JP2014067667A - リチウムイオン二次電池セパレータ用不織布基材 - Google Patents

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Abstract

【課題】リチウムイオン二次電池セパレータに用いる不織布基材において、無機顔料を含む塗液を塗工する際に、塗液が裏面に滲出しにくい基材を提供しようとするものである。
【解決手段】リチウムイオン二次電池セパレータ用不織布基材であって、ポリエチレンテレフタレート繊維を主体としてなり、厚み30μm以下、坪量/厚みで定義される密度が0.55g/cm以下、引張強度が800N/m以上であることを特徴とするリチウムイオン二次電池セパレータ用不織布基材。
【選択図】なし

Description

本発明は、リチウムイオン二次電池セパレータに用いる不織布基材に関する。
リチウムイオン二次電池(以下、「電池」と略記する場合がある)用のセパレータとしては従来、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂からなる多孔膜が用いられてきた。しかしかかる樹脂製多孔膜には、電池が異常発熱した場合に溶融・収縮し、正負極を隔離する機能が失われて著しい短絡を生じる問題があった。
電池が異常発熱した場合でも溶融・収縮を生じにくいセパレータとして、不織布基材に各種の無機顔料を塗工してなるセパレータが提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
特許文献1のセパレータは、不織布基材に無機顔料を含む塗液を塗工して製造されるが、薄いセパレータを製造しようとする場合、塗液が不織布基材の裏面に滲出し、不織布基材を支持しているロールを汚すことがあり、塗工層にピンホールが生じやすかった。
特許文献2のセパレータは、薄いセパレータを製造しようとする際、強度がやや不十分となる場合があり、塗工操作における破断等が生じる場合があった。特許文献3のセパレータは、薄いセパレータを製造しようとする際、密度がやや高くなる場合があり、塗工操作における塗液の裏抜けが見られる場合があった。
特開2005−536857号公報 特開2009−230975号公報 特開2011−82148号公報
本発明は、上記課題を解決しようとするものである。すなわち、リチウムイオン二次電池セパレータに用いる不織布基材において、無機顔料を含む塗液を塗工する際に、塗液が裏面に滲出しにくい基材を提供しようとするものである。
本発明者らは、上記課題を解決するための手段として、
(1)リチウムイオン二次電池セパレータ用不織布基材であって、ポリエチレンテレフタレート繊維を主体としてなり、厚み30μm以下、坪量/厚みで定義される密度が0.55g/cm以下、引張強度が800N/m以上であることを特徴とするリチウムイオン二次電池セパレータ用不織布基材、
(2)湿式法により抄造されてなり、加熱された金属ロールと、JIS K6253に規定されるデュロメータAにより測定される硬度が80以下のロールとの間を通過させて処理されたことを特徴とする前記(1)のリチウムイオン二次電池セパレータ用不織布基材、
を見出した。
本発明の不織布基材は、無機顔料の塗液を塗工した際の裏抜けが少なく、もって高い生産性で不織布基材に無機顔料を塗工したリチウムイオン二次電池セパレータを製造することができるようになる。
すなわち、ポリエチレンテレフタレート繊維を主体としてなる不織布基材の密度が0.55g/cm以下であることによって、塗液を不織布基材内部に保持する能力が高くなり、塗液の裏抜けを生じにくくすることができる。また、引張強度が800N/m以上であることによって、塗工操作における破断等が生じにくく、生産性を高くすることができる。なお、厚みが30μmを超える厚みの厚い不織布基材は、本発明によらなくても、塗液の裏抜けが生じにくく、本発明の効果が発現しづらいが、セパレータの薄膜化が難しくなる。
本発明の不織布基材は、湿式法により抄造された原反を、加熱された金属ロールと、JIS K6253に規定されるデュロメータAにより測定される硬度が80以下のロールとの間を通過させて処理することが、密度が0.55g/cm以下、かつ引張強度が800N/m以上の不織布基材を製造する上で好ましい。
本発明のリチウムイオン二次電池セパレータ用不織布基材(以下、「不織布基材」と略記する場合がある)は、ポリエチレンテレフタレート繊維を主体としてなる。不織布基材におけるポリエチレンテレフタレート繊維の含有量は70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。ポリエチレンテレフタレートの含有量が70質量%よりも少ない場合、強度が弱くなる場合がある。
本発明におけるポリエチレンテレフタレート繊維の平均繊維径は0.1〜20μmが好ましく、0.1〜15μmがより好ましく、0.1〜10μmがさらに好ましい。平均繊維径が0.1μm未満では、繊維が細すぎて、不織布基材から脱落する場合があり、平均繊維径が20μmより太いと、不織布基材の厚みを薄くすることが困難になる場合がある。
本発明における平均繊維径は、不織布基材の走査型電子顕微鏡写真より、不織布基材を形成する繊維の繊維径を計測し、無作為に選んだ100本の平均値である。
本発明におけるポリエチレンテレフタレート繊維の繊維長は1〜15mmが好ましく、2〜10mmがより好ましく、3〜5mmがさらに好ましい。繊維長が1mmより短いと、不織布基材から脱落することがあり、15mmより長いと、繊維がもつれてダマになることがあり、厚みむらが生じる場合がある。
本発明の不織布基材は、ポリエチレンテレフタレート繊維以外の繊維を含有しても良い。例えば、溶剤紡糸セルロースや再生セルロースの短繊維、天然セルロース繊維、天然セルロース繊維のパルプ化物やフィブリル化物、ポリオレフィン、アクリル、全芳香族ポリエステル、全芳香族ポリエステルアミド、ポリアミド、半芳香族ポリアミド、全芳香族ポリアミド、全芳香族ポリエーテル、全芳香族ポリカーボネート、全芳香族ポリアゾメジン、ポリイミド、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリ−p−フェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン−ビニルアルコール共重合体などの樹脂からなる単繊維や複合繊維、これらをフィブリル化したものを適量単独で含有しても良いし、2種類以上の組み合わせで含有しても良い。また、各種の分割型複合繊維を分割させたものを含有しても良い。
半芳香族とは、主鎖の一部に例えば脂肪鎖などを有するものを指す。全芳香族ポリアミドはパラ型、メタ型いずれでも良い。
本発明の不織布基材は、厚み30μm以下、坪量/厚みで定義される密度が0.55g/cm以下、引張強度が800N/m以上である。厚みが30μmを超える厚みの厚い不織布基材は、本発明によらなくても塗液の裏抜けが生じにくく、本発明の効果が発現しづらい。本発明の特徴は、坪量/厚みで定義される密度が0.55g/cm以下であり、かつ引張強度が800N/m以上であることにある。
本発明の不織布基材は、密度が0.55g/cm以下であることによって、塗液を内部に保持する能力が高く、裏抜けが生じにくい。また、引張強度が800N/m以上であることによって、塗工操作における破断等が生じにくく、生産性を高くすることができる。
本発明の不織布基材の厚みは15〜30μmが好ましく、15〜27μmがより好ましく、15〜25μmがさらに好ましい。15μm未満では、十分な不織布基材の強度が得られない場合があり、30μmより厚いと、セパレータの薄膜化が難しくなる。
本発明の不織布基材の密度は0.40〜0.55g/cmが好ましく、0.41〜0.54g/cmがより好ましく、0.42〜0.53g/cmがさらに好ましい。0.40g/cm未満では、十分な不織布基材の強度が得られない場合があり、0.55g/cmより高いと、塗液を不織布基材内部に保持する能力が不十分で、裏抜けが生じやすい。
本発明の不織布基材の引張強度は800〜3000N/mが好ましく、820〜2700N/mがより好ましく、850〜2500N/mがさらに好ましい。引張強度が800N/m未満では、塗工操作における破断等が生じやすく、生産性が落ちる。引張強度が3000N/mよりも強い場合、厚み30μm以下とすることが難しい場合がある。
本発明の不織布基材は、次のようにして製造することができる。すなわち、湿式法により抄造された原反を、加熱された金属ロールと、JIS K6253に規定されるデュロメータAにより測定される硬度が80以下のロールとの間を通過させ処理することで、厚み30μm以下、密度が0.55g/cm以下、引張強度が800N/m以上の不織布基材とすることができる。
本発明における湿式法は、繊維を水中に分散して均一な抄紙スラリーとし、この抄紙スラリーを円網、長網、傾斜式等のワイヤーの少なくとも1つを有する抄紙機を用いて、繊維ウェブを得る方法である。
繊維ウェブから不織布を製造する方法としては、水流交絡法、ニードルパンチ法、バインダー接着法等を使用することができる。特に、均一性を重視して湿式法を用いる場合、熱融着性繊維を含有させて、バインダー接着法によって該熱融着性短繊維を接着させることが好ましい。バインダー接着法により、均一なウェブから均一な不織布基材原反が形成される。
本発明の不織布基材の原反を、加熱された金属ロールと、JIS K6253に規定されるデュロメータAにより測定される硬度が80以下のロールとの間を通過させ処理する際のニップ圧は50〜250kN/mが好ましく、70〜230kN/mがより好ましく、100〜200kN/mがさらに好ましい。50kN/m未満では、十分な不織布基材の強度が得られない場合があり、250kN/mより高いと、不織布基材の密度が高くなり過ぎる場合がある。
本発明の不織布基材の原反を、加熱された金属ロールと、JIS K6253に規定されるデュロメータAにより測定される硬度が80以下のロールとの間を通過させ処理する際の処理速度は5〜80m/minが好ましく、7〜70m/minがより好ましく、10〜60m/minがさらに好ましい。5m/min未満では、不織布基材の密度が高くなり過ぎる場合があり、80m/minより速いと、十分な不織布基材の強度が得られない場合がある。
本発明の不織布基材の原反を処理する際の金属ロールの温度は175〜210℃が好ましく、180〜205℃がより好ましく、185〜200℃がさらに好ましい。175℃未満では、十分な不織布基材の強度が得られない場合があり、210℃より高いと、不織布基材の密度が高くなり過ぎる場合がある。
本発明の不織布基材の原反を処理する際のゴムロールのJIS K6253に規定されるデュロメータAにより測定される硬度は50〜80が好ましく、55〜77がより好ましく、60〜75がさらに好ましい。50未満では、十分な不織布基材の強度が得られない場合があり、80より高いと、不織布基材の密度が高くなり過ぎたり、引張強度が弱くなり過ぎたりすることがあり、密度が0.55g/cm以下かつ引張強度が800N/m以上とすることが難しい場合がある。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
表1に示した原料と配合量に従って、抄紙用スラリーを調製した。ここで、表1中の「PET1」は、繊度0.06dtex、繊維長3mmのポリエチレンテレフタレート繊維、「PET2」は、繊度0.10dtex、繊維長3mmのポリエチレンテレフタレート繊維、「PET3」は、繊度0.20dtex、繊維長3mmの未延伸ポリエチレンテレフタレート繊維、「PA1」は、繊度0.75dtex、繊維長3mmの全芳香族ポリアミド繊維(コポリ(パラ−フェニレン−3,4′−オキシジフェニレンテレフタルアミド))、「PA2」は、繊度0.08dtex、繊維長3mmの半芳香族ポリアミド繊維、「A1」は、繊度0.10dtex、繊維長3mmのアクリル系繊維(アクリロニトリル、アクリル酸メチル、メタクリル酸誘導体の3成分からなるアクリロニトリル系共重合体)を意味する。
<不織布基材用原反>
スラリー1〜4を円網・傾斜コンビネーション抄紙機を用いて湿式抄紙し、表2に示す不織布基材用原反1〜7を作製した。
<不織布基材>
(実施例1)
不織布基材用原反1を、195℃に加熱された金属ロールと、JIS K6253に規定されるデュロメータAにより測定される硬度が60のロールとの間をニップ圧100kN/m、処理速度10m/minで通過させ処理し、表3に示す実施例1の不織布基材を作製した。
(実施例2)
不織布基材用原反1を、195℃に加熱された金属ロールと、JIS K6253に規定されるデュロメータAにより測定される硬度が70のロールとの間をニップ圧100kN/m、処理速度10m/minで通過させ処理し、表3に示す実施例2の不織布基材を作製した。
(実施例3)
不織布基材用原反2を、195℃に加熱された金属ロールと、JIS K6253に規定されるデュロメータAにより測定される硬度が70のロールとの間をニップ圧150kN/m、処理速度20m/minで通過させ処理し、表3に示す実施例3の不織布基材を作製した。
(実施例4)
不織布基材用原反3を、195℃に加熱された金属ロールと、JIS K6253に規定されるデュロメータAにより測定される硬度が70のロールとの間をニップ圧150kN/m、処理速度20m/minで通過させ処理し、表3に示す実施例4の不織布基材を作製した。
(実施例5)
不織布基材用原反4を、210℃に加熱された金属ロールと、JIS K6253に規定されるデュロメータAにより測定される硬度が70のロールとの間をニップ圧250kN/m、処理速度80m/minで通過させ処理し、表3に示す実施例5の不織布基材を作製した。
(実施例6)
不織布基材用原反2を、175℃に加熱された金属ロールと、JIS K6253に規定されるデュロメータAにより測定される硬度が50のロールとの間をニップ圧50kN/m、処理速度5m/minで通過させ処理し、表3に示す実施例6の不織布基材を作製した。
(実施例7)
不織布基材用原反1を、185℃に加熱された金属ロールと、JIS K6253に規定されるデュロメータAにより測定される硬度が80のロールとの間をニップ圧100kN/m、処理速度10m/minで通過させ処理し、表3に示す実施例7の不織布基材を作製した。
(実施例8)
不織布基材用原反1を、185℃に加熱された金属ロールと、JIS K6253に規定されるデュロメータAにより測定される硬度が45のロールとの間をニップ圧100kN/m、処理速度10m/minで通過させ処理し、表3に示す実施例8の不織布基材を作製した。
(実施例9)
不織布基材用原反1を、175℃に加熱された金属ロールと、JIS K6253に規定されるデュロメータAにより測定される硬度が70のロールとの間をニップ圧50kN/m、処理速度10m/minで通過させ処理し、表3に示す実施例9の不織布基材を作製した。
(実施例10)
不織布基材用原反5を、200℃に加熱された金属ロールと、JIS K6253に規定されるデュロメータAにより測定される硬度が70のロールとの間をニップ圧100kN/m、処理速度10m/minで通過させ処理し、表3に示す実施例10の不織布基材を作製した。
(実施例11)
不織布基材用原反6を、200℃に加熱された金属ロールと、JIS K6253に規定されるデュロメータAにより測定される硬度が70のロールとの間をニップ圧100kN/m、処理速度10m/minで通過させ処理し、表3に示す実施例11の不織布基材を作製した。
(比較例1)
不織布基材用原反1を、195℃に加熱された金属ロールと、JIS K6253に規定されるデュロメータAにより測定される硬度が80のロールとの間をニップ圧100kN/m、処理速度10m/minで通過させ処理し、表3に示す比較例1の不織布基材を作製した。
(比較例2)
不織布基材用原反1を、175℃に加熱された金属ロールと、JIS K6253に規定されるデュロメータAにより測定される硬度が70のロールとの間をニップ圧40kN/m、処理速度10m/minで通過させ処理し、表3に示す比較例2の不織布基材を作製した。
(比較例3)
不織布基材用原反7を、195℃に加熱された金属ロールと、JIS K6253に規定されるデュロメータAにより測定される硬度が70のロールとの間をニップ圧100kN/m、処理速度10m/minで通過させ処理し、表3に示す比較例3の不織布基材を作製した。
(比較例4)
不織布基材用原反1を、195℃に加熱された金属ロールと、JIS K6253に規定されるデュロメータAにより測定される硬度が85のロールとの間をニップ圧100kN/m、処理速度10m/minで通過させ処理し、表3に示す比較例4の不織布基材を作製した。
(比較例5)
不織布基材用原反1を、175℃に加熱された金属ロールと、JIS K6253に規定されるデュロメータAにより測定される硬度が85のロールとの間をニップ圧50kN/m、処理速度10m/minで通過させ処理し、表3に示す比較例5の不織布基材を作製した。
実施例及び比較例の不織布基材について、下記の評価を行い、その結果を表3に示した。
[不織布基材の厚み]
JIS C2111に準拠して1試料について5ヶ所以上基材の厚みを測定し、その平均値を算出した。
[不織布基材の密度]
JIS P8124に準拠して基材の坪量を測定し、坪量を厚みで除した値を密度とした。
[引張強度]
実施例及び比較例の不織布基材を流れ方向に長辺がくるように50mm巾、200mm長に切り取り、試験片を卓上型材料試験機(商品名:STA−1150、(株)オリエンテック製)を用いて、つかみ間隔100mm、引張速度300mm/分の条件で伸長し、切断時の荷重値を引張強度とした。1試料について5ヶ所以上引張強度を測定し、全測定値の平均値を表に示した。
[塗液の裏抜け評価]
体積平均粒子径0.9μm、BET比表面積5.5m/gのベーマイト100質量部を、水150質量部に分散したものに、その1質量%水溶液の25℃における粘度が200mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩2質量%水溶液75質量部を添加・攪拌混合し、ガラス転移点−18℃、体積平均粒子径0.2μmのカルボキシ変性スチレン−ブタジエン共重合樹脂エマルション(固形分濃度50質量%)10部を添加・攪拌混合し、最後に調整水を加えて固形分濃度を25質量%に調整し、塗液Aを作製した。実施例及び比較例の不織布基材のゴムロール面に、塗工装置としてリバースグラビアコーターを用い、30m/minのライン速度にて、塗液Aを、液としての付着量が47g/mとなるように片面塗工した。塗工された基材は、リバースグラビアコーターに直結されたフローティングエアドライヤーで、90℃の熱風を吹き付けて乾燥させ、セパレータを得た。「塗液の裏抜け」の評価として、塗工装置のガイドロール及びフローティングエアドライヤー内部への塗工液の付着状態により、次の3段階に分類した。
○:ガイドロールまたはフローティングエアドライヤー内部への塗工液の付着がほとんど無い。
△:ガイドロールまたはフローティングエアドライヤー内部に塗工液が付着しているが、セパレータに再転写はしない。
×:裏抜けした塗工液がガイドロールまたはフローティングエアドライヤー内部に付着しており、得られたセパレータに再転写による面の不均一性が生じている。
[塗工時の破断評価]
前記の塗液の裏抜け評価の際に、「塗工時の破断」の評価として、不織布基材の破断状況により、次の3段階に分類した。
○:不織布基材1000mに塗工した際に、不織布基材が破断し、不良が生じた回数が0回の場合。
△:不織布基材1000mに塗工した際に、不織布基材が破断し、不良が生じた回数が1〜2回の場合。
×:不織布基材1000mに塗工した際に、不織布基材が破断し、不良が生じた回数が3回以上の場合。
表3に示した通り、実施例1〜11で作製した不織布基材は、ポリエチレンテレフタレートを主体としてなり、厚み30μm以下、坪量/厚みで定義される密度が0.55g/cm以下、引張強度が800N/m以上であることから、無機顔料の塗液を塗工した際の裏抜けが少なく、塗工操作における破断等が生じにくいことから、高い生産性で不織布基材に無機顔料を塗工したリチウムイオン二次電池セパレータを製造することができ、優れていた。
すなわち、ポリエチレンテレフタレート繊維を主体としてなる不織布基材の密度が0.55g/cm以下であることによって、塗液を不織布基材内部に保持する能力が高くなり、塗液の裏抜けを生じにくくすることができる。また、引張強度が800N/m以上であることによって、塗工操作における破断等が生じにくく、生産性を高くすることができる。
一方、比較例1、4で作製した不織布基材は、密度が0.55g/cmより高いことから、塗液を不織布基材内部に保持する能力が不十分となり、塗液の裏抜けが見られた。比較例2、5で作製した不織布基材は、引張強度が800N/mよりも弱いため、塗工操作における破断等が生じやすく、生産性に劣っていた。比較例3で作製した不織布基材は、厚みが30μmよりも厚いため、セパレータの厚みを薄くすることが困難となる。
比較例4、5で作製した不織布基材は、加熱された金属ロールと、JIS K6253に規定されるデュロメータAにより測定される硬度が80よりも高いロールを用いて処理しているが、不織布基材の密度が高くなり過ぎたり、引張強度が弱くなり過ぎたりし、密度が0.55g/cm以下、かつ引張強度が800N/m以上とすることが難しかった。
実施例6で作製した不織布基材は、密度がやや低いことから、引張強度がやや弱く、実施例1〜5、7、10の不織布基材に比べ、塗工時における破断がやや生じやすかった。
実施例7で作製した不織布基材は、密度が0.55g/cmとやや高いことから、実施例1〜6、8〜11の不織布基材に比べ、塗液の裏抜けがやや多く見られた。
実施例8で作製した不織布基材は、JIS K6253に規定されるデュロメータAにより測定される硬度が45のロールを用いて処理しているが、引張強度がやや弱く、実施例1〜5、7、10の不織布基材に比べ、塗工時における破断がやや生じやすかった。
実施例9で作製した不織布基材は、引張強度が800N/mとやや弱いため、実施例1〜5、7、10の不織布基材に比べ、塗工時における破断がやや生じやすかった。
実施例11で作製した不織布基材は、厚みがやや薄いことから、引張強度がやや弱く、実施例1〜5、7、10の不織布基材に比べ、塗工時における破断がやや生じやすかった。
本発明の活用例としては、リチウムイオン二次電池セパレータ用不織布基材が好適である。

Claims (2)

  1. リチウムイオン二次電池セパレータ用不織布基材であって、ポリエチレンテレフタレート繊維を主体としてなり、厚み30μm以下、坪量/厚みで定義される密度が0.55g/cm以下、引張強度が800N/m以上であることを特徴とするリチウムイオン二次電池セパレータ用不織布基材。
  2. 湿式法により抄造されてなり、加熱された金属ロールと、JIS K6253に規定されるデュロメータAにより測定される硬度が80以下のロールとの間を通過させて処理されたことを特徴とする請求項1記載のリチウムイオン二次電池セパレータ用不織布基材。
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