以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
先ず、図1を参照し、本発明の液体吐出装置の一実施形態であるインクジェットプリンタ101の全体構成について説明する。
プリンタ101は、直方体形状の筐体101aを有する。筐体101aの天板上部には、排紙部4が設けられている。筐体101aの内部空間は、上から順に空間A,B,Cに区分できる。空間A,Bには、給紙部23から排紙部4に向かう用紙搬送経路が形成されており、図1に示す黒太矢印に沿って用紙Pが搬送される。空間Aでは、用紙Pへの画像形成と、用紙Pの排紙部4への搬送が行われる。空間Bでは、用紙Pの搬送経路への給紙が行われる。空間Cからは、空間Aのヘッド1に対してインクが供給される。
空間Aには、ブラックインクを吐出するヘッド1、搬送機構40、用紙Pをガイドする2つのガイド部10a,10b、用紙センサ26、ヘッド昇降機構36(図6参照)、クリーナユニット37、ワイパユニット38(図8参照)、及び、制御部100等が配置されている。
ヘッド1は、ヘッドホルダ5を介して筐体101aに支持されている。ヘッド1の下面は、複数の吐出口108(図3参照)が配列された吐出面1aである。ヘッドホルダ5は、吐出面1aと搬送ベルト43との間に記録に適した所定の間隙が形成されるように、ヘッド1を保持している。
ヘッド1は、ヘッド本体3(図2参照)に加えて、リザーバユニット、フレキシブルプリント配線基板(FPC)、回路基板等が積層された積層体である。回路基板で調整された信号は、FPC上のドライバICで駆動信号に変換され、さらにアクチュエータユニット21に出力される。アクチュエータユニット21が駆動されると、リザーバユニットから供給されたインクが、吐出口108から吐出される。
搬送機構40は、2つのベルトローラ41,42と、搬送ベルト43と、プラテン46と、ニップローラ47と、剥離プレート45とを有している。搬送ベルト43は、両ローラ41,42の間に巻回されたエンドレスのベルトである。プラテン46は、ヘッド1に対向配置され、搬送ベルト43の上側ループを内側から支える。ベルトローラ42は、駆動ローラであって、搬送ベルト43を走行させる。ベルトローラ42は、図示しないモータによって、図1中時計回りに回転される。ベルトローラ41は、従動ローラであって、搬送ベルト43の走行によって回転される。ニップローラ47は、給紙部23から搬送されてきた用紙Pを搬送ベルト43の外周面に押さえ付ける。用紙Pは、シリコン層(弱粘着性の外周面被覆層)によって搬送ベルト43に保持され、ヘッド1に向かって搬送される。剥離プレート45は、搬送されてきた用紙Pを搬送ベルト43から剥離し、下流側の排紙部4へと導く。
2つのガイド部10a,10bは、搬送機構40を挟んで配置されている。搬送方向上流側のガイド部10aは、2つのガイド31a,31bと送りローラ対32とを有し、給紙部23と搬送機構40とを繋ぐ。画像形成用の用紙Pが、搬送機構40に向けて搬送される。搬送方向下流側のガイド部10bは、2つのガイド33a,33bと2つの送りローラ対34,35とを有し、搬送機構40と排紙部4とを繋ぐ。画像形成後の用紙Pが、排紙部4に向けて搬送される。
用紙センサ26は、ヘッド1の上流側に配置され、搬送される用紙Pの先端を検知する。このとき出力された検知信号は、ヘッド1と搬送機構40との駆動の同期に用いられ、所望の解像度と速度で画像が記録されることになる。また、このときの検知信号は、用紙Pの搬送枚数のカウントにも使用される。
ヘッド昇降機構36は、ヘッドホルダ5を昇降させ、ヘッド1が印刷位置と退避位置の間で移動する。印刷位置では、図1に示すように、ヘッド1が搬送ベルト43と印刷に適した間隔で対向する。退避位置では、ヘッド1が搬送ベル43から印刷位置以上の間隔で離隔する(図8(c)参照)。退避位置では、ヘッド1と搬送ベルト43との間の空間を、後述するワイパ38aが移動可能である。
ワイパユニット38は、図8に示すように、ワイパ38a、これを支持する基部38bおよびワイパ移動機構38cを有している。ワイパ38aは、板状の弾性部材(例えば、ゴム)であり、吐出面1aの幅より若干長い。基部38bは、副走査方向を長手方向とする直方体であって、両端に孔が形成されている。孔は、基部38bを主走査方向に貫通し、一方の内面には雌ねじが形成されている。
ワイパ移動機構38cは、主走査方向に延びた一対のガイド(例えば、丸棒)38dと駆動モータ(不図示)とから構成される。一対のガイド38dは、孔に貫挿された棒部材であって、ヘッド1を副走査方向両側から挟む。一方のガイド38dは、外周面に雄ねじが形成され、孔の雌ねじと螺合している。このガイド38dは、駆動モータの回転力を受ける。他方のガイド38dは、他の孔の内周面と摺動する。
駆動モータの正及び逆回転によって、基部38bがガイド38dに沿って往復移動する。図8(a)に示すように、ヘッド1の左側端部近傍は、基部38bの待機位置である。ワイピング時は、図8(b)に示すように、払拭位置のヘッド1に対して、ワイパ38aが図中右方に移動して、吐出面1aを払拭する。払拭位置は、印刷位置と退避位置との間にある。この後、図8(c)に示すように、ヘッド1の退避位置への移動を待って、ワイパ38aは待機位置に戻される。
クリーナユニット37は、洗浄液塗布部材37a、ブレード37b及び移動機構37c(図6参照)を有し、搬送ベルト43の外周面をクリーニングする。クリーナユニット37は、図1に示すように、搬送ベルト43の右下方にあって、ベルトローラ42と対向して配置されている。洗浄液塗布部材37aは、多孔質体(例えば、スポンジ)とこれを支持する支持部材から構成され、ブレード37bは、板状弾性部材(例えば、ゴム)で構成される。これら洗浄液塗布部材37a及びブレード37bは、搬送ベルト43と全幅に亘って接触可能である。移動機構37cは、洗浄液塗布部材37a及びブレード37bを搬送ベルト43の外周面に離接させる。クリーニング動作において、多孔質体から外周面に洗浄液が塗布され、下流側のブレード37bにより汚れや洗浄液が外周面から掻き取られる。
空間Bには、給紙部23が配置されている。給紙部23は、給紙トレイ24及び給紙ローラ25を有する。このうち、給紙トレイ24が、筐体101aに対して着脱可能である。給紙トレイ24は、上方に開口する箱であり、複数の用紙Pを収納可能である。給紙ローラ25は、制御部100の制御により、給紙トレイ24内で最も上方の用紙Pを送り出す。
ここで、副走査方向とは、搬送機構40によって搬送される用紙搬送方向Dと平行な方向であり、主走査方向とは、水平面に平行且つ副走査方向に直交する方向である。
空間Cには、ブラックインクを貯留するカートリッジ22が筐体101aに着脱可能に配置されている。カートリッジ22は、ヘッド1にチューブ(不図示)及びポンプ39(図6参照)を介して接続されている。なお、ポンプ39は、ヘッド1にインクを強制的に送るとき以外は停止状態にあり、ヘッド1へのインク供給を妨げない。
次に、制御部100について説明する。制御部100は、プリンタ101各部の動作を制御してプリンタ101全体の動作を司る。制御部100は、外部装置(プリンタ101と接続されたPC等)から供給された記録指令(画像データなど)に基づいて、画像形成動作を制御する。具体的には、制御部100は、用紙Pの搬送動作、用紙Pの搬送に同期したインク吐出動作等を制御する。
制御部100は、外部装置から受信した記録指令に基づいて、給紙部23、搬送機構40、及び、各ガイド部10a,10b(送りローラ対32,34,35)を駆動する。給紙トレイ24から送り出された用紙Pは、上流側ガイド部10aによりガイドされ搬送機構40に送られる。搬送機構40によって搬送される用紙Pは、ヘッド1のすぐ下方を通過する際に、インクが吐出される。これにより、用紙P上に所望の画像が記録される。用紙Pは、剥離プレート45によって搬送ベルト43から剥離された後、下流側ガイド部10bによりガイドされて、筐体101a上部から排紙部4に排出される。
また、制御部100は、メンテナンス動作、フラッシング動作及びクリーニング動作も制御する。本実施形態におけるメンテナンス動作は、パージ動作を行った後に払拭動作が行われる動作である。パージ動作では、アクチュエータを駆動せずにポンプ39を駆動して圧力を加え、ヘッド1からインクが強制的に排出される。これにより、ヘッド1内の増粘インクや気泡などが排出され、インク吐出特性が回復する。払拭動作では、吐出面1aがワイピングユニット38によって払拭される。これにより、パージ動作によって付着した吐出面1a上のインクなどの異物が除去される。
フラッシング動作では、アクチュエータが駆動されて、吐出口108からインクが吐出される。インク吐出は、フラッシングデータ(画像データと異なるデータ)に基づいて行われる。また、クリーニング動作では、搬送ベルト43がクリーナユニット37によって払拭される。クリーニング動作は、パージ動作及びフラッシング動作後に行われ、搬送ベルト43上のインクなどの異物が除去される。
次に、図2〜図5を参照しつつヘッド1について詳細に説明する。図3では説明の都合上、アクチュエータユニット21の下方にあって破線で描くべき圧力室110、アパーチャ112及び吐出口108を実線で描いている。
ヘッド本体3は、図2に示すように、流路ユニット9及び4つのアクチュエータユニット21を有している。流路ユニット9は、図4に示すように、ステンレス製の金属プレート122〜130を積層した積層体である。流路ユニット9の上面には、図2に示すように、計10個のインク供給口105bが開口している。流路ユニット9の内部には、図2〜図4に示すように、インク供給口105bを一端とするマニホールド流路105、及び、マニホールド流路105から分岐した複数の副マニホールド流路105aが形成されている。さらに、各副マニホールド流路105aの出口からアパーチャ112及び圧力室110を経て吐出口108に至る複数の個別インク流路132が形成されている。流路ユニット9の下面は、吐出面1aであって、多数の吐出口108がマトリクス状に配置されている。これら吐出口108は、主走査方向に所定の距離ずつ離れて並んでいる。
リザーバユニットは、流路ユニット9と同様に、インク流路が形成された流路部材である。インク流路のリザーバには、流路ユニット9へのインクが貯留される。リザーバユニットのインクは、インク供給口105bから流路ユニット9内に供給される。なお、ポンプ39は、リザーバユニットを介して流路ユニット9にインクを強制的に供給する。
次に、アクチュエータユニット21について説明する。アクチュエータユニット21は、流路ユニット9の上面に固定されて、ヘッド本体3を構成する。図2に示すように、4つのアクチュエータユニット21は、それぞれ台形の平面形状を有しており、インク供給口105bを避けるよう主走査方向に千鳥状に配置されている。
アクチュエータユニット21は、強誘電性を有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系セラミックス製であり、図5に示すように、3枚の圧電層161〜163から構成されている。最上層の圧電層161は、上面に複数の個別電極135が形成され、厚み方向に分極されている。共通電極134が、圧電層162の上面全体に形成されている。個別電極135は、大部分が圧力室110と対向し、平面視で圧力室外の一部が個別ランド136と接続している。この形態が、圧力室110毎に形成されており、個別電極135と圧力室110とで挟まれた部分が、個別のアクチュエータとして働く。
ここで、アクチュエータユニット21の駆動方法について述べる。各アクチュエータは、いわゆるユニモルフ型アクチュエータである。圧電層161の両電極134、135で挟まれた部分は、分極方向に電界が印加されると、分極方向と直交する方向(平面方向)に縮む。このとき、下の圧電層162、163との間で歪み差が生じるので、個別電極135と圧力室110で挟まれた部分が、圧力室110側に向かって突出する。これに伴い、圧力室110内のインクに圧力(吐出エネルギー)が付与され、吐出口108からインク滴が吐出される。
なお、本実施形態においては、個別電極135の電位が、予め所定の電位が付与されているところ、駆動信号が供給されて、一旦グランド電位となり、その後の所定のタイミングで再び所定電位に復帰する。いわゆる、引き打ち駆動である。グランド電位となるタイミングでは、圧力室110の容積増大に伴い、圧力室110内にインクが吸い込まれる。続く所定電位への復帰では、圧力室110の容積減少(インク圧力の上昇)により、吐出口108からインク滴が吐出される。
次に、図6を参照しつつ、制御部100について説明する。制御部100は、CPU(Central Processing Unit)と、CPUが実行するプログラム及びこれらプログラムに使用されるデータを書き替え可能に記憶するROM(Read Only Memory)と、プログラム実行時にデータを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)とを含んでいる。制御部100を構成する各機能部は、これらハードウェアとROM内のソフトウェアとが協働して構築されている。図6に示すように、制御部100は、搬送制御部141と、画像データ記憶部142と、ヘッド制御部143と、枚数記憶部144と、カウント部145と、認識部146と、算出部147と、リセット部148と、時間計測部149と、メンテナンス制御部150と、フラッシング制御部151と、クリーニング制御部152とを有している。
搬送制御部141は、外部装置から受信した記録指令に基づいて、用紙Pが搬送方向に沿って所定速度で搬送されるように、給紙部23、ガイド部10a,10b、及び、搬送機構40の各動作を制御する。画像データ記憶部142は、記録指令に含まれる画像データを記憶する。ヘッド制御部143は、画像データに基づく用紙Pへの画像形成(印刷)、及び、フラッシングデータに基づくフラッシング動作が行われるようにヘッド1を制御する。ヘッド制御部143は、用紙センサ26の出力に基づいて、用紙Pの搬送と同期したタイミングでアクチュエータを制御する。
枚数記憶部144は、メンテナンス動作の実行条件を規定する第1〜第3搬送枚数を記憶している。各搬送枚数は、主に紙粉起因の吐出不良に関与する閾値として設定されている。第1搬送枚数は、最も多い枚数に設定され、例えば、2000枚である。第2搬送枚数は、第1搬送枚数より少なく、例えば、1900枚である。第3搬送枚数は、最も少ない枚数に設定され、例えば、1600枚である。このうち、第1搬送枚数は、良好な画品質を維持できる最大の累積搬送枚数に対応し、紙粉起因の吐出不良を回避可能とする最大枚数である。第1搬送枚数は、実機(実機相当を含む)での実験から求められる。メンテナンス動作の内容は、累積搬送枚数と各搬送枚数との大小関係で決まる。第1搬送枚数では、累積搬送枚数がこの枚数に達すると、次の画像形成に優先してメンテナンス動作が行われる。第2、第3の搬送枚数に対しては、各印刷ジョブ完了時の累積搬送枚数との大小関係で、メンテナンス動作の実行とその内容が決められる。
カウント部(カウント手段)145は、用紙センサ26からの検知信号に基づいて、搬送枚数をカウントする。カウント部145及び用紙センサ26によってカウント手段が構成されている。認識部146は、外部装置から受信した記録指令に基づく、用紙Pの連続搬送枚数(1つの印刷ジョブで使用される用紙Pの枚数)を認識する。算出部147は、認識部146が認識した搬送枚数と、カウント部145によってカウントされた現状の累積枚数とを足し合わせた合計枚数を算出する。
リセット部148は、メンテナンス動作が実行されたときに、カウント部145によってカウントされた累積枚数をリセットする。時間計測部149は、第1経過時間、第2経過時間および特定の時刻を計測する。第1経過時間は、1つの画像形成動作(1つの印刷ジョブ)が終了した時点からの時間であり、次のメンテナンス動作実行までの待ち時間である。第2経過時間は、メンテナンス動作が終了した時点からの時間であって、次のフラッシング動作実行までの時間である。特定の時刻は、1日のうちで特別に設定された時点であって、メンテナンス動作実行が設定された時刻である。なお、時間計測部149は、第1又は第2経過時間を計測している最中に、新たな時間(第1又は第2経過時間)を計測し始める際は、その計測中の時間をリセットし、新たな時間を計測し始める。
メンテナンス制御部150は、メンテナンス動作を実行する際に、ヘッド昇降機構36、ワイパ移動機構38c、及び、ポンプ39を制御する。メンテナンス動作は、パージ動作及び払拭動作が行われる。メンテナンス動作のタイミングは、各搬送枚数と累積搬送枚数との大小関係で決まる。なお、パージ動作では、ポンプ39のみによるインクの強制排出を想定しているが、これに後述のフラッシング動作を組み合わせても良い。
フラッシング制御部151は、フラッシング動作を実行する際に、ヘッド制御部143を介してヘッド1を制御する。フラッシング制御部151は、次の画像形成の準備動作として、フラッシング動作を行う。例えば、フラッシング動作は、定期的なフラッシング動作に加えて、電源投入後の画像形成直前、休止後の新たな画像形成の再開時やメンテナンス動作後の第2経過時間毎に行われる。フラッシング動作は、アクチュエータユニット21が駆動され、インク滴が吐出される吐出フラッシングとインク滴が吐出されない不吐出フラッシングがある。フラッシング制御部151は、メンテナンス動作後の第2経過時間内では、定期的フラッシング動作の実行タイミングであっても、これを行わない。これにより、無駄なフラッシング動作を防ぐことが可能となる。
クリーニング制御部152は、クリーニング動作を実行する際に、搬送機構40及び移動機構37cを制御する。具体的には、クリーニング制御部152は、メンテナンス動作が終了した直後、及び、フラッシング動作が終了した直後に、クリーニング動作を実行する。
各搬送枚数によるメンテナンス動作の規定形態を簡単に説明する。一般に、用紙Pの搬送に伴い、装置内は異物(主に紙粉等)の付着が進む。吐出面1aも、例外ではない。吐出面1aに異物が付着すると、インクの着弾位置の変化や不吐出等の不具合が生じ、画像品質の低下を招く。
本実施の形態では、搬送枚数が通算で2000枚目(第1搬送枚数目)に達すると、次の用紙Pの繰り出しを中断して、メンテナンス動作が強制実行される。残りの印刷は、メンテナンス動作後である。このように、メンテナンス動作は、紙粉起因の吐出不良を回避可能とする。しかし、メンテナンス動作は、印刷ジョブの見かけの印刷時間を延ばす。これは、ユーザーの印刷時間に対する期待を裏切るものと思われる。
第2搬送枚数は、この期待に応えるために設定された。このとき、第1搬送枚数と第2搬送枚数との第1枚数差は、本発明のプリンタに想定されるユーザーが1つの印刷ジョブで行う第1平均印刷枚数の数倍に設定される。メンテナンス動作は、累積搬送枚数が、第2搬送枚数以上で且つ第1搬送枚数未満の場合、当該印刷ジョブの終了を待って行わる。第2搬送枚数の存在は総合的なメンテナンス回数を増やすが、1つの印刷ジョブ中に通算2000枚目(第1搬送枚数)を迎える確率は低くできる。ここで、複数の印刷ジョブが連なる場合、メンテナンス動作の実行要否は、各印刷ジョブ終了時点に判定する。そのとき、次の印刷ジョブの搬送枚数(認識部146が認識した搬送枚数:新規搬送枚数)を求めて、累積搬送枚数(既搬送枚数+新規搬送枚数)とする。
第1枚数差と第1平均印刷枚数との比率が、上述の確率に与える影響を簡単に説明する。第1枚数差を第1平均印刷枚数のn倍とすると、確率は100/(n+1)%となる。具体的には、n=1で50%、n=2で33.3%、n=3で25%、n=4で20%、n=5で16.6%、n=6で14.2%、n=7で12.5%等である。このように、確率は、n値が小さい範囲で激減し、n値が増すと漸減する。本実施の形態では、n値が、激減状態と漸減状態との間の確率に対応して設定され、第1枚数差(100枚)を、第1平均印刷枚数の約5倍とした。
第3搬送枚数も、第2搬送枚数と同様の主旨で設定される。第1搬送枚数と第3搬送枚数との第2枚数差は、上記ユーザーが1日当たりに印刷する第2平均印刷枚数にほぼ等しい。メンテナンス動作は、印刷ジョブ終了時の累積搬送枚数が第3搬送枚数以上、且つ第2搬送枚数未満の場合、当該印刷ジョブの終了後、第1所定時間の経過、又は、所定時刻への到達を待って行われる。第3搬送枚数の存在は、第2搬送枚数と同様に、メンテナンス回数を増やすが、印刷ジョブ中のメンテナンス発生確率は、さらに低くできる。本実施の形態では、第2平均印刷枚数が500枚であり、第2枚数差はこれに近い400枚である。第2枚数差は、第2平均印刷枚数より少ないが、メンテナンス動作なしで可及的多数枚(この場合、1600枚)が印刷可能という利便性と、第1搬送枚数の近くにあって、清浄な吐出面1aで印刷再開可能という吐出回復性を両立する。
ここで、第1所定時間とは、例えば、1時間、2時間、あるいは、第2平均印刷枚数分の連続印刷に必要な時間である。所定時刻とは、1日のうちで予め設定された時刻で、休憩時間帯、昼食時間帯や深夜の時間帯等に設定され、印刷処理が予定されない時刻である。例えば、午前0時、午後0時等である。
メンテナンス動作は、印刷ジョブ終了時の累積搬送枚数が第3搬送枚数未満の場合には、時間が第1所定時間を経過しても、時刻が所定時刻に到達しても、行われない。
次に、図7(a)を参照し、画像形成動作実行時のメンテナンス動作、及び、フラッシング動作について説明する。第1実施例のプリンタ101は、電源投入直後、又は、新規の記録指令が所定時間以上未受信の状態にあるとする。ヘッド1の吐出面1aは、キャップ(不図示)により被覆されている。
まず、ステップS1において、制御部100は、外部装置からの記録指令を待ち受ける(S1:NO)。この間、定期的フラッシングのタイミングとなれば、制御部100は、フラッシング制御部151を制御して、フラッシングを行う。フラッシング動作は、キャッピング状態で行われる。制御部100は、記録指令を受信すると(S1:YES)、ステップS2に進む。
ステップS2では、画像形成のための準備動作が行われる。吐出面1aは、キャップから開放され(アンキャッピング)、画像形成が可能な状態となる。さらに、所定量のインク滴が搬送ベルト43上に吐出され(フラッシング)、洗浄液により搬送ベルト43が清浄化(クリーニング動作)される。クリーニング動作では、クリーニング制御部152により移動機構37cが駆動され、搬送制御部141により搬送機構40が駆動される。このとき、洗浄液塗布部材37aおよびブレード37bが、当接位置に移動する。走行する搬送ベルト43に対して、洗浄液が塗布され、ブレードがこれを掻き取る。クリーニング動作後、移動機構37cは元の待機状態に戻され、ステップS3に進む。
ステップS3では、画像形成が行われる。搬送制御部141により給紙部23、搬送機構40およびガイド部10a、10bが駆動され、ヘッド制御部143によりヘッド1が駆動される。このとき、給紙部23から用紙Pが順次繰り出され、ヘッド1により用紙P上に画像が形成される。用紙センサ26による用紙Pの検知信号は、用紙搬送に同期した画像形成に用いられ、カウント部145にも出力される。この後、ステップS4に進む。
ステップS4では、カウント部145が、用紙センサ26の検知信号により、搬送枚数を計数する。既に計数された搬送枚数が、1だけ繰り上げられ、これが現状の累積搬送枚数とされる。続くステップS5では、メンテナンス制御部150が、現状の累積搬送枚数と第1搬送枚数との大小関係を判定する。ここで、現状の搬送枚数が、第1搬送枚数に等しければ(S5:YES)ステップS6に進み、第1搬送枚数未満(S5:NO)であればステップS8に進む。
ステップS6では、次の用紙Pの搬送を中断し、メンテナンス動作が行われる。本実施の形態では、メンテナンス動作は、パージ動作、ワイピング動作およびクリーニング動作からなる。メンテナンス制御部150によりポンプ39、ワイパ移動機構38c及びヘッド昇降機構36が駆動され、搬送制御部141により搬送機構40が駆動され、クリーニング制御部152により移動機構37cが駆動される。
メンテナンス動作は、図8で説明される。印刷位置のヘッド1は、ポンプ39によりインクが圧送される。図8(a)に示すように、所定量のインクが、吐出面1aから排出され(パージ動作)、搬送ベルト43に受容される。この後、図8(b)に示すように、ヘッド1の払拭位置への上昇、ワイパ38aによる吐出面1aの払拭が行われる(ワイピング動作)。図中の矢印は、払拭方向を示す。払拭完了後は、図8(c)に示すように、ヘッド1の退避位置への上昇、ワイパ38aの待機位置への退却、及びヘッド1の印刷位置への復帰が順に行われる。続くクリーニング動作は、ステップS2で説明した通りである。メンテナンス動作が完了すると、ステップS7に進む。
ステップS7では、リセット部148が、カウント部145の累積搬送枚数をリセットする。この後、ステップS8に進む。
ステップS8では、制御部100が、現時点での印刷ジョブが終了したか否かを判定する。印刷ジョブが完了(S8:YES)ならステップS9に進み、未完了(S8:NO)ならステップS3に戻る。このとき、時間計測部149は、印刷ジョブ完了時点を起点に、第1及び第2所定時間を計測し始める。また、ステップS3に戻る場合、中断されていた用紙搬送及び画像形成が再開される。
ステップS9では、メンテナンス制御部150が、カウント部145の示す累積搬送枚数と第2搬送枚数との大小関係を判定する。カウント部145の累積搬送枚数が、第2搬送枚数以上(S9:YES)であればステップS6に戻り、第2搬送枚数未満(S9:NO)であれば次のステップS10に進む。ステップS6に戻る場合、上述のメンテナンス動作及びカウンタリセットを経る。最終的に、本ステップS9において、累積搬送枚数は第2搬送枚数未満と判定され、ステップ10に進むことになる。
ステップS10では、次に続く印刷ジョブの有無が判定される。制御部100は、次の印刷ジョブがあれば(S10:YES)ステップS3に戻り、続く印刷ジョブがなければ(S10:NO)ステップS11に進む。ステップS3に戻る場合、第1及び第2所定時間に対する計時は中止され、結果は破棄される。
ステップS11では、制御部100が、プリンタ101を初めの待機状態に戻す。ヘッド1の吐出面1aは、印刷可能な開放状態から、キャップが当接した封止状態とされる(キャッピング動作)。キャッピング動作が始まると、制御部100は、ステップS12に進む。
ステップS12では、メンテナンス制御部150が、カウント部145の示す累積搬送枚数と第3搬送枚数との大小関係を判定する。カウント部145の累積搬送枚数が、第3搬送枚数以上(S12:YES)であればステップS13に進み、第3搬送枚数未満(S12:NO)であればステップS1に戻る。ステップS1に戻る場合、吐出面1aはキャッピング状態のままである。
ステップS13では、メンテナンス制御部150が、ステップS8で始めた計時の結果に基づいて、現時点の経過時間が第1所定時間に達したか否かを判定する。メンテナンス制御部150は、経過時間が第1所定時間に達したら(S13:YES)ステップS6に戻り、第1所定時間未満(S13:NO)であればステップS14に進む。ステップS6に戻る場合、上述のメンテナンス動作及びカウンタリセットを経て、最終的に、ステップS12からステップ1に進むことになる。
ステップS14では、メンテナンス制御部150が、ステップS8で始めた計時の結果に基づいて、現時点が第1所定時刻に達したか否かを判定する。メンテナンス制御部150は、現時点が第1所定時刻に達したら(S14:YES)ステップS6に戻り、第1所定時刻以外(S14:NO)であればステップS15に進む。
ステップS15では、制御部100が、外部装置からの新たな記録指令の有無を判定する。制御部100は、記録指令があればステップS2に進み、無ければステップS16に進む。
ステップS16では、メンテナンス制御部150が、ステップS8で始めた計時の結果に基づいて、現時点が第2所定時刻に達したか否かを判定する。メンテナンス制御部150は、現時点が第2所定時刻に達したら(S16:YES)ステップS17に進み、第2所定時刻以外(S16:NO)であればステップS13に戻る。なお、第2所定時間は、印刷ジョブ完了後(キャッピング後)フラッシング実行タイミングに対応する。
ステップS17では、フラッシング制御部151が、ヘッド1を駆動してフラッシングを行う。吐出されたインク滴は、キャップ内に排出される。フラッシング動作後、第2所定時間に関する計時結果はリセットされ、時間計測部149は、新たに第2所定時間を計測し始める。
ステップS13からステップS17の一連のステップは、閉ループ状のフローとなっており、上述のように、第1所定時間への到達、第1所定時刻への到達、あるいは新規記録指令の受信のいずれかにより、これを抜け出せる。いずれに場合も、最終的にステップS1に戻ることになる。
以上に述べたように、本実施形態のプリンタ101によると、搬送された用紙Pの累積枚数が第1搬送枚数に達したとき、及び、1つの記録指令に基づく用紙Pの搬送が終了したときにおいて第2搬送枚数以上且つ第1搬送枚数未満であれば、メンテナンス動作が実行される。このため、紙粉などの異物によって生じる吐出不良を、未然に防ぐことが可能となる。このとき、メンテナンス動作の要否が、用紙Pの累積搬送枚数で判定されているため、その制御が簡単である。さらに、制御容量の上昇も抑制することができ、装置の製造コストの低下を図ることができる。
さらに、1つの記録指令に基づく用紙Pの搬送が終了したときに、用紙Pの累積枚数が、第2搬送枚数以上であれば第1搬送枚数未満であっても、当該用紙Pの搬送終了後に、メンテナンス動作が実行される。このため、次回の記録指令に基づく用紙Pの搬送枚数が多くても、連続して多くの用紙Pを搬送することが可能となる。また、このメンテナンス動作は、1つの記録指令に基づいた用紙搬送(印刷ジョブ)が終了する毎に、その要否が判定される。1つの印刷ジョブ中に、累積搬送枚数が、第1搬送枚数を迎える確率を低くできる。
ステップS12からステップS17にあるように、累積搬送枚数が第3搬送枚数以上であり且つ第2搬送枚数未満の場合であって、次の記録指令が未受信のときにも、メンテナンス動作が実行される。紙粉などの異物による不具合を、より確実に未然に防げる。メンテナンス動作は第1所定時間経過後、又は第1所定時刻到達後に行われ、この間に受信される記録指令に速やかに対応できる。メンテナンス動作による吐出特性の確実な維持と、メンテナンス動作なしで行える印刷量の増大との両立が図れる。さらに、次の記録指令を待つ間、第2所定時間毎にフラッシング動作が行われ、記録指令に対する速やかな対応を確実にしている。
ステップS12では、累積搬送枚数が第3搬送枚数未満の場合、ステップS1に戻る。メンテナンス動作は、行われない。そのため、次の記録指令に基づいて、速やかに画像形成動作を開始できる。メンテナンス動作なしで行える印刷量の増大も見込まれ、効率的である。
第2実施例について、図7(b)を用いて説明する。画像形成実行時のメンテナンス動作やフラッシング動作の手順とその内容は、上述の第1実施例とほぼ同じであるが、1つの印刷ジョブ終了時に行われる2つの判断の順番が異なる。図7(b)において、この2つの判断ステップ以外は、第1実施例と同じ符号が用いられる。
以下では、第1実施例と異なる点を説明する。ステップS8において、印刷ジョブが完了(S8:YES)なら、ステップS109に進む。ステップS109では、第1実施例のステップS10と同様に、次に続く印刷ジョブの有無が判定される。制御部100は、次の印刷ジョブがあれば(S109:YES)ステップS3に戻り、続く印刷ジョブがなければ(S109:NO)ステップS110に進む。
ステップS110では、第1実施例のステップS9と同様に、メンテナンス制御部150が、カウント部145の示す累積搬送枚数と第2搬送枚数との大小関係を判定する。カウント部145の累積搬送枚数が、第2搬送枚数以上(S110:YES)であればステップS6に戻り、第2搬送枚数未満(S110:NO)であれば次のステップS11に進む。これ以降は、第1実施例と同じである。
本実施例では、複数の印刷ジョブが連なっている場合、1つの印刷ジョブ終了後、累積搬送枚数が第1搬送枚数未満であれば、これに続く印刷ジョブが実行される。最後の印刷ジョブが終了すると、その時点での累積搬送枚数と第2搬送枚数との大小関係が判定される。そのため、多くの場合、メンテナンス動作なしで行える印刷量の増大が、第1実施例よりも期待できる。
第1実施例では、大小関係の判定が印刷ジョブの終了毎に行われるので、メンテナンス動作は、第2搬送枚数を超すことになる印刷ジョブ終了後に行われる。この場合、累積搬送枚数が第1搬送枚数までに余裕を残した状態で、メンテナンス動作に入ることになる。第2実施例では、大小関係の判定が連なる印刷ジョブの最後のジョブ終了後に行われるので、累積搬送枚数が途中で第2搬送枚数を超すことになっても、最後の印刷ジョブ完了に向けて画像形成動作が進むことになる。この場合、累積搬送枚数が第1搬送枚数に近接した状態で、メンテナンス動作に入る。
第3実施例について、図7(c)を用いて説明する。本実施例は、第2実施例とほぼ同じ構成を有し、画像形成動作直前の累積搬送枚数推定動作が加わる。累積搬送枚数推定動作は、初めに受けた記録指令によるジョブ完了時点の累積搬送枚数が推定される。図7(c)において、累積搬送枚数推定動作関連ステップ以外は、第2実施例と同じ符号が用いられる。
以下では、第2実施例と異なる点を説明する。ステップS1で記録指令を受信すると、ステップS2で画像形成の準備動作が行われるまでは、上述の実施例と同じである。この後、制御部100は、ステップS201に進む。
ステップS201では、認識部146が、記録指令に基づいて、当該印刷ジョブの連続搬送枚数を認識する。算出部147は、認識部146が認識した搬送枚数と、カウント部145がカウントした現時点での累積搬送枚数との和(合計枚数)を算出する。この後、制御部100は、ステップS202に進む。
ステップS202では、メンテナンス制御部150が、算出された累積搬送枚数と第1搬送枚数との大小関係を判定する。ここで、算出された搬送枚数が、第1搬送枚数以上であれば(S202:YES)ステップS203に進み、第1搬送枚数未満(S202:NO)であればステップS3に進む。
ステップS203では、ステップS6と同じメンテナンス動作を行う。続くステップS204では、リセット部148が、カウント部145でカウントされた累積搬送枚数をリセットする。
本実施例では、第2実施例と同様に、メンテナンス動作なしで行える印刷量の増大が、第1実施例よりも期待できる。さらに、画像形成開始前に累積搬送枚数推定動作関連のステップを持つことから、ユーザーの印刷時間に対する期待を裏切ることなく、良好な吐出特性の状態で画像形成を開始できる。
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、第3実施例における累積搬送枚数推定動作を、上述の第1実施例の構成に加えても良い。第3実施例と同様に、ユーザーの印刷時間に対する期待を裏切ることなく、良好な吐出特性の状態で画像形成を開始できる。
上述の実施例では、メンテナンス動作が、パージ及びワイピング動作とクリーニング動作からなるとしたが、パージ及びワイピング動作に続いて、フラッシング動作を加えても良い。パージ及びワイピング動作により吐出面1aから異物が除去されるとともに、フラッシング動作により吐出口108のメニスカスが整えられる。また、クリーニング動作は、パージ及びワイピング動作に続く動作でも、パージ動作に続く動作でも良い。後者の場合、ワイピング動作とクリーニング動作が並行して行われ、メンテナンス動作にかかる時間が短くなる。
また、枚数記憶部144は、第1及び第2搬送枚数を記憶しておれば、第3搬送枚数を記憶していなくても良い。印刷ジョブ終了後の累積搬送枚数が、第2搬送枚数未満の場合、上述の実施例における第2搬送枚数未満で、且つ第3搬送枚数以上の場合と同様に処理されれば良い。
上述の実施形態におけるメンテナンス動作は、払拭動作だけから構成されていてもよい。つまり、パージ動作を行わなくてもよい。
本発明は、ライン式・シリアル式のいずれにも適用可能であり、また、プリンタに限定されず、ファクシミリやコピー機等にも適用可能であり、さらに、インク以外の液体を吐出させることで記録を行う液体吐出装置にも適用可能である。記録媒体は、用紙Pに限定されず、記録可能な様々な媒体であってよい。さらに、本発明は、インクの吐出方式にかかわらず適用できる。例えば、本実施の形態では、圧電素子を用いたが、抵抗加熱方式でも、静電容量方式でもよい。