以下、図面を参照して、MRI装置及び画像処理装置の実施形態を説明する。なお、以下に示す実施形態では、被検体の乳房に生じた腫瘍の良悪性を鑑別する場合について説明するが、本実施形態に係るMRI装置及び画像処理装置は、乳房以外の部位に生じる腫瘍の良悪性を鑑別する場合にも同様に適用することが可能である。
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態について説明する。図1は、第1の実施形態に係るMRI装置100の全体構成を示す図である。図1に示すように、MRI装置100は、架台部10と、傾斜磁場電源20と、送信部30と、受信部40と、シーケンス制御部50と、寝台部60と、寝台制御部70と、計算機システム80とを有する。
架台部10は、被検体Pが挿入される開口部と、その開口部に挿入された被検体Pの体内を表すMR信号を収集する収集手段とを有する。ここでいう収集手段は、静磁場中に置かれた被検体Pに高周波磁場を照射し、それにより被検体Pから発せられるMR信号を収集する。架台部10は、この収集手段として、静磁場磁石11と、傾斜磁場コイル12と、送信用RF(Radio Frequency)コイル13と、受信用RFコイル14とを有する。
静磁場磁石11は、中空の円筒形状に形成され、円筒内の空間に一様な静磁場を発生する。この静磁場磁石11としては、例えば、永久磁石や超伝導磁石などが用いられる。
傾斜磁場コイル12は、中空の円筒形状に形成され、静磁場磁石11の内側に配置される。この傾斜磁場コイル12は、互いに直交するX,Y,Zの各軸に対応する3つのコイルを有する。各コイルは、それぞれ後述する傾斜磁場電源20から電流供給を受けて、X,Y,Zの各軸に沿って磁場強度が変化する傾斜磁場を発生させる。なお、Z軸方向は、静磁場と同方向とされる。
また、傾斜磁場コイル12によって発生するX,Y,Z各軸の傾斜磁場は、例えば、スライス選択用傾斜磁場Gs、位相エンコード用傾斜磁場Ge及びリードアウト用傾斜磁場Grにそれぞれ対応する。スライス選択用傾斜磁場Gsは、任意に撮像断面を決めるために利用される。位相エンコード用傾斜磁場Geは、空間的位置に応じて磁気共鳴信号(MR信号)の位相を変化させるために利用される。リードアウト用傾斜磁場Grは、空間的位置に応じて磁気共鳴信号の周波数を変化させるために利用される。
送信用RFコイル13は、傾斜磁場コイル12の内側に配置され、後述する送信部30から高周波パルスの供給を受けて高周波磁場を発生させる。
受信用RFコイル14は、傾斜磁場コイル12の内側に配置され、送信用RFコイル13により発生した高周波磁場の影響によって被検体Pから放射される磁気共鳴信号を受信する。そして、受信用RFコイル14は、受信した磁気共鳴信号を受信部40へ出力する。なお、第1の実施形態で使用される受信用RFコイル14は、乳房撮像用のコイルであり、天板61に載置された被検体の胸部に装着される。ここで、受信用RFコイル14は、乳房撮像用のコイルとして天板61に組み込まれたものが使用されてもよい。その場合は、診断時に、受信用RFコイル14の上に被検体Pが伏臥位で配置される。
傾斜磁場電源20は、傾斜磁場コイル12に電流を供給する。送信部30は、ラーモア周波数に対応する高周波パルスを送信用RFコイル13に送信する。受信部40は、受信用RFコイル14から出力されるMR信号をデジタル化することによって磁気共鳴データを生成し、生成した磁気共鳴データをシーケンス制御部50へ送信する。
シーケンス制御部50は、計算機システム80から送信されるシーケンス情報に基づいて、傾斜磁場電源20、送信部30及び受信部40を駆動することによって、被検体Pのスキャンを行う。また、シーケンス制御部50は、被検体Pのスキャンを行った結果、受信部40から磁気共鳴データが送信されると、その磁気共鳴データを計算機システム80へ転送する。
なお、ここでいうシーケンス情報とは、シーケンス制御部50が傾斜磁場コイル12に供給する電源の強さや電源を供給するタイミング、送信部30が送信用RFコイル13に送信するRF信号の強さやRF信号を送信するタイミング、受信部40が磁気共鳴信号を検出するタイミングなど、スキャンを行うための手順を定義した情報である。
寝台部60は、被検体Pが載置される天板61を有し、その天板61を被検体Pとともに架台部10の開口部へ挿入する。この寝台部60は、長手方向が静磁場磁石11の中心軸と平行になるように設置される。
寝台制御部70は、計算機システム80による制御のもと、寝台部60を駆動して天板61を長手方向及び上下方向へ移動する。
計算機システム80は、MRI装置100の全体制御や、データ収集、画像再構成などを行う装置であり、インタフェース部81と、入力部82と、表示部83と、記憶部84と、データ処理部85と、制御部86とを有する。
インタフェース部81は、シーケンス制御部50との間でやり取りされる各種信号の入出力を制御する。例えば、インタフェース部81は、シーケンス制御部50に対してシーケンス情報を送信し、シーケンス制御部50から磁気共鳴データを受信する。また、インタフェース部81は、磁気共鳴データを受信すると、受信した磁気共鳴データを被検体Pごとに記憶部84に記憶させる。
入力部82は、操作者からの各種指示や情報入力を受け付ける。例えば、入力部82は、撮像条件の設定を操作者から受け付ける。この入力部82としては、例えば、マウスやトラックボールなどのポインティングデバイス、モード切替スイッチ等の選択デバイス、あるいはキーボード等の入力デバイスが用いられる。
表示部83は、操作者により参照される各種画像や、操作者から各種操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)を表示する。この表示部83としては、例えば、液晶モニタやCRTモニタなどの表示デバイスが用いられる。
記憶部84は、シーケンス制御部50から送信された磁気共鳴データや、後述するデータ処理部85によって生成された画像データを被検体Pごとに記憶する。
データ処理部85は、記憶部84により記憶された磁気共鳴データに対して後処理すなわちフーリエ変換処理等の再構成処理を施すことによって、被検体P内を表す画像データを生成する。
制御部86は、上述した機能部間での制御の移動や、機能部と記憶部との間のデータの受け渡しなどを行うことで、MRI装置100の全体制御を行う。この制御部86は、CPU(Central Processing Unit)及びメモリを有し、これらを用いて各種プログラムを実行させることで、MRI装置100が有する各部を制御する。例えば、制御部86は、操作者によって設定された撮像条件に基づいてシーケンス情報を生成し、生成したシーケンス情報をシーケンス制御部50に送信することで各種の撮像を実行する。
以上、第1の実施形態に係るMRI装置100の全体構成について説明した。このような構成のもと、第1の実施形態に係るMRI装置100は、造影剤を用いずに腫瘍の良悪性を高精度に鑑別することが可能な鑑別方法を提供するものである。
従来、乳癌などの検査では、X線マンモグラフィ画像や超音波画像による診断に加えて、造影MRIを用いた診断が行われている。この造影MRIによる診断では、例えば、ダイナミック造影胸部MRI(DE−BMRI:Dynamic Enhanced-Breast MRI)によって撮像された胸部(Breast)のMR画像を用いて、腫瘍の鑑別が行われる。
具体的には、DE−BMRIによる腫瘍の鑑別方法では、あらかじめ造影剤を注入した被検体をダイナミック撮像することで、胸部における時系列の造影ダイナミック(DCE:Dynamic Contrast Enhancement)画像が撮像される。そして、撮像された各DCE画像をもとに、造影剤による造影効果、すなわち造影剤による胸部の時間的な染まり具合の変化を表すパフュージョンカーブが作成され、そのパフュージョンカーブにおける造影剤の流入(Wash-in)部分及び流出(Wash-out)部分の時間変化を調べることによって、DCE画像に描出された腫瘍の良悪性の鑑別が行われる。
一方、造影剤を用いずに腫瘍を鑑別する方法として、NC−BMRIを用いた方法もある。このNC−BMRIによる鑑別方法では、例えば、非造影で血流を描出することが可能なTime−SLIP法を用いて、BBTIを変えた複数の胸部のMR画像が撮像される。そして、撮像された各MR画像をもとに、横軸をBBTI、縦軸を信号強度としたパフュージョンカーブが作成され、このパフージョンカーブの傾きから腫瘍の良悪性の鑑別が行われる。この方法では、腫瘍は悪性である場合に、良性である場合と比べてパフュージョンカーブの傾きが大きくなると想定されている。
このように、乳房における腫瘍の鑑別に関する従来技術には各種の方法があるが、それぞれ、以下のような課題がある。
例えば、DE−BMRIでは、Gd(ガドリニウム)系の造影剤の投与が行われるが、近年、Gd系の造影剤と腎性全身性繊維症(NSF:Nephrogenic Systemic Fibrosis)との間に関連性があることが指摘されている。また、Gd系の造影剤の投与は、ヘモクロマトーシス患者には禁忌である。
また、DE−BMRIによる腫瘍の鑑別方法では、十分なコントラストで血流像が得られる最初の時相が造影剤を注入してから約60秒以内の流入部分であるため、造影剤を注入してから約60秒以内に造影剤による最初の染まり点を造影効果として取得しないと、十分なコントラストで血流像を得ることができない。このため、時間分解能に制約があるという課題がある。
また、NC−BMRIによる腫瘍の鑑別方法では、前述したように、腫瘍は悪性である場合に、良性である場合と比べてパフュージョンカーブの傾きが大きくなると想定されている。この想定は、腫瘍が悪性である場合には、栄養血管からより早い速度で栄養されるという前提に基づくものであるが、この前提は、造影剤を用いた場合に成り立つものと考えられる。つまり、造影剤を用いた場合は、造影剤は、栄養血管からの物理的な流入によって腫瘍に取り込まれるだけでなく、癌細胞の貪食作用による細胞の取り込みによっても腫瘍に取り込まれるので、腫瘍が正常領域よりも早い速度で栄養されるという前提が成り立つ。しかし、腫瘍に入り込む栄養血管だけを観察するNC−BMRIでは、必ずしもこの前提は成り立たないと考えられる。このことから、NC−BMRIによって得られる線形のパフュージョンカーブの傾きから腫瘍の良悪性を鑑別することは難しいと考えられる。
このような従来技術における課題に対し、第1の実施形態に係るMRI装置100は、新しい観点で、造影剤を用いない腫瘍の鑑別方法を提供するものである。具体的には、第1の実施形態に係る腫瘍の鑑別方法は、腫瘍が悪性化する際に、悪性度が上がるほど血管新生が盛んになるという事実に基づいている。
図2は、腫瘍の悪性化と血管新生とを説明するための図である。図2の(a)〜(f)は、腫瘍と、栄養血管とを示しており、腫瘍の悪性化に伴って、栄養血管が徐々に新生される様子を示している。具体的には、図2の(a)は、腫瘍1が悪性化する前の状態を示しており、図2の(b)は、腫瘍1が悪性化を始め、それに伴って栄養血管2から新たな栄養血管3が新生され始めた状態を示している。また、図2の(c)は、癌細胞が増殖して腫瘍の悪性化が進み、腫瘍の周囲に多数の栄養血管3が新生された状態を示しており、図2の(d)は、基の栄養血管2と新生された栄養血管3との分岐部分の様子を示している。また、図2の(e)は、転移により新たな腫瘍4が発生した状態を示しており、図2の(f)は、新たな腫瘍4の悪性化が進んで、その周囲に栄養血管5が新生された状態を示している。
図2の(a)〜(f)に示すように、腫瘍は、悪性化を始めると徐々に血管が新生され、さらに、癌細胞が増殖する(悪性度が上がる)につれて、血管が発達した腫瘍となる。このように、腫瘍の悪性化には、必ず血管新生が伴う。したがって、腫瘍の良悪性は、腫瘍に栄養を供給する栄養血管の血流速度ではなく、栄養血管の本数に依存すると考えられる。
そこで、例えば、第1の実施形態に係るMRI装置100は、被検体の乳房における血流を非造影で描出するためのシーケンスを複数回実行し、収集した磁気共鳴データに基づいて、時系列の複数の血流画像を生成する。そして、MRI装置100は、複数の血流画像のうち所定の閾値以上の輝度値を含む血流画像を評価して、乳房に生じた腫瘍が良性であるか悪性であるかを鑑別する。
前述したように、腫瘍が悪性化すると、血管新生によって、腫瘍に栄養を供給する栄養血管の本数が増加する。このため、腫瘍の悪性度が高くなるほど、血流画像において、より多くの血液が腫瘍の周辺に描出されることになる。また、血管新生によって増加する複数の栄養血管は、太さや長さがそれぞれ異なると想定され、各血管における血流速度もそれぞれ異なると考えられる。このため、血管新生によって栄養血管が増加すると、時系列に撮像された複数の血流画像において、より多くの時点で腫瘍の周辺に血液が描出されることになる。つまり、腫瘍の悪性度が高いほど、時系列に撮像された血流画像において、より多くの血液が腫瘍の周辺に描出されるとともに、より多くの時点で腫瘍の周辺に血液が描出されることになる。
第1の実施形態に係るMRI装置100によれば、時系列に生成された複数の血流画像のうち、所定の閾値以上の輝度値を含む血流画像が評価されて、腫瘍の鑑別が行われるので、血管新生によって栄養血管の本数が増加しているか否かに基づいて、腫瘍の良悪性が鑑別されることになる。したがって、第1の実施形態によれば、造影、被曝又はバイオプシなどの侵襲なしに、被検体内の腫瘍の良悪性を高精度に鑑別することができる。
以下、上述したMRI装置100の構成について詳細に説明する。
図3は、第1の実施形態に係るMRI装置100の詳細な構成を示すブロック図である。なお、図3では、図1に示した各部のうち、シーケンス制御部50及び計算機システム80のみを示している。また、計算機システム80については、記憶部84、データ処理部85及び制御部86のみを示している。図3に示すように、記憶部84は、磁気共鳴データ記憶部84aと、画像データ記憶部84bとを有する。
磁気共鳴データ記憶部84aは、シーケンス制御部50から送信された磁気共鳴データを記憶する。例えば、磁気共鳴データ記憶部84aは、解剖画像取得シーケンス設定部86bによって設定されたシーケンスを実行することで収集される磁気共鳴データを記憶する。また、例えば、磁気共鳴データ記憶部84aは、後述するTime−SLIPシーケンス設定部86cによって設定されたTime−SLIP法のシーケンスを実行することで収集される磁気共鳴データを記憶する。
画像データ記憶部84bは、データ処理部85によって生成される画像データを記憶する。例えば、画像データ記憶部84bは、後述する解剖画像生成部85aによって生成される解剖画像や、後述する血流画像生成部85bによって生成される血流画像などを記憶する。さらに、画像データ記憶部84bは、他のモダリティによって撮像された画像も記憶する。例えば、X線マンモグラフィ装置によって撮像されたX線マンモグラフィ画像や、超音波診断装置によって撮像された超音波診断画像などを記憶する。
また、図3に示すように、制御部86は、撮像条件設定部86aを有する。撮像条件設定部86aは、入力部82を介して操作者から各種撮像パラメータの入力を受け付け、入力された撮像パラメータに基づいて撮像条件を設定する。そして、撮像条件設定部86aは、設定した撮像条件に基づいてシーケンス情報を生成し、生成したシーケンス情報をシーケンス制御部50に送信することで、各種撮像法によるシーケンスを実行させる。
例えば、撮像条件設定部86aは、解剖画像を取得するためのシーケンスを設定する。また、例えば、撮像条件設定部86aは、被検体の乳房における血流を非造影で描出するためのシーケンスとして、Time−SLIP法のシーケンスなどを設定する。具体的には、撮像条件設定部86aは、解剖画像取得シーケンス設定部86bと、Time−SLIPシーケンス設定部86cとを有する。
解剖画像取得シーケンス設定部86bは、解剖画像を取得するためのシーケンスを設定する。例えば、解剖画像取得シーケンス設定部86bは、T1W(T1 Weighted)画像を取得するためのシーケンスや、T2W(T2 Weighted)画像を取得するためのシーケンスなどを設定する。
Time−SLIPシーケンス設定部86cは、解剖画像取得シーケンス設定部86bによって設定されたシーケンスを実行することで取得される解剖画像を参照画像として、Time−SLIP法による撮像のシーケンスを設定する。具体的には、Time−SLIPシーケンス設定部86cは、タグ領域設定部86dと、BBTI設定部86eとを有する。
Time−SLIP法は、撮像領域に流入する血液を標識化(ラベリング又はタグ付けともいう)又は識別するためのスピンラベリングパルスと呼ばれる反転回復(IR:Inversion Recovery)パルスを、プレパルスとしてFBI(Fresh Blood Imaging)シーケンスやSSFP(Steady State Free Precession)シーケンス等のイメージング用のシーケンスに先立って印加することで、画像のコントラストを制御する方法である。なお、血液のラベリングを行うためのスピンラベリングパルスは、ASL(Arterial Spin Labeling)パルスと呼ばれる。Time−SLIP法では、複数のASLパルスで構成されるTime−SLIPパルスが印加される。
Time−SLIPパルスは、ECG信号のR波から一定の遅延時間が経過した後に印加され、Time−SLIPパルスが印加されたタイミングから反転時間に相当するBBTIが経過した後に、イメージング用のシーケンスにおけるRF励起パルスが印加される。そして、RF励起パルスの印加から実効エコー時間が経過した後に、k空間中心における磁気共鳴信号が収集される。このため、BBTI経過後に撮像領域に到達した血液のみの信号強度を強調又は抑制することができる。
また、Time−SLIPパルスは、領域非選択IRパルス及び領域選択IRパルスで構成される。例えば、領域非選択IRパルスをオフにした状態で、撮像領域内に設定された標識化領域を領域選択IRパルスによってラベリングすることで縦磁化を反転させると、BBTI経過後に、標識化領域に流入するラベリングされていない(つまり、縦磁化が反転していない)血液が到達した部分の信号強度が高くなる。このため、血液の移動方向や距離を把握することができる。すなわち、反転時間後に撮影領域に到達した血液のみの信号強度を選択的に強調又は抑制することができる。
タグ領域設定部86dは、被検体の乳房が撮像された解剖画像を参照画像として、Time−SLIPパルスを印加する標識化領域を設定する。具体的には、タグ領域設定部86dは、表示部83に表示された解剖画像を参照画像として、その解剖画像上に領域を指定する操作を、入力部82を介して操作者から受け付ける。そして、タグ領域設定部86dは、解剖画像上で指定された領域を標識化領域として設定する。
図4は、第1の実施形態に係るタグ領域設定部86dによる標識化領域の設定を示す図である。図4に示すように、例えば、タグ領域設定部86dは、解剖画像6上で、腫瘍の領域である関心領域7と表皮8とを含むように標識化領域9を設定する。乳房を通る血管は表皮に近いところを走行しているので、このように関心領域と表皮とを含むように標識化領域を設定することで、関心領域近辺の新生血管も標識化領域9に含まれるようになる。
図3にもどって、BBTI設定部86eは、Time−SLIP法のシーケンスにおけるBBTIを設定する。第1の実施形態では、BBTI設定部86eは、Time−SLIP法のシーケンスをBBTIを変えながら複数回実行するために、BBTI設定部86eは、複数の異なる値のBBTIを設定する。具体的には、BBTI設定部86eは、入力部82を介して、操作者から複数の異なるBBTI値の入力を受け付ける。そして、BBTI設定部86eは、入力された複数のBBTI値を用いて、Time−SLIP法によるシーケンスで用いられる複数のBBTIを設定する。
シーケンス制御部50は、撮像条件設定部86aによって設定された撮像条件に基づいて各種シーケンスを実行する。そして、シーケンス制御部50は、実行した各種シーケンスによって収集された磁気共鳴データを磁気共鳴データ記憶部84aに格納する。
具体的には、シーケンス制御部50は、解剖画像取得シーケンス設定部86bによって設定されたシーケンスを実行する。例えば、シーケンス制御部50は、T1W画像を取得するためのシーケンスや、T2W画像を取得するためのシーケンスを実行する。
また、シーケンス制御部50は、被検体の乳房における血流を非造影で描出するためのシーケンスを複数回実行する。具体的には、シーケンス制御部50は、BBTI設定部86eによって設定された複数のBBTIを順次用いて、BBTIを変えながら、Time−SLIPシーケンス設定部86cによって設定されたTime−SLIP法のシーケンスを複数回実行する。
また、図3に示すように、データ処理部85は、解剖画像生成部85aと、血流画像生成部85bと、腫瘍鑑別部85cとを有する。
解剖画像生成部85aは、解剖画像取得シーケンス設定部86bによって設定されたシーケンスを実行することで収集される磁気共鳴データに基づいて、解剖画像を生成する。具体的には、解剖画像生成部85aは、シーケンス制御部50が、解剖画像取得シーケンス設定部86bによって設定されたシーケンスを実行した後に、そのシーケンスによって収集された磁気共鳴データを磁気共鳴データ記憶部84aから読み出す。そして、解剖画像生成部85aは、読み出した磁気共鳴データに対して画像の種類ごとに定められた所定の画像処理を施すことで、解剖画像を生成する。例えば、解剖画像生成部85aは、解剖画像として、T1W画像やT2W画像などを生成する。そして、解剖画像生成部85aは、生成した解剖画像のデータを画像データ記憶部84bに格納する。
血流画像生成部85bは、被検体の乳房における血流を非造影で描出するためのシーケンスによって収集された磁気共鳴データに基づいて、時系列に複数の血流画像を生成する。具体的には、血流画像生成部85bは、シーケンス制御部50が、Time−SLIPシーケンス設定部86cによって設定されたTime−SLIP法のシーケンスをBBTIを変えながら複数回実行した後に、各シーケンスによって収集された磁気共鳴データを磁気共鳴データ記憶部84aから読み出す。そして、血流画像生成部85bは、読み出した磁気共鳴データに基づいて、BBTIごとに血流画像を生成する。そして、血流画像生成部85bは、生成した血流画像のデータを画像データ記憶部84bに格納する。
腫瘍鑑別部85cは、血流画像生成部85bによって生成された複数の血流画像のうち、所定の閾値以上の輝度値を含む血流画像を評価して、乳房に生じた腫瘍が良性であるか悪性であるかを鑑別する。具体的には、腫瘍鑑別部85cは、所定の閾値以上の輝度値を含む血流画像の数を評価し、該当する血流画像の数が多いほど腫瘍の悪性度が高いと鑑別する。なお、腫瘍鑑別部85cによって用いられる所定の閾値は、例えば、操作者によって任意の値が設定される。または、腫瘍鑑別部85cによって用いられる所定の閾値は、診断対象の乳房の反対側の乳房に関する血流画像に基づいて設定されてもよい。
図5及び6は、第1の実施形態に係る腫瘍鑑別部85cによる閾値の設定を説明するための図である。図5及び6において、横軸は、各血流画像のBBTIを示し、縦軸は、各血流画像の輝度値を示している。ここで、各血流画像の輝度値は、血流画像に描出された腫瘍の領域である関心領域内の画素位置における複数の輝度値の代表値とする。ここでいう代表値とは、例えば、平均値や中央値、最大値、最小値などである。また、図5及び6において、黒丸は、診断対象の乳房に関する血流画像の輝度値を示しており、白丸は、反対側の乳房に関する血流画像の輝度値を示している。
例えば、図5に示すように、腫瘍鑑別部85cは、BBTIごとに輝度値の閾値Tを設定する。例えば、腫瘍鑑別部85cは、診断対象の乳房に関する複数の血流画像ごとに、反対側の乳房に関する複数の血流画像のうちの対応する血流画像の輝度値に基づいて閾値を設定する。具体的には、腫瘍鑑別部85cは、診断対象の乳房に関する血流画像について閾値を設定する場合に、まず、画像データ記憶部84bを参照し、反対側の乳房に関する複数の血流画像のうち同じBBTIの血流画像を取得する。そして、腫瘍鑑別部85cは、取得した血流画像において、診断対象の乳房に関する血流画像における関心領域と同じ位置にある領域に含まれる輝度値の代表値を求める。その後、腫瘍鑑別部85cは、求めた代表値を1〜N倍(Nは実数)した値を、診断対象の乳房に関する血流画像に用いる閾値として設定する。ここで、実数Nは、例えば、過去に撮像された乳房の血流画像を用いて、悪性と鑑別すべき腫瘍の輝度値と正常領域の輝度値との関係を統計的に推定し、推定した関係に応じて設定する。なお、図5に示す例は、N=2とした場合を示している。
また、図6に示すように、腫瘍鑑別部85cは、BBTIごとに同じ閾値Tを設定してもよい。例えば、腫瘍鑑別部85cは、診断対象の乳房の反対側の乳房に関する複数の血流画像から輝度値の平均値を算出し、算出した平均値に基づいて閾値を設定する。具体的には、腫瘍鑑別部85cは、診断対象の乳房に関する血流画像について閾値を設定する場合に、まず、画像データ記憶部84bを参照し、反対側の乳房に関する複数の血流画像を取得する。そして、腫瘍鑑別部85cは、取得した血流画像それぞれについて、診断対象の乳房に関する血流画像における関心領域と同じ位置にある領域に含まれる輝度値の代表値を求める。さらに、腫瘍鑑別部85cは、血流画像ごとに求めた代表値の平均値を求める。その後、腫瘍鑑別部85cは、求めた代表値を1〜M倍(Mは実数)した値を、診断対象の乳房に関する血流画像に用いる閾値として設定する。ここで、実数Nは、例えば、過去に撮像された乳房の血流画像を用いて、悪性と鑑別すべき腫瘍の輝度値と正常領域の輝度値との関係を統計的に推定し、推定した関係に応じて設定する。なお、図6に示す例は、M=2とした場合を示している。
このように、診断対象の乳房の反対側の乳房に関する血流画像に基づいて、腫瘍鑑別部85cによって用いられる所定の閾値を設定することで、被検体ごとに異なる閾値が設定されることになる。すなわち、このように閾値を設定することで、個々の被検体に応じて、適切な閾値を設定することができる。
こうして閾値を設定した後に、腫瘍鑑別部85cは、血流画像生成部85bによってBBTIごとに生成された複数の血流画像のうち、閾値以上の輝度値を含む血流画像を特定する。そして、腫瘍鑑別部85cは、特定した血流画像の数が多いほど、腫瘍の悪性度が高いと鑑別する。例えば、腫瘍鑑別部85cは、悪性度を判定するための複数の閾値を段階的に設定し、特定した血流画像の数と各閾値とを比較することで、悪性度を段階的に鑑別する。
具体的な例として、例えば、腫瘍鑑別部85cは、悪性度を判定するための第1の閾値と、第1の閾値より小さい第2の閾値とを設定し、特定した血流画像の数が第1の閾値以上であった場合には、悪性度を「高」と判定する。また、腫瘍鑑別部85cは、特定した血流画像の数が第1の閾値未満であり、かつ、第2の閾値以上であった場合には、悪性度を「中」と判定する。また、腫瘍鑑別部85cは、特定した血流画像の数が第2の閾値未満であった場合には、悪性度を「低」と判定する。
そして、腫瘍鑑別部85cは、鑑別結果を表示部83に表示させる。例えば、腫瘍鑑別部85cは、血流画像生成部85bによってBBTIごとに生成された複数の乳房の血流画像を表示部83に並べて出力するとともに、腫瘍の良悪性を鑑別した結果を表示部83に出力する。
図7及び8は、第1の実施形態に係る腫瘍鑑別部85cによる鑑別結果の表示例を示す図である。ここで、図7は、腫瘍の悪性度が高い場合の表示例であり、図8は、腫瘍の悪性度が低い場合の表示例である。なお、図7及び8において、白い矢印は、輝度値が所定の閾値以上である領域、すなわち腫瘍の領域を示している。
例えば、BBTIが異なる5つの血流画像が用いられる場合に、前述した例の第1の閾値が「4」であり、第2の閾値が「2」と設定されていたとする。その場合には、例えば、図7に示すように、5つの血流画像のうち所定の閾値以上の輝度値を含む血流画像が4つあったときには、腫瘍鑑別部85cは、悪性度が「高」であると判定する。そして、腫瘍鑑別部85cは、「悪性度:高」という文字を各血流画像とともに表示部83に表示させる。また、例えば、図8に示すように、5つの血流画像のうち所定の閾値以上の輝度値を含む血流画像が1つあったときには、腫瘍鑑別部85cは、悪性度が「低」であると判定する。そして、腫瘍鑑別部85cは、「悪性度:低」という文字を各血流画像とともに表示部83に表示させる。
なお、図7及び8に示した表示例は一例であり、腫瘍鑑別部85cによる表示例はこれに限られない。例えば、悪性度のレベルごとに異なる色を定義し、判定した悪性度に応じた色を腫瘍領域に重ねて表示させるようにしてもよい。また、例えば、図5及び6に示したように、横軸をBBTIとし、縦軸を輝度値として、各血流画像の輝度値をプロットした結果を表示部83に表示させてもよい。
次に、第1の実施形態に係るMRI装置100による良悪性鑑別の流れについて説明する。図9は、第1の実施形態に係るMRI装置100による良悪性鑑別の流れを示すフローチャートである。
図9に示すように、まず、MRI装置100は、診断対象の乳房の解剖画像を撮像する(ステップS101)。具体的には、解剖画像取得シーケンス設定部86bが、診断対象の乳房の解剖画像を取得するためのシーケンスを設定する。その後、シーケンス制御部50が、解剖画像取得シーケンス設定部86bによって設定されたシーケンスを実行する。そして、解剖画像生成部85aが、解剖画像取得シーケンス設定部86bによって設定されたシーケンスを実行することで収集される磁気共鳴データに基づいて、解剖画像を生成する。
続いて、MRI装置100は、撮像された解剖画像を表示する(ステップS102)。具体的には、制御部86が、操作者からの表示要求に応じて、解剖画像生成部85aによって生成された乳房の解剖画像を画像データ記憶部84bから読み出して、表示部83に表示させる。例えば、制御部86は、解剖画像としてT1W画像やT2W画像を表示部83に表示させる。
続いて、MRI装置100は、診断対象の乳房のX線マンモグラフィ画像や超音波診断画像を表示部83に表示する(ステップS103)。具体的には、制御部86が、操作者からの表示要求に応じて、診断対象の乳房が撮像されたX線マンモグラフィ画像や超音波診断画像を画像データ記憶部84bから読み出して、解剖画像とともに表示部83に表示させる。このとき、例えば、MRI装置100の操作者(例えば、医師など)は、X線マンモグラフィ画像や超音波診断画像で発見された腫瘍を参照して、解剖画像上で腫瘍を検出する。そして、操作者は、検出した腫瘍の形態や大きさを評価する。
続いて、MRI装置100は、解剖画像を参照画像として、Time−SLIPパルスの標識化領域を設定する(ステップS104)。具体的には、タグ領域設定部86dが、表示部83に表示された解剖画像を参照画像として、その解剖画像上に領域を指定する操作を操作者から受け付け、解剖画像上で指定された領域を標識化領域として設定する。
続いて、MRI装置100は、複数の異なるBBTIを設定する(ステップS105)。具体的には、BBTI設定部86eが、操作者から複数の異なるBBTI値の入力を受け付け、入力された複数のBBTI値を用いて、Time−SLIP法によるシーケンスで用いられる複数のBBTIを設定する。
続いて、MRI装置100は、Time−SLIP法によりBBTIが異なる複数の血流画像を収集する(ステップS106)。具体的には、シーケンス制御部50が、BBTI設定部86eによって設定された複数のBBTIを順次用いて、BBTIを変えながら、Time−SLIPシーケンス設定部86cによって設定されたTime−SLIP法のシーケンスを複数回実行する。そして、血流画像生成部85bが、Time−SLIP法のシーケンスによって収集された磁気共鳴データに基づいて、BBTIごとに血流画像を生成する。
続いて、MRI装置100は、複数の血流画像を用いて、腫瘍が良性であるか悪性であるかを鑑別する(ステップS107)。具体的には、腫瘍鑑別部85cが、血流画像生成部85bによって生成された複数の血流画像のうち、所定の閾値以上の輝度値を含む血流画像を評価して、乳房に生じた腫瘍が良性であるか悪性であるかを鑑別する。このとき、腫瘍鑑別部85cは、所定の閾値以上の輝度値を含む血流画像の数を評価し、該当する血流画像の数が多いほど腫瘍の悪性度が高いと鑑別する。
続いて、MRI装置100は、鑑別結果を表示する(ステップS108)。具体的には、腫瘍鑑別部85cが、腫瘍が良性であるか悪性であるかを鑑別した結果を表示部83に表示させる。例えば、腫瘍鑑別部85cは、BBTIが異なる複数の血流画像とともに、腫瘍の悪性度のレベルを表示部83に表示させる。
上述したように、第1の実施形態に係るMRI装置100よれば、被検体の乳房における血流を非造影で描出した時系列の複数の血流画像が収集され、収集された複数の血流画像のうち、所定の閾値以上の輝度値を含む血流画像を評価して、乳房に生じた腫瘍の良悪性が鑑別される。したがって、腫瘍の悪性化に伴う血管新生を考慮して腫瘍の良悪性を鑑別することができるようになり、造影、被曝又はバイオプシなどの侵襲なしに、被検体内の腫瘍の良悪性を高精度に鑑別することが可能になる。
(第1の実施形態に係る第1の変形例)
なお、上述した第1の実施形態では、腫瘍鑑別部85cが、所定の閾値以上の輝度値を含む血流画像の数を評価し、該当する血流画像の数が多いほど腫瘍の悪性度が高いと鑑別する例について説明した。しかし、腫瘍を鑑別する方法はこれに限られない。例えば、腫瘍鑑別部85cは、所定の閾値以上の輝度値を有する画素が占める面積の各血流画像間におけるばらつきを評価し、当該面積のばらつきが大きいほど腫瘍の悪性度が高いと鑑別してもよい。この場合の閾値も、例えば、操作者によって任意の値が設定されてもよいし、診断対象の乳房の反対側の乳房に関する血流画像に基づいて設定されてもよい。
この場合には、例えば、腫瘍鑑別部85cは、血流画像生成部85bによってBBTIごとに生成された複数の血流画像のうち、所定の閾値以上の輝度値を含む血流画像を特定する。また、腫瘍鑑別部85cは、特定した各血流画像について、所定の閾値以上の輝度値が占める面積を求める。その後、腫瘍鑑別部85cは、血流画像ごとに求めた面積を用いて、各血流画像間における面積の標準偏差を算出する。そして、腫瘍鑑別部85cは、算出した標準偏差が大きいほど、腫瘍の悪性度が高いと鑑別する。例えば、腫瘍鑑別部85cは、悪性度を判定するための複数の閾値を段階的に設定し、算出した標準偏差と各閾値とを比較することで、悪性度を段階的に鑑別する。
(第1の実施形態に係る第2の変形例)
また、上述した第1の実施形態では、Time−SLIPパルスによりラベリングされた標識化領域に流入するラベリングされていない血液を描出するフローイン法により血流画像を生成する例について説明した。しかし、Time−SLIP法による血流画像の生成方法はこれに限られない。例えば、腫瘍を含む関心領域の外部において主要血管を含む標識化領域を設定することで、描出しようとする血液自体をラベリングするフローアウト法により血流画像を生成してもよい。フローアウト法の場合には、関心領域に流入するラベリングされた血液が、血流画像に描出される。
なお、フローイン法やフローアウト法の定義は上述したものに限られず、定義の仕方によっては、その逆の名称や他の名称で呼ばれてもよい。また、撮像領域や標識化領域の設定も、撮像目的などに応じて任意に変更することが可能である。また、Time−SLIPパルスを印加する標識化領域の位置や、標識化領域の数は、任意に変更することができる。
また、標識化のためのパルスとして、IRパルスの他にも、SAT(SATuration)パルスやSPAMM(Spatial Modulation of Magnetization)パルス、DANTE(Delays Alternating with Nutations for Tailored Excitation)パルスなどが用いられてもよい。SATパルスは、標識化領域の磁化ベクトルを90°倒して縦磁化成分を飽和させるパルスである。また、SPAMMパルスやDANTEパルスは、傾斜磁場の調整によってストライプパターンやグリッドパターン、放射状パターンなどの所望のパターンで飽和された領域を形成するパルスである。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。図10は、第2の実施形態に係る画像処理装置200の構成を示す図である。図10に示すように、画像処理装置200は、ネットワーク300を介してMRI装置100と接続されている。例えば、画像処理装置200は、MRI装置100が設置された撮影室とは別の場所に置かれ、読影医や診断医などによって用いられる。なお、画像処理装置200は、各種医用画像を保管する画像保管サーバや、各種医用画像を表示するワークステーションなどであってもよい。
MRI装置100は、磁気共鳴現象を利用して被検体内を画像化する装置である。具体的には、MRI装置100は、操作者から各種撮像パラメータの入力を受け付け、入力された撮像パラメータに基づいて撮像条件を設定する。そして、MRI装置100は、設定した撮像条件に基づいて各種撮像法によるシーケンスを実行させる。例えば、MRI装置100は、被検体の乳房における血流を非造影で描出するためのシーケンスを実行する。具体的な例として、例えば、MRI装置100は、第1の実施形態と同様に、Time−SLIP法による撮像のシーケンスを実行する。
また、MRI装置100は、各種シーケンスを実行することで収集される磁気共鳴データに基づいて、各種MR画像を生成する。例えば、MRI装置100は、被検体の乳房における血流を非造影で描出するためのシーケンスによって収集された磁気共鳴データに基づいて、時系列に複数の血流画像を生成する。具体的な例として、例えば、MRI装置100は、第1の実施形態と同様に、Time−SLIP法のシーケンスをBBTIを変えながら複数回実行した後に、収集された磁気共鳴データに基づいて、BBTIごとに血流画像を生成する。
そして、MRI装置100は、各種MR画像を生成すると、生成したMR画像をネットワーク300を介して画像処理装置200に送信する。例えば、MRI装置100は、画像取得部210は、画像処理装置200に対して、被検体の乳房における血流を非造影で描出するためのシーケンスを複数回実行して得られた時系列の複数の血流画像を送信する。具体的な例として、例えば、MRI装置100は、Time−SLIP法のシーケンスによって得られたBBTIが異なる複数の血流画像を画像処理装置200に送信する。
画像処理装置200は、各種医用画像を処理する装置である。例えば、画像処理装置200は、MRI装置100によって生成されたMR画像を処理する。具体的には、画像処理装置200は、画像取得部210と、入力部220と、表示部230と、記憶部240と、制御部250を有する。
画像取得部210は、各種医用画像を取得する。例えば、画像取得部210は、被検体の乳房における血流を非造影で描出するためのシーケンスを複数回実行して得られた時系列の複数の血流画像をMRI装置から取得する。具体的な例として、例えば、画像取得部210は、Time−SLIP法のシーケンスによって得られたBBTIが異なる複数の血流画像をMRI装置100から取得する。なお、画像取得部210は、各種医用画像を取得すると、取得した医用画像を後述する画像データ記憶部241に格納する。
入力部220は、操作者からの各種指示や情報入力を受け付ける。この入力部82としては、例えば、マウスやトラックボールなどのポインティングデバイス、あるいはキーボード等の入力デバイスが用いられる。例えば、入力部220は、医用画像の表示を要求する操作を操作者から受け付ける。また、入力部220は、診断対象の乳房に関する血流画像に基づいて腫瘍の良悪性を鑑別することを要求する操作を操作者から受け付ける。
表示部230は、操作者により参照される各種画像や、操作者から各種操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)を表示する。この表示部83としては、例えば、液晶モニタやCRTモニタなどの表示デバイスが用いられる。
記憶部240は、画像処理装置200によって処理される各種データを記憶する。具体的には、記憶部240は、画像データ記憶部241を有する。画像データ記憶部241は、画像取得部210によって取得された各種医用画像のデータを記憶する。例えば、画像データ記憶部241は、画像取得部210によってMRI装置100から取得されたMR画像を記憶する。具体的な例として、画像データ記憶部241は、MRI装置100から取得されたBBTIが異なる複数の血流画像を記憶する。
制御部250は、CPU(Central Processing Unit)及びメモリを有し、これらを用いて各種プログラムを実行させることで、画像処理装置200の動作を制御する。具体的には、制御部250は、腫瘍鑑別部251を有する。
腫瘍鑑別部251は、画像取得部210によって取得された複数の血流画像のうち所定の閾値以上の輝度値を含む血流画像を評価して、乳房に生じた腫瘍が良性であるか悪性であるかを鑑別する。例えば、腫瘍鑑別部251は、第1の実施形態と同様に、所定の閾値以上の輝度値を含む血流画像の数を評価し、該当する血流画像の数が多いほど腫瘍の悪性度が高いと鑑別する。また、例えば、腫瘍鑑別部251は、第1の実施形態に係る第1の変形例と同様に、所定の閾値以上の輝度値を有する画素が占める面積の各血流画像間におけるばらつきを評価し、当該面積のばらつきが大きいほど腫瘍の悪性度が高いと鑑別してもよい。
そして、腫瘍鑑別部251は、鑑別結果を表示部83に表示させる。例えば、腫瘍鑑別部251は、第1の実施形態と同様に、画像取得部210によって取得されたBBTIが異なる複数の乳房の血流画像を表示部230に並べて出力するとともに、腫瘍の良悪性を鑑別した結果を表示部230に出力する。
上述したように、第2の実施形態に係る画像処理装置200によれば、被検体の乳房における血流を非造影で描出した時系列の複数の血流画像が取得され、取得された複数の血流画像のうち、所定の閾値以上の輝度値を含む血流画像を評価して、乳房に生じた腫瘍の良悪性が鑑別される。したがって、第1の実施形態と同様に、腫瘍の悪性化に伴う血管新生を考慮して腫瘍の良悪性を鑑別することができるようになり、造影、被曝又はバイオプシなどの侵襲なしに、被検体内の腫瘍の良悪性を高精度に鑑別することが可能になる。
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、造影剤を用いずに腫瘍の良悪性を高精度に鑑別することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。