JP6076009B2 - 粒子間粒度変動の減少した研磨材及びその製法 - Google Patents

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本発明は硬質粒子の集合体である研磨材において、粒子ごとの粒度変動の減少した研磨材、及びその製造方法に関する。
天然に産する、或いは工業的に製造された硬質物質、例えばダイヤモンド、立方晶窒化ホウ素(c−BN)、ある種の炭化物や酸化物、窒化物の粒子は、金属質、樹脂質、ガラス質等の結合材で基板に固定した工具として、或いは遊離の研磨材として産業界で広範に利用されている。
研磨材において、構成粒子の粒度は加工効率、即ち加工速度、加工される物品(ワーク)表面の仕上がりに大きく影響し、一方強度やその他いくつかの物性は利用の形態、態様や加工性に影響することから、市販の研磨材は、粒度やこれらの物性を均質化した粒子の集合体として提供されている。
特公昭64−6906号公報 特開平4−141374号公報 2009−195992号公報 特開平8−150567号公報
JIS B4130:1998「ダイヤモンド/CBN工具−ダイヤモンド又はCBNと(砥)粒の粒度」 JIS Z8801−1:2000「金属製網ふるい」 JIS Z8801−3:2000「電成ふるい」
特許文献1には、研削性が良く、しかも寿命の長い精研削用砥石(特にダイヤモンドペレット)に関する発明が開示され、ダイヤモンドの粒径としては4〜50μm程度のものが使用されている。
特許文献2には、電着砥石に関する発明が開示され、高精度な電着砥石を製作しようとする場合、「砥粒の大きさをふるい等により十分揃え、これを砥粒の重なりがないように台金の表面に一層だけ電着する」際には、「砥粒の大きさを揃えることが非常に難しく、砥石精度として数ミクロン以内の形状精度を得ることは困難」であるため、「外周の一部に平面や曲面といった面が形成されると共に該面からの高さが所定の寸法に揃えられた砥粒が、台金に対して砥粒の前記面が接して電着されている」旨が記載されている。
特許文献3には、「ドレッシング性の良好な」ダイヤモンドやCBNの超砥粒をメタルボンドで結合したメタルボンド砥石に関する発明が開示され、粒度が(♯230/270)のダイヤモンド砥粒を用いており、砥粒突き出し量が大きいことが開示されている。
なお、ダイヤモンドおよび立方晶窒化ホウ素の粒度は、JIS B4130により定義されており、粒度の数字が大きいほど粒の寸法は小さく、たとえば♯230/270は、JISの規定により、以下に詳説するように、目開きが75μmの電成篩を概ね通過し57μmの電成篩を概ね通過しない、というような粒の大きさの分布を持つことを意味する。
特許文献4には、結合剤にガラスないしガラス・磁器質よりなるビトリファイドボンドを用いてダイヤモンド砥粒表面に金属粒子の突起を設けたビドリファイド砥石に関する発明が開示され、ダイヤモンド砥粒の平均粒径が20μmのものから160μmのものまでの実施例が開示されている。
これら研磨工具の製造において、工具基板の円周面や表面に研磨材粒子を直接固着する工具が上記先行技術文献にみられるように多用されている。特許文献2に見られるように、突出し量の大きい砥粒の先端を削り落とすツルーイングを必要とすることもある。
従来、ダイヤモンド砥粒やCBN砥粒等の研磨材は、硬質物質の塊または粗粒子を制御された負荷のもとに破砕して製造されることが多く、破砕されたままの粒子集合体は幅広い粒度の集まりであるから、一定の粒度区分ごとに粒度分けされる。ダイヤモンド工具及びCBN工具用のダイヤモンド又はCBN砥粒については、従来、ほぼ41〜1180μmの粒径を持つ砥粒の粒度の測定法がJIS B4130として標準化されている。
JISに則った測定は、規定された条件下で、砥粒(研磨材粒子)を公称目開きの異なる4枚一組の篩で篩分けを行い、各篩を通過した割合と留まった割合とが条件を満たしたとき、2枚目と3枚目の公称目開き、或いは2枚目の公称目開きに基づいて砥粒の粒度が表示されるものである。使用する篩は、1180〜425μmの粒度(粒度16/18〜30/40)については網ふるいが、455〜41μmの粒度(粒度40/50〜325/400)については電成篩の使用が規定されている。どちらも規定された大きさの正方形開口乃至目開きを有し、網ふるいは金属線(ワイヤ)を格子状に編んで、電成篩は電鋳によって形成された篩である。
篩分け操作は、上記の4枚一組の篩の、目開きの小さいものから順に受け皿の上に積み重ね、最上部の1段目の篩に試料を入れ、規定の篩分け機で規定の時間だけ篩分け動作を行うというものである。その結果、粒度は、各篩の上に残っている試料の質量がどれだけあるかを、判定基準と比較して決定するという、操作的定義によってなされている。
前記JIS B4130によれば、粒度♯30/40より寸法の大きな砥粒、すなわち、4段目篩の公称目開きが300μmである篩の組の判定基準に合致する寸法以上の寸法の砥粒の粒度判定には、網篩を使用することになっており、そもそも砥粒の形状は完全な球形ではなくさまざまなため、篩の目と砥粒の形状および姿勢との関係で通過できるかどうかが決まり、偶々砥粒が目開きを通過することのできる姿勢となったときに篩を通過する。本発明者は、このようにして得られた、粒度♯30/40より寸法の大きな砥粒では、電着砥石やビトリファイド砥石等の研磨工具に適用しようとする場合、砥粒の寸法のばらつきが大きいため、ツルーイングが必要になるなど、研削精度等の性能に関して十分に満足できるダイヤモンド砥粒は得られないとの知見を得た。そして本発明者はさらに検討する中で、粒度♯30/40より寸法の大きな砥粒では、研磨工具への使用のために更なる加工を要さない程度に粒度にばらつきのないダイヤモンド砥粒等の研磨材粒子はこれまで知られておらず、またそのような研磨材粒子を得る手段も知られていない、との認識を得るに至った。また、粒度30/40より小さい砥粒の場合も、JIS B4130によれば、砥粒の粒度が、粒度325/400すなわち篩孔の目開きが41μmより大きいものについては、孔形状が正方形である電成篩を使用することになっており、やはりばらつきは大きいものであった。
篩分け操作において組み合わされる目開き寸法は、寸法差の小さな「ナローレンジ」の場合でも前記JIS B4130において規定された最大の粒径16/18については1180−1000=180、最小の325/400についても45−38=7μmもの差が存在する。従って篩による分級操作が適切に実施され、単一の公称値で表示される砥粒であっても、網目を通過する際の姿勢を考慮すると、実際の粒子間には180〜7μmを超える粒度差を有する粒子が少なからず混在することになる。
このような粒度差変動の大きな砥粒を工具基体に固着すると、基体表面が平滑であっても被加工物に対向する砥粒の先端は一様でなく、被加工物に最も近い一部の砥粒のみが被加工物に係り合い表面の研磨を行うことになるので、これら一部の砥粒に過度の負担が掛かりやすく、その結果砥粒が早期に破砕し、さらには工具寿命の縮減を来すこととなる。
一方、加工効率を重視してより大きなエッジを持つ、より粗い砥粒を使用する研磨作業においては、砥粒先端の位置の変動も大きいことから、表面の仕上がり精度も低く、仕上げのためにより粒度の小さな砥粒を用いた仕上げ加工が必要になる。
したがって、本発明が解決しようとする課題は、これまで以上にばらつきの少ない研磨材粒子を提供することにある。
本発明者は上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねる中で、従来、JISにおいては、寸法の大き目の砥粒の粒度検定に使用している網篩は、直交した金属線による網が篩として用いられ、寸法の小さめの砥粒の粒度検定に使用している板篩は、四角形の孔が設けられた電成篩が用いられているところ、この網篩または四角孔電成篩を砥粒が通過するかしないかは、例えば単なる金属板に丸孔をあけた板篩に比べ、たとえ網篩または電成篩の寸法が正確で誤差が無いものであっても、砥粒が通過するか阻止されるかは、簡単には定まらず、これは篩を構成している網または電成篩板の開口部の立体形状に依存すること、また篩分けを行う篩の組の、篩と篩との間の開口寸法の関係の如何に依存することに着目した。そしてさらに研究を進めた結果、篩を、板篩とし、その開口形状を、円形またはより円に近い多角形とすることによって、JIS粒度♯325/400より寸法の大きな砥粒において、従来技術では決して得ることのできない小さいばらつきの研磨材粒子を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
[1]円形または5個以上の頂点を持つ正多角形の貫通孔を複数個有する篩板によって、篩分けにより整粒するものである研磨材粒子。
[2]整粒により限定された範囲内の粒度をもつ研磨材の構成粒子が、粒度区分ごとの成分割合が該範囲内の限定された部分において最大値を示し、平均粒径D50が49μm以上であり、かつ、粒度分布における累積頻度50%点P50における粒度値D50と、95%点P95と5%点P05とにおける粒度値の差(D95−D05)との比(D95−D05)/D50が、0.2以下である、[1]に記載の研磨材粒子。
[3]研磨材粒子が、ダイヤモンドまたは立方晶窒化ホウ素砥粒である、[1]または[2]に記載の研磨材粒子。
[4]前記整粒工程が乾式精密篩分けに基づく、[1]〜[3]のいずれかひとつに記載の研磨材粒子。
[5]貫通孔がレーザー加工により形成されたものである、[1]〜[4]のいずれかひとつに記載の研磨材粒子。
[6]円形または5個以上の頂点を持つ正多角形の貫通孔を複数個有する篩板によって、[1]〜[5]のいずれか一つに記載の研磨材粒子を選別する、研磨材粒子選別方法。
[7]整粒された研磨材粒子群を工具基板の連続表面上又は隣接して固着させた研磨・切削加工工具において、平均粒径D50が49μm以上であり、累積粒度分布における50%点P50における値D50に対する95%点P95と5%点P05とにおける粒度の差の比(D95−D05)/D50が、0.2以下である研磨材粒子群を工具基板に固定した工具。
[8]中間値粒径の異なる複数の前記研磨材粒子群を固着してなる、[7]に記載の研磨・切削加工工具、
に関する。
本願における「粒度」とは、ダイヤモンド砥粒のような本来形状が複雑な三次元構造を持つ一粒の寸法を単純な定義では表現できない粒状体について、平面上に拡大投影された断面において機械的又は手動操作により計測又は評価された、最大長方向とこれに直交する2方向の測定量(長さ)の平均値を言う。(複雑かつ不規則な粒子の「寸法の尺度」として、従来、例えば「球相当径」というものを「粒径」とする手法がある。これは、「ある測定原理で、特定の粒子を測定した場合、同じ結果(測定量またはパターン)を示す球体の直径をもって、その被測定粒子の「粒径」とする」というものである。一例として、「沈降法」では、被測定粒子と同じ物質の直径1μmの球とおなじ沈降速度をもった被測定粒子の「粒径」を、粒径は1μmである、としている。別例として、「レーザー回折・散乱法」では、直径1μmの球と同じ回折・散乱光のパターンを示す被測定粒子の「粒径」を、被測定粒子の形状に関わらず、粒径は1μmである、としている。
すなわち、測定原理が異なれば、粒子の寸法の尺度たる「粒径」も意味が異なるものとなる。
したがって、粒の集合体についての寸法指標である「粒度」は、いかなる粒状物についての「粒度」であるのかの特定がまず必要であり、また、寸法の尺度たる「粒径」が測定原理により異なるのであるから、「粒度」をどのようにして決定するのかについての特定も必ず必要である。
そのために、JIS B4130に規定する「粒度」は、ダイヤモンドおよび立方晶窒化ホウ素の砥粒についてのものであり、4段篩を用いて「粒度」を決定する、と特定しているのである。)
本願においては、「粒径」の用語を、被測定粒子の寸法を表す指標として用い、粒径測定の原理としては、画像処理に基づく二軸平均径測定による。よってこの発明おける各%点値は粒径測定による、例えば中間値粒径が50μmである粒子群の寸法、ということである。
本発明において個々の粒子の大きさ乃至粒度の評価は、基本的に二軸平均径により行う。二軸平均径の定義は粉体工業の分野ではよく知られているが、評価の手法は様々であり、被測定物の種類やサイズに応じて適切なものが選ばれている。本発明において評価手法自体は重要でなく、一つの測定を通じて一貫性が保たれれば充分である。
本発明による研磨材粒子は集合体として分布上において成分粒子の累積頻度を表す5%点、50%点及び95%点によって特徴づけられ、定義される。
図4に、二軸平均径測定法による、ある粒子群の粒径測定結果に基づく説明図を示す。横軸は粒子の粒径、縦軸は成分粒子における当該粒径を持つ粒子の頻度(この粒径区分に入るのは全体の何%か)、したがって曲線の下側の面積は、細かい粒子側から当該粒径までの累積頻度(この寸法よりも小さい粒子は全体の何%か)を表す。
本発明の研磨材粒子は、粒度分布における累積頻度50%点P50における値D50が49μm以上であり、かつD50に対する95%点P95と5%点Pとにおける粒度の差(D95−D05)、即ち成分粒子の小さい方から5%目の粒子から95%目の粒子までの、90%の粒子の粒径の変動が上記D50の0.2倍(20%)以下、ということである。
ここでは、本発明による研磨材粒子の分布曲線(分布2)が従来の篩い分けで得られる粒子の分布曲線(分布1)と対比されている。本発明の分布においてはD50値のピークが従来の粒子の分布よりも急峻で裾野が狭く、D50付近の頻度が高くなっているのが理解される。
本発明の分布(分布2)は、図5に示される、本発明において実際に抽出された充分な個数のサンプル粒子の粒度について、50%点P50における値、算出された標準偏差に基づいて正規分布を想定して曲線を描いている。この分布2において5%点P05における粒度D05及び95%点P95における粒度D95が決定される。
本発明の研磨材粒子は、比較的大粒でありながら粒径のばらつきが格段に小さいため、研磨工具に用いた場合に、ツルーイングなしに砥粒先端位置を揃えることが可能である。
さらに、本発明の砥粒を用いた研磨工具による効果は、粒径の揃った、大粒の砥粒であるので、大粒であることによる研磨効率の高さと、粒径ばらつきが小さいことにより、研磨後の被研磨対象の研磨面の平滑度が従来のより粒径の小さい砥粒により仕上げ研磨をおこなったものと遜色無い程度まで向上することである。
図1は、本発明の砥粒精密篩分けに使用する篩の孔の一例の図である。 図2は、本発明の砥粒精密篩分けに使用する篩の孔の別の例の図である。 図3は、本発明の砥粒精密篩分けの工程の一例を示す説明図である。 図4は、本願発明の研磨剤粒子の寸法分布と、JIS B4130による研磨剤粒子の寸法分布の比較図である。 図5は、本発明の一実施例の実測値を示す図である。
本発明の研磨材粒子は、粒度分布における累積頻度50%点P50における値D50が49μm以上であり、かつD50に対する95%点P95と5%点Pとにおける粒度の差(D95−D05)、が上記D50の0.2倍(20%)以下である。
〔実施例1〕
本発明の、粒径のばらつきが格段に小さい砥粒は、精密篩分けにより得られるものであり、精密篩分けは、例えばレーザーによって篩に用いる薄板に孔を開け、そのようにして作成した孔あき薄板を、砥粒の篩分け用の篩として用い、さらに、篩分けに用いる複数段の篩の、篩の公称目開きが、各段間で従来のJISにおけるものよりも小さいものとすることにより、篩分け精度の高い精密篩分けを行うものである。
円形孔の場合は、ドリル等の機械加工により形成することも可能である。
図1は、レーザー加工により開けた、本発明の方法において用いる篩の網目形状の例であり、425〜450μm程度より大きな砥粒の篩分けにおいては、JIS規格において用いていた網篩に替えて、また、50μm程度から450μm程度までの寸法の砥粒の篩分けにおいては、JIS規格において用いていた四角形の孔(目開き)を有する電成篩に替えて用いるものである。
ピッチ、即ち整列形成されている目開き群の隣接目開き間隔は篩い分け操作の効率には関係するが、本発明の主目的である篩い分け精度には本質的に影響しないので、任意に設定することができる。この点において、JIS規格における四角形目開きの辺寸法の1.05〜1.4倍とするのが簡便であるが、多角形孔最大さしわたし(外接円直径)の1.05〜1.4倍、或いはそれ以上でも精度に関しては特に支障なく利用できる。
本願の発明の精密篩分け用の篩は、上記篩に関するJIS規格に示される網篩や電成篩における四角形の開口よりも、砥粒が通過する部分のさしわたし長さの範囲を小さくすべく、板に開口した正多角形の開口を有する板篩を使用する。この篩を用いることにより、篩分けられた砥粒の粒径は、同等の四角形の開口を有する従来の篩で篩分けされたものよりも、格段に粒径が揃ったものとなる。
さらに、上記砥粒粒度に関するJIS規格が規定するナローレンジの篩を用いる4枚篩による選別よりも、格段に段間の篩目開き寸法の差が小さな篩の組を用いて選別を行う場合には、得られる砥粒間の粒径は、さらにばらつきが小さくなる。
図3に篩い分け手順を示す。本願発明の精密篩い分けに用いる篩の組(A、B)は、従来ナローレンジとして規定されている目開きスケール上の隣接する二つの段階をさらに細かく分けた、再分割目開き寸法をもつ大小の一対の篩を使用して行う。目開きの寸法は、既存の目開き寸法を基準とするときは、目開き寸法差が20μm(#150)より小さい場合には二つの寸法の比の2乗根の比、それよりも大きい場合には2〜4、特に2〜3乗根の比の大(A)小(B)一対の目開きを持つ篩を組み合わせて使用する。
本発明の篩は粗大粒子の阻止機能が確実なので、必要な範囲を規定する一組の篩の使用を基本とするが、さらに必要に応じてそれ以上の篩を組み合わせて使用することも可能である。
篩の目開き寸法の表示は外(内)接円半径、辺長、対向辺間距離(偶数辺多角形=四、六、八角形等の場合)で表示することができる。このうち内接円半径乃至対向辺間距離が四角形目開きを持つ従来の金網篩や電成篩と対応するが、多角形目開きの篩は、断面形状から明らかなように、対応する辺間距離の四角形篩に比べて囲う面積が小さいので、不規則な形状の粒子に対しては、従来の四角い目開きの篩に比べて、より大きい粒子を通しにくい。断面形状が目開きの形状に近い粒子は、目開き寸法に近い粒子まで目開きを通過することが考えられる。即ち大きい目開きの篩で粗大粒子が除かれる一方、小さい目開きの篩に確実に保持される効果が得られる。
使用する目開きの形状は篩い分けされる粒子の形状に応じて、また入手可能性を基に考慮して選択する。
例えば、従来の篩分け操作においては約170μmの粒径の砥粒としては、この粒径の両側の目開き寸法を有するNo. 80/100の2段階の篩で篩い分けされた粒子が使用されるが、本発明においては小さい側の目開き寸法として170〜175μm、大きい側として185〜190μmのものを一組利用することで実施できる。
目開きの形状は篩分けされる粒子の外形に応じて選ぶことにより、精度をさらに上げることができる。例えば結晶面の発達したダイヤモンド粒子については六面体と八面体との複合が多く表れるので、八角形又は六角形の目開きが好適である。なお五角形や七角形の奇数辺多角形も可能ではあるが、実用的な効果の点では偶数角形の方が好ましい。
前者を通過し、後者を通過しなかった砥粒のみを選別することによって、四角形の目開きを持つ網篩や電成篩では達成できなかった、ばらつきの少ない精密な粒径を持つ比較的大きい砥粒を得る。
本発明の砥粒を得るための方法においては、精密篩分けのための、正多角形の孔を有する板篩を用いるが、この板篩の孔は、レーザー加工により作成することが好ましい。レーザー加工により作成する孔であるため、孔形状のばらつきはレーザー加工精度により決定されることとなり、非常に精度が高くなる。したがって、単独の篩による篩分け精度も、従来の網篩よりも格段に高くなる。更に、複数の精密篩を組み合わせる際に、従来の篩分けよりも孔寸法の差が小さい篩の組を使用するため、篩分けの精度が従来よりも格段に向上する。
本発明は、従来板篩を使用しないほどの大粒の砥粒の選別に、レーザー加工した板篩を使用することによって、従来無かった、粒径の揃った大粒の砥粒を得るようにしたものである。
本願発明の研磨剤粒子のばらつきの少なさは、従来のJIS B4130に規定する、網篩または電製篩では、孔の形状が四角形であるため決して達成できず、5個以上の頂点を持つ多角形貫通孔を複数有する篩板によって篩分けをすることによって、達成できたのである。
図5に示される結果となった実施例では、厚さ0.1mmのモリブデン薄板に、八角形の孔をレーザー加工により開口した薄板篩を用いた。
図4の理論値の基礎となった、本願発明の研磨剤粒子と、JIS B4130による研磨剤粒子の、図5に示す実測値の比較から、本願発明のばらつきの少なさが明瞭に理解される。
JIS B4130によれば、粒度80/100という粒度分布の砥粒は、197μmの目開きの篩に10%以上が留まらず、151μmの目開きの篩を10%以上通過してはならない、と規定されている。これを図で表現すれば、図4における外側の縦線のさらに外側にある粒子の割合が、20%まで許容される、なだらかなピークとなる。
これに対して、本願発明は、49μm以上の平均粒径D50を有する砥粒において、平均粒径D50の上下45%の成分粒子は、平均粒径D50の0.2倍の粒径範囲に入ってしまう、すなわち図4における鋭いピークとなる。
従来の砥粒篩分けによる粒度選別による調粒では、選別能力が低い、孔形状が四角形となる網篩や電成篩を使用し、さらに複数段の篩を組み合わせる際の篩間の孔寸法の開きが大きいため、本願発明の有する、粒径のばらつきがきわめて小さい砥粒を得るのは不可能であった。また、従来、そのような粒径のばらつきがきわめて小さい砥粒を得ることについて、必要性を唱えられたことが無く、従って、そのような砥粒を得るための方法についても、従来、知られていなかったものである。
篩の孔加工は、レーザー加工を例示したが、孔の精度が得られる限り、いかなる工法によってもよい。また、孔の形状は、円形が最も高精度となるが、偶数辺多角形、特に正八角形や六角形でも円形に次ぐ精度が得られる。七角形や、五角形の目開きは断面形状の対称性が低いので過大粒子の阻止効果は大きくなるが、粒子の処理効率は低くなる。目開き形状は、加工の便宜との兼ね合いで定めればよい。単位面積あたりの通過量の多寡を考慮すれば、ハチの巣状の六角形の孔が全面に設けられた板篩が最も効率的である。

Claims (5)

  1. 円形または5個以上の頂点を持つ正多角形の貫通孔を複数個有する篩板による篩分け整粒によって、限定された範囲内の粒度を持った、ダイヤモンドまたは立方晶窒化ホウ素研磨材の構成粒子群であって、粒度区分ごとの成分割合が該範囲内の限定された部分において最大値を示し、累積頻度50%点P 50 における粒度値D 50 が49μm以上であり、かつ、粒度分布における累積頻度50%点P 50 における粒度値D 50 と、95%点P 95 と5%点P 5 とにおける粒度値の差(D 95 −D 5 )との比(D 95 −D 5 )/D 50 が0.2以下である、前記研磨材粒子群。
  2. 整粒工程が乾式精密篩分けに基づく、請求項に記載の研磨材粒子群。
  3. 貫通孔がレーザー加工により形成されたものである、請求項1または2に記載の研磨材粒子群。
  4. 整粒された研磨材粒子群を工具基板の連続表面上又は隣接して固着させた研磨・切削加工工具において、請求項1〜のいずれか一項に記載の研磨材粒子群を工具基板に固定した工具。
  5. 累積頻度50%点P50における粒度値D50の異なる複数の前記研磨材粒子群を固着してなる、請求項に記載の研磨・切削加工工具。
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