以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。図1は、第1の実施形態における非接触給電システム1の概略ブロック図である。非接触給電システム1は、第1のコイル140を備える送電装置(以下、親機ともいう)100と、第2のコイル240を備える受電装置(以下、子機ともいう)200とを備える。ここで、受電装置200は、一例として車両10に設置されている。送電装置100は、一例として車庫の地面内に埋め込まれている。このとき、電流の向きは第1のコイル140と第2のコイル240との相互インダクタンスが正になるように定義する。
なお、相互インダクタンス、自己インダクタンスは下記のように定義する。第1のコイル140と第2のコイル240それぞれに複素電流I1、I2を流したとき、蓄えられるエネルギーをE=1/2ΣiΣjRe[LijIi *Ij]と定義するとき、L11、L22をそれぞれ第1のコイル140、第2のコイル240の自己インダクタンスとし、L12及びL21(但し、L12=L21)を相互インダクタンスとする。
送電装置100は、磁界結合にて受電装置200へ給電する。受電装置200は、送電装置100から給電を受ける。また、送電装置100と受電装置200とで共振周波数は同一とし、一例として、送電装置100と受電装置200それぞれが備える共振回路のドライブは共振周波数で行う。
図2は、第1の実施形態における送電装置100の概略ブロック図である。送電装置100は、第1の電源制御部110と、第1の電源部(送電装置用電源部)120と、第1の整合部130と、第1のコイル140と、電圧検出部150と、電流検出部150’を備える。ここで、電圧検出部150と、電流検出部150’とを総称して検出部と称する。ここで、第1のコイル140と第1の整合部130とに流れる電流が電圧検出部150に流れるわずかな電流を無視すればほぼ等しい。また、第1の電源部120の交流電源の振幅と受電装置200が備える第2の電源部(受電装置用電源部)220の交流電源の振幅とが等しい。また、図2において、共振回路170は、第1の整合部130と、第1のコイル140とを備えるものである。共振回路170は、第1の電源部120が生成した交流電源を用いて共振する回路である。
電圧検出部150は、第1の電源制御部110による制御に基づいて、第1の電源部120がオフの場合(例えば、電圧源の場合、電源のインピーダンスが0、電流源の場合、インピーダンスが無限大を表す場合)に、受電装置200が発生させた磁界により第1のコイル140が発生させる電気信号を検出する。ここで、送電装置100の第1の電源部120と受電装置200の後述する第2の電源部220は同一の種類の電源である。すなわち第1の電源部120が電圧源であれば、第2の電源部220も電圧源であり、第1の電源部120が電流源であれば、第2の電源部220も電流源である。
具体的には、その場合に、電圧検出部150(電圧源の時)または電流検出部150’(電流源の時)は、第1のコイル140の両端にかかる電気信号(其々、電圧又は電流)を検出する。電圧検出部150は、検出した電気信号を第1の電源制御部110に供給する。この時、第1の電源部120が電圧源の場合は、電圧検出部150の電圧の大きさは第2の電源部220の電圧の大きさにほぼ等しく、電圧検出部150にかかる電圧の位相は第2の電源部220に流れる電流より90°進んでいる/遅れている(それぞれ相互インダクタンス正/負のとき)。
第1の電源制御部110は、第1の電源部120が交流電源を生成しないようにした場合に、電圧検出部150に第1のコイル140の両端の電気信号を検出させる。第1の電源制御部110は、電圧検出部150から供給された電気信号に基づいて、第1の電源部120が生成する交流電源の位相を受電装置200の電源とは異なる位相となるよう制御する。具体的には、例えば、第1の電源制御部110は、電圧検出部150が検出した電圧の位相に基づいて、第1の電源部120が生成する交流電源の位相を制御する。
例えば、第1の電源部120が電圧源の場合でかつ第2の電源部220が電圧源の場合、第1の電源制御部110は、第1の電源部120の出力電圧を電圧検出部150が検出した電圧より位相が90度遅く/早く(それぞれ相互インダクタンスが正/負のとき)なるように第1の電源部120を制御する。これにより、第1の電源制御部110は、第1の電源部120の出力電圧を、受電装置200が備える電圧源の出力電圧より位相が90°遅く/早く(それぞれ相互インダクタンスが正/負のとき)なるようにすることができる。
なお、例えば、第1の電源部120が電流源の場合でかつ第2の電源部220が電流源の場合、第1の電源制御部110は、第1の電源部120の電圧検出部150が検出した電圧と同相になるように第1の電源部120を制御してもよい。段落[0032]より、電圧検出部150が検出した電圧は第2の電源部220の電流の位相より90°進んでいる/遅れている(相互インダクタンス正/相互インダクタンス負)。ここで、親機から子機へエネルギーを最も効率良く送るには親機の電流源の位相は子機の電流源の位相よりも90°位相が進んでいる/遅れている(それぞれ相互インダクタンス正/負)必要がある。よって、第1の電源制御部110は、電圧検出部150が検出した電圧と同じ位相の電流を第1の電源部120に流せばよい。これにより、相互インダクタンスが正の場合、第1の電源制御部110は、第1の電源部120の出力電流を、相受電装置200が備える電流源の出力電流より位相が90°早くなるようにすることができる。一方、相互インダクタンスが負の場合、第1の電源制御部110は、第1の電源部120の出力電流を、受電装置200が備える電流源の出力電流より位相が90°遅くなるようにすることができる。その結果、相互インダクタンスの符号によらず、親機から子機へエネルギーを最も効率良く送ることができる。
第1の電源部120は、予め決められた周波数の交流電源(例えば、交流電圧又は交流電流)を生成する。ここで、予め決められた周波数は、第1のコイル140と第1の整合部130とに基づいて決定される共振周波数であり、かつ受電装置200が備える第2の電源部が生成する交流電源の周波数と同一である。第1の電源部120は、生成した交流電源を第1の整合部130に供給する。
第1の整合部130は、第1の電源部120と一端で接続しており、第1のコイル140と他端で接続しており、エネルギー散逸成分が無視できる回路である。ここで、エネルギー散逸成分が無視できる回路とは、実質の抵抗素子を含まない回路を意味する。第1の整合部130は、第1の電源部120側から見たインピーダンスを0にする回路である。換言すれば、第1の整合部130は、第1のコイル140と共役整合(conjugate matching)させる回路である。ここで、共役整合とは送受信のそれぞれの端子からみた自己インピーダンス、または自己アドミッタンスの虚部が0であることを指す。第1の整合部130は、例えば、コンデンサである。第1の整合部130は、第1の電源部120から供給された交流電源を第1のコイル140に供給する。
第1のコイル140は、第1の整合部130の他端に接続され、エネルギー散逸成分が無視できる回路である。
第1のコイル140は、第1の整合部130を通して交流電源から供給される第1のコイル140に流れる電流に応じた磁界を周囲に発生させる。これにより、第1のコイル140は、受電装置200が備える第2のコイル240に誘導電流を発生させることで、受電装置200へ給電する。
図3は、第1の実施形態における送電装置100の回路図の一例である。第1の電源部120は、電池121と、端子122と、電池123と、npnトランジスタ124と、pnpトランジスタ126とを備える。これらのトランジスタは同一機能のFET(Field Effect Transistor)やIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)であってもよい。第1の整合部130は、コンデンサ131と、入力端子132と、出力端子133とを備える。
電池121のプラス側は、npnトランジスタ124のコレクタCに接続されている。また、電池121のマイナス側は、端子122を介して電池123のプラス側に接続されている。また、電池121のマイナス側は、端子122及び端子128を介して第1のコイル140に接続されている。
電池123のプラス側は、端子122を介して電池121のマイナス側に接続されている。また、電池123のプラス側は、端子122及び端子128を介して第1のコイル140に接続されている。また、電池123のマイナス側は、pnpトランジスタ126のコレクタCに接続されている。ここで電池123はインピーダンスが低く、定電圧の電圧を供給する手段を表し、具体的な電池でなくてもよく、一定電圧を回路的に供給する電源装置でもよい。
npnトランジスタ124のベースBは、第1の電源制御部110に接続されている。また、npnトランジスタ124のコレクタCは、電池121のプラス側に接続されている。また、npnトランジスタ124のエミッタEは、pnpトランジスタ126のエミッタEに接続されている。
pnpトランジスタ126のベースBは、第1の電源制御部110に接続されている。また、pnpトランジスタ126のエミッタEは、npnトランジスタ124のエミッタEに接続されている。また、pnpトランジスタ126のコレクタCは、電池123のマイナス側に接続されている。
コンデンサ131は、入力端子132を介して、npnトランジスタのエミッタEとpnpトランジスタ126のエミッタEに接続されている。
また、コンデンサ131は、出力端子133を介して、電圧検出部150及び第1のコイル140の他端に接続されている。
電圧検出部150は、端子127と端子128に接続されている。電圧検出部150は、一例として、第1の電源部120が交流電源を生成しない場合、第1のコイル140の両端の電圧を検出する。
電圧検出部150は、第1のコイル140の両端にかかるコイル交流電圧を第1の電源制御部110に供給する。
第1の電源制御部110は、電圧検出部150から供給されたコイル交流電圧に基づいて、制御電圧を生成する。第1の電源制御部110は、入力端子132にコイル交流電圧よりも90度早い交流電圧を生成するために、コイル交流電圧よりも位相が90度早い制御電圧を生成する。これは、入力端子132における電圧が、npnトランジスタ124のベースBにおける電圧に対して180度反転するためである。ここで、一例としてnpnトランジスタ124とpnpトランジスタ126の閾値電圧がほぼ0Vとする。制御電圧は、例えば、0Vを中心とする矩形電圧である。
そして、第1の電源制御部110は、生成した制御電圧をnpnトランジスタ124のベースB及びpnpトランジスタ126のベースBに供給する。
npnトランジスタ124のベースBは、第1の電源制御部110から供給された制御電圧を受け取る。また、pnpトランジスタ126のベースBは、第1の電源制御部110から供給された制御電圧を受け取る。
この制御電圧が、0Vを超える場合、npnトランジスタ124はON状態になる。それに対し、pnpトランジスタ126のエミッタEとコレクタC間に電流が流れない。これにより、入力端子132における電圧は、ほぼプラス電圧に等しくなる。
一方、この制御電圧が、0V以下の場合、npnトランジスタ124のエミッタEとコレクタC間に電流が流れない。それに対し、pnpトランジスタ126はON状態になり、入力端子132はほぼマイナス電圧となる。
第1の電源部120の出力電圧(入力端子132の電圧)は、制御電圧と同位相の交流電圧である。第1の電源部120の出力電圧のピーク間電圧は、電池121と電池123との合計電圧からnpnトランジスタ124のコレクタCとエミッタEとの間のON状態の電圧とpnpトランジスタ126のコレクタCとエミッタEとの間のオン状態の電圧とを減算した電圧である。
コンデンサ131は、入力端子132から供給される第1の電源部120の出力電圧に基づいて、高調波成分が減じた疑似的な交流電流(サイン波)を生成し、生成した交流電流を出力端子133を介して第1のコイル140に供給する。
第1のコイル140には、コンデンサ131から供給された交流電流に基づいて、第1のコイル140の周囲に磁界は発生させる。
また、npnトランジスタ124及びpnpトランジスタ126のベース電圧を0Vにすると、npnトランジスタ124及びpnpトランジスタ126のエミッタE−コレクタC間はOFF状態になり、電池121及び電池123と第1の整合部130は切り離される。
図4は、第1の実施形態における受電装置200の概略ブロック図である。受電装置200は、第2の電源部220と、第2の整合部230と、第2のコイル240と、信号生成部260とを備える。また、共振回路270は、第2の整合部230と、第2のコイル240とを備える。共振回路270は、送電装置100が発生させた磁界により生成される電気信号に応じて共振する回路である。
第2のコイル240は、エネルギー散逸成分が無視できるコイルである。第2のコイル240は、送電装置100が発生した磁界により誘導起電力が生じ、生じた誘導起電力を第2の整合部230へ供給する。
信号生成部260は、予め決められた周波数の交流信号を生成する。ここで、予め決められた周波数は、第2のコイル240と第2の整合部230とに基づいて決定される共振周波数であり、送電装置100の第1の電源部120の交流電源と同じ周波数である。なお、同じ周波数とは、単一の周波数ではなく、若干の高調波を含んでもよい。
またこの交流信号の位相は、一例として、送電装置100の第1の電源部120の位相と同じ位相である。
そして、信号生成部260は、生成した交流信号を第2の電源部220へ供給する。
第2の電源部220は、第2の整合部230の入力端子に接続されており、送電装置100の第1の電源部120の交流電源と同じ周波数でかつ送電装置100が備える第1の電源部120の交流電源の位相とは異なる位相で交流電源を生成する。なお、同じ周波数とは、単一の周波数ではなく、若干の高調波を含んでもよい。なお位相は基本波に対してのみ定義する。
第1の実施形態では、一例として第2の電源部を電圧源とし、第2の電源部220は、信号生成部260から供給された交流信号に基づいて、送電装置100の第1の電源部120の出力電圧に対して、位相が90°進んだ/遅れた(それぞれ相互インダクタンス正/負のとき)出力電圧を生成する。そして、第2の電源部220は、生成した出力電圧を第2の整合部230に供給する。
なお、第2の電源部が電流源の場合、第2の電源部220は、送電装置100が備える第1の電源部120の交流電流の位相から90度早い交流電流を生成すればよい。
第2の整合部230は、エネルギー散逸成分が無視できる回路である。第2の整合部230は、第2のコイル240と一端で接続されており、第2の電源部220と他端で接続されている。第2の整合部230は、第2のコイル240から供給された誘導起電力と、第2の電源部220から供給された交流電圧とに基づいて、交流電流を生成する。第2の整合部230は、負荷300側から見たインピーダンスを0にする回路である。換言すれば、第2の整合部230は、第2のコイル240と共役整合(conjugate matching)させる回路である。具体的には、例えば、第2の整合部230は、第2のコイル240が発生させた誘導電流により発生する電圧の大きさを減少させる。
第2の電源部220は、四端子回路であり、共振回路270に接続される2端子と負荷300側に接続される2端子とを有する。共振回路270に接続される2端子について説明する。第2の電源部220は、第2の整合部230に接続されている。また、第2の電源部220は、第2のコイル240に接続されている。負荷300側に接続される2端子について説明する。第2の電源部220は、受電装置200の外部のダイオード310の他端に接続されている。また、第2の電源部220は、コンデンサ320の他端に接続されている。
ダイオード310の一端は、コンデンサ320の一端及び負荷300の一端に接続されている。ここでダイオードは負荷からの逆向きの電流が電池に入ることを防止する。
図5は、第1の実施形態における受電装置200の回路図の一例である。第2の電源部220は、電池221と、端子222と、電池223と、pnpトランジスタ224と、npnトランジスタ226とを備える。第2の整合部230は、コンデンサ231と入力端子232と出力端子233とを備える。
電池221のプラス側は、pnpトランジスタ224のコレクタC及び自装置の外部にあるダイオード310の他端に接続されている。電池221のマイナス側は、端子222を介して第2のコイル240の一端と電池223のプラス側に接続されている。
また、電池223のプラス側は、端子222を介して、電池221のマイナス側及び第2のコイル240の一端に接続されている。電池223のマイナス側は、npnトランジスタ226のコレクタC及びコンデンサ320の他端と負荷300の他端に接続されている。
pnpトランジスタ224のベースBは、信号生成部260及びnpnトランジスタのベースBに接続されている。pnpトランジスタ224のコレクタCは、電池221のプラス側及び自装置の外部にあるダイオード310の他端に接続されている。pnpトランジスタ224のエミッタEは、npnトランジスタ226のエミッタEに接続されている。また、pnpトランジスタ224のエミッタEは、出力端子233を介してコンデンサ231に接続されている。
npnトランジスタ226のベースBは、信号生成部260及びpnpトランジスタ224のベースに接続されている。また、npnトランジスタ226のエミッタEは、pnpトランジスタのコレクタCに接続されている。また、npnトランジスタ226のエミッタEは、出力端子233を介してコンデンサ231に接続されている。また、npnトランジスタ226のコレクタCは、電池223のマイナス側と、コンデンサ320の他端と、負荷300の他端に接続されている。
コンデンサ231は、出力端子233を介して、pnpトランジスタ224のエミッタE及びnpnトランジスタ226のエミッタEに接続されている。また、コンデンサ231は、入力端子232を介して第2のコイル240に接続されている。
第2のコイル240の一端は、入力端子232を介してコンデンサ231と接続されている。また、第2のコイル240の他端は、端子222を介して、電池221のマイナス側と、電池223のプラス側とに接続されている。
第2のコイル240は、送電装置100が発生させた磁界により誘導起電力が生じ、その誘導起電力をコンデンサ231へ供給する。
コンデンサ231は、第2のコイル240から供給された誘導電流と第2の電源部220から供給された出力電圧に基づいて、交流電流を生成し、生成した交流電流をpnpトランジスタ224のエミッタE及びnpnトランジスタ226のエミッタEに供給する。
ここで、一例として、pnpトランジスタ224の閾値電圧とnpnトランジスタ226の閾値電圧とがほぼ0Vとする(電池電圧より十分小さいとする)。
信号生成部260からpnpトランジスタ224のベースB及びnpnトランジスタ226のベースBに供給される交流信号が0Vを超えた場合、pnpトランジスタ224のスイッチがオフし、コレクタCとエミッタEとの間に電流が流れない。それに対し、npnトランジスタ226はスイッチがオンし、コレクタCとエミッタEとの間に電流が流れる。これにより、第2のコイル240に生じた誘導起電力に基づく電流が、npnトランジスタ226を介して、電池223を充電する(電池223のマイナス端子から電流が出るので、充電となる)。
信号生成部260からpnpトランジスタ224のベースB及びnpnトランジスタ226のベースBに供給される交流信号が0V以下の場合、pnpトランジスタ224のスイッチがオンし、エミッタEとコレクタCとの間に電流が流れる。それに対し、npnトランジスタ226のスイッチがオフする。これにより、第2のコイル240に生じた誘導起電力に基づく電流が、電池221を充電する。
また、pnpトランジスタ224及びnpnトランジスタ226のベース電圧を0Vにすると、pnpトランジスタ224及びnpnトランジスタ226のエミッタE−コレクタC間はOFF状態になり、電池221又は電池223と第2の整合部230は切り離される。
また、信号生成部260の信号がハイレベルのときに、出力端子233の電圧はローレベルであり、信号生成部260の交流信号がローレベルのときに、出力端子233の電圧はハイレベルである。これは、すなわち、第2の電源部220は、信号生成部260が生成した交流信号に対して、位相が180度遅れた信号(以下、反転信号と称す)を生成し、生成した反転信号を出力端子233へ供給することを意味する。
ここで、コンデンサ131の容量をCp、第1のコイル140の自己インダクタンスをLpとすると、コンデンサ231の容量をCc、第2のコイル240の自己インダクタンスをLcとする。送電装置100及び受電装置200の共振周波数wは、以下の式(1)で表される。
w=1/√(Lp×Cp)=1/√(Lc×Cc) 式(1)
共振周波数wが送電装置100と受電装置200で同じにするため、式(1)の関係を満たすように、非接触給電システム1の各素子の特性が決定されている。なお、共振周波数wは、送電装置100と受電装置200との間で厳密に同じ周波数でなくてもよく、ほぼ同一の周波数でもよい。
続いて、図6と図13を用いて、従来の非接触給電システムと第1の実施形態の非接触給電システム1の違いについて説明する。
図13は、従来の非接触給電システムの等価回路90である。非接触給電システムの等価回路90は、送信側機器(親機)の電源部の電圧E、送信側機器(親機)の整合回路のインピーダンスjXp”、送信側機器(親機)のコイルの自己インピーダンス(jXp0=jXp’+jX)、相互インピーダンスjX、受信側機器(子機)のコイルの自己インピーダンス(jXp0=jXc’+jX)、受信側機器(子機)の整合回路のインピーダンスjXc”及び抵抗Rから構成されている。ここで、Xp’は、親機のコイルの自己リアクタンスXp0から相互リアクタンスXを減算したものである。また、Xc’は、子機のコイルの自己リアクタンスXp0から相互リアクタンスXを減算したものである。
また、ip、icはそれぞれ送信側機器(親機)、受信側機器(子機)に流れる電流を表す。抵抗R以外はエネルギー散逸させない素子であるので、エネルギーは抵抗Rのみで消費される。
以下では、j2=−1であり、親機の電源部の電圧Eの時間変化をexp(jwt)とする。ip2+ic2はアンテナにわずかな損失がある場合はアンテナの損失に比例するので、伝送パワーをip2+ic2で除した評価関数εは給電効率を示す評価関数である。あるいは1/2×(Lp0ip^2+Lc0ic^2)は空間に発生する磁場のエネルギーなので、Lp0=Lc0ならば、評価関数εが大きいことは少ない磁場でエネルギーを送ることができることを表す。上の回路で評価関数εを最大にする点を整合が取れている点とする。特にアンテナ間の距離が遠いと離れると、相互リアクタンスの絶対値|X|が小さくなり|X|<<|R|となる。このときのエネルギー伝送特性は単峰特性となる。
ここで、親機のコイルの自己リアクタンスXpは、親機のコイルの自己インダクタンスをLpとしたときに、以下の式で表される。
jXp0=jXp’+jX=jwLp 式(2)
ここで、式(2)における共振周波数wは式(1)で表される値である。また、コイル間の相互リアクタンスjXは、親機、子機間のアンテナ(コイル)間の位置関係により変化する。
同様に子機のコイルの自己リアクタンスXcは、子機のコイルの自己インダクタンスをLcとしたときに、以下の式(3)で表される。
jXc0=jXc’+jX=jwLc 式(3)
また、親機の整合回路のリアクタンスXp”は、コンデンサCpで構成されるので、親機の整合回路のインピーダンスjXp”は、以下の式(4)で表される。
jXp”=1/(jwCp) 式(4)
また、子機の整合回路のリアクタンスXc”は、コンデンサCcで構成されるので、子機の整合回路のインピーダンスjXc”以下の式(5)で表される。
jXc”=1/(jwCc) 式(5)
このとき、以下の量Xp、Xcを定義する。jXp=jXp”+jXp’とする。jXc=jXc”+jXc’とする。
このとき、親機のコイルに流れる電流ipは、以下の式(6)で表される。
ip=(R+jX+Xc)E/(−j(RX+RXp)+XXp+XXc+XpXc) 式(6)
また、子機のコイルに流れる電流icは、以下の式(7)で表される。
ic=jXE/(−j(RX+RXp)+XXp+XXc+XpXc) 式(7)
また、電源Eから抵抗Rに伝送されるエネルギーPは、以下の式(8)で表される。
P=Re[E*ip]=RX2E2/(R2(X+Xp)2+(XpXc+X(Xp+Xc))2) 式(8)
ここで、Reは、引数の実数部を算出する関数である。また、*は複素共役を表すが、親機の電源部の電圧Eを実数とすれば式(8)にように表される。ここで、Xp、Xcを変化させた場合に、エネルギーPが最大になる時は、Xp=Xc=−Xであり、その際のエネルギーPの値はRE2/X2である。このことから、伝送されるエネルギーPは相互インダクタンスXが小さいほうが大きく、相互インダクタンスXの二乗に反比例して大きくなる。
しかし、その際には、アンテナに流れる電流は大きくなり、たとえ非常に小さな抵抗成分しかアンテナが有していなくとも大きな損失を生む。また、電源インピーダンスが大きいときはドライブ不可能である。
そこで、以下にかかげるような親機に流れる電流の二乗と子機に流れる電流の二乗の和で伝送パワーを除した評価関数εを最大にする。あるいは電流の二乗の和は空間に発生する磁場に比例するので、εを最大にすることは少ない磁場で大きな電力を伝送できることを表す。ここで、具体的には、評価関数εは、以下の式(9)で表される。
ε=P/(|ip|2+|ic|2)=RX2/(R2+2X2+2X・Xc+Xc2) 式(9)
ここで、子機の自己リアクタンスXc、抵抗Rを変化させた時の評価関数εの最大値は、Xp=Xc=−XでかつR=|X|のときの|X|/2である。
伝送エネルギーPを最大かつ評価関数εを極大にするために、条件Xp=Xc=−Xを満たすように整合回路を設計することは合理的である。
その条件を満たすとき、親機の整合回路のリアクタンスXp”は、以下の式(10)で表される。
Xp”=−(Xp’+X)=−Xp0 式(10)
また、子機の整合回路のリアクタンスXc”は、以下の式(11)で表される。
Xc”=−(Xc’+X)=−Xc0 式(11)
親機の整合回路のリアクタンスXp”は、親機アンテナの自己リアクタンスXpの反対符号の量であり、子機の整合回路のリアクタンスXc”は、子機アンテナの自己リアクタンスXcの反対符号の量である。このように、親機の整合回路のリアクタンスXp”と子機アンテナの自己リアクタンスXcは、製品の出荷時にそのように機器を構成することにより実現できる。
しかし、評価関数εを最大にする条件であるR=|X|は親機と子機との間のアンテナ配置に影響を受けるため、アクティブに負荷抵抗Rを変化させなければならない。このような回路の実現は困難である。
図6は、第1の実施形態の非接触給電システム1の等価回路60である。非接触給電システム1の等価回路60は、第1の電源部の電圧Ep、第1の整合部130のインピーダンスjXp”、第1のコイル140のインピーダンスjXp´=jXp0−jX(コイルの自己リアクタンスから相互リアクタンスを引いたもの)、相互インピーダンスjX、第2のコイル240のインピーダンスjXc´=jXc0−jX(コイルの自己リアクタンスから相互リアクタンスを引いたもの)、第2の整合部230のインピーダンスjXc”及び第2の電源部の電圧−jEcから構成されている。ここで、ip、icはそれぞれ送電装置100に流れる電流、受電装置200に流れる電流を表す。
第1の実施形態の非接触給電システム1では、受電装置200の第2の電源部220の出力電圧の位相は、送電装置100の第1の電源部120の出力電圧の位相から90度進んでいる。
ここで、伝送パワーP´は、以下の式(12)で表される。
P´=EpEcX/(XpXc+X(Xp+Xc)) 式(12)
この式(12)において、Xp=Xc=−Xのとき、伝送パワーPは最大値−EpEc/Xをとる。伝送パワーP´は、受電装置200の第2の電源部の電圧成分Ecを上げることにより大きくすることができる。しかし、このときは図13の比較例と同様に送電装置100、受電装置200に流れる電流が増大し、損失が増える。あるいは空間磁場が増える。
そこで、図13の比較例と同様な評価関数ε´をP´/(|ip|2+|ic|2)と定義すると、評価関数ε´は、以下の式(13)で表される。
この評価関数ε´は、Xp=Xc=−Xで極大値をとり、その極大値は−EpEcX/(Ep2+Ec2)である。この極大値はEc=Epのとき、最大値−X/2となる(ただし、Xは負とする)。Ec=Epは図3と図5において、入力端子132と出力端子233の電圧振幅が等しいことをあらわし、電池の電圧が等しいことを表すわけではないが、電池の電圧がトランジスタの閾値電圧よりも十分大きければ、実質上電池の電圧を等しくしてもよい。
Xp=Xc=−Xという条件はk、第1の整合部130のリアクタンスXp”を第1のコイル140の自己リアクタンス(Xp0=Xp´+X)にマイナス符号をつけた値にし、第2の整合部230のリアクタンスXc”を第2のコイル240のリアクタンス(Xc0=Xc´+X)にマイナス符号をつけた値にすることにより実現される。
この設定は製品出荷時にすることができ、比較例のような親機、子機間の相互リアクタンスに依らない。
図7は、第1の実施形態の非接触給電システム1の評価関数の値と、従来の非接触給電システム評価関数の値とを比較した図である。同図において、横軸はコイル間の結合係数であり、縦軸は評価関数の値である。同図において、第1の実施形態の特性を示す曲線71と、従来(R=10、20、50、100、200、500、1000Ω)の特性を示す曲線72〜78とが示されている。
ここで、同図の評価関数を算出する際に、Lp=Lc=4600000×10^−9[H]で、m=k×Lp[H]でCp=Cc=370×10^−12[F]で、w=1/(Lp×Cp)=764872[rad/s]で、Ec=Ep=100[V]である。ここで、Lpは第1の整合部130のインダクタンス、Lcは第2の整合部のインダクタンス、mは相互インダクタンス、kはパラメータ、Cpは第1の整合部130が備えるコンデンサ131の容量、Ccは第2の整合部230が備えるコンデンサ231の容量である。
このとき、Xp=wLpで、Xc=wLcで、Xp’=−1/(wCp)で、Xc’=−1/(wCc)で、X=wMである。ここで、Mは第1のコイル140と第2のコイル240との相互インダクタンスである。
同図において、すべての結合係数で、第1の実施形態の特性を示す曲線71が示す評価関数は、従来(R=10、20、50、100、200、500、1000Ω)の特性を示す曲線72〜78が示す全ての評価関数を上回っている。
すなわち、第1の実施形態の非接触給電システム1は、全ての結合係数において、伝送効率を上昇させることができるので、第1のコイル140と第2のコイル240の距離によらず、伝送効率を上昇させることができる。その結果、非接触給電システム1は、第1のコイル140と第2のコイル240との距離を調整する手間を省きつつ、伝送効率を最大にすることができる。
なお、第1の実施形態では、送電装置100の第1の電源部120の電圧に対し、受電装置200の第2の電源部220の出力電圧の位相(以下、位相差と称する)を90度遅らせたが、これに限ったものではない。送電装置100の第1の電源部120の出力電圧に対し、受電装置200の第2の電源部220の出力電圧の位相が少なくともずれていればよい。
図8は、第1の実施形態における第2の電源部220の電圧の位相を変更した際の評価関数の値の例を示した図である。同図において、横軸は結合係数の10を底とする対数で、縦軸は評価関数の絶対値の10を底とする対数である。同図において、位相差は受電装置200の電圧位相−送電装置100の電圧位相で定義し、位相差π/2の特性を示す曲線81aと、位相差π/2±π/8の特性を示す曲線81bと、位相差π/2±π/4を示す曲線81cと、位相差π/2±3π/8の特性を示す曲線81dとが示されている。
また、同図において、図7と同様に、従来(R=10、20、50、100、200、500、1000Ω)の特性を示す曲線82〜88が示されている。位相差π/2±π/8の特性を示す曲線81bが示す評価関数は、ほとんどの結合係数で、従来(R=10、20、50、100、200、500、1000Ω)の特性を示す曲線82〜88が示す全ての評価関数を上回っている。
また、位相差π/2±π/4を示す曲線81cが示す評価関数は、位相差π/2±π/8の特性を示す曲線81bが示す評価関数よりは少ないが、一部の結合係数で、従来(R=10、20、50、100、200、500、1000Ω)の特性を示す曲線82〜88が示す全ての評価関数を上回っている。
また、位相差π/2±3π/4を示す曲線81dが示す評価関数は、位相差π/2±π/4の特性を示す曲線81cが示す評価関数よりは少ないが、一部の結合係数で、従来(R=10、20、50、100、200、500、1000Ω)の特性を示す曲線82〜88が示す全ての評価関数を上回っている。
具体的には、例えば、従来(R=50Ω)の特性を示す曲線84が示す評価関関数を基準として、それぞれの位相差における評価関数が上回っている結合係数について、以下に示す。
位相差π/2の特性を示す曲線81aが示す評価関数は、全ての結合係数で上回っている。続いて、位相差π/2±π/8の特性を示す曲線81bが示す評価関数は、結合係数の対数が−1.35〜−1.0の範囲を除く範囲で上回っている。また、位相差π/2±π/4の特性を示す曲線81cが示す評価関数は、結合係数の対数が−1.58〜−0.8の範囲を除く範囲で上回っている。また、位相差π/2±3π/8を示す曲線81dが示す評価関数は、結合係数の対数が−1.9〜−0.5の範囲を除く範囲で上回っている。
このように、位相差の絶対値がπ/2から小さくなるに連れて、評価関数が、従来の評価関数を上回る結合係数の範囲は狭くなっている。しかし、変形例における非接触給電システム1は、いずれの位相差でも、評価関数の値が従来のものより高くなるように結合係数を選択することにより、従来よりも伝送効率を上昇させることができる。
なお、第1の実施形態において、第1の電源制御部110が第1の電源部120を制御したが、これに限らず、信号生成部260が第1の電源部120を制御してもよい。具体的には、信号生成部260と第1の電源部120とが接続されており、信号生成部260が生成した交流信号を第1の電源部120に供給し、第1の電源部120がその交流信号に基づいて、第1の電源部120の出力電圧を生成してもよい。例えば、信号生成部260は、上述した交流信号に対し位相が90度遅れた信号を生成し、生成した位相が90度遅れた信号をnpnトランジスタ124のベースB及びpnpトランジスタ126のベースBに供給してもよい。
これにより、第1の電源部120は、この交流信号に対し位相が90度遅れた出力電圧を生成するのに対し、第2の電源部220は、この交流信号に対し位相が180度遅れた出力電圧を生成するので、第1の電源部120は、第2の電源部220の出力電圧に対し位相が90度早い出力電圧を生成することができる。
<第2の実施形態>
図9は、第2の実施形態における非接触給電システム1bの概略ブロック図である。非接触給電システム1bは、送電装置100bと、受電装置200bとを備える。送電装置100bは、一例として地面に埋め込まれている。受電装置200bは、車両10bに設置されている。第1のコイル140と第2のコイル240の巻き方向は同一であり、このコイルの配置で相互インダクタンスが正になるように電流の向きが定義されている。
図10は、第2の実施形態における送電装置100bの概略ブロック図である。なお、図2と共通する要素には同一の符号を付し、その具体的な説明を省略する。図10の送電装置100bの構成は、図2の送電装置100の構成に対して、第1の電源制御部110と電圧検出部150と電流検出部150’が削除され、信号生成部160が追加されたものとなっている。また、図10において、共振回路170bは、第1の整合部130と、第1のコイル140とを備えるものである。
信号生成部160は、第1の整合部130と第1のコイル140とによって決まる共振周波数の交流信号を生成する。そして、信号生成部160は、生成した交流信号を第1の電源部120に供給する。これにより、第1の電源部120は、信号生成部160から供給された交流信号に基づいて、交流電源(例えば、交流電圧)を生成する。
図11は、第2の実施形態における受電装置200bの概略ブロック図である。なお、図4と共通する要素には同一の符号を付し、その具体的な説明を省略する。図11の受電装置200bの構成は、図4の受電装置200の構成に対して、信号生成部160が削除され、第2の電源制御部210と電圧検出部250と電流検出部250’が追加されたものとなっている。ここで、電圧検出部250と、電流検出部250’とを総称して検出部と称する。また、共振回路270bは、第2の整合部230と、第2のコイル240と、を備える。共振回路270bは、送電装置100bが発生させた磁界により生成される電気信号に応じて共振する回路である。
電圧検出部250は、第2の電源制御部210の制御に基づいて、第2の電源部220が電源をOFFにした場合において、送電装置100bが生成する磁界により誘導された第2のコイル240の両端の電圧を検出する。電圧検出部250は、検出した第2のコイル240の両端の電圧を示す両端電圧情報を第2の電源制御部210に供給する。
第2の電源制御部210は、電圧検出部250を制御して、第2の電源部220が電源を生成しない場合(電圧を0にした場合)に、第2のコイル240の両端の電圧を示す両端電圧情報を電圧検出部250から取得する。第2の電源制御部210は、取得した両端電圧情報に基づいて、第2の電源部220を制御する。具体的には、例えば、第2の電源制御部210は、取得した両端電圧情報に基づいて、送電装置100bの第1の電源部120が生成する交流電圧に対して、位相が90度進んだ/遅れた(それぞれ相互インダクタンス正/負のとき)交流電圧を生成するよう第2の電源部220を制御する。さらに具体的にいうと、第1の電源部120及び第2の電源部220が電圧源の場合、第2の電源部220をOFFした場合(電圧を0にした場合)に電圧検出部250が検出する電圧は第1の電源部120が生成する電圧と同相である。そのため、第2の電源部220は、電圧検出部250が検出する電圧よりも90°進んだ/遅れた(それぞれ相互インダクタンス正/負のとき)位相の電圧を発生させる。
これにより、受電装置200bは、送電装置100bの第1の電源部120が生成する交流電圧に対して、位相が90度進んだ/遅れた(それぞれ相互インダクタンス正/負のとき)交流電圧を生成することができる。これにより、第2の実施形態の非接触給電システム1bは、従来に比べて、いずれの結合係数であっても、伝送効率を上昇させることができる。
なお、第2の実施形態では、送電装置100bの第1の電源部120の電圧に対し、受電装置200bの第2の電源部220の電圧の位相を90度進めた/遅らせた(それぞれ相互インダクタンス正/負のとき)が、90度に限ったものではない。送電装置100bの第1の電源部120の電圧に対し、受電装置200bの第2の電源部220の電圧の位相を予め決められた角度だけ進め/遅らせ(それぞれ相互インダクタンス正/負のとき)てもよい。送電装置100bの第1の電源部120の電圧に対し、受電装置200bの第2の電源部220の電圧の位相が少なくともずれていればよい。
また、第2の電源制御部210は、第1の電源部120と第2の電源部220が電流源の場合、送電装置100bの第1の電源部120の電流に対し、受電装置200bの第2の電源部220の電流の位相を90度遅く/早く(相互インダクタンス正/負)してもよい。その場合、電流検出部250’は、第2の電源制御部210の制御に基づいて、第2の電源部220が電源をOFFした場合において(電流を0にした場合において)、送電装置100bが生成する磁界によって第2のコイル240に発生する電圧を検出してもよい。そして、電圧検出部250は、検出した電圧を第2の電源制御部210に供給してもよい。
この場合、第2の電源制御部210は、電圧検出部250が検出した電圧から180度遅らせた/早めた(それぞれ相互インダクタンス正/負のとき)電流、すなわち逆相の電流を第1の電源部120に生成させるようにしてもよい。電圧検出部250の電圧の電位は第1の電源部120の電流の位相より90°進んでいる/遅れている(それぞれ相互インダクタンス正/負のとき)。ここで、親機から子機へエネルギーを最も効率良く送るには子機の電流位相は親機の電流位相よりも90°位相が遅れている/進んでいる(それぞれ相互インダクタンス正/負のとき)必要がある。よって、第2の電源制御部210は、電圧検出部250が検出した電圧と逆相の電流を流せばよい。これにより、相互インダクタンスが正の場合、第2の電源制御部210は、第2の電源部220の出力電流の位相を第1の電源部120の電流の位相よりも90度遅らせることができる。一方、相互インダクタンスが負の場合、第2の電源制御部210は、第2の電源部220の出力電流の位相を第1の電源部120の電流の位相よりも90度早めることができる。その結果、相互インダクタンスの符号によらず、親機から子機へエネルギーを最も効率良く送ることができる。
また、第2の実施形態において、第2の電源制御部210が第2の電源部220を制御したが、これに限らず、送電装置100bの信号生成部160が第2の電源部220を制御してもよい。具体的には、信号生成部160と第2の電源部220とが接続されており、信号生成部160が生成した交流信号を第2の電源部220に供給し、第2の電源部220がその交流信号に基づいて、第2の電源部220の出力電圧を生成してもよいし、無線など、電力送信で使用する周波数とは別の周波数を有する微弱電波を用いて、第2の電源部220を制御してもよい。このとき、第2の電源部220が信号生成部160の信号の位相を検出し位相制御してもよい。
これにより、第2の電源部220が第1の電源部120よりも位相が90度遅れた出力電圧を生成することにより、送電装置100から受電装置200に非接触で電力を供給することができる。
<変形例>
各実施形態において、第1のコイル140と第2のコイル240は、重力方向に沿った上下の位置関係にあった。それに対し、変形例では、第1のコイル140cと第2のコイル240cは、図12に示すように、互いが重力方向に対して垂直な面内に、それぞれ位置してもよい。
図12は、各実施形態の変形例における非接触給電システム1cの概略ブロック図である。非接触給電システム1cは、送電装置100cと受電装置200cとを備える。送電装置100cは、第1のコイル140cを備える。受電装置200cは、第2のコイル240cを備える。同図において、第1のコイル140cと第2のコイル240cとは互いに重力方向に対して垂直な面(地面に対して水平な面)内に位置している。また、第1のコイル140cと第2のコイル240cとの巻き方向は同一であり、例えば、上から車両10cを見た場合に左回りである。また、電流の向きはこのコイル配置で相互インダクタンスが正になるように定義する。
例えば、第1の実施形態を変形させた場合、第1のコイル140cと第2のコイル240cとの間の相互リアクタンスXpcは正になる。ゆえに、送電装置100cは、受電装置200cの第2の電源部220の交流電圧は、送電装置100cの第1の電源部120の交流電圧より、位相が90度進むように第1の電源部120を制御する。
なお、第1の電源部120が電流源の場合、送電装置100cは、受電装置200cの第2の電源部220の交流電流は、送電装置100cの第1の電源部120の交流電流より、位相が90度遅くなるように第1の電源部120を制御すればよい。
例えば、第2の実施形態を変形させた場合、第1のコイル140bと第2のコイル240bが、重力方向に対して垂直な面内に位置してもよい。
その場合、受電装置200bは、受電装置200bの第2の電源部220の交流電圧は、送電装置100bの第1の電源部120の交流電圧より、位相が90度遅れるように第2の電源部220を制御すればよい。
なお、第2の電源部220が電流源の場合、受電装置200bは、受電装置200bの第2の電源部220の交流電流は、送電装置100bの第1の電源部120の交流電流より、位相が90度遅くなるように第2の電源部220を制御すればよい。
また、各実施形態において、送電装置100と受電装置200は、それぞれ通信部を備え、互いに通信可能になっていてもよい。そして、送電装置100と受電装置200のいずれか一方が、他方が生成した交流信号に応じて送電装置100または受電装置200いのずれかの電源(第1の電源部120又は第2の電源部220)の出力電圧を生成してもよい。ここで、通信部は、有線で通信してもよいし、無線で通信してもよい。
具体的には、例えば、第1の実施形態の場合、受電装置200は、信号生成部260が生成した交流信号を符号化し、符号化後の信号を変調し、変調後の信号を送電装置100へ無線で送信する。そして、送電装置100は、受電装置200から無線で送信された信号を受信し、受信した信号を復調し、復調後の信号を復号することにより元の交流信号を取得する。送電装置100は、取得した交流信号に対し位相が90度遅れた信号を生成し、生成した位相が90度遅れた信号をnpnトランジスタ124のベースB及びpnpトランジスタ126のベースBに供給してもよい。
これにより、第1の電源部120は、この交流信号よりも位相が90度遅れた出力電圧を生成するのに対し、第2の電源部220は、この交流信号よりも位相が180度遅れた出力信号を生成するので、第1の電源部120は、第2の電源部220の出力電圧よりも位相が90度早い出力電圧を生成することができる。
また、この際、送電装置100は、予め無線通信により生じる遅延時間を示す遅延時間情報を保持し、無線通信により生じた遅延時間だけ交流信号を早めるように補正してもよい。
以上のことから、送電装置用電源が電圧を生成し、受電装置の電源部が電圧を生成する場合、送電装置が備えるコイルと共振回路が備えるコイルとの間の相互インダクタンスが正の場合、電源部が生成する電圧は送電装置用電源が生成する電圧から90度進み、相互インダクタンスが負の場合、受電装置の電源部が生成する電圧は送電装置用電源が生成する電圧から90度遅れる。
このことは、以下のようにして証明できる。図14は、本実施形態における非接触給電システム1dを簡単化した回路C181とその等価回路C182である。ここで、X=wM(wは角周波数でMは相互インダクタンス)である。
まず、等価回路C182におけるアドミッタンス行列Yを求める。ここで、アドミッタンス行列Yは、[I1,I2]’=Y[V1,V2]’としたときの行列Yのことである。アドミッタンス行列Yの1行1列の成分Y11はV1=1、V2=0としたときのI1である。ここで、Port2をショートすると等価回路C182は、次の図15に示す回路C191になる。
図15は、図14の等価回路C182においてPort2をショートしたものである。図15において矢印A1からみたアドミッタンスは、(jX)−1+(−jX)−1=0となり、さらに次の図16に示す回路C201になる。図16は、図15の回路を変形したものであるI1=0となり、Y11=0となる。このときの図15の点Pの電位は、V1であり、このときのI2はY21であるので、Y21=I2=−(V1/−jX)=−j/Xである。
従って、Y22、Y12についても同様に計算できるので、アドミッタンス行列は次の式(14)で表される。
Port1から発せられるエネルギーは次の式(15)で表される。
V1 2+V2 2=一定という条件の基に、Port1から発せられるエネルギーを最大にするには、固有値問題を解けばよく、固有値問題を解くと以下のようになる。固有値λ=1/2のときの固有ベクトル[V1,V2]’∝[1,j]’である。固有値λ=−1/2のときの固有ベクトル[V1,V2]’∝[1,−j]’である。これにより、固有値λ=1/2のときが、最もエネルギーを親機から子機へ送信することができる。
また、送電装置の電源である送電装置用電源が電流を生成し、受電装置の電源部が電流を生成する場合、送電装置が備えるコイルと共振回路が備えるコイルとの間の相互インダクタンスが正の場合、受電装置の電源部が生成する電流は送電装置用電源が生成する電流から90度遅れ、相互インダクタンスが負の場合、受電装置の電源部が生成する電流は送電装置用電源が生成する電流から90度進む。
このことは、以下のようにして証明できる。式(14)からインピーダンスマトリックスZは、以下の式(16)で表される。
ここで、インピーダンスマトリックスZの成分の符号は、アドミッタンス行列の成分の符号と反対である。Port1から発せられるエネルギーは、以下の式(17)で表される。
I1 2+I2 2=一定という条件の基に、Port1から発せられるエネルギーを最大にするには固有値問題を解けばよく、固有値問題を解くと以下のようになる。固有値λ=1/2のときの固有ベクトル[I1,I2]’∝[1,−j]’である。固有値λ=−1/2のときの固有ベクトル[I1,I2]’∝[1,j]’である。ここで、固有ベクトルの第2成分の符号が送電装置の電源と受電装置の電源が電流源の場合と異なっている。
これにより、固有値λ=−1/2のときが、最もエネルギーを親機から子機へ送信することができる。
<第1の実施形態の変形例>
続いて、第1の実施形態の変形例について説明する。図17は第1の実施形態の変形例における送電装置100dの概略ブロック図である。なお、図2と共通する要素には同一の符号を付し、その具体的な説明を省略する。図17の送電装置100dの構成は、図2の送電装置100の構成に対して、共振回路170が共振回路170dに変更されたものになっている。その共振回路170dの構成は、図3の共振回路170の構成に対して、第1の整合部130が第1の整合部130dに変更されたものとなっている。
図2の第1の実施形態における送電装置100では、第1の整合部130が第1のコイル140と直列に接続されているのに対し、図17では、第1の整合部130dが第1のコイル140と並列に接続されている点が異なる。ここでは、一例として第1の整合部130dがコンデンサ131を備える。そのため、コンデンサ131が第1のコイル140と並列に接続されている点が図2と異なる。
また、共振周波数はw=√[L/{C(L2−M2)}]となり、第1のコイル140と第2のコイル240との相互インダクタンスMに依存する。
図18は第1の実施形態の変形例における受電装置200dの概略ブロック図である。
なお、図4と共通する要素には同一の符号を付し、その具体的な説明を省略する。図18の受電装置200dの構成は、図4の受電装置200の構成に対して、共振回路270が共振回路270dに変更されたものになっている。その共振回路270dの構成は、図3の共振回路270の構成に対して、第2の整合部230が第2の整合部230dに変更されたものとなっている。
図4の第1の実施形態における受電装置200では、第2の整合部230が第2のコイル240と直列に接続されているのに対し、図18では、第2の整合部230dが第2のコイル240と並列に接続されている点が異なる。ここでは、一例として、第2の整合部230dは、コンデンサ231を備える。そのため、コンデンサ231が第2のコイル240と並列に接続されている点が図4と異なる。このようにすることで、第2のコイル240は、送電装置100dが発生させた磁界により誘導電圧を発生させる。そして、第2の整合部230dは、第2のコイル240と共役整合させる。具体的には、例えば、第2の整合部230dは、第2のコイル240が発生させた誘導電圧により発生する電流の大きさを減少させる。
<第3の実施形態>
上記の実施形態では、受電装置(子機)の周波数を送電装置(親機)の周波数と同一にしなければならない。しかし、周波数を合わせるための同期信号生成、または子機及び親機間で定期的な時計合わせをすることは、コストが発生するし面倒でもある。そこで、第3の実施形態では、受電装置200dに流れる電流を検出し、例えば、検出した電流と略同一の位相で電圧を発生するように第2の電圧源220dを制御する。ここで、検出した電流と略同一の位相とは、検出した電流の位相に対して、予め決められた許容位相差だけ前後に離れた二つの位相の間にある位相である。これにより、簡単な構成で、送電装置100dと受電装置200dとの間で周波数の同期をとることができる。
以下、本実施形態における具体的な構成について説明する。図19は、第3の実施形態における非接触給電システム1dの概略ブロック図である。なお、図10及び図11と共通する要素には同一の符号を付し、その具体的な説明を省略する。非接触給電システム1dは、送電装置100d(以下、親機ともいう)と、受電装置200d(以下、子機ともいう)とを備える。本実施形態では、一例として、送電装置100dが備える第1のコイル140と受電装置200dが備える第2のコイル240との間の相互インダクタンスが正の場合について説明する。
送電装置100dは、第1の電圧源120dと、共振回路170dとを備える。ここで、共振回路170dは、第1の整合部130と第1のコイル140との直列回路である。ここで、第1の整合部130は、コンデンサ131を備える。
コンデンサ131の一端は第1の電圧源120dに、コンデンサ131の他端は第1のコイル140の一端に接続されている。また、第1のコイル140の一端はコンデンサ131の他端に、第1のコイル140の他端は第1の電圧源120dに接続されている。
第1の電圧源120dは、予め決められた周波数で交流電圧を生成し、生成した交流電圧を第1のコンデンサ131を介して第1のコイル140へ供給する。これにより、第1のコイル140の周囲に磁界が発生し、後述する受電装置200dの第2のコイル240に誘導電流が発生する。
受電装置200dは、電圧源制御部211と、第2の電圧源220dと、共振回路270dと、電流検出部250’とを備える。共振回路270dは、第2の整合部230と第2のコイル240とが直列に接続された回路である。ここで、第2の整合部230は、コンデンサ231を備える。
第2のコイル240の一端は、コンデンサ231の一端に接続されている。また、第2のコイル240の他端は、第2の電圧源220dの一端に接続されている。コンデンサ231の他端は、電流検出部250’のマイナス側に接続されている。電流検出部250’のプラス側は、第2の電圧源220dの他端に接続されている。
電流検出部250’は、コンデンサ231から流れ込む電流を検出する。電流検出部250’は、検出した電流を表す電流信号を電圧源制御部211に供給する。
電圧源制御部211は、例えば、供給された電流信号が示す電流と同じ周波数で、予め決められた位相差(ここで、位相差はゼロを含む)の駆動信号を生成する。この駆動信号は、第2の電圧源220dを駆動するための信号である。ここで、この電流信号が表す波形と駆動信号が表す波形との時間のずれは、時間Δtであるものとする。電圧源制御部211は、生成した駆動信号を第2の電圧源220dに出力する。
第2の電圧源220dは、例えば、電圧源制御部211から入力された駆動信号と同一周波数かつ同一位相で振動する電圧を表す電圧信号を生成し、生成した電圧信号を電流検出部250’に供給する。これにより、この第2の電圧源220dが生成した電圧信号が表す波形と電流検出部250’が検出した電流を表す波形との時間のずれは、時間Δtとなる。
図20は、電流検出部250’が検出した電流の波形W171の一例と、第2の電圧源220dが生成する電圧の波形W172の一例が示された図である。同図において、電圧の波形W172の波形が電流の波形W171に比べて、時間Δtだけ遅れていることが示されている。この遅れの許容量は、一例として、位相に換算して30°程度まで許容してもよい。なぜならば、位相が30度遅れている場合、位相が合致している場合に比べて、送電電力は0.86(=cos(30°))倍となり、理想的状態の86%の電力を送電することができるからである。さらに、この位相差を18°以下にすれば理想的状態の95%の電力を送電することができる。このように、この位相差は予め決められた許容位相差の範囲になるようにしてもよい。
なお、第2の電圧源220dが生成する電圧の位相は電流検出部250’が検出する電流の位相に比べて遅れていても進んでいてもよい。このことから、一例として、第2の電圧源220dは、|Δt×w|≦π/6=30°を満たすように時間Δtを選択してもよい。ここで、wは第2の電圧源220dが生成する電圧信号の角周波数である。
本実施形態では、親機と子機のコンデンサ(コンデンサ131とコンデンサ231)の容量Cと親機と子機のコイル(第1のコイル140と第2のコイル240)のリアクタンスLは略等しいことが望ましい。また、親機と子機の電圧源(第1の電圧源120dと第2の電圧源220d)の電圧振幅は略等しいことが望ましい。
以上、本実施形態において、電流検出部250’は、第2のコイル240に流れる電流を検出する。そして、電圧源制御部211は、検出した電流と略同一の周波数で、かつ検出した電流の位相から前後に予め決められた許容位相差だけ離れた二つの位相の範囲に収まる位相で、電圧を発生するように第2の電圧源220dを制御する。すなわち、第2の電圧源220dが発生させる電圧と第2の整合部230から流れ出る電流との位相差が予め決められた範囲になるように、第2の電圧源220dは該電圧を発生させる。
これにより、第1の電圧源120dが生成する電圧と第1のコイル140に流れる電流が同一の周波数となる。そのため第1のコイル140に流れる電流によって、第2のコイル240に誘導される誘導電流も第1の電圧源120dが生成する電圧と同一の周波数になる。そして、その誘導電流の周波数に第2の電圧源220dが生成する電圧の周波数を合わせるので、第1の電圧源120dが生成する電圧と第2の電圧源220dが生成する電圧の周波数を同一にすることができる。よって、このような簡単な構成で、親機と子機間の周波数の同期をとることができる。
このような制御は、以下の事由を根拠としている。上記に記載した通り、親機の電源、子機の電源間のアドミッタンス行列は式(14)のようになる。ここでは共役整合が取れているので対角項は0である。図19において相互インダクタンスが正/負の場合、相互リアクタンスXについてX=wLm(ここでLmは相互インダクタンス)という関係があることから、相互リアクタンスXもそれぞれ正/負になる。親機の自己リアクタンスと子機の自己リアクタンスとを0と仮定すると、親機の電源電圧をV1、子機の電源電圧をV2とするとそれぞれの電源からはI1=−j/XV2、I2=−j/XV1の電流が流れる(但し、Xpは)。すなわち電流検出部250’(+端子から−端子に流れる電流を+と出力する。)にはV1より90°遅れた/進んだ(それぞれ相互インダクタンスが正/負のとき)位相の誘導電流が流れる。ここで、子機の電源電圧V2が親機の電源電圧V1より90°遅れた/進んだ(それぞれ相互インダクタンスが正/負のとき)位相のとき、親機から子機へ最大のエネルギーを送ることができる。このことから、子機の電源電圧V2の位相を電流検出部250’が検出した電流の位相と同じ位相と同じにすることで、親機から子機へ最大のエネルギーを送ることができる。なお、子機の電源電圧V2の位相は、一例として、電流検出部250’が検出した電流の位相±30°を許容範囲としていい。
なお、親機と子機とで、共振回路170dと共振回路270dとの間で異なる回路であってもよい。例えば、図19において、共振回路170dと共振回路270d間で、コンデンサの容量が異なり、コイルのインダクタンスが異なるが、共振周波数がw0で同一になる場合について説明する。アンテナとして機能する親機の第1のコイル140のインダクタンスをLp、子機の第2のコイル240のインダクタンスをLcとし、コンデンサ131、231の容量をそれぞれCp、Ccとする。但し、LpCp=LcCc=(w0)−2を満たすものとする。親機と子機間の相互インダクタンスをM=k√(LpLc)とする。ここで、kは結合定数で、−1<k<1である。また、親機の第1の電圧源120dが生成する電圧をVp、子機の第2の電圧源220dが生成する電圧をVc{exp(jφ)}とおく(φは子機の親機に対する位相ずれ)。共振回路170dと共振回路270dとがともに、共振周波数w0で共振している場合、親機の第1のコイル140に流れる電流ipの2乗と子機の第2のコイル240に流れる電流icの2乗との和(以下、電流の2乗和ともいう)は、次の式(18)で表される。
また、送電電力Powerは、次の式(19)で表される。
このことから、評価関数εは、送電電力Powerを電流の2乗和で割った値であり、次の式(20)で表される。
ここで、結合定数kが正(k>0)の場合はφ=+π/2、結合定数kが負(k<0)の場合はφ=−π/2で最大効率、最大送電電力を得る。また、その時の効率が最大になる電圧はVc=Vpの時である。したがって、親機と子機の共振回路が全く同一でなくとも、共振周波数が同一である場合、効率及び送電電力が最大になる位相差φの値及び子機の第2の電圧源220dの電圧振幅の値は、親機と子機の共振回路が全く同一の場合と同じである。
続いて、本実施形態の非接触給電システム1dの実験結果と比較するための比較例の非接触給電システム(以下、単に比較例という)について説明する。比較例の構成は、図19の非接触給電システム1dの受電装置200dから電圧源制御部211が削除され、第2の電圧源220dが負荷抵抗に変更されたものである。本実施形態の非接触給電システム1dと比較例の各素子のパラメータは以下の通りである。本実施形態の非接触給電システム1dで、子機の第2の電圧源220dの電圧は、親機の第1の電圧源120dの電圧と同じで、20Vである。本実施形態の非接触給電システム1dにおいて、親機と子機のコイル間距離は0.5、0.7、0.9mの三つの距離で計測する。
比較例の負荷抵抗は1、2、5、10、22、33、47Ωの7通りで実験する。また、比較例において、親機と子機のコイル間距離は0.3、0.5、0.7、0.9、1.1、1.3、1.5mの七つの距離で実験する。
また、本実施形態の非接触給電システム1dと比較例に共通して、以下のパラメータを取る。親機と子機のコイルの直径が約450mmで、巻線ピッチが3mm、60巻の平面コイルである。コンデンサの容量は3300pFであり、共振周波数は100kHzである。コイルの相互インダクタンスkの符号は正である。親機の第1の電圧源120dの電圧は20Vである。
上記の条件で、評価関数εと効率を計測した結果について説明する。ここで、効率は、受電電力を送電電力で割ったものであり、値が大きいほど効率が良い。図21は、第3の実施形態の非接触給電システム1dと比較例との間の、評価関数εの比較結果である。同図において、比較例における評価関数εと負荷抵抗の関係が示されている。同図の縦軸は評価関数εで横軸は負荷抵抗である。親機と子機間の距離が一定の条件では、負荷抵抗が大きくなるに従って評価関数εが小さくなっている。また、負荷抵抗が一定の条件では、親機と子機間の距離が短くなるほど、評価関数εが大きくなっている。比較例において、親機と子機間の距離が0.5、0.7、0.9mの場合の評価関数εを示す曲線がそれぞれ曲線W181、W182、W183である。
また、本実施形態の非接触給電システム1dにおいて、親機と子機間の距離が0.5、0.7、0.9mの場合の評価関数εを示す直線がそれぞれ直線W184、W185、W186である。非接触給電システム1dでは、負荷抵抗を用いないが、便宜的に負荷抵抗によらず一定の値として評価関数εを表す直線W184、W185及びW186が示されている。
親機と子機間の距離が0.5、0.7、0.9mそれぞれの距離で、非接触給電システム1dと比較例の評価関数εとを比較すると、比較例の評価関数εの最大値よりも非接触給電システム1dの評価関数εが大きくなっている。すなわち、親機と子機間の距離が同じという条件では、非接触給電システム1dの評価関数εは、常に比較例の評価関数εよりも高い。
図22は、第3の実施形態の非接触給電システム1dと比較例との間の、効率の比較結果である。同図において、比較例における効率と負荷抵抗の関係が示されている。同図の縦軸は効率で横軸は負荷抵抗である。親機と子機間の距離が一定の条件では、親機と子機間の距離が短くなるほど、最大効率をとる負荷抵抗が大きい。また、負荷抵抗が一定の条件では、親機と子機間の距離が短くなるほど、効率が大きくなっている。比較例において、親機と子機間の距離が0.5、0.7、0.9mの場合の効率を示す曲線がそれぞれ曲線W191、W192、W193である。
また、本実施形態の非接触給電システム1dにおいて、親機と子機間の距離が0.5、0.7、0.9mの場合の効率を示す直線がそれぞれ直線W194、W195、W196である。非接触給電システム1dでは、負荷抵抗を用いないので、便宜的に効率を表す直線W194、W195、W196を示している。
親機と子機間の距離が0.5、0.7、0.9mそれぞれの距離で、非接触給電システム1dと比較例の効率とを比較すると、比較例の効率の最大値よりも非接触給電システム1dの効率が大きくなっている。すなわち、親機と子機間の距離が同じという条件では、非接触給電システム1dの効率は、常に比較例の効率よりも高い。
続いて、本実施形態の非接触給電システム1dの位相差に応じた評価関数εの実験例について説明する。図23は、実験時の非接触給電システム1dのパラメータを説明するための図である。第1の電圧源120dの内部インピーダンスZは50Ωであり、第1の電圧源120dの電圧は最大から最小までの振り幅が20Vである。第2の電圧源220dも同様に、内部インピーダンスZは50Ωであり、第2の電圧源220dの電圧は最大から最小までの振り幅が20Vである。第1の電圧源120dの電圧を基準として、第2の電圧源220dの電圧は、位相差φだけずれているものとする。
図24は、位相差φを振ったとき評価関数εの値を示すグラフである。親機と子機間の距離が0.5、0.7、0.9mの場合の評価関数εの変化を表す曲線がそれぞれ曲線W211、W212、W213である。同図の縦軸は評価関数εで、横軸は位相差である。曲線W211から、親機と子機間の距離が0.5mの場合、位相差が約−120度のときに、評価関数εが最大値を取ることが示されている。
位相差が90°でなく−120°で最大になっていない理由は、以下の通りである。第2の電圧源220dの内部インピーダンスZは50Ωあり、親機と子機間の磁界結合による結合インピーダンスはそれよりも十分小さい(親機と子機間の距離が50cmで6Ω程度)。そのため、第2の電圧源220dは電流源として作用したので、位相差は90°でなく−90°で評価関数εが最大になる。しかし、第2の電流検出部250’に位相ずれが30°程度あったため、第2の電圧源220dに流れる電流と電圧の積の時間変化により求められる電力に30度程度ずれが生じた。これにより、評価関数εが最大になる位相差が−90°から−120°にシフトしたものと考えられる。
以上、送電装置100dの第1の電圧源120dが電圧を生成し、受電装置200dの第2の電圧源220dが電圧を生成する場合、評価関数εが最大になる位相差について説明する。送電装置100dが備える第1のコイル140と受電装置200dが備える第2のコイル240との間の相互インダクタンスが正の場合、第2の電圧源220dが生成する電圧は第1の電圧源120dが生成する電圧から90度進む。一方、該相互インダクタンスが負の場合、第2の電圧源220dが生成する電圧は第1の電圧源120dが生成する電圧から90度遅れる。
<第4の実施形態>
続いて、図25に示す第4の実施形態について説明する。第4の実施形態では、受電装置200eが備えるコンデンサまたはコイルが並列に接続されており、受電装置200eはコンデンサまたはコイルの両端にかかる電圧を検出する。そして、受電装置200eは、例えば、検出した電圧と略同一の位相で電流を発生するように第2の電流源220eを制御する。ここで、検出した電圧と略同一の位相とは、検出した電圧の位相に対して、予め決められた許容位相差だけ前後に離れた二つの位相の間にある位相である。これにより、簡単な構成で、送電装置100eと受電装置200e間の周波数の同期をとることができる。また電流の向きは電圧検出部252の+端子の電位が−に対して正の時、電流源の矢印の方向に電流を流すことを同相と称する。
以下、本実施形態における具体的な構成について説明する。図25は、第4の実施形態における非接触給電システム1eの概略ブロック図である。なお、図19と共通する要素には同一の符号を付し、その具体的な説明を省略する。非接触給電システム1eは、送電装置100e(以下、親機ともいう)と、受電装置200e(以下、子機ともいう)とを備える。第3の実施形態と同様に、本実施形態では、一例として、送電装置100eが備える第1のコイル140と受電装置200eが備える第2のコイル240との間の相互インダクタンスが正の場合について説明する。
第3の実施形態と比べると、第3の実施形態では、送電装置100dと受電装置200dのそれぞれが電圧源を備えていたのに対し、本実施形態における送電装置100eと受電装置200eのそれぞれが、電流源を備える点で異なる。更に、第3の実施形態の送電装置100dが備えるコンデンサ131が第1のコイル140と直列に接続されていたが、第4の実施形態は、コンデンサ131が第1のコイル140に対して並列に接続されている点で異なる。更に、第4の実施形態では、第3の実施形態の電圧源制御部211が電流源制御部212に変更されたものになっている。
送電装置100eは、第1の電流源120eと共振回路170eとを備える。共振回路170eは、第1の整合部130eと第1のコイル140とが並列に接続された回路である。ここで、第1の整合部130eは、コンデンサ131を備える。
コンデンサ131の一端は、第1の電流源120eのプラス側と第1のコイル140の一端とに接続されている。また、コンデンサ131の他端は、第1の電流源120eのマイナス側と第1のコイル140の他端とに接続されている。
第1の電流源120eは、予め決められた周波数で交流の電流を生成し、生成した電流をコンデンサ131と第1のコイル140に供給する。これにより、第1のコイル140は、その電流に応じて周囲に磁界を発生させる。その結果、第2のコイル240には、その磁界に応じた誘導電流が生じる。
受電装置200eは、電流源制御部212と、第2の電流源220eと、電圧検出部252と、共振回路270eは、第2の整合部230eと第2のコイル240とが並列に接続された回路である。ここで、第2の整合部230eは、コンデンサ231を備える。
コンデンサ231の一端は、第2のコイル240の一端と電圧検出部252のプラス側と第2の電流源220eのプラス側とに接続されている。また、コンデンサ231の他端は、第2のコイル240の他端と電圧検出部252のマイナス側と第2の電流源220eのマイナス側とに接続されている。
第2のコイル240は、生じた誘導電流を第2の電流源220eに供給する。電圧検出部252は、第2のコイル240またはコンデンサ231の両端にかかる電圧を検出する。電圧検出部252は、検出した電圧を表す電圧信号を電流源制御部212へ供給する。 電流源制御部212は、電圧検出部252から供給された電圧信号が示す電圧と同じ周波数で、予め決められた位相差(ここで、位相差はゼロを含む)の駆動信号を生成する。この駆動信号は、第2の電流源220eを駆動するための信号である。ここで、この電圧信号が表す波形と駆動信号が表す波形との時間のずれは、時間Δtであるものとする。電流源制御部212は、生成した駆動信号を第2の電流源220eへ出力する。
第2の電流源220eは、例えば、電流源制御部212から入力された駆動信号と同一周波数かつ同一位相で振動する電流を表す電流信号を生成し、生成した電流信号を第2のコイル240とコンデンサ231に供給する。これにより、この第2の電流源220eが生成した電流信号が表す波形と電圧検出部252が検出した電圧を表す波形との時間のずれは、時間Δtとなる。
図26は、電圧検出部252が検出した電圧の波形W231の一例と、第2の電流源220eが生成する電流の波形W232の一例が示された図である。同図において、電流の波形W231が電圧の波形W232の波形に比べて、時間Δtだけ遅れていることが示されている。この遅れの許容量は、一例として、位相に換算して30°程度まで許容してもよい。なぜならば、位相が30度遅れている場合、位相が合致している場合に比べて、送電電力は0.86(=cos(30°))倍となり、理想的状態の86%の電力を送電することができるからである。さらに、この位相差を18°以下にすれば理想的状態の95%の電力を送電することができる。このように、この位相差は予め決められた許容位相差の範囲になるようにしてもよい。
なお、第2の電流源220eが生成する電流の位相は電圧検出部252が検出する電圧の位相に比べて遅れていても進んでいてもよい。このことから、一例として、第2の電流源220eは、|Δt×w|≦π/6=30°を満たすように時間Δtを選択してもよい。ここで、wは第2の電流源220eが生成する電流信号の角周波数である。
本実施形態では、親機と子機のコンデンサ(コンデンサ131とコンデンサ231)の容量Cと親機と子機のコイル(第1のコイル140と第2のコイル240)のリアクタンスLは略等しいことが望ましい。また、親機と子機の電流源(第1の電流源120eと第2の電流源220e)の電流振幅は略等しいことが望ましい。
続いて、送電装置100eの第1の電流源120eが電流を生成し、受電装置200eの第2の電流源220eが電流を生成する場合、評価関数εが最大になる位相差について説明する。その場合、送電装置100eが備えるコイルと受電装置200eが備えるコイルとの間の相互インダクタンスが正の場合、第2の電流源220eが生成する電流は第1の電流源120eが生成する電流から90度遅れる。一方、該相互インダクタンスが負の場合、第2の電流源220eが生成する電流は第1の電流源120eが生成する電流から90度進む。
以上、本実施形態において、電圧検出部252は、第2のコイル240またはコンデンサ231にかかる電圧を検出する。そして、電流源制御部212は、検出した電圧と略同一の周波数で、かつ検出した電圧の位相から前後に予め決められた許容位相差だけ離れた二つの位相の範囲内に収まる位相で、電流を発生するように第2の電流源220eを制御する。すなわち、第2の電流源220eが発生させる電流と第2の整合部230eから出力される電圧との位相差が予め決められた範囲になるように、第2の電流源220eは該電流を発生させる。
これにより、第1の電流源120eが生成する電流と第2のコイル240に流れる誘導電流とが同一の周波数になる。そのため第1のコイル140に流れる電流によって、第2のコイル240に誘導される誘導電流も第1の電流源120eが生成する電流と同一の周波数になる。そして、その誘導電流の周波数に第2の電流源220eが生成する電流の周波数を合わせるので、第1の電流源120eと第2の電流源220eとの周波数を同一にすることができる。よって、このような簡単な構成で、親機と子機間の周波数の同期をとることができる。
第1の実施形態の変形例で示した共振周波数では、2×2のアドミッタンス行列はYのij成分をyijとすると、それぞれの成分はy11=y22=0,y21=y12=−jw0M/(L2−M2)である。ここでL、Mはそれぞれコイルの自己インダクタンスと相互インダクタンスである。このため、I2=y21、V1=−jw0M/(L2−M2)V1となり、I2はV1より位相が90°遅れる/進む(それぞれ相互インダクタンス正/負のとき)。エネルギーを親機から子機に最も効率よく送るにはI2の位相はI1の位相に比べて90°遅れる/進む(相互インダクタンス正/負)必要がある。このため、電流源制御部212は、一例としてI2とV2は同相であるように制御することで、エネルギーを親機から子機に最も効率よく送ることができる。なお、子機の電源電流I2の位相は、一例として、電圧検出部252が検出した電圧の位相±30°としても実用範囲であるので、電圧検出部252が検出した電圧の位相±30°を許容範囲としてもよい。
<第5の実施形態>
続いて、第5の実施形態について説明する。図27は、第5の実施形態における送電装置100fの概略ブロック図である。なお、図2と共通する要素には同一の符号を付し、その具体的な説明を省略する。送電装置100fは、第1の電源部120fと、共振回路170fと、リレー制御部180とを備える。共振回路170fは、第1のコイル140と、第1のコンデンサ171と、第2のコンデンサ172と、第3のコンデンサ173と、切替部190とを備える。切替部190は、第1のコイル140に直列な静電容量と第1のコイル140に並列な静電容量との割合を変更する。ここで切替部190は、第1のリレー174と、第2のリレー175と、第3のリレー176とを備える。第1の電源部120fは一例として電圧源で、第1の電源部120fの両端の電圧はE1である。第1のコイル140のインダクタンスはLである。
第1のコンデンサ171の一端は第1のリレー174に接続されており、第1のコンデンサ171の他端は第1のコイル140に接続されている。また第2のコンデンサ172の一端は第2のリレー175に接続されており、第2のコンデンサ172の他端は第1のコイル140に接続されている。また第3のコンデンサ173の一端は第3のリレー176に接続されており、第3のコンデンサ173の他端は第1のコイル140に接続されている。
第1のリレー174の一端は第1の電源部120fに接続されており、第1のリレー174の他端は第1のコンデンサ171に接続されている。また、第2のリレー175の一端は第1の電源部120fに接続されており、第2のリレー175の他端は第2のコンデンサ172に接続されている。また、第3のリレー176の一端は第1の電源部120fに接続されており、第3のリレー176の他端は第3のコンデンサ173に接続されている。
第1のリレー174、第2のリレー175、及び第3のリレー176は、それぞれ端子A、B及びCを備える。第1のリレー174、第2のリレー175、及び第3のリレー176は、A端子をB端子かC端子に選択的に導通させる。これにより、第1のコイル140に直列なコンデンサの容量と第1のコイル140に並列なコンデンサの容量の和が一定という条件の下で、第1のコイル140に直列なコンデンサの容量と第1のコイル140に並列なコンデンサの容量を変更することができる。第1のリレー174、第2のリレー175、及び第3のリレー176は、電磁的な切り替えで動作する素子であってもよいし、半導体で形成された素子であってもよい。
リレー制御部180は、第1のリレー174を制御して、第1のリレー174が備える端子Aと端子Bを導通させる場合と、第1のリレー174が備える端子Aと端子Cを導通させる場合とを切り替える。同様にリレー制御部180は、第2のリレー175を制御して、第2のリレー175が備える端子Aと端子Bを導通させる場合と、第2のリレー175が備える端子Aと端子Cを導通させる場合とを切り替える。同様にリレー制御部180は、第3のリレー176を制御して、第3のリレー176が備える端子Aと端子Bを導通させる場合と、第3のリレー176が備える端子Aと端子Cを導通させる場合とを切り替える。
各コンデンサは、2n/(23−1)×C(nは0、1または2)で容量が与えられる。すなわち、第1のコンデンサ171の容量は、nが2の場合で4/7C(Cは予め決められた容量)である。第2のコンデンサ172の容量は、nが1の場合で2/7Cである。第3のコンデンサ173の容量は、nが0の場合で1/7Cである。
リレー制御部180は、3ビットの信号を用いて、第1のコイル140に並列な容量を、3ビットに相当する8つの等間隔刻みで変化させる。これによりリレー制御部180は、第1のコイル140に直列な容量と並列な容量の和が一定という条件の下で、第1のコイル140に並列な容量を変化させることができる。その際リレー制御部180は、送電装置100fと後述する受電装置200fとの距離の変化に伴う相互インダクタンスMの変化に応じて、第1のコイル140に並列な容量を変化させる。これにより、リレー制御部180は、送電装置(親機)または受電装置(子機)の位置が変化して相互インダクタンスMが変化しても第1の電源部120fの電圧E1を固定したままで所定のエネルギーを伝送することができる。その原理の詳細については後述する。なお、リレー制御部180は、伝送するエネルギーを変えてエネルギーを伝送してもよい。
以上により、共振回路170fは、磁界により誘導電流を発生させる第1のコイル140と、第1のコイル140の一端と接続されたコンデンサ171〜173と、第1の電源部120fの一端とコンデンサ171〜173の一端の間の導通と第1の電源部120fの一端と第1の電源部120fの他端の間の導通とを切り替える切替部190とを備える。
リレー制御部180は、受電装置200fが備える第2のコイル240と第1のコイル140との間の相互インダクタンスの値に応じて、第1のコイル140と直列な静電容量を変化させるよう、切替部190を制御する。
なお、本実施形態では、一例として、送電装置100fが三つのコンデンサを備え、リレー制御部180が、3ビットに相当する8つの等間隔刻みで第1のコイル140に並列な容量を変化させたが、これに限ったものではない。送電装置100fがN個(Nは正の整数)のコンデンサを備え、リレー制御部180が、Nビットに相当する2N個の等間隔刻みで第1のコイル140に並列な容量を変化させてもよい。その場合、リレー制御部180は、例えば、各容量CnをCn=2^n/(2^N−1)×Cに従って決定すればよい。これにより、Nビットに相当する2Nだけの等間隔刻みで第1のコイル140に並列な容量を変化させることができる。
図28は、第5の実施形態における受電装置200fの概略ブロック図である。なお、図4と共通する要素には同一の符号を付し、その具体的な説明を省略する。受電装置200fは、第2の電源部220fと、共振回路270fと、リレー制御部280とを備える。共振回路270fは、第2のコイル240と、第4のコンデンサ271と、第5のコンデンサ272と、第6のコンデンサ273と、切替部290を備える。切替部290は、第2のコイル240に直列な静電容量と第2のコイル240に並列な静電容量との割合を変更する。ここで切替部290は、第4のリレー374と、第4のリレー275と、第6のリレー276とを備える。第2の電圧源220fは一例として電圧源で、第2の電圧源220fの両端の電圧はE2である。第2のコイル240のインダクタンスはLである。
第5実施形態では、送電装置100fと受電装置200fがペアになっているので、共振周波数は同じはずです。図27と図28に示すように、コンデンサの容量は送電装置100f、受電装置200fともに、1/7C、2/7C、4/7Cである。また、コイルのインダクタンスは、送電装置100f、受電装置200fともにLである。なお、送電装置100fと受電装置200fの間でコイルのインダクタは同一である必要がないが、送電装置100fと受電装置200fの間で共振周波数を同一にするために、リレー制御部180及びリレー制御部280は、コンデンサの容量を決定する。
第4のコンデンサ271の一端は第4のリレー274に接続されており、第4のコンデンサ271の他端は第2のコイル240に接続されている。また第5のコンデンサ272の一端は第5のリレー275に接続されており、第5のコンデンサ272の他端は第2のコイル240に接続されている。また第6のコンデンサ273の一端は第6のリレー276に接続されており、第6のコンデンサ273の他端は第2のコイル240に接続されている。
第4のリレー274の一端は第2の電源部220fに接続されており、第4のリレー274の他端は第4のコンデンサ271に接続されている。また、第5のリレー275の一端は第2の電圧源220fに接続されており、第5のリレー275の他端は第5のコンデンサ272に接続されている。また、第6のリレー276の一端は第6の電圧源220fに接続されており、第6のリレー276の他端は第6のコンデンサ273に接続されている。
第4のリレー274、第5のリレー275、及び第6のリレー276は、それぞれ端子A、B及びCを備える。第4のリレー274、第5のリレー275、及び第6のリレー276は、A端子をB端子かC端子に選択的に導通させる。これにより、第2のコイル240に直列なコンデンサの容量と第2のコイル240に並列なコンデンサの容量の和が一定という条件の下で、第2のコイル240に直列なコンデンサの容量と第2のコイル240に並列なコンデンサの容量を変更することができる。第4のリレー274、第5のリレー275、及び第6のリレー276は、電磁的な切り替えで動作する素子であってもよいし、半導体で形成された素子であってもよい。
リレー制御部280は、第4のリレー274を制御して、第4のリレー274が備える端子Aと端子Bを導通させる場合と、第4のリレー274が備える端子Aと端子Cを導通させる場合とを切り替える。同様にリレー制御部180は、第5のリレー175を制御して、第5のリレー175が備える端子Aと端子Bを導通させる場合と、第5のリレー175が備える端子Aと端子Cを導通させる場合とを切り替える。同様にリレー制御部180は、第6のリレー276を制御して、第6のリレー276が備える端子Aと端子Bを導通させる場合と、第6のリレー276が備える端子Aと端子Cを導通させる場合とを切り替える。
受電装置の場合と同様に、各コンデンサは、2n/(23−1)×C(nは0、1または2)で容量が与えられる。すなわち、第4のコンデンサ271の容量は、nが2の場合で4/7C(Cは予め決められた容量)である。第5のコンデンサ272の容量は、nが1の場合で2/7Cである。第6のコンデンサ273の容量は、nが0の場合で1/7Cである。
リレー制御部280は、3ビットの信号を用いて、第4のコイル240に並列な容量を、3ビットに相当する8つの等間隔刻みで変化させる。これによりリレー制御部180は、第2のコイル240に直列な容量と並列な容量の和を一定という条件の下で、第2のコイル240に並列な容量を変化させることができる。その際リレー制御部280は、送電装置100fと受電装置200fとの距離の変化に伴う相互インダクタンスMの変化に応じて、第2のコイル240に並列な容量を変化させる。これにより、リレー制御部180は、送電装置(親機)または受電装置(子機)の位置が変化して相互インダクタンスMが変化しても第2の電源部220fの電圧E2を固定したままで所定のエネルギーを伝送することができる。その原理詳細については後述する。なお、リレー制御部280は、伝送するエネルギーを変えてエネルギーを伝送してもよい。
以上により、共振回路270fは、送電装置が発生させた磁界により誘導電流を発生させる第2のコイル240と、第2のコイル240の一端と接続された複数のコンデンサと、第2の電源部220fの一端と上記コンデンサの一端の間の導通と第2の電源部220fの一端と第2の電源部220fの他端の間の導通とを切り替える切替部290とを備える。
そして、リレー制御部280は、送電装置100fが備える第1のコイル140と共振回路270fが備える第2のコイル240との間の相互インダクタンスの値に応じて、第2のコイル240と並列な静電容量を変化させるよう、切替部290を制御する。
なお、本実施形態では、一例として、受電装置200fが三つのコンデンサを備え、リレー制御部280が、3ビットに相当する8つの等間隔刻みで第2のコイル240に並列な容量を変化させたが、これに限ったものではない。受電装置200fがN個(Nは正の整数)のコンデンサを備え、リレー制御部280が、Nビットに相当する2N個の等間隔刻みで第2のコイル140に並列な容量を変化させてもよい。その場合、リレー制御部280は、例えば、各容量CnをCn=2n/(2N−1)×Cに従って決定すればよい。これにより、Nビットに相当する2N個の等間隔刻みで第2のコイル240に並列な容量を変化させることができる。
図29は、図28の送電装置100fと図29の受電装置200fを備える非接触給電システム1fの等価回路である。送電装置101fは、第1の電圧源120fと、コンデンサ134fと、コンデンサ135fと、第1のコイル140とを備える。コンデンサ134fは、第1のコイル140と直列に接続されている。一方、コンデンサ135fは、第1のコイル140と並列に接続されている。
受電装置201fは、第2の電圧源220fと、コンデンサ234fと、コンデンサ235fと、第2のコイル240とを備える。コンデンサ234fは、第2のコイル240と直列に接続されている。一方、コンデンサ235fは、第2のコイル240と並列に接続されている。
図27及び図28における各リレーが備える端子Aと端子Bが接続された状態をON状態、端子Aと端子Cが接続された状態をOFF状態と表現する。その場合、コンデンサ134fの容量C1”は、図27においてON状態のリレーに接続されたコンデンサの容量の和である。またコンデンサ135fの容量C1’は、図27においてOFF状態のリレーに接続されたコンデンサの容量の和である。また、コンデンサ234fの容量C2”は、図28においてON状態のリレーに接続されたコンデンサの容量の和である。またコンデンサ235fの容量C2’は、図28においてOFF状態のリレーに接続されたコンデンサの容量の和である。
電源Eν(νは1または2)の角周波数ω0は、1/√{Lν(Cν’+Cν”)}である。第1の電源部120fは、第1のコイル140のインダクタンスL1と、切替部190による切り替えの結果得られた、第1のコイル140に並列に接続された容量の和C1’と第1のコイル140に直列に接続された容量の和C1”の総和(C1’+C1”)CTとに基づいて決定される角周波数ω1(=1/√(L1(C1’+C1”)))で振動する。また、第2の電源部220fは、第2のコイル240のインダクタンスL2と、切替部290による切り替えの結果得られた、第2のコイル240に並列に接続された容量C2’と前第2のコイル240に直列に接続された容量C2”の和(C2’+C2”))とに基づいて決定される角周波数ω2(=1/√(L2(C2’+C2”)))で振動し、ω1=ω2=ω0である。よって、L2(C2’+C2”)=L1(C1’+C1”)である。
図30は、図29の回路の等価回路である。同図の等価回路は、図29の回路を直列回路に変換したものである。送電装置102fは、電圧源121fと、コンデンサ136fと、第1のコイル140とが順に直列に接続されている。ここで電圧源121fの電圧は、C1”/(C1’+C1”)E1である。またコンデンサ136fの容量は、C1’+C1”である。第1のコイル140と第2のコイルの相互インダクタンスはMである。
受電装置202fは、電圧源221fと、コンデンサ236fと、第3のコイル240とが順に直列に接続されている。ここで電圧源221fの電圧はC2”/(C2’+C2”)E2(図30の221fの中も修正してください。)である。またコンデンサ236fの容量は、C2’+C2”である。ここで、相互インダクタンスMが正の時はC1“/(C1’+C1”)E1=jC2”/(C2’+C2”)E2のとき、エネルギーの伝送効率が最大になる。そのときの伝送エネルギーは、|{C1”/(C1’+C1”)E1}|2/(w0M)=|{C2”/(C2’+C2”)E2}|2/(w0M)
である。
送電装置100fのリレー制御部180は、コンデンサ135fの容量C1’とコンデンサ134fの容量C1”の和(C1’+C1”)を一定としながら、第1のコイル140と第2のコイル240の相互インダクタンスMに応じてコンデンサ135fの容量C1’を変化させる。具体的には、例えば、リレー制御部180は、当該相互インダクタンスMが大きくなるほど、第1のコイル140に直列なコンデンサ135fの容量C1”を大きくする。または単独にあるいは送電装置と同時に受電装置200fのリレー制御部280は、コンデンサ235fの容量C2’とコンデンサ234fの容量C2”の和を一定としながら当該相互インダクタンスMに応じてコイルに直列なコンデンサ235fの容量C2”を変化させる。具体的には、例えば、リレー制御部280は、当該相互インダクタンスMが大きくなるほど、第1のコイル240に並列なコンデンサ235fの容量C2’を大きくする。これにより、送電装置100fと受電装置200fの距離が変わることで相互インダクタンスMが変わっても、その相互インダクタンスMに応じてコンデンサ135fの容量C1’とコンデンサ235fの容量C2’を変化させることで、エネルギーの伝送効率が最大になるときの伝送エネルギーの変化を小さくすることができる。
また、例えば、リレー制御部180は、第1のコイル140に直列なコンデンサ135fの容量C1”の変化率を、当該相互インダクタンスMの変化率の2分の1乗になるよう、第1のリレー174〜第3のリレー176を制御する。またそれと並行して、リレー制御部280は、例えば第2のコイル240に直列なコンデンサ235fの容量C2”の変化率を、当該相互インダクタンスMの変化率の2分の1乗になるよう、第1のリレー174〜第3のリレー176を制御する。これにより、非接触給電システム1fは、親機または子機の位置が変化して相互インダクタンスMが変化しても第1の電源部120fの電圧E1及び第2の電源部220fの電圧E2を固定したままで、同じ所定のエネルギーを伝送することができる。
以上、第5の実施形態において、リレー制御部180は、当該相互インダクタンスMの変化に応じて、第1のコイル140に直列なコンデンサ135fの容量C1”を変化させる。または送電装置とは単独にあるいは同時に、リレー制御部280は、例えば、当該相互インダクタンスMの変化に応じて、第1のコイル240に直列なコンデンサ235fの容量C2”を変化させる。これにより、送電装置100fと受電装置200fの距離が変わることで相互インダクタンスMが変わっても、その相互インダクタンスMに応じてコンデンサ135fの容量C1”とコンデンサ235fの容量C2”を変化させることで、エネルギーの伝送効率が最大になるときの伝送エネルギーの変化を小さくすることができる。
<第6の実施形態>
続いて、第6の実施形態について説明する。第5の実施形態における非接触給電システム1fでは、端子の切り替えにリレーを使用したが、第6の実施形態における非接触給電システム1gでは、端子の切り替えに高速スイッチ回路を使用する。図31は、第6の実施形態における送電装置100gの概略ブロック図である。なお、図27と共通する要素には同一の符号を付し、その具体的な説明を省略する。第6の実施形態における送電装置100gの構成は、第5の実施形態における送電装置100fの構成に対して、第1のリレー174が高速スイッチ回路177に、第2のリレー175が高速スイッチ回路178に、第3のリレー176が高速スイッチ回路179に変更され、第1の電源部120fが第1の直流電源120gに変更されたものになっている。ここで、第1の直流電源120gは、例えば電池である。
高速スイッチ回路177〜179は、それぞれ端子A、B及びCを備える。高速スイッチ回路177〜179は、A端子をB端子かC端子に選択的に導通させる。これにより、第1のコイル140に直列なコンデンサの容量と第1のコイル140に並列なコンデンサの容量の和が一定という条件の下で、第1のコイル140に直列なコンデンサの容量と第1のコイル140に並列なコンデンサの容量を変更することができる。ここで、端子A、B及びCとON状態及びOFF状態の関係は、第5の実施形態と同様である。但し、第5の実施形態におけるリレーの切り替えは、低速すなわち角周波数ω0よりも小さい周波数で切り替わるのに対し、第6の実施形態における高速スイッチ回路177〜179は、角周波数ω0で上記導通を切り替える。
図32は、送電装置100gが備える高速スイッチ回路177の概略ブロック図である。高速スイッチ回路177は、第1のトランジスタ181と、第2のトランジスタ182とを備える。第1のトランジスタ181は、例えばnMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)である。第2のトランジスタ182は、例えばpMOSFETである。
第1のトランジスタ181のソース(S)はA端子及び第2のトランジスタ182のソース(S)に接続されている。また、第1のトランジスタ181のドレイン(D)はB端子に接続されている。また、第1のトランジスタ181のゲート(G)がリレー制御部180gに接続されている。第1のトランジスタ181のゲート(G)は、リレー制御部180gから供給された第1制御信号に応じてスイッチのON、OFFを切り替える。具体的には、例えば第1のトランジスタ181は、第1制御信号が予め決められた電圧より高いハイレベルのときに、スイッチがONとなりドレイン(D)からソース(S)に電流が流れる。これにより、A端子とB端子が導通する。
第2のトランジスタ182のソース(S)はA端子及び第1のトランジスタ181のソース(S)に接続されている。また、第2のトランジスタ182のドレイン(D)はC端子に接続されている。また、第2のトランジスタ182のゲート(G)がリレー制御部180gに接続されている。第2のトランジスタ182のゲート(G)は、リレー制御部180gから供給された第2制御信号に応じてスイッチのON、OFFを切り替える。これにより、第2のトランジスタ182は、高速にスイッチのON、OFFを切り替えることができる。具体的には、例えば第2のトランジスタ182は、第2制御信号が予め決められた電圧より低いローレベルのときに、スイッチがONとなりソース(S)からドレイン(D)へ電流が流れる。これにより、A端子とC端子が導通する。
リレー制御部180gは、第1制御信号と第2制御信号とを同相の信号とすることで、トランジスタのスイッチングのON、OFFが、第1のトランジスタ181と第2のトランジスタ182との間で逆相になるように制御する。例えば、ON状態すなわち端子Aと端子Bとが接続された状態にするには、リレー制御部180gは、第1のトランジスタ181のスイッチをONにし、第2のトランジスタ182のスイッチをOFFにする。
一方、OFF状態すなわち端子Aと端子Cとが接続された状態にするには、リレー制御部180gは、第1のトランジスタ181のスイッチをOFFにし、第2のトランジスタ182のスイッチをONにする。
なお、第1のトランジスタ181と第2のトランジスタ182に、MOSFETを使用したが、これに限らず、バイポーラトランジスタでもよいし、IGBTでもよい。また、高速スイッチ回路178及び179は、高速スイッチ回路177の構成と同じであるので、その構成の説明を省略する。
図33は、第6の実施形態における受電装置200gの概略ブロック図である。なお、図28と共通する要素には同一の符号を付し、その具体的な説明を省略する。第6の実施形態における受電装置200gの構成は、第5の実施形態における受電装置200fの構成に対して、第4のリレー274が高速スイッチ回路277に、第5のリレー275が高速スイッチ回路278に、第6のリレー276が高速スイッチ回路279に変更され、第2の電源部220fが第2の直流電源220gに変更されたものになっている。ここで、第2の直流電源220gは、例えば電池である。
高速スイッチ回路277〜279は、送電装置100gの高速スイッチ回路177〜179と同様にそれぞれ端子A、B及びCを備える。高速スイッチ回路277〜279は、A端子をB端子かC端子に選択的に導通させる。これにより、第2のコイル240に直列なコンデンサの容量と第2のコイル240に並列なコンデンサの容量の和が一定という条件の下で、第2のコイル240に直列なコンデンサの容量と第2のコイル240に並列なコンデンサの容量を変更することができる。ここで、端子A、B及びCとON状態及びOFF状態の関係は、第5の実施形態と同様である。但し、第5の実施形態におけるリレーの切り替えは、低速すなわち角周波数w0よりも小さい周波数で切り替わるのに対し、第6の実施形態における高速スイッチ回路277〜279は、角周波数w0で上記導通を切り替える。
図34は、受電装置200gが備える高速スイッチ回路277の概略ブロック図である。高速スイッチ回路177は、第3のトランジスタ281と、第4のトランジスタ282とを備える。第3のトランジスタ281は、例えばpMOSFETである。第4のトランジスタ282は、例えばnMOSFETである。
第3のトランジスタ281のソース(S)はA端子及び第4のトランジスタ282のソース(S)に接続されている。また、第3のトランジスタ281のドレイン(D)はB端子に接続されている。また、第3のトランジスタ281のゲート(G)がリレー制御部280gに接続されている。第3のトランジスタ181のゲート(G)は、リレー制御部280gから供給された第3制御信号に応じてスイッチのON、OFFを切り替える。具体的には、例えば第3のトランジスタ281は、第3制御信号が予め決められた電圧より低いローレベルのときに、スイッチがONとなりソース(S)からドレイン(D)に電流が流れる。すなわち、第3のトランジスタ281は、スイッチがONのときに、送電装置100gの第1のトランジスタ181とは逆向きに電流を流す。これにより、A端子とB端子が導通する。
第4のトランジスタ282のソース(S)はA端子及び第3のトランジスタ281のソース(S)に接続されている。また、第4のトランジスタ282のドレイン(D)はC端子に接続されている。また、第4のトランジスタ282のゲート(G)がリレー制御部280gに接続されている。第4のトランジスタ282のゲート(G)は、リレー制御部280gから供給された第4制御信号に応じてスイッチのON、OFFを切り替える。具体的には、例えば第4のトランジスタ282は、第4制御信号が予め決められた電圧より高いハイレベルのときに、スイッチがONとなりドレイン(D)からソース(S)へ電流が流れる。すなわち、第4のトランジスタ282は、スイッチがONのときに、送電装置100gの第2のトランジスタ182とは逆向きに電流を流す。これにより、A端子とC端子が導通する。
なお、第3のトランジスタ281と第4のトランジスタ282に、MOSFETを使用したが、これに限らず、バイポーラトランジスタでもよいし、IGBTでもよい。また、高速スイッチ回路278及び279は、高速スイッチ回路277の構成と同じであるので、その構成の説明を省略する。
以上、第6の実施形態において、高速スイッチ回路177〜179及び高速スイッチ回路277〜279は、角周波数ω0で導通を切り替える。これにより、第6の実施形態における非接触給電システム1gは、第5の実施形態の効果に加えて、第5の実施形態におけるリレーの切り替えよりも高速でスイッチを切り替えることができる。
なお、本実施形態では、切替部190は、第1のコイル140に直列な静電容量と並列な静電容量が一定という条件で、その割合を変更したが、これに限ったものではない。切替部190は、第1のコイル140に直列な静電容量と並列な静電容量が一定でない条件で、当該直列な静電容量と当該並列な静電容量を変更してもよい。
同様に、本実施形態では、切替部290は、第2のコイル140に直列な静電容量と並列な静電容量が一定という条件で、その割合を変更したが、これに限ったものではない。切替部290は、第2のコイル240に直列な静電容量と並列な静電容量が一定でない条件で、当該直列な静電容量と当該並列な静電容量を変更してもよい。
<第7の実施形態>
続いて、第7の実施形態について説明する。図35は、第7の実施形態における非接触給電システム1hの概略ブロック図である。なお、図2及び図4と共通する要素には同一の符号を付し、その具体的な説明を省略する。非接触給電システム1hは、送電装置(親機ともいう)100hと、受電装置(子機ともいう)200hと、中継装置300hとを備える。
送電装置100hは、第1の電源部120hと、抵抗137と、コンデンサ131と、第1のコイル140が順に直列に接続されたものである。ここで、第1の電源部120hの両端の電圧はE[1]を表す。抵抗137のインピーダンスがzである。コンデンサ131の容量がCである。第1のコイル140のインダクタンスがLである。第1のコイル140と第3のコイル310の相互インダクタンスがMである。
第1の電源部120hは、交流電圧を生成する。これにより、抵抗137及びコンデンサ131を介して第1のコイル140に交流電流が供給される。また、第1の電源部120hは、当該交流電圧の位相を示す位相信号を、受電装置200hの後述する制御部211hへ出力する。第1のコイル140は、供給された交流電流によって周囲に交流磁界を発生させる。
中継装置300hは、第3のコイル310と、コンデンサ320と、抵抗330と、抵抗340と、コンデンサ350と、第4のコイル360とを備える。同図に示すように、第3のコイル310と、コンデンサ320と、抵抗330と、抵抗340と、コンデンサ350と、第4のコイル360とが順に直列に接続されている。ここで、第3のコイル310と第4のコイル360のインダクタンスがLである。コンデンサ320とコンデンサ350の容量がCである。抵抗330と抵抗340のインピーダンスがzである。第4のコイル360と第2のコイル240の相互インダクタンスがMである。
第3のコイル310は、第1のコイル140が発生させた交流磁界により交流の誘導電流が生じる。第3のコイル310は、生じた誘導電流をコンデンサ320、抵抗330、抵抗340及びコンデンサ350を介して、第4のコイル360へ供給する。第4のコイル360は、供給された誘導電流によって周囲に交流磁界を発生させる。
受電装置200hは、第2のコイル240と、コンデンサ231と、抵抗237と、第2の電源部220hと、制御部211hを備える。受電装置200hでは、第2のコイル240と、コンデンサ231と、抵抗237と、第2の電源部220hとが順に直列に接続されている。ここで、第2のコイル240のインダクタンスがLである。コンデンサ231の容量がCである。抵抗237のインピーダンスがzである。第2の電源部220hの両端の電圧はE[2]で表す。
第2のコイル240では、第4のコイル360が発生させた交流磁界により交流の誘導電流が生じる。第2のコイル240は、生じた誘導電流をコンデンサ231及び抵抗237を介して、第2の電源部220hへ供給する。
ここで、本実施形態では、一例として、第1のコイル140とコイル310との相互インダクタンスが正で、かつコイル360と第2のコイル240との相互インダクタンスが正の場合を想定する。その場合、制御部211hは、第1の電源部120hから入力された位相信号に基づいて、その位相信号が示す位相に対して180度進む電圧を生成するよう、第2の電源部220hを制御する。これにより、第2の電源部220hが生成する電圧は、第1の電源部120hが生成する電圧に比べて180度位相が進む。また、制御部211hは、第1の電源部120hから入力された振幅信号に基づいて、その振幅信号が示す振幅に対して予め決められた割合(例えば、0.55倍)の電圧を生成するよう、第2の電源部220hを制御する。これにより、第2の電源部220hが生成する電圧の振幅が、第1の電源部120hが生成する電圧の振幅に比べて予め決められた割合(例えば、0.55倍)となる。
これにより、制御部211hは、第1の電源部120hが生成する電圧に比べて、位相が180度進み、振幅が予め決められた割合となる電圧を第2の電源部220hに生成させることで、エネルギーの伝送効率を向上させることができる。この伝送効率が向上する原理については、後述する。
続いて、第1の電源部120hと第2の電源部220hとの間の電圧の振幅比と位相差の決め方について説明する。ここで、ωを駆動角周波数とすると、LC=1/ω2が成り立つ。この非接触給電システム1hの送電装置100hのアドミッタンスおよび受電装置100hのアドミッタンスを成分とするアドミッタンス行列を用いると、次の式(21)が成り立つ。
但し、X=ωMである。インピーダンスの値zが抵抗rで、抵抗rがパラメータXに比べて十分に小さいとき(すなわち抵抗r≪Xのとき)のアドミッタンス行列Yを行列Aとすると、行列Aは次の式(22)で表される。
子機が受電するエネルギーpowerは、次の式(23)で表される。
ここで、Eの上の〜は転置を表し、Eの右上の*は複素共役を表す。但し、Eは列ベクトルで次の式(24)で表される。
である。行列Bは、次の式(25)で表される。
ここで、行列P[k]は(k,k)成分のみが1で他の成分は0の行列である(kは正の整数)。行列Bのn,m成分をb[n,m]とすると、n,mが子機群の時はb[n,m]=Re[y[n,m]]である。n,mが親機群の時はb[n,m]=0である。nが親機群、mが子機群の時はy[nm]/2である。nが子機群、mが親機群の時はy[nm]*/2である。ここで*は複素共役を表す。よって、式(22)の行列Yを式(25)に代入すると行列Bは次の式(26)で表される。
次に、行列Bが式(26)で表される場合と同様に親機から放出されるエネルギーを表す行列をC2とすると、行列C2は、次の式(27)で表される。
式(27)から、行列Cは、次の式(28)で表される。
式(28)から、行列Cの逆行列C−1は、次の式(29)で表される。
続いて、行列Dは、次の式(30)で表される。
ここで、子機に吸い込まれるエネルギーを親機が放出するエネルギーで除した量の期待値ηは次の式(31)で表される。
Dの固有値は、√2−√3=−0.318と√2+√3=3.146である。Dの固有値のうち最も小さい値(この例では、−0.318)が期待値ηの最小値であり、その場合にエネルギーの伝送効率が最大となる。このときの固有ベクトルF=[F[1]、F[2]](〜)とする。ここで、(〜)は転置を表す。このとき、固有ベクトルFの成分F[1]=1である。固有ベクトルFの成分F[2]=(1+2j)√2/(√2+2√3)=0.290+j0.580=0.648(cos(63.45°)+jsin(63.45°))である。これはr≪Xで成り立つ式であり、rをいくら小さくしても効率は1にならない。ここで、親機の電圧E[1]と子機の電圧E[2]を成分に持つ行列E(=[E[1]、E[2]](〜)は、次の式(32)で表される。
よって、E[1]は、次の式(33)で表される。
また、E[2]は、次の式(34)で表される。
この親機の電圧E[1]と子機の電圧E[2]から、親機の電圧E[1]と子機の電圧E[2]の位相差は180°である。すなわち、子機の電圧E[2]は、親機の電圧E[1]より180度進んでいる。また、親機の電圧E[1]の振幅に対する子機の電圧E[2]の振幅である振幅比は0.55(=E[2]/E[1])である。
以上、第7の実施形態において、制御部211hは、一例として子機の電圧E[2]が親機の電圧E[1]に対して180度進むように第2の電源部220hを制御する。また、制御部211hは、一例として子機の電圧E[2]の振幅が親機の電圧E[1]の振幅の0.55倍になるように第2の電源部220hを制御する。これにより、送電装置100hから受電装置200hへのエネルギーの伝送効率を最大にすることができる。
なお、コイル間の相互インダクタンスが全て負の場合、制御部211hは、送電装置100hが生成する電圧の位相に対する受電装置100hが生成する電圧の位相が180度遅れるように第2の電源部220hを制御してもよい。これにより、伝送効率を向上させることができる。
また、第1の電源部120hと第2の電源部220hをそれぞれ電流源に置き換えた場合で、コイル間の相互インダクタンスが全て正の場合、制御部211hは、送電装置100hが生成する電圧の位相に対する受電装置100hが生成する電圧の位相が180度遅れるように第2の電源部220hを制御してもよい。
また、第1の電源部120hと第2の電源部220hをそれぞれ電流源に置き換えた場合で、コイル間の相互インダクタンスが全て負の場合、制御部211hは、送電装置100hが生成する電圧の位相に対する受電装置100hが生成する電圧の位相が180度進むように第2の電源部220hを制御してもよい。
また、第7の実施形態において、受電装置200hが備える制御部211hが第2の電源部220hの電圧E[2]の振幅と位相を制御したがこれに限ったものではない。送電装置100hが、制御部111hを備え、制御部111hが第1の電源部120hの電圧E[1]の振幅と位相を制御してもよい。その場合、例えば、制御部111hは、第2の電源部220hが生成する電圧の振幅と位相を第2の電源部220hから取得してもよい。そして、制御部111hは、一例として親機の電圧E[1]が子機の電圧E[2]に対して180度遅れるように第1の電源部120hを制御してもよい。また、それと並行して制御部111hは、一例として親機の電圧E[1]の振幅が子機の電圧E[2]の振幅に対して1.8(=1/0.55)倍になるように第1の電源部120hを制御してもよい。
また、第7の実施形態では、送電装置100hと受電装置200hの間には、中継装置を一台だけ設置されていたが、送電装置100hと受電装置200hの間に中継装置が連続して二台以上設置されていてもよい。中継装置の数をU台(Uは正の整数)とした場合でかつコイル間の相互インダクタンスが全て正の場合、制御部211hまたは制御部111hは、送電装置100hが生成する電圧の位相に対する受電装置100hが生成する電圧の位相の進みを、(90+90×U)度となるよう、それぞれ第2の電源部220hまたは第1の電源部120hを制御してもよい。これにより、伝送効率を向上させることができる。一方、中継装置の数をU台とした場合でかつコイル間の相互インダクタンスが全て負の場合、制御部211hまたは制御部111hは、送電装置100hが生成する電圧の位相に対する受電装置100hが生成する電圧の位相の遅れ、(90+90×U)度となるよう、それぞれ第2の電源部220hまたは第1の電源部120hを制御してもよい。これにより、伝送効率を向上させることができる。
また、第1の電源部120hと第2の電源部220hをそれぞれ電流源に置き換えた場合で、かつコイル間の相互インダクタンスが全て正の場合で、かつ中継装置の数をU台(Uは正の整数)とした場合、制御部211hまたは制御部111hは、送電装置100hが生成する電流の位相に対する受電装置100hが生成する電流の位相の遅れを、(90+90×U)度となるよう、それぞれ第2の電源部220hまたは第1の電源部120hを制御してもよい。これにより、伝送効率を向上させることができる。
一方、第1の電源部120hと第2の電源部220hをそれぞれ電流源に置き換えた場合で、かつコイル間の相互インダクタンスが全て負の場合で、かつ中継装置の数をU台とした場合、制御部211hまたは制御部111hは、送電装置100hが生成する電流の位相に対する受電装置100hが生成する電流の位相の進みを、(90+90×U)度となるよう、それぞれ第2の電源部220hまたは第1の電源部120hを制御してもよい。これにより、伝送効率を向上させることができる。
以上の処理をまとめると、受電装置200hにおいて、受電装置用電源部としての第2の電源部220hは、送電装置100hの電源である第1の電源部120hが生成する電圧の位相に対する位相差であって中継装置の数に応じて決定された位相差で交流電圧を生成するか、あるいは第1の電源部120hが流す電流に対する位相差であって中継装置の数に応じて決定された位相差で交流電流を流す。すなわち、受電装置用電源部としての第2の電源部220hは、中継装置の数に応じて決定された、送電装置の電源である前記送電装置用電源部が生成する電力の位相に対する位相差で交流電力を生成する。
中継装置の数が一台の場合、第2の電源部220hは、送電装置100hと中継装置300hとの相互インダクタンスの正負と、中継装置300hと受電装置200hとの相互インダクタンスの正負とに応じて決定された、第1の電源部120hが生成する交流電力の位相に対する位相の進み量または遅れ量で交流電力を生成する。
中継装置の数が二台以上の場合、第2の電源部220hは、中継装置の数と、送電装置100hと該送電装置100hの隣の中継装置との相互インダクタンスの正負と、隣り合う中継装置間の相互インダクタンスの正負と、受電装置200hと該受電装置の隣の中継装置との相互インダクタンスの正負とに応じて決定された、第1の電源部120hが生成する交流電力の位相に対する位相の進み量または遅れ量で交流電力を生成する
送電装置100hは、中継装置の数に応じて決定された、受電装置200hの電源である第2の電源部220h(受電装置用電源)が生成する電圧の位相に対する位相差で交流電圧を生成するか、あるいは中継装置の数に応じて決定された、第2の電源部220h(受電装置用電源)が流す電流に対する位相差で交流電流を流す第1の電源部120hを備えてもよい。すなわち、送電装置用電源部としての第1の電源部120hは、中継装置の数に応じて決定された、前記受電装置の電源である受電装置用電源が生成する電力の位相に対する位相差で交流電力を生成してもよい。
なお、各実施形態において、非接触給電システムが車両の負荷に給電する構成例について説明したが、これに限らず、非接触給電システムが他の電子装置(例えば、冷凍装置)の負荷に給電する構成にしてもよい。
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。