JP2010282959A - 2次電池用負極、電極用銅箔、2次電池および2次電池用負極の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】銅箔を用いた集電体基材の片面または両面にシリコン系活物質皮膜が形成されている、非水溶媒電解液を用いる2次電池用の負極であって、前記集電体基材上に、1g/m2〜14g/m2のシリコン系活物質皮膜が形成され、前記シリコン系活物質皮膜が形成された負極表面の電気二重層容量の逆数が0.1〜3cm2/μFであることを特徴とする、非水溶媒電解液2次電池用負極である。また、この負極を用いたことを特徴とする非水溶媒電解液を用いた2次電池である。
【選択図】図3
Description
また、年々性能を向上させてきたカーボン系負極も理論比容量の限界に近付きつつあり、現用の正負活物質系統の組み合わせでは、もはや電源容量の大きな向上は見込めなくなっている。そのため、今後の更なる電子機器の高機能化と長時間携帯化の要求や、電動工具、無停電電源、蓄電装置などの産業用途、並びに電気自動車用途への搭載には限界が見えている。
ところで、2次電池に要求される基本性能は、充電により保持できる電気容量が大きいことと、充電と放電を繰り返す使用サイクルによっても、この電気容量の大きさをできる限り維持できることである。初めの充電容量が大きくても、充放電の繰り返しによって、充電できる容量や放電可能な容量がすぐに小さくなっては短寿命であり、2次電池として用いる価値は小さい。ところが、Siをはじめとする金属系負極ではいずれも充放電サイクル寿命が短いことが問題となっている。この原因に集電体と活物質との密着性の小さいことが挙げられ、これに対する対策として、集電体表面の形状を規定することや、集電体成分が活物質皮膜に拡散または合金化した構成が用いられている(例えば、特許文献1、または2参照)。また、本発明者らは、集電体用銅箔表面の誘電体層と電気二重層容量の逆数との関係を把握し、2次電池負極集電体用銅箔を発明した(特許文献3参照)。
1/C=A・d+B ・・・・(1)
(dは銅箔表面に形成されている分極性層の厚み、A、Bは定数)
本発明者らは、先にこの関係により集電体用銅箔表面の誘電体層と電気二重層容量の逆数との関係を把握し、2次電池負極集電体用銅箔を発明、汎用的に実用されるに至った(特許文献3参照)。ところで、式(1)の定数Aには表面積の項が含まれ、電気二重層容量は表面積に比例するので、単位面積当たりの値として評価される。次のように書き換えることもできる。
1/C=A’・d・1/S+B’ ・・・・(2)
(dは銅箔表面に形成されている分極性層の厚み、Sは実表面積、A’、B’は定数)
従って、表面形状によって相違する単位面積当たりの実表面積の大きさを表す指標のひとつに成り得る。他方、前記の誘電体皮膜による電気二重層容量の値も影響するので、すべてに単純な傾向が得られるわけではない。例えば、誘電体層を生成し易い皮膜成分か、生成し難い皮膜成分かによって相違する。誘電体層が厚いと、その容量は小さくなり、その逆数の値は大きくなるので、一定の測定条件に基づいても、電極や電極表面により、これらの大きさの水準が相違すると考え得る。しかし、一定の成分や試料の元では、表面積の大小に従って、生成する自然酸化皮膜量も変化するが、測定試料の見かけの面積は一定であるから、実表面積の効果とそれによる誘電体層の影響は、電気二重層容量またはその逆数の値に表れることになる。
(1)銅箔を用いた集電体基材の片面または両面にシリコン系活物質皮膜が形成されている、非水溶媒電解液を用いる2次電池用の負極であって、前記集電体基材上に、1g/m2〜14g/m2のシリコン系活物質皮膜が形成され、前記シリコン系活物質皮膜が形成された負極表面の電気二重層容量の逆数が0.1〜3cm2/μFであることを特徴とする、非水溶媒電解液2次電池用負極。
(2)前記集電体基材の活物質皮膜形成面が、非平滑面または非光沢面であり、前記集電体基材の活物質皮膜形成面は、表面粗さRz(JIS B0601−1994 十点平均粗さ)が1.5μm以上の粗面を有し、前記集電体基材の活物質皮膜形成面の電気二重層容量の逆数が0.03〜0.1cm2/μFを有することを特徴とする、(1)に記載の2次電池用負極。
(3)前記集電体基材と前記シリコン系活物質皮膜との間に、リンまたはボロンを含有する層が1層以上形成されていることを特徴とする、(1)または(2)に記載の2次電池用負極。
(4)前記シリコン系活物質皮膜は、リンを含み、前記活物質皮膜全体に対するリン含有量が0.1原子%以上30原子%以下であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の2次電池用負極。
(5)前記シリコン系活物質皮膜は、さらに酸素を含み、前記活物質皮膜全体に対する酸素の含有量が1原子%以上50原子%以下であることを特徴とする(4)に記載の2次電池用負極、
(6)前記集電体基材の活物質皮膜形成面上に、ニッケルを0.01〜0.5g/m2含有する層または亜鉛を0.001〜0.1g/m2含有する層の少なくとも一方が形成された耐熱性層または耐熱性バリア皮膜を有することを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の二次電池用負極。
(7)さらに前記耐熱性層の上層に防錆層および/またはシランカップリング処理層が形成され、さらにその上層に前記シリコン系活物質皮膜が形成されていることを特徴とする、(6)に記載の2次電池用負極。
(8)前記耐熱性層における前記亜鉛が単層亜鉛として存在することを特徴とする、(6)または(7)に記載の2次電池用負極。
(9)前記耐熱性層における前記亜鉛が前記集電体基材またはニッケル層に拡散していることを特徴とする、(6)または(7)に記載の2次電池用負極。
(10)(1)〜(9)のいずれかに記載の2次電池用負極に用いられ、日本工業規格で規定される表面粗さRz(JIS B0601−1994 十点平均粗さ)が1.5μm以上20μm以下の粗面またはこれと同等の粗面を有することを特徴とする電極用銅箔。
(11)(1)〜(9)のいずれか1項に記載の負極を用いたことを特徴とする非水溶媒電解液を用いた2次電池。
(12)前記非水溶媒電解液が、フッ素を含む非水溶媒を含有することを特徴とする(11)に記載の2次電池。
(13)粗面を有する銅箔を用いた集電体基材の片面または両面に、CVD(化学的気相成長)法またはEB(電子ビーム)蒸着法によって1g/m2〜14g/m2のシリコン系活物質皮膜を形成する工程を備え、前記シリコン系活物質皮膜を形成した負極表面の電気二重層容量の逆数を0.1〜3cm2/μFとすることを特徴とする、非水溶媒電解液2次電池用負極の製造方法。
(14)前記CVD法において、さらにフォスフィンガスを連続供給し、シリコン系活物質被膜を形成する前記工程において、リンを含有するシリコン系活物質被膜を形成することを特徴とする(13)に記載の2次電池用負極の製造方法。
(15)シリコン系活物質被膜を形成する前記工程の後、大気酸化または熱処理により前記シリコン系活物質皮膜に酸素を導入する工程をさらに具備することを特徴とする(13)または(14)に記載の2次電池用負極の製造方法。
を提供するものである。
また、CVD法や電子ビーム蒸着法によるシリコン系皮膜を用いるので、粗面にもかかわらず、均一均質な活物質皮膜を工業上経済的に形成することができる。また、シリコン系活物質皮膜の上層または下層の少なくとも一方に、リンまたはボロンを含有する層を形成すると、活物質の導電性が向上し、充放電に際してのLiイオンの合金化と脱離の移動が助けられ、特に高レートでの充放電に際して効果があると考えられる。シリコン系活物質皮膜にリンを含むと導電性が向上しLiイオンの挿入脱離がし易く、またさらに酸素を含有するとLiイオンの挿入脱離による体積変化を緩和するので、充放電サイクル寿命が向上する。
また、集電体を構成する銅箔上に、耐熱性と防錆能を有する層と、さらにシランカップリング処理層を形成すると、活物質形成までの経時劣化や製膜時高温の耐熱性を保持し、形成活物質皮膜と集電体表面との密着性が向上する。また、集電体成分の銅がシリコン系活物質皮膜へ拡散することを抑止するので、活物質と銅の拡散合金化による充放電容量の低下を防止し、本来有するシリコンの高い比容量を得ることができる。これら前記の負極を用いた2次電池は、高容量で長寿命を得ることができ、さらに電解液の非水溶媒にフッ素を含有する電解液を用いると、充放電繰り返しによっても容量低下のより少ない2次電池を得ることができる。
さらには、集電体基材に使用する銅箔の引っ張り強度が300MPa〜1000MPa(1GPa)の範囲にあることが望ましい。シリコンなどの高容量が得られる活物質は、リチウムイオンとの合金化によって、2〜4倍の体積膨張を生じる。そのため、充電時の合金化では、集電体基材と活物質皮膜の界面において、活物質の体積膨張により銅箔を伸ばす応力や歪みが生じる。一方で、放電時の脱合金化では、銅箔を縮める応力や歪みが生じる。銅箔の強度が小さい場合には、この充放電繰り返しサイクルにより、銅箔にシワを生じ、ひどい場合には銅箔が破断する。つまり、サイクル寿命が小さくなる。一方、銅箔の強度が1GPaを超える場合には、銅箔が硬くなり過ぎ、かえって膨張収縮に追従できる伸び率が小さくなってしまう。
また、集電体基材に用いられる銅箔については、表面が平滑ではなく、また光沢を有さず、少なくとも活物質を形成する表面が粗面を呈する銅箔のみを用いる。これらの粗面は、銅箔の片面に形成されていても、両面に形成されていてもよい。銅箔には、電解銅箔と圧延銅箔の2種類があり、圧延銅箔の場合にはそれ自体は両面光沢を有する平滑箔に相当するので、少なくとも活物質を形成する面には、例えば、エッチングやめっき等による粗面化処理が必要である。電解銅箔の両面光沢箔の場合にも同様である。
圧延銅箔は、例えば、純銅材料を溶解鋳造し、得られる鋳塊を、常法により、順に、熱間圧延、冷間圧延、均質化処理、および脱脂する工程により、所定箔厚に製造することができる。電解銅箔は、プリント回路用銅箔原箔を銅箔の基材とすることができ、ステンレス製やチタン製の回転ドラムを硫酸と銅イオンを主体とする酸性電解液中にその一部を浸漬還元電解することにより電着される銅箔を連続的に剥離、巻き取ることにより製造される。所定箔厚は電解電流とドラム回転速度の設定により得られる。電解銅箔の場合には回転ドラム面電着面側(回転ドラム面側)は常に光沢平滑面であるが、電解液面側は粗面の場合と光沢平滑面の場合といずれの場合もある。粗面の場合にはそのまま本発明にも用いることが可能であり、比較的好適に活物質形成面に用いることができる。いずれの銅箔も、その両面に活物質形成する場合には、少なくとも片面の粗面化処理が必要になる。前記の粗面化処理のうち、エッチングでは塩素イオン含有電解液による交流エッチングや、めっきではプリント回路用銅箔において常法の、硫酸銅系電解液による限界電流密度前後の電流密度を用いた電解銅めっきにより、微小銅粒子を生成電着させる粗化処理を用いることができる。本発明の2次電池用負極の集電体に用いられる微細な表面形状を有する銅箔表面を得るには、特に後者が有効である。硫酸と銅を主成分とする水溶液において、通常の銅めっき液より銅濃度を低めに抑えた電解液に浸漬し、室温域で高めの電流密度にてカソード電解を行うことにより、微小銅粒子が銅箔表面上に還元生成、及び処理時間に応じて成長する(いわゆる、焼けめっき)。次いで、直ちに一般的な銅めっき、高めの銅濃度を有する硫酸銅系電解液を加温した一般的な低めか中程度の電流密度にて電解めっきを行い、直前の生成銅粒子を銅箔表面に固着電着させる。以上の2段階の電解処理における、銅濃度や成分、液温、および電流密度と電解時間等を調整することにより、微細表面形状を有する集電体用の銅箔を製造することができる。
シリコン系皮膜全体に対する酸素の含有量は1原子%以上50原子%以下が好ましく、充放電効率とサイクル性能やリン濃度との関係から選択される。1原子%未満ではLiイオンの挿入脱離による体積変化抑制効果が認められず、50原子%を超える導入濃度では、シリコン量に対して過剰となり過ぎて、活物質の厚さや体積が増大したり、充放電容量が小さくなったり、或いは酸素とLiイオンとの結合量増加による初期不可逆容量が大きくなったりして、正極とのバランスが崩れて、二次電池とすることができない。
また、他の酸素を導入したシリコン系皮膜の製膜方法として、スパッタリングや酸素を導入した真空蒸着などに拠ることもできる。Siをターゲットとするスパッタリング装置や蒸着装置を用いて、製膜領域の雰囲気をアルゴン(Ar)と酸素(O2)のガス濃度により調整制御することにより、所望の酸素量を含有する反応性スパッタリングSi膜や蒸着膜を形成することができる。さらには、SiOを直接ターゲットとするスパッタリングや蒸着によって、酸素含有割合を制御したSi膜を製膜することも可能である。この場合には、SiOと共にSi単体やSiO2のターゲットも酸素濃度制御のために用いることができる。また、前記の製膜領域における雰囲気の酸素ガス濃度制御を併用することで、さらに微量の酸素濃度含有Si製膜制御が可能となる。
また、銅箔粗面上か、または前記ニッケルの上層に、少なくとも亜鉛を形成する方法も好適である。亜鉛は、銅箔面上層に拡散しているか、または亜鉛単層で銅箔面上またはニッケル皮膜上に存在している。亜鉛は極めて容易に銅に拡散合金化し、またはニッケル上に存在し、銅やニッケルの酸化、特に高温酸化を防止する耐熱性を付与することができる。その総量は少な過ぎては前記の効果が小さく、多過ぎては銅やニッケルの集電性を低下させたり、上層皮膜との間に濃化して却って密着性を低下させたりする場合があり、好適には0.003〜0.05g/m2の範囲である。亜鉛は前記のように銅やニッケルへの拡散や表層への存在によって耐熱性を付与するが、亜鉛が多過ぎると、上層活物質層への亜鉛自身の拡散もあるので、考慮が必要である。また、亜鉛形成後にニッケルを含む層を形成する組み合わせも好適である。なお、ニッケルと亜鉛の形成方法は、湿式法や乾式法などの各種の形成方法を用いることが可能であるが、経済性と均一均質皮膜が電解条件によって容易に得られるため、公知の硫酸浴等を用いた電気めっき法が推奨できる。
また、本発明において、耐熱性層に代えて、耐熱性バリア皮膜を使用してもよい。耐熱性バリア皮膜は、ニッケルを0.01〜0.5g/m2含有する層または亜鉛を0.001〜0.1g/m2含有する層の少なくとも一方を有する。
集電体銅箔原箔1の山状粗面に、さらに微細銅粒子4による粗面化処理を施したものを集電体基材として用いる。この表面に耐熱性層と防錆処理層またはシランカップリング処理層の2を形成したのち、シリコン系活物質皮膜3が設けられている。
集電体銅箔原箔5の両面平滑または光沢の片方の面に、さらに微細銅粒子4による粗面化処理を施したものを集電体基材として用いる。この表面に耐熱性層と防錆処理層またはシランカップリング処理層の2を形成したのち、シリコン系活物質皮膜3が設けられている。
集電体銅箔原箔5の両面平滑または光沢の両方の面に、さらに微細銅粒子4による粗面化処理を施したものを集電体基材として用いる。この両方の粗面化表面に耐熱性層と防錆処理層またはシランカップリング処理層の2をそれぞれ形成したのち、それぞれの面にシリコン系活物質皮膜3が設けられており、図3の片面皮膜構成を両面に構成した形態である。なお、図3、図4では、微細銅粒子4は一層のみ積層して描かれているが、実際に粗面化処理を施すと、微細銅粒子4は複数層に積層することが多い。
以下に、本発明を実施例により詳細に説明する。本実施例では図1〜3に説明した片面皮膜構成の実施例を示すが、これらに限定されることはなく、例えば、片面の皮膜形成処理を両面に施した、図4の両面皮膜形成形態においても同様に実施することができる。
まず、試験評価用の本発明によるシリコン系負極試料と、これに用いる負極集電体、および比較に用いるシリコン系負極試料を以下のように作製した。
集電体銅箔に用いる銅箔原箔(表面処理していない銅箔基体)には、各種厚みの圧延銅箔(日本製箔製)と電解銅箔(古河電工製)を用いた。圧延箔原箔は両面光沢タイプ12μmを、電解箔原箔は両面光沢タイプの12μm、並びに片面光沢タイプ12μmと18μmを使用した。これらの原箔の表面を粗面化する場合には、プリント回路用途銅箔において公知の硫酸銅系水溶液を用いた銅めっきである(a)銅微粒子成長めっき(限界電流密度以上か、それに近い高電流密度で行う、いわゆる焼けめっき)と(b)通常の銅平滑状めっき(付与微粒子が脱落しないように限界電流密度未満で行う、一般の銅めっき)、による粗化処理を行った。また、耐熱性層を設ける処理として、(c)公知の硫酸ニッケル系めっき液を用いたニッケルめっき、または(d)公知の硫酸亜鉛系めっき液による亜鉛めっきを実施した。さらに、防錆処理には(e)ベンゾトリアゾール水溶液への浸漬か、(f)三酸化クロム水溶液中での電解を用い、シランカップリング処理には(g)シランカップリング剤水溶液への浸漬処理とした。これらの銅箔を集電体として用いるため、シリコン系活物質を製膜する前に3ヶ月間室内保管をした。なお、これら集電体用銅箔の180℃に5分間保持しての伸び率をテンシロン試験機による引張試験にて測定し、表面粗さRzをJIS B0601(1994年版)に従った触針式粗さ試験機(小坂研究所製)にて測定した。耐熱性層の亜鉛とニッケル量は、単位面積当たりの試料表面皮膜を溶解した水溶液をICP(誘導結合プラズマ)発光分光分析することにより測定した。シリコン系活物質皮膜の製膜を、下記(h)〜(l)の方法により実施し、実施例1〜43、比較例1〜15とした。シリコンの製膜は、予め求めた製膜速度に基づいた製膜厚さと製膜時間の関係から各試料に付き、所定時間製膜を行い、製膜後にサンプル断面のSEM(走査型電子顕微鏡)像観察から確認を行った。また、シリコンの製膜前後での単位面積当たりの質量測定から、負極活物質であるシリコン製膜量を求めた。そして、製膜したシリコン系皮膜をFT−IR(フーリエ変換赤外分光光度計)を用いた分析から、水素の結合状態分析を行った。なお、製膜前後の表面の電気二重層容量を直読式電気二重層容量測定器(北電子社製)により、電解液に0.1N硝酸カリウム水溶液を用い、ステップ電流50μA/cm2条件にて測定し、その逆数(1/C)を算出出力した。以上の、各試料に用いた集電体銅箔の仕様を表1に、また製膜前の室内保管後の外観異常と製膜仕様を表2に、それぞれ後掲した。また、実施例9、11を用いて、下記(m)の方法により活物質皮膜に酸素を導入した実施例44、45を作製した。後掲の試験評価結果と共に表4に示した。シリコン系活物質へ含有させたリンや酸素は前記のICP分析に拠った。
(f)防錆処理2:70g/dm3三酸化クロム水溶液、pH12、1C/dm3、カソード電解
(g)シランカップリング処理:クリロキシ系シランカップリング剤(信越化学製)4g/dm3水溶液への浸漬
(i)シリコン製膜法2:シャワーヘッド構造のプラズマ電極を備えた平行平板型CVD(PECVD)装置(放電周波数60MHz)により、水素希釈10%のシランガス100sccm供給流量、集電体温度200℃、にて製膜した。
(j)シリコン製膜法3:EB(電子ビーム)ガンとシリコン蒸発源を備えた蒸着装置(アルバック社製)により、高純度シリコン原料をEBにより200W加熱昇華させて集電体上に堆積させた。
(k)シリコン製膜法4:高純度シリコン原料、スパッタカソードを備えたスパッタリング装置(アルバック社製)により、アルゴンガス(スパッタガス)80sccm、高周波出力1kWにて集電体上に付着形成させた。
(l)シリコン製膜法5:高純度シリコン原料、抵抗加熱源を備えた真空蒸着装置(アルバック社製)により、原料を抵抗加熱溶融揮発させて製膜させた。
次に、前記のように作製した、本発明によるシリコン系負極試料、および比較に用いるシリコン系負極試料の試験評価を、次のように実施した。
前記の負極試料を20mm径に打ち抜き、これを試験極とし、リチウム箔を対極と参照極に用いた3極式セルを、非水溶媒電解液に、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)を3:7の容量比の溶媒に、1Mの六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を溶解させた電解液を用いて、湿度7%以下の乾燥雰囲気25℃に密閉セルとして組み立てた。但し、一部の実施例では、フッ素をその化学構造に含む非水溶媒である、フルオロエチレンカーボネート(FEC)とメチルトリフルオロエチルカーボネート(MFEC)を1:3の容量比を有する溶媒を用いた。初回充電処理は、0.1Cレート定電流で、リチウムの酸化還元電位を基準として+0.02Vの電位まで行い、このとき得られた初回充電容量を各試料に付き試験測定し、活物質シリコンの単位質量当たりに換算した。これに続く、初回放電処理には、0.1Cレート定電流で、前記の同じリチウム電位基準に対して1.5Vまで放電させ、同様にその初回放電容量をそれぞれに付き測定し、シリコン単位質量当たりに換算した。また、先に測定しておいたシリコン活物質の製膜質量と放電電流量から、初回の実放電容量値を求めた。初回充放電処理終了後に、充放電レートを0.2Cとして、前記の初回充放電処理の各終了電位まで、充放電を繰り返すサイクルを50回実施した。50サイクル終了時の放電容量をそれぞれの試料に付き求め、単位質量当たりに換算した。以上の、初回の充放電容量と実放電容量値、並びに50サイクル後の放電容量値を、各試料について表3に示した。実施例4、9、11、44〜45のサンプルについては、充電容量を1000mAh/gに規制して、前記同様に放電させる容量規制による充放電サイクル試験を1千サイクル実施して、表4に示した。
各試料の初回充電容量、放電容量、並びに50サイクル後の放電容量を比較すると、実施例による試料の充放電特性が良好であることがわかる。例えば、圧延銅箔を用いた実施例1と比較例1では、表面粗さRzが1.2μmと小さい比較例では、集電体表面の実面積と凹凸が不充分なことから集電体表面の電気二重層容量逆数値が大きく、かつ、皮膜表面の誘電体層の単位面積当たり厚さが厚いことから製膜後の表面電気二重層容量逆数値(以降、1/Cと省略)も小さくなって、50サイクル後の容量が300mAh/gを割る結果になっている。活物質の充放電繰り返しの体積膨張収縮による集電性等の劣化を生じたものとみられる。所定内の集電体表面の粗さと1/C、および皮膜表面の1/Cを有する実施例1では、1千mAh/g以上の50サイクル後の放電容量を示す。他方、同じ両面光沢箔の電解箔を用いたRz1.7μmの比較例2と実施例2は、集電体表面1/Cから外れているが、皮膜形成後の1/C規定外の比較例2では、サイクル試験後300mAh/gを割るが、規定内に入る実施例2は1000mAh/gを割るものの、800mAh/gを越える容量を維持する。実施例3は集電体表面のRzは2μmで、集電体と皮膜表面の両1/Cが規定内に入る実施例3では、50サイクル後放電容量が1000mAh/g以上となっている。他方、集電体Rzは2.1μmと同様であるが、1/Cが小さめで、1μmSi皮膜形成後の1/Cが規定の3cm2/μFを超える比較例3は初期容量が低くなり、サイクル後の容量も600mAh/gを下回っている。表面誘電体層薄層が単位面積当たりでは厚くなり、不可逆容量等も増加したものと見られる。同様に、皮膜形成後の1/Cが規定値3を超える比較例4〜5では初期容量が低く、サイクル後の値も500mAh/gを割る低い放電容量しか得られない。しかし、1/Cが規定内の実施例4〜5では1千mAh/gを保持する容量を示した。また、集電体1/Cの下限側を示す実施例6〜7と比較例6の比較から、集電体1/Cが0.02を示す比較例6は皮膜形成後の1/Cも規定を下回る0.08を示し、サイクル後の容量も低いが、下限以上の規定内1/Cを示す実施例6〜7は、皮膜表面の1/Cも規定内を示し、しかもサイクル後放電要領も1千mAh/g以上であった。
2 耐熱性層と防錆処理層またはシランカップリング処理層
3 シリコン系活物質皮膜
4 粗化処理により粗面化した銅系微細粒子
5 集電体銅箔基材(両面平滑箔または光沢箔)
Claims (15)
- 銅箔を用いた集電体基材の片面または両面にシリコン系活物質皮膜が形成されている、非水溶媒電解液を用いる2次電池用の負極であって、
前記集電体基材上に、1g/m2〜14g/m2のシリコン系活物質皮膜が形成され、前記シリコン系活物質皮膜が形成された負極表面の電気二重層容量の逆数が0.1〜3cm2/μFであることを特徴とする、非水溶媒電解液2次電池用負極。 - 前記集電体基材の活物質皮膜形成面が、非平滑面または非光沢面であり、
前記集電体基材の活物質皮膜形成面は、表面粗さRz(JIS B0601−1994 十点平均粗さ)が1.5μm以上の粗面を有し、
前記集電体基材の活物質皮膜形成面の電気二重層容量の逆数が0.03〜0.1cm2/μFを有することを特徴とする、請求項1に記載の2次電池用負極。 - 前記集電体基材と前記シリコン系活物質皮膜との間に、リンまたはボロンを含有する層が1層以上形成されていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の2次電池用負極。
- 前記シリコン系活物質皮膜は、リンを含み、
前記活物質皮膜全体に対するリン含有量が0.1原子%以上30原子%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の2次電池用負極。 - 前記シリコン系活物質皮膜は、さらに酸素を含み、
前記活物質皮膜全体に対する酸素の含有量が1原子%以上50原子%以下であることを特徴とする請求項4に記載の2次電池用負極、 - 前記集電体基材の活物質皮膜形成面上に、ニッケルを0.01〜0.5g/m2含有する層または亜鉛を0.001〜0.1g/m2含有する層の少なくとも一方が形成された耐熱性層または耐熱性バリア皮膜を有することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の二次電池用負極。
- さらに前記耐熱性層の上層に防錆層および/またはシランカップリング処理層が形成され、さらにその上層に前記シリコン系活物質皮膜が形成されていることを特徴とする、請求項6に記載の2次電池用負極。
- 前記耐熱性層における前記亜鉛が単層亜鉛として存在することを特徴とする、請求項6または請求項7に記載の2次電池用負極。
- 前記耐熱性層における前記亜鉛が前記集電体基材またはニッケル層に拡散していることを特徴とする、請求項6または請求項7に記載の2次電池用負極。
- 請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の2次電池用負極に用いられ、日本工業規格で規定される表面粗さRz(JIS B0601−1994 十点平均粗さ)が1.5μm以上20μm以下の粗面またはこれと同等の粗面を有することを特徴とする電極用銅箔。
- 請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の負極を用いたことを特徴とする非水溶媒電解液を用いた2次電池。
- 前記非水溶媒電解液が、フッ素を含む非水溶媒を含有することを特徴とする請求項11に記載の2次電池。
- 粗面を有する銅箔を用いた集電体基材の片面または両面に、CVD(化学的気相成長)法またはEB(電子ビーム)蒸着法によって1g/m2〜14g/m2のシリコン系活物質皮膜を形成する工程を備え、
前記シリコン系活物質皮膜を形成した負極表面の電気二重層容量の逆数を0.1〜3cm2/μFとすることを特徴とする、非水溶媒電解液2次電池用負極の製造方法。 - 前記CVD法において、さらにフォスフィンガスを連続供給し、
シリコン系活物質被膜を形成する前記工程において、リンを含有するシリコン系活物質被膜を形成することを特徴とする請求項13に記載の2次電池用負極の製造方法。 - シリコン系活物質被膜を形成する前記工程の後、大気酸化または熱処理により前記シリコン系活物質皮膜に酸素を導入する工程をさらに具備することを特徴とする請求項13または請求項14に記載の2次電池用負極の製造方法。
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