体準備工程#01は、次の工程である溶着工程#02に線状導体4を供給する工程を少なくとも含んでいる。なお、線状導体準備工程#01に、上述したような構成を有する線状導体4を製造する工程が含まれていてもよい。また、本実施形態における、溶着工程#02では、線状導体4がステータコア2に巻き付けられて、隣接する線状導体4の部分同士が互いに密着する方向に加圧された加圧状態で、絶縁層Z2の融点(第一温度)よりも低く溶着層Z1の融点(第二温度)よりも高い温度で線状導体4を加熱する。
次に、本実施形態に係る回転電機100を製造するための製造方法について説明する。この製造方法は、図5に示すように、線状導体4を用意する工程である線状導体準備工程#01と、例えば、図7及び図8に示すように、互いに隣接する線状導体4の部分同士が面接触するように、当該線状導体4の部分が断面変形した状態で、これらの線状導体4の接触面S同士を、溶着層Z1を溶融させることにより溶着させる溶着工程#02と、を有する。ここで、線状導体準備工程#01は、次の工程である溶着工程#02に線状導体4を供給する工程を少なくとも含んでいる。なお、線状導体準備工程#01に、上述したような構成を有する線状導体4を製造する工程が含まれていてもよい。また、本実施形態における、溶着工程#02では、線状導体4がステータコア2に巻き付けられて、隣接する線状導体4の部分同士が互いに密着する方向に加圧された加圧状態で、絶縁層Z2の融点(第一温度)よりも低く溶着層Z1の融点(第二温度)よりも高い温度で線状導体4を加熱する。
上記のとおり、コイル3を構成する線状導体4の各部分の内、コイル辺部71及びコイル渡り部72のいずれにおいても、線状導体4が互いに隣接する部分を有することは有り得る。そこで、本実施形態に係る回転電機100を製造するための製造方法においても、互いに隣接するコイル辺部71同士が面接触するように、当該コイル辺部71を断面変形させた状態で溶着層Z1を溶融させて溶着させる。そのため、この製造方法では、図1に示すように、円筒状のコア基準面21の周方向Cに分散配置された複数のスロット22を備えると共に、スロット22のそれぞれがコア基準面21の軸方向Lに延びるように形成されたステータコア2と、コイル辺部71がスロット22のそれぞれに複数配置されたコイル3と、を用意する工程である、コア・コイル準備工程#01Aを備えている。なお、コイル3を用意することは、すなわち線状導体4を用意することになるため、コア・コイル準備工程#01Aは、線状導体準備工程#01の一つの態様である。ここで、コア・コイル準備工程#01Aは、次の工程である溶着工程#02にステータコア2とコイル3とを供給する工程を少なくとも含んでいる。なお、コア・コイル準備工程#01Aに、上述したような構成を有するステータコア2及びコイル3を製造する工程が含まれていてもよい。そして、溶着工程#02では、スロット22のそれぞれの内部における複数のコイル辺部71を、径方向Rに加圧することで加圧状態とし、当該加圧状態で絶縁層Z2の融点よりも低く溶着層Z1の融点よりも高い温度で加熱する。これによりコイル辺部71の接触面71a同士を溶着させる。
次に、本実施形態に係る回転電機100の製造方法の具体例について、図5〜図11を参照して説明する。図5のフローチャートに示すように、本実施形態に係る回転電機100の製造方法には、コア・コイル準備工程#01Aと、コイル辺部挿入工程#02Aと、加圧・加熱工程#02Bと、が含まれている。ここで、コイル辺部挿入工程#02Aは、加圧・加熱工程#02Bによる加圧の対象となる加圧対象部位を、スロット22内に開口部22bから挿入する工程である。加圧・加熱工程#02Bは、複数のスロット22のそれぞれの内部において隣接する加圧対象部位同士、つまり、隣接するコイル辺部71同士を、互いに密着する方向(ここでは径方向R)に加圧した状態で、加熱する工程である。この加圧・加熱工程#02Bでは、コイル3を構成する線状導体4を、絶縁層Z2の融点よりも低く溶着層Z1の融点よりも高い設定加熱温度で、予め定めた設定加熱時間の間、加熱する。また、加圧・加熱工程#02には、後述するスロット用加圧治具JSをステータ1に取り付ける治具装着工程と、スロット用加圧治具JSをステータ1から取り外す治具取外し工程と、が含まれる。そして、上記溶着工程#02には、これらのコイル辺部挿
入工程#02Aと加圧・加熱工程#02Bとが含まれる。
入工程#02Aと加圧・加熱工程#02Bとが含まれる。
コイル辺部挿入工程#02Aでは、図6に示すように、加圧対象部位を径第二方向R2側に移動させることで、当該加圧対象部位を開口部22bからスロット22内に挿入する。この際、加圧対象部位は、図6に示すように、加圧対象部位の周方向幅Dが開口幅W1(図2参照)より狭い第一周方向幅D1となるように弾性変形された状態で加圧対象部位がスロット22内に挿入された後、当該加圧対象部位が配置されるべき径方向Rの位置(層B)まで押し込まれる。
本実施形態では、コイル辺部挿入工程#02Aにおいて、扁平化冶具52を用いて線状導体4における加工対象部位の周方向Cの幅がスロット22の開口部22bの周方向Cの幅より狭くなるように扁平化して、当該加圧対象部位をスロット22の内部に挿入している。この際、線状導体4における加圧対象部位は、弾性変形することにより直交断面の形状が扁平化し、スロット22の内部に挿入された後は、直交断面の形状が真円状に戻る。スロット22の内部に加圧対象部位を複数(本例では5個)挿入し、複数の加圧対象部位がスロット22の内部において径方向Rに沿って一列に並ぶように配置する。
次に、加圧・加熱工程#02Bにおいて加圧対象部位をスロット22の開口部22b側(径第一方向R1側)から開口方向とは反対側である径第二方向R2側に向けて押圧することで、図7に示すように、スロット22の断面形状に適合するように加圧対象部位の直交断面の形状を変化させる。本実施形態では、後述するスロット用加圧治具JSを用いて、加圧対象部位を押圧する。この際、スロット22内の複数のコイル辺部71をまとめて径方向Rに加圧することで、これらを断面変形させ、スロット22におけるコイル辺部71の配置状態を図7に示すような状態とし、隣接するコイル辺部71同士が互いに密着する方向に加圧された状態とする。これにより、互いに隣接するコイル辺部71同士が面接触し、各コイル辺部71の接触面71aが互いに密着する。
その後、コイル3を構成する線状導体4を設定加熱温度で設定加熱時間だけ加熱する。これにより、線状導体4の絶縁被覆材46の溶着層Z1が加熱に伴って溶融した後、冷却に伴って凝固する。したがって、図8に示すように、面接触しているコイル辺部71同士のそれぞれの接触面においては溶融した溶着層Z1は一体となって凝固し、隣接するコイル辺部71の接触面同士が溶着することになる。また、スロット内壁面22aに設けられたスロット絶縁部24と面接触するコイル辺部71の接触面においては、溶着層Z1が溶融してスロット内壁面22aに密着した状態で凝固することにより、コイル辺部71の当該接触面とスロット内壁面22a(スロット絶縁部24)とが溶着する。
なお、図8では、面接触しているコイル辺部71同士の接触面71a(図7参照)とスロット内壁面22aとの間に加熱前に形成されていた隙間が消失した場合の例を示している。ここで、加圧対象部位は、加熱中に径第二方向R2側に押圧されていることから、コイル辺部71の溶着層Z1が溶融した場合に、コイル辺部71の断面変形及び各コイル辺部71の径第二方向R2への移動が進行する。すなわち、加熱中における径第二方向R2側への押圧により、コイル辺部71とスロット内壁面22aとの間隔及び面接触しているコイル辺部71同士の間隔が加熱中に縮小し、これに伴って、溶着層Z1を構成する材料が溶融して当該隙間に流入する。これにより、スロット22内におけるコイル辺部71間及びコイル辺部71とスロット内壁面22aとの隙間が減少する。なお、当該隙間は加熱前に複数のスロット22内に多数存在するが、加圧・加熱工程#02Bにより必ずしも全ての隙間が完全に消失するとは限らない。
加圧・加熱工程#02Bにおける設定加熱温度及び設定加熱時間は、絶縁被覆材46の溶着層Z1及び絶縁層Z2のそれぞれの融点、それらの融点の温度差、溶着層Z1及び絶縁層Z2のそれぞれの膜厚、コイル3を構成する線状導体4の総線長、ステータコア2等のステータ1を構成する各部材の耐熱性能等の諸条件に基づいて設定される。本実施形態では、設定加熱温度は摂氏250度であり、設定加熱時間は2時間としている。
上記のとおり、加圧・加熱工程#02Bにおいては、加圧対象部位となるコイル辺部71を径方向Rに加圧した状態で加熱し、溶着層Z1を溶融させることにより、コイル辺部71をスロット22内で径方向Rに移動させ、複数のコイル辺部71を更に密着させるようにしている。本実施形態では、このように加熱中に加圧対象部位を加圧した状態とするために、スロット用加圧治具JSを用いる。すなわち、本実施形態に係る加圧・加熱工程#02Bは、スロット用加圧治具JSをステータ1に取り付ける治具装着工程を含んでいる。このスロット用加圧治具JSにより、図7に示すように、加圧対象部位の直交断面の形状がスロット22の断面形状に適合するように変化する。
以下、スロット用加圧治具JSの構造及び治具装着工程について、図7、及び図9〜図11を参照して説明する。まず、スロット用加圧治具JSについて説明する。なお、以下の説明では、ステータ1にスロット用加圧治具JSを取り付けた装着状態を想定して、スロット用加圧治具JSの構成を説明する。また、以下では、軸方向Lに沿って、後述するベース部材54から締め付け部材57側へ向かう方向(図9〜11の上へ向かう方向)を軸第一方向L1、それとは反対方向(図9〜11の下へ向かう方向)を軸第二方向L2として説明する。
本実施形態では、図11に示すように、スロット用加圧治具JSは、ベース部材54、複数の第1楔部材55、及び、複数の第2楔部材56、締め付け部材57、を備えている。第1楔部材55は、加圧対象部位に接触して押圧するため、絶縁被覆材46の溶着層Z1が溶融後に溶着しても、絶縁被覆材46を損傷することなく容易に剥離できる材料(例えば、セラミック材料や金属材料)で構成することが好ましい。
図9に示すように、ベース部材54は、ステータコア2の軸方向Lと同一軸心の円柱状に形成されている。そして、図7に一部が示されているように、ベース部材54は、ステータコア2の各スロット22に対応して、周方向Cに複数分散配置された凹溝状の治具スロット54aを有している。各治具スロット54aは、ベース部材54の円筒状の外周面から径第一方向R1に向けて凹入形成されていると共に軸方向Lに延びる凹溝状に形成されている。治具スロット54aとステータコア2のスロット22とは、それぞれの開口部が径方向Rに対向するように配置されている。図7及び図11に示すように、治具スロット54aは、第2楔部材56の支持面56bが当接するスロット底面54dを備えている。また、ベース部材54は、軸第一方向L1側の端面の中心に、締め付け部材57(図11参照)をボルト59により固定するためのネジ穴54cを備えている。
図9に示すように、治具スロット54aにおける、軸第一方向L1側の端部は開口しているが、軸第二方向L2側の端部は、ベース部材54の軸第二方向L2側の端部に形成された係止用フランジ54bにより軸方向Lに閉塞されている。本実施形態では、係止用フランジ54bは、ベース部材54の円筒状の外周面から、径第二方向R2(径方向外側)へ幅T2だけ突出している。また、係止用フランジ54bの外径は、ステータコア2の内周面の直径より大きい。そのため、図9に示すように、ステータコア2のロータ配設用空間にベース部材54の円柱状部分を挿入した状態で、ステータコア2の軸第二方向L2側(図9の下側)の端面に、係止用フランジ54bが当接する。これにより、ステータコア2に対するベース部材54の軸方向Lの位置が規定される。
図9及び図10に示すように、第1楔部材55及び第2楔部材56は、治具スロット54aとこれに径方向Rで対向するステータコア2のスロット22とが対向することで形成
される楔挿入空間に配置される。すなわち、第1楔部材55及び第2楔部材56は、当該楔挿入空間に対して、軸第一方向L1側から軸第二方向L2側に向けて、つまり、図9及び図10において矢印で示す挿入方向に沿って挿入される楔である。第1楔部材55及び第2楔部材56は、図7に示すように、軸方向Lに直交する直交断面の形状が矩形状の楔である。そして、図9〜11に示すように、第1楔部材55は、軸第一方向L1側から軸第二方向L2側へ向かうに従って次第に径方向Rの幅が大きくなるように形成されている。一方、第2楔部材56は、軸第一方向L1側から軸第二方向L2側へ向かうに従って次第に径方向Rの幅が小さくなるように形成されている。そして、図11に示すように、ベース部材54に装着された装着状態において、第1楔部材55が備える傾斜面55aと、第2楔部材56が備える傾斜面56aと、が対向する姿勢で接触している状態で、第1楔部材55が備える作用面55b及び第2楔部材56が備える支持面56bが軸方向Lに平行となるように、第1楔部材55及び第2楔部材56が形成されている。第2楔部材56の軸第一方向L1側の端部には、軸方向Lに直交する面に沿う押圧面を備えた押圧部56hが形成されている。
される楔挿入空間に配置される。すなわち、第1楔部材55及び第2楔部材56は、当該楔挿入空間に対して、軸第一方向L1側から軸第二方向L2側に向けて、つまり、図9及び図10において矢印で示す挿入方向に沿って挿入される楔である。第1楔部材55及び第2楔部材56は、図7に示すように、軸方向Lに直交する直交断面の形状が矩形状の楔である。そして、図9〜11に示すように、第1楔部材55は、軸第一方向L1側から軸第二方向L2側へ向かうに従って次第に径方向Rの幅が大きくなるように形成されている。一方、第2楔部材56は、軸第一方向L1側から軸第二方向L2側へ向かうに従って次第に径方向Rの幅が小さくなるように形成されている。そして、図11に示すように、ベース部材54に装着された装着状態において、第1楔部材55が備える傾斜面55aと、第2楔部材56が備える傾斜面56aと、が対向する姿勢で接触している状態で、第1楔部材55が備える作用面55b及び第2楔部材56が備える支持面56bが軸方向Lに平行となるように、第1楔部材55及び第2楔部材56が形成されている。第2楔部材56の軸第一方向L1側の端部には、軸方向Lに直交する面に沿う押圧面を備えた押圧部56hが形成されている。
図11に示すように、締め付け部材57は、ベース部材54に固定され、第2楔部材56を押圧する押圧部材を支持する部材である。本実施形態では、押圧部材として、複数の押圧バネ58を備えている。締め付け部材57は、ベース部材54に固定される支持部57bと、当該支持部57bから径第二方向R2(径方向Rの外側)へ向けて突出する径方向突出部57aと、を備えている。支持部57bには、締め付け用ボルト59を貫通させるための貫通孔57cが形成されている。そして、径方向突出部57aのベース部材54側の面(軸第二方向L2側の面)に、複数の押圧バネ58が支持されている。これら複数の押圧バネ58は、スロット22の周方向Cの間隔、つまり、治具スロット54aの周方向Cの間隔に対応した間隔で、周方向Cに沿って複数配置されている。各押圧バネ58は、軸第一方向L1側の端部が径方向突出部57aのベース部材54側の面に支持されている。そして、押圧バネ58の軸第二方向L2の端部が第2楔部材56の押圧部56hに当接する。押圧バネ58の自然長は、径方向突出部57aのベース部材54側の面と第2楔部材56の押圧部56hにおける押圧面との距離よりも長く設定されており、押圧バネ58が、圧縮状態で押圧部56hに当接するように構成されている。これにより、押圧バネ58は、第2楔部材56の押圧部56hを、軸第二方向L2へ向けて付勢する。
次に、治具装着工程におけるスロット用加圧治具JSの取り付け手順の具体例について説明する。まず、図9に示すように、線状導体4が巻き付けられたステータコア2の径方向内側のロータ配設用空間にベース部材54の円柱状部分を挿入する。なお、図9では既にベース部材54がステータコア2に挿入された状態を示している。図9に示すように、第1楔部材55を楔挿入空間に対して挿入する。第1楔部材55は、全てのスロット22及び治具スロット54aの対について挿入される。そして、図10に示すように、第1楔部材55の傾斜面55aに第2楔部材56の傾斜面56aが当接するように、第2楔部材56を楔挿入空間に対して挿入する。第2楔部材56も、全てのスロット22及び治具スロット54aの対について挿入される。本例では、第2楔部材56が挿入された状態で、第1楔部材55の作用面55bの径方向Rにおける位置は、スロット22の開口部22bよりも径第二方向R2側(径方向Rの外側)に突出した状態となっている。
その後、締め付け部材57を、ベース部材54の軸第一方向L1側の端面に固定する。この際、軸方向Lから見て、締め付け部材57に支持された複数の押圧バネ58のそれぞれの周方向Cの位置と、楔挿入空間に挿入されている複数の第2楔部材56のそれぞれが備える押圧部56hの周方向Cの位置と、を一致させる。そして、図11に示すように、貫通孔57cに貫通させた締め付け用ボルト59を、ネジ穴54cにねじ込んで、自然長の複数の押圧バネ58の全てを自然長より短い圧縮状態とすることで、第2楔部材56を挿入方向に押圧する。これにより、第1楔部材55が径第二方向R2に押圧され、加圧対
象部位は、径第二方向R2側(径方向Rの外側)に押圧された状態となる。
象部位は、径第二方向R2側(径方向Rの外側)に押圧された状態となる。
このように、治具装着工程により、ベース部材54、第1楔部材55、第2楔部材56、及び、締め付け部材57をステータ1に組み付けることで、スロット22内の線状導体4の加圧対象部位(コイル辺部71)が径方向Rに加圧された状態とすることができる。そして、ステータ1にスロット用加圧治具JSを装着したままの状態で、加熱炉等の加熱装置により加熱を行う。これにより、溶着層Z1が溶融して、スロット22内における加圧対象部位が径第二方向R2に移動したり、加圧対象部位の断面形状が変化したりしても、当該事象が生じたスロット22に対応する押圧バネ58が伸長することで、当該スロット22に対応する楔挿入空間に挿入されている第2楔部材56が更に挿入方向に挿入される。これにより、第1楔部材55が径第二方向R2に更に押圧され、当該スロット22における加圧対象部位についての良好な加圧状態が維持できる。
なお、スロット用加圧治具JSをステータ1から取り外す治具脱着工程は、設定加熱温度での設定加熱時間の加熱が完了した後、十分な冷却時間(例えば、2時間)が経過してから行われる。治具脱着工程では、締め付け用ボルト59を緩めて、締め付け部材57を取り外して、複数の第1楔部材55及び複数の第2楔部材56を楔挿入空間から抜き取って、ベース部材54をステータ1から分離する。
6.第二の実施形態
上記の実施形態では、互いに隣接する線状導体4の部分同士が、溶着層Z1の溶融により溶着している構成の一例として、互いに隣接するコイル辺部71同士が溶着層Z1の溶融により溶着している構成を例に説明した。次に、第二の実施形態として、互いに隣接するコイル渡り部72同士が溶着層Z1の溶融により溶着している構成について説明する。また、コイルエンド部73の周辺部分の構成についても説明する。具体的には、中性点74が、溶着シート75(後述)の溶融により、当該コイル渡り部72同士が溶着しているコイルエンド部73に溶着している構成、及び、当該コイルエンド部73と動力線部44とが非溶着状態にある構成についても説明する。なお、特に説明しない点については、上記実施形態と同様とすることができる。
上記の実施形態では、互いに隣接する線状導体4の部分同士が、溶着層Z1の溶融により溶着している構成の一例として、互いに隣接するコイル辺部71同士が溶着層Z1の溶融により溶着している構成を例に説明した。次に、第二の実施形態として、互いに隣接するコイル渡り部72同士が溶着層Z1の溶融により溶着している構成について説明する。また、コイルエンド部73の周辺部分の構成についても説明する。具体的には、中性点74が、溶着シート75(後述)の溶融により、当該コイル渡り部72同士が溶着しているコイルエンド部73に溶着している構成、及び、当該コイルエンド部73と動力線部44とが非溶着状態にある構成についても説明する。なお、特に説明しない点については、上記実施形態と同様とすることができる。
6−1.隣接する線状導体4同士が溶着した構成
上記のように、コイル渡り部72の集合が、図12に略図にて示すコイルエンド部73である。本実施形態では、コイルエンド部73を構成して互いに隣接するコイル渡り部72同士が面接触するように、当該コイル渡り部72が断面変形した状態で、これらのコイル渡り部72の接触面(線状導体4の接触面Sの一例)同士が、溶着層Z1の溶融により溶着している。ここでは、線状導体4がステータコア2に巻き付けられて、隣接するコイル渡り部72の部分同士が互いに密着する方向に加圧された状態で、絶縁層Z2の融点よりも低く溶着層Z1の融点よりも高い温度で加熱されたことによりコイル渡り部72の接触面同士が溶着している。この際、複数のコイル渡り部72の集合であるコイルエンド部73が、ステータコア2の径方向R及びステータコア2の軸方向Lの少なくとも一方に加圧される。本実施形態では、後述するコイルエンド用加圧治具JEを用いて、少なくとも軸方向Lにコイルエンド部73(中性点74を含む)を加圧した状態で加熱する。
上記のように、コイル渡り部72の集合が、図12に略図にて示すコイルエンド部73である。本実施形態では、コイルエンド部73を構成して互いに隣接するコイル渡り部72同士が面接触するように、当該コイル渡り部72が断面変形した状態で、これらのコイル渡り部72の接触面(線状導体4の接触面Sの一例)同士が、溶着層Z1の溶融により溶着している。ここでは、線状導体4がステータコア2に巻き付けられて、隣接するコイル渡り部72の部分同士が互いに密着する方向に加圧された状態で、絶縁層Z2の融点よりも低く溶着層Z1の融点よりも高い温度で加熱されたことによりコイル渡り部72の接触面同士が溶着している。この際、複数のコイル渡り部72の集合であるコイルエンド部73が、ステータコア2の径方向R及びステータコア2の軸方向Lの少なくとも一方に加圧される。本実施形態では、後述するコイルエンド用加圧治具JEを用いて、少なくとも軸方向Lにコイルエンド部73(中性点74を含む)を加圧した状態で加熱する。
6−2. 中性点74がコイルエンド部73に溶着した構成
上記のように、コイル3は、U相、V相、W相の各相コイルユニットのそれぞれの一端を互いにスター結線するように接続する中性点74を備える。当該中性点74は、図13に示すように、少なくとも表層部分が溶着層Z1と同じ材料で構成されている溶着シート75を介して、コイルエンド部73に接するように配置される。そして、中性点74は、溶着シート75の少なくとも前記表層部分の溶融によりコイルエンド部73に溶着している。本実施形態では、溶着シート75によって全周にわたって外周面が覆われた中性点74を用いる。また、本実施形態では、中性点74は、コイルエンド部73の軸方向Lにおける、ステータコア2側とは反対側(外側)に溶着している。具体的には、本実施形態で用いる中性点74は、図13に示すように、線状導体4の絶縁被覆材46が除去された状態で、スリーブ材76(例えば圧着スリーブ等)でかしめられ、当該スリーブ材76の外周面は、電気的絶縁性を有する材料から構成される絶縁シート77(例えばカプトンシート等)によって被覆されている。そして、さらに当該絶縁シート77の外周面は、溶着シート75によって被覆されている。すなわち、中性点74の、線状導体4の延在方向Aに直交する断面は、裸導体素線束42側(内部側)から外部側に向かって順に、裸導体素線束42、スリーブ材76、絶縁シート77、溶着シート75の複数の層状に構成されている。本実施形態では、溶着シート75の全体が、溶着層Z1と同じ材料から構成されている。よって、当然ながら溶着シート75の表層部分も溶着層Z1と同じ材料で構成されている。具体的には、溶着シート75は、厚さ100μmのETFEシートである。
上記のように、コイル3は、U相、V相、W相の各相コイルユニットのそれぞれの一端を互いにスター結線するように接続する中性点74を備える。当該中性点74は、図13に示すように、少なくとも表層部分が溶着層Z1と同じ材料で構成されている溶着シート75を介して、コイルエンド部73に接するように配置される。そして、中性点74は、溶着シート75の少なくとも前記表層部分の溶融によりコイルエンド部73に溶着している。本実施形態では、溶着シート75によって全周にわたって外周面が覆われた中性点74を用いる。また、本実施形態では、中性点74は、コイルエンド部73の軸方向Lにおける、ステータコア2側とは反対側(外側)に溶着している。具体的には、本実施形態で用いる中性点74は、図13に示すように、線状導体4の絶縁被覆材46が除去された状態で、スリーブ材76(例えば圧着スリーブ等)でかしめられ、当該スリーブ材76の外周面は、電気的絶縁性を有する材料から構成される絶縁シート77(例えばカプトンシート等)によって被覆されている。そして、さらに当該絶縁シート77の外周面は、溶着シート75によって被覆されている。すなわち、中性点74の、線状導体4の延在方向Aに直交する断面は、裸導体素線束42側(内部側)から外部側に向かって順に、裸導体素線束42、スリーブ材76、絶縁シート77、溶着シート75の複数の層状に構成されている。本実施形態では、溶着シート75の全体が、溶着層Z1と同じ材料から構成されている。よって、当然ながら溶着シート75の表層部分も溶着層Z1と同じ材料で構成されている。具体的には、溶着シート75は、厚さ100μmのETFEシートである。
そして、コイルエンド部73が、ステータコア2の径方向R及びステータコア2の軸方向Lの少なくとも一方に加圧された状態で、絶縁層Z2の融点よりも低く溶着層Z1の融点よりも高い温度で加熱される際には、中性点74も同様に加圧された状態(ここではステータコア2の軸方向L方向)で、絶縁層Z2の融点よりも低く溶着層Z1の融点よりも高い温度で加熱される。これにより、溶着層Z1と同じ材料で構成されている溶着シート75の表層部分及び溶着層Z1が溶融する為、図14に示すように、コイルエンド部73と中性点74との接触面が、溶着層Z1(より具体的には、当該接触部分のコイルエンド部73を構成する線状導体4の溶着層Z1)及び溶着シート75の表層部分の溶融によって溶着している。すなわち、本実施形態では、コイル渡り部72の接触面同士が溶着しているとともに、中性点74と接触するコイルエンド部73を構成する線状導体4と当該中性点74との接触面同士も溶着している。これにより中性点74はコイルエンド部73に溶着して固定される。なお、本実施形態では、溶着シート75によって外周面の全周が覆われた中性点74を用いているが、図17に示すように、中性点74とコイルエンド部73とが接触する領域に部分的に溶着シート75を設ける構成であってもよい。しかし、本実施形態のように、中性点74の外周面の全周が溶着シート75によって覆われている構成の方が、中性点74とコイルエンド部73との接触領域に部分的に溶着シート75を設ける構成よりも、中性点74とコイルエンド部73とが溶着されている範囲を大きくすることができ、また、溶着されている部分の厚みも大きくすることができる為、中性点74とコイルエンド部73との溶着を強固にすることができる。
6−3.動力線部44とコイルエンド部73との非溶着状態
上述のように、線状導体4は、コイル構成部43と動力線部44とを備える。当該動力線部44は、U相、V相、W相の各相のコイルユニットの中性点74とは反対側の端部に相当する為、本実施形態では、3つの動力線部44が存在する。なお、3つの動力線部44は同一の構成である為、以下においては、1つの動力線部44についてのみ説明する。
上述のように、線状導体4は、コイル構成部43と動力線部44とを備える。当該動力線部44は、U相、V相、W相の各相のコイルユニットの中性点74とは反対側の端部に相当する為、本実施形態では、3つの動力線部44が存在する。なお、3つの動力線部44は同一の構成である為、以下においては、1つの動力線部44についてのみ説明する。
動力線部44は、上述のように、線状導体4をステータコア2に巻き付けた状態でコイル構成部43から引き出された部分である。本実施形態では、図15に示すように、動力線部44は、コイルエンド部73に対して径第二方向R2側から引き出されている。具体的には、動力線部44は、スロット22内の最も径第二方向R2側の第一層B1に配置されるコイル辺部71が、コイル渡り部72に接続されずに、ステータコア2から引き出された線状導体4の部分で構成されている。そして、ステータコア2から引き出された動力線部44は、インバータ及びバッテリ等の電源(図示せず)に接続される。本実施形態では、動力線部44のコイル構成部43側とは反対側の端部は、図15に示すように、接続端子90(本例では圧着端子)に接続され、当該接続端子90が固定部材91(本例ではボルト)によって回転電機100を収容するケース92等に固定されている。また、動力線部44は、コイルエンド部73に沿って配置される部分である隣接配置部分45を有する。本実施形態では、動力線部44は、隣接配置部分45として、コイルエンド部73の径方向Rにおける最外周面に沿う部分(45A)を有する。また、本実施形態では、動力線部44は、コイルエンド部73に沿って屈折した形状である為、隣接配置部分45として、さらに、コイルエンド部73の軸方向Lにおける最外面(ステータコア2側とは反対側の面)に沿う部分(45B)を有する。
そして、隣接配置部分45の外周面は、絶縁被覆材46とは別のカバー材78により覆われている。カバー材78としては、溶着層Z1の融点よりも高い融点を有し、溶着層Z1と溶着しにくい材料が用いられる。また、カバー材78は、さらに電気的絶縁性を有する材料から構成されていると好ましい。これは、隣接配置部分45と接するコイルエンド部73(コイル渡り部72)の絶縁被覆材46が万が一剥がれた場合等でも、カバー材78により動力線部44とコイルエンド部73との間の電気的絶縁性を維持することができるからである。また、さらには、カバー材78は、加熱によって収縮する熱収縮性を有する材料から構成されていると好ましい。これは、カバー材78を動力線部44(線状導体4)に密着させることができる為、カバー材78が線状導体4の延在方向Aに相対移動すること、すなわちカバー材78の位置ずれを抑制することができるからである。カバー材78としては、具体的には、フッ素系樹脂のPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂)、FEP、ETFE等が用いられる。これらの材料は、溶着層Z1と溶着しにくい。本実施形態では、カバー材78として、絶縁層Z2と同じ材料であるFEPから構成される熱収縮チューブが用いられている。なお、本例では、絶縁被覆材46の溶着層Z1と絶縁層Z2とは、互いに溶着しにくい材料から構成されているが、裸導体素線束42を被覆する際に、溶着層Z1と絶縁層Z2とを同時に供給しつつ裸導体素線束42を被覆するので、溶着層Z1と絶縁層Z2とは接着されている。また、カバー材78は、少なくとも動力線部44の隣接配置部分45の外周面を覆う構成であればよいが、本実施形態のように、図15に示すように動力線部44の長さ方向(延在方向A)の全域において外周面を覆う構成であってもよい。
そして、本実施形態では、コイルエンド部73が、ステータコア2の径方向R及びステータコア2の軸方向Lの少なくとも一方に加圧された状態で、絶縁層Z2の融点よりも低く溶着層Z1の融点よりも高い温度で加熱される際には、動力線部44も同様に加圧された状態で、絶縁層Z2の融点よりも低く溶着層Z1の融点よりも高い温度で加熱される。すなわち、当該加圧された状態では隣接配置部分45とコイルエンド部73とが接した状態となり、その状態で絶縁層Z2の融点よりも低く溶着層Z1の融点よりも高い温度で加熱される。しかし、カバー材78の融点は溶着層Z1の融点よりも高い為、コイルエンド部73の溶着層Z1が溶融してもカバー材78は溶融しない。また、カバー材78は溶着層Z1と溶着しにくい材料で構成されている為、コイルエンド部73における線状導体4の接触面同士が溶着層Z1の溶融により溶着している状態であっても、カバー材78は、溶着層Z1と非溶着状態となっている。すなわち、隣接配置部分45とコイルエンド部73とは接してはいるが溶着してない非溶着状態である為、動力線部44とコイルエンド部73とは分離された状態である。よって、動力線部44が、コイルエンド部73に対して相対移動することが許容される。
6−4.回転電機の製造方法
次に、本実施形態に係る回転電機100を製造するための製造方法について説明する。この製造方法は、上記実施形態と同様に、線状導体準備工程#01と溶着工程#02とを有する(図5参照)。本実施形態においても、線状導体準備工程#01としてコア・コイル準備工程#01Aを実行する。また、溶着工程#02は、コイル辺部挿入工程#02Aと加圧・加熱工程#02Bとを含んでいる。そして、本実施形態において、コイル辺部挿入工程#02Aは、上記実施形態と同様であるので説明は省略する。一方、本実施形態に係る線状導体準備工程#01(コア・コイル準備工程#01A)及び加圧・加熱工程#02Bは、上記実施形態とは異なる部分を有している。本実施形態に係るコア・コイル準備工程#01Aには、中性点74に対する事前準備の工程が含まれる。具体的には、コア・コイル準備工程#01Aには、少なくとも表層部分が溶着層Z1と同じ材料で構成された溶着シート75を用意する工程と、中性点74を、当該溶着シート75を介してコイルエンド部73に接するように配置する工程とが含まれる。本実施形態では、コア・コイル準備工程#01Aには、溶着シート75として、溶着層Z1と同じ材料であるETFEシートを用意する工程と、中性点74に当該溶着シート75を被覆し、当該中性点74をコイルエンド部73の軸方向Lにおける、ステータコア2側とは反対側(外側)の面と接するように配置する工程とが含まれる。なお、中性点74を用意する工程(スリーブ材76を装着する工程や絶縁シート77を被覆する工程等)についても、コア・コイル準備工程#01Aに含まれる。また、コア・コイル準備工程#01Aには、動力線部44に対する事前準備の工程も含まれる。具体的には、コア・コイル準備工程#01Aには、絶縁被覆材46とは別に、隣接配置部分45の外周面を覆うカバー材78を用意する工程が更に含まれる。本実施形態では、コア・コイル準備工程#01Aには、動力線部44の長さ方向の全域において外周面を覆うことができるような大きさ(長さ、直径、厚み等)のカバー材78(本例では熱収縮チューブ)を用意し、当該カバー材78を動力線部44に装着し、カバー材78を熱収縮させて動力線部44(線状導体4)にカバー材78を密着させる事前処理も含まれる。また、本実施形態に係る加圧・加熱工程#02Bでは、図12に示すように、コイルエンド用加圧治具JEが使用される。このため、加圧・加熱工程#02Bには、コイルエンド用加圧治具JEをステータ1に取り付ける治具装着工程と、コイルエンド用加圧治具JEをステータ1から取り外す治具取外し工程と、が含まれる。
次に、本実施形態に係る回転電機100を製造するための製造方法について説明する。この製造方法は、上記実施形態と同様に、線状導体準備工程#01と溶着工程#02とを有する(図5参照)。本実施形態においても、線状導体準備工程#01としてコア・コイル準備工程#01Aを実行する。また、溶着工程#02は、コイル辺部挿入工程#02Aと加圧・加熱工程#02Bとを含んでいる。そして、本実施形態において、コイル辺部挿入工程#02Aは、上記実施形態と同様であるので説明は省略する。一方、本実施形態に係る線状導体準備工程#01(コア・コイル準備工程#01A)及び加圧・加熱工程#02Bは、上記実施形態とは異なる部分を有している。本実施形態に係るコア・コイル準備工程#01Aには、中性点74に対する事前準備の工程が含まれる。具体的には、コア・コイル準備工程#01Aには、少なくとも表層部分が溶着層Z1と同じ材料で構成された溶着シート75を用意する工程と、中性点74を、当該溶着シート75を介してコイルエンド部73に接するように配置する工程とが含まれる。本実施形態では、コア・コイル準備工程#01Aには、溶着シート75として、溶着層Z1と同じ材料であるETFEシートを用意する工程と、中性点74に当該溶着シート75を被覆し、当該中性点74をコイルエンド部73の軸方向Lにおける、ステータコア2側とは反対側(外側)の面と接するように配置する工程とが含まれる。なお、中性点74を用意する工程(スリーブ材76を装着する工程や絶縁シート77を被覆する工程等)についても、コア・コイル準備工程#01Aに含まれる。また、コア・コイル準備工程#01Aには、動力線部44に対する事前準備の工程も含まれる。具体的には、コア・コイル準備工程#01Aには、絶縁被覆材46とは別に、隣接配置部分45の外周面を覆うカバー材78を用意する工程が更に含まれる。本実施形態では、コア・コイル準備工程#01Aには、動力線部44の長さ方向の全域において外周面を覆うことができるような大きさ(長さ、直径、厚み等)のカバー材78(本例では熱収縮チューブ)を用意し、当該カバー材78を動力線部44に装着し、カバー材78を熱収縮させて動力線部44(線状導体4)にカバー材78を密着させる事前処理も含まれる。また、本実施形態に係る加圧・加熱工程#02Bでは、図12に示すように、コイルエンド用加圧治具JEが使用される。このため、加圧・加熱工程#02Bには、コイルエンド用加圧治具JEをステータ1に取り付ける治具装着工程と、コイルエンド用加圧治具JEをステータ1から取り外す治具取外し工程と、が含まれる。
本実施形態では、コイルエンド用加圧治具JEをステータコア2に取り付けた状態で、加圧・加熱工程#02Bを実行することで、隣接するコイル渡り部72同士が、互いに密着する方向に加圧された状態とすることができる。その際には、中性点74とコイルエンド部73も互いに接触する方向に加圧された状態とすることができる。また、本例では、動力線部44とコイルエンド部73も互いに接触する方向に加圧された状態となる。そして、このような加圧状態下で、絶縁層Z2の融点よりも低く溶着層Z1の融点よりも高い設定加熱温度で線状導体4を設定加熱時間の間、加熱する。コイルエンド部73がステータコア2の径方向R及びステータコア2の軸方向Lの少なくとも一方に加圧された状態で加熱されることにより、コイルエンド部73を構成する複数のコイル渡り部72同士を互いに密着させた状態で溶着できる。従って、ステータ1のコイルエンド部73の外形を、線状導体4を溶着する前に比べて小さくすることができる。したがって、回転電機100の小型化を図ることができる。また、加圧・加熱工程#02Bでは、溶着シート75の少なくとも表層部分の溶融によって、コイルエンド部73に中性点74を溶着させることができる。なお、加圧・加熱工程#02Bでは、動力線部44とコイルエンド部73とも互いに接触する方向に加圧された状態で加熱されるが、上記のとおり、カバー材78が溶着層Z1と溶着しにくい材料で構成されている為、カバー材78と溶着層Z1とを非溶着状態に維持しつつ、コイルエンド部73における線状導体4の接触面同士を溶着層Z1の溶融により溶着させることができる。
6−5.コイルエンド用加圧治具の構成
以下、コイルエンド用加圧治具JEについて説明する。なお、以下の説明では、ステータ1にコイルエンド用加圧治具JEを取り付けた装着状態、つまり、図12に示す状態を想定して、コイルエンド用加圧治具JEの構成を説明する。
以下、コイルエンド用加圧治具JEについて説明する。なお、以下の説明では、ステータ1にコイルエンド用加圧治具JEを取り付けた装着状態、つまり、図12に示す状態を想定して、コイルエンド用加圧治具JEの構成を説明する。
コイルエンド用加圧治具JEは、内周面用筒状部材81と、外周面用筒状部材82と、軸方向端面用押圧部材83と、引っ張りバネ84と、を備えている。内周面用筒状部材81、外周面用筒状部材82、及び、軸方向端面用押圧部材83は、ステータ1の軸方向Lの両側のコイルエンド部73のそれぞれに対応して一対設けられている。
内周面用筒状部材81は、その外周面が、コイルエンド部73の内周面の位置を規制する案内面となる。従って、内周面用筒状部材81の外径は、最終的に必要なコイルエンド部73の内周面の径に合わせて設定されている。内周面用筒状部材81は、ステータコア2と同一軸心となるように、ステータコア2に対して固定される。なお、内周面用筒状部材81をステータコア2に固定するための固定構造の詳細については省略する。
外周面用筒状部材82は、その内周面が、コイルエンド部73の外周面の位置を規制する案内面となる。従って、外周面用筒状部材82の内径は、最終的に必要なコイルエンド部73の外周面の径に合わせて設定されている。外周面用筒状部材82は、ステータコア2と同一軸心となるように、ステータコア2に対して固定される。本例では、軸方向Lの両側に配置された一対の外周面用筒状部材82と、ステータコア2とを貫通するボルト85aと、当該ボルト85aに螺合するナット85bとにより、外周面用筒状部材82がステータコア2に固定されている。
軸方向端面用押圧部材83は、コイルエンド部73を軸方向Lに沿ってステータコア2側へ向けて押圧する部材である。本実施形態では、軸方向端面用押圧部材83は、支持体83Aと、当該支持体83Aから軸方向Lでコイルエンド部73側に突出する環状突起83Rが形成されている。環状突起83Rの径方向Rの幅は、内周面用筒状部材81及び外周面用筒状部材82の間に形成される環状の溝部の径方向Rの幅より小さく設定されている。軸方向端面用押圧部材83の支持体83Aには、複数のバネ取り付け部83bが設けられている。そして、ステータコア2を挟んで対向して配置される一対の軸方向端面用押圧部材83におけるバネ取り付け部83bの間に、軸方向Lから見て周方向Cに分散配置された複数本の引っ張りバネ84が取り付けられる。この引っ張りバネ84の張力により、一対の軸方向端面用押圧部材83が互いに軸方向Lに接近する方向に付勢されることで、環状突起83Rがコイルエンド部73を軸方向Lに押圧する。
軸方向端面用押圧部材83の環状突起83Rによりコイルエンド部73が軸方向Lに押圧されると、コイルエンド部73が軸方向Lに圧縮され、コイルエンド部73は径方向Rに拡大する傾向で、3次元的形状が変化する。したがって、コイルエンド部73が、内周面用筒状部材81の外周面と、外周面用筒状部材82の内周面と、軸方向端面用押圧部材83における環状突起83Rの突出側端面と、により包囲された状態で、環状突起83Rによりコイルエンド部73を軸方向Lに押圧すると、コイルエンド部73の内周面及び外周面が、内周面用筒状部材81の外周面及び外周面用筒状部材82の内周面に当接する。そして、コイルエンド部73が軸方向Lへさらに押圧され圧縮されることで、コイルエンド部73は径方向R及びコアの軸方向Lの双方に押圧される。したがって、本実施形態では、軸方向端面用押圧部材83がステータコア2の軸方向Lの端面に接近するに伴って、コイルエンド部73が径方向Rに拡大する傾向となることで、コイルエンド部73を構成する複数のコイル渡り部72は、ステータコア2の径方向R及び軸方向Lの双方に加圧された状態となる。
本例では、コイルエンド部73が、径方向R及び軸方向Lの双方に加圧された状態で加熱される例を説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。コイルエンド部73が軸方向Lにのみ加圧された状態で加熱される構成とし、或いは、コイルエンド部73が径方向Rにのみ加圧された状態で加熱される構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。ここで、コイルエンド部73が径方向Rにのみ加圧する構成とする場合には、上記のような軸方向端面用押圧部材83を備えず、内周面用筒状部材81の外周面の径が拡大する方向に付勢された構成とし、或いは、外周面用筒状部材82の内周面の径が縮小する方向に付勢された構成とし、或いは、内周面用筒状部材81及び外周面用筒状部材82の双方が径方向Rに互いに近づく方向に付勢された構成とすることができる。また、コイルエンド部73が径方向R及び軸方向Lの双方に加圧される構成とする場合において、上述したように軸方向端面用押圧部材83に加えて、内周面用筒状部材81及び外周面用筒状部材82の少なくとも一方が径方向Rに相手方へ近づく方向に付勢された構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
7.第三の実施形態
上記の第一及び第二の実施形態では、線状導体4がステータコア2に巻き付けられて、隣接する線状導体4の部分同士が互いに密着する方向に加圧された加圧状態で、絶縁層Z2の融点よりも低く溶着層Z1の融点よりも高い温度で加熱されたことにより、線状導体4の接触面同士が溶着層Z1の溶融により溶着する構成を例に説明した。一方、この第三の実施形態では、線状導体4がステータコア2に巻き付けられて、隣接する線状導体4の部分同士が互いに密着する方向に加圧して線状導体4の部分の断面を変形させる加圧処理と、断面が変形した線状導体4の接触面同士を溶着層Z1の溶融により溶着する加熱処理とを別工程に分けて行う。また、上記実施形態の回転電機100の構造と本実施形態の回転電機100の構造とは同じである為、当該回転電機100の構造の説明については省略する。なお、本実施形態では、第一の実施形態と同様に、互いに隣接するコイル辺部71同士を溶着層Z1の溶融により溶着させる例を用いて説明する。特に説明しない点については、上記実施形態と同様とすることができる。
上記の第一及び第二の実施形態では、線状導体4がステータコア2に巻き付けられて、隣接する線状導体4の部分同士が互いに密着する方向に加圧された加圧状態で、絶縁層Z2の融点よりも低く溶着層Z1の融点よりも高い温度で加熱されたことにより、線状導体4の接触面同士が溶着層Z1の溶融により溶着する構成を例に説明した。一方、この第三の実施形態では、線状導体4がステータコア2に巻き付けられて、隣接する線状導体4の部分同士が互いに密着する方向に加圧して線状導体4の部分の断面を変形させる加圧処理と、断面が変形した線状導体4の接触面同士を溶着層Z1の溶融により溶着する加熱処理とを別工程に分けて行う。また、上記実施形態の回転電機100の構造と本実施形態の回転電機100の構造とは同じである為、当該回転電機100の構造の説明については省略する。なお、本実施形態では、第一の実施形態と同様に、互いに隣接するコイル辺部71同士を溶着層Z1の溶融により溶着させる例を用いて説明する。特に説明しない点については、上記実施形態と同様とすることができる。
7−1.回転電機の製造方法
本実施形態の製造方法は、図16に示すように、線状導体準備工程#01と溶着工程#02とを有する。そして、溶着工程#02は、線状導体4がステータコア2に巻き付けられて、隣接する線状導体4の部分同士が互いに密着する方向に加圧された加圧状態で、裸導体素線41を構成する材料の再結晶温度(第三温度)以上であって溶着層Z1の融点(第二温度)よりも低い温度で加熱する加圧工程#03(本発明における第一工程)と、当該加圧工程#03における前記加圧状態から解放された状態で、絶縁層Z2の融点(第一温度)よりも低く溶着層Z1の融点(第二温度)よりも高い温度で加熱する加熱工程#04(本発明における第二工程)とを有する。このように、本実施形態では、第一の実施形態の加圧・加熱工程#02Bを、加圧工程#03と加熱工程#04との二段階に分けている点で第一の実施形態とは異なる。
本実施形態の製造方法は、図16に示すように、線状導体準備工程#01と溶着工程#02とを有する。そして、溶着工程#02は、線状導体4がステータコア2に巻き付けられて、隣接する線状導体4の部分同士が互いに密着する方向に加圧された加圧状態で、裸導体素線41を構成する材料の再結晶温度(第三温度)以上であって溶着層Z1の融点(第二温度)よりも低い温度で加熱する加圧工程#03(本発明における第一工程)と、当該加圧工程#03における前記加圧状態から解放された状態で、絶縁層Z2の融点(第一温度)よりも低く溶着層Z1の融点(第二温度)よりも高い温度で加熱する加熱工程#04(本発明における第二工程)とを有する。このように、本実施形態では、第一の実施形態の加圧・加熱工程#02Bを、加圧工程#03と加熱工程#04との二段階に分けている点で第一の実施形態とは異なる。
以下、本実施形態に係る回転電機100の製造方法の具体例について説明する。加圧工程#03は、さらに、コイル辺部挿入工程#03Aと、アニール処理(焼きなまし処理)工程#03Bとを有する。ここで、線状導体準備工程#01は、上記第一の実施形態と同様である。また、コイル辺部挿入工程#03Aは、加圧工程#03にて加圧の対象となる加圧対象部位を、スロット22内に開口部22bから挿入する工程であり、上記第一の実施形態のコイル辺部挿入工程#02Aと同様である。
アニール処理工程#03Bは、複数のスロット22のそれぞれの内部において隣接する加圧対象部位同士、つまり、隣接するコイル辺部71同士を、互いに密着する方向(ここでは径方向R)に加圧した状態で、裸導体素線41を構成する材料の再結晶温度以上であって溶着層Z1の融点よりも低い温度で加熱する工程である。アニール処理工程#03Bでは、具体的には、図9〜図11に示すスロット用加圧治具JSを用いて、コイル3を構成する線状導体4の隣接するコイル辺部71同士を径方向Rに加圧した状態で、予め定めた設定加熱温度で、予め定めた設定加熱時間の間、加熱する。アニール処理工程#03Bにおける設定加熱温度及び設定加熱時間は、溶着層Z1の融点、裸導体素線41の再結晶温度等の他に、溶着層Z1の膜厚やコイル3を構成する線状導体4の総線長等の諸条件に基づいて設定されることが好ましい。また、アニール処理工程#03Bでは、裸導体素線41を構成する材料の再結晶温度以上であって溶着層Z1の融点(第二温度)よりも低い温度、特にその範囲内で再結晶温度にできるだけ近い温度で加熱することが好ましい。これは、絶縁層Z2の融点に比べてより低い温度で加熱することにより、加圧状態下であっても絶縁層Z2の軟化をより抑制でき、絶縁層Z2が薄くなったり破れたりすることもより抑制できるからである。本実施形態では、裸導体素線41は銅で構成されており、当該銅の再結晶温度は約200℃であり溶着層Z1の融点(第二温度)は240℃である。よって、本実施形態のアニール処理工程#03Bでは、裸導体素線41が摂氏200度付近(例えば200〜220℃)となるように加熱する。このように、本実施形態では、摂氏200度付近の設定加熱温度で、予め定めた設定加熱時間(本例では1時間)の間、加熱する。また、スロット用加圧治具JSを用いて、スロット22内の複数のコイル辺部71をまとめて径方向Rに加圧することで、これらを断面変形させ、スロット22におけるコイル辺部71の配置状態を図7に示すような状態とし、隣接するコイル辺部71同士が互いに密着する方向に加圧された状態とすることができる。そして、当該加圧された状態で、裸導体素線41を構成する材料の再結晶温度以上であって溶着層Z1の融点よりも低い温度で加熱する為、線状導体4をステータコア2に巻き付けたことにより生じた裸導体素線41の内部応力を除去することができ、加圧状態から解放した後(スロット用加圧治具JSを取り外した後)も、隣接するコイル辺部71同士が互いに密着した状態に維持することができる。なお、アニール処理工程#03Bは、スロット用加圧治具JSをステータ1に取り付ける治具装着工程と、スロット用加圧治具JSをステータ1から取り外す治具取外し工程とを含む。治具取外し工程が終わると、加熱工程#04に移行する。
加熱工程#04は、加圧工程#03における加圧状態から解放された状態で、絶縁層Z2の融点よりも低く溶着層Z1の融点よりも高い温度で加熱する工程である。本実施形態では、スロット用加圧治具JSを取り外すことにより加圧状態から解放し、隣接するコイル辺部71同士が互いに密着させた状態で、予め定めた設定加熱温度で、予め定めた加熱時間の間、加熱する。これにより、線状導体4の絶縁被覆材46の溶着層Z1が加熱に伴って溶融した後、冷却に伴って凝固する。この際、上記第一の実施形態とは異なり、加圧状態から解放された状態で、絶縁層Z2の融点よりも低く溶着層Z1の融点よりも高い温度で加熱する為、仮に絶縁層Z2が軟化しても絶縁層Z2が薄くなったり破れたりすることを抑制でき、裸導体素線束42の間の絶縁状態を良好に維持することができる。
また、加熱工程#04における設定加熱温度及び設定加熱時間は、絶縁被覆材46の溶着層Z1及び絶縁層Z2のそれぞれの融点、それらの融点の温度差、溶着層Z1及び絶縁層Z2のそれぞれの膜厚、コイル3を構成する線状導体4の総線長、ステータコア2等のステータ1を構成する各部材の耐熱性能等の諸条件に基づいて設定されることが好ましい。本実施形態では、摂氏240度付近の設定加熱温度で、予め定めた加熱時間(本例では1時間)の間、加熱する。
ここで、互いに隣接するコイル渡り部72同士が溶着層Z1の溶融により溶着している回転電機100の製造方法として、本実施形態の製造方法を用いることもできる。すなわち、上記第二の実施形態の構造に本実施形態の製造方法を適用することもできる。この場合、アニール処理工程#03Bでは、コイルエンド用加圧治具JEを用いて、線状導体4がステータコア2に巻き付けられて、隣接するコイル渡り部72の部分同士を互いに密着する方向(ステータコア2の径方向R及びステータコア2の軸方向Lの少なくとも一方)に加圧した状態で、裸導体素線41を構成する材料の再結晶温度以上であって溶着層Z1の融点よりも低い温度で加熱する。また、加熱工程#04では、コイルエンド用加圧治具JEを取り外すことにより加圧状態から解放された状態で、絶縁層Z2の融点よりも低く溶着層Z1の融点よりも高い温度で加熱する。
この場合において、中性点74は、アニール処理工程#03Bにおいて、コイルエンド用加圧治具JEを用いてコイルエンド部73が加圧される際に、コイルエンド部73と共に加圧され、加熱工程#04において共に加熱される。これにより、溶着シート75と溶着層Z1とが溶融して中性点74がコイルエンド部73に溶着される。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、中性点74は、アニール処理工程#03Bにおいては加圧されることなく(コイルエンド用加圧治具JEの加圧対象から除く)、加熱工程#04においてコイルエンド部73と共に加熱されることにより溶着シート75と溶着層Z1とが溶融する構成であってもよい。この場合、溶着シート75は、加圧工程#03前に中性点74に装着されてもよいし、加圧工程#03後であって加熱工程#04前に装着されてもよい。また、アニール処理工程#03Bにおいて、コイルエンド用加圧治具JEを用いてコイルエンド部73が加圧される際に、動力線部44は、コイルエンド部73と共に加圧され、加熱工程#04においてコイルエンド部73と共に加熱される。これにより、当該加熱工程#04により溶着層Z1が溶融するが、カバー材78は溶着層Z1とは溶着しない性質を有する為、溶着層Z1とカバー材78とは溶着しない。よって、動力線部44とコイルエンド部73とは分離している状態となる。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、動力線部44は、アニール処理工程#03Bにおいては加圧されることなく(コイルエンド用加圧治具JEの加圧対象から除く)、加熱工程#04においてコイルエンド部73と共に加熱される構成であってもよい。この場合、動力線部44には、アニール処理工程#03の前にカバー材78が装着されてもよいし、加圧工程#03の後で加熱工程#04の前にカバー材78が装着されてもよい。
8.その他の実施形態
最後に、本発明に係る回転電機及び回転電機の製造方法の、その他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。
最後に、本発明に係る回転電機及び回転電機の製造方法の、その他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。
(1)上記2つの実施形態では、それぞれ、スロット22内のコイル辺部71を加圧しながら加熱する例と、コイルエンド部73を構成するコイル渡り部72を加圧しながら加熱する例と、について説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。すなわち、スロット22内のコイル辺部71とコイルエンド部73を構成するコイル渡り部72とを同時に加圧しながら加熱する構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。この場合において、上記2つの実施形態に係るスロット用加圧治具JSとコイルエンド用加圧治具JEとを組み合わせて、これらの双方の機能を有する単一の治具を用いると好適である。この場合、コイル辺部71が径方向Rに加圧され、コイルエンド部73が径方向R及び軸方向Lの少なくとも一方に加圧された状態で、線状導体4の全体が加熱される。
(2)上記の実施形態では、スロット用加圧治具JSとして、複数の第2楔部材56と締め付け部材57とが別個の部材にて構成されたものを例に説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。例えば、複数の第2楔部材56と締め付け部材57とを一体的に移動できるように連結して、締め付け部材57とベース部材54との間に伸長状態のバネを設けて、当該バネの引っ張り力により、複数の第2楔部材56及び締め付け部材57を挿入方向に押圧する構成でもよい。また、複数の第1楔部材55の一部又は全部を
相互に接続して構成してもよい。複数の第2楔部材56についても同様である。
相互に接続して構成してもよい。複数の第2楔部材56についても同様である。
(3)上記の実施形態では、線状導体4における絶縁被覆材46が二重構造であるものを例に説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、絶縁被覆材は、外周面に形成された溶着層を備えていれば、三層以上の層構造であってもよい。この場合、中間層については非絶縁材料にて形成してもよい。
(4)上記の実施形態では、絶縁被覆材46の溶着層Z1がETFE被膜であり絶縁層Z2がFEP被膜であるものを例に説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、絶縁被覆材46の各層を形成する材料は、例えば、PFA等のその他のフッ素樹脂を用いる等、上記実施形態で例示した材料以外の材料を用いてもよい。
(5)上記の実施形態では、線状導体4が、絶縁被覆材46の径方向内側に被覆内隙間Gを有することで、被覆内隙間Gの部分において裸導体素線41どうしが線状導体4の径方向及び周方向の少なくとも一方に相対移動可能となっている構成を例に説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、絶縁被覆材46を伸縮性を有する材料にて形成することで、絶縁被覆材46の変形に追従して、その内部において複数の裸同士が相対移動することにより、線状導体4の直交断面の形状が変形する構成であってもよい。
(6)上記の実施形態では、隣り合う線状導体4どうしの接触面Sが周方向Cに延びる状態で、複数本の線状導体4の全部が各スロット22内で径方向Rに沿って一列に並ぶように配置されている構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、スロット22内での線状導体4の断面形状や配列は、適宜決定することができる。例えば、隣り合う線状導体4どうしの接触面Sが無作為に様々な方向を向く状態で、スロット22内に複数本の線状導体4が配置された構成としても良い。或いは、各スロット22内に配置される複数本の線状導体4が、径方向Rに沿った列を周方向Cに複数列有するように配置された構成としても良い。
(7)上記の実施形態では、スロット22が、径第二方向R2側に向かうに従ってスロット幅Wが次第に広くなるように形成されている構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。例えば、スロット22の形状を変更し、径方向Rの中間の位置にある層B(図2に示す例では第二層B2、第三層B3、又は第四層B4)、或いは、最も径第一方向R1側の位置にある層B(図2に示す例では第五層B5)が、スロット幅Wが最も大きい径方向Rの位置にある層Bとなる構成とすることも可能である。
(8)上記の実施形態では、コイル辺部71がスロット22の内部において5個の層Bに分かれて配置されている構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、コイル辺部71が“5”以外の奇数個(例えば3個、7個等)の層Bに分かれて配置されている構成や、コイル辺部71が偶数個(例えば、2個、4個、6個等)の層Bに分かれて配置されている構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
(9)上記の実施形態では、裸導体素線41が本発明における「導体素線」に相当する構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、樹脂等(例えばポリアミドイミド樹脂やポリイミド樹脂等)の電気的絶縁材料からなる絶縁皮膜が表面に設けられた導体素線(被覆導体素線)を、本発明における「導体素線」として用い、当該被覆導体素線を複数本集合させた被覆導体素線束の周囲が、絶縁被覆材46により更に被覆されている構成とすることもできる。
(10)上記の実施形態では、ティース23の先端部に周方向突出部23bが形成されている構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、ティース23の先端部に周方向突出部23bが形成されていない構成、すなわち、スロット22がオープンスロットである構成とすることもできる。
(11)上記の実施形態では、裸導体素線41の延在方向に直交する断面の形状が円形状である構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、裸導体素線41の断面形状を、例えば、四角形状、三角形状、五角形状、六角形状、八角形状等の各種多角形状としても良い。
(12)上記の実施形態では、スロット22が径方向Rの内側へ向かう方向である径第一方向R1側に開口部22bを有する構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、スロット22が径方向Rの外側へ向かう方向である径第二方向R2側に開口部を有する構成とすることも可能である。すなわち、本発明は、ロータがステータの径第二方向R2側に配置されるアウタロータ型の回転電機に適用することも可能である。
(13)上記の実施形態では、ステータコア2が、円環板状の磁性体板7を軸方向Lに複数積層して形成されている構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。例えば、ステータコア2が、磁性材料の粉体を加圧成形してなる圧粉材を主な構成要素として形成されている構成とすることも可能である。この場合、ステータコア2が、周方向Cに加えて、径方向R及び軸方向Lの双方においても一体に形成されている構成とすることができる。
(14)上記の実施形態では、ステータコア2が本発明における「コア」に相当する構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。例えば、本発明を固定界磁型の回転電機に適用し、コイル3の巻装対象のコアがロータのコアである構成、すなわち、ロータのコアが本発明における「コア」に相当する構成とすることも可能である。このように、本発明に係る「コア」は、ステータコア2以外の電機子コアに適用することが可能である。
(15)その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、本願の特許請求の範囲に記載されていない構成に関しては、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
(16)上記第二の実施形態では、溶着シート75が、溶着層Z1と同じ材料のみから構成されているが、本発明の実施形態はこれに限定されない。溶着シート75は、少なくとも表層部分が溶着層Z1で構成されていればよい為、溶着シート75として、溶着層Z1と絶縁層Z2とから構成される絶縁被覆材46と同じシートを用いることも可能である。すなわち、溶着シート75は、ETFE被膜とFEP被膜とから構成されていてもよい。この際、溶着シート75が、絶縁層を有する為、絶縁シート77は不要としてもよい。なお、溶着シート75をスリーブ材76に装着する際には、スリーブ材76と溶着シート75の絶縁層とが接し、溶着シート75の溶着層が外周面側となるように巻き付ける。当該構成によれば、絶縁被覆材46と同じシートを溶着シート75として有効利用できる為、部品点数を削減できる。
(17)上記第二の実施形態では、中性点74は、溶着シート75の表層部分の溶融によってコイルエンド部73に溶着されて固定される構成であるが、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、別の部材によって固定される構成であってもよい。例えば、図18に示すように、結束紐79を用いて、コイルエンド部73と中性点74とを一体的に結束することにより、中性点74をコイルエンド部73に固定する構成であってもよい。
(18)上記第二の実施形態では、カバー材78として、溶着層Z1と溶着しにくい材料を用いる構成であるが、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。カバー材78として、溶着層Z1と溶着しやすい材料を用いてもよい。ただし、その場合には、加圧・加熱工程#02Bを行う際に動力線部44をコイルエンド用加圧治具JEの外に配置する等して、動力線部44に対して加圧・加熱工程#02Bを行わないようにする。これにより、図19に示すように、動力線部44の隣接配置部分45は、コイルエンド部73と非接触状態となる。この場合にも、コイルエンド部73における線状導体4の接触面同士が溶着層Z1の溶融により溶着している状態で、カバー材78は、溶着層Z1と非溶着状態となる。
本発明は、円筒状のコアとこのコアに巻き付けられたコイル用の導体線とを備えた回転電機に好適に利用することができる。
C 周方向
L 軸方向
S 接触面
Z1 溶着層
Z2 絶縁層
100 回転電機
2 コア
3 コイル
4 線状導体
41 導体素線
42 導体素線束
46 絶縁被覆材
46S 外周面
71、72 線状導体の部分(コイル辺部、コイル渡り部)
21 コア基準面
22 スロット
73 コイルエンド部
L 軸方向
S 接触面
Z1 溶着層
Z2 絶縁層
100 回転電機
2 コア
3 コイル
4 線状導体
41 導体素線
42 導体素線束
46 絶縁被覆材
46S 外周面
71、72 線状導体の部分(コイル辺部、コイル渡り部)
21 コア基準面
22 スロット
73 コイルエンド部
Claims (16)
- コアと、当該コアに巻き付けられてコイルを構成する線状導体と、を備えた回転電機であって、
前記線状導体は、導体素線を複数本集合させた導体素線束の周囲を、可撓性の絶縁被覆材により被覆して構成され、
前記絶縁被覆材は、外周面に形成された溶着層を備え、
互いに隣接する前記線状導体の部分同士が面接触するように、当該線状導体の部分が断面変形した状態で、これらの前記線状導体の接触面同士が、前記溶着層の溶融により溶着している回転電機。 - 前記絶縁被覆材は絶縁層を備え、
前記溶着層は、前記絶縁層に対して外周面側に形成されていると共に、前記絶縁層よりも融点が低い材料で構成され、
前記線状導体が前記コアに巻き付けられて、前記絶縁層の融点である第一温度よりも低く前記溶着層の融点である第二温度よりも高い温度で加熱されたことにより前記線状導体の接触面同士が溶着している請求項1に記載の回転電機。 - 前記線状導体が前記コアに巻き付けられて、隣接する前記線状導体の部分同士が互いに密着する方向に加圧された加圧状態で、前記導体素線を構成する材料の再結晶温度である第三温度以上であって前記第二温度よりも低い温度で加熱された後、前記加圧状態から解放された状態で、前記第一温度よりも低く前記第二温度よりも高い温度で加熱されたことにより前記線状導体の接触面同士が溶着している請求項2に記載の回転電機。
- 前記線状導体が前記コアに巻き付けられて、隣接する前記線状導体の部分同士が互いに密着する方向に加圧された加圧状態で、前記第一温度よりも低く前記第二温度よりも高い温度で加熱されたことにより前記線状導体の接触面同士が溶着している請求項2に記載の回転電機。
- 前記コアは、円筒状のコア基準面の周方向に分散配置された複数のスロットを備え、
前記スロットのそれぞれは、前記コア基準面の軸方向に延びるように形成され、
前記線状導体の前記スロット内に配置される部分がコイル辺部であり、
前記コイル辺部は、前記スロットのそれぞれに複数配置されており、
前記スロットのそれぞれの内部における複数の前記コイル辺部は、前記コア基準面の径方向に加圧されて前記加圧状態とされたものである請求項3又は4に記載の回転電機。 - 前記線状導体における、前記コアに対して当該コアの軸方向の外側に配置される部分がコイル渡り部であり、
複数の前記コイル渡り部の集合であるコイルエンド部は、前記コアの径方向及び前記コアの軸方向の少なくとも一方に加圧されて前記加圧状態とされたものである請求項3から5のいずれか一項に記載の回転電機。 - 前記コイルは、複数相のコイルユニットを有して構成されていると共に、当該複数相のコイルユニットを互いにスター結線するように接続する中性点を備え、
前記中性点は、溶着シートを介して前記コイルエンド部に接するように配置され、
前記溶着シートは、少なくとも表層部分が前記溶着層と同じ材料で構成され、
前記中性点は、前記溶着シートの少なくとも前記表層部分の溶融により前記コイルエンド部に溶着している請求項6に記載の回転電機。 - 前記線状導体の前記コイルを構成する部分から引き出された前記線状導体の部分であって電源に接続される動力線部を更に備え、
前記動力線部は、前記コイルエンド部に沿って配置される部分である隣接配置部分を有し、
前記隣接配置部分の外周面が、前記絶縁被覆材とは別のカバー材により覆われ、
前記コイルエンド部における前記線状導体の接触面同士が前記溶着層の溶融により溶着している状態で、前記カバー材が、前記溶着層と非溶着状態となっている請求項6又は7に記載の回転電機。 - コアと、当該コアに巻き付けられてコイルを構成する線状導体と、を備えた回転電機を製造するための製造方法であって、
導体素線を複数本集合させた導体素線束の周囲を、可撓性の絶縁被覆材により被覆して構成され、前記絶縁被覆材の外周面に形成された溶着層を備えた前記線状導体を用意する工程と、
互いに隣接する前記線状導体の部分同士が面接触するように、当該線状導体の部分が断面変形した状態で、これらの前記線状導体の接触面同士を、前記溶着層を溶融させることにより溶着させる溶着工程と、を有する回転電機の製造方法。 - 前記絶縁被覆材は絶縁層を備え、
前記溶着層は、前記絶縁層に対して外周面側に形成されていると共に、前記絶縁層よりも融点が低い材料で構成され、
前記溶着工程では、前記線状導体が前記コアに巻き付けられて、前記絶縁層の融点である第一温度よりも低く前記溶着層の融点である第二温度よりも高い温度で前記線状導体を加熱する請求項9に記載の回転電機の製造方法。 - 前記溶着工程は、前記線状導体が前記コアに巻き付けられて、隣接する前記線状導体の部分同士が互いに密着する方向に加圧された加圧状態で、前記導体素線を構成する材料の再結晶温度である第三温度以上であって前記第二温度よりも低い温度で加熱する第一工程と、
前記第一工程における前記加圧状態から解放された状態で、前記第一温度よりも低く前記第二温度よりも高い温度で加熱する第二工程と、を有する請求項9又は10に記載の回転電機の製造方法。 - 前記溶着工程では、前記線状導体が前記コアに巻き付けられて、隣接する前記線状導体の部分同士が互いに密着する方向に加圧された加圧状態で、前記第一温度よりも低く前記第二温度よりも高い温度で加熱する請求項10に記載の回転電機の製造方法。
- 前記線状導体の前記スロット内に配置される部分がコイル辺部であり、
円筒状のコア基準面の周方向に分散配置された複数のスロットを備えると共に前記スロットのそれぞれが前記コア基準面の軸方向に延びるように形成された前記コアと、前記コイル辺部が前記スロットのそれぞれに複数配置されたコイルと、を用意する工程を更に備え、
前記溶着工程では、前記スロットのそれぞれの内部における複数の前記コイル辺部を、前記コア基準面の径方向に加圧することで前記加圧状態とする請求項11又は12に記載の回転電機の製造方法。 - 前記線状導体における、前記コアに対して当該コアの軸方向の外側に配置される部分がコイル渡り部であり、
前記溶着工程では、複数の前記コイル渡り部の集合であるコイルエンド部を、前記コアの径方向及び前記コアの軸方向の少なくとも一方に加圧することで前記加圧状態とする請求項11から13のいずれか一項に記載の回転電機の製造方法。 - 前記コイルは、複数相のコイルユニットを有して構成されていると共に、当該複数相のコイルユニットを互いにスター結線するように接続する中性点を備え、
少なくとも表層部分が前記溶着層と同じ材料で構成された溶着シートを用意する工程と、
前記中性点を、前記溶着シートを介して前記コイルエンド部に接するように配置する工程と、を更に有し、
前記溶着工程では、前記溶着シートの少なくとも前記表層部分の溶融によって、前記コイルエンド部に前記中性点を溶着させる請求項14に記載の回転電機の製造方法。 - 前記回転電機は、前記線状導体の前記コイルを構成する部分から引き出された前記線状導体の部分であって電源に接続される動力線部を更に備え、
前記動力線部は、前記コイルエンド部に沿って配置される部分である隣接配置部分を有し、
前記絶縁被覆材とは別に、前記隣接配置部分の外周面を覆うカバー材を用意する工程を更に有し、
前記溶着工程では、前記カバー材を前記溶着層と非溶着状態に維持しつつ、前記コイルエンド部における前記線状導体の接触面同士を前記溶着層の溶融により溶着させる、請求項14又は15に記載の回転電機の製造方法。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2013013545A JP2014082917A (ja) | 2012-09-28 | 2013-01-28 | 回転電機及び回転電機の製造方法 |
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JP (1) | JP2014082917A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN114128110A (zh) * | 2019-07-17 | 2022-03-01 | 株式会社电装 | 旋转电机 |
-
2013
- 2013-01-28 JP JP2013013545A patent/JP2014082917A/ja active Pending
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CN114128110A (zh) * | 2019-07-17 | 2022-03-01 | 株式会社电装 | 旋转电机 |
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