JP2014063658A - リチウムイオン二次電池用負極材およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】充放電時の体積変化を抑制し、高容量かつサイクル特性に優れたリチウムイオン二次電池用負極材、およびこれを高速、低コスト、低環境負荷にて製造可能な製造方法を提供する。
【解決手段】銅合金からなる集電体の表面にCuSn合金層が形成されたリチウムイオン二次電池用負極材であって、集電体にはNi、CoSiから選ばれた1以上の元素が合計1質量%以上5質量%以下添加されており、CuSn合金層はCu6Sn5層を主成分とし、Cu6Sn5層の集電体側界面付近に前記Ni、CoSiから選ばれた1以上の元素が固溶しており、Cu6Sn5層の局部山頂の平均間隔Sが1.25μm以下である。
【選択図】 図1
【解決手段】銅合金からなる集電体の表面にCuSn合金層が形成されたリチウムイオン二次電池用負極材であって、集電体にはNi、CoSiから選ばれた1以上の元素が合計1質量%以上5質量%以下添加されており、CuSn合金層はCu6Sn5層を主成分とし、Cu6Sn5層の集電体側界面付近に前記Ni、CoSiから選ばれた1以上の元素が固溶しており、Cu6Sn5層の局部山頂の平均間隔Sが1.25μm以下である。
【選択図】 図1
Description
本発明は、リチウムイオン二次電池の負極材およびその製造方法に関するものである。
近年、携帯端末機器の小型軽量化および高機能化のため、リチウムイオン二次電池の高エネルギー密度化が要求されている。リチウムイオン二次電池の負極としては、銅箔あるいは銅合金箔からなる集電体上に、炭素系活物質をバインダーと溶剤で溶いたものを塗布、乾燥し、熱ロールプレスにより加圧することにより、活物質の層を形成したものが一般的に使用されている。しかし炭素系活物質の容量は理論値(372mAh/g)にほぼ到達しており、より容量の大きいSn系活物質(Li4.4Snで約1000mAh/g)やSi系活物質(Li4.4Siで約4000mAh/g)を実用化する検討が活発に行われている。
Sn系あるいはSi系活物質において、大きな問題となっているのは、充放電時の大きな体積変化に起因するサイクル特性の低さである。一般に、Sn系あるいはSi系活物質を用いた負極材では数10サイクルで集電体との間の電子伝導パスが失われ、容量が急激に減少する(非特許文献1)。
Sn系あるいはSi系活物質において、大きな問題となっているのは、充放電時の大きな体積変化に起因するサイクル特性の低さである。一般に、Sn系あるいはSi系活物質を用いた負極材では数10サイクルで集電体との間の電子伝導パスが失われ、容量が急激に減少する(非特許文献1)。
このような課題に対応するため、Cu集電体表面に電解めっきでSnを形成して真空雰囲気200℃で24時間の熱処理を行った材料がSn系の負極として提案されている(非特許文献2)。この電極は、Sn/Cu6Sn5/Cu3Sn/Cu集電体という多層構造を有しており、充放電時の体積変化が緩和できるため、活物質であるSnとCu6Sn5の剥離が抑制され、サイクル特性が向上すると報告されている。
また、Cu6Sn5の薄膜を活物質として利用する負極も提案されている(特許文献1)。Cu6Sn5薄膜の形成方法としては、Cu集電体上にSnをめっきした後100〜200℃で2〜12時間の熱処理を施す方法、あるいはシアン系のめっき浴を用いた合金めっきをする方法である。
また、Cu6Sn5の薄膜を活物質として利用する負極も提案されている(特許文献1)。Cu6Sn5薄膜の形成方法としては、Cu集電体上にSnをめっきした後100〜200℃で2〜12時間の熱処理を施す方法、あるいはシアン系のめっき浴を用いた合金めっきをする方法である。
M. Winter and J.O. Besenhard, Electrochimica Acta, 450 (1999) 31−50.
N. Tamura et al., Journal of Power Sources, 107 (2002) 48−55.
前述したように、炭素系活物質を用いた負極は、ほぼ理論最高容量に達しており、Sn系活物質を用いた容量の高い負極の開発が活発となっている。このSn系活物質の最大の課題は、充放電時の体積変化(完全充電時の体積膨張は、炭素系活物質では約1.5倍であるのに、純Snでは約3.5倍)による銅集電体からの剥離である。
その課題解決のため、非特許文献2では、Snめっきと熱処理によるSn/Cu6Sn5/Cu3Sn/Cu集電体の構成とすること、また特許文献1では、Snめっきと熱処理あるいは合金めっきによるCu6Sn5活物質をCu集電体上に形成することがそれぞれ報告されている。
これらの方法によって、サイクル特性はある程度向上できるものの、その性能は実用に際し未だ十分とは言えなかった。また、製造時に真空中での長時間の熱処理を行う場合には、製造時間と製造コストがかかり、シアン系浴により合金めっきを行う場合には、製造コストと環境負荷がそれぞれ高くなってしまう。このため、Sn系(Sn合金を含む)活物質を用いた、より一層サイクル特性の高いリチウムイオン二次電池用負極と、その高速・低コストかつ環境安全性に優れた製造方法が要望されていた。
その課題解決のため、非特許文献2では、Snめっきと熱処理によるSn/Cu6Sn5/Cu3Sn/Cu集電体の構成とすること、また特許文献1では、Snめっきと熱処理あるいは合金めっきによるCu6Sn5活物質をCu集電体上に形成することがそれぞれ報告されている。
これらの方法によって、サイクル特性はある程度向上できるものの、その性能は実用に際し未だ十分とは言えなかった。また、製造時に真空中での長時間の熱処理を行う場合には、製造時間と製造コストがかかり、シアン系浴により合金めっきを行う場合には、製造コストと環境負荷がそれぞれ高くなってしまう。このため、Sn系(Sn合金を含む)活物質を用いた、より一層サイクル特性の高いリチウムイオン二次電池用負極と、その高速・低コストかつ環境安全性に優れた製造方法が要望されていた。
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、充放電時の体積変化を抑制し、高容量かつサイクル特性に優れたリチウムイオン二次電池用負極材、およびこれを高速、低コスト、低環境負荷にて製造可能な製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、Sn系活物質を用いた容量の高い負極材について鋭意研究した結果、Ni、Co、Siの内、少なくとも1成分が添加され、かつ前記元素の合計添加量が1〜5質量%である銅合金集電体上に、Snをめっきした後、リフロー処理と、未反応Snの剥離処理とを行うことにより、集電体上に、微細・柱状型粒子で構成され、局部山頂の平均間隔Sで特徴付けられる急峻な表面凹凸形状を有するCu6Sn5層を急速形成させることができ、この負極材が高サイクル特性を示すことを見出した。
本発明は、かかる知見の下、以下の解決手段とした。
本発明は、かかる知見の下、以下の解決手段とした。
すなわち、本発明は、銅合金からなる集電体の表面にCuSn合金層が形成されたリチウムイオン二次電池用負極材であって、前記集電体にはNi、Co、Siから選ばれた1以上の元素が合計1質量%以上5質量%以下添加されており、前記CuSn合金層はCu6Sn5層を主成分とし、該Cu6Sn5層の前記集電体側界面付近に前記Ni、Co、Siから選ばれた1以上の元素が固溶しており、前記Cu6Sn5層の局部山頂の平均間隔Sが1.25μm以下であることを特徴とする。
Cu6Sn5層は、集電体中に添加されたNi、Co、Siが部分的に固溶した微細・柱状型粒子から構成されており、局部山頂の平均間隔Sが1.25μm以下である。このCu6Sn5層は、急峻な凹凸形状を有するため粒子間の間隙が大きく、その間隙の存在により、充放電時の体積膨張及び収縮を吸収してサイクル特性を向上させ、歪みの発生を緩和して集電体からの剥離を防止することができる。
Cu6Sn5層の局部山頂の平均間隔Sが1.25μmを超えるような場合は、粒子が間隙の小さい粗大な形状となって、充放電時の体積膨張及び収縮を緩和する効果に乏しい。ただし、局部山頂の平均間隔Sを0.7μm未満とするのは製造技術上困難である。
この微細・柱状型粒子からなるCu6Sn5層を形成するためには、Ni、Co、又はSiの存在が不可欠であり、集電体への含有率が1質量%未満であると、効果が不十分であり、5質量%を超えるとコスト増を招くとともに集電体の電気伝導度を低下させる。
Cu6Sn5層の局部山頂の平均間隔Sが1.25μmを超えるような場合は、粒子が間隙の小さい粗大な形状となって、充放電時の体積膨張及び収縮を緩和する効果に乏しい。ただし、局部山頂の平均間隔Sを0.7μm未満とするのは製造技術上困難である。
この微細・柱状型粒子からなるCu6Sn5層を形成するためには、Ni、Co、又はSiの存在が不可欠であり、集電体への含有率が1質量%未満であると、効果が不十分であり、5質量%を超えるとコスト増を招くとともに集電体の電気伝導度を低下させる。
本発明のリチウムイオン二次電池用負極材において、前記CuSn合金層におけるCu3Sn層が占める体積率が15%以下であるとよい。
Cu3Sn層は、Cu6Sn5層と集電体との間に形成される。Cu3Sn粒子はLiの充放電能がないとともに(非活物質層)、このCu3Sn粒子が占める体積率が大き過ぎると、Cu6Sn5層を占める粒子の微細・柱状化が抑制され、体積変化に対する緩和作用が損なわれるおそれがあるので、Cu3Sn粒子が占める体積率としては15%以下が好ましい。
Cu3Sn層は、Cu6Sn5層と集電体との間に形成される。Cu3Sn粒子はLiの充放電能がないとともに(非活物質層)、このCu3Sn粒子が占める体積率が大き過ぎると、Cu6Sn5層を占める粒子の微細・柱状化が抑制され、体積変化に対する緩和作用が損なわれるおそれがあるので、Cu3Sn粒子が占める体積率としては15%以下が好ましい。
本発明のリチウムイオン二次電池用負極材において、前記CuSn合金層の平均厚みが0.4μm以上4μm以下であるとよい。
CuSn合金層の平均厚みは、薄いほど生産性が良いが、単位面積当たりの容量が小さくなるため、0.4μm以上とするのが好ましい。一方、厚いと電池容量は大きくなるが、熱処理に時間がかかるため生産性が悪く、またサイクル特性の向上を担う粒子間間隙も減少する傾向が大きいので、4μmまでの厚みが好ましい。
CuSn合金層の平均厚みは、薄いほど生産性が良いが、単位面積当たりの容量が小さくなるため、0.4μm以上とするのが好ましい。一方、厚いと電池容量は大きくなるが、熱処理に時間がかかるため生産性が悪く、またサイクル特性の向上を担う粒子間間隙も減少する傾向が大きいので、4μmまでの厚みが好ましい。
本発明のリチウムイオン二次電池用負極材の製造方法は、銅合金からなる集電体上に、Snを電析した後に、加熱してリフロー処理し、該リフロー処理後に未反応で残るSn皮膜の剥離除去処理を行うことにより、前記集電体の上にCuSn合金層を形成したリチウムイオン二次電池用負極材を製造する方法であって、前記集電体として、Ni、Co、Siから選ばれた1以上の元素を1質量%以上5質量%以下含有した銅合金を用いることを特徴とする。
集電体にNi、Co、Siを所定量含有させた銅合金を用いたことにより、短時間のリフロー処理(例えば、錫の融点以上で十秒程度加熱後、急冷)でCu6Sn5層を主成分とし、Cu3Sn層の生成を抑制したCuSn合金層を形成することができる。また、Snめっきを熱処理によって合金化しているから、合金めっきのためのシアン系浴を不要にし、環境負荷も少なくて済む。
本発明によれば、高容量かつサイクル特性に優れたリチウムイオン二次電池用負極を実現できる。また、提供する製造方法により負極の高速、低コスト、低環境負荷製造が可能となる。
本発明のリチウムイオン二次電池用負極材を説明する。
本実施形態の負極材は、銅合金からなる集電体の上に、CuSn合金層が形成されたものである。
集電体は、銅合金からなり、Ni、Co、Siから選ばれた1以上の元素が合計1質量%以上5質量%以下添加されている。
CuSn合金層は、後述するように集電体の上にSnめっき層を形成してリフロー処理した後に、残存Sn皮膜を除去することにより形成されたものであり、Cu6Sn5層を主成分とし、Cu6Sn5層の下層に、Cu3Sn層がわずかに存在している場合がある。
Cu6Sn5層は、集電体中に添加されたNi、Co、Siが集電体近傍領域に固溶した微細・柱状型粒子から構成されており、局部山頂の平均間隔Sが1.25μm以下である表面形状を有する。この微細な柱状型粒子で構成されるCu6Sn5層は、粒子間の間隙が大きく、その間隙の存在により、充放電時の体積膨張及び収縮を吸収してサイクル特性を向上させ、歪みの発生を緩和して集電体からの剥離を防止することができる。
具体的には、図1、図3に示す表面形状、図2、図4に示す断面構造を有しており、集電体との界面からCu6Sn5粒子が植設されるように成長してCu6Sn5層(活物質層)を構成している。そして、このCu6Sn5粒子により構成される活物質は、内部に大きな粒子間間隙が存在し、その間隙により充放電時の体積変化が緩和される。したがって、活物質と集電体との間の良好な化学結合により強固な電気伝導パスが維持され、従来の材料では実現できない高いサイクル特性が得られる。
本実施形態の負極材は、銅合金からなる集電体の上に、CuSn合金層が形成されたものである。
集電体は、銅合金からなり、Ni、Co、Siから選ばれた1以上の元素が合計1質量%以上5質量%以下添加されている。
CuSn合金層は、後述するように集電体の上にSnめっき層を形成してリフロー処理した後に、残存Sn皮膜を除去することにより形成されたものであり、Cu6Sn5層を主成分とし、Cu6Sn5層の下層に、Cu3Sn層がわずかに存在している場合がある。
Cu6Sn5層は、集電体中に添加されたNi、Co、Siが集電体近傍領域に固溶した微細・柱状型粒子から構成されており、局部山頂の平均間隔Sが1.25μm以下である表面形状を有する。この微細な柱状型粒子で構成されるCu6Sn5層は、粒子間の間隙が大きく、その間隙の存在により、充放電時の体積膨張及び収縮を吸収してサイクル特性を向上させ、歪みの発生を緩和して集電体からの剥離を防止することができる。
具体的には、図1、図3に示す表面形状、図2、図4に示す断面構造を有しており、集電体との界面からCu6Sn5粒子が植設されるように成長してCu6Sn5層(活物質層)を構成している。そして、このCu6Sn5粒子により構成される活物質は、内部に大きな粒子間間隙が存在し、その間隙により充放電時の体積変化が緩和される。したがって、活物質と集電体との間の良好な化学結合により強固な電気伝導パスが維持され、従来の材料では実現できない高いサイクル特性が得られる。
Cu6Sn5層が、図5と図6に示すような粗大で粒子間間隙の小さい粒子で占められ、層の局部山頂の平均間隔Sが1.25μm以上となる場合は、充放電時の体積膨張及び収縮を緩和する効果に乏しい。この局部山頂の平均間隔Sは、粗さ曲線から、その平均線の方向に基準長さだけ抜き取り、隣り合う局部山頂間に対応する平均線の長さを求め、この多数の局部山頂間の平均値を表わしたものである。この局部山頂の平均間隔Sを0.7μm未満とするのは製造技術上困難である。
図1や図3に示すような、微細・柱状型粒子からなるCu6Sn5層を形成するためには、Ni、Co、又はSiの存在が不可欠であり、集電体への含有率が1質量%未満であると、効果が不十分であり、5質量%を超えるとコスト増を招くとともに集電体の電気伝導度を低下させる。
また、これらNi又はSiを集電体に含有させたことにより、Cu6Sn5の集電体近傍領域には集電体中に添加した元素(Ni、Si、Coから選ばれた1以上の元素)が固溶しており、集電体とCu6Sn5層の界面において非活物質であるCu3Snの生成・成長が抑制されている。
また、これらNi又はSiを集電体に含有させたことにより、Cu6Sn5の集電体近傍領域には集電体中に添加した元素(Ni、Si、Coから選ばれた1以上の元素)が固溶しており、集電体とCu6Sn5層の界面において非活物質であるCu3Snの生成・成長が抑制されている。
一方、CuSn合金層におけるCu3Sn層が占める体積率は15%以下である。Cu3Sn層はCu6Sn5層に比べて粗大な粒子により構成されており、このCu3Sn層が占める体積率が大き過ぎると、Cu6Sn5層の柱状型粒子による体積変化の緩和作用が損なわれるおそれがあるので、Cu3Sn層が占める体積率としては15%以下が好ましい。
因みに、集電体が前述したNi、Co、およびSiの含有量を規制していない銅又は銅合金である場合には、Snめっき層を形成してリフロー処理すると、集電体上に形成されるCuSn合金層中に占めるCu3Sn層の体積率が15%を超える。例えば、集電体中にNi、CoおよびSiが添加されていない場合には、集電体にSnめっき層を形成してリフロー処理すると、集電体上に成長する金属間化合物はCu6Sn5とCu3Snであり、CuSn合金層中のCu3Snの体積率が20〜35%となる。このCu3Snは活物質として作用せず、単なるデッドボリュームとなるため、電極の体積増加の観点で好ましくない。さらに、Cu3Snが生成・成長すると活物質であるCu6Sn5の高速成長と微細柱状化も妨げられ、必要な粒子間間隙を形成することができなくなる。本実施形態のCuSn合金層は、Cu3Sn層の生成・成長を抑制して、15%以内の体積率とすることにより、Cu6Sn5層を有効に成長させることができる。
因みに、集電体が前述したNi、Co、およびSiの含有量を規制していない銅又は銅合金である場合には、Snめっき層を形成してリフロー処理すると、集電体上に形成されるCuSn合金層中に占めるCu3Sn層の体積率が15%を超える。例えば、集電体中にNi、CoおよびSiが添加されていない場合には、集電体にSnめっき層を形成してリフロー処理すると、集電体上に成長する金属間化合物はCu6Sn5とCu3Snであり、CuSn合金層中のCu3Snの体積率が20〜35%となる。このCu3Snは活物質として作用せず、単なるデッドボリュームとなるため、電極の体積増加の観点で好ましくない。さらに、Cu3Snが生成・成長すると活物質であるCu6Sn5の高速成長と微細柱状化も妨げられ、必要な粒子間間隙を形成することができなくなる。本実施形態のCuSn合金層は、Cu3Sn層の生成・成長を抑制して、15%以内の体積率とすることにより、Cu6Sn5層を有効に成長させることができる。
CuSn合金層の平均厚みは0.4μm以上4μm以下である。CuSn合金層の平均厚みは、薄いほど生産性が良いが、単位面積当たりの容量が小さくなるため、0.4μm以上とするのが好ましい。一方、厚いと電池容量は大きくなるが、熱処理に時間がかかるため生産性が悪く、またサイクル特性の向上を担う粒子間間隙も減少する傾向が大きいので、4μmまでの厚みが好ましい。
次に、この負極材の製造方法について説明する。
集電体として、Cu−Ni−Si−Zn系合金等、Ni、Co、Siから選ばれた1以上の元素を合計1質量%以上5質量%以下含有する銅合金からなる集電体を用意する。例えばNiを2.1質量%、Siを0.5質量%含有する銅合金などが好適である。この板材に脱脂、酸洗等の処理をすることによって表面を清浄にした後、Snめっきを施す。なお、Snめっき前に集電体の粗面化処理を実施しても良い。
Snめっき層形成のためのめっき浴としては、一般的なSnめっき浴を用いればよく、例えば硫酸(H2SO4)と硫酸第一錫(SnSO4)を主成分とした硫酸浴を用いることができる。めっき浴の温度は15〜35℃、電流密度は1〜10A/dm2である。このSnめっき層の膜厚は1〜6μmである。
このSnめっきを施した後、加熱してリフロー処理する。リフロー処理条件としては、特に制限されるものではないが、望ましくは還元雰囲気中、集電体表面温度が240〜350℃となる条件で1〜60秒加熱後、急冷である。めっき厚が薄いほど保持時間は少なく、厚くなると保持時間を長くする。240℃未満の温度、あるいは保持時間が短すぎる加熱ではSnの溶解が進みにくく、350℃を超える温度、あるいは保持時間が長すぎる加熱ではCuSn合金結晶が大きく成長してしまい、所望の形状を得ることが難しくなる。
このリフロー処理後に表面に残る未反応Sn皮膜を剥離除去する。この未反応Snの剥離の方法については、特に制限されるものではないが、薬液浸漬剥離と電解剥離が一般的である。薬液による剥離に関しては、アルキルスルホン酸などからなる酸性浴の使用がエッチング速度の点から好ましい。なお、良好なサイクル特性が損なわれない範囲であれば、CuSn合金層表面に未反応Snがわずかに残留していても良い。
集電体として、Cu−Ni−Si−Zn系合金等、Ni、Co、Siから選ばれた1以上の元素を合計1質量%以上5質量%以下含有する銅合金からなる集電体を用意する。例えばNiを2.1質量%、Siを0.5質量%含有する銅合金などが好適である。この板材に脱脂、酸洗等の処理をすることによって表面を清浄にした後、Snめっきを施す。なお、Snめっき前に集電体の粗面化処理を実施しても良い。
Snめっき層形成のためのめっき浴としては、一般的なSnめっき浴を用いればよく、例えば硫酸(H2SO4)と硫酸第一錫(SnSO4)を主成分とした硫酸浴を用いることができる。めっき浴の温度は15〜35℃、電流密度は1〜10A/dm2である。このSnめっき層の膜厚は1〜6μmである。
このSnめっきを施した後、加熱してリフロー処理する。リフロー処理条件としては、特に制限されるものではないが、望ましくは還元雰囲気中、集電体表面温度が240〜350℃となる条件で1〜60秒加熱後、急冷である。めっき厚が薄いほど保持時間は少なく、厚くなると保持時間を長くする。240℃未満の温度、あるいは保持時間が短すぎる加熱ではSnの溶解が進みにくく、350℃を超える温度、あるいは保持時間が長すぎる加熱ではCuSn合金結晶が大きく成長してしまい、所望の形状を得ることが難しくなる。
このリフロー処理後に表面に残る未反応Sn皮膜を剥離除去する。この未反応Snの剥離の方法については、特に制限されるものではないが、薬液浸漬剥離と電解剥離が一般的である。薬液による剥離に関しては、アルキルスルホン酸などからなる酸性浴の使用がエッチング速度の点から好ましい。なお、良好なサイクル特性が損なわれない範囲であれば、CuSn合金層表面に未反応Snがわずかに残留していても良い。
表2に示すように規定量のNi、Co、およびSiが添加された銅合金集電体を用意した。比較例として、規定量のNi、Co、およびSiを含有しない銅による集電体も用意した(比較例1,2)。
これら集電体を脱脂、酸洗した後、実施例1〜6、比較例1,2の集電体にSnめっきを行った。Snめっきの条件は、実施例1〜5、比較例1,2とも同じで、表1に示す通りとした。また、比較例3,4では、Snめっき、リフロー、未反応Snの剥離という工程に代えて表1に示す条件でCuSn合金めっきを施し、集電体上にCu6Sn5層を形成した。表1中、Dkはカソードの電流密度、ASDはA/dm2の略である。
これら集電体を脱脂、酸洗した後、実施例1〜6、比較例1,2の集電体にSnめっきを行った。Snめっきの条件は、実施例1〜5、比較例1,2とも同じで、表1に示す通りとした。また、比較例3,4では、Snめっき、リフロー、未反応Snの剥離という工程に代えて表1に示す条件でCuSn合金めっきを施し、集電体上にCu6Sn5層を形成した。表1中、Dkはカソードの電流密度、ASDはA/dm2の略である。
めっき処理後、実施例1〜6及び比較例1,2については、リフロー処理として、還元雰囲気中で、集電体表面温度が270℃となる条件で3〜30秒間加熱後、水冷した。リフロー処理後の未反応Snはアルキルスルホン酸などからなる酸性浴に浸漬して剥離した。比較例3,4は、CuSn合金めっきによってCu6Sn5層を形成した負極である。
CuSn合金層の局部山頂の平均間隔Sは、JIS B0601:1994に準拠して算出した。株式会社キーエンス製レーザー顕微鏡(VK−9700)を用いて対物レンズ150倍(測定視野94μm×70μm)の条件で計10点測定した平均値を、各試料の局部山頂の平均間隔Sとした。また、走査型イオン顕微鏡(SIM)により断面組織を観察して、CuSn層全体に占めるCu3Snの体積率を測定した。
その結果を表2に示す。
CuSn合金層の局部山頂の平均間隔Sは、JIS B0601:1994に準拠して算出した。株式会社キーエンス製レーザー顕微鏡(VK−9700)を用いて対物レンズ150倍(測定視野94μm×70μm)の条件で計10点測定した平均値を、各試料の局部山頂の平均間隔Sとした。また、走査型イオン顕微鏡(SIM)により断面組織を観察して、CuSn層全体に占めるCu3Snの体積率を測定した。
その結果を表2に示す。
また、作製した負極により半電池を組んで充放電サイクル試験を実施した。
(充放電サイクル試験)
作製した負極を用いて半電池を組み、充放電サイクル試験を行った。対極および参照極にはリチウム金属を用い、電解液には0.9M濃度で六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)と0.1M濃度でホウフッ化リチウム(LiBF4)を溶解した、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とメチルエチルカーボネート(MEC)とフルオロエチレンカーボネート(FEC)を体積比30:60:5:5で混合した溶媒を用いた。充電は電圧が5mVとなるまで0.5mA/cm2の定電流条件で実施し、その後、電流が0.01mA/cm2になるまで5mVの定電圧条件で実施した。
放電は電圧が2Vになるまで0.5mA/cm2の定電流条件とした。充電と放電を各1回実施した状態を1サイクルとし、最大80サイクルまでの充放電試験を実施し、5サイクル目の放電容量に対する10サイクル目、20サイクル目、50サイクル目、80サイクル目のそれぞれの放電容量の比(容量維持率)を求めた。
その結果を表3に示す。
(充放電サイクル試験)
作製した負極を用いて半電池を組み、充放電サイクル試験を行った。対極および参照極にはリチウム金属を用い、電解液には0.9M濃度で六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)と0.1M濃度でホウフッ化リチウム(LiBF4)を溶解した、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とメチルエチルカーボネート(MEC)とフルオロエチレンカーボネート(FEC)を体積比30:60:5:5で混合した溶媒を用いた。充電は電圧が5mVとなるまで0.5mA/cm2の定電流条件で実施し、その後、電流が0.01mA/cm2になるまで5mVの定電圧条件で実施した。
放電は電圧が2Vになるまで0.5mA/cm2の定電流条件とした。充電と放電を各1回実施した状態を1サイクルとし、最大80サイクルまでの充放電試験を実施し、5サイクル目の放電容量に対する10サイクル目、20サイクル目、50サイクル目、80サイクル目のそれぞれの放電容量の比(容量維持率)を求めた。
その結果を表3に示す。
この表3に示す結果より、実施例のものは、比較例に比べて充放電を繰り返しても容量低下が少なく、高いサイクル特性を示していることがわかる。実施例1〜4、6(Cu3Sn層が占める体積率が15%以下)は特に高いサイクル特性を示している。
また、図1は実施例1の表面SEM像、図2は実施例1の断面SIM像、図3は実施例2の表面SEM像、図4は実施例2の断面SIM像、図5は比較例1の表面SEM像、図6は比較例1の断面SIM像、図7は比較例3の表面SEM像、図8は比較例3の断面SIM像である。比較例では、Cu6Sn5層が粒子間間隙の乏しい粗大な粒子で占められている。一方、実施例の場合は大きな粒子間間隙を有する微細・柱状型Cu6Sn5粒子が成長しているため、急峻な凹凸形状を有するCu6Sn5層が表面に形成されていることが分かる。走査型透過電子顕微鏡とエネルギー分散型X線分光器を用いた分析の結果、実施例1では、Cu6Sn5層のうち、集電体に近接する約250nmの領域に、NiとSiがそれぞれ2±1.5質量%固溶していることが分かった。また、実施例6では、Cu6Sn5層のうち、集電体に近接する約200nmの領域に、Coが3±2質量%固溶していることが分かった。
また、図1は実施例1の表面SEM像、図2は実施例1の断面SIM像、図3は実施例2の表面SEM像、図4は実施例2の断面SIM像、図5は比較例1の表面SEM像、図6は比較例1の断面SIM像、図7は比較例3の表面SEM像、図8は比較例3の断面SIM像である。比較例では、Cu6Sn5層が粒子間間隙の乏しい粗大な粒子で占められている。一方、実施例の場合は大きな粒子間間隙を有する微細・柱状型Cu6Sn5粒子が成長しているため、急峻な凹凸形状を有するCu6Sn5層が表面に形成されていることが分かる。走査型透過電子顕微鏡とエネルギー分散型X線分光器を用いた分析の結果、実施例1では、Cu6Sn5層のうち、集電体に近接する約250nmの領域に、NiとSiがそれぞれ2±1.5質量%固溶していることが分かった。また、実施例6では、Cu6Sn5層のうち、集電体に近接する約200nmの領域に、Coが3±2質量%固溶していることが分かった。
Claims (4)
- 銅合金からなる集電体の表面にCuSn合金層が形成されたリチウムイオン二次電池用負極材であって、前記集電体にはNi、Co、Siから選ばれた1以上の元素が合計1質量%以上5質量%以下添加されており、前記CuSn合金層はCu6Sn5層を主成分とし、該Cu6Sn5層の前記集電体側界面付近に前記Ni、Co、Siから選ばれた1以上の元素が固溶しており、前記Cu6Sn5層の局部山頂の平均間隔Sが1.25μm以下であることを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極材。
- 前記CuSn合金層におけるCu3Sn粒子が占める体積率が15%以下であることを特徴とする請求項1記載のリチウムイオン二次電池用負極材。
- 前記CuSn合金層の平均厚みが0.4μm以上4μm以下であることを特徴とする請求項1または2記載のリチウムイオン二次電池用負極材。
- 銅合金からなる集電体上に、Snを電析した後に、加熱してリフロー処理し、該リフロー処理後に未反応で残るSn皮膜の剥離除去処理を行うことにより、前記集電体の上にCuSn合金層を形成したリチウムイオン二次電池用負極材を製造する方法であって、前記集電体として、Ni、Co、Siから選ばれた1以上の元素を1質量%以上5質量%以下含有した銅合金を用いることを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極材の製造方法。
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2012
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