JP2014073083A - 植物の再生方法及び植物の増殖方法 - Google Patents

植物の再生方法及び植物の増殖方法 Download PDF

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Abstract

【課題】カルスを安定的に植物に再生できる植物の再生方法、及び天候や季節等に影響されずに安定的に植物を増殖できる植物の増殖方法を提供する。
【解決手段】五炭糖を含むグリーン化培地中でカルスを培養することによりカルスをグリーン化するグリーン化工程と、グリーン化したカルスから不定胚を誘導する工程とを含む植物の再生方法、及び五炭糖を含むグリーン化培地中でカルスを培養することによりカルスをグリーン化するグリーン化工程と、グリーン化したカルスから不定胚を誘導する工程とを含む植物の増殖方法に関する。
【選択図】図1

Description

本発明は、植物の再生方法、及び植物の増殖方法に関する。
現在、工業用ゴム製品に用いられている天然ゴム(ポリイソプレノイドの1種)は、トウダイグサ科のパラゴムノキ(Hevea brasiliensis)や桑科植物のインドゴムノキ(Ficus elastica)などのゴム産生植物を栽培し、その植物体が有する乳管細胞で天然ゴムを生合成させ、該天然ゴムを植物から手作業により採取することにより得られる。
現状、工業用天然ゴムは、パラゴムノキをほぼ唯一の採取源としている。またゴム製品の主原料として、様々な用途において幅広くかつ大量に用いられている。しかしながら、パラゴムノキは東南アジアや南米などの限られた地域でのみ生育可能な植物である。更に、パラゴムノキは、植樹からゴムの採取が可能な成木になるまでに7年程度を要し、また、採取出来る季節が限られる場合もある。また、成木から天然ゴムを採取できる期間は20〜30年に限られる。
今後、開発途上国を中心に天然ゴムの需要の増大が見込まれており、上述の理由によりパラゴムノキによる天然ゴムの大幅な増産は困難である。そのため、天然ゴム資源の枯渇が懸念されており、パラゴムノキの成木以外の安定的な天然ゴムの供給源や、パラゴムノキでの収率の向上が望まれている。
このような状況下、パラゴムノキ以外の天然ゴムの供給源の探索が盛んに行われている。パラゴムノキ以外にもイソプレノイドを生産している植物が2000種以上存在することが知られており、特にグアユーレやロシアンタンポポなどが新たな天然ゴムの供給源として検討されている。また、キク科に属する植物のなかでもイソプレノイドを生産する植物が存在することが知られており、日本に広く自生するノゲシもその一つである。
新たな天然ゴムの供給源として、これらの植物を利用する場合、多量の天然ゴムを生産するためには、当該植物を大量に増殖させる必要が生じることが予想される。植物を大量に増殖させる方法としては、種子から植物を栽培する方法、挿し木により植物を増殖させる方法等が挙げられるが、これらの方法では、天候や季節等に影響されやすいため、安定的に植物を増殖できないおそれがある。
一方、植物におけるイソプレノイドの生産量を増大させるためには、例えば、耐ストレス性の向上や、植物中に蓄積されるイソプレノイド量の増大を目的として、植物を改良する方法が考えられる。植物の改良方法としては、人工交配や突然変異を利用する方法も考えられるが、所望する性質を効率的に付与することが難しく、その実現性は低いものと考えられる。そのため、植物の改良には、植物細胞に標的遺伝子を導入し、所望する性質を付与するという細胞工学的手法が利用されることになると考えられる。
細胞工学的手法を利用する場合、標的遺伝子を導入した植物細胞を植物体へ再分化させる必要がある。すなわち、植物細胞(例えば、カルス)から植物を再生する必要がある。しかしながら、従来から、植物において、種々の組織培養の検討が行われているものの、カルスから植物を再生する方法を検討した例はほとんどなく、カルスを安定的に植物に再生することは困難であった。
本発明は、前記課題を解決し、カルスを安定的に植物に再生できる植物の再生方法、及び天候や季節等に影響されずに安定的に植物を増殖できる植物の増殖方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討した結果、カルスから不定胚を誘導することにより、その後、安定的にシュートが形成され、形成されたシュートが伸長し、発根させることができることを見出した。すなわち、カルスから不定胚を誘導することにより、カルスを安定的に植物に再生できること、更には、安定的に植物の増殖が可能であることを見出した。更に、本発明者らは、鋭意検討した結果、五炭糖を含む培地中でカルスを培養することによりカルスをグリーン化できること、グリーン化したカルスは、通常のカルス(グリーン化していないカルス)に比べて、不定胚の形成率が高いこと、すなわちグリーン化したカルスから不定胚を高効率で誘導できることを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明は、五炭糖を含むグリーン化培地中でカルスを培養することによりカルスをグリーン化するグリーン化工程と、グリーン化したカルスから不定胚を誘導する工程とを含む植物の再生方法に関する。
上記再生方法においては、五炭糖を含むグリーン化培地中でカルスを培養することによりカルスをグリーン化するグリーン化工程と、植物生長ホルモン及び炭素源を含む再生誘導培地中で、グリーン化したカルスを培養することにより不定胚及びシュートを形成させる再生誘導工程と、形成されたシュートを伸長培地で培養することにより伸長させる伸長工程と、伸長させたシュートを発根培地で培養することにより発根させる発根工程とを含むことが好ましい。
上記グリーン化培地中の五炭糖の濃度が1〜10質量%であることが好ましい。
上記伸長培地及び上記発根培地が、植物生長ホルモンを含まない培地であることが好ましい。
上記植物がイソプレノイド産生植物であることが好ましく、キク科に属する植物であることがより好ましく、Sonchus属に属する植物であることが更に好ましく、ノゲシであることが特に好ましい。
本発明は、五炭糖を含むグリーン化培地中でカルスを培養することによりカルスをグリーン化するグリーン化工程と、グリーン化したカルスから不定胚を誘導する工程とを含む植物の増殖方法に関する。
上記増殖方法が、植物の組織片からカルスを誘導する工程を含むことが好ましい。
上記増殖方法が、植物の組織片を植物生長ホルモン及び炭素源を含む誘導培地中で培養することによりカルスを誘導する誘導工程と、五炭糖を含むグリーン化培地中でカルスを培養することによりカルスをグリーン化するグリーン化工程と、植物生長ホルモン及び炭素源を含む再生誘導培地中で、グリーン化したカルスを培養することにより不定胚及びシュートを形成させる再生誘導工程と、形成されたシュートを伸長培地で培養することにより伸長させる伸長工程と、伸長させたシュートを発根培地で培養することにより発根させる発根工程とを含むことが好ましい。
上記グリーン化培地中の五炭糖の濃度が1〜10質量%であることが好ましい。
上記伸長培地及び上記発根培地が、植物生長ホルモンを含まない培地であることが好ましい。
上記植物がイソプレノイド産生植物であることが好ましく、キク科に属する植物であることがより好ましく、Sonchus属に属する植物であることが更に好ましく、ノゲシであることが特に好ましい。
本発明の植物の再生方法は、五炭糖を含むグリーン化培地中でカルスを培養することによりカルスをグリーン化するグリーン化工程と、グリーン化したカルスから不定胚を誘導する工程とを含む植物の再生方法であるので、カルスを安定的に植物に再生できる。また、本発明の植物の増殖方法は、五炭糖を含むグリーン化培地中でカルスを培養することによりカルスをグリーン化するグリーン化工程と、グリーン化したカルスから不定胚を誘導する工程とを含む植物の増殖方法であるので、制御された環境下で組織培養を行うことにより、天候や季節等に影響されずに安定的に植物を増殖できる。
不定胚の形成、シュートの形成、シュートの伸長、発根、グリーン化したカルス及びグリーン化していないカルスの様子を示す写真である。
本発明の植物の再生方法は、五炭糖を含むグリーン化培地中でカルスを培養することによりカルスをグリーン化するグリーン化工程と、グリーン化したカルスから不定胚を誘導する工程とを含む植物の再生方法である。上述のように、カルスから不定胚を誘導し(図1(a)参照)、不定胚を培養することにより、安定的にシュートが形成され(図1(b)参照)、形成されたシュートが伸長し(図1(c)参照)、発根させる(図1(d)参照)ことができ、カルスを安定的に植物に再生できる。また、上述のように、五炭糖を含む培地中でカルスを培養することによりカルスをグリーン化でき、グリーン化したカルス(図1(e)参照)は、通常のカルス(グリーン化していないカルス(図1(f)参照))に比べて、不定胚の形成率が高く、高効率で不定胚を誘導できる。
以上のように、本発明の植物の再生方法は、カルスをグリーン化し、グリーン化したカルスから不定胚を誘導するため、高効率で不定胚を誘導でき、カルスを高効率で安定的に植物に再生できる。従って、植物の再生に必要なカルス量を低減でき、より安価に植物の再生を行うことができるだけではなく、少量のカルスから植物の再生を行うことが可能となり、植物分野の研究開発の促進にも寄与でき、植物の大量培養、分子育種にも貢献できる。
また、本発明の植物の増殖方法は、五炭糖を含むグリーン化培地中でカルスを培養することによりカルスをグリーン化するグリーン化工程と、グリーン化したカルスから不定胚を誘導する工程とを含む植物の増殖方法である。本発明の植物の増殖方法は、上述の本発明の植物の再生方法を利用した植物の増殖方法であるので、高効率で安定的に植物の増殖が可能であり、制御された環境下で組織培養を行うことにより、天候や季節等に影響されずに高効率で安定的に植物を増殖できる。具体的には、植物の葉や茎など大量に入手可能な植物の組織片からカルスを誘導し、本発明の植物の再生方法を利用してカルスを植物に再生することにより、高効率で安定的かつ大量に植物を増殖させることが可能である。
また、再生された植物は、カルスの状態で維持(継代培養)する場合よりも変異が起こりにくく、安定的に植物を供給することができる。また、再生された植物は、土壌中で生育させることができるため、カルス等の植物細胞と異なり、細胞を維持するために高価な植物成長調整物質を必要としないため、コストを抑制できる。
本発明において、カルスとは、分化していない状態の植物細胞又は分化していない状態の植物細胞塊を意味する。また、本発明において、カルスをグリーン化するとは、カルスをグリーン化させてグリーン化したカルスを調製することを意味し、グリーン化したカルスとは、再生しやすい状態になったカルスを意味する。また、本発明において、不定胚とは、カルスから誘導された胚様の組織を意味する。また、本発明において、シュートとは、葉や幼植物を意味する。
本発明の方法(植物の再生方法、植物の増殖方法)が適用できる植物は、特に限定されないが、天然ゴムの供給源となり得るという理由から、イソプレノイド産生植物が好ましい。
イソプレノイド産生植物としては、イソプレノイドを産生可能な植物であれば特に限定されず、例えば、パラゴムノキ(Hevea brasiliensis)等のHevea属;ノゲシ(Sonchus oleraceus)、オニノゲシ(Sonchus asper)、ハチジョウナ(Sonchus brachyotus)、タイワンハチジョウナ(Sonchus arvensis)等のSonchus属;セイタカアワダチソウ(Solidago altissima)、アキノキリンソウ(Solidago virgaurea subsp. asiatica)、ミヤマアキノキリンソウ(Solidago virgaurea subsp. leipcarpa)、キリガミネアキノキリンソウ(Solidago virgaurea subsp. leipcarpa f. paludosa)、オオアキノキリンソウ(Solidago virgaurea subsp. gigantea)、オオアワダチソウ(Solidago gigantea Ait. var. leiophylla Fernald)等のSolidago属;ヒマワリ(Helianthus annuus)、シロタエヒマワリ(Helianthus argophyllus)、ヘリアンサス・アトロルベンス(Helianthus atrorubens)、ヒメヒマワリ(Helianthus debilis)、コヒマワリ(Helianthus decapetalus)、ジャイアントサンフラワー(Helianthus giganteus)等のHelianthus属;タンポポ(Taraxacum)、エゾタンポポ(Taraxacum venustum H.Koidz)、シナノタンポポ(Taraxacum hondoense Nakai)、カントウタンポポ(Taraxacum platycarpum Dahlst)、カンサイタンポポ(Taraxacum japonicum)、セイヨウタンポポ(Taraxacum officinale Weber)、ロシアンタンポポ(Taraxacum koksaghyz)等のTaraxacum属;イチジク(Ficus carica)、インドゴムノキ(Ficus elastica)、オオイタビ(Ficus pumila L.)、イヌビワ(Ficus erecta Thumb.)、ホソバムクイヌビワ(Ficus ampelas Burm.f.)、コウトウイヌビワ(Ficus benguetensis Merr.)、ムクイヌビワ(Ficus irisana Elm.)、ガジュマル(Ficus microcarpa L.f.)、オオバイヌビワ(Ficus septica Burm.f.)、ベンガルボダイジュ(Ficus benghalensis)等のFicus属;グアユール(Parhenium argentatum)、レタス(Lactuca serriola)等が挙げられる。なかでも、Sonchus属、Solidago属、Helianthus属、Taraxacum属に属する植物等のキク科(Asteraceae)に属する植物であることが好ましく、Sonchus属に属する植物であることがより好ましく、ノゲシ(Sonchus oleraceus)であることが更に好ましい。
パラゴムノキはその生育可能な地域が東南アジアや南米に限定されるが、ノゲシはヨーロッパ諸国や日本などのアジアなど、世界各地で自生しており、生産地域を限定することなく、広範囲での栽培が可能である。さらに、パラゴムノキは植樹からゴムの採取まで約7年を要するが、ノゲシは一年草であることから、生育もより早い点で有利である。
以下において、本発明の植物の増殖方法について具体的に説明する。なお、本発明の植物の増殖方法は、本発明の植物の再生方法を利用した植物の増殖方法であるので、本発明の植物の増殖方法を説明することにより、本発明の植物の再生方法についても説明したこととなる。
本発明の植物の増殖方法は、五炭糖を含むグリーン化培地中でカルスを培養することによりカルスをグリーン化するグリーン化工程と、グリーン化したカルスから不定胚を誘導する工程とを含む植物の増殖方法である。具体的には、カルスをグリーン化し、グリーン化したカルスから不定胚を誘導し、該不定胚を培養することにより、カルスを植物に再生し、植物の増殖を行えばよい。
カルスとしては、流通しているものを使用してもよく、植物の組織片からカルスを誘導して使用してもよい。なかでも、安定的にカルスを得ることができるという理由から、植物の組織片からカルスを誘導し、誘導したカルスを使用することが好ましい。すなわち、本発明の植物の増殖方法は、植物の組織片からカルスを誘導する工程と、五炭糖を含むグリーン化培地中でカルスを培養することによりカルスをグリーン化するグリーン化工程と、グリーン化したカルスから不定胚を誘導する工程とを含むことが好ましい。
具体的には、本発明の植物の増殖方法は、植物の組織片を植物生長ホルモン及び炭素源を含む誘導培地中で培養することによりカルスを誘導する誘導工程と、五炭糖を含むグリーン化培地中でカルスを培養することによりカルスをグリーン化するグリーン化工程と、植物生長ホルモン及び炭素源を含む再生誘導培地中で、グリーン化したカルスを培養することにより不定胚及びシュートを形成させる再生誘導工程と、形成されたシュートを伸長培地で培養することにより伸長させる伸長工程と、伸長させたシュートを発根培地で培養することにより発根させる発根工程とを含むことが好ましい。すなわち、本発明の植物の再生方法としては、上記グリーン化工程と、上記再生誘導工程と、上記伸長工程と、上記発根工程とを含むことが好ましい。
以下において、上記各工程について説明する。
(誘導工程)
誘導工程では、例えば、植物の組織片を植物生長ホルモン及び炭素源を含む誘導培地中で培養することによりカルスを誘導する。
組織片としては、特に限定されないが、葉、茎、根、芽、花弁、子葉、胚軸、葯、及び種子からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。なかでも、葉、茎がより好ましい。
誘導工程では、まず、植物の組織片の表面を洗浄する。組織片として植物の内部にある組織を利用する場合は、例えば、磨き粉で洗浄しても良いが、界面活性剤を約0.1%含む水で洗浄してもよい。葉などを利用する場合は、軟らかいスポンジで表面を洗浄することが好ましい。
次に、組織片を殺菌又は滅菌する。殺菌又は滅菌は、周知の殺菌剤、滅菌剤を用いて行うことができるが、エタノール、塩化ベンザルコニウム、次亜塩素酸ナトリウム水溶液が好ましい。
次に、殺菌又は滅菌した組織片を植物生長ホルモン及び炭素源を含む誘導培地中で培養することにより、カルスの誘導を行う。なお、誘導培地は、液体であっても固体であってもよいが、培地上に置床して培養することで、カルス化しやすいため、固体培養が好ましい。また、誘導培地が液体培地である場合には、静置培養を行ってもよく、振とう培養を行ってもよい。
植物生長ホルモンとしては、例えば、オーキシン系植物ホルモン及び/又はサイトカイニン系植物ホルモンが挙げられる。
オーキシン系植物ホルモンとしては、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸、ナフタレン酢酸、インドール酪酸、インドール酢酸、インドールプロピオン酸、クロロフェノキシ酢酸、ナフトキシ酢酸、フェニル酢酸、2,4,5−トリクロロフェノキシ酢酸、パラクロロフェノキシ酢酸、2−メチル−4−クロロフェノキシ酢酸、4−フルオロフェノキシ酢酸、2−メトキシ−3,6−ジクロロ安息香酸、2−フェニル酸、ピクロラム、ピコリン酸等が挙げられる。なかでも、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸、ナフタレン酢酸、インドール酪酸が好ましく、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸、ナフタレン酢酸がより好ましく、ナフタレン酢酸が更に好ましい。
サイトカイニン系植物ホルモンとしては、ベンジルアデニン、カイネチン、ゼアチン、ベンジルアミノプリン、イソペンチニルアミノプリン、チジアズロン、イソペンテニルアデニン、ゼアチンリポシド、ジヒドロゼアチン等が挙げられる。なかでも、ベンジルアデニン、カイネチン、ゼアチンが好ましく、ベンジルアデニン、カイネチンがより好ましく、ベンジルアデニンが更に好ましい。
炭素源としては、特に限定されず、スクロース、グルコース、トレハロース、フルクトース、ラクトース、ガラクトース、キシロース、アロース、タロース、グロース、アルトロース、マンノース、イドース、アラビノース、アピオース、マルトース等の糖類が挙げられる。また、エリスリトール、キシリトール、マンニトール、ソルビトール、ラクチトール等の糖アルコールであってもよい。なかでも、スクロース、グルコースが好ましく、スクロースがより好ましい。
誘導培地としては、Whiteの培地(「植物細胞工学入門」(学会出版センター)p20〜p36に記載)、Hellerの培地(Heller R, Bot.Biol.Veg.Paris 14 1−223(1953))、SH培地(SchenkとHildebrandtの培地)、MS培地(MurashigeとSkoogの培地)(「植物細胞工学入門」(学会出版センター)p20〜p36に記載)、LS培地(LinsmaierとSkoogの培地)(「植物細胞工学入門」(学会出版センター)p20〜p36に記載)、Gamborg培地、B5培地(「植物細胞工学入門」(学会出版センター)p20〜p36に記載)、MB培地、WP培地(Woody Plant:木本類用)等の基本培地や、該基本培地の組成に変更を加えた改変基本培地等のベースとなる培地に植物生長ホルモンを加えたものを使用すればよい。なかでも、MS培地、B5培地、WP培地に植物生長ホルモンを加えたものが好ましい。また、カルスの維持および細胞分裂の促進に適しているという理由から、オーキシン系植物ホルモン及びサイトカイニン系植物ホルモンを含むことが好ましい。
誘導培地を固体培地とする場合、固形化剤を使用して培地を固体にすればよい。固形化剤としては、特に限定されず、寒天、ゲランガム、アガロース、ゲルライト、ゼラチン、シリカゲル等が挙げられる。
好適な誘導培地の組成及び培養条件は、植物種により異なり、また培地が液体培地であるか固体培地であるかによっても異なるが、通常は(特に、ノゲシの場合は)以下の組成である。
誘導培地中の炭素源の濃度は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上である。該炭素源の濃度は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは6質量%以下、更に好ましくは3質量%以下である。なお、本明細書において、炭素源の濃度とは、糖類の濃度を意味する。
誘導培地中のオーキシン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは0mg/l以上、より好ましくは1×10−3mg/l以上、更に好ましくは0.05mg/l以上、特に好ましくは0.5mg/l以上である。該オーキシン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは20mg/l以下、より好ましくは10mg/l以下、更に好ましくは2.5mg/l以下である。
誘導培地中のサイトカイニン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは0mg/l以上、より好ましくは1×10−3mg/l以上、更に好ましくは0.5mg/l以上、特に好ましくは0.8mg/l以上である。該サイトカイニン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは15mg/l以下、より好ましくは10mg/l以下、更に好ましくは3mg/l以下、特に好ましくは1.5mg/l以下である。
誘導培地のpHは、4.0〜10.0が好ましく、5.6〜6.5がより好ましく、5.7〜5.8が更に好ましい。培養温度は、0〜40℃が好ましく、20〜26℃がより好ましい。培養は、暗所で行っても明所で行ってもよいが、照度は、0〜100000lxが好ましく、2000〜25000lxがより好ましい。培養時間は、特に限定されないが、1〜10週間培養することが好ましい。
なお、本明細書において、固体培地のpHは、固形化剤を除く全成分を添加した培地のpHを意味する。また、本明細書において、暗所とは、照度が0〜0.1lxであることを意味し、明所とは、照度が0.1lxを超えていることを意味する。
固体培地の場合、誘導培地中の固形化剤の濃度は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上である。該固形化剤の濃度は、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1.1質量%以下、更に好ましくは0.6質量%以下である。
上述の条件のなかでも、特に、植物が、ノゲシの場合、オーキシン系植物ホルモンがナフタレン酢酸で、その濃度が0.5〜2.5mg/lで、サイトカイニン系植物ホルモンがベンジルアデニンで、培養温度が20〜26℃であることが特に好ましい。
以上のように、殺菌又は滅菌した組織片を上記誘導培地中で培養することにより、カルスの誘導を行うことが可能である。
本発明では、誘導されたカルスの遺伝子を組み換えてもよい。組み換え遺伝子の導入方法は一般的に用いられているものを、通常知られた条件で使用すればよく、例えば、プロトプラスト法、パーティクルガン法、アグロバクテリウム法(以上「生物化学実験法41植物細胞工学入門」1998年9月1日、学会出版センター、第255頁〜326頁,「植物バイオテクノロジー」2009年5月25日、幸書房、第130頁〜136頁)などがあるが、これらに限らない。
誘導したカルスをそのままグリーン化工程に用いてもよいが、より多量の植物を増殖できるという理由から、誘導したカルスをまず増殖させ、増殖させたカルスをグリーン化工程に用いることが好ましい。カルスの増殖は、カルスが増殖可能な条件でカルスを培養すればよく、例えば、誘導工程と同様の培地組成、培養条件でカルスの培養を行うことにより、カルスの増殖が可能である。
(グリーン化工程)
グリーン化工程では、五炭糖を含むグリーン化培地中でカルスを培養することによりカルスをグリーン化する。五炭糖を含む培地中でカルスを培養することにより、カルスをグリーン化できる。
グリーン化工程では、例えば、誘導工程により誘導されたカルス(上述の方法等により遺伝子が組み換えられていてもよく、また、誘導工程により誘導されたカルスを増殖させたものであってもよい)を、五炭糖を含むグリーン化培地中で培養してカルスをグリーン化する。なお、グリーン化培地は、液体であっても固体であってもよいが、培地上に置床して培養することで、カルスをグリーン化しやすいため、固体培養が好ましい。また、グリーン化培地が液体培地である場合には、静置培養を行ってもよく、振とう培養を行ってもよい。
グリーン化培地としては、上述の基本培地や、該基本培地の組成に変更を加えた改変基本培地等のベースとなる培地に五炭糖を加えたものを使用すればよい。なかでも、MS培地、LS培地、B5培地、WP培地に五炭糖(好ましくは植物生長ホルモンも)を加えたものが好ましく、MS培地に五炭糖(好ましくは植物生長ホルモンも)を加えたものがより好ましい。植物生長ホルモンとしては、上記誘導培地と同様のものが好適に使用できる。また、カルスのグリーン化に適しているという理由から、オーキシン系植物ホルモン及びサイトカイニン系植物ホルモンを含むことが好ましい。
五炭糖(ペントース)としては、例えば、キシロース、リボース、アラビノース、リキソース等のアルドペントース;リブロース、キシルロース等のケトペントースが挙げられる。なかでも、アルドペントースが好ましく、キシロース、アラビノースがより好ましく、キシロースが更に好ましい。
グリーン化培地が固体培地の場合、上記誘導培地の場合と同様に、固形化剤を使用して培地を固体にすればよい。
好適なグリーン化培地の組成及び培養条件は、植物種により異なり、また培地が液体培地であるか固体培地であるかによっても異なるが、通常は(特に、ノゲシの場合は)以下の組成である。
グリーン化培地中の五炭糖の濃度は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは1.5質量%以上、更に好ましくは2質量%以上である。該五炭糖の濃度は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは6質量%以下、更に好ましくは4質量%以下である。
グリーン化培地中のオーキシン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは0mg/l以上、より好ましくは1×10−3mg/l以上、更に好ましくは0.05mg/l以上、特に好ましくは0.5mg/l以上である。該オーキシン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは20mg/l以下、より好ましくは10mg/l以下、更に好ましくは2.5mg/l以下である。
グリーン化培地中のサイトカイニン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは0mg/l以上、より好ましくは1×10−3mg/l以上、更に好ましくは1×10−2mg/l以上、特に好ましくは5×10−2mg/l以上である。該サイトカイニン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは15mg/l以下、より好ましくは5mg/l以下、更に好ましくは1mg/l以下、特に好ましくは0.5mg/l以下である。
グリーン化培地のpHは、特に限定されないが、4.0〜10.0が好ましく、5.6〜6.5がより好ましい。培養温度は、0〜40℃が好ましく、20〜36℃がより好ましい。培養は、暗所で行っても明所で行ってもよいが、24時間中10〜16時間明所で培養を行うことが好ましく、明所の照度は、2000〜25000lxが好ましい。培養時間は、特に限定されないが、2〜10週間培養することが好ましい。
固体培地の場合、グリーン化培地中の固形化剤の濃度は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.15質量%以上である。該固形化剤の濃度は、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1.1質量%以下、更に好ましくは0.6質量%以下、特に好ましくは0.3質量%以下である。
以上のように、グリーン化工程では、カルスを上記グリーン化培地中で培養することにより、カルスをグリーン化することが可能である。このグリーン化工程により得られたグリーン化したカルスは、次の再生誘導工程に使用される。次の再生誘導工程に移るタイミングとしては、カルスがグリーン化した部位が増殖していることが確認できた後が好ましい。
(再生誘導工程)
再生誘導工程では、植物生長ホルモン及び炭素源を含む再生誘導培地中で、グリーン化したカルスを培養することにより不定胚及びシュートを形成させる。カルスから不定胚を誘導(形成)し、不定胚を培養することにより、安定的にシュートの形成を行うことができるため、再生誘導工程の培養条件は、カルスから不定胚を誘導できる条件であれば、特に限定されない。また、グリーン化したカルスは、通常のカルス(グリーン化していないカルス)に比べて、不定胚の形成率が高く、高効率で不定胚を誘導できる。そのため、本発明では、グリーン化したカルスから不定胚を誘導するため、高効率で不定胚を誘導でき、その結果、カルスを高効率で安定的に植物に再生できる。
再生誘導工程では、例えば、グリーン化工程によりグリーン化したカルスを再生誘導培地中で培養して不定胚を誘導する。なお、再生誘導培地は、液体であっても固体であってもよいが、培地上に置床して培養することで、不定胚を誘導しやすいため、固体培養が好ましい。また、再生誘導培地が液体培地である場合には、静置培養を行ってもよく、振とう培養を行ってもよい。
再生誘導培地としては、上述の基本培地や、該基本培地の組成に変更を加えた改変基本培地等のベースとなる培地に植物生長ホルモンを加えたものを使用すればよい。なかでも、MS培地、LS培地、B5培地、WP培地に植物生長ホルモンを加えたものが好ましく、MS培地に植物生長ホルモンを加えたものがより好ましい。植物生長ホルモン、炭素源としては、上記誘導培地と同様のものが好適に使用できる。また、不定胚の誘導に適しているという理由から、オーキシン系植物ホルモン及びサイトカイニン系植物ホルモンを含むことが好ましい。
再生誘導培地が固体培地の場合、上記誘導培地の場合と同様に、固形化剤を使用して培地を固体にすればよい。
好適な再生誘導培地の組成及び培養条件は、植物種により異なり、また培地が液体培地であるか固体培地であるかによっても異なるが、通常は(特に、ノゲシの場合は)以下の組成である。
再生誘導培地中の炭素源の濃度は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは2質量%以上である。該炭素源の濃度は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは6質量%以下、更に好ましくは4質量%以下である。
再生誘導培地中のオーキシン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは0mg/l以上、より好ましくは1×10−3mg/l以上、更に好ましくは5×10−3mg/l以上である。該オーキシン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは5mg/l以下、より好ましくは1mg/l以下、更に好ましくは0.5mg/l以下、特に好ましくは0.1mg/l以下、最も好ましくは0.03mg/l以下である。
再生誘導培地中のサイトカイニン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは0mg/l以上、より好ましくは1×10−3mg/l以上、更に好ましくは0.01mg/l以上、特に好ましくは0.5mg/l以上、最も好ましくは0.8mg/l以上である。該サイトカイニン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは10mg/l以下、より好ましくは5mg/l以下、更に好ましくは2mg/l以下、特に好ましくは1.5mg/l以下、最も好ましくは1.2mg/l以下である。サイトカイニン系植物ホルモンの濃度が上記範囲内の場合に、特に、不定胚を好適に誘導でき、好適にシュートを形成できる。
再生誘導培地のpHは、特に限定されないが、4.0〜10.0が好ましく、5.6〜6.5がより好ましい。培養温度は、0〜40℃が好ましく、20〜36℃がより好ましい。培養は、暗所で行っても明所で行ってもよいが、24時間中10〜16時間明所で培養を行うことが好ましく、明所の照度は、2000〜25000lxが好ましい。培養時間は、特に限定されないが、5〜10週間培養することが好ましい。
固体培地の場合、再生誘導培地中の固形化剤の濃度は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.15質量%以上である。該固形化剤の濃度は、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1.1質量%以下、更に好ましくは0.6質量%以下、特に好ましくは0.3質量%以下である。
ノゲシの場合、再生誘導培地は、ベースとなる培地としてMS培地を使用し、再生誘導培地中のスクロースの濃度が2〜4質量%、ナフタレン酢酸の濃度が1×10−3〜0.1mg/l、ベンジルアデニンの濃度が0.8〜1.2mg/l、固形化剤(ゲランガム)の濃度が0.1〜0.3質量%であることが好ましい。
以上のように、再生誘導工程では、グリーン化したカルスを上記再生誘導培地中で培養することにより、不定胚及びシュートを形成させることが可能である。この再生誘導工程により形成されたシュートは、次の伸長工程に使用される。次の伸長工程に移るタイミングとしては、シュートが視認され、その後安定して成長していることが確認できた後が好ましい。
(伸長工程)
伸長工程では、形成されたシュートを伸長培地で培養することによりシュートを伸長させる。
伸長工程では、例えば、再生誘導工程により形成されたシュートを伸長培地中で培養してシュートを伸長させる。なお、伸長培地は、液体であっても固体であってもよいが、培地上に置床して培養することで、シュートを伸長させやすいため、固体培養が好ましい。また、伸長培地が液体培地である場合には、静置培養を行ってもよく、振とう培養を行ってもよい。
伸長培地としては、上述の基本培地や、該基本培地の組成に変更を加えた改変基本培地等を使用すればよいが、シュートを好適に伸長できるという理由から、伸長培地が、植物生長ホルモンを含まない培地であることが好ましく、植物生長ホルモンを含まないMS培地であることがより好ましい。なお、炭素源としては、上記誘導培地と同様のものが好適に使用できる。
伸長培地が固体培地の場合、上記誘導培地の場合と同様に、固形化剤を使用して培地を固体にすればよい。
伸長工程における好適な培養条件は、植物種により異なり、また培地が液体培地であるか固体培地であるかによっても異なるが、通常は(特に、ノゲシの場合は)以下の条件である。
伸長培地のpHは、特に限定されないが、4.0〜10.0が好ましく、5.6〜6.5がより好ましい。培養温度は、0〜40℃が好ましく、20〜36℃がより好ましい。培養は、暗所で行っても明所で行ってもよいが、24時間中10〜16時間明所で培養を行うことが好ましく、明所の照度は、2000〜25000lxが好ましい。培養時間は、特に限定されないが、5〜10週間培養することが好ましい。
固体培地の場合、伸長培地中の固形化剤の濃度は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上である。該固形化剤の濃度は、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1.1質量%以下、更に好ましくは0.6質量%以下である。
以上のように、伸長工程では、形成されたシュートを上記伸長培地中で培養することにより、シュートを伸長させることが可能である。また、この伸長工程では、シュートが伸長するだけではなく、新たなシュートも形成される。この伸長工程により伸長させたシュートは、次の発根工程に使用される。次の発根工程に移るタイミングとしては、シュートが2〜3cm程度の大きさに伸長した後が好ましい。
(発根工程)
発根工程では、伸長させたシュートを発根培地で培養することにより発根させる。
発根工程では、例えば、伸長工程により伸長させたシュートを発根培地中で培養して発根させる。なお、発根培地は、液体であっても固体であってもよいが、培地上に置床して培養することで、発根させやすいため、固体培養が好ましい。また、発根培地が液体培地である場合には、静置培養を行ってもよく、振とう培養を行ってもよい。
発根培地としては、上述の基本培地や、該基本培地の組成に変更を加えた改変基本培地等を使用すればよいが、好適に発根できるという理由から、発根培地が、植物生長ホルモンを含まない培地であることが好ましく、植物生長ホルモンを含まないB5培地がより好ましい。なお、炭素源としては、上記誘導培地と同様のものが好適に使用できる。なお、伸長培地と発根培地の組成が同一であってもよい。また、伸長工程において既に発根している場合には、この発根工程を省略してもよい。
発根培地は、ジャスモン酸、及びモノテルペン化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含んでもよい。モノテルペン化合物を含む場合、D−リモネン、α−ピネンが好ましい。
発根培地が固体培地の場合、上記誘導培地の場合と同様に、固形化剤を使用して培地を固体にすればよい。
発根工程における好適な培養条件は、植物種により異なり、また培地が液体培地であるか固体培地であるかによっても異なるが、通常は(特に、ノゲシの場合は)以下の条件である。
発根培地のpHは、特に限定されないが、4.0〜10.0が好ましく、5.6〜6.5がより好ましい。培養温度は、0〜40℃が好ましく、10〜36℃がより好ましく、20〜25℃が更に好ましい。培養は、暗所で行っても明所で行ってもよいが、24時間中10〜16時間明所で培養を行うことが好ましく、明所の照度は、2000〜25000lxが好ましい。培養時間は、特に限定されないが、4〜10週間培養することが好ましい。
固体培地の場合、発根培地中の固形化剤の濃度は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上である。該固形化剤の濃度は、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1.1質量%以下、更に好ましくは0.6質量%以下である。
以上のように、発根工程では、伸長したシュートを上記発根培地中で培養することにより、発根させることが可能であり、発根させたシュート(幼植物)が得られる。この幼植物は、直接土壌に移植してもよいが、バーキュライト等の人工土壌に移して馴化してから土壌に移植することが好ましい。
以上の説明の通り、本発明では、カルスをグリーン化し、グリーン化したカルスから不定胚を高効率で誘導し、不定胚を培養することにより、安定的にシュートを形成させ、形成させたシュートを伸長させ、発根させることができ、カルスを高効率で安定的に植物に再生できる。また、制御された環境下で組織培養を行うことにより、天候や季節等に影響されずに高効率で安定的に植物を増殖できる。
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
以下、実施例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
NAA:ナフタレン酢酸
BA:ベンジルアデニン
ノゲシ:神戸市灘区で自生しているノゲシの種子から、無菌的に発芽させた植物体を使用した
(カルスの誘導(誘導工程))
ノゲシから葉及び茎を採取した。次に、採取した葉及び茎の表面を流水で洗浄し、さらに70%エタノールで洗浄した後、約5〜10%に希釈した次亜塩素酸ナトリウム溶液で滅菌し、再度流水で洗浄した。
次に、滅菌した葉及び茎の組織を誘導培地(固体培地)に差込み、培養を行った(誘導工程)。誘導培地は、MS培地(「植物細胞工学入門」(学会出版センター)p20〜p36に記載)に、ナフタレン酢酸(NAA)、ベンジルアデニン(BA)、スクロースをそれぞれ1.0mg/L、0.1mg/L、3質量%となるように添加し、培地のpHを5.7〜5.8に調整した後、ゲランガムを0.2質量%となるように添加し、オートクレーブ(121℃、20分)で滅菌し、クリーンベンチ内で冷却することにより調製した。
ノゲシの組織片を誘導培地(固体培地)に差込み、培養温度23℃、明所(10000lx)で4週間培養し、ノゲシの組織片からカルス(未分化細胞)を誘導した。
(カルスのグリーン化のための培地検討(グリーン化工程))
次に、誘導されたカルスを用いて、カルスをグリーン化するための培地(グリーン化培地)条件の検討を基本培地であるMS培地を用いて行った。具体的には、MS培地に、オーキシン系植物ホルモンであるNAA、サイトカイニン系植物ホルモンであるBAを添加し、更に、五炭糖であるキシロースを種々の濃度となるように添加した培地を用いて検討を行った(表1参照)。なお、比較例1では、スクロース濃度を3質量%とした。また、pHは、5.7〜5.8に調整した。なお、固形化剤であるゲランガムは0.2質量%となるように培地に添加した。そして、調製した各固体培地(滅菌済み)を用いて、誘導工程により誘導されたカルスを培養温度23℃、24時間中12時間の照明下(10000lx)で4週間培養した。4週間培養した後の成長率、4週間培養した後のグリーン化率を表1に示す。
なお、成長率は、4週間培養した後のカルスの総質量を、再生誘導培地に移植したカルスの総質量で割ることにより算出した。また、グリーン化率は、4週間培養した後、グリーン化したカルスの個数を、再生誘導培地に移植したカルスの個数で割ることにより算出した。
表1の結果より、五炭糖であるキシロースを含む培地中でカルスを培養することにより、カルスをグリーン化できることが分かった。
(不定胚及びシュート形成(再生誘導工程))
次に、実施例2により得られたカルス(グリーン化したカルス)若しくは誘導工程により誘導されたカルス(グリーン化していないカルス)を、カルスから不定胚及びシュートを形成させるために、MS培地に、オーキシン系植物ホルモンであるNAA、サイトカイニン系植物ホルモンであるBA、糖類であるスクロースを種々の濃度となるように添加した培地に移植した。該培地のpHは、5.7〜5.8に調整した。なお、固形化剤であるゲランガムは0.2質量%となるように培地に添加した。そして、調製した各固体培地(滅菌済み)を用いて、実施例2により得られたカルス(グリーン化したカルス)若しくは誘導工程により誘導されたカルス(グリーン化していないカルス)を、培養温度23℃、24時間中12時間の照明下(10000lx)で8週間培養した。8週間培養した後の不定胚の形成率を表2に示す。不定胚が形成された培地では、不定胚の形成後にシュートの形成も観察された。一方、不定胚が形成されなかった培地では、シュートも形成されなかった。このことから、カルスから不定胚を誘導することにより、安定的にシュートが形成されることが分かった。
なお、不定胚の形成率は、不定胚を形成したカルスの個数を、再生誘導培地に移植したカルスの個数で割ることにより算出した。
表2の結果より、グリーン化したカルス(図1(e)参照)は、通常のカルス(グリーン化していないカルス(図1(f)参照))に比べて、不定胚の形成率が高く、高効率で不定胚を誘導できることが分かった。そして、不定胚が形成された培地では、不定胚の形成後にシュートの形成も観察された。
(シュート伸長(伸長工程))
次に、シュート伸長のために、形成されたシュート(実施例4、5、比較例2、3により得られたシュート)を、植物生長ホルモンを含まないMS培地に移植した。該培地のpHは、5.7に調整した。0.4%のゲランガムを含む固体培地(滅菌済み)を用い、培養温度23℃、24時間中12時間の照明下(10000lx)で8週間培養した。植物生長ホルモンを含まない培地で培養することにより、良好にシュート伸長が観察された。また、不定胚の形成率が高かったものほど、より良好にシュート伸長が観察された。
(発根(発根工程))
次に、発根のために、3cm程度に成長したシュートを、植物成長ホルモンを含まないB5培地に移植した。該培地のpHは、5.8に調整した。0.4%のゲランガムを含む固体培地(滅菌済み)を用い、培養温度23℃、24時間中12時間の照明下(10000lx)で8週間培養した。植物生長ホルモンを含まない培地で培養することにより、良好に発根が観察された。また、不定胚の形成率が高かったものほど、より良好に発根が観察された。
再生誘導工程において、不定胚の形成率が高い場合に、その後のシュート形成、伸長、発根が安定的に進行することが分かった。このことから、カルスから不定胚を誘導することにより、その後、安定的にシュートが形成され、形成されたシュートが伸長し、発根させることができ、カルスを安定的に植物に再生でき、更には、安定的に植物の増殖が可能であることが分かった。
以上の結果より、本発明では、カルスをグリーン化し、グリーン化したカルスから不定胚を誘導するため、高効率で不定胚を誘導でき、その後のシュート形成、伸長、発根がより安定的に進行するため、カルスを高効率で安定的に植物に再生でき、更には、高効率で安定的に植物の増殖が可能であることが分かった。

Claims (17)

  1. 五炭糖を含むグリーン化培地中でカルスを培養することによりカルスをグリーン化するグリーン化工程と、グリーン化したカルスから不定胚を誘導する工程とを含む植物の再生方法。
  2. 五炭糖を含むグリーン化培地中でカルスを培養することによりカルスをグリーン化するグリーン化工程と、植物生長ホルモン及び炭素源を含む再生誘導培地中で、グリーン化したカルスを培養することにより不定胚及びシュートを形成させる再生誘導工程と、形成されたシュートを伸長培地で培養することにより伸長させる伸長工程と、伸長させたシュートを発根培地で培養することにより発根させる発根工程とを含む請求項1記載の植物の再生方法。
  3. 前記グリーン化培地中の五炭糖の濃度が1〜10質量%である請求項1又は2記載の植物の再生方法。
  4. 前記伸長培地及び前記発根培地が、植物生長ホルモンを含まない培地である請求項2記載の植物の再生方法。
  5. 前記植物がイソプレノイド産生植物である請求項1〜4のいずれかに記載の植物の再生方法。
  6. 前記植物がキク科に属する植物である請求項1〜4のいずれかに記載の植物の再生方法。
  7. 前記植物がSonchus属に属する植物である請求項1〜4のいずれかに記載の植物の再生方法。
  8. 前記植物がノゲシである請求項1〜4のいずれかに記載の植物の再生方法。
  9. 五炭糖を含むグリーン化培地中でカルスを培養することによりカルスをグリーン化するグリーン化工程と、グリーン化したカルスから不定胚を誘導する工程とを含む植物の増殖方法。
  10. 植物の組織片からカルスを誘導する工程を含む請求項9記載の植物の増殖方法。
  11. 植物の組織片を植物生長ホルモン及び炭素源を含む誘導培地中で培養することによりカルスを誘導する誘導工程と、五炭糖を含むグリーン化培地中でカルスを培養することによりカルスをグリーン化するグリーン化工程と、植物生長ホルモン及び炭素源を含む再生誘導培地中で、グリーン化したカルスを培養することにより不定胚及びシュートを形成させる再生誘導工程と、形成されたシュートを伸長培地で培養することにより伸長させる伸長工程と、伸長させたシュートを発根培地で培養することにより発根させる発根工程とを含む請求項9記載の植物の増殖方法。
  12. 前記グリーン化培地中の五炭糖の濃度が1〜10質量%である請求項9〜11のいずれかに記載の植物の増殖方法。
  13. 前記伸長培地及び前記発根培地が、植物生長ホルモンを含まない培地である請求項11記載の植物の増殖方法。
  14. 前記植物がイソプレノイド産生植物である請求項9〜13のいずれかに記載の植物の増殖方法。
  15. 前記植物がキク科に属する植物である請求項9〜13のいずれかに記載の植物の増殖方法。
  16. 前記植物がSonchus属に属する植物である請求項9〜13のいずれかに記載の植物の増殖方法。
  17. 前記植物がノゲシである請求項9〜13のいずれかに記載の植物の増殖方法。
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