JP6076009B2 - 粒子間粒度変動の減少した研磨材及びその製法 - Google Patents
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Description
特許文献2には、電着砥石に関する発明が開示され、高精度な電着砥石を製作しようとする場合、「砥粒の大きさをふるい等により十分揃え、これを砥粒の重なりがないように台金の表面に一層だけ電着する」際には、「砥粒の大きさを揃えることが非常に難しく、砥石精度として数ミクロン以内の形状精度を得ることは困難」であるため、「外周の一部に平面や曲面といった面が形成されると共に該面からの高さが所定の寸法に揃えられた砥粒が、台金に対して砥粒の前記面が接して電着されている」旨が記載されている。
なお、ダイヤモンドおよび立方晶窒化ホウ素の粒度は、JIS B4130により定義されており、粒度の数字が大きいほど粒の寸法は小さく、たとえば♯230/270は、JISの規定により、以下に詳説するように、目開きが75μmの電成篩を概ね通過し57μmの電成篩を概ね通過しない、というような粒の大きさの分布を持つことを意味する。
特許文献4には、結合剤にガラスないしガラス・磁器質よりなるビトリファイドボンドを用いてダイヤモンド砥粒表面に金属粒子の突起を設けたビドリファイド砥石に関する発明が開示され、ダイヤモンド砥粒の平均粒径が20μmのものから160μmのものまでの実施例が開示されている。
このような粒度差変動の大きな砥粒を工具基体に固着すると、基体表面が平滑であっても被加工物に対向する砥粒の先端は一様でなく、被加工物に最も近い一部の砥粒のみが被加工物に係り合い表面の研磨を行うことになるので、これら一部の砥粒に過度の負担が掛かりやすく、その結果砥粒が早期に破砕し、さらには工具寿命の縮減を来すこととなる。
一方、加工効率を重視してより大きなエッジを持つ、より粗い砥粒を使用する研磨作業においては、砥粒先端の位置の変動も大きいことから、表面の仕上がり精度も低く、仕上げのためにより粒度の小さな砥粒を用いた仕上げ加工が必要になる。
したがって、本発明が解決しようとする課題は、これまで以上にばらつきの少ない研磨材粒子を提供することにある。
[1]円形または5個以上の頂点を持つ正多角形の貫通孔を複数個有する篩板によって、篩分けにより整粒するものである研磨材粒子。
[2]整粒により限定された範囲内の粒度をもつ研磨材の構成粒子が、粒度区分ごとの成分割合が該範囲内の限定された部分において最大値を示し、平均粒径D50が49μm以上であり、かつ、粒度分布における累積頻度50%点P50における粒度値D50と、95%点P95と5%点P05とにおける粒度値の差(D95−D05)との比(D95−D05)/D50が、0.2以下である、[1]に記載の研磨材粒子。
[3]研磨材粒子が、ダイヤモンドまたは立方晶窒化ホウ素砥粒である、[1]または[2]に記載の研磨材粒子。
[4]前記整粒工程が乾式精密篩分けに基づく、[1]〜[3]のいずれかひとつに記載の研磨材粒子。
[6]円形または5個以上の頂点を持つ正多角形の貫通孔を複数個有する篩板によって、[1]〜[5]のいずれか一つに記載の研磨材粒子を選別する、研磨材粒子選別方法。
[7]整粒された研磨材粒子群を工具基板の連続表面上又は隣接して固着させた研磨・切削加工工具において、平均粒径D50が49μm以上であり、累積粒度分布における50%点P50における値D50に対する95%点P95と5%点P05とにおける粒度の差の比(D95−D05)/D50が、0.2以下である研磨材粒子群を工具基板に固定した工具。
[8]中間値粒径の異なる複数の前記研磨材粒子群を固着してなる、[7]に記載の研磨・切削加工工具、
に関する。
すなわち、測定原理が異なれば、粒子の寸法の尺度たる「粒径」も意味が異なるものとなる。
したがって、粒の集合体についての寸法指標である「粒度」は、いかなる粒状物についての「粒度」であるのかの特定がまず必要であり、また、寸法の尺度たる「粒径」が測定原理により異なるのであるから、「粒度」をどのようにして決定するのかについての特定も必ず必要である。
そのために、JIS B4130に規定する「粒度」は、ダイヤモンドおよび立方晶窒化ホウ素の砥粒についてのものであり、4段篩を用いて「粒度」を決定する、と特定しているのである。)
本発明において個々の粒子の大きさ乃至粒度の評価は、基本的に二軸平均径により行う。二軸平均径の定義は粉体工業の分野ではよく知られているが、評価の手法は様々であり、被測定物の種類やサイズに応じて適切なものが選ばれている。本発明において評価手法自体は重要でなく、一つの測定を通じて一貫性が保たれれば充分である。
本発明による研磨材粒子は集合体として分布上において成分粒子の累積頻度を表す5%点、50%点及び95%点によって特徴づけられ、定義される。
ここでは、本発明による研磨材粒子の分布曲線(分布2)が従来の篩い分けで得られる粒子の分布曲線(分布1)と対比されている。本発明の分布においてはD50値のピークが従来の粒子の分布よりも急峻で裾野が狭く、D50付近の頻度が高くなっているのが理解される。
本発明の分布(分布2)は、図5に示される、本発明において実際に抽出された充分な個数のサンプル粒子の粒度について、50%点P50における値、算出された標準偏差に基づいて正規分布を想定して曲線を描いている。この分布2において5%点P05における粒度D05及び95%点P95における粒度D95が決定される。
さらに、本発明の砥粒を用いた研磨工具による効果は、粒径の揃った、大粒の砥粒であるので、大粒であることによる研磨効率の高さと、粒径ばらつきが小さいことにより、研磨後の被研磨対象の研磨面の平滑度が従来のより粒径の小さい砥粒により仕上げ研磨をおこなったものと遜色無い程度まで向上することである。
本発明の、粒径のばらつきが格段に小さい砥粒は、精密篩分けにより得られるものであり、精密篩分けは、例えばレーザーによって篩に用いる薄板に孔を開け、そのようにして作成した孔あき薄板を、砥粒の篩分け用の篩として用い、さらに、篩分けに用いる複数段の篩の、篩の公称目開きが、各段間で従来のJISにおけるものよりも小さいものとすることにより、篩分け精度の高い精密篩分けを行うものである。
円形孔の場合は、ドリル等の機械加工により形成することも可能である。
ピッチ、即ち整列形成されている目開き群の隣接目開き間隔は篩い分け操作の効率には関係するが、本発明の主目的である篩い分け精度には本質的に影響しないので、任意に設定することができる。この点において、JIS規格における四角形目開きの辺寸法の1.05〜1.4倍とするのが簡便であるが、多角形孔最大さしわたし(外接円直径)の1.05〜1.4倍、或いはそれ以上でも精度に関しては特に支障なく利用できる。
さらに、上記砥粒粒度に関するJIS規格が規定するナローレンジの篩を用いる4枚篩による選別よりも、格段に段間の篩目開き寸法の差が小さな篩の組を用いて選別を行う場合には、得られる砥粒間の粒径は、さらにばらつきが小さくなる。
本発明の篩は粗大粒子の阻止機能が確実なので、必要な範囲を規定する一組の篩の使用を基本とするが、さらに必要に応じてそれ以上の篩を組み合わせて使用することも可能である。
例えば、従来の篩分け操作においては約170μmの粒径の砥粒としては、この粒径の両側の目開き寸法を有するNo. 80/100の2段階の篩で篩い分けされた粒子が使用されるが、本発明においては小さい側の目開き寸法として170〜175μm、大きい側として185〜190μmのものを一組利用することで実施できる。
目開きの形状は篩分けされる粒子の外形に応じて選ぶことにより、精度をさらに上げることができる。例えば結晶面の発達したダイヤモンド粒子については六面体と八面体との複合が多く表れるので、八角形又は六角形の目開きが好適である。なお五角形や七角形の奇数辺多角形も可能ではあるが、実用的な効果の点では偶数角形の方が好ましい。
前者を通過し、後者を通過しなかった砥粒のみを選別することによって、四角形の目開きを持つ網篩や電成篩では達成できなかった、ばらつきの少ない精密な粒径を持つ比較的大きい砥粒を得る。
本願発明の研磨剤粒子のばらつきの少なさは、従来のJIS B4130に規定する、網篩または電製篩では、孔の形状が四角形であるため決して達成できず、5個以上の頂点を持つ多角形貫通孔を複数有する篩板によって篩分けをすることによって、達成できたのである。
図5に示される結果となった実施例では、厚さ0.1mmのモリブデン薄板に、八角形の孔をレーザー加工により開口した薄板篩を用いた。
JIS B4130によれば、粒度80/100という粒度分布の砥粒は、197μmの目開きの篩に10%以上が留まらず、151μmの目開きの篩を10%以上通過してはならない、と規定されている。これを図で表現すれば、図4における外側の縦線のさらに外側にある粒子の割合が、20%まで許容される、なだらかなピークとなる。
これに対して、本願発明は、49μm以上の平均粒径D50を有する砥粒において、平均粒径D50の上下45%の成分粒子は、平均粒径D50の0.2倍の粒径範囲に入ってしまう、すなわち図4における鋭いピークとなる。
Claims (5)
- 円形または5個以上の頂点を持つ正多角形の貫通孔を複数個有する篩板による篩分け整粒によって、限定された範囲内の粒度を持った、ダイヤモンドまたは立方晶窒化ホウ素研磨材の構成粒子群であって、粒度区分ごとの成分割合が該範囲内の限定された部分において最大値を示し、累積頻度50%点P 50 における粒度値D 50 が49μm以上であり、かつ、粒度分布における累積頻度50%点P 50 における粒度値D 50 と、95%点P 95 と5%点P 5 とにおける粒度値の差(D 95 −D 5 )との比(D 95 −D 5 )/D 50 が0.2以下である、前記研磨材粒子群。
- 整粒工程が乾式精密篩分けに基づく、請求項1に記載の研磨材粒子群。
- 貫通孔がレーザー加工により形成されたものである、請求項1または2に記載の研磨材粒子群。
- 整粒された研磨材粒子群を工具基板の連続表面上又は隣接して固着させた研磨・切削加工工具において、請求項1〜3のいずれか一項に記載の研磨材粒子群を工具基板に固定した工具。
- 累積頻度50%点P50における粒度値D50の異なる複数の前記研磨材粒子群を固着してなる、請求項4に記載の研磨・切削加工工具。
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