目次
第1.家具を構成する構成部材
第2.セル空間およびユニット空間
第3.パーツ空間
第4.素材空間
第5.セル空間とユニット空間の関連付けおよびセル空間の分割
第6.ユニット空間,パーツ空間,素材空間およびセル空間のデータ構造
第7.加工情報の登録
第8.システム構成
第1.家具を構成する構成部材
図1は家具設計システムによって設計される家具を構成する構成部材の一例を示している。
後述するように,家具設計システムでは,あらかじめ登録される複数種類のユニットを組合せることによって家具が設計される。家具を構成するユニットは「スケルトン・ユニット」と「インフィル・ユニット」とに大別される。
「スケルトン・ユニット」とは,家具の構造の最も基本となる構成部材である枠体を構成するユニットの総称であり,具体的にはキャビネットが含まれる。スケルトン・ユニットは,基本的に,天板,底板,右側板,左側板および背板によって構成され,前面は開口している構造を持つ。
上述のようにスケルトン・ユニットはその前面が開口しており,その開口面と,天板,底板,右側板,左側板および背板の内面とによって囲まれる空間(内接空間)が存在する。後述するように,スケルトン・ユニットが持つ上記空間の存在を設定(入力)することができる。この明細書において,設定(入力)される上記スケルトン・ユニットの内側の空間を「スケルトン・セル空間」と呼ぶ。スケルトン・セル空間は,次に説明するインフィル・ユニットによってより小さい空間に分割される。分割されて形成されるより小さい空間もまた,この明細書において「スケルトン・セル空間」と呼ぶ。スケルトン・セル空間は直方体状の3次元空間である。スケルトン・セル空間の詳細は後述する。
また,スケルトン・ユニットには,その内側の直方体状の空間が「スケルトン・セル空間」として規定されるとともに,スケルトン・ユニットの外側に外接する直方体状の空間も規定される。スケルトン・ユニットに外接する直方体状の空間を,以下,「ユニット空間」と呼ぶ。
「インフィル・ユニット」は,上述のスケルトン・ユニットに組合される家具の構成部材の総称であり,具体的には引出しユニット,棚板ユニット,扉ユニットなどが含まれる。インフィル・ユニットも,上述したスケルトン・ユニットと同様に,インフィル・ユニットの形状によって規定される,基本的にはインフィル・ユニットを取囲む直方体状の3次元空間を備える。インフィル・ユニットを取囲む直方体状の3次元空間も,以下「ユニット空間」と呼ぶ。詳細は後述するが,インフィル・ユニットが備えるユニット空間は上述したスケルトン・セル空間に関連づけられる。スケルトン・ユニットが拡大または縮小されることでスケルトン・セル空間が拡大または縮小されると,スケルトン・セル空間に関連づけられているインフィル・ユニットのユニット空間もこれに連動して拡大または縮小する。
インフィル・ユニットのうち,たとえば引出しユニットは,物を収納するための空間がその内側に存在する。詳細は後述するが,インフィル・ユニットについても直方体状のセル空間を設定(入力)することができる。この明細書において,インフィル・ユニットについて設定(入力)される上記インフィル・ユニットの内側のセル空間を「インフィル・セル空間」と呼ぶ。
「スケルトン・ユニット」は,上述したように,天板,底板,右側板,左側板および背板の複数の部材を組合せることで構成される。「インフィル・ユニット」には,たとえば引出し内箱ユニットのように内前板,左妻板,右妻板などの複数の部材を組み合わせることで構成されるものもあるし,扉のように基本的に一つの部材によって構成されるものもある。スケルトン・ユニットおよびインフィル・ユニットを構成する一または複数の部材を「パーツ」と呼ぶ。パーツには,後述するように,パーツに外接する直方体状の3次元空間が規定される。パーツに外接する直方体状の3次元空間を,以下「パーツ空間」と呼ぶ。
パーツの中には,一つの部材(最小構成部材)によって構成されるものもあるし,複数の部材を組合せることで構成されるものがある。たとえば,パーツ「引出し前板」は,芯材,表面材,裏面材および複数の木口材によって構成される。パーツを構成する一または複数の部材を「素材」と呼ぶ。素材にも,後述するように,素材に外接する直方体状の3次元空間が規定される。素材に外接する直方体状の3次元空間を,以下「素材空間」と呼ぶ。
第2.セル空間およびユニット空間
図2は家具1の一例を示す斜視図である。家具1は,キャビネット・ユニット2,扉ユニット3および引出しユニット4から構成されている。図2には,引出しユニット4をキャビネット・ユニット2に組み込んだときに自動的に設けられる固定棚ユニット16,扉ユニット3をキャビネット・ユニット2に組込んだときに自動的に設けられるヒンジk1,k2もそれぞれ破線によって示されている。図2に示す家具1を具体例にして,はじめに,上述した「スケルトン・セル空間」,「インフィル・セル空間」および「ユニット空間」を説明する。
図3は図2に示す家具1を構成するキャビネット・ユニット2と,キャビネット・ユニット2に規定されるスケルトン・セル空間Cとの関係を示している。
キャビネット・ユニット2はスケルトン・ユニットの一つであるから,上述したように,キャビネット・ユニット2によって囲まれる直方体状の3次元空間であるスケルトン・セル空間C(一点鎖線で示す)を設定することができる。また,キャビネット・ユニット2に外接するユニット空間U2(二点鎖線で示す)も,キャビネット・ユニット2には規定される。
図4は家具1を構成する扉ユニット3と,扉ユニット3に規定されるユニット空間U3との関係を示している。扉ユニット3はインフィル・ユニットの一つであり,扉ユニット3についての直方体状の3次元空間であるユニット空間U3(一点鎖線で示す)を持つ。
図5は家具1を構成する引出しユニット4と,引出しユニット4に規定されるユニット空間との関係を示している。
図5に示す引出しユニット4は,引出し前板ユニット4Aと引出し内箱ユニット4Bの2つのユニットを組み合わせることで構成されている。引出し前板ユニット4Aと引出し内箱ユニット4Bのそれぞれが,ユニット空間U4Aおよびユニット空間U4B(一点鎖線で示す)を持つ。詳細は後述するが,前板ユニット空間U4Aと内箱ユニット空間U4Bとは互いに関連づけられ,これにより引出しユニット4の全体についてのユニット空間が規定される。
図6に示すように,引出しユニット4を構成する内箱ユニット4Bには物を収納するための空間が存在し,ここに直方体状の3次元空間であるインフィル・セル空間Cj (一点鎖線で示す)を設定することもできる。
第3.パーツ空間
上述したように,スケルトン・ユニットまたはインフィル・ユニットを構成する一または複数のパーツに「パーツ空間」が規定される。
図7は,キャビネット・ユニット2(図3参照)を構成する複数のパーツと,複数のパーツのそれぞれについて規定されるパーツ空間(一点鎖線で示す)との関係を示している。
キャビネット・ユニット2は,天板11,底板12,左側板13,右側板14および背板15の5つのパーツから構成されている。これらの天板11,底板12,左側板13,右側板14および背板15のそれぞれについて,天板のパーツ空間P11,底板のパーツ空間P12,左側板のパーツ空間P13,右側板のパーツ空間P14,背板のパーツ空間P15が規定される。
図8は,引出し内箱ユニット4B(図5参照)を構成する複数のパーツと,複数のパーツのそれぞれについて規定されるパーツ空間(一点鎖線で示す)との関係を示している。
引出し内箱ユニット4Bは,底板22,左妻板23,右妻板24,先板25,内前板26,左レール(スライド金具)27および右レール28の7つのパーツから構成されている。これらの7つのパーツのそれぞれについて,底板のパーツ空間P22,左妻板のパーツ空間P23,右妻板のパーツ空間P24,先板のパーツ空間P25,内前板のパーツ空間P26,左レールのパーツ空間P27および右レールのパーツ空間P28が規定される。
なお,引出し前板ユニット4A(図5参照)については,引出し内箱ユニット4Bとは異なり,一つのパーツ(引出し前板)のみから構成される。ユニットが一つのパーツのみから構成される場合であっても,その一つのパーツについてパーツ空間は規定される。
第4.素材空間
上述したように,パーツを構成する一または複数の素材のそれぞれについて「素材空間」が規定される。
図9はキャビネット・ユニット2(図3参照)を構成するパーツの一つである天板11(図7参照)の構造を詳細に示している。天板11は,平板状の芯材11aと,芯材11aの表面(上面)および裏面(下面)のそれぞれに貼られた表面材11bおよび裏面材11cと,芯材11aの前面の木口面および後面の木口面にそれぞれ貼られた前木口材11dおよび後木口材11eとを含む。図2を参照して,キャビネット・ユニット2の天板11は,その右側面および左側面に左側板13および右側板14がそれぞれ被せられているので,天板11の左側面の木口面および右側面の木口面に木口材は貼られていない。
図10は,図9に示す天板11を構成する複数の素材と,複数の素材のそれぞれについて規定される素材空間(一点鎖線で示す)との関係を示している。
上述したように,キャビネット・ユニット2の天板11は,芯材11a,表面材11b,裏面材11c,前木口材11dおよび後木口材11eの5つの素材から構成されている。これらの芯材11a,表面材11b,裏面材11c,前木口材11dおよび後木口材11eのそれぞれについて,芯材の素材空間M11a,表面材の素材空間M11b,裏面材の素材空間M11c,前木口材の素材空間M11dおよび後木口材の素材空間M11eが規定される。
図11は引出し前板ユニット4A(図5参照)の構造を示している。引出し前板ユニット4Aは,上述のように,一つのパーツ(引出し前板21と呼ぶ)から構成されている。引出し前板ユニット4Aを構成する一つのパーツである引出し前板21は,芯材21a,芯材21aの表面(前面)および裏面(後面)のそれぞれに貼られた表面材21bおよび裏面材21c,芯材21aの上面,下面,左側面および右側面のそれぞれに貼られた上木口材21d,下木口材21e,左木口材21fおよび右木口材21gの7つの素材を含む。
図12は,図11に示す引出し前板21を構成する7つの素材と,7つの素材のそれぞれについて規定される素材空間とを示している。
上述したように,引出し前板21は,芯材21a,表面材21b,裏面材21c,上木口材21d,下木口材21e,左木口材21fおよび右木口材21gから構成されている。これらの7つの素材のそれぞれについて,芯材の素材空間M21a,表面材の素材空間M21b,裏面材の素材空間M21c,上木口材の素材空間M21d,下木口材の素材空間M21e,左木口材の素材空間M21fおよび右木口材の素材空間M21gが規定される。
第5.セル空間とユニット空間の関連付けおよびセル空間の分割
図13(A)から図15(B)を参照して,図2に示す家具1の設計(組立て)の流れに沿って,家具設計システムによる空間処理(スケルトン・セル空間の分割と,分割されたスケルトン・セル空間とユニット空間の関連づけ)を説明する。
はじめに設計すべき家具の基本的な枠体を構成するスケルトン・ユニット,ここではキャビネット・ユニット2が選択される(図13(A))。キャビネット・ユニット2は,あらかじめ設定される上述した直方体状のスケルトン・セル空間Cを持つ(図13(B))。
キャビネット・ユニット2中に組込むべきインフィル・ユニット,ここでは引出しユニット4が選択されてキャビネット・ユニット2中に組み込まれたとする(図14(A))。具体的には,表示装置,入力装置(マウス)などを用いて,引出しユニット4を表す画像を選択し,それをキャビネット・ユニット2を表す画像中にドラッグアンドドロップすることになる。引出しユニット4がキャビネット・ユニット2に組み込まれると,図14(B)に示すように,キャビネット・ユニット2に設定されている一つのスケルトン・セル空間Cが2つの領域(2つのスケルトン・セル空間C1,C2)に分割される。上述のように,引出しユニット4は引出し前板ユニット4Aと引出し内箱ユニット4Bから構成されている(図5参照)。引出し前板ユニット4Aのユニット空間U4Aと引出し内箱ユニット4Bのユニット空間U4Bが,分割された2つのスケルトン・セル空間C1,C2のうちの一つ,ここではスケルトン・セル空間C2に関連づけられる(関連づけの詳細は後述する)。なお,上方に空間を空けた状態で引出しユニット4がキャビネット・ユニット2に組込まれると,上述したように,引出し内箱ユニット4Bの上方に固定棚ユニット16が自動的に組み込まれる。固定棚ユニット16の上方の3次元空間がスケルトン・セル空間C1となり,固定棚ユニット16の下方の3次元空間がスケルトン・セル空間C2となる。後述するように内箱ユニット4Bの上下に隙間またはチリを設定し,内箱ユニット4Bのユニット空間U4Bがスケルトン・セル空間C2を全て占めることが出来るが,一方,内箱ユニット4Bのユニット空間U4Bが固定棚ユニット16の下方のスケルトン・セル空間C2を全てを占めない場合もある。そのような場合,例えば,内箱ユニット4Bのユニット空間U4Bが,固定棚ユニット16の下方のスケルトン・セル空間C2の下部半分を占める場合,固定棚ユニット16の下方のスケルトン・セル空間C2の上部半分には,棚板,内引出し等を設置することも可能である。つまり,固定棚ユニット16の下方のスケルトン・セル空間C2を更に二分割することもできる。もちろん,固定棚ユニット16の下方のスケルトン・セル空間C2の前面には,引出し前板ユニット4Aが存在するので,固定棚ユニット16の下方のスケルトン・セル空間C2の上部半分に,前板ユニットと内箱ユニットで構成される通常の引出しを設置することは出来ない。
スケルトン・セル空間C1にユニット空間は関連づけられていないので,スケルトン・セル空間C1には他のインフィル・ユニットを組込むことができる。
図15は,図14(B)に対応するもので,引出し内箱ユニット4Bにインフィル・セル空間Cjが設定されている場合を示している。
上述したように,インフィル・ユニットにも,スケルトン・ユニットと同様にセル空間を設定することができる。インフィル・セル空間Cjが設定されている引出し内箱ユニット4B(図6参照)がキャビネット・ユニット2に組み込まれた場合には,スケルトン・セル空間C2の中にインフィル・セル空間Cjが入れ子状態で位置することになる。このような場合,インフィル・セル空間Cjには他のインフィル・ユニット,たとえば中仕切りユニットを組込むことができるようになる。
次に図16(A)および図16(B)を参照して,扉ユニット3を選択してスケルトン・セル空間C1の箇所にドラッグアンドドロップすると,扉ユニット3のユニット空間U3がスケルトン・セル空間C1に関連づけられる。扉ユニット3のユニット空間U3はキャビネット・ユニット2のスケルトン・セル空間C1の前面に関連づけられ,扉ユニット3はキャビネット・ユニット2の前面(正面)に被さるように表示される。
第6.ユニット空間,パーツ空間,素材空間およびセル空間のデータ構造
次に,上述したユニット空間,パーツ空間,素材空間およびセル空間のそれぞれのデータ構造(データテーブル)を,具体的に説明する。
(1)引出し前板ユニット4Aについて
上述したように,引出し前板ユニット4A(図5参照)は,一つのパーツ(引出し前板21)から構成されており,引出し前板21は,芯材21a,表面材21b,裏面材21c,上木口材21d,下木口材21e,左木口材21fおよび右木口材21gから構成されている(図11および図12参照)。引出し前板ユニット4Aは,引出し前板ユニット4Aのユニット空間を規定するユニット空間テーブル,引出し前板ユニット4Aを構成するパーツである引出し前板21のパーツ空間を規定するパーツ空間テーブル,および引出し前板21を構成する上述した複数の素材のそれぞれの素材空間を規定する素材空間テーブルを持つ。
(i)引出し前板ユニット4Aを構成する引出し前板21を構成する素材の素材空間テーブル
図17(A)は,引出し前板ユニット4Aを構成するパーツである引出し前板21のパーツ空間P21(一点鎖線で示す)と,引出し前板21を構成する素材の一つである表面材21b(図12参照)についての素材空間M21b(ハッチングで示す)との関係を図示するものである。図17(B)は表面材21bの素材空間M21b(ハッチングで示す)と,上木口材21dの素材空間M21d,下木口材21eの素材空間M21e,左木口材21fの素材空間M21f,および右木口材21gの素材空間M21g(それぞれ一点鎖線で示す)との関係を図示するものである。図18は表面材21bについて規定される素材空間テーブルT1を示している。
素材空間は,パーツを構成する一または複数の素材について規定される,素材に外接する直方体状の3次元空間である。素材空間テーブルには,素材に外接する直方体状の素材空間の6面,すなわち,前面,後面,上面,下面,左面および右面のそれぞれについて,パーツ空間または他の素材の素材空間との面関連データが格納される。
図17(A),(B)および図18を参照して具体的に説明する。引出し前板ユニット4Aを構成するパーツである引出し前板21を構成する表面材21bについての素材空間テーブルT1には,前面,後面,上面,下面,左面および右面のそれぞれについて,「対象面」,「関連の種類」および「関連値」の3つのデータが格納される。
図18を参照して,たとえば面位置「前面」に着目すると,対象面が「パーツ空間の前面」,関連の種類が「対象面から一定の距離を保つ(連動)」,関連値が「0」である。図17(A)を参照して,これは,表面材21bに外接する直方体状の素材空間M21bの前面は,表面材21bが属するパーツである引出し前板21について規定される直方体状のパーツ空間P21(パーツ空間P21については後述する)の前面から一定の距離を保ち,その距離が0mmであることを表している。表面材21bの素材空間M21bの前面の位置,すなわち表面材21bの前面位置は,引出し前板21のパーツ空間P21の前面位置を基準にして相対的に決定され,素材空間M21bの前面位置とパーツ空間P21の前面位置は一致する。たとえば引出し前板21のパーツ空間P21が奥行き方向に移動した場合,表面材21bの前面はこれに連動して位置移動し,引出し前板21のパーツ空間P21の前面との間の距離は0mmのまま保たれる。
図18を参照して,次に面位置「後面」に着目すると,対象面が「なし」,関連の種類が「反対面から一定の距離を保つ(非連動)」,関連値が「 2.5」である。図17(A)を参照して,これは,表面材21bの素材空間M21bの後面,すなわち表面材21bの後面は,その反対の面,すなわち表面材21bの素材空間M21bの前面から外側に一定の距離を保ち,その一定の距離が 2.5mmであることを意味する。これは,表面材21bの素材空間M21bの厚さ,すなわち表面材21bの厚さが一定の2.5mmであることを表している。表面材M21bの厚さが2.5mmの固定値であることを意味する。
図18を参照して,面位置「上面」については,対象面が「上木口材の素材空間の下面」,関連の種類が「対象面から一定の距離を保つ(連動)」,関連値が「0」である。図17(B)を参照して,これは,表面材21bの素材空間M21bの上面,すなわち表面材21の上面は,同じ引出し前板21を構成する他の素材である上木口材21dの素材空間M21dの下面から一定の距離を保ち,その距離が0mmであることを表している。表面材21bの素材空間M21bの上面位置,すなわち表面材21bの上面位置は,上木口材21dの素材空間M21dの下面位置を基準に相対的に決定され,上木口材21dの素材空間M21dの下面と一致する。上木口材21dの下面位置が決まることで,表面材21bの上面位置が定められることを意味する。
図18を参照して,面位置「下面」,「左面」および「右面」についても,上述の面位置「上面」と同様にして,それらの面位置が定められる。図17(B)も参照して,表面材21bの下面位置は,下木口材21の上面位置が決まることで定められる。表面材21bの左面位置は,左木口材21fの右面位置が決まることで定められる。表面材21bの右面位置は,右木口材21gの左面位置が決まることで定められる。
図19は,引出し前板21のパーツ空間P21(一点鎖線で示す)と,引出し前板21を構成する下木口材21eの素材空間M21e(ハッチングで示す)との関係を図示するものである。図20は下木口材21eについて規定される素材空間テーブルT2を示している。
図20を参照して,たとえば面位置「前面」に着目すると,対象面が「パーツ空間の前面」,関連の種類が「対象面から一定の距離を保つ(連動)」,関連値が「0」である。図19を参照して,これは,下木口材21eの素材空間M21eの前面位置は,下木口材21eが属する引出し前板21のパーツ空間P21の前面から一定の距離を保ち,その距離が0mmであることを表している。下木口材21eの素材空間M21eの前面位置は,引出し前板21のパーツ空間P21の前面位置を基準にして相対的に決定され,パーツ空間P21の前面位置と常に一致する。すなわち,引出し前板21のパーツ空間P21の前面位置が決まることによって,下木口材21bの素材空間M21bの前面位置,すなわち下木口材21eの前面位置が定まる。下木口材21bの素材空間M21eの後面,下面,左面および右面の位置も同様に,引出し前板21のパーツ空間P21における対応する面の位置,すなわちパーツ空間P21の後面,下面,左面および右面の位置とそれぞれ一致する。下木口材21eの素材空間M21eの上面位置のみ,反対面すなわち下面からの距離(=0.5mm )によって規定される。これは下木口材21eの厚さが0.5mmに固定されていることを表す。
図21(A)は引出し前板21を構成する芯材21a(図11,図12参照)の素材空間M21a(ハッチングで示す)と,上木口材21dの素材空間M21d,下木口材21eの素材空間M21e,左木口材21fの素材空間M21f,および右木口材21gの素材空間M21g(一点鎖線で示す)との関係を図示するものである。図21(B)は芯材21aの素材空間M21a(ハッチングで示す)と,表面材21bの素材空間M21bおよび裏面材21cの素材空間M21c(一点鎖線で示す)との関係を示すものである。図22は芯材21aについて規定される素材空間テーブルT3を示している。
芯材21aの素材空間M21aの6面の面位置は,いずれも,芯材21aが属する引出し前板21を構成する他の素材の素材空間の特定面の位置を基準にして相対的に定められている。図21(B)および図22を参照して,たとえば,芯材21aの素材空間M21aの前面位置は,芯材21aが属する引出し前板21を構成する他の素材である表面材21bの素材空間M21bの後面位置から一定の距離を保ち,その一定距離が0mmと定められている。すなわち,芯材21aの前面位置は表面材21bの後面位置に応じて相対的に定められ,芯材21aの前面は表面材21bの後面に接するものとなる。図21(A)および図22を参照して,芯材21aの素材空間M21aの上面位置は,芯材21aが属する引出し前板21を構成する他の素材である上木口材21dの素材空間M21dの下面から一定の距離を保ち,その距離が0mmと定められている。芯材21aの上面位置は,上木口材21dの下面位置を基準にして相対的に定められ,芯材21の上面は上木口材21dの下面に接するものとなる。
引出し前板21を構成する他の素材,すなわち裏面材21c,上木口材21d,左木口材21fおよび右木口材21gの素材空間テーブルの説明は省略するが,いずれにしても,素材空間の6面の面位置は,素材空間テーブルにおいて,素材が属するパーツのパーツ空間の特定面の面位置,素材空間における反対がわの面からの距離,および同じパーツに属する他の素材の素材空間の特定面の面位置のいずれかを基準にして,相対的に決定される。
上述のように,芯材21aの素材空間M21aの6面の面位置は,いずれも,他の素材の素材空間の特定面の面位置を基準にして定められているが(図22参照),間接的には,パーツ空間P21にも関連づけられている。たとえば,図22を参照して,芯材21aの素材空間M21aの下面位置は,下木口材21eの素材空間M21eの上面を基準に定められている。ここで図20を参照して,下木口材21eの素材空間M21eの上面位置は,下木口材21eの素材空間M21eの下面(反対面)を基準に定められ,さらに下木口材21aの素材空間M21eの下面位置は,パーツ空間P21の下面を基準に定められている。すなわち,芯材21aの素材空間M21aの下面位置は,間接的に,芯材21aが属するパーツである引出し前板21のパーツ空間P21の下面を基準にして定められていることが分かる。
引出し前板ユニット4Aを構成するパーツである引出し前板21を例に挙げて,引出し前板21の構成する複数の素材について規定される素材空間テーブルを説明したが,他のユニットを構成するパーツを構成する素材についても,同様にして,素材のそれぞれについて素材空間テーブルは設けられる。
(ii)引出し前板ユニット4Aを構成する引出し前板21のパーツ空間テーブル
次にパーツ空間テーブルを具体的に説明する。図23は,引出し前板ユニット4Aのユニット空間U4Aと,引出し前板ユニット4Aを構成するパーツである引出し前板21のパーツ空間P21との関係を図示するものである。図23においてハッチングで示す直方体部分が引出し前板21のパーツ空間P21である。一点鎖線で囲んで示す直方体部分が引出し前板ユニット4Aのユニット空間U4Aである。図24は引出し前板21について規定されるパーツ空間テーブルT4を示している。
パーツ空間は,ユニットを構成する一または複数のパーツについて規定される,パーツに外接する直方体状の3次元空間である。パーツ空間テーブルには,パーツに外接する直方体状のパーツ空間の6面,すなわち前面,後面,上面,下面,左面および右面のそれぞれについて,ユニット空間との関連データ等が規定される。
引出し前板ユニット4Aはパーツとして引出し前板21のみを持つので,引出し前板ユニット4Aについては,引出し前板21のパーツ空間テーブルT4のみが規定される。
図24を参照して,引出し前板21のパーツ空間テーブルT4には,前面,後面,上面,下面,左面および右面のそれぞれについて,「対象面」,「関連の種類」および「関連値」の3つのデータが格納される。
たとえば面位置「前面」に着目すると,対象面が「ユニット空間の前面」,関連の種類が「対象面から一定の距離を保つ(連動)」,関連値が「0」である。図23を参照して,これは,引出し前板21に外接する直方体状のパーツ空間P21の前面位置は,その引出し前板21が属する引出し前板ユニット4Aについて規定されるユニット空間U4A(ユニット空間U4Aについては後述する)の前面から一定の距離を保ち,その一定の距離が0mmであることを表している。パーツ空間P21の前面位置とユニット空間U4Aの前面位置は一致することを表す。引出し前板21のパーツ空間P21の前面位置,すなわち引出し前板21の前面位置は,引出し前板ユニット4Aのユニット空間U4Aの前面位置を基準にして相対的に決定される。たとえば引出し前板ユニット4Aのユニット空間U4Aが奥行き方向に移動した場合,引出し前板21の前面はこれに連動して位置移動し,引出し前板ユニット4Aのユニット空間U4Aの前面との間の距離は0mmのまま保たれる。
図24を参照して,次に面位置「後面」に着目すると,対象面が「ユニット空間の後面」,関連の種類が「対象面から一定の距離を保つ(連動)」,関連値が「−3」である。図23を参照して,これは,引出し前板21のパーツ空間P21の後面位置,すなわち引出し前板21の後面位置は,引出し前板ユニット4Aのユニット空間U4Aの後面から3mmだけ内側(すなわち前方)に入った位置であることを意味する。引出し前板21の後面位置は,引出し前板ユニット4Aの後面位置が決まることで定められ,引出し前板21の後面と,引出し前板ユニット4Aのユニット空間U4Aの後面との間には3mmの間隔があけられる。
図24を参照して,次に面位置「上面」に着目すると,対象面が「ユニット空間の上面」,関連の種類が「対象面から一定の距離を保つ(連動)」,関連値が「−2」である。図23を参照して,これは,引出し前板21のパーツ空間P21の上面位置,すなわち引出し前板21の上面位置は,引出し前板ユニット4Aのユニット空間U4Aの上面から2mmだけ内側(すなわち下方)に入った位置であることを意味する。引出し前板21の上面位置は,引出し前板ユニット4Aのユニット空間U4Aの上面位置が決まることで定められ,引出し前板21の上面と引出し前板ユニット4Aのユニット空間U4Aの上面との間には2mmの間隔があけられる。
面位置「下面」,「左面」および「右面」についても同様にして,引出し前板ユニット4Aのユニット空間U4Aの下面,左面および右面の位置が決まることで,それらの面位置が定められる。
図24を参照して,パーツ空間テーブルT4において関連値を「0」としないことで,パーツ空間とユニット空間との間に間隔を設けることができる。これによって,家具を構成する一の部材と他の部材の間にわずかな隙間を設けたり,一の部材の特定面と他の部材の特定面を面一とするのではなく,わずかにズレ(これを「チリ」と言う)を生じさせたりすることができる。
(iii)引出し前板ユニット4Aのユニット空間テーブル
次にユニット空間テーブルを具体的に説明する。図25(A)は,スケルトン・セル空間C2(図14(B)参照)と,引出し前板ユニット4Aのユニット空間U4A(一点鎖線で示す)と,上述した引出し前板21のパーツ空間P21(ハッチングで示す)との関係を,キャビネット・ユニット2を構成する底板12,背板15および固定棚ユニット16(太い実線で示す)とともに横断面で図示するものである。図25(B)は,引出し前板ユニット4Aのユニット空間U4A(一点鎖線で示す)と,引出し前板21のパーツ空間P21(実線で示す)との関係を,キャビネット・ユニット2を構成する底板12,左側板13,右側板14および固定棚ユニット16(太実線で示す)とともに正面から図示するものである。
ここで,図25(A)および図25(B)には,「全かぶせ」タイプの引出し前板ユニット4A(引出し前板21)が示されている。「全かぶせ」とは,引出し前板ユニット4A(引出し前板21)が,キャビネット・ユニット2の部材,図25(A)および(B)においては左側板13,右側板14,底板12,および固定棚ユニット16の,ほぼ全面に覆い被さる大きさ(寸法)を持つことを意味する。これに対し,引出し前板ユニット4A(引出し前板21)が,左側板13,右側板14,底板12,および固定棚ユニット16のほぼ半分に覆い被さる大きさ(寸法)を持つ場合,「半かぶせ」タイプと呼ばれる。図26は「半かぶせ」タイプの引出し前板ユニット4A(引出し前板21)が示されている。引出し前板ユニット4A(引出し前板21)が「全かぶせ」タイプとされるか,「半かぶせ」タイプとされるかは,上下左右のインフィル・ユニットの存在や種類によって,家具設計システムにおいて自動的に選択される。
図27は,引出し前板ユニット4Aについて規定されるユニット空間テーブルT5を示している。
ユニット空間は,上述したようにユニットについて規定される直方体状の3次元空間である。上述した素材空間およびパーツ空間と異なり,ユニット空間は,必ずしもユニットに外接する空間とはならない。ユニット空間はユニットよりも大きな範囲を区画する3次元空間とすることもできるし,ユニットよりも小さい範囲を区画する3次元空間とすることもできる。ここでは,ユニットよりも大きな範囲を区画するユニット空間について説明する。図27に示すように,ユニット空間テーブルT5には,直方体状のユニット空間の6面,すなわち前面,後面,上面,下面,左面および右面のそれぞれについて,スケルトン・セル空間との面関連データ等が規定される。
図25(A)〜図27を参照して具体的に説明する。図27を参照して,引出し前板ユニット4Aについてユニット空間テーブルT5には,前面,後面,上面,下面,左面および右面のそれぞれについて,「対象面」,「関連の種類」および「関連値」の3つのデータが格納される。
たとえば面位置「前面」に着目すると,対象面が「なし」,関連の種類が「反対面から一定の距離を保つ(非連動)」,関連値が「23」である。図25(A)を参照して,これは,引出し前板ユニット4Aのユニット空間U4A(一点鎖線)の前面位置は,その反対面,すなわちユニット空間U4Aの後面位置から一定の距離を保ち,その一定の距離が23mmであることを表している。すなわち,引出し前板ユニット4Aのユニット空間U4Aの前面位置は,ユニット空間U4Aの後面位置を基準にして相対的に決定される。引出し前板ユニット4Aのユニット空間U4Aの後面位置が決まると,引出し前板ユニット4A(引出し前板21)の前面位置が定まる。なお,関連値「23」は,引出し前板21の厚さである20mmと,引出し前板21のパーツ空間P21の後面と引出し前板ユニット4Aのユニット空間U4Aの後面との間の隙間(図23および図24参照)の3mmを合計した値である。
図27を参照して,次に面位置「後面」に着目すると,対象面が「スケルトン・セル空間の前面」,関連の種類が「対象面から一定の距離を保つ(連動)」,関連値が「0」である。図25(A)を参照して,これは,引出し前板ユニット4Aのユニット空間U4Aの後面は,スケルトン・セル空間(図25(A)ではスケルトン・セル空間C2)の前面位置から一定の距離を保ち,その一定の距離が0mmであることを表す。
ここで,引出し前板ユニット4Aを構成するパーツである引出し前板21の後面は,引出し前板ユニット4Aのユニット空間U4Aの後面から3mmだけ内側(前方)に入った箇所に位置するように,パーツ空間テーブルT4にデータが格納されている(図23,図24参照)。このため,キャビネット・ユニット2と引出し前板ユニット4A(引出し前板21)との間には3mmの隙間があけられることになる(図25(A)を参照)。この3mmの隙間は,引出し前板ユニット4A(引出し前板21)とキャビネット・ユニット2の間に緩衝材(引出しユニット4をキャビネット・ユニット2に格納したときに,引出し前板ユニット4Aの後面(裏面)がキャビネット・ユニット2に直接に接触しないようにするためのクッション)を設けるために利用することができる。
図27に戻って,次に面位置「上面」に着目すると,対象面が「スケルトン・セル空間の上面」であり,関連の種類が「対象面から一定の距離を保つ(連動)」であり,関連値が「20(全かぶせ)」または「10(半かぶせ)」である。図25(A),図25(B),図26を参照して,これは,引出し前板ユニット4Aのユニット空間U4Aの上面位置は,引出し前板ユニット4Aが全かぶせの場合(図25(A),(B))であればスケルトン・セル空間C2の上面から外側(すなわち上方)に20mmの位置とされ,引出し前板ユニット4Aが半かぶせの場合(図26)であればスケルトン・セル空間C2の上面から外側(すなわち上方)に10mmの位置とされることを意味する。なお,これはスケルトン・セル空間C2の上方にある固定棚ユニット16の板厚さが20mmであることを前提としている。引出し前板ユニット4Aのユニット空間U4Aの上面は,全かぶせの場合には固定棚ユニット16の上面と一致し,半かぶせの場合には固定棚ユニット16の上下方向を結ぶ幅の中心を通る水平面と一致する。
前板ユニット4Aのユニット空間U4Aの「下面」,「左面」および「右面」についても,「上面」と同様にして,それらの面位置が規定される。
引出し前板ユニット4Aを構成するパーツである引出し前板21の上面は,引出し前板ユニット4Aのユニット空間U4Aの上面から2mmだけ内側(下方)に入った箇所に位置するように,パーツ空間テーブルT4にデータが格納されている(図23,図24参照)。このため,引出し前板ユニット4A(引出し前板21)の上面は,固定棚ユニット16の上面(全かぶせの場合)または固定棚ユニット16の上下方向を結ぶ幅の中心を通る水平面(半かぶせの場合)よりも2mmだけ下方に位置することになる。これにより,たとえば上下に隣り合うようにして2つの引出しユニット4が設けられたとしても,引出し前板ユニット4A(引出し前板21)同士の間にはわずかな隙間が生じることになる。上下に隣り合う引出し前板ユニット4A同士が擦れ合うことが防止される。
このように,引出し前板ユニット4Aには,ユニット空間テーブルT5(図27),パーツ空間テーブルT4(図24),および複数の素材のそれぞれの素材空間テーブルT1〜T3(図18,図20,図22)が規定される。
たとえば,引出し前板ユニット4A(引出し前板21)(図11,図12参照)の下面に貼られる下木口材21eの厚さを厚くするまたは薄くする(そのような家具を設計するまたは設計変更する)とする。この場合,図20を参照して,下木口材21eの厚さを表す下木口材21eの上面についての関連値(0.5 )を増減することになる。ここで,図18を参照して,下木口材21eに隣接する表面材21aの下面位置は,下木口材21eの素材空間M21eの上面を基準にして定められているので,下木口材21eの厚さ(上面の位置)が変えられると,これに連動して表面材21aの寸法も連動して変更される。このように,家具を構成する最小単位の部材である素材の寸法に修正を加えることができ,その修正に合わせて他の素材の寸法が連動して修正される。細かな仕様変更にも迅速に対処することができる。
別の例を説明する。たとえば,引出し前板ユニット4A(引出し前板21)の表面材21bの厚さを厚くするまたは薄くするとする。図18を参照して,表面材21bの厚さを表す表面材21bの後面についての関連値( 2.5)を増減することになる。ここで,図22を参照して,表面材21bに隣接する芯材21aの前面位置が,表面材21bの素材空間M21bの後面を基準にして定められているので,表面材21bの厚さ(後面の位置)が変わると,これに連動して芯材21aの寸法も連動して変更される。すなわち,表面材21bの厚さの変更分は,これに連動する芯材21aの厚さの変更分によって吸収されることを意味する。このように,引出し前板21の寸法(その厚さ)に変更を生じさせることなく,引出し前板21の厚さを規定する表面材21bの厚さを変更することも可能である。
(2)引出し内箱ユニット4Bについて
次に,複数のパーツによって構成される引出し内箱ユニット4B(図5参照)について,ユニット空間,パーツ空間および素材空間のそれぞれのデータ構造(データテーブル)を具体的に説明する。
上述したように,引出し内箱ユニット4Bは,底板22,左妻板23,右妻板24,先板25,内前板26,左レール27および右レール28の7つのパーツから構成されており,そのそれぞれがパーツ空間を持つ(図8)。さらにパーツが複数の素材から構成されている場合には,素材のそれぞれが素材空間を持つ。
一例として,引出し内箱ユニット4Bの左妻板23を取り上げる。図28(A),(B)は,引出し内箱ユニット4Bのユニット空間U4B(一点鎖線)と,引出し内箱ユニット4Bを構成する左妻板23のパーツ空間P23(ハッチング)と,左妻板23の表面(外側面)を構成する表面材の素材空間M23(太実線)の関係を図示するものである。
(i)引出し内箱ユニット4Bを構成する左妻板23を構成する表面材の素材空間
図29は,引出し内箱ユニット4Bの左妻板23の表面材について規定される素材空間テーブルT6を示している。
図29を参照して,引出し内箱ユニット4Bを構成する左妻板23を構成する表面材についての素材空間テーブルT6には,前面,後面,上面,下面,左面および右面のそれぞれについて,「対象面」,「関連の種類」および「関連値」のデータが格納される。
たとえば面位置「前面」に着目すると,対象面が「パーツ空間の前面」,関連の種類が「対象面から一定の距離を保つ(連動)」,関連値が「0」である。図28(A),(B)を参照して,これは,左妻板23を構成する表面材に外接する直方体状の素材空間M23(図28(A),(B)の太実線)の前面位置は,表面材が属する左妻板23について規定される直方体状のパーツ空間P23(ハッチング)の前面位置から一定の距離を保ち,その距離が0mmであることを表している。表面材の素材空間M23の前面位置は,左妻板23のパーツ空間P23の前面位置を基準にして相対的に決定される。表面材の素材空間M23の面位置「後面」,「下面」および「左面」の面位置についても,同様にして,左妻板23のパーツ空間P23の後面,下面および左面を基準にして決定される。
面位置「上面」に着目すると,対象面が「上木口材の素材空間の下面」,関連の種類が「対象面から一定の距離を保つ(連動)」,関連値が「0」である。これは,表面材の素材空間M23の後面位置は,同じ左妻板23を構成する他の素材である上木口材の素材空間の下面位置から一定の距離を保ち,その距離が0mmであることを表している。すなわち,表面材の上面は上木口材の下面に接して連動し,上木口材の下面位置が決まることで,表面材の上面位置は定められる。
面位置「右面」については,対象面が「なし」,関連の種類が「反対面から一定の距離を保つ(非連動)」,関連値が「2.5」である。表面材の厚さが2.5mmであることを表している。
左妻板23を構成する他の素材,すなわち裏面材および複数の木口材のそれぞれについても,素材空間テーブルが設けられる。
(ii)引出し内箱ユニット4Bを構成する左妻板23のパーツ空間
図30は引出し内箱ユニット4Bを構成する左妻板23のパーツ空間P23を規定するパーツ空間テーブルT7を示している。
図30を参照して,引出し内箱ユニット4Bを構成する複数のパーツの一つである左妻板23のパーツ空間テーブルT7にも,前面,後面,上面,下面,左面および右面のそれぞれについて,「対象面」,「関連の種類」および「関連値」の3つのデータが格納される。
たとえば面位置「前面」に着目すると,対象面が「ユニット空間の前面」,関連の種類が「対象面から一定の距離を保つ(連動)」,関連値が「0」である。図28(A)および図28(B)を参照して,これは,左妻板23に外接する直方体状のパーツ空間P23(ハッチング)の前面位置は,その左妻板23が属する引出し内箱ユニット4Bについて規定されるユニット空間U4B(一点鎖線)の前面位置から一定の距離を保ち,その一定の距離が0mmであることを表している。左妻板23のパーツ空間P23の前面位置,すなわち左妻板23の前面位置は,引出し内箱ユニット4Bのユニット空間U4Bの前面位置を基準にして相対的に決定される。
図30に戻って,面位置「上面」に着目すると,対象面が「ユニット空間の上面」,関連の種類が「対象面から一定の距離を保つ(連動)」,関連値が「−5」である。図28(A)を参照して,これは,左妻板23に外接する直方体状のパーツ空間P23の上面位置は,左妻板23が属する引出し内箱ユニット4Bについて規定されるユニット空間U4Bの上面から5mmだけ内側(すなわち下方)に入った位置であることを意味する。左妻板23の上面位置は,引出し内箱ユニット4Bのユニット空間U4Bの上面位置が決まることで定められる。
面位置「左面」に着目すると,対象面が「ユニット空間の左面」,関連の種類が「対象面から一定の距離を保つ(連動)」,関連値が「−13」である。図28(A)を参照して,これは,左妻板23に外接する直方体状のパーツ空間P23の左面位置は,左妻板23が属する引出し内箱ユニット4Bについて規定されるユニット空間U4Bの左面位置から13mmだけ内側(すなわち右方)に入った位置であることを意味する。これは,左妻板23の左面(外側面)には左レール27が設けられ(図8参照),この左レール27の厚さを考慮して,左妻板23の左面位置が定まることを意味する。いずれにしても,左妻板23の左面位置は,引出し内箱ユニット4Bのユニット空間U4Bの左面位置を基準にして定められる。
面位置「右面」に着目すると,対象面が「なし」,関連の種類が「反対面から一定の距離を保つ(非連動)」,関連値が「15」である。左妻板23の厚さが15mmの固定値であることを表す。
上述したパーツ空間テーブルは,左妻板23のみならず,引出し内箱ユニット4Bを構成する他のパーツ(図8参照)についても規定される。
(iii)引出し内箱ユニット4Bのユニット空間
図31は,引出し内箱ユニット4Bのユニット空間U4B(一点鎖線で示す)と,スケルトン・セル空間C2と,上述した引出し前板ユニット4Aのユニット空間U4A(二点鎖線で示す)との関係を,引出し前板21のパーツ空間P21(ハッチングで示す),キャビネット・ユニット2を構成する底板12,背板15および固定棚ユニット16(太実線で示す)とともに横断面で図示するものである。図32は引出し内箱ユニット4Bのユニット空間テーブルT8を示している。
図32を参照して,引出し内箱ユニット4Bのユニット空間テーブルT8中の面位置「前面」に着目すると,対象面が「引出し前板のユニット空間の後面」,関連の種類が「対象面から一定の距離を保つ(連動)」,関連値が「−3」である。図31を参照して,これは,引出し内箱ユニット4Bのユニット空間U4B(一点鎖線)の前面位置は,引出し前板ユニット4Aのユニット空間U4A(二点鎖線)の後面から3mmだけ内側(前方)の位置であることを示している。3mm分,引出し内箱ユニット4Bのユニット空間U4Bの前面位置は,引出し前板ユニット4Aのユニット空間U4Aの後面から内側に位置している。これは,引出し前板ユニット4A(引出し前板21)の後面位置と,引出し内箱ユニット4Bのユニット空間U4Bの前面位置とが同じ位置であることを意味する。引出し内箱ユニット4Bのユニット空間U4Bの前面位置は,前板ユニット空間U4Aの後面位置を基準にして定められており,スケルトン・セル空間C2の前面に直接的には関連づけられていない。しかしながら,引出し前板ユニット4Aのユニット空間U4Aの後面位置は,スケルトン・セル空間C2の前面を基準に定められており(図27参照),したがって引出し内箱ユニット4Bのユニット空間U4Bの前面位置は,間接的に,スケルトン・セル空間C2の前面を基準にして定められている。
図32に戻って,面位置「後面」については,対象面が「スケルトン・セル空間の後面」,関連の種類が「対象面から一定の距離を保つ(連動)」,関連値が「−5」である。図31を参照して,これは,引出し内箱ユニット4Bのユニット空間U4Bの後面位置は,スケルトン・セル空間C2の後面位置(背板15の内面位置)から内側に一定の距離を保ち,その一定の距離が5mmであることを表す。引出し内箱ユニット4Bがスケルトン・セル空間C2に入れられたときに,引出し内箱ユニット4Bと背板15の間に5mmの隙間が確保されることになる。
面位置「上面」に着目すると,対象面が「スケルトン・セル空間の上面」,関連の種類が「対象面から一定の距離を保つ(連動)」,関連値が「0」である。図31を参照して,これは,引出し内箱ユニット4Bのユニット空間U4Bの上面位置は,セル空間C2の上面位置(すなわち,固定棚ユニット16の下面位置)と同じ位置となることを意味する。スケルトン・セル空間C2の上面位置が決まると,引出し内箱ユニット4Bのユニット空間U4Bの上面位置が定められる。
ここで,上述したように,引出し内箱ユニット4Bのユニット空間U4Bと,引出し内箱ユニット4Bを構成する左妻板23の上面の間には5mmの間隔が存在する(図28(A)参照)。これにより,引出し内箱ユニット4Bがスケルトン・セル空間C2に入れられたとき,引出し内箱ユニット4Bを構成する左妻板23が固定棚ユニット16に接触してしまうことはない。
スケルトン・ユニットにおいて規定されるスケルトン・セル空間の寸法が決まると,そのスケルトン・セル空間に組込まれているインフィル・ユニットについてのユニット空間の寸法が決まる。ユニット空間の寸法が決まるとそのインフィル・ユニットを構成する複数のパーツの寸法が決まる。パーツの寸法が決まるとそのパーツを構成する複数の素材の寸法が決まる。逆に言えば,複数の素材のそれぞれをいかなる寸法を持つように作製すれば,設計した家具を作製できるかが決定されることになる。
上述した扉ユニット3(図4)についても,扉ユニット3のユニット空間U3がスケルトン・セル空間C1に関連づけられるから(図16(B)),スケルトン・セル空間C1の寸法が決まると扉ユニット3のユニット空間U3の寸法が決まり,扉ユニット3のユニット空間U3の寸法が決まると,扉ユニット3を構成するパーツおよび素材のそれぞれの寸法が決まる。
(3)スケルトン・セル空間について
図33は,キャビネット・ユニット2に規定されるスケルトン・セル空間C(図13(A)および図13(B))のセル空間テーブルT9を示している。図34および図35は,スケルトン・セル空間Cが2つのスケルトン・セル空間C1およびC2に分割されたときの,スケルトン・セル空間C1についてのセル空間テーブルT10およびスケルトン・セル空間C2についてのセル空間テーブルT11をそれぞれ示している。
キャビネット・ユニット2は,上述したように,天板11,底板12,左側板13,左側板14および背板15によって構成され,前面は開口している構造を持つ(図7参照)。キャビネット・ユニット2は,キャビネット・ユニット2に外接する直方体状のユニット空間U2と,キャビネット・ユニット2によって仕切られる内側の空間を規定するスケルトン・セル空間Cが規定される(図3)。
図33を参照して,図33に示すセル空間テーブルT9が,キャビネット・ユニット2によって仕切られる内側のスケルトン・セル空間Cを規定する。セル空間テーブルT9にも,前面,後面,上面,下面,左面および右面のそれぞれについて,「対象面」,「関連の種類」および「関連値」の3つのデータが格納される。
面位置「前面」に着目すると,対象面が「キャビネット・ユニットのユニット空間の前面」,関連の種類が「対象面から一定の距離を保つ(連動)」,関連値が「0」である。図3を参照して,これは,キャビネット・ユニット2について規定されるスケルトン・セル空間Cの前面(すなわち開口面)は,キャビネット・ユニット2について規定されるユニット空間U2の前面から一定の距離を保ち,その距離が0mmであることを表している。スケルトン・セル空間Cの前面は,キャビネット・ユニット2のユニット空間U2の前面と一致する。なお,キャビネット・ユニット2のユニット空間U2もユニット空間テーブルによって規定されるが,キャビネット・ユニット2のユニット空間U2の6面は,基本的に他のユニット空間やセル空間に関連づけられず,家具設計装置における操作(寸法の数値入力)によってその位置が定められる。
面位置「後面」を参照して,対象面が「背板のパーツ空間の前面」,関連の種類が「対象面から一定の距離を保つ(連動)」,関連値が「0」である。キャビネット・ユニット2のスケルトン・セル空間Cの後面は,背板15のパーツ空間の前面と一致することを意味する。
面位置「上面」,「下面」,「左面」および「右面」についても,面位置「後面」と同様に,スケルトン・ユニット2を構成する「天板」,「地板」,「左側板」および「右側板」のパーツ空間の特定面を基準にして,それらの位置は決定される。
上述したように,引出しユニット4がキャビネット・ユニット2に組み込まれると,スケルトン・セル空間Cが2つのスケルトン・セル空間C1およびC2に分割される(図14(A),(B)参照)。スケルトン・セル空間Cについて規定されていたセル空間テーブルT9に代えて,2つのスケルトン・セル空間C1,C2のそれぞれを規定するセル空間テーブルT10,T11(図34(A)および図34(B))が新たに規定される。
図34(A)および図14(B)を参照して,スケルトン・セル空間C1についてのセル空間テーブルT10は,面位置「下面」についての対象面が「固定棚ユニットのユニット空間の上面」とされる点が,図33に示すスケルトン・セル空間Cについてのセル空間テーブルT9と異なる。固定棚ユニット16(図2参照)のユニット空間の上面を基準にして,分割されたスケルトン・セル空間C1の下面の位置が定められる。
図34(B)および図14(B)を参照して,スケルトン・セル空間C2についてのセル空間テーブルT11は,面位置「上面」についての対象面が「固定棚ユニット空間の下面」とされる点が,図33に示すスケルトン・セル空間Cについてのセル空間テーブルT9と異なる。固定棚ユニット16(図2参照)のユニット空間の下面を基準にして,分割されたスケルトン・セル空間C2の上面の位置が定められる。
(4)インフィル・セル空間について
図35は引出し内箱ユニット4Bに設定されるインフィル・セル空間Cj(図15参照)について規定されるセル空間テーブルT12を示している。上述したように,インフィル・ユニットにたとえば物を収納するための空間が存在する場合に,その空間についてインフィル・セル空間を設定することができる。
図35を参照して,引出し内箱ユニット4Bに設定されるインフィル・セル空間Cjを規定するセル空間テーブルT12では,前面,後面,上面,下面,左面および右面のそれぞれの面位置が,引出し内箱ユニット4Bを構成するパーツの特定面と,引出し内箱ユニット4Bについて規定されるユニット空間U4B(図5参照)とを基準にして定められる。たとえば,面位置「前面」は,対象面が「内前板のパーツ空間の後面」,関連の種類が「対象面から一定の距離を保つ(連動)」である。内前板26のパーツ空間P26(図8参照)の後面を基準にして,引出し内箱ユニット4Bについて設定されるインフィル・セル空間Cjの前面の位置は定められる。面位置「上面」は,引出し内箱ユニット4Bについて規定されるユニット空間U4Bの上面を基準にしてその位置が定められる。
スケルトン・セル空間Cと同様に,インフィル・セル空間Cjも分割することができる。図36は,インフィル・セル空間Cjに中仕切ユニット17が設けられ,これによってインフィル・セル空間Cjが2つのインフィル・セル空間Cj1,Cj2に分割された様子を示している。この場合,上述したインフィル・セル空間Cjについて規定されていたセル空間テーブルT12(図35)に代えて,2つのインフィル・セル空間Cj1,Cj2のそれぞれを規定するセル空間テーブルT13,T14(図37(A)および図37(B))が新たに規定される。
第7.加工情報の登録
上述のように,家具は複数のユニット(スケルトン・ユニットおよび一または複数のインフィル・ユニット)の組合せによって構成され,ユニットは一のパーツまたは複数のパーツの組合せによって構成される。さらにパーツは一の素材または複数の素材の組合せによって構成される。家具の設計が完了すると,上述のように,その家具の構成する複数のユニットの寸法が決まり,ユニットの寸法が決まることでそのユニットを構成する一または複数のパーツの寸法が決まる。パーツの寸法が決まることでそのパーツを構成する一または複数の素材の寸法が決まる。複数の素材のそれぞれを決定した寸法に加工し,加工済の複数の素材を組合せることでパーツを製作し,複数のパーツを組立てることでユニットを製作し,複数のユニットを組み合わせることで,設計した家具が完成することになる。
複数の素材を組合せることで製作されるパーツは,基本的には芯材の表面および裏面に表面材および裏面材をそれぞれ接着し,かつ木口面に木口材を接着することによって製作することができる。これに対し,複数のパーツを組立てることで製作されるユニットは,一般には接着だけでは強度を確保することができないので,パーツの木口面およびその木口面が接合される他のパーツの面に穴(ダボ穴)をあけ,その穴に木ダボを差込んで接合したり,緊結金具を用いることで接合強度が高められる。
家具設計システムでは,パーツにあらかじめ形成しておくべき穴,ミゾなど,パーツ同士の組立てのための加工情報を表すデータを,パーツに関連づけて登録することができる。
図38はキャビネット・ユニット2(図3および図7参照)を構成するパーツである天板11および右側板14と,天板11と右側板14を接合するために用いられる複数の穴を示している。図38では,天板11の右面と右側板14の左面とを接合するために,天板11の右面および右側板14の左面のそれぞれに4つの穴があけられている。
図3,図7を参照して,たとえばキャビネット・ユニット2の天板11の場合,天板11の左面および右面に,左側板13および右側板14のそれぞれと接合するための穴をあける必要がある。このため天板11については,その左面および右面のそれぞれに加工情報が登録される。
図39(A)は天板11の右面,すなわち右側板14と接合される面(図38参照)を示している。天板11の右面に(i)〜(iv)の4つの穴があけられている。
複数の穴の数および位置は,パーツ,ここでは天板11の寸法に応じて決定される。天板11の右面の穴であれば,天板11の奥行きの寸法(前端から後端までの長さ)に応じて,所定のルールにしたがって,その数および位置が決定される。たとえば,次のルールによって穴の数および位置は決定される。
・後端から特定の距離Aの位置に穴をあける。
・前端から特定の距離Cの位置に穴をあける。
・穴と穴の間のピッチを特定の距離Bとし,後端がわから距離Bごとに穴を追加する。
・追加穴が前端から距離Cの位置にある穴を超える位置に至るときに穴あけを終了する。
上述のルールにしたがうと,図39(A)を参照して,後端から距離Aの位置に穴(i) があけられ(穴(i) をあけるべき位置が決定されることを意味する。以下,同様。),次に前端から距離Cの位置に穴(ii)があけられる。後端がわから距離Bごとに追加穴があけられるので,穴(i) から距離Bをあけて追加穴(iii)があけられ,さらに追加穴(iii)から距離Bをあけて追加穴(iv)があけられる。
追加穴(iv)から距離Bだけ前端に向かうと,先にあけられている穴(ii)の位置を超えてしまう(追加穴(iv)と穴(ii)の間の距離がB未満である)。このため,追加穴(iv)があけられた時点で穴の追加は終了する。
図39(B)は天板11の奥行き方向の寸法が,図39(A)のものよりも拡大された場合を示している。図39(B)の場合,追加穴(iv)から距離Bをあけて追加穴(v)がさらにあけられることになる。
図40は,図38に示す天板11の右面についての穴加工データを示している。穴加工データには,上述のルールによって決定された天板11にあけられるべき穴の位置と,その穴の寸法(穴径および穴深さ)が規定される。さらに穴加工データでは天板11に接合する他のパーツにおいて対応してあけられるべき穴の位置および寸法も規定される。
穴加工データには,加工面,加工対象,加工位置,穴径および穴深さに関するデータが格納される。一行分のデータが一つの穴加工データを意味する。
「加工面」には穴加工が施されるべき面位置が規定される。「加工対象」には「自分」または「相手」のいずれかが格納される。「自分」とはここでは天板11を意味する。「相手」とは天板11の特定の加工面が接合する他のパーツの特定面を意味する。図40に示す例では,天板11の特定の加工面が右面であれば,その「相手」は右側板14の左面を意味することになる。この「相手」については,上述したパーツ空間テーブルによって自動的に把握することができる。「加工位置」は穴を加工すべき木口面を正面として捉えて,その左下端を基準点(原点)したときの穴加工の位置(X/Y座標)である。「穴径」は形成すべき穴の直径,「穴深さ」は形成すべき穴の深さを意味する。
図38に示す例の場合,天板11の右面に形成されるべき4つの穴のそれぞれについての穴加工データが登録され,かつ天板11の右面の4つの穴のそれぞれに対応して右側板14の左面に形成されるべき4つの穴についての穴加工データも登録される。右側板14の左面に形成されるべき4つの穴の位置は,上述のルールに基づいて天板11の右面について決定された4つの穴に対応して自動的に決定される。
パーツ同士を接合するための穴加工データの他に,ミゾを形成するためのミゾ加工データや,金具を固定するための加工データも登録することができる。
図41は扉ユニット3に取り付けられるべき2つの蝶番K1,K2と,蝶番K1,K2が固定されるべき扉ユニット3における固定位置と右側板14における固定位置との関係を示している。図42は引出しユニット4の内箱ユニット4Bに取り付けられるべき右スライド金具28と,右スライド金具28が固定されるべき右妻板24における固定位置と右側板14における固定位置との関係を示している。家具1が設計されてその寸法が定められることで,上述のようにユニットおよびパーツの寸法が決まり,蝶番K1,K2,右スライド金具28等が固定されるべき位置も決めることができる。蝶番K1,K2についての穴加工データには,扉ユニット3および右側板14に形成されるべき穴の位置,穴径および穴深さが規定される。右スライド金具28についての穴加工データには,右妻板24および右側板14に形成されるべき穴の位置,穴径および穴深さが規定される。
第8.システム構成
図43は家具設計システムのハードウエア構成を示している。図44は家具設計システムを構成するユニット設計装置(ユニット・メーカー)のハードウエア構成を示している。
上述したように,家具設計システムでは,あらかじめ複数種類のユニットが設計されて登録され,登録された複数種類のユニットを組み合わせることによって家具が設計される。家具設計システムには,上述のユニットの設計および登録のためのユニット設計装置(ユニット・メーカー)32と,ユニット設計装置32によって設計された複数種類のユニットを組合せて家具を設計するための家具設計装置(ファニチャー・メーカー)33の2つの装置が含まれる。
ユニット設計装置32はたとえばパーソナル・コンピュータによって構成される。ユニット設計装置32はCPU(中央演算処理装置)41を含み,CPU41に,入力装置42,表示装置43,メモリ44,ハードディスク45,および通信装置46が接続されている。たとえばCD−ROM47に記録されたユニット設計プログラムがハードディスク45にインストールされることで,パーソナル・コンピュータがユニット設計装置32として機能する。CPU41から与えられる表示データに基づいて,表示装置43の表示画面に種々のウインドウが表示される。オペレータは入力装置42(キーボード,マウスなど)を用いて,クリック(選択),数値入力等を行う。
家具設計装置33もパーソナル・コンピュータによって構成される。図44において,かっこ内に示す符号が家具設計装置33を構成するハードウエア構成を示している。
ユニット設計装置32において,家具を設計するために用いられる上述した「スケルトン・ユニット」および「インフィル・ユニット」を表すデータが作成される。これらのデータには,上述したセル空間テーブル,パーツ空間テーブル,および素材空間テーブルが含まれるのは言うまでもない。作成されたユニットを表すデータが通信装置46およびネットワーク31を通じてアップロードされ,ネットワーク接続されているユニット・データベース34に登録(記憶)される。ユニット・データベース34に登録されているユニットを表すデータがネットワーク31および通信装置56を介して家具設計装置33にダウンロードされることで,家具設計装置33において,ユニット同士の組合せ,すなわち家具の設計が行われる。
引出しユニット4(引出し前板ユニット4Aおよび引出し内箱ユニット4B)を例にして,ユニット設計装置32において行われる引出しユニット4の作成の流れを説明する。
(1)パーツの作成(設計)
図45から図49は,引出しユニットを構成する複数の板材パーツ(底板22,左妻板23,右妻板24,先板25,内前板26など)(図8)のそれぞれを設計するために用いられる設計画面を示している。
ユニット設計プログラムを起動すると,上述したように,パーソナル・コンピュータはユニット設計装置32として機能する。図45を参照して,はじめに初期画面の画面上部の「ファイル」がクリックされる。すると,「新規作成」,「開く」,「名前を付けて保存」および「終了」の文字が現れる。「新規作成」を選択することで現れる「パーツ」,「ユニット」,「扉」および「引出」のうち,「パーツ」が選択される。
「パーツ」が選択されると,図46に示すように,設計すべきパーツの基本構造または素材を選択する画面が現れる。ここでは,「無垢」,「ガラス」または「合板」のいずれかが選択される。「無垢」はパーツを一つの素材(ガラス以外)によって構成する場合に選択される。「ガラス」はパーツの素材をガラスにする場合に選択される。「合板」は,パーツを,芯材と,表面材および裏面材と,木口材の組合せによって構成する場合に選択される。ここでは「合板」が選択された場合を説明する。
「合板」を選択して「次へ」ボタンをクリックすると,図47に示すように,芯材,表面材(および裏面材),木口材のそれぞれについて,グループ,メーカー,品番を選択するための画面が現れる。表面材(および裏面材)と木口材については,メーカーおよび品番を選択するとその厚さが決まる(固定値)。これに対し,芯材の厚さは,次に入力されるパーツ全体の厚さと,表面材,裏面材および木口材の厚さとによって決定される。なお,初期状態では,パーツ(合板)は,芯材と,芯材の表面および裏面を覆う表面材および裏面材と,芯材の4つの側面のそれぞれを覆う4つの木口材を備えるものとして規定される。
図48を参照して,次にパーツの厚さ(合板の板厚)を入力する画面が現れる。ここでパーツの全体の厚さが入力される。
図49を参照して,最後に,パーツについての名称(パーツ名)が入力され,これにより引出し内箱ユニット4Bを構成する合板(パーツ)についての定義が完了する。合板を選択したことによって,芯材に外接する素材空間を規定する素材空間テーブル(図22参照),表面材および裏面材に外接する素材空間をそれぞれ規定する素材空間テーブル(図18参照),複数の木口材のそれぞれに外接する素材空間をそれぞれ規定する素材空間テーブル(図20参照)が作成される。また,複数の素材によって構成される合板(パーツ)に外接するパーツ空間を規定するパーツ空間テーブル(図24および図30参照)も,パーツ空間の6面のそれぞれの対象面に関するデータおよび関連値に関するデータを除いて作成される。引出し内箱ユニット4Bを構成する複数の板材について,すべて合板を用い,かつすべて板厚を20mmとする場合であれば,ここで作成した一つの板材データを用いて,次に説明するユニット作成に進めばよい。複数の板材のうちのたとえばいずれか一つの板材の厚さを異ならせる場合に,別の板材データ(たとえば,厚さを10mmとしたもの)を作成すればよい。
(2)ユニットの作成(設計)
図50から図58は,引出しユニット4(引出し内箱ユニット4Bおよび引出し前板ユニット4A)の設計に用いられる設計画面を示している。上述した初期画面(図45)の画面上の「新規作成」を選択することで現れる「引出」がクリックされる。
ユニットの作成では,次の2つの処理が行われる。
第1の処理は,ユニットを構成する複数のパーツの面同士の関連データの入力である。この処理では,設計するユニットがどのような(いくつの)パーツから構成されるものであるかの入力と,複数のパーツからユニットが構成される場合には,その複数のパーツ同士の面同士の関連づけの入力が行われる。もっとも,扉ユニット3(図4参照)のように,一つのパーツのみからユニットが構成される場合には,ユニットを構成する複数のパーツの面同士の関連データの入力は省略される。
第2の処理は,上述したユニット空間と,パーツ空間との面関連のデータ入力である。この処理では,ユニット空間の6面のそれぞれについて,複数のパーツのうちのいずれのパーツのいずれの面が関連づけられるかが入力される。第2の処理は,一つのパーツのみから構成されるユニット(たとえば扉ユニット3)についても行われる。
図50を参照して,この画面は,設計する引出し内箱ユニット4Bを,7つのパーツ(底板22,左妻板23,右妻板24,先板25,内前板26,左レール27および右レール28)(図8参照)から構成するときの初期状態の画面を示している。入力装置42(マウス等)が用いられて7つのパーツのおおよその位置が入力される。
図51および図52を参照して,これらの画面が,パーツ同士の面同士の関連づけの入力を行う画面である。はじめに特定のパーツの特定面が「主面」として選択され(図51),続いて他の特定のパーツの特定面が「従面」として選択される(図52)。これによって,たとえば左妻板23の右面(図51においてハッチングで示す)(主面)に,内前板26の左面(側面)(図52においてハッチングで示す)(従面)が接する構造が規定される。このとき,従面である内前板26の左面の木口材を省略してもよい。内前板26を構成する左木口材の素材空間テーブルが消去されることになる。同様の処理が7つのパーツのそれぞれについて行われることで,たとえば図5に示す構造の内箱ユニット4Bが設計される。
図53から図58が,ユニット空間と,パーツ空間との面関連のデータ入力のための画面である。図53を参照して,はじめに引出し内箱ユニット4Bのユニット空間U4Bを表す直方体状の図形が表示され,その6面のうちのいずれかの面,たとえば前面がクリックされて特定される(図53においてハッチングで示す)。次に,特定されたユニット空間U4Bの前面に関連づけるべきパーツ(パーツ空間)およびその特定面が選択される。図54は左妻板23の前面(ハッチング部分)が選択されている様子を示している。ユニット空間U4Bの前面と左妻板23(そのパーツ空間)の前面とが選択されることで,これらの面同士の関連づけが行われる(図55)。これにより,左妻板23のパーツ空間テーブルT7(図30)には,左妻板23(そのパーツ空間)の前面位置は,ユニット空間U4Bの前面を対象面とすることがデータ入力される。画面左上の「距離」の欄の数値を「 0.0mm」とすることで,ユニット空間U4Bの前面位置と左妻板23の前面位置との距離が0mm,すなわち一致させることが規定される(図55)。同様の作業が他のパーツについても同様にして行われる。
引出し内箱ユニット4Bに引出し前板ユニット4Aを設けるかどうかを選択する画面が表示される(図56)。引出し前板ユニット4Aを設ける場合には「前板あり」が選択される。引出し前板ユニット4A(引出し前板21)についての高さ(初期値)および隙間またはチリ(図24参照)が入力される(図57)。さらに引出し内箱ユニット4Bについて設定される隙間またはチリ(図32参照)が入力される(図58)。
上述の画面を用いたデータ入力を経ることによって,引出し前板ユニット4Aについての素材空間テーブル,パーツ空間テーブルおよびユニット空間テーブルの組の作成が完了し,引出し内箱ユニット4Bについても素材空間テーブル,パーツ空間テーブルおよびユニット空間テーブルの組の作成が完了する。作成されたユニット空間テーブル,パーツ空間テーブルおよび素材空間テーブルは,引出しユニット4を表すデータとしてネットワーク31を介してユニット・データベース34に一組のデータとして登録される。キャビネット・ユニット2(図3),扉ユニット3(図4)などについても,同様に,ユニット空間テーブル,パーツ空間テーブル,および素材空間テーブルの組が,キャビネット・ユニット2を表すデータ,扉ユニット3を表すデータとして,ユニット・データベース34に登録される。もちろん,ユニット空間テーブル,パーツ空間テーブルおよび素材空間テーブルの作成(データ入力)は,上述した入力画面を用いることなく,これらのテーブルを直接に操作することによって行ってもよいし,入力画面を用いたデータ入力と,テーブルを直接に操作することによるデータ入力の両方を用いることもできる。
スケルトン・ユニットを表すデータおよびインフィル・ユニットを表すデータは,上述のように,パーツを一つ一つ組み合わせることでユニット(たとえば引出し内箱ユニット)の構造を決定することで作成してもよいし,あらかじめキャビネット・ユニット,引出し内箱ユニット,扉ユニット等のテンプレートを準備しておき,そのテンプレートの一部または全部を修正する(板の厚さを変える,木口材の厚さを変える,パーツの組み方を変えるなど)ことで作成してもよい。いずれにしても,複数のスケルトン・ユニットおよびインフィル・ユニットのそれぞれについて,上述したユニット空間テーブル,パーツ空間テーブルおよび素材空間テーブルの組が作成されて,ユニット・データベース34に登録される。
図59から図62は,セル空間の設定(セル空間テーブル作成)のための入力画面を示している。
図59および図61は,キャビネット・ユニット2の内側にスケルトン・セル空間C(図3,図13(A),(B))を設定する様子を示している。
セル空間の設定では,ユニットを構成する複数のパーツおよびユニット空間のいずれの面を基準にしてどの向きにセル空間を規定するかが入力される。図59および図60は,キャビネット・ユニット2を構成する左側板13の内面を基準にして,反対がわ(右側板)に向かう方向にセル空間を設定するときの様子を示している。同様の操作を,6面について行うことによって,キャビネット・ユニット2の内側にスケルトン・セル空間Cが規定され,スケルトン・セル空間Cについてのセル空間テーブルT9(図33)が作成される。
図61および図62は,引出し内箱ユニット4Bの内側にインフィル・セル空間Cj(図6)を設定する様子を示しており,ここでは内箱引出しユニット4Bの左妻板23の内面を基準にして,反対がわ(右妻板)に向かう方向にセル空間を設定するときの様子を示している。同様の操作を,6面について行うことによって,引出し内箱ユニット4Bの内側にインフィル・セル空間Cjが規定され,インフィル・セル空間Cjのセル空間テーブルT12(図35)が作成される。
セル空間テーブルを表すデータについても,上述したユニット空間テーブル,パーツ空間テーブルおよび素材空間テーブルの組に入れられて,ユニット・データベース34に登録される。
図63から図66は家具設計装置33の表示装置53の表示画面上に表示されるウインドウを示すもので,家具1(図2)を設計するときの流れを示す画面遷移である。
家具設計装置33のユーザ(オペレータ)は,はじめにネットワーク31を通じてユニット・データベース34にアクセスし,あらかじめ登録しておいたユニットを表すデータをダウンロードする。ダウンロードされたユニットを表すデータによって表されるユニットを表す画像を設計ウインドウ上にドラッグアンドドロップすることで,家具の設計,すなわちユニットの組合せが進められる。
たとえば,「スケルトン」の選択ボタン(図示略)がクリックされると,スケルトン・ユニットの画像(または名称)が一覧に表示される。キャビネット・ユニット2の画像を選択して設計ウインドウ中にドラッグアンドドロップすると,設計ウインドウにキャビネット・ユニット2の正面を表す画像が表示される(図63)。はじめに表示されるキャビネット・ユニット2(ユニット空間U2)およびスケルトン・セル空間Cの寸法(高さ,幅および奥行き)には初期値(家具設計装置33においてあらかじめ定められている標準値)が用いられる。初期状態のセル空間Cの寸法がメモリ54中に規定される。
入力装置52(マウス)を用いて,設計ウインドウにおいてキャビネット・ユニット2の高さ方向の寸法および幅方向の寸法を変更することができる。また,別途表示される高さ,幅,奥行きを数値によって表すウインドウ(図示略)を用いて,高さ,幅または奥行きの寸法を変更することもできる。高さ,幅,奥行きが変更されると,変更された寸法の高さおよび幅を持つように,表示されているキャビネット・ユニット2の形状が変更される。メモリ54上において,キャビネット・ユニット2の形状(寸法)の変更に応じて,その寸法(高さ,幅,奥行き)を表すデータ,セル空間Cの寸法(高さ,幅,奥行き)を表すデータが変更される。
次に,キャビネット・ユニット2によって規定されるスケルトン・セル空間C内に,他のユニットが設けられる(配置される)。
キャビネット・ユニット2のセル空間C内にインフィル・ユニットの一つである引出しユニット4を設ける場合,「インフィル」の選択ボタン(図示略)がクリックされる。引出しユニット4の画像を含む複数種類のインフィル・ユニットの画像が表示される。引出しユニット4の画像部分を入力装置52を用いてクリックして選択し,キャビネット・ユニット2のセル空間Cの下側部分にドラッグアンドドロップすると,セル空間C内の下側部分に引出しユニット4の正面を概略的に表す画像が追加表示される(図64)。
上述したように,引出しユニット4がセル空間Cに組込まれると,キャビネット・ユニット2によってつくられていた一つのセル空間Cが,2つのセル空間C1,C2に分割される(図14(B)参照)。セル空間C2に引出しユニット4のユニット空間U4(すなわち,引出し前板ユニット4Aと引出し内箱ユニット4Bのユニット空間U4A,U4B)が関連付けられる。セル空間C2にユニット空間U4が関連づけられた旨がメモリ54に記憶される。また,メモリ54にはセル空間C1およびセル空間C2のそれぞれについての寸法が格納される。
セル空間C2に組込まれた引出しユニット4のユニット空間(すなわち,引出し前板ユニット4Aのユニット空間U4Aおよび引出し内箱ユニット4Bのユニット空間U4B)は,それぞれ,ユニット空間テーブル(図27,図32)にしたがう位置と寸法とを持つ。たとえば引出し前板ユニット4Aのユニット空間U4Aの位置および寸法が決まることで,上述したように,パーツ空間テーブルT4(図24)にしたがって引出し前板21の位置および寸法が決まり,引出し前板21の位置および寸法が決まることで,素材空間テーブルT1,T2,T3(図18,図20,図22)にしたがって引出し前板21を構成する芯材,表面材等の素材の位置および寸法も決まる。
キャビネット・ユニット2によって規定される初期状態のスケルトン・セル空間Cは,上述したように,引出しユニット4が組み込まれることによって2つのセル空間C1,C2に分割され,スケルトン・セル空間C1,C2についてセル空間テーブルT10,T11(図34(A),(B))が作成される。
この時点で他方のスケルトン・セル空間C1にはユニット空間は組み込まれていない(メモリ54において,セル空間C1には未だユニット空間が関連づけられていない旨を表すデータを格納してもよい)。セル空間C1には他のパーツを組込むことができる。
セル空間C1の位置に扉ユニット3を組込む場合には,扉ユニット3を表す画像が選択される。セル空間C1の位置にその画像をドラッグアンドドロップすると,セル空間C1の位置に扉ユニット3の正面を概略的に表す画像が追加表示される(図65)。家具2の設計が完成する(図16(B))。
たとえば,扉ユニット3および引出しユニット4が組込まれたキャビネット・ユニット2の画像の右端をマウスを用いてクリックすることで選択し,クリックを保持したままマウスを右に移動させると,キャビネット・ユニット2,扉ユニット3および引出しユニット4のいずれについてもその幅が拡大されて表示される(図66)。これは,キャビネット・ユニット2のスケルトン・セル空間C1,C2に扉ユニット3のユニット空間U3および引出しユニット4(引出し前板ユニット4Aおよび引出し内箱ユニット4B)のユニット空間U4A,U4Bがそれぞれ関連づけられており,上述したように,ユニット空間U3,U4A,U4Bの位置および寸法が,セル空間C1,C2の位置および寸法に応じて相対的に決定されるからである。すなわち,セル空間C1およびセル空間C2の幅方向が拡大されると,セル空間C1の拡大に応じて,扉ユニット3についてのユニット空間テーブルにしたがって,扉ユニット3のユニット空間U3も幅方向に拡大する(面位置がセル空間C1に追従する)。ユニット空間U3の拡大に連動して,扉ユニット3を構成するパーツないし素材の素材空間も拡大する(面位置が追従する)。同様にして,セル空間C2の拡大に応じて,引出しユニット4を構成する引出し前板ユニット4Aおよび引出し内箱ユニット4Bについてのユニット空間テーブルにしたがって,引出しユニット4のユニット空間U4A,U4Bも幅方向に拡大する(面位置がセル空間C2に追従する)。ユニット空間U4A,U4Bの拡大に応じて引出し前板ユニット4Aおよび引出し内箱ユニット4Bを構成する複数のパーツのパーツ空間(面位置),パーツを構成する複数の素材の素材空間(面位置)も変動する。
キャビネット・ユニット2の寸法(高さ,幅および奥行き)が確定すると,上述したように,キャビネット・ユニット2を作製するための多数の素材の寸法が決定する。すなわち,家具設計装置33を用いて家具の設計を終えると,設計した家具を現実に作製するために必要となる素材ごとの寸法を,即座に素材メーカー(材料メーカー)に提供することができる。また,設計された家具に必要なパーツにおける加工情報(たとえば,上述した穴加工データ(図38,図39(A),(B)および図40参照)も素材加工メーカーに即座に提供することができる。設計した家具を現実に作製するために必要なデータ作成の時間の大幅な短縮が図られる。