JP7188010B2 - タイヤの高速ユニフォミティ推定方法 - Google Patents

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本発明は、低速ユニフォミティから高速ユニフォミティを推定するためのタイヤの高速ユニフォミティ推定方法に関する。
タイヤに起因する車両振動を改善するために、従来より、タイヤ製造時などにおいて低速ユニフォミティの全数検査が行われる場合が多い。低速ユニフォミティについては、RFV(ラジアルフォースバリエーション)、TFV(タンジェンシャルフォースバリエーション)、LFV(ラテラルフォースバリエーション)、RRO(ラジアルランアウト)等のユニフォミティ因子が、例えば速度10km/h 程度以下の低速で測定される。
これに対して近年、例えば速度100km/h 以上の高速でのユニフォミティ(高速ユニフォミティ)が、高速走行における振動、騒音に強く関与していることが判明している。しかし、高速ユニフォミティは、測定に長時間を要する傾向があり、全数検査を行うことは極めて難しい状況にある。
そこで下記の特許文献1には、低速RFVと、低速RROと、静アンバランスSBと、LRO(ラテラルランアウト)とからなる低速パラメータを用いて、高速ユニフォミティを推定することが提案されている。
しかし、本発明者の研究の結果、上記の低速RFV、低速RRO、SB、LROをパラメータとした場合、図3(a)~(c)に示すように、高速TFVにおいて、予測値と実測値との相関が悪くなることが判明した。従って、特に高速TFVにおける予測精度の改善が望まれる。
特許第5080882号公報
本発明は、高速FV、特に高速TFVをより精度良く推定しうるタイヤの高速ユニフォミティ推定方法を提供することを課題としている。
本発明は、タイヤの高速ユニフォミティ推定方法であって、
同一品種のタイヤについて、低速RFVと、低速RROと、静アンバランスSBと、タイヤ転がり半径変動IRRとを含む低速パラメータを用いて高速FVを推定する推定式を設定する設定工程と、
高速FVが未知の前記品種のタイヤについて、低速RFVと、低速RROと、静アンバランスSBと、タイヤ転がり半径変動IRRとを測定する測定工程と、
前記測定の結果と前記推定式とに基づいて、高速FVを推定する推定工程とを含む。
本発明に係るタイヤの高速ユニフォミティ推定方法では、前記タイヤ転がり半径変動IRRは、次式(1)に基づいて求められるのが好ましい。
IRR=(RD×ωD平均/ωT平均)×{1+(ωD/ωD平均)-(ωT/ωT平均)} ---(1)
(式中、
RD:ドラム半径[m]、
ωT平均:タイヤ角速度の平均値[rad/s]、
ωT:タイヤ角速度の平均値からの差[rad/s]、
ωD平均:ドラム角速度の平均値[rad/s]、
ωD:ドラム角速度の平均値からの差[rad/s]、
である。)
本発明に係るタイヤの高速ユニフォミティ推定方法では、前記高速FVは、高速RFV又は高速TFVであるのが好ましい。
本発明に係るタイヤの高速ユニフォミティ推定方法では、前記高速FVの1次の前記推定式は、次式(2)で示され、n次(n>1)の前記推定式は、次式(3)で示されるのが好ましい。
高速FV(1次)=a×低速RFV(1次)+b×低速RRO(1次)
+c×静アンバランスSB+d×タイヤ転がり半径変動IRR(1次)+e
---(2)
高速FV(n次)=a×低速RFV(n次)+b×低速RRO(n次)
+d×タイヤ転がり半径変動IRR(n次)+e
---(3)
(式中、a,b,c,d,a,b,dは各前記パラメータの係数、e,eはバイアスである。)
本発明では、高速RFV又は高速TFVといった高速FVを推定する推定式が、低速パラメータを用いて設定される。特に低速パラメータには、従来のLROに代えてタイヤ転がり半径変動IRRが用いられる。
ここで、タイヤ周方向において径変動があると、これがタイヤ角速度ωT の微係数である角加速度(dωT/dt)の変化となり、これがタイヤの慣性モーメントIと相俟って前後力TFの変動成分であるTFVを生じる。即ち、下記式(a)の関係がある。hは軸間距離である。
TFV=I×(dωT/dt)/h ---(a)
またタイヤ角速度ωT と、タイヤ半径RT と、速度Vとには、ωT=V/RT の関係があり、時間tで微分すると、下記式(b)が得られる。
(dωT/dt)=(V/RT)×(dRT/dt) ---(b)
また式(a)、(b)から下記式(c)の関係が得られる。
TFV={(I×V)/(h×RT)}×(dRT/dt) ---(c)
式(c)中の微分値dRT/dtは、タイヤ半径RTの時間的変動であり、従って、TFVが、タイヤ転がり半径変動IRRと関係があることがわかる。
従って、LROに代えてIRRを低速パラメータとして用いることで、高速TFVの推定精度をより高めることが可能になる。
本発明の高速ユニフォミティ推定方法の手順を説明するフローチャートである。 (a)~(c)は本発明における高速TFVの1次~3次の推定値と実測値との相関関係を示すグラフである。 (a)~(c)は従来法における高速TFVの1次~3次の推定値と実測値との相関関係を示すグラフである。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
本発明では、タイヤの高速FVが推定され、その推定値に基づいて、タイヤの出荷管理が行われる。高速FVとして、本例では、高速RFV又は高速TFVが推定される。
図1は、本発明の高速ユニフォミティ推定方法(以下単に「推定方法」と呼ぶ場合がある。)の手順を説明するフローチャートである。図1に示されるように、本発明の推定方法は、設定工程S1と、測定工程S2と、推定工程S3とを含む。
設定工程S1では、同一品種のタイヤについて、低速RFVと、低速RROと、静アンバランスSBと、タイヤ転がり半径変動IRRとを含む低速パラメータを用い、高速FVを推定する推定式が設定される。
同一品種のタイヤとは、同一サイズ、同一の内部構造及び同一のトレッドパターンを有するタイヤ群を意味する。このような同一品種のタイヤは、製造上の軽微なバラツキを除いて実質的に同一の仕様及び特性を有する。
又設定工程S1では、具体的には、まず同一品種の複数本のタイヤに対し、前記低速パラメータと高速FVとがそれぞれ測定される(ステップS1A)。その後、この低速パラメータの測定値と高速FVの測定値とに基づき、高速FVを推定するための推定式が設定される(ステップS1B)。
ステップS1Aにおいて、高速FVは、従来と同様、高速ユニフォミティ計測マシンを用い、タイヤに遠心力が充分作用しうる速度、例えば100km/h 以上の高速度で回転するタイヤに対して測定される。測定された高速FVのデータは、コンピュータ等を用いて次数解析され、必要な高速FVの次数成分が計算される。この高速FVの各次数成分は、大きさと位相角とを有するベクトル量として得られる。なお、位相角は、タイヤの任意の位置に設定された基準位置からの角度である。
ステップS1Aにおいて、低速RFV及び低速RROは、従来と同様、低速ユニフォミティ計測マシンを用い、タイヤに遠心力が実質的に作用しない速度、例えば10km/h 以下の低速度で回転するタイヤに対して測定される。測定された低速RFV及び低速RROの各データは、高速FVのデータと同様、コンピュータ等を用いて次数解析され、必要な低速RFVの次数成分及び低速RROの次数成分が計算される。この低速RFVの次数成分及び低速RROの次数成分も、大きさと位相角(前記基準位置からの角度)とを有するベクトル量として得られる。
ステップS1Aにおいて、静アンバランスSBは、従来と同様、例えばアンバランス計測マシンを用い、アンバランス量と、そのピーク位置の位相角(前記基準位置からの角度)とが測定される。
又ステップS1Aにおいて、タイヤ転がり半径変動IRRは、例えば、回転速度計測器を用い、前記低速度で回転するタイヤに対して測定されるドラム角速度ωD 、及びタイヤ角速度ωT などに基づき、次式(1)を用いて計算される。
IRR=(RD×ωD平均/ωT平均)×{1+(ωD/ωD平均)-(ωT/ωT平均)} ---(1)
(式中、
RD:ドラム半径[m]、
ωT平均:タイヤ角速度の平均値[rad/s]、
ωT:タイヤ角速度の平均値からの差[rad/s]、
ωD平均:ドラム角速度の平均値[rad/s]、
ωD:ドラム角速度の平均値からの差[rad/s]、
である。)
回転速度計測器では、例えば、ドラム軸に取り付きかつドラム回転角度に応じてパルス信号を発生させるエンコーダと、変調機とを具える。変調機は、パルス信号から、タイヤ1周に亘ってタイヤ回転周波数fT の変動を抽出するとともに、ドラム1周に亘ってドラム回転周波数fD の変動を抽出する。
そして、このタイヤ回転周波数fT 、及びドラム回転周波数fD から、次式(4)、(5)によって、任意の位相位置におけるタイヤ角速度ωT、及びドラム角速度ωDが求まる。
ωT =2π・(fT /PT ) ---(4)
ωD =2π・(fD /PD ) ---(5)
「PT 」は、タイヤの1回転におけるパルス信号数である。なおタイヤ周長は、転動半径に応じて変動する。そのため、タイヤを複数回回転させ、回転毎に、タイヤ上の基準点が一周する間にカウントされるパルス信号数を測定し、それを平均化することでPT を設定するのが好ましい。又「PD 」は、ドラムの1回転におけるパルス信号数である。ドラム周長は一定であり、ドラムの1回転におけるパルス信号PD は、エンコーダに応じて予め設定されている。
タイヤ角速度の平均値ωT平均は、タイヤ角速度ωT のタイヤ一周に亘る平均値として求まる。特には、タイヤを複数回回転させ、回転毎にタイヤ角速度の平均値を求め、それを平均することでωT平均を求めるのが好ましい。又ドラム角速度の平均値ωD平均も同様であり、ドラム角速度ωD のドラム一周に亘る平均値として求まる。
又タイヤ角速度の平均値からの差ωT、及びドラム角速度の平均値からの差ωDは、次式(6)、(7)から求まる。
ωT=ωT-ωT平均 ---(6)
ωD=ωD-ωD平均 ---(7)
前記式(1)において、簡単に説明する。
タイヤとドラムとの間には、RT=RD×ωD平均/ωT平均 の関係が成立する。そして、両辺に次式(8)を掛けることで、式(1)の右辺が得られる。
1+(ωD/ωD平均)-(ωT/ωT平均) ---(8)
式(8)は、ドラムの角速度の変化率で補正した、タイヤの角速度の変化率を意味する。そして、タイヤ半径RT に式(8)を掛けた左辺は、タイヤ転がり半径変動IRRとして代用することができる。
ここで、ステップS1Aにて得られた前記タイヤ転がり半径変動IRRには、タイヤ軸の偏心成分などのタイヤ以外の誤差成分が含まれる恐れがある。そのため本例では、誤差成分を補正する補正ステップを行うことが好ましい。
補正ステップでは、例えば設定工程S1にて使用されるタイヤのうちの1本を、マシンに対するタイヤの装着角度を、例えば0度、90度、180度、360度と違えて装着し、各装着角度において、それぞれタイヤ転がり半径変動IRRを計算する。そして、得られた4回分のタイヤ転がり半径変動IRRの波形を、平均化することでタイヤ側の成分を除去でき、タイヤ以外の誤差成分を抽出しうる。なお装着角度の分割数は、360度を等分割するものであれば4以外の任意の整数が採用しうる。
この補正ステップで得られた誤差成分を、ステップS1Aにて得られた各タイヤ転がり半径変動IRRから差し引きすることで、タイヤ転がり半径変動IRRを、より高精度で求めることができる。
又求まったタイヤ転がり半径変動IRRのデータは、コンピュータ等を用いて次数解析され、その次数成分が計算される。このタイヤ転がり半径変動IRRの次数成分も、大きさと位相角(前記基準位置からの角度)とを有するベクトル量として得られる。
次に、ステップS1Bでは、上記ステップS1Aで求めた、低速パラメータの各測定値と高速FVの測定値とに基づき、高速FVを推定するための推定式が設定される。具体的には、高速FVの次数成分は、上述の低速RFVの次数成分、低速RROの次数成分、静アンバランスSBの次数成分、タイヤ転がり半径変動IRRの次数成分と相関を持つ。このため、推定式では、下記式(2)、(3)で示されるように、上記各パラメータに係数を乗じたベクトル量の和によって、高速FVが推定される。
高速FV(1次)=a×低速RFV(1次)+b×低速RRO(1次)
+c×静アンバランスSB+d×タイヤ転がり半径変動IRR(1次)+e
---(2)
高速FV(n次)=a×低速RFV(n次)+b×低速RRO(n次)
+d×タイヤ転がり半径変動IRR(n次)+e
---(3)
上記各式(2)及び(3)において、添え字の”1”、”n”は、次数を示す。また、符号a,b,c,d,a,b,dはいずれも係数である。なお静アンバランスSBは、1次のベクトルのため、2次以上の高速FVを推定する式(3)において、この項は除去される。また、符号e,eはバイアスであり、測定誤差などを補填する。
高速FV(RFV、TFV)の各推定式は、それぞれ、次数毎に、係数及びバイアスが設定される。
又上記係数及びバイアスは、高速FVの実測値のベクトル量Xmiと、高速RFVの推定値のベクトル量Xpiとの差分{Σ|Xmi-Xpi|}が最小となるよう重回帰分析を行って決定することができる(iはサンプリング数である)。
次に、測定工程S2では、高速FVが未知の前記品種のタイヤについて、低速RFVと、低速RROと、静アンバランスSBと、タイヤ転がり半径変動IRRとが測定されるとともに、これらについて必要な次数成分のデータが準備される。
この低速RFVと、低速RROと、静アンバランスSBと、タイヤ転がり半径変動IRRとの測定は、前記設定工程S1のステップS1Aにおける測定と同じ手法にて行うことができる。
しかる後、推定工程S3により、測定工程S2による測定結果と推定式とに基づいて、高速FVが推定される。
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
本発明の高速ユニフォミティ推定方法に基づき、同一品種の乗用車用空気入りラジアルタイヤ(サイズ:225/60R18、リムサイズ18×6.5J)の10本について、高速RFV及び高速TFVが推定された。
設定工程S1では、推定式の設定のために、同一品種の10本のタイヤが用いられた。測定工程S2では、低速RFVと、低速RROと、静アンバランスSBと、タイヤ転がり半径変動IRRとがそれぞれ測定され、推定工程S3では、それらの測定結果に基づいて該タイヤの高速RFV及び高速TFVが推定された。
比較例として、低速パラメータにおいてタイヤ転がり半径変動IRRに代えてLROを用い、高速RFV及び高速TFVを推定している。
各パラメータの測定条件は、次の通りである。
・タイヤ内圧:200kPa
・低速RFV、低速RRO、及びタイヤ転がり半径変動IRRの測定時のタイヤ走行速度:7km/h
・高速FV(RFV、TFV)の測定時の走行速度:120km/h
・RFV及びTFVの測定時の縦荷重:5.0kN
Figure 0007188010000001
表1に示すように、実施例の推定方法では、少なくとも1次~3次において、高速TFVの推定値と実測値との相関係数が、比較例の推定方法に比して大であり、高い推定精度を発揮しうるのが確認できる。
なお図2は、実施例の推定方法によって推定された高速TFVの1次~3次の推定値を横軸に、実測値を縦軸にプロットしたグラフである。又図3は、比較例の推定方法によって推定された高速TFVの1次~3次の推定値を横軸に、実測値を縦軸にプロットしたグラフである。
S1 設定工程
S2 測定工程
S3 推定工程

Claims (3)

  1. 同一品種のタイヤについて、低速RFVと、低速RROと、静アンバランスSBと、タイヤ転がり半径変動IRRとを含む低速パラメータを用いて高速FVを推定する推定式を設定する設定工程と、
    高速FVが未知の前記品種のタイヤについて、低速RFVと、低速RROと、静アンバランスSBと、タイヤ転がり半径変動IRRとを測定する測定工程と、
    前記測定の結果と前記推定式とに基づいて、高速FVを推定する推定工程とを含み、
    前記タイヤ転がり半径変動IRRは、次式(1)に基づいて求められる、
    タイヤの高速ユニフォミティ推定方法。
    IRR=(RD×ωD 平均 /ωT 平均 )×{1+(ωD /ωD 平均 )-(ωT /ωT 平均 )} ---(1)
    (式中、
    RD:ドラム半径[m]、
    ωT 平均 :タイヤ角速度の平均値[rad/s]、
    ωT :タイヤ角速度の平均値からの差[rad/s]、
    ωD 平均 :ドラム角速度の平均値[rad/s]、
    ωD :ドラム角速度の平均値からの差[rad/s]、
    である。)
  2. 前記高速FVは、高速RFV又は高速TFVである請求項1記載のタイヤの高速ユニフォミティ推定方法。
  3. 前記高速FVの1次の前記推定式は、次式(2)で示され、n次(n>1)の前記推定式は、次式(3)で示される請求項2記載のタイヤの高速ユニフォミティ推定方法。
    高速FV(1次)=a ×低速RFV(1次)+b ×低速RRO(1次)
    +c ×静アンバランスSB+d ×タイヤ転がり半径変動IRR(1次)+e
    ---(2)
    高速FV(n次)=a ×低速RFV(n次)+b ×低速RRO(n次)
    +d ×タイヤ転がり半径変動IRR(n次)+e
    ---(3)
    (式中、a ,b ,c ,d ,a ,b ,d は各前記パラメータの係数、e ,e はバイアスである。)
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