JP2014072335A - 耐コロナ性絶縁部材及びそれを使用した物品 - Google Patents

耐コロナ性絶縁部材及びそれを使用した物品 Download PDF

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Abstract

【課題】耐コロナ性に優れ、軽量かつ高靱性であり、しかも低コストで提供できる絶縁部材を提供する。
【解決手段】高電圧の適用により発生した部分放電の存在下において使用される絶縁部材が、ベース樹脂からなる本体1と、該本体の少なくとも1つの表面に適用された無機絶縁性コーティング形成性シリコン含有材料とから構成された複合絶縁部材であり、シリコン含有材料3は、該絶縁部材に部分放電が適用されたとき、無機絶縁性コーティング4に変換され得るように構成する。
【選択図】図1

Description

本発明は、高電圧下での使用時、コロナ放電、アーク放電などの部分放電の発生により経時的に劣化し、最終的には絶縁破壊に至ることのない、耐コロナ性を飛躍的に向上させた絶縁部材と、かかる絶縁部材を一構成員として使用した各種の物品に関する。本発明の耐コロナ性絶縁部材は、車両用エンジン等の内燃機関に用いられる点火コイルにおいて有利に使用することができる。
車両用エンジン等の内燃機関に使用する点火コイルにおいては、同一軸線を中心に内周側と外周側に重ねて巻回した一次コイル(一次側コイル)と二次側コイル(二次コイル)とを用い、電磁誘導作用を利用して例えば20〜40kVの高電圧を二次コイルに発生させている。そして、この高電圧により、二次コイルに接続したスパークプラグにおける一対の電極間にスパークを発生させ、このスパークにより内燃機関における燃焼動作を行っている。
点火コイルには、各種の絶縁部材を用いることが提案されている。しかしながら、汎用の樹脂材料の場合、化学的/熱的安定性が低く信頼性に欠けるという欠点がある。また、セラミック材料は、重量が重く、靱性に欠け、機械的強度が低いうえに、製造の際に、高温にさらす必要があるため、製造コストが高いという欠点がある。このような欠点を伴わないばかりでなく、高電圧に耐え得るように、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、PBT(ポリブチレンテレフタレート)樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂、PPE(ポリフェニレンエーテル)樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂が最近の点火コイルにおいて使用されている。
一例を示すと、特許文献1には、点火コイルのケース及び一次ボビンを、従来のPBT樹脂に代えてPPS樹脂を用いて成形することにより、点火コイルの出力エネルギーを損なうことなくその小型化を図った内燃機関用点火コイルが記載されている。
ところで、近年、車両用エンジン等においては、高出力、低燃費、低エミッションのエンジンが開発されており、点火系に対する要求電圧が年々高くなっていきている。そのため、点火コイルに用いる絶縁部材においても、高電圧に長時間耐え得るコロナ寿命(耐久性)の向上が必要となり、使用する材料に更なる工夫が必要とされる。
上記のような要望に応えるため、特許文献2には、一次コイル及び二次コイルを備えた点火コイルに用いる絶縁部材であって、該絶縁部材が、ベースとなる絶縁材料に、脱水分解反応を生じさせる脱水分解反応剤を添加してなることを特徴とする点火コイル用の絶縁部材が記載されている。
また、特許文献3には、一次巻線を複数回巻回してなる一次コイルと、線径が30〜100μmの二次巻線を複数回巻回してなる二次コイルと、一次巻線の線間及び二次巻線の線間に含浸するとともに、一次コイルおよび二次コイルを封止する樹脂成形体とを有する内燃機関用点火コイルが記載されている。この内燃機関用点火コイルでは、樹脂成形体が、樹脂成形体中の電気トリーの進展を抑制するために、60重量%以上の球状シリカと40重量%以下の破砕シリカとからなる充填剤を65重量%以上80重量%以下含有することを特徴とする。
特開平8−339928号公報 特開2008−166365号公報 特開2009−278074号公報
しかしながら、上記した従来技術には依然として解決されるべき課題が残されている。例えば特開2008−166365号公報に記載される点火コイル用の絶縁部材の場合、脱水分解反応剤を添加することで耐コロナ性の向上を図っているけれども、達成される耐コロナ性の向上の幅が大きくないので、さらなる改良が求められる。また、耐コロナ性の向上のメカニズムが脱水分解反応に依存しているため、製品使用温度(通常、130℃近傍の高温)における耐コロナ性の向上が小さい。また、特開2009−278074号公報に記載される内燃機関用点火コイルの場合、無機充填剤をフィラーとして添加することで、コロナ寿命の延命を図っているけれども、フィラーを配合するマトリックスが樹脂であるため、化学的安定性が低く、達成される耐コロナ性向上はセラミック材料には劣っている。なお、「耐コロナ性」なる語は、それを本明細書において使用して場合、コロナ放電、アーク放電などの部分放電の発生にさらされた場合であっても材料が経時的に劣化することがなく、その材料あるいはその材料から形成された部材を、絶縁破壊等を被ることなく長期間にわたって安定にかつ高い信頼性をもって使用するのに十分な耐性を有することを意味する。
本発明の目的は、したがって、高電圧に長時間耐え得、部分放電発生に原因する経時劣化を防止し得るコロナ寿命(優れた耐久性)を有することに加えて、良好な化学的/熱的安定性により耐コロナ性の信頼性が高く、軽量かつ高靱性であり、しかも低コストで提供できる、点火コイル等の製造に有用な新規な絶縁部材を提供することにある。
本発明の目的はまた、優れた耐コロナ性により部分放電発生に原因する経時劣化及び絶縁破壊を防止できる新規な絶縁部材を一構成員として使用したことにより信頼性を飛躍的に増大させた、自動車用点火コイルをはじめとした各種の物品を提供することにある。
本発明のその他の目的は、以下の詳細な説明から容易に理解することができるであろう。
本発明者らは、このたび、樹脂を劣化させる原因となってきた放電によるエネルギーを逆に利用することで耐コロナ性の向上を図ることに着目し、鋭意研究した結果、樹脂からなる絶縁部材の表面(片面あるいは両面)あるいは樹脂からなる絶縁部材のマトリックス樹脂内に、放電によるエネルギーを受けて耐コロナ性の向上に寄与し得る無機物を形成可能な物質として、「無機絶縁性コーティング形成性シリコン含有材料」あるいは「無機絶縁性物質形成性シリコン含有材料」(本発明では、これらのシリコン含有材料を総称して、単に「前駆体」と呼ぶこともある。)を適用することが有効である知見を得、本発明を完成した。
具体的には、本発明では、絶縁部材を、単独の樹脂から構成するのではなくて、ベース樹脂からなる本体と、それを被覆した無機絶縁性コーティングとから複合絶縁部材の形態で構成する。ここで、無機絶縁性コーティングは、従来樹脂を劣化させることで問題とされてきた部分放電によるエネルギーを逆に利用して、すなわち、無機絶縁性コーティングを形成するために前駆体としてマトリックス樹脂内もしくはマトリックス樹脂の表面に存在する無機絶縁性コーティング形成性シリコン含有材料を変換して無機絶縁性コーティングを形成するための熱源としてこのエネルギーを利用して、シリコン含有材料から形成することができる。ここで、シリコン含有材料が無機絶縁性コーティングに変換されるメカニズムは、シリコン含有材料を構成するシリコン含有物が部分放電により酸素と反応する結果、酸化ケイ素が形成されるとともに、絶縁部材の使用が続くにつれてさらなる反応が進行し、その結果、樹脂と比較して絶縁性の非常に高い物質が析出し、絶縁部材を使用するほど絶縁性が向上するということで説明することができる。本発明の絶縁部材では、その絶縁部材の表面に無機絶縁性コーティングが形成されている結果、部分放電の発生に由来する優れた耐コロナ性を絶縁部材において達成することができる。
また、別法によれば、絶縁部材を単独の樹脂から構成してもよく、その場合には、マトリックス樹脂中に、無機絶縁性コーティング形成性シリコン含有材料と同様であり、かつ同様なメカニズムを奏することのできる物質、すなわち、無機絶縁性物質形成性シリコン含有材料を配合する。樹脂製絶縁部材は、その内部に無機絶縁性物質形成性シリコン含有材料が分散せしめられているため、上記と同様なメカニズムで、部分放電の発生に由来する優れた耐コロナ性を絶縁部材において達成することができる。
本発明は、一つの面において、高電圧の適用により発生した部分放電の存在下において使用される絶縁部材であって、
ベース樹脂からなる本体と、該本体の少なくとも1つの表面に適用された無機絶縁性コーティング形成性シリコン含有材料とから構成された複合絶縁部材であり、前記シリコン含有材料は、該絶縁部材に部分放電が適用されたとき、前記無機絶縁性コーティングに変換され得ることを特徴とする絶縁部材にある。
また、本発明は、もう一つの面において、高電圧の適用により発生した部分放電の存在下において使用される絶縁部材であって、
該絶縁部材が、無機絶縁性物質形成性シリコン含有材料がベース樹脂に分散せしめられたコンパウンド材料から形成されたものであり、前記シリコン含有材料は、該絶縁部材に部分放電が適用されたとき、無機絶縁性コーティングに変換され得ることを特徴とする絶縁部材にある。
さらに、本発明は、もう一つの面において、本発明による絶縁部材を一構成要素として備えてなることを特徴とする物品、例えば電気製品、自動車部品等、例えば自動車用点火コイルにある。
本発明によれば、以下の詳細な説明から理解されるように、絶縁部材の耐コロナ性を飛躍的に向上させることができるので、絶縁部材を一部もしくは全部に使用した各種の物品(製品)、例えば自動車用点火コイルの可使寿命及び信頼性を高めることができる。また、絶縁部材は樹脂から形成されているので、軽量化が可能であり、樹脂を選択することで良好な機械的強度や高い靱性なども達成することができる。また、これらのすぐれた効果は、点火コイルに限ることなく、高電圧下で使用され、かつ一構成員として絶縁部材を備えたその他の物品においても具現することができる。
本発明による絶縁部材の1製造方法を断面で示した説明図である。 本発明による絶縁部材のもう一つの製造方法を断面で示した説明図である。 本発明の絶縁部材を一構成員として使用しうる点火コイルの一例を示した断面図である。 図3に示した点火コイルにおける本発明の絶縁部材の使用例を示した部分断面図である。 絶縁部材の耐コロナ性評価試験に用いられた試験装置の模式図である。
次いで、本発明を実施するための形態を図1〜図4を参照して説明する。
図1は、本発明による絶縁部材の1製造方法を断面で示した説明図である。図1(C)に示されるように、本発明の絶縁部材5は、ベース樹脂からなる本体1と、本体1の上面のみに形成された無機絶縁性コーティング4とから構成される複合絶縁部材である。なお、無機絶縁性コーティング4は、必要に応じて、本体1の下面のみに形成されてもよく、さもなければ、本体1の上面及び下面の両方に形成されていてもよい。本発明の絶縁部材5は、高電圧の適用により発生した部分放電の存在下において使用されるときに特にその作用効果を発揮することができる。
本発明によると、無機絶縁性コーティング4は、本体1の表面に直接的に適用することで形成されたものではなくて、その前駆体(A)又は(B)を経て形成されたものである。すなわち、無機絶縁性コーティング4は、本体1の表面に、図1(A)に示すように液状の無機絶縁性コーティング形成性シリコン含有材料2を塗布するか、さもなければ、図1(B)に示すようにシート状又はフィルム状の無機絶縁性コーティング形成性シリコン含有材料3を積層した後、得られた前駆体としての複合絶縁部材に部分放電を適用することによって形成されたものである。本発明によると、樹脂を劣化させる原因となってきた部分放電によるエネルギーを利用することで、無機絶縁性コーティング形成性シリコン含有材料2又は3を無機絶縁性コーティング4に変換することができる。
本発明の実施において、本体を構成するベース樹脂は、絶縁性樹脂である限りにおいて、材質、形状、サイズ等が限定されるものではなく、絶縁部材として通常使用されている絶縁性樹脂のなかから適当な樹脂を任意に選択して使用することができる。適当な絶縁性樹脂として、例えば、汎用の熱可塑性/熱硬化性プラスチックス、例えばPPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、PA(ポリアミド)樹脂、PBT(ポリブチレンテレフタレート)樹脂、PP(ポリプロピレン)樹脂、PE(ポリエチレン)樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂、PPE(ポリフェニレンエーテル)樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂、LCP(液晶ポリマー)、PEI(ポリエーテルイミド)樹脂、PAI(ポリアミドイミド)樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂など、エンジニアリングプラスチックス、スーパーエンジニアリングプラスチックスを挙げることができる。特に好適なベース樹脂としては、耐熱性及び絶縁性にすぐれ、物性やコストの観点でもすぐれているので、PPS樹脂を挙げることができる。
無機絶縁性コーティングは、液状の無機絶縁性コーティング形成性シリコン含有材料あるいはシート状又はフィルム状の無機絶縁性コーティング形成性シリコン含有材料から形成することができ、所望とする無機絶縁性コーティングが形成される限り、コーティング形成性シリコン含有材料が限定されることはない。すなわち、シリコン含有材料は、その構造中にシリコン(Si)元素を含んでいて粘性のある液体であるかシート(フィルム)であれば、基本的に使用可能である。シリコン含有材料は、必要に応じて、加工性や物性等の向上のため、任意の添加剤を含有することができる。適当な添加剤として、例えば、加工性の向上のための粘度調整剤、硬化反応触媒(白金など)、着色剤、物性向上剤(ゴム成分など)などを挙げることができる。
コーティング形成性シリコン含有材料についてさらに説明すると、好適なシリコン含有材料は、オルガノポリシロキサンを主成分とする接着剤である。この接着剤の場合、含まれるシリコン(Si)が部分放電により酸素と効果的に反応する結果、非常に高い絶縁性をもった物質を容易に生成することができる。シリコン含有材料中におけるシリコン(Si)元素含有量は、上記のような反応に有効に供しうる量であることが好ましく、通常、約5〜95重量%の範囲であり、さらに好ましくは、約40〜50重量%の範囲である。シリコン含有材料は、さらに好ましくは、シリコーン接着剤である。かかる接着剤は、市販品もあり、例えば東レ・ダウコーニング社から品番SE1714等として容易に入手可能である。
無機絶縁性コーティングは、上記したように、ベース樹脂からなる本体の表面に液状の無機絶縁性コーティング形成性シリコン含有材料を塗布するか、シート状又はフィルム状の無機絶縁性コーティング形成性シリコン含有材料を積層した後、得られた前駆体としての複合絶縁部材に部分放電を適用することによって形成することができる。液状のシリコン含有材料の塗布により無機絶縁性コーティングを形成する場合、例えばブラシ塗布、スプレー塗布、ディップ塗布等の常用の手法を使用して塗布を行い、引き続いて放置もしくは加熱により硬化することができる。塗膜の膜厚は、通常、約10〜4000μmの範囲である。また、シート状又はフィルム状のシリコン含有材料の積層により無機絶縁性コーティングを形成する場合、例えば、シリコン含有材料のシートあるいはフィルムを予め形成しておいて、このシートあるいはフィルムを、例えば加圧下に、必要に応じて適当な接着剤を併用して、延展、巻き付け、熱収縮などの手法により樹脂部材の表面に積層あるいは一体化することができる。シートあるいはフィルムの厚さは、通常、約10〜4000μmの範囲である。
別法によれば、図2に示すような手法で本発明の絶縁部材5を形成することができる。本形態の場合、図1を参照して先に説明したように、ベース樹脂からなる本体の表面に液状あるいはシート状又はフィルム状の無機絶縁性コーティング形成性シリコン含有材料を適用することに代えて、図2(A)に示すように、無機絶縁性コーティング形成性シリコン含有材料と同様な挙動を奏することのできる無機絶縁性物質形成性シリコン含有材料8をベース樹脂1そのもののなかに分散せしめたコンパウンド材料を使用する。分散せしめられるシリコン含有材料8の形態は、特に限定されるものではないけれども、良好な分散性などを達成するため、微細な粉末の形態で使用するのが好ましい。また、シリコン含有材料8の配合量は、広い範囲で変更できる。シリコン含有材料8は、それに部分放電が適用されたとき、無機絶縁性物質含有ベース樹脂9、換言すると、絶縁部材5に変換される。容易に理解できるように、このコンパウンド材料の場合にも、図1に示して上記した場合と同様に、コンパウンド材料に含まれるシリコン(Si)が部分放電により酸素と効果的に反応する結果、非常に高い絶縁性をもった無機絶縁性物質を絶縁部材5内に容易に生成することができる。
本発明の絶縁部材は、優れた耐コロナ性等を必要とする各種の製品、例えば電気製品、自動車部品等においてその一構成員として有利に使用することができる。本発明の絶縁部材を使用することのできる製品の一例として、自動車用点火コイルの例を図3を参照しながら以下で説明する。
図3は、本発明を適用しうる点火コイル100の基本的構成を示す縦断面図である。図示の点火コイル100において、ハウジング10は、PBT等の硬質樹脂からなり、エンジンヘッド11のプラグホール12の横断面積よりも大きな底面を有する矩形箱状を呈し、プラグホール12の開口部外側に固定されている。また、ハウジング10の側壁には、ハウジング10から外側に突出するコネクタ部10aがそれぞれ一体に形成されている。コネクタ部10aは、外部電源(図示せず)とイグナイタ23とを電気的に接続する役割を果たす。さらに、エンジンヘッド11に対向するハウジング10の底壁には、ハウジング10からプラグホール12側に突出する筒状部材10bが一体に形成されている。
図示するように、ハウジング10の内部には、中心コア13、一次スプール14、一次コイル15、および二次スプール16、二次コイル17が収容され、またハウジング10の外部には、外周コア18が設けられている。
中心コア13は、磁性材を積層してなり、全体として円柱状を呈している。中心コア13は、その軸方向がプラグホール12の軸方向に対して略垂直となるように、設けられている。
外周コア18は、磁性材を積層してなり、全体としてプラグホール12に向かって開口する箱状を呈している。外周コア18のうち、一対の対向する側面は、中心コア13の両端面と対向しており、これにより、中心コア13と外周コア18とで、磁気エネルギーの損失を抑制する閉磁路を形成している。
一次スプール14は、PP、PE等の硬質樹脂からなり、中心コア13の外周側に中心コア13と略同心状に設けられている。一次コイル15は、ボビン形状の一次スプール14に断面円形の一次巻線115を巻回してなる。なお、一次コイル15については、直径が0.3〜0.8mmの銅線を100〜230ターン巻回することによって形成している。
二次スプール16は、PP、PE等の硬質樹脂からなり、一次コイル15の外周側に中心コア13と略同心状に設けられている。二次コイル17は、ボビン形状の二次スプール18に断面円形の二次巻線117を巻回してなる。なお、二次コイル17については、直径が30〜100μm、好ましくは40〜50μmの銅線を10000〜20000ターン、斜向巻き等の巻回方法を用いて巻回することにより形成される。
ハウジング10の内部には、樹脂材料20が充填されている。樹脂材料20は、二次コイル17とハウジング10との間に介在しており、両者を電気的に絶縁している。また、樹脂材料20は、一次コイル15と二次コイル17との間にも介在しており、両者を電気的に絶縁している。
図示されるように、シール部材24は、ゴム材料からなり、全体として略円筒状を呈している。シール部材24は、筒状部材10bの外周面、ハウジング10の底壁およびエンジンヘッド11の上面との間に介設され、プラグホール12の開口部をシールしている。筒状部材10bの内周側には、高圧端子22が設けられ、二次コイル17を構成する自己融着線の巻き終わり部分は、金属端子21を介して当該高圧端子22に電気的に接続されている。
上記構成において、エンジンコントロールユニット(図示せず)からの信号により、スイッチング素子を内蔵するイグナイタ23が、一次コイル15に流れる電流を遮断すると、一次および二次コイル15,17間の相互誘導作用により、40数kVの高電圧が二次コイル17に発生する。こうして二次コイル17に発生した高電圧は、高圧端子22等を介して、点火プラグ101に導かれ、点火プラグ101の先端で火花放電を発生させる。
上述のように、ハウジング10の内部には、樹脂材料20が充填されており、樹脂材料20は、中心コア13、一次スプール14、一次コイル15、二次スプール16、二次コイル17、外周コア18、およびイグナイタ23を封止、絶縁している。
図示の樹脂材料20は、熱硬化性樹脂に充填剤として球状シリカ(図示せず)を、75重量%含有してなる。なお、熱硬化性樹脂には、絶縁性に加え、中心コア13、一次スプール14、一次コイル15、二次スプール16、二次コイル17、外周コア18、およびイグナイタ23との接着性、省コストなどの性能が求められることから、エポキシ樹脂を用いることが好ましい。樹脂材料20は、ガラス転移点Tgよりも低い温度のときには、流動性のないガラス状となり、ガラス転移点Tgよりも高い温度のときは流動性のあるゴム状となる。なお、両者は、状態こそ異なるが、組成は同一である。
図3に示した点火コイル100において、本発明の絶縁部材は、例えば、プラグホールと高電圧部(例えば、スプリング)を絶縁する環状樹脂部品として使用することができる。図4は、図3に示した点火コイルにおける本発明の絶縁部材の使用例を示した部分断面図である。
図示されるように、本発明の絶縁部材5は、スプリング19を取り囲む環状部材の形態を有していて、エンジンヘッド11の内側に形成されたプラグホール12の空間に配置されている。絶縁部材5は、ベース樹脂からなる本体1と、本体1の両面に形成された無機絶縁性コーティング4a及び4bとから構成されている。無機絶縁性コーティングは、無機絶縁性コーティング形成性シリコン含有材料のシートを本体1に積層した後、それを部分放電にさらすことによって形成されたものである。無機絶縁性コーティングの形成の詳細は、前記した通りである。
引き続いて、本発明をその実施例を参照して説明する。なお、本発明は、下記の実施例によって限定されるものでない。
本例では、信頼性が高く、軽量、高靭性な絶縁部材を低コストで製造できることを確証するため、図5に示す耐コロナ性評価のための試験装置を使用して、次のような試験条件で評価試験を実施した。
図5に示す試験装置において、板状の試料31は、PPS樹脂製平板(100mm×100mm×1mm)であり、その上方にフィルム状の試料32を積層した。フィルム状の試料32は、0.5mm以下の厚さをもったシリコーン接着剤(品番:SE1714、東レ・ダウコーニング社製)であった。これらの試料を、図示のように、直径20mmの球状上部電極(鋼球)34と直径25mmの平板状下部電極(GND)35で電極間距離1mmで挟み込んだ。次いで、試料32に上部電極34を押し当て、上部電極34に点火コイル33を接続して、100Hzの周波数にて25kVの電圧を印加した。点火コイル33の波形は、ブレーク波形であった。電圧の印加を反復して、試料21においてコロナ破壊が発生するまでのコロナ破壊寿命を測定したところ、710時間であった。次いで、比較のため、フィルム状のシリコーン接着剤の試料32を除いた状態で上記の手法を反復したところ、コロナ破壊が発生するまでのコロナ破壊寿命が大幅に短縮され、105時間であることが確認された。
本発明例ではコロナ破壊寿命が710時間であるところを、比較例ではたかだか105時間であることから、本発明によれば、絶縁部材内あるいは絶縁部材の表面にシリコーン接着剤に代表されるシリコン含有材料を適用することで、部分放電にさらされた後の絶縁部材において耐コロナ性を大幅に向上させうることがわかる。
本発明によれば、絶縁部材の耐コロナ性を飛躍的に向上させることができるといった顕著な作用効果を達成できるので、本発明の絶縁部材を、その絶縁部材を一部もしくは全部に使用した各種の物品、例えば電気製品や自動車部品の製造に有利に利用することができる。利用可能な物品の一例を自動車部品について示すと、点火コイル、インバータ、コンバータ、モータ、チャージャー、オルタネータ、スタータ、絶縁碍子、パワートランジスタ、リレーなどを挙げることができる。
1 ベース樹脂(本体)
2 液状のシリコン含有材料
3 フィルム状のシリコン含有材料
4 無機絶縁性コーティング
5 絶縁部材
7 ベース樹脂
8 無機絶縁性物質形成性シリコン含有材料
9 無機絶縁性物質含有ベース樹脂
10 ハウジング
11 エンジンヘッド
12 プラグホール
19 スプリング
31 PPS樹脂製平板
32 試料(シリコーン接着剤フィルム)
33 点火コイル
34 上部電極
35 下部電極
100 点火コイル
101 点火プラグ

Claims (10)

  1. 高電圧の適用により発生した部分放電の存在下において使用される絶縁部材であって、
    ベース樹脂からなる本体と、該本体の少なくとも1つの表面に適用された無機絶縁性コーティング形成性シリコン含有材料とから構成された複合絶縁部材であり、前記シリコン含有材料は、該絶縁部材に部分放電が適用されたとき、前記無機絶縁性コーティングに変換され得ることを特徴とする絶縁部材。
  2. 前記無機絶縁性コーティングは、液状の前記シリコン含有材料を前記本体の表面に塗布することによって形成されたものである、請求項1に記載の絶縁部材。
  3. 前記無機絶縁性コーティングは、シート状の前記シリコン含有材料を前記本体の表面に積層することによって形成されたものである、請求項1に記載の絶縁部材。
  4. 高電圧の適用により発生した部分放電の存在下において使用される絶縁部材であって、
    該絶縁部材が、無機絶縁性物質形成性シリコン含有材料がベース樹脂に分散せしめられたコンパウンド材料から形成されたものであり、前記シリコン含有材料は、該絶縁部材に部分放電が適用されたとき、無機絶縁性コーティングに変換され得ることを特徴とする絶縁部材。
  5. 前記シリコン含有材料は、オルガノポリシロキサンを主成分とする接着剤である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の絶縁部材。
  6. 前記ベース樹脂は、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の絶縁部材。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の絶縁部材を構成要素として備えてなることを特徴とする物品。
  8. 電気製品である、請求項7に記載の物品。
  9. 自動車部品である、請求項7に記載の物品。
  10. 点火コイルである、請求項7に記載の物品。
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