JP2014058732A - 溶鋼の脱硫剤及びそれを使用した脱硫方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】転炉精錬後の溶鋼の脱硫処理において、CaF2を使用することなく、安定的に短時間でS<10ppm以下の極低S鋼の製造が可能な脱硫剤と脱硫方法を提供する。
【解決手段】成分組成が、質量%で、CaO:66%以上、Al23:2〜22%、SiO2:2〜10%、MgO:0〜10%、X:0.5〜5%、(Al23+SiO2)/(CaO+X):0.03〜0.32であることを特徴とする溶鋼の脱硫剤(Xは、Na2O、K2O、Li2Oのいずれか1種以上)であり、転炉から溶鋼を取鍋に出鋼する際に、当該取鍋内にCaOを投入し、出鋼中又は出鋼後、又は、両方のタイミングで、取鍋内のスラグの上に、嵩比重が0.1〜2.7のAl源を投入し、その後、上記脱硫剤を吹き込む。
【選択図】なし

Description

本発明は、溶鋼の脱硫処理を行う際の脱硫剤及びそれを使用した脱硫方法に関する。
海構材、ラインパイプは、厚手・高強度・高靭性化に対応するため、中心偏析低減対策とともに、精錬工程での低硫化対策が極めて重要である。このような極低硫鋼においては、安定的に10ppm以下まで鋼中のSを低減することが要求される。また、これら溶鋼の脱硫処理は、低S域での脱硫処理となるため脱硫速度が遅く、長時間の処理が必要となり、鋼材の生産に影響を与える。従って短時間での処理も求められる。
溶鋼の脱硫処理は、CaOを主成分として、特許文献1に開示のCaF2を混合した脱硫剤を用いることが一般的に知られている。これは、CaO単独では、融点が約2500℃程度と高く、溶鉄との反応性が悪いため、CaF2を添加して融点を低下させて、溶鉄との反応性を改善するためである。
しかしながら、近年では、土壌環境基準の見直しにより、フッ素含有スラグの用途が制限されるなど、CaF2の使用は控える傾向にある。
CaF2を使用せずに、高い脱硫能を得る脱硫剤として、特許文献2記載のカルシュームアルミネート系脱硫剤が開示されている。さらに、特許文献3〜6では脱硫剤にNa2O,K2O等のアルカリ金属を含有したフラックスについて開示されている。
特公昭55−051402号公報 特開2002−060832号公報 特開平03−264624号公報 特許第4414562号公報 特開平2003−253315号公報 特開2012−17479号公報
しかし、特許文献2では、転炉からの流出スラグについて考慮していないので、出鋼時に転炉から排出された転炉スラグと脱硫剤が混合した場合、脱S能の低下が問題となる。特許文献3は、Na2O、K2Oを含有した脱硫フラックスについて提案されているが、脱硫剤中のこれらの濃度について記載はない。
特許文献4及び5には、溶銑を対象にNa2Oを含有したフラックスが提案されているが、これらを溶鋼に適用した場合、溶銑に対して処理温度が高いため、Na2Oは殆ど蒸発してしまう。特許文献6は、溶鋼を対象としたものではあるが、スラグ中のアルカリ金属組成を規定しており、アルカリ金属のスラグへの残留が問題となる。
本発明は、かかる点に鑑みなされたものであり、転炉精錬後の溶鋼の脱硫処理において、CaF2を使用することなく、従来と同等又はそれ以上の脱硫能を得て、脱硫処理に要する時間を短縮することを目的としている。
前記目的を達成するため、本発明に係る溶鋼の脱硫剤及びそれを使用した脱硫方法は、
(1)脱硫剤の成分組成が、質量%で、
CaO:66%以上、
Al23:2〜22%、
SiO2:2〜10%、
MgO:0〜10%、
X:0.5〜5%、
(Al23+SiO2)/(CaO+X):0.03〜0.32
であることを特徴とする溶鋼の脱硫剤。
ここで、Xは、Na2O,K2O,Li2Oのいずれか1種以上。
(2)転炉精錬後の溶鋼の脱硫方法であって、
転炉から溶鋼を取鍋に出鋼する際に、当該取鍋内にCaOを投入し、
出鋼中又は出鋼後、又は、両方のタイミングで、取鍋内のスラグの上に、嵩比重が0.1〜2.7のAl源を投入し、その後、
上記溶鋼に前記(1)に記載の脱硫剤を吹き込む
ことを特徴とする溶鋼の脱硫方法。
(3)前記脱硫剤を吹き込む際に、吹込み開始〜吹込み終了までの処理時間の50%以上の間、トップスラグの成分組成を、質量%で、
CaO:55〜65%、
SiO2+Al23:30〜45%、
SiO2:2〜10%、
MgO:0〜10%
とすることを特徴とする前記(2)に記載の溶鋼の脱硫方法。
本発明によれば、転炉精錬後の溶鋼の脱硫処理において、CaF2を使用せず、脱硫スラグの環境上の問題を生じることなく、安定的に短時間で、S<10ppm以下の極低S鋼を製造することが可能である。
以下、本発明について詳述する。
本発明者らは、以下の理由で、CaO、Al23、SiO2、MgO、Na2O、K2O、Li2Oを用いた脱硫剤に着目し、これら成分を適正な組成範囲で混合して用いることで、発生したスラグを再利用する際、環境上問題なく溶鋼の脱硫処理で高い脱硫能が得られることを見いだした。
溶鋼の脱硫処理は、CaOを主成分とする脱硫剤を用いることが一般的である。CaOは塩基性酸化物であり、Sと反応することで脱硫が進行する。また、CaO単独での脱硫は、CaOの融点が高く、溶鋼との反応性が悪いため、高い脱硫能を維持したまま、融点を低下させるAl23、SiO2、MgO以下が考えられる。
また、CaOと同じ塩基性酸化物であるNa2O、K2O、Li2Oにおいても同様に、Sと反応することで脱硫が進行することが知られている。
これら脱硫剤を混合して使用する場合、脱硫剤をArガスと同時に溶鋼中に吹込んだ場合、鋼中でArガスから離脱した一部の脱硫剤は鋼中のAl23と反応するため、脱硫剤浮上中に脱硫剤の組成が変化する。
また、鋼中を浮上した脱硫剤は、トップスラグで転炉スラグ等と反応するため、組成が変化する。したがって、これら組成変化の影響を考慮した脱硫剤を用いる必要がある。また、Na2O、K2O、Li2Oは溶鋼温度において蒸発し易いため、これらが設備に付着した場合、腐食等の問題が生じる可能性もある。
また、脱硫後のスラグを再利用する際、環境上の問題から用途に制約を受ける。したがって、これらを、蒸発ロスが少ない領域で低濃度とし、低濃度であっても高い脱硫能が得られるように、その他の脱硫剤組成を制御する必要がある。
以下、本発明脱硫剤の成分の濃度を限定した理由について説明する。なお、%は質量%を意味する。
Al23
Al23は、スラグの低融点化に寄与する。溶鋼の脱硫処理温度でCaO飽和領域において低融点相を形成することが可能である。さらに、Na2Oの活量を低下するため、Na2Oを極力低濃度とし、蒸発ロスを低下する上で必要である。
また、鋼中でピックアップするAl23、脱硫剤浮上後の転炉スラグとの混合を考慮して、脱硫剤中のAl23濃度を2〜22%とした。Al23が2%未満では脱硫剤が滓化せず、Al23が22%を超えると、脱硫剤のS吸収能力が低下し、脱硫が悪化する。
SiO2
SiO2は、酸性酸化物であり脱硫能を低下させるものの、Na2Oの活量を低下するため、Na2Oを極力低濃度とし蒸発ロスを低下しておくために必須である。
また、脱硫剤浮上後に転炉スラグと混合しSiO2が過剰となり、復硫することも考慮し、脱硫剤のSiO2濃度を2〜10%とした。SiO2が2%未満では、アルカリ金属の蒸発ロスが大きく、SiO2が10%超では、脱硫剤のS吸収能が低下し、脱硫が悪化する。
MgO:
MgOは、耐火物の溶損防止に寄与する。耐火物溶損防止の観点から、脱硫剤浮上後の転炉スラグとの混合を考慮して、10%以下とすることが好ましい。10%を超えると、融点が向上するため脱硫が悪化する。
Na2O:
Na2Oは、スラグの低融点化やS吸収能向上に寄与する。しかし、Na2Oが高すぎると、気化損失が起こり、精錬効率が低下する。また、脱硫後のスラグ中にNa2Oが残留した場合、スラグを再利用する際に問題となるので、処理後スラグ中のNa2O濃度を低下させておく必要もある。
脱硫後のスラグ中のNa2O濃度は2%以下とする必要があり、好ましくはNa2O1%以下である。Na2Oの反応性はAl23、SiO2の濃度に影響されるので、これらを考慮して、高い脱硫能を得られる脱硫剤中のNa2O濃度を調査したところ、Al23:2〜22%、SiO2:2〜10%で、Na2O:0.5〜5%とすることが好ましいことが判った。より好ましくは、Na2O:1〜4%である。
また、K2O、Li2Oについても、Na2Oと同様の効果があるので、0.5〜5%とした。
CaO:
CaOは、塩基性酸化物であり、スラグの脱硫能を高める基本的な酸化物として欠かせない。溶鋼の脱硫処理温度で、CaO飽和領域において、低融点相を形成する組成として、例えば、CaO65%−Al2335%が一般的に知られているが、これらを溶鋼中にインジェクションする場合、溶鋼中でのAl23との反応、その後浮上しトップスラグでの転炉スラグとの反応によって、その組成が変化し高い脱硫能が得られない。
これらの反応を考慮し、CaO:66%以上とし、(Al23+SiO2)/(CaO+X)を0.03〜0.32とした。好ましくは、CaO:70〜85%であり、(Al23+SiO2)/(CaO+X)=0.1〜0.25である。ここで、Xは、Na2O、K2O、Li2Oのいずれか1種以上をさす。
なお、脱硫剤中の不可避的不純物は、脱硫促進の観点から微量であることが好ましい。質量%で、CaO、Al23、X、SiO2、及び、MgOの合計が90%以上のとき、本発明の効果が発現する。
続いて、溶鋼の脱硫方法について述べる。
まず、溶銑を脱珪、脱硫処理した後、転炉にて、精錬剤を加えて酸素ガスを吹込み、脱燐、脱炭処理を行った。そして、そのような転炉での精錬が終わった後、転炉から取鍋に溶鋼を出鋼する。この時、転炉内スラグもある程度流出する。
本発明では、この出鋼の際に合わせて、取鍋内にCaOを投入する。取鍋内にCaOを投入するのは、転炉からの流出スラグが、脱燐精錬時に生成したスラグで、燐含有量が高く、これが、出鋼時に、溶鋼とともに撹拌され、溶鋼への復燐が発生し易く、これを抑制するためである。
また、後述するように、スラグ中のFeO+MnOを還元するために、アルミ源を添加するので、Al23が増加し、脱硫能が低下するのを防ぐ目的も兼ねている。
CaO投入量は、大量に投入した場合、発塵や、耐火物へのスラグ付着が懸念されるので、本発明者らの知見によれば、溶鋼1t当たり、2.5〜3.5kgが好ましい。
その後、取鍋内の溶鋼上のスラグに対して、アルミ源を投入する。アルミ源は、溶鋼の上面を覆っているスラグの上に載せるように投入する。
ここで、アルミ源としては、例えば、アルミ缶のプルトップ部分や、その他一般の各種のアルミニウム成型品を潰して粒状にしたリサイクルアルミニウム(シュレッダーダスト)等、適宜隙間があり、嵩比重0.1〜2.7のものが好ましい(嵩比重は、JIS R2205で測定)。
望ましくは、嵩比重は0.1〜1.5であり、例えば、Alが96質量%以上、嵩比重が0.68〜0.74、粒直径が3〜15mmであるものが好適に用いることができる。
嵩比重が0.1未満だと、トップスラグに投入した際、スラグ表面に留まったままで、大気中の酸素と反応してしまう。嵩比重が2.7より大きいと、トップスラグに投入した際に、溶鋼まで到達し、溶鋼と反応してしまう。即ち、嵩比重を0.1〜2.7とすることで、トップスラグ投入した際に、スラグと効率よく反応する。
アルミ屑は、Al23等を含有するアルミ灰よりもアルミ屑が好適であるが、アルミ屑、アルミ灰よりも高価である。それ故、アルミ屑は、極力、鋼中のFeO+MnO脱酸に必要最小限とすることが望ましい。アルミ屑の投入量についても、前記CaO投入量と合わせて、次の脱硫剤吹込み工程での処理中のトップスラグ組成が所定の組成となるように考慮することが望ましい。
本発明者らの知見によると、アルミ屑は、おおよそ0.2〜0.7kg/tが好ましい。アルミ源を投入することで、スラグ中のFeO+MnO含有量が低下し、スラグのS吸収能が向上する。この場合、FeO+MnO含有量は3.0質量%以下としておくことがよい。
この場合、FeO+MnO含有量は3.0質量%以下としておくことがよい。スラグ中のFeO+MnO低下により、鋼中に吹込んだフラックス中のNa2O、K2O、Li2Oがトップスラグまで浮上した時にOを分離して、これらアルカリ金属を蒸発し易くし、これら元素の濃度を、スラグを再利用する際の問題ない濃度まで低減することができる。
この時、トップスラグの脱硫能を向上する効果によって、Na2O、K2O、Li2Oによって固定されたSを、これらが蒸発する際、復硫なくトップスラグ中に吸収することが必要である。例えば、Na2Oにつては、下記の反応が起こると考えられる。
Na2O+ → Na2S+
Na2S+CaO → CaS+2Na(g)
次いで、出鋼完了後、吹込み装置によって、溶鋼中に、前記の脱硫剤を溶鋼に吹込んで脱硫処理を実施する。このときのキャリアガスは、例えば、アルゴンガス等、不活性ガスが用いられる。
また、トップスラグの組成は、吹込み開始〜吹込み末期までの少なくとも50%以上の処理時間内において、質量%で、CaO:55〜65%、SiO2+Al23:30〜45%、SiO2:2〜10%、MgO:0〜10%とすることが好ましい。
これは、これらスラグ組成は液相率が高く、CaO活量が高いS吸収能に優れるスラグであり、トップスラグ/メタルの界面で脱硫を進行することに加え、鋼中に吹込んだ脱硫剤が、復硫なく、速やかにトップスラグ中に吸収されるためである。
これら組成範囲を満たさない場合、S吸収能が低下してしまうので、高い脱硫効率を得ることはできない。また、吹込み開始〜吹込み末期までの50%未満の処理時間で、トップスラグの組成が、質量%で、CaO:55〜65%、SiO2+Al23:30〜45%、SiO2:2〜10%、MgO:0〜10%であった場合、復硫が発生するし、また、脱硫に寄与しないCaOが発生するため、高い脱硫効率を得ることはできない。
次に、本発明の実施例について説明するが、実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
(実施例1)
転炉にて溶鋼を溶製し、溶鋼鍋に溶鋼成分を調整しながら出鋼した。その後、表1に示す溶鋼鍋内の溶鋼300tに、脱硫剤吹込み用ランスを浸漬させ、表2に示す条件で、表3に示す脱硫剤を鋼中に吹込んだ。
Figure 2014058732
Figure 2014058732
Figure 2014058732
表4に結果を示す。発明例は、何れも10ppm以下を達成しており、CaF2を用いた脱硫剤No.6とほぼ同等の脱硫率が得られている。また、脱硫剤No.7、8では、鋼中S<10ppmを達成できず、何れの発明例よりも脱硫率が低位となった。鋼中でAl23と脱硫剤が反応したこと、トップスラグで転炉スラグと混合されたことで、S吸収能が低下したためと考えられる。
Figure 2014058732
また、脱硫剤No.9も鋼中S<10ppmを達成することができなかった。鋼中に吹込んだ脱硫剤の融点が高く、脱硫に寄与する液相の量が少なかったと推定される。
Na2O:10質量%の脱硫剤No.10においても、鋼中S<10ppmを達成できず、何れの発明例よりも脱硫率が低位となった。
発明例の処理後スラグ中のNa2Oは、何れも1.5質量%以下であったが、比較例では、Na2Oが2質量%以上存在していた。本発明の処理後スラグは、環境上問題なくスラグを再利用することが可能である。
前述したように、本発明によれば、転炉精錬後の溶鋼の脱硫処理において、CaF2を使用せず、脱硫スラグの環境上の問題を生じることなく、安定的に短時間で、S<10ppm以下の極低S鋼を製造することが可能である。よって、本発明は、鉄鋼産業において利用可能性が高いものである。

Claims (3)

  1. 脱硫剤の成分組成が、質量%で、
    CaO:66%以上、
    Al23:2〜22%、
    SiO2:2〜10%、
    MgO:0〜10%、
    X:0.5〜5%、
    (Al23+SiO2)/(CaO+X):0.03〜0.32
    であることを特徴とする溶鋼の脱硫剤。
    ここで、Xは、Na2O、K2O、Li2Oのいずれか1種以上。
  2. 転炉精錬後の溶鋼の脱硫方法であって、
    転炉から溶鋼を取鍋に出鋼する際に、当該取鍋内にCaOを投入し、
    出鋼中又は出鋼後、又は、両方のタイミングで、取鍋内のスラグの上に、嵩比重が0.1〜2.7のAl源を投入し、その後、
    上記溶鋼に、請求項1に記載の脱硫剤を吹き込む
    ことを特徴とする溶鋼の脱硫方法。
  3. 脱硫剤を吹き込む際に、吹込み開始〜吹込み終了までの処理時間の50%以上の間、トップスラグの成分組成を、質量%で、
    CaO:55〜65%、
    SiO2+Al23:30〜45%、
    SiO2:2〜10%、
    MgO:0〜10%
    とすることを特徴とする請求項2に記載の溶鋼の脱硫方法。
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