JP2014076502A - 精密切削加工具およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 多角形形状の孔を板材に開けた板篩を用いて、研磨材粒子を粒度選別することにより得た、精密切削工具のブレード厚さよりもわずかに大きい粒径を有する、粒径ばらつきがきわめて少ない研磨材粒子をブレードに埋め込んだ、精密切削工具。
【選択図】 図6
Description
このようなブレードを有する切削加工工具による、サファイア、水晶、リチウムタンタレート等の、硬脆材料基板の精密切削加工においては、チッピングと呼ばれるクラックが、基板表面に発生することが知られている。
なお、ダイヤモンドおよび立方晶窒化ホウ素の粒度は、JIS B4130による定義では、粒度の数字が大きいほど粒の寸法は小さく、たとえば♯230/270は、JISの規定により、以下に詳説するように、目開きが75μmの電成篩を概ね通過し57μmの電成篩を概ね通過しない、というような粒の大きさの分布を持つことを意味する。
上記各特許文献に開示された、精密切削加工用のブレードにおいても、チッピングの問題及び工具寿命向上という課題の両者に解決策を与えるものではない。すなわち特許文献1及び2のタイプのブレードでは、ダイヤモンドや超砥粒からなる砥粒を電気めっき金属相で固定した電鋳ブレードが記載されているが、どちらも使用砥粒はブレード厚みに比べて相当に小さい砥粒のみが用いられている。このようなブレードにおいて切削作業に携わり磨滅した砥粒は増加する切削抵抗に抗しきれずに金属相から脱落し、かつ金属相がすり減り、下層に配置されている砥粒が表面に露出して切削作業が継続される。小さな砥粒を使用するブレードではこの砥粒の交代が速く進行するので工具の寿命は必ずしも満足できるものではなかった。
また、これらの複数砥粒が分布するものは、ブレード側面からの砥粒突出の程度にばらつきが大きく、チッピングが生じがちであった。
このような粒度差変動の大きな砥粒を上記精密切削工具の刃部に用いると、被加工物に対向する砥粒の先端位置は一様ではなくなり、被加工物に最も近い一部の砥粒のみが被加工物に係り合い表面の研磨を行うことになるので、これら一部の砥粒に過度の負担が掛かりやすく、その結果砥粒が早期に破砕し、さらには工具寿命の縮減を来すこととなる。また、そのような突出により、チッピングも発生する。
したがって、本発明が解決しようとする課題は、精密切削工具を、チッピングの発生をより少なくしたうえで、従来より長寿命で切削効率の高いものとすることにある。
[1]円形または5個以上の頂点を持つ正多角形の貫通孔を複数個有する篩板によって、篩分けにより整粒した、ブレード厚みよりも大きい粒度値の研磨材粒子を、ブレードの厚み方向に貫通する孔に挿入した、または電成ブレードに埋め込んだ、精密切削工具。
[2]研磨材粒子が、整粒により限定された範囲内の粒度を持ち、粒度区分ごとの成分割合が該範囲内の限定された部分において最大値を示し、平均粒径D50が10μm以上であり、かつ、粒度分布における累積頻度50%点P50における粒度値D50と、95%点P95と5%点P05とにおける粒度値の差(D95−D05)との比(D95−D05)/D50が、0.2以下である、[1]に記載の精密切削工具。
[3]研磨材粒子が、ダイヤモンドまたは立方晶窒化ホウ素砥粒である、[1]または[2]に記載の精密切削工具。
[4]円板又は円環状の基板の外周又は内周に沿って一定幅の刃部を有し基板中心を回転軸とする回転工具の刃部において、基板中心を中心とする1又は複数の円周上に刃部厚みよりも大きい粒径の研磨材粒子が少なくとも一つは存在する、[1]〜[3]のいずれか一つに記載の精密切削工具。
[6]研磨材粒子の表面にチタン、クロム、ジルコニウム、モリブデン、タンタルまたはタングステン、またはこれらの組み合わせからなる被覆層を有する研磨材粒子を、刃部の孔内に挿入固着、または埋め込み形成した、[1]〜[5]のいずれか一つに記載の精密切削工具。
[7]工具基板の外周または内周に刃部を有する回転式の切削工具であるか、またはバンドソー式である、[1]〜[6]のいずれか一つに記載の精密切削工具。
[8]円形または5個以上の頂点を持つ正多角形の貫通孔を複数個有する篩板によって、篩分けにより整粒した、ブレード厚みよりも大きい粒度値の研磨材粒子を、ブレードの厚み方向に貫通する孔に挿入する、または埋め込み形成する、精密切削工具を製造する方法。
[9]研磨材粒子が、整粒により限定された範囲内の粒度を持ち、粒度区分ごとの成分割合が該範囲内の限定された部分において最大値を示し、平均粒径D50が10μm以上であり、かつ、粒度分布における累積頻度50%点P50における粒度値D50と、95%点P95と5%点P05とにおける粒度値の差(D95−D05)との比(D95−D05)/D50が、0.2以下である、[8]に記載の方法。
[10]研磨材粒子の表面をチタン、クロム、ジルコニウム、モリブデン、タンタルまたはタングステン、またはこれらの組み合わせからなる被覆を施した砥粒を、ブレードの孔内に挿入固着、または埋め込み形成する、[8]または[9]の方法、に関する。
すなわち、測定原理が異なれば、粒子の寸法の尺度たる「粒径」も意味が異なるものとなる。
したがって、粒の集合体についての寸法指標である「粒度」は、いかなる粒状物についての「粒度」であるのかの特定がまず必要であり、また、寸法の尺度たる「粒径」が測定原理により異なるのであるから、「粒度」をどのようにして決定するのかについての特定も必ず必要である。
そのために、JIS B4130に規定する「粒度」は、ダイヤモンドおよび立方晶窒化ホウ素の砥粒についてのものであり、4段篩を用いて「粒度」を決定する、と特定しているのである。)
本発明の精密切削工具が使用する研磨材粒子において、個々の粒子の大きさ乃至粒度の評価は、基本的に二軸平均径により行う。二軸平均径の定義は粉体工業の分野ではよく知られているが、評価の手法は様々であり、被測定物の種類やサイズに応じて適切なものが選ばれている。本発明において評価手法自体は重要でなく、一つの測定を通じて一貫性が保たれれば充分である。
本発明の精密切削工具が使用する研磨材粒子は集合体として分布上において成分粒子の累積頻度を表す5%点、50%点及び95%点によって特徴づけられ、定義される。
ここでは、本発明の精密切削工具が使用する研磨材粒子の分布曲線(分布2)が従来の篩い分けで得られる粒子の分布曲線(分布1)と対比されている。本発明の精密切削工具が使用する研磨材粒子の分布においてはD50値のピークが従来の粒子の分布よりも急峻で裾野が狭く、D50付近の頻度が高くなっているのが理解される。
本発明の精密切削工具が使用する砥粒の分布(分布2)は、図5に示される、本発明において実際に抽出された充分な個数のサンプル粒子の粒度(粒径)について、50%点P50における値、算出された標準偏差に基づいて正規分布を想定して曲線を描いている。この分布2において5%点P05における粒度D05及び95%点P95における粒度D95が決定される。
この工具は、刃部側面から突出したエッジが、寸法ばらつきの極めて少ない砥粒のエッジであるため、従来のブレードに比較して、突出量のばらつきがきわめて少ないものである。
さらに、結晶が大きくて強固に刃部に固定されるので、刃部の摩耗の程度も抑えられ、切削効率が良いにもかかわらず工具の寿命が長い。
すなわち、本発明の精密切削工具による効果は、より大粒な砥粒の使用による研磨効率の高さと、この大粒の粒子が孔に挿入されている、または埋め込み形成されているという構成による粒子脱落の少なさ、それによる長寿命、が得られるにもかかわらず、粒径ばらつきがきわめて小さいことにより、チッピングの発生も抑制され、切削加工後の被加工対象の加工面の精度も高く、仕上げ加工が必要ないことなどである。
本発明の精密切削工具が使用する研磨材粒子は、精密篩分けにより得られるものであり、精密篩分けは、例えばレーザーによって篩に用いる薄板に孔を開け、そのようにして作成した孔あき薄板を、砥粒の篩分け用の篩として用い、さらに、篩分けに用いる複数段の篩の、篩の公称目開きが、各段間で従来のJISにおけるものよりも小さいものとすることにより、篩分け精度の高い精密篩分けを行うものである。
円形孔の場合は、ドリル等の機械加工により形成することも可能である。
ピッチ、即ち整列形成されている目開き群の隣接目開き間隔は篩い分け操作の効率には関係するが、本発明の主目的である篩い分け精度には本質的に影響しないので、任意に設定することができる。この点において、JIS規格における四角形目開きの辺寸法の1.05〜1.4倍とするのが簡便であるが、多角形孔最大さしわたし(外接円直径)の1.05〜1.4倍、或いはそれ以上でも精度に関しては特に支障なく利用できる。
さらに、上記砥粒粒度に関するJIS規格が規定するナローレンジの篩を用いる4枚篩による選別よりも、格段に段間の篩目開き寸法の差が小さな篩の組を用いて選別を行う場合には、得られる砥粒間の粒径は、さらにばらつきが小さくなる。
本発明の精密切削工具が使用する研磨材粒子の篩は粗大粒子の阻止機能が確実なので、必要な範囲を規定する一組の篩の使用を基本とするが、さらに必要に応じてそれ以上の篩を組み合わせて使用することも可能である。
例えば、従来の篩分け操作においては約170μmの粒径の砥粒としては、この粒径の両側の目開き寸法を有するNo. 80/100の2段階の篩で篩い分けされた粒子が使用されるが、本発明においては小さい側の目開き寸法として170〜175μm、大きい側として185〜190μmのものを一組利用することで実施できる。
目開きの形状は篩分けされる粒子の外形に応じて選ぶことにより、精度をさらに上げることができる。例えば結晶面の発達したダイヤモンド粒子については六面体と八面体との複合が多く表れるので、八角形又は六角形の目開きが好適である。なお五角形や七角形の奇数辺多角形も可能ではあるが、実用的な効果の点では偶数角形の方が好ましい。
前者を通過し、後者を通過しなかった砥粒のみを選別することによって、四角形の目開きを持つ網篩や電成篩では達成できなかった、ばらつきの少ない精密な粒径を持つ比較的大きい砥粒を得る。
本願発明の精密切削工具が使用する研磨材粒子の研磨材粒子のばらつきの少なさは、従来のJIS B4130に規定する、網篩または電製篩では、孔の形状が四角形であるため決して達成できず、円形または5個以上の頂点を持つ多角形貫通孔を複数有する篩板によって篩分けをすることによって、達成できたのである。
図5に示される結果となった例では、厚さ0.1mmのモリブデン薄板に、八角形の孔をレーザー加工により開口した薄板篩を用いた。
JIS B4130によれば、粒度80/100という粒度分布の砥粒は、197μmの目開きの篩に10%以上が留まらず、151μmの目開きの篩を10%以上通過してはならない、と規定されている。これを図で表現すれば、図4における外側の縦線のさらに外側にある粒子の割合が、20%まで許容される、なだらかなピークとなる。
これに対して、本願発明のものは、49μm以上の平均粒径D50を有するこの砥粒の例のように、平均粒径D50の上下45%の成分粒子は、平均粒径D50の0.2倍の粒径範囲に入ってしまう、すなわち図4における鋭いピークとなる。
この孔2の中心軸は、工具が回転式の切削工具である場合、回転軸に平行であることが好ましく、切削工具がダイシングソーである場合は、ソーの面に垂直であるのが好ましい。
また、図9に、図6のものと同様の外周刃型工具の刃部であって、図の左側を基準面として電鋳により形成した例の断面を示す。
また、ブレード基材は、図6に記載されているような、電鋳により形成し、砥粒1よりも粒径の小さい細粒の砥粒が基材中に埋め込まれているものでも、細粒の無いものでもよく、砥粒1も、孔に挿入してから固定するもののみならず、砥粒1の寸法のものを電鋳により固めてブレードを形成してもよい。
そのための孔2または大きい砥粒1の配置は、格子状、スパイラル状または放射状等が考えられるが、被切削物の共振を避けるために、あえて不規則間隔で並ぶように配置してもよい。
本願発明の精密切削工具は、図10にバンドソーの切削縁部近傍を示すような、バンドソーの形式でもよい。バンドソーの場合も、刃部の摩耗により作用縁が移動した場合でも、常に砥粒が表面に露出するような孔2の配置とすることが好ましい。
図12に示すような刃部断面を有する構造、すなわち、基板の表面に電着によってより細かい砥粒を含む刃部を形成し、さらにこの刃部に、砥粒電着層および基板を貫通してより大粒の砥粒が分布されているという刃部の構造は、内周刃型のものやバンドソー型のものに採用しても良い。
2:研磨材粒子孔
3:ブレード側面
4:精密切削工具
5:ソー側面
6:ソー刃部エッジ
7:外周刃部エッジ
8:外周刃ブレード基板
9:刃部
10:内周刃ブレード基板
11:内周刃部エッジ
Claims (10)
- 円形または5個以上の頂点を持つ正多角形の貫通孔を複数個有する篩板によって、篩分けにより整粒した、刃部厚みよりも大きい粒度値の研磨材粒子を、刃部の厚み方向に貫通する孔に挿入した、または電成ブレードに埋め込んだ、精密切削工具。
- 研磨材粒子が、整粒により限定された範囲内の粒度を持ち、粒度区分ごとの成分割合が該範囲内の限定された部分において最大値を示し、平均粒径D50が10μm以上であり、かつ、粒度分布における累積頻度50%点P50における粒度値D50と、95%点P95と5%点P05とにおける粒度値の差(D95−D05)との比(D95−D05)/D50が、0.2以下である、請求項1に記載の精密切削工具。
- 研磨材粒子が、ダイヤモンドまたは立方晶窒化ホウ素砥粒である、請求項1または2に記載の精密切削工具。
- 円板又は円環状の基板の外周又は内周に沿って一定幅の刃部を有し基板中心を回転軸とする回転工具の刃部において、基板中心を中心とする1又は複数の円周上に刃部厚みよりも大きい粒径の研磨材粒子が、ブレード軸を中心とした、ブレード外縁からの一定範囲を通過する円周上に少なくとも一つは存在する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の精密切削工具。
- ブレード基材が各種鋼、銅、ニッケル、またはこれらの合金、または、これらの組み合わせである材料からなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の精密切削工具。
- 研磨材粒子の表面にチタン、クロム、ジルコニウム、モリブデン、タンタルまたはタングステン、またはこれらの組み合わせからなる被覆層を有する研磨剤粒子を、刃部の孔内に挿入固着、または埋め込み形成した、請求項1〜5のいずれか一項に記載の精密切削工具。
- 工具基板の外周または内周に刃部を有する回転式の切削工具であるか、またはバンドソー式である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の精密切削工具。
- 円形または5個以上の頂点を持つ正多角形の貫通孔を複数個有する篩板によって、篩分けにより整粒した、ブレード厚みよりも大きい粒度値の研磨材粒子を、ブレードの厚み方向に貫通する孔に挿入する、または埋め込み形成する、精密切削工具を製造する方法。
- 研磨材粒子が、整粒により限定された範囲内の粒度を持ち、粒度区分ごとの成分割合が該範囲内の限定された部分において最大値を示し、平均粒径D50が10μm以上であり、かつ、粒度分布における累積頻度50%点P50における粒度値D50と、95%点P95と5%点P05とにおける粒度値の差(D95−D05)との比(D95−D05)/D50が、0.2以下である、請求項8に記載の方法。
- 研磨材粒子の表面をチタンクロム、ジルコニウム、モリブデン、タンタルまたはタングステン、またはこれらの組み合わせでコートしたうえで、ブレードの孔内に挿入固着、または埋め込み形成する、請求項8または9の方法。
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