JP2014049722A - 有機半導体トランジスタおよびその製造方法 - Google Patents

有機半導体トランジスタおよびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、印刷法によって膜のほぼ全領域が単一の単結晶からなる有機半導体膜をチャネル層に用いた有機半導体トランジスタの移動度を向上させると同時に、移動度のばらつきを低減することを課題とする。
【解決手段】チャネル層である有機半導体膜の移動度が最大になる結晶方位がチャネル方向と略平行であることを特徴とする有機半導体トランジスタである。例えば、有機半導体膜がCn−BTBT(nはゼロあるいは自然数)の場合、チャネル方向がCn−BTBTの結晶のa軸に略平行である有機半導体トランジスタである。
【選択図】 図1

Description

本発明は単結晶性の有機半導体膜を有する有機半導体トランジスタに関する。
有機半導体を用いる有機エレクトロニクスは、フラットパネルディスプレイや電子ペーパーを製造するための主要な次世代技術として注目されている。既に製品化された有機電界発光ダイオードに加えて、アクティブ・マトリックス用スイッチング素子を構成する有機半導体の薄膜電界効果トランジスタなどが開発されている。
有機エレクトロニクスの利点は、印刷技術によって電子デバイスを作製できることである。製品サイズの大面積化に伴い、従来の無機半導体デバイスは大規模な真空装置や高温加熱装置などに高い費用を要する。一方、有機半導体デバイスは、真空を要さない溶液プロセスを用いるために、省エネルギーかつ低コストで大面積のディスプレイ、センサ−や電子ペーパーを製造できる。
これら有機半導体デバイスの課題は移動度が小さいことである。トランジスタのチャネル層に用いられる有機半導体層には、分子配列に規則性のないアモルファス性薄膜や大きさ数μmの微結晶からなる多結晶性膜が利用されてきた。そのため結晶粒界がキャリア輸送を阻害するために高い移動度が得られなかった。近年、溶液法で作製される有機半導体デバイスにおいて、有機半導体層を単結晶化する技術が開発されている。
例えば、高い結晶性を示す2,7−ジオクチル[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン(以下、「C8−BTBT」という。)において、基板上に液滴を支持するためのシリコンウェハー等の端部を接触させ、基板全体を傾斜させることによりC8−BTBT単結晶を徐々に成長させる方法が提案されている(非特許文献1)。しかしこの方法では、単結晶有機半導体膜を工業的に量産可能なレベルで制御性よく製造することは難しい。
一方、低分子系の有機半導体薄膜を印刷技術によって形成する手法のひとつに、インクジェット印刷法がある。インク溶液は有機半導体を有機溶媒等に高濃度に溶解させたものを用いる。インクジェット印刷法では、有機半導体インクをインクヘッドから基板上に滴下し、これに続く有機溶媒の蒸発によって有機半導体層を析出させて作製する。
しかしながら、着滴後、溶媒の蒸発速度が速い液滴の外縁部においてランダムに種結晶が発生するため、多結晶性の有機半導体膜となる。この問題を解決するためにダブルショット・インクジェット印刷法が開発された。ダブルショット・インクジェット印刷法は、有機半導体をほとんど溶かさない有機溶媒からなる非溶解性インクを滴下した後、有機半導体インクを滴下する方法である。これによって有機溶媒の蒸発前に有機半導体の析出が進行し、均質性の高い有機半導体薄膜を得ることができる(特許文献1)。
近年、ダブルショット・インクジェット印刷法により、有機半導体膜のほぼ全領域を単結晶化する手法が開発された。そこでは、まず疎水化処理した基板表面の一部を親水化した後、親水化した基板表面の一部をさらに親油性処理することにより、インクが貯留する領域を形成する。貯留領域は、種結晶が発生する小さな液溜部位と種結晶から単結晶を成長させる大きな液溜部位とそれらをつなぐくびれ部位からなる。くびれ部位は液溜り間の対流を抑制し、結晶成長方向を決定する働きがある。これによって100μm以上×100μm以上の広い面積にわたって単結晶性有機半導体膜の作製が可能になる。また矩形の大きな液溜領域内での有機半導体膜結晶の成長方向と結晶方位を明らかにした(特許文献2)。
図18に公知構造の有機半導体トランジスタの上面図を示す。この構造は、SiO/Si基板140、絶縁体141、ドレイン電極142、ソース電極143、C8−BTBT結晶144、ゲート電極145、a軸方向146、b軸方向147、チャネル方向148からなる。製造方法は、SiO膜が形成されたSi基板上140に、上記の手法を用いて、複数の矩形形状のC8−BTBT結晶144を形成した後、その上にソース電極143、ドレイン電極142、絶縁体141、ゲート電極145を形成して、トップゲ−ト型の有機半導体トランジスタを形成したものである。その結果、平均10cm/Vsの高い移動度が得られた。しかし同時に3〜30cm/Vsの移動度のばらつきが見られた。移動度のばらつきはトランジスタを集積した場合に装置の特性や信頼性を大幅に低下させてしまう。これは有機半導体膜の単結晶化によって新たに生じた課題である(非特許文献2)。
これまで印刷法に用いられる有機半導体に関しては、十分大きな単結晶が得られなかったので、有機半導体結晶の移動度の異方性はよく分かっていなかった。近年、キャリアのホッピングモデルに基づいた第一原理密度汎関数法による量子計算によって、有機半導体結晶は移動度に異方性を持つことが示唆されている(非特許文献3)。但し計算された材料はペンタセンなどに限られており、印刷法に用いられる有機半導体に関して、移動度の異方性はまだよく分かっていない。ペンタセン分子は、ベンゼン環が5個直列した形状をしており、ファンデルワ−ルス力でお互いに弱く結合し、通常、分子は分子の長手方向が基板に垂直に揃って配列して結晶を形成する。分子の長手方向が結晶のc軸方向になる。2つの結晶軸であるa軸とb軸は、c軸に垂直であり、基板と平行な水平面を形成する。電気伝導を担う分子間の正孔の移動は主にa軸とb軸で張られるab面内で生じる。a軸からb軸に回転する角度をθとすると、ペンタセンの場合はθ=55°で正孔の移動度が最も大きくなることが量子計算で示唆された。
これまで開発された有機トランジスタのチャネル層を構成する有機半導体材料は熱に弱いものが多いが、ジナフト[2,3−b:2’,3’−f] チエノ [3,2−b]チオフェン(以下「DNTT」と呼ぶ)は移動度が高くかつ信頼性が高い有機半導体として注目されている。ジアルキル・ジナフト・チエノチオフェンC10−DNTT(2,9−didecyldinaphtho[2,3−b:20,30−f]thieno[3,2−b]thiophene)はDNTT分子の両側に10個の炭素原子を有するアルキル基が付加した構造を有し、ジクロロベンゼンなどの有機溶媒を用いて塗布で薄膜を形成できる材料である。近年C10−DNTTを用いた高分子フィルム上に作製された有機トランジスタにおいて150℃の高耐熱性と2Vの低い駆動電圧が実証された。この有機トランジスタは生体と整合性の良い高分子フィルムの上に容易に製造できるため、装着感のないウェアラブル健康センサや柔らかいペースメーカーなど体内埋め込み型デバイスへの応用が期待されている。
特開2010−043926号公報 特開2012−049291号公報
Applied Physics Express,Vol.2,111501頁,2009年 Nature,Vol.475,364頁,2011年 J.Phys.Chem.B,113巻, 8813頁−8819頁,2009年 Nature Communications 3巻(723), 1721頁,2012年
以上のような状況に鑑み、本発明は、印刷法によって膜のほぼ全領域が単一の単結晶からなる単結晶性有機半導体膜をチャネル層に用いた有機半導体トランジスタの移動度を向上させると同時に、移動度のばらつきを低減することを課題とする。
チャネル層である有機半導体膜の移動度が最大になる結晶方位に対応して、チャネル方向を設定する、有機半導体トランジスタである。また、チャネル層である有機半導体膜の移動度が最大になる結晶方位に対応して、チャネル方向を設定する、有機半導体トランジスタの製造方法である。
本発明により、従来のアモルファスSiをチャネル層に用いたトランジスタを超える、最高のデバイス特性を示す有機半導体トランジスタを印刷法によって得ることができる。またロール・トウ・ロールでの印刷による大量生産により、安価な印刷エレクトロニクス製品が得られる。
本発明の第1の実施例の上面構造を示す図である。 本発明の第1の実施例の横断面構造を示す図である。 本発明の第1の実施例の縦断面構造を示す図である。 C8−BTBTの分子構造を示す図である。 C8−BTBTの結晶構造を示す図である。 インク液滴を閉じ込めるための親油領域の形成方法を示す図である。 本発明の第2の実施例の上面構造を示す図である。 本発明の第3の実施例の上面構造を示す図である。 本発明の第4の実施例の上面構造を示す図である。 本発明の第5の実施例の上面構造を示す図である。 本発明の第6の実施例の上面構造を示す図である。 本発明の第7の実施例の上面構造を示す図である。 DNTTの分子構造を示す図である。 DNTTの結晶構造を示す図である。 C10−DNTT結晶の最大移動度方向とa軸と成長方向の関係を示す図である。 本発明の第8の実施例の上面構造を示す図である。 本発明の第9の実施例の上面構造を示す図である。 本発明の第10の実施例の上面構造を示す図である。 本発明の第10の実施例の断面構造を示す図である。 公知の有機半導体トランジスタの上面構造を示す図である。 Cn−BTBT結晶の移動度のab面内の角度依存性を示す図である。 C10−DNTT結晶とペンタセン結晶の移動度のab面内の角度依存性を示す図である。 C8−BTBT結晶の移動度の角度依存性、および、素子数の角度依存性を示す図である。 C10−DNTT結晶の移動度の角度依存性、および、素子数の角度依存性を示す図である。 C8−BTBT結晶を用いた有機半導体トランジスタの素子数の移動度依存性を示す図である。 C10−DNTT結晶を用いた有機半導体トランジスタの素子数の移動度依存性を示す図である。
以下、図を参照しながら、本発明の実施の形態を詳細に説明する。但し、以下に述べる実施の形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい限定がされているが、発明の範囲を以下に限定するものではない。
本実施の形態の有機半導体トランジスタは、チャネル層である有機半導体膜の移動度が最大になる方向がチャネル方向とほぼ平行である有機半導体トランジスタであり、有機半導体膜の結晶方位を制御する領域を有する、あるいは、有機半導体膜がダブルショットのインクジェット法で形成される、あるいは、有機半導体膜の方位を制御する領域に形成された有機半導体膜に接してソース電極とドレイン電極が対向して設置される、あるいは、有機半導体膜がCn−BTBT(nはゼロあるいは自然数)でありかつチャネル方向がCn−BTBTの結晶のa軸にほぼ平行である、あるいは、有機半導体結晶がCn−DNTT(nはゼロあるいは自然数)でありかつチャネル方向がCn−DNTTの結晶のa軸からb軸に回転する角度θでほぼ35°の方向である、あるいは、有機半導体結晶がペンタセンを含みかつチャネル方向がペンタセンの結晶のa軸からb軸に回転する角度θでほぼ55°の方向である、あるいは、有機半導体膜が単結晶である、特徴を有する有機半導体トランジスタである。
(第1の実施例)
図1に、本発明の第1の実施例である有機半導体トランジスタの上面構造を示す。本発明の第1の実施例は、約400μm厚のp−Si基板1、120nm厚のSiO膜2、C8−BTBT結晶性有機半導体膜3、ソース電極4、ドレイン電極5、チャネル方向6、絶縁体膜7、ゲート電極8、結晶成長方向9、a軸方向10、b軸方向11からなるトップゲ−ト型の有機半導体トランジスタである。電極材料には金を用いた。チャネル長30μm、チャネル幅は約150μmである。絶縁体膜7にはパリレン樹脂を用いた。チャネル方向6はソース電極4からドレイン電極5に向かう方向であり、トランジスタ動作時にキャリアが走行する方向である。C8−BTBTはp型半導体であり、走行するキャリアは正孔である。C8−BTBT結晶性有機半導体膜3は滴下領域12、くびれ領域13、結晶領域14に形成されている。滴下領域12は幅120μm、長さ120μmである。くびれ領域13の幅は30μm、長さが30μmである。結晶領域14は幅120μm、長さ700μmである。図1に示されるように、結晶領域14は有機半導体膜の結晶方位を制御する領域であり、結晶領域14のC8−BTBT膜結晶のa軸方向10は結晶成長方向9とほぼ45度の角度を成す。
図2に、本発明の第1の実施例の横断面構造を示す。これは断面線15で切った断面図である。図3に、本発明の第1の実施例の縦断面構造を示す。これは断面線0で切った断面図である。第1の実施例は、結晶性有機半導体膜としてC8−BTBTを用いた特徴と結晶領域14のC8−BTBT膜結晶のa軸方向10がチャネル方向6と平行である特徴と有機半導体結晶がダブルショットのインクジェット法で形成された特徴を有する。
図4AにC8−BTBTの分子構造22を、図4BにC8−BTBTの結晶構造21をそれぞれ示す。硫黄原子(S)を含む5印環とベンゼン環が結合した分子が2つ結合してBTBT分子を形成する。C8−BTBTの分子構造22は、BTBT分子にC8H17のアルキル側鎖が両側に結合した構造をしている。C8−BTBTの結晶構造21では側鎖はC軸方向を向いて、1つの分子の周りに6個の分子が平行に配列している。但し、図4Bでは、C8−BTBT分子20の側鎖は省くなどで簡略化して表示している。
図4Bに示すように、BTBT分子が平行に向き合う方向をP方向、それ以外の2つの方向はT1方向とT2方向である。移動度は、c軸方向では小さく、ab面内で大きい。C8−BTBT分子間のキャリアはこれらの3つの方向でホッピングするが、電子軌道の重なりの違いにより、ホッピングする確率が方向によって異なるためにキャリアの移動度に異方性を生じる。C8−BTBTの場合は、P方向のポッピング確率が高いため、P方向の移動度が高いことが今回の量子計算で分かった。C8−BTBTの結晶構造21のa軸はP方向に平行なので、C8−BTBTの結晶構造21の移動度は、ab面内では、a軸方向で最大となる。計算から、それに垂直なb軸方向で最小になることが分かった。
第1の実施例の有機半導体トランジスタは、図1のようにトランジスタのチャネル方向が、C8−BTBTの結晶構造21のa軸方向とほぼ平行になるように、ソ−ス電極4とドレイン電極5が形成されている。チャネル方向6がC8−BTBTの結晶構造21のa軸方向と一致するときに移動度が一番高くなり、ばらつきも小さくなる。「ほぼ平行」と表現したのは、チャネル方向6とa軸方向に±10°程度の製造誤差が生じても、本実施例ではチャネル方向6をa軸方向に合わせた効果を発揮するためである。
次に、第1の実施例の製造方法を説明する。まず、p−Si基板1上に化学気相堆積法でSiO膜2を形成する。次にSiO膜2上に半導体インク液滴を閉じ込めるための親油領域を形成する。図5にインク液滴を閉じ込めるための親油領域の形成方法を示す。親油領域は次の4工程により形成する。
1:ヘキサメチルジシラザン(HMDS)によりSiO膜2の表面を疎水化する。
2:マスク16でインク液滴の閉じ込め領域以外を被覆する。
3:紫外線(UV)/オゾン照射18により選択的に親水化する。
4:フェネチル・トリクロロシラン(PTS)処理19により選択的に親油化する。
次に、C8−BTBT結晶性有機半導体膜3をダブルショット・インクジェット印刷により形成した。印刷に用いるインクとしては、C8−BTBT10mg(21.5μmol:分子量464.77)をオルト・ジクロロベンゼン(以下にDCBと呼ぶ)0.8mlに溶解させた濃度27mmol/lの半導体インク、及びC8−BTBTをほとんど溶解しないジメチル・ホルムアミド(以下にDMFと呼ぶ)からなる非溶解性インクを用いる。DCBとDMFは市販されている。また、得られたインクの粘度はいずれも2〜3mPa・sと低く、インクジェット印刷に用いるのに適している。
C10−DNTTに関しても同じインク溶剤と非溶解性インクを適用できる。C10−DNTTの場合、溶液の温度を高めて溶解度を上げることができる。溶媒はジクロロベンゼン以外のものを用いてもよい。C10−DNTTの前駆体を塗布・結晶化し、後で加熱してC10−DNTT結晶を得る方法を用いることもできる。
インクジェット式印刷装置は、デジタル制御により前記の2種類のインクを100ピコリットル程度の微細液滴にして適切な位置に非接触で吐出できる。まず非溶解性インクを滴下領域12の中央に吐出して着弾させ、親油領域内に行き渡らせた。その直後に、吐出ヘッドを移動し、半導体インクを滴下領域12の中央の同じ位置に吐出し、溶液の状態で混合した。半導体インクは非溶解性インク上を薄く広がってくびれ領域13を通過した後、結晶領域14に徐々に拡散しながら半導体インク中の半導体を単結晶で成長させる。非溶解性インクは蒸発し、1〜2分程度で有機半導体結晶膜が選択された領域に形成された。
くびれ領域13を設けることで単結晶有機半導体膜を[1−10]の結晶成長方向9に成長できる。滴下領域12は相対的に体積に対する表面積が大きいので、滴下領域12で溶媒の蒸発につれて最初に種結晶が発生する。くびれ領域13で多結晶のうち成長方向が一致したものが選別される。くびれ領域13を起点として結晶領域14に単結晶が[1−10]の結晶成長方向9に成長する様子が偏光顕微鏡で観察できる。原子間力顕微鏡像で結晶領域14の表面を観察すると、単一結晶に特有のステップ/テラス構造が観察できた。C8−BTBT結晶性半導体膜3のC8−BTBT分子は基板に垂直に配列しており、C8−BTBT結晶のa軸とb軸を含むab面は基板に平行である。結晶成長方向である矩形領域の長辺方向はa軸と−45度の角度を成している。
なお、本発明は上記の第1の実施例に限定されるものではない。例えば、有機半導体結晶を形成する矩形領域の形状や大きさを変更することもできる。塗布面積に応じてインクの量は調整する。素子の基材に関しても、p−Si基板だけでなく、高分子材料からなるフィルム基材を用いることができる。ソース電極端とドレイン電極端の間隔であるチャネル長やチャネル幅も本実施例に限定されるものではない。絶縁体にはパリレン樹脂を用いたが、ポリビニルアルコ−ル樹脂なども適用可能である。
ここでは有機半導体としては、C8−BTBTに関する結果について例示したが、C10−BTBTやC12−BTBTなど側鎖長のことなるCn−BTBTに関しても同様の移動度の異方性が得られることを確かめている。そのためCn−BTBT(nはゼロまたは自然数)を用いた上記の実施例と同じ構造でも優れたトランジスタ特性が得られる。移動度の異方性は側鎖の影響を受け難いので、アルキル基以外の置換基を有するBTBT結晶に関しても本実施例は適用可能である。
また、有機半導体結晶を形成する方法としてダブルショット・インクジェット法を用いる方法を例示したが、結晶方向が特定できれば、他の方法で有機半導体結晶を形成してもよい。例えば蒸着で有機半導体膜を形成する方法や、基板傾斜やバーコーティングにより有機溶媒を徐々に蒸発させて単結晶有機半導体膜を成長させる方法でも実施可能である。
(第2の実施例)
図6に、本発明の第2の実施例である有機半導体トランジスタの上面構造を示す。本発明の第2の実施例は、約400μm厚のp−Si基板1、120nm厚のSiO膜2、C8−BTBT結晶性有機半導体膜30、ソース電極36、ドレイン電極37、チャネル方向6、絶縁体膜7、ゲート電極38、a軸方向10、b軸方向11からなるトップゲ−ト型の有機半導体トランジスタである。
C8−BTBT結晶性有機半導体膜30は滴下領域31、くびれ領域32、結晶領域33、結晶領域34、結晶領域35に形成されている。図6に示されるように、結晶領域33を成長した結晶は結晶領域34で成長方向を45度変化させ、結晶領域35を伝播して成長する。結晶領域35ではその長手方向がその領域のC8−BTBT結晶のa軸方向と一致する。ソース電極36とドレイン電極37は、結晶領域35に直角な方向に設けられており、単純な矩形構造をしている。チャネル方向6はC8−BTBT結晶のa軸方向と平行である。本実施例により、結晶領域の向きが変化する特徴により、電極構造を作製しやすくし、チャネル幅が明確なトランジスタを得ることができる。
(第3の実施例)
図7に、本発明の第3の実施例である有機半導体トランジスタの上面構造を示す。本発明の第3の実施例は、約400μm厚のp−Si基板1、120nm厚のSiO膜2、C8−BTBT結晶性有機半導体膜40、ソース電極36、ドレイン電極37、絶縁体膜7、ゲート電極38、a軸方向10、b軸方向11からなるトップゲ−ト型の有機半導体トランジスタである。C8−BTBT結晶性有機半導体膜40は滴下領域41、くびれ領域42、結晶領域43、結晶領域44、結晶領域45、結晶領域46、結晶領域47に形成されている。前記第2の実施例との違いは、結晶領域46、結晶領域47が新たに付加されていることである。これにより、チャネルが設けられた結晶領域45でのa軸の方向がより正確に定まる効果があるために、移動度のばらつきがより小さくなる効果がある。
(第4の実施例)
図8に、本発明の第4の実施例である有機半導体トランジスタの上面構造を示す。本発明の第4の実施例は、約400μm厚のp−Si基板1、120nm厚のSiO膜2、C8−BTBT結晶性有機半導体膜50、ソース電極4、ドレイン電極5、絶縁体膜7、ゲート電極8、結晶性長方向9、a軸方向10、b軸方向11からなるトップゲ−ト型の有機半導体トランジスタである。C8−BTBT結晶性有機半導体膜50は滴下領域51、くびれ領域52、結晶領域53に形成されている。
前記第1の実施例との違いは、くびれ領域52が3つのくびれを有していることである。第1の実施例では中央のくびれ領域13を通過するために結晶領域14において、C8−BTBT結晶の中心部の膜厚が厚くなる傾向があった。第4の実施例ではくびれ領域52を通過したC8−BTBT結晶の成長方向に直角な方向の結晶の膜厚分布が均一になる効果を有する。これにより、移動度のばらつきがより小さくなった。またくびれ領域52によって結晶領域53の幅を広くすることができる。これによってチャネル幅を大きく設計できるため、トランジスタに電流を多く流すことができる利点がある。
(第5の実施例)
図9に、本発明の第5の実施例である有機半導体トランジスタの上面構造を示す。本発明の第5の実施例は、約400μm厚のp−Si基板1、120nm厚のSiO膜2、C8−BTBT結晶性有機半導体膜60、ソース電極4、ドレイン電極5、絶縁体膜7、ゲート電極8、a軸方向10、b軸方向11からなるトップゲ−ト型の有機半導体トランジスタである。C8−BTBT結晶性有機半導体膜60は滴下領域61、第1くびれ領域62、第1結晶領域63、第2くびれ領域64、第2結晶領域65に形成されている。
前記第1の実施例との違いは、2つのくびれ領域を有することである。第1くびれ領域62は結晶方向[1−10]を結晶領域63の長手方向に選別する働きをし、第2くびれ領域64は3つのくびれ領域を有することで、第2結晶領域65において、成長方向に直角な方向の結晶の膜厚分布を均一にする効果を有する。第4の実施例との違いは、結晶成長方向がより結晶領域53の長手方向に合わせられ、移動度のばらつきをさらに小さくできることである。
(第6の実施例)
図10に、本発明の第6の実施例である有機半導体トランジスタの上面図を示す。本発明の第6の実施例は、約400μm厚のp−Si基板1、120nm厚のSiO膜2、C8−BTBT結晶性有機半導体膜60、ソース電極36、ドレイン電極37、チャネル方向6、絶縁体膜7、ゲート電極38、a軸方向10、b軸方向11からなるトップゲ−ト型の有機半導体トランジスタである。C8−BTBT結晶性有機半導体膜70は滴下領域71、第1くびれ領域72、結晶領域73、結晶領域74、結晶領域75に形成されている。
第6の実施例は、第2の実施例の折れ曲がり形状のC8−BTBT結晶性有機半導体膜と、第4の実施例の3つのくびれ領域を有するくびれ領域72を同時に有する。これによって単純なソース電極36とドレイン電極37形状で、広いチャネル幅で均一な結晶膜厚が得られる。
(第7の実施例)
図11に、本発明の第7の実施例である有機半導体トランジスタの上面図を示す。本発明の第6の実施例は、約400μm厚のp−Si基板1、120nm厚のSiO膜2、C10−DNTT結晶性有機半導体膜80、ソース電極84、ドレイン電極85、絶縁体膜86、ゲート電極87、結晶成長方向88、チャネル方向89、a軸方向10、b軸方向11からなるトップゲ−ト型の有機半導体トランジスタである。C10−DNTT結晶性有機半導体膜80は、滴下領域81、くびれ領域82、結晶領域83に形成される。C10−DNTT結晶のa軸方向10は結晶成長方向88である結晶領域83の長手方向から反時計回りで45°の角度を成す。
図11に示すようにチャネル方向89はC10−DNTT結晶のa軸方向10から反時計回りで35°の角度を成す。C10−DNTT結晶用のインクはC8−BTBTの場合と同様に作製できる。またインクを塗布する親油性領域の形成方法も同じである。C10−DNTT結晶は信頼性が高く150℃程度の高い温度に対して耐性を示す利点がある。
図12AにC10−DNTTの分子構造91、図12BにC10−DNTTの結晶構造90を示す。DNTT分子は、イオウ原子を含む5印環にベンゼン環が2つ縮合結合した分子が2つ結合した構造をしている。C10−DNTT分子はDNTT分子の両側にC10H21のアルキル側鎖が付加した構造をしている。C10−DNTT結晶はp型半導体である。C10−DNTT結晶やDNTT結晶では分子の長手方向はC軸方向を向いている。C10−DNTT結晶はDNTT結晶90と同様に、1つの分子の周りに6個のDNTT分子が平行に配列している。
図12に示すように、C10−DNTT分子92が平行に向き合う方向をP方向、それ以外の2つの方向はT1方向とT2方向である。キャリアはDNTT分子間をこれらの3つの方向でホッピングするが、電子軌道の重なりの違いにより、ホッピングする確率が方向によって異なるためにキャリアの移動度に異方性を生じる。
図13に、C10−DNTT結晶の最大移動度方向とa軸と成長方向の関係を示す。C10−DNTT結晶の場合は、P方向とT1方向のポッピング確率が高いため、P方向から35°反時計回りに回転した方向の移動度が高いことが今回の量子計算で分かった。C10−DNTT結晶のa軸はP方向に平行なので、C10−DNTT結晶の移動度は、ab面内では、a軸方向から反時計回りに35°回転した方向で最大移動度方向93になる。それに垂直なb軸方向で最小になることが計算で分かった。本実施例の有機半導体トランジスタは、図11のようにトランジスタのチャネル方向が、C10−DNTT結晶の最大移動度方向93とほぼ平行であるため、移動度が一番高く、ばらつきも小さい。ここで「ほぼ平行」と表現したのは、チャネル方向と最大移動度方向93の間の角度が0度から±10°程度ずれても本実施例では効果を発揮するためである。
(第8の実施例)
図14に、本発明の第8の実施例である有機半導体トランジスタの上面構造を示す。本発明の第8の実施例は、約400μm厚のp−Si基板1、120nm厚のSiO膜2、C10−DNTT結晶性有機半導体膜100、ソース電極106、ドレイン電極107、絶縁体膜7、ゲート電極108、チャネル方向109、a軸方向10、b軸方向11からなるトップゲ−ト型の有機半導体トランジスタである。C10−DNTT結晶性有機半導体膜100は、滴下領域101、くびれ領域102、第1結晶領域103、第2結晶領域104、第3結晶領域105に形成される。図14に示すように、チャネル方向109はC10−DNTT結晶のa軸方向10から反時計回りで35°の角度を成す。
(第9の実施例)
図15に、本発明の第9の実施例である有機半導体トランジスタの上面構造を示す。本発明の第9の実施例は、約400μm厚のp−Si基板1、120nm厚のSiO膜2、ペンタセン結晶性有機半導体膜110、ソース電極114、ドレイン電極115、絶縁体膜7、ゲート電極116、結晶成長方向117、チャネル方向118、a軸方向10、b軸方向11からなるトップゲ−ト型の有機半導体トランジスタである。ペンタセン結晶性有機半導体膜110は、滴下領域111、くびれ領域112、結晶領域113、に形成される。
図15に示すようにチャネル方向118はペンタセン結晶のa軸方向10から反時計回りで55°の角度を成す。このときトランジスタの移動度が最大になる。角度が大きいのでチャネル幅を広くとれる利点がある。
ペンタセンのインクもこれまでと同様の方法によって作製できる。例えばペンタセンを高濃度に溶解させる溶媒としてクロロベンゼン(CB)を使用し、またペンタセンをほとんど溶解しない溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)を用いることができる。信頼性を高めるためにペンタセンに置換基をつけたTIPSペンタセン(6,13−ビストリイソプロピルシリルチニルペンタセン)を用いることもできる。
(第10の実施例)
図16に、本発明の第10の実施例の上面構造を示す。本発明の第10の実施例は、厚さ50μmのフィルム基材120、ゲート電極121、厚さ5nmのAlゲート絶縁膜122、厚さ2nmのゲート絶縁膜(SAM)123、ソース電極124、ドレイン電極125、有機封止膜126、結晶成長方向127、チャネル方向128、厚さ約30nmのC10−DNTT結晶性有機半導体膜130、a軸方向10、b軸方向11からなるボトムゲ−ト型の有機半導体トランジスタである。有機封止膜126は厚さ300nmのパリレンと厚さ200nmの金と12.5μm厚のパリレンとをラミネートした膜である。これはC10−DNTTの昇華を抑制する働きがある。電極は金を用いた。
図17に、本発明の第10の実施例の断面構造を示す。断面は図16の断面線129で切ったものである。ナノスケ−ルで平坦化したフィルム基材120上にゲート電極121を形成した後にフィルムを損傷しないようにプラズマ条件を最適化し、厚さ5nmのAlゲート絶縁膜122を形成する。さらに、高密度の配向SAM膜123を厚さ2nm形成し、親油性領域を形成した後に、ダブルインクジェット法でC10−DNTT結晶性有機半導体膜130を形成した。SAM膜とは自己組織化単分子膜(=Self−Assembled Monolayer)であり、高分子フィルム上に高密度で向きを揃えて配置することによって、高温でもピンホールを発生しない。チャネル方向128に注意しながら、ソース電極124、ドレイン電極125を蒸着で形成し、最後に有機封止膜126で半導体部を封止した。平均移動度が約30cm/Vsの有機半導体トランジスタが得られた。Alゲート絶縁膜122が薄いため、駆動電圧が2Vと小さかった。この素子は150℃の高耐熱性を有し、有機トランジスタをフィルム上に作製できた。
(発明の効果)
図19に、C8−BTBT結晶の移動度のab面内の角度依存性を示す。これは非特許文献3と同じ計算手法により、C8−BTBTの結晶構造デ−タから第一原理密度汎関数法でホッピングモデルに基づいて移動度の異方性を高精度に計算した結果である。グラフの水平軸が結晶のa軸方向に相当する。グラフ上の点と原点を結ぶ線分がa軸となす角度をθとすると、θ方向の線分の大きさがθ方向の移動度の大きさに相当する。C8−BTBTの場合、移動度の異方性が大きく、移動度はa軸方向で最大、それとほぼ垂直なb軸方向で最小となることを見出した。実際の有機半導体結晶の移動度は、バンド伝導効果によって、ホッピングモデルに基づいて求めた計算値よりも大きくなるが、実際の有機半導体結晶の移動度の異方性はホッピングモデル計算で求めたものと定性的に一致する。
本発明のC8−BTBT有機半導体トランジスタの場合、C8−BTBT結晶のa軸はC8−BTBT結晶が成長した矩形領域の長手方向に対して反時計回りに45度の角度にある。また矩形領域の長手方向に対してチャネル方向が反時計回りに45度の角度になるようにソース電極とドレイン電極が形成されている。結局、チャネル層である有機半導体結晶の移動度が最大になる方向が、ソース電極からドレイン電極に至るチャネル方向と平行である特徴を有するために、C8−BTBT結晶としては移動度が最も大きいトラジスタが得られる。
図20に、C10−DNTT結晶とペンタセン結晶の移動度のab面内の角度依存性を示す。これは非特許文献3と同じ計算手法により、C10−DNTTとペンタセンの結晶構造デ−タから第一原理密度汎関数法で移動度の異方性を計算した結果である。グラフの水平軸が結晶のa軸方向に相当する。C10−DNTTの場合にも顕著な移動度の異方性があり、移動度はa軸からb軸に向かって反時計回りに35度回転した方向で最大となる。またそれに直角な方向で移動度は最小になる。本実施の形態のC10−DNTTを用いた有機半導体トランジスタの場合、チャネル方向がa軸からb軸に向かって反時計回りに35度回転した方向になっているので、最も大きな移動度が得られる。
図21に、C8−BTBT結晶の移動度の角度依存性と公知例と本発明の素子数の角度依存性を示す。横軸にa軸と反時計回りになす角度を取った。移動度は、0度と180度で最大、90度と270度で最小になる。公知例ではチャネル方向がa軸に対して45度であるため、移動度が小さい。実際の公知例の素子では、素子によって結晶の向きが45度を中心にガウス分布でばらつく。ガウス分布の半値全幅は例えば30度程度である。その結果、素子間で移動度のばらつきが生じる。特にC8−BTBT結晶の場合、45度方向における移動度の変化が大きいために、公知例の素子特性に大きなばらつきが生じる。一方、本発明では、素子によって結晶の向きが180度方向を中心に両側に15度程度ばらついたとしても、180度方向における移動度の変化が小さいために、素子特性に大きなばらつきが生じないことが計算で示された。
図22に、C10−DNTT結晶の移動度の角度依存性と公知例と本発明の素子数の角度依存性を示す。横軸にa軸と反時計回りになす角度を取った。移動度は、35度と215度で最大、125度と305度で最小になる。公知例ではチャネル方向がa軸に対して−45度(315度)をなすため、移動度が最小値に近い。実際の公知例の素子では、素子によって結晶の向きが−45度を中心に両側にガウス分布でばらつく。ガウス分布の半値全幅は30度程度である。その結果、素子間で移動度のばらつきが生じる。特にC10−DNTT結晶の場合、−45度における移動度の変化が大きいために、公知例の素子特性に大きなばらつきが生じる。一方、本発明では、素子によって結晶の向きが35度方向を中心に両側に15度程度ばらついたとしても、35度方向における移動度の変化が小さいために、素子特性に大きなばらつきが生じないことが計算で示された。
図23に、C8−BTBT結晶を用いた公知構造(図18)と本発明の第1の実施例の構造の有機半導体トランジスタの素子数の移動度依存性を示す。それぞれ実際に約500個の素子を作製して評価した。C8−BTBT結晶を用いた公知構造では、平均移動度が9.3cm/Vsで、移動度のばらつきは2〜16cm/Vsと大きかった。一方、C8−BTBT結晶を用いた本実施例の構造では、平均移動度が17.5cm/Vsで、移動度のばらつきは16〜18cm/Vsと極めて小さかった。これは計算によって予想された結果と定性的に一致していた。本実施例に用いたダブルショット・インクジェットによる製造法では、成長方向である矩形領域の長手方向に対し、有機半導体膜の結晶の[1−10]方向が矩形領域の長手方向を中心に両側に15度程度ガウス分布でばらつくことが確かめられた。以上のように、C8−BTBT結晶を用いた本実施例の構造により、移動度が公知例の2倍でばらつきが極めて小さい有機半導体トランジスタが得られる。
図24に、C10−DNTTを用いた公知構造(図18)と本発明の第7の実施例の構造の有機半導体トランジスタの素子数の移動度依存性を示す。それぞれ実際に約500個の素子を作製して評価した。C10−DNTTを用いた公知構造では、平均移動度が8.6cm/Vsで、移動度のばらつきは8〜15cm/Vsと大きかった。一方、C10−DNTT結晶を用いた本実施例の構造では、平均移動度が28.2cm/Vsで、移動度のばらつきは26〜29cm/Vsと極めて小さかった。これは計算によって予想された結果と定性的に一致していた。C10−DNTTにおいても有機半導体膜の結晶の[1−10]方向が矩形領域の長手方向を中心に両側に15度程度ガウス分布でばらつくことが確かめられた。以上のように、C10−DNTTを用いた本実施例の構造により、移動度が公知例の3倍で、ばらつきが極めて小さい有機半導体トランジスタが得られる。
また、本発明の第2から第6の実施例の構造の有機半導体トランジスタ、および、本発明の第8から第10の実施例の構造の有機半導体トランジスタにおいても、公知の技術に対して移動度が大きくばらつきの小さい特性が得られる。
本発明により、従来のアモルファスSiをチャネル層に用いたトランジスタを超える、最高のデバイス特性を示す有機半導体トランジスタを印刷法によって得ることができる。またロール・トウ・ロールでの印刷による大量生産により、安価な印刷エレクトロニクス製品が得られる。
また、上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
付記
(付記1)
チャネル層である有機半導体膜の移動度が最大になる結晶方位に対応して、チャネル方向を設定する、有機半導体トランジスタ。
(付記2)
前記チャネル方向が、前記有機半導体膜の移動度が最大になる結晶方位に略平行である、付記1記載の有機半導体トランジスタ。
(付記3)
前記有機半導体膜の結晶方位を制御する領域を有する、付記1乃至2の何れか1項記載の有機半導体トランジスタ。
(付記4)
前記有機半導体膜がダブルショットのインクジェット法で形成された、付記1乃至3の何れか1項記載の有機半導体トランジスタ。
(付記5)
前記有機半導体膜の前記結晶方位を制御する領域に形成された前記有機半導体膜に接してソース電極とドレイン電極が対向して設置された、付記1乃至4の何れか1項記載の有機半導体トランジスタ。
(付記6)
前記有機半導体膜がCn−BTBT(nはゼロあるいは自然数)であり、かつ前記チャネル方向が前記Cn−BTBTの結晶のa軸に略平行である、付記1乃至5の何れか1項記載の有機半導体トランジスタ。
(付記7)
前記有機半導体膜がCn−DNTT(nはゼロあるいは自然数)であり、かつ前記チャネル方向が前記Cn−DNTTの結晶のa軸からb軸に回転する角度θで略35°の方向である、付記1乃至5の何れか1項記載の有機半導体トランジスタ。
(付記8)
前記有機半導体膜がペンタセンを含み、かつ前記チャネル方向が前記ペンタセンの結晶のa軸からb軸に回転する角度θで略55°の方向である、付記1乃至5の何れか1項記載の有機半導体トランジスタ。
(付記9)
前記有機半導体膜の前記結晶方位を制御する領域が、少なくとも2つ以上の矩形領域の中心線がゼロでない角度で組み合わせてなる形状を有する、付記1乃至8の何れか1項記載の有機半導体トランジスタ。
(付記10)
前記有機半導体膜の前記結晶方位を制御する領域が、2つ以上のくびれ領域を並列に有する、付記1乃至9の何れか1項記載の有機半導体トランジスタ。
(付記11)
前記有機半導体膜の前記結晶方位を制御する領域が、2つ以上のくびれ領域と矩形領域を直列に有する、付記1乃至10の何れか1項記載の有機半導体トランジスタ。
(付記12)
前記有機半導体膜が単結晶である、付記1乃至11の何れか1項記載の有機半導体トランジスタ。
(付記13)
チャネル層である有機半導体膜の移動度が最大になる結晶方位に対応して、チャネル方向を設定する、有機半導体トランジスタの製造方法。
(付記14)
前記チャネル方向が、前記有機半導体膜の移動度が最大になる結晶方位に略平行である、付記14記載の有機半導体トランジスタの製造方法。
0、15、129 断面線
1 p−Si基板
2 SiO
3、30、40、50、60、70 C8−BTBT結晶性有機半導体膜
4、36、84、106、114、124、143 ソース電極
5、37、85、107、115、125、142 ドレイン電極
6、89、109、118、128 チャネル方向
7、86 絶縁体膜
8、38、87、108、116、121、145 ゲート電極
9、88、117、127 結晶成長方向
10、146 a軸方向
11、147 b軸方向
12、31、41、51、61、71、81、101、111、131 滴下領域
13、32、42、52、72、82、102、112、132 くびれ領域
14、35、43、44、45、46、47、53、73、74、75、83、113、133 結晶領域
20 C8−BTBT分子
21 C8−BTBTの結晶構造
22 C8−BTBTの分子構造
25 硫黄原子(S)
62 第1くびれ領域
64 第2くびれ領域
63、103 第1結晶領域
65、104 第2結晶領域
105 第3結晶領域
80、100 C10−DNTT結晶性有機半導体膜
92 C10−DNTT分子
90 C10−DNTTの結晶構造
91 C10−DNTTの分子構造
93 C10−DNTT結晶の最大移動度方向
95 硫黄原子(S)
110 ペンタセン結晶性有機半導体膜
120 フィルム基材
122 Alゲート絶縁膜
123 ゲート絶縁膜(SAM)
126 有機封止膜
130 C10−DNTT結晶性有機半導体膜
140 SiO/Si基板
141 絶縁体
144 C8−BTBT結晶

Claims (10)

  1. チャネル層である有機半導体膜の移動度が最大になる結晶方位に対応して、チャネル方向を設定する、有機半導体トランジスタ。
  2. 前記チャネル方向が、前記有機半導体膜の移動度が最大になる結晶方位に略平行である、請求項1記載の有機半導体トランジスタ。
  3. 前記有機半導体膜の結晶方位を制御する領域を有する、請求項1乃至2の何れか1項記載の有機半導体トランジスタ。
  4. 前記有機半導体膜がダブルショットのインクジェット法で形成された、請求項1乃至3の何れか1項記載の有機半導体トランジスタ。
  5. 前記有機半導体膜がCn−BTBT(nはゼロあるいは自然数)であり、かつ前記チャネル方向が前記Cn−BTBTの結晶のa軸に略平行である、請求項1乃至4の何れか1項記載の有機半導体トランジスタ。
  6. 前記有機半導体膜がCn−DNTT(nはゼロあるいは自然数)であり、かつ前記チャネル方向が前記Cn−DNTTの結晶のa軸からb軸に回転する角度θで略35°の方向である、請求項1乃至4の何れか1項記載の有機半導体トランジスタ。
  7. 前記有機半導体膜がペンタセンを含み、かつ前記チャネル方向が前記ペンタセンの結晶のa軸からb軸に回転する角度θで略55°の方向である、請求項1乃至4の何れか1項記載の有機半導体トランジスタ。
  8. 前記有機半導体膜が単結晶である、請求項1乃至7の何れか1項記載の有機半導体トランジスタ。
  9. チャネル層である有機半導体膜の移動度が最大になる結晶方位に対応して、チャネル方向を設定する、有機半導体トランジスタの製造方法。
  10. 前記チャネル方向が、前記有機半導体膜の移動度が最大になる結晶方位に略平行である、請求項9記載の有機半導体トランジスタの製造方法。
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