JP5631264B2 - タイヤバランス試験方法及びタイヤバランス試験機 - Google Patents
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Description
図1には、代表的なタイヤバランス試験機の模式図が示してある。
このような装置で得られたアンバランス力を基にした一般的な動バランス計算手法を以下に示す。
ところで、実際のタイヤバランス試験では、検出荷重F1,F2に外乱(回転数成分)が含まれることになる。この外乱は主にスピンドル軸の上端部に設けられたリムの偏心に起因する。ここでは、これを「装置固有の不釣合い荷重」と呼ぶ。
ロードセルから得られる検出荷重F1,F2をベクトル表記した検出不釣合いベクトルUDは、タイヤ自体の不釣合いベクトルUtとリム偏心ベクトルUaとの合成であり、
つまり、式(3)に示すように、ロードセルで検出される検出不釣合いベクトルUDには、リムの偏心ベクトルUaが誤差として含まれていることが明らかで、補正なしではタイヤのみの正しいバランス計測(Utの計測)ができない。
そのため、従来より、種々の検出荷重の補正手段が講じられている(特許文献1、特許文献2)。
特許文献2は、試験体を取り付けて回転するアダプタと、回転中の試験体の不釣合いを
検出する不釣合い検出部と、補正データ採取時に、前記アダプタに対する取付角度を異にするn通り(nは3以上の自然数)の取り付け態様においてそれぞれ前記不釣合い検出部から得られたn個の検出不釣合いベクトルのデータを記憶する第1の記憶手段と、前記第1の記憶手段に記憶されたn個の検出不釣合いベクトルの各先端またはその近傍を通る円の中心の座標を求め原点に対する前記円の中心座標のベクトルについて前記原点に関して対称なベクトルを求める演算手段と、このようにして求めたベクトルを偏心補正ベクトルのデータとして記憶する第2の記憶手段と、実測時に、前記不釣合い検出部から得られた検出不釣合いベクトルに対して前記第2の記憶手段に記憶されている偏心補正ベクトルを加算する補正手段とを備えた動釣合試験機を開示する。
ところで、タイヤのバランス試験においては、計測精度を向上することに加えて、試験のサイクルタイム短縮が課題となっている。
特許文献3は、供試体の1回転につき予め定める複数個の回転位置信号を出力する回転位置信号出力手段と、供試体に回転を与えることにより発生する振動を検出する振動検出手段と、供試体の回転速度データを演算する回転速度演算手段と、回転位置信号出力手段から出力される回転位置信号に関連づけて前記回転速度演算手段で演算された回転速度データを記憶するための記憶手段と、回転位置信号出力手段から出力される回転位置信号に関連づけて前記振動検出手段で検出される振動データに対してディジタルフィルタを作用させ、不釣合い信号の波形データを求めるためのフィルタリング手段と、フィルタリング手段で求められた不釣合い信号の波形データに対して、前記記憶手段に記憶されている回転速度データに基づく補正を行うための波形データ補正手段と、波形データ補正手段で補正された波形データと、その波形データに合わせたい未定係数を含んだ関数に最小二乗法を作用させて当該未定係数を決定し、決定された係数から不釣合いベクトルを演算し、その結果を出力する不釣合い演算手段とを備えており、供試体の回転が定速回転でなくても不釣合い測定を行えるようにした不釣合い測定装置を開示する。
そこで、本願発明者らは、回転加速時においても正確なアンバランス荷重を算出するための補正を考えるにあたり、タイヤの回転加速、回転減速時は「回転速度に依存しない項が存在する」との考えに立脚し、従来、技術者が着目することが無かった「回転速度に依存しない不釣合い成分」に焦点をあて、斯かる不釣り合い成分を考慮した新しい補正手法を開発するに至った。すなわち、回転速度に依存しない不釣合い成分を考慮した上で「タイヤの回転加速時又は回転減速時における補正データ(計測値を補正するデータ)」を求める手法を考えるに至った。
すなわち、本発明に係るタイヤバランス試験方法は、タイヤを回転自在に保持するスピンドル軸を有するタイヤバランス試験機を用いてタイヤの不釣り合いを測定する方法であって、前記スピンドル軸に対するタイヤの取付け角度が異なるものとされた複数のタイヤ設置状態で且つ種々の回転速度において、タイヤを保持するスピンドル軸に発生するアンバランス荷重を測定し、測定されたアンバランス荷重から、前記タイヤの回転加速時又は回転減速時における補正データを求めておき、実測時には、回転するスピンドル軸に発生するアンバランス荷重を測定すると共に、測定されたアンバランス荷重を前記補正データを用いて補正することで、タイヤの不釣り合いを測定することを特徴とする。
好ましくは、前記複数通りのタイヤ設置状態において、タイヤの取付け角度が未知であって且つタイヤ設置状態が3種類以上の異なる状態とされているとよい。
一方、本発明に係るタイヤバランス試験機は、タイヤを回転自在に保持するスピンドル軸と、当該スピンドル軸を軸受部を介して回転自在に支持するハウジングと、回転しているタイヤを保持するスピンドル軸に発生するアンバランス荷重を測定する測定部と、上記したタイヤバランス試験方法を用いて、前記測定部で計測されたアンバランス荷重を補正し、タイヤの不釣り合い状態を算出する不釣り合い算出部と、が備えられたことを特徴とする。
なお、本発明のタイヤバランス試験方法の最も好ましい形態は、タイヤを回転自在に保持するスピンドル軸を有するタイヤバランス試験機を用いてタイヤの不釣り合いを測定する方法であって、前記スピンドル軸に対するタイヤの取付け角度が異なるものとされた複数のタイヤ設置状態で且つ種々の回転速度において、タイヤを保持するスピンドル軸に発生するアンバランス荷重を測定し、測定されたアンバランス荷重から、前記タイヤの回転加速時又は回転減速時における補正データを求めておき、実測時には、回転するスピンドル軸に発生するアンバランス荷重を測定すると共に、測定されたアンバランス荷重を前記補正データを用いて補正することで、タイヤの不釣り合いを測定し、計測されるアンバランス荷重Faを、タイヤ自体の不釣り合いに起因する項Ftと、スピンドル軸の回転速度の二乗に比例した項Fz2と、スピンドル軸の回転速度に依存しない項Fz0とを有する関数で表し、前記スピンドル軸に対してタイヤの取付け角度を異にする複数通りのタイヤ設置状態で且つ複数の回転速度でアンバランス荷重を計測すると共に、計測されたアンバランス荷重を基に、スピンドル軸の回転速度の二乗に比例した項Fz2とスピンドル軸の回転速度に依存しない項Fz0とを求め、求めたスピンドル軸の回転速度の二乗に比例した項Fz2とスピンドル軸の回転速度に依存しない項Fz0とを前記補正データとすることを特徴とする。
本発明のタイヤバランス試験機1を、図面に基づき以降に説明する。
本実施形態のタイヤバランス試験機1は、タイヤTの高速回転させたときに発生するアンバランス荷重(不釣り合い力)を測定する試験装置である。
図1に模式的に示されるように、タイヤバランス試験機1は、タイヤTを保持するスピンドル軸2と、このスピンドル軸2を軸心回りに回転自在に支持するハウジング3と、を備えている。
ハウジング3は、スピンドル軸2の外径より大きな内径を備えた円筒体であり、この円筒体の内壁に設けられた上下一対の軸受部5を介してスピンドル軸2を回転自在に支持している。このハウジング3は、1方向の力成分(図1参照)を計測できるロードセル6(測定部)を介して固定フレーム7に連結されている。なお、図1の例では、ハウジング3は上下一対のロードセル6を介して固定フレーム7に取り付けられている。
回転中のタイヤTに発生したアンバランス荷重は、ロードセル6で計測され、不釣り合い算出部10にアンバランス荷重(不釣り合い力)の波形信号として送られる。なお、2箇所のロードセル6は、タイヤTから発生する偏心による不釣合い荷重のうち、図2に示す方向のアンバランス荷重F1,F2を測定する。
更に、不釣り合い算出部10は、前もって測定されたアンバランス荷重から、タイヤバランス試験機1に存在する回転部分の偏心及びゆがみの影響を除去するための補正データを求めておくと共に、タイヤバランス試験時には、回転速度が変化する域において測定されたアンバランス荷重を前記の補正データを用いて補正して、タイヤTの不釣り合い状態を検出するように構成されている。この不釣り合い算出部10は、コンピュータ等で構成されている。
[第1実施形態]
第1実施形態に係るタイヤアンバランス荷重の計測方法は、概説すれば、以下の3ステップを有するものである。
(ii) 測定された荷重から、前記タイヤバランス試験機1に存在する回転部分の偏心及びゆがみの影響を除去するための補正データを求めておく。
(iii) 実測時には、回転速度が変化しながらタイヤTを回転させつつスピンドル軸2に発生する荷重を測定し、測定された荷重を前記補正データを用いて補正することで、タイヤTのアンバランス荷重を計測する。
まず、上側のロードセル6で検出される検出荷重F1と、下側のロードセル6で検出される検出荷重F2に対する補正データをそれぞれ求める。
そのためには、まず、タイヤTをリムに取付けて回転角速度ω(rad/sec)で回転させた時にロードセル6で検出される荷重ベクトルをFaとする。そのとき、タイヤTにより発生するアンバランス荷重(タイヤT自体の不釣り合いに起因する荷重であり、求めたいアンバランス荷重)をFt、タイヤバランス試験機1に存在する回転部分の偏心及びゆがみの影響による成分、言い換えるならば装置固有の不釣合い成分をFz0とおく。このFz0はスピンドル軸2の回転速度に依存しない成分である。さらに、スピンドル軸2の回転速度の二乗に比例した成分をFz2とおく。なお、Fa、Ft、Fz0、Fz2はベクトルとして表され、このベクトルは周期的な変動性を有するものであるから、本実施形態では複素数で表現される。
なお、補正データFz2は、タイヤ質量によって異なることに注意が必要である。タイヤ質量が変化する場合は、そのタイヤ質量で補正データを同定する必要がある。Fz2はタイヤ質量と比例関係にあるため、複数のタイヤ質量データをもとに質量をパラメータとした関数で表現できる。
複数の実験のリムに対するタイヤT設置角度をφ1,φ2,φ3…とし(基準位置は任意)、その時の観測される荷重をFa1,Fa2,Fa3…とすると、式(4)は、式(6)のようになる。
以上まとめれば、式(8)が最小となるようにFz0,Fz2を補正データとして予め求めておけば、実測値Faを用いて式(4)からタイヤT本来のアンバランス荷重Ftが計算できる。このFz0,Fz2を補正データとして利用することで、タイヤTの回転速度が一定でない域(回転加速域、回転減速域)においても、高精度にタイヤTの不釣り合い状態を検査でき、ひいては検査サイクルタイムを可及的に短縮可能とすることができるようになる。
[第2実施形態]
次ぎに、タイヤアンバランス荷重の測定方法の第2実施形態について述べる。
ここでは、3種類の異なるタイヤT設置位相での算出方法を示す。タイヤ実験1〜3のタイヤT自体の不釣合いによる発生荷重(それぞれ設置位相は異なる)をFt1,Ft2,Ft3とおくと、式(4)は式(9)のようになる。
すなわち、速度二乗項のFz2とFtを分離して求めることができないため、Fz2+Ft=Ft’とおいて、式(10)に示す各式からそれらの各係数Fz0とFt'を算出する。
これらの係数の算出には前述した方法と同様に最小二乗法を適用する。Faの回転角度波形データは式(11)で表される。nはタイヤ実験番号である。
。
なお、実験数をn=3として式を記述したが、実験数が多いほど図4の近似円の精度は上がり、補正データの同定精度は向上する。
すなわち、図5(a)で示す手順で補正データを算出し、図5(b)に示す手順でタイヤTの不釣合いを算出する。
まず、図5(a)のS11にて、測定対象であるタイヤTをタイヤバランス試験機1のリムに取り付ける。次ぎにスピンドル軸2の回転を始め、S12において、加速中におけるロードセル6の検出信号(荷重と位相、回転速度データ)取得する。
その後、タイヤTのアンバランス荷重の実測定を行う(S16、すなわちS21〜S26)。
補正データFz0,Fz2が存在した場合(S21でYes)は、S23にて、測定対象であるタイヤTをタイヤバランス試験機1に装着しバランス測定を実施し、加速中を含む荷重と位相、回転速度データ取得する。さらに、S24において、予め記憶しておいた補正データFz0,Fz2により計測波形を補正し、タイヤ不釣合い荷重Ftを算出する。
次ぎに、図6〜図8に基づいて、上述したS24,S25における補正データを用いたタイヤ不釣合いの算出方法を詳しく説明する。
まず、式(4)から、タイヤT本来の不釣合い荷重Ftは、式(14)のようになる。
また、最小二乗法適用による補正データ同定精度向上のため、回転速度ωに比例する速度比例成分を考慮する場合は、同様の手法で速度比例成分を未知数Fz1(複素数)として定式化し、最小二乗法でFz0,Fz2とFtに加えて速度比例項Fz1を算出することも可能である。
なお、式(4)におけるFz2は、リム振れ起因の荷重(mr=リム振れ×タイヤ質量)を含むため、取り付けたタイヤ質量によって変化する。タイヤ質量が変化する場合は、そのタイヤ質量で補正荷重を同定しておく必要がある。
タイヤTの設置位相が分からない場合(取付の位相誤差がある場合)を想定し、式(11)〜式(13)から加速データに対して補正荷重を算出した。タイヤT設置位相を概ね45°刻みで8回変更した実験データに対しての計算例を示す。
図6に各実験(回転角速度ω1〜ω5)の補正荷重係数Fz0nとFtn'から、式(10)により算出した不釣合いベクトルFanを複素平面にプロットした結果を示す。中心点が各回転数での装置固有の補正荷重ベクトルFznとなる。その係数であるFz0とFz2は、式(13)により算出できる。なお、図6では、計測荷重F1に対する不釣合いベクトルを示しているが、F2に対しても同様の計算を実施する必要がある。
一方、図8には、補正データ算出に用いたタイヤTと異なるタイヤTで、設置位相角度を0°〜360°まで45°おきに変えてバランス計測を実施し、加速部から定常部にかけてのデータを用いて計算した結果を示す。比較例として二乗項のみ考慮して定式化し、その式で補正係数を求めて不釣合い計算を実施した結果も示す。
計算値が近いほど精度がよいといえる。図8から提案手法の方が精度がよく、妥当性が確認できる。
以上述べたように、本実施形態のタイヤバランス試験方法を採用することで、回転速度が一定でない場合であってもタイヤT本来のアンバランス荷重Ftを算出できるようになり、高精度にタイヤTの不釣り合い状態を検査でき、ひいては検査サイクルタイムを可及的に短縮可能とすることが可能となる。
2 スピンドル軸
3 ハウジング
5 軸受部
6 ロードセル(測定部)
7 固定フレーム
8 駆動用モータ
9 ベルト
10 不釣り合い算出部
T タイヤ
Claims (4)
- タイヤを回転自在に保持するスピンドル軸を有するタイヤバランス試験機を用いてタイヤの不釣り合いを測定する方法であって、
前記スピンドル軸に対するタイヤの取付け角度が異なるものとされた複数のタイヤ設置状態で且つ種々の回転速度において、タイヤを保持するスピンドル軸に発生するアンバランス荷重を測定し、
測定されたアンバランス荷重から、前記タイヤの回転加速時又は回転減速時における補正データを求めておき、
実測時には、回転するスピンドル軸に発生するアンバランス荷重を測定すると共に、測定されたアンバランス荷重を前記補正データを用いて補正することで、タイヤの不釣り合いを測定し、
計測されるアンバランス荷重Faを、タイヤ自体の不釣り合いに起因する項Ftと、スピンドル軸の回転速度の二乗に比例した項Fz2と、スピンドル軸の回転速度に依存しない項Fz0とを有する関数で表し、
前記スピンドル軸に対してタイヤの取付け角度を異にする複数通りのタイヤ設置状態で且つ複数の回転速度でアンバランス荷重を計測すると共に、計測されたアンバランス荷重を基に、スピンドル軸の回転速度の二乗に比例した項Fz2とスピンドル軸の回転速度に依存しない項Fz0とを求め、
求めたスピンドル軸の回転速度の二乗に比例した項Fz2とスピンドル軸の回転速度に依存しない項Fz0とを前記補正データとする
ことを特徴とするタイヤバランス試験方法。 - 前記複数通りのタイヤ設置状態において、タイヤの取付け角度が既知とされていることを特徴とする請求項1に記載のタイヤバランス試験方法。
- 前記複数通りのタイヤ設置状態において、タイヤの取付け角度が未知であって且つタイヤ設置状態が3種類以上の異なる状態とされていることを特徴とする請求項1に記載のタイヤバランス試験方法。
- タイヤを回転自在に保持するスピンドル軸と、
当該スピンドル軸を軸受部を介して回転自在に支持するハウジングと、
回転しているタイヤを保持するスピンドル軸に発生するアンバランス荷重を測定する測定部と、
請求項1〜3のいずれかに記載されたタイヤバランス試験方法を用いて、前記測定部で計測されたアンバランス荷重を補正し、タイヤの不釣り合い状態を算出する不釣り合い算出部と、
が備えられたことを特徴とするタイヤバランス試験機。
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