以下、本発明に係る構成を図1から図17に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。
本実施形態に係る画像形成装置は、入力画像情報に基づいて、互いに異なる一次色からなるトナー像である一次色トナー像を潜像担持体(感光体20)上に形成する作像手段(潜像書込ユニット21及び四つの画像形成ユニット18(Y,C,M,K))と、潜像担持体上に形成されたトナー像を直接または中間転写体(中間転写ベルト10)を介して記録媒体(記録紙P)に転写することによって、潜像担持体上に形成された一次色トナー像を重ねた多次色トナー像を記録媒体上に形成する転写手段(一次転写ローラ62、二次転写ローラ24等)と、記録媒体上に形成された多次色トナー像を測色して出力画像情報を取得する出力画像測色手段(制御用スキャナ900)と、出力画像の多次色の色情報を取得する色情報取得手段と(制御用スキャナ900)と、該色情報取得手段が取得した多次色の色情報に基づいて、多次色トナー像を構成する一次色トナー像の色情報のそれぞれの一次色の色情報を推定する色情報推定手段(メイン制御部500)と、該色情報推定手段によって推定された一次色の色情報と入力画像情報に基づいて、多次色トナー像を構成する一次色トナー像の濃度レベルを判定する濃度レベル判定手段(メイン制御部500)と、色情報推定手段によって推定された一次色の色情報の妥当性を検証する色情報検証手段(メイン制御部500)と、濃度レベル判定手段によって判定された一次色トナー像の濃度レベルおよび色情報検証手段によって検証された妥当性に基づいて一次色トナー像が潜像担持体上に形成される作像条件を補正する作像条件制御手段(メイン制御部500)と、を有するものである。なお、括弧内は実施形態での符号、適用例を示す。
以下、本発明を適用したカラー画像形成装置の一実施形態として、電子写真方式のカラー複写機(以下、単に複写機600という)について説明する。
まず、複写機600の基本的な構成について説明する。図1は、本実施形態に係る複写機600を示す概略構成図である。複写機600は、画像形成を行うプリンタ部100と、プリンタ部100に対して記録媒体である記録紙Pを供給する給紙装置200と、プリンタ部100の上に搭載されたスキャナ300と、このスキャナ300の上に搭載された原稿自動搬送装置(以下、ADF400という)とを備えている。
プリンタ部100は、その筐体外に、記録紙Pを手差し給紙する手差しトレイ6、プリンタ部100の筺体から排出された画像形成済みの記録紙Pをスタックするための排紙トレイ7などを具備する。
複写機600において、原稿のコピーをとる場合、まず、ADF400の原稿台30に綴じられていない原稿の束をセットする。綴じられている原稿の場合には、それをADF400にセットする代わりに、スキャナ300のコンタクトガラス31上にセットする。
この際、ADF400を開いてコンタクトガラス31を露出させ、その上に原稿を置いた後、ADF400を閉じてそれで原稿を押さえる。その後、ユーザがスタートスイッチ(図示せず)を押すと、コピー動作がスタートし、ADF400に原稿をセットしたときには、原稿がコンタクトガラス31の左側に設けられた自動読取部401に自動で搬送され、自動読取部401を通過した原稿は原稿排紙トレイ30aへと搬送される。
コピー動作がスタートすると、コンタクトガラス31上に原稿をセットしたときには、スキャナ300が第一走行体33を駆動し、第一走行体33上の光源から発した光をコンタクトガラス31上の原稿面で反射させる。ADF400に原稿をセットしたときには、スキャナ300は第一走行体33を自動読取部401の下方で停止させた状態で、第一走行体33上の光源から発した光を、自動読取部401を通過する原稿の原稿面で反射させる。
スキャナ300は、原稿面で反射させた反射光を第二走行体34のミラーで反射し、結像レンズ35を通じて読取センサ36に案内する。このようにして原稿の画像情報を読み取る。得られた画像情報は、プリンタ部100に送られる。プリンタ部100は、スキャナ300による原稿読み取りで得られた画像情報に基づいて、画像をプリントする。複写機600のプリンタ部100は、スキャナ300による原稿読み取りで得られた画像情報の他、パーソナルコンピュータ等の外部装置から送られてきた画像情報に基づいて画像を形成することも可能である。
給紙装置200は、記録紙Pを収納する複数の給紙カセット44、これらの給紙カセット44に収納された記録紙Pを一枚ずつ送り出す給紙ローラ42及び分離ローラ45、送り出された記録紙Pを給紙路46に沿って搬送する搬送ローラ47などから構成されている。給紙路46は、プリンタ部100の搬送路48に接続している。ユーザによってスタートスイッチ(図示せず)が押されたり、外部装置から画像情報が送られたりすると、給紙装置200では、ユーザが選択した記録紙Pを収容する給紙カセット44に配置された給紙ローラ42が回転し、給紙カセット44の1つから記録紙Pが送り出される。送り出された記録紙Pは、分離ローラ45で1枚に分離して給紙路46に入り込み、搬送ローラ47によりプリンタ部100内の搬送路48まで搬送される。
図2は、プリンタ部100の筐体内の要部を拡大して示す拡大構成図である。プリンタ部100には、中間転写体としての無端状の中間転写ベルト10が設けられている。中間転写ベルト10の基材としては、ベルト伸びによる位置ずれを抑制することが可能な、機械的強度に非常に優れた材料であるPI(ポリイミド)を例示することができる。中間転写ベルト10の基材中には、温湿度環境に依存せず常に安定した転写性能が得られるように、抵抗調整剤としてカーボンを分散させている。そのため、中間転写ベルト10は黒色を呈している。コストダウンを図るため、カーボンを分散しないPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を中間転写ベルト10の基材の材料として採用することも可能である。
中間転写ベルト10は、ループ内側に配設された第一支持ローラ14、第二支持ローラ15、第三支持ローラ16などの複数の張架部材により、側方から見た形状が上部の一辺が略水平な三角形の形状となる姿勢で張架されている。以下、三角形の上部の略水平な一辺を形成する張架面を水平張架面という。中間転写ベルト10は、三つの支持ローラ(14、15、16)における少なくとも何れか1つが回転駆動することにより、図1及び図2中の時計回り方向(図中の矢印A方向)に無端移動する。
中間転写ベルト10の上方には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)のトナー像をそれぞれ個別に形成するための四つの画像形成ユニット18(Y,C,M,K)が中間転写ベルト10の水平張架面に沿って並ぶように配設されている。これら画像形成ユニット18(Y,C,M,K)の更に上方には、図1に示したように、潜像書込ユニット21が配設されている。
この潜像書込ユニット21は、スキャナ300による原稿読み取りで得られた画像情報、あるいは、外部装置から送られてくる画像情報を、自らの書込制御部で受け取る。そして、その画像情報に基づいて、Y、C、M、K用の半導体レーザー(図示せず)をそれぞれ駆動してY、C、M、K用の書込光を生成する。そして、それら書込光により、画像形成ユニット18(Y,C,M,K)の感光体20(Y,C,M,K)を光走査して、感光体20(Y,C,M,K)に静電潜像を書き込む。なお、書込光の光源は、レーザー半導体に限られるものではなく、LEDなどを採用してもよい。
図3は、4つの画像形成ユニット18(Y,C,M,K)のうち、互いに隣り合う2つの画像形成ユニット18を示す拡大構成図である。図3においては、Y、M、C、Kの符号を省略している。図3に示すように、画像形成ユニット18は、ドラム状の感光体20の周囲に、帯電装置60、現像装置61、感光体クリーニング装置63、除電装置64などを具備している。
帯電装置60は、図3中の反時計回り方向に回転駆動される感光体20の表面をトナーの帯電極性と同極性に一様に帯電させるものである。図示の例では、感光体20に対して非接触で近接させた帯電ローラに対して帯電バイアスを印加して、感光体20と帯電ローラとの間に放電を生じさせることで、感光体20を一様帯電させる方式のものを示している。このような帯電ローラ方式のものに代えて、非接触のスコロトロンチャージャーなどを採用した非接触帯電方式のものを採用してもよい。
図4は、現像装置61のケーシングの上部を取り除いた状態の上面図である。現像装置61は、磁性キャリアと非磁性トナーとを含有する現像剤を用いて感光体20の静電潜像を現像するものである。この現像装置61は、攪拌部66と現像部67とに大別される。
攪拌部66は、互いに平行配設された2本の搬送スクリュ68を具備している。これら二本の搬送スクリュ68は、仕切り壁69によってそれぞれ個別に仕切られた仕切り空間に設けられている。これら仕切り空間の間に介在している仕切り壁69は、スクリュ長手方向の両端部に切り欠きを有している。
この切り欠きにより、二本の搬送スクリュ68をそれぞれ個別に収容している二つの仕切り空間は、スクリュ長手方向の両端部でそれぞれ連通している。これら2つの仕切り空間のうち、後述する現像部67に隣接している方の仕切り空間は、現像部67内の現像スリーブ65に現像剤を供給するための供給室である。
また、他方の仕切り空間は、スクリュ長手方向の一端側で供給室から受け取った現像剤を、他端側まで搬送して供給室に返送する返送室である。供給室内の搬送スクリュ68と、返送室内の搬送スクリュ68とは、互いに回転駆動に伴って正反対の方向に現像剤を搬送するようになっており、スクリュ長手方向の端部付近まで搬送した現像剤を前述の切り欠きに通して他方の室内に送り込む。
これにより、図4に矢印で示すように、現像装置61内の現像剤は、供給室と返送室との間で循環搬送される。なお、図3に示したように、攪拌部66における供給室の底には、現像剤のトナー濃度を検知するトナー濃度センサ71が取り付けられている。
また、図4に示すように、供給室における搬送方向下流側端部と返送室における搬送方向上流側端部とを連通する切り欠きの上方には、トナー補給口61aが形成されている。
現像部67は、回転駆動可能な非磁性の筒状部材からなる現像スリーブ65を収容している。そして、この現像スリーブ65の内部には、周方向に並ぶ複数の磁極を有するマグネットローラが、現像スリーブ65に連れ回らないように固定されている。上述した攪拌部66の供給室内では、搬送スクリュ68の回転駆動に伴って、現像剤が図4に矢印Bで示した方向に搬送されながら、トナー濃度センサ71によってトナー濃度を検知される。
そして、その一部が、マグネットローラの磁極が発する磁力によって現像スリーブ65に汲み上げられる。現像スリーブ65の表面上に汲み上げられた現像剤は、現像スリーブ65の回転に伴って、現像スリーブ65と感光体20とが対向する現像領域に向かって搬送される。
このとき、現像スリーブ65の表面上の現像剤は、現像領域に到達する前に、ドクターブレード73によって現像スリーブ65の表面上での層厚が規制される。この規制の後に現像領域に到達した現像剤は、トナーの帯電極性と同極性の現像バイアスが印加される現像スリーブ65と、感光体20の静電潜像との間の電位差である現像ポテンシャルの作用により、トナー粒子を磁性キャリアから離脱させて静電潜像に転移させる。これにより、感光体20上の静電潜像が現像される。
現像領域で感光体20に転移されなかったトナー粒子を含む現像剤は、現像スリーブ65の回転に伴って現像領域を通過し、マグネットローラにおける反発磁極の位置まで搬送されると、現像スリーブ65表面から離脱して攪拌部66の供給室内に戻される。供給室内では、現像に寄与した現像剤が戻されるのに伴って現像剤のトナー濃度が低下すると、それがトナー濃度センサ71によって検知されて、トナー補給口61aから適量のトナーが補給される。このようなトナー濃度センサ71の検知結果に基づいたトナー補給制御は1枚通紙毎に実行される。
中間転写ベルト10のループ内側には、四つの感光体20との間に中間転写ベルト10をそれぞれ挟み込む四つの一次転写ローラ62が配設されている。それぞれの一次転写ローラ62が中間転写ベルト10のおもて面をそれぞれの感光体20に向けて押圧することで、ベルトおもて面と感光体20とが当接する四つの一次転写ニップが形成されている。それぞれの一次転写ローラ62には、トナーの帯電極性とは逆極性の一次転写バイアスが印加される。これにより、一次転写ニップ内では、トナーが感光体20側から一次転写ローラ62側に向かう一次転写電界が形成され、感光体20の表面上のトナー像が中間転写ベルト10のおもて面に一次転写される。感光体20上のトナー像を中間転写ベルト10のおもて面に一次転写する一次転写手段として、一次転写ローラ62の代わりに、転写ブラシや、非接触のコロナチャージャ等を採用しても良い。
一次転写ニップを通過した後の感光体20の表面には、中間転写ベルト10に一次転写されなかった転写残トナーが付着している。この転写残トナーは、感光体クリーニング装置63によって感光体20の表面から除去される。感光体クリーニング装置63は、ポリウレタンゴム製のクリーニングブレード75を片持ち支持しており、その自由端を感光体20の表面に突きあてて、その表面上の転写残トナーを掻き取る。また、感光体20に接触しながら回転する導電性のファーブラシ76によっても、感光体20の表面上の転写残トナーを除去している。クリーニングブレード75やファーブラシ76によって感光体20上から除去されたトナーは、感光体クリーニング装置63の内部に収容される。
感光体クリーニング装置63によって転写残トナーが除去された感光体20の表面は、除電装置64の光照射によって除電される。これにより、感光体20の表面電位が初期化される。その後、帯電装置60によってトナーの帯電極性と同じ極性に一様帯電させた後、その表面電位が電位センサ320によって検知される。
本実施形態の感光体20は、直径60[mm]のドラム状部材であり、282[mm/sec]の線速で図中反時計回り方向に回転駆動される。また、本実施形態の現像スリーブ65は、直径25[mm]の筒状部材であり、564[mm/sec]の線速で回転駆動される。本実施形態の現像装置61内において、現像領域に供給される現像剤中トナーの帯電量は、およそ10〜30[−μC/g]の範囲である。また、感光体20の感光層の厚みは30[μm]であり、潜像書込ユニット21の光学系のビームスポット径は50×60[μm]であり、その光量は約0.47[mW]である。感光体20の表面は帯電装置60によって例えば700[−V]に一様に帯電され、潜像書込ユニット21によってレーザーが照射された静電潜像部分の電位は120[−V]となる。現像スリーブ65に印加される現像バイアスは470[−V]であり、これにより、感光体20の静電潜像上のトナーには350[−V]の現像ポテンシャルが作用する。
以上の構成の画像形成ユニット18において、感光体20は回転駆動するのに伴って、まず帯電装置60によって一様に帯電させた後、潜像書込ユニット21による光走査を受けて静電潜像を担持する。その光走査は、スキャナ300により読み取った画像情報、あるいは外部装置から送られてくる画像情報に基づいて行われる。
感光体20上の静電潜像は現像装置61によって現像されてトナー像になる。このトナー像は、感光体20と一次転写ローラ62との間に形成される一次転写電界によって中間転写ベルト10上に一次転写される。一次転写後に感光体20の表面に残留した転写残トナーは、感光体クリーニング装置63により除去され、その後、感光体20の表面は除電装置64により除電されて、次の画像形成に供される。
図2に示したように、中間転写ベルト10のループ外側には二次転写ローラ24が配設されており、これはベルトループ内側の第三支持ローラ16との間に中間転写ベルト10を挟み込んでいる。第三支持ローラ16が中間転写ベルト10を二次転写ローラ24に向けて押圧することで、ベルトのおもて面と二次転写ローラ24とが当接する二次転写ニップが形成されている。
ユーザによってスタートスイッチ(図示せず)が押されると、駆動モータ(図示せず)が駆動し、三つの支持ローラ(14、15、16)の内の1つが回転駆動して中間転写ベルト10が回転駆動する。これと同時に、画像形成ユニット18(Y,C,M,K)の感光体(Y,C,M,K)も回転駆動する。
その後、スキャナ300の読取センサ36で読み取った画像情報に基づいて、潜像書込ユニット21から、画像形成ユニット18(Y,C,M,K)の感光体20(Y,C,M,K)に書込光がそれぞれ照射される。これにより、感光体20(Y,C,M,K)上には、それぞれ静電潜像が形成され、現像装置61(Y,C,M,K)によって顕像化される。これにより、感光体20(Y,C,M,K)上には、Y、C、M、Kトナー像が形成される。このようにして形成されたY、C、M、Kトナー像は、Y、C、M、K用の一次転写ニップで中間転写ベルト10上に重ね合わせて一次転写される。これにより、中間転写ベルト10上には、各色トナー像が重なり合った四色重ね合わせトナー像が形成される。
上述した給紙装置200から送り出された記録紙Pは、プリンタ部100の搬送路48内に進入した後、レジストローラ対49に突き当たったところで止められる。レジストローラ対49は、搬送路48内で受け取った記録紙Pを、中間転写ベルト10上の四色重ね合わせトナー像に同期させ得るタイミングで二次転写ニップに送り出す。
二次転写ニップに送りこまれた記録紙P上には、二次転写バイアスが印加された二次転写ローラ24と第三支持ローラ16との間に形成される二次転写電界の作用により、記録紙P上に一括二次転写される。そして、四色重ね合わせトナー像は、記録紙Pの白色と相まってフルカラートナー像になる。
その後、記録紙Pは定着装置25まで搬送され、定着装置25において加熱や加圧がなされることで、フルカラートナー像の定着処理が施される。定着装置25を通過した記録紙Pの搬送方向は、不図示の切替爪により、図1に示す用紙反転装置93に向かう方向と、排紙ローラ対56に向かう方向とで切り替えられる。記録紙Pが用紙反転装置93に送りこまれた場合には、上下の面が反転された後、再びレジストローラ対49に送られて、もう一方の面にもフルカラー画像が形成される。また、排紙ローラ対56に送りこまれた場合には、機外の排紙トレイ7上にスタックされる。
中間転写ベルト10上の四色重ね合わせトナー像を記録紙Pに二次転写する二次転写手段としては、二次転写ローラ24の他に、転写チャージャを採用しても良い。本実施形態の二次転写ローラ24には、二次転写ローラ24に付着したトナーをクリーニングするローラクリーニング部91が当接している。
中間転写ベルト10の周方向における全域のうち、第二支持ローラ15に対する掛け回し箇所には、ベルトクリーニング装置17が当接している。このベルトクリーニング装置17は、二次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト10に付着している転写残トナーのクリーニングを行う。
プリンタ部100には、手差しトレイ6から搬送路48へ合流する手差し給紙路41が設けられている。この手差し給紙路41の上流側には、手差しトレイ6にセットされた記録紙Pを一枚ずつ給紙するための手差し給紙ローラ601及び手差し分離ローラ602が設けられている。
図1に示すように、排紙トレイ7の上方には、詳細は後述する制御用RGBスキャナ900(以降では制御用スキャナ900と呼ぶ)が配設されている。複写機600は、制御用スキャナ900により、排紙トレイ7上に排出された記録紙Pに形成された画像の色を測色可能となっている。制御用スキャナ900は、記録紙P上のRGB値を検出するものである。そして、最小サイズの記録紙Pが通過し得る領域における主走査方向の手前側端部を0[mm]としたときに、主走査方向における0[mm]から210[mm]までの間の範囲で、10[mm]毎に22箇所でRGB値を検出可能な構成となっている。
さらに、制御用スキャナ900は、副走査方向(記録紙Pの搬送方向)について10[mm]毎に区切って検出するものであり、分光反射率分布を検出する主走査方向の22箇所では、10[mm]×10[mm]の正方形の領域の測色を行う。そして、検出されるRGB値は、この正方形の領域の測色値の平均値となる。
また、図1及び図2に示すように、中間転写ベルト10のループ外側においては、光学センサユニット310が第一支持ローラ14に対するベルト掛け回し箇所に対して所定の間隙を介して対向するように配設されている。
図5は、中間転写ベルト10の水平張架面と光学センサユニット310とを示す上面図である。光学センサユニット310は、図5に示すように、ベルト幅方向(図1及び図2中の手前−奥方向、図5中の上下方向)に並ぶ第一光学センサ311と第二光学センサ312とを有している。第二光学センサ312は、第一光学センサ311よりもベルト中央寄りの位置に配設されている。このベルト中央寄りの位置は、現像装置61の現像部67内の現像スリーブ65に現像剤を供給する供給室現像領域における搬送スクリュ68による現像剤搬送方向(図4中の矢印B方向)について、より上流側の位置に相当する。
現像装置61の構成上、供給室現像領域の現像剤搬送方向における上流側の方が下流側よりも画像濃度が高くなる傾向にある。これは、トナーの帯電量には分布があり、比較的帯電量の低いトナーは上流側で現像され、さらに、上流側の方が下流側よりも現像剤の嵩が高くなるためである。
つまり、同じ条件で作像したパッチ画像であっても、現像スリーブ65の主走査方向位置によってその付着量は異なることになる。第二光学センサ312を第一光学センサ311よりもベルト中央寄りの位置に配設しているのは、制御すべき主走査方向の場所をどこに設定するかが重要となるためである。
例えば、供給室現像領域の現像剤搬送方向の上流にセンサを配設した場合には、濃いパッチを制御することになり、その他の場所(測定点よりも下流)では測定点よりも現像濃度は薄くなる。電子写真作像システムで比較的発生しやすい不具合として、現像濃度が高すぎて(トナーの帯電量が低すぎて)トナーが機内に飛散してしまい、機内を汚したり、現像したくない場所にトナーが付着してしまったりする不具合がある。
この不具合を防ぐためには、不具合の発生しやすい上流で測定を行っておく方が好ましい。しかし、上流側のトナーは、現像剤の撹拌が十分ではなく、帯電量分布の裾野が広い状態であって、弱帯電トナーがいる可能性が高いため、帯電量が安定してないことが多く、測定上不安定な状態である可能性が高い。このため、パッチ画像の測定位置としては、トナーの帯電量が比較的安定している下流側の領域の中でできるだけ上流で測定することが望ましい。ブラックトナーは他のカラートナーよりも安定したトナーであるため、パッチ画像の測定位置としてより適した位置であるベルト中央寄りの位置にカラーのパッチ画像を測定する第二光学センサ312を配設している。
図6は、第一光学センサ311を示す拡大構成図であり、図7は、第二光学センサ312を示す拡大構成図である。
第一光学センサ311は、後述する付着量安定化処理において中間転写ベルト10上に形成されるKトナーパッチ像Pkに対する単位面積あたりのトナー付着量を検知するものである。図6に示すように、第一光学センサ311は、中間転写ベルト10に向けて光を発射するLEDからなる第一センサ光源311aと、中間転写ベルト10上で正反射した正反射光を受光する第一センサ正反射受光素子311bとを具備している。
第二光学センサ312は、後述する付着量安定化処理において中間転写ベルト10上に形成されるY、C、Mトナーパッチ像Py、Pc、Pmに対する単位面積あたりのトナー付着量をそれぞれ検知するものである。図7に示すように、第二光学センサ312は、中間転写ベルト10に向けて光を発射するLEDからなる第二センサ光源312aと、中間転写ベルト10上で正反射した正反射光を受光する第二センサ正反射受光素子312bと、中間転写ベルト10上で拡散反射した拡散反射光を受光する第二センサ拡散反射受光素子312cとを具備している。
第一センサ光源311a及び第二センサ光源312aとしては、何れも、ピーク発光波長λp=950[nm]のGaAs赤外発光ダイオードを使用している。また、第一センサ正反射受光素子311b、第二センサ正反射受光素子312b及び第二センサ拡散反射受光素子312cに用いる受光素子としては、ピーク受光波長800[nm]のSiフォトトランジスタを使用している。また、各光学センサと検知対象面である中間転写ベルト10との距離(検出距離)は5[mm]となるように配設されている。光学センサユニット310は、これら光学センサの他、センサメモリ313も配設されている。
図8は、複写機600における各部の電気的な接続を示すブロック図である。複写機600は、メイン制御部500を有しており、このメイン制御部500が各部を駆動制御する。メイン制御部500は、各種演算処理や各部の駆動制御を実行するCPU501にバスライン502を介して、コンピュータプログラム等固定データを予め記憶するROM503と各種データを書き換え自在に記憶するワークエリア等として機能するRAM504とが接続されて構成されている。
メイン制御部500には、プリンタ部100の各部、給紙装置200、スキャナ300、ADF400が接続されている。ここで、プリンタ部100の光学センサユニット310及び制御用スキャナ900は、検出した情報をメイン制御部500に送り出す。
メイン制御部500は、次のような付着量安定化処理を実施できる。すなわち、まず、図5に示したように、中間転写ベルト10上に、Y、C、M、Kトナーパッチ像Py、Pc、Pm、Pkを形成する。そして、付着量検知手段としての光学センサユニット310により、それらトナーパッチ像が光学センサの直下を通過する際の光学センサからの出力に基づいて、Y、C、M、Kトナーパッチ像Py、Pc、Pm、Pkに対するY、C、M、Kトナーの単位面積あたりの付着量を求める。
そして、Yトナー付着量の算出値と、Yトナー付着量目標値とを比較し、前者が後者よりも小さい場合には、トナー補給制御で用いるYトナー濃度制御目標値をより大きくする一方で、前者が後者よりも大きい場合には、Yトナー濃度制御目標値をより小さくする。
同様にして、C、M、Kトナー付着量の算出値と、C、M、Kトナー付着量目標値との比較結果に基づいて、C、M、Kトナー濃度制御目標値を補正する。このような付着量安定化処理により、Y、C、M、Kトナー像に対する単位面積あたりのトナー付着量を安定化させることで、フルカラー画像の色調を安定化させることができる。
しかしながら、上述した付着量安定化処理では、テスト用トナー像を形成するためにトナーを使用せざるを得ないため、結果的に印刷一枚あたりの単価を上昇させてしまう。さらに、テスト用トナー像を形成するときには、ユーザの操作によって入力される画像情報に基づいて形成されるユーザ画像の形成を行うことができない。このため、生産性の低下を抑えるために付着量安定化処理を高い頻度で実施することはできない。
テスト用トナー像を形成することなく、出力画像の色安定化を図る制御として、中間転写ベルト10上に形成されたフルカラーのユーザ画像から出力画像情報を取得し、作像に用いた画像情報と比較し、ユーザ画像の画像情報から得られる値が作像に用いた作像用画像情報から得られる目標値に近づくように作像条件を補正する制御が考えられる。
しかし、中間転写ベルト10上のトナー像は未定着トナー像であるため、最終的にプリンタ部100から出力される画像の色情報を得ることはできない。また、中間転写ベルト10上のフルカラートナー像は、未定着の一次色トナー像が重ねられただけの状態であるため、トナー付着量に関する情報を得ることは可能であるが、最終的に出力される多次色のカラー画像の色情報、例えばL*a*b*値を得ることは不可能である。
このように、中間転写ベルト10上ではトナーの付着量の情報しか検出できないため、中間転写ベルト10上のトナー像から得られる情報に基づいて、記録紙P上に定着処理されるトナー像の色(例えばL*a*b*値)を任意の目標値に安定化することは困難である。
このように、中間転写ベルト10上のトナー像から得られる情報に基づいて、記録紙P上に定着処理されるトナー像の色を安定化することが困難という課題は、中間転写ベルト10上のトナー像がユーザ画像である構成に限るものではない。同様の課題は、上述した付着量安定化処理のように、テスト用トナー像を形成する構成であっても生じる。
このような課題を解決し得る方法として、生成したトナー像の定着前の状態から出力画像情報を取得するのではなく、記録紙P上に定着されたトナー像から出力画像情報を取得する方法がある。このように記録紙P上に定着されたトナー像であれば測色が可能であり、測色した結果を制御で使用することができる。
記録紙P上に定着されたトナー像を測色する方法としては、大きく二つの方式があり、一つはパッチ画像を記録紙P上に形成して測色する方式であり、もう一つはユーザ画像を記録紙P上に形成して測色する方式である。
前者の方式は、ユーザ画像とは別にパッチ画像を印刷する必要があるため、上述した付着量安定化処理と同様に、トナーイールドの低下や生産性の低下に繋がる、というデメリットがある。さらに、ユーザ画像以外の画像を記録紙P上に形成するため、無駄紙の発生することや、パッチ画像が形成された記録紙Pとユーザ画像が形成された記録紙Pとを仕分ける機構が必要となること、というデメリットがある。しかし、記録紙P上に制御上測色すべき色を含む任意のトナー像を形成でき、制御に用いる測色が容易になるというメリットがある。
一方、後者の方式は上述した前者のデメリットは存在しないが、制御上測色すべき色を含む任意のトナー像を形成できないため、制御上測色すべき色を測色できるかどうかはユーザ画像に強く依存する。
実際にはコスト増加、生産性の低下を抑えることは非常に重要であるため、パッチ画像のみを利用する方法は現実的ではなく、ユーザ画像を併用するかユーザ画像のみを利用する方式をとらざるを得ない。
そして、本発明の構成を適用した画像形成装置である複写機600は、記録紙Pに形成された多次色のユーザ画像の測色結果から一次色の現像濃度を予測することで、極力パッチ画像を出力することなく出力画像の色安定化を図るものである。以下、複写機600における多次色のユーザ画像の測色結果に基づいた出力画像の色安定化を図る制御を色安定化処理と呼ぶ。
次に、本実施形態に係る複写機600の特徴的な構成について説明する。複写機600では、色安定化処理において、出力画像測色手段および色情報取得手段である制御用スキャナ900が取得した多次色のユーザ画像の色情報に基づいて、メイン制御部500が色情報推定手段として、多次色トナー像を構成するY,M,C,Kの一次色トナー像のそれぞれの一次色の色情報を推定する。
また、メイン制御部500が濃度レベル判定手段として、推定された一次色の色情報と入力画像情報に基づいて、多次色トナー像を構成する一次色トナー像の濃度レベルを判定するとともに、色情報検証手段として、推定された一次色の色情報の妥当性を検証する。
さらに、メイン制御部500は作像条件制御手段として、推定したY,M,C,Kそれぞれの一次色の色情報、一次色トナー像の濃度レベル、一次色の色情報の妥当性に基づいて一次色トナー像を作像する各画像形成ユニット18(Y,C,M,K)や潜像書込ユニット21における作像条件の制御パラメータを補正する。ここで、補正する制御パラメータとしては、現像装置61内のトナー濃度の制御目標値、現像バイアス、潜像書込ユニット21が感光体20表面に照射する書込光の強度などがある。
以下、複写機600における色安定化処理について、詳述する。
図9は、複写機600で実行される色安定化処理のフローチャートである。色安定化処理において、メイン制御部500は、まず、入力画像情報として、外部装置から送られてくる画像情報、あるいはスキャナ300で得た画像情報を取得する。この入力画像情報は、画像を構成する、マトリクス状に並ぶ複数の画素についてそれぞれR(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)の単色成分の明度を表した画素値を具備するものである。メイン制御部500は、この入力画像情報を、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(黒)の単色成分の明度を表した画素値を具備する作像用画像情報に変換する(S1)。
作像用画像情報に変換した後は、次の二つの処理を同時に行う。一つは、印刷処理として、作像処理(S2)及び転写処理(S3)とを実行し、他の一つは、測色領域決定処理(S4)として、画像領域における制御用スキャナ900で測色を行う領域を決定する。
作像処理(S2)としては、作像用画像情報に基づいて、上述したように、四つの画像形成ユニット18(Y,C,M,K)それぞれの感光体20(Y,C,M,K)上に一次色のトナー像を作像し、一次色トナー像を中間転写ベルト10上で重ねることで多次色トナー像を作像する。また、転写処理(S3)としては、上述したように中間転写ベルト10上に形成された多次色トナー像を二次転写ニップで記録紙P上に転写する。その後、定着装置25で多次色トナー像が定着された記録紙Pは排紙トレイ7に向かって搬送される。
一方、測色領域決定処理(S4)として、メイン制御部500は測色領域決定手段として、作像用画像情報で示される画像の全領域のうちどの領域を、測色対象となる測色領域にするのかを決定する。
印刷処理(S2及びS3)と測色領域決定処理(S4)とが実行された後、測色処理(S5)が実行される。測色処理(S5)では、制御用スキャナ900の下方を通過する記録紙P上に多次色トナー像の全画像領域のうち測色領域決定処理(S4)で決定された測色領域に対応する領域を測色する。
本実施形態の複写機600では、全画像領域の一部の領域を測色領域として、測色領域の測色、及び、測色結果の出力画像情報と作像用画像情報と比較する演算を行っている。このように全画像領域の一部の領域を測色領域として画像情報同士の比較を行うものに限らず、可能であれば、画像領域全体を幾つかの測色領域に分け、一部ではなく、画像領域全体について測色と画像情報同士の比較とを行っても良い。
しかし、画像領域全体について測色と画像情報同士の比較とを行うと、処理する情報量が非常に多くなり、処理速度が高速なCPUを備えていないと、装置の生産性が低下するが、CPUの高速化はコスト高に繋がる。このため、本実施形態では複写機600では、全画像領域の一部の領域を測色領域として、測色領域について測色と画像情報同士の比較とを行っている。
また、測色領域としては、領域内における色合いの変化ができるだけ少ない(色の平坦度が高い)領域であることが、精度の良い測色を行うときに好ましい。よって、メイン制御部500は、作像用画像情報に基づいて色の平坦度が高く測色に適した領域を探索する処理を行っている。
この探索の後、プリンタ部100によってその画像を形成した記録紙Pを排紙トレイ7上に排紙すると、制御用スキャナ900によって、測色領域の測色を行う。その後、測色結果から得られる色情報と、作像用画像情報から得られる測色領域の色情報と比較する。
測色領域の探索については、次のようにして行う。すなわち、作像用画像情報によって表される画素マトリクスの所定位置にある画素を注目画素とし、その注目画素を中心とする所定サイズの領域を部分領域として抽出する。例えば、初回の抽出においては、画素マトリクスにおける左上から51列目で且つ51行目の画素を注目画素とし、この注目画素を中心とする101画素×101画素の矩形領域(約4[mm]角の領域)を部分領域として抽出する。そして、抽出した部分領域における各画素の画素値(C、M、Y、K)を参照しながら、その部分領域全体としての色合いの平坦さを示す平坦度を算出する。平坦度としては、様々な算出法によって求められたものを用いることが可能である。
平坦度の第一例としては、次のような算出法によって求められたものを挙げることができる。すなわち、まず、C、M、Y、Kについてそれぞれ、各画素の分散を求める。次いで、その分散の和に負の符号をつけたものを部分領域内の平坦度として求める。
平坦度の第二例として、分散共分散行列の行列式を用いて求められるものを挙げることができる。具体的には、C、M、Y、Kについてそれぞれ、部分領域内の各画素における分散と共分散を求める。次いで、分散を対角成分に、共分散を非対角成分に配置した4×4の分散共分散行列を構築し、その行列式を計算する。そして、行列式の値に負の符号を付けたものを平坦度として求めてもよい。分散共分散行列の行列式を用いることで、CMYK空間での分布の広がりを評価することができるからである。先に説明した第一例の平坦度に比べて、異なる成分間の色の広がりも評価することができる点が優れている。
また、平坦度の第三例として、色の周波数特性を利用したものを挙げることができる。具体的には、部分領域内の各画素値を用いてフーリエ変換を行い、特定周波数のフーリエ係数の絶対値の二乗の和を求める。この和に負の符号を付けて平坦度とする。特定周波数については複数の周波数を用いることができる。第一例の平坦度では、中間調処理された画像に対しては中間調処理のパターンの影響を受けて、平坦である領域を識別できないケースがある。これに対し、第三例の平坦度では、特定周波数のフーリエ係数の絶対値の二乗の和を用いることで、中間調処理の影響を排した平坦度を算出することができる。
平坦度は、これまで説明した第一例〜第三例のものに限られるものではなく、公知の平坦度算出技術を用いることが可能である。
抽出した部分領域の平坦度を求めると、次に、全ての部分領域を抽出したか否か(画像の全領域について部分領域の抽出が完了したか否か)、を判断する。そして、まだ抽出していない部分領域があると判断した場合には、注目画素の位置を右方向に1画素分だけずらして、左上から52列目、51行目の画素を注目画素とし、それを中心とする101画素×101画素の矩形領域を部分領域として抽出する。そして、同様にして、抽出した部分領域の色の平坦度を算出する。以降、3、4、5・・・n個目の部分領域の抽出の際に、それぞれ注目画素の位置を右方向に1画素分だけずらしていく。そして、注目画素の列方向の位置をマトリクスの右端から左に向けて51番目の位置までずらした後は、注目画素の列方向の位置をマトリクスの左端から右に向けて51番目の位置まで戻すとともに、行方向の位置を1画素分だけ下方向にずらす。その後、注目画素の位置を1画素分ずつ右にずらす処理を繰り返す。以上のようにして、注目画素の位置をラスタ走査のように順次ずらしていって、画像の全領域を網羅する。
画像の全領域について部分領域の抽出する方法としては、上述したように注目画素を1画素分ずつずらす方法に限らず、抽出した部分領域同士の縁部を互いに重ねないように各部分領域を抽出してもよい。例えば、51列目、51行目の注目画素を中心とする101画素×101画素の大きさの部分領域を抽出した後には、152列目、51行目の注目画素を中心とする101画素×101画素の大きさの部分領域を抽出するのである。
メイン制御部500では、画像の全領域からの部分領域の抽出や平坦度の算出を行うと、全ての部分領域の中から平坦度の最も優れたものを特定し、その平坦度について、予め定められた所定の基準平坦度よりも優れているか否かを判定する。そして、優れている場合には、その部分領域を測色に適した測色領域とする。一方、特定された部分領域の平坦度が所定の基準平坦度よりも劣っている場合には、そのとき出力されるユーザ画像には、測色に適した測色領域はない、と判断する。
画像情報に基づいて測色に適した測色領域が見つからない場合には、上述した従来から公知の付着量安定化処理を実施する。この付着量安定化処理は、多次色の出力を本来の色に精度良く合わせることはできないが、本来の色から少しずれた値で安定化させることが可能であるので、その実施により、出力画像の色調の大きな乱れを回避することができる。つまり、ユーザ画像の中から測色に適した測色領域が見つからない場合には、後述する色安定化処理の代わりに付着量安定化処理を実施することで、色調の大きな乱れの発生を回避することができる。
次に、メイン制御部500は色情報推定手段として、測色された出力画像情報から取得される多次色の色情報に基づいて、多次色のトナー像を構成するそれぞれの一次色の色情報を推定する色分解処理(S6)を行う。この推定方法の具体例は後述する。
また、メイン制御部500は濃度レベル判定手段として、推定された各一次色の色情報と、入力画像情報から取得される目標値である各一次色の制御上の色情報とを比較する色情報比較処理(S7)を行なう。
さらに、メイン制御部500は作像条件制御手段として、制御パラメータに対する補正量を決め、補正処理(S8)を実行する。
ここで補正する制御パラメータは、潜像書込ユニット21のレーザー強度(LDP)、帯電装置60の帯電印加電圧(Cdc)、及び現像装置61の現像バイアス(Vb)である。制御パラメータとしてはこの他にも現像装置61内に収納されている現像剤のトナー濃度を採用することも可能である。
次に、測色された出力画像情報から取得される多次色の色情報に基づいた一次色の色情報の推定方法(色分解処理)について説明する。本実施形態では、一次色の色情報として、仮に一次色で出力したときのトナー像を測定したときの見かけ上の平均網点率(以下、単に出力網点率と呼ぶ)を推定する。
ここで、網点率と潜像書込ユニット21のレーザー強度との関係について説明する。図10は、レーザー強度と網点率との関係を説明する説明図である。
潜像書込ユニット21のレーザー出力の調整可能なパラメータとしては、LD−Power(LDP)とLD−Duty(LDD)とがある。LDPは書込光のレーザー強度であり、LDDは単位時間あたりに書き込みを行う時間の比率である。網点率というのは、記録紙Pの表面上の単位面積当たりのトナー像が形成された面積の比率であり、これは、感光体20の表面上の単位面積当たりの潜像が形成された面積の比率である。よって、例えば、網点率が50[%]というのは、LDDが50[%]というのを意味している。
図10に示すように、LDPの値もLDDの値も大きければ大きいほど、感光体20の表面上に供給されるトナーの量は多くなり画像濃度は濃くなる。また、LDPの値とLDDの値とは独立して変化させることが可能であり、LDPを変化させても、LDDを変化させても画像濃度を変化させることができる。このため、LDPの値の値が同じであってもLDDの値が大きいほど画像濃度は濃くなり、LDDの値の値が同じであってもLDPの値が大きければ大きいほど画像濃度は濃くなる。しかし、画像濃度の制御としては、階調性を変化させないようにLDDを変化させる方法が一般的である。また、LDPはLDDを100[%]としたときに、Solid Image(最も濃い画像)が所定の濃度となるように調整される構成が一般的であるが、複写機600では、制御パラメータとして、LDPの値を積極的に動かす構成である。
複写機600では、LDPの値について最も強いレーザー強度より低い値(例えば、70[%])を初期値として、必要に応じてレーザー強度を調節できるようになっている。制御パラメータを補正しないときはレーザー強度は固定であり、その固定されたレーザー強度の状態で所望の画像濃度となるように制御上の網点率(以下、制御網点率と呼ぶ)が設定される。
ここで、一例として、一次色の作像条件が、レーザー強度は70[%]で制御網点率は40[%]の場合を考える。
この条件で所望の画像形成が成されると、記録紙P上には、レーザー強度70[%]に対応した1画素当たりのトナー付着量で、記録紙Pの表面上の単位面積当たりの40[%]の面積にトナー像が形成される。このようなトナー像を出力したときの出力網点率は40[%]となる。一方、同じ条件で画像形成したにも係わらず1画素当たりのトナー付着量が少なくなると、録紙Pの表面上の単位面積当たりの40[%]の面積にトナー像が形成されるにも係わらず、所望の画像形成が成されたトナー像よりも薄く見える。このようなトナー像を出力したときの出力網点率は40[%]よりも小さくなる。
このように、制御網点率と出力網点率とを比較して、出力網点率の方が制御網点率よりも小さい場合は、レーザー強度を強くするなど、トナー付着量が増加するように制御パラメータを補正する。逆に、出力網点率の方が制御網点率よりも大きい場合は、トナー付着量が減少するように制御パラメータを補正する。
ここで、制御網点率を目標値とすると、出力網点率が分かれば、多次色のトナー像を構成するそれぞれの一次色の色情報(出力網点率)と、作像用画像情報から求まる目標値である各一次色の制御上の色情報(制御網点率)との比較を行うことができる。
しかし、記録紙P上に形成されているトナー像は多次色であり、一次色の色情報である出力網点率を直接に測定することはできない。このため、メイン制御部500は、制御用スキャナ900で測定した多次色トナー像の出力画像情報に基づいて、各一次色の出力網点率を推定し、各一次色毎に制御網点率と推定した出力網点率(以下、出力網点率推定値と呼ぶ)とを比較することにより、制御パラメータに対する補正量を決める。
その後、決定した制御パラメータに対する補正量を用いて制御パラメータに対する補正量を決定し、その補正量を反映させた値に、制御パラメータ(レーザー強度、帯電印加電圧、現像バイアス)を設定する。
多次色トナー像の測色結果から一次色の出力網点率推定値を推定する方法について説明する。まず、推定に利用する一次色のデータテーブルについて説明する。
複写機600で採用する一次色の出力網点率推定値を推定するアルゴリズムでは、事前情報として制御網点率近傍の網点率における各一次色の分光反射率分布cyan(kc,λ)、magenta(km,λ)、yellow(ky,λ)、black(kk,λ)が必要となる。ただし、任意の網点率kc、km、ky、kkに対するデータを用意することは一般に困難であるため、例えば、10[%]刻みで離散化した各10個の網点率kc1〜kc10、km1〜km10、ky1〜ky10、kk1〜kk10に対する一次色の分光反射率分布のデータのみを一次色のデータテーブルに保存する。一次色のデータテーブルには、各色について網点率とその網点率で作像された一次色トナー像の測色結果である分光反射率分布データがメイン制御部500のROM503に保存されている。
次に、一次色の出力網点率推定値を推定するアルゴリズムについて説明する。まず、画像情報から得られる測色領域の網点率である制御網点率から出力網点率推定値の候補(制御網点率に近い値の網点率の組合せ)を生成する。
次に、黒の冗長性問題により推定結果の信頼性が低下する可能性のある出力網点率推定値の候補を削除する。削除対象となる出力網点率推定値の候補は次の方法で選定する。まず、各出力網点率推定値の候補の各一次色の出力網点率推定値から制御網点率を減算する(以降ではここで得られた結果を推定網点率偏差(濃度偏差)と呼ぶ)。
例えば、制御網点率が(C、M、Y、K)=(50、50、50、50)、出力網点率推定値が(C、M、Y、K)=(55、40、50、52)の場合、推定網点率偏差は(C、M、Y、K)=(5、−10、0、2)となる。次に、推定網点率偏差の各要素の符号を確認し、C、M、Yが同符号、KがC、M、Yとは異符号である場合は削除対象とする。例えば、(C、M、Y、K)=(1、10、5、−2)、(3、−2、0、5)、(−4、−5、−1、4)、(4、3、0、−1)となる4つの推定網点率偏差が与えられた場合、1番目と3番目が削除対象となる。
次に、出力網点率推定値の候補に対応する各一次色の分光反射率分布を一次色のデータテーブルから生成する。例えば、ある色の制御網点率が55[%]であった場合、その近傍の値である網点率50[%]や60[%]のときの分光反射率分布をその色の一次色のデータテーブルから生成する。
次に、得られた各一次色の分光反射率分布をそれぞれL*a*b*値に換算し、各一次色の推定L*a*b*を得る。
次に、制御用スキャナ900で測定した多次色トナー像のRGB値をL*a*b*値に換算し、観測L*a*b*値を得る。
最後に、推定L*a*b*値と観測L*a*b*値の間の色差(CIEDE94)を計算し、その値が最小となる出力網点率推定値の組合せを探索し推定結果とする。
なお、本実施形態では推定L*a*b*値と観測L*a*b*値の間の色差を算出するための色差式としてCIEDE94を採用したが、CIEDE2000等の他の色差式を採用することも可能である。
ここで、出力網点率推定値の候補の生成について一例を挙げて説明する。制御網点率が50[%]のredのトナー像で、予測される分光反射率分布がred(0.5,λ)で与えられる画像は、一般に、magenta(0.5,λ)とyellow(0.5,λ)を重ね合わせることで作られる。よって、数1のような色分解が考えられる。
しかし、実際にはこのような分解で推定L*a*b*値と観測L*a*b*値の間の色差を最小化できるとは限らない。原因は複数考えられるが、例えば、現像能力の変化等の作像エンジン特性が変化することにより一次色の特性が変化し、一次色のデータテーブルに保存されている特性との間に偏差を生じることが一因となる。そのため、画像情報から得られる制御網点率がそのまま出力網点率と反映されているとは判断せず、出力網点率推定値の候補として、制御網点率近傍の値を候補として生成する。
例えば、制御網点率が50[%]で画像形成され、予測される分光反射率分布がred(0.5,λ)で与えられるトナー像の測色結果を分解する際には、MagentaとYellowとの組合せとして、数2のように計9通りの候補を生成する。
ここでは、説明の簡略化のため、9通りの候補を生成することを説明しているが、出力網点率推定値の候補の組み合わせとしては、より多くの組合せを生成しても良い。
また、一次色のデータテーブルに登録されていないデータが必要な場合には、登録されているデータを補間することにより得る。cyanを例に挙げて説明すると、上述したように、cyanの一次色のデータテーブルには、網点率kc1〜kc10の10個の網点率に対応した分光反射率が保存されている。そして、1≦n≦9に対して、kcn<kc’<kc(n+1)となるkc’に対応する分光反射率分布cyan(kc’,λ)が必要な場合は数3で与える。
次に、制御パラメータ(レーザー強度、帯電印加電圧、現像バイアス)の補正方法について説明する。まず、制御パラメータの補正に使用する電位テーブルについて説明する。電位テーブルにはテーブル値と制御パラメータの組が格納されており、テーブル値が小さいほど現像濃度が薄く、テーブル値が大きいほど現像濃度が高くなるように作成されている。
画像情報から得られる制御網点率と出力網点率推定値とを比較し、出力網点率推定値よりも制御網点率の方が値が大きければテーブル値を増加させ、出力網点率推定値よりも制御網点率の方が値が小さければテーブル値を減少させる。そして、増減後のテーブル値に対応する制御パラメータを電位テーブルから探索し、後述する重み付けを行なった上で、対応する画像形成ユニット18及び潜像書込ユニット21の作像条件として設定する。
制御パラメータ設定時の重み付けについて説明する。多次色を構成する一次色の種類が多いほど出力網点率推定値の組合せの候補数が増大するため、多次色から一次色を推定するために必要となる計算量は大きくなる。しかしながら、許容できる計算時間には限界があるため、結果的に、色数が多い多次色から一次色を推定する場合の方が、色数が少ない多次色から一次色を推定する場合よりも、粗い候補生成を行なうことになり、推定精度の低下に繋がる。
また、低網点率の一次色を含む多次色から、その低網点率の一次色の色情報を推定することも色情報のSNが悪化するため難しい。また、あまり高すぎる網点率の一次色については、信号の飽和が発生するため、推定精度は低下する。
以上のように、観測した多次色を構成する一次色の色数と網点率に依存して、一次色の推定結果の信頼性は異なる。そこで、本実施形態では、観測する多次色を構成する一次色の色数が1つの場合は1、2つの場合は0.9、3つの場合は0.8、4つの場合は0.7を制御パラメータの変化量に乗じた値を設定する(整数に丸める)。また、観測する多次色が、網点率15%未満の一次色を含む場合は0.5を乗じた値を設定する。これにより、信頼性の高い推定結果が得られた場合には強い制御を行ない、そうでない場合には比較的弱い制御を行なうことで、制御性能の極端な劣化を抑えている。
本実施形態では、推定結果の信頼性が低い場合に、設定する制御パラメータを変化させる量を減らす方式をとっているが、制御周期が短い場合等、制御を施せるタイミングが比較的多い場合には、制御パラメータを変化させない方が有利な場合もある。また、制御周期に応じて適応的に両者を切り替えても良い。
上述した構成では、測色結果に基づいて推定された一次色の色情報と、一次色の目標色の色情報とを比較する際に、比較する色情報として、網点率を用いている。すなわち、出力網点率推定値が推定された一次色の色情報であり、制御網点率が一次色の目標色の色情報である。
なお、このように、推定された一次色の色情報と、目標色の色情報とを比較する色情報としては、網点率に限るものではない。
一次色のデータテーブルには、各網点率に対する分光反射率分布が保存されているため、出力網点率推定値及び制御網点率に対する分光反射率分布を算出することができる。分光反射率分布がわかると、公知の方法により、L*a*b*値を算出することができる。 そして、推定された一次色の色情報として出力網点率推定値に対応したL*a*b*値を用い、一次色の目標色の色情報として制御網点率に対応したL*a*b*値を用いてL*a*b*値同士を比較して、出力されるトナー像を形成する一次色の色を目標色に近づける制御を行っても良い。
L*a*b*値同士を比較する場合、「L*」、「a*」、「b*」の三つの成分のうち、各色でトナー付着量の変化に対して最も感度の高い一成分のみを比較しても良い。多次色同士を比較する場合、「L*」の値が同じであっても、「a*」や「b*」の値が異なることがある。これに対して、一次色同士を比較する場合、濃いか薄いかであるため、一つの成分の値が決まると、他の二つの成分の値も従属的に決まり、「L*」の値が同じであっても、「a*」や「b*」の値が異なることはない。
このため、シアンは「L*」の値の比較、マゼンタは「a*」の値の比較、イエローは「b*」の値の比較をすることで、出力された多次色トナー像を形成する各一次色トナーがそれぞれの目標色に対して、濃いのか薄いのかを判断することができる。
複写機600は、潜像担持体である感光体20を複数備え、それぞれの感光体20上に一次色トナー像を作像し、それを中間転写ベルト10上で重ねるように一次転写し、中間転写ベルト10上に作像された多次色トナー像を記録紙P上に二次転写する画像形成装置である。本発明の特徴部である多次色の色情報に基づいて、多次色トナー像を構成する一次色トナー像のそれぞれの一次色の色情報を推定し、推定されたそれぞれの一次色の色情報に基づいて一次色トナー像の作像条件を補正する構成が適用可能な画像形成装置はこれに限るものではない。
複数の潜像担持体上でそれぞれ作像する画像形成装置では、中間転写ベルトを備える構成に限らず、各潜像担持体から直接に記録媒体に転写して記録媒体上で各一次色のトナー像を重ねて多次色トナー像を形成する画像形成装置にも適用可能である。
また、複数の潜像担持体を備える構成に限らず一つの潜像担持体で作像する構成も適用可能である。一つの潜像担持体上で作像する構成では、一つの潜像担持体の表面上に複数の現像装置が配置される画像形成装置にも適用可能である。
この画像形成装置では、潜像担持体上に形成した一次色トナー像を中間転写体上に転写し、先に中間転写体に転写した一次色トナー像に対して新たに潜像担持体上に形成した一次色トナー像を重ねて転写し、中間転写体上で多次色トナー像を形成し、記録紙に転写する構成である。さらに、一つの潜像担持体上で作像する構成では、一つの潜像担持体に複数の帯電装置、露光装置及び現像装置の組合せが配置されている構成で、先に形成されたトナー像を担持する潜像担持体表面に対して、帯電、露光及び現像を行う画像形成装置にも適用可能である。
このように、一次色トナー像を重ねた多次色トナー像を記録媒体上に形成する画像形成
装置であれば適用可能である。
以上、本実施形態の複写機600は、四つの画像形成ユニット18(Y,C,M,K)及び潜像書込ユニット21と、中間転写ベルト10及び二次転写ローラ24と、制御用スキャナ900と、メイン制御部500とを有する。潜像書込ユニット21及び四つの画像形成ユニット18(Y,C,M,K)は、互いに異なる一次色(イエロー、シアン、マゼンタ、ブラック)からなるトナー像である一次色トナー像を、各画像形成ユニット18(Y,C,M,K)が備える潜像担持体である感光体20(Y,C,M,K)上に形成する作像手段を構成する。中間転写ベルト10及び二次転写ローラ24は、感光体20(Y,C,M,K)上に形成されたトナー像を中間転写体である中間転写ベルト10を介して記録媒体である記録紙Pに転写する転写手段を構成する。複写機600では、各感光体20(Y,C,M,K)上に形成された各色の一次色トナー像を中間転写ベルト10上で重ねて記録紙P上に転写することで、一次色トナー像を重ねた多次色トナー像を記録紙P上に形成する。制御用スキャナ900は、記録紙P上に形成された多次色トナー像を測色して出力画像の多次色の色情報として多次色トナー像のRGB値を取得する出力画像測色手段および色情報取得手段である。メイン制御部500は、潜像書込ユニット21及び各画像形成ユニット18による一次色トナー像の作像条件を制御する作像条件制御手段である。
このような複写機600において、メイン制御部500は、色情報推定手段として、制御用スキャナ900が取得したRGB値に基づいて、多次色トナー像を構成する一次色トナー像のそれぞれの一次色の色情報として各色の出力網点率推定値を推定する。
さらに、メイン制御部500は推定したそれぞれの一次色の出力網点率推定値に基づいて、作像条件制御手段として一次色トナー像の作像条件を補正する。このため、目標色としての色情報として制御網点率をそれぞれの一次色について設定することで、それぞれの一次色で、測色結果に基づいて推定された出力網点率推定値と、一次色の制御網点率とを比較することができる。
複写機600における一次色の目標色の色情報としての制御網点率は、入力画像情報に基づいて一次色トナー像を形成するときに用いられる一次色トナー像の色情報である。同じ一次色同士の網点率の比較であるため、一方の色が他方の色に対してどの程度、濃いか薄いかというような単純な比較となる。
このため、推定された一次色が目標色よりも薄ければ現像濃度が濃くなるように作像条件を補正し、濃ければ現像濃度が薄くなるように作像条件を補正する。このため、各一次色について、出力網点率推定値に対応する一次色と制御網点率に対応する目標色との濃度差に対する適切な作像条件の補正の情報を予め入力しておけばよい。
よって、複写機600のように、一次色同士の網点率の比較する構成であれば、精度良く補正を行うために必要な、予め入力しておくべき情報の量を従来の多次色同士を比較する構成に比べて格段に少なくすることができる。予め入力しておくべき情報の量を格段に少なくすることで、出力した多次色トナー像を測色した結果に基づいて、精度良く補正を行うことが実現可能となる。推定された一次色と目標色とを比較する色情報として、網点率に限るものではなく、分光反射率分布から求まるL*a*b*値など他の比較可能な色情報であってもよい。複写機600では、出力した多次色トナー像を測色した結果に基づいて、作像手段の作像条件を補正する画像形成装置で、精度良く補正を行うことによって出力画像の更なる色安定化を図ることができる。
また、複写機600では、制御用スキャナ900が取得する多次色の色情報は、多次色トナー像のRGB値であり、色情報推定手段としてのメイン制御部500は、各一次色について複数の網点率におけるトナー像の分光反射率分布の情報が予め入力された一次色分光反射率分布記憶手段であるROM503を備える。
色情報推定手段としてのメイン制御部500は、入力画像情報に基づいて、一次色の色情報である一次色の見た目の網点率である出力網点率の推定値である出力網点率推定値の候補を複数生成する。そして、黒の冗長性問題により信頼性が低下するおそれのある候補を除外する。その後、出力網点率推定値の候補に対応する分光反射率分布である推定分光反射率分布をROM503に入力された情報に基づいて生成する。
そして、多次色トナー像を形成するすべての一次色の分光反射率分布の積(「cyan(kc,λ)×magenta(km,λ)×yellow(ky,λ)×black(kk,λ)」)をL*a*b*値に換算した値と、制御用スキャナ900が取得した多次色トナー像のRGB値と、の色差ができるだけ小さくなる出力網点率推定値の候補を各一次色について一つずつ探索する。この探索して得た値を各一次色の出力網点率推定値とする。
複写機600の色情報推定手段としてのメイン制御部500は、入力画像情報に基づいて、各一次色の目標値となる網点率である網点率目標値として制御網点率を設定し、各一次色について出力網点率推定値が網点率目標値より小さい場合は、出力網点率推定値を得たときの多次色トナー像を形成した作像条件よりも現像濃度が濃くなるように作像条件を補正し、出力網点率推定値が網点率目標値より大きい場合は、出力網点率推定値を得たときの多次色トナー像を形成した作像条件よりも現像濃度が薄くなるように作像条件を補正する。このように各一次色について制御網点率と出力網点率とを比較することで、一次色同士の色情報を比較することが可能となり、多次色同士の色情報を比較する制御に比べて、精度良く作像条件の補正が可能となる。
複写機600のメイン制御部500は、測色領域決定手段として、制御用スキャナ900が測色を行う測色領域を出力画像の画像領域の一部に決定する。画像領域全体について測色と画像情報同士の比較とを行うと、処理する情報量が非常に多くなり、処理速度が高速なCPUを備えていないと、装置の生産性が低下するが、CPUの高速化はコスト高に繋がる。これに対して、複写機600のように、全画像領域の一部の領域を測色領域として、測色領域について測色と画像情報同士の比較とを行うことにより、装置の生産性を維持しつつ、CPUの高速化に伴うコスト高を防止することができる。
複写機600のメイン制御部500は、測色領域決定手段として、入力画像情報に基づいて、色の平坦度が高く測色に適した領域を探索し、測色領域を決定する。色の平坦度が高い領域は、領域内における色合いの変化が少ないため、精度の良い測色を行うことができる。
潜像書込ユニット21及び画像形成ユニット18から構成される作像手段は、少なくとも、潜像担持体である感光体20に潜像を書き込む潜像書込手段である潜像書込ユニット21、及び感光体20に担持された潜像をトナーによって現像する現像手段である現像装置61と、を具備する。
また、潜像書込ユニット21として、帯電手段である帯電装置60によって一様帯電させた感光体20の表面に対して光走査を行って静電潜像を書き込むものを用いている。現像装置61として、表面に現像剤を担持している現像剤担持体である現像スリーブ65に現像バイアスを印加しながら現像スリーブ65上の現像剤中のトナーを感光体20上の静電潜像に転移させるものを用いる。作像条件制御手段であるメイン制御部500は、作像条件として、帯電装置60の帯電強度、潜像書込ユニット21の光書込強度、現像バイアス、及び現像剤のトナー濃度のうち、少なくとも何れか1つを補正する処理を実施する。このような構成により、一次色同士の色情報を比較した結果に基づいて、作像条件の補正を行う制御を実現することができる。
複写機600は、現像装置61として、トナー及びキャリアを含有する現像剤を用いて潜像を現像するものを用いる。そして、トナー濃度センサ71による現像装置61内に収容される現像剤のトナー濃度を検知した結果と、所定の濃度目標値との差に応じて、トナー補給口61aから現像装置61内にトナーを補給する不図示のトナー補給手段を備える。作像条件制御手段であるメイン制御部500が、一次色同士の色情報を比較した結果に基づいて、現像剤のトナー濃度の所定の濃度目標値の値を補正することにより、作像条件の制御パラメータとして、トナー濃度の補正を行う制御を実現することができる。
尚、上述の実施形態は本発明の好適な実施の例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。
以下、実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
黒の冗長性問題に対する本発明の効果を確認するために実験を行なった。実施した実験では、網点率55%の4Cグレーパッチを測色し、それを色分解した結果と予め定められた一次色の目標値とを比較し、濃ければ薄くなるように、薄ければ濃くなるように作像条件を設定した。
本実施例では2種類のチャートを使用した。1つは制御チャート700であり、もう1つは評価チャート701である。制御チャート700には55%4Cグレーパッチが、面内濃度偏差の影響をキャンセルするために9点配設されている。この9点の測色結果を平均化した値を測色結果として採用する。評価チャート701には各一次色について網点率で6.25%刻みで6.25%〜100%までの合計16階調のパターンが配設されている。また、制御チャート700と同様の理由により各パッチは面内9点に配設されており、その平均値をそのパッチの測色結果とする。
図11に制御チャート700と評価チャート701の模式図と、本実施例の処理フローを示す。まず、制御チャート700を1枚印刷する(S10)。次に制御チャート700内に配設されている55%4Cグレーパッチを測色する(S11)。次に得られた測色結果と入力画像情報(今回の例では各色55%)から一次色の網点率を推定する(色分解、S12)。
次に色分解結果と入力画像情報から、各一次色が濃いのか薄いのかを判定し、濃ければ薄くなるように、薄ければ濃くなるように作像条件を設定する(S13)。次に、評価チャート701を10枚印刷する(S14)。以上の制御チャート印刷から評価チャート印刷までを1セットとして、合計30セット繰り返す。
一方、黒の冗長性問題への対策を行なわなかった場合の結果を示す(比較例)。図12は各一次色の網点率の推定結果である(図12(A)シアン、(B)マゼンタ、(C)イエロー、(D)ブラック)。C,M,Yは増減の傾向がほぼ一致しており、Kはこれらとは逆の傾向を示していることが分かる。つまり、黒の冗長性問題が発生している可能性が極めて高いと考えられる。
図13は観測色である55%4Cグレーパッチの色差の推移である。図11より、各一次色は網点率で最大20%程度の変動が発生しているが、観測色には大きな影響が出ていない。これは黒の冗長性問題に顕著な特性である。なお、色差を計算する上での基準となる色は、実験開始直前に印刷した制御チャート700の測色値とした。
図14は評価チャート701を測色することで得られる、各一次色の色差の推移である(図14(A)シアン、(B)マゼンタ、(C)イエロー、(D)ブラック)。色によって程度の差はあるが、色差3を大きく超えている色もあり、一般的な感覚から考えると、あまり良い結果とは言いがたい。なお、色差を計算する上での基準となる色は、実験開始直前に印刷した評価チャート701の測色値とした。
次に、黒の冗長性問題への対策を行なった場合の結果を示す(実施例)。図15は各一次色の網点率の推定結果である(図15(A)シアン、(B)マゼンタ、(C)イエロー、(D)ブラック)。黒の冗長性問題に特徴的な推定網点率の特徴は認められない。
図16は観測色である55%4Cグレーパッチの色差の推移である。図13と比較して明らかに良好な結果となっている。黒の冗長性問題が発生していないことにより、適切に一次色の推定が行なわれ、その結果、制御性能が向上した事が理由であると考えられる。
図17は評価チャートを測色することで得られる、各一次色の色差の推移である(図17(A)シアン、(B)マゼンタ、(C)イエロー、(D)ブラック)。図14と比較すると、明らかに色差を小さく抑える事ができている。
以上の実施例より、黒の冗長性問題が制御結果に大きな悪影響を与えること、および、本発明により、黒の冗長性問題を回避することが可能となることを確認した。