JP2014072207A - 電圧非直線抵抗体の製造方法および電圧非直線抵抗体 - Google Patents

電圧非直線抵抗体の製造方法および電圧非直線抵抗体 Download PDF

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Abstract

【課題】高抵抗側面層の絶縁性能を十分に高くすることができるともに、仮焼結体に含まれるZnO粒子の粒成長を抑制することによって素子自体を高抵抗化することができる電圧非直線抵抗体の製造方法および電圧非直線抵抗体を得る。
【解決手段】SbおよびBiの2成分が含まれるペーストを、SiOが含まれる仮焼結体の側面に塗布し、比較的低い温度で焼成することによって、焼結体(1)の側面を基準として、ZnSiO粒子およびZnSb12粒子から成る混相(21)、ZnSb12粒子から成る単相(24)の順に形成された高抵抗側面層(2)を製造する。
【選択図】図2

Description

本発明は、絶縁性能が高い高抵抗側面層を有する電圧非直線抵抗体の製造方法および電圧非直線抵抗体に関するものである。
酸化亜鉛(ZnO)を主成分とする一般的な電圧非直線抵抗体(以降、バリスタと称す)は、ZnOを主成分とする焼結体の側面に高抵抗絶縁層が形成されており、さらに、この焼結体の両端面を研磨し、研磨した両端面に、金属アルミニウム溶射などによって電極を形成することにより製造される。
また、ZnOを主成分とする焼結体は、電圧非直線性の発現に必須である酸化ビスマス(Bi)をはじめ、電気特性の改善に有効な添加物をZnOに添加して混合し、造粒、成形、焼成の各工程を経ることにより得られる。
なお、電気特性の改善に有効な添加物として、例えば、酸化ニッケル(NiO)、酸化コバルト(Co)、酸化マンガン(Mn)、酸化クロム(Cr)、酸化アンチモン(Sb)などが挙げられる。また、この高抵抗絶縁層は、高電圧が印加された場合の閃絡防止の目的で、焼結体の側面に形成されている。
このように、一般的に、バリスタの側面には、高抵抗絶縁層が形成されている。なお、以降では、バリスタの側面に形成される高抵抗絶縁層を高抵抗側面層と称す。
ここで、バリスタの高抵抗側面層として、例えば、シリカ(SiO)、SbおよびBiの3成分が含まれるペーストを仮焼結体の側面に塗布し、1200℃の温度で焼成することによって生成したZnSiOの絶縁粒子から構成される高抵抗側面層が知られている(例えば、特許文献1参照)。なお、以降では、ZnSiOをZSと称す。
さらに、Sbと、Biと、数重量%の酸化リチウム(LiO)、酸化ルビジウム(RbO)またはBとが含まれるペーストを仮焼結体の側面に塗布し、950℃の温度で焼成することによって生成したZnSb12の絶縁粒子(スピネル粒子)から構成される高抵抗側面層が知られている(例えば、特許文献2参照)。なお、以降では、ZnSb12をSPと称す。
特公平03−020885号公報 特開2002−305105号公報
しかしながら、従来技術には以下のような課題がある。
特許文献1に記載の従来技術では、仮焼結体の側面に塗布したペーストを、1200℃という高い温度で焼成するので、仮焼結体に含まれるZnO粒子の粒成長が促進され、ZnO粒子同士の粒界数が減少してしまう。この結果として、バリスタ素子を高抵抗化することが困難であるという問題があった。
また、特許文献2に記載の従来技術では、仮焼結体の側面に塗布したペーストを、950℃という比較的低い温度で焼成するので、仮焼結体に含まれるZnO粒子の粒成長が抑制される。しかしながら、この従来技術では、高抵抗側面層を製造するための焼成時において、仮焼結体に含まれるクロム(Cr)が高抵抗側面層中に拡散してしまうので、高抵抗側面層の絶縁性能が低くなってしまう問題があった。
本発明は、前記のような課題を解決するためになされたものであり、高抵抗側面層の絶縁性能を十分に高くすることができるともに、仮焼結体に含まれるZnO粒子の粒成長を抑制することによって素子自体を高抵抗化することができる電圧非直線抵抗体の製造方法および電圧非直線抵抗体を得ることを目的とする。
本発明における電圧非直線抵抗体の製造方法は、ZnOを主成分とする焼結体と、焼結体の側面に高抵抗側面層が形成される電圧非直線抵抗体の製造方法であって、ZnOと、SiOが含まれる添加物とを混合した組成物を仮焼成することにより、SiOが含まれる仮焼結体を製造する第1ステップと、第1ステップにおいて製造した仮焼結体の側面に、SbおよびBiの2成分から成る混合物が含まれるペーストを塗布する第2ステップと、第2ステップにおいてペーストを塗布した仮焼結体を、焼成することにより、焼結体および高抵抗側面層を製造する第3ステップとを備えることを特徴とするものである。
また、本発明における電圧非直線抵抗体は、電圧非直線抵抗体の製造方法により得られる電圧非直線抵抗体であって、高抵抗側面層は、焼結体の側面を基準に、ZnSiO粒子およびZnSb12粒子から成る混相、ZnSb12粒子から成る単相の順に形成されていることを特徴とするものである。
本発明における電圧非直線抵抗体の製造方法および電圧非直線抵抗体によれば、SbおよびBiの2成分が含まれるペーストを、SiOを含む仮焼結体の側面に塗布し、比較的低い温度で焼成することによって、SP単相およびZS+SP混相を含む高抵抗側面層を形成する。これにより、高抵抗側面層の絶縁性能を十分に高くすることができるともに、仮焼結体に含まれるZnO粒子の粒成長を抑制することによって素子自体を高抵抗化することができる電圧非直線抵抗体の製造方法および電圧非直線抵抗体を得ることができる。
本発明の実施の形態1におけるバリスタの全体構成を示した説明図である。 本発明の実施の形態1における高抵抗側面層の構造断面を示した説明図である。 本発明の実施の形態1において、仮焼結体の製造時に、組成物として、SiOが添加されない場合における高抵抗側面層の構造断面を示した説明図である。 従来技術における高抵抗側面層の構造断面を示した説明図である。
以下、本発明の電圧非直線抵抗体の製造方法および電圧非直線抵抗体の好適な実施の形態につき、図面を用いて説明する。なお、図面の説明においては、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
実施の形態1.
はじめに、本発明における高抵抗側面層の技術的特徴を明確にするために、従来技術における高抵抗側面層の課題について、図4を参照して、詳細に説明する。図4は、従来技術における高抵抗側面層2a、2bの構造断面を示した説明図である。
ここで、図4(a)は、前述した特許文献1に記載された方法によって得られる高抵抗側面層2aの断面構造の拡大図を示している。また、図4(b)は、前述した特許文献2に記載された方法によって得られる高抵抗側面層2bの断面構造の拡大図を示している。なお、図4(a)、(b)は、高抵抗側面層2a、2bについて説明するために、焼結体1a、1b、高抵抗側面層2a、2b、および電極3a、3bを有するバリスタの全体構成も併せて示している。
この図4(a)において、焼結体1aの側面には、この側面を基準として、1層目として、ZS粒子とSP粒子から成る混相(以降では、ZS+SP混相21と称す)、2層目として、ZS粒子から成る単相(以降では、ZS単相22と称す)、3層目として、混合相23が順番に形成されている。すなわち、図4(a)における高抵抗側面層2aには、これら3つの層が含まれることになる。
なお、ここでいう混合相23とは、SiO、SbおよびBiが混在している相を意味する。また、ZS単相22の次の層として、混合相23が形成されているが、この混合相23は、高抵抗側面層2aの絶縁性能を決める大きな要因とはならない。
しかしながら、仮焼結体に塗布したペーストを焼成する温度を1200℃から下げる場合には、特に、1070℃以下の温度領域で、1層目および2層目に含まれるZSの粒形成が不十分になるので、高抵抗側面層2aの絶縁性能が著しく低下する。
この図4(b)において、焼結体1bの側面には、この側面を基準として、1層目として、SP粒子から成る単相(以降では、SP単相24と称す)が形成されている。すなわち、図4(b)における高抵抗側面層2bには、この1つの層が含まれることになる。
しかしながら、高抵抗側面層2bとして、ZS+SP混相21が形成されず、SP単相24のみが形成されるので、仮焼結体に含まれるCrがSP単相24中に拡散してしまう。したがって、高抵抗側面層2bの絶縁性能が著しく低下する。
このように、従来技術では、高抵抗側面層の絶縁性能を十分に高くすることができるともに、仮焼結体に含まれるZnO粒子の粒成長を抑制することによって素子自体を高抵抗化することができるバリスタを得ることができなかった。これに対して、本願発明では、高抵抗側面層の構造、形成条件等を鋭意検討した結果、高抵抗側面層の絶縁性能を十分に高くすることができるともに、仮焼結体に含まれるZnO粒子の粒成長を抑制することによって素子自体を高抵抗化することができるバリスタを得ることができた。
次に、本実施の形態1において得られた絶縁性能が十分に高い高抵抗側面層を有するバリスタについて、図1および図2を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態1におけるバリスタの全体構成を示した説明図である。また、図2は、本発明の実施の形態1における高抵抗側面層2の構造断面を示した説明図である。なお、図2は、高抵抗側面層2の断面構造の拡大図を示し、高抵抗側面層2について説明するために、焼結体1、高抵抗側面層2および電極3を有するバリスタの全体構成(図1に対応)も併せて示している。
この図1におけるバリスタは、焼結体1、高抵抗側面層2および電極3を有する。焼結体1は、主成分であるZnOと、SiOを含んだ添加物とを混合した組成物を仮焼成することによって得られた仮焼結体(以降では、仮焼結体Aと称す)を、さらに、焼成することによって得られる。なお、SiOを含んだ添加物には、SiO以外としてNiO、Co、Mn、Cr、Sb、B、希土類酸化物などが、SiOとともに含まれる。
高抵抗側面層2は、SbおよびBiの2成分が含まれるペーストを、仮焼結体Aの側面に塗布し、焼成することによって得られる。なお、この焼成によって、仮焼結体Aが焼結体になるとともに、仮焼結体Aに含まれるZnOおよびSiOと、ペーストとが反応することによって高抵抗側面層2が得られる。
また、高抵抗側面層2が得られた後、焼結体1の両端面(上面および下面)には、アルミニウムなどから構成される電極3が形成される。
次に、本実施の形態1における高抵抗側面層2について説明する。図2において、焼結体1の側面には、この側面を基準として、ZS+SP混相21(1層目)、SP単相24(2層目)が順番に形成されている。また、この場合には、従来技術と同様に、SP単相24の次の層として、混合相23が形成されているが、この混合相23は、高抵抗側面層の絶縁性能を決める大きな要因とはならない。
なお、図2に示した高抵抗側面層2における構造、各層の組成比は、SEM(Scanning Electron Microscope;走査型電子顕微鏡)およびEDX(Energy Dispersive X−ray Detector;エネルギー分散型X線分析装置)を用いた観察を行うことによって確認した。
また、この1層目のZS+SP混相21におけるZSは、ZnOとSiOを成分とする絶縁粒子である。さらに、この絶縁粒子は、仮焼結体Aの焼成と同時に、仮焼結体Aに含まれるZnOとSiOとが仮焼結体Aの側面に拡散し、それぞれが反応することにより形成される。
また、この1層目のZS+SP混相21におけるSPは、ZnOとSbを成分とする絶縁粒子である。さらに、この絶縁粒子は、仮焼結体Aの焼成と同時に、仮焼結体Aに含まれるZnOとSbとが反応することにより形成される。
また、この2層目のSP単相24におけるSPは、Crをほとんど含んでおらず、ZnOとSbを成分とする絶縁粒子である。さらに、この絶縁粒子は、仮焼結体Aの焼成と同時に、仮焼結体Aに含まれるZnOとSbとが反応することにより形成される。
ここで、本願発明は、以下のような技術的特徴を有する。
(特徴1)
本実施の形態1における高抵抗側面層2の構造として、1層目のZS+SP混相21は、仮焼結体AからのCrの拡散をブロックする役割を果たす。これにより、SP単相24中にCrがほとんど含まれず、絶縁性能が十分に高い高抵抗側面層2を得られる。
(特徴2)
従来では、仮焼結体の組成物として、SiOが意図的に添加されることはないので、得られる仮焼結体には、SiOがほとんど含まれない。これに対して、本実施の形態1では、前述したように、仮焼結体Aの組成物として、SiOが意図的に添加されるので、得られる仮焼結体Aには、SiOが従来と比較して多量に含まれる。このSiOが含まれる仮焼結体Aの側面に、SbおよびBiの2成分が含まれるペーストを塗布し、比較的低温で焼成することによって、図2に示したような高抵抗側面層2が得られる。
(特徴3)
ZS+SP混相21およびSP単相24を含む高抵抗側面層2が比較的低温で形成されるので、仮焼結体Aに含まれるZnO粒子の粒成長を抑制することができる。したがって、バリスタ素子自体を高抵抗化することができる。
次に、前述した本願発明の技術的特徴について詳細に説明する。はじめに、本実施の形態1における高抵抗側面層2(図2に対応)の製造方法および製造した高抵抗側面層2の特性について、実施例に基づいて、具体的に数値を例示しながら説明する。なお、本実施の形態1は、以下のような実施例のみに限定されるものではない。
高抵抗側面層2の製造に用いるペーストについて述べる。SbとBiを粉体の状態で秤量し、これらの粉体を乳鉢および乳棒を用いて、30分間混合することにより、これら2成分から成る混合物を製造する。なお、粉体の状態で秤量したSbとBiとの混合比率については、後述する。
また、30分間混合した粉体の混合物に、溶剤のターピネオールを加え、さらに10分間混合する。次に、結合剤のポリビニルブチラールを加え、さらに4時間混合する。これらの工程により、高抵抗側面層2の製造に用いるためのペーストが得られる。
このように得られたペーストを、仮焼結体Aの側面に塗布し、900℃以上の温度で焼成する。この焼成によって、最終的に、焼結体1の側面に高抵抗側面層2が製造される。なお、側面への塗布方法としては、例えば、ローラー法、スプレー法、手塗り等が挙げられる。
次に、高抵抗側面層2を製造する場合におけるSbとBiとの混合比率および製造した高抵抗側面層2の特性について、表1を参照して説明する。表1は、SbとBiとの混合比率、高抵抗側面層2の厚み、およびインパルス電流耐量の関係を示している。なお、この場合において、焼成温度は、1050℃である。
Figure 2014072207
表1には、SbとBiとの混合比率を、SbおよびBiの総重量を同じにして、Sbの重量比を0〜100重量%(Biの重量比を100重量%〜0重量%)にそれぞれ変化させた場合に得られた高抵抗側面層2の厚みの測定結果が示されている。
表1に示した高抵抗側面層2の厚みは、得られた高抵抗側面層2の断面をSEM観察することにより測定された。具体的には、高抵抗側面層部分の厚みを10箇所分、断面SEM観察にて測定し、10箇所分の厚みの平均値を表1に示した高抵抗側面層2の厚みとした。
また、表1には、高抵抗側面層2の厚みと併せて、SbとBiとの各混合比率および高抵抗側面層2の各厚みに対応するインパルス電流耐量[kA](インパルス耐量試験結果)が示されている。このインパルス電流耐量とは、高抵抗側面層2が得られた後、焼結体1の両端面に形成された電極3の各電極間にインパルス電流を印加した場合において、素子の閃絡が発生した時のインパルス電流値[kA]のことを意味する。したがって、このインパルス電流値[kA]が大きいほど、絶縁性能が優れていることを意味している。
ここで、焼成温度が900℃以上であり、Sbの重量比が0重量%(Biの重量比が100重量%)でなければ、高抵抗側面層2の1層目に、ZS+SP混相21が形成され、図2に示したような高抵抗側面層2が得られる。
また、表1から明らかなように、Sbの重量比が大きいほど(Biの重量比が小さいほど)、高抵抗側面層2の厚みが厚くなり、Sbの重量比が95重量%の場合には、高抵抗側面層2の厚みが最大となる。さらに、Sbの重量比が95重量%を越えて98重量%以上となった場合には、高抵抗側面層2の厚みが薄くなる。また、表1から明らかなように、高抵抗側面層2の厚みが厚いほど、インパルス電流耐量が大きいので、絶縁性能が高くなる。
このように、焼成温度が1050℃の場合には、粉体の状態で秤量したSbとBiとの混合について、Sbの重量比は、30重量%以上98重量%以下であることが好ましく、インパルス電流耐量として75kA以上が得られることを確認することができた。
一方、Sbの重量比が、30重量%未満であると、SP粒子を生成するために必要なSbの量が不足するので、結果として、高抵抗側面層2の厚みが薄くなってしまう。また、Sbの重量比が、98重量%を超えると、Biの量が不足するので、SP粒子の生成反応が十分に起こらなくなり、結果として、高抵抗側面層2の厚みが薄くなってしまうことを確認することができた。
なお、ここでは、焼成温度が1050℃の場合を例示したが、これに限定されず、焼成温度が900℃以上の他の温度においても、Sbの重量比は、30重量%以上98重量%以下であることが好ましい。
次に、高抵抗側面層2を製造する場合における焼成温度と、製造した高抵抗側面層2の特性について、表2を参照して説明する。表2は、焼成温度および高抵抗側面層2の厚みの関係を示している。なお、この場合において、SbとBiとの混合比率は、先の表1に示すように、高抵抗側面層2の厚みおよびインパルス電流耐量が最大となる条件(すなわち、Sbの重量比が95重量%、Biの重量比が5重量%)とした。
Figure 2014072207
表2には、焼成温度を、900℃〜1070℃の範囲にそれぞれ変化させた場合に得られた高抵抗側面層2の厚みの測定結果が示されている。表2に示した高抵抗側面層2の厚みは、先の表1と同様に、得られた高抵抗側面層2の断面をSEM観察することにより測定された。
ここで、表2から明らかなように、焼成温度が900℃以上1000℃以下の場合には、焼成温度が高いほど高抵抗側面層2の厚みが厚くなり、焼成温度が1000℃以上1070℃以下の場合には、高抵抗側面層の厚みが、ほぼ一定となる。
また、先の表1に示すように、インパルス電流耐量は、高抵抗側面層2の厚みに依存し、高抵抗側面層2の厚みが122μmの場合には、インパルス電流耐量120kAであった。さらに、焼成温度が1000℃以上1070℃以下の場合においても、各焼成温度における高抵抗側面層2の厚みが約120μm程度であり、同様のインパルス電流耐量が得られることを確認した。
このように、粉体の状態で秤量したSbとBiとの混合について、Sbの重量比は、Sbの重量比が95重量%の場合には、焼成温度について、1000℃以上1070℃以下であることが好ましいことを確認することができた。
また、焼成温度が1070℃以下であれば、1層目のZS+SP混相21が形成されるので、仮焼結体AからのCrの拡散をブロックすることができる。この結果、焼成温度が1070℃以下である場合にも、高抵抗側面層2の絶縁性能を十分に高くすることが可能となる。さらには、焼成温度が1070℃以下であるので、仮焼結体Aに含まれるZnO粒子の粒成長を抑制することができ、素子自体を高抵抗化することができる。
なお、Sbの重量比が95重量%以外の、先の表1に示した他の混合比率においても、同様の傾向が見られた。すなわち、先の表1に対応するそれぞれの混合比率において得られた高抵抗側面層2の厚みおよびインパルス電流耐量について、焼成温度が1000℃以上1070℃以下の場合には、同様の結果が得られた。
以上、一連の結果(表1および表2に対応)をまとめると、以下のことがいえる。
(1)焼成温度が900℃以上であり、Sbの重量比が0重量%(Biの重量比が100重量%)でなければ、高抵抗側面層2の1層目として、仮焼結体AからのCrの拡散をブロックする役割を果たすZS+SP混相21が形成される。
(2)高抵抗側面層2の厚みは、焼成温度およびSbとBiとの混合比率を変更することにより、任意に調整することができる。
(3)インパルス電流耐量は、高抵抗側面層2の厚みに依存する。
したがって、焼成温度およびSbとBiとの混合比率の各条件を変更すれば、所望の特性(インパルス電流耐量)を得ることができる。また、特に、絶縁性能が高い高抵抗側面層2を得るには、焼成温度が、1000℃以上1070℃以下であって、Sbの重量比が、30重量%以上98重量%以下であり、Biの重量比が2重量%以上70重量%以下であることが最も好ましい。
次に、本実施の形態1における高抵抗側面層2の詳細なメカニズムについて、仮焼結体Aの製造時に、組成物として、SiOが意図的に添加される場合(実施例)と、添加されない場合(比較例)とを比較しながら、先の図2および図3を参照して説明する。
図3は、本発明の実施の形態1において、仮焼結体Aの製造時に、組成物として、SiOが添加されない場合における高抵抗側面層2の構造断面を示した説明図である。なお、高抵抗側面層2の製造方法は、前述した通りである。また、それぞれの高抵抗側面層2を製造する場合の条件として、SbとBiとの混合比率において、Sbの重量比を95重量%、Biの重量比を5重量%として、さらに、焼成温度を1050℃とした。
この図3における高抵抗側面層2(比較例)は、焼結体1の側面を基準に、SP単相24(1層目)から形成される。また、この場合には、先の図2における高抵抗側面層2(実施例)と同様に、SP単相24の次の層として、混合相23が形成されている。
この比較例のように、仮焼結体Aの製造時に、組成物にSiOが添加されていない場合には、SiOが添加されている場合とは異なり、高抵抗側面層2の1層目として、ZS+SP混相21ではなく、SP単相24が形成される。
また、実施例および比較例において製造したそれぞれの高抵抗側面層2の特性について、表3を参照して説明する。表3は、実施例および比較例において製造したそれぞれの高抵抗側面層2を有するバリスタ素子のインパルス耐量試験測定結果を示している。
Figure 2014072207
このインパルス耐量試験では、実施例および比較例に対応するそれぞれの高抵抗側面層2が得られた後、焼結体1の両端面に形成された電極3の各電極間に印加するインパルス電流を10〜100kAの範囲に変化させる。表3には、各インパルス電流において、素子の閃絡が発生した(○)か、否(×)かの結果が示されている。
ここで、表3から明らかなように、比較例における高抵抗側面層2では、65kA以上のインパルス電流に耐えることができず閃絡したが、実施例のおける高抵抗側面層2では、65kAのインパルス電流に耐え、さらに、100kAのインパルス電流にも耐えることを確認することができた。
これは、比較例における高抵抗側面層2の1層目であるSP単相24に、Crが含まれていることが要因であると考えられる。すなわち、比較例における高抵抗側面層2には、仮焼結体AからのCrの拡散をブロックする役割を果たすZS+SP混相21が形成されないので、SP単相24にCrが含まれてしまう。したがって、比較例における高抵抗側面層2の絶縁性能が低下するので、素子が65kA以上のインパルス電流に耐えることができず、素子の閃絡が発生してしまう。
これに対して、実施例における高抵抗側面層2には、仮焼結体AからのCrの拡散をブロックする役割を果たすZS+SP混相21が形成されるので、SP単相24にCrがほとんど含まれない。したがって、実施例における高抵抗側面層2の絶縁性能が、比較例と比較して高いので、100kAのインパルス電流にも耐えることができ、素子の閃絡が発生しない。
また、Sbの重量比を95重量%、Biの重量比を5重量%以外の、他の混合比率、および1050℃以外の他の焼成温度の製造条件についても、同様に、仮焼結体Aの製造時に、組成物にSiOを添加する方が、高抵抗側面層2の絶縁性能が高いことを確認した。したがって、仮焼結体Aの製造時に、組成物にSiOを添加する場合としなかった場合との効果の違いが明らかになった。
このように、仮焼結体Aの製造時に、組成物にSiOを添加して、高抵抗側面層2を製造した場合には、SiOを添加しなかった場合とは異なり、高抵抗側面層2の1層目に、仮焼結体AからのCrの拡散をブロックする役割を果たすZS+SP混相21を形成することができる。したがって、絶縁性が高い特性を有する高抵抗側面層2が得られる。
以上のように、本発明の実施の形態1によれば、SbおよびBiの2成分が含まれるペーストを、SiOを含む仮焼結体の側面に塗布し、比較的低い温度(少なくとも、特許文献1で示されている1200℃よりも低い温度)で焼成することによって、高抵抗側面層を形成する。これにより、高抵抗側面層の1層目に、仮焼結体AからのCrの拡散をブロックする役割を果たすZS+SP混相が形成されるので、高抵抗側面層の絶縁性能を十分に高くすることができるとともに、比較的低温で焼成するので、仮焼結体に含まれるZnO粒子の粒成長が抑制され、素子自体を高抵抗化することができる。
1、1a、1b 焼結体、2、2a、2b 高抵抗側面層、3、3a、3b 電極、21 ZS+SP混相、22 ZS単相、23 混合相、24 SP単相。

Claims (4)

  1. ZnOを主成分とする焼結体と、前記焼結体の側面に高抵抗側面層が形成される電圧非直線抵抗体の製造方法であって、
    前記ZnOと、SiOが含まれる添加物とを混合した組成物を仮焼成することにより、前記SiOが含まれる仮焼結体を製造する第1ステップと、
    前記第1ステップにおいて製造した前記仮焼結体の側面に、SbおよびBiの2成分から成る混合物が含まれるペーストを塗布する第2ステップと、
    前記第2ステップにおいて前記ペーストを塗布した前記仮焼結体を、焼成することにより、前記焼結体および前記高抵抗側面層を製造する第3ステップと
    を備えることを特徴とする電圧非直線抵抗体の製造方法。
  2. 請求項1に記載の電圧非直線抵抗体の製造方法において、
    前記ペーストを塗布した前記仮焼結体を焼成する温度は、900℃以上、1070℃以下である
    ことを特徴とする電圧非直線抵抗体の製造方法。
  3. 請求項1または2に記載の電圧非直線抵抗体の製造方法において、
    前記SbおよびBiの2成分から成る混合物の混合比率は、前記Sbの重量比が30重量%以上、98重量%以下であり、前記Biの重量比が2重量%以上、70重量%以下であり、
    前記ペーストを塗布した前記仮焼結体を焼成する温度は、1000℃以上、1070℃以下である
    ことを特徴とする電圧非直線抵抗体の製造方法。
  4. 請求項1ないし3のいずれか1項に記載の電圧非直線抵抗体の製造方法により得られる電圧非直線抵抗体であって、
    前記高抵抗側面層は、前記焼結体の側面を基準に、ZnSiO粒子およびZnSb12粒子から成る混相、ZnSb12粒子から成る単相の順に形成されている
    ことを特徴とする電圧非直線抵抗体。
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