JP2014070952A - 燃焼圧センサ - Google Patents

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貴之 林
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Abstract

【課題】水晶圧電体を用いた燃焼圧センサの温度特性を改善し、受圧感度を高く高精度の圧力信号を得られる燃焼圧センサを提供する。
【解決手段】燃焼室内の燃焼圧を受けて電気信号を発生させる圧力検出部と、検出信号を処理する信号処理部と、検出信号を信号処理部へ伝送する伝送部とを有する燃焼圧センサにおいて、前記圧力検出部は中空筒状のハウジングと、前記中空筒状のハウジングの受圧側先端に配設されたダイヤフラムと、前記ハウジング内の軸方向であって、前記ダイヤフラムの後端に当接する圧力伝達部材と、前記圧力伝達部材の後端に当接する水晶圧電体と、前記水晶圧電体の後端を支持する支持部材と、一端が前記圧力伝達部材に固定され他端は前記支持部材に固定された中空筒状の内部ケース部材とを備え、前記水晶圧電体は前記内部ケース部材の内部に配設して課題を解決した。
【選択図】図5

Description

本発明は圧力センサに関し、詳しくは内燃機関の燃焼室に装着され、燃焼室内の圧力を検出することができる燃焼圧センサに関する。
従来、内燃機関に装着されて燃焼室内の圧力を検出する装置として、水晶圧電体を圧力検出部に使用した装置が提案されている。(例えば特許文献1)
図10を使用して特許文献1に記載された従来の燃焼圧センサについて説明する。
図10は特許文献1に記載された燃焼圧の検出と制御システムの構成を示し、507は水晶圧電体を用いた圧力センサ・トランスミッタで、512は点火プラグ、513は燃料噴射ノズル、514は空気量調節バルブ、515は燃焼室、516は演算ユニットであり、燃焼室515の燃焼圧を圧力センサ・トランスミッタ507により測定し、最適な混合気を得るための燃料と空気の量を演算ユニット516で演算し、空気量調節バルブ514や燃料噴射ノズル513等を制御するものである。
特開平7−209126号公報(特許請求の範囲、図8)
特許文献1に記載された従来の燃焼圧センサは、水晶単結晶の圧電効果を用いており、圧力に対する出力特性は水晶圧電体の温度に依存して変化する。図11を用いてさらに詳述する。図11は、水晶圧電体の温度を横軸に、水晶圧電体の圧力−電荷変換感度の一般的な温度特性を縦軸に示したグラフであり、高温域で水晶圧電体の感度が低下することが分かる。
すなわち従来の水晶圧電体による燃焼圧センサは温度依存性が大きいという課題を有している。そこで本発明の目的は、上述した課題を解決しようとするものであり、温度異存性の少ない燃焼圧センサを提供することにある。
本発明による燃焼圧センサは下記構成とする。
燃焼室内の燃焼圧を受けて電気信号を発生させる圧力検出部と、検出信号を処理する信号処理部と、検出信号を信号処理部へ伝送する伝送部とを有する燃焼圧センサにおいて、
圧力検出部は中空筒状のハウジングと、中空筒状のハウジングの受圧側先端に配設されたダイヤフラムと、ハウジング内の軸方向であって、ダイヤフラムの後端に当接する圧力伝達部材と、圧力伝達部材の後端に当接する水晶圧電体と、水晶圧電体の後端を支持する支持部材と、一端が圧力伝達部材に固定され他端は支持部材に固定された中空筒状の内部ケース部材とを備え、水晶圧電体は内部ケース部材の内部に配設されていることを特徴とする。
この様に水晶圧電体を内部ケース部材の内部に配設し、さらに外側に中空筒状のハウジング31を設け二重構造体にすることで、外部から水晶圧電体への熱伝搬が減少し、温度依存性が低減される。
さらに内部ケース部材は、水晶圧電体に予荷重を付加するための加圧部材であることが望ましい。
これにより、水晶圧電体に、一端を圧力伝達部材に固定し他端を支持部材に固定した内部ケース部材による加圧部材によって予荷重が加わるので、水晶圧電体の応答性および周波数特性が改善し、さらにダイヤフラムに予荷重を与える機能を持たせる必要がないので、ダイヤフラムは燃焼圧を受圧し圧力伝達部材に伝達するために必要な剛性のみを持てばよく、燃焼圧の受圧感度を向上させ、高精度の圧力信号を得ることができる。
また加圧部材は、薄肉状のバネ部よりなる荷重調整部を有することが望ましい。
これにより高精度の予荷重を水晶圧電体に与えることが可能となるので高精度の圧力信号を得ることができる。
上記の如く、本発明によれば水晶圧電体を内部ケース部材の内部に配設し、さらに外側に中空筒状のハウジングを設け2重構造にすることで、外部から水晶圧電体への熱伝搬が減少し、温度依存性を低減することができる。また内部ケース部材に、水晶圧電体への予荷重を加える機能を持たせたので、ダイヤフラムに予荷重を与える機能を持たせる必要がなくなり、ダイヤフラムの受圧感度を向上させることができる。すなわちダイヤフラムの機能分離が図られ、さらには加圧部材の荷重調整部を薄肉状のバネ部により構成したので、水晶圧電体に対して高精度に予荷重を設定でき、感度および直線性を高めることができる。
さらに本発明に用いる水晶圧電体は、数十万回のノッキングテストにも耐える耐衝撃性を有しており、他の圧電単結晶材料と比較して、高精度に加え、さらに高耐久の燃焼圧センサの実現が可能となる。
第1〜第3の実施形態に係わる内燃機関の概略構成図である。 図1のA部の拡大図である。 第1〜第3の実施形態を適用する従来の燃焼圧センサの分解斜視図である。 第1の実施形態による燃焼圧センサの断面図である。 図4の燃焼圧センサの圧力検出部の拡大断面図である。 図5の圧力検出部の組立手順を示す断面図である。 第2の実施形態による燃焼圧センサの圧力検出部の拡大断面図である。 図7の圧力検出部の組立手順を示す断面図である。 第3の実施形態による燃焼圧センサの圧力検出部の拡大断面図である。 従来の水晶圧電体を用いた燃焼圧の検出と制御システムの構成を示す構成図 である。 水晶圧電体の一般的な温度特性を示すグラフである。
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の思想を具体化するための燃焼圧センサを例示するものであって、本発明は以下の構成に特定しない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特定的な記載がない限りは本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく単なる説明例に過ぎない。又、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は説明を明確にするために誇張していることがある。又、以下の説明において同一部品、同一構成要素には同一の名称、符号を付し詳細説明を適宜省略することがある。
〔各実施形態の特徴〕
第1の実施形態の特徴は、本発明の基本的な構成例であり、内燃機関等で使用される燃焼圧センサの圧力検出部において、圧力センサである水晶圧電体の配設を、内部ケース部材と中空筒状のハウジングによる2重構造とし外部から水晶圧電体への熱伝搬を減じて温度依存性を低減するとともに、内部ケース部材に水晶圧電体へ予荷重を与える機能を持たせ、ダイヤフラムには予荷重を与える機能を持たせない構成にし、水晶圧電体の優れた耐衝撃性を活かしつつ他方温度特性上の課題を積極的に解決した燃焼圧センサである。
第2の実施形態は、燃焼圧を検出するダイヤフラムと水晶圧電体に圧力を伝達する圧力伝達部材とを一体化し、当接部のバウンスと摩耗を防止した燃焼圧センサである。
第3の実施形態は、薄肉状のバネ部を用いて内部ケース部材の荷重調整部を構成した燃焼圧センサである。
[内燃機関に従来の燃焼圧センサを取り付けた概略構成と、本発明の各実施形態を適用する燃焼圧センサの構成に関する説明:図1〜図3]
まず、一般的な内燃機関に従来の燃焼圧センサを取り付けた概略構成について、図1〜図3を用いて説明する。図1において、1は本発明の燃焼圧センサが組み込まれる内燃機関である。この内燃機関1はシリンダ2aを有するシリンダブロック2とシリンダ2a内を往復動するピストン3と、シリンダブロック2に締結されてシリンダ2aおよびピストンなどとともに燃焼室Cを構成するシリンダヘッド4を備えている。
又、内燃機関1はガソリンエンジンなどの場合、通常、シリンダヘッド4に装着されて燃焼室C内の混合気を爆発させるための点火プラグ(図示なし)と、シリンダヘッド4に装着されて燃焼室C内に燃料を噴射するインジェクタ(図示なし)とを備えているが、ここではそれらの説明を省略する。内燃機関1には燃焼室内の圧力を検出するために備えられた燃焼圧センサ5が装着されている。シリンダヘッド4には、燃焼圧センサ5を装着するための燃焼室Cと外部とを連通する連通孔4aが設けられており、燃焼圧センサ5が貫通した状態で取り付けられている。
燃焼圧センサ5は、シリンダヘッド4との間に介在し燃焼室C内の気密を保つためのシール部材7とともに、後述する連通孔に形成されたネジによって締め付けられ固定されている。又、燃焼圧センサ5が検出した圧力信号を伝送するための伝送ケーブル8と、送られた圧力信号を処理し内燃機関1に適切な制御を指示するための制御装置6とを備えている。
次に、本発明の各実施形態の燃焼圧センサのシリンダヘッド4への取り付け構成について図2(図1のA部拡大図)を用いて説明する。図2において、シリンダヘッド4には燃焼室Cと外部とを連通する連通孔4aが形成されている。連通孔4aの形状は、燃焼室C側から、第1の孔部4bと、第1の孔部4bの孔径から徐々に径が拡大している傾斜部4cと、第1の孔部4bの孔径よりも大きい第2の孔部4dとを有している。第2の孔部4dを形成する周囲の孔壁には雌ネジ部4eが形成されており、燃焼圧センサ5の筐体32に形成された雄ネジ332aがネジ込まれ、第1のシール部材71とともに締め付け固定される。
燃焼圧センサ5は、その先端にある圧力検出部100が受圧部であり、前述したシリンダヘッド4に設けられた連通孔4aの第1の孔部4b部にダイヤフラム40が燃焼室Cに臨む位置に挿入し固定されている。このとき、燃焼圧センサ5の圧力検出部の突きあて部315a(後述するハウジング31の外周部)とシリンダヘッド4に形成された連通孔4aの傾斜部4cとの間には第2のシール部材72が挿入され、前述した第1のシール部材71とともに締め付け固定される。これにより、燃焼室C側から混合気や燃焼ガスが漏れないように気密を保つことができる。
又、燃焼圧センサ5において、シリンダヘッド4の外側部には6角ネジ部334が形成され、その上部には保持部材300が固定され、さらにその上部には信号処理部200の一部であるコネクタ部233が露出している。さらに、制御装置6に圧力信号を伝送する伝送ケーブル8がコネクタ8aにより接続されている。また、コネクタ8aに設けられたフックがコネクタ部233に形成された穴233aに係合し固定されている。
次に、本発明の各実施形態を適用する燃焼圧センサの全体構成について、図3を用いて説明する。図3は本発明の各実施形態を適用する燃焼圧センサの分解斜視図であり、各部を要素ごとに分解している。
本発明の各実施形態を適用する燃焼圧センサ5は燃焼室C内に発生する燃焼圧を電気信号に変える水晶圧電体を有する圧力検出部100と、圧力検出部100からの信号を処理する信号処理部200とを備えている。尚、以下の説明において、図3の左端に位置するダイヤフラム40側を燃焼圧センサ5の先端側、右端側の信号処理部200側を燃焼圧センサ5の後端側と呼び、又、ダイヤフラムの中心線方向を単に中心線方向と呼ぶ。
〔第1の実施形態〕
第1の実施形態の燃焼圧センサ5sの構成および組立手順について、図4、図5、図6を用いて説明する。図4は第1の実施形態の燃焼圧センサ5sの断面図であり、図5は図4の圧力検出部100の拡大断面図であり、図6は圧力検出部100の組立手順を示す断面図である。
[圧力検出部100の説明:図4、図5]
まず、圧力検出部100の構成について説明する。圧力検出部100は圧力検出部の枠体となるハウジング31と、ハウジング31の先端側の開口部を塞ぐように設けられ燃焼室Cの圧力が作用するダイヤフラム40と、ダイヤフラムの中心線方向に形成された突出部42aの後端面が接しダイアフムから圧力を伝達する圧力伝達部材50と、圧力伝達部材50に接し圧力伝達部材50から圧力を受けて電荷を発生する水晶圧電体10と、水晶圧電体10を支持し発生した電荷を電気信号として受ける第2の電極部55と(第1の電極部については後述する)、第2の電極55を支持し絶縁する絶縁リング60と、絶縁リング60を支持する支持部材65と、一端を圧力伝達部材50に固定し他端を支持部材65に固定し固定部間が筒状よりなる加圧部材である内部ケース部材80Aとから構成されている。
又、支持部材65はその先端側の外周にて内部ケース部材80Aを固定し、後端側の外周にてハウジング31の後端側の内周にしまりばめで嵌合(圧入)され、後述する溶接によってさらに強固に固定される。又、ダイヤフラム40は進入部41aがハウジング31の先端側内周部にしまりばめで嵌合(圧入)され、溶接によってさらに強固に固定される。
又、一端を圧力伝達部材50に、他端を支持部材65に加圧部材である内部ケース部材80Aを固定する際に、内部ケース部材の内部に収納された水晶圧電体10には、先端側に配置された圧力伝達部材50と、後端側に配置された第2の電極55および絶縁リング60とに挟まれた状態で所定の予荷重をかけた状態で固定する。又、前述した支持部材65をハウジング31の後端側の内周に固定する際は、ダイヤフラム40に形成された突出部42aの後端面42cに対して、圧力伝達部材50の当接面を所定の位置に位置決めしてから固定する。この構成によって、圧力検出部100はユニット化される。
次に、ユニット化された圧力検出部100の外周部が筐体32の先端部の孔321にしまりばめで嵌合(圧入)され、溶接によってさらに強固に固定される。このとき、圧力検出部100を構成するハウジング31の外周部に形成されたリング状の突起315の後端側の面315bは筐体32の先端側の端面に付き当てられ位置決めされる。
[ダイヤフラム40の説明:図5]
ダイヤフラム40は、円筒状の円筒状部41と、その内側に形成された内側部42とを有している。円筒状部41の後端部は、ハウジング31の先端部の孔としまりばめで嵌合(圧入)されて、この先端部の孔の孔に入り込む進入部41aと、ハウジング端面31aに突き当たる突当面41bとを有している。内側部42は、円筒状部41における先端側の開口を塞ぐように設けられた円盤状の薄肉部材であり、後端面の中央部にはこの面から水晶圧電体10側に突出する突出部42aが設けられている。
又、内側部42の、先端面の中央部には凹部42bが設けられている。ダイヤフラム40の材料としては、高温でありかつ高圧となる燃焼室C内に存在するため、弾性が高く、かつ耐久性、耐熱性、耐触性等に優れた合金製であることが望ましく、例えばSUH660を用いて構成するとよい。又、ダイヤフラム40とハウジング31とは、嵌合された後、さらに、溶接により強固に固定される。
[ハウジング31の説明:図5]
ハウジング31は、円筒状の部材であり、外周面には、突出部315がリング状に設けられている。突出部315は、先端側から後端側にかけて徐々に径が大きくなる傾斜面315aを有し、その後端部に、垂直面315bを有している。ハウジング31の先端側の内周面は、水晶圧電体10が収納され、後端側の内周面は支持部材65の外周面がしまりばめで嵌合(圧入)され、さらに、溶接により強固に固定される。又、ハウジング31の中央部の外周面は後述する筐体32の先端側の孔321にしまりばめで嵌合(圧入)され、さらに、溶接により強固に固定される。
[筐体32の説明:図3、図4、図5]
筐体32は、内部に、先端側から後端側にかけて段階的に径が異なるように形成された筒状の孔320が形成され、外部には先端側から後端側にかけて段階的に径が異なるように形成された外周面330が形成されている。筐体32における先端部の孔321は、ハウジング31の中央部の外周面にしまりばめで嵌合(圧入)できるようにハウジング31の外周面の径以下となるように設定されている。
外周面330は、先端側から後端側にかけて、5つの外周面から構成される。第1の外周面331はハウジング31の突出部315に対応し、第2の外周面332の先端部には、シリンダヘッド4の雌ねじ4eにねじ込まれる雄ねじ332aが形成されている。第3の外周面333には、後述する第1のシール部材71が嵌め込まれ、第4の外周面334の後端側には、6角のナット部が形成され、圧力検出装置5をシリンダヘッド4に締めつける際に用いられる。第5の外周面335には溝部335aが全周に渡って形成されている。
また、筐体32に段階的に形成された孔320には、後述する絶縁部材23に形成された先端側から後端側にかけて段階的に径が異なるように形成された外周面240がそれぞれ対応するようになっている。また、筐体32の後端側の孔325には、絶縁部材23の基板被覆部の先端側の端面が当接する突当面340が設けられている。突当面340には、後述する第1の接続ピン21bが差し込まれるピン用孔部340aが形成されている。
ハウジング31および筐体32は、燃焼室C近辺に配置されるため、少なくとも、−40〜350〔℃〕の使用温度環境に耐える材料を用いて製作することが望ましい。具体的には、耐熱性の高いステンレス鋼材、例えば、JIS規格のSUS630、SUS316、SUS430等を用いて構成するとよい。
[圧力伝達部材50の説明:図5]
圧力伝達部材50は、円柱状の部材であり、先端側の外周には面取部が形成されている。その先端側の端面50aがダイヤフラム40の突出部42aに当接し、後端側の端面が水晶圧電体10の先端側の端面10aに当接するように配置されている。外周面は内部ケース部材80Aの内周面と接し、先端側の端面がダイヤフラム40の突出部42aに当接することによって、水晶圧電体10の先端部は、ハウジング31と電気的に接続される。このため圧力伝達部材50は第1の電極部を兼ねている。
圧力伝達部材50は、燃焼室C内の圧力を水晶圧電体10に作用させるものであり、圧力伝達部材50の後端側の端面が水晶圧電体10の全面を押すことが可能な大きさに形成されている。又、圧力伝達部材50は、ダイヤフラム40から伝達する圧力を均等に水晶圧電体10に作用させるように、両端面が平行(中心線方向に直交)かつ平滑面に形成されている。圧力伝達部材50の材質としては、ステンレスを用いて構成するとよい。
[水晶圧電体10の説明:図5]
水晶圧電体10は、電気軸方向の圧力に対し電荷を発生する圧電性を有している。本実施形態に係る水晶圧電体10は、電気軸方向が圧力印加軸の方向となるようにハウジング31内に収納されている。水晶圧電体は高い耐衝撃性を有しているのでエンジンルーム内に配設した燃焼圧センサに用いても長期に亘って安定的に燃焼室の圧力を検出することが可能である。
尚、水晶圧電体は、圧力に対する圧電効果以外にも特性インピーダンスの変化による周波数偏倚効果を用いることも可能である。この場合はチャージアンプの代わりに周波数計数回路を用いて、発信周波数の変化から圧力を検出する。
[第2の電極部55の説明:図5]
第2の電極部55は、円柱状の部材であり、先端側の端面が水晶圧電体10における後端側の端面に当接し、後端側の端面が絶縁リング60に当接するように配置されている。
第2の電極部55における後端側の端面には、この端面から後端側に突出する円柱状の突出部55aが設けられている。突出部55aは、端面側の基端部と、この基端部の外径よりも小さな外径の先端部とを有する。突出部55aの基端部の外径は絶縁リング60の内径よりも小さく設定されるとともに、突出部55aの長さは絶縁リング60の幅よりも長く突出部55aが絶縁リング60から露出している。
この第2の電極部55は、圧力伝達部材50との間で水晶圧電体10に対して一定の荷重を加えるように作用する部材であり、水晶圧電体10側の端面は、水晶圧電体10の端面の全面を押すことが可能な大きさに形成されるとともに平行かつ平滑面に形成されている。第2の電極部55の外径は後述する内部ケース部材80Aの内周の孔径よりも小さくなるように設定されており、第2の電極部55の外周面と内部ケース部材80Aの内周面との間には隙間があり、電気的に接触しないようになっている。第2の電極部55の材質としては、ステンレスを用いて構成するとよい。
[絶縁リング60の説明:図5]
絶縁リング60は、アルミナセラミックス等により形成された円筒状の部材であり、内径(中央部の孔径)は、第2の電極部55の突出部55aの基端部の外径よりもやや大きく、外径は、内部ケース部材80Aの内周の孔径より少し小さい径に設定されている。第2の電極部55は、突出部55aが絶縁リング60の中央部の孔に挿入されて配置されることで、内部ケース部材80Aの内周と同心に構成される。
[支持部材65の説明:図5]
支持部材65は、先端側から後端側にかけて、内部に、径が異なる複数の孔が形成され、外周面も複数の外周を持つ筒状の部材である。孔は、先端側から後端側にかけて順に形成された、第1の孔と、第1の孔の孔径よりも大きな孔径の第2の孔とから構成される。第1の孔の孔径は、第2の電極部55の突出部55aの基端部の外径よりも大きく、この突出部55aの先端部が支持部材65の第2の孔まで露出する。
第2の孔の孔径は、後述する信号処理部200の伝導部材22において、後述するコイルスプリング70の挿入孔22aを有する先端部の外径よりも大きい。また、第2の孔の孔径は、後述する信号処理部200の絶縁部材23の端部23aの外径よりも小さく、この絶縁部材23の端部23aが第2の孔にしまりばめで嵌合(圧入)される。これにより、支持部材65は、絶縁部材23の後端部を支持する部材として機能する。
又、支持部材65の外周面には、径の異なる外周面が3つあり、先端側の第1の外周面は内部ケース部材80Aを固定したときの逃げ部である。又、第2の外周面はリング状の突起65aを形成し、その外周は内部ケース部材80Aを嵌めこむためのものであり、内部ケース部材80Aの内周面より大きく、内部ケース部材80Aがしまりばめで嵌合(圧入)される。
このとき、支持部材65のリング状の突起65aにより内部ケース部材80Aの後端側のリング状の突起部80dが掛止され位置決めされる。又、第3の外周面はハウジング31の後端側の内周に嵌合する。支持部材65の材質はステンレスを用いて構成するとよい。
[内部ケース部材80Aの説明:図5(a)、(b)]
内部ケース部材80Aは、圧力伝達部材50、水晶圧電体10、第2の電極部55、絶縁リング60および支持部材65などの外周を覆う筒状の部材であり、先端側から筒状部80a、筒状部80b、筒状部80cと、後端側のリング状の突起部80dより構成される。筒状部80aは圧力伝達部材50の外周部に嵌合し、溶接により固定される。
又、筒状部80bは水晶圧電体10に予荷重をかけるための薄肉状のバネ部である。又、筒状部80cはその一部が支持部材65に形成されたリング状の突起65aと嵌合する。又、内部ケース部材80Aの筒状部80dは支持部材65のリング状の突起65aに対して掛止させて位置決めする。内部ケース部材80Aの材質はステンレスを用いて構成するとよい。
[コイルスプリング70の説明:図5]
コイルスプリング70は、内径が第2の電極部55の突出部55aの先端部の外径より少し小さく、外径は、後述する伝導部材22の挿入孔22aの径よりも小さい。コイルスプリング70の内側に第2の電極部55の突出部55aの先端部が軽圧入で挿入されるとともに、コイルスプリング70は、伝導部材22の挿入孔22aに挿入される。
コイルスプリング70の長さは、第2の電極部55と挿入孔22aとの間に圧縮した状態になるように設定され、水晶圧電体10からの圧力信号を伝導部材22に伝導する。コイルスプリング70の材質は、弾性が高く、かつ耐久性、耐熱性、耐触性等に優れた合金を用い、また表面に金メッキを施し、電気伝導性を高める構成とするとよい。
[信号処理部200の説明:図4]
次に、信号処理部200について説明する。信号処理部200は、圧力検出部100の水晶圧電体10から得られる微弱な電気信号である電荷を電圧に変換するチャージアンプで構成された回路基板部21と、水晶圧電体10に生じた電荷を回路基板部21まで導く棒状の伝導部材22と、これら回路基板部21、伝導部材22などを覆う絶縁部材23と、回路基板部21などを密封するOリング24とを備えている。
[回路基板部21の説明:図4]
回路基板部21は、圧力検出部100の水晶圧電体10から得られる微弱な電荷をチャージアンプ手法により電圧に変換する回路を構成する電子部品などが実装されたプリント配線基板210を有する。プリント配線基板210の先端側には、伝導部材22の後端部22bを電気的に接続するために、半田付けなどにより接続されている。
又、接地用の第1の接続ピン21bが半田付けなどにより接続されている。又、プリント配線基板210における後端部には、伝送ケーブル8の先端部のコネクタ8aを介して制御装置6と電気的に接続する第2の接続ピン21cが3つ、半田付けなどにより接続されている。3つの第2の接続ピン21cは、それぞれ、制御装置6からプリント配線基板210への電源電圧およびGND電圧の供給、プリント配線基板210から制御装置6への出力電圧の供給に用いられる。
[伝導部材22の説明:図4]
伝導部材22は、棒状の部材であり、先端部には、第2の電極部55の突出部55aの先端部に挿入されたコイルスプリング70が挿入される挿入孔22aが形成されている。伝導部材22における後端部22bは、回路基板部21のプリント配線基板210に、直接電気的に接続される。伝導部材22の材質としては、真鍮及びベリリウム銅等を用いて構成するとよい。この場合、加工性およびコストの観点からは、真鍮が望ましい。これに対して、電気伝導性、高温強度、信頼性の観点からは、ベリリウム銅が望ましい。
[絶縁部材23の説明:図4]
絶縁部材23は、伝導部材22の外周を覆う伝導部材被覆部231と、回路基板部21のプリント配線基板210の側面および下面を覆う基板被覆部232と、プリント配線基板210に接続された第2の接続ピン21cの周囲を覆うとともに伝送ケーブル8の先端部のコネクタ8aが嵌め込まれるコネクタ部233と、を有している。(図2)
伝導部材被覆部231は、中心線方向には、伝導部材22における先端部を露出するように覆っており、先端側から後端側にかけて段階的に径が異なるように形成された外周面240が設けられている。外周面240は、先端側から後端側にかけて、第1の外周面241と、第1の外周面241の外径よりも大きな外径の第2の外周面242と、第2の外周面242の外径よりも大きな外径の第3の外周面243と、第3の外周面243の外径よりも大きな外径の第4の外周面244と、から構成される。
第1の外周面241の径は、支持部材65の第2の孔の孔径よりも大きく、伝導部材被覆部231における先端部が、支持部材65の第2の孔を形成する周囲の壁にしまりばめで嵌合(圧入)される。第2の外周面242の径は、対する筐体32の第2の孔の孔径よりも小さく形成され、第3の外周面243の径は、対する筐体32の第3の孔の孔径よりも小さく形成されている。又、第4の外周面244の径は、対する筐体32の第4の孔の孔径よりも大きく、伝導部材被覆部231における後端部が、対する筐体32の第4の孔を形成する周囲の壁にしまりばめで嵌合(圧入)される。
これにより、伝導部材被覆部231は、少なくとも中心線方向の両端部が、それぞれ支持部材65、筐体32にしまりばめで嵌合(圧入)し支持されているので、劣悪な振動環境であっても、伝導部材22に与える悪影響を抑制することができ、振動に起因して伝導部材22の接続部の断線や接触不良等を回避することができる。
基板被覆部232は、円筒状の部位であり、その側面には、プリント配線基板210を内部に設置するための矩形の開口部232aが設けられている。又、基板被覆部232における後端側には、筐体32内およびプリント配線基板210設置部を密封するためのOリング24用のリング状の溝232bが形成されている。
コネクタ部233は、基板被覆部232における後端側の端面から突出し、プリント配線基板210に接続された3つの第2の接続ピン21cの周囲を覆うように形成された薄肉部である。コネクタ部233における後端部は開口しており、内部に伝送ケーブル8の先端部に設けられたコネクタ8aを受け入れることができる構成になっている。
又、コネクタ部233における後端側には、孔233aが形成されており、伝送ケーブル8のコネクタ8aに設けられたフックがこの孔233aに掛止することで、伝送ケーブル8のコネクタ8aがコネクタ部233から脱落することを防止できる。(図2、図4)
以上のように構成された絶縁部材23は、樹脂などの絶縁性を有する材料にて成形されている。又、絶縁部材23は、伝導部材22、第1の接続ピン21b、3つの第2の接続ピン21cが一体に構成されている。絶縁部材23は、これら伝導部材22、第1の接続ピン21b、3つの第2の接続ピン21cをセットした金型に加熱した樹脂が押し込まれることで成形(インサートモールド)する方法でもよい。
信号処理部200をユニット化するにあたっては、成形された絶縁部材23の開口部232aから、回路基板部21に回路部品を実装したプリント配線基板210を前述した各接続ピンの下側に挿入し、基板被覆部232の所定位置にネジなどで固定する(図示なし)。次に、プリント配線基板210のパターン部に第1の接続ピン21b、3つの第2の接続ピン21cの先端および伝導部材22の先端を半田付けなどで固定する。又、絶縁部材23の基板被覆部232のリング状の溝232bにOリング24を装着する。Oリング24は、フッ素系ゴムを用いて構成するとよい。
[保持部材300の説明:図3、図4]
次に、保持部材300について説明する。保持部材300は、薄肉円筒状の部材であり、後端部に内周面から内側に突出した突出部300aが設けられている。保持部材300は、筐体32に装着された後、外部から、第5の外周面335に設けられた凹部335aに対応する部位が加圧されることでかしめられる。これにより、保持部材300は、筐体32に対して固定され、信号処理部200が筐体32に対して緩むことを抑制することができる。又、同時に電気的にも接続され、回路基板部21を保護する。
[燃焼圧センサ5sの組立手順の説明:図4、図5、図6]
以上のように構成された燃焼圧センサ5sの組立手順について、図4、図5、図6を用いて説明する。ここで、図6(a)は圧力検出部100内部の水晶圧電体部の組立手順を示し、図6(b)は圧力検出部100の組立手順を示し、図6(c)は筐体32に圧力検出部100を組立てる手順を示す。尚、図6において、溶接部には便宜上「●」印を付してあるが、実際の形状を示すものではなく単に、「溶接部」を示す印である。又、以下の説明においても同様である。
[圧力検出部100の組立手順の説明:図6(a)、(b)、(c)]
まず、図6(a)工程において、支持部材65に内部ケース部材80Aを取り付ける。支持部材65の後端側から内部ケース部材80Aの筒状部を通す。この時、支持部材65の外周に形成されたリング状の突起65aに対して内部ケース部材80Aの内周に形成されたリング状の突起80dが掛止するまで押し込む。支持部材65に形成されたリング状の突起65aの外径は対応する内部ケース部材80Aの内径よりも大きく、しまりばめで嵌合(圧入)される。次に、内部ケース部材80Aの先端側から絶縁リング60、第2の電極部55、水晶圧電体10、圧力伝達部材50の順で挿入する。
次に、水晶圧電体10の感度および直線性を高めるために、予め定められた荷重(予荷重)を作用させる。この場合、組立治具(図示なし)を用いるとよい。組立治具に前述の組立体をセットする。次に、支持部材65と圧力伝達部材50とに、中心線方向に互いに押しあう方向に所定の荷重をかけると同時に、内部ケース部材80Aの中央部に形成された薄肉状のバネ部80b(図5(b)参照)の段差を利用して、内部ケース部材80Aを引き延ばす方向(中心線方向)に荷重を加える。そして内部ケース部材80Aの中心線方向の変位量が予め定められた長さとなったところで、内部ケース部材80Aの筒状部80aと圧力伝達部材50との係合部を固定する(溶接1)。これにより、水晶圧電体部が組立られる。
尚、固定方法としては内部ケース部材80Aの外部から中心線方向に向けて一周にわたってレーザビームを照射する方法を採用するとよい。尚、レーザビームは全周を照射してもよいし、円周方向に等間隔にスポット照射してもよい。以降の溶接部の説明についても同様である。
又、内部ケース部材80Aを引き延ばす方向(中心線方向)に荷重を加える方法として、内部ケース部材80Aに形成された薄板状のバネ部80bの段差を利用するとしたが、筒状部80aに専用の溝又は切り欠を設けてこれを薄肉状のバネ部と同等の効果を生じるバネとして利用してもよい。これにより、水晶圧電体10に予め定められた予荷重が作用し、固定された状態となる。
次に、図6(b)工程において、ハウジング31に前述の水晶圧電体部を組立てる。ハウジング31の先端側から水晶圧電体部を最奥まで挿入しておく。次に、ハウジング31の前端部31aに対し、ダイヤフラム40を、進入部41aをガイドにしてしまりばめで嵌合(圧入)させる。次に、ハウジング31の前端部31aとダイヤフラムの突当て面41bが当接した状態で係合部を固定する(溶接2)。次に、ハウジング31内に仮組立されていた水晶圧電体部を、支持部材65の後端面側から先端面側に向けて押す(D方向)。ダイヤフラム40の内側部42の変位量を測定し、ダイヤフラム40の突出部42cと圧力伝達部材50の突当て面が当接したところでハウジン31と支持部材65を固定する(溶接3)。これにより、圧力検出部が組立られる。
次に、図6(c)工程において、(b)工程で組立られた圧力検出部を筐体32に組立てる。尚、ここで、予めコイルスプリング70を第2の電極部に形成された突出部55aに組み付けておく。次に、筐体32の孔部321に対して(b)工程で組立られた圧力検出部のハウジング31の第2の外周部を挿入し、しまりばめで嵌合(圧入)させる。筐体32の先端面にハウジング31の突起部315の後端面315bが当接した状態で(b)工程の組立体を固定する(溶接4)。これにより圧力検出部100が完成する。
[信号処理部200の組立手順の説明:図4、図5]
次に、信号処理部200を筐体32に挿入する。絶縁部材23の先端部23aが支持部材65の第2の孔にしまりばめで嵌合(圧入)され、同時に第2の電極部に形成された突出部55aに組み付けられたコイルスプリング70が伝導部材22に設けられた穴部22aに挿入される。一方で筐体32の突当面340aに形成されたピン用穴部340aに第1の接続ピン21bがしまりばめで嵌合(圧入)される。
次に、保持部材300を後端面側から絶縁部材23を嵌めこむ。保持部材300の後端面300aが基板被覆部232の端面232cに突当った状態で止める。次に、筐体32の後端部に形成された凹部335aに対して保持部材300の対応部をリング状にかしめる。これにより、筐体32に対して信号処理部200が固定され、振動等により緩むことのない燃焼圧センサ5sが完成する。
[燃焼圧センサ5sの電気的な接続構成および動作:図4、図5]
次に、燃焼圧センサ5sにおいて、電気的な接続構成及び動作について説明する。水晶圧電体10の先端側の端面10aは金属製の圧力伝達部材50、および、金属製のダイヤフラム40を介して(又は、金属製の内部ケース部材80Aおよび支持部材65を介して)金属製のハウジング31と電気的に接続される。又、信号処理部200においては、金属製のハウジング31と溶接により電気的に接続された筐体32の当接面340aに設けられたピン用穴部340aに第1の接続ピン21bがしまりばめで嵌合(圧入)されるため、プリント配線基板210のGNDが筐体32に接地される。
一方、水晶圧電体10の後端側の端面は金属製の第2電極部55および突出部55aからコイルスプリング70、金属製の伝導部材22、を介してプリント配線基板210に半田付けされ、電気的に接続される。又、第2の電極部55および突出部55aは絶縁体よりなる絶縁リング60により、周囲の支持部材65からは電気的に絶縁されており、又、内部ケース部材80Aの内周面からも離れていて電気的に絶縁されている。尚、この例では、水晶圧電体10の側面とハウジング30の内壁面とが接触し得る構造になっているが、水晶圧電体10が絶縁体で構成されていることにより抵抗値が極めて大きいことと、圧力変化に伴って発生する電荷が、水晶圧電体10における中心線方向の両端部に発生することとにより、特に問題とはならない。
以上のように構成された燃焼圧センサ5sはシリンダヘッド4に装着されることにより(図2参照)、筐体32はその雄ネジ部332aからシリンダヘッドの連通孔4aに設けられた雌ネジ部4eを介してシリンダヘッド4に電気的に接続され、車体に接地される。そして、内燃機関1が作動すると、燃焼室Cに発生する燃焼圧が燃焼圧センサ5sの先端のダイヤフラム40に作用し、圧力伝達部材50を介して水晶圧電体10に作用し、燃焼圧に応じた電荷が生じる。水晶圧電体10に生じた電荷は回路基板部21に供給され、回路基板部21にて電圧変換がなされ、圧力応じた電圧が第2の接続ピン21c、伝送ケーブル8を介して制御装置6に供給される。
[燃焼圧センサ5sの効果]
以上説明した本発明の第1の実施形態によれば、次に示す効果が得られる。
(効果1)
第1に、水晶圧電体を内部ケース部材の内部に配設し、さらに外側に中空筒状のハウジングを設け2重構造にすることで、燃焼室の温度を水晶圧電体に対して伝え難くなり、温度変化による水晶圧電体の特性変化を抑制する。これにより、サイクル間温度ドリフトのような短期の温度ドリフトを抑制する効果があり、高精度の圧力信号を得ることができる。
(効果2)
また、水晶圧電体に加える予荷重は、一端を圧力伝達部材に固定し、他端を支持部材に固定し、二つの固定部間が筒状部よりなる内部ケース部材80Aに予荷重を与える機能を持たせるようにしたので、この予荷重をダイヤフラムに予荷重を与える機能を持たせる必要がない。これにより、ダイヤフラムは燃焼圧を受圧し、圧力伝達部材に伝達するために必要な剛性のみを持てばよい。すなわちダイヤフラムの機能分離が図られ、燃焼圧の受圧感度を向上させ、高精度の圧力信号を得ることができる。
(効果3)
さらに、内部ケース部材は一端が圧力伝達部材に固定され他端は支持部材に固定され、固定部間が筒状部よりなり、筒状部を荷重調整部としたため、固定部間に薄肉状のバネ部を形成することができる。それにより、長さの変化に対して荷重変化の小さいバネを設計できる。つまり、圧力伝達部材、水晶圧電体、第2の電極、絶縁リング、内部ケース部材の中心線方向の寸法バラツキに対して荷重変動が少ないバネ構成を得られる。これにより、水晶圧電体に対して精度の高い予荷重を与えることができ、感度および直線性を高め、高精度の圧力信号を得ることができる。そしてこの様な構造とすることによって、水晶圧電体の本来の特長である高耐衝撃性を活かした高精度かつ高耐久の燃焼圧センサの実現が可能となる。
なお内部ケース部材80Aの筒状部80bを水晶圧電体10に予荷重をかけるための薄肉バネ部としたが、かかる形態に限定されない。すなわち薄肉状のバネ部80bの構造は自由に構成することができる。又、水晶圧電体に予荷重を与える組立方法の説明において、「薄肉状バネ部80bの段差を利用して、内部ケース部材80Aを引き延ばす方向に荷重を加える」としたが、かかる形態に限定されない。例えば、内部ケース部材80Aの筒状部80aに、リング状の溝を設け、その溝を利用して引き延ばす方向に荷重を加えてもよい。又、同様に、筒状部80aに切り欠きを設けてその切り欠きを利用して引き延ばす方向に荷重を加えてもよい。
〔第2の実施形態〕
次に、第2の実施形態の燃焼圧センサ5Aの構成および組立手順について、図7、図8を用いて説明する。第2の実施形態の燃焼圧センサ5Aは、前述した第1の実施形態の燃焼圧センサ5sにおいて、ダイヤフラムと圧力伝達部材の当接部のバウンスおよび摩耗を防止することを目的として、ダイヤフラムと圧力伝達部材を一体構成にしたものであるが、他の基本的な構成は第1の実施形態と同様であるので同一要素、同じ組立工程には同一番号を付し、重複する説明は一部省略する。
図7(a)はダイヤフラム45を使用した燃焼圧センサ5Aの圧力検出部100の拡大断面図であり、図7(b)はダイヤフラム45の拡大断面図である。図7(a)、(b)において、第2の実施形態の燃焼圧センサ5Aのダイヤフラム45は第1の実施形態におけるダイヤフラム40と圧力伝達部材50を一体構成にしたものである。第1の実施形態においてはダイヤフラム40の突出部42aと圧力伝達部材50とが当接していた部分を境にして別体構成となっていたが、その部分を一体構成としたものである。
圧力検出部100において、ダイヤフラム45の受圧部であるダイヤフラム部(40)は、第1の実施形態におけるダイヤフラム40と同じ構成になっていて、ハウジング31の先端面31aにダイヤフラム45の当接面41bが接触するまで嵌合(圧入)し、その後、突当て面を溶接する構成になっている。また、圧力伝達部(50)の円柱状の外周面は内部ケース部材80Aと固定され、後端面は水晶圧電体10に当接する構成になっている。次に、水晶圧電体10に接する第2の電極部55、第2の電極部55に接する絶縁リング60、絶縁リング60を支持する支持部材65、支持部材65及び内部ケース部材80Aから構成される水晶圧電体部は、第1の実施形態と同様なので詳細な説明は省略する。又、信号処理部200についても、構成と機能は第1の実施形態と同様なので詳細な説明は省略する。
一方、図8に示す圧力検出部100の組立方法において、一部手順が異なるところがあるので詳細に説明する。図8(a)工程において、第1の実施形態の圧力伝達部材50が本実施形態ではダイヤフラム45(一体構成)に変わっている。ここでの組立手順は同じであるが、ダイヤフラム45の形状が大きくなっているので、支持部材65に内部ケース部材80Aを取り付け、絶縁リング60、第2の電極部55、水晶圧電体10、圧力伝達部(50)の順で挿入し固定する工程では、予荷重を与えて溶接するときにダイヤフラム45の形状に合わせて治具の形状を変える必要がある。
次に、図8(b)工程において、組立手順の異なるところを説明する。第1の実施形態において、ハウジング31に水晶圧電体部を組立てる際、先にハウジング31の先端側から前述の水晶圧電体部を最奥まで挿入しておく。次にハウジング31の前端部31aにダイヤフラム40を、進入部41aをガイドにしてしまりばめで嵌合(圧入)させる工程になっている。
しかし、第2の実施形態では、ハウジング31の前端部31aにダイヤフラム45を、進入部41aをガイドにしてしまりばめで嵌合(圧入)させると同時に、水晶圧電体部は自動的に位置決めされる。そのため、ダイヤフラム40と圧力伝達部材50との当接を測定する工程は不要となり、溶接2と溶接3は同時に行うことができる。次に図8(c)工程では、圧力検出部100の組立工程以降は第1の実施形態の工程と同じであるため詳細な説明は省略する。以上により、第2の実施形態による燃焼圧センサ5Aを得る。
[第2の実施形態の効果]
(効果1)
以上の構成によって、燃焼圧センサ5Aは、ダイヤフラム45のダイヤフラム部(40)と圧力伝達部(50)が一体構成になっているため、ダイヤフラム部と圧力伝達部の組立工程において、当接する位置を測定しながら位置決めする工程が不要となる。これにより、ダイヤフラム部と圧力伝達部の位置のバラツキがなくなり、高精度に圧力が伝達される。
(効果2)
内燃機関の燃焼工程において、ノッキングなどが発生した場合に、異常燃焼とともに過大な圧力変動が発生する。そのとき、燃焼圧センサの検出部において、ダイヤフラムと圧力伝達部材の当接面でバウンスが発生し、ダイヤフラムと圧力伝達部材の間で圧力が正確に伝達されず、さらには当接部が摩耗するような現象が起きる。しかし、第2の実施形態においては、ダイヤフラム部(40)と圧力伝達部(50)が一体に構成されているため、当接部にバウンスが発生せず、摩耗も発生しない。これにより、高精度で高信頼性の圧力信号を得ることができる。なお水晶圧電体の優れた高耐衝撃性による利点は、第1の実施形態の効果と同じであり、重複する説明は省略する。
〔第3の実施形態〕
次に、第3の実施形態の燃焼圧センサの構成および組立手順について、図9を用いて説明する。第3の実施形態の燃焼圧センサ5Bは、前述した第2の実施形態の燃焼圧センサ5Aにおいて、内部ケース部材80Aの荷重調整部である薄肉状のバネ部80b(図5(b)参照)の範囲が中央部にあったものを固定部間全体に広げたものである。他の基本的な構成は第2の実施形態と同様であるので同一要素には同一番号を付し、重複する説明は一部省略する。
図9(a)は内部ケース部材80Bを使用した燃焼圧センサ5Bの圧力検出部100の拡大断面図であり、図9(b)は内部ケース部材80Bの部分断面図である。図9(a)、(b)において、本実施形態が第2の実施形態の燃焼圧センサ5Aと異なるところは、内部ケース部材の構造が異なる点であり、それにともない薄肉バネ部の形状と内部ケース部材と支持部材65との固定方法が異なる。本実施形態における内部ケース部材80Bの荷重調整部では、第2の実施形態において薄肉バネ部80b(図5(b)参照)が中央部にあったが、本実施形態では、図9(b)の薄肉状のバネ部80bbとして示す様に、内部ケース部材80Bの固定部間全体に広げた構成になっている。
圧力検出部100において、支持部材65の後端側から内部ケース部材80Bの筒状部を通し、支持部材65の外周に形成されたリング状の突起65aに対して内部ケース部材80Bの端部を固定(溶接)する。次に、内部ケース部材80Bの先端側から絶縁リング60、第2の電極部55、水晶圧電体10、ダイヤフラム45の順で挿入する。
次に、水晶圧電体10の感度および直線性を高めるために、予め定められた荷重(予荷重)を作用させる。この場合、組立治具(図示なし)を用いるとよい。組立治具に前述の組立体をセットする。次に、支持部材65と圧力伝達部材50は中心線方向に互いに押しあう方向に所定の荷重をかけると同時に、内部ケース部材80Bを引き延ばす方向(中心線方向)に荷重を加える。そして内部ケース部材80Bの中心線方向の変位量が予め定められた長さとなったところで、内部ケース部材80Bの筒状部80bbとダイヤフラム45の圧力伝達部(50)との係合部を固定する(溶接)。これによりダイヤフラム45側と支持部材65側の両方の固定部が溶接された構成となる。
尚、固定方法としては、第1、第2の実施形態と同様に中心線方向に向けて一周にわたってレーザビームを照射する方法を採用するとよい。又、内部ケース部材80Bを引き延ばす方向(中心線方向)に荷重を加える方法として、内部ケース部材80Bに形成された薄肉状のバネ部80bbに、溶接部を避けた位置に段差部を設けて利用する構成としてもよいし、筒状部80bbに専用の切り欠を設けて利用してもよい。これにより、水晶圧電体10に予め定められた予荷重が作用した状態となる。次に、圧力検出部100の組立工程以降は第1、第2の実施形態の工程と同じであるため詳細な説明は省略する。以上により、第3の実施形態による燃焼圧センサ5Bを得る。
[第3の実施形態の効果]
(効果1)
以上の構成によって、燃焼圧センサ5Bは、受圧部と圧力伝達部が一体構成となったダイヤフラムと、一端が圧力伝達部材に固定され他端は支持部材に固定され固定部間が筒状部よりなり筒状部を荷重調整部とした内部ケース部材80Bとの構成において、固定部間全てをバネ部として利用できるようにした。これにより、長さの変化に対して、より荷重変化の小さいバネを設計できる。つまり、圧力伝達部材、水晶圧電体、第2の電極、絶縁リング、支持部材の中心線方向の寸法バラツキに対して荷重変動がより少ないバネ手段を得られる。これにより、水晶圧電体に対して精度の高い予荷重を与えることができ、水晶圧電体の高い耐衝撃性と相まって感度および直線性の高い圧力信号を、長期に亘って安定的に得ることができる。
(効果2)
内部ケース部材80Bは一端を圧力伝達部材に固定し、他端を支持部材に固定し、固定部間が筒状部よりなる構成において、支持部材側は溶接又は掛止によるいずれかの固定方法を選択できる。これにともない、内部ケース部材80Bの形状は掛止部が不要な単純な筒形状(パイプ)を採用することができる。これにより、低コストの内部ケース部材80Bを採用した構成とすることができる。なお水晶圧電体の優れた高耐衝撃性による他の利点は、第1の実施形態の効果と同じであり、重複する説明は省略する。
なお、第3の実施形態では、ダイヤフラムは受圧部と圧力伝達部が一体となった構成としたが、かかる形態に限定されない。初期はダイヤフラム40と圧力伝達部材50の別体構成(図5)においても可能である。まず、圧力伝達部材50の外周部に掛止用段差を設け、内部ケース部材80Bの先端面側の内周にリング状の突起を設けてそれらを掛止させることができる。その構成では、支持部材側の固定は溶接を採用する。次に、内部ケース部材80Bの両端の固定が行われた後に、ダイヤフラム40と圧力伝達部材50の当接部を溶接により接合することができる。これにより、最終的に一体構成のダイヤフラムであっても掛止と溶接の組合せを自由に選べて、しかも一体構成のダイヤフラムの効果が得られる。
1 内燃機関
2 シリンダブロック
2a シリンダ
3 ピストン
4 シリンダヘッド
4a 連通孔
5、5s、5A、5B 燃焼圧センサ
6 制御装置
7 シール部材
8 伝送ケーブル
8a コネクタ
10 水晶圧電体
10a 水晶圧電体の電極側端面
21 回路基板部
21b 第1の接続ピン
21c 第2の接続ピン
22 伝導部材
23 絶縁部材
24 Oリング
31 ハウジング
32 筐体
40 ダイヤフラム
41 円筒状部
42 内側部
42a 突出部
42b 凹部
45 一体型ダイヤフラム
50 圧力伝達部材(第1の電極部)
55 第2の電極部
55a 突出部
60 絶縁リング
65 支持部材
70 コイルスプリング
80A、80B 内部ケース部材(加圧部材)
80a、80c 筒状部
80b、80bb 薄肉状のバネ部
80d 突起部
100 圧力検出部
200 信号処理部
210 プリント配線基板
240、241、242、243、244 外周面
300 保持部材
315 突出部
315a 傾斜面
315b 垂直面
320、321、325 孔
330、331 外周面
4e、332a 雄ねじ
335a 溝部
340 突当面
340a 孔部
507 圧力センサ・トランスミッタ
512 点火プラグ
513 燃料噴射ノズル
514 空気量調節バルブ
515 燃焼室
516 演算ユニット
C 燃焼室

Claims (3)

  1. 燃焼室内の燃焼圧を受けて電気信号を発生させる圧力検出部と、検出信号を処理する信号処理部と、検出信号を信号処理部へ伝送する伝送部とを有する燃焼圧センサにおいて、
    前記圧力検出部は中空筒状のハウジングと、前記中空筒状のハウジングの受圧側先端に配設されたダイヤフラムと、前記ハウジング内の軸方向であって、前記ダイヤフラムの後端に当接する圧力伝達部材と、前記圧力伝達部材の後端に当接する水晶圧電体と、前記水晶圧電体の後端を支持する支持部材と、一端が前記圧力伝達部材に固定され他端は前記支持部材に固定された中空筒状の内部ケース部材とを備え、前記水晶圧電体は前記内部ケース部材の内部に配設されていることを特徴とする燃焼圧センサ。
  2. 前記内部ケース部材は、前記水晶圧電体に予荷重を付加するための加圧部材であることを特徴とする請求項1記載の燃焼圧センサ。
  3. 前記加圧部材は、薄肉状のバネ部よりなる荷重調整部を有することを特徴とする請求項2に記載の燃焼圧センサ。
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