以下、図面に基づき本発明を代表する一実施の形態を説明する。
図1〜図28は、本発明の一実施の形態を示している。
本実施の形態に係る座席装置10は、鉄道車両等の乗物の客室内に装備されるものであり、座部30の後端側に背凭れ40が傾動可能に支持されて構成されている。以下、鉄道車両用の座席に適用した例について説明する。
図1に示すように、座席装置10は、客室内のフロア上に固定される脚台11に台枠20(図2参照)が支持され、台枠20上に2人掛けの座部30および背凭れ40が支持されている。図2に示すように、脚台11に対して台枠20は、回転機構12を介して略水平方向に180度回転可能に支持され、前後逆向きに方向転換できる。回転機構12は、座席を前後それぞれの向きに拘束するロック機構を備えており、足踏ペダル13の踏み込み操作でロックを解除するように構成されている。なお、回転機構12の構成は周知であるので詳細な説明は省略する。
図1に示すように、2つ並んだ座部30の両側には、それぞれ座席側部を覆う袖状のサイドアームレスト14が設けられている。また、各座部30の間には、仕切りと成るコンソール状のセンターアームレスト15が設けられている。各サイドアームレスト14やセンターアームレスト15は、それぞれ前記台枠20側に固設されている。
センターアームレスト15の前側の両側壁には、それぞれ操作ボタン16,17が設けられている。操作ボタン16は、後述するリクライニング機能のロックを解除するボタンであり、背凭れ40を後方に倒したり、倒れた背凭れ40を元の起立した初期位置に戻す等、背凭れ40を位置調整する際に押すものである。また、操作ボタン17は、後述するレッグレスト50の位置を電動で調整する際に操作するスイッチである。
図3に示すように、前記台枠20は、前記脚台11の上方に固設された前後一対のシャフト21,22と、各シャフト21,22の端部間を結ぶように溶接された左右一対のフレーム23,23から略四角形の枠形状に構成されている。各シャフト21,22は、金属製で円形閉断面のパイプ材から成り、各フレーム材23は、金属製で角形閉断面のパイプ材から成る。このような台枠20上に、座部30と背凭れ40は固設されている。
図4〜図7に示すように、座部30は、フレーム構造である座枠300にクッション体を装着し、クッション体の表面を表皮材で被覆して成る。図8〜図11に示すように、座枠300は、左右一対の側部フレーム301,301と、各側部フレーム301の前端側に連結された前方フレーム枠302と、各側部フレーム301の後端間に架設した後部フレーム303とから略四角形の枠形状に形成されている。
前方フレーム枠302は、両側方向に延びてインナー側に少し突出した細幅長方形の枠形状であり、アウター側の側部は前記側部フレーム301の前端側の延長であるが、インナー側には別部品である短い側部フレーム302aが配されている。この側部フレーム302aと前記側部フレーム301の前端側との間には、前後に平行に並ぶ一対の前部フレーム302b,302cが一体に連結されている。
各フレーム301,302a,302b,302c,303は、何れもアルミニウム合金等の軽量金属材料により略四角形等の閉断面形状に成形されたものであり、互いに溶接されて連結されている。また、各側部フレーム301間には、枠形状の開口部分を覆うようにして、複数本の略S字状のスプリング304が前後に並ぶように張設されている。このような座枠300に装着するクッション体は、発泡ウレタン等の弾性材質により人間工学に基づいて着座者の臀部に安楽感をもたらす形状に成形されている。
また、図4,図5に示すように、座枠300の前端部である前部フレーム302bの上側に沿って、当該部位の上方に位置するクッション体に加わる着座時よりも大きな荷重を受けるための補強部材310が固設されている。補強部材310は、前部フレーム302bと同じく両側方向に延び、かつ前部フレーム302bの上側より斜め前方へ延出した後に屈曲して、略水平に前方へ延出した形状に形成されている。
図8〜図11に示すように、補強部材310は、前部フレーム302bの両側、詳しくはアウター側の側部フレーム301の前端およびインナー側の側部フレーム302aに、それぞれ前方へ延出する状態に固設された一対の両端ブラケット311,311と、各両端ブラケット311の間で前部フレーム302bより前方へ延出する状態に固設された中間ブラケット312と、各両端ブラケット311および中間ブラケット312の各上端縁間に渡り両側方向に延びる状態に固設された着座パネル313とを備えて成る。
図12〜図14に示す各両端ブラケット311は、それぞれ左右対称に形成されており、アウター側の側部フレーム301の前端側壁またはインナー側の側部フレーム302aの側壁に沿って固設する取付片311aと、該取付片311aの前端より斜め前方へ延出した傾斜支持片311bと、該傾斜支持片311bの前端より屈曲して略水平に前方へ延出した水平支持片311cとが形成された金属製の板材から成る。なお、取付片311aは、座枠300側に対してリベット止めで固設されるが溶接しても良い。また、水平支持片311cは、略水平な向きのフランジ状に折り曲げられているが、多少前下がりに傾斜している。
図15〜図17に示す中間ブラケット312は、前部フレーム302bの中央前壁に沿って固設する取付片312aと、該取付片312aの一端より直角に折れ曲がり斜め前方へ延出した傾斜支持片312bと、該傾斜支持片312bの前端より屈曲して略水平に前方へ延出した水平支持片312cとが形成された金属製の板材から成る。なお、取付片312aも、座枠300側に対してリベット止めで固設されるが溶接しても良い。また、水平支持片312cも、略水平な向きのフランジ状に折り曲げられているが、多少前下がりに傾斜している。
図8〜図11に示す着座パネル313は、前部フレーム302bの上壁に沿って固設される基端縁部313aと、各ブラケット311,312の傾斜支持片311b,312bの上端縁に沿って配される傾斜面部313bと、各ブラケット311,312の水平支持片311c,312cの上端縁に沿って配され固設される水平面部313cとが形成された軽量金属製の薄板材から成る。着座パネル313は、前記各ブラケット311,312よりも剛性が低くても良く、重量を抑えるために軽量金属を用いている。また、水平面部313cは、前記水平支持片311c,312cと同様に多少前下がりに傾斜している。
前記着座パネル313の水平面部313cには、クッション体を着脱自在に装着するための止着手段として面ファスナ305が貼着されている。面ファスナ305は、一般にフック状に起毛された面側とループ状に起毛された面側とから成るが、何れか一方が水平面部313cに貼着され、他方はクッション体の底部において合致する位置に貼着されている。また、前記後部フレーム303の上面にも、同様の面ファスナ306が貼着されている。
図4に示すように、座枠300および補強部材310の側面(断面)形状によれば、補強部材310によって着座者のヒップポイントを含む臀部全体を支える座枠300の基準上面が嵩上げされることはなく、後部フレーム303から前部フレーム302bにかけて前上がりに傾斜した座面下には、クッション体の充分な厚さが確保されている。また、補強部材310、特に着座パネル313の水平面部313cの真上は、着座者の大腿部を支える部位であり、クッション体の相対的な厚さが薄くなっても着座感を特に損ねることはない。
また、図3に示すように、座部30の前端側にはレッグレスト50が配設されている。図18に示すように、レッグレスト50が駆動機構によって足載位置および収納位置の間で変位可能に支持されている。ここで前記着座パネル313の傾斜面部313bないし水平面部313cの下方には、レッグレスト50が変位する際の軌跡が干渉しないためのクリアランスが確保されている。
詳しく言えばレッグレスト50は、フレーム構造である略四角形のパネル板500にクッション体を装着し、クッション体の表面を表皮材で被覆して成る。パネル板500は、クッション体が装着される外装パネル500aが、ベースフレーム500bに対して伸縮自在に連結されて成る。
図18に示すように、ベースフレーム500bの上端部には、後方へ突出する回動ブラケット501が固設されている。回動ブラケット501は、前記前部フレーム302cの前壁に固設された支持ブラケット307に対して回動可能に連結されている。また、外装パネル500aの背面側で前記回動ブラケット501より下側には、後方へ突出するリンク片502が固設されている。このリンク片502には、レッグレスト50の駆動機構を成すアクチュエータとして電動シリンダー510が連結されている。
電動シリンダー510は、長手方向に延びるシリンダー本体511の先端側である筒状部512の先端口より駆動ロッド513が電動で軸方向に出没するように構成されたものである。シリンダー本体511は固定側本体であり、駆動ロッド513が可動部に相当する。このような電動シリンダー510は、前記台枠20内に配設されている。ここで駆動ロッド513の先端が、前記外装パネル500a側のリンク片502に対して回動可能に連結されている。
電動シリンダー510は、レッグレスト50に連結されている状態で、台枠20内で位置ずれしないように配設されている。ここで電動シリンダー510におけるシリンダー本体511の基端側は、台枠20側に位置決めされた状態に固定できれば良い。具体的には例えば、シリンダー本体511の基端側を台枠20の後端側に対して上下に回動可能に連結したり、あるいは、シリンダー本体511の基端側を前方より後方に向けてスライドさせて着脱自在に嵌ることができる凹部等を設けても良い。
一方、電動シリンダー510のうち最も位置ずれを防止すべき部位である、シリンダー本体511の先端側である筒状部512は、前記座枠300側に設けられた係合部308によって動かないように保持される。係合部308は、前記座枠300の枠形状のうち前端部である前部フレーム302cの下側に沿って、下向きに突設されたブラケットから成る。このブラケットは金属片を矩形に折り曲げたものであり、前部フレーム302cの下側に溶接またはリベット止め等で固設されている。
このようなブラケットから成る係合部308の下端面が、シリンダー本体511の筒状部512に上方から当接することで、該筒状部512は台枠20のシャフト21に対して押さえ付けられた状態に保持され、変位不能に位置決めされることになる。一方、メンテナンス時に台枠20より座枠300を取り外すと、係合部308は筒状部512より離脱するので簡単に保持が解除される。
また、図10に示すように、前記係合部308であるブラケットの下端面には、電動シリンダー510の筒状部512に着脱自在な止着手段として面ファスナ309が貼着されている。面ファスナ309は、前記面ファスナ305と同様にフック状に起毛された面側とループ状に起毛された面側とから成り、何れか一方が係合部308の下端面に貼着され、他方は前記筒状部512の上側に貼着されている。
このような電動シリンダー510の駆動に伴って、回動ブラケット501とリンク片502のリンク動作と、ベースフレーム500bと外装パネル500aの伸縮により、レッグレスト50は、図18中に実線で示した座部30の前端より垂下した収納位置から、同図中に想像線で示したように徐々に足載位置に変位する。ここでレッグレスト50は、収納位置より下端側が上方に持ち上がるように回動してから前方へスライドし、着座者が脹ら脛を休める足載位置に変位するように設定されている。
電動シリンダー510には、図3に示したが電力を供給するための給電線514が配設されている。また、電動シリンダー510を駆動するための操作ボタン17は、前述したようにセンターアームレスト15に設けられている。この操作ボタン17の操作によって、レッグレスト50を収納位置ないし足載位置に自動で変位させることができる。なお、レッグレスト50は、収納位置と足載位置の間における任意の位置に保持することができるようになっている。
また、図3に示すように、パネル板500の背面側には、前記電動シリンダー510と平行に配設された油圧シリンダー520が連結されている。油圧シリンダー520は、筒本体に対してピストンロッドが出没可能に挿入されて構成され、ピストンロッドは筒本体に収まる方向に付勢されており、パネル板500を収納位置の方向に戻すように常時付勢している。
前記電動シリンダー510は、油圧シリンダー520の付勢力に抗してレッグレスト50を変位させたり保持するが、電動シリンダー510によるロック状態が解除されると、レッグレスト50は、油圧シリンダー520の付勢力によって直ぐ収納位置に戻るように設定されている。ここで電動シリンダー510は、前記回転機構12の足踏ペダル13の操作に連動してロック状態が解除される。よって、座席を方向転換する際には、操作ボタン17を操作することなくレッグレスト50は直ぐ収納位置に戻るため、レッグレスト50が前後座席と干渉して回転の邪魔になることがない。
次に、背凭れ40の詳細について説明する。
図19〜図22に示すように、背凭れ40は、フレーム構造であるバックフレーム400にクッション体41を装着し、クッション体41の表面を表皮材420で被覆して成る。バックフレーム400は、左右一対の側部フレーム401,401と、各側部フレーム401の上端間に架設した上部フレーム402等を備え、略四角形の枠形状に形成されている。
各フレーム401,402は、何れもアルミニウム合金等の軽量金属材料により略四角形等の閉断面形状に成形されたものであり、互いに溶接されて連結されている。また、各側部フレーム401間の途中にも、両側方向に延在する補強フレームが架設されたり、クッション体41を広い面で受けるためのパネルフレーム等が固設されている。このようなバックフレーム400に装着するクッション体41は、発泡ウレタン等の弾性材質により人間工学に基づいて着座者の背中に安楽感をもたらす形状に成形されている。
図2に示すように、各側部フレーム401の下端には、それぞれ前方へ突出するアーム部403が一体に設けられている。各アーム部403の前端側は、前記台枠20の後端側に立設された支持フレーム24に、リクライニング機構の回転軸25を介して傾動可能に支持されている。各アーム部403の前端側には、回転軸25を軸支する軸受404が設けられている。なお、背凭れ40の傾動角度は、図1中で左右に並ぶ背凭れ40のうち左側に示す最大起立時の初期位置から右側に示す最大後傾時のリクライニング位置までの所定の角度範囲内に制限される。
また、図19,図20に示すように、各側部フレーム401のうちインナー側に位置する方の前記アーム部403の下端には、前記回転軸25よりさらに下方に突出する被係合部405が一体に設けられている。この被係合部405には、図2に示すように、リクライニング機構の構成部品である油圧シリンダー410が連結されている。油圧シリンダー410は、筒本体411に対してピストンロッド412が出没可能に挿入されて構成され、ピストンロッド412は筒本体411に収まる方向に付勢されているが、任意の量だけ突出した位置に固定することができるものである。
前記バックフレーム400側にある被係合部405には、油圧シリンダー410の筒本体411の基端部が回動可能に連結されており、筒本体411より出没するピストンロッド412の先端部は、前記台枠20の前端側の適所に回動可能に連結されている。このような油圧シリンダー410によって、背凭れ40を任意の傾倒角度に保持することができる。すなわち、油圧シリンダー410がロック状態のとき、筒本体411よりピストンロッド412が所定量だけ突出した状態に固定され、背凭れ40を任意の傾倒角度に保持できるように構成されている。
油圧シリンダー410のロック状態を解除すると、筒本体411にピストンロッド412が収まる付勢力によって、背凭れ40は初期位置まで復帰するようになっている。ここでロック状態を解除するための操作ボタン16は、前述したようにセンターアームレスト15に設けられている。この操作ボタン16を押すことにより、油圧シリンダー410のロック状態を解除でき、かかるロック解除状態で油圧シリンダー410の付勢力に抗して背凭れ40を後方へ押すことにより、背凭れ40を任意の傾倒角度にリクライニングさせることができる。
図25に示すように、前記回転軸25が枢支された前記台枠20側の支持フレーム24には、前記被係合部405の後端面405aを臨む位置に突出し、該被係合部405の後端面405aに係合した状態で押し引き可能に進退する係合ボルト27が設けられている。図26に示すように、支持フレーム24には、ネジ孔(図示せず)が穿設された支持ブラケット26が固設されており、支持ブラケット26のネジ孔に合致する位置に、係合ボルト27が螺合する固定ナット28が溶接により一体に固着されている。
前記支持フレーム24のネジ孔と固定ナット28に係合ボルト27を螺合させるが、係合ボルト27には、さらにロック用の可動ナット29が螺合している。係合ボルト27は、可動ナット29を固定ナット28から離すように緩めた状態で正逆両方向に回転させることができ、可動ナット29を固定ナット28に係合するように締め付けた状態では回転操作ができないようにロックされる。係合ボルト27は、その頭部27aが被係合部405側を向き、軸部27bの先端が座席後方を向くように螺合している。
このような係合ボルト27の回転操作により、背凭れ40の最大起立時における初期位置の傾倒角度を無段階に調整することができる。すなわち、係合ボルト27(の頭部27a)を被係合部405と係合する方向に前進させると、回転軸25を支点として背凭れ40は後方へ傾く一方、係合ボルト27(の頭部27a)を被係合部405から離脱する方向に後退させると、回転軸25を支点として背凭れ40は前方へ傾くことになる。
係合ボルト27の頭部27aは半球形に形成されており、該頭部27aが前記被係合部405の後端面405aに対して当接することで係合した状態となる。係合ボルト27の軸部27bの先端は、支持ブラケット26の後方に突出しており、その先端面には、前記頭部27aにある溝とは別にドライバーで回転操作が可能なプラスないしマイナス形の溝が形成されている。よって、係合ボルト27は、その軸部27bの先端側からもドライバーをあてがって回転操作できるようになっている。
また、前記被係合部405は、前記側部フレーム401のアーム部403と一体の金属材で形成されているが、該被係合部405のうち特に係合ボルト27が係合する側である後端面405aは、樹脂材406によって被覆されている。図27,図28に示すように、樹脂材406は略コ字形断面の図示した形状に、ナイロン等の合成樹脂で一体成形されたものである。
樹脂材406のうち前記被係合部405の後端面405aに沿わせる正面壁406aの内側には、前記後端面405aに止着するための両面テープ407が貼り付けられている。なお、樹脂材406の両側壁406b,406bには、それぞれ前記被係合部405にある円孔に合致して、前記油圧シリンダー410の筒本体411の基端にβピンを介して連結するための円孔が形成されている。
次に、背凭れ40のクッション体41と表皮材420について説明する。
クッション体41は、背凭れ40の外観形状のベースを成すものであり、図19〜図22に示すように、3次元曲線部を多く備えた立体形状に発泡ウレタン等の弾性材質によって成形されている。
詳しく言えばクッション体41は、背凭れ40の前面の上下に亘り中央側に位置するメイン部42と、該メイン部42の両側に沿って設けられ着座者側部を支持するサイド部43を備え、両サイド部43の上側には、前方へ向かって出っ張るヘッドレスト部44が設けられている。図22に示すように、ヘッドレスト部44は、両端で向かい合う内面が前方に行くに従い拡幅する略三角錐状に迫り出しており、中央には、別体のマクラ45が上下方向に位置調整可能に装着されている。
表皮材420は、背凭れ40の表面全体を覆うようにクッション体41に被せられるものであり、クッション体41における3次元曲線部等の各部位の凹凸に応じた複数枚のパーツを縫い合わせて袋状の立体形状に形成されている。表皮材420は、後述するが各パーツの端縁同士を縫い合わせて延びた縫製線と、何れかのパーツを裏面側よりクッション体41内側に引き込ませて延びる引込線を備えている。また、表皮材420の裏側の適所には、クッション体41の表面に沿わせて着脱自在に止着するための止着手段を設けると良い。ここで止着手段には、具体的には例えば前述した面ファスナが適している。
表皮材420は、前記メイン部42に沿わせるメインパーツ421と、該メインパーツ421の両端縁に沿って縫い合わされ、前記両サイド部43にそれぞれ沿わせるサイドパーツ422を備えている。また、メインパーツ421の上端縁と両サイドパーツ422の外側端縁には、略逆U字状に連続して周回する横マチパーツ423が縫い合わされている。横マチパーツ423は左右に2分割されており、左右の上端縁同士が互いに縫い合わされている。また、横マチパーツ423の後側周縁に沿って、背凭れ40の背面側に所定幅で回り込む複数に分割された背面パーツ424a,424bが縫い合わされている。
各パーツ421〜424は面状の部材であれば良いが、具体的には例えば織布や編布等の繊維性布地のほか、本革あるいは人工皮革を用いると良い。本実施の形態では、デザイン的に重要であるメインパーツ421とサイドパーツ422に関して、メインパーツ421は繊維性布地とする一方、サイドパーツ422は本革としており、それぞれ異なる材質により構成している。また、横マチパーツ423は、サイドパーツ422と同様の本革により構成している。なお、背凭れ40の背面側には、前記背面パーツ424a,424bの内周縁を覆うように裏板425が組み付けられている。
サイドパーツ422は、ヘッドレスト部44が出っ張り始める部位を境に上部サイドパーツ422aと下部サイドパーツ422bに分割されており、互いの対向し合う端縁同士が縫い合わされて縫製線420aを成している。ここで縫製線420aを形成する縫い方の種類は特に限定されるものではないが、具体的には例えば図23中で模式的に示したように、各パーツの端縁同士の表面を相互に対接させて縫製し、さらに折り返された両端縁をさらに縫い付けるダブルステッチ縫いが適している。
同様に、メインパーツ421とサイドパーツ422の上下方向に延びる端縁同士の縫い目に沿って縫製線420bが形成されており、この縫製線420bもダブルステッチ縫いで形成すると良い。また、メインパーツ421の上端縁と両サイドパーツ422の外側端縁に縫い合わせた横マチパーツ423の前側周縁に沿って縫製線420cが形成されており、この縫製線420cもダブルステッチ縫いで形成すると良い。
また、各背面パーツ424a,424bの外側端縁に縫い合わせた横マチパーツ423の後側周縁に沿っても縫製線420d(図21参照)が形成されているが、この縫製線420dは、裏側に折り返された両端縁のうち一方のみをさらに縫い付けるシングルステッチ縫いでも良い。なお、各縫製線420a〜420dの裏側の縫い代は、クッション体41の対応する箇所に沿って設けられた切れ目に挟み込まれており、表皮材420の表面上に突条の如く出っ張らないように処理されている。
図19,図23に示すように、メインパーツ421には、両側方向に亘って裏面側よりクッション体41の内側に引き込ませて延びる引込線421a,421bが、上下方向に複数設けられている。本実施の形態では、引込線421a,421bは、上下に2本設けられているが、この数は限定されるものではなく、クッション体41のうちメイン部42の高さや曲面形状に応じて、1本だけ、あるいは3本以上設けても良い。また、メインパーツ421に限らず、サイドパーツ422、横マチパーツ423、それに背面パーツ424a,424bにも、必要に応じて設けてもかまわない。
各引込線421a,421bの裏側には、両側方向に延びる線上に沿って引き布426が止着されている。この引き布426は、クッション体41のメイン部42の対応する箇所に沿って設けられた切れ目に挿入され、メイン部42の背面側に引き出された引き布426の端末は、バックフレーム400側に面ファスナやホックリング等の係止手段によって止着される。このような構造により、各引込線421a,421bは、メインパーツ421の表面より両側方向に延びる線上に沿って凹む溝状の見切り線を成し、メインパーツ421をメイン部42の表面形状に密着させている。
表皮材420は、前記縫製線420a〜420dおよび/または前記引込線421a,421bが、互いに交差しない状態に配置されてクッション体41に被覆されている。例えば、サイドパーツ422を上下2分する縫製線420aは、メインパーツ421とサイドパーツ422との間の縫製線420bに対して直角に交わり、さらに各引込線421a,421bとも両側方向に連なることで、あたかも4つの部位が1つの角で重なるように交差し得るが、このような交差を避けるように、上下に延びる縫製線420bを間にして、左右の縫製線420aと引込線421a,421bが互いに両側方向に連ならないように、それぞれの高さ位置を上下にずらして配置されている。
次に、本実施の形態に係る座席装置10の作用を説明する。
本座席装置10によれば、図4,図5に示すように、座枠300のうち前方フレーム枠302の前部フレーム302b上側に沿って補強部材310を固設したから、座部30のうち通常の着座時よりも大きな荷重が加わる可能性の高い部位を補強し、当該部位の剛性を局所的に高めることができる。
これにより、乗客が荷物棚に荷物を載せる際に座部30前方に立ち上がったり、あるいはメンテナンス時に作業員が乗ったりして、座席前方に対して予期せぬ負荷が生じたとしても、座枠300の変形を防止することができる。また、座部30のクッション体の過度の変形も防止され、クッション体の耐久性も高めることができる。
特に補強部材310は、前部フレーム302bと同様に両側方向に延びており、かつ前部フレーム302bの上側より斜め前方へ延出した後に屈曲して略水平に前方へ延出した形状である。これにより、座枠300の前端部302の全長に亘って補強することができるだけでなく、前部フレーム302bの前方の位置においても荷重を充分に受け止めることができる。
図8〜図11に示すように、補強部材310は、前方フレーム枠302の両側よりそれぞれ前方へ延出する状態に固設された両端ブラケット311と、該両端ブラケット311の間にて前部フレーム302bより前方へ延出する状態に固設された中間ブラケット312と、両端ブラケット311および中間ブラケット312の各上端縁間に渡り両側方向に延びる状態に固設された着座パネル313と、を備える。このような必要最低限の部品より構成される。なお、中間ブラケット312は1つに限られることなく、座席の幅に応じて複数設けても良い。
各ブラケット311,312は、図12〜図17に示すように、それぞれ金属製の板材から成り、着座パネル313は、図8〜図11に示すように、軽量金属製の薄板材から成る。各ブラケット311,312の傾斜支持片311b,312bと水平支持片311c,312cの上端縁は、それぞれ側面視において互いに重なる同一形状であり、この上に着座パネル313が被さるよう取り付けられている。
このような補強部材310の構成によれば、荷重を広い面で受けるための着座パネル313は、剛性の高い各ブラケット311,312で下から支える構造とすることで、着座パネル313自体は軽量金属製の薄板材で成形することで極力軽量化を図ることができる。また、各ブラケット311,312に関しても、なるべく簡易な構成によりコストを極力抑えつつ、着座パネル313の支持強度を高めることができる。
さらに、補強部材310の独自の形状により、着座者のヒップポイントを含む臀部全体を支える座枠300の基準上面は嵩上げすることなく快適な着座感を維持することができる。一方、着座者の大腿部を支える座部30前方に関しては、座枠300の基準上面より多少嵩上げすることで、クッション体41の相対的な厚さが薄くなったとしても、着座感を特に損ねることはなく、逆に当該部位のクッション体41に着座者が乗ったりして過度の荷重がかかった際でも安定感を増す結果となる。
また、図9に示すように、着座パネル313の水平面部313cには、座部30のクッション体(図4参照)を着脱自在に装着するための面ファスナ305が貼着されている。これにより、補強部材310を単に剛性を高めるだけでなく、クッション体の取付部位としても有効に活用することができる。また、前記後部フレーム303の上面にも、同様の面ファスナ306が貼着されている。これら前後の面ファスナ305,306により、座枠300に対してクッション体を着脱可能に取り付けることができ、メンテナンス時には容易に取り外すこともできる。
また、図4,図18に示すように、着座パネル313の傾斜面部313bないし水平面部313cの下方には、座枠300の基準上面との間にクリアランスが確保される。このクリアランスは、座部30の前端側に配設したレッグレスト50が変位する際の軌跡が干渉しない逃げ空間として、そのまま活用することができる。
前記クリアランスは、レッグレスト50の駆動機構の配置スペースの一部としても良い。これにより、座部30前方にレッグレスト50を装着する場合において、補強部材310が設計上の制約になることはない。なお、レッグレスト50は、着座者が脹ら脛を休めるものであるが、いわゆる足乗せのフットレストを装備したり、あるいはレッグレスト50の代わりにフットレストのみを装備する場合にも適用可能である。
また、背凭れ40は、リクライニング機構の回転軸25を介して傾動可能に支持されており、着座者は所望の傾斜角度に調整して保持することができる。図2に示すように、背凭れ40のバックフレーム400の各側部フレーム401の下端より前方に延びるアーム部403が、台枠20の後端にある支持フレーム24に対して回転軸25により傾動可能に支持されている。
各側部フレーム401のうちインナー側に位置する方のアーム部403の下端には、回転軸25よりさらに下方に突出する被係合部405が一体に設けられている。この被係合部405には、図26に示すように、前記支持フレーム24に固設された支持ブラケット26に螺合している係合ボルト27の頭部27aが押し引き可能に係合している。
係合ボルト27は、支持ブラケット26側にある固定ナット28に螺合しており、さらに係合ボルト27には、支持ブラケット26の後方に突出した軸部27bの先端側より可動ナット29が螺合している。この可動ナット29を、固定ナット28側に締め付けることにより、両ナット28,29に対する係合ボルト27の不用意な回転を防止して、当該位置にて確実にロックすることができる。
一方、可動ナット29を固定ナット28から離すように緩めると、係合ボルト27を正逆両方向に回転させることが可能となる。この係合ボルト27の回転操作によって、係合ボルト27を固定側である支持ブラケット26に対して軸方向に進退させることができ、その結果、被係合部405を押し引きして、背凭れ40の最大起立時における初期位置の傾倒角度を無段階に細かく調整することができる。
すなわち、係合ボルト27の軸部27bの先端面にある溝にドライバーをあてがって正方向に回転させると、係合ボルト27(の頭部27a)が被係合部405と係合する方向に前進する。その結果、背凭れ40は回転軸25を支点として後方へ傾く。一方、係合ボルト27を逆方向に回転させて、係合ボルト27(の頭部27a)を被係合部405から離脱する方向に後退させると、回転軸25を支点として背凭れ40は前方へ傾くことになる。なお、係合ボルト27の後退に伴って被係合部405は直接的に引かれるわけではないが、結果として押す場合とは逆に引かれることになる。
これにより、座席装置10の完成後の検査において、各部品の寸法公差の集積により、背凭れ40の初期位置が予め規定された設計寸法の公差外となった場合でも、前記係合ボルト27を適宜回転させるだけの簡単な操作により、初期位置を設計寸法の公差内に収めるように極めて容易に調整することができる。このような係合ボルト27の回転操作による調整に際しては、ドライバーを差し込めるだけのスペースがあれば良く、また、従来の座金等による調整のような各部品の取り外し作業は不要となる。
係合ボルト27の頭部27aは半球形に形成されており、この頭部27aを被係合部405に対して当接させる。このような状態で、係合ボルト27の軸部27b先端にある溝に対してドライバーの刃先をあてがい回転させることにより、係合ボルト27の頭部27aによって被係合部405を押し引きすることができる。特に、係合ボルト27の頭部27aは半球形であるため、該頭部27aをその全周方向からほぼ均等な角度で被係合部405に対して当接させることができる。
また、前記被係合部405は、バックフレーム400の側部フレーム401ないしアーム部403と一体の金属材で形成されることで、剛性を確保することができる。さらに、前記被係合部405のうち係合ボルト27が係合する後端面405aを、図26〜図28に示した樹脂材406で被覆することにより、金属同士がぶつかる不快な衝突音の発生を防止することができる。ここで樹脂材406の正面壁406aの内側には、前記後端面405aに止着するための両面テープ407が貼り付けられており、簡易かつ確実に被係合部405に取り付けることができる。
また、図1に示すように、座部30の前端側にあるレッグレスト50は、電動シリンダー510(図18参照)によって足載位置と収納位置とに変位可能に駆動される。電動シリンダー510は、図3に示すように、座枠300を支持する台枠20内に配設される。ここで電動シリンダー510は、そのシリンダー本体511が台枠20内で動かないように固定され、シリンダー本体511の筒状部512より延出した駆動ロッド513がレッグレスト50に連結される。
図18に示すように、本実施の形態ではシリンダー本体511の基端側が台枠20に位置決めされた状態で回動可能に取り付けられている。また、座枠300の前部フレーム302cの下側には係合部308が設けられており、この係合部308はシリンダー本体511の筒状部512に上方より当接し、該筒状部512を台枠20に対して押さえ付けた状態に保持する。
座枠300側の係合部308は、図10に示すように、前部フレーム302cに下向きに突設された矩形状のブラケットから成り、このように簡易な構成により、確実にシリンダー本体511の先端側である筒状部512を保持することができる。しかも、係合部308の下端面には、筒状部512に着脱自在な面ファスナ309が貼着されているため、係合部308が中間ブラケット312に当接した際に、相互の位置ずれをより確実に防止することができる。
このような係合部308により、電動シリンダー510のシリンダー本体511の少なくとも先端側は、台枠20に対して特別な固着手段によって直接的に固定させる必要はない。すなわち、台枠20上に座枠300を取り付けるだけで、座枠300側の係合部308によってシリンダー本体511の筒状部512は台枠20内にて変位不能に保持される。なお、筒状部512の下側は、図18に示すようにシャフト21上に係合しており、筒状部512は、上下から係合部308とシャフト21との間に挟持される。
一方、台枠20内やその下の脚台11内のメンテナンス時には、台枠20より座枠300を外すと、座枠300と共に係合部308はシリンダー本体511の筒状部512から離脱する。これにより、シリンダー本体511の先端側は台枠20から容易に外せる状態となる。
本実施の形態では、シリンダー本体511の基端側が台枠20に未だ連結されているため、この基端側を支点として、座枠300を電動シリンダー510ごと持ち上げるように回動させることができる。このように、座部30を電動シリンダー510やレッグレスト50と一緒に台枠20側から全て取り外すことなく、メンテナンス作業の邪魔にならない位置まで容易に変位させることができる。
また、図19〜図23に示すように、背凭れ40のクッション体41に被覆する表皮材420は、クッション体41における各部位の凹凸に応じた複数枚のパーツを縫い合わせて立体形状に形成する。すなわち、表皮材420は、メインパーツ421の両端縁に沿ってサイドパーツ422をそれぞれダブルステッチ縫いで縫い合わせる。各サイドパーツ422は、ヘッドレスト部44が出っ張り始める部位を境に上部サイドパーツ422aと下部サイドパーツ422bに分割されており、互いの対向し合う端縁同士は予めダブルステッチ縫いで縫い合わせておく。
メインパーツ421の上端縁と両サイドパーツ422の外側端縁には、略逆U字状に連続して周回する横マチパーツ423の前側周縁をダブルステッチ縫いで縫い合わせる。横マチパーツ423は左右に2分割されており、左右の上端縁同士は予めダブルステッチ縫いで縫い合わせておく。さらに、横マチパーツ423の後側周縁に沿って、複数に分割された背面パーツ424a,424bをシングルステッチ縫いで縫い合わせる。
このようにして袋状に連続形成された表皮材420は、座席製造時に背凭れ40の上方からクッション体41に被せるようにして被覆する。この時、図19,図24に示すように、メインパーツ421に設ける各引込線421a,421bの裏側に止着してある引き布426を、クッション体41のメイン部42の対応する箇所にある切れ目に挿入して、メイン部42の背面側に引き出した引き布426の端末をバックフレーム400側に止着する。これにより、各引込線421a,421bは、メインパーツ421の表面より両側方向に延びる線上に沿って凹む溝状の見切り線を成し、メインパーツ421をメイン部42の表面形状に密着させることができる。
このような表皮材420では、メインパーツ421とサイドパーツ422の上下方向に延びる縫製線420bを間にして、上部サイドパーツ422aと下部サイドパーツ422bの縫製線420aと、メインパーツ421にある各引込線421a,421bを、互いに両側方向に連ならないように、それぞれの高さ位置を上下にずらして配置する。すなわち、縫製線420a〜420dおよび/または引込線421a,421bを、互いに交差しない状態に配置してクッション体41に被覆する。
これにより、縫製線420a〜420dないし引込線421a,421bが十字状に交差することはなく、T字状に連なる状態にとどまり、縫製線420a〜420dに沿った端縁同士の折り重なりや引込線421a,421bに沿った凹み等の変形箇所が、1箇所に集中することなく分散される。よって、縫製線420a〜420dや引込線421a,421bに起因するような表皮材420の皺や弛みの発生を防ぐことができ、背凭れ40の美感や外観品質を向上させることができる。
また、背凭れ40の外観上目立つメインパーツ421は繊維性布地とする一方、サイドパーツ422は本革として、それぞれ異なる材質により構成している。これにより、各パーツごとの異なる材質の組み合わせによるデザイン上の斬新さだけでなく、伸縮性や厚み、柔軟性等を各パーツに応じて最適な材質のものを採用することができる。また、表皮材420の裏側の適所に、クッション体41の表面に沿わせて着脱自在に止着するための止着手段を設ける。これにより、表皮材420をクッション体41の表面に密着するように綺麗に沿わせた状態に被覆することができる。
以上、本発明の実施の形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。例えば、本実施の形態では2人掛け用として構成したが、1人掛け用あるいは3人掛け用であってもかまわない。また、鉄道車両用の座席に限られるものでもない。