JP2014055923A - タイヤ用ダイナミックバランス測定装置 - Google Patents

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和夫 中山
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Abstract

【課題】タイヤ用ダイナミックバランス測定装置において、荷重信号に含まれる2次以上の高調波成分の影響を可及的に低減して測定精度を高めることを目的とする。
【解決手段】荷重センサから出力される荷重信号に含まれる2次以上の高調波信号成分を、高調波除去フィルタ24によって除去し、更に、エンコーダ9で検出される基準回転位置と高調波除去フィルタ24によって濾波処理された荷重信号に現れるアンバランス位置との位相差を位相差補正手段28で補正し、補正された位相差に基づいて、タイヤのダイナミックバランスを測定するようにしている。
【選択図】図10

Description

本発明は、タイヤのダイナミックバランスを測定するタイヤ用ダイナミックバランス測定装置に関する。
タイヤ用ダイナミックバランス測定装置は、一般に、軸受を介して鉛直に支持されて回転駆動される回転軸に設けた下部リムと、該下部リムに対向して昇降可能かつ回転自在に設けられた上部リムとによって、被検タイヤを保持して回転させると共に、タイヤのアンバランスよって発生する遠心力を荷重センサで検出し、その検出結果からダイナミックバランスを算出するよう構成されている(例えば、特許文献1参照)。
かかるタイヤ用ダイナミックバランス測定装置では、荷重センサからの荷重信号には、タイヤのアンバランスに関係しない回転軸の回転摩擦ムラ等の機械荷重による2次以上の高調波成分が含まれ、測定精度に影響を与える。
このため、例えば、特許文献2では、荷重信号を周波数成分に分解し、その周波数成分中の2次以上の高調波成分の変化を逐次監視しておき、2次以上の高調波成分の変化が所定値以上となったときに、測定に影響を与える外乱が発生したとして検出する技術が開示されている。
特開平7−174658号公報 特開2011−191249号公報
タイヤのアンバラスを精確に測定するには、機械荷重による2次以上の高調波成分の変化が所定値以上になるか否かに関わらず、このような2次以上の高調波成分の影響を可及的に低減する必要があるが、上記特許文献2には、2次以上の高調波成分の変化が所定値以上になったときに、測定を中止して機械の整備や調整を行うことが記載されているだけである。
すなわち、特許文献2では、測定を中止して機械の整備や調整を行う以外は、機械荷重による2次以上の高調波成分の影響を低減するための具体的な手段は、何等開示されていない。
本発明は、上述のような点に鑑みて為されたものであって、タイヤ用ダイナミックバランス測定装置において、荷重信号に含まれる2次以上の高調波成分の影響を可及的に低減して測定精度を高めることを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明では、次のように構成している。
(1)本発明のタイヤ用ダイナミックバランス測定装置は、タイヤを回転させる回転軸と、前記タイヤの回転によって生じる荷重を検出する荷重センサと、前記回転軸の回転位置を検出する回転位置検出器とを備えるタイヤ用ダイナミックバランス測定装置であって、
前記荷重センサから出力される荷重信号に含まれる2次以上の高調波信号成分を除去する高調波除去フィルタを備え、
前記高調波除去フィルタによって濾波処理された荷重信号及び前記回転位置検出器の検出出力に基づいて、タイヤのダイナミックバランスを測定するものである。
高調波除去フィルタは、デジタルフィルタであってもよいし、アナログフィルタであってもよい。この高調波除去フィルタは、1種類のみ、例えば2次の高調波信号成分のみ除去するものであってもよいし、複数種類、例えば、2次及び3次の高調信号成分を除去するものであってもよい。
本発明のタイヤ用ダイナミックバランス測定装置によると、荷重センサから出力される荷重信号に含まれる2次以上の高調波信号成分を高調波除去フィルタによって除去するので、荷重信号に含まれる2次以上の高調波信号成分の影響を低減してタイヤのダイナミックバランスの測定精度を高めることができる。
(2)本発明の好ましい実施態様では、前記回転位置検出器で検出される基準回転位置と前記高調波除去フィルタによって濾波処理された荷重信号に現れるアンバランス位置との位相差を補正する位相差補正手段を備え、
前記位相差補正手段で補正された位相差に基づいて、タイヤのダイナミックバランスを測定するものである。
この実施態様によると、回転位置検出器で検出される基準回転位置と高調波除去フィルタによって濾波処理された荷重信号に現れるアンバランス位置との位相差を補正するので、高調波除去フィルタによって生じる位相のずれを補正して測定精度を一層高めることができる。
(3)上記(2)の実施態様では、前記位相差補正手段は、前記高調波除去フィルタによる位相遅れ量に基づいて、前記基準回転位置と前記高調波除去フィルタによって濾波処理された荷重信号に現れるアンバランス位置との位相差を補正するようにしてもよい。
この実施態様によると、回転位置検出器で検出される基準回転位置と高調波除去フィルタによって濾波処理された荷重信号に現れるアンバランス位置との位相差を、高調波除去フィルタによる位相遅れ量に基づいて補正するので、高調波除去フィルタによる位相遅れ量の影響をなくして測定精度を一層高めることができる。
(4)本発明の他の実施態様では、前記高調波信号成分は、タイヤの1回転を1周期とする1次成分信号としたときの2次以上の高次の成分信号である。
この実施態様によると、アンバランスに関係しない2次以上の高次の成分信号を除去して測定精度を高めることができる。
(5)本発明の更に他の実施態様では、前記高調波信号成分の前記次数が設定される設定部を備え、前記設定部で設定された次数の高調波信号成分を除去する高調波除去フィルタを設ける。
この実施態様によると、測定精度に与える影響が大きい高調波信号成分の次数を、設定部から設定することにより、その次数の高調波信号成分を除去する高調波除去フィルタを設けることができる。
本発明によれば、荷重センサから出力される荷重信号に含まれる2次以上の高調波信号成分を高調波除去フィルタによって除去するので、荷重信号に含まれる2次以上の高調波成分の影響を低減してタイヤのダイナミックバランスの測定精度を高めることができる。
図1は本発明の一実施の形態に係るタイヤ用ダイナミックバランス測定装置の斜視図である。 図2は図1の装置の測定制御系を示す概略ブロック図である。 図3はタイヤのダイヤミックバランスの態様を示す概略図である。 図4はタイヤのアンバランスの算出を説明するための図1の装置の概略側面図である。 図5はタイヤのアンバランスの測定原理を説明するための概略平面図である。 図6(a)は荷重センサからの荷重信号を、図6(b),(c)はエンコーダからの原点パルス信号及び角度パルス信号をそれぞれ示す波形図である。 図7(a)は荷重センサからの荷重信号及びそれに含まれる1次,2次成分信号を、図7(b)はエンコーダからの原点パルス信号を示す波形図である。 図8(a)は図7(a)の荷重信号から2次成分信号を除去したフィルタの出力及び図7(a)の1次成分信号を、図8(b)はエンコーダからの原点パルス信号を示す波形図である。 図9は高調波除去フィルタによる位相遅れ量を算出する構成を示すブロック図である。 図10は位相差の補正及びタイヤのアンバランスの算出の構成を示すブロック図である。 図11は高調波除去フィルタによる位相遅れ量を算出するための入力信号及び出力信号の波形図である。 図12は高調波除去フィルタ出力の原点パルス信号から位相差φを算出するためのメモリテーブルの構成を示す図である。 図13は動作説明に供するフローチャートである。 図14はアナログフィルタの一例を示す回路図及びその周波数特性図である。 図15は高調波除去フィルタを切換え選択するための回路構成図である。
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るタイヤ用ダイナミックバランス測定装置(以下「タイヤバランサ」ともいう)の一部を省略して示す斜視図である。
この実施形態のタイヤバランサは、タイヤ1を上リム2と下リム(図示せず)との間に装着して中心軸P回りに回転させ、この装着したタイヤ1の上面側のアンバランスと下面側のアンバランスとを測定するものである。
このタイヤバランサは、前記中心軸Pが、地面に対して垂直となるように設けられている。すなわち、直方体状の本体3を、互いに平行する2本のトーションバー4a、4bを介して架台等の固定部5に吊り下げてあり、更に、この本体3は、この2本のトーションバー4a、4bの通る平面に平行であって、かつ、この2本のトーションバー4a、4bに直交する方向に配置された4本のトーションバー(6a、6b)、(6a、6b)を介して架台等の固定部5と結合している。
これによって、本体3は、地面に対して垂直方向に配置した2本のトーションバー4a、4bと、地面に対して平行な4本のトーションバー(6a、6b)、(6a、6b)とのそれぞれに対して直交する方向(図1の矢符Aで示される方向)にのみ移動可能に設けられている。
また、本体3の側面の上部と下部の各位置には、合計2台のロードセル等からなる荷重センサ7a、7bを設けてあり、各荷重センサ7a、7bは架台等の固定部5と結合している。これによって、各荷重センサ7a、7bは、本体3に作用する図の矢符Aの方向の力を検出することができる。
また、図に示すように、本体3の下面から回転軸8が下方に突出しており、この回転軸8には、エンコーダ9及び従動プーリ10が設けられている。回転位置検出器としてのエンコーダ9は、回転軸8の回転位置を検出するものであり、例えば、インクリメンタル式のロータリエンコーダからなる。このエンコーダ9によって、回転軸8の中心軸P回りの回転位置を検出することにより、この回転軸8と結合する下部リムの回転位置を検出することができる。この実施形態では、エンコーダ9は、基準位置である原点位置を検出して後述の原点パルス信号を1回転毎に1個出力すると共に、回転角度に応じて後述の角度パルス信号を1回転毎に360個出力する。
従動プーリ10は、駆動ベルト11を介して原動プーリ12と連結されており、この原動プーリ12は、サーボモータ13の駆動軸に設けられている。つまり、回転軸8は、サーボモータ13によって回転駆動される構成である。なお、タイミングベルト11の張力が、4本のトーションバー(6a、6b)、(6a、6b)を引っ張り方向に働くようにサーボモータ13を配置してあるので、荷重検センサ7a、7bにはタイミングベルト11の張力が働かないようになっている。
本体3の内部は、図示していないが、中央に貫通孔を有しており、この貫通孔の上側開口縁と下側開口縁には軸受を設けてある。そして、この2つの軸受の内側には、円筒状の上記回転軸8が嵌合しており、この回転軸8は軸受を介して回動自在に支持されている。
また、回転軸8の上面には、図に示すように円筒状のシリンダ本体14を介して下部リム(図示せず)を設けてあり、このシリンダ本体14と回転軸8が下部リム軸を構成している。
図2は、図1のタイヤバランサの測定制御系を示す概略ブロック図であり、図1に対応する部分には、同一の参照符号を付す。
この実施形態のタイヤバランサは、タイヤ1の上面側のアンバランスと下面側のアンバランスとをそれぞれ測定するための第1,第2測定ユニット15a,15bを備えている。各測定ユニット15a,15bは、上述の各荷重センサ7a,7bと、各荷重センサ7a,7bでそれぞれ検出された出力を、エンコーダ9で検出された回転軸8の回転位置に対応付けられた第1,第2デジタルデータとしてそれぞれ出力する第1,第2制御器16a,16bとを有している。各制御器16a,16bには、エンコーダ9からの原点パルス信号がサンプリングのトリガ信号として与えられると共に、角度パルス信号がサンプリングのクロック信号として与えられる。
各制御器16a,16bは、図示しないA/D変換器、演算部及び通信部等を備えている。A/D変換器は、各荷重センサ7a,7bでそれぞれ検出されたアナログ荷重データをそれぞれデジタル化し、演算部は、A/D変換器でそれぞれ変換されたデジタル荷重データに含まれる高調波成分を、後述の高調波除去フィルタによって除去し、エンコーダ9からの出力に対応付けたデジタルデータを生成し、通信部は、演算部のデジタルデータを演算装置19に送信する。
各制御器16a,16bで回転軸8の回転位置に応じてそれぞれサンプリングされた回転軸8の上側及び下側の不釣合い力に基づく第1及び第2デジタルデータは、当該デジタルデータに基づいてダイナミックバランスを演算する演算装置19へRS485等のデジタル通信線21を介して送られる。
演算装置19は、第1,第2測定ユニット15a,15bの各制御器16a,16bに対してそれぞれIDを割り当て、当該割り当てられたIDを用いて通信することにより、送信時に何れの制御器16a,16bへの命令かを区別すると共に、受信時に何れの制御器16a,16bから送られたデータであるかを認識している。
演算装置19は、上記のようにして各測定ユニット15a,15bからそれぞれ得られた第1及び第2デジタルデータを後述するようにベクトル化して、タイヤ1のダイナミックバランスを演算する。
なお、演算装置19は、タイヤ1を装着してない状態における回転軸8等の回転体自体のアンバランスを計測し、これを零ベクトルとして記憶しておき、タイヤ1を装着した状態においてそれぞれ検出された第1及び第2デジタルデータをベクトル化した際に、当該零ベクトルを差し引く演算を行うことが好ましい。これにより、回転軸8等の回転体自体が経年変化等によりアンバランスとなった場合でも、タイヤ1のダイナミックバランスを高精度に演算することができる。
タイヤ1のダイナミックバランスは、具体的には、タイヤ1の装着状態における上面側のアンバランスを示す上側アンバランス、同じく下面側のアンバランスを示す下側アンバランス、タイヤ1の静止状態におけるタイヤ1全体のアンバランスを示すスタティックアンバランス、及び、タイヤ1を回転軸8の中心軸P回りに回転させたときに発生するモーメントを示すカップルアンバランスが含まれる。
図3はタイヤのダイナミックバランスの態様を示す概略図である。図3(a)に示すように、タイヤ1を静止させた状態でタイヤ1全体としてアンバランス質量m1が生じた場合、タイヤ1のアンバランス質量m1によって回転軸8にはモーメントM1が働くため、回転軸8の中心軸Pは水平面に垂直な位置よりタイヤ1のアンバランス質量m1が存在する箇所が水平面に近づく方向に傾く。演算装置19は、このようなタイヤ1の静止状態における質量のアンバランスをスタティックアンバランスとして演算する。
一方、図3(b)に示すように、タイヤ1の設置状態においてタイヤ1の上面のある回転位置にアンバランス質量m2が生じ、かつ同じくタイヤ1の下面においてアンバランス質量m2と中心軸Pを基準にして反対側に同じアンバランス質量m3が生じた場合には、タイヤ1を静止させた状態ではタイヤ1全体としてアンバランス質量m1は生じない。しかし、このようなアンバランス質量m2,m3が存在すると、タイヤ1が回転した際に、アンバランス質量m2,m3のそれぞれに径方向外方への遠心力F2,F3が生じるため、タイヤ1の回転にぶれ(振れ力、すなわち不釣合い力)が生じてしまい問題となる。
そこで、演算装置19は、図3(c)に示すように、これらのアンバランス質量m2,m3のそれぞれを上側アンバランス及び下側アンバランスとして演算するとともに、タイヤ1を回転軸8の中心軸P回りに回転させた際に生じる遠心力F2,F3により発生するモーメントM2をカップルアンバランスとして演算する。
上側アンバランス及び下側アンバランスについて、演算装置19は、第1,第2荷重センサ7a,7bで検出された値(第1,第2デジタルデータ)をエンコーダ9の出力に基づいてベクトル化(第1及び第2検出ベクトルPU,PLを演算)し、当該第1及び第2検出ベクトルPU,PLに基づいて、上側及び下側アンバランスベクトルUU,ULを演算する。すなわち、上側アンバランスベクトルUU及び下側アンバランスベクトルULは以下のように示される。
L=γ1L+γ2U
U=δ1L+δ2U
但し、変換係数γ1,γ2,δ1,δ2は、
γ1=Z2/rω2(Z2−Z1
γ2=−(L−Z2)/rω2(Z2−Z1
δ1=−Z1/rω2(Z2−Z1
δ2=(L−Z1)/rω2(Z2−Z1
この変換係数γ1,γ2,δ1,δ2の算出式において、Z1は、上述の図1に対応する図4の概略側面図に示すように、下側の荷重センサ7bの設置位置とタイヤ1の下端面との間の距離を示し、Z2は下側の荷重センサ7bの設置位置とタイヤ1の上端面との間の距離を示し、Lは両荷重センサ7a,7bの設置位置間の距離を示し、ωは回転軸8の回転によるタイヤ1の角速度を示し、rは図3(c)に示す上リム2と下リム22とによって挟持されるタイヤ1の内径(上側及び下側アンバランスの位置)を示している。
上側及び下側アンバランスベクトルUU,ULと、第1,第2ロードセル7a,7bの検出値に基づく第1,第2検出ベクトルPU,PLとを関係づける変換係数γ1,γ2,δ1,δ2は、校正を行うことによって求めることができる。すなわち、図3(c)に示す上リム2の半径r'の位置に質量WUの分銅を取り付けたときのPU,PLの値PUU,PLUと、下リム22の半径r'の位置に質量WLの分銅を取り付けたときのPU,PLの値PUL,PLLとを用いて演算することにより求められる。
更に、スタティックアンバランスについて、演算装置19は、上記で演算された上側及び下側アンバランスベクトルUU,ULを用いて演算する。具体的には、スタティックアンバランスベクトルSはS=UU+ULで示される。
また、カップルアンバランスについても、演算装置19は、上記で演算された上側及び下側アンバランスベクトルUU,ULを用いて演算する。具体的には、カップルアンバランスベクトルC=(UU−UL)・1/r'・d/2,−C=−(UU−UL)・1/r'・d/2で示される。ここで、dは図3(c)に示すタイヤ1の上端面と下端面との間の距離を示す。
次に、図5及び図6に基づいて、タイヤのアンバランスと荷重センサからの荷重信号との関係について説明する。
以下の説明では、タイヤ1の上面側及び下面側を区別することなく、タイヤ1のアンバランスとし、上記荷重センサ7a,7bも荷重センサ7とし、それ以降の信号処理も代表的に説明する。
図5は、図1に対応する概略平面図であって、図1に対応する部分には、同一の参照符号を付す。
ここでは、地面に対して平行なトーションバー6a,6bに平行であって、タイヤ1の中心及び回転軸8の回転中心Oを通るx軸と、それに直交するy軸とを示しており、タイヤ1には、アンバランス質点mが、回転軸8にタイヤ1を装着した場合に、y軸と角度θ(アンバランス角)をなす位置にあるとする。また、タイヤ1を矢符B方向へ回転させたときに、本体3に作用する矢符A方向の力を荷重センサ7で検出する。
タイヤ1を矢符B方向へ回転させたときアンバランス質点mに発生する遠心力は、本体3を介して荷重センサ7に正弦波信号として作用し、図6(a)に示すように正弦波荷重信号が、荷重センサ7の出力信号として検出される。
すなわち、タイヤ1は一定速度で回転するので、アンバランス質点mには、常にタイヤ半径方向に一定の力fが作用するが、荷重センサ7に作用する遠心力fは、荷重センサ7の荷重検出方向と遠心力fの作用方向とのなす角度の関係に応じて変化し、荷重センサ7の出力信号である荷重信号は、図6(a)に示す正弦波になる。
回転軸8には、上述のようにエンコーダ9が備えられ、エンコーダ9内の回転体に設けられた原点位置が、y軸上のa点(原点位置)に来たときエンコーダ9は、図6(b)に示す原点パルス信号を出力し、角度1度ずつ回転する毎に、図6(c)に示す角度パルス信号を出力するようになっているので、原点パルス信号の発生する位置と荷重センサ7が最大の遠心力fを検出する位置との間には、角度θの差がある。
荷重センサ7の出力信号の最大振幅Rを測定すれば、その値がタイヤ1のアンバランス量を表すことができ、最大値又は最小値の生じる位置と原点パルス信号の出力位置とのなす角度θを測定すれば、タイヤ1のアンバランス位置(アンバランス角)を表すことができる。
しかし、実際のアンバランス質量と荷重センサの荷重信号との間の関係は、不明であるから、測定に当って双方を関係づける上述の変換係数を求める校正を行う。
すなわち、校正時においては、上述のように上リム、下リムの所定の位置に既知の重量WU,WLの分銅を付けて、これを所定の基準アンバランス量、位置とし、荷重センサ7からの荷重信号とエンコーダ9の原点パルス信号とを用いて求められるアンバランス量、位置を前記基準アンバランス量、位置の値に変換する変換係数δ1,δ2,γ1,γ2を決定する。
このような校正を行う前に、回転軸8等の回転体自体が、上述のようにアンバランスを有しているので、予めテスト用タイヤを装着して回転体自体のアンバランス量、位置を零ベクトルとして測定する。
その際、テスト用タイヤもアンバランス質点を有するので、タイヤの装着位置を90度ずつ4箇所(0度,90度,180度,270度)変えて、零ベクトルを求めるようにし、テスト用タイヤのアンバランスベクトルを回転体の零ベクトルから除外する。
その上で、タイヤのアンバランス量と角度を精確に測定するには、荷重センサの出力信号が精確にタイヤのアンバランス量を表し、原点パルス信号と荷重センサの出力信号のなす位相角が精確にアンバランス角度を表すものでなければならない。
上記特許文献2にも開示されているように、荷重センサ7の出力信号には、タイヤ1のアンバランスによって図7(a)に示す測定対象である正弦波の1次成分信号S1の他に、1次成分信号S1に同期して現れ、タイヤ1のアンバランス量に関係しないベルト張力や回転摩擦力による2次以上の高調波成分が含まれる。更にこれら高調波成分は、運転継続中に変動する。
図7(a)は、タイヤのアンバランスによる1次成分信号S1に2次成分信号S2が同図に示す位相関係で含まれるとした場合の荷重センサ7の出力信号Sを示し、図7(b)は、エンコーダ9からの原点パルス信号を示している。
タイヤのアンバランスによる1次成分信号S1に2次成分信号S2が含まれるとすると、図7(a)に示すように、荷重センサ7の出力信号Sは、これらの信号S1,S2を合成したものが現れることになる。
タイヤ1のアンバランスによる1次成分信号S1が変形し、振幅の形状が異なると、測定した荷重センサ7の出力信号Sの最大振幅値は、タイヤ1のアンバランス量の大きさに対応しなくなり、該最大振幅の発生位置も高調波成分信号によって図7(b)の原点パルス信号に対してシフトするので、荷重センサ7の出力信号Sの最大振幅値がタイヤのアンバランス量に、そして原点パルス信号との間の位相角がタイヤのアンバランス位置に精確に対応しなくなる。
タイヤのアンバランスを精確に測定するには、機械荷重による2次成分信号S2が変化する、しないに関わらず、荷重センサ7の出力信号Sから2次以上の高調波信号成分を除去し、タイヤ1のアンバランス情報を表す1次成分信号S1のみを検出すると同時に、高調波信号成分を除去した1次成分信号S1の振幅を検出する必要がある。
原点パルス信号の発生する位置(測定基準位置と呼ぶ)とアンバランス位置とのなす角度である位相差は、原点パルス信号と荷重センサ7の出力信号が最大値(極大値)または最小値(極小値)を出力する位置との差によって検出され、図7において、2次成分信号S2が含まれていなければ、エンコーダ9の原点パルス信号と1次成分信号S1との位相差はθであるところ、2次成分信号S2が含まれていると、位相差θ´(≠θ)として検出されることになる。
したがって、タイヤのアンバランスを精確に測定するには、機械荷重による2次成分信号S2が変化する、しないに関わらず、荷重センサ7の出力信号Sから2次以上の高調波信号成分を除去し、タイヤのアンバランス情報を表す1次成分信号S1のみを検出すると同時に、高調波信号成分を除外した1次成分信号S1から遠心力が荷重センサ7に作用する位置と原点パルス信号の出力位置(測定基準位置)との位相差θを検出する必要がある。
そこで、この実施形態では、荷重センサ7の出力信号から2次以上の高調波信号成分を除去し、タイヤバランサの測定精度を高めるために、次のようにしている。
すなわち、この実施形態では、荷重センサ7の出力信号において、タイヤ1の1回転に対応する周期の振動信号である1次成分信号に含まれる、2次以上の高次の高調波信号成分を除去する高調波除去フィルタとしてデジタルフィルタを設けるようにしている。
図7(a)の荷重センサ7の出力信号Sを、ノッチフィルタである高調波除去フィルタによってフィルタリングすると、高調波除去フィルタの出力信号S´には、図8(a)の実線に示すように、図7(a)の荷重センサ7の出力信号Sから高調波である2次成分信号S2が除去され、元の荷重センサ7の出力信号に含まれる1次成分信号S1が、振幅、位相を変化させた形で現れる。なお、図8(a)には、測定対象である1次成分信号S1を併せて示している。
この図8に示すように、高調波除去フィルタの出力信号S´は、フィルタによる減衰が生じるため測定対象である1次成分信号S1よりも振幅が小さくなる。また、測定対象である1次成分信号S1の原点パルス信号の位置とアンバランス位置とのなす角度である位相差θに対して、高調波除去フィルタの出力信号S´は、フィルタによる位相遅れが生じるために位相差φとなる。
高調波除去フィルタの出力信号S´は、振幅が変化しているが、上述のように基準の、既知の質量(重量)の分銅を使って分銅によるアンバランス量と測定値が一致するように変換係数を求める校正過程を経るので、振幅は校正される。
この実施形態では、高調波除去フィルタの出力信号S´の前記位相差φを、測定対象である1次成分信号S1の位相差θに補正するようにしている。具体的には、例えば、高調波除去フィルタによって生じる図8に示す原点パルス信号に対する位相遅れ量ψを求めておき、この位相遅れ量ψと、高調波除去用フィルタの出力信号S´の原点パルス信号の位置とアンバランス位置との位相差φとから、測定対象である1次成分信号S1の位相差θを、次式に従って算出する。
θ=φ−ψ
高調波除去フィルタの出力信号S´である1次成分信号は、フィルタの通過によって位相遅れが生じているものの、ほぼ高調波は除去され、タイヤのアンバランス量、位置に対応する正弦波の形状へ戻るので、図8(b)に示すエンコーダ9からの原点パルス信号に対する位相差φを精確に測定することができる。
次に、図9及び図10に基づいて、この実施形態におけるタイヤのダイナミックバランスの測定処理の一例を説明する。
高調波除去フィルタによって生じる位相遅れ量ψは、例えば、図9に示されるようにして求めることができる。
すなわち、基準の振幅を有する正弦波のデータを正弦波データ記憶部23に予め格納しておき、この正弦波を、高調波除去フィルタ24に入力し、高調波除去フィルタ24の入力と出力とに基づいて、位相遅れ量算出部25によって、高調波除去フィルタ24によって生じる位相遅れ量ψを算出し、位相遅れ量記憶部26に格納しておく。なお、この位相遅れ量ψの算出手順については更に後述する。
変換係数を求める校正運転時、及び、タイヤのアンバランス量とアンバランス位置とを求める稼働運転時には、例えば、図10のブロック図に示すようにして位相差の補正が行なわれる。
すなわち、タイヤを回転して得られる荷重センサ7からの荷重信号を、A/D変換し、高調波除去フィルタ24に入力して高調波成分を除去し、この高調波成分を除去した荷重信号と、エンコーダ9からの出力とに基づいて、アンバランス・変換係数演算部27では、稼働運転時には、アンバランス量とアンバランス位置を、また、校正運転時には、変換係数をそれぞれ演算するのであるが、その際、高調波除去フィルタ24の出力信号のアンバランス位置と原点パルス信号の出力位置と位相差として、位相差補正手段28によって補正された位相差θを用いて演算を行う。
位相差補正手段28は、高調波除去フィルタ24からの高調波が除去された荷重信号とエンコーダ9の出力とに基づいて、荷重信号の原点パルスの位置とアンバランス位置とのなす角度である位相差φを算出する位相差算出部29と、この位相差φと上述の位相遅れ量記憶部26に格納されている位相遅れ量ψとによって、位相差を補正し、精確なアンバランス質点の位置を求めるための補正した位相差θ(=φ−ψ)を出力する位相差補正部30とを備えている。
このようにして校正運転時及び稼働運転時には、高調波除去フィルタ24によって荷重センサ7の荷重信号に含まれる高調波信号成分を除去すると共に、精確なアンバランス質点を求める位相差θを算出し、この位相差θ及び高調波除去フィルタ24の出力信号に基づいて、変換係数、あるいは、アンバランス量及びアンバランス位置を求めるようにしている。
これによって、荷重信号に含まれる高調波信号成分の影響を低減することができると共に、高調波除去フィルタによって生じる位相のずれを補正してタイヤのダイナミックバランスの測定精度を高めることができる。
荷重センサ7からの荷重信号には、高調波の周波数より十分大きい周波数のノイズが含まれる場合があるので、荷重センサ7の出力信号を殆ど遅らせない程度の高いカットオフ周波数を持つアナログフィルタを荷重センサ7からの荷重信号の通過経路に設けることが好ましい。
なお、図10の各ブロックは、図9の各ブロックと同様に、上述の図2の各制御器16a,16b及び演算装置19によって構成され、上側のアンバランス量、アンバランス位置、及び、下側のアンバランス量、アンバランス位置をそれぞれ求める。
以下、各部の構成について更に詳細に説明する。
高調波除去フィルタ24は、除去する高調波の次数を、図示しない設定部から任意に設定することができる。作業者は、実機の状態を見極めながら、1次成分信号に対する各次数の高調波の振幅の影響の大きさに基づいて、任意に選択して高調波除去フィルタ24の次数を設定できるようにしている。
例えば、荷重センサ7からの荷重信号を高速フーリエ変換し、振幅の影響の大きい高調波を選択してその高調波の次数を設定することができる。
具体的には、メモリに、予め1種類、または複数種類の次数の高調波を除去するフィルタリングプログラムを設けておき、設定された高調波の次数に応じてプログラムを選択して演算させるようにしてもよい。
高調波除去フィルタ24の次数としてnの値を設定すると、2次高調波から設定した値nまでの高調波の周波数にノッチを持つ高調波除去フィルタを設定する。
例えば、n=3と設定すると、2次、3次の高調波の周波数にノッチを持つ高調波除去フィルタ24が設定される。
設定した値の特定の高調波の周波数にノッチを持つ高調波除去フィルタ24を設定するようにしてもよい。
また、予め所定の次数の高調波の周波数にノッチを持つ高調波除去フィルタ24を固定的に設定しておくようにしてもよい。
この高調波除去フィルタ24を構成するデジタルフィルタとして、特定の周波数帯域に大きな減衰特性を持つフィルタ形式の基本形を、例えば、双2次フィルタとし、パルス伝達関数の形式として、
H(z)=(b0+b1・z-1+b2・z-2)/(a0+a1・z-1+a2・z-2) …… (1)
とする。
高調波除去フィルタ24の前記nの値として、例えば、n=3が設定されるとすると、2次と3次の高調波成分の周波数に対する2種類のノッチフィルタを、従属接続の形式で設定する。
上記式(1)の係数a0,a1,a2,b0,b1,b2は、サンプリング周波数、ノッチ周波数、ゲイン、減衰ピークの鋭さによって与えられる。
タイヤバランサによるタイヤのアンバランスの測定時における回転速度Vrpmは、設定される、すなわち、予め与えられているので(実際にはV=500rpm程度が設定される。)、アンバランス質点による遠心力による振動信号の周期、すなわち、1次成分信号の周波数fは、f=V/60(Hz)であり、上述のように、角度パルス信号に応じて1度ずつの角度でサンプリングするので、サンプリング周波数360・fを、いずれのノッチフィルタに対しても使用する。ノッチ周波数は、2f、3fを使用する。
フィルタの次数が設定されると、上記の式(1)に基づいて、フィルタの入出力信号の処理式が設定される。
H(z)=Y(z)/X(z)と置いて、
Y(z)・(a0+a1・z-1+a2・z-2
=X(z)・(b0+b1・z-1+b2・z-2
より、τをサンプリング信号の周期とすると、
a0・y(<q>・τ)+a1・y(<q−1>・τ)+a2・y(<q−2>・τ)
=b0・x(<q>・τ)+b1・x(<q−1>・τ)+b2・x(<q−2>・τ)
の形式に基づき、入出力信号の処理式が、2次、3次の高調波除去フィルタに対して2種類設定される。qはサンプリングデータの入出力タイミングを表す。
上記のフィルタは、IIR型フィルタにて説明したが、高調波成分の周波数2・f、3・f、…n・fのそれぞれにノッチを持つFIR型のノッチフィルタを設定してもよい。
次に、このようにして設定した高調波除去フィルタ24の位相遅れ量ψの算出ついて説明する。
アンバランス測定時のタイヤの1回転速度に合わせた周波数の1次成分信号を、高調波除去フィルタ24に入力したときに生じる位相遅れ量ψを、上述の図9の位相遅れ量算出部25によって算出する。
具体的には、基準の振幅を持つ正弦波データを、正弦波データ記憶部23のメモリテーブルに格納しておく。
例えば、正弦波の荷重信号を1度ずつサンプリングして出力するとすれば、測定時の回転速度をVrpmとすると、周波数f=V/60であるから、格納したメモリテーブルのデータの時間間隔τは、1周期=1/f=60/V(sec)を360等分した値であるτ=1/(6・V)secとなる。
図11(a)に示す正弦波の位相角=0〜359度までの値を角度順(角度=0、1、2、3、……)に定めたアドレスステップ値のメモリテーブルに複数周期分格納しておき、時間間隔τ毎に、高調波除去フィルタの入力信号x(<q>・τ)として前記メモリテーブルから角度順(<q>=0、1、2、3、……)に前記値を呼び出す。呼び出した値を、上記のフィルタの処理式に入れて、図11(b)に示される出力信号y(<q>・τ)を算出する。
高調波除去フィルタ24の次数としてn=3が設定されると、高調波除去フィルタ24は、2次、3次の高調波の周波数に対して従属接続されるので、2次用のフィルタの処理式によって演算された結果の出力信号を、3次用のフィルタの処理式の入力信号とし、この3次用のフィルタの処理式の出力信号を演算する。
n=2が設定されると、高調波除去フィルタ24の処理式は、2次用のフィルタの処理式のみ用意される。
n=0または1であれば、高調波除去フィルタ24は設定されず、つまり、処理式は用意されず、フィルタなしとなる。
高調波除去フィルタ24の出力信号の位相遅れ量ψは、例えば、次のようにして算出することができる。すなわち、図11(a)に示される入力信号x(<q>・τ)が、極大となるときの前記メモリテーブルの角度に対応するアドレスステップ値s(s=90+360×k、k=0、1、2、…)を起点とし、図11(b)に示される出力信号y(<q>・τ)の極大値が現れるまでのアドレスステップ数をカウントすることによって算出する。
精確に出力信号y(<q>・τ)の極大値の出現を判定するためには、フィルタの過渡応答が収束した時点で求めるのが好ましいので、出力信号y(<q>・τ)にほぼ一定の極大値が再現された場合のアドレスステップ値にて、つまり、出力信号に前回の極大値とほぼ値の変わらない極大値が現れたとき、その直前の入力信号の極大値の時点を起点にカウントしたアドレスステップ数をもって出力信号の入力信号に対する位相遅れ量ψと定める。
1データ当たりのメモリのアドレスである1アドレスステップは、角度で1度に対応させているので、求めた位相遅れ量のアドレスステップ数に等しい値が、位相遅れ量ψの角度値になる。求めた位相遅れ量ψは、上述の図9の位相遅れ量記憶部26に格納される。
位相遅れ量ψは、上記の正弦波データに代えて、荷重センサ7の出力信号を高調波除去フィルタ24に入力し、この入力信号と高調波除去フィルタ24から出力される出力信号との位相のずれを、原点パルス信号に基づいて求めるようにしてもよい。
また、ノッチフィルタである高調波除去フィルタの性質上、容易に入力信号の周波数に対する位相遅れ量が計算できる場合、例えば、高調波除去フィルタが、所定のタップ数の移動平均フィルタで構成されるような場合は、測定時の回転速度は決まっている、つまり入力信号の周波数は定まっているので、設定される各次数の高調波除去フィルタのそれぞれに対する位相遅れ量を予め計算してメモリに記憶しておき、運転時に作業者が高調波除去フィルタの次数を設定したとき、設定された次数のフィルタに応じて、予め記憶させた位相遅れ量の中から対応するものを選択するようにしてもよい。
また、タイヤバランサの外部のテスト用機器に高調波除去フィルタとして使用するフィルタを設定し、所定の周波数の信号を加えてフィルタの位相遅れ量ψを予め求めておき、テスト用機器を用いて求めた位相遅れ量ψを、タイヤバランサに設定するようにしてもよい。
次に、校正運転時及び稼働運転時における測定について説明する。
校正運転時及び稼働運転時には、荷重センサ7の出力信号を、A/D変換し、設定されたノッチフィルタである高調波除去フィルタ24によってフィルタリングして変換係数やアンバランス量等の演算に用いる。
この場合、アンバランス量、アンバランス角度を正確に計算するのに必要な個数のデータを取得する。
すなわち、校正運転時及び稼働運転時に測定開始指令が発せられると、データ測定開始指令の後に初めて発生する原点パルス信号に同期した角度パルス信号によってA/D変換されたタイミングのデータを、例えば、図12に示すメモリテーブルの回転数N=1の行における、アドレスステップ数1に格納し、それ以降も順次、角度パルス信号の発生するタイミング毎に、A/D変換されたデータを、回転数N=1のアドレスステップ数2、3、……、360のメモリへ格納し、角度パルス信号の361個目のデータからは回転数、つまり、周期に対応するN=2の行のアドレスステップ数1に移って格納し、以下同様に、回転数Nの各行に1周期分のデータをそれぞれ格納する。
図12では、回転数N=1〜16における各行のアドレスステップ数1〜360に、A/D変換されたデータを格納する。以上のデータの格納は、リアルタイムに実施する。
図12のメモリテーブルに格納されたデータは、A/D変換されたデータであって、高調波除去フィルタによってフィルタリングされる前のデータである。
図12のメモリテーブルに格納したデータを、順に回転数Nのアドレスステップ毎、すなわち、N=1のアドレスステップ数1,2,3……360、N=2のアドレスステップ数1,2,3……360、………N=16のアドレスステップ数1,2,3……360の順に呼び出し、呼び出したデータ毎に、設定した高調波除去フィルタの処理式によって出力データを算出する。すなわち、高調波除去フィルタによってフィルタリングされた出力信号を算出する。
ここで、N=1のアドレスステップ数1から、例えばN=6のアドレスステップ数360までの出力データは、高調波除去フィルタの過渡応答の収束時間を見込んで廃棄する。すなわち、高調波除去フィルタの出力が十分安定するまでの6回分の出力データは廃棄する。
入力データとしてN=7のアドレスステップ数1の入力データを計算させた出力値を、改めてN=1のアドレスステップ数1の出力データとして図12に対応するフィルタ出力信号のメモリテーブルに格納する。
これ以降、入力信号N=16のアドレスステップ数360までのデータを計算し、N=1から10までの出力信号のメモリテーブルを完成させる。
フィルタ出力信号のメモリテーブルに設定されたデータにおいて、ノッチフィルタである高調波除去フィルタによって除去できていない、設定した高調波以外の種々の周期のノイズ信号の振幅の分を減衰させるため、N=1から10までの周期において、1〜360のアドレスステップ数の列毎に平均値、すなわち、アドレスステップ数毎に平均値を算出する。
平均値は、高調波除去フィルタ通過後の1次成分信号の1周期分の1〜360度のデータ列であり、アドレスステップ数1のタイミングが原点パルス信号の発生タイミングである。
次に、位相差と振幅計算について説明する。
上記のごとく求めた1周期分のデータ列における極大値及び極小値を求めると共に、極大値の現れるアドレスステップ数を求める。
極大値は、高調波フィルタの出力信号に現れる校正運転時及び稼働運転時のタイヤのアンバランス位置情報の一つである。極小値であってもよい。
求めた極大値のアドレスステップ数が、高調波除去フィルタ出力の原点パルス信号からの位相差φである。この位相差φを高調波除去フィルタ出力の位相差と呼ぶ。
高調波除去フィルタによる位相遅れ量ψは、上述のように予め求められてメモリに記憶されているので、その位相遅れ量ψを呼び出し、原点パルス信号とフィルタ処理する前の1次成分信号との位相差、すなわち、原点パルス信号とタイヤのアンバランス位置との位相差θは、測定した高調波除去フィルタ出力の位相差φを、高調波除去フィルタによる1次成分信号の位相遅れ量ψによって補正し
θ=φ−ψ
と計算して求める。
また振幅R=極大値−平均値によって求める。
以上において、測定データの取得はリアルタイムで実施し、フィルタ処理以降の処理は、一旦必要とする入力信号データを取得した後に実施したが、データを取得する毎にフィルタリング演算もリアルタイムで実施し、必要な入力信号データの取得が完了した時点で位相差θと振幅Rを算出するようにしてもよい。
校正運転時も稼働運転時と同じ処理である。算出した位相差θと振幅Rの値に基づいて、校正運転時において変換係数を求める。なお荷重信号の周波数によって高調波除去フィルタによる振幅の減衰量も位相遅れ量も変化する。それ故、変換係数、位相遅れ量ψはタイヤに与える回転速度に応じた値として求めるものとする。そして校正運転時と稼働運転時のタイヤの回転数は同じとする。
図13は、校正運転時及び稼働運転時の処理の流れを示すフローチャートである。
測定を開始し、荷重センサからのアナログ荷重信号をデジタル荷重信号にA/D変換し(ステップn1)、デジタル荷重信号を、高調波除去フィルタによってフィルタリング処理し(ステップn2)、高調波除去フィルタの出力から振幅R及び位相差φを算出する(ステップn3)。
次に、予め求めた高調波除去フィルタによる位相遅れ量ψを用いて前記位相差φを補正し、精確なアンバランス質点を求めるための位相差θを算出した後(ステップn4)、ベクトル化を行い(ステップn5)、測定の種類が、校正運転であるか稼働運転であるかを判断する(ステップn6)。
校正運転時には、テスト用タイヤを装着して回転体自体のもつアンバランス量、位置を零ベクトルとして取得し(ステップn7)、零ベクトルをキャンセルし(ステップn8)、上リム及び下リムに分銅を付けてそれぞれ測定した値から変換係数を取得して終了する(ステップn9)。
稼働運転時には、校正運転時に取得した零ベクトルをキャンセルし(ステップn10)、アンバランスベクトルを演算し(ステップn11)、スタティックアンバランス、カップルアンバランス及びダイナミックアンバランスを演算して終了する(ステップn12)。
(他の実施形態)
上述の実施形態では、高調波除去フィルタは、デジタルフィルタで構成したけれども、アナログフィルタで構成してもよい。
アナログフィルタで構成する場合には、予め図2の各測定ユニット15a,15b内に1種類、または複数種類の次数の高調波を除去するノッチフィルタからなる高調波除去フィルタを設け、設定によってこれらのいずれを使用するか選択するようにする。
上記のパルス伝達関数に代えて、アナログ伝達関数は、
H(s)=(s2+1)/(s2+a・s+1)
とし、
アナログフィルタの入出力の処理式は、
H(s)=Y(s)/X(s)と置いて、
Y(s)・(s2+a・s+1) =X(s)・(s2+1)
を2階の微分方程式にし、これを差分方程式に変換して入出力信号の処理式が設定される。
上記のアナログ伝達関数を、差分方程式に変換して出力を求める場合、サンプリング時間間隔は、上述の実施形態のτの値を使用する。
図14(a)にアナログのノッチフィルタである高調波除去フィルタの一例を、図14(b)にその周波数特性を示す。この高調波除去フィルタには、荷重センサの出力信号が増幅回路(図示せず)を介して入力され、高調波除去フィルタの出力は、A/D変換器(図示せず)に与えられる。
図14(a)において、R=100KΩ、C=0.1μF、Ra=22KΩ、Rb=18KΩを選択したときには、図14(b)に示すようにノッチ周波数が約13Hz程度の特性を示す。
このようにフィルタ定数を適宜選択し、例えば、2次と3次の高調波に対するノッチフィルタを構成するようにして、2次、3次高調波除去フィルタとして適切なこれらの定数を選択し、予め測定ユニット15a,15bに設定した上で2つのフィルタを従属接続するように組み込む。
図15は、組み込まれた複数の高調波除去フィルタを選択するための回路構成を示す図である。
同図において、SW1,SW2が第1,第2アナログスイッチである。高調波除去フィルタの次数としてn=2が設定されると、第1アナログスイッチSW1は、接点b側に接続され、第2アナログスイッチSW2は、接点d側に接続される。これによって、荷重センサからの出力信号は、2次高調波除去フィルタ32のみを通過してA/D変換器34に入力される。
高調波除去フィルタの次数としてn=3が設定されると、第1アナログSW1は、接点a側に接続され、第2アナログスイッチSW2は、接点e側に接続され、荷重センサからの出力信号は、2次と3次の高調波除去フィルタ32,33を通過してA/D変換器34に入力される。
高調波除去フィルタの次数としてn=1または0が設定されると、第1アナログスイッチSW1は、接点b側に接続され、第2アナログスイッチSW2は、接点c側に接続され、荷重センサからの出力信号は、いずれの高調波除去フィルタ32,33も通過することなく、A/D変換器34に入力それる。
位相遅れ量ψについては、2次高調波除去用フィルタの単独使用、及び2次、3次高調波除去用フィルタの従属接続使用の場合について、予めテスト装置を使用し、所定の周波数の正弦波を入力し、出力される正弦波から位相遅れ量を測定し、それぞれの種類のノッチフィルタの位相遅れ量を測定する。測定した結果を、メモリに設定しておき、運転時に高調波除去フィルタの種類に応じて選択する。また、回転速度が一定であってもフィルタの変更に応じて振幅の減衰量が変化するので、予め校正運転にて各フィルタに応じた変換係数を定めて記憶させておき、フィルタの選択に応じて変換係数も選択するようにすることもできる。
なお、アナログフィルタの場合には、上述の図12のメモリテーブルには、フィルタリング済みのデータがストアされることになる。
その他の構成は、上述のデジタルフィルタの場合と同様である。
上述の各実施形態では、高調波除去フィルタとして、ノッチフィルタを用いたけれども、ノッチフィルタに限らず、高調波信号成分を除去するバンドパスフィルタを用いてもよい。
1 タイヤ
7,7a,7b 荷重センサ
8 回転軸
9 エンコーダ(回転位置検出器)
15a,15b 第1,第2測定ユニット
16a,16b 第1,第2制御器
19 演算装置
24 高調波除去フィルタ
25 位相遅れ量算出部
28 位相差補正手段

Claims (5)

  1. タイヤを回転させる回転軸と、前記タイヤの回転によって生じる荷重を検出する荷重センサと、前記回転軸の回転位置を検出する回転位置検出器とを備えるタイヤ用ダイナミックバランス測定装置であって、
    前記荷重センサから出力される荷重信号に含まれる2次以上の高調波信号成分を除去する高調波除去フィルタを備え、
    前記高調波除去フィルタによって濾波処理された荷重信号及び前記回転位置検出器の検出出力に基づいて、タイヤのダイナミックバランスを測定する、
    ことを特徴とするタイヤ用ダイナミックバランス測定装置。
  2. 前記回転位置検出器で検出される基準回転位置と前記高調波除去フィルタによって濾波処理された荷重信号に現れるアンバランス位置との位相差を補正する位相差補正手段を備え、
    前記位相差補正手段で補正された位相差に基づいて、タイヤのダイナミックバランスを測定する、
    請求項1に記載のタイヤ用ダイナミックバランス測定装置。
  3. 前記位相差補正手段は、前記高調波除去フィルタによる位相遅れ量に基づいて、前記基準回転位置と前記高調波除去フィルタによって濾波処理された荷重信号に現れるアンバランス位置との位相差を補正する、
    請求項2に記載のタイヤ用ダイナミックバランス測定装置。
  4. 前記高調波信号成分は、タイヤの1回転を1周期とする1次成分信号としたときの2次以上の高次の成分信号である、
    請求項1ないし3のいずれかに記載のタイヤ用ダイナミックバランス測定装置。
  5. 前記高調波信号成分の前記次数が設定される設定部を備え、
    前記設定部で設定された次数の高調波信号成分を除去する高調波除去フィルタを設ける、
    請求項1ないし4のいずれかに記載のタイヤ用ダイナミックバランス測定装置。
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